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◆◆◆◆アドミラル・クズネツォフ Admiral Kuznyecov
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ロシアFAQ目次


 【link】

「週刊オブイェクト」◆(2010年04月08日) 空母アドミラル・クズネツォフ魔改造計画(図で解説するよ)

「ロシア・ソ連海軍」◆(2008/4/11) 空母アドミラル・クズネツォフ近影

「ロシア・ソ連海軍」:空母クズネツォフ,再び地中海へ
「ロシア・ソ連海軍」:ロシア空母「アドミラル・クズネツォフ」,また地中海へ

「ロシア・ソ連海軍」:大西洋上のクズネツォフ・その1

「ロシア・ソ連海軍」:大西洋上のクズネツォフ・その2(機動部隊)

「ロシア・ソ連海軍」:大西洋上のクズネツォフ・その3(機動部隊)

「ロシア・ソ連海軍」:大西洋上のクズネツォフ・その4(搭載機)

「ロシア・ソ連海軍」:大西洋上のクズネツォフ・その5(搭載機)(1)

「ロシア・ソ連海軍」:大西洋上のクズネツォフ・その6(乗組員)

「ロシア・ソ連海軍」:大西洋上のクズネツォフ・その7(乗組員)

「ロシア・ソ連海軍」:大西洋の空母クズネツォフ

「ロシア・ソ連海軍」:未完の親衛重航空巡洋艦ワリャーグ

「六課」:2005年9月21日の空母アドミラル・クズネツォフ(その1)

「六課」:2005年9月21日の空母アドミラル・クズネツォフ(その2)

「六課」:浮きドック上のロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフ(2006年)

「六課」:空母アドミラル・クズネツォフ,対艦ミサイル「グラニト」発射

「六課」◆(2012/01/17)空母「アドミラル・クズネツォフ」はマルタ島沖で飛行訓練を行なう

「六課」◆(2012/01/24)ロシア空母部隊は地中海中部で演習を行なった

「六課」◆(2012/01/27)ロシア空母部隊は地中海における任務を完了する

「六課」◆(2012/02/01)ロシア空母部隊は地中海を去る

「六課」◆(2012/02/03)艦上戦闘機MiG-29Kは地中海上の空母「アドミラル・クズネツォフ」で試験を行なった

「六課」◆(2012/02/11)ロシア空母部隊は北へ行く

「六課」◆(2012/02/16)空母「アドミラル・クズネツォフ」航空隊は陸上基地へ戻った

「六課」◆(2012/02/16)空母「アドミラル・クズネツォフ」は予定より1日早く帰港した

「六課」◆(2012/02/17)空母「アドミラル・クズネツォフ」はセヴェロモルスク基地へ戻った

新「六課」◆(2012/06/02) 重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフでホッケーの試合が行なわれる

新「六課」◆(2012/07/14) ロシアの空母は軍事基地を代替できる

新「六課」◆(2012/07/29) 8月に空母アドミラル・クズネツォフと原子力巡洋艦ピョートル・ヴェリキーが参加する大規模演習が行なわれる

新「六課」◆(2012/08/23) 空母アドミラル・クズネツォフはオーバーホールを終えた

新「六課」◆(2012/09/04) 空母アドミラル・クズネツォフはバレンツ海へ出航した

新「六課」◆(2012/09/11) 空母アドミラル・クズネツォフ近影(2012年9月8日)

新「六課」◆(2012/09/12) 空母アドミラル・クズネツォフ航空隊の訓練が開始された

新「六課」◆(2012/09/26) 艦上戦闘機Su-33は巡航ミサイル迎撃訓練を行なった

「六課」ACS◆(2013/06/02) 空母アドミラル・クズネツォフは2013-2014年に遠距離航海を行なう

「六課」ACS◆(2013/06/04) 空母アドミラル・クズネツォフは年末に地中海へ行く

「六課」ACS◆(2013/07/02) 空母アドミラル・クズネツォフは2013年に4機の艦上戦闘機MiG-29K/MiG-29KUBを受け取る

「六課」ACS◆(2013/07/25) 空母アドミラル・クズネツォフはロシア海軍の日の観艦式に参加する

「六課」ACS◆(2013/08/21) 空母アドミラル・クズネツォフは係留岸壁を離れた(2013年8月21日)

「六課」ACS◆(2013/09/06) 空母アドミラル・クズネツォフはバレンツ海で戦闘訓練を行なった

「六課」ACS◆(2013/09/07) 空母アドミラル・クズネツォフは地中海へ行かない?

「六課」ACS◆(2013/09/13) 重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは2014年から近代化改装を開始する

「六課」ACS◆(2013/09/19) 空母アドミラル・クズネツォフはロシア北方艦隊の大規模演習に参加する

「六課」ACS◆(2013/10/01) 空母アドミラル・クズネツォフは艦隊防空演習を行なった

「六課」ACS◆(2013/10/09) 空母アドミラル・クズネツォフで艦載機の発着訓練が始まった

「六課」ACS◆(2013/11/10) 重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフ近影

「六課」ACS◆(2014/02/27) 空母アドミラル・クズネツォフは初めてキプロスを訪問した

「六課」ACS◆(2013/11/17) 空母アドミラル・クズネツォフの近代化改装は計画されていない

「六課」ACS◆(2013/11/19) 空母アドミラル・クズネツォフは訓練の為にバレンツ海へ出航した

「六課」ACS◆(2013/11/21) 空母アドミラル・クズネツォフで艦上戦闘機Su-33の飛行訓練が行われた

「六課」ACS◆(2013/12/01) 空母アドミラル・クズネツォフ艦長セルゲイ・アルタモノフ

「六課」ACS◆(2013/12/02) 空母アドミラル・クズネツォフは遠距離航海の準備を終えた

「六課」ACS◆(2013/12/11) 空母アドミラル・クズネツォフの艦載ヘリコプターは夜間着艦訓練を実施した

「六課」ACS◆(2013/12/12) 北方艦隊司令官は空母アドミラル・クズネツォフを査察した

「六課」ACS◆(2013/12/13) 空母アドミラル・クズネツォフの近代化は妨げられている

「六課」ACS◆(2013/12/17) 空母アドミラル・クズネツォフは地中海遠征へ出発した

「六課」ACS◆(2013/12/21) 空母アドミラル・クズネツォフはノルウェー海でヘリコプターの発着訓練を行なった

「六課」ACS◆(2013/12/26) 空母アドミラル・クズネツォフはサイクロンの中を通過する

「六課」ACS◆(2013/12/31) 空母アドミラル・クズネツォフは大西洋で新年を迎える

「六課」ACS◆(2014/01/09) 空母アドミラル・クズネツォフは北海で艦上戦闘機Su-33の飛行訓練を実施した

「六課」ACS◆(2014/01/10) 2013年12月末にブリテン駆逐艦はスコットランド沖で空母アドミラル・クズネツォフを追跡した

「六課」ACS◆(2014/01/10) 空母アドミラル・クズネツォフは英仏海峡を通過し,ジブラルタル海峡へ向かった

「六課」ACS◆(2014/01/15) 空母アドミラル・クズネツォフは地中海へ入った

「六課」ACS◆(2014/01/16) 空母アドミラル・クズネツォフは地中海へ入る前にフランス海軍と合同演習を行なった

「六課」ACS◆(2014/01/20) 空母アドミラル・クズネツォフは地中海で就役23周年を迎えた

「六課」ACS◆(2014/01/23) 空母アドミラル・クズネツォフは地中海西部を抜錨し,東へ向かった

「六課」ACS◆(2014/01/24) 空母アドミラル・クズネツォフ艦載機は地中海で空戦訓練を実施する

「六課」ACS◆(2014/01/28) 空母アドミラル・クズネツォフはマルタ島沖に投錨した

「六課」ACS◆(2014/02/04) 空母アドミラル・クズネツォフの近代化は先延ばしされている

「六課」ACS◆(2014/02/04) 空母アドミラル・クズネツォフの艦上戦闘機Su-33はスクランブル当直に就く

「六課」ACS◆(2014/02/10) 重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは地中海東部で原子力巡洋艦ピョートル・ヴェリキーと合流した

「六課」ACS◆(2014/02/13) 空母アドミラル・クズネツォフはキプロス島南東で艦載機の訓練飛行を行なった

「六課」ACS◆(2014/02/14) 空母アドミラル・クズネツォフ航空隊の訓練は続く

「六課」ACS◆(2014/02/18) 空母アドミラル・クズネツォフ艦載機は地中海東部で飛行訓練を継続する

「六課」ACS◆(2014/03/01) キプロス大統領は空母アドミラル・クズネツォフを訪れた

「六課」ACS◆(2014/03/03) 空母アドミラル・クズネツォフはキプロスを去り,地中海東部に滞在する

「六課」ACS◆(2014/03/06) 空母アドミラル・クズネツォフの艦上戦闘機は地中海で空戦訓練を続ける

「六課」ACS◆(2014/03/11) 2名のSu-33パイロットは空母アドミラル・クズネツォフへの200回目の着艦を達成した

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/03/14) ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフはキプロス島南西海域に居る

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/03/28) ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフはキプロス島沖で艦載機飛行訓練を再開する

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/04/01) ロシア空母部隊は地中海東部で防空演習を行なった

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/04/07) ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフは再びキプロスを訪れた

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/05/08) ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフと重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーは英仏海峡を通過する

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/05/09) ブリテン海軍駆逐艦はロシア空母アドミラル・クズネツォフを追尾した

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/05/12) ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフと重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーは北海で戦闘訓練を行なった

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/05/17) ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフ航空隊の艦上戦闘機Su-33は駐留基地へ戻った

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/05/18) ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル-フロータ-ソヴィエツカヴァ-ソユーザ・クズネツォフと重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーは母国へ戻ってきた

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/05/20) 長期航海を終えたロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル-フロータ-ソヴィエツカヴァ-ソユーザ・クズネツォフと重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキーは母国に迎え入れられた

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/7/18) 空母アドミラル・クズネツォフの最高の艦上戦闘機パイロット達

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/7/21) ロシア海軍空母アドミラル・クズネツォフ近影(2014年7月18日)

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/7/27) ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは2010年代後半に近代化改装を行なう

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/9/29) ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフは整備後の点検の為に出航した

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/10/1) ロシア海軍の空母アドミラル・クズネツォフで艦上航空隊の訓練が始まった

「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/10/1) ロシア海軍北方艦隊は空母アドミラル・クズネツォフの救助訓練を行なう

「ワレYouTube発見セリ」:Admiral Kuznetsov

「ワレYouTube発見セリ」:Admiral Kuznetsov

「ワレYouTube発見セリ」:Admiral Kuznetsov aircraft carrier and CVBG in a heavy storm

「ワレYouTube発見セリ」:Kuznetsov Live

「ワレYouTube発見セリ」:Руски авионосач "Адмирал Куз?ецов" - RFS "Admiral Kuznetsov"

「ワレYouTube発見セリ」:Russian aircraft carrier Admiral Kuznetsov real life

「ワレYouTube発見セリ」:Russian aircraft carrier Admiral Kuznetsov real life


 【質問】
 アドミラル・クズネツォフ建造までの経緯は?

 【回答】
 別項にもあるように,キエフ級5番艦「ソヴィエツキー・ソユーズ」建造に,国防相の御墨付きを得た海軍がこれ幸いと,それまでに潰されてきた「本格的空母」の要素を出来るだけ盛り込もうとしたもの.
 しまいにはキエフ級改ではなく,殆ど新型艦となって改めて起工された.

 ちなみにアンドレイ・V・ポルトフも,次のように経緯を述べている.

――――――
 アドミラル・クズネツォフ Admiral Kuznetsov は,改設計に次ぐ改設計により,デザインの段階でついに全通の飛行甲板を与えられた5隻目のキエフ級11434-2型に,1970年代初期に検討された1160型原子力空母をルーツに持つ正統的空母11435型(計画のみ)の技術がミックスされたもので,計画番号も11434-2型でスタートし,途中で11435型に変更された経緯を持つ.

――――――「世界の艦船」2006年3月号,p.148

 【質問】
 プロジェクト11435初期案は,どんなものだったのか?

 【回答】
 1970年代に「原子力空母」の計画案を2回立てて2回潰された海軍でしたが,ゴルシコフ海軍総司令官は,まだ空母の建造を諦めておらず,代わりに計画されたのが,プロジェクト11435でした.

 11435は,1980年までに設計案を纏め,1981年に起工し,1990年の就役を目指しておりました.

 1979年11月に承認された設計案(上の図)は,排水量65,000トン,主機はキエフ級と同一の蒸気タービン,搭載機数は52機,カタパルトを2基装備する「通常動力空母」となりました.
 搭載機は,Su-27KやYak-141などが考えられておりました.

 しかし,連邦軍参謀本部はこの案に反対し,その上,国防相ウスチノフ元帥は,排水量を抑える為,カタパルトではなくスキージャンプ台を採用し,搭載機もVSTOL機を中心にする事を要求した為,計画は延期される事になりました.

 そこで,排水量を55,000トンに抑え,搭載機数を46機に減らし,カタパルトを1基だけ装備した修正案が1980年7月に作成されましたが,ウスチノフ国防相は,1979年案に比べて戦闘能力が30パーセント下がっているとして承認を拒否,11435計画は暗礁に乗り上げてしまいました.
 ウスチノフ元帥は,カタパルトが1基だけ残っていたのが気に入らなかったのでしょうか.

 結局,既に承認済みのキエフ級5番艦・プロジェクト1143-2(改バクー級)に,上記11435の要素を盛り込んだ「折衷案」が,最終的に政府や国防省の承認を受け,これを「プロジェクト11435」と改名し,建造に着手される事になりました.

 プロジェクト1143-2改め11435は,1982年9月1日に起工されました.
 これが,のちの「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」です.

「ロシア・ソ連海軍」,2007/1/14(日) 午後 7:08


 【質問】
 「世界の艦船」2006年10月号の読者投稿に,米空母ミッドウェイと諸性能が似ていることから,ロシアのスパイが情報を盗んで,クズネツォフ建造に役立てたのではないか?とする主旨のものがありましたが,どうなんでしょうねえ?

消印所沢

 【回答】
 まず,当ブログでも書いているように,クズネツォフ(プロジェクト11435)は,当初からあのような規模の艦として設計されていたのではない.
 ソ連海軍は,1970年代に原子力推進の「空母」を2度に渡って計画し,2度に渡って潰された.
 そして結局,実際に建造が認められたのが,キエフ級の拡大型でスキージャンプ台と全通飛行甲板を有する「45,000トン級」の「空母」プロジェクト11435であった.

 それから1年後の1981年,ソ連海軍の大演習「ザーパド81」が行われ,航空巡洋艦キエフも参加した.
 この時,当時の国防相で,「本格的空母」の建造計画を2度に渡って潰した張本人であるウスチーノフ元帥がキエフを視察した.
 ウスチーノフは,キエフの戦闘能力について説明されて非常に感激し,その場で,プロジェクト11435の排水量を1万トン増加させるように指示したと言う.

 こうして,11435は6万トン近い大型艦として建造される事になり,翌1982年9月1日には,早くも建造工事に着手された.
 で,「結果として」「米空母ミッドウェイと諸性能が似ている」艦になったわけ.

 そもそも「米空母ミッドウェイ」は,当初からジェット機の運用を想定して設計されてはいない事は周知の事実.
 元々はエセックス級の拡大型で,太平洋戦争終結直後の1945年9月10日に竣工した艦だよ.
 それを,何回も改装に改装を重ね,どうにか超音速ジェット戦闘機を運用できるようにしたのは良いが,その結果,艦の復元性能は悪化し,1986年には日本の横須賀でバルジを両舷に装着する改装工事を行う事になった.
 こんな「出来損ない空母」の情報など,盗んで建造に役立てる価値が有るのだろうか?

 だいたいやね,上記のように,1970年代には米原子力空母のような艦の建造を目指していたソ連が,何が悲しゅうて,それよりも遥かに旧式の米空母の情報を盗んで役立てなきゃならんねん.
 寝言は寝て言え.

 疑われるべきは,こんなデムパ説を艦船専門誌に投稿するマカーキ(ニホンザル)と,そんなデムパ説を読者投稿欄に載せた「世界の艦船」編集スタッフの見識だろうね.
 「世界の艦船」の読者&編集スタッフも,質が低下したよな・・・・・・

 こんな説がまかり通るんなら,一部で流布している
「零式艦上戦闘機は,イギリスのグロスター社製戦闘機のパクリ」
の方がよっぽど説得力が有るぜ(爆笑)

空母「ミッドウェイ」

「シア・クァンファ」改め「紅月ひかる」


 【質問】
 アドミラル・クズネツォフという名前に決まるまでの名前の変遷は?

 【回答】
  「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」の元々の予定艦名は,「レオニート・ブレジネフ」 Леонид Брежневでした.
 それが1987年8月11日付でトビリシТбилисиに改名され,1990年10月4日付で現在の艦名になりました.

 下の写真は,その「レオニート・ブレジネフ」時代のものです.
 本艦は1985年12月5日に進水しておりますが,おそらくは進水直後に撮影されたものでしょう.
 いまいち不鮮明ですが,艦首の横に「Леонид Брежнев」と書かれています.

Морские Силы~ロシア・ソ連海軍~
2007/4/11(水) 午後 11:20

 1987年8月11日から1990年10月3日までは,トビリシТбилисиという艦名でした.
 本艦は,艦名が「トビリシ」だった時期の1989年6月から洋上テストが開始され,1989年11月1日,本艦に初めてSu-27K及びMiG-29K艦上戦闘機が着艦しました(2枚目の写真).
 翌1990年7月からは受領試験が行われましたが,この試験の最中の1990年10月4日,本艦は「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」と改名されました.

 本艦の就役は,改名から2ヵ月後の1990年12月25日でした.

 この為か,本艦の就役時の名前はトビリシで,就役後に改名されたと勘違いしている者は結構多いようです.
 というか,大半の軍事専門誌が勘違いしてます(^^;
 まあ,1990年初頭あたりにソ連側(タス通信とか)から,「新鋭空母トビリシ」の写真が気前良くリリースされていたので,そう勘違いするのも無理からぬ事ではあったでしょう.

 なお,本艦の舷側番号は,1989年には「111」でしたが,翌1990年には「113」に変更されています.

3枚目:1989年のトビリシ


5~9枚目:1990年のトビリシ

Морские Силы~ロシア・ソ連海軍~
2007/5/2(水) 午後 8:51


 【質問】
 「アドミラル・クズネツォフ」の搭載機は?

 【回答】
 現在の同艦の標準的な搭載機は
・Su-33艦上戦闘機×20機
・Su-25UTG艦上練習機×4機
・Ka-27PL対潜ヘリコプター×18機
・Ka-27PS捜索救難ヘリコプター×4機
・Ka-31早期警戒ヘリコプター×2機
となっており,このうちSu-33とSu-25UTGは「第279艦上戦闘機連隊」という部隊の所属です.

 当初の予定では
・Su-33艦上戦闘機×18機
・MiG-29K艦上戦闘機×18機
・Yak-44E艦上早期警戒機×4機
・Ka-27対潜ヘリコプター×12機(捜索救難型も含む)
となるはずだったのですが,ソ連邦解体後にMiG-29KとYak-44Eがキャンセルされた為,現在のような構成になりました.
 同艦が公試を行っていた頃のソ連側報道によると,最大で60機くらい搭載可能だそうです.

faq39a04.jpg

シア・クァンファ


 【質問】
 空母「クズネツォフ」の艦載戦闘機隊の編制は?

 【回答】
 ソ連邦英雄2度受賞ボリス・サフォーノフ名称記念第279独立艦上戦闘機航空連隊は,2個飛行中隊で構成されています.

[第1飛行中隊]1-я Эскадрилья

 60号機,61号機,62号機,64号機,66号機,67号機,68号機,71号機,72号機,76号機

[第2飛行中隊]2-я Эскадрилья

 77号機,78号機,80号機,81号機,83号機,84号機,85号機,86号機,87号機,88号機

 写真の機体(78号機と81号機)は,第2飛行中隊所属機です.
faq120610.jpg
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ロシア・ソ連海軍報道・情報管理部機動六課
2012/2/28(火) 午後 9:51

青文字:加筆改修部分


 【質問】
 クズネツォフの機関は欠陥品?

 【回答】
 アドミラル・クズネツォフの機関は,通常の蒸気タービンであり,KVG-2型ボイラー8基とTV-12-4型蒸気タービンエンジン4基で構成される.
 念のために書いておくが,原子力推進じゃございません.
 日本では,「空母」は全て原子力推進だと思っている奴もけっこう居るらしいけど.
 だいぶ前に,かの『読売新聞』でクズネツォフの事が少しだけ取り上げられたが(写真付きで),この時にも「ロシアの原子力空母」などと書かれていたものです(笑)

 そのクズネツォフの心臓とも言えるKVG-2型は,旧ソ連海軍の大型水上艦で多用されていた重油専焼ボイラーであり,クズネツォフの前のキエフ級航空巡洋艦も基本的には,同じ形式の主機が同じ数だけ載せられていた.

 ただ「同じ主機」とはいえ,キエフ級の機関の合計出力が180,000馬力であるのに対し,クズネツォフは200,000馬力と,出力が1割強ほどアップされている.
 これをボイラー1缶あたりに換算すると,キエフ級は1缶あたり22,500馬力,クズネツォフは25,000馬力になる.
 蒸気タービン機関において出力がアップされるという事は,ボイラーから発生する蒸気の圧力を高める事に他ならない.
 つまり同じKVG-2型とは言っても,キエフ級のボイラーよりは蒸気圧力が高くなっていると見られる.

 さて,ロシア・ソ連のモノとなると,何でもかんでも「欠陥品」と決め付けたがる輩が多い事は,これまでくどいほどに当ブログでも取り上げてきたが,クズネツォフの機関とて例外ではありません.

 ただ,確かにクズネツォフは就役以来,機関故障が頻発しておりました.
 クズネツォフの就役以降の行動から,機関に関する事柄をピックアップしてみると・・・
1993年:ボイラー故障
1994~1995年:ボイラー換装
1996年1月4日:地中海遠征時にボイラー2基が故障
1996年1月7~17日:チュニジアにて応急修理
(地中海遠征中,ボイラー8基のうち6基が故障)
1999年:ボイラー故障
2000年~:オーバーホール

 というわけで,1990年代はボイラーの故障が多かった.

 一見すると
「何だ,クズネツォフの機関(ボイラー)は欠陥品じゃないか」
と思われるかもしれないが,もう少し詳しく分析してみよう.

 まず,クズネツォフの機関(ボイラー)に最初から欠陥が有るのならば,1991年12月初頭に黒海を出て北方海域に向かう時にボイラー故障が起きていているのではないか?
 だが,この時には機関には異常が無かった.
 否,そもそもクズネツォフは,改名前のトビリシの時代の1989年11月から洋上テストを開始しているが,この時にも機関が故障した事は無い.

 クズネツォフのボイラー故障が起きるようになったのは,北方海域に配属されて以降の事である.
 つまりソ連邦が解体されてから,という事だ.

 ソ連邦解体後,ロシア海軍は極度の財政難と人手不足に悩まされるようになり,艦艇の活動は低下した.
 当然,クズネツォフとてその影響は免れ得ない.
 ロシア海軍最大の水上艦という事は,乗員数もロシア海軍最大という事になるが,果たしてこのどん底の時期に,優秀な乗員を多数揃えられたかどうかは甚だ疑問だろう.
 熟練した機関員を揃えるのも困難であり,未熟な乗員(機関員)が増えてしまったとしても不思議ではない.

 この乗員の錬度不足が,機関故障を招いたのではないか?
 また,1994~1995年にかけてボイラーを換装しているが,この時の修理作業が杜撰だった可能性も高い.
 この時期,どこの造船所も,金払いの悪い海軍の艦艇の修理は嫌がっていたし,修理を引き受けても,金を払ってもらえる当てが無い為か,「手抜き」する事も多かった.
 誰だって,カネにならない仕事なんかには力を入れないよね.

 こんな状況下において,地中海に遠征した事が,さらにボイラー故障を続発させる結果に繋がったのではないか?
 海軍上層部としては
「ボイラーも換装したし,もう大丈夫だろう」
とでも思ったのかもしれないが.

 これらの原因によりクズネツォフの機関はガタガタになり,90年代末には「瀕死」の状態に陥ってしまった.
 2000年以降は長期修理を余儀なくされたが,プーチン政権になってからは,修理の為の予算が本格的に割り当てられるようになり,ようやくマトモに修復される事になった.

 クズネツォフは2004年9月に復活.
 早速,北大西洋で演習を行い,健在ぶりをアピールした.
 これ以降,クズネツォフの機関故障は無くなった.

 ちなみに,『世界の艦船』2004年12月号より,クズネツォフについての記述.

――――――
「さすがに一応健在ではあるが,その機関については不調が伝えられており,1991年に就役して以来,すでに3回もボイラーのチューブ交換を行い,現在もまた機関の大規模修理の必要に迫られていると言われる.
 今のところクズネツォフはロシア海軍の威信を示す艦としての地位を保っているが,その機関の問題が,予算不足によって解決困難となってくると,早期退役という可能性も持ち上がってくるかもしれない」
(岡部いさく)
――――――

 この号が店頭に並んでいた頃,「不調」のアドミラル・クズネツォフは,「機関の大規模修理」をとうに終え,北大西洋で演習を行っていたんですが・・・(^^;
 ・・・・間が悪いとは,正にこのコトですね(笑)
 今度,『世界の艦船』でロシア海軍の特集を組む時には,アンドレイ・ポルトフ氏以外の執筆陣を総入れ替えした方が良いと思われます(笑)

Морские Силы~ロシア・ソ連海軍~
2006/12/15(金)午後7:13


 【質問】
 空母「クズネツォフ」において、『コブラ』などのマニューバで有名なプガチョフ氏が,初の発着艦テストを行った,というのは本当か?

 【回答】
 本当.
 プガチョフ他2名が,試験飛行を行った.
 以下引用.

 1989年末,重航空巡洋艦「トビリシ」において,航空兵装の共同飛行・設計試験が行われた.
 1989年11月1日,甲板上において,艦載戦闘機MiG-29K,Su-27K及び教育・訓練機Su-25UTGが最初の着陸,後に離陸も実行した(試験飛行士はそれぞれT.O.アウバキロフ,V.G.プガチョフ及びI.V.ヴォチンツェフ).
 1990~91年,これらの機体の試験は,黒海で継続され,1991年末,重航空巡洋艦(この時既に「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」)は,北洋艦隊の母港への移転を実行した.

(「アドミラル・クズネツォフ」 from 「対外情報調査部」)

↓Su-27K

↓Su-33

(スタルヴォ & 夏光華(シア・クァンファ) in FAQ BBS)


 【質問】
 クズネツォフの写真にカタパルトが見当たらないのですが?

 【回答】

<旧来の説明>

 〔クズネツォフ建造当時,〕旧ソ連は艦載機射出用のカタパルトを開発できなかったため,発艦の際は,傾斜14度のスキー・ジャンプを利用しています.

 ちなみに着艦の際は,傾斜7度のアングルド・デッキと4個のアスレッチング・ギアを使います.

(福好昌治 「丸」 Feb. '03,抜粋要約)

<最近の説明>

 旧ソ連は、本型より前のプロジェクト1143(キエフ級)に続く「航空機搭載艦」として、当初は蒸気カタパルトを備えた本格的な原子力空母を計画していた。
 計画がスタートした1970年代初頭の国防相グレチコ元帥は、陸軍出身にしては珍しく空母推進派で、
「わが国にも(米ニミッツ級のような)空母が必要なのだ」
と檄を飛ばしていたのだが、彼の後任のウスチーノフ元帥になってから状況は変わった。
 国防省も共産党中央委員会も本格的空母には消極的であり、さらには海軍総司令官ゴルシコフ連邦海軍元帥までもが、本格的な空母にまで長距離対艦巡航ミサイルを搭載するように要求するなど、多方面からの様々な横槍によって、設計段階で(祖国に)「撃沈」されてしまった。

 それで結局、計画を練り直し、基本的にはキエフ級を拡大して全通飛行甲板を備えた本型が最終的に承認され、実際に建造に着手される事になった(このあたりの経緯については、ロシア海軍機関誌「海軍論集」1992年3月号掲載論文「航空巡洋艦~我々は何が成されたか知っている~」で、とある現役の海軍大佐が匿名で告発したのだが、西側ではほとんど注目されなかった)。

wikipedia「アドミラル・クズネツォフ」

 カタパルト自体は,1985年頃には黒海沿岸サキ飛行センターに試作品が設置されており,この事は,当時のアメリカ国防総省発行の「ソ連の軍事力」でも確認されています.
 更に付け加えれば,本級2隻に続いて建造される予定だった「原子力空母」ウリヤノフスク級は,最初からカタパルトを装備する設計になっていました.

夏光華(シア・クァンファ) in FAQ BBS

 ところで,やたらと詳しい,このウィキペディア「アドミラル・クズネツォフ」項目の寄稿者は,もしや…….


 【珍説】
 ソ連海軍は蒸気カタパルトを開発はしたが,実用化には失敗した.
 陸上に設置された機材が成功していたとしても,艦載出来ていないのなら「実用化に成功」というのは苦しくない.

 【事実】
 結果「だけ」見ても,物事を正しく見ることは出来ないぞ.

 「実用」蒸気カタパルト搭載第一号のウリヤノフスクが未完成なのに,「実用化失敗」と決め付けられる思考がステキ(笑)
 ウィキペディアのどこをどう読んだら,そういう結論になるのか理解に苦しむ.
 で,ウリヤノフスクが未完成に終わったのは,カタパルトの実用化云々とは無関係.
 技術的要因と政治的要因を混同するなよ.

 「技術的に実用化は無理」と判明して中止するのならば「開発に失敗」と言えるが,技術的問題以前に開発を継続できる環境が失われた事を,「開発に失敗」と言うのは違うのでは?
 「開発に成功」と「装備化」をごちゃ混ぜにして考えてるのだろうか.

 例えば,「シー・コブラ」と言うイタリアとイギリス共同開発の連装30㎜CIWSがある.
 1985年にスタートし,1988年にはシステム試験も完了したCIWSだが・・・
 しかし,これを採用した国は無い.
 これをどう思う?
 CIWS自体が「失敗作」かな?
 「開発に失敗」してるのかな?

438:名無し三等兵:2006/07/23(日)18:57:35ID:???
つまりあれだな,モンタナ級戦艦とかユナイテッド・ステーツ級空母とかは失敗だと.


439:名無し三等兵:2006/07/23(日)18:58:35ID:???
XB-70も失敗なんだろうなあ


440:名無し三等兵:2006/07/23(日)18:59:51ID:???
日本の八八艦隊に対抗して計画された米サウスダコタ級戦艦,レキシントン級巡洋戦艦も失敗ですねw


441:名無し三等兵:2006/07/23(日)19:01:08ID:???
F-20タイガーシャークも失敗ですか


442:名無し三等兵:2006/07/23(日)19:02:46ID:???
アーレイ・バークのフライトⅢは諸事情により開発を断念したのでバーク級は失敗作!!!11


443:名無し三等兵:2006/07/23(日)19:03:03ID:???
四式中戦車,五式中戦車も失敗w


444:名無し三等兵:2006/07/23(日)19:04:09ID:???
>>442
アーセナルシップも失敗作ですか?


445:名無し三等兵:2006/07/23(日)19:04:23ID:???
もう「ソ連邦が失敗」でいいよ

軍事板



 【質問】
 カタパルトが実用化されたのなら,クズネツォフに装備されないのは何故なんだろう?
 お金の問題が第一の要因だろうけど,モノになっているなら装備してもおかしくないよね?

 【回答】
 国防大臣ウスチノフ元帥閣下の威光を見くびってはいけません.
 「蒸気カタパルト付き原子力空母」の設計案が二度にわたってウスチノフ元帥閣下を筆頭とする連邦軍上層部に潰された後に,カタパルト付き空母を設計したら,アニキーエフ氏はシベリア送りになっちゃいますよん.

 直接は関係ないが,かの高速原潜アルファ型の設計主任は1970年代末,
「"大型の艦艇を造って米海軍に対抗する"という軍の方針に逆らって小型の原潜を作った」
などという理不尽な理由でクビになっておりますよ.
 かかる状況下で,その軍のトップである国防大臣が,「蒸気カタパルト付き原子力空母」の建造を許さないと公言しているのに,その意向に逆らって蒸気カタパルトを付けることなど出来ないと思われ.

 1970年代末のソ連邦で,今の我々のような常識が通用するくらいならば,ソ連邦崩壊は無かったでしょうね.

軍事板



 【質問】
 ソ連邦崩壊後にクズネツォフにカタパルトを付けるような動きってなかったの?
 そんなことに使う予算は無いだろうけど.

 【回答】
 乗組員の給料も払えない状態で,そんなどうでも良いことできるか!

 クズネツォフ自体が1990年代後半には整備もせずに放置という状況で,追加装備を付けるような大規模改装など論外でしょう.
 プーチン大統領になってから本格的な整備と修理が行われたが,「元通りにする」ので精一杯だったでしょうね.

軍事板


 【質問】
 「クズネツォフ」の性能要目は?

 【回答】
満載排水量:55000t
全長:302.3m
最大幅:72.3m
吃水:9.14m
動力装置:蒸気タービン
蒸気タービン出力:50000馬力×4基
最大速力:29ノット
航続距離:3850海里(29ノット),8500海里(18ノット)
乗員:1969名
自立行動期間:45日

[兵装]
対艦ミサイル複合体「グラニート」:発射機12(ミサイル12発)
高射ミサイル複合体「キンジャール」:垂直発射機24(ミサイル192発)
高射ミサイル砲複合体「カシターン」:8基(ミサイル256発及び機銃弾4800発)
30mm高射砲複合体AK-630:6基(弾数24000発)
対水中・対魚雷複合システム「ウダフ-1」:60発

[航空隊]
航空機Su-27(Su-33)×12機
ヘリコプターKa-27×24機

新「六課」,2012.6.12
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 STOBARとは?

 【回答】
 「短距離離艦,ただし拘束着艦」(Short Take Off, But Arrested Recovery)の略称.
 2005年現在,アドミラル・クズネツォフAdmiral Kuznetsovだけに用いられている特異な方式である.

 これについて,岡部いさくは次のように述べている.

 飛行甲板の前端は12度の大型のスキー・ジャンプとなっており,カタパルトは持たない.
 CTOL〔通常離着陸〕搭載機はスキー・ジャンプで離艦し,着艦する際には通常の空母と同様にアレスティング・ワイヤで機を停止させるという,他に例のない方式を採っている.
 この方式は「短距離離陸,ただし拘束着艦」という意味でSTOBARと呼ばれる.

 ロシア海軍はCTOL空母を建造したことがなく,当然スチーム・カタパルトを製造したことも運用したこともない.
 空母を建造するに当たって,経験のないスチーム・カタパルトを避けたのは,それなりの理由があったのだろう.
 もちろん重量や整備保守の手間や人員も,カタパルトを廃すことができれば不要となる.
 ただし,スキー・ジャンプでは機が加速されるわけではないので,CTOL機は重量が軽く,推力に余裕がなければ,離艦することは難しくなってくる.

 世界初にして現在世界唯一のSTOBAR空母として,クズネツォフの運用実績には大きな関心が持たれるところだが,ロシア海軍の大型艦の例に漏れず,その活動は非常に不活発で,STOBARの実績については殆ど聞こえてこない.

( from 「世界の艦船」2002年9月号,p.94-95)


 【質問】
 クズネツォフのP-700型グラニト対艦ミサイルは,なぜ発射筒内に注水する必要があったのか?

 【回答】
 専用発射機の開発にかかる時間と予算を惜しみ,949A型(オスカー型)原潜のシステムを流用したため.
 そのため,発射時は増えた重量により速力が低下するなどのデメリットを生じたという.

 詳しくは,「世界の艦船」2006年3月号,p.149(A. V. Polutov著述)を参照されたし.


 【質問】
 クズネツォフ搭載の長距離対艦ミサイルは,どの程度有用なのか?

 【回答】
 発射筒のために格納庫スペースが減り,飛行作業中は発射できないなど,「空母」として見れば使い勝手が悪いという.
 以下引用.

 搭載航空部隊の弱体を補うためか、クズネツォフは近距離兵器を中心に強力な対空兵装を持ち,さらに前部の飛行甲板にはSS-N-19対艦ミサイルの発射筒12本が埋め込まれている.
 長距離対艦攻撃は,搭載機よりむしろこのミサイルに期待しているのかもしれないが,ミサイル発射筒のために格納庫のスペースが減り,しかも飛行作業中はミサイルの発射は不可能となるなど,空母としての運用を考えると,このミサイルは勝手の悪いもののようにも思われる.

 おそらくクズネツォフは冷戦末期のソ連海軍において,戦略ミサイル原潜展開海域の保護と水上部隊のための防空と対潜のプラットフォームとして計画されたものであったのだろう.
 その意味では,米スーパーキャリアーのような,力の投射を目的とした空母というよりは,英インヴィンシブル級のほうに性格としては近いのかもしれない.

(岡部いさく from 「世界の艦船」2002年9月号,p.95)


 【珍説】
ウィキペディア:アドミラル・クズネツォフ(空母)(2009/3/5アクセス)

>[グラニートミサイルVLS未配備疑惑]
>VLSが配備されている痕跡が甲板上に見られない

>グラニートミサイルの発射が公開されていない

>このことから当初搭載すると発表されていた
>「グラニート」長距離対艦巡航ミサイルのVLS(垂直発射筒)を取り外したか,
>始めから装備しなかったことにより格納庫スペースを水増しして確保している疑念が持たれている

 【事実】
>VLSが配備されている痕跡が甲板上に見られない

 そりゃ,ふだんは目立たないからね.
 youtubeの動画程度じゃ,分からないよ.

http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/37209335.html
の2枚目では,しっかりとVLSのハッチが確認できるね.

>グラニートミサイルの発射が公開されていない

http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/37474508.html
の写真を見ろ.

>このことから当初搭載すると発表されていた
>「グラニート」長距離対艦巡航ミサイルのVLS(垂直発射筒)を取り外したか,
>始めから装備しなかったことにより格納庫スペースを水増しして確保している疑念が持たれている

 アドミラル・クズネツォフの構造上,それは不可能です.

 下の図面は,クズネツォフの艦内ですが,実は,対艦ミサイル区画と格納庫の間には,航空隊指揮所や戦闘指揮所などが有り,ミサイル区画を無くしたところで,格納庫をそのまま拡張する事は出来ません.

 それに,この図面(1枚目)を見る限り,対艦ミサイル区画が存在する場所は,ミサイルのランチャーが飛行甲板を支える形になっているようです.
 ランチャーを無くせば,この部分の甲板の強度が落ちます.
 それこそ,「安心してタッチ・アンドゴー訓練を行う」事は出来なくなります.

「ロシア・ソ連海軍」,2009/3/5(木) 午後 8:30
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 クズネツォフの随伴艦は?

 【回答】
 アドミラル・クズネツォフは,北方艦隊の「第7大西洋作戦戦隊」という部隊に所属しております.
 同戦隊の編制は,2006年9月現在で以下のようになっております.

<第7大西洋作戦戦隊>(司令官:アレクセイ・マクシミチュク少将)

★第43水上艦艇師団
重航空巡洋艦アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ
重原子力ロケット巡洋艦ピョートル・ヴェリキー
ロケット巡洋艦マルシャル・ウスチノフ
戦列駆逐艦アドミラル・ウシャコフ(旧ベスストラーシュヌイ)

★第2対潜艦旅団
大型対潜艦アドミラル・チャバネンコ,アドミラル・レフチェンコ,セヴェロモルスク

 この他,予備役として以下の艦が在籍しております.

重原子力ロケット巡洋艦アドミラル・ナヒモフ(近代化改装中)
戦列駆逐艦ラストロープヌイ(オーバーホール中),ベズプレチュヌイ(オーバーホール待ち)
大型対潜艦アドミラル・ハルラモフ(オーバーホール待ち),ヴィッツェ・アドミラル・クラコフ(オーバーホール完了?)

 作戦行動の際には,第16支援艦艇旅団(補給艦セルゲイ・オシポフ,ゲンリク・ガサーノフなど計5隻)所属の補給艦などが随伴する事も有ります.

 この「第7大西洋作戦戦隊」が,ロシア海軍唯一の「空母機動部隊」と言えるでしょう.

 さすがに,所属艦艇全てが一斉に出航した事は無いようですが,2004年9月下旬の北大西洋演習には,アドミラル・クズネツォフ,ピョートル・ヴェリキー,マルシャル・ウスチノフ,アドミラル・ウシャコフと第16支援艦艇旅団の補給艦2隻が参加しております.

 1996年初頭の地中海遠征は,アドミラル・クズネツォフと駆逐艦ベスストラーシュヌイ(現アドミラル・ウシャコフ)のみで,その他には,航洋曳船と原子力潜水艦が随伴という非常に寂しい「空母機動部隊」でしたが.

シア・クァンファ

1995~1996年の地中海遠征時のクズネツォフと随伴艦


駆逐艦ベスストラーシュヌイ(現アドミラル・ウシャコフ)

Морские Силы~ロシア・ソ連海軍~
2007/9/27(木) 午後 9:04


 【質問】
 「クズネツォフ」の経歴は?

 【回答】
 『ロシア連邦国防省公式サイト』内の,北方艦隊旗艦の重航空巡洋艦「アドミラル-フロータ-ソヴィエツカヴァ-ソユーザ・クズネツォフ」紹介ページ,
【重航空巡洋艦プロジェクト1143.5「アドミラル-フロータ-ソヴィエツカヴァ-ソユーザ・クズネツォフ」】
によれば,以下の通り.

 北方艦隊の重航空巡洋艦「アドミラル-フロータ-ソヴィエツカヴァ-ソユーザ・クズネツォフ」は,同クラスの5隻目の艦としてソヴィエト連邦で建造された.
 計画時には「ソヴィェツキー・ソユーズ」という名前であり,船体の起工時には「リガ」,進水時には「レオニード・ブレジネフ」,航海試験時には「トビリシ」という名前だった.

 巡洋艦は黒海造船工場で1982年9月1日に起工され,1985年12月4日に進水した.
 1989年6月9日から係留試験が開始された.
 1989年10月21日,同艦は海洋へ出航し,航空機MiG-29K,Su-27K及びSu-25UTGの飛行開発試験を実施した.

 艦は北方艦隊へ加入し,そして1991年1月20日,乗組員は初めて海軍旗を掲揚した.
 同年末,巡洋艦はヴィジャエヴォへ移動した.
 続く1992~1994年,同艦及び航空隊の様々な兵装及び機器の試験が行なわれた.
 巡洋艦は3-4ヶ月に渡り,海洋で訓練に参加した.
 1993年,艦載戦闘機Su-33の最初のシリーズ(量産機)が採用された.

 ロシア海軍創設300周年の前年の1995年12月23日,多用途艦で構成される巡洋艦グループは,地中海での戦闘勤務の為に出港した.
 艦上航空グループは,13機のSu-33,2機のSu-25UTG,そして11機のヘリコプターで構成されていた.
 航海中,同艦は,ロシアのヘリコプターのアメリカ空母への着艦を含むアメリカ合衆国海軍艦艇との連携行動を実施した.
 更にロシアのパイロットは,アメリカ合衆国航空機により運ばれた.
 艦はタルトゥース(シリア),クレタ島及びマルタ島(ヴァレッタ港)への業務寄港を行なった.
 航海の最終ステージで,同艦は北方艦隊の指揮幕僚演習に参加した.
 1996年3月22日,基地へ戻った.
 この航海中に14156海里を航行し,524回の航空機のフライト(400回以上のSu-33の飛行を含む)と996回のヘリコプターのフライトが行なわれた.
[1996年のアドミラル・クズネツォフ(ヴィジャエヴォ)]

 1998年,同艦は北方艦隊の大規模演習に参加した.
 1999年,戦闘訓練任務遂行の為に海へ出た.
 2000年,原子力水中ロケット巡洋艦「クルスク」救助作戦に参加した.

 2004年2月,同艦は,ロシア連邦軍参謀本部総長の指揮の下に海洋で任務を遂行した.
 この演習は,ロシア連邦軍の最高司令官であるロシア大統領ウラジーミル.V.プーチンの視察を受けた.

 2004年9月22日から10月22日,同艦及び重原子力ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」,ロケット巡洋艦「マルシャル・ウスチーノフ」,艦隊水雷艇「アドミラル・ウシャーコフ」を含む北方艦隊の9隻の艦及び支援船で構成される艦艇航空グループは,北東大西洋航海に参加した.

 2007年12月5日,艦艇打撃グループは2度目の地中海航海の為に出港し,2008年2月3日に帰港した.

 2008年10月,戦略指揮幕僚演習「スタビリノースチ」の海洋フェイズを,ロシア連邦軍最高司令官であるロシア連邦大統領ドミトリー.A.メドベージェフは本艦の艦上から視察した.

 2008年12月から2009年2月まで同艦は地中海及び大西洋への遠距離航海任務を遂行し,友好国の港であるタルトゥース(シリア)及びマルマリス(トルコ)を訪問した.

 2009年9月,同艦は航空機MiG-29K及びMiG-29KUBの国家試験を成功裏に実施した.

 2010年9-10月,同艦はバレンツ海で戦闘訓練任務を遂行した.
 航行期間中,乗組員は12回の飛行当直を行ない,艦上航空隊は222回のフライトを実施,これにより17名の艦上戦闘機飛行士は航空機Su-33とSu-25UTGによる発着艦の技量を向上させた.

 2011年12月6日から2012年2月16日まで,同艦の艦艇航空グループは,バレンツ海,ノルウェー海,北海,地中海,大西洋における遠距離航海任務を遂行した.
 地中海においては,バルト艦隊の警備艦「ヤロスラフ・ムードルイ」及び黒海艦隊の警備艦「ラードヌイ」と異種艦隊グループを構成し,連携行動を行なった.
 艦は出航以来,15000海里以上を航行した.
 遠距離航海中に航空巡洋艦の甲板上で重戦闘機Su-33の150回の着艦が行なわれた.
 艦載ヘリコプターの乗員は200回以上の発艦を実施した.
 この内の約80回は夜間の条件下だった.
 この遠距離航海の結果,50名の北方艦隊海軍将兵が国家及び海軍当局から表彰を受けた.

 これまでの同艦の艦長は,V.S.ヤルイーギン1等海佐,I.F.サニコ海軍少将,A.V.チェルパノフ海軍少将,A.V.トゥリーリン1等海佐,A.P.シェフチェンコ1等海佐,V.N.ポジオノフ1等海佐が務めた.

 現在の重航空巡洋艦「アドミラル-フロータ-ソヴィエツカヴァ-ソユーザ・クズネツォフ」艦長は,S.G.アルタノフ1等海佐が務めている.

新「六課」,2012.6.12
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 クズネツォフの地中海遠征について教えられたし.

 【回答】
 ソヴィエト連邦解体直前の1991年12月末に北方艦隊ヘ配備された重航空巡洋艦「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」だったが,極度の財政難により,その後の活動は極めて低調であり,ムルマンスク近郊のウラ・グバ(ヴィジャエヴォ)に停泊している事が多かった.

 就役から4年後の1994年,クズネツォフにようやく航空部隊が配属された.

 1995年12月8日,クズネツォフは,ウラ・グバを出港した.
 目的地は,5年前に通過した地中海であった.

 クズネツォフには,駆逐艦ベスストラーシュヌイ(ソヴレメンヌイ級),原子力潜水艦「ヴォロネジ」(オスカーII型),
「ヴォルク」(アクラ型)と航洋曳船の他,バルト艦隊所属の警備艦ピィルキィ(改クリヴァクI型)が随伴した.

 この時,「クズネツォフ機動部隊」の指揮を執ったのは,ロシア海軍総司令官第一代理(副総司令官)イーゴリィ・カサトノフ大将.
 奇しくも彼は,かつて1991年12月,黒海を「脱出」するクズネツォフを見送った黒海艦隊司令官であった.

 地中海へ向かうクズネツォフには,
Su-33艦上戦闘機×15機,
Su-25UTG艦上練習機×1機,
Ka-27対潜ヘリコプター×10機,
Ka-31早期警戒ヘリコプター×1機
が搭載されていた.

 1995年12月23日,クズネツォフ機動部隊はジブラルタル海峡を抜け,地中海入りした.

 地中海西部で新年を迎えたクズネツォフ機動部隊は,1996年1月7日,チュニジアに寄港,17日まで滞在していた.

 チュニジアを出港し地中海を航行するクズネツォフは,アメリカ海軍第6艦隊司令官の訪問を受けた.

 地中海を東へ進むクズネツォフ機動部隊は,1月29日,シリアのタルトゥスに入港.2月2日に出港した.

 2月17日,マルタのヴァレッタに寄港.19日まで滞在.

 その後,クズネツォフ機動部隊は帰路につき,2月4日,ジブラルタル海峡を抜け,大西洋入りした.

 クズネツォフ機動部隊がバレンツ海に入ると,北方艦隊は,本艦を「標的」にして「対空母迎撃」演習を行った.

 1996年3月22日,クズネツォフはウラ・グバに帰還した.

 この時,クズネツォフは6,245海里(11,565km)を航行し,艦載機の飛行回数は600回に及んだ.

 その後,ロシア海軍は,2000年秋以降に,再びクズネツォフの地中海進出を計画したが,極度の財政難により取り消された.

地中海のクズネツォフ


クズネツォフに随伴した警備艦ピィルキィ


機動部隊を指揮したイーゴリィ・カサトノフ大将

Морские Силы~ロシア・ソ連海軍~
2007/9/27(木) 午後 9:04


 【質問】
 クズネツォフの近況は?

 【回答】

ムルマンスクで出港準備中のクズネツォフ(2005年3月21日)


給油艦から給油を受けるクズネツォフ(2005年3月21日)

 上掲写真が撮影されてから数日後,クズネツォフは出港してバレンツ海で演習を行ない,同2005年9月には大西洋北部まで進出し,演習を実施しております.

 そして2006年初頭から浮きドック(ロスリャコヴォ工廠)でオーバーホールを行ない
(http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/15457414.html参照)その後,セヴモルプート工廠に回航して修理が行なわれました.

:セヴモルプート工廠で修理中のクズネツォフ(2006年8月16日)

 下掲写真が,昨年9月末に報じられた,修理を終える直前のクズネツォフです.
(http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/2006939.html参照)

修理中のクズネツォフ(2006年9月22日)


修理中のクズネツォフ(2006年9月22日)

Морские Силы~ロシア・ソ連海軍~
2007/4/8(日) 午後 0:58

 【関連動画】

「ワレYoutube発見セリ」:アドミラル・クズネツォフ

「ロシア・ソ連海軍」:「アドミラル・クズネツォフ」は,2020~2025年まで現役に留まる

「ワレYoutube発見セリ」:哀愁のロシア海軍正規空母アドミラル・クズネツォフ


 【質問】
 アドミラル・クズネツォフって耐用年数どれくらいなんですか?

 【回答】
 艦艇は整備さえ金をかければ,相当な長期間使えます.
 台湾海軍や北朝鮮など「新型艦艇の調達の目処」が立たないところだと,40年50年も現役だったりします.

 その一方で,空母のような大型高価な艦艇であっても,維持費でアシが出るとか,より費用対効果の高い代替艦艇ができると,寿命に余裕があっても除籍されます.

 くだんのロシア空母の寿命は,ロシアが海軍に何を期待するのかという戦略と,維持費を出せる経済状況によって変わるとしか言いようがありません.

 原油高が続くのであれば,代艦の目処もないことからしばらくは維持されることになると思います.
 ただ,ロシア海軍の艦艇は港湾の支援能力が貧弱であることから,寄航中でもボイラー炊きっぱなしとか寿命が短くなる傾向があるので,機械的損耗によるどうにもならない理由での退役もあるかもしれません.

軍事板


 【質問】
 空母「アドミラル・クズネツォフ」は,近代化改装により原子力機関に換装するのでは?

 【回答】
 その情報の元々の出所は,『ロシア通信社ノーボスチ』軍事解説員イリヤ・クラムニク氏の解説・論評記事ですが,『インタファクス』の元記事
【ロシア唯一の航空母艦は近代化される】
では,機関を換装するなどとは一言も書いていません.

 可能性があるとすれば,現在,インド海軍用に改装中の空母「ヴィクラマーディティヤ」(旧アドミラル・ゴルシコフ)と同様,蒸気タービン機関のボイラー(蒸気発生器)だけKVG-ZDに換装するくらいでしょう.
 「アドミラル・クズネツォフ」の蒸気タービン機関は,キエフ型――「ヴィクラマーディティヤ」は元々はキエフ型4番艦――と同系列ですから,KVG-ZDへの換装は十分に可能です.
[プロジェクト11430(ヴィクラマーディティヤ)]

 現在の「アドミラル・クズネツォフ」のボイラーは重油専焼であり,艦船用燃料の主流が軽油になっているロシア海軍においては,ロジスティックの面で「厄介者」になっているのですが,「ヴィクラマーディティヤ」のボイラーKVG-ZDは軽油を使えるので,他の艦と燃料を統一できるメリットがります.

 日本では,「アドミラル・クズネツォフ」の機関が欠陥品とか万年不調などと勘違いしている連中が多いけど,実のところ,「アドミラル・クズネツォフ」の機関の問題点は,技術的な事ではなく,ロジスティック面にあります.
 即ち,ロシア海軍の他の艦船と燃料を共用できない.
 だから「アドミラル・クズネツォフ」が遠距離航海へ行く時には,燃料を2種類(「アドミラル・クズネツォフ」用の重油と,他の随伴艦用の軽油)用意しなければならない.

 ボイラーの換装は,それほど難しい事ではありません.
 少なくとも,「セヴマシュ」は,空母「ヴィクラマーディティヤ」で経験しているのですから,それと同じ方法を取れば良いだけの事です.
具体的には,特設船台(貯水池)に設置した後,船体の横を切り開いて,そこからボイラーを出し入れします.

「セヴマシュ」貯水池(屋外特設造船台)

「セヴマシュ」屋外特設造船台で改装中のヴィクラマーディティヤ

 「アドミラル・クズネツォフ」の近代化改装も,同じ場所で行なわれるでしょう.

ロシア・ソ連海軍報道・情報管理部機動六課
2012/2/8(水) 午後 8:28

青文字:加筆改修部分


 【珍説】
 ウィキペディア:アドミラル・クズネツォフ(空母)(2009/3/5アクセス)

>[「空母」か「巡洋艦」か]
>ちなみに現在この艦は正規空母であるとロシア軍当局は認めている.

 【事実】
 ロシア軍当局の公式発表では,今でも,"Тяжелый Авианесущий Крейсер"(重航空巡洋艦)という呼称が使われていますが.

 ちなみに,昨年10月,ロシアのメドベージェフ大統領は新しい「空母」を建造すると発言した,と伝えられましたが,実はこの時,メドベージェフ氏は,一貫して"Авианесущий Крейсер"(航空巡洋艦)という呼称を使っており,"Авианосец"(航空母艦)とは一言も言ってません.
 ロシア語読めなきゃ分からないけど.
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/34855900.html

「ロシア・ソ連海軍」,2009/3/5(木) 午後 8:30


 【質問】
 空母アドミラル・クズネツォフ錨詐欺事件とは?

 【回答】
 ロシア海軍の重航空巡洋艦「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」の修理に関し,詐欺事件が告発されました.

 『中央海軍ポータル(フロートコム)』より.

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【航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」は中古の錨を設置する】
2012年4月18日

 重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」は,規格外の錨を取り付ける.
 管理当局サイトによると,法務局は,詐欺事件として提訴する.

 違反が摘発されたのは,企業「ネヴァ川の錨」総取締役ワレンチン・ポノマリョフが株式会社「艦船修理センター"ズヴェズドーチカ"」と,錨を購入する為の契約を締結した件に関するものである.
 法務局によると,この実業家は,国防省から受領した400万ルーブルの内,100万ルーブルを購入に費やした.

 中古の錨がネーデルラントで購入された.
 これには,腐食した痕跡が有った.

 法務局は,ポノマリョフが,錨の不適切な寸法と重量を表示し,架空の数量を記した偽の証明書を作成したと結論付けた.

 「アドミラル・クズネツォフ」は,ロシア海軍唯一の空母である.
 2011年9月,北方艦隊法務局は,同艦の修理費用を水増しした事件について提訴した.
 株式会社「艦船修理センター"ズヴェズドーチカ"」の支所である,第35艦船修理工場の作業実行者は,約10万ルーブルを受け取ったと伝えられている.
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 重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」は,2011年12月6日から2012年2月16日まで大西洋・地中海遠征を実施していました.
[空母アドミラル・クズネツォフ地中海遠征2011-2012]

ムルマンスクの第35艦船修理工場
右端に空母「アドミラル・クズネツォフ」が停泊しています.

 要するに,「アドミラル・クズネツォフ」の為の新しい錨の調達を請け負った業者が,中古の錨を購入し,新品と偽って納入し,その差額を懐に入れたという事のようです.

新「六課」,2012.4.19
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 空母ワリヤーグはいつ起工されたのか?

 【回答】
 11435型クズネツォフの改良型である11436型は,当初リガ Rigaという名称で,1986/12/4,ニコライエフ(旧第444)造船所で起工.
 ちなみにこれがワリヤーグ Varyag と改名されたのは1990年6月.海軍総司令官の指示による.太平洋艦隊に配備されることが決まっていたため,日露戦争における著名な巡洋艦であり,勇壮と悲惨の象徴であるワリヤーグを記念してのもの.

 詳しくは,「世界の艦船」2006年3月号,p.148(A. V. Polutov著述)を参照されたし.


 【質問】
 ワリヤーグがクズネツォフから改正された点は?

 【回答】
 以下の点.
・艦尾の形状を変更し,格納庫面積を拡大.
・格納庫内にターン・テーブル装備
・船体装甲を単層式に
・クズネツォフでは4面固定式のマルス・パッサート型対空捜索用フェーズド・アレイ・レーダー(西側呼称「スカイ・ウォッチ」)を装備したのに対し,ワリヤーグはフェーズド・アレイ・レーダー2面を背中合わせに組み合わせ,此れを回転させるフォルム-2M型レーダーを2基装備(の予定)
・フレガットMA(MR-750)型対空レーダー(西側呼称「ストラット・ベア」)の代わりにポドベレゾヴィク型を搭載(予定)
・カンタタ11435型電子戦装置の代わりにソズヴェズディエBR型を搭載(予定)
・他,あらゆる装置やシステムを改良型に

 詳しくは,「世界の艦船」2006年3月号,p.(A. V. Polutov著述)を参照されたし.


 【質問】
 なぜワリヤーグは建造中止となったのか?

 【回答】
 ウクライナ独立によってニコライエフ造船所が同国国営となり,ロシア海軍は1991年12月から建造費をストップしたため.
 その後,ロシアとウクライナとの間でワリヤーグの所有権争いとなり,1995年6月にロシア・ウクライナ間の協定が結ばれて同艦はウクライナの所有となったものの,ウクライナにはワリヤーグを完成する意思は最初からなかった.
 そのため,1995年末には海外売却の方針が決定されたが,なかなか売買交渉は纏まらず,スクラップになりかけたものの,最終的に1997年6月に中国に売却された.

 なお,ロシア政府の決定に対し,次のように残念がる声もある.
 以下引用.

空母に詳しいロシア海軍の高官は,
「残工事25%というのは,数字だけ見ると完成には程遠いようだが,実際は後から搭載可能な装備品の取り付けや機器の調整,塗装などで,一隻の船を作る工程から見れば残務処理のようなもの.
 ロシア政府は,金貨を銅貨に無意味に両替したようなものだ」

 詳しくは,「世界の艦船」2006年3月号,p.149-150(A. V. Polutov著述)を参照されたし.

 まあ,政治的な思惑も裏に何かあったんでしょうな.


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