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◆◆イラク戦争
<◆背景・経緯
イラクFAQ目次


◆◆◆総記


 【link】

「Guardian」◆(2010/09/02)Biden: Iraq's darkest days are over

「Guradian」◆(2010/09/17)Iraq was 'failure of strategic thinking'

「WSJ」◆(2010/09/02)ブレア元英首相,回顧録でイラク戦争を擁護


 【質問】
 イラク戦争について書かれた本ってありますか? 河津幸英以外で.
 政治的な本ならたくさん書店にあったのですが.

 【回答】
 まず基本的な文献はこちら.
 公刊ではあるけど公式戦史とは違います.
 ですが,実質的には公式戦史に近い位置づけ.
 上が通常戦段階,下が治安戦段階で,下はテーマ別に章を建てて有ります.
http://www.globalsecurity.org/military/library/report/2004/onpoint/index.html
http://www.globalsecurity.org/military/library/report/2008/onpoint/index.html

 他にも山ほど出てます.
 部隊指揮官の本もあるし,ブレマーやアラウィの本も軍人が出て来るので,政治だけってわけじゃないでしょうし.

 俯瞰的に書かれたのはイラク戦争自体が終結しないと,日本語訳書は出ないとおもう.
 純粋に軍事に絞っても,大規模戦と治安戦・内乱は違いすぎる,
 特に後者はアメリカの政治と現地人の政治勢力を書かないと,何故戦闘に至り次や他所にどういう影響を及ぼしたのかっていう説明が出来ないし.
 イランからの武器流入と,革命防衛隊の浸透やトルコ軍の越境攻撃,3派入り乱れてのクルド人勢力,アラブ人内での宗派対立と部族対立,イスラエルの動向,ペルシャ人とアラブ人の歴史的対立etc・・・

 イヴ・クリエールみたいな作品群はもうたくさん世にでてるけど,アリステア・ホーンのような決定版はまだ現れていないのが現状.

 日本語の本で,手に入り易いものとしては,
『デビルドッグ』
『第82空挺師団の日本人少尉』

 それから
『ファルージャ 栄光なき死闘』
 なかなか読ませるルポだよ.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 フランスやロシア,中国が最後までイラク攻撃に反対したのは何故ですか?

 【回答】
 イラクとの間の利権が絡んでいるからです.

「『食糧のための石油』輸出において,イラク政府に唯一自由が認められている余地は,輸出相手企業の選別であった.イラクは,どの国に石油を売るかを選択的に行うことで,イラクに対する政治的支持を,都国国連安保理常任理事国から得ようとした.
 1996年末から2002年現在に至るまで,一貫して最も多くの石油購入契約を獲得した国はロシアであり,石油輸出量全体のほぼ3〜4割をロシア企業が買い取っている.フランスは2000年までそれに次いでいた.
 また,イラク政府はこれらの国に対し,初めて外国企業の油田開発への参入を認めた.中国企業がクート南のアフダーブ油田(推定埋蔵量14億バーレル)開発計画,ロシア企業が西クルナ油田(150億バーレル)開発計画の契約を得ている.
 つまりこの戦略は,イラクの経済制裁が解除されない限り実現しない油田開発という『餌』を,先進国企業の前にぶら下げる,というものであった.
 こうしてイラクは,自国以上に制裁解除を待ち望む「制裁解除支持派」を,ロシア・フランスを中心として作り上げることに成功した.
 ロシアやフランスが「親イラク・ロビー」としてイラクに取り込まれていった理由は明白である.これらの国はいずれも,70〜80年代に軍事輸出を含めてイラクへの最大の輸出国であったが,今もなおその代金を回収していない.ロシアの債権はソ連時代からのもので推定160億ドル,フランスが最低でも45億ドルと伝えられる」

(酒井啓子『イラクとアメリカ』,岩波新書)

 また,米議会調査によれば,

「国連のイラク石油食糧交換プログラムをめぐる不正事件において,同プログラムの不正資金が渡ったのは,1999年1年間だけでロシアやフランスなどの政党,政治家など合計約50カ国約270に達し,特にフランスではシラク大統領の元側近や元内相など現政権にとっての重要人物が含まれている」という.

(古森義久 from 産経新聞,2004/5/8)

 米国上院政府問題委員会の,国連イラク石油食糧交換プログラムの不正を追及する公聴会では,イラクでの大量破壊兵器などの調査にあたった米国政府調査団のチャールズ・ドルファー氏らも証言し,フセイン政権が同プログラムでの石油バウチャー(保証引換券)や不当リベート,食糧購入の不当リベートなどからの利益をロシアの有力政治家のジリノフスキー氏,フランスの元内相のパスクワ氏,国連幹部のスベン氏,シリアのジャーナリストのナナ氏らに贈っていた証拠を提示している.

(古森義久 from 産経新聞,2004/11/17)

 なお,後にフランスは英米支持を表明している.

フランスが米英支持を明言

 【パリ1日時事】 フランスのドビルパン外相は1日,当地のテレビ局とのインタビューで,
『対イラク戦争でわれわれは米国と英国の側に立つ』
と言明した.
 戦争に反対していたフランスの政府首脳としては,ラファラン首相が先に,
『敵を間違えてはいけない』
と米英支持を示唆していたが,これだけ明確に表明したのはドビルパン外相が初めて.
 戦後のイラク復興や,欧州安保などを見据え,米英との関係修復が必要との判断に加え,市民レベルでの両国での反仏感情の広がりを懸念したものとみられる.(以下略)」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030402-00000332-jij-int


 【質問】
 反戦団体「ANSWER」とは?

 【回答】
 国際A.N.S.W.E.R.は,9月11日以降に設立された国際行動センターであり,労働者世界党(Workers World Party)のフロントグループである,という.
 以下引用.

労働者世界党は,

●1989年の中国政府による天安門虐殺事件を支持していた
http://www.workers.org/ww/tienanmen.html
●金正日の朝鮮「社会主義」人民共和国を支持している
http://www.workers.org/ww/2002/korea0425.php
●イラクのサダム・フセインを,反帝国主義抵抗運動の立標だとみなしている
http://www.workers.org/ww/2001/iraq0125.html

 こうした理由だけでなく,労働者世界党と他のグループとの悪い関係もあり,来る1月18日の反戦抗議行動も含めてA.N.S.W.E.R.の行動には参加しない人たちもいる.
 その良い面を見ればA.N.S.W.E.R.は,大規模デモを非常にうまく組織することを示してきた.
 このグループの抗議行動に参加した人々の大部分は,その実際の政治的学習内容については何も知らずに,単に,イラクでの戦争に対して反対を表明しようと思っているだけなのである.
 A.N.S.W.E.R.が大量虐殺独裁者たちを支持していることに嫌悪感を抱いている多くの人々と多くのグループも,その反戦抗議行動に参加する事を決めているが,その理由は,イラクに対する戦争を止めることが緊急を要すると感じているからである.

 例えば,ZマガジンのQ&Aにある以下のトピックを参照して頂きたい(A.N.S.W.E.R.は,#8で論じられている)
http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?SectionID=15&ItemID=2527

 読者の意思決定の手助けとなるよう,この問題に関わる多くの著作へのリンクを以下に示しておく.
 様々な政治スペクトルから様々な論点について述べられており,事実を述べているだけのものもあれば,論争を巻き起こしているものもある.

●国際行動センターの政治を膨大で詳細に暴露している
http://slash.autonomedia.org/article.pl?sid=01/12/03/1946241&mode=nocomment&
●労働者世界党に関するアナキストの批判
http://www.infoshop.org/texts/wwp.html
●A.N.S.W.E.R.による11月26日のワシントンDC反戦デモに対するデヴィッド=コーンの批判
http://www.laweekly.com/ink/02/50/news-corn.php
●「サロン」のリポーターによるA.N.S.W.E.R.などの極左反戦グループの批判
http://www.salon.com/politics/feature/2002/10/16/protest/
●コーンなどのA.N.S.W.E.R.中傷者に対する批判的回答
http://www.zmag.org/sustainers/content/2002-11/11dominick.cfm
●A.N.S.W.E.R.と他のグループとの関係の一例
http://www.thenation.com/doc.mhtml?i=20020513&s=featherstone
●A.N.S.W.E.R.スタイルの政治動員が本質的に人々を無気力にする理由
http://www.journalofaestheticsandprotest.org/1/BenShepard/index.html

http://authoritarianopportunistswhocozyuptogenocidaldictators-forpeace.org/

 なお,9.11テロ直後に,学習院女子大学国際文化交流学部教授,石澤靖治が,こんな予想をしている.

 〔9.11〕テロ直後は恐怖と興奮から,何かをしなければならないというムードが充満していたわけですが,日が立つに連れてその意識がだんだんと薄れていき,消えていくということがよくあるということです.
 そういう中で,単に戦争に反対することで,自分に思慮があり,知性があるんだと主張しようと思っている人達の元気が良くなるという傾向もあります.
 良い悪いは別にして,これからは戦争に反対するほうがファッショナブルになるという状況は想像できます.

( from 「収縮する世界 閉塞する日本」,
日本放送出版協会,2001/12/25, p.54)


 【珍説】
 アメリカの国会議員は,約550人いる内,息子をイラクに送ってるのは1人だけという卑怯な連中だらけ.

(マイケル・ムーア「華氏911」,2004年)

 【事実】
 それ,典型的な統計の嘘なんだよね.
 アメリカ一般市民550世帯から一人イラクに送ったら ,かなりの大軍になるね.

 第一,徴兵制の国家ならともかく,志願兵制の国で,戦争賛成派の議員が有無を言わさず自分の息子を戦地に送ったら,そちらのほうが人権問題になりかねないね.

軍事板

 あの華氏911でイラク戦争に賛成の議員の子弟をイラクに派遣する署名してるの見て,ムーアはアホだと確信した.
 ムーアの論理だと,犯罪者をとりしまるのに賛成の議員の子弟は警察官にならないといけないし,火事がおきたら消火するのに賛成の議員の子弟は消防士にならないといけなくなる(笑)
 まあ,馬鹿でアホなアメリカ白人とはムーアのことだというのは,あの映画でよく分かった.

軍事板

 もちろん,欧米にはノブレス・オブリジェ(高貴なる義務)という概念もある.
 すなわち,「地位が高いものほど危険に身を晒せ」という暗黙の了解があるが,しかし,子供と親とを別人格と見る傾向の強い欧米において,議員が「地位が高い者」だからといって,その息子も「地位が高い者」だと見なしてくれるかといえば,大いに疑問.
 一般的に言って,親の力を借りずに自分で借金して大学に通う(夏休み,冬休みにアルバイトして借金を返す)という,経済的に恵まれない学生も多いわけだし.



 【珍説】
 他人の息子を自分の利益の為に死ぬかもしれない場所に送るんだから,自分の息子も送るべきなのは当然だと思うが?
 つーか,ポチって支離滅裂だな.

 【事実】
 あー.ローマ内乱(ルビコンのね)なんかどうなる.
 というより,何故そんな儒教思想じみたのをアメリカに当てはめるんだ?

(軍事板)


 【質問】
 イラク戦争において,ブッシュ政権のコアリション戦略は成功と言えるのか?

 【回答】
 マイケル・オハンロン Michale E. O'HANLON によれば,実際は一国主義的な行動を取っており,明らかなミスだという.
 以下引用.

[quote]

 しかしブッシュ政権がイラク戦争直前,コアリションの形成によって一国主義のイメージを払拭することに成功したかと言えば,そんなことはない.
 イラクに対して最後通牒を突きつけた時期,コアリションに参加していた国々の意向を殆ど聞き入れず,アメリカ一国の決断によって作戦を開始した.
 これはブッシュ政権の明らかなミスだ.
 コアリションと言う言葉を使ったにも関わらず,実際は一国主義的な外交政策を行使する結果となった.

[/quote]
―――『SAPIO』 2004/2/25号,p.23

 事実,ブッシュ政権もその誤りに気づいたようで,その後は徐々に軌道修正を図っている模様.
 気づくのが遅かったけれども.


 【質問】
 イラク戦争では80万以上の歩兵部隊2000両の戦車など,大部隊を持っていたイラク軍に対して,米,英軍は何故あそこまで被害が少なかったんですか?
 そして追い込まれたイラク軍が,WW2のスターリングラードのような泥沼戦に持ち込まなかったのは何故ですか?

 【回答】
 圧勝した要素は多い.

 まず,それだけの圧倒的なリソースが投入されたから.
 人命のかわりに鉄量を消費したまでのこと.

 質的にも問題だった.
 アメリカ軍とイラク軍の戦闘能力は,まさしく「大人と赤子」で,射的でも射つかのように一方的に撃破していった.
 真正面からぶつかる限り,イラク軍は一方的に虐殺される標的でしかなかったのだ.
 かといってゲリラ戦に移行できるほどの戦意はすでに崩壊していた.

 事前の徹底的な準備段階ですでに,この結果は決まっていたといえる.

 他にも色々あるが,個々の戦術・兵器についての比較は一言で語れないと思う.
 劣化ウラン弾の射程.複合装甲.戦車の機動力.夜戦戦術.エアカバー…….

 1回の給油で90kmしか走れなかった燃費の悪さで,兵站面でのウィークポイントはあったが,うまくカバーした.

軍事板,2009/06/06(土)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ラムズフェルド・ドクトリンイラクで通用しなかったの?

 【回答】
 戦後統治はうまくいってねえけど,あれはあれで通用しなかったというほどでもねんでね.

 「制圧」にまったくもって不向きなんだよアレ.
 占領地を確保するにはなんといっても量.
 圧倒的に強力な新兵器があろうとも,地に足をつける頭数は不可欠.

 要するに現代に復活した「電撃戦」なわけだよ.
 フセイン政権は,まさに1940年のフランスと同様に,部分的にもRMAによって高度化された指揮系統を持った軍隊の侵攻の前に,軍の指揮系統がすっかり崩壊し,政権中枢も麻痺状態に陥った挙げ句にあっけなく瓦解した.

 だけど,フランスでも占領地域の確保には,やっぱり歩兵部隊や保安部隊が,相当の数必要だったわけで,時間が経てば,連合軍の援助によるレジスタンス活動も活発化した.
 まして,イラクではドイツがフランスに攻め込んだ時ほどの大兵力を現地に入れたわけではない.
 治安維持能力はスカスカ状態.
 占領統治の初手からイスラム過激派の跳梁を許すハメになった.

軍事板,2009/10/19(月)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 対米協力することで,日本にどんなメリットがあったか?

 【回答】
 イラク戦争支持と自衛隊派遣を梃子にして日本は日米の信頼関係を強め,極東三馬鹿を牽制し,国際社会での地位を高め,米国が仏独と対立する中でこれらの国々とも友好を保っている.
 また,国内の安全保障体制も前進している.
 その延長として台湾情勢に日本が積極的に関与していくという展望も描ける.
 メリットだらけじゃないか.

 イラク戦争に反対してたら,日米関係には齟齬が生じ,安全保障論議は後退し,国際的地位を高めるチャンスを逃し,それどころか低めることになり,極東三馬鹿にはせせらわらわれる.
 さぁ,どっちがいいよ?

 さらに,拉致問題に関し,アメリカの協力を取りつけることができた.

 例えば,米国のテロ報告書への拉致明記により,日本側は無理に六者協議で拉致を取り上げる必要が無くなった.
 これによりに,下記報道の(2)の段階での拉致解決が米国から北朝鮮に突き付けられた.
 今,六者協議で拉致を取り上げて釈明したいのは,北朝鮮の側だろう.

 そこですかさず「二国間問題」.
 六者協議で核が解決しても拉致は別,「二国間」の問題ですので,日本が満足しない限り「解決」にはならない.
 六者協議の「核」に引き摺られて「拉致」で妥協させられる事もなく,
拉致が解決しないまま「テロ支援国家」指定が解除される事もなく,
拉致が解決しても核が解決しない事には援助のしようもなく・・・

「恒久平和体制の構築も視野 米の核問題解決案が判明」

(1)北朝鮮の「完全核放棄」確約後に「安全の保証」供与を約束
(2)核廃棄検証措置を確立し「テロ支援国家」指定解除を協議
(3)米朝国交樹立と朝鮮戦争休戦協定に代わる「恒久平和体制」構築に向け協議

(電波小僧 ◆xqlNKJ6FBE in 極東ニュース板)

 さらに,拉致解決まで援助禁止する法案を,米下院が可決するに至っている.
 以下引用.

 米議会は北朝鮮の人権状況を非難する決議などを採択したことはあるが,日本人拉致問題を含めて状況改善を要求する法案が可決されたのは初めて.法案は上院に送付され,上院で可決後,大統領の署名を経て正式に成立する.
 法案は,日本人と韓国人の拉致被害者に関する情報の全面開示と,被害者全員の帰国を認めるよう北朝鮮に強く要求.表現や信教の自由などと並び,拉致問題に「実質的な進展」がない限り,北朝鮮政府に対し,食糧など人道支援以外の援助はできないと規定している.

(共同通信 2004/7/23)

 さらにまた,例え同盟国であっても信頼は一日にしてならずなので,隣に核を持ってるかもしれないキチガイ国家を抱えている我が国としては,同盟国の強固な信頼を勝ち取る事は,我が国の安全保障に直結する.

(某S氏)

 その点では,以下の記事に見られるように,明らかに米国の強固な信頼を勝ち取る事に成功している.

 さらにまた,外務省が15日発表した2004年2月から4月に実施の「米国における対日世論調査」によると,「日本は信頼できる同盟国ないし友好国」と回答した一般人は68%で,調査を始めた1960年以来最高を記録した.有識者でも89%と,過去最高の91%に迫る高レベルだった.
 外務省は「テロとの戦いや,イラク復興支援での自衛隊派遣などが好意的に受けとめられたのではないか」と分析している.
 日米協力関係を「良好」「極めて良好」と回答したのも有識者で82%と,設問が導入された92年以来最高.一般人でも02年と並ぶ過去最高の60%となった.今回初めて聞いた「米国と価値観を共有しているか」との問いでは,一般人の80%が「共有」と回答し,英国(83%)に次ぐ2位.有識者でも95%に上り,英国(98%),ドイツ(96%)に次いで3位だった.

(共同通信 2004/7/15)

 事実,谷口智彦によれば,「日本を「並の」同盟国から格上げし,「特上の」同盟国として扱う動きが,最近ワシントンに現れている」という.
 以下にそのコラムを引用する.
 特に,中国との対比が興味深い.

 主として国防総省筋に目立つ傾向で,英語ではmega ally(メガ・アライ)という.「mega」は,メガトン級とか,メガ・コンペティションというときの「メガ」だ(日経ビジネス5月23日号「時流超流」に関連記事).
〔略〕
 メガアライとして米国が重視する国々は,たったの3国.英国,オーストラリア,そして日本である.
 英国と豪州は一応おいて,日本は一体何をしたから,米国「王将」に対する「飛車・角」みたいな地位を得たのか.思いつく限りで時系列を追ってみよう.

▼「英国・豪州並み」にさせたのは

 1:
 2001年「9.11」から3カ月経たないうちに海上自衛隊補給艦隊をインド洋へ派遣,1年後,これにイージス艦を加わらせた.以来今日まで,米国をはじめ各国海軍艦船に燃料と水の洋上補給オペレーションを続けている.
  イージス艦の派遣には,情報を日米間で共有する重要な意味があったと思われる.
  また艦船行動のうち難易度が極めて高い洋上補給を常時して見せることで,海自は中国やインドという新興勢力に日々能力を誇示している.
 さらにパキスタン海軍などは,日本の供給する燃料を当てにして作戦へ参加することが可能になった.
 海自はその意味で,同盟に「乗数効果」をもたらす存在である.

 2:
 2002年8月以降,米フロリダ州タンパの米中央軍司令部に陸海空各自衛隊から,昔で言えば大佐か中佐クラスの連絡官を常時派遣.「有志連合」の正員として認知させるとともに,日米制服間の情報共有度を高めた.

 3:
 この間2002年4月には,西太平洋潜水艦救難訓練を実施.日本が主催する初の多国間共同軍事訓練となった.

 4:
 2003年4月以降,航空自衛隊は空中給油訓練を米軍の指導下に実施.日本を離れた遠隔地まで航続距離を伸ばす能力を身につけつつある.

▼ミサイル防衛に対する高評価

 5:
 2003年12月,ミサイル防衛システムの導入を閣議決定.イージス艦を使う方式として,米国以外で実施する唯一の国となった.レーダー能力の拡張とあいまって,米国戦略軍(USSTRATCOM)首脳が「全体システムにおける不可欠の一翼」と評するものとなっている(米ネブラスカ州にあるUSSTRATCOMは,ミサイル防衛や宇宙軍を束ねる中枢組織).

 6:
 このとき,防衛力を外交力とほぼ同列に扱う戦後初の決定がなされている(上掲日経ビジネス記事参照).

 7:
 また同年同月,「人道復興支援」を目的として,イラクへ自衛隊を派遣,今日に至る.オランダをはじめ諸国派遣軍が退く中,非戦闘要員とはいえ,自衛隊は古参となった.

 8:
 2004年,北海道から九州・沖縄方面へ,とりわけ「島嶼(とうしょ)」防衛へ,戦略の重点を大きく移し変えた.

 9:
 憲法改正議論の中で,米国との「集団的自衛権」を認めることは,次第にほぼ確実となっている.

▼3年強で30年分の変貌

 と,このように列挙してみると,ここわずか3年強で,日本が大きく舵を切ったことは明らかだ.
 上記「5」で触れた米戦略軍首脳はこの点に触れ,
「日本の自衛隊が近々数年で遂げた変化は,それ以前20〜30年の状態に比べ真に驚くべきものだ」
と筆者に述べた.
 これは国防総省でアジアを担当する別の人からも同様に聞いた評価で,米軍関係者の少なくない人々に共有されつつある認識だと考えられる.

  こうした推移を経て,今や日本はほかならぬ軍事面において,英国,豪州と肩を並べる「特上」扱いになった.

〔略〕

▼絶好の機会を逸した中国

  中国はかねてから,北京大学国際関係学院院長・王緝思(ワンジーズー・おうしゅうし)氏の表現を借りると,
「日本はアジアのフランスか,ドイツになればいいと思っていた」(先頃米ブルッキングズ研究所での発言).
 欧州でフランスやドイツがそうであるように,日本もアジアにおいて米国と緩やかな関係を保ちつつ,一定の距離を常に置く国であることが中国の利益にかなうと思っていたようだ.

 それが本心ならば,この間に幾度もあった千載一遇の機会を,北京はみすみす逸してきたと言える.
 例えばかつてソ連を共通の敵として米中が事実上の同盟関係にあった時代なら,中国はイラクに本格派兵していなかったとは限らない.
 しかも中国軍を米軍指揮下へ編入し,危険な地域を担当させさえすれば,世界中の茶の間へ,連日連夜,中国軍犠牲者の数が伝えられたことだろう.

  かたや日本の自衛隊はオランダや豪州軍の庇護下にあって一滴とて血を流すまいとしていたのだから,日米同盟を一瞬のうちに空洞化するにはこれほどの良策はなかった.
 国内問題にかまけざるを得ない共産党現指導部には,そこまでの戦略眼がもてなかったようだが,逆に言うと過去3年強,日本が矢継ぎ早に進めてきた対米同盟強化策は,常に薄氷を踏む道筋だったと見ることができる.

(日経ビジネス Express ダイジェスト◇2005.05.30 月曜日)

 日本―イランの間のアザデカン油田開発も,米政府は意図的にこれを黙認したのではないかという報道が出ている.

 ただし,
「アザデガン油田には採算を疑問視する声があるのも事実である.地表が石灰岩質で覆われているため,効率的採掘は困難とする見方や,油質への疑問もある.
また,2000年に失効したアラビア石油のサウディアラビア・カフジ油田を巡る交渉失敗の挽回を狙う経済産業省,05年3月に廃止される石油公団の天下り先確保,経済再建中であるトーメンの生き残り作戦,などの思惑が複雑に絡む事業となっている」

(園田義明「最新・アメリカの政治地図」,講談社新書,
2004/4/20,p.207-208,抜粋要約)

 ジェンキンス問題にしろ,日米関係がこれほど緊密でなかったとしたら,もっと問題が悪化していた可能性が高い.もし緊密でなかったら,今頃はジェンキンスは軍刑務所に拘置されていたかもしれない.

 そもそも,条約があるか ら何もしなくていいという姿勢自体にも批判がある.

 「条約があるか ら何もしなくていい」という姿勢では,米国から安保条約を破棄される事態がいつ起こっても不思議ではありません.
 日米同盟をあたかも空気のよう に,そこにいつもあるものと感じている人も多いようですが,想像以上に脆 いものであることを理解する必要があります.
 そのためにも,米国との関係が 円滑に進むよう常日頃から心がけなければなりません.

 営業マンは,重要得意先をつなぎとめるため,必死になって相手からの注目を 得つづけようとする戦略・戦術を練り,実践します.
 それは自社に利益をもた らすためであり,得意先に利益をもたらすことは第二義的なことです.

 日米同盟の本質もそれと同じで,大国ではないわが国が,大国である米国中枢から関心を失われることのないよう,日々努力することが大切と思います.
 見識ある先人たちが,これまでこういう地道な努力をしてきたおかげで,今の わが国の安定と繁栄があります(不況ではありますが,夜の町を歩けないほ ど治安は悪化しておらず,国民の多くは携帯を持ち歩き,車を乗り回し,電車の中で眠りこけることもでき,停電の頻発はなく,餓えも日常になっていません.

 これまでわが国は,
『軍事面で貢献できないけど,経済面で貢献します』
との姿勢で日米同盟の維持に対応してきました.
 基本的にはその路線でいいとおもいま す. 今の憲法がある限り,自衛隊の実力発動機会は減らすべきで,自衛官が死ぬか もしれない状況を極限まで少なくする必要があると考えます.

 しかし,ここぞというときは米国中枢向けに,『身体を張って友邦を助ける国・日本』との姿勢を示すことが必要でしょう.
 国際社会の中でわが国が生き残るための戦略である日米同盟を考える際は,こ のように,国内だけで片がつく問題ではないのだということを理解する必要があると感じます.

(おきらく軍事研究会)

 イラクでテロリストに殺害されたフリー・ジャーナリスト橋田信介は,以下のように「安易な中立」を批判する.

 幻覚の平和主義が〔日本で〕唱えられるようになったのは,私の記憶ではヴェトナム戦争辺りからだったろう.
 そのころは,
「アメリカはヴェトナムから出ていけ」
というのが主なスローガンだった.

 その時期にべ平連(ベトナムに平和を!市民連合)という新しい組織が登場する.「どっちも悪い」,あるいは「どっちも良い」,「とにかくどうでもいいからヴェトナムに平和を」という主張である.
 「殺すか,殺されるか」,「正義か,不正義か」,そういう戦場の中間で平和を唱える.
 血みどろで戦う当事者にとっては迷惑な話である.
 当人達は安全地帯で唱える説教とはいえ,やはり無責任である.

 だが,今の日本ではこういう「幻覚の平和主義」が主流になっている.
 戦争を終わらせ,平和を取り戻すためには,中間や中立の立場は存在しないというのに.戦争を終わらせるには,その政治的理由と経過を分析し,自らの立場を明確にした上で,どちらかの勢力に肩入れしなければならない.

 2000年春,NATO軍が旧ユーゴスラビアを爆撃した.NATO軍はアルバニア勢力に加担して戦争を終わらせた.
 アルバニア勢力に絶対の正義があるわけではない.旧ユーゴスラビアが100%悪いのでもない.戦争は双方が悪いのだ.
 しかし相対的に見て,どちらがより悪いのかを判定しなければならない.まあまあでは,戦争という悲劇はいつまでも続くからだ.
 NATO軍はギリギリのところで,悪いのは旧ユーゴスラビアだと判定し,ベオグラードを空爆した.
 判定はしばしば間違うこともある.
 しかし戦争を終わらせるには,むごいほどの決断を必要とする.

 アメリカはヴェトナムから出ていけ――それは,ヴェトナムに肩入れする正しい平和主義だった.
 あの頃の日本は,まだまともだったのだ.

(「戦場特派員」,実業之日本社,2001/12/20, P.333-334)


 【珍説】
 結局,北朝鮮に関してもアメリカ頼みなのだから,アメリカが何もしてくれないと分かったら,打つ手がなくなって呆けてしまう.
 それが「親米保守」の正体.
「イラク攻撃に協力すれば,その後,北朝鮮もアメリカが何とかしてくれる!」
 それだけが「ポチ保守」の信仰.

(小林よしのり「新ゴーマニズム宣言」 from "SAPIO" '03 Feb. 26)

 【事実】
 「呆ける」どころか,遅まきながら偵察衛星を打ち上げようとし,不審船対策用の巡視船を新造し,法制を整え,JDAMを導入するなど,アメリカ頼みとならなくても,ある程度なんとかできるように着実に対策が講じられつつあるのが現状.

 今までそうした対策ができなかったのは,それに強く反対する野党勢力や与党内の親北朝鮮勢力があったためと言われており,「アメリカ頼み」は別に信仰ではなく,そうした政治状況があったがゆえの現実.

 同盟関係は,紙切れ一枚で保証されるものではなく,不断の維持努力が必要であることは,日英同盟が壊れた原因を見ても明らか.
 現在の外交姿勢には疑問がないわけではないが,同盟維持のための努力としてのイラク攻撃協力は,一つの選択肢ではある.

 「ポチ保守」という言葉に至っては,極めて定義が曖昧であり,単なるレッテル貼りのための言葉にしかなっていないため,論外.
 ちなみに小林は,自著「戦争論」において,レッテル貼り行為を激しく非難している.自らの行為なら彼は許しちゃうんだね.さすが小林主体思想(マルチ・スタンダード).

 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 『朝まで生テレビ』に出たが,また欲求不満で終わった.
 〔略〕
 結局,最後はぶち切れてしまった.
「北朝鮮が怖いから,イラクの子供達よ,死んでくれ!
 北朝鮮が怖いから,アメリカ軍の若者よ,死んでくれ!
 そんなことでいいのか―――っ」

(小林よしのり from "SAPIO" 2003/5/28)

 【ツッコミ】
 小林,愉快な朝生逆ギレコメントを完全隠蔽しております.
 曰く,
「話がみみっちくて面白くねぇんだよぉ!」
「国際関係には道義が必要に決まってんだろぉ!」

 以上の朝生における小林二大格言を完全隠蔽(爆笑
 原音声を聞きたい方はこちら.
http://esehoshuwatch.tripod.co.jp/asanama.mp3

 ちなみに,この号では他にも,TAKUROへの抗議メールについて,
「さらに,左翼過激派が,保守のふりして,過剰なアメリカ寄りの好戦的意見を撒き散らして,かく乱戦術をとっていたりね」(P.61)
などと陰謀論一歩手前まで,脳がいっちゃっております.

(エセ保守監視小屋)


 【珍説】
 日本のマスコミはブッシュを批判したいが,覚悟がないため,フセインの独裁や残酷も,同じにスキャンダラスに報じていた.
 この相対主義がアメリカの侵略に口実を与える結果にしかならなかった.

(小林よしのり from SAPIO 2003/4/23, P.57)

 【事実】
 相対主義とは無関係.

 敵国を悪く言うのはプロパガンダの常套手段.
 フセイン・イラクのメディアはアメリカを何と呼んでいたか,ご存じないのかな?
 情報操作に踊らされるな!と常日頃声高に叫んでいる(SAPIOの,これの前の号の欄外でもそう書いている)奴が,このようにがっつりプロパガンダに踊らされている姿は失笑もの.

 それにまた,戦争当事国の一方の側の批判はしていいが,もう一方の側の批判はしてはいかんというのは,報道管制ではないのかね? アルジャジーラが証券取引所から締め出されたことを指して「報道の自由がない」と叫んでいる(しかも,これと同じ号で)当人が,報道の自由を否定してどないすんねん.


 【珍説】
「日本は一切戦わなくていい,血の一滴も流さなくていいから
米国を支持だけしていれば米国は北朝鮮から日本を守ってくれるはずだから!
・・・一国の首相がそう説明したのである」

(小林よしのり from SAPIO 2003/4/23, P.61)

 【事実】
 そんな説明したか? はなはだしく曲解してるだけだろ.
 小泉が「戦わない」というのはそもそもイラク戦争においての話だろ.
 小林は対イラク戦,対北,どっちと考えて言っているのだろう.
 前者だとしたら,イラクに派兵しろということになる.
 後者だとしたら,小泉発言をまるで理解していないか,あえて捻じ曲げてるか.
 だいたい何のための有事法制論議だと思ってんだ?

(エセ保守監視小屋)


 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 日本の親米保守派は,アメリカの共和党の保守が本来,どういうものかすら知らなかったのである.
 だから今回,ネオコンが民主党から共和党へ入り込んだ「過激派サヨク」であることすら見抜けず,「自由」と「民主」というリベラル・デモクラシーの理念を世界に拡大させようという「血迷った共和党」を,日本の親米保守派は一斉に支持したのだ.

(小林よしのり「戦争論3」 p.72)

 【ツッコミ】
 その勢力を支持したからといって,その理念まで盲目的に支持することになるとでも思っているワケ?
 あ〜コヴァ(小林信者)は確かにそ〜ゆ〜生き物であることには違いないわな(笑).

>ネオコンが民主党から共和党へ入り込んだ
なんて事実もないし.

 小林・西部両氏の主張の誤りは,現実的な日本の立場に置かれた外交政策から現在の共和党外交を支持する事が,あたかも日本の保守主義の理念とネオコン理論が一致しているから,日本の保守派はネオコン外交を支持しているのだと勘違いしているからではないでしょうか?

 つまり,日本の保守主義とネオコン外交の理念は一致しない.
 しかし,日本は自由主義・民主政治を否定する先軍国家の中国・ロシア・北朝鮮と一衣帯水にあり,韓国は西側なのかどうかもあやしくなってきた.
 台湾独立問題も含め,これらの脅威に対抗する術は今の所日米同盟しかない.
 ところが小林はあたかも幻想的慕米派がいるかのように語り,それを批判している…
 幻をみているのは小林の方.

 ネオコンが「小さい政府に反する」とか言ってるけど,経済界の要望から生まれた考え方だし,リストラや減税も続行中の米国に当てはまる反論ではない.
 ネオコンは思想性はともかくとして,行動力があるよな.とにかくやってみようみたいな,米国伝統のプラグマティズムが.
 小さい政府だろうと,やる事はやってもらわなきゃ困るわけで.
 そこで大事なのはタイムリーさだよな.その面で行動力ある勢力は評価できる.
 イラク捕虜虐待に関しても,結果から言えば勿論大失敗だし,大ざっぱ過ぎるマニュアルなんだけど,占領初期の緊急時には有効な手段となり得るものだったのも事実だろう.

( つ・ω・)つ ◆gfk5phSy8c他 in 軍事板

▼ 「軍事評論家だった父〔天川勇〕が,福田赳夫元総理や福田派の外交・安全保障問題のアドバイザーだったこともあり,私が生まれる前から家族ぐるみの付き合いだった」という天川由記子(帝京大学・短期大学助教授)は次のように証言する.

――――――
 ホワイトハウスと官邸が緊密な関係になれたのは,福田官房長官の力量だろう.
 それは福田氏が,アメリカのイエスマンにならなかったからだ.
 福田氏は丸善石油の会社員だった時代,ロスアンゼルスに駐在した経験がある.
 アメリカ人との付き合いを心得ている福田氏は,ダメなものはダメと言い,なぜ「ノー」なのか丁寧に説明する.
 従順なイエスマンを嫌うアメリカ人にとって,真のパートナーとなりえたのだ.

 マスコミは,小泉首相のことを「ブッシュの忠犬」「対米追随」と批判することが多かったが,実態は違った.
 イラクへの武力行使に傾こうとしていたブッシュ大統領に,「国際強調」の必要性を直接進言したのは,誰あろう小泉首相である.
 北朝鮮問題でも,アメリカが最も嫌がる「米朝2国間協議」を,小泉首相はブッシュ大統領に説き続けた.
 さらに言うと,一時期,首相は大統領からの電話会談を避けていたことすらある.
 郵政民営化法案に邁進していた頃,米国産牛肉の輸入再開問題などは考えたくなかったのだろう.
 小泉首相は電話階段を拒み,ホワイトハウスを困らせていたほどだ.

 それでも,ブッシュ大統領の小泉首相に対する信頼は揺るがなかった.
 米国議会で,靖国神社参拝を非難する声が上がり,牛肉問題では
「日本に制裁を加えるべきだ」
として,具体的な経済制裁案まで浮上した.
 特に,食肉団体は政治的な力が強い.
 ブッシュ大統領の選挙の時期だったこともあり,選挙を担当していたカール・ローブ大統領上級顧問は,ホワイトハウスや国務省に圧力をかけてきた.
 しかし,ブッシュ大統領はこう言って庇った.
「小泉はイラク問題を一緒にやってくれた.牛肉だけで,制裁はしたくない」
 義理堅い友情であるが,これはブッシュ政権の基本的戦略でもある.
 この政権には,前述したアーミテージやグリーンといった知日派がいた.
 彼らは,昔の米政府のように「外圧」では日本が変わらないことを熟知していた.
 外圧は逆効果で,日本国内に「嫌米派」を増やすだけだ.
 だから,大統領以下,日本政府への言葉遣いは,一貫して非常に練られた丁寧なものだった.

 一方,日本の官邸側は,イエスマンにはならず,言いたいことははっきりと言う姿勢である.
 かつての日米関係にはない,絶妙なバランスの上に立つ官邸外交であった.
 これをアーミテージ国務副長官は,
「日米関係最良の時代,ゴールデン・エイジ」という言葉で表現したのである.

――――――「週刊文春」2006/10/12号,p.28-29

 「忠犬」なんて物言いは難癖に過ぎないことが,このことからも分かる.▲


 【小林主体思想】(別名,マルチ・スタンダード)

 「諸君!」6月号で岡崎久彦,中西輝政,両氏が対談している.
 その中で,わしについての批判があるので反論しておく.

 2人は,イラク戦争の動機だったはずの「大量破壊兵器」の問題には一切をつぶって,開戦後に出してきた「独裁政権の打倒・民主化」というアメリカの都合としての正義を,本気で信じているのか,日本人に布教しようとしているのか知らないが,懸命にアメリカの正当性を話し合っている.

 フセイン政権が独裁だから「悪」という発想そのものが,幼稚だとわしは思うが…….

 「自由」「民主」という標語のみを絶対の正義と信じている姿は,かつての「所沢高校」の生徒を彷彿とさせる.
 それは「リベラル・デモクラシー主義者」 つまり,サヨクである!

 彼らの観点からは「歴史」というものが,すっぽりと抜け落ちている!

(小林よしのり from "SAPIO" 2003/6/11, P.56)

 岡崎・中西氏らポチ保守しょくんは,もう二度と
「日本人の歴史と伝統」
などと言わないでいただきたい.

 「自由」と「民主」を絶対の価値とするリベラリストとなって,かつての所沢高校のサヨク生徒と共に戦ってくれ!
「ケータイ持ってるか?」
「カメラ付きじゃねーと,自由と民主を謳歌してねーぞ!」

(同 p.62)

 【ツッコミ】
 一言で言えば,小林の曲解.

 まず,この「日本人の歴史と伝統」の「歴史」とは,その前のページで述べられている,
「せっかくの2000年の歴史を忘却していく」
を差すらしいのですが,彼らに必要であるべき歴史的観点とはどのようなものなのか,全く説明されておらず,意味不明です.
 「伝統」に至っては何の説明もありません.日本の長い歴史に生まれた様々な伝統文化の,どれのことなんでしょうかね?

 ここでも,小林や社民党などがお得意の詭弁手法「具体的には示さず,曖昧なままにしておく」が使われているわけです.

 また,WMDは「動機」そのものではありません.動機は「核拡散とそれによるテロの防止」であり,WMDの有無はその動機の論拠の一つに過ぎません.
 後出しジャンケンで,そのようなスリカエをすべきではないでしょう.

 それはさておき,岡崎・中西両氏が「「自由」「民主」という標語のみを絶対の正義と信じている」箇所,「懸命にアメリカの正当性を話し合っている」箇所は,同誌の対談からは見出すことができません.

 「懸命にアメリカの正当性を話し合っている」と小林が紹介している部分は,おそらく「浅薄な反戦平和主義」への批判の部分を曲解しています.
 以下に引用します.

中西 今夏のイラク戦争で目についたのは,ネオコンサーヴァティヴ(新保守派)というより,ネオリベラル(新自由主義)というかネオパシフィズム(新平和主義)の発作的な症状でしたね.
 とりわけ日本では,新聞・雑誌ジャーナリズムは反戦派と戦争容認派とが互角だったからまだしも,テレビは,仏独の『古い欧州』筋の情報に依拠しつつ,バランス感覚をすっかり忘れて連日反戦キャンペーンをやった.
 曰く,
『戦争になれば罪のない大量のイラク市民が傷つくから絶対戦争は避けるべきだ……,ラムズフェルド国防長官やウォルフォウィッツ国防副長官といったネオコンは危険だ!』
の一点張り.

 でも,NGOなどの調査では,全土制圧がほぼ終わった4月中旬の段階で,市民の損害は2千人程度で,英米軍の死者も150人程度だという.
 2千万人のイラク国民を人質にして立て篭もっていたフセイン一派を撃破したことを思えば,犠牲は極めて少なかったといえるんじゃないでしょうか.
 もちろん,亡くなった方々はお気の毒というしかないですが,昨年のモスクワ劇場占拠事件の時,800人の観衆を人質にとられたものの,百人以上の死者を出しつつも,テロリストと妥協しなかったプーチンに対しては,フランスもドイツも世界各国が『勇断だ!』と賞賛したことを思えば,今回のブッシュに対しても同じことが言えます.

 湾岸戦争のときと違ってフセイン体制を完全に打倒した点で,今回の戦争は『愚かな戦争』ではなく,まだ今のところ『賢い戦争』とまでは言えなくても,より明白に『正義のための戦争』であったとは言えます.
 人間は古来から『正義』と『平和』を天秤にかけて戦争を考えてきたのに,今回は戦争をする前からことさら『平和』や市民の犠牲のみを強調し,『正義』には一切目を瞑るようなことをテレビ・メディアが助長した.
 そのため,人類の叡智,人類の理性すらが損なわれかねない状況が生じたというのが,今回の戦争報道の特徴だった.
 それにつけても,いざ戦争が始まってからは,明けても暮れても,もう他のどんなニュースも後回しにして,
『市民の犠牲が……』
と異口同音に呪文のように唱え,これでもか,とばかりに負傷者の悲惨な情景を延々と映し出し,ニュース番組の有名キャスターたちが殊更な表情で何度も憂えてみせるのは,いささかうんざりというか,異様というしかありませんでした.

 岡崎 ワイドショーにはほとほと参りました.朝から晩まで浅薄な反戦平和主義と反米の繰り返しだけ.
 戦争が始まった時は,もうこれからはこんなことを聞かなくて済むとホッとしたくらいです.
 ところが開戦後は,
「人が死んだ.人を殺して良いのか」
の繰り返しばかり.
 こういう人に対しては,
「では,あなた方はサダム・フセインが毒ガスで殺したクルド人達や,処刑された反体制派,政治囚達にはなぜ今まで同情してこなかったのか?」
と言い返すだけで十分でしょう.
 フセインを打倒しなければ,まだまだ多くの市民の命が奪われていたのですから,それをストップしただけでも意味があった.

 中西 湾岸戦争が終わってから今日までの12年の間に,今回の戦争で亡くなった市民の百倍にも相当する20万人もの人々を,フセイン政権が粛清殺害していると言いますからね.
 それに,僅かではあれ,イラク市民が悲惨な被害に遭ったのも,その一部は,ロシアや北朝鮮がイラク軍に売り込んだとされる精密誘導妨害装置のせいだ,ということには全く触れていませんでしたね.
 イラク市民の犠牲を目一杯多くして,それを戦争に利用しようというのが,フセイン体制の狙いだったことははっきりしていたのに」

(「諸君!」 2003/6号,P.32-33)

 つまり,
「反戦平和主義に比べれば,まだ開戦支持のほうに利がある」
と言っているに過ぎません.
 両氏の論旨には論証が甘いように思われる部分もありますが,そういった点を批判するならともかく,具体例を示すこともなく,「懸命にアメリカの正当性を話し合っている」とするのは見当違いです.

 なお,この「浅薄な反戦平和主義」を批判している書として,小林よしのりの「戦争論」なる本があることも書き添えておきます.

 第2に,岡崎・中西両氏が「自由民主という標語のみを絶対の正義と信じている」箇所もまた見当たりません.
 「自由と民主主義」という言葉を使っている箇所はあります.
 しかしこれは,
「小林よしのりらの国際法の解釈には誤りがある」
ということから始まって,
「国際法は絶対平和主義を謳ってなどいない」
という説明の中で出てくるものです.

 掻い摘んで引用します.

中西 しかし今回,多くの反戦論で共通していたのは,アメリカが『国際法を無視して戦争を始めた』という声でした.
 その中でもおやっと思ったのが,さっきの小林よしのり氏が,
『逼迫した危機に対する自衛であること.
 国連決議を経て国際的合意を得ること.
 少なくとも以上2つを満たさなければ,自衛戦争にならない』
のだから,アメリカがイラクを攻撃したのは『国際法違反』『アメリカは確実に侵略者』だと決め付けていることです.

 いずれか一つで国際法上は合法なのですが,おそらく間違ったマスコミの解説報道のせいかもしれません.
 専門の国際法学者も
『国家体制を打倒する戦争は国際法違反である』
と語る例が少なくないようですが,日本のマスコミや識者は,国際法というならもう少し勉強して欲しいですな.

 岡崎 小林さんは素人としてはよく国際法など,あまり役にも立たない学問を勉強する気になったと,誉めてあげたくはなりますがね(笑).

 中西 戦後の日本ではいつもそうなのですが,そもそも日本の国際法学者の議論には,根本に重大な欠陥がある.
 近代国際法の父と言われるグロティウス(1583-1645)は,『戦争と平和の法』で,
『国家主権は絶対的なものであり,内政不介入という原則は国際法の原理である』
と指摘しており,日本の国際法学者達は,この系統の議論を金科玉条にして,アメリカは侵略戦争を行ったと批判しています.

 しかしこの文には,『とはいえ』という但し書きがあって,
『人類の敵のような人道に反する体制,独裁,圧政に対しては,外から内政介入してでも打倒することは,許されるべきものと言うに止まらず,名誉な行為ですらある』
として,武器を取って介入すべきことを奨励しているのです.
 つまり,『主権国家』が集まって『国際社会』があるものの,それとは別に『人類社会』,ラテン語で言うところの『マグナ・ユニベルシタス』があり,文明の原理からして,人類社会の基盤を揺るがすような悪に対しては,内政介入が正当化されるとされていたのです.

 この考えは18世紀になっても受け継がれ,現代国際法の直接の始祖であるバッテルも,その著『諸国民の法』の中で,
『ある国の内部に耐え難い圧政が出現したら,全ての外国は,圧迫された人民のために武力をもって介入し支援する正当な権利を行使しうる』
と言っている.

 ところが20世紀になって,とりわけ国際連盟(1920年発足)ができてからは,そういう議論が無視されるようになってしまいました.
 戦後,国際連合も発足しましたが,20世紀はグロティウスが説くところの『戦争と平和の法』の但し書が無視された世紀でもあったんです.『文明』より『平和』が最大の価値とされてしまった.あまりに大きな戦争の惨禍を前にして,『人類的正義よりも,とにかく平和』となったのです.

 しかし21世紀には,戦争の被害はこんなに小さくなりましたから,この点でも20世紀は終わるわけです.

〔略〕

 また,かつて核大国で全体主義国家だったソ連が,一応『民主ロシア』となり,核の全面戦争の脅威はなくなった.
 そこで『戦争から平和へ』と,歴史のパラダイムが再びシフトするわけです.
 『正義』という言葉がいやなら,『文明』と言ってもいい.あるいは,この『文明』は,『自由と民主主義』と言い換えてもいいでしょう.

 今回のイラク戦争にしても,一昨年のアフガーン攻撃,99年のコソボ空爆にしても,『文明』を破壊しようとするテロ勢力やならず者国家への内政介入的な制裁戦争を行うことによって,人権侵害の続行と拡大を阻止することができるようになった.
 ですから21世紀においては,『文明の敵』『自由と民主主義の圧殺者』を打倒する『正義のための戦争』を正面から肯定する新しい国際法体系が再び求められているわけです.

 そこでは勿論,こういう制裁戦争への一定の歯止めは必要であり,それが国連安保理決議だという意見がありましたが,安保理は既に破綻した,20世紀の遺物だという事が,今回非常にはっきりしました.
 問題の一つは,まだしもましな圧政と耐え難い圧政の線をどこに引くか,ということだと思いますが,自国民の大量虐殺や,体制悪によって何百万という餓死者を出すのは,明らかに『耐え難い圧政』と見なされるでしょう.

 岡崎 『自由と民主主義』という文明的価値観が,かくも世界的に支持されるといった事態は,人類史上初めてでしょう.
 アメリカは,自由と民主主義,そして人間性を尊重する政治原則を,外交政策の上でも重視していくとの世界戦略を打ち出しています.
 これは,ウェストファリア条約前の中世において,カソリックが絶対的価値を体現し,カソリック以外は人に非らずと見なされていたのにも匹敵するほどのことだと思います」

(「諸君!」 2003/6号,P.35-37)

 さて,ここで問題.上の引用文の中で,「自由と民主を正義と信じている」のは誰でしょう?
 岡崎・中西? 違いますね.「文明的価値観」が,そう信じるようになってきた,世界的に支持されるようになってきた(と,岡崎・中西が考えている),ということですね.

 繰り返しますが,中西らの主張を全面肯定するものではありません.疑問点もなくはない.
 しかし少なくとも,曲解を基にして「所沢高校の生徒と同じだ」「サヨクだ」「ポチ保守だ(これの定義はいまだに明らかではありません)」とレッテルを貼るような愚は冒したくないものですな.

 【珍説】
 「自由」と「民主」と言う標語のみを絶対の正義と信じている姿は,かつての「所沢高校」の生徒を彷彿とさせる.
 それは「リベラル・デモクラシー主義者」,つまり,サヨクである!

(小林よしのり from "SAPIO" 2003/6/11, p.56)

 【事実】
 「リベラルデモクラシー = 所沢高校」とかいう表現にも笑わせてもらいました.
 そもそもリベラル・デモクラシーってのは,民主政が過剰にならないように(大衆による多数者専制,人民独裁など),自由主義的諸原理(政治的代表制,法の支配,司法審査制など)を組み入れたもの.
 ヨーロッパが昔から築いてきた伝統的な知恵ですよ.
 それを所沢高校のプロ市民と同一視するって,アホすぎ.

 まあ「リベラルデモクラシー」の字面だけで判断しちゃったんだろうねえ.
 西部邁も,ちょっとは教育してやれないのか?

 あと,所沢高校の連中はイラク戦争反対でしょ.
 ああいう奴らって100パーセント小林に近い.
 「左翼=人権,自由」と未だに本気で思ってること自体,典型的な「古臭いブサヨ」そのもの.

 こんな理屈がまかり通るなら,北朝鮮は右翼で,アメリカと日本は左翼だということになるよ.
 だいたい左翼が,
「イラクの人権改善のために戦争賛成」
なんて口が裂けても言わんしね.

 以上,今週号でも人権の傘にきて言論の自由を謳歌しまくる反体制左翼漫画ゴー宣への批評でした.

(エセ保守監視小屋)


 【小林主体思想】(別名,マルチスタンダード)

 中西氏は,アメリカを正当化するために,次のような趣旨の発言をしている…

 近代国際法の父,グロティウスは,『戦争と平和の法』で,
『国家主権は絶対的で,内政不介入は国際法の原理』
としたが,この文には,『とはいえ』と但書があって,
『人類の敵のような人道に反する体制,独裁,圧政に対しては,外から内政介入してでも打倒することは許される』
と書いてあるのです.

 だが周知のように,今回,国際社会の場で,
「フセイン独裁体制は人道上,打倒すべきか否か?」
などという議論は行われていない.

 「独裁体制」が問題だったのではなく,「大量破壊兵器の有無」が問題だったはずだ.

 ましてや一国の体制打倒をアメリカが決めていいという国際法はない.

(小林よしのり「戦争論」3,p.104-105)

 【ツッコミ】
 上述の引用からも分かるように,小林のこの「引用」は,一部を抜き出して文意を歪曲する,お馴染みのトリックですね.

 原文の前後を読めば分かるように,小林が引用している部分は,実は,戦争と平和に関する歴史のパラダイス・シフトを中西が説明している部分の一部です.
 その一部だけを,いかにも中西がアメリカを擁護しているかのように,持論に都合のよいように小林は抜き取ってきたわけですな.

 その上で,
>「フセイン独裁体制は人道上,打倒すべきか否か?」
>などという議論は行われていない.
などと,小林の空想の中の「中西の論理」に反論していますが,そのような行為をしたところで,現実世界の中西に対する何の反論にもならないことは,言うまでもありません.


 【小林主体思想】(別名,マルチスタンダード)

 アメリカが最後通告で言った
「フセインよ,降伏しろ.
 さもなくば戦争だ」
が,国際法の前例から見て無茶苦茶だと,さすがに岡崎氏も認めて笑っている.

(小林よしのり from "SAPIO" 2003/6/11, P.56)

 【ツッコミ】
 後段を勝手に切って,文意を捻じ曲げているとしか思えません.

 「諸君!」 2003/6号の該当箇所(p.37最終行〜p.38)で岡崎が述べているのは,
「前例がない形式の通告だが,しかし,国際法は刻々と変わっていくものである」
ということです.

 以下に抜粋します.

岡崎 ところで,今回のアメリカのイラク攻撃が,旧来の国際法から見て違反かと聞かれれば,確かに違反の側面はある.
 だって,ブッシュの最後通牒は
『サダム・フセインと彼の息子は48時間以内にイラクを離れろ.
 さもなくば,彼らは,我々が決めた時間に軍事的衝突に直面することになる』
というものだったでしょう.
 国際法に則った最後通牒ならば,ハルノートではないけど,
『我々の条件はかくかくしかじかであり,これらを守らなければ攻撃する』
といった具体的な条件のものであるべきですが,今回のアメリカは,要するに
『フセインよ,降伏しろ.さもなくば戦争だ』
という主旨の最後通牒ですから,国際法の前例から見て,無茶苦茶と言えば確かにその通りです(笑).

 でも,憲法9条の解釈だって,制定時と今とでは変遷し,変わったように,国際法も日々変動して行くものです.
 例えば攻撃の前の2/26に,アメリカン・エンタープライズでブッシュが演説をしていますが,これはさっそくロンドン・エコノミストが『ニュー・ブッシュ・ドクトリン』と名付けています.
 掻い摘んで言うと,
『イラク攻撃の目的はイラク解放≠ナあり,イラクの自由化,民主化,ひいてはパレスチナ問題の解決,中東全域の自由化,民主化を目指す』
というのです.
 大量破壊兵器の破棄は,目的の一つでしかないという.

 こういった理念が戦争目的になってくるということは,過去にもあった.
 まず,大東亜戦争がそうですよ.
 昭和16年の開戦の詔勅では『自存自衛のための戦い』であったけれども,昭和18年11月の大東亜会議以降は,東アジアの植民地を独立させ,解放するのが最大の目的になったのは事実です.
 しかし当時,他国の植民地を解放するために侵攻すると言うのは,内政不介入を原則とする国際法違反の最たるものだったはずですが,大東亜戦争後は,逆に植民地解放は正義の戦争になった.
 だから,フランスやオランダが,ベトナムやインドネシアを再支配しようとしても結局上手くいかなかった.

 国連憲章にしても内政不介入を原則としているから,戦後初期の段階では,
『植民地を保有することに他国が干渉するのは国際法違反だ』
と思われていた時期があったんですが,こういうふうにパラダイムが変わり,国際情勢が大きく変動すれば,国際法や国連憲章の解釈も自ずから変化していく.
 今も,その端境期と言えるでしょう」

 大東亜戦争を巡る岡崎の解釈には疑問点もありますが,岡崎がどんな点を主張したかったかは,これを見れば自明でしょう.

 【小林主体思想】
 慣習法としての「国際法」や,日本が敵国条項に入れられている「国連」を,信仰してもしょうがないが,

 そうまで「国際法」が無意味だというのなら,
なぜ「国連を脱退せよ!」と主張しない?
 そう言わないのはなぜだ?

(同)

 【ツッコミ】
 岡崎・中西も,国際法が無意味とは言っていないわけで.
 岡崎が「無意味」としているのは,「『国際法』『国連憲章』を絶対視して,この是非善悪を評論家的に論じ」る,例えば小林がやったような行為のことのほうなのですが.

中西 国際法や国連憲章が,あたかも国内の憲法や諸法の如く,国際社会に絶対的なものとして存在すると考える,『地球市民主義』というか『ネオ・ユートピア主義』も見られましたが,実はちっとも古くない,むしろ古色蒼然たる圧制容認の絶対平和思想で,全くナンセンスなこともはっきりしました」(P.38)

岡崎 結局,国際社会は主権国家の集まりであって,そこは『法の支配』があまり及ばない所だという認識を持つことが必要ですよね.
 現実に実効力を持たない『国際法』『国連憲章』を絶対視して,この是非善悪を評論家的に論じても意味がない〔強調:サイト管理者〕.
 意味があるのは,国際情勢の正確な潮流を掴んで,日本国と日本国民の利益を最大限に生かすような行動を,政府がとることです」(P.39)

 小林は,本当にこの対談を読んだのか?という疑問すら覚えます.
 まさか,スタッフに代読させ,小林は要点を纏めさせたものを見てるだけ,というんじゃないでしょうね?
 なお,SAPIO誌上における落合信彦のように,国連脱退論を唱える人も存在します.
 小林は,少しは自分の漫画が掲載されている雑誌の,活字の記事も読んではいかがでしょうか.(ちなみに「日本にも核武装を!」論でも,同じSAPIO執筆者である潮の寄稿を読んでいないことが丸分かりな主張を小林はしていますね.活字も読みましょう).
 他にも「日本は国連脱退か,改憲か,どちらかを選べ」と主張する小室直樹のような人もおります.
 5分,google検索しただけで見つかるわけですから,他にもまだまだいるでしょう.

 「脱退せよ!」と主張していない人間も,そうしないのは国際法に意味があると思っているからではありません.
 例えば古森義久は,その著書「国連幻想」において,国連に対する錯誤の認識を捨てるべきだと主張.
「国連を日本にとって多数ある外交の道具の一つとして扱わねばならない」
と,幻想を壊して現実を直視することを彼は訴えています.
 このように,「国連には使える部分もあるから,闇雲に捨てることもない」が,大勢ではないでしょうか.

 まして日本には,「国際連盟」から脱退し,戦争への坂道を転げ落ちた苦い記憶があります。
 歴代の総理大臣が幾度となく「国連を重視する」と発言しているのも,そうした民族的記憶があるからでしょう.
 編者の私見ですが,「あつものに懲りてなますを吹く」ではないかと思えるような姿勢が,国連に対する日本政府のそれにあるように思えます.特に「常任理事国入り狂詩曲」など見ていますとね.
 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 国連も国際社会の縮図であり,国益が衝突し,対話される場でしかないのだ.
 親米保守派も,結局,サヨクと同じで,国連を超越的存在とでも見なしていたのだろう.
 まるで子供である.

 今からでも遅くはない.
 「国連脱退」を主張しろ!

(小林よしのり「戦争論」3,p.107)

 【ツッコミ】
 対話される場所なら,わざわざ国連を経由しなくとも,いくらでもチャンネルはありますな.
 したがって,そんな場でしかないのなら,別に巨額の国連拠出金を各国が出してまで,そんなものを維持する必要がないわけですが.

 それとですな,……
今からでも遅くはない.
「国連を超越的存在と見なしていた親米保守派」の名前を言ってみろ!

 勝手に自己のイメージする架空の存在を作りだし,それを批判して悦に入っている.
 まるで子供である.

 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 「国連」に関しても,今回のイラクの件で,
「機能停止している」
と,親米保守派は口をそろえた.

 だが逆だ.
 国連安保理が,珍しく存在を誇示した!

 アメリカの言い分を承認しなかった.
 米英は国連での多数派工作に敗れた.

(小林よしのり「戦争論」3,p.107)

 【ツッコミ】
 当時の国連機能不全論を誰が言ったか知らないが,安保理常任理事国に拒否権を認めたため,国際連盟よりチョイマシ程度の紛争防止能力しか持たなくなったという批判は,半世紀前から言われ続けていた.
 安全保障はスピードが肝要にも関わらず,拒否権発動の度にイチイチ再提議では,実際には何処も動けないという事だからな.

 で,イラク戦争前もフランスが拒否権チラ付かせてまで,自国のイラク武器輸出利権を守ろうとしたわけだから,こういう旧来からの批判も一気に盛り上がったわけだ.

 んで,蓋を開けてみれば,フランスを初めとする反対派各国の要人だけでなく,アナン事務総長までイラクO-f-F汚職に関する疑惑を追及されている始末.
 結果的に見ても,イラク戦前当時の
「国連は機能不全に陥っている」
と分析した人間のが当たっていた.

 フセインがイラク共和国の財産たる石油をくすねて作った汚い金をポッポに入れてすましてた連中が,唯でさえ機能不全気味な矛盾を抱えた国連を,さらに正常に機能させまいとして頑張っていたわけだから.

 それと,よしのり的な国連の存在意義ってのは,アメリカにNOを言う事らしいが,何時ものように彼は何かを根本的に勘違いしてるんでないかと思ってしまうのは,俺だけじゃあるまいて.

(軍事板)


 【珍説】
 わしが今回のアメリカの攻撃は,「国際法違反」で「侵略」であると主張したのを,親米保守派の中西輝政氏が見たらしい.
 岡崎久彦氏との対談で,わしを名指しで批判.
「国際法なんか役にも立たない.
 国連なんか非力だ」
と,まるで不良少年みたいに言い合っているのである.

(小林よしのり「戦争論」3,幻冬舎,p.104)

 【事実】
 上述のように,「不良少年みたい」どころか,中西は理路整然と反論しています.

 SAPIOで書き,戦争論でもまた触れるとは,よっぽど悔しかったんだね.


 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 そもそもアメリカのイラク攻撃の目的自体が,
「大量破壊兵器」から,
「体制転換」へスライドしてしまっている事実を見ても,
「覇権的先制攻撃」
=「侵略」
だった証拠である.

(小林よしのり「戦争論」3,幻冬舎,p.104)

 【ツッコミ】
 プロパガンダの言葉が色々変わるのは,戦況の変化に応じてどこの国でもよくあることで,それ自体は何の証拠にもなりませんが,何か?


 【質問】
 イラク戦争支持を表明した日本の態度を,アラブ世界はどう見ているか?

 【回答】
 むしろ驚きの目をもって見ている.
 アメリカと組んだのはけしからん,といった受け止め方よりも,日本はなかなか立場を明らかにしない国だと思っていたが,今度は偉く思い切りよく物を言ったな,という感じのほうが強い.

 中東問題に関わっていく上では,人の恨みを買わぬよう上手に立ち回ろうとしても無理です.
 結局,現在の中東の姿と形は,力と力がぶつかり合う中で自ずからできあがったもので,和やかな話し合いで丸く収まるような生易しいものではない.
 どの陣営にも属さず,手も汚さないというような態度だけでは,何もできないのです.

 今回の件で,日本に対する反発が,思ったほど生じていないのは,アラブの人々にとって,いずれかのサイドに身を置くことは当然だろう,という割り切りがあるからだと思います.

(山内昌之〔東大教授,歴史学者〕 from 「諸君!」,2003/6号,P.59)


 【質問】
 ドイツはイラク戦争にどんな協力をしたか?

 【回答】
 地中海には艦艇と海軍兵士を,クウェイトには大量破壊兵器早期発見探査機〔原文ママ〕と陸軍兵士110人を,トルコには空中警戒管制機と空軍兵士を派遣しており,医療チームも活躍している.負傷兵は海外では最大規模の,ドイツ南部所在の米軍病院で手当てを受けることになり,そのヘルプに携わるのだ.
 さらに,イラク戦争で召集を受け,無人となった米軍基地におけるテロなど不測の事故防止のために,日夜警護に当たっているのもドイツ連邦軍である.
 ちなみに,欧州における米軍の駐留規模は,ドイツがダントツの欧州一である.
 米軍は欧州各国に駐留しているが,各国は嫌々それを受け入れているわけではない.駐留軍による地域への経済効果もあるが,最大のメリットは,米軍が持つ様々な情報を交換できる点にある.特に,大量の移民を抱えるドイツでは,このメリットは計り知れない.
 表面上は対立しているように見えても,机の下ではガッチリ握手――これが国際政治である.国連での猿芝居を信じていても,現実は見えてこない.

(クライン孝子,ノンフィクション作家,from SAPIO 2003/4/23, P.49,抜粋要約)


 【質問】
 中国政府は,イラク戦争をどのように報道したか?

 【回答】
 中国国営の中国中央電視台(TV)は,共産党政権始まって以来,初めて24時間ぶっ続けで戦争報道を行った.
 しかも,アメリカ側の戦果を挙げるだけでなく,この戦争は「正義の戦争ではない」と指摘し,米英軍の攻撃によってイラク国民に多数の死者が出たことを,ことさらに強調してみせた.

 さらに重要な点は,中国中央電視台はイラク戦争の報道を,愛国主義や民族教育を高揚させることに利用したのである.
 とりわけ中国指導部は,イラク政府の主権侵害の非道性を強く主張した.
 これは,米軍の北韓攻撃を牽制するための布石ともいうべき「妙手」であろう.

(ウィリー・ラム,a journalist, from "SAPIO" 2003/5/28)


 【質問】
 イスラエルは,イラク戦争に対してどのような動きを見せているか?

 【回答】
 ニューヨーカー誌,セイモア・ハーシュ記者の記事によると,イスラエルはイラク北部のクルド人地区でクルド人に訓練を施している.
 その目的は,
・シーア派の民兵に対し,均衡を保つため
・クルド人と協力することで,彼らをイラン,イラク,シリアに対する「イスラエルの目と耳」にするため

 元イスラエルの情報部員の話では,
「イスラエルはサダムに対しバランスを取るため,敵の敵は味方ということで,クルド人を常に支援してきた .
 そうすることでイスラエルはイラク,イラン,シリアに対する目と耳を得ることができる」
とのこと.


 【質問】
 イラク戦争開戦前,戦争にかかるコストは,どのように見積もられていたか?

 【回答】
http://job.toyokeizai.co.jp/izu/07bush.html
によれば,国際戦略研究所(CSIS)の試算によると,4 〜5 週間の短期戦で550 億ドル,6 カ月以上の長期戦で1,200 億ドルが見込まれていたという.
 エール大学のノルドハウス教授の計算では,向こう10年間で最低1,000 億ドル,最高で1 兆6,000 億ドルかかり,もっとも可能性の高い予想数字では,向こう2 年間で約4,000 億ドルの財政負担増になると計算されていたという.

 また,石油価格が高騰すると,景気刺激策(10年間で6,000 億ドルというブッシュ・プラン)のすべてを帳消しにするだけではすまず,CSISの予測では,対イラク戦争がいかなる状況になろうとも,戦争が起こったというだけで,株価は25%下落する可能性がああり,雁に戦争が6 〜12週間も続くことになれば,株価はさらに下がり,逆に石油価格は高騰し,金利も上がると推算されていた.


 【質問】
 イラク戦争開戦時,イラク軍はどれほど弱体化していたのか?

 【回答】
 以下の図表参照.

 これに練度や士気,レーダー網の壊滅ぶり,兵器の更新まで考慮すると,数値以上に弱体ぶりは激しかっただろうと推測される.


 【質問】
 イラク戦争ではクラスター爆弾の評価は高かった?

 【回答】
http://www.globalsecurity.org/military/library/report/2003/3id-arty-oif.pdf
 第3歩兵師団第3旅団のpptファイル(pdf変換)では不発弾率が高いけど基数の半分を占めてたともあり,いやいや使っていたことになっている.
 その一方でSADARMとHEは褒められている.

 つうことで,イラク戦争の通常戦闘段階ではクラスター弾頭の評価は高くない部隊もあったとは言えます.

http://www.globalsecurity.org/military/library/report/2003/uscentaf_oif_report_30apr2003.pdf
の11ページ目が,空軍など航空戦力が使った弾薬の内訳.
 CBU-87,CBU-82はごくわずか.
 GBU-12,Nk-82,GBU-31 JDAMの順かな.

 つうことであれね,クラスター爆弾を使う機会はそんなに無かったみたいよ.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【珍説】
 「象とアリ」の兵力差と言われていたのに,あの超近代兵器を相手にたいした戦意だ.
 フセイン政権もイラク国民も「衝撃と恐怖」など,ちっとも味わってない様子だ.

(小林よしのり from SAPIO 2003/4/23, P.55)

 【事実】
 開戦直後から士気は一気に低下していた.

 共和国防衛隊元大佐 BBCインタビュー 4/12日

「中央からの指令は,開戦とともに途絶えた」
「開戦直後から,明らかな戦力格差を実感していた」
 フセイン政権への忠誠心の高いとされた,兵士の士気も一気に低下.
「毎日二人,三人と去っていく部下を引きとめはしなかった」と振り返る.
「バグダッドは兵士たちの故郷であり,自分の家や家族もいる」
と述べ,だれも首都での市街戦を望まなかったと指摘した.
 戦闘計画も指令も届かない状況で,司令官達は火を囲んで集まり,
「命を賭してまで戦う価値のない戦争だ」
との結論に達した.

 『正論』での田中光四郎という爺さんの論文が面白い.
 この爺さんはホンマか知らんけど,昔旧ソ連がアフガンに攻め込んできた時に,ムジャラヒンと義勇兵になって6年も寝食を共にして戦ったらしい.

 それで今回もイラク兵とともにアメリカのイラク侵略に対して,志願兵として命を捧げる覚悟でイラクにのりこんだらしい.
 〔略〕
 そこからが面白い.
 なかなかこのおっさんも小林に近い考えなのおっさんだが,体で体験したらしいね.(大笑い
イラク人が侵略者と全く戦う気がないことに.ガッカリしたらしいよ.

 まあ読んでみそ.
「小林の言ってることは正しかった」
とかが完全に勘違いなのがわかるから.
 大東亜戦争とは似ても似つかない,全く共通性のないものだということがよくわかるよ.

マスコミ板,2003/07/31 22:32


 【珍説】
 フセインが独裁政権であり,国民はアメリカに解放されたがっているという手前勝手な妄想は,開戦1週間で破綻した!
 イラク南部のシーア派の町でさえ,ライフ・ラインを破壊されて米軍の支援物資に殺到した民衆達は,反米感情を露わにした.

(小林よしのり from SAPIO 2003/4/23, P.56)

 岡崎氏は,
「バクダッドの市民は歓喜の渦となってフセイン政権の崩壊を祝福するだろうと予測しました」
と,鼻高々.

 アホか!
 その場,その場で支配者に媚び売るしかない市民の様子に,人間の憐れさやしたたかさを読みなさいよ.
 子供じゃないんだから!

(小林よしのり from "SAPIO", 2003/6/11)

 【事実】
 その後の報道によれば,民衆の中にバース党員が混じって監視の目を光らせており,アメリカ万歳など叫べる状態になかったという.
 シーア派住民は湾岸戦争のときに,打倒フセインを性急に叫んで弾圧を食らった結果,本当にフセイン政権が今回は倒れるかどうかに慎重になっており,フセイン政権が実際に崩壊するまでは,どの地域でも喜びを露わにすることはなかった.

 このことは,バスラ陥落直後,同市のシーア派のイスラーム法学者が
「まだ,バース党員や秘密警察が周囲にいるから,住民はフセインを称える言動をするしかないんです」
とはっきりと言ってるのが報道もされていたはずだが…….
 また,2003/4/10発売の週刊新潮誌上において,フリージャーナリストの橋田信介氏によると,監視のいきわたらないところでは,約90パーセントのイラク人は,ウェルカムといってたそうである.あるホテル従業員の中年女性に,米軍の侵攻が迫ってることを告げ尋ねるとなんと踊り始め,造花を指差して,これを差し上げると言ってたという.

 手前勝手な妄想はどっちかな?

 【珍説】
 今のイラクの険悪な反米状況を見たら,どっちが正しいか明白だね.
 FAQにはイラク人の反米感情を否定するような話を,【事実】などと決め付けているが,どっちが珍説かは今となっては明らか.

 【事実】
 フセイン打倒直後の話とイラクの治安回復に苦戦している現在とを比較されてもねえ.
 フセイン打倒は歓迎してたとは思うが,治安が回復せず,アメリカが居座るとは思ってなかったというのが妥当.

 イラク世論調査結果の推移を見るに,アメリカの占領行政の様々な不手際っぷりに,当初それなりにあった好意が消えた,ってところじゃないですかね.

(名無し四等兵 ◆clHeRHeRHo他 in コヴァ板)


 【珍説】
 バース党も何度も記者会見して,国を守るために戦っているのは軍だけじゃないぞとアピールしだした.(サハフ情報相らしき人物の記者会見が映っているTVの絵)
 民兵がアメリカの無人偵察機を撃ち落とし,1機26億円のアパッチ戦闘ヘリをじじいが撃ち落とした!
 もはやイラク国民は結集し,祖国防衛戦争となってきた.

(小林よしのり from SAPIO 2003/4/23, P.57)

 【事実】
 アホ過ぎ.

 バース党が軍を牛耳っていたのだから,前に出てくるのが当たり前.
 党主導の軍隊であるのは,旧ソ連などと一緒.

 無人偵察機は要はビッグ・サイズのラジコンであって,撃ち落とせても少しも不思議ではないし,「ヘリをジジイが撃ち落とした」というのは,イラク国営TVで報道された当時から,専門家も軍事マニアもその信憑性に懐疑的であったし,実際,それはただの捏造プロパガンダに過ぎなかったことが,戦後に明らかになっている.

 また,共和国防衛隊元大佐がBBCインタビュー(4/12)に答えて語ったところによると,
「中央からの指令は,開戦とともに途絶えた」
「開戦直後から,明らかな戦力格差を実感していた」
 フセイン政権への忠誠心の高いとされた,兵士の士気も一気に低下.
「毎日二人,三人と去っていく部下を引きとめはしなかった.バグダッドは兵士たちの故郷であり,自分の家や家族もいる」と述べ,だれも首都での市街戦を望まなかったと指摘した.
 戦闘計画も指令も届かない状況で,司令官達は火を囲んで集まり,「命を賭してまで戦う価値のない戦争だ」との結論に達した,という.

 全然結集してないやん…….


 【珍説】
 さらにアラブ諸国から5000人以上のムジャヒディンが入ってきて義勇兵となっている.
 イスラム対キリスト教の戦いにもなってきた!(太字原文ママ)

(小林よしのり from SAPIO 2003/4/23, P.57)

 【事実】
 まず,ムジャヒッディーンという言葉はジハードに赴く戦士に対する呼称であって,アルカーイダのようなイスラーム過激原理主義者というイスラーム系カルト宗教信者への呼称ではない.

 イラク戦争をジハードと見なすかどうかは,イスラーム法学会では見解は分かれている.今回の戦争については,支持できないがサダム・フセインが排除されるのは望ましいことだとするのが,一般的な見解(酒井啓子)だからである.

 また,イラク戦争に駆け付けた過激原理主義者達が目指しているのは,イラクで可能な限り多くの米兵の血を流させ,アメリカの国力を消耗させることであり(発見されたアルカーイダ幹部の文書から),そのためにはイラク人の命など幾ら巻き添えになっても構わないと考えているようである.なぜなら,これまでテロによって米兵に数倍するイラク人の命が奪われているからである.

 「イスラム対キリスト教の戦い」を声高に叫んでいるのは彼ら過激原理主義者であり,そのような対立を引き起こしたいという願望の現れ(藤原和彦)である.
 小林はなぜ,イスラーム系カルト宗教の広告塔のような真似をするのか,理解できない.
 SPA!降板を巡るドロドロでは,真相が別にある(宅八郎他「教科書が教えない小林よしのり」)かどうかはともかく,小林は対外的には,
「オウム真理教の広告塔まがいのことをする雑誌とは,一緒にはやっていけない」
からこの雑誌を降りたと説明していたはずだが.


 【珍説】
 そして今(開戦1週間後)やスンニ派もシーア派も,この戦争が異教徒の侵略に対するジハード(聖戦)だと声明を出した.

(小林よしのり from SAPIO 2003/4/23, P.62)

 【事実】
 声明自体は誰でも出せる.本来資格のないはずのビン=ラーディンやムハンマド・オマルまでがジハードのファトアー(布告)を出したことがあるほど.

 どうも小林はイスラームを,キリスト教のバチカンのようにただ一つの権威が頂点にある宗教と勘違いしているようだね.

 そしてまた,イラクのシーア派にも影響力のあるイラン最高宗教指導者が,フセイン政権崩壊を歓迎していたりする.

 テヘラン(CNN) イラクの隣国イランの最高指導者ハメネイ師は11日,テヘラン大学での金曜礼拝の説教で,「(イラン・イラク戦争中に)イランを苦しめた独裁者サダムが去り,我々もうれしい」とフセイン政権の崩壊を歓迎する考えを示した.

http://www.cnn.co.jp/world/K2003041200947.html


 【珍説】
 サダム・フセインの銅像引き倒しは米軍の「やらせ」である.

(小林よしのり from SAPIO 2003/5/14, P.58)

 【事実】
 一つの映像が「帝国の勝利」のシンボルとして世界を駆けめぐった.バグダッドに侵攻した米海兵隊に引き倒されるフセイン像.ブッシュ米大統領は「倒したぞ」と叫んだ.
 一方,中東では「侵略の象徴」と受けとめた人が多かった.
 だが,繰り返し流された映像から,抜け落ちている事実がある.
 最初に像を倒そうとしたのは,近くに住むイラク人たちだった.

 朝日新聞は現地取材で,中心的な役割を果たしたイラク人らの証言を得た.

 開戦21日目の4月9日午後4時ごろ,バグダッド中心部.
 電気工のハイダル・アブドルザハラ(27)は「米軍が来た」という叫び声に家を飛び出した.
 通りに米軍の装甲車が見える.親友を呼んだ.「約束を実行する時だ」
 彼は戦争前から近くに住む親友たちと「戦争で体制が倒れたら,おれたちはあのフセイン像を倒そう」と話し合っていたのだ.

 ハイダルはイスラム教シーア派だった.シーア派はイラク人口の65%を占めるが,フセイン体制下で抑圧されてきた.
 南部バスラ出身で高卒のハイダルは,兵役を終えた2年前にバグダッドに移り住んだが,技能にふさわしい職は得られず,アパートの守衛で生活費をかせいでいた.「フセイン体制では何も希望がなかった」のだ.

 フセイン像は,彼らの家から歩いて約5分のフィルドウス広場に立っていた.その真ん前に外国メディアの宿泊所であるパレスチナ・ホテルがあり,屋上などにTVカメラが並んでいた.
 ハイダルは友人とともに8人で広場に向かった.周辺の道路は米軍の戦車と装甲車などで埋められていた.
 彼らが広場に着いた最初のイラク人だったが,その後も続々と集まり,30人以上になった.
「倒せ,倒せ,サダム」と沸き上がる大合唱.
 そのなかでハイダルらの知らない筋肉隆々の男が一心不乱に,フセイン像の立つ台座に,ハンマーを打ち下ろしていた.=敬称略

●チャンピオン
 フセイン像の台座部分にハンマーを打ちつけていたのは,イラクの元重量挙げチャンピオン,カジム・シャリフ(46)だった.彼は広場から1キロほど北で自動車販売・修理業を営んでいた.
 「米軍がバグダッド北部のサダムシティーに入った」というニュースを衛星テレビで見た.
 突然,「フセイン像を自分の手で壊そうという思いがこみ上げてきた」という.

 70年代から90年代にかけて,重量挙げのイラク代表として,アジア大会や世界マスターズ選手権に出場した.が,「売買した車の中に治安警察所有のものがあった」という心当たりのない容疑をかけられ,9年の実刑に.恩赦を得られたものの,結局1年半服役した.

 選手時代も,オリンピック委員会会長を務めるフセイン元大統領の長男ウダイが,国際大会で良い成績を出せなかった監督や選手を辞めさせるなど,好き放題するのを見てきた.
 この日朝から,イラク兵やバース党民兵の姿は通りから消えていた.市中心部の政府施設では略奪が始まっていた.旧秩序は崩壊したのだ.
 カジムは言った.
「ある者は銀行のドアを壊しに行った.私はフセイン像を壊しに出た.それが私の最も望んだことだからだ」

●はしごとロープ
 ハイダルの仲間のなかで最年少のハサン・アブドルバーリ(17)は,広場に入って,フセイン像を見上げた.身長約10メートルの像が高さ約5メートルの台座の上に立っている.
 ハサンははいていたサンダルの片方を,像に投げた.1回目は外れた.また投げた.像の背中に当たった.
 引き倒すには,はしごが必要だった.ハリド・サルマン(30)が,アリ・アニース(20)に
「はしごを持って来てくれ」
と声をかけた.

 ハリドは大学卒だが,望んだ職が得られず,近くの駐車場で守衛をしていた.アリもこの駐車場で紅茶を作って売っていた.
 彼らは駐車場に電話工事用のアルミ製のはしごが置かれていたのを知っていたのだ.

 アリは02年秋に北部モスルを拠点とする共和国防衛隊の新兵になったが,イラク戦争開戦10日前に部隊を離脱した.
 戦争中は警察に見つからないように必死だった.
 米軍の姿を見て「もう隠れなくていい」と思った.

 アリがはしごを持ってくる間に,ハイダルは米軍の装甲車の側面に巻かれていたロープを借りようとした.米兵に向かってアラビア語で叫んだ.
「ハベル(ロープ)をくれ」
 フセイン像を指し,両手でロープを引っ張るしぐさを繰り返した.
 米兵は「ノー,ノー」と手を横に振った.
 だが,ハサンがなおも続けると,米兵は意味を理解したのか,ロープを外して下に投げた.
 ハリドが最初にはしごを昇り,台座に乗ってアリを引き上げた.
 続いて,ハンマーを持ったカジムが台に上った.カジムは台の上でも像の足をたたき続けた.
 見知らぬ若者がロープを像の首にかけた.アリが片方の端を受け取って降ろした.
 何人かがロープを引っ張った.びくともしなかった.

●星条旗
 今度は米海兵隊員が特殊車両に乗り,首にチェーンをかけた.拍手がわいた.
 だが,海兵隊員がフセインの顔に星条旗をかぶせようとすると,拍手がやむ.
「ノー,ノー」
 イラク人たちは,一斉に叫んだ.
 米兵は星条旗を外した.
 エジプトの衛星テレビのイラク人女性リポーター,メイスーン・ムサウィ(35)が
「イラクの旗を掛けよう」
と叫んだ.
 若者たちが近くのホテルの壁に掛かっていたイラクの旗を取ってきて海兵隊員に手渡した.
 ところが
「フセインと一緒にイラクが倒れるのはだめだ」
と声が上がった.イラク旗も外された.
 首にかけたチェーンを米軍のクレーン車が引っ張り,フセイン像は音をたてて傾き倒れた.
 拍手が上がった.

●広場の夢
 倒れた像に人々が群がった.ハサンもサンダルで頭をたたいた.
「サダムは終わりだ.独裁は終わりだ」
と叫び続けた.
 イラク人は自力で倒すことができず,最後は米軍が倒した.しかし,ハイダルはこう思う.
「米軍はイラク軍の抵抗も民衆の抵抗も受けずにバグダッドに入った.イラク人がフセイン政権を見放していたからだ.私たちがフセイン像を倒そうと考えた.米国は最後に手を貸しただけだ」

 戦後,ハリドのところに外国人ジャーナリストが来て,
「像を倒したのは,米軍から金をもらったからだろう」
としつこく質問した.

 ハリドが否定しても,また同じ問いを繰り返した.
 彼らにとって像が立つ広場は,涼しい夜に仲間たちと集う場だった.
「息苦しい体制のもとで,この像が倒れる日を私たちはひそかに語り合い,夢見てきた.なぜ,私たちが夢を実現させるために自ら動いたことを信じないのか」
(敬称略)

(バグダッド=川上泰徳,朝日新聞2003年7月29日朝刊紙面)


 【珍説】
>米軍の装甲車の側面に巻かれていたロープを借りようとした.

 へええ,装甲車ってのは,ロープを巻いているもんなのかね.戦争に必要なものなんかね.

>米海兵隊員が特殊車両に乗り,首にチェーンをかけた.

 へええ,特殊車両ね.しかも,あの長い丈夫なチェーンを積んでたんだね.それも,戦争に必要なものなんかね.

>首にかけたチェーンを米軍のクレーン車が引っ張り,フセイン像は音をたてて傾き倒れた.

 (へええ,クレーン車まで来てたんかね.それも,戦争に必要なものなんかね.

 それにね,クレーン車につなぐ前に,高い木の上に滑車がつるされて,それに綱を通してから,クレーン車につないだがね.あれは,重い物を引っ張る時の力の大きさを変える滑車だと思うがね.
 わしゃ,随分と準備の良い仕事だと思ったがね.銅像を倒すのに,どれぐらいの力が必要か,分かっとったんかね.
 わしらが捕まえた経験のある相当の悪党でも,あれほど手回しは良くないんだがね.

(阿修羅掲示板)

 【事実】
 ロープやチェーンや重機が不必要な戦争ってどんなの? 石器時代とか?
 古代ローマ時代ですら,
「古代ローマ軍は優秀な土木技術集団でもあった」
と言われているくらいだし,ATM壊すのにだって各種資材とか必要だろうに.
 まあクレーン車は重機かなんかなんだろうけどな.

 米軍が来るより1時間近く前からBBCが中継やってたから,経緯は全部わかっている.
 まずイラク人が集まってきて自分たちで引きずり倒そうとしてそれができず,やってきた海兵隊のM88を呼んできて,引きずり倒した.

 あの像はM88戦車回収車のAフレーム使って引き倒した.ロープもクレーンもM88には装備されている.


 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 米軍は略奪者を先導して,解放を演出した.

 凄い決定的な映像を目にした.略奪した椅子のネジをいじっている男が,独り言を発したのだ……
「ブッシュめ!」
 そこにTVカメラが近付くと,
「ブッシュ万歳! ブッシュOK!」

 彼らの本心は,窺い知れない.
 ただ表面は,その時々の支配者に媚びて叫び,行動しているだけなのだ.
 身の保身が全て.
 「私」のみ.
 彼らには「公」の観念がない.
 だから独裁制が必要だったのであり,だから民主主義は生まれなかった.

(小林よしのり from SAPIO 2003/5/14, P.59)

 【ツッコミ】
 カメラの話は論拠が示されていないので,まずもって真偽をどうこう言いようもない話です.
 ネット上では,

 それって,たしかアジアプレスの綿井(健陽)が,TV朝日との中継で自分の目撃談として言って,日本のサヨク中に広まった話じゃなかった?
 イスを略奪してきた男が,カメラの前では「ブッシュ,YES!」とかいってて,カメラが無いところでは,「チッ!ブッシュめ!」と言ってたとか,
 イラクでアメリカに開放されてよろこんでいるのは,500万市民のうちで100人だけだったとか,
 イラクに開放されて喜んでるのはすべてCIAの工作員だった!
とかいう綿井の報道をそのまま何の検証もしないで,小林がマンガに描いてるってことだろ.

という情報もあります(エセ保守監視小屋)が,これも確認できてはおりません.

 ただ,その後,1年経っても,その映像を,小林以外で見たという人を寡聞にして知りません.
 ぜひとも,明らかにしてもらいたいものです.
 存在しているのであれば,格好の宣伝材料として,TV朝日あたりが度々使いそうなものですが…….

 後段についても,独裁制が必要だったかどうかは,該当項目を御覧ください.

 それにしても,「独裁制が必要だった」とする根拠として,「イラク人には「公」がない」が挙げられていますが,略奪が起きただけで「公」がないと決め付けるのは,論理展開が乱暴過ぎるでしょう.
 イラクはその当時,行政機構が一瞬にして消えてなくなるという事態になっていました.無政府状態下では略奪が起き易いことは,別にイラクに限った話ではありません.
 今でも小林が自説を主張したいのであれば,もっとちゃんとした論拠とそれを裏付けるデータを提示するべきでしょう.

 それができていない「論」に説得力はありません.

 ところで,小林はこの前の号のSAPIOでは,「イラク人に愛国心が芽生えてきた」と述べていたはずですが,その「公」はどこへ消えたのでしょう?

 ま,もっとも,「公」というものについて,小林は曖昧な定義しかしていないのですから,それとこれとは別物だ,と主張するのも容易なのですが.

 さすがはマルチ・スダンダード使いですね.

 【小林主体思想】
 その時々の強者・支配者に媚びる精神が独裁者を作る.
 他人の手で解放してもらって喜ぶ連中.

 それは,他人の手で北朝鮮の脅威から解放してもらおうとしている日本人と同じ.

(小林よしのり from SAPIO 2003/5/14, P.60)

 【ツッコミ】
 「長い物に巻かれろ」は,しばしば聞かれる日本の諺ですが,近代日本史で独裁者が誕生したという話は聞いたことはありませんな.
 ヒトラー政権誕生にしても,ドイツ人に,強者に媚びる精神があったからだとする話も聞きません.
 むしろ,独裁政権誕生の理由は古今東西で様様なようですが,たった1行で新説を披露されても,多少でも世界史の知識のある読者なら,首をかしげるだけでしょうな.


 解放過程で他人の手を借りることも,世界史では決して珍しくないのですが,それがイカンというのなら,世界の多くの国にダメ出しが可能になりますな.
 英国の大きなバックアップの下,日露戦争に勝った日本も,小林にとってはダメな連中に見えるのでしょうかね?

 この「解放の小林理論」で分かるように,曖昧な論説は,このようにいつの時代にもどこの地域にでも当て嵌めることができる,便利な道具なのです,煽動家にとっては.
 【小林主体思想】
 こういう,支配者に媚を売る連中が,50数年前にも日本にいたのだ.
「マッカーサー様ありがとう!」
「マッカーサー様の子供が産みたい!」

 厭らしい連中である.
 この連中の一部が,東京裁判を丸ごと信じ,平和憲法をありがたく押し戴く進歩的文化人となり……,
 この連中の一部が,日米同盟は絶対で,アングロサクソンに着いていけと主張している.

 支配者に媚を売る卑しい連中のDNAは,実は今の親米ポチ保守にも受け継がれているのだった!

 だから彼らは何から何までアメリカの側に立って報道する.

 勝ち馬に乗る馬鹿!

(小林よしのり from SAPIO 2003/5/14, P.61,抜粋要約)

 【ツッコミ】
 これも論拠が全く示されていませんので,論としての説得力に欠けます.
 マッカーサーのくだりなどは,元ネタがありそうですが,出典ぐらい示したらどうですかね.

 世の中には,上の主張のような人物が,全くいないとは言えません.
 しかし一般に,東京裁判を丸ごと信じる進歩的文化人など,ごく少数の例外でしょう.
 また,日米同盟は絶対と主張している人々も,ごく少数ではないでしょうか.
 日本の自主防衛が難しい現状では,どこかの国と同盟を結ぶしかないのですが,米韓中露……とある中では,米が最善の選択である,というのが主流でしょう.

 「何から何かでアメリカの側」というのも,そんなメディアは見たことがありません.
 極端な反米の側に立っている人間にとっては,気に入らない報道はすべてそう見えてしまうのかもしれませんが.

 米軍の誤爆・誤射をオーケーと言っている,というのが,その論拠として出てきます.
 もちろん,誤爆・誤射はないに越したことはありません.
 しかし,戦争という混乱の中でこれを零にすることは,現在の技術では不可能ですし,市民を疎開させなかったイラク側にも責任はあります.
 史上最もこれをなるべく減らすよう米軍が努力していた戦争であることは,どの軍事専門家も否定しないでしょう.あ,田岡なら否定するかな?(笑)

 ちなみに小林は,南京問題などを扱っていた頃,戦争に誤爆・誤射はつきものだと言って旧日本軍を擁護していませんでしたかね? 記憶違いでしたかね?

 【質問】
 イラク戦争開戦から短期間でイラクを軍事制圧したブッシュが,勝利宣言ではなく,戦闘終結宣言という曖昧な表現を用いたのはなぜですか?

 【回答】
 実際にはまだ小規模な戦闘は続いていたからです.
 英文Wikipediaにあるように,「戦闘終結宣言」は実際には「End of major combat operations」であり,正確には「大規模な戦闘行動の終了宣言」とでも訳されるべきもの.
 同じサイトにあるように,ブッシュ自身のスピーチ内でも
「We have difficult work to do in Iraq.
We are bringing order to parts of that country that remain dangerous.」
と,戦争が完全に終了したわけではないことを明言しています.

軍事板


 【珍説】
――――――
 確かにわしは,「戦争は長期化する」と予測した.
 だって今でも,ブッシュ大統領は「戦争終了宣言」を出してないんだぜ!

 ポチ君達は,銅像が倒れて略奪があっただけで,
「ほうれ,あっという間に終わったじゃないか」
と,勝ち馬に乗ったつもり?

 何が嬉しいのかね?
 自分が勝ったわけでもないのに.

――――――小林よしのり from "SAPIO" 2003/6/11, p.56

――――――
「ほーら,イラク戦争,あっという間に終わったぞ.小林よしのりの予想大ハズレだ」
と勝ち誇っていた親米ポチの皆様.ブッシュは未だ「戦争終了」を宣言してません.
 それどころか,米軍は「イラク全土がまだ戦闘状態」と表明し,駐留部隊の大半を動員して「砂漠のサソリ作戦」を展開中です.
 早々と勝ち誇ってみせて,後は知らんぷりなんて,そんな態度まで宗主ブッシュのモノマネですか?

――――――時浦兼 from "SAPIO" 2003/7/9, p.61欄外

▼――――――
「〔戦後イラクの〕事態は誰も予想し得なかった」とは何事だ!?
 何度も何度もわしが予言したではないか!

――――――小林よしのり in 『SAPIO』 2006/12/27 & 2007/1/4合併号,p.64

――――――
 〔略〕
 それは全部,開戦前から,あるいはバグダッド陥落直後,親米保守派が勝ち誇っていたときからわしが言っていたことだ!
――――――小林よしのり in 『SAPIO』 2006/12/27 & 2007/1/4合併号,p.65▲

 【事実】
 これは,宗教詐欺師がよく使う手口です.

 小林が予測したのは
「凄惨な市街戦が始まるに違いない.イラク人は徹底抗戦する.フセインの下で祖国防衛戦だ」
であって,戦後に大きな混乱が発生することではありません.

 だいたい,イラク戦争については他にも様々な珍言を残している人間が,一つ「当たった」からと言って,少しも評価の対象にはなりません.
 目隠ししてむやみやたらと棒を振り下ろしたら,その中の1回がたまたまスイカに当たったようなものです.単に運の問題です.
 別に深い洞察を持ち合わせていなくても,ただ喚き続けていれば誰でも一つくらいは的中しますので,誰でも小林と同じ事ができます.

 これはオウムの麻原晃光そっくりの,「予言が当たった!」のペテンと言えるでしょう.

 また,戦争自体はフセイン崩壊によって終結したと見るのが常識的です.
 まず,戦争の後には混乱がつきものです.第2次大戦後のアジアはたいてい混乱していますし,ドイツの第1次世界大戦後の混乱が,ヒトラーを誕生させたりもしています.
 第1次大戦後のトルコやイランでは,イラク戦争後の状況に似たゲリラ戦やテロが,連合軍相手に起きています.
 しかし,その混乱を根拠にして,
「第2次大戦は1945年で終結していない」
「第1次大戦は1918年で終結していない」
と述べるような歴史書は殆どありません.

(国際情勢を大きく捉え,
「第2次大戦は第1次大戦のリターン・マッチだった」
とする意味で,
「第1次大戦は1918年で終結していない」
と表現されるような事はあります.
 しかし,小林の発言をそういう意味で捉えるのは,非常に無理があります)

 また,法的手続きとしては「戦争終結」は,新イラク政府がアメリカと平和条約を締結してのこととなります.
 太平洋戦争にしても,講和条約締結が正式な戦争終結の日であり,それ以前は停戦してただけということになります.

【講和条約】
 戦争の終結を宣言し,領土・賠償金などの講和に伴う条件について規定する国際法上の合意.平和条約.

 したがって,ブッシュ大統領が「戦争終結宣言」を出さずに「戦闘終結宣言」を出していることは,その面から見れば少しもおかしいことではありません.

(軍事板出張スレッド in コヴァ板他)

 そして,その事実指摘に政治信条は不必要かつ無関係なわけですが,小林はそうした人々に対し,「ポチ君達」と,定義不明瞭なレッテル貼りをしています.
 かつて朝日新聞のレッテル貼りを批判した小林が,です.

 しかも,その指摘を「嬉しがっている」としか受け取れないとは……(小林のほうが「よほど悔しかった」のではないか?と,邪推されかねませんよ,こんなことを書いていては)

 小林も西部も,イラク戦争が泥沼化してアメリカがかつてのベトナム戦争のときと同様に負けると踏んで,フセインの勝ち馬に乗ろうとしただけでしょ.(エセ保守監視小屋)

と揶揄されるのも道理と言えるでしょう..

 さて,時浦のほうの主張は,ほとんど小林の物真似でしかありませんが,ただ一つ,注目すべき発言をしています.すなわち,
>早々と勝ち誇ってみせて,後は知らんぷり
という態度を非難しております.

 それではまず,数々の間違い記述をしでかしておいて知らんぷりを決め込んでいる小林にも,
「知らんぷりしてるなんて,ブッシュと同じだな!」
と,声を大にして非難してください.

 それとも,ダブスタまで宗主,小林のモノマネですか?

▼※ なお,小林のこの主張のオリジナルは,あのスコット・リッターである模様.
 以下引用.
[quote]

In an interview with Irish radio, Mr. Ritter said that the conflict would become an "absolute quagmire," and the US-UK advance would stall outside Bhagdad and fail to capture the city.
アイルランド・ラジオのインタビュー番組で,リッター氏は今回の紛争が「絶対的な泥沼」に陥り,前進を続けた米英軍はバグダッドの郊外で立ち往生してこの首都を陥落することはできないだろう,と語った.

[/quote]
―――http://www.GuluFuture.com25th March, 2003,by Fintan Dunne, Editor
 スコット・リッターを鵜呑みにしていたとすれば,「やれやれ……」ですな.▲

 【珍説】
 彼ら親米保守派は,もはや国際法も国連も役に立たない,だから日本は国際協調なんか捨てて,アメリカにだけ必死でついていけばいいのだと言うのだが… 

(小林よしのり「戦争論3」,p.105)

 【事実】
 言ってません.別項参照.

 【珍説】
 親米保守派は,その軍隊を軍隊たらしめる「国際法」を「役にも立たない」と,一笑に付しているのだから,わしはもう,呆れ果てた.
 これでは「戦争論2」で,「戦争になったら誰を殺しますか?」と言ってた連中と一緒だ.

(小林よしのり「戦争論」3,P.107)

 【事実】
 既述のように,別に一笑に付してません.
 【珍説】
 仮にも「保守」と,自称する者達が,
「アメリカと共に国際法なんか踏みにじってしまえ」と,
唱和しているのだから,わしはもう茫然自失である.

「こっわ〜〜〜〜〜〜っ
 まるで愚連隊みたいな人たちだな…」

(小林よしのり「戦争論」3,P.108)

 【事実】
 唱和などしていません.
 しかも,愚連隊になぞらえる印象操作までしているというオマケつき.
 悪質です.
 【珍説】
 中西輝政氏は
「人類の敵のような人道に反する体制・独裁・圧政に対しては,外から内政介入してでも妥当する事は,許される」
と,国際法にはあると主張している.

(小林よしのり from "SAPIO" 2003/6/11号,p.59)

 【事実】
 主張していません.

 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 日本国内の親米ポチ論客は「国連無用論」を唱えていたが,当のアメリカが,月に約5000億円に上る駐留経費や平和維持部隊の派兵や,イラク再建費用などで,国連に協力を求めることを検討し始めた.

(小林よしのり from SAPIO 2003/8/20 & 9/3合併号, p.79)

 【ツッコミ】
「それが何か問題でも?」
と言う他ありません.

 「新ゴー宣」に登場した,「国連無用論を唱えていた」とされている「親米ポチ論客」とは,岡崎久彦・中西輝政しかありませんが,この2人がそう唱えていたなどというのは,小林の誤読または捏造です.別項参照.

 小室直樹や落合信彦のように,国連無用論を唱えている人達は確かに存在します.
 しかし,古森義久が「国連幻想」において述べているような,
「国連を日本にとって多数ある外交の道具の一つとして扱わねばならない」
 すなわち,国連には使える部分もあるから闇雲に捨てることもない,と考える人が大半ではないでしょうか.

 そして,「国連による援助」は,国連の数少ない「使える部分」――無駄が多いと言う人もいますし,事実,問題を抱えてもいるようですが――だと考えられているものです.
 ですから,
「自国の負担を軽減する」
という目的で,アメリカがこれを利用しようとするのは,むしろ当然と言えるでしょう.

 ところで,小林について,かつて松沢呉一はこのような指摘をしています.

 つまりオウム(真理教)には相当の疑惑があることは大前提だと.
 しかし報道はひどすぎるんではないか.
 そのニ点に関して触れるだけで,数字を2までしか数えられない小林さんは,「オウムの敵か味方か」の人ですから,どっちかに入れなければ頭が壊れるので,我々もつまりオウムの味方だという風に思い始めるわけですね.

(『教科書が教えない小林よしのり』P73)

 上の「当のアメリカが,〜」の文章からも,この「2までしか数えられない」性質が窺えます.
「数字を2までしか数えられない小林さんは,『国連の敵か味方か』の人ですから,どっちかに入れなければ頭が壊れるので,岡崎・中西も国連の敵だという風に思い始めるわけですね」


 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 では,当のアメリカはそこまで堂々と国際法を無視できるのだろうか?

 5月2日,サンディエゴの空母リンカーンの艦上で,ブッシュ大統領は「戦闘終結宣言」を行った.

 アメリカはイラク戦争の「勝利宣言」を未だにできないでいる.
 戦争はまだ終わっていないのである.

 なぜ「勝利宣言」か,「戦争終結宣言」ができないのか?

 実は現時点で「戦争」を終結させてしまうと,国際法上,アメリカに戦勝国としての義務が生じてしまうからだ.

 戦争が終結すると,「ジュネーブ条約」により,6000人にのぼるイラク軍捕虜を釈放しなければならなくなる.
 戦犯をどう裁くかが決まっていないので,それはできない.

 ハーグ条約によれば,フセイン大統領らの拘束に武力を用いることができなくなる.

 だが一方,アメリカはイラク復興を早く進めたいが,国連による経済制裁を解除してもらうには,戦争終結のアナウンスが必要だ.

 そこで苦肉の策としてアメリカは,「戦争終結宣言」という微妙な言葉の言い換えですり抜けたのである.

 アメリカは,明らかに「国際法違反」という批判を気にしている.
 国際法は決して無力ではない.
 未だにアメリカは,国際社会の「慣習・ルール・道徳」によって,縛られているのである!

(小林よしのり「戦争論3」,p.105-106)

 【ツッコミ】

 これは中西・岡崎批判の続きで出てきている言葉ですが,中西・岡崎両氏共に
「もはや国際法も国連も役に立たない,だから日本は国際協調なんか捨てて,アメリカにだけ必死でついていけばいい」
などと言っていません.そう小林が誤読しているか,さもなきゃ歪曲しているだけです.
 つまり,このくだりは,小林以外の誰にも見えない敵と小林が戦っているようなものです.

 ちなみに,イラク攻撃は国際法違反!と叫んでいたのは小林自身なのですが,その「国際法を無視したアメリカ」は,どこへ消えてしまったのでしょうか?

 また,「戦争終結」は講和条約によって決まるものであり,現時点では「戦闘終結」で何の問題もないことは,既に述べたとおりです.

 余談ですが,2003年5月の「朝生」において,小林が必死にアメリカを悪者にするために,
「アメリカだって国際法を守ってるし,国際法に縛られてるからこそ,リンカーン(空母)の艦上で終戦宣言もできなかった.
 終戦宣言したら捕虜を解放しないといけないから,戦闘停止宣言しかできなかった!」
と勇ましく発言したが,
「その言い方じゃ,まるでアメリカが国際法を守る善人みたいじゃないか! アメリカは無法者なんだろ!? 小林さんは親米なのか!?」
と田原に叱られてたのは情けなかったですね.

(エセ保守監視小屋他)

 なお,捕虜とか援助とか,その辺へのツッコミは別項目↓で.


 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 アメリカはイラク戦争の「勝利宣言」を未だにできないでいる.
 戦争はまだ終わっていないのである.
 なぜ「勝利宣言」が,「戦争終結宣言」ができないのか?

 実は現時点で「戦争」を終結させてしまうと,国際法上,アメリカに戦勝国としての義務が生じてしまうからだ.
 戦争が終結すると,「ジュネーブ条約」により,6000人に上るイラク軍捕虜を釈放しなければならなくなる.
 戦犯をどう裁くかが決まっていないので,それはできない.

 「ハーグ条約」によれば,フセイン大統領らの拘束に武力を用いることができなくなる.

 だが一方,アメリカはイラク復興を早く進めたいが,国連による経済制裁を解除してもらうには,戦争終結のアナウンスが必要だ.
 そこで苦肉の策としてアメリカは,「戦闘終結宣言」という微妙な言葉の言い換えですり抜けたのである.

(小林よしのり「戦争論」3,p.104-105)

 【ツッコミ】
 上述のように,戦争終結は講和条約によってもたらされるのであり,戦争終結宣言をしないのは,戦犯・捕虜の問題とは関わりがあるわけではありません.

 で,援助と戦争の関係ですが,それはどうにでもなります.
 一番端的なのが,いまなお「休戦しているだけ」,すなわち「戦争が終結していない」北朝鮮への経済制裁で,朝米基本合意文(94年10月21日にジュネーブで調印)によって緩和されたりしています.
 日本でも終戦〜サンフランシスコ講和条約の間の「公式には戦争が終わっていない」期間に,援助が入ってきていますね.
 経済制裁は別に国際法で定められたものではなく,安保理決議でのものなのですから,安保理が,
「経済制裁やーめた」
と言えば,いつでも可能なわけです.

 むしろ逆に,
「国連による経済制裁を解除してもらうには,戦争終結のアナウンスが必要」
の根拠をお伺いしたいものですね.

 なお, 

>「ハーグ条約」によれば,フセイン大統領らの拘束に武力を用いることができなくなる.

ですが,これもイスラエルによるアイヒマン誘拐(IDFはパイロット等提供)など見ますと,グレー・ゾーンをいくらでも掻い潜ることが可能ではないかと考えられますが,どうでしょう.


 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 そもそもアメリカのイラク攻撃の目的自体が,
「大量破壊兵器」から,
「体制転換」へスライドしてしまっている事実を見ても,
「覇権的先制攻撃」
=「侵略」
だった証拠である.

(小林よしのり「戦争論」3,幻冬舎,p.104)

 【ツッコミ】
 プロパガンダの言葉が色々変わるのは,戦況の変化に応じてどこの国でもよくあることで,それ自体は何の証拠にもなりませんが,何か?


 【質問】
 イラク戦争での民間人の犠牲者数は?

 【回答】

 先の国連の報告書によれば,24,000.
 一方,スイスのジュネーブ高等国際問題研究所によれば,3万9千人になるという.
 以下引用.

民間人犠牲は3万9千人 イラク戦争でスイス研究所

 イラク戦争開始後に戦闘や武器を使用した暴力行為で命を落としたイラク人の人数が,これまでの推定より1万人以上多い約3万9000人に上る見通しであることが,スイスのジュネーブ高等国際問題研究所が国連本部で11日発表した「小型武器概観」で明らかになった.
 同報告は毎年国連で発表され,国連でも「信頼できる報告」とされている.

 ロイター通信によると,2003年3月のイラク戦開始以降で犠牲になったイラク民間人は,複数のメディアに報じられた数字をまとめて「2万2787人から2万5814人」とされていた.
 軍関係者の犠牲者数は詳細に把握され,同通信によると1937人.
 しかし民間人の犠牲についてはまとまった調査は少なく,実態が不透明とされていた.
 今後,詳細な調査を求める声が強まりそうだ.

(共同通信,2005/7/12)

 なお,一部で引用されることの多いLancet Reportには,信頼性に問題があるので,注意が必要だという.
 以下引用.

戦争の犠牲者が多い事を望む反戦活動家

 石油食料交換プログラムに関与し,フセインにより買収されイスラム票を集めようと媚を売る事に専念したイギリスのジョージ・ギャロウェイ議員が,アメリカ議会の証言台でブッシュ政権を罵しるという醜態を晒した
 信用の無い人物の発言に反論するのも無意味なので,発言内容には触れないが,一つ気になったのが,反戦/反米の連中が常に引っ張り出してくるLancet Report(PDF)がまた言及された事だ.
 調査方法にも多々の問題があるが,その結論も
「95%の信頼性レベルで,イラク戦争により 8,000〜194,000の人命が失われた」
と当方もない幅があり,調査自体がほぼ無意味である.
 しかし反戦/反米層は,幅の中間を取り,イラク戦争により10万人が死んだと主張するようになった.
 リポートを読めば解るが,8千人亡くなった確率より10万人亡くなった確率が高い,とは何処にも書いていない,つまり,グラフにすると釣鐘型の曲線になり,10万人が頂点になる,と考えるのは間違いなのだ.
 そんなことも理解できずに,反戦/反米層は尤もらしく10万人という数字を繰り返し使う.

 そんな中,先日国連がイラクについての調査報告書を公表した.
 そのリポートの中でイラク戦争による死者の数はこうなっている:
The ILCS data indicates 24,000 deaths, with a 95 percent confidence interval from 18,000 to 29,000 deaths.
 こちらの幅はかなり小さくなっており,24,000が一番可能性の高い数字と明記している.2万4千人である,桁が違う.
 だがもちろん,Lancet Reportは95%の確率で8千〜19万4千のどこかとしかしてないので間違っているわけではない.あれだけ幅に余裕を持てば間違う事などまず無いだろう.
 国連の調査はLancet Reportよりはるかにサンプル数が多く,正確な調査をするための障害も少なかった.
 だが,国連が大好きな左の人々は,何故か国連の数字の2万4千ではなく,10万の数字をこれからも使い続けるはずだ.
 この報告書がメディアに無視されている事に,その兆候が既に見える.

(from 「反MSM」,2005/5/19)


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