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東亜FAQ目次


 【質問】
 2007年2月13日の6カ国協議合意で,なぜアメリカは北韓に対して譲歩したのか?

 【回答】
 民主党が対話による北韓核問題の解決を強く促している中,イラクへの米軍の増派問題等で民主党を懐柔するため,ブッシュ政権は北韓核問題では民主党の顔を立てようとしたのだろうと推察される.

 詳しくは,太田述正コラム#1659(2007.2.14)を参照されたし……,あ,このコラム,有料化したんだっけ.

 なお,同コラム#1662(2007.2.16)によれば,

http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2007/02/16/20070216000030.html
(2月16日アクセス)
を根拠として,
「今回の米国の対北朝鮮政策の転換は,ブッシュ,ライス,ヒルの3人を軸とする極めて限られた人々だけによってトップダウンで企画し,推進されたよう」
だという.


 【質問】
 2007年2月の6カ国協議で,なぜ北韓は重油に固執したのか?

 【回答】
 北韓のエネルギー事情が切迫しているため.

 北韓では,発電所の劣化が進行し,全電力施設はチューインガムと針金で応急修理がされているという有様.
 発電所では石油の代わりにタイヤを燃やしてみたこともあるとか.
 北韓の主要エネルギー源は石炭(依存度82%)だが,石炭の採掘も発電所への輸送もままならない状況.
 それらのために,北朝鮮の発電能力は本来7,800メガワットあるのに,稼働可能な発電能力は2,000メガワットしかない.
(以上,
http://www.ft.com/cms/s/ed5e3948-bad1-11db-bbf3-0000779e2340.html,2月13日アクセス
による)

 詳しくは,太田述正コラム#1659(2007.2.14)を参照されたし.有料だけど.


 【質問】
 2007年2月13日の6カ国協議合意への評価は?

 【回答】
 例えば,ボルトン前米国連大使は酷評している.
「この取引は過去6年にわたって大統領が追求してきた政策の基本的諸前提と矛盾している.
 また,米政権が強く見えなければならない時だというのに,これでは弱く見えてしまう」
等々.
ロサンゼルス・タイムズ,2月13日アクセス)

 詳しくは,太田述正コラム#1659(2007.2.14)を.

 また,レーガナイト(いわゆるネオコン)のエイブラムス(Elliott Abrams)米安全保障副補佐官が,合意内容を批判するEメールを政府のアジア政策や大量破壊兵器拡散防止政策の担当者達にばらまき,それがリークされている.
 彼によれば,リビアとの件では,リビアがテロ支援を止めたことが確認されてからテロ国家指定等を解除・終了させたことを考えると,北朝鮮に対してテロ国家指定解除や敵国通商法の適用を終了するプログラムを開始するのは甘すぎる,という.
(以上,ワシントン・ポスト(2月16日アクセス)による.)

 詳しくは太田述正コラム#1662(2007.2.16)を.


 【質問】
 2007年2月13日の6カ国協議合意を北韓は守るだろうか?

 【回答】
 まず守らない.

 今回の結果がKEDOの再来になるのは目に見えています.
 北鮮は近い将来,必ず再度核実験します.
 これまでと同じことが,これからも繰り返されることになることでしょう.

おきらく軍事研究会,平成19年(2007年)2月14日

 既に同意当日には意図的曲解を始めている.
 2007/2/13の朝鮮中央通信は,
「北朝鮮が核施設の稼働を『臨時中止』する見返りに,各国が重油100万トン分に当たる経済・エネルギー
支援を提供することになった」
などと報じている.
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070214AT2M1304I13022007.html,2月14日アクセス)

 詳しくは,太田述正コラム#1662(2007.2.16)を参照されたし.
「週刊オブイェクト」:「●軍事評論家」
の,太田述正に関するエントリを見ても分かるように,自己検証能力欠如という点において,太田個人の信頼性には問題があるようだが,これは元ソースが明確であり,その限りにおいては一定の信頼性があると思われる.

▼ その後の状況だが,当然のことのように北韓は約束を破り続けている.
 例えば以下は,
2月13日の6者会合合意事項の約束について,北韓が実施の締め切りを守らず,BDA問題で延々と交渉を続け,アメリカ(国務省)の譲歩を勝ち取っていることを批判しているもの.

Pyongyang thrives on America’s constant concessions
(北韓はアメリカの継続的な譲歩を獲得しているのだが)
By Michael Green
Published: May 17 2007 19:52


 これによれば,2006年の北韓のミサイル試射や原爆実験への国連安保理決議――中国ロシアを含めた全会一致の制裁決議――での国際社会のまとまり方に比べて,2007年現在のアメリカの対北韓政策は上手くない,という.

 グリーンは,北韓のBDAの$25Mの返還支援について,最初から蹴るべきであったと書いている.

――――――
North Korean demands that the US first arrange for the return of $25m in cash frozen in the Macao-based Banco Delta Asia, which the US Treasury department had sanctioned because it was handling money laundered by Pyongyang from counterfeiting, drug trafficking and other illegal activities.

Washington should have said no to that demand. Instead, in early March the decision was made to deposit the North Korean cash in the Bank of China where it could be returned in phases to the North for “humanitarian” purposes.
――――――

 こういうところで譲歩するところから話がおかしくなって,北韓との無原則再交渉にもつれ込み,譲歩を続けることになる.

 北韓との交渉で,合理性の原則を崩すことや,不必要な譲歩は最悪であり,北韓との交渉をまともに成功させるためには強い圧力の存在が必要である.
 北韓は圧力をかけられた状況下での交渉はしない,と言うのだが,現実には圧力が無ければ彼等は交渉に応じようとしない.

The February agreement can work, but only if the US and the other parties begin implementing the sanctions passed in October to demonstrate the consequences of non-compliance.

  2月13日合意での核廃棄プロセスは,上手くゆくとすれば,それが上手くゆく唯一の可能性は,5ヶ国が,国連安保理決議に決められた北韓への制裁を実施して,北韓に核廃棄交渉に応じない場合の成り行きを理解させることが出来る場合である.

 外交交渉を成功させるためには,外交官にフル・ツールキットを与えなくてはいけない.
The North does not want to abandon its nuclear weapons and diplomacy will never be easy, but we should make sure our diplomats have a full tool kit to get the job done.
――――――

ニュース極東板,2007/05/18(金)〜05/19(土)

 そしてとうとう,第2回核実験にまで事態が悪化しているのは,周知の通り.

▼ また,北京合意後も北韓は核兵器開発を続けていたとする報道も出ている.
 以下引用.

――――――
北韓,北京合意以降にも核弾頭の設計図入手か
2007.6.16,朝鮮日報


 米ワシントン・タイムズは15日,米情報機関などの話を引用し,
「北韓がミサイルに搭載可能な小型核弾頭の設計資料を入手したものと見られる」
と報じた.
 同紙は
「米情報当局の官僚らは,パキスタンの核兵器を開発したA・Q・カーン博士のチームから核開発装備を受け取った北韓が,小型核弾頭を製造する設計資料を中国から入手したものと考えている」
と報じた.
 なお,中国語で書かれた核弾頭の設計資料は,2003年に核開発の放棄を宣言したリビアで初めて発見された.

 また,ブッシュ政権のある高級官僚は,同紙に
「(6カ国協議北京合意以降に)北韓が核物質を兵器化し小型化するなど,核開発プログラムを中断したと見られる兆候はない.
 北韓は,非核化を約束した北京合意にもかかわらず,核開発を推進し続けている」
と話したという.
――――――

 この報道の真偽については続報待ちだが,2009.5.25の第2回核実験など見る限り,北京合意を北韓が遵守する気など最初から無かった可能性が高い.▲


 【質問】
 2007年2月の6カ国協議において,日本の戦略は評価できるものだったの?

 【回答】
 「北鮮支援にわが国は参加しない」「拉致解決の場を六者協議内に設ける」という線を守り抜いた,ブレのない安倍首相の外交政策を確認できて頼もしい限りです.意義ある成果でしたね.

 安倍首相の決断は,歴史的にみても非常に大きいと思います.
 2007年2月13日は,わが国戦後の大きな転換点になるかもしれません.


■2002年9月17日・・・

 おき軍事は,2002年9月17日の日朝首脳会談で金正日がわが国民の拉致(連れ去り・誘拐)を認めた瞬間から,わが国と北鮮は戦時下にあると考えています.
 ですので,わが国にとっての六者協議の意義は,この日を境に,「米の随行員」から「拉致問題解決」へと根本的に変化したとみています.

 〔略〕

 思うのですが,わが国家主権を侵害し戦時下にある国と核問題の話し合いをして,わが国に一体何の益があるのでしょうか? 話し合いをしたら相手が核武装を捨てるとでも思っているのでしょうか?(笑)

 よしんば話し合いをするにしても,すべての前提は拉致問題の完全解決ですよね.

 北鮮と核に関する話し合いをする時間があるのなら,核シェルターを全国民が利用できるようにするための具体策を,早急に検討することに割いたほうがいいのではないのでしょうか?

おきらく軍事研究会,平成19年(2007年)2月14日


 【質問】
 BDAに対するアメリカの「制裁解除」は,北韓に対する米国の譲歩なのか?

 【回答】
 太田述正によれば,そうではなく,逆に,猫がネズミをいたぶるように米国が北朝鮮をいたぶっているとしか思えない内容だという.

 同氏によれば,2007/3/14,リービ米財務次官によって発表された内容は,米国の銀行とBDAとの取引を正式に禁止する一方,凍結されている北朝鮮の銀行口座の取り扱いはマカオ当局にゆだねる,というもの.
 凍結されている北朝鮮の口座をどうするかは,中共当局の指示をあおぎつつ,マカオ当局が決めることになるが,中共当局も簡単に全面解除はできない.そうしてしまうと,中共当局が,国際金融面での違法行為に甘いという非難を国際社会から浴びる懼れがあるためだ.
 しかも,仮に全面解除になったとしても,世界中の銀行が,米国に気兼ねして北朝鮮との取引を自粛している現状にあり,「自粛する必要はない」といった明確なシグナルを米国が発する気配は皆無.
 つまり,北朝鮮が国際取引を行うことが極度に制約されている現状は,そのまま維持される可能性が高い.

 他方,事業費が北朝鮮で不正に流用されているとの1月の米国の指摘を踏まえ,国連開発計画(UNDP)は1月,
・外貨による事業決済
・北朝鮮当局による地元要員採用
の中止を,新規事業承認や積み残し事業継続の条件とすることを決めたが,北朝鮮側がこれら条件を履行しないため,200/7/3/5,人道分野を含めたすべての対北朝鮮事業を1日で停止したと発表.
 これで凍結された総額は1790万米ドル.
 つまり米国は,金融「制裁」解除で北朝鮮に戻されるであろう金額に見合う金額を,別途あらかじめ凍結するのに成功したことになる.

 最後に,太田述正はこう問うている.
「さあ,米国と北朝鮮の一体どちらが追いつめられているのでしょう?
 お答えするまでもありませんね」

 詳しくは,太田述正コラム#1693(2007/03/16,有料版)を参照されたし.

 もっとも,いたぶっているというよりは,対北韓強硬派と融和派との間の延々と続く綱引きの中で,妥協に次ぐ妥協が重ねられていることにより,譲歩したり,その譲歩を無効になるようにしたり等,揺れ動き,外部からは外交政策が首尾一貫していないようにしか見えない,ということの一例だろう.

 ちなみに以下は,麻生大臣の記者会見より.

――
 (問)六者会合と金融制裁は直接関係しないということだと思うのですが,北朝鮮が主張していた金融制裁が全面的に解除されることで,北朝鮮は初期段階の具体的手順をしっかり示すべきだということになってくるのでしょうか.

 (外務大臣)金融制裁という単語に関しては,よく混線されるけどこれは,凍結解除であって,財務省の話です.
 解除になったのは凍結した2500万ドルで,バンコ・デルタ・アジアに対する財務省のその他の金融制裁,取引,為替等々の分については全く変わっていません.
 為替の取引や決済が出来ない銀行というのはしんどいですから,「金融制裁全面解除」というのは業界用語としては適切ではありません.
 資産である金を下ろすことに関して,米国は自分達の仕事ではないと言ってマカオ政府に振ったわけですから,マカオ政府が今後どうするかというのはこれからの話です.

 (問)口座については解除するという話になっているので,それを受けた段階で北朝鮮は具体的な「初期段階の措置」を示さなければいけないのでしょうか.

 (外務大臣)向こうが示さなければいけないわけです.
 所謂,核の話や何やらがそこから進まない.
 米国はもう関係ありませんと,国務省は元々関係ないのですが,財務省もそういった形では当初の話は終わっていますから,あとは北朝鮮の法律違反の部分であって,財布は無くしたことになります.

 かつては「大本営発表」とは政府がやらかしたウソの発表のことを意味していたが,いまや政府発表のほうが新聞のそれより正確である場合がある,とは(とほほ

Bank transfer said snagging N.Korea deal
ロイター:北朝鮮のBDA資金問題が,依然として障害になっている
By Carol Giacomo, Diplomatic Correspondent Reuters Thursday, April 19, 6:23

によれば,CSISのマイケル・グリーンは
「中国側は,BDA口座資金を移した銀行に制裁はしないと財務省が誓約することを求めたのだが,財務省が拒否した.
 アメリカの法律では,そんなことは可能ではない.
 そういう無罪放免カードを与えることは出来ない」
と述べたという.
 つまり,財務省がBDAに対してとった措置は,$25Mの口座資金を超えて大きな影響を与えるもので ,北韓と取引する銀行は,財務省の措置のために,制裁を受ける可能性を考慮せざるを得ない.
 アメリカ高官に拠れば,この結果,北韓の国際金融取引が大きく制約される事となったという.

 この高官が誰かわからないけど,

――――――
withdraw it (as cash) in wheelbarrows in front of a gaggle of South Korean and Japanese press・・
――――――

というのは傑作な台詞で,日本と韓国のメディアに対する嘲笑がこめられているように思える.

 実際問題BDAに詰め掛けていること以外にも,この問題に対する,日本と韓国のメデイアの報道は,これまでとても酷いものであったわけで,今起こっていることは3月14日の財務省決定(BDAのマネロン認定,アメリカ金融制度からの遮断,口座資金の判断の澳門への委任)をきちんと読んで,理解していれば,当たり前のことなのだけれど.

 国内のメデイアは,そうした財務省の決定の意味を理解せず「アメリカの全面譲歩」だの,「北韓の交渉の勝利」だのと言い続けてきた.
 そういうメデイアは日本と韓国だけなのだけれど,未だにその誤りを理解しているかどうか怪しげ;

 また,

――――――
This was the main focus of six meetings that the White House's top Asia expert, Victor Cha, had with North Korean negotiator Kim Gae Gwan when Cha was in Pyongyang for three and a half days recently.
 これはNSCの朝鮮半島専門家であるビクトール・チャが最近の3.5日の北朝鮮訪問で,北朝鮮交渉代表のKim Gae Gwanに6回の会議で説明した主要な事項であった.
――――――

を読むと,北朝鮮側が財務省の3月14日行なったマネロン認定措置,アメリカの金融システムからの遮断の意味を,北朝鮮が理解していなかったのではないかという疑問が起こるように思える.
 何しろ韓国や日本のマスゴミも理解していなかったわけなので・・

ニュース極東板
青文字:加筆改修部分

▼ やっぱりこのコピペが良くできてる(改行位置変更してます).

――――――
 東京ガス(アメリカ)が,ガスレンジ(BDA)の着火ノブを固めていた針金を撤去
→口座凍結解除

 しかし,ガス(ドル)の供給(コルレス契約,取引)を停止
→BDAとの取引を禁止

 なにも気が付かない北朝鮮は,大喜びして着火ノブを「押した」が,着火しない
→複数口座を取り扱うのに,口座分の本人確認ができない
→口座振替に必要な書類すらない
→口座の使い方を分かっていない

 なんとかレンジ(口座)を使おうとして,必死に着火ノブを捻っても ガス(ドル)の供給が無ければ使えない.
 これに関して日本のマスゴミは,「なんらかの技術的問題」と表現

 ガスボンベを付ければ使えるが(現生引出しは可能),通常の家庭(銀行)には,そんなに大量のガスボンベ(現生)は無い.

 北朝鮮としても,金を払わず料理(偽ドルロンダリング)のできるガスレンジ(口座)を使いたいのに,一回しか使えないガスボンベ(現生)では,後が続かない.

 慌てて他の家のガスレンジを使わせてもらおうとしても,中国,日本そして韓国からすら,断れられている.
 使用メーターにバレる小細工する馬鹿に使われたら,今度はその家が東京ガス(アメリカ)から睨まれる.

 ちなみに,ガスレンジはガスが通らない(ドル取引できない)とほぼ無意味の役立たずなので,近い将来錆付いて壊れる.

――――――

ニュース極東板


 【質問】
 米朝対話が進んだことにより,拉致問題に拘る日本は,6カ国協議で孤立しているのではないか?

 【回答】
 佐藤優他の意見によれば,全く孤立などしていないという.
 以下引用.

 多国間協議で日本が「現金自動支払機」のような扱いを受けることが多いというのは残念ながら事実だ.
 国際秩序が最終的に暴力(戦争)によって担保されている現状で,軍事力の行使に制約がある日本の発言力に限界があるのは仕方がないことだ.

 しかし,日本の国力を過小評価することも禁物である.
 国力を測る上で経済力は決定的に重要だ.
 世界第2位のGDP(国内総生産)をもつ日本が本気で発言するならば,それなりの影響力は行使可能だ.
 今回の6カ国協議で,北朝鮮への重油供給が決まったが,拉致問題を抱える日本としては,当面,経費を負担しないことになった.
 「カネは出さないが口は出す」という枠組みを日本が作ったのだ.

 仮に日本が孤立しているならば,このようなことはできない.
 日本は孤立などしていない.
 対北朝鮮外交について,これまで潜在力を生かし切れないでいたロシア・カードを日本は今回巧みに切ったのである.
 このことを坂場三男外務報道官,山田重夫北東アジア課長などがきちんとマスメディアに説明しないから,実態とかけ離れた印象が国民に定着してしまうのだ.
 恐らくは,坂場報道官,山田課長らの能力が基準に達していないので,ロシア・カードの意味が理解できないのであろう.
 一般論として,人は自らが理解していないことを他者に説明することはできない.

 他方,『文芸春秋』4月号で手嶋龍一氏のインタビューに対する麻生太郎外相〔当時〕の答えがさえている.
「今回の6カ国協議で,明らかに日中,日米,日韓がいろいろやっているときに,ロシアが拉致についちゃ非常に理解を示してくれて,北朝鮮には厳格な対応をした.
 ロシアは北朝鮮に相当規模の金を貸し付けたまま,返ってこない.
 ロシアはその金が返ってこない限りは,新たに北朝鮮にしてやるといってもいろいろ限界があるらしい.
 今,北朝鮮からロシアに泣きついても,ロシアはそれを引き受けてやるということが,なかなかできなくなっていると思います.
 自分のところに言ってきてもだめだ,まずは核を放棄してからにしろということですよ
 /
 それからロシアから見たって,北朝鮮に借金を返してもらおうというと,その金の当てはどう考えたって,日本と組むしかないだろうと」

 麻生外相が組み立てた連立方程式は見事だ.
(1)拉致問題が具体的に前進しない限り,日本は北朝鮮にビタ一文出さない
(2)ロシアは北朝鮮が債務を処理しない限り,新たな経済協力はしない.
 この2原則を日露が堅持することで,北朝鮮を締め上げる.ここで一つ謎かけをする.

「日露が戦略的に提携し,ロシア極東の資源開発を本格的に行うならば,巨額の資金が動き,経済発展が見込まれる.
 北朝鮮をこの流れに加えてもいい.
 ただし,それには条件がある.核兵器の不拡散と日本人拉致問題の解決だ.
 北朝鮮が条件を飲まないならば,歴史をよく思いだすことだ.
 帝国主義化した日本とロシアによる朝鮮半島への影響力を巡る対立が日清戦争,日露戦争を引き起こした.
 もし,日本とロシアが本気になって,悪い目つきで北朝鮮をにらむようになったら,どういう結果になるかわかっているんだろうな」
という内容のメッセージを金正日に送るのだ.

 やり方は簡単だ.外務省が『文芸春秋』の麻生外相インタビューを朝鮮語とロシア語に訳し,北朝鮮とロシアのインテリジェンス関係者に
「麻生さんの戦略についてどう思うか」
といってコピーを渡せばよい.
 そうすれば拉致問題も動き,北方領土交渉にも弾みがつく.
 頑張れ,麻生太郎外相!

佐藤優の「地球を斬る」,2007/3/15

 上記説の信頼性だが,本来,佐藤優は現在の外務省と対立している立場にある.
 その彼が本件については日本外交を肯定している以上,外交の専門家であった佐藤の言葉に,一定の信頼を置かないわけにはいかない.
 もっとも,平素から佐藤は麻生太郎をやけに評価する傾向がある点には留意されたし.

 また,そもそも「米朝対話が進んだ」という見方自体に異議を唱える見解もある.
 これについては別項を参照されたし.

 さて,麻生太郎が外相ではない現在及び今後,どうなりますことやら.


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