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F-16CとAGM-154

(画像掲示板より引用)


 【link】

「Togetter」◆(2011/02/05)@keenedge1999氏による,深夜のAAM-4語り


 【質問】
 世界で初めて空対空ミサイルが実戦で使用されたのは?

 【回答】
 実戦で初めて使われたのは,1958年9月24日の台湾海峡の金門馬祖上空の台湾と中国軍の戦闘.
 中国軍のMIG-15,17,等に対して,台湾側はF-86Fセイバーに,アメリカ海軍が開発した空対空ミサイル,GAR-8サイドワインダー(後にAIM-9B)サイドワインダーを使用して,自軍の倍の数の中共側を圧倒.29機のミグを撃墜する圧倒的な戦果を上げた.

 なお,この時一発のサイドワインダーが不発のままミグに突き刺さっており,これをコピーしたのがソ連版サイドワインダーのAA-2 アトールと言われているが,その真相は定かではない.


 【質問】
 空戦でのミサイル攻撃は,IRならチャフが,レーダーならECMが,最後にはドライバーの練度によるマニューバもあるので,絶対当たる訳ではないのでは?

 【回答】
 これは,ちょっと厳しいのではないでしょうか?
 特に最新の技術を鑑みれば,,,ですが.

・レーダーならECM
 レーダーにECMという話ですが,これもちょっと…でしょう.当然ながらカウンタ技術としてECCMと言うのもありますし (攻撃側にはそのカウンタ技術としてECCCMとか,,きり無いな) それ以前にアメリカのミサイルをジャミングできたという話はついぞ聞きませんね.

 AMRAAM(比較的新しいレーダー誘導空対空ミサイル)は,ECM食らうと「ECMを出している方向を選ぶ」モードになって,ECM(いわゆるジャミング)は対して役にたちません.

・ドライバーの練度によるマニューバ
 これは高G機動によるミサイル本体の破壊もしくはシーカーのサーチエリア外への移動によるロックミスを誘う事だと思いますが,最新のサイドワインダの耐G強度と,センサの強化によるサーチ周波数の高速度化(点センサから線センサ等)によって陳腐化しつつあります.

 昔は,例えばスパローなんかですと,速度を上げて突っ込んで行けば,直撃しない限り大丈夫と言われていましたが,それもはるか昔の話です.
 最近の近接信管は正確無比で,爆発するまでのタイムラグはほとんどありません.
(爆発開始まで数マイクロ秒,破片飛散開始まで十数マイクロ秒).

・IRならチャフ
については別項参照.

? & キルロイ in 軍事板



 【質問】
 マニューバは軽視できようはずもないと思いますが?
 ミサイルの機動性能は固体ロケットモーターの能力に依存している以上,万能ではありません.
 ゆえに,戦闘機の加速・上昇・機動性能の優劣は,ミサイルの命中確率を決定的に左右する可能性があると思います.
 また,陸地上空なら,地形遮蔽やグラウンドクラッターの利用が有効な可能性も排除できないです.
 ミサイルの必中エンベロープ内に敵機を収めるのも,そこから逃げるのも戦闘機の性能一つなので.

 【回答】
 軽視はしませんよ.
 しかし,最近の技術ではそのエンベロブが拡大の一途にあり,追われる側にしてみれば極限のマニューバ技量を必要とされるということです.

 そしてその極限のマニューバ技量を発揮させるためのパイロットに投資される費用+時間に対するその効果を考えると,一言で逃げられると単純に言い切れるのか?と思っています.

? in 軍事板



 【質問】
 アーチャーや最新鋭のサイドワインダー等を使用する近接戦闘では確かに驚異的な進歩があり,おっしゃっている通りであると思いますが,BVR戦となるといささか違ってくるかと.
 というのは,ミサイルを無力化しうる時間と空間がふんだんに存在するからです.

 極端な例を挙げれば,対進状態から単に上昇反転するだけでミサイルの射程は激減しますよね.
 この点はアムラームや,名前は失念しましたが3次元翼をもつロシアの中距離AAMでももれなく当てはまる訳で,固体ロケットモーターに依存しているからうんぬんというのは主にこの点の事を言っています.
 アムラームが極めて命中率の高い必殺兵器だと言われているようですが(確かに70年代のスパローと比べたらウソのように当たるのでしょうね),モーターのエネルギー(と双方の位置,機動)が決定するエンベロープの中に占位した上で発射して初めて必殺と呼べる(ほどの性能を発揮する)わけで,そうなると必中を期する場合の射程は長くて15マイルといったところなのでは?(この辺りほとんど無根拠で歯がゆいのですが)と考えるわけです.となるとBVR戦は会敵の際の機動がかなり重要な位置を占めるのではと.

 特に双方多数の,規模の大きな空戦になれば中距離ミサイルをかいくぐることができる機会が少なからずあると考えています.
 まあこの辺りは兵器の性能を踏まえた運用の問題になると思いますので,機動性能さえあれば高性能ミサイルなど要らないとまでは言えないのは無論として,しかし近接戦以上に戦闘機の性能が勝敗を左右する状況にはなっていると思いますが,どう思われますか?

 【回答】
 確かに推力は有限です.ですが,有限なため逆に誘導機構の発達が促進されたと思って良いのではないのでしょうか?
 例えばAMRAAMの場合は,

>極端な例を挙げれば,対進状態から単に上昇反転するだけで
>ミサイルの射程は激減しますよね.

こういった機動すら凌駕しようとしています.詳しくは教えてくれませんでしたが,
 相手の初期エネルギ状態から相手の機動を先読み出来るようにもなっているとの事です.この辺は総て本当とは思えませんけどね.まぁ,売り文句でしょ(笑).

 総てにおいて完璧ではありませんが,確実にマニューバが幅を利かせる領域が減ってきています.より正確にはより肉体的限界に迫る機動が多くなる傾向かな.

 BVR戦の際の機動力というのは主に加速能力と考えています.F−16が誇るようなハイG維持旋回の能力も,あるいは重宝するかもしれませんが,副次的なものだと思います.
 位置・速度エネルギーがあればあるほど,ミサイルの有効射程=機動可能時間は延びるので,最初の交戦時の戦果にかなり影響するのではと.

 しかし戦闘機のパイロットがこの種の戦術状況を正確に判断するのは至難の技なのは想像に難くなく,空中・地上管制がない状況で戦えば,その時点で負けたも同然だといえるでしょうね.

 あとミサイルのプログラムも,相対状況によって,位置エネルギー確保<->最短経路で飛行をスイッチするようになっていれば,そうでないものとはかなり威力が違うと思います.

(? in 軍事板)


 【質問】
「コソボ紛争でAMRAAM撃たれたけど,逃げきった戦闘機がある」
と言ってるやつがいるんだけど本当なの?

 【回答】
 湾岸戦争でも同じ様な事はあった.
 交戦する前に反転して猛スピードで逃げ出した旧イラク軍MiG-25を,撃ち落とそうとしてAMRAAMを数発発射したが逃げられた例はある.
 MiG-25がミサイルより速い訳では無いが,猛スピードで逃げていると有効射程が減らされていく.

 結果的に見ればMiG-25の負けなんだが,わざと逃げてAAA陣地やSAM陣地の上空に誘き出す戦法を考えていたのかもしれない.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 AIM-9サイドワインダーなど赤外線追尾ミサイルも,レーダーロックが必要なんですか?
 相手に気付かれずに攻撃できるものと思ってたんですけど.

 【回答】
 どのみちサイドワインダーの射程じゃ有視界戦闘だよ.

 レーダー使わなくても撃てるが,レーダーでロックオンしておくと,目標の精確な情報が得られるので,射程外とか,命中しそうもない角度で発射しなくてすむ.
 AIM-9Lのように,ミサイルの赤外線センサの向きを変えることが出来るタイプだと,(昔のミサイルは,センサの向きは正面に固定されていた)発射前に,レーダーの情報に基いて赤外線センサを目標のほうに向けてロックオンできる
(そうでないと,機体の正面にいる目標しか撃てない)

 最新のAIM-9Xは,ミサイルが目標をロックしないまま発射し,発射後目標を探知すると言う発射方法が可能だが,そのためには,あらかじめレーダー等で目標の正確な情報を掴んでいないといけない――といった利点がある.

 IRAAMもオフボアサイト性能が向上してきて,ちゃんとその性能を生かすのはFCSにスレーブさせFCSの見つけた目標をAAMに「見せ」無きゃいけません.
 更にLOALともなればFCSがロックオンしなきゃどうしようもないです.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 最近の戦闘機は,チャフやフレア以外に,曳航式囮を装備するそうですが,曳航式囮の方がレーダー誘導ミサイルに対する欺瞞能力がチャフよりも高いんですか?

 【回答】
 チャフはパッシブに反射するだけだから,強度も低いし波形もいじれない.
 曳航式デコイはアクティブに放射するし,相手の電波を処理(位相とか)して送信するので,レーダーに目立つし,誤情報(方位とか)も与えやすい.ただし曳航する航空機の機動に制限が出る.

 これを解決するために試験中の自律式デコイ(要するにUAV)は,F-22,F-35の機内ベイに搭載,運用することも考えられている.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 赤外線誘導ミサイル妨害にチャフは効くの?

 【回答】
 サイドワインダーのような赤外線(IR)追尾ミサイルは,ご存知のように,航空機のエンジンの排気部や空力加熱部から発生する赤外線を感知して追尾するミサイルですから,「チャフ」で妨害(誤魔化す)することは出来ません.
 IRミサイルの妨害は「フレアー」と呼ばれるマグネシュウムを主体とした合成物に着火して放出します.
 フレアーは,機体加熱部が発生する赤外線とほぼ同じ波長の赤外線を多量に放出し,これにIRミサイルが食らい付いてしまうわけです.
 チャフはレーダー(もちろんレーダー誘導のミサイルも)を妨害するもので,レーダー電波の波長の1/2の長さに切った金属箔を多量に放出し,レーダーに対して大きな反射を返し,母機はその陰に隠れてしまうわけです.

 最新のシーカーでは,加熱した機体温度とエンジン温度情報の積を用いて追尾可能になるそうです.
 当然ながら,IR画像追尾ではチャフはまったく効果ありません.

(?,ペペ in 軍事板)


 【質問】
 チャフやフレアって,機体の何処から投射するの?
 多分,機外に装備してるんだと思うんだけど,それらしい物を見たことが無い・・・.
 そして何発位持ってるの?
 機体によって違うんだろうけど,大体のところで.

 旅客機では無く,普通の軍用機の場合ね.

 【回答】
 F-4,F-15やF-16などはパイロン横に箱型(前方には整流用の角錐がついているが)に,
F-16はエアブレーキの直前にもあるけど,
F/A-18は見たことないな.
 ソ連のミグやスホイ系は,胴体上に2列になったチャフ/フレア発射機を直付けしてる.
 輸送機系は米ロを問わず,エンジン周辺のパイロンや翼下面,胴体後部などが多い.
 まぁ機種によって,付けやすいところにくっつけてるだけだな.

軍事板,2002/11/29
青文字:加筆改修部分

▼ chaff/flare dispenserで画像検索すると,いろんな装備例がわかります.

 F-16の尾翼と主翼の間のストレーキ下面,F-15やF-18は胴体下面の主脚収納部前方にある小さな四角がディスペンサー(AN/ALE-45,AN/ALE-47など)です.
 A-10は主翼端ドループ内側下面に縦に4基づつ並んでいるのと,主脚収納部後方に左右それぞれ4基づつ装備されています.
 AV-8Bは機体下面の他に,胴体後部上面に左右2基づつあります.
 AV-8Bの胴体上面のものがわかりやすいので,これで目をならしておけば,他の機種でも見つけやすいかも.
 パイロン内蔵型もありますし,必要ならある程度どこでもつけられるものです.

 一部(B-1など)を除いて,もっぱら下方〜側方に発射する西側と違って,ロシアは上方打ち上げ式が多いのが特徴.
 MiG-29だと,垂直尾翼から胴体上面に伸びる部分に,前後に長く延びたディスペンサーがあります.
 同様のものが,Su-25はエンジンナセル後方上部,MiG-25やSu-24は境界層フェンスにありますね.
 Su-27系列は,エンジンの間のスパイン部に,西側のものとよく似たAPP-50ディスペンサーがあります.
 これはSu-24の,垂直尾翼脇の胴体にも埋め込まれています.

BMP in FAQ BBS,2010/11/1(月) 2:49
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 チャフフレアディスペンサーの箇所に射出型ECMを搭載した場合,チャフやフレアは装備出来ないのでしょうか?

 【回答】
 コンフォーマルに(機体に沿わせて)装備するタイプのディスペンサーだと,そこに他の装備(射出型ECMとか)を取り付けることは普通できない.

 ハードポイントに装備するタイプのディスペンサーなら,他の装備に占有されたら当然チャフ,フレアは装備できない.
 ハードポイントにアダプターを取り付けることで,取付可能装備数を増やしたり,それ自体がさらにハードポイントを持っているチャフフレアディスペンサーなどを使えば話は別.

 だから機種や装備しだいで話はすべて変わってくる.
 そもそも射出型ECMっての自体,どれの事を言ってるのかな?
 ディスペンサブル(撃ち放し型)デコイの事?

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ルックダウン・シュートダウンが可能な軍用機は,搭載ミサイルで自機を狙うSAMを撃ち落す事が可能なのでしょうか?

 【回答】
 限りなく0に近い可能性でしかありません.

 ・ミサイルのRCSは,航空機と比べると極端に小さいため,地上(海上)設置レーダーと比べて出力の小さい機上レーダーでは捕捉できる可能性が低い

 ・SAMの到達までにAAMのリアクションタイムを消化して,ミサイルシュートできる可能性が低い.
 SAMの加速は数十Gで,あっという間にマック3〜5程度まで加速する.
(長射程のSAMを遠距離で発射された場合は,ミサイルシュートできる可能性があるが,その状況なら逃げた方が確実)

 ・ミサイルシュートできたとしても,AAMのシーカーがSAMを捕捉できるとは限らない.
 AAMが赤外線誘導の場合も,大抵のSAMのロケットモーターの燃焼時間が短く,遠距離で発射された場合は,SAMが途中から慣性と位置エネルギーを速度エネルギーに変換して飛翔する(長射程SAMのトラジェクトリーは放物軌道に近い)ため,赤外線放射が小さく(空気との摩擦熱のみ)ロックオンできる可能性は低い.

 ・仮にAAMのシーカーがSAMを捕捉できたとしても,直撃できる可能性は極めて低い.
 直撃しない場合,近接作動信管が無いAAMは無論,有る場合もRCSの問題から作動しない可能性がある.
 さらに,近接作動信管が作動する近距離を通過した場合も,SAMとAAMの相対速度が容易にマック5を越える高速のため,両者がすれ違った後にAAMの弾頭が起爆する.

 特に,最後の信管作動の問題から,可能性はほぼ0と言えます.

 ちなみに,途中で書いたとおり,長射程SAMのトラジェクトリーは,上空の打ち上げてから,空気密度の低い上空を通過して打ち下ろす形になるため,AAM側からすればルックダウン,シュートダウンではなくなります.
 また逆に,弾道ミサイル対処能力のあるSAMの場合は,ASMを迎撃できる可能性があります.

 AAMでのSAM迎撃はほぼ不可能ですが,ラプターやライトニングUでは,搭載レーダーによってSAMシーカーを狂わす(OR電子的に破壊する)ことによって,SAMを無力化できる可能性があるようです.

数多久遠 in 軍事板
青文字:加筆改修部分

 近年AAMの様な高速小目標に対し対処可能と謳うAAMも出て来ているが,通常目標に比べPK(撃破率)はかなり低下する考えられています.

 通常はECM・チャフ・フレアを最大限働かせて,回避に努める事になるでしょう.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 最近の空対空ミサイルに実装されているLOAL能力というのは,実用性のある機能なのでしょうか? 素人目に考える限り,有効なシチュエーションが想像できないのです.

 母機に比べるとごく限定的なミサイルの索敵・敵味方識別能力を考えると,中射程以上では危険な気がしますし,とすると考えうるのは標的をレーダー・コーンに収める暇も無いような格闘戦でしょうが,距離が近ければ,ロックする時間も無く誘導範囲を飛び出してしまうでしょう…

 【回答】
 Lock On After Launchは,発射前にミサイル以外のセンサーで標的を捕捉しており,その位置データをミサイルに伝えてから発射することで機能するのが普通です.

 ですから,敵機を横目で見ながら発射しても,ミサイルは慣性操縦を用いて,母機の火器管制から インプットされた敵機の未来位置に向かい,自分のセンサーでロックオンします.

 LOALというと新しそうですが,AMRAAMなどの中距離,あるいは長距離ミサイルではミサイル自身のセンサーが働くのは終末段階ですから,これらもすべてLOALということになります.

 発射機の側でもロックオンする前に適当に「そっちに」発射しといてパイロットが急いでロックオンし, 修正情報を送ってさらに指向させる,というデータアップリンクによる使用方法も研究されているようです.
 なんかだめっぽいけど.


 【質問】
 切り離した後に点火するAIM-7やAIM-120のようなミサイルの場合,構造上,背面飛行中は発射は不可能と考えてよいのでしょうか?
 そのまま翼ないし胴体にあたりそうな気が・・・
 ちょっとくらい傾いてても大丈夫そうですけどどうなんでしょう?

 【回答】
 無理.

 そもそもスパローやAMRAAMは視界外(スパロー程度なら環境によっては見えるらしいが)の遠距離目標を攻撃するミサイルなので,背面飛行をするような機動中に発射されることはありえない.
 少なくとも,開発はそういう想定でされている.

 あと,スパローはセミアクティブ式(発射母機からのレーダー波の反射波に向かう)のミサイルなので,発射した後誘導中は発射母機はレーダー,つまり機首をずっと目標の方向へ向けている必要がある.
 AMRAAMのようなFaF(Fire and Forget)方式のミサイル以外はみんなそうだけど.

 それと,一応ソビエト(ロシアのミサイル)もそれなりには異機種間で共用はできる.
 ただ,本当に1機種専用のものもあるし,赤外線誘導弾頭型以外は1種類1機種専用に近い.
 それからR-60は「小型高機動ミサイル」というのがメインで,「異機種共用」を主目的に開発されたのは,どちらかと言えばR-73の方.


 【質問】
 戦闘機のAAMって地平線の向こうにいる,直接見えない標的もロックオンできるんですか?
 たとえば自機が高度10メートルにいると,20キロ先の標的は地平線の向こうになりますが ,なんらかの事情でこちらの高度をそれ以上あげられない場合,その標的をロックオンできますか?

 【回答】
 無理っす.

 データリンクが完備してる戦闘機なら,そして上等なAAMなら,他の観測手段から敵の位置をもらい,ミサイルにそのデータを入力してそっちの方向に発射し,あとはAAMに自分で探して自分でロックオンするのを期待する, という手もある(LOAL:Lock-On After Launchというシステム)けど,それは「直接見えない標的にAAMがロックオン」とは少し違うように思う.

 LOALでは,ミサイルが飛んでいくには時間がかかるし,ミサイルのセンサーは視野が狭い.
 敵機が予想通りの位置に来てくれてれば,ロックオンできる可能性は十分あるけど,途中で変針されたら難しくなる.

 敵機を追跡し続けて,修正情報をAAMにアップリンクできれば命中率は上がる.
 相互の高度10mなら確かに20kmはぎりぎり見通し線に乗るけど,高度10mの飛行ってのはほとんど自殺行為.
 横風一吹きで地面に激突.ミサイルを発射する空間の余裕すらなさそう.

 ちなみにジェット戦闘機の場合,NOE(Nap Of the Earth,つまり超低空飛行)は高度60m程度.平坦な場所であれば15m程度までは可能と言われている,というぐらい.

 10mは激ヤバいし,下手すると通常機体下面から発射するAAMが地面に衝突,跳ね返って自機に激突,という可能性も大きい.方向を変えるためにちょっとロールするだけで主翼端が地面に当たるし,ろくな事はない.

軍事板


 【質問】
 Ks-172みたいな長射程ミサイルは主流にはならないのでしょうか?
 長くてもAIM-120Dの180kmくらいみたいですし.
 大型だしコスト高いから使いづらい?

 【回答】
 大型で載せられる航空機が限られるとか,ステルスにする場合ウェポンベィとの兼ね合いが,とかまずそういう問題があるが,一番の問題は
「そんな遠くの目標をどうやって発見するんだ?」
ということ.

 発射母機に強力なレーダーが付いてるか,早期警戒管制機のバックアップがなければ,狙う目標が見つけられないようなミサイルは,事実上専用機の専用装備(F-14とAIM-54のような)になってしまうか,アメリカみたいなお金持ちの国しか運用できないお大尽装備となる.

 なので,普及することはないだろう.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 軍用機ってどうやってロックオンされたと感知するのですか?
 撃ったあとなら,ミサイルの紫外線を感知すると聞いたのですが,撃たれる前にはどうやって感知するのでしょうか

 【回答】
 おそらくレーダー誘導ミサイルについての質問かと思いますので,レーダー誘導ミサイルについて回答します.

 戦闘機や攻撃機の場合,大抵はRWRと呼ばれるレーダー波をキャッチし,警報を発する装置が付いてます.
 このRWRが,敵がロックオンした状態の時に発するレーダー波を照射された時に警報を出すように設定するわけですが,相手がセミアクティブレーダーホーミングミサイルを使用している場合,照射されるレーダー波は一般的に次のような段階を経ます.(空対空,地対空問わず)
 各種の捜索モード(発見まで)
→追随モード
→ミサイル誘導のための追随モード(この段階が不要なものもあり)
→ミサイル誘導モード→終末期のミサイル誘導モード(この段階が不要なものもあり)

 この時,ミサイル誘導モード時のレーダーを照射,追随することを通常ロックオンと呼んでおり,多くの場合,ミサイル発射前にこの状態にしてから,ミサイルを発射します.
 このため,このミサイル誘導モード時のレーダー波パターンをRWRに設定しておけば,敵がミサイルを発射する前にロックオンされたことを知ることができます.

 ただし,ここで「設定しておけば」と書いたとおり,事前に電子戦の成果として敵が使用するレーダーのミサイル誘導モード時のレーダーパターンが判っていなければ,RWRを積んでいてもロックオンを感知することはできません.
 また,一部のミサイルでは,このミサイル誘導モードが存在せず,通常の誘導モードのままミサイルを発射し,ミサイルにはデータリンクでコマンドを送信して誘導するものもあります.
 この場合,データリンクのデジタルデータまで解析して警報を出すことは困難で,RWRには通常の追随モードのレーダーパターンをセットするしかないわけですが,単に追随されているだけなのか,ミサイルが発射される(された)状態なのか判断できないことになります.

 相手がアクティブレーダーホーミングミサイルを使用している場合は,もう少し複雑です.
 照射されるレーダー波は次のような段階を経ます.
(機上,地上レーダーによる)
 各種の捜索モード(発見まで)
→追随モード→ミサイル誘導のための追随モード(おそらくこの段階が不要なものが多い)(ミサイルシーカーによる)
→追随モード→終末期のミサイル誘導モード(この段階が不要なものもあり)

 ミサイルの発射は,機上または地上レーダーが追随モードかミサイル誘導のための追随モードになってからですが,通常この段階では,ミサイルシーカーによる追随は,まだ行われておりません.
 ミサイルの発射以後,しばらくはミサイルに対してデータリンクで誘導を行います.
 大抵の場合,セミアクティブミサイルのような,機上または地上レーダーによるミサイル誘導モードがないため, RWRには,機上または地上レーダーによる追随モードとミサイルシーカーによる追随モードをセットすることになります.
 警報は,強度の異なる2段階の警報を出すことになるわけですが,機上または地上レーダーによる追随モード時の警報は,単に追随されているだけなのか,ミサイルが発射される(された)状態なのか判断できません.
 ミサイルシーカーによる追随モード時の警報は,ミサイルがかなりの距離まで接近している状態のため,この段階からの回避は,困難な場合が多くなります.

 また,発射前にミサイルシーカーによる追随を行ってから発射する場合もありますが,当然ながらこの場合は距離が近く,回避は困難です.

 RWRを搭載していても,データリンクで誘導するセミアクティブ方式のミサイルや,アクティブ方式のミサイルの脅威を知ることはなかなか難しいと言えます.
 また,ジャミング波に向かって誘導するオンボードのパッシブ誘導機能を備えたミサイルの場合,自分からジャミング波を出していると,ミサイルが命中するその時までミサイル発射を感知できません.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 戦闘機のレーダーって相手がステルス機でもない限りは,空対空ミサイルの射程より長い距離で相手を探知出来るようですが,どうしてもっと射程の長い空対空ミサイルを作らないんでしょうか?

 【回答】
 つい最近まで,米の戦闘機レーダーの有効(ロックオン可能)範囲はAMRAAMの射程以下であり,AESAレーダー登場によって初めてAMRAAMの射程が活かせるようになりました.

 もちろん空対空ミサイルの射程延伸努力は各国で進められていますが,レーダーの能力はようやく追いついてきたところであり,射程延伸も射程そのものよりは終末期に燃料,運動量を残して機動性を上げ,敵機を逃がさないためというのが主なところです.

 しかし,AESAによるレーダー能力向上と同時に,ステルス化も進んでおり,母機レーダーのロックオン能力が空対空ミサイルの射程を超えることができるか,いつまでその状態を保てるかには疑問が残ります.

 ちなみに超長距離AAMは,あることはあります.
 ロシアの対AWACS用AAMとか,アメリカのAIM-54(退役)とか.
 長距離飛ぶ為には燃料をたくさん消費するので,ミサイル自体が大きく重くなります.
 その為ミサイルの機動性能は低下するので,戦闘機の様に高速で高い機動性能を持つ物には回避されてしまいます.
 上記のミサイルも比較的鈍重な大型機撃墜を目標とする想定で開発されました.
(大炸薬弾頭というのもあるけど)

 とはいえ,長距離AAMの研究開発はされてはいます.

>戦闘機のレーダーって相手がステルス機でもない限りは
>空対空ミサイルの射程より長い距離で相手を探知出来るようですが

 あんまりできません.
 ルックダウンで小型目標だとAMRAAMの射程と同程度.

軍事板


 【質問】
 「マクロスゼロ」を見ていてふと思ったのですが,劇中では一機の敵機を撃墜するのに5,6発のミサイルを撃っていますが,現実の戦闘機の戦闘ではミサイルは何発ぐらい撃つのでしょうか?

ヨッチ in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 【回答】
 ひとつの航空目標に1〜2発発射というのが,一般的な数値だと思います.

 複数のミサイルを投射する例としては……
 旧ソ連の中距離空対空ミサイルには,同系統のものでもレーダー誘導型と赤外線誘導型が存在します.(R-24やR-27など)
 目標に対し,レーダー誘導型,赤外線誘導型を一発ずつ(計二発)発射するという戦術があるためです.

 これは自衛隊の81短SAMも同様で,一回の射撃で画像誘導と電波誘導のミサイルを一発ずつ(計二発)撃つことになっています.

 フランスのシャヒネ対空ミサイルも同様だと思いました.

 SAMやMDの地対空ミサイルでも,一つの目標に対し二発のミサイルをつるべ撃ちするということが行われます.
 これは命中率80%のミサイルを二発撃てば,96%の撃破を狙えるという計算によります.

 近距離赤外線誘導ミサイルの場合は,少し間隔をあけて一発ずつ,計二発のミサイルを発射するという戦術が取られることがあったと思いました.
 うろ覚えですが,ベトナム戦争の空戦モノで読んだ覚えが.

極東の名無し三等兵 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」


 【質問】
 中距離AAMにおいてはレーダー誘導のものが主流ですが,これは母機のレーダーを使用するため,ミサイルが目標に到達するまで,機種を目標に向け続けなければならない,という認識でいいのでしょうか?
(終末誘導はミサイル側レーダーで行うものもある,という話を聞いた事もありますが)

 また,短距離AAMでレーダー誘導のものはないのでしょうか?

 【回答】
 セミアクティブレーダー誘導式(AIM-7など)はあなたの言うとおり,最後まで敵をレーダーで捕捉しなければならなりません

 今,主流なのはミサイルにレーダーを内蔵したアクティブ方式のものです.
 最初は母機から与えられた目標情報によって飛び,接近したら自分のレーダーで喰らいついていきます.
 ただしこれも安全な限り,母機からの目標情報のアップデートを行います.
 残り数キロまでの誘導は,実質的に必要です.
 発射後即離脱も可能ですが,それでは命中率を落とす可能性があります.
 それに,戦闘機の機首に搭載したレーダーを使う以上,その途中の段階でも機首を目標から大きく逸らすことはできませんが.

 もっと昔に行くと,ビームライダー方式なんてのも…

>短距離AAMでレーダー誘導

 初期のAIM-9にSARH(セミアクティブレーダーホーミング)式の型があります.
 IR-短AAMは,最近の短AAMには見かけなくなりましたが.
 まあでも短AAMなら,赤外線の方が即応性があって良いです.

 最近のミサイルは機動性も高いので,格闘戦でも使用できるとされています.
 だから態々,赤外線誘導が使える距離を想定としたミサイルに,レーダー誘導を使うものはなくなりました.

 ソ連空軍では目標へ異なる誘導方式のミサイルを撃つという戦法を取ってましたので,同じミサイルでレーダー誘導型と赤外線誘導型があるものがありました.

 また,フランスのMICAにはJ-bandアクティブレーダー誘導と赤外画像誘導の2種のタイプがありますが,ともに短距離AAMとしても中距離用としても使用できるよう設計されています.
 両タイプとも慣性誘導+中間アップデート+終末誘導で中距離用として,終末誘導のみで短距離用として使えます.

 補足.

 南アのR-DARTERもMICA EM同様,発射前にミサイルのアクティブレーダーシーカーを作動させて,ロックオン・ビフォーローンチで短距離AAMとして使用することもできるよう設計されています.
 慣性誘導を使用して,中距離用のロックオン・アフターローンチで使うこともできます.
 他の中距離ミサイルと違って,中間のデータリンク能力がありませんから,追随能力に劣る可能性はありますが,逆に言えば母機は撃ったらミサイルのことは忘れていいことになります.

 また,R-DARTERはサイドワインダーのように翼端にも搭載できるよう軽量化が図られており,データリンク能力はその部分で犠牲になったとも考えられます.
 もっとも,同程度の重量であるラファエルのDERBYやMICAはデータリンク能力を持っていますから,この部分はあまり関係ないかも.
 いずれにせよ,レーダー誘導を使って近距離と中距離兼用のAAMにするという流れは存在します.

軍事板,2007/09/27(木)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 何故,アムラームなどの指令+慣性誘導方式の空対空ミサイルの終末誘導は,パッシブホーミングではなく,アクティブレーダーホーミングである場合が多いのですか?

 【回答】
 比較的最近でもフランスのMICA-IRやロシアのR-27Tのように,中長距離対空ミサイルであってもIR誘導採用してる.
 AMRAAMがAR誘導なのはおそらくアクティブレーダーなら,Home On Jamモードで敵機をロックオンできるからではないだろうか.
 強力なジャミングの下でも,ARならミサイルが十分敵機に接近できたならECMをburn-throughでき,ミサイルのシーカーが敵機を捕捉することができる.
 IR誘導では仮にジャミング発信源にミサイルを発射したとしても,ミサイル自体にHOJモードも無い,ジャミングと母機のレーダー反射波を判別することもできない.
 中間誘導を行うにしても,母機からは敵機の正確な位置はわからないからね.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 アムラーム等のアクティブレーダー誘導のAAMを装備して装備してる戦闘機には,絶対に勝てないみたいな言い方をする人がいます.
 確かに彼我のその他の条件が互角ならその通りでしょうが,それ以前の早期警戒システムや要撃管制の能力では補えないものなんでしょうか?

 【回答】
 AMRAAMのような終末自己誘導が出来る長距離AAMを運用するには,長距離を捜索するレーダーがなくてはいかん.
 「多分大体この辺にいるだろ」でミサイル撃ち込む訳には行かないのだから.

 ということはつまり,AMRAAMを撃ってくる相手というのは,それが発射母機自分自身か随伴のAWACSか地上管制かは知らないが,遠距離の目標を捜索/発見/評定する能力がある,ということだ.
 だから,AMRAAMのようなアクティブレーダー誘導のAAMを装備している,という時点で既に高度な電子捜索能力を持っていると言うこと.

 そんな相手が”搭載しているミサイルだけ”,こちらより優れている,ということはまずない,
 というかそういう優位は成立してない.

 で,ミサイルの性能以外互角なら,ミサイルの性能が優位な方が有利である,というのは解るでしょう.
 仮に装備しているミサイル以外互角でも,AMRAAM装備してる部隊とサイドワインダー(例え赤外線以外も探知/照準でき,敵機の後ろにつかなくても発射できるオールアスペクト型だとしても)しか装備してない部隊が戦ったら,射程の差でやっぱり一方的な戦闘にしかならない,ということは.

 つまり,別にアクティブレーダー誘導のミサイルだから強いってわけじゃなく,終末誘導を備えた射程の長いミサイルだから手ごわいってだけ.
 むしろ,終末IRパッシブの視程外ミサイルの方が,ロックオンを感知できない分たちが悪いかもしれない.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ラムジェット推進のAAMと,ロケットモーター推進のAAMを比較した場合の,メリットとデメリットを教えてください.

 【回答】
ラムジェット推進のAAMのメリット
・同規模の後者に比べて推進時間が長い
・同規模の後者に比べて射程距離を長く取れる
・後者に比べて回避不能ゾーンが広い

ラムジェット推進のAAMのデメリット
・技術的敷居が後者よりも高い
・実用品の製造コストが後者よりも高い
・ラムジェットエンジンがある分,同規模の後者のミサイルと比べて大型化する
・後者よりも抵抗が大きくなる
・内装する場合,後者を想定したものよりも大き目のウエポンベイを用意する必要がある

ロケットモーター推進のAAMのメリット
・前者に比べて技術的敷居が低い
・実用品の製造コストが前者よりも安い
・前者よりも小さく作れる
・前者よりも抵抗が小さく作れる
・内装する場合,前者を想定したものよりも狭いウエポンベイにも納めることができる

ロケットモーター推進のAAMのデメリット
・同規模の前者に比べて推進時間が短い
・同規模の前者に比べて射程距離が短い
・前者に比べて回避不能ゾーンが狭い

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 先日「亡国のイージス」という小説を読んでいたのですが,作中,F-15が反乱を起こしたミサイル護衛艦に,対空ミサイルを四発発射しようとするシーンが出てきました.
 でも対空ミサイルって,対艦ミサイルよりも弾頭は小さいですよね?
 たとえ四発全弾命中したとしても,撃沈できるのでしょうか?
 というか,そもそも飛行物を撃墜するためのミサイルを,艦艇に向けて発射する事は可能なのでしょうか?

 【回答】
 ある程度接近して撃てば,ミサイルは撃墜されないかも知れません.
 しかし,母機が撃墜されるでしょう.

 ロックオン自体は,サイドワインダーのようなIR誘導ミサイルなら,船体の赤外輻射の大きいところに,ロックオンできる可能性はあります.
 しかし,プログラムされているジェットエンジンの排気に比べると,かなり低温ですから,ロックしない可能性があります.
 また,最近のミサイルは二波長センサーなどで賢くなっていますから,なおさらターゲットとして認識されない可能性があります.

 また,仮に全弾命中しても被害は軽微でしょう.
 撃沈は不可能といってよいと思います.

軍事板,2001/05/25(金)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 未だに,AIM-7シリーズ,AIM-9L/M,AAM-3などの古いミサイルが使われるのはどうしてですか?

 【回答】
 スパローやサイドワインダーは,新旧世代で外見は似てても中身はまったく異なってる.
 スパローは2世代,サイドワインダー3世代の異なるミサイルだ.
 これは中身は更新されても,弾体はそれほど更新の必要がなく,また旧世代と共通にしておいた方が何かと都合が良いから.
 そして普通 戦闘機を開発する場合,現用のミサイルの搭載は求められるし,逆に新たにミサイルを開発する場合も,現用機への搭載を求められる場合が多い.
 ゆえにこれらレガシーな兵装が生き残り続ける事になる.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 サイドワインダーって何?

 【回答】
 AIM-9 サイドワインダー Sidewinder は,Philco,GE,レイセオンによって1949年から開発開始された,短距離空対空ミサイル.
 AIM-9 サイドワインダー Sidewinder は,NOTS(Naval Ordnance Test Station)によって1949年から開発開始された短距離空対空ミサイル.
 特徴は,軽量,小型,撃ちっ放し可能なこととであり,構造は簡単で信頼性も高い(初期モデルは性能劣悪だったが)
 発射すると独特の蛇行した軌跡を描きながら飛行する様子と,赤外線を探知して攻撃することから,ヨコバイガラガラヘビにちなんでその名がついた.
 発射すると独特の蛇行した軌跡を描きながら飛行する様子と,赤外線を探知して攻撃することから,ヨコバイガラガラヘビにちなんでその名がついた,と言われているが,これは俗説らしい.

 【参考ページ】
http://www004.upp.so-net.ne.jp/weapon/sidewinder.htm
http://sky.geocities.jp/std_sk/manual/doc/06c.html
http://mmsdf.sakura.ne.jp/public/glossary/pukiwiki.php?AIM-9
http://www6.atwiki.jp/namacha/pages/187.html
http://popup.tok2.com/home2/akihiro1987/MAIN/FD/AIM9.html

【ぐんじさんぎょう】,2010/09/25 20:50
を加筆改修

 今回の記事,大いにダウト!がありますねえ.
〔指摘を受けて修正しました――編者〕

> AIM-9 サイドワインダー Sidewinder は,Philco,GE,レイセオンによって1949年から開発開始された,短距離空対空ミサイル.

 サイドワインダーは基本的にキャリフォーニア州のNOTS(Naval Ordnance Test Station)の計画として始まり,初期にはNOTS主導で開発されています.
 フィルコ(フォード)以下は生産と改良に関わったメーカーでしょう.

> 発射すると独特の蛇行した軌跡を描きながら飛行する様子と,赤外線を探知して攻撃することから,ヨコバイガラガラヘビにちなんでその名がついた.

 サイドワインダー(ヨコバイガラガラヘビ)の愛称は,NOTSの周辺にも多くいる毒蛇と言うことで,わりと安直に命名されたらしく,この蛇が赤外線で獲物を捕捉することはまったくの偶然,と開発に携わったNOTSの技術者が証言しています.

ROCKY in mixi,2010年09月21日 02:26

(画像掲示板より引用)


 【質問】
 サイドワインダーの後継って開発してないですか?
 スパロー→アムラームみたいなモデルチェンジとか.

 【回答】
 冷戦末期にサイドワインダーとスパローの後継開発を,NATO諸国間で分担してやろうって話があった.
 スパローの後継がアメリカ,サイドワインダーの後継がイギリスと西ドイツと言った感じに.
 ところが,ベルリンの壁が崩壊して,AA-11「アーチャー」に関しての技術的情報がもたらされると,ドイツがその要素も含めて再設計しようとか言い出して,揉めたのが原因でプロジェクトが遅延.

 そしてドイツはIRIS-Tの開発を選びプロジェクトから手を引き,アメリカもさっさとサイドワインダーの新型を開発する事に.
 サイドワインダー最新型の9Xは,ほぼ新規設計なので後継と言える.

 残ったイギリスが開発したのがASRAAM.

 国際間開発はいつも大変って典型例.

軍事板,2007/10/06(土)
青文字:加筆改修部分


◆◆◆◆◆フェニックス・ミサイル


 【質問】
 「フェニックス」ミサイルって射程100キロですよね?
 こんなのがマジで当たるんですか?
 自分には信じられません.

 【回答】
 AIM-54 Phenixは,実戦での発射回数の少なさとその際の命中率の低さから,当たらないミサイルとされていたりもします.
 ただし,テスト段階では高い命中率を出しているようです.
 なお,射程は100kmではなく100nauticalmiles,184kmと言われています.

 このミサイルが開発されるときに想定えていた使われ方は,
「艦隊防空で,空母機動部隊を目掛けて押し寄せてくるソヴィエトの大型爆撃機とその巡航ミサイルを,できれば発射前に要撃して撃墜する」でした.
 艦上空中早期警戒機と組んで,脅威方向に進出して対処することで,空母にミサイル飽和攻撃が降り注ぐのを防ぐのです.

 また,
http://experts.about.com/e/a/ai/AIM-54_Phoenix.htm
によると,イランのF-14がイランイラク戦争中フェニックスミサイルを用いて撃墜した例が25件という説があるが,これに反対する説もあるとのこと.

 訓練では,ドローン相手に最長140km 平均交戦距離20kmから70km 最短 7.5kmで命中を記録しているそうです.

軍事板,2005/12/30(金)
青文字:加筆改修部分

 原書房の『F-14』によると,この140kmという記録は,ミサイルが命中した時の目標とF-14との距離.
 この時の記録は,目標とF-14との距離が204kmの地点で発射され,134km地点で命中を記録している.

軍事板,2005/12/30(金)
青文字:加筆改修部分

 F-14最大の売りは,AN/AWG-9火器管制装置で120〜315kmの遠距離から目標を捜索し,24個の目標を捕捉して,AIM-54フェニックス・ミサイルで6個の目標を同時に撃破可能と言う事で,エアワールド1996年7月号〜9月号の記事に拠るとフェニックスは,1972年4月28日から各種の実射テストが実施されました.
 1973年4月にバックファイアを模しマッハ1.5で飛行するBQM-34Eに対し,245kmの距離で目標を捕捉し204kmに接近した時,一発のフェニックスを発射し,発射地点から133km離れた地点で目標を撃破しました.
 1973年11月21日に,最大6目標を同時攻撃可能を実証する為のテストが実施されました.
 仮想敵機はQT-33が3機,BQM-34Aが2機,BQM-34Eが1機の計6機F-14Aの火器管制装置AN/AWG-9が90kmから目標追跡を開始,最も近い目標が50kmに接近した時に最初のフェニックスを発射,続き残り5目標に対し5発のフェニックスを発射,計6発の発射に要した時間は38秒です.
 1発は故障しましたが,残った5発は正常に作動し4目標を撃破しました.

 フェニックスはテストでは,確かに高い命中率を示しました.しかしフェニックス最初の実戦参加,1999年1月6日にカール・ビンソン所属のVF-213がイラクのMiG-25に向けて発射した2発のAIM-54フェニックスは外れ,1999年9月にVF-2がイラクのMiG-23に向け発射した1発のAIM-54フェニックスも外れました.
 余り高機動性とは思えない目標で外すのは情け無いですが,この2件だけでフェニックスが役立たずとは言い切れません.
 有利な条件なら当たりますが,実戦では色々な要因が絡むので,カタログ通りになるとは限らないと言う事でしょうか.
 AIM-54フェニックスが有るから米空母に喧嘩を売るのは,リスクが有ると敵側に思わせたので,少なくとも冷戦期には抑止の効果が有りました.

 なお,AIM-54フェニックス空対空ミサイルは「イラクの自由作戦」の翌年,2004年9月30日で運用停止しました.
 この戦争がF-14最後の実戦参加でしたが,空中戦自体無かったようです.

 私がネタにした資料は2002年に刊行された"INTERNATIONAL AIR POWER REVIEW Volume 3" です.
 月刊「丸」2006年6月号の特集が「F-14時代 グラマン戦闘機」ですが,同誌の記事は恐らくオスプレイ社の本を参考にしているのでしょう.

赤とんぼワークス in mixi支隊

 オスプレイの本によるとどちらのフェニックス発射もドラッグ機動でかわされております.
 同じくオスプレイの本の記述を信じるのであるならば,イラクのロシア製戦闘機はF−14のレーダー波を感知するRWRを積んでいるので,AWG−9のレーダー波を探知すると回避を行うそうです.
 問題は,この「くそったれの」オスプレイの本をどこまで信頼するかですが…….

in mixi支隊

フェニックス・ミサイル
(画像掲示板より引用)


 【質問】
 やたら射程の長いフェニックスミサイルは,実戦で敵機を撃墜した事が有ったのですか?

 【大本営発表】
 あった.
 ネット上で見つけた物の転載だけど,イランによるフェニックスの記録.
 以下コピペ.

 公式総撃墜数は59機.
 うち2つの記録で1発のフェニックスが2機の敵機を撃墜しています.
 内訳は
MiG−21が8機,
MiG−23が17機,
MiG−25が10機,
MiG−27が2機,
ミラージュF1が9機,
Su−20/22が4機,
Tu−22が5機,
B6Dが1機,
C601(シルクワーム)が1機,
機種不明が2機.

軍事板

 【推定事実】
 おそらくゼロ.イラン・イラク戦争では実戦使用されていないと考えられている.

 情報筋の大部分は,実際には「フェニックス」が戦闘で使用されなかったという意見に達している.
 文書上,イラクのMirage F.1EQ×2機とMiG-21×1機の計3機の「トムキャット」によるイラク機撃墜の事実が確認されている.
http://arab.fc2web.com/iran/iiaf/f-14.htm

 ちなみに,イランのF-14の損失は計12機,この内,イラク空軍機に撃墜されたのは3機.
 内訳は,ミラージュF-1EQに墜とされたのが2機,MIG-21に墜とされたのが1機.

 つまり,空中戦におけるキル・レシオ(撃墜比率)は,1:1というわけだ.
 mixiのF-14トムキャットのコミュニティじゃ,
「他の手段も含め,総計168機も撃墜し,キル・レシオは56:1!」
などと寝言をほざいているが(爆笑)
 そんなに撃墜したら,イラク空軍全滅してるって(笑)

 だいたい,パーツ不足で保有機79機の内,良くてせいぜい20機かそこらしか稼動させられなかったのに,こんなに撃墜できるわけないじゃん(笑).「エリア88」じゃあるまいし.
 イラン空軍のF-14Aパイロットは,全員ミッキー・サイモンや風間真やサキ・ヴァシュタール並みの超スゴ腕だったんだろうか・・・?(笑)

シア・クァンファ in mixi

 ちなみに,2004年3月をもってフェニックスは米海軍から退役したとのこと.
 従ってイランで武器密輸はあったにせよ,経済制裁下で生き延びていない限り,今後使われるのは期待できないのかもしれません.

軍事板

 ただし,イライラ戦争開戦初期の1〜2年間の間は,稼動機が10数機に落ち込んでいながらもイランのペルシャ猫が活躍したという話も有り,その中にはAIM-54Aフェニックスミサイルによる撃墜も伝えられています.
 これはアメリカの支援が打ち切られて間もなかった事から,まだ多少のペルシャ猫及びフェニックスが完全に能力を発揮できる状況にあったこと,さらにベテラン・パイロットが残っていた事が理由らしいです.
 それでも可動機数は10数機程度しかなかったようですが.

 しかし,戦争が長引くにつれ,イラク空軍が空対空戦闘に習熟したりするなどして,F-14が撃墜される例も増えていったみたいです.

 以下に,記事中に載っていた戦績を

○1980年12月1日 F-14A 2機編隊が機種不明ながらイラク空軍戦闘機3機を撃墜
○1980年12月2日 F-14A(イラン側地上管制あり)が,
             Su-22 2機,Mig-21 2機の編隊に対しAIM-54Aフェニックスで攻撃
             Mig-21 1機を撃墜.
○1981年1月8日  F-14A 1機がMig-23MB 4機編隊を距離40kmからフェニックスを発射.
             リーダー機,2番機を同時撃墜.3番機も不確実ながら撃墜と推定.
             タイトな編隊を組んでいたのが原因とされる.
○1981年1月29日 F-14A 2機がフェニックスミサイルによりSu-22を撃墜
○1982年末     F-14AがMig-25RをAIM-9Pにより撃墜

 ここから被撃墜が(少なくとも表に)出始める

○1982年3月          F-4E編隊に随伴中のF-14A 1機がMig-21(イラク側地上管制あり)に
                  撃墜される.
○1982年11月21日〜22日 イラク空軍のミラージュFIEQがF-14Aを2機撃墜したと発表.
                  イラン側は当日の損失機はないと発表.
○1983年11月21日      イラク空軍のMig-21 4機がF-14A 2機を後下方から襲い2機とも撃墜.
○1984年8月11日       イラク空軍のミラージュFIEQがF-14A編隊の3機を撃墜したと発表.
                  実際は被撃墜数はイラン側によると1機のみか?

 これによれば,少なくとも4〜5機をフェニックス・ミサイルで撃墜していることになります.

 ただ,やはり情報源が情報源ですし,どこまで信用できるかは意見が分かれると思います.
 戦績も,大本営では(有利だったろう)初期の3ヶ月だけでペルシャ猫で40機以上撃墜とかのたまってますが,実際は半分いってねぇだろうなみたいな.
 それに時間が経つに連れてどんどん猫が不利になってったでしょうし.

 結局のところ,フェニックスによる迎撃例があるのか,無いのかは,最終的には数ある情報の中から自分で判断するしかないと思います.

出典 航空ファン2006年12月号 「パーレビのトムキャット配備から現状まで」 文:松崎豊一

○イラン・イラク戦争とトム

 新生IRIAF(イラン空軍)のトムキャットが苦境にあえいでいた1980年9月22日未明,多数のイラク空軍機がイラン空軍基地10ヶ所とレーダーサイトなどを突如として空襲し,地上では数個機甲師団がイラン領内への侵攻を開始した.
 以後8年にも及ぶイラン・イラク戦争の始まりである.

 この戦争は1979年にイラクの実験を握ったサダム・フセイン大統領が,革命によりイランの軍事力が低下した時期を狙い,長年の両国紛争の種であった,要衝シャトル・アラブ川河口の占領を目指したもので,スンニ派であるフセインによるシーア派(イラク国民も65%がシーア派だが)に対する敵対意識の表れでもあり,歴史的に見ればペルシャ対アラブの対立の構図の延長ともいえるものだった.

 この戦争は地上戦が主であり,それに比べれば航空戦は小規模なものに終始し,そのなかでも双方とも対地攻撃作戦がもっとも優先された.
 航空戦力全般で見れば,イラン側が乗員,パーツ不足でつねに戦力不十分だったのに対し,イランによるイスラム革命の輸出を恐れた欧米各国,それにソ連までもがフセインに肩入れしたこともあって,イラク側優勢のうちに推移したが,こと初期の空対空戦闘に関してはF-14Aの存在のおかげでイラン側が優勢だったと伝えられている.

 西側の推測によれば,開戦時のイランF-14A稼動機数は10数機に落ち込んでいたと言われているが,数が少ないわりには善戦したという感が強い.
 トムが勝利した空戦の様相はイラン側から流されたものであり真偽の程は不明だが,ともかく空戦に関してはイラク側が戦闘に習熟するまでの間,トムキャットはかなりの強さを発揮したようである.

 開戦直後の1980年12月1日,シャトル・アラブ川河口に近いアバダン上空で,第82戦術戦闘飛行隊所属のF-14Aの2機編隊は機種不明ながらイラク空軍戦闘機3機を撃墜.
 翌2日にもペルシャ湾内の石油基地カーグ島の上空約10,000mで警戒任務に就いていたF-14Aが,北方から接近中の複数のイラク機をイラン側GCI(地上管制基地)の指示によりインターセプト,相手はSu-22 2機と,その後上方に位置する護衛のMig-21 2機と確認,RIO(レーダー迎撃士官)はレーダーが捉えた2機のMig-21に向けてAIM-54Aフェニックスを発射し,うち1機を撃墜,僚機のMig-21は急速に旋回すると一目散に逃走し,Su-22も爆弾を投棄して早々と退散していった.

 年が明けて1月8日,シャトル・アラブ側上空をCAP中のF-14A 1機が,国境を越えようとするMig-23MB 4機編隊を迎撃,距離40kmからリーダー機に向けてフェニックスミサイルを発射した.
 ミサイルはリーダー機を直撃して大爆発を起こし,2番機を巻き込んで墜落,3番機も螺旋降下していったことから不確実ながら撃墜と推定された.
 AIM-54Aの弾頭は,もともと大型爆撃機を1発で破壊できるよう60kgも炸薬が詰め込まれていて,AAMのなかでも最大級であり,タイトな編隊を組んでいたMig-23MBは不運だったと言えよう.

 同じ1981年1月29日,ペルシャ湾上空をCAP中のF-14A 2機が,低空をイラン西岸ブシャールに向けて高速飛行する敵機をGCIからの通報により発見,距離50kmでF-14Aのリーダー機がフェニックスを発射,過たずSu-22の胴体を直撃するのをRIOが確認した.
 その間にトムのレーダーをかいくぐって必死に逃走し,イラク領に逃げ込む事に成功した

 1982年末にはF-14AがMig-25Rフォックスバットを撃墜したというニュースも伝えられたが,このときはよほど接近戦になったとみえてAIM-9Pサイドワインダーが使われたとされる.

 しかし1982年ごろになると,イラク空軍もようやく空対空戦闘に習熟したパイロットが多くなり,F-14Aにも被害が出始めることになった.
 1982年3月,イラク北部キルクーク爆撃に向かったF-4E編隊に随伴してエスコート任務に就いていたF-14AにMig-21が襲い掛かり,ソ連製アトールAAMにより1機が撃墜された.
 敵地上空では相手側がGCIの指示を受けられるという強みがあり,さすがのトムキャットもしてやられたというべきであろうか.

 1982年11月21日から22日にかけての戦闘では,ブシャール上空でイラク空軍のミラージュFIEQがF-14Aと交戦,
 イラク側はF-14A 2機の撃墜を報じたがイラン側は当日の損失機はないと発表している.

 1年後の1983年11月21日,これもイラク側GCIに誘導されたと見られるMig-21 4機が,国境付近をCAP中のF-14A 2機を後下方から襲い,仏製マトラR550マジックAAMと機関砲により2機とも撃墜した.
 また,1984年8月11日にはやはりミラージュFIEQが,国境付近をCAP中のF-14A編隊に対し同じく仏製マトラR530を最大射程(約20km)から発射,イラク国営放送は3機撃墜を大々的に報じた.
 だが,このときの被撃墜数はイラン側によると1機のみとされている.

 8年間のイラン・イラク戦争を通じて,イラク空軍が報じたイラン機撃墜数は10機に満たない数である.
 これに対し,イラン側は開戦から81年1月までの3ヶ月間だけでF-14Aによるイラク機撃墜を40機と発表している.
 世の中に空戦の戦果発表ほど信頼できないものはないといってよいが,この場合も実際の撃墜数は半数に満たなかったものと思ってよいだろう.
 それでもF-14Aの優勢は明らかであり,このことはアメリカの支援が打ち切られて間もないことだったことから,少ないながらまだ能力を100%発揮できる機体とフェニックスが残っていた事,そしてこれもごく少数だが米国式教育を受けたベテランで,ホメイニ師に忠誠を誓ったクルーがIRIAFにいたことを示すものだろう.

 またAWG-9の高性能に着目したイランは,数機のF-14Aにいくらかの改造を加え,3〜4機で飛ばすことにより,進入してくる敵機の探知,味方機への管制,SAMサイトの情報送信など,ミニAWACSとしても使用したとされる.

 1981年1月以降,IRIAFのF-14Aの活動がいくらか減少したが,これは国防会議議長を兼務する当時のバニサドル大統領(後に失脚)が,残ったF-14Aを米国に買い戻させよう,水面下で交渉を行ったせいだというまことしやかな説も流れた.
 そしてこれも推測の域を出ないが,ソ連に1機または複数機のF-14AとAIM-54Aを,ソ連製兵器とのバーターで引き渡したという説もある.

 1983年に入るとイランは国内に保管されているパーツ類をデータ化し,効率的に使用できるシステムを作り上げたとされえており,それにおそらく闇の武器商人ルートによりある程度のパーツが入手可能となったこと,乗員訓練もようやく独自の方法を確立できたことなどもあってF-14Aの可動機数が増加したと推定されている.
 そのことが内外に示されたのが,1985年2月11日のことで,テヘラン上空を25機以上のF-14A編隊がフライパスして見せたのであった.

 この後イライラ戦争後の事も書いてあるけど省略.

オッポレ in FAQ BBS

 【質問】
 フェニックス関連項目でシア・クァンファ氏が上げているサイトは,同じ更新日付で
「イラン・イラク戦争が1980年に始まったとき,80km以上の射程から6目標を同時に識別及び撃破できるフェニックス・ミサイルを装備したイランのF-14は,イラク空軍に大損害を与え,その機体のヨルダン及びオマーンへの分散を強制した.F-14とF-4の能力は,ボーイング707空中給油機飛行隊の早期調達により向上され,空中給油によりその戦闘行動半径を2,500kmまで拡大した.」

http://arab.fc2web.com/iran/iiaf/iriaf.htm

と言う記述をしているので,フェニックスによる撃墜がゼロというのは疑問があるのでは無いでしょうか?
 【回答】
 それは知っていたけど,どう見ても,「フェニックスは使用不能」という方が客観的にも説得力が有ると思われるのでそちらの説を採ったまでのコトですが.

 その質問をされた方は,トムキャットとフェニックスAAMは,アニメの主役メカのように,交換パーツも無く,メンテナンスもロクに行わずとも,敵機をバタバタと撃墜できるとでも思っているんですかね?(笑)

 追伸.
 件のサイト(対外情報調査部)の管理人・元諜報員さんは私も多少は付き合いのあった方ですが,基本的に彼は,海外の色んな情報をそのまんま翻訳しているので,時には,御指摘のように矛盾が生じる事も有ります.
 以前にも,中国空軍関連情報で矛盾を感じた事が有ったので
「それはジョークで書いているのか?」
と突っ込みを入れたら,
「矛盾を生じても構わない.情報とはそういうものだ.
それとも君(つまり私)は,"辻褄を合わせるために" "情報操作"しろとでも言うのか?」
などと返されたものでした.

シア・クァンファ in message, mixi


 【質問】
 AIM-54フェニックスが(F14退役とともに)退役したのはなぜ?
 AAMの射程は長ければ長いほど有利だと思うんだけど・・・.
スパローの後継にAMRAAM,サイドワインダーの後継にサイドワインダー2000があるのと比較して,後継もなしで廃止されるフェニックスに哀愁を感じます.

 【回答】
 乱暴に言えば,そのままで運用できる機体で残ってるのがF-14だけだだったから.
 ほかの戦闘機に乗せようにも,FCSを改修して動作を検証するにはすげえ金がかかる.
 本当に必要なら何とかしたかもしれないが,大型爆撃機の群れが大事な空母をねらって飛んでくる,ってシチュエーションが今日明日に実現する蓋然性は低い.

 確かにAAMの射程は長ければ長いほど有利なんだけど,長射程の兵装は当然遠方の目標を補足/追尾/照準するための高度な火器管制システムが必要になる.
 そうなると,例え電子技術が進歩したとはいえ,当然大きく複雑な機体になっちゃうわけで,そうまでしてまで狙わなければいけない目標がなくなってしまったから.

 そもそもAIM-54は,空母を含む任務部隊をねらって飛来する,対艦ミサイルを抱いた大型爆撃機を,できれば対艦ミサイルを撃つまでに迎撃したい,最悪対艦ミサイルを艦隊防空の外郭で撃墜したい,というコンセプトが元にあるAAMだ.
 すなわち,フェニックスの目標とすべきは,空母を狙ってくるソビエトの長距離爆撃機と,それから発射される大型対艦ミサイル(かなりの確率で核弾頭付き)だった.
 AIM-54とAWG-9とF-14という組み合わせのシステムで,空母機動部隊に対する対艦ミサイル飽和攻撃を防御しようと構想されていた.
 言わばイージス・システムの先駆的な,艦隊の傘を構成する防空システムの一部分.
 ところが,想定していた対艦ミサイル飽和攻撃というシチュエーション自体,ソ連崩壊であまり現実性のある話ではなくなってしまったし
 イージス艦の就役その他でそういった状況に対応できる見込みがついてしまった.イージス・システムを搭載した防空艦が整備された今となっては,航空機にそのようなミサイル・システムを搭載する必要性が薄い.
 そして,フェニックスがそうであったように,長射程の対空ミサイル(必然的に大型になる)は,機動性が低いので高度な回避機動ができる目標を狙うには苦しくなる.
 つまりは普通の戦闘機相手には使い辛いわけ.
 なので後継の必要性を感じてもらえなかった.
 そもそもコストが高いし‥

 ロシアでは早期警戒管制機を狙うために長射程大型対空ミサイルを研究/開発しているけれど,アメリカにはそういった目的用途も乏しく(常に早期警戒管制機が戦闘機部隊をバックアップしているような軍隊はアメリカくらいだ),後継を開発する動機がアメリカにはない.

 要するに,システムが高価で大掛かりな割に柔軟性が低く,使用が想定される状況が出来する確率が低下した上に,且つそれの機能を代替し得るシステムが出現した為.

 個人的見解では,今後,長距離での対空目標の迎撃が必要なら,AIM-54そのものではなく,AIM-54の経験とAMRAAMの運用実績&シーカー技術を元に,ラムジェットAAMが開発されるのではないかと思うが‥

軍事板,2006/04/02(日)
青文字:加筆改修部分

空母にて運用中のフェニックス・ミサイル
(画像掲示板より引用)



 【質問】
 防空艦が整備された事が理由では無いと思うが?
 イージスの防空エリアはあくまで「中距離防空/艦隊防空」であり,F-14&E-2Cが行うような長距離防空では無い.
 数100km単位で防空範囲が違うのでは?
 【回答】
 アメリカがF-14とAIM-54(と,E-2C)による長距離防空システムを構築したのは,タータ−/スタンダードの単装かスタンダードの連装発射機,それとテリアくらいしかない当時の艦載防空システムでは,同時多方向飽和ミサイル攻撃には対応できないと考えたからでしょう.
 どれも一度に発射できる数にも誘導できる数にも制限があるし,そもそも装備してる艦が少ない.

 初期の,連装発射機2基しか装備していないイージス艦が一個空母機動部隊に1,2隻いるだけ,という状態から,機動部隊の護衛任務艦がほぼ全てイージスシステムを搭載したVLS装備艦になった現在では,
「とにかく艦隊から離れたところで,できれば発射する前に落とす」
という戦術を取る必要性が薄い.

 艦隊に対する脅威はいち早く発見する必要があるから,水平線越えの監視ができる早期警戒機は今でも必要だけど,「とにかくできるだけ離れたところで」脅威を破壊する装備の必要性は薄い.
 勿論できればできた事はないんだろうけど,その為だけに長距離AAMとその発射母機を運用する必然性は薄くなった,ということかと.

 【質問】
 AAMフェニックスの運用が,F-14に限られたのはなぜですか?
 他の機種で運用する価値はなかったのでしょうか?

 【回答】
 発注主である米海軍が,空母機動部隊を守る戦闘機を考えたときに,ソビエトがアメリカ空母を相手にすべく開発した大型対艦巡航ミサイルと,その発射母機を阻止したいな,相手も長射程だから遠くで撃ち落としたいな,という注文を付けた.

 その答えが搭載ミサイルとしてのフェニックス.
 元々フェニックスは,F-108(その後YF-12)に搭載する長距離AAM:AIM-47として開発が始まった.
 その後 海軍のF6Dミサイリアー計画の2段式長距離AAMイーグルとそのFCSの流れもくみ,AWG-9とフェニックス・ミサイルシステムとして完成,F-111Bに搭載される予定だったが F-111B自体がキャンセル.
 その後継としてF-14が開発され,AGW-9とフェニックスも引き継がれた.

 F-111をファントムみたいな共通戦闘機にしようとしたときに,艦隊防空戦闘機としてF-111Bが試作されたが重量過大で,米海軍は「使いたくない」と,F-111の開発で入手した要素技術である火器管制装置AWG-9と,搭載ミサイルフェニックスと,低燃費ターボファンエンジンTF30,そして加速性能と哨戒時の巡航性能を両立させるVG翼を流用して,グラマンに「もちっまともな機体にしてくれ」と作り直させたのがF-14.

 守る対象が空母機動部隊という極めつけのHVUだから,開発費も製造単価もみみっちいことは言うな,という代物.
 それを搭載する戦闘機であるF-14だって,アメリカの大型正規空母でなければ運用できない特大サイズ.

 上記の運用要求にしたがって開発製造されたため,撃ち込む標的,あるいは守るべき対象が「米海軍が考えたのと同じくらいに高価」でないと,フェニックスは割が合わない値段のミサイルになってしまった.
 なんで米海軍以外は飛行機マニアが国王をやった上に,倒産しかかった製造会社のグラマンに国営銀行から融資までさせたイランくらいしか買うところがなかった.

 その後ADCのF-106後継にフェニックス搭載F-15が提案されたことが有るが,コスト面などから紆余曲折の後 結局F-16ADFが採用された.
 だから,運用しようとした機種は結構有るが,実現したのはF-14だけとなった.

軍事板
青文字:加筆改修部分


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