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◆中東のWMD問題
中近東FAQ目次


 【link】

「Guardian」◆(2010/04/09)Netanyahu ducks nuclear talks

「tnfuk」◆(2010年05月24日)【記事メモ】1975年,イスラエルは南アフリカに核弾頭を譲渡しようとしていたという証拠書類

「VOR」◆(2012/09/08)ラヴロフ外相:中東は非核地帯となるべき

「VOR」◆(2012/09/28)ロシア外相,「アラブの春」の「核の冬」化を警戒

「VOR」◆(2012/11/25)ロシア外務省:中東の非核化に関する会議近く実施すべき

「日本語で読む中東メディア」◆(2010/05/25)イスラエルの核保有を裏づける秘密文書が公開される (al-Hayat紙)

「カラパイア」:イスラエルが全国民にガスマスクの配給を開始,その理由は?

「国際情報センター」:(2010/1/9)イスラエルのミサイル防衛

『サムソン・オプション』(セイモア・M・ハーシュ著,文芸春秋,1992/2/1)

中東における核拡散の現状と問題点(pdf)

 内容が若干古いとはいえ,そのバックグラウンドは変わっておらず,現在でも通用する物として自信を持って推薦できます.
 是非皆さんにもご一読をお勧めします.

――――――へぼ担当 by mail,2010年02月04日 22時32分

「日本語で読む中東メディア」:コラム:米国によるイスラエルへのNPT参加要請について (al-Hayat紙)

WMD Problems in Middle-near East|軍事板常見問題 アジア別館
に以下リンク.

『シリア原子炉を破壊せよ─イスラエル極秘作戦の内幕』(ヤーコブ・カッツ著,並木書房,2020)
https://amzn.to/37HiuA3

 こんばんは.エンリケです.
 秘密のベールに包まれた「シリア原子炉攻撃の真実」が,ついに明らかになりました!

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ソフト・メロディー作戦

 2007年9月6日深夜にイスラエル空軍(IAF)が実施した,シリア・アルキバール原子炉破壊の軍事作戦名
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 イスラエルはなぜシリア原子炉を空爆したのか?の軌跡を丹念にたどることを通じ,いまの中東情勢,これからの中東情勢への正鵠を射た見方を得られるだけでなく,イランとともに,中東・世界不安定化の要因であり,わが脅威の一つでもある北鮮の動きを正確につかむうえで欠かせない素材を提供してくれる本です.
 この本が伝えるのは,単なる「シリア原子炉攻撃」だけにとどまりません.
 現代の中東情勢をつかむうえで重大な意味を持つこの事件を知ることを通じ,いまの世界に潜む「重大なリスク(危険)」をあなたは目の当たりにするでしょう.

 まずは著者の言葉からどうぞ

-----------------------------
はじめに(一部)

 2007年9月6日朝,私はイスラエルの軍事担当の記者数人と,ある衛生科司令官(准将)のブリーフィングを受けるため,イスラエル中部にあるイスラエル国防軍(IDF)の基地に招かれていた.
  司令官は衛生技術の進歩と前年のレバノン侵攻から学んだ戦訓をどう活用しているかについて説明した.
  その時,謎の事件が発生したとして私たちの携帯電話が鳴り始めた.
 シリア政府の報道機関,SANA(シリア・アラブ通信社)が,シリアの防空システムがイスラエル軍機を駆逐したと短い発表をしたという.
  私たちは何が起きたのか説明するよう司令官に迫った.
 司令官は,もしそれがイスラエル軍機なら,おそらく作戦は重要なものだっただろうと口ごもりながら答えた.
  それから何日か過ぎ,この夜に起きたことの真相が語られるようになると,私たちは欺かれたことを知った.
 IDFの広報部は私たち記者を衛生科のような後方部隊のブリーフィングへ行くよう意図的に仕組んだのである.
 すべてはシリア北東部で何が起きたか,記者の目をそらすために…….
  これ以降,私はこの事件の虜になった.数年かけて細部が明らかになるにつれ,この事件はイスラエルだけではなく全世界にとって非常に重要なものであることを確信した.
 イスラエル情報機関による原子炉の発見,アメリカ政府への情報提供,長引く閣議と首相の決断,イスラエル軍機の鮮やかな攻撃,世界の目を欺く欺瞞工作……等々,冒険映画に必要な素材はすべて揃っていた.

(ヤーコブ・カッツ)
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 1981年6月7日,イラクにあったオシラク原子炉を,イスラエル空軍が空爆で破壊した.
 2007年9月6日,シリアにあったアルキバール原子炉を,イスラエル空軍が空爆で破壊した.
 両者は同じような事件に見えるが,実は根本的に意味合いが違っています.
 その答えが本著を読めばわかります.

 国を守るとはどういうことか?
 国を守るために直面せねばならぬリスクをいかに乗り越えるか?
の実際を「すぐ隣の敵国に核技術が渡る」という危機に直面したイスラエル指導部の動きを通じて追体験できるこの本は,国家の危機に立ち向かった力強い政治と軍事の記録です.

 10年以上,秘密のベールに包まれていたイスラエルによるシリア原子炉空爆の実像をはじめて知ることができ,現代史の穴の1つが埋まりました.

 あなたもこれまで,諜報・インテリジェンスよみもの,国際政治裏面史,軍事史よみものを数々読んでこられたのではないでしょうか?
 いまの中東状況の核心が,イスラエルとイランの対立関係にあることもあなたはご存じでしょう.
 そして,北鮮が中東の核拡散に深くかかわっているということも,,,

 20年にわたるメルマガ発行を通じて,いろいろな情報と接してきました.
 ただ,今回ご紹介する「アルキバール原子炉空爆」については,当時,リアルタイムで状況を見てきた経験(正確に言えば乱れ飛んだうわさやデマに振り回されたw)もあり,特別な感慨をもって読ませていただきました.

 イスラエルは2007年に実施したこの作戦を「10年」以上秘匿しました.
 はじめて公式に認めたのは,なんと2018年なんですね.

 公開時の思いは「やはりな」でしたが,この本を読んで,あの作戦がどれだけ綿密に計画・準備・実施・アフターフォローされ,オルメルト首相以下,イスラエルの各級リーダーが米との関係をはじめ,いかなる苦悩を抱え,それをいかに乗り越えてこの作戦にあたったか?が身に迫るように伝わってきました.

 イスラエルはなぜ,シリア原子炉を空爆したのか?
 イスラエルはなぜ,10年以上たってから公式に攻撃を認めたのか?
 イスラエルはなぜ,「戦略認識ギャップ」を異にした米との関係を悪化させるリスクを背負ってまで単独攻撃に踏み切ったのか?
などなど,持っていた疑問も,この本を読んでほぼすべて解消されました.

[中略]

■著者のこと

 著者のヤーコブ・カッツさんは,イスラエルのジャーナリストです.

ヤーコブ・カッツ(Yaakov Katz)
 日刊英字新聞『エルサレム・ポスト』紙編集主幹.
 シカゴ出身.
 イスラエル経済相とディアスポラ(海外在住ユダヤ人)担当相の上席政策顧問,ハーバード大学の講師を務める.
 2013年ハーバード大学ニーマン・ジャーナリズム財団で研究.
 現在エルサレムで妻のハヤと4人の子供と暮らす.
 共著書に『Weapon Wizards(兵器の天才)』と『Israel vs. Iran』がある.

 イスラエルとアメリカの政策コミュニティに広いネットワークを持つ方ということです.
 優れた取材力を通して明らかになった情報を,優れたサスペンスよみもののごとく描写し,「アルキバール空爆」の実相を明らかにした著者の力は高く評価されていいでしょう.
 そのためか,米アマゾンでの評価も非常に高いです.

 訳者は,おなじみの茂木さんです.
 「正確で」「こなれた」「スッと入ってくる」「ちょっと垢ぬけた」文体が好きです.

茂木作太郎(もぎ・さくたろう)
 1970年東京都生まれ,千葉県育ち.
 17歳で渡米し,サウスカロライナ州立シタデル大学を卒業.
 海上自衛隊,スターバックスコーヒー,アップルコンピュータ勤務などを経て翻訳者.
 訳書に『F-14トップガンデイズ』『スペツナズ』『米陸軍レンジャー』『欧州対テロ部隊』『SAS英特殊部隊』(並木書房)がある.

 この本は,2019年5月にセント・マーチンズ・プレス社から刊行された『シャドー・ストライク(Shadow Strike)』の邦訳です.
 核拡散という危機に直面し,それに立ち向かった指導者がいかなる対処をとったか? の記録であります.

 当時,ブッシュ大統領の米は「軍事作戦ではイスラエルを支援せず,情報面でのみ協力する.ただしイスラエルの行動を邪魔しない」との結論に達しました.
 米の攻撃を望んでいたイスラエルでしたが,この結論を受けて単独行動に舵を切ったのです.
 2007年9月6日深夜に行われたシリア原子炉空爆のすべてを,イスラエルと米,2つの目から初めて明らかにした,軍事作戦の解説というよりは,政策決定の内幕を描いたインテリジェンスノンフィクションです.

 中東地域で次に何が起こるのか?の概略,ものがたりが描かれた本でもあります.

●当時,イラク戦で批判を浴びていた米ブッシュ大統領がシリアの核に対し強硬な手段が取れず,イスラエルが単独で空爆するに至った経緯,
●イスラエルが,米との同盟関係,主要諸国との外交関係をいかに維持しながら攻撃を実施したか?
を余すところなく描いている点が特に注目されます.

 また,ある国家が,実在する脅威をいかに無力化したか?の台本としての価値があるだけでなく,いまのイスラエルにとって最大の脅威がイランであり,中東状況の軸はここにあること,中東状況への米の影響力は大きいが,イスラエルは「米の消極的な態度はイランでも変わらない」と見ているフシがあることに気づく本です.

 さてここで,全編の通奏低音として流れている「ベギン・ドクトリン」を紹介しましょう.
「イスラエルは敵が大量破壊兵器を開発し,それを自分たちに向けることを許さない.その時は先制攻撃で脅威を排除する」
 オシラク原子炉空爆(1981年6月7日)当時の首相,メナヘム・ベギンのことばです.
 もしこれがいまも生きているなら,イスラエルはイランの核開発が,「あるレベル」に達した段階で,イラン核施設への攻撃を真剣に検討せざるを得なくなります.
 その際は,核攻撃をする可能性が高いと思われます.

 その他読みどころとしては,
・イスラエルのモサドやアマンの関係者が多数登場する
・軍人出身者がほとんどのイスラエル首相や政治家の話が面白い
・ホワイトハウスやエルサレムの「中の声」が多数出てくる
・北鮮をめぐるヤバい情報がたくさん出てくるので,北鮮への危険認識レベルが改まり,わが安保状況を見るうえで,これまでとは違った視座が生まれる.
・核拡散の舞台となっているイランと北鮮とシリアのかかわりが細かに描かれている.
などがあげられるでしょう.

 イスラエルが置かれている戦略環境は我が国と同じではありませんが,かの国を取り巻く脅威状況は我が国と似ている,と強く感じました.

 [中略]

■米は口先だけで行動できなかった.

 シリアに対して行動できなかったアメリカが,なぜ北鮮に軍事力を行使できるでしょう?
 そのうえシリア原子炉空爆後,米は北鮮に対し制裁を課すとみられたが何もしませんでした.
 このときから,北鮮は米を完全に舐めてかかるようになったのではないでしょうか?
 おそらくイスラエルは,イランについても,対シリア,北鮮と同じ対応を米はとると見ている感をもちますね.

 その他,
・戦略的,歴史的に見て正しい決断が,同時代に受け入れられることはまずない.
・わが国は,中共・露・北鮮の核・ミサイルの直接の脅威下にあります.
 本著に描かれている内容を対岸の火事としてではなく他山の石として学ぶ必要があるのでは?
 イスラエル指導部の苦悩は,わが指導部の苦悩でもある.
・わが国とイスラエルの,隣国に原子炉ができることに対する危機感のあまりの違い.
 中共や北鮮の核実験は,イスラエル周辺ではまず起きえなかった出来事では?
 その意味で,わが民族性や国民性,文明の核にあるものを深く知りたいと思った.
・イスラエル軍事史や情報史を事典・辞書代わりに読むと,より理解が深まる.
・敵の反応だけは最後の最後まで分からなかった,との記述に,現実,現場の作戦は常に「一寸先は闇」の中で行われることをあらためて痛感しています.
・政治家は,危機への対処より自らの政治生命を優先する傾向を持つことを忘れないように,との教えを得ました.
・戦争オプションを選択することの重み,指導者の不安と苦悩
・イスラエル,米,シリア,イラン,北鮮にかかわる出来事や人物紹介などが著者の筆力と相まって面白く読める.
といった思いを持っています.

 本著で描かれたシリア原子炉空爆(2007年9月6日)について,イスラエル政府が公式に認めたのは10年以上たった2018年3月でした.
 なぜ10年以上たって認めたのか?
 以前本書を紹介された上田さんも,本著の解説をされた菅原出さんもおっしゃってますとおり,
「イランに対する警告」
です.
 イランには核武装の野望があるとされます.
 しかしその場合,イスラエルによるイラン核攻撃という具体的危険が伴います.
 中東で核戦争が起きた場合,わが石油等資源輸入はどうなるか?
 このことへのオプションを,国家レベルから個人レベルまで準備しておく必要があるのではないでしょうか?

 現在ホルムズ湾周辺海域には,わが海自派遣部隊が情報収集のため派遣されてます.
 その意義は,国内でとらえられている以上に,国家のリスク管理にとり大きな意義があるのです.
 中東でいったん戦火が開くと,わが国にも火の粉は飛ぶ.
 中東事情への注視を怠ってはいけない.
 そういったことが見えてくる「ポイント満載」のこの本は手放せません.

 [中略]

 本著には,<イスラエルは孤立している>という言葉が出てきます.
 「だから自立しなきゃいけない」「単独で行動しなければならない」というニュアンスで使われているのですが,この言葉を読んだとき,
「わが国も同じじゃないか」
と思わず叫びました.
 文明的,文化歴史的に見て我が国は,イスラエル以上にこの世で唯一の存在と言って過言ではありません.
 人工な唯一じゃなくて,自然な唯一だから,逆に危険なのです.
 だから自立を図るためのありとあらゆるギリギリの努力を,イスラエル以上に積み重ねてゆかねばならないはずです.

 では何をすれば?ですが,おうおうにして戦後日本人は,強力な情報機関,精鋭の軍といった「目に見えるもの」を求めがちです.
 イスラエルから学ぶべきものとしても,上の二つを挙げがちです.

 でも私はそう思いません.
 かの国から学ぶべきは,
「何が何でも生き残る」
という国家国民の強い意志ではないでしょうか?
 それがなければ,いくら強力な情報機関があろうと,いくら精鋭の軍があろうと,国は保てないはずです.

 本著には,イスラエル各級エリートたちの「国を守る」意思が全編通してあふれこぼれんばかりです.
 何より生々しさを感じたのは,原子炉破壊完了通知をした際,ブッシュ米大統領から賞賛の言葉を受けたオルメルト首相が心底ホッとした,という記述です.
 ここをクリアできないと,今の世界はわたっていけない.
 そんな身もふたもない現実も突きつけられた次第です.

 知られざる作戦史,インテリジェンス史,国際政治裏面史を楽しんでほしいのはもちろんですが,国を守る気概にあふれた指導者たちの姿と思考,苦悩を乗り越える強さをこそ深く汲み取ってほしい.
 いまのわがエリートでなく,次代のエリートを供給する源となるあなたに読んでほしいのはそのためです.

------------おきらく軍事研究会(代表・エンリケ航海王子)
http://archive.mag2.com/0000049253/index.html
2020.10.24〜10.28

 【質問】
 ▼エジプトの核兵器製造疑惑について教えてください.
 エジプトへの核査察について教えてください.▲

 【回答】
 ▼2009/5/7のUPI,ウォールストリートジャーナル紙など海外メディアが,2007〜2008年にかけてエジプトで国連が行なった核査察に関し,
「核兵器製造可能と思われる量の高濃縮ウラン同位元素が見つかった」
という報告が行なわれたと伝えています.

 5日に公になったようですね.

 詳細はこちらでご確認ください.
http://online.wsj.com/article/SB124163109101092479.html
http://tinyurl.com/ohgpzs

 ⇒ちなみに米政府は6日,国連が
「核兵器開発の兆候は確認できない」
と指摘している点を挙げ,
「今後さらに何かが明らかにならない限り,今すぐどうこうするものではない」
といってます.

 確か韓国でも,同じようなことが数年前にありましたよね.

 〔略〕

おきらく軍事研究会,平成21年(2009年)5月11日
青文字:加筆改修部分

▼ 全面削除を推奨します.
 記事の紹介は有意義ですが,それ以外の解説部分は
「失笑物以外の何物でもない」
ところであり,誤った情報が広まらないように適切な処置が必要と考えます.


> エジプトで国連が行なった核査察

 IAEA(INTERNATIONAL ATOMIC ENERGY AGENCY)は確かに国連の下部組織でありますが,国連そのものではなく,国連が「核査察」を行う権限はNPT加盟諸国であっても何処にもありません.
 そもそも査察の実施主体がIAEAであるのに,国連と誤認する
(正確にはIAEAが査察を行い,その結果を国連に報告する)
あたり,NPT体制下における核不拡散防止・関連査察体制を全く理解していない証拠です.

>「核兵器製造可能と思われる量の高濃縮ウラン同位元素が見つかった」

 完全に翻訳の問題ですが
「核兵器製造可能と考えられる高濃縮ウランの痕跡が見つかった」
が正解でしょう.
 参考文献で示された物を読むと,この痕跡はInshaf原子力研究施設で粉塵のサンプル収集の結果,確認された物とのこと.
 核武装に必要なそれだけの「量」が見つかったことは,重大な意味を持ちますが,今回見つかったのは「高濃縮ウランの痕跡」だけ.
 それを混同するところが,全く持って信じられません.

 通常,このような原子力施設での査察では,原子炉や核燃料関係施設以外では,このような環境試料(粉塵など)を集め,何らかの核関連物質がないか探るのが本来です.
 ここで今回のような高濃縮ウラン(どの程度濃縮された物か不明)が検出されると,査察は次の段階に入り,一体どこから発生した物なのか,その量はどれだけなのか,という特定段階に入りますが,これらのニュースではそれが一切含まれていません.
 つまり「痕跡」はあっても,それが核不拡散上「有意な量」見つかったわけではないと言うことです.

 また,現在(2010年2月)までに,核不拡散上「有意な量」の高濃縮ウランがエジプトで発見されたとか,その疑いがあるなどの報告はなく,エジプト当局の説明であった他から搬入してきた機器に付着してきた物との説明は,今のところ説得力を持っているようです.
 もちろん,秘密裏に特定作業が行われている可能性は否定しませんが,「量の概念」を全く無視して
>「核兵器製造可能と思われる『量』の高濃縮ウラン『同位元素』が見つかった」
とやるのは,失当を通り越して失笑物です.

 おまけに言うなら普通,「高濃縮ウラン『同位元素』」などという珍妙な日本語は用いませんし,専門家でそのような言葉を用いた人は聞いたことがありません.

 以上より,情報提供の意義は認めますが,その解釈には重大な誤りがあり,意図せずとも欺瞞情報を流す有害性は指摘するまでもありません.
 よって,上記記事は全面削除.
 もしくはこの文章を添えて,記事の紹介以外,その解説部分は全面否定が適当であり,お手数ですが対応のほどよろしくお願いします.
 〔略〕

へぼ担当,2010年02月03日 00:24

 一番大きな間違いは"Trace"という単語を無視したことですよね.
 「核兵器製造可能と思われる量」と,「核兵器級の濃縮ウランの痕跡」では,意味が全然違いますから.

 ただ,おきらく軍事研究会はその後に米国政府が取り立てて問題視してないことも伝えているので,意図的にエジプトの核兵器開発疑惑を煽り立てているわけではないのでは.

バグってハニー,2010年02月03日 01:27

> 一番大きな間違いは"Trace"という単語を無視したことですよね

 仰る通りかと思います.
 まるでIAEA他がイラク戦争の直前のように大量破壊兵器を探し回って,その目に見える大きな証拠を見つけた如く考えており,IAEA査察で一体何を行っているのか,全く理解していないことが明白ですね.
 まあ,IAEAがイランのように大量の核物質を発見することもないとは言いません.
 しかし,普段の活動においては,このような微量な痕跡を丹念に追跡して,分析して状況を把握し,疑惑国には揺るがない証拠を突きつけるのだ.と言う,核不拡散ではごく当たり前のスキームが知られていないのは,ある意味やむを得ないのですが,このような分析・報告の場でデタラメを振りまかれるのは不幸なことと考えます.

> 意図的にエジプトの核兵器開発疑惑を煽り立てているわけではない

 その点が彼らの厭らしさだと考えています.
 まあ,私個人が彼らのことを全く信用していないこともありますが,これだけ重大なことを刷り込みのように流しておきながら,
「アメリカはそれを特段問題視していない→日本も同じ事が出来る」
という論法に持ち込みたいところが見え見えなのが何とも.
 まあ,誤解や穿ちすぎと言われそうですが,彼らの場合,過去にも同じ様な事例,主張を繰り返した前歴がありますので,エクスキューズを聞いても今更信用できない,と言うのが正直なところです.

 個人的には分からないなら分からないではっきりその旨を示し,事実を淡々と伝えるべきだと考えるのですが,彼らにそれが出来ないのが残念でなりません.

へぼ担当,2010年02月03日 01:55

 【追伸】
 情報源が「赤旗」というのがアレなのですが,エジプト政府自体は,
エジプト"核はいらぬ"/NPT順守 政府,改めて表明
というポジションをとり続けており,
エジプトが原発正式表明 米容認,イランと違い鮮明 - MSN産経ニュース
との立ち位置堅持に繋がっています.
 なお,中東における核拡散については,防衛大学校総合安全保障研究科(旧国際関係学科)立山良司教授による
中東における核拡散の現状と問題点(pdf)
が非常に良くまとまっており,自信を持って推薦できます.
 是非ご一読を.

へぼ担当 by mail,2010年02月04日 21時32分

以上,「軍事板常見問題 mixi別館」より


 【質問】
 エジプト政府の説明が正しいとして,一体エジプト以外のどこで核兵器級のウランが機器に付着したのかに興味がありますね.

バグってハニー,2010年02月03日 04:18

 【回答】
 個人的には中古機器の輸入であれば,可能性は否定できない物と考えます.
 よく「核兵器級」などと言いますが,それに明確な定義があるわけではありません.一般的にはウラン濃縮度が90%を超えるとそう言われ始めるのですが,初期の実験炉ではウラン濃縮度が90%を超える核燃料を用いた物が多数有ります.
 だからこそ,アメリカなどが秘密裏に使用済核燃料を東欧諸国などから回収したり,日本国内からも期限を設けて回収したりしていたのですが.

 また,用途は限られますが原子力電池など特殊な放射性同位元素を生成
(原子炉内で中性子を照射して生成)
したり,各種研究・実験に用いるため,原材料に微量の高濃縮ウランの試料を用いるケースも少なくありません.
 それ故,ごく微量の痕跡であるなら,原子炉に用いるための核燃料由来というより,上記のような試料の痕跡と言うことも出来ます.

 さらに言うのであれば,高濃縮ウランが環境サンプリングから検出された状況を考えた場合,秘密裏にウラン濃縮のような事でもしていない限り,原子炉使用の核燃料からと言うことは考えにくいところです.
<何らかの事故などで外部への漏洩が無い限り,環境中への放出はまず起こりえない.

 一方,先に挙げた原子炉で照射する(もしくは照射した)試料の痕跡の場合,その試料の中身を開封しますので,そこから漏れ出た分が外部環境から検出されても不思議ではありません.

 以上より,環境サンプリングによって,高濃縮ウランの痕跡が検出されたからと言って,それが核兵器開発に直結するわけではないこと.さりとて,その痕跡がある以上,申告されていない施設によって秘密裏に核関連開発がなされていないか,厳重な査察が緊急に必要です.
 そして,現在までのところ,その異常が報告されていないところ,本件に関してはエジプト当局者の説明通りほぼシロ,と判断されたものと見るべきでしょう.

へぼ担当,2010年02月03日 21:31

以上,「軍事板常見問題 mixi別館」より


 【質問】
 ヨルダンの原発開発について教えられたし.

 【回答】
 ヨルダンは実質,ほぼすべての原油供給を近隣のアラブ諸国に依存している.
 そのためアブドラ国王は2007年,ヨルダンのエネルギー独立性を確保する手段として,原子力技術開発計画の実施を発表した.

 2010.2.10,両国政府高官が明らかにしたところでは,ヨルダンは,民生用原子力協力協定の締結に向けて,米オバマ政権と本格的な交渉に入ったという.
 交渉が無事完了し,協定が米連邦議会で承認されれば,ヨルダンはアラブ首長国連邦(UAE)に次いで,米国と原発開発で協力する,第2のアラブ連盟加盟国となる.
 オバマ大統領は,核技術の軍事転用の禁止を条件に,民生用原子力開発における発展途上国への支援を約束している.

 ヨルダン・米協議の参加者によると,交渉のカギは,ヨルダン政府がUAEに倣ってウラン濃縮処理を国内で実施しないとの保証を与えるかどうかにあるという.
 ヨルダン政府が国内でウラン濃縮処理を禁止する条項を承認しなければ,米連邦議会でヨルダン・米協定の承認を得るのは困難になる可能性がある.
 ヨルダン政府高官は,ヨルダン原子力開発計画の平和的性格を強調するとともに,ウランの核燃料への処理は国外搬送した上で実施する意向だとしている.
 また,国連の核監視機関である国際エネルギー機関(IAE)と密接に協力し,安全予防策を講じる予定だとも述べている.
 だがヨルダンは依然として,核拡散防止条約に基づいて,ウランを濃縮する権利を放棄する協定を米国と締結することに警戒感を示している.

 【参考ページ】
2010年 2月 10日 19:34,WSJ日本版(原文はこちら

 基本的に米国政府の原子力政策では,
「当該国内でウラン濃縮と再処理の禁止」
が絶対条件であり,それを飲まなければ合意が得られることはあり得ない.
(その意味では非核保有国では,日本が例外中の例外と言って良い.)

 一方,NPT単体自体はウラン濃縮や再処理を禁止してはいない.
 もし何らかの形で禁止されていれば,日本国内での行為は全て違反行為となるわけだが,そうでないのは血のにじむような交渉で得られた,日米原子力(新)協定等の先人達の努力のたまものであり,降ってわいた幸運ではないことに注意が必要である.
 そのため,隣国初め日本との不平等性を唱える国もあるが,それが支持されていないのは,当該国がそれだけの信頼を勝ち得ていないこと.
 地政学上の問題.
 その他様々.
 それらのことに思いをはせ,今後日本の核燃料サイクルをどうしていくのか,世界的な位置づけも含めて議論が進むものと考えるし,当事者としては目が離せないところである.

 皆さんは如何お考えでしょうか.

へぼ担当 in mixi,2010年02月10日20:49


◆◆イスラエルの核問題


 【質問】
 イスラエルが核兵器を所有している,と「断言」しているウェブサイトを見つけてしまったんですが,これはCIAやその他情報機関が公表,あるいは年刊軍事専門誌に記載されるほど確度の高い情報でありますか?

 【回答】
 はい.イスラエル自身は持っているとも持っていないとも言っていませんが.

 イスラエルの核開発は1956年,海水の淡水化事業で使用するという名目で始まりました(異説あり).
 フランスから原子炉(出力24メガワット)が輸入され,ネゲブ砂漠の真ん中にあるディモナという小さな街の郊外に据え付けられると,周囲には厳戒態勢が敷かれ,上空は飛行禁止区域に指定されました.

 時を同じくして,アメリカのペンシルベニア州にユダヤ系企業「ニューメック」が設立され,濃縮ウランの再生事業を始めます.
 1961年になると,この会社は「放射線照射による食料品および医療品の滅菌事業を始めました」と宣い,イスラエルに「食品・医療品サンプル」と書いたコンテナを続々と出荷します.
 ここに来て,さすがにFBIが「おい,ちょっと待て.中身見せてみろ」となったんですが,イスラエルは外交圧力をかけて,この動きを潰します.
 一連の出荷が終わるとあら不思議,ニューメック社から45キロもの濃縮ウランがなくなっていましたとさ.

 さて,時は流れて第4次中東戦争,アラブ各国を中心にある噂が流れ始めます.

 ・曰く,イスラエルが南アフリカと組んで核開発を進めている.(当時南ア領の)ナミビアは天然のウランの生産地だ.すでに南ア領海内で核兵器の実験に成功した.
 ・曰く,戦争初期に大打撃を受けたイスラエル軍が,アメリカに緊急の武器援助を申し込んだ.アメリカは渋ったが,イスラエルは核弾頭搭載の地対地ミサイルを展開して使用をちらつかせ,結局,この間接的恫喝で大量の兵器を受け取った.
などなど.

 この噂はエジプト・サダト大統領に早期停戦を決断させる材料になりました.

 で,このあたりからイスラエルの核保有に関しては,限りなく黒に近い灰色である,というのが定説になります.
 1989年に南アフリカが「核兵器は持ってたけど廃棄しました」と発表して,「ああやっぱり」.

 現在,イスラエルは200〜300の核弾頭を保有していると言われています.
 但しイスラエルがNCND政策(核兵器の保有を是認も否認もしない)を採っている以上,誰も断言はできない,というのが実際ですね.

 このへんは今後,中東和平に劇的な進展がない限り,明らかになることはないと思われます.諦めましょう.

(イスラエル国防相 ◆3RWR.afkME)

 なお,イスラエルの「ハーレツ」web版は '04年2月,
「現在イスラエルが保有する核弾頭数 は82個」
と報じています.

 イスラエルの核兵器は400基に増加しているという報道もあります.
 以下引用.

イスラエル核兵器400基保有,米空軍報告書

 国際問題を専門に扱うウェブサイトのワールドトリビューンドットコムは4日,米空軍報告書を引用して,イスラエルが400基の核兵器を保有しているほか,イラン,イラクなどの核攻撃に備えて,報復攻撃が可能な核兵器搭載艦隊を創設していると報じた.
 また,この報告書によると,67年当時13基と推定されていたイスラエルの核兵器が,原子爆弾と水素爆弾を含む400基に増えており,イスラエル海軍は,3隻のドイツ製ドルフィン級ディーゼル潜水艦の艦隊に,これらの核兵器を搭載することができると伝えている.
 この報告書は,米空軍の兵器拡散防止センター(Counterproli―feration Center)の支援を受けて,ワーナファー陸軍大佐が作成したもので「第3神殿の至聖所(ユダヤ教の礼拝堂で最も神聖な場所):イスラエルの核兵器」という題がつけられている.
 米国の軍事機関が,イスラエルの水素爆弾保有を明らかにしたのは今回が初めてであり,イスラエルが保有している核兵器の数は,従前の推定より2倍も多い数字.
 報告書は,イスラエルがオマーン付近に核艦隊を配備して,射程350キロの核ミサイルを配備する可能性があるとし,イスラエルのこうした能力が,中東の核軍備競争に変化をもたらすものと予測した.
 報告書はしかし,イスラエルの核兵器保有が,米国に対する直接的な脅威になるとはみていない.

東亜日報,JULY05, 2002, 22:05


 【質問】
 イスラエルは,いつから,どのように核を開発したのか?

 【回答】
 1949年から.
 フランスの核関係者が協力したり,米国から情報を盗んだり,南アフリカと組んだりしたという.
 以下引用.

 イスラエルは1948年に建国されますが,初代首相のベングリオン(David Ben-Gurion)は,翌1949年には早くも核開発に着手します.
(以下,特に断っていない限り
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-bisharat9dec09,0,3061121,print.story(2005年12月10日アクセス),及び
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/02/16/AR2006021601897_pf.html(2月19日アクセス)
による.また,コラム#169も併せてお読みいただきたい.)
 これに,先の大戦中のヴィシー政権のホロコーストへの協力に対する償いの意識から,フランスの核関係者達が協力しました.
 ドゴール(CharlesdeGaulle)仏大統領は,1958年から1960年の間,二回にわたってこの協力を止めさせようとしますが,結局協力を黙認することとし,ディモナ原子炉の建設からフランス政府は手を引くものの,フランス企業が建設を続行することも認めます.

 1958年に米国は,スパイ機U-2によって,イスラエル領内のネゲブ砂漠のディモナ(Dimona)で不審な施設が建設中であることを発見した(注1)ところ,1960年に,米CIAは,偵察衛星の写真から,この施設が建設中の原子炉であって完成した暁には核兵器の開発に用いられうるという結論を出し,その年の12月にアイゼンハワー大統領にその旨報告しました.

(注1)昨年12月上旬,英BBCは,それまでの英国政府の公式見解とは異なり,英国が1958年に,イスラエルの秘密核装備計画にとって不可欠なものであることを知りつつ,ノルウェーからイスラエルに20トンの重水が船で運ばれるのに便宜を供与したことをすっぱ抜いた
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/GL13Ak01.html(2005年12月13日アクセス).

 1961年にアイゼンハワーから米大統領職を引き継いだケネディは,ベングリオンとその後任のエシュコル(LeviEshkol)首相に対し,核開発の断念を求め,ディモナ原子炉に査察団まで送り込みますが,イスラエルは査察団を欺き通します.
 しかし,1963年にケネディが暗殺された跡を襲ったジョンソン(Lyndon B.Johnson)は,そのキリスト教徒としての信条・・神に選ばれたユダヤ人を助けなければならない・・からイスラエルの核開発・装備を見て見ぬふりをすることにしたのですが,それ以降の歴代の米大統領達もこのジョンソンの方針を蹈襲したばかりか,イスラエルに核拡散防止条約への加入を求めることすらしていません(注2).

 (注2)イスラエルの核開発に積極的に協力した米国民も少なくない.1958年から60年にかけて,実業家のファインバーグ(Abraham Feinberg)は,秘密裏に約25人の大金持ち達から約4000万米ドル(現在価値で約2億5000万米ドル)の開発資金を集めてイスラエルに提供したし,水爆の父テラー(EdwardTeller)は,1964年から67年の間,6回もイスラエルを訪問し,核爆弾の製造を奨励するとともに,技術的助言を行った.

 そしてイスラエルは1966年11月までには核爆弾製造技術を完成し,翌1967年,米CIAはイスラエルが核爆弾を手にしたであろうことを察知するのです(注3).

 (注3)この情報は,ジョンソン大統領には伝えられたが,当時のクリフォード(Clark Clifford)国防長官とラスク(Dean Rusk)国務長官には伏せられた.

 核装備の効果は絶大でした.
 1973年の中東戦争の際には,当初劣勢に立たされたイスラエルが核兵器の使用を示唆したことに恐慌を来した米国は,急遽大量の兵器をイスラエルに供与し,このおかげでイスラエルは戦況を有利に変えることができたのです.

 〔略〕

 南アフリカ(南ア)は,面積が122万平方キロもある国であり,2万平方キロしかないイスラエルとは全く違うように見えるかも知れませんが,実は,つい最近まで,結構似たところがあったのです.
(以下,特に断っていない限り
http://www.guardian.co.uk/israel/Story/0,,1704037,00.html(2月7日アクセス)
による.なお,
http://www-cs-students.stanford.edu/~cale/cs201/index.html
以下と
http://www.southafrica.info/ess_info/sa_glance/history/919547.htm
以下(どちらも2月28日アクセス)も参照した.)
 そもそも,南アフリカは英国の元植民地であり,1934年に絶対少数派の白人が黒人等を一方的に支配する形で独立したのに対し,イスラエルは,1948年に,英国の元保護領であるパレスティナの過半を領土にしてパレスティナ人を始めとするアラブ人を敵に回して独立したことが思い起こされます.
 南アで1948年にボーア人(Afrikaner)を中心とする国民党(Nationalist party=NP)が政権をとると,南アのそれまでの黒人等有色人種差別を制度化したアパルトヘイト(apartheid)(注4)が法制化されて行きます.

 (注4)黒人は身分証明書(後にパスポート)所持を義務づけられ,白人と黒人の結婚は禁じられ,バスやレストランの席は分けられ,黒人は居住地区や学校を指定され,黒人の就ける仕事は限定された.
 後には黒人は「独立」を認められた狭隘な四つのホームランド(Bantustan(バンツースタン)とも称された)の「国民」となり,そこから白人地域に「海外出稼ぎ」にやってくるものとされた.
 1960年以降は,断続的に緊急事態が宣言され,黒人は令状なしで逮捕・拘禁され,拷問を受け,多数が当局によって殺害された.

 それらは,ナチスドイツのユダヤ人に対する差別諸法制にそっくりでした.
 それもそのはずであり,国民党員には,先の大戦中にナチスに心酔し,協力した者が少なくなかったのです.(ボーア人にとって英国はボーア戦争の時の仇敵であり,ナチスドイツは敵の敵でもありました.)
 ですから,本来,イスラエルと南ア(の国民党政権)とは相容れないはずでした.
 事実イスラエルは,独立したばかりのアフリカの黒人諸国を味方にする目的もあって,1950年代から60年代にかけては,激しく南アのアパルトヘイトを批判していました.

 ところが,1973年の中東戦争以降,アフリカの黒人諸国は,アラブ諸国寄りのスタンスに変わり,孤立感を深めたイスラエルは,同じく国内外の黒人勢力の敵意に取り囲まれ,かつ欧米諸国によって武器禁輸等の経済制裁を受けて孤立していた南アの国民党政権(注5)と秘密裏の協力を始めるのです.

 (注5)イスラエルに関しては,アラブ諸国と同時にイスラム教が敵だったのに対し,南アに関しては,黒人諸国と同時に共産主義(ソ連)が敵だった.

 両国の協力関係が公然化した一瞬があります.
 それが,1976年の南ア首相フォースター(John Vorster)のイスラエル公式訪問です.
 フォースターは先の大戦中,ナチ・シンパたるファシスト・グループの指導者として南アで投獄されたことのある人物だというのに・・.
 両国は武器をめぐって,イスラエルが技術的ノウハウを南アに与え,南アがイスラエル製の武器を買ってイスラエルにカネを与える,という関係を構築し,おかげで南アは武器禁輸に対抗すべく,自国の武器産業を育成することができ(注6),アパルトヘイトの継続を果たしますし,イスラエルは,ちょっと大げさに言えば,国家の滅亡を免れるのです.

 (注6)イスラエルは,南アの核開発にも協力した.

 また,アンゴラに軍事介入した南ア軍部隊には,イスラエルの軍人が顧問として派遣されました.
 しかし,1976年のソウェト(Soweto)暴動の頃から,南アはアパルトヘイトの維持コストの高さに閉口するようになり,ついに1994年には黒人にも選挙権が与えられた選挙が実施され,国民党は政権の座を降り,アパルトヘイトはここに終焉を迎え,イスラエルと南アの協力関係も幕を閉じるのです.
 他方イスラエルは,1987年から始まったインティファーダにもかかわらず,パレスティナ人の要求を受け入れることはイスラエルの終わりであると考え,パレスティナ人「弾圧」政策を継続したまま現在に至っているので
す.
 イスラエルの当局者達は,アパルトヘイトとイスラエルの対パレスティナ政策との類似性が指摘されると,「イスラエルには人種差別はない」と異口同音に強く反発しますが,現在昏睡中のシャロン首相が推進してきた対パレスティナ政策が,アパルトヘイトを参考にした部分があることは,公然の秘密です(注7).

 (注7)2003年に元イタリア首相のダレーマ(Massimo D'Alema)は,その数年前にシャロンがローマを訪問した時に,シャロンが「バンツースタン・モデルは,パレスティナ人との紛争を解決するために最も適切だ」と語ったことを暴露した.

太田述正コラム#1098〜99(2006.2.28)

 セイモア・M・ハーシュ著『サムソン・オプション』(文芸春秋,1992/2/1)を見ても,おおむねそのような流れの記述となっている.
 ガーディアン紙等という明確なソースが上述文章には存在することも考え合わせれば,上述文章は信頼性が比較的高いと愚考する.


 【質問】
 質問させていただきます.
 セイモア・M・ハーシュ著『サムソン・オプション』(文芸春秋,1992/2/1)には,イスラエルがディモナに原子炉を極秘裏に建設した際,それに秘密裏に協力していたフランスとの協定によれば,最大熱出力2万4千キロワットとなっていたにも関わらず,冷却ダクト,廃棄物処理施設などの仕様を見れば,その2〜3倍の出力で運転できるものになっていて,フランス人技師を愕然とさせた――というくだり(p.58)があります.

 そこで疑問に思ったのですが,原子炉というのは予定最大熱出力ぴったりに建設するものなのでしょうか?
 余裕を見て建設をしたりはしないものなのでしょうか?

消印所沢 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 【回答】
 結論から先に言うと,
「その原子炉の性格に依りけり.
 普通は安全上・運用上で合理的な余裕を持たせた上で,ぴったりの物を作る.
 ただし,冷却系や廃棄物処理施設には余裕を持たせることもあるが,あまりに不合理だと,IAEAなど国際社会から疑念の目で見られる可能性がある」
というのが正確なところかと愚考します.

 例えば商業用の原子力発電所の場合,目標とする電気出力が得られるようにきっちり作りますが,それ以上の余裕という物は,安全・運用上の余裕
(日本の場合,安全解析上では,余裕を持った保守的な物とするため,多くは定格熱出力の「105%」を前提に解析を行い,安全であることを確認します)
以上の物は,その分建設・運転・維持コストがかさむだけで,目的とする電力の生産においては,宝の持ち腐れとなるだけです.
 そのため,適度な余裕を持たせますが,基本的には過不足無く,ぴったり作るのが普通です.

 それでも,大幅な増出力を行うためには,原子炉廻りを相当いじるだけではなく,蒸気タービン発電機など大物を置き換えるような大規模な工事が必要となるため,米国のように本腰を入れ,大々的にやっても,現在までの実績において,せいぜい20-30%位の増出力が,経済上等から限界となっています.
 そのため,安全上,また運転尤度上,十分な余裕を持たせますが,冷却系に2−3倍も馬鹿みたいな余裕を持たせたりすることは,通常の思考形態ならありませんし,かえって
「何か裏があるのではないか?」
とIAEAなど国際社会から疑念を持たれる可能性すらあります.

 ただし廃棄物処理施設に限っては,商業用原子力発電所であっても,新規技術の導入などの不確定要素や,運転上の自由度を持たせるためや,過去の分の追加処理を行うため,かなりの余裕を持たせた設計にすることもあります.
 廃棄物処理施設でこけると,原子炉など本体はぴんぴんしているにも関わらず,廃棄物処理が追いつかないために運転できないなど,大きく足を引っ張ることが起こりうるためです.

 一方,研究・実験炉(軍事用プルトニウム生産炉も含まれると考えるべき)の場合,多少事情が異なります.

 以前「ウラン使用?の新型爆弾」の項でも収録させていただいたのですが,「イスラエルの原子力開発と原子力施設」については,
http://www.atomin.gr.jp/atomica/14/14070301_1.html
(参照先urlが変更となっていますので注意願います)
を併せてご参照ください.

 ディモナにあるのは

>b)ネゲブ原子力研究センター(所在地:ディモナ)
>フランス製IRR−2(熱出力25MW,天然ウラン・重水減速炉,1963年12月臨界)

という,一風変わった原子炉です.
 こちらの方はIAEAの保障措置対象外であること.また,重水減速炉で天然ウランを核燃料として採用するなど,端から見れば「軍事転用やる気満々」のものです.

 それでも,純粋に実験・研究炉として用いた場合,この手の原子炉は原子炉側に相当に安全余裕があるために,増出力が比較的容易です.
 一方,原子炉は一度運転してしまえば,時間の長短はありますが,使用済の核燃料を全て取り除くまで,冷却系の運転はまず中断できないことなどが制約点としてあります.
 そのため,増出力を視野に入れている場合は,その分余裕を持った作りにしていても,当面の経済性(また国際的な疑念等)は無視し,先行投資をしたと考えれば,それほどおかしくありません.
 また,これは発電用原子炉ではありませんので,タービン発電機などの大物はなく,それを受け止めるだけの冷却系が強化されていれば,比較的容易に増出力を達成できる物です.

 そのため,まずは低い定格熱出力を設定しておき,運用などの体制が確立したら,一気に本性を現して,大幅な出力増加を行う.そして,併せて軍事転用のスピードを高める,というシナリオをイスラエルが描いていても,全くの夢物語ではない,と愚考します.

 ただし,あくまでも「IAEAの保障措置対象外」のため,真相は闇の中です.
 恥ずかしながら,私自身は『サムソン・オプション』の原文を読んでおらず,その中の記載が真実であるか(信用に足るか)どうかは判断できませんが,核兵器の生産能力を推測できうるなど非常に機微な部分であるだけに,少なくともイスラエルが自ら真相を明らかにすることは無いと考えます.
 ただ,上記のことから,ことイスラエルのネゲブ原子力研究センターのフランス製IRR−2においては,ご質問のようなフランス人技師を愕然とさせることが行われていても,例外中の例外として不思議ではない,と愚考します.

(注記:ここで言う「冷却系」とはあくまでも常用の物です.
 非常用の物は安全性を担保するために,必要とする能力を持った物を複数用意(多重性・冗長性確保)するのが普通ですので,その点はご注意願います.)

 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 【質問】
>多くは定格熱出力の「105%」を前提に解析を行い,安全であることを確認します.

とありましたが,〔略〕105%程度で,事故への対応は十分なのでしょうか?

消印所沢 by mail

 【回答】
 まず基本的に,105%というのは,事故(異常)がスタートする時点の厳しめに見た前提条件であり,
「定格熱出力の105%分しか,出力超過に対応できないという訳ではない」
ということを,まずご理解いただけたらと考えます.
 〔以下略〕

へぼ担当 by mail


 【質問】
 イスラエルの核開発が世間に洩れたのはなぜか?

 【回答】
 一人の技師のリークによる.

 イスラエル南部ネゲブ砂漠のディモナにある原子力研究センターで9年間技師を務めていたモルデハイ・バヌヌは,1986年,英紙サンデー・タイムズに,盗み撮りした写真や見取り図とともに
「同センターが原爆秘密工場になっている」
と暴露.
 これを元に同紙は,同年10月,
「イスラエルは100発以上の原爆を保有している」
などと詳報した.
 同紙への証言の直後,バヌヌはモサドに拉致されてイスラエルに連れ戻され,国家反逆罪およびスパイ罪で有罪判決を受けた.

 2004/4/21,バヌヌは釈放されたが,ポラズ内相は19日,バヌヌ氏の出国を1年間禁止すると発表.地元紙によると,イスラエル政府はこのほか,バヌヌ氏が電話やインターネットを使って外国人と接触することや,許可なく国内を移動することも禁ずる方針.

 詳しくは,読売新聞,2004/4/21を参照されたし.

 なお,2004/11,バヌヌは再逮捕された.
 まあ,予想はしていたが.


 【珍説】
 IAEAは,一度たりともイスラエルの核査察をしようとしなかった,米国の手先!

 【事実】
 イスラエルは核拡散防止条約に入っておらず,IAEAと保障措置協定を結んでいないのだから,IAEAが査察を行う権限なんてありません.

JSF in mixi支隊

 IAEAとの保障措置協定の有無は,AEAが査察を行うためには致命的なポイントとなります.
 逆に保障措置協定に定められていないことは,締結国はそれに従う必要は少なくとも国際法令等上はないことになります.
 そのため,保障措置協定の内容が重要となる訳で.

 職務上,保障措置協定の詳細を知る立場にありますが,これがまた議論を呼ぶところでして.査察を受ける現場では友好的な雰囲気の中でも,丁々発止の厳格なやりとり(IAEA側が協定以上の要求をすることは茶飯事)が行われているのは,関係者の中で広く知られていることだったりします.
 以上,実務現場からご参考まで.

へぼ担当 in mixi支隊


 【質問】
「イスラエルがスーツケース型の核爆弾を開発し,それをソ連にこっそりと教えたことで,ソ連が大人しくなった.
 だから核兵器は開発すべきだ」
ということを,某ネットラジオで聞きました.
 私は単純に,ソ連がイスラエルをとんでもないDQN国家と認定したからこそ大人しくなった,軟化したと解釈しているのですが,その認識でいいのでしょうか?
 核兵器を持っている=強い,だからイスラエルを一目置いたのではなく,単純に
「こいつはヘタしたら何をするか分からないキ○ガイだ」
と思ったからだと思うのですが.

http://members.at.infoseek.co.jp/konrot/netradio.html
↑これがそのネットラジオです.

ヤン in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 【回答】
 いや,イスラエルはその周辺国家に比べれば遥かに良い国ですよ.
 あの一帯で唯一,民主主義が機能している国家なんですから.
 少々日本マスコミの報道に流されておられるのではないですか?
 むしろDQNなのはその周辺国のほうで,特に北のシリアは北朝鮮と比べて勝るとも劣らないDQNぶりです.
 確かに過激な反応をする事もありますが,日本が陸続きで北朝鮮と国境を接している場合を想像して下さい.しかも四周とも全部.
 イスラエルはそういう状況下にあるのです.

 ヤンさんが聞いたというラジオですが,内容からして当てにならないかと.
 核兵器を持ってたからといって一目置かれるとは限りません(北朝鮮参照)し,ソ連(当時)にしたところで,イスラエルの核兵器が自国に向けられるわけではない(運搬手段や,報復合戦になった場合の損得勘定など)ことは承知していたと思うのですが,どうでしょう?

鉄底海峡 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 とりあえず,P・W・シンガーの「戦争請負会社」辺りを読んでみてください.
 シエラレオネとかの例が出てきますが,北朝鮮さえかなりマトモな国家に見えます.

ますたーあじあ in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 イスラエルのスーツケース型核爆弾について.
 核兵器は小型化しようとすれするほど,核爆発実験によるデータが必要となる――たとえばフランスはCTBT加盟直前に核実験を行って世界中の非難を浴びたが,これは新型の多弾頭核ミサイルの開発にどうしても実験が必要だったから――ので,実験回数が圧倒的に少ないイスラエルがスーツケース型額爆弾を開発できるとは,ちょっと考えづらいと思います.
 まあ陰謀論的には,「アメリカが教えたんだ」とかいくらでもこじつけられますけれども.

唯野 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 軟化したのは,むしろエジプトとかの中東諸各国(サダトなんかがいい例です)であって,彼らが「イスラエルの撃滅ムリポ」と認識したからこそ,一応あの辺はイスラエルvs中東のガチ戦争が無くなりました.

 イスラエルが,というよりも,他の国がイスラエルとの全面戦争を回避するようになったと言う認識が正しいかと.

 それと,ソ連・アメリカともに,オスロ合意などを見るとおり,一応あの辺が荒れないように注意はしています.(全面解決はどっちにしろ無理ですけど)

ますたーあじあ in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 ネットラジオ「Doronpa」って,何処かで聞いた事がある名前だと思ったら,ジェネジャンに出てたあの人か.
 そりゃ軍事知識は皆無というか,ハン板住人でしょう,あの人.

JSF in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

▼ Doronpa氏について,ハングル板の人との指摘がありますが,そこでは最近見かけてないです.
 それよりも『嫌韓流実践ハンドブック 反日妄言撃退マニュアル』(晋遊舎,2006.2)等の著書を紹介したほうがよいのでは?
 自分の感想として,軍事に関する知識は大したこと無し.
 それ以外の事実関係は多分それほど間違い無いだろうが,あまりに下品.

 なお,桜井誠=Doronpaであることは著書に書いてあるので,プライバシーの暴露では無いです.

 軍事に詳しくないと思った部分を,著書から指摘します.
 『嫌韓流実践ハンドブック2 反日妄言半島炎上編』(同,2006.9),P.47の,F15Kについて触れた部分.

--引用開始--

 世界の軍事関係者からは
「型落ちの中古品を売りつけられた間抜けな韓国」
として嘲笑の的になっている.

--引用終了--

nullpo in FAQ BBS


◆◆シリア


 【質問】
 シリアは核兵器を開発しているのか?

 【回答】
 kojii.net別館ブログ,09/24/2007付によれば,公然の核研究としては,シリアは中国の支援を受けて Dayr Al-Hajar に小型研究炉を設置しているが,これはIAEA の監視下にある上に,兵器グレードのウラン燃料は扱えないという.

 ところが,それとは別に,シリア国内に秘密核施設があるという話がイスラエル発で出ているという.
 北朝鮮が濃縮ウランの製造を,制裁対象外の シリアにアウトソースしたのではないか,という話.
 さらに韓国の Yonhap news agency が,シリアのミサイル技術者が北朝鮮で訓練を受けていると報じている.

 詳しくは同ブログを参照されたし.
 同ブログはJDWをソースとしており,誤訳の心配も少なく,信頼性は高いと愚考する.


 【質問】
 この動画プレゼンテーションの中にある,シリアが建設中のガス冷却式黒煙制御原子炉(過去35年間,北朝鮮しか建設したことない)とは,どんなものなのか?

 【回答】
 動画プレゼンテーションでは,そこまではっきりうたっていませんでしたが,典型的な「黒鉛減速炭酸ガス冷却炉(GCR)」ですね.
 にGCRというと英国のMAGNOX炉が代表例であり,その最終号機である英国のWYLFA-2(ウィルファ2号機)の営業運転開始は1972年1月(出典:日本原子力産業協会 世界の原子力発電開発の動向 2006年次報告)ですので,きっちり「過去35年間,北朝鮮しか〜」と符合します.
 また,過去の北朝鮮核施設における映像における特徴(核燃料に金属製冷却フィンが付いている)とも完全に一致します.

 同型炉の最大の特徴は,
(1) 多大な手間と技術が必要なウランの濃縮工程を必要とせずに,「天然ウラン」をそのまま核燃料として使用できるため,比較的開発・運用が容易なこと.
(2) 原子炉を運転しながら「早期の適切な時期」に原子炉から核燃料を取り出すことにより,核兵器用として理想的な性質のプルトニウムを生成させること「も」可能なことが挙げられます.
<これは運転方法の問題であり,まともに発電する気なら早期に取り出すことはせず,技術的に合理的な範囲でめいっぱい燃やすのが通常です.

 一方,最大の欠点として「黒鉛減速(炭酸ガス冷却)」のため,どうしても熱出力の割に原子炉が巨大になってしまうことがあり,核燃料に「天然ウラン」を使用する際の限界も相まって,商用発電用原子炉としては一般の軽水炉(BWR, PWR)より経済性に劣ることが挙げられます.

 そのため,GCRを商用発電用原子炉として採用した元祖の英国でもWYLFA-2を最後に,その後はその改良型であるAGRに移行しています.
 そして,現在の状況ではGCRを商用発電用原子炉として採用する国は皆無であり,今後も現れることはないと考えられます.

 よって,そうした原子炉を作る国が現在に現れるとすれば,それはすなわち「核兵器開発」を意図する以外に合理的な理由がない訳で.北朝鮮にしてもシリアにしても,その意図が見え見えということが指摘できます.

 以上,解説代わりとして,ご参考まで.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

シリアと北朝鮮寧辺の5MW原子炉の技術的評価について

 既にご紹介のあったとおり,アメリカ中央情報局(CIA)が米議会に公開した,北朝鮮の寧辺にある5MW原子炉と同一の核設備が,シリアの核施設に設置されていたという事実を立証する内容の動画が,24日(現地時間)ワシントンポスト(WP)のホームページに掲載された件ですが,日本語で読むことの出来る情報が以下に掲載されています.

Daily NK - 米 CIAが公開した‘北-シリア核協力’の動画
http://www.dailynk.com/japanese/read.php?cataId=nk03200&num=2202

 また,先にこの「黒鉛減速炭酸ガス冷却炉(GCR)」の概要についてごく簡単に説明しましたが,より詳しくはATOMICA(現在メンテナンス中につき一時閉鎖中のため,引用はミラーサイトから)に以下の通り説明されておりますので,ご一読ください.

原子力百科事典 ATOMICA
黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉(GCR)
http://219.109.2.236/atomica/02/02010106_1.html

 以下では簡単に,発電用GCRの代表例である英国MAGNOX炉と比較する形で,シリアと北朝鮮寧辺の5MW原子炉の技術的評価を行おうと考えます.

---原子炉容器(Reactor Vessel)(炉型によっては原子炉圧力容器Reactor Pressure Vesselと称する場合有り;主にBWR)の構造から伺える技術的限界---

 先の動画では,「シリアと北朝鮮寧辺の5MW原子炉」の構造として,原子炉容器が「鉄(通常なら炭素鋼)を内張にして,強度は鉄筋コンクリートで持たせた円筒形」である特徴が挙げられているが,これは非常に多くの示唆に富むものと考える.

 発電用GCRの代表例である英国MAGNOX炉でも,初期のコールダーホール発電所は円筒型炭素鋼製原子炉容器であったが,コールダーホール改良型の東海発電所は球形炭素鋼製原子炉容器であり,実績としては半々とのこと.

 純技術的な考えでは以下の通りとなる.

a.構造力学的には容易に想像できるように,円筒形より球形のものが丈夫.
b.ただし,物作りの観点からは,平板を一方向に曲げるだけで済む円筒形の方が,球形より簡単に作ることができる.

 よって,球形の方が技術的に優位であることは,工学者から見れば誰の目にも明らかであったが,当時の制作技術
(特に原子炉容器を構成する「分厚い(肉厚の)炭素鋼製(ここが最大のポイント)」大型圧力容器の制作技術)
の限界から,初期は円筒形であり,実績を積み重ねていく中で,球形に改良されていったものと言える.

 工学的な面から言えば,「分厚い(肉厚の)炭素鋼製」大物構造物の制作技術というのが,大きな注目点である.
 造船技術のように薄い鋼であれば,大物構造物であっても,曲面や球面への加工,溶接技術も比較的容易であるが,原子炉容器のような圧力容器に用いられる「分厚い肉厚物」の大物構造物の制作・加工・溶接技術は並大抵のものではなく,現在においても非常に困難なものである.

<なお,日本の最初の商用原子力発電所である日本原子力発電鞄穴C発電所の建設においても,この点で大変な苦労を経験している.
 また,蛇足となるが,現在においてこのような「分厚い肉厚物」の製造技術を持つメーカーはごく限られており,原子力級の信頼性を持つ素材供給メーカーは日本のとある1社
(ちなみに自衛隊装備品メーカーとしても,ある分野の独占供給で有名)
の完全な独壇場であり,海外含め,その追随を許すものはない.

 そのため,当該原子炉のような北朝鮮核施設においても,理想は全炭素鋼製の原子力容器であったが,先に挙げた肉厚大物構造物の製造技術をもたないために,製作の容易な円筒形の「炭素鋼内張鉄筋コンクリート製」原子炉容器となったことが,容易に指摘できる.
 これは以下の意味で,当該原子炉の技術的限界を示す重要なポイントである.

a.当該原子炉の大型化の限界について

 黒鉛減速炭酸ガス冷却炉(GCR)は原子炉物理学上の原理上の特性から,一般的な軽水炉に比べ,どうしても原子炉の熱出力の割に原子炉本体が巨大になる.
 そのために経済性に劣り,現在では商用発電用として,この種の原子炉が建設されることは「まずあり得ない」ことは前述した.

 それに+αして,この程度の大きさですら「炭素鋼製原子炉容器を制作できない」技術レベルであるから,「これ以上の大型化・高性能化(要は出力増大)も困難」とも言える.

<正確には「炭素鋼製原子炉容器を制作できない」から,製作の容易な「炭素鋼内張鉄筋コンクリート製原子炉容器」に走ったといえる.

 本来なら,それによって技術的なハードルが下がるため
(要は普通の鉄筋コンクリート製建物を大きくするのと,さほど変わりなくなるため),
より大型の原子炉容器を作成し,より多くの核燃料を装荷することで,原子炉の熱出力を高め,プルトニウム生産能力を増大させるのが可能であるはずだが,この規模止まりとなったことが注目される.

 これが初めての原子炉建設であったことや,目的とするプルトニウム生産量の目安を達成できるために「この程度に抑えた」のなら,また別の話であるが,状況から言って「この程度が彼らの技術的限界」と見るのが自然である.

b.当該原子炉の高性能化(出力増大)の限界について

 黒鉛減速炭酸ガス冷却炉(GCR)の代表格である英国のMAGNOX炉では,鋼製の原子炉容器を採用している.
 一方,当該原子炉では「炭素鋼内張鉄筋コンクリート製」の原子炉容器を採用している.
 この違いは,同じ体積の原子炉から取り出せる熱出力に大きく作用する.
 
 ごく常識論だが,炭素鋼の場合ではある程度の高温にも耐えるが,コンクリート構造物の場合,特殊な配慮をしなければ,ある一定の温度を超えると大幅にその強度が劣化するため,通常のコンクリート「だけ」では,高温に耐えうる構造物を構築することが出来ない.

<このことは「コンクリートは水の固まり」と評されることや,火災時にコンクリートが比較的容易に割れてしまうことからも,理解されることと考える.

 典型例として,英国MAGNOX炉の最終号機であるウィルファ2号炉の設計要目は
http://219.109.2.236/atomica/pict/02/02010106/03.gif
に挙げられている通りであり,炭酸ガスの原子炉出口温度は414℃に設定されている.

<これはまた別の問題で上限が規定され,その上,ウィルファ2号炉では原子炉容器に「ある特殊な構造(シリアや北朝鮮の当該原子炉にはその様子が見受けられない)」の,炭素鋼内張のプレストレスト・コンクリートを採用しているが,難解な上に話がそれるため,ここでは省略する.

 一方,シリアや北朝鮮の当該原子炉のように,炭素鋼の内張があるとはいえ,それを単純な鉄筋コンクリートで強度を持たせるような,一般的な建築物に極々ありふれた構造では,
「そこまでの高温には耐えられない」
と考えるのが普通である.

 よって,当該原子炉出口における炭酸ガスの温度に,大幅な制限が加わり,ついては当該原子炉の限界
(熱出力,ひいてはプルトニウム生産量)
を規定するものと考えられる.そのため,前述の大型化への展望も含め,大きな技術的障害となっているものと推測される.

 ぶっちゃけた話,もう少しまともな構造をしていれば,当該原子炉から蒸気発生器
(注:熱交換器(Heat Exchanger)から大幅に改良する必要有り)
を経て,水蒸気を発生させることで,小規模にすぎるとはいえ,蒸気タービン発電機を駆動して,原子力発電所を構成することも可能だったはずであり,それにより核開発懸念への反論(?)ともなり得ただろう.
 しかし,その必要の有無は別としても,とても技術的にそこまで耐えられなかった,との解釈が状況から考えて自然である.

<熱交換器と蒸気発生器(SG ; Steam Generator)は工学的・技術的には似て非なる代物であり,工学的・技術的なハードルは蒸気発生器の方が遙かに高い.

 よって,当該原子炉の場合,北朝鮮寧辺では「たかだか5MW」ではあるが,以上を勘案すると「現状,彼らの技術ではそれが精一杯」ということが,ある程度の確度を持って評価することが出来る.

 以上,ご参考まで.

へぼ担当 by mail

 〔それにしても,〕この動画プレゼンテーションはよくできてます.
 建設中のガス冷却式黒煙制御原子炉の写真とか,シリアと北朝鮮の高官が一緒に写っている写真とか,CGで再現された原子炉とか.
 CIAとモサドの本気度が伺えます.

バグってハニー in 「軍事板常見問題 mixi支隊」


 【質問】
 イスラエルはなぜシリアを空爆したのか?

 【回答】
 「面白きこともなき政治を面白く」,2007/09/17 22:00付によれば,真相はまだ不明だが,核施設を重大な脅威と判断して空爆したのではないかと見られている.
 同ブログで引用されている海外報道によれば,

U.S. Confirms Israeli Strikes Hit Syrian Target Last Week
(NewYorkTimes 2007/9/12)

Officials in Washington said that the most likely targets of the raid were weapons caches that Israel’s government believes Iran has been sending the Lebanese militant group Hezbollah through Syria. Iran and Syria are Hezbollah’s primary benefactors, and American intelligence officials say a steady flow of munitions from Iran runs through Syria and into Lebanon.
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Israeli Official Muzzled on Syria Attack
(washingtonpost.com 2007/9/16)

John Bolton, the former U.S. ambassador to the U.N., told Israeli Channel 10 TV he thought Israel might have been attacking a nuclear installation, "a message not only to Syria, but to Iran."

"I think it would be unusual for Israel to conduct a military operation inside Syria other than for a very high value target, and certainly a Syrian effort in the nuclear weapons area would qualify," Bolton said in an interview broadcast Sunday.

<同ブログによる部分翻訳>
イスラエルが高価値な目標以外でシリアに軍事行動を行うとは考えにくく,核兵器分野でのシリアの努力はその目標に値するだろう.
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  また,同ブログで紹介されていた,平成床屋談義スレッド(現在part20),およびそこに載ってたイェルサレムのTVニュースのうpサイト
http://www.infolive.tv/node/12385
によれば,
0)北朝鮮の支援でシリアが核施設を建設中との情報を6ヶ月前に入手
1)イスラエルはアメリカ政府に連絡したが,アメリカは懐疑的
2)イスラエルは軍事衛星の写真偵察目標をシリア北部に変更,調査開始
3)偵察写真から北朝鮮とのリンクが確認された

Korea, Syria May Be at Work on Nuclear Facility
(washingtonpost.com 2007/9/13)

North Korea may be cooperating with Syria on some sort of nuclear facility in Syria, according to new intelligence the United States has gathered over the past six months, sources said. The evidence, said to come primarily from Israel, includes dramatic satellite imagery that led some U.S. officials to believe that the facility could be used to produce material for nuclear weapons.

4)8月中にイスラエル閣議が6回開かれて対応を検討
5)9月3日に北朝鮮の船がシリアに入港
6)9月4日,イスラエルの緊急対策閣議,攻撃決定
7)9月5日,特殊部隊員がシリア北部の「農業研究所」にむけて侵入開始
8)9月6日未明,爆撃用のF15とエアカバー用のF16等が出撃,地上隊員が目標をレーザー・ポイントして空爆成功

とのこと.

 また,kojii.net別館ブログ,09/24/2007付がJDW等をソースにして述べているところによれば,やはり,これは件の秘密核施設がターゲットだったという話があるという.
 もしもシリアが核兵器を手に入れれば,イスラエルにとってはおおごとであり,イスラエルは最近,シリア上空に航空機を侵入させて偵察飛行を行っていた,とする報道もあるという.

 「kojii.net別館ブログ」,09/25/2007付では,JDWをソースとして,以下のような経緯詳細を載せている.
 それによれば発端は,3 月初めに Mossad 長官の Meir Dagan 氏が Olmert 首相に対して,件の施設に関する情報をもたらしたこと.
 当初は懐疑的な人もいたが,7 月になってさらに証拠が集まり,8 月にはイスラエル政府が合計 6 回の会議を実施して対応策を検討.
 9/3 に,核物質を積んでいるらしい北朝鮮の貨物船が韓国船に偽装してシリアの Tartous に入港,「セメント」と称する貨物を荷下ろしした.
 それを受けてイスラエル政府は緊急会議を実施,実力行使に乗り出したという.
 9/4晩,レーザー目標指示器でターゲットを照射するため,コマンドー部隊を現地に潜入させた.
 続いて,爆装した F-15I×4 機と護衛役の F-16×4 機,それと支援にあたる Eitam G550 AEW&C 機が発進.ユーフラテス川沿い・イラクとの国境から 50 マイルほどのところにある現場を爆撃したという.

 同ブログではまた,上記情報を元に,「世界でもっとも稠密な防空網がある」といわれている,ダマスカスをかすめるルートをさけるため,往路はいったん西に向かい,地中海に出てからシリア国内に侵入した可能性に言及している.

 さらに,この攻撃はトルコ軍の協力で行われたという報道もある.

シオンとの架け橋 イスラエル・ニュース

*イスラエルのシリア攻撃はトルコ軍の協力で行われたと,クウェート紙が報道.トルコ軍はシリアの軍事施設の情報をイスラエルに提供していたという.トルコのエルドアン首相は知らなかったもよう.(P)

*北朝鮮がシリアに核技術を提供していたとの報道.北朝鮮は,近年の米国との交渉の中で「シリアやイランに核技術を拡散する」と,米国を脅していたことが判明した.(P,H,Y)
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Korea, Syria May Be at Work on Nuclear Facility
(washingtonpost.com 2007/9/13)

In talks in Beijing in March 2003, a North Korean official pulled aside his American counterpart and threatened to "transfer" nuclear material to other countries. President Bush has said that passing North Korean nuclear technology to other parties would cross the line.
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 上述のkojii.net別館ブログはこの点について,
「F-15I が投棄した増槽がトルコ国内・シリアとの国境近くに落ちていた」
といった話が報じられており,写真も出回っているとのこと.

 さらにまた,「週刊オブイェクト」,2007/9/24付は,この攻撃に先だって,イスラエル特殊部隊がシリアの北朝鮮核物質を奪取したとの未確認情報を伝えている.

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 最初に断わっておきますが,これはまだ確定した情報とは言えません.
イスラエル特殊部隊,シリアの北朝鮮製核物質を奪取か
2007年09月23日 13:13


【9月23日 AFP】9月6日のイスラエル軍によるシリアの秘密軍事施設への空爆直前に,イスラエル特殊部隊が潜入し,核物質を奪取していたと,23日付けの英週刊紙サンデー・タイムズ(Sunday Time……
≫続きを読む
(c)AFP/ImageSat

Israelis seized nuclear material in Syrian raid
[9/23 The Sunday Times]


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Israeli commandos seized nuclear material of North Korean origin during a daring raid on a secret military site in Syria before Israel bombed it this month, according to informed sources in Washington and Jerusalem.
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 今のところ,サンデータイムズしか報じていませんし,「ワシントンとエルサレムの情報消息筋」といったあやふやな情報源です.
 とても確定情報とは言えませんが,事実ならば大変な事態です.
 とはいえ,今回のイスラエル軍の作戦については奇妙な事ばかりで・・・
シリア核:「イスラエルが攻撃」の欧米報道巡り謎の緊張
[9/19 毎日新聞]


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 シリアを巡り「不可解」な緊張が高まっている.同国が今月初め,イスラエル軍機による領空侵犯を公表したことが発端だが,その後,両国が沈黙する中で欧米メディアが「イスラエルがシリアの『核関連施設』を攻撃した」と報じ始めた.
 核開発で北朝鮮がシリアに協力したとの憶測も流れ,混迷する中東情勢を反映した「情報戦」の様相も呈している.

 シリアが領空侵犯を公表したのは6日.同軍機が「爆発物を投下した」としたが具体的な被害も場所も特定しなかった.

 真相が不明な中,北朝鮮が11日,イスラエルを非難する異例の声明を発表.これを機に欧米メディアのシリア・北朝鮮関係の報道が過熱した.
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 真相についてイスラエルもシリアも殆ど口を開きません.
 アメリカもです.
 そして何故か突然,北朝鮮がイスラエルを非難するといった行動に出ます.
 イスラエルがシリアに対し,何らかの軍事作戦を行った事は確かでしょう.
 そして北朝鮮が非難してきたのは,その事に関係していたのではないか・・・核兵器や化学兵器,ミサイルなどの北朝鮮関連物品ではないか・・・

 今のところ,全て憶測です.
 既に情報戦の様相を呈し,怪情報も飛び交っている筈です.
 そんな中でイスラエル軍特殊部隊による核奪取作戦の報は,俄かには信じられません.
イスラエルはシリア空爆を実行した=ネタニヤフ元首相 (AFP=時事)

US confirms Israeli air strike on Syria [9/12 Telegraph]

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The closest it came to acknowledging the affair happened was when it made an undertaking to Turkey to investigate how an Israeli long-range fuel tank was dropped on Turkish territory near the Syrian border.
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 しかし,空爆は事実のようです.
 侵攻ルートにトルコ上空を選んでいたらしく(爆撃目標自体がトルコ国境近く),トルコ領内でイスラエル空軍のF-15I戦闘機の増槽(落下タンク)が発見されています.
 イスラエル空軍がシリアを空爆する事自体は,ヒズボラ叩きの名目でよくある事です.
 珍しい事ではありません.
 しかし,今回のように徹底した緘口令が敷かれる,
 しかも被害側のシリアまで詳細を語ろうとしない,
 アメリカも沈黙,
 北朝鮮が何故かイスラエルに怒っている・・・
 謎は深まるばかりです.
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▼ その後,本件に関し,2008年4月25日(金),昨年に破壊されたシリアの核施設の盗撮映像を米議会の秘密会で上映.
 その前日,イスラエル政府は米国に懸念を伝えた.(P,Y)
 また,威信を傷つけられたアサド大統領が,イスラエルへの報復を決行する可能性もあると見て,IDFは警戒を強めた.(H,P,Y)▲

▼ その後,2011.4.28の記者会見において,IAEAの天野事務局長は,「破壊された建物は,シリアが建設中であった原子炉であった」と認めたという.
 IAEAがこのような結論に至ったのは,2008年に現地を調査した検査院の資料を詳しく検討した結果とのこと.
 すなわち,
・破壊された建物の規模が原子炉の規模と一致したこと
・現場から少量の黒鉛及び天然ウラニュームを検出したこと
を根拠にしており,建物は完成直前であったとのこと.
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/3717677.html

 なお,本項目は続報を見つけた際に,おりに触れて更新予定.


 【質問】
 アメリカは事前に,イスラエルによるシリア空爆計画を知っていたのか?

 【回答】
 報道によれば,知っており,延期もさせたという.

Condoleezza Rice opposed Israel’s attack on Syrian nuclear site
Sarah Baxter October 7, 2007

によれば,アメリカABCが週末に,イスラエルによる9月6日のシリア空爆は7月14日に予定されていたが,ライス国務長官の反対で延期されていた,と報じた.
 ライス国務長官は,イスラエルによるシリア空爆が中東地域を不安定化させ,また核拡散の証拠が不十分として延期を主張したという.
 これに対して,本誌サンデータイムズが2週間前に報じたように,イスラエル地上部隊はシリアの施設から核物質サンプルを持ち帰り,これをアメリカ側に攻撃の正当性を証明する証拠として提示されたという

 核物質の内容については情報が開示されていないが,アメリカの諜報筋および国防筋は,ウラン濃縮関連のものであろうと言う.

――――――
Ilan Berman, a Middle East expert at the American Foreign Policy Council, said:
“The consensus is that Israel struck a nuclear facility and the probability is that it was linked to enriching uranium.”
(アメリカ外交政策評議会の中東専門家であるIlan Bermanは,
「コンセンサスは,イスラエルの攻撃した施設は核開発施設で,恐らくはウラン濃縮関連というもの」
としている)
――――――

 シリアの施設がプルトニウム関連とする意見もあったが,プルトニウム生産には原子炉が必要なので,この意見は重んじられていない.
 北韓はヨンビョンの施設でプルトニウムを生産する一方,パキスタンのカーン博士のネットワークからウラン濃縮機器を入手していたが,アメリカの諜報筋の情報に拠れば,シリアもカーン博士のネットワークからウラン濃縮装置を入手したと推定されている.
 2004年のアメリカ議会へのCIA報告は,
「シリアの核開発意図が増大しつつある関心事」
であると述べている.

ニュース極東板

 この延期の一件に関し,WSJ米国版は社説において,米国国務省がシリアの秘密の原子炉建設を外交的に解決できる,としていた事への懸念を述べている.

――――――
REVIEW & OUTLOOK:Plutonium on the Euphrates -- II April 29, 2008; Page A12

It is also disturbing that the Administration first tried to persuade the Israelis that Syria's outlaw actions could be settled with diplomacy, and then sat on its conclusions for seven months after Israel bombed the site.
This kind of behavior is typical of the "arms control process" that Mr. Bush has embarked on with North Korea, where violations get explained away or ignored if the violator merely promises not to do it again.
Pyongyang's nuclear aid to Syria was still going on after its February 2007 pledge to give up all its nuclear programs and stop proliferating.
 国務省がシリアの秘密の原子炉建設事件で,イスラエルとの初期の話し合いの中で,それを外交的に解決できる,としていた事も懸念されるところである.
 空爆後も7ヶ月間,外交的な考慮から,それを秘密にしてきた.
 国務省のこうしたやり方は,北韓のやっている違反事項などを許容する傾向と同じ.
 北韓の核拡散は,北韓が核廃棄を約束した2007年2月の6者協議合意事項の成立の後も継続されている.
――――――

 これはWSJの是までの,一連の北韓関連についての国務省への不信と,あまりにもエンゲージメントのみにこだわりすぎる戦略への批判の社説と共通する,
 WSJは,シリアや北韓への国務省の許容的な態度は,イランなどの核開発を勇気付けるだけであるとする.
 WSJはそうした国務省への不信が,議会をして情報公開を要求する原因になっており,今後も国務省のエンゲージメント政策への牽制になりそうだと見る.
 〔略〕

――――――
This affair was not well handled from day one. Now Mr. Bush is allowing his diplomats to put about the belief that he values any deal over no deal.
That leaves it to Congress to blow the whistle.
――――――

ニュース極東板


 【質問】
 アレッポ秘密化学工場爆発事件とは?

 【回答
 kojii.net別館ブログ,09/24/2007付によれば,2007/7/26,シリアの Aleppo 北方にある秘密工場でマスタードガスを弾頭部に積んだ Scud C (射程 500km) のテストをしていたときに起きた爆発事件.
 隣接する研究施設から化学兵器保管施設にかけての一帯で,シリア人15名とイラン人数ダースほどの死者が出たほか,爆風で VX やサリンなどが散乱して多数の重傷者が出た.
 その結果,このプロジェクトは頓挫中.
 同ブログによれば,爆発が起きたのが午前 4 時半で気温が低いため,高温に起因する自然発火の可能性は薄く,人為的な爆発ではないかという見方があるという.

 詳しくは同ブログを参照されたし.
 同ブログはJDWをソースとしており,誤訳の心配も少なく,信頼性は高いと愚考する.


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