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(画像掲示板より引用)
「YouTube」◆(2009/11/18) Russian carrier footage MUST SEE
「六課」◆(2009/5/24) ロシア海軍は艦上航空隊科学試験トレーナー(ニートカ)での訓練を再開する
新「六課」◆(2012/08/26) ロシアとウクライナは艦上機訓練施設ニートカ使用協定を改訂した
新「六課」◆(2013/03/17) ロシア海軍の新ニートカ(空母発着訓練施設)は2013年秋から使用可能となる
「六課」ACS◆(2013/05/12) ロシア海軍の新ニートカは2014年初頭に稼働開始する
「六課」ACS◆(2013/07/12) ロシアは2013年にウクライナのニートカを使用しない
「六課」ACS◆(2013/07/17) 艦上戦闘機MiG-29KUBは新ニートカで試験を行なう
「六課」ACS◆(2013/10/17) 新ニートカは2013年12月に納入する準備が整う
「六課」ACS◆(2014/01/29) ロシア北方艦隊の艦上戦闘機パイロットはエイスクの新ニートカで訓練を行なう
「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/03/12) エイスクの新ニートカへ艦上戦闘機Su-33が到着した
「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/9/11) ロシア海軍艦上航空隊はクリミアのニートカへ戻ってきた
「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/10/7) ロシア海軍航空隊の2つの「ニートカ」
「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/10/27) エイスクの新ニートカは本格的に稼働を始める
「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/12/14) ロシアは独自のヘリコプター空母の建造を計画している
「ワレYouTube発見セリ」:Russian Naval Fighter and Carrier
●将来空母
「FLOT.com」◆(2010/12/11)В России
до 2020 года начнется строительство
авианосцев
ロシア海軍,2020年までに空母建造に着手
「FLOT.com」◆(2011/10/12)Россия
примет решение о строительстве
авианосца в 2017 году
ロシア海軍,2017年の空母建造を決定
「VOR」◆(2012/11/26)ロシア 海上安全保障の鍵となる原子力空母開発
「ロシア・ソ連海軍」:ロシア太平洋艦隊は,今後10年で新しい空母を得る事を計画する
「六課」;ロシアは,2010年に空母パイロット訓練センターの建設を開始する
「六課」◆(2012/02/09) ロシア海軍の新空母は2020年以降に建造を開始する
新「六課」◆(2012/11/24) ロシア海軍は空母を必要とする
新「六課」◆(2012/11/27) ロシア海軍総司令部は原子力空母設計案を拒否した
新「六課」◆(2012/11/28) ロシアは新たな原子力空母を開発する
「六課」ACS◆(2013/06/16) ロシア将来空母は「2025年までの国家軍備プログラム」で建造に着手される?
「六課」ACS◆(2013/07/04) ロシア将来空母のモデルが公開された
「六課」ACS◆(2014/02/01) 空母ヴィクラマーディティヤの経験はロシアに空母建造能力を与えた
「六課」ACS◆(2014/02/03) ロシア将来空母の費用は1000-2500億ルーブルになる
「六課」ACS◆(2014/02/03) ロシア将来空母の作成には10年掛かる
「六課」ACS◆(2013/05/20) ロシア海軍総司令官はロシア将来原子力空母について語った
「六課」ACS◆(2013/06/30) 「2025年までの国家軍備プログラム」でロシア将来空母が建造されるかもしれない
「六課」ACS◆(2014/02/09) ロシアは3種類の将来航空母艦を設計している
「六課」ACS◆(2014/02/10) ロシアは着艦拘束装置の製造を再開した
「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/6/1) ロシア国防省は3つの将来原子力空母設計案を検討している
「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/10/25) ロシア海軍の将来空母は2030年以降に就役する
「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/11/24) ロシア海軍は空母を必要とする
「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/11/27) ロシア海軍総司令部は原子力空母設計案を拒否した
「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/11/28) ロシアは新たな原子力空母を開発する
【質問】
ソ連海軍の第2次大戦前・戦中の空母建造計画には,どんなものがあったのか?
【回答】
色々あったが,予算・資材不足,および「空母なんてイラネ.あんなもんは帝国主義の攻撃兵器」と公言していたスターリンとの戦いにより,次々「撃沈」されたという.
まあ,独ソ戦の経過を見ると,スターリンのほうが結果として正解だったかも.
計画には次のようなものがあったという.
▲イズマイル改造案(1925年計画)
未成巡洋艦 Izmail を空母に改造しようというもの.
改造後は20,000〜22,000t,攻撃機12機,戦闘機27機,偵察機6機搭載の予定だった.
しかし,予算・資材不足の上,艦上機を開発する力もなく,外国機輸入も政府が断ったため,「撃沈」.
Izmail級3隻はドイツに売られてスクラップになりましたとさ.
▲ポルタワ改造案(1925)
火災事故を起こし,レニングラードに係留されていた戦艦Poltava
(Gangut 級)を改造しようというもの.
搭載機,約50.
これも予算・資材不足でボツ.
▲コムソモーレツ改造案(1927)
練習艦 Komsomolets (旧 Okean)改造計画.
12,000t.搭載機は戦闘機26,攻撃機16.
ゾーフ海軍総司令官のお言葉「設計官達は自国の経済状況を把握していない」によって「撃沈」.
▲3万t級航空巡洋艦案(1935)
巡洋艦の打撃力と航空機運用能力を兼ね備えた雑種艦.〔ある意味,後のモスクワ級だの,クズネツォフだのの御先祖様?(笑)〕
3万t,搭載機60,305mm砲3連装×3,130mm連装砲×2,45mm連装砲×9
予算不足・適切な艦載機皆無を理由に「撃沈」.
▲「X型」案(1935)
多目的大型巡洋艦.スウェーデンのゴトランド
Gotland や,日本海軍の利根にも似た感じ.
17,000t,240mm 3連装砲×4,130mm連装砲×6,533mm魚雷発射管3連装×2,機雷100個,航空機9機+,魚雷艇×2,潜水艇×2.
予算不(以下同文)
▲航空戦艦案(1930年代後半)
駐米ソ連大使の求めに応じ,米国ギブス・アンド・コックス社がソ連政府(ソ連海軍ではなく)に提出したもの.これによって戦艦ないし航空戦艦の設計資料を,大使は得ようとした.
62,000t,戦闘機/偵察機36 & 水上機4搭載.
しかし,当時ソ連と友好的だったアメリカも,新鋭戦艦の設計資料の売却までは認めなかったとさ.
▲71A型軽空母案(1939)
ソ連政府/海軍が従来の「沿海海軍」方針を変更,「大海洋海軍」建設を目指した中で生まれた計画.
満載排水量13,150tt.軽戦闘機15,軽攻撃機30搭載.
2面図を見ると,どことなく英空母「アーク・ロイヤル」似.
1番艦は1941年,2番艦は1942年起工の予定だったが,第2次大戦勃発によって「撃沈」.
▲71B案(1939)
71A改善案.
満載排水量30,600t,70機搭載.
戦艦や重巡洋艦の起工によって船台が不足したため,原案段階で「撃沈」.
▲72A型軽空母案(1944)
独ソ戦も先が見えてきたことで,クズネツォフ元帥が放った最初の空母計画.
ちなみにクズネツォフは1939年,海軍総司令官に就任.彼は1904年生まれで,就任時34歳.
満載排水量37,390t,62機搭載.
やっぱり英国風だが,煙突などはサラトガ的?
スターリンはこれを承認せず,ボツに.
▲K案(1944)
コストロミノフ少尉の卒論研究.
満載排水量51,200t,106機搭載.
グラーフ・ツェッペリン視察団の資料を元にして研究を仕上げたので,グラーフ・ツェッペリンに激似.
この研究成果は高い評価を得,その後の空母設計に大きく貢献したとか.
▲69AV型
未成巡洋艦69型を改造する案.
38,680t,76機.
ボツ.
2面図を見ると,没にして正解だと思えるような,「なんだかなあ……」という設計.
▲ドイツでの戦利品,グラーフ・ツェッペリンを完成させる計画や,やはり戦利品の未成重巡洋艦ザイトリッツを空母に改造する計画もクズネツォフは提案.クズネツォフ,必死だな(笑).
で,ツェッペリンを練習空母 or 実験空母として完成させる案のほうは,クズネツォフは造船省に合意させたものの,両艦共に損傷が大きく,搭載品も破壊されていたため,
「完工,無理っす」
ということに.
で,そんな状況で,冷戦を迎えたのでしたとさ.
以上,ソースは「世界の艦船」 2004年12月号
p.154-161,A.V.Polutov著述の記事から.
【質問】
AVLとは?
【回答】
1968年に,ソ連海軍総司令部の依頼を受け,レニングラードのネブスコエ設計局が作成した軽空母案.
排水量50,000t
32knot
100mm単装砲×4
30mm CIWS×4
搭載機は戦闘機28機,早期警戒機4機,電子戦機2機,Ka-25PS救難捜索ヘリ4機
推進機関は蒸気タービンあるいは原子力蒸気タービン.
しかし,当時軍需産業を担当していたウスチノフ副首相(後の国防相)は,V/STOL機の製造とその搭載艦の開発を優先したほうが良いと主張したため,「撃沈」.
詳しくは,「世界の艦船」 2005年2月号,p.107-108(A.
V. Polutov署名記事)を参照されたし.
【質問】
1160型とは?
【回答】
AVLをベースにした原子力空母案.4万tから10万tまで8つのプランがあった.
1972年に造船省が採択したのは,85,000t.全長323.7m,幅39.5mのもの.搭載機は計80〜85機.兵装はグラニト
SS-N-19 対艦巡航ミサイル×16.……やっぱり対艦ミサイル積むんだ.
しかし,ウスチノフ副首相は,1160型の要素も取り入れて1143型航空重巡洋艦の開発を継続するよう提案したため,「撃沈」.
詳しくは,「世界の艦船」 2005年2月号,p.(A.
V. Polutov署名記事)を参照されたし.
【質問】
1153型とは?
【回答】
1160型とウスチノフ案を検討した結果,1977年,1143型の発展型として計画された原子力航空重巡洋艦.
排水量70,000t
全長265m
搭載機50機.
しかし1976年に,グレチコ国防相とブトマ造船相が相次いで死去したため,後ろ盾をなくしたゴルシコフ総司令官の権力も次第に衰え,国防相に任命されたウスチノフは1153型の設計作業をストップさせると共に,1143型の建造を継続するよう指示.
詳しくは,「世界の艦船」 2005年2月号,p.(A.
V. Polutov署名記事)を参照されたし.
【質問】
対潜ヘリコプター母艦「ハルザン」(10200型)について教えられたし.
【回答】
ハルザン(鷹)型はヘリコプター搭載対潜艦建造案.
商船ベースの1609型コンテナ船を基本とし,強襲揚陸艦としても使用可能な多目的艦だった.
排水量31,000t
全長229.4m
搭載機はヘリコプター28機
大隊規模の海軍歩兵を搭載可能.
だが,海軍,設計局,造船省は,1143型との同時建造は造船所の能力を超えるとして反対したため,計画は技術案の段階で「撃沈」.
詳しくは,「世界の艦船」 2005年2月号,p.110(A.
V. Polutov署名記事)を参照されたし.
――――――
スターリンを崇拝するウスチノフ国防大臣は「空母」という言葉が大嫌いで,その保有はもちろん,設計や研究にも強く反対していた.
その一方でゴルシコフ総司令官は空母保有に肯定的だったから,「空母」という言葉を使わずに,空母ないし空母に準じた戦力を保有しようと努め,その成果が1123型や1143型だった.
――――――「世界の艦船」 2005年2月号,p.110(A. V. Polutov署名記事)
消印所沢
▼ ソ連邦時代には,多用途ヘリコプター搭載艦が計画されています.
1980年,黒海艦船計画中央設計局(ЦКБ "Черноморсудопроект")により,対潜ヘリコプター母艦プロジェクト10200「ハルザン」が設計されました.
(Противолодочный вертолетоносец
проект 10200 "Халзан")
コンテナ船「カピタン・スミルノフ」(プロェジェクト1609)をベースにした「ハルザン」は,対潜任務だけではなく,艦内に揚陸艇を収容可能なドックを備えており,強襲揚陸艦としての機能も併せ持っていました.
しかし,当時のソ連の造船所には,このような艦まで建造できる余裕が無かった事(31,000トンの大型艦の為,建造できる造船所は限られてくる),更には,「ハルザン」を推す海軍総司令官代理アメリコ提督と,海軍総司令官ゴルシコフの対立といった政治的事情も有り,建造に着手される事なく幻と消えました.
アメリコ提督に,もっと「政治力」が有れば,「ハルザン」は建造されていたかもしれません.
「ロシア・ソ連海軍報道・情報管理部機動六課」
2009/11/29(日) 午後 0:26
▲
▼[プロジェクト10200「ハルザン」]
満載排水量:31000t
全長:228.3m
最大幅:40.3m
吃水:8.9m
主機:ガスタービン
出力:50000馬力
速力:25ノット
航続距離:18ノットで12000海里
兵装:AK-630 30mmガトリング砲×8基
高射ミサイル複合体「キンジャール」×12基
搭載機:対潜ヘリコプターKa-27×28機
揚陸艦として使用する場合は輸送戦闘ヘリコプターKa-29×14機,戦車56輌,海軍歩兵隊員300名
しかし,このような艦を建造できるのはウクライナの黒海造船工場しか無く,当時,黒海造船工場での建造が計画されていた重航空巡洋艦プロジェクト11435と衝突し,汎用ヘリ空母と重航空巡洋艦の,どちらを建造すべきかという論争に発展しました.
「ハルザン」を推していたのは,当時のソ連軍参謀本部総長代理ニコライ・ニコラエヴィチ・アメリコ海軍大将(1914-2007年)でした.
その結果,アメリコ提督が負けて「ハルザン」は幻と消えました.
▲
【質問】
85型軽防空空母とは?
【回答】
1953年5月,設計が開始された空母案.MiG-19戦闘機を原型とする「タイガー」戦闘機40機とMi-1ヘリを搭載する.
しかし当時,ソ連は核兵器やミサイルの開発に多大な努力を傾注しており,フルシチョフは「大型艦の建造は無理だ」と明言したため,足踏み状態になった後,設計中止.
詳しくは「世界の艦船」2005年1月号,p.158-159(A.
V. Polutov著述)を参照されたし.
【質問】
洋上戦闘機母艦(Floating Base of Fighters)とは?
【回答】
1959年に設計原案ができた空母案.
海軍総司令部の艦艇建造中央局は「艦艇搭載の戦闘機は防空兵器として将来性がなく,こんな艦は予算の無駄」という報告書を出し,ボツに.
詳しくは「世界の艦船」2005年1月号,p.159(A.
V. Polutov著述)を参照されたし.
【質問】
ソ連海軍において,艦載ヘリが初めて艦艇に着艦したのは?
【回答】
1950年12月,カモフKa-10ヘリが26bis型軽巡マキシム・ゴーリキー
Maxim Gorkiy の甲板に着艦した.
このヘリが発注されたのは,1948年.空軍パレードに展示されていたKa-8ヘリに,海軍首脳部が目を止めてのことだった.
1958年からは57bis型(カニン Kanin 型)駆逐艦の艦載機として,Ka-15対潜ヘリが配備された.
詳しくは「世界の艦船」2005年1月号,p.160(A.
V. Polutov著述)を参照されたし.
【質問】
アドミラル・クズネツォフ(写真)が,搭載機数を減らしてまで対艦ミサイルや対潜ミサイルを装備(艦載機でやれよ)したりするなど,空母を重武装させる意味が分からない.彼等は空母を単艦で航行させる気なんだろうか?
【回答】
アメリカの空母とソビエトの航空巡洋艦を混同してる人が居るが,外見が酷似していても,使い方が全く違う.
モスクワ級・キエフ級通じて,基本はアメリカの原潜対策用.
その後継の「アドミラル・クズネツォフ」に,対潜装備があって重武装なのは当たり前.
つまり「沿岸空母」というのが実体.
渡洋侵攻用にできなくもないが,クズネツォフは航空巡洋艦(対潜ヘリ空母)の域を脱していない.
艦載機にしても,アメリカが主に対地攻撃用に使うのに対し,クズネツォフ単体あるいは艦隊に航空直衛をつけるのが目的.
(ふたばちゃんねる)
※青文字:加筆改修部分
【質問】
ロシアは自国の空母を「航空巡洋艦」って呼んでるけど何故ですか?
【回答】
旧ソ連太平洋艦隊は黒海に基地があるのですが、ここから太平洋へ出るにはトルコの管理するボスポラス海峡を抜けなければなりません.
が,トルコは同海峡の空母通過を認めていないのです.
ですから航空母艦と称さず航空巡洋艦を名乗っています.
モントルー条約全文(英訳)では,まず14条で
「海峡を一度に通航できる軍艦のトン数の総計は1万5千トンを上限とする」
と規制しており,これが原則となります.
ただし,これには重要な例外があります.
11条
「主力艦の通航については14条の制限にかかわらず同時に1隻に限って,それ以上のトン数の艦の通航を認める.ただし護衛は駆逐艦2隻までとする」
問題はこの条約で言う「主力艦 catpital
ships」の定義.
ANNEX II-B 1 (a)で「主力艦capital shipsとは航空母艦
aircraft carrier以外の水上艦を指し…」と空母を明示的に除外しています.
つまり空母は11条の主力艦特例に該当せず,14条の一般的制限(上限1万5千トン)を受けることになります.
よって1万5千トン以上の空母の通航は禁止されることになるのです.
したがって,ロシアが空母ではなく航空重巡洋艦と分類したのは
「巡洋艦は主力艦だから11条の特例に該当する」
と主張することで,トルコの面子をつぶさず,かつ正面から条約破りになるのを防いだわけで,外交的に十分意味のある方便です.
あと,航空機を搭載しているのは防空のため(要は対空ミサイルの代わり)で,主兵装は長距離ミサイルとした,米艦隊攻撃のための打撃巡洋艦だからって意味もあります.
なお,実際にこのモントルー条約とこの方便とによって空母「ワリヤーグ」が通過しようとしたときには,すでに同艦はロシアの所有ではなくなっていました.
同艦はウクライナに譲渡され,ウクライナは,マカオの中国系企業に2000万ドルで売却していたからです.
で,黒海から出そうとしたら,トルコ海軍大臣は,こんなことを言いました.
「エンジンもなく舵も効かないドンガラを曳航するのは,危険なので拒否!
通航したければ,安全に進路を維持できるようエンジンと舵を装備しろ!」
で,その企業に泣き付かれたのか,中国政府がトルコに,
「わが国から貴国へ観光客をたくさん出すようにしてあげますから,海峡の通過を認めて頂きたい」
と頼んで,ようやくトルコも承諾.
ちなみに,曳航中,ボスポラス海峡を抜けてエーゲ海に出た後に,曳航索ぶった切ってワリヤーグは3日間漂流.
もし海峡通過中にそんなことになっていれば,トルコのかんしゃくが爆発したでしょうね.
軍事板,2005/06/17(金)
&夏光華(シア・クァンファ) in FAQ BBS(黄文字部分)
青文字:加筆改修部分
また,A. V. Poltov(「世界の艦船」2005年4月号,p.154)によれば,キエフは引き渡し時は「対潜巡洋艦」だったが,暫くして艦種呼称が「航空重巡洋艦」に変更された.
これには
・ソ連共産党や国防省の首脳部は,いまだ空母に関する論議を継続していたため,「空母」の呼称が使えなかったこと
・本艦の主要兵器は搭載機だけで泣く,威力の高い対艦ミサイルや対潜ミサイルも搭載すること
・ボスポラス海峡およびダーダネルス海峡が「空母」通過を禁じていたため
の,3つの理由があったという.
▼ ちなみに1979/2/25,ミンスクが極東回航のため,ボスポラスを通過した時には,
――――――
ボスポラスに面したイスタンブールのホテルの部屋は,この時アンカラの各国大使館に全て借り切られ,武官達がミンスクを望遠レンズ付きの写真機で撮りまくったという.
――――――園田矢 from 「危機の三日月地帯を行く」(日本放送出版協会,1981/4/20),p.210
また,
――――――
ソビエト側もボスポラスの安全航行のために色々腐心している.
79年6月,38億ドルの借款供与を含む経済援助協定をトルコと結んだ.
これとは別に,トルコ東部に製鉄所とアルミ精錬所を現在建設している.
だが,国民のソビエト感情は伝統的に悪い.
――――――園田矢 from 「危機の三日月地帯を行く」(日本放送出版協会,1981/4/20),p.210
――と,このように述べられている.▲
【質問】
キエフ級とかクズネツォフのロシア海軍における類別は?
【回答】
ロシア語では「Тяжелый Авианосный
Крейсер(ТАКР)」.
原語の配列から,「重航空巡洋艦」と訳すのが適切かと.
ソ連邦が存在していた頃には,「戦術航空巡洋艦」などという誤った名称が用いられていたが,これは,当時,キエフ級が「ТАКР」という艦種だというコトだけは突き止めた西側海軍関係者が,
「Тактйческий Авианосный
Крейсер」
の略だと勘違いしたためのようだ.
「どう読むんだよ?」と思われる方も多いと思われるので.読み方も.
「チジェーリィ・アヴィアノースニィ・クレイセル」(重航空巡洋艦)
「タクチーチェスキィ・アヴィアノースニィ・クレイセル」(戦術航空巡洋艦)
「ТАКР」は「テーアーカーエル」になりますね.
夏光華(シア・クァンファ) in FAQ BBS in FAQ BBS
「ロシア語で考えるんだ!」(映画「ファイアフォックス」より)
【質問】
ニトカ搭載機陸上実験・訓練センターとは?
【回答】
1975年,米海軍の練習空母レキシントン CVT-16
やレイクハースト訓練センターを視察したゴルシコフ総司令官が,1153型航空重巡洋艦の建造計画案に「搭載機陸上実験・訓練センターの建設」という項目を付け加えたことで,サキ飛行場に建設された施設.
1153型の開発は原案段階でストップしたものの,1977年,海軍第23中央海軍設計研究所は「ニトカ」設計案を作成,これに基いて建設作業が始まった.
これと同時に,ネブスコエ設計局は政府の指示により,カタパルトや着艦拘束装置などを至急開発することとなった.
完成したニトカは,3層の言わば「地下空母」で,重量12,000t.
地上の「飛行甲板」の長さは290m.
8度と14度のスキー・ジャンプ勾配やカタパルト,着艦拘束装置を備えていた.
カタパルトは,1143型が搭載するのと同型の蒸気ボイラーが据えられ,1時間に115tの蒸気を作り出せた.
蒸気性状は64気圧,470℃,カタパルトは全長が90m,直径500mm.
竣工後は搭載機の飛行・離発着実験,各種関連装置の試験,パイロットや整備士の訓練が行われた.
しかしソ連崩壊後,ニトカはウクライナの財産になり,現在は荒れ地になっている.
詳しくは,「世界の艦船」 2005年2月号,p.(A.
V. Polutov署名記事)を参照されたし.
正確には,まったく使われていないわけでは無く,現在でも,クズネツォフ航空隊のSu-33飛行隊が一年に一度ウクライナまで「遠征」し,14度のスキー・ジャンプ勾配(クズネツォフの艦首にあるモノと同一)や着艦拘束装置を備えた「地上の飛行甲板」を使って発着訓練を行っている.
ただ,試作カタパルトの方は,現在は放棄されているが・・・・・
下の写真の3枚目と4枚目が「ニートカ」複合体のある一画ですが,立体風に写してみた4枚目で説明すると,滑走路の色が変わっている部分の右側が着艦拘束装置区画(分かりにくいですが,着艦拘束ワイヤーが3本あります)
左側が発艦装置(カタパルト)区画です.
駐機している飛行機(Be-12)と比較して計測してみたところ,この滑走路の色が変わっている一画だけで「全長290m」になります.
さらに,「ニートカ」複合体が備え付けられた滑走路の遥か前方(北東)には,クズネツォフのものと同型のスキージャンプ台(勾配14度)が見えます.
つまり,スキージャンプ台は,「ニートカ」複合体の計画当初(1970年代後半)には予定に無く,後から追加されたモノという事になります.
(「ニートカ」複合体は,このスキージャンプ台だけだと勘違いしている人も多いようですが)
現在,ニートカの着艦拘束装置は,まだ使用可能ですが(いちばん下の写真参照),蒸気カタパルトは放棄され,使用不可能になっております.
むろん,ニートカの遥か前方にあるスキージャンプ台は使用可能ですが.
サキ飛行場には,この他に,勾配8度のスキージャンプ台も設置されていたのですが,使いものにならなかったのか,撤去されたようです.
▼ 後日談.
ロシア海軍が,ついに「ニートカ」に見切りを付けるようです.
――――――
2011年,ロシアは,艦上航空隊操縦士の訓練の為のウクライナの訓練施設のリース契約を打ち切る
モスクワ,1月15日(イタルタス)
ロシアは,2011年に,艦上航空隊操縦士の訓練の為の自前の訓練施設を持ち,ウクライナとリース契約を結ぶ必要は無くなる.
ロシア連邦海軍総司令部の参謀は伝えた.
「我が国の政府から承認を得た解決策により,艦上航空隊操縦士の訓練の為の地上訓練複合体をクラスノダール地方の端のエイスク市に建設する研究および設計作業は,既に行なわれました.
全ての複合体の建設作業には資金が拠出されます.
それは3年以内に建設されます」
と,ロシア海軍総司令部の代理人は述べた.
「複合体の建設は,ロシアの,重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの艦上航空隊操縦士の訓練のウクライナへの依存を完全に取り払います.
ロシアは,多年に渡って,クリミア半島のサキ市近郊に在るソビエト社会主義共和国連邦時代に建設された唯一の艦上航空隊科学的訓練施設"ニートカ"のリースを強いられており,しかも,時には,使用できない事もありました」
と,総司令部の代理人は注意を喚起した.
彼によると,中国へ複合体をリースするウクライナ政権の決定は,ロシアが艦上航空隊の試験と訓練の為の自前の施設の建設を決定する理由の1つである.
「1つしか無い訓練施設の元では,ロシアおよび中国の操縦士の練成は,上手く行かないでしょう.
更には,私達の意志で,私達に都合の良い練成時間を与えられる保証は何も無い.
その上ロシアは,訓練施設のリース契約により,毎年合計50万ドルを支払い,装置の修理費用を全て支払っているのです」
海軍総司令部の代理人はそう述べた.
〔略〕
――――――
訓練複合体「ニートカ」
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/2665845.html
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/28937151.html
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/15530321.html
記事中の「トランポリン甲板」は,スキージャンプ台の事です.
艦上航空隊の地上訓練複合体をエイスク市に建設するという話は,2007年8月にも出ていますが
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/22902425.html
ついに,実行へ移されるようです.
エイスク(Eysk)市郊外には飛行場が有り,ここに新たな訓練複合体を建設するようです.
現在,エイスク飛行場には, ロシア空軍のSu-24(第959爆撃機連隊)が駐留しています.
Небесный бытьネベスニィ・ビィチ〜ロシア・ソ連海軍〜
2009/1/18(日) 午後 9:28
なお,ブログ主によれば,ニトカはその後も中国軍パイロットの訓練施設として使われ続ける予定だそうで.▲
1枚目:サキ市
2枚目:サキ飛行場全景
3枚目:「ニートカ」複合体
4枚目:「ニートカ」複合体(立体風)
5枚目:スキージャンプ台(勾配14度)
6枚目:勾配8度スキージャンプ台の跡地?
(ニートカと14度スキージャンプ台の中間)
7枚目:ニートカで「着艦」テストを行なうSu-33(Su-27KUB)試作機
Морские Силы〜ロシア・ソ連海軍〜,2007/3/13(火) 午後 8:16
【質問】
「ニートカ」のカタパルト,通常動力型空母には搭載できないんでしたっけ?
【回答】
「ニートカ」システムの試作カタパルトは,キエフ級に搭載されているものと同型の蒸気ボイラー(KVG-2)が使われているとのコトなので,少なくともKVG-2と同等かそれ以上の出力のボイラーが有れば,通常動力型空母への搭載も不可能では無かったと思います.
シア・クァンファ(夏光華) in mixi
http://www21.tok2.com/home/tokorozawa/faq/faq39a01b.jpg
http://www21.tok2.com/home/tokorozawa/faq/faq39a01b02.jpg
【質問】
ソ連の航空巡洋艦の最大の弱点は?
【回答】
実は基地だった.
1123型が配備されたセヴァストーポリは,帝政時代に建設された古い基地で,蒸気や電力などの供給能力が乏しかった.
また,供給能力の貧弱さは,ソ連海軍の基地全般に共通の問題点で,資金・技術上の問題のため,海軍は基地整備には消極的だった.
このため,1123型や1143型は在泊中も自艦のエンジン類を停止させることができず,結果として計算以上に艦の寿命を縮めた.
詳しくは,「世界の艦船」 2005年2月号,p.111(A.
V. Polutov署名記事)を参照されたし.
【質問】
ソ連/ロシア海軍の原子力空母建造計画の変遷は?
【回答】
まずソ連海軍は,1972年に,大型の原子力空母プロジェクト1160
(満載排水量85,000t,全長323.7m,搭載機85機)
を計画しました.
しかし1160型は,当時,ソ連共産党中央委員会書記(国防産業担当)を勤めていたドミトリー・ウスチノフの横槍によって「撃沈」されてしまいました.
ウスチノフは,VSTOL空母1143型(キエフ級)を改良しながら建造し続けるべきだと考えていたのです.
その後,1976年には,1160型の縮小版とでも言うべきプロジェクト1153が計画されました.
[プロジェクト1153]
満載排水量:70,000t
全長:265m
幅:30.5m
喫水:10.0m
搭載機:約50機
兵装:グラニート対艦ミサイル垂直発射筒×20基
オーサM短距離対空ミサイル2連装発射機×4基
AK-630 30mmガトリング砲×8基
RBU-6000ロケット爆雷12連装発射機×2基
主機は原子力蒸気タービンで,蒸気カタパルトは2基です.
原子力空母プロジェクト1160が潰された直後とあってか,スペックは控え目に見積もられました.
1153計画で重要なのは,空母の設計と並行して,黒海沿岸のサキ飛行場に,蒸気カタパルトと着艦拘束装置を備えた空母発着シミュレート施設の建設が開始された事です.
これが,空母発着艦シミュレートシステム「ニートカ」です.
つまり,「ニートカ」複合体の蒸気カタパルトと着艦拘束装置は,1153型用の試作品だったのです.
更に,1153型に装備する多用途レーダーとしてフェーズドアレイ方式(4面アンテナ)の「マルス・パッサート」の開発も始まりました.
1153型の搭載機は,Su-27K戦闘機,Su-25K襲撃機,MiG-23K戦闘機など50機程度を想定していましたが,この他に変わり種として,爆撃戦闘機Su-24の艦載型・Su-24K(T-6K)も計画されていました.
1153型は,ソ連海軍の「空母」を手掛けてきた黒海沿岸のニコラーエフ造船所で建造される予定でしたが,1976年4月にソ連邦国防相に就任したドミトリー・ウスチノフは,早速
「この艦を建造するのは,ニコラーエフよりもレニングラードの方が良いのではないかね?
この点を検討したらどうか?」
と余計な差し出口を挟んできました.
ウスチノフは,原子力空母を建造する気などさらさら無く,1153計画も,1977年には「撃沈」されてしまいました.
幻と消えた原子力空母1153型でしたが,本型に装備予定のフェーズドアレイレーダー「マルス・パッサート」は,改キエフ級空母バクーと空母アドミラル・クズネツォフに装備されました.
1153型用に開発され,「ニートカ」複合体でテストされた着艦拘束装置も,アドミラル・クズネツォフに採用されました.
更に,1153型の船体設計は,まったく意外な所で生かされる事になりました.
1980年代にレニングラードで建造された原子力偵察艦ССВ-33(SSV-33)は,1153型の船体設計が流用されたのです.
原子力空母1153型の「成れの果て」とも言える原子力偵察艦SSV-33は,今も沿海州のシュトコヴァ17基地(アブレーク湾)に係留されています・・・・
Морские Силы〜ロシア・ソ連海軍〜
2007/11/25(日) 午後 3:11
【質問】
ソ連が計画していた原子力空母「ウリヤノフスク」について教えてください.
【回答】
ウリヤノフスク級(プロジェクト1143.7)重原子力航空巡洋艦.
推定要目は,
満載排水量:79,758t
全長:324.6m
幅:39.8m/飛行甲板最大幅:75.7m
喫水:10.79m
主機:原子炉4基/蒸気タービン4基,4軸
出力:240,000馬力
速力:30ノット
搭載機:70機以上(Su-27K艦上戦闘機,MIG-29K艦上戦闘機,Yak-44E早期警戒機,Ka-27ヘリコプター等)
乗員:2,300名+航空要員1,300名
兵装:
グラニートSSM用VLS×12,
キンジャール短SAM用VLS×24,
コールチクCIWS×8,
RBU-12000対潜ロケット10連装発射機×2
ソ連海軍初の「原子力空母」となるはずだった艦.
1番艦ウリヤノフスク1988年11月25日起工(1996年頃就役定),少なくとも4隻建造する予定であった.
11435(アドミラル・クズネツォフ),11436(ワリャーグ)に続くソ連海軍3隻目の空母であり,基本的には11435の拡大発展型.
兵装はクズネツォフ級とほぼ同じであり,スキージャンプ台が有るのも同一だが,アングルドデッキには新たに蒸気カタパルト2基が装備されている.
ちなみに,よく「旧ソ連は空母用のカタパルトを開発出来なかった」などと言われているが,それは全くのウソで,実際には,1980年代前半には黒海沿岸のサキ飛行実験センターに蒸気カタパルトが設置されテストを繰り返していた.
米国防総省発行「ソ連の軍事力(SMP)」1985年版にも,この黒海沿岸の蒸気カタパルトの件が触れられていたのだが,今では誰も覚えていないようだ(笑)
(「世界の艦船」編集スタッフ及び執筆者も忘れているらしい(笑))
旧ソ連は,キエフ級(プロジェクト1143)に続く「航空機搭載艦」として,当初は「蒸気カタパルト装備の8万トン級原子力空母」を建造するつもりだったが,国防省や共産党中央委員会が「本格的原子力空母」の建造に消極的であったため計画はトーンダウンし,スキージャンプ台のみを備えた通常動力のアドミラル・クズネツォフ級が建造される事になった.
そのクズネツォフ級に続くウリヤノフスク級は,当初建造されるはずだった「8万トン級原子力空母」とクズネツォフ級を足して二で割ったような艦になった.
ようやく蒸気カタパルトの装備と原子力推進化が認められたものの,クズネツォフ級の特徴であるスキージャンプ台と長距離対艦ミサイルVLSは踏襲された.
原子炉の形式は不明であるが,おそらくは,キーロフ級と同じKN-3型であったものと推察される.
ソ連邦崩壊直前の1991年11月には,連邦中央政府からの資金供給は途絶えていたが,建造元のニコラーエフ生産財団は,翌1992年3月まで建造工事を続行した.
工事中止の時点では,船体の下半分が出来上がった状態だった.
のちに解体.
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シア・クァンファ(夏光華) in mixi
【関連リンク】
「ロシア・ソ連海軍」:未完の原子力空母ウリヤノフスク
【質問】
「ウリヤノフスク」に装備予定だった電子機器は?
【回答】
ウリヤノフスクには,最終的に,以下の電子機器が装備される予定でした.
・戦闘情報統制システム「トロン・ディプロマント」
・多用途フェーズドアレイレーダー「マルス・パッサート」(スカイ・ウォッチ)
・多用途3次元レーダー「ポドベレゾヴィク」(フラット・スクリーン)
・低高度目標探知レーダー「ポドカート-M」(クロス・ソード)
・航行用レーダー「アンドロメダ」
・衛星通信システム「チェンタウル」
・搭載機着艦誘導システム「レシトソル」
・航空機管制レーダー「ガゾン」(ケイク・スタンド)
・電波妨害システム「ソズヴェズディエ-BR」
・ソナー「ズヴェズダ-M1」
多用途(対空・対水上)フェーズドアレイレーダー「マルス・パッサート」は,改キエフ級空母バクーと空母アドミラル・クズネツォフにも搭載されています.
多用途(対空・対水上)大型3次元レーダー「ポドベレゾヴィク」は,カーラ型ミサイル巡洋艦「ケルチ」に搭載され,黒海で海上テストが行われたもので,クズネツォフ級2番艦「ワリャーグ」(未完)にも搭載される予定でした.
低高度目標探知レーダー「ポドカート-M」は,短距離対空ミサイル「キンジャール」(SA-N-9)管制用のレーダーです.
航空機管制レーダー「ガゾン」(ケイク・スタンド)は,バクー以降のソ連空母に装備されています.
ただウリヤノフスクは,それまでのソ連(ロシア)大型艦艇には必ずと言って良いほど装備されていた,小型多用途3次元レーダー「フレガートMA」(トップ・プレート)は,装備されない事になりました.
ソ連空母の対空・対水上捜索用レーダーは,バクーからワリャーグまで試行錯誤を重ねてきましたが,最終的に行き着いたのは,大型の4面フェーズドアレイレーダー「マルス・パッサート」と,これまた大型の3次元レーダー「ポドベレゾヴィク」という組み合わせだったようです.
ウリヤノフスクは,1988年10月4日に海軍籍に登録され,同年11月25日に起工されました.
従って,艦(プロジェクト番号11437)の設計は,海軍籍登録以前に終了しているわけであり,そして「マルス・パッサート」と「ポドベレゾヴィク」は,ウリヤノフスクの設計が固まる数年前から黒海で洋上テストが繰り返されていた.
ウリヤノフスクに装備予定の「新機軸」蒸気カタパルトにしたって,1980年代中期から空母発着艦シミュレートシステム「ニートカ」でテストが繰り返されていました.
(http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/15530321.html参照)
「ソ連(ロシア)初の空母」ウリヤノフスク級ですが,意外と「技術的冒険」を避け,既に実用化されていた技術,あるいは実用化の目処がついた技術を使った「堅実設計」だったんですね.
Морские Силы〜ロシア・ソ連海軍〜
2007/11/27(火) 午後 6:14
【珍説】
ソ連海軍は潜水艦と水上艦艇があれば十分で,空母を持つ必要はありませんでした.
それをゴルシコフ提督が作らせ,その結果,米国を喜ばせました.
米海軍はゴルシコフを非常に誉めました.
それを米海軍は空母増強の理由に使い,軍拡でソ連経に不必な浪費をさせました.
陸軍国ドイツ,陸軍国ソ連が,不必要な空母を建造するとき,滅びています.
陸軍国中国の空母は柳の下の三匹目の泥鰌になるかどうか見物です.
hiromichit1013
【事実】
まず,ソヴィエト連邦軍における海軍の序列は低く,5軍(戦略ロケット軍,陸軍,防空軍,空軍,海軍)の中で最下位でした.
当時の西側の目には,猛烈な勢いで増強を続けているように見えていたソ連海軍ですが,実際には,あくまでも「国防省及び連邦軍の許容範囲内」における増強だったのです.
しかもソ連海軍の増強のピークは1970年代であり,1980年代に入ると艦艇の建造ペースはガタ落ちしました.
1979年のアフガニスタン介入による軍事費増額のシワ寄せが,大きな原因である事は想像に難くない.
さて,「ソ連空母」は,この「hiromichit1013」とやらが言い張るように,ソ連の経済を消耗させ,国家の崩壊に追い込ませるほど巨額なものだったのかと言えば,むろん答は「ニェート」です.
「ソ連の空母」がどの艦種を指すのかは,人によって違うかもしれませんが,一般的にはモスクワ級ヘリ巡洋艦2隻,キエフ級VSTOL空母4隻,クズネツォフ級空母2隻(1隻は完成せず),ウリヤノフスク級原子力空母1隻(未完成)の4クラスが該当するようです.
「ソ連空母」の値段が幾らなのか,詳細は不明ですが,一つだけ,ソ連邦解体後,売りに出されたクズネツォフ級空母「ワリャーグ」の件から推察できます.
同艦は1992年春にノルウェーの船舶ブローカーを通じて売却が打診されたのですが,この時の売価は合計で約40億ドルと見積もられておりました.
内訳は,艦そのものが20億ドル,搭載機が20億ドルです.
従って,クズネツォフ級空母は艦載機込みで1隻40億ドルくらいと見て宜しいでしょう.
それより前のキエフ級がクズネツォフ級より高価であるとは考えられず,艦載機込みでせいぜい20億ドル程度でしょう.
その前の「ヘリ空母」モスクワ級はもっと安いであろう事は自明の理であり,おおよそ10億ドル程度と見て宜しいかと.
つまり,ソ連の空母建造費用は,竣工した艦がモスクワ級2隻,キエフ級4隻,クズネツォフ級1隻で合計140億ドル.
未完成の2隻ですが,クズネツォフ級2番艦「ワリャーグ」は,ソ連邦解体後,艤装を完了させるのに約10億ドルが必要であると見られていたし,艦載機などは影も形も無いので,10億ドル程度しか支出されていない.
原子力空母ウリヤノフスクは船体の下半分しか出来ていないので,支出合計は多くて5億ドルでしょう.
更に付け加えると,1990年末に竣工したクズネツォフは,ソ連邦解体の時点では艦載機部隊が無かったので,上記で触れたクズネツォフ級空母の艦載機ぶんの20億ドルは,少なくともソ連邦解体までには支出されておらず,これは,上記の140億ドルから割り引いて考える必要があるでしょう.
これらの要素を加算すれば,ソ連空母の建造費用の総計は,120億+15億で,135億ドル.
ちなみに,米原子力空母ニミッツ級の建造費は,艦載機抜きで40億ドル(クズネツォフ級の2倍!).
艦載機も含めれば,その倍になるでしょう.
つまり,ソ連が建造した「空母」の総費用(艦載機込み)は,ニミッツ級4隻分(艦載機込み)にも満たないのです!
しかもこの金額は,短期間で支出されたものではなく,ヘリ空母モスクワのキールが据え付けられた1962年から,ワリャーグ,ウリヤノフスクの建造費の供給を停止した1991年に掛けての29年間のものです.
従って,一年辺りの平均支出は5億ドルにも満たない.
これが,ソ連経済を消耗させ,国家を破綻に至らしめた?
ソ連邦の国家予算はルクセンブルク以下ですか?(大爆笑)
こう書くと,「維持費だって掛かるじゃないか」という反論が有るだろうが,上記の「ソ連空母」は,いっぺんに纏めて就役したわけではない.
しかも,いちばん維持費のかかるクズネツォフは,ソ連邦が解体される直前の就役であり,ソ連邦時代に支出された維持費用は,せいぜい2年分です.
1960年代にはモスクワ級ヘリ空母2隻しか居なかったし,1970年代末までにキエフ級2隻が増え,1980年代後半までに,キエフ級がもう2隻追加.
しかも,「ソ連空母」は,米空母に比べて行動は不活発でした.
ちなみに,米原子力空母ニミッツ級の一年間の維持費用総額は9億ドル程度になるそうですが,ソ連空母がこれより高額になるというのは有り得ない事くらい分かるよね?
これから推算すると,ソ連空母の一年間の維持費用総額は,モスクワ級1億ドル,キエフ級2億ドル,クズネツォフ4億ドルといったところでしょう.
さて,ソ連邦が解体された1991年までの就役期間は以下のようになります.
モスクワ:1967〜1991年(24年)計24億ドル
レニングラード:1969〜1991年(22年)計22億ドル
キエフ:1975〜1991年(16年)計32億ドル
ミンスク:1978〜1991年(13年)計26億ドル
ノヴォロシースク:1983〜1991年(8年)計16億ドル
バクー:1987〜1991年(4年)計8億ドル
クズネツォフ:1990〜1991年(1年)計4億ドル
総計すると,空母建造費用とほぼ同額になるでしょう.
これを加算すると,一年辺りの平均支出は10億ドルくらい.
ちなみに,1980年代初頭における"ソ連軍"の年間予算は,約2500億〜3000億ドルに上っていました.
当時のソ連邦の国家歳入の半分に当たる金額だったそうです.
まあ大雑把に計算して,「ソ連空母」が軍事支出総額に占める割合は,0.003パーセント・・・
「経済を圧迫した」「巨大な軍事費」の「象徴」と言うのは,無理が有るんじゃないのかネエ・・・・(失笑)
あと,米海軍が「ゴルシコフを非常に誉めた」のは,比較的短期間で,米海軍に対抗する大海軍を建設したからであって,上でhiromichit1013とやらが書いているような捻くれた,というか歪んだ見方は正しくない.
・・・歪んでいる.分かっているのだ・・・・(笑)
(「銀河英雄伝説」を知らない人には分からないネタだが)
Морские Силы〜ロシア・ソ連海軍〜
2007/4/26/18:09
そういえば,『世界の艦船』でも「海軍のコストがソ連をつぶした」かのような主張をしていた方がおりましたが,どこかにこの種の珍説の発生源があるのだろうか?
【質問】
ロシアの新型空母は,どのようなものになると予想されるか?
【回答】
ロシア政府の計画では,2015年以降,建造に着手される予定となっている(らしい),ロシア海軍の新航空母艦(Авианосец)
2年ほど前には,
「ロシアは,少なくとも2015年までは空母を建造する事は無い」
という話だったのですが,昨年からは
「2015年以降に空母を建造する」
という話になりました.
今のところ,詳細は不明ですが(というか,まだ決まっていない),前ロシア海軍前総司令官で,今は国防相顧問のウラジーミル・マソリン海軍上級大将の昨年の発言を拾い集めると・・・
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/21856074.html
「クズネツォフは完全に整備されており,海軍で長期間使われる.しかし永久に,では無い」
「何故なら,我々は,新しい近代的な航空母艦の設計・建造を計画しているからだ」
「ロシアは,今後20〜30年で,北方艦隊の空母部隊と,潜在的には太平洋艦隊にも同様の部隊を展開させる事が出来るだけの経済的能力を持つだろう」
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/22859900.htmlによると,マソリン上級大将は
「将来のロシア海軍は,最新の戦略原子力潜水艦および航空母艦6個戦隊が中核を形成するだろう」
と発言しています.
これと上の発言を合わせると,今後20〜30年くらい掛けて,6個戦隊分の空母(6隻)を揃えたい,という事のようです.
空母の規模ですが,ウラジーミル・マソリン上級大将曰く
「少なくとも長さ100メートルを越える原子力艦になり,30機のジェット戦闘機およびヘリコプターを搭載する」
ということです.
この発言から推定すると,ロシア新空母は,それほど大型にはならないようです.
おそらくは,唯一の現用空母アドミラル・クズネツォフ(58,900t)よりも小さいでしょう.
しかし「空母」といえば,アメリカの超大型空母(ニミッツ級とか)しか思い浮かばないヤポーシュカは,「6個戦隊分の空母(6隻)」と聞いただけで,ロシアがニミッツ級みたいな超大型空母を6隻造るとでも思っているようです(笑)
更には,空母を6隻も造ったらロシアは破綻する,などと思考が飛躍(暴走?)しすぎている輩も居るようですが(笑)
そもそも,マソリン上級大将の発言(ロシア政府の思惑)は,あくまでも
「このまま,ロシアが経済成長を続けて行ければ・・・」
という事が大前提ですから,今後の状況次第では,いくらでも変わる余地があるわけでしてね.
この先,状況がどう変わろうと,何が何でも空母「6隻」の建造は強行する,という話では無いです(^^;
現在,セヴェロドヴィンスク造船所(セヴマシュ・プレドプリャーチェ)では,インドに売却される航空巡洋艦「アドミラル・ゴルシコフ」(キエフ級)を「正規空母」に変身させる大規模改造工事が行われております.
改造後のゴルシコフは,インド空母「ヴィクラマーディティヤ」となりますが,ロシア新空母は,この「ヴィクラマーディティヤ」をタイプシップとするのではないでしょうか.
何しろロシアは,1990年就役の「アドミラル・クズネツォフ」以降,空母の新規建造を行っておらず,しかもクズネツォフでさえ,正確にはウクライナの造船所で造られた空母です.
(つまり,ロシア国内の造船所には,空母を新規建造した経験が無い)
このような状況下では,「技術的冒険」は出来るだけ避けたいところでしょう.
というわけでロシア新空母は,「ヴィクラマーディティヤ」をベースとして原子力推進化したような艦,言い換えれば,フランス原子力空母「シャルル・ド・ゴール」と同クラスの艦になる可能性が高いでしょう.
ロシアの新原子力空母は,今のところ,セヴマシュでの建造が考えられていますが,新空母の原子炉も,セヴマシュで建造中の第4世代原子力潜水艦が搭載するКПМ(KPM)か,その改良型になるのではないでしょうか.
さらに付け加えると,黒海の近くのアゾフ海沿岸の都市エイスク郊外に,空母発着訓練センターを建設する計画も有ります.
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/22902425.html
要するに,かつての「ニートカ」と同様の施設(空母発着シミュレート・システム)を造るという事です.
ウラジーミル・マソリン上級大将曰く
「これ(空母発着訓練センター)無くして,空母部隊は無い」
これからもずっと,いちいちウクライナの飛行場にある「ニートカ」まで行ってられないでしょうし(^^;
かつてのソ連「空母」は,長距離対艦ミサイルなどで重武装しておりましたが,再びロシアが空母を造ると聞いて,また対艦ミサイルなどを搭載する重武装艦を造るなどと夢想している軍事オタクは,少なくないようです(笑)
もうロシアは長距離対艦ミサイルを新規開発していないし,これからも開発予定は無いんですが,いったい,何を積むの?(笑)
ちなみに,タイプシップとなるであろう「バクー改めアドミラル・ゴルシコフ改めヴィクラマーディティヤ」の兵装は,CIWSが6基ていどです.
あと,新空母の護衛用と思われる新型駆逐艦の計画も有るようです.
http://arms-tass.su/?page=article&aid=41639&cid=25
【ロシアは,近い将来に海軍のための新型駆逐艦と空母を計画する】
サンクトペテルブルク,6月25日(イタルタス)
ロシア海軍の新型フリゲート22350型は,もともと,現用駆逐艦の代替として計画されたのですが,その上,新たに「駆逐艦」を建造するとなると,現用巡洋艦の代替という事になるのでしょうか.
ちなみに2005年5月,ロシア国防省の海上兵器・軍事機材発注・納入局長アナトーリー・シュレモフ少将は
「作戦及び経済的な根拠に基付く近代兵器発展の条件下において,巡洋艦と戦艦は存在する権利を持たない」
と発言,ロシアが今後,巡洋艦以上の大型水上艦を建造する可能性を否定しております.
将来のロシア海軍空母部隊は,4万トン程度の原子力空母(改ヴィクラマーディティヤ級?),駆逐艦(8000t程度?),フリゲート(22350型)で構成される事になるようです.
Небесный бытьネベスニィ・ビィチ〜ロシア・ソ連海軍〜
2008/1/29(火) 午後 6:31
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/28784325.html
で取り上げたロシア新空母の続報.
2月6日付けのロシア連邦軍機関紙『クラースナヤ・ズヴェズダー』に,このような記事が掲載されました.
Океанские рубежи России
(ロシアの海洋防御線)
(『クラースナヤ・ズヴェズダー』web版)
これは,今月初めに大西洋・地中海遠征から帰ってきた北方艦隊司令官ニコライ・マクシーモフ海軍中将へのインタビュー記事ですが,冒頭で,インタビュアーが,こう述べております.
Товарищ вице-адмирал, в
соответствии с доктриной
развития ВМФ закладка
четырех авианосцев среднего
класса планируется только
в период с 2012 по 2020 годы.
(中将閣下,ロシア海軍の発展ドクトリンによると,2012年から2020年に掛けて,4隻の中型クラス航空母艦を起工する計画が立てられていますが)
というわけで,インタビュアーは
" четырех авианосцев
среднего класса"
(4隻の中型クラス航空母艦)
と明言しています.
以前は,「航空母艦6個戦隊」(つまり空母6隻)を整備する,という話でしたが,2隻減りました.
ただここでは,2020年までに4隻を"закладка"(起工する)と書かれているので,「就役」はもっと後になります.
(2020年までに4隻を揃える,という話では無い)
この計画通りに事が進んだとして,4隻揃うのは,2030年頃になるでしょう.
参考までに,ロシア唯一の空母アドミラル・クズネツォフは,起工から就役まで8年かかっています.
現在,「中型航空母艦」と言えば,たいていは排水量がおおよそ4万トン前後で,全長がだいたい260m前後,CTOL機を運用できる全通甲板艦を指しております.
参考までに,現在,就役中あるいは建造(改造)中の「中型航空母艦」は,以下の通りです.
フランス海軍「シャルル・ド・ゴール」(2001年就役)
ブラジル海軍「サン・パウロ」(旧フランス空母,1963年就役/2000年再就役)
インド海軍「ヴィクラマーディティヤ」(1987年就役の旧ロシアVSTOL空母バクーをCTOL空母に改造中)
インド海軍「ヴィクラントII」(2005年起工・建造中)
この内,インド海軍のヴィクラマーディティヤは,現在,ロシアで改造工事が行われております.
ロシア海軍は,ヴィクラマーディティヤをタイプシップとする「中型航空母艦」を思い描いていると思われます.
ちなみに,ソ連邦時代に「4隻」が建造された4万トン級「中型」VSTOL空母キエフ級は,1番艦キエフの起工が1970年,4番艦バクーの就役は1987年でした.
4隻揃うまでに,17年掛かったわけです.
Небесный бытьネベスニィ・ビィチ〜ロシア・ソ連海軍〜
2008/2/9(土) 午後 9:04
▼ つい先月も,ロシア連邦大統領ドミトリー・メドベージェフが,空母建造について発言しています.
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/34855900.html
この中でメドベージェフ氏は,「(空母の)動力は原子力でなければならない」と言い,ロシアが原子力空母を造る意向である事を示しました.
しかし,今のロシアには,空母を「新規建造」した経験を有する造船所はありません.
唯一,セヴェロドヴィンスク造船所が航空巡洋艦「アドミラル・ゴルシコフ」を,正規空母「ヴィクラマーディティヤ」に変身させる大規模改装工事を実施したくらいのものです.
かかる状況下で新たに起工される「原子力空母」は,この「ヴィクラマーディティヤ」をベースに原子力推進化した艦となる可能性が高いのではないでしょうか.
Небесный бытьネベスニィ・ビィチ〜ロシア・ソ連海軍〜
2008/11/2(日) 午後 10:15
▲
▼ これまで断片的な情報しか無かったロシアの新空母ですが,今度は,造船会社から新たな情報が示されました.
どうやら,今回のが「最終案」になるようです.
――――――
新世代のロシア航空母艦の排水量は示された
モスクワ,2009年2月27日(ロシア通信社ノーボスチ)
ロシア海軍の新世代航空母艦は,原子力推進となり,60,000トンの排水量を有するだろう.
金曜日,国家防衛発注株式会社「統合造船業営団」(OSK)管理部長アナトーリー・シュレモフ海軍中将は,ロシア通信社ノーボスチに伝えた.
〔略〕
「これまでに(新空母は),原子力推進となり,50,000〜60,000トンの排水量を有する事が決定しています」
と,シュレモフは語った.
彼によると,航空母艦には,現在運用されているSu-33にに代わる新しい艦上航空機が搭載される.
「これは,正統的な水平離着陸の第5世代航空機になります」
と,提督は言った.
航空機に加え,ロシアでは,新航空母艦に搭載されるヘリコプターと,コンツェルン「ヴェガ」による無人航空機の開発が既に始まっている.
シュレモフはまた,新航空母艦には,以前の航空巡洋艦に存在していたような巡航ミサイルは搭載されないと述べた.
「艦は,用途に沿って機能しなければならない為,私達は,ロケット(ミサイル)の装備を拒否します.
航空母艦であるなら,艦の全ての構造は,打撃用兵器を装備する戦闘用航空機を搭載する為に開発されなければなりません」
と,海軍中将は言った.
北方艦隊および太平洋艦隊に最低3隻を配備する為の艦の建造が計画される.
「計画の概念では,将来,北方および極東方面で,まず1隻を保有します.
3隻目を持てば,定期的に整備を行なう事が出来るようになるでしょう」
シュレモフは言った.
彼は,将来,6隻の航空母艦を保有できるかどうかは,国家経済の問題と可能性に依る事を否定しなかった.
これまでに,艦を建造する場所についての問題は未解決である.
ロシアの造船工場では,そのようなクラスの艦は,全く造られた事が無かったからである.
「2つの案が検討されています.
それはバルチースキー・ザヴォートとセヴマシュです」
バルチースキー・ザヴォートには,排水量10万トンの民間船の建造経験が有り,セヴマシュには,原子力機関を搭載した艦艇の建造経験が有ります.
最も良質で比較的安価なプロジェクトが獲得されるでしょう」
シュレモフは述べた.
彼は,昨年10月に国家元首ドミトリー・メドベージェフがセヴェロモルスクを訪問した際,既に国防省に対し,数年以内に航空母艦を建造する為の開発プログラムを作成するように指示していた事を想起させた.
(http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/34855900.html参照)
彼(メドベージェフ)は,2015年までに具体的な成果を出す事は可能であるという見込みを表明した.
この時,大統領は,新航空母艦を製造する場所は,より速やかに決定されると発表した.
先にロシア海軍総司令官ウラジーミル・ヴィソツキー海軍大将は,長期的には,北方および太平洋艦隊に5〜6個の航空母艦グループが作られるとロシア通信社ノーボスチに伝えた.
(http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/33352293.html参照)
彼によると,海軍総司令部は,これらの艦隊の為に,単なる航空母艦の代わりとして,艦,海上および沿岸の航空機部隊,軍事衛星が一体となったシステムとして働く"海上航空母艦システム"を構築する事を決定した.
現在,最初の艦の為の科学研究作業は,既に行われており,試作設計段階が始まると海軍大将は言った.
以前に連邦議会国家海洋政策委員会委員長で元北方艦隊司令官のヴャチェスラフ・ポポフ海軍大将は,「セヴマシュ」が,ロシア海軍の為の航空母艦建造への主な志望者の1つであるとロシア通信社ノーボスチに伝えた.
(http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/35527314.html参照)
彼は,現在「セヴマシュ」がインド海軍の為の航空母艦「アドミラル・ゴルシコフ」近代化改装の仕事を行っている事を想起させた.
ポポフによれば,同社工場におけるアドミラル・ゴルシコフ近代化の貴重な経験は,受注競争に勝つ為の強力な理由になる.
「セヴマシュ」総取締役ニコライ・カリストラトフは,同社工場が,排水量70,000〜80,000トンの最新航空母艦を建造する準備が出来ていると,ロシア通信社ノーボスチに伝えた.
同時に彼は,生産効率を増加させる為,企業の技術的再装備を行なう事は,新技術を注入する為に必要である事を強調した.
一例として,「セヴマシュ」は,航空母艦「アドミラル・ゴルシコフ」の為に,新しい建造碁盤を確立した事が挙げられた.
この碁盤は,新しいロシアの航空母艦建造の為に,また使用する事が出来る.
推算によると,世界市場におけるこのクラスの航空母艦の費用は,40億ドルである.
無人飛行ビークルコンツェルン複合体「ヴェガ」のプログラム主任アルカージー・シロエジコ海軍少将は,ロシア海軍が,自動操縦タイプの偵察機に非常に興味を持っているとロシア通信社ノーボスチに伝えた.
彼によれば,艦隊は,もはや目を閉じていようとは思わない.
ロシアが,航空母艦の建造開始を確約する事は,艦載の自動操縦機複合体を作る為の特別な動機になると考えられる.
この艦の甲板には,通常航空機およびヘリコプターの他に,コンツェルン「ヴェガ」を含む多数の最新海上自動操縦機が搭載される事に疑いは無い.
北方艦隊で稼働する「ソビエト連邦海軍元帥ニコライ・クズネツォフ」は,ロシア海軍の戦闘編制に在る唯一の航空母艦である.
同艦は,1985年に建造された(註:1985年に進水した).
同艦は,50機以上の航空機およびヘリコプターを搭載する.
「アドミラル・クズネツォフ」は,標準で,多用途艦上戦闘機Su-33の他,ヘリコプターKa-29と,その改良型を搭載している.
航空母艦の排水量は55,000トン,航続距離は8,000海里,1500人の乗組員と650人の航空要員が乗っている.
艦の速度は29ノットである.
兵装には,対艦複合体「グラニト」,防空複合体「コルチク」,「キンジャル」,対潜複合体「ウダフ」が有る.
(2009年2月27日16時10分)
――――――
というわけで,ロシア海軍の新世代航空母艦は,排水量50,000〜60,000トンの原子力艦になるとの事です.
以前は,「排水量40,000トン以上,50,000トンを越えない」原子力艦と言われておりましたが,
(http://www.globalsecurity.org/military/world/russia/cvn-newcon.htm参照)
1万トン増えました.
記事中で,空母「アドミラル・クズネツォフ」の排水量が55,000トンと記されているので,同艦とほぼ同じサイズになるようです.
そして,「アドミラル・クズネツォフ」や,その前のキエフ級のような対艦巡航ミサイルは搭載されません.
この件に関して,日本の軍事オタクは,さしたる根拠も無いまま,
「新空母も対艦巡航ミサイルを搭載するだろう」
とネット上で繰り返し発言していましたが,その「希望」は,ロシアの造船会社から公式に否定されてしまいました.
それと,ロシアが原子力空母を造ると聞いて,かつて未完成に終わった原子力空母ウリヤノフスク(排水量約8万トン)クラスの大型艦を建造すると思っていた軍事オタクも少なくありませんでしたが,この可能性も消えました.
艦載機は「第5世代航空機」との事ですから,Su-27KUBやMiG-29K/KUBのような「第4.5世代機」とは違う機体になるでしょう.
(PAK-FAの艦載型か?)
この他,無人偵察機も搭載されるようです.
シュレモフ提督が言った「3隻持てば,定期的に整備を行なう事が出来る」というのは,空母が3隻有れば,定期整備のローテーションを組んで,常時1隻をオンステージに保つ事が出来る,という意味でしょう.
現在は,クズネツォフ1隻しか無いので,同艦が定期整備中は,行動可能な空母がゼロになります.
ただしシュレモフ提督は,この空母計画は,あくまでも,国の経済力次第であるという事も示しています.
構想通りに6隻揃うかどうかは,国(ロシア連邦)の懐具合に左右されるでしょう.
このニュースが日本で報道されるかどうかは分かりませんが,仮に報じられたとしても,「国家経済の問題と可能性に依る」の件は削除される事でしょう.
(特に,産経ならば)
「ロシア・ソ連海軍」,2009/2/28(土) 午前 10:05
>国家経済の問題と可能性に依る
そういえば,これまでのロシア空母を最も多く「撃沈」してきたのは,「ロシアの国内事情」だからなあ.▲
【関連リンク】
「ロシア・ソ連海軍」:ロシアは,北方艦隊と太平洋艦隊に5〜6隻の空母を配備する
「六課」:ロシア海軍の新型空母は,「セヴマシュ」或いは「バルチースキー・ザウォート」で建造できる
「六課」:ロシアは,2012〜2013年に新空母を起工し,完成後は極東に配備される
◆◆◆◆モスクワ級
【質問】
モスクワ級が構想されたのは何故か?
【回答】
ソ連は,地中海でパトロールを行う米戦略原潜を,ソ連西部への重大な脅威ととり,北洋艦隊や黒海艦隊の通常型攻撃潜水艦を大量に派遣したが,戦略原潜を支援する米第6艦隊に対抗できなかった.
また,戦略原潜の行動を阻止するため,ソ連海軍は遠洋対潜機動部隊を編成したが,戦力不足は明らかだった.
そのため,空母建造論が再燃.
しかし,ブレジネフ政権のウスチノフ国防相も空母反対派だったため,妥協点としてヘリ搭載艦が建造されることになった.
その設計のコンセプトは、強力なソナーとレーダー,近代的なミサイル,最先端の電子兵器,高い自動化レベルを持つ軍艦,だった.
静粛性を高める為,主機はソ連水上艦としては初めて防振架台に載せられた.
また,対艦ミサイルの赤外線センサー対策として,煙突内部に排気の冷却装置が既に設けられていたことは,特筆に価する.
電子戦システムの統合化も1123型の特徴である.
このようなシステムは世界的に見てもまだ珍しい頃で,欧米海軍が同様のシステムを本格装備するのは5〜10年後のことだった.
詳しくは「世界の艦船」2005年1月号,p.159-165(A.
V. Polutov著述)を参照されたし.
【質問】
1123型の欠点は?
【回答】
兵装はまるでハリネズミであり,排水量1t当たりの兵装重量は極めて過大で,乗員の居住環境は最悪だった.
しかも,本型の乗員数は乗組員266名,航空要員104名の計370名でスタートしたが,最終案では541名に達し,実際はそれでも人手が足りず,国家海洋試験後,航空要員以外の乗組員定数は700名とされた.
当然,居住環境は悪化し,航空要員が乗艦してくると,乗組員は食糧倉庫や弾薬庫を居住区代わりとした.
1976年には魚雷発射感が撤去され,浮いたスペースは居住区に当てられたが,焼け石に水だった.
もっとも本型に限らず,当時のソ連の新鋭艦は,多かれ少なかれ乗組員に我慢と犠牲を強いていた.
また,海軍総司令部が排水量を厳しく制限したため,耐航性に難があり,軽合金が多用された.
1123型の船体構造は,必要な飛行甲板面積の確保を最重視したため,耐航性や推進性能に悪影響を及ぼすほどだった.
旋回半径は全長の8倍以下,傾斜も10度以内だが,船底から上下する巨大なオリオン型ソナーの位置により,船体の安定性も大きく変動した.
V型で乾舷の低い艦首は,お世辞にも耐航性が良いとは言えず,「モスクワ」艦長を経験したことのあるロマノフ大佐は,
「1970年,大西洋で荒天下の試験航海を担当した時,波により前甲板の装備が破損した.
艦橋からの視界は良好だが,横波を受けた場合,傾斜角は25〜29度に達した.
設計段階ではシーステート6でもヘリコプターの発着や兵器の使用が可能とされていたが,実際はシーステート5が限界であることが,このときの航海で判明した」
と回想している.
弾薬庫は吃水線の上に配置され,カラトM型自動消防装置には改善の余地があった.
詳しくは「世界の艦船」2005年1月号,p.161-165(A.
V. Polutov著述)を参照されたし.
【質問】
モスクワ級の建造スケジュールは,当初2.5年の予定だったものが,なぜ4年に延びたのか?
【回答】
(1) 設計作業の難航
排水量の問題は最後まで設計官らを苦しめた.
新しい材料を積極的に採用したりと彼らがいくら努力しても,甲板や船体構造の強化,煙突の改造,予備エンジン搭載,弾薬庫容積拡大,機器自動化,搭載機用燃料増加,オリオン型ソナーの改造,新型レーダー採用,航続距離増加と,技術案承認後にも関わらず,海軍総司令部の追加要求には終わりがないかのようだった.
(2) 関連企業間の調整難航
27の役所と200以上の企業や向上が関与した建造作業は,設計作業以上に複雑なものとなった.
(3) ターボ発電機,対空ミサイル発射機,ソナーを始めとする新規開発装備の調達遅延.
詳しくは「世界の艦船」2005年1月号,p.161(A.
V. Polutov著述)を参照されたし.
【質問】
モスクワ級の生残性は?
【回答】
500kg弾頭のミサイル3〜4発ないし420kg弾頭の魚雷2〜3発の命中,30kt核弾頭が2,000mの至近で爆発しても,戦闘力を維持できるというものだった.
本艦には,対艦ミサイルの応酬や核戦争が前提であった当時,装甲はもう意味がないとされ,代わりに16もの防水区画と,全長に渡る二重底が採用された.
また,窓は極力廃止され,優れた応急注水装置や放射性物質洗浄装置を備えていた.
ソースは「世界の艦船」2005年1月号,p.162(A.
V. Polutov著述)より.
【質問】
モスクワ級の格納庫にはどんな装備があったのか?
【回答】
搭載機である14機のカモフKa-25PL(対潜型12機,目標指示型,救難型各1機).これが煙突下部の上構内に2機,飛行甲板下の格納庫に12機収容された.
そして,搭載機を移送するためのコンベア.
火災で自動的にストップするエアコン.
揮発ガスの検知・濃度調節装置.
自動消火装置.
飛行時間100時間ごとに実施される定期点検用の整備室.
アスベスト製防火シャッター3枚.元乗員によると,このシャッターは映画のスクリーンとしてよく利用されたという.
詳しくは「世界の艦船」2005年1月号,p.(A.
V. Polutov著述)を参照されたし.
【質問】
「モスクワ」級の就役日は?
【回答】
モスクワ Moskva 級こと1123型対潜巡洋艦は,公式には1967/12/31.セヴァストーポリ基地において第21対潜旅団に編入された.
ただし,就役と同時に,国家海洋試験中に発見された各部の不具合を改修するための工事に着手したため,実質的な就役は1968年9月になった.
なお,モスクワは最新鋭の装備を満載した,新しいタイプの軍艦だったことから,就役の2年以上も前の1965年3月に乗員が編成され,造船所や試験所における新型兵器・装備品の試験を利用して,その運用習熟に努めた.
彼らがモスクワに配属されたのは,1967年3月であり,それから国家海洋試験が行われた.
以上,ソースは「世界の艦船」 2005年2月号,p.104(A.
V. Polutov署名記事)より.
同艦に限らず,ソ連邦海軍の艦艇は,竣工が書類上,年末になっているケースが多い.
これは,書類上だけでも,とにかく工事を完了した事にしないと,「その年のノルマを達成出来なかった」と見なされ,工事責任者の責任問題や,次の年に仕事を回してもらえなくなる恐れが出てくるため.
それで,完成を急ぐために「手抜き工事」するケースも有ったらしい(笑)
【質問】
ソ連のV/STOL攻撃機の初の艦上試験が行われたのはいつか?
【回答】
1972/11/18.
この日,デクスバフ試験パイロットが操縦する,Yak-38の原型試験機Yak-36Mが,フェオドシア近郊に在泊する「モスクワ」の飛行甲板に初めて着艦した.
この日のことは,モスクワの戦闘日誌に
「ソ連海軍艦上機の誕生日である」
と記された.
その約8ヵ月前の同年3月,モスクワは訓練を終えてセヴァストーポリへ帰投中,当直将校がオリオン型ソナーを引揚げることを忘れたため,暗礁と衝突.チタン製のフェアリングを修理するには特別な技術が必要なことから,6ヵ月にも及ぶ修理に入っていた.
そのころ,Yak-38開発計画が進行中だった.政府は1967年12月,Yak-36を原型にしてYak-38軽襲撃機を設計するようヤコブレフ設計局に依頼していた.
しかし海軍は,V/STOL搭載機の運用経験がなかったため,ちょうど修理中だったモスクワの飛行甲板を耐熱鋼鈑に替え,これにAK-9F耐熱材を貼りつけた特別発着プラットフォーム(20m四方)を用意し,排気ガスを直接受ける部分には温度や圧力などの計測装置も設置して,V/STOL搭載機の運用試験に供することとしたのだった.
その後,モスクワ艦上ではあらゆる試験が行われ,V/STOL搭載機の発展に大きく貢献することとなり,ゴルシコフ層司令官は,その試験飛行を度々視察に訪れたという.
以上,ソースは「世界の艦船」 2005年2月号,p.105(A.
V. Polutov署名記事)より.
【質問】
1975年2月の「モスクワ」の火災事故の経過は?
【回答】
艦首のディーゼル発電機室から出火,火災は瞬く間に延焼し,3時間後に鎮火.
3名が死亡し,修理は一年半以上に及んだという.
以下引用.
1975年2月に発生した火災は,モスクワにおける最大の事故である.
セヴァストーポリに在泊中,艦首のディーゼル発電機室で火災が発生,昼食時間のために付近に乗員がいなかったため,炎は隣の兵員室に広がった.
このクラスは重量軽減のため,上部構造物に軽合金を多用したので,火災は瞬く間に補助ボイラー室に延焼し,館内は停電になった.
しかも間の悪いことに,艦首の自動消火システムと艦尾の補助ボイラー室も故障していたため,電気供給を復活できなかった.
基地に救援が要請され,すぐさま救助船や消防船による消火活動が開始された.
だが,火災がシトルム型ミサイルの弾庫に近づいたため,庫内に注水せざるをえなくなった.
(幸いなことに,核弾頭を装着したビフリ型対潜ミサイルは搭載していなかった)
3時間後,火災はやっと消し止められたが,3名が犠牲となり,26名が負傷した.
また,修理は翌1976年10月まで一年半以上に及んだ.
「世界の艦船」 2005年2月号,p.105(A. V. Polutov署名記事)
【質問】
モスクワ級の対潜能力は?
【回答】
一度発見した原潜の追跡では優秀だったが,米原潜を発見するには力不足だった模様.
以下引用.
もちろん,最大の作戦任務は米戦略原潜の発見と追跡であったが,最新のソナーを装備しているにも関わらず,その任務は非常に困難であった.
モスクワの艦長を務めたことがあるロマノフ退役大佐は,当時の様子を次のように語っている.
「公式報告によると,モスクワ搭載機による敵戦略原潜などとのコンタクト時間は数百時間に達したとあるが,残念ながらその数字は信憑性に乏しい.
だが,一度コンタクトを得てしまえば,モスクワの能力に疑問はない.
1970/3/30,オリオン型ソナーが16.5kmの距離で原潜を発見,以後10時間以上コンタクトを維持した.
原潜はあらゆる運動を駆使して追跡を振り切ろうとしたが,数機のヘリコプターは,原潜がイタリア領海に入るまで目標を見失うことはなかった.
4度目の遠征の時は,コンタクト時間が98時間に達し,うち32時間はヘリコプターによるものだった」
ソ連海軍は新型艦を有効に活用すべく,対潜戦術の開発にも積極的で,第11対潜旅団を基盤に「偵察攻撃機動部隊」を編成,地中海で運用するようになった.
カアトノフ退役大将は,
「1123型対潜巡洋艦1隻と複数の61型(カシン Kashin 型)対潜艦を含む偵察攻撃機動部隊は,1時間に225〜330km2の海域を捜索する能力があった」
と回想する.
「世界の艦船」 2005年2月号,p.105-106(A. V. Polutov署名記事)
【質問】
モスクワが退役した理由は?
【回答】
海軍崩壊の影響を受けたのに加え,海軍帰属問題によって身動きが取れなくなったためだという.
以下引用.
1992年は黒海艦隊は5つの演習に参加したが,年明け早々の1月,ノヴォロシースクを訪れたエリツィン大統領とシャポシニコフ国防相は,在泊中のモスクワ艦上から
「黒海艦隊は今後もロシア海軍の艦隊である」
と宣言し,これがモスクワにとって最後の晴れ舞台となった.
その後,海軍崩壊の下で燃料や食料品が不足したモスクワの行動は,次第に不活発となり,給料の未払いもあって乗員の士気も急速に低下していった.
そして1993/5/26の出港を最後に,ロシアとウクライナ間での海軍帰属問題から身動きが取れなくなった本艦は,以後,現役中にセヴァストーポリの港を出ることはなく,「モスクワの不動産」と揶揄されつつ,1995/4/27,予備役に編入された.
また同年6/22,1164型ミサイル巡洋艦スラヴァ Slava がモスクワと改名されたため,本艦はPKR108号艦となった.PKRは対潜巡洋艦の記号である.
1996/11/7,旧モスクワは遂に除籍となり,スクラップとしてインドに売却され,翌1997/5/27,セヴァストーポリを後にした.
作戦任務回数は11回(1112日),総航海距離は183,768浬であった.
「世界の艦船」 2005年2月号,p.106(A. V. Polutov署名記事)
ちなみに,ロシア海軍艦艇スレッドでも紹介したが,1995年当時のモスクワ級を撮影した写真.
http://www.hazegray.org/features/russia/carrier.htm
このページの上から3〜7枚目
・Moskva at Sevatopol, 8/1995.
・Another view of Moskva at Sevastopol 8/1995.
・Another third view of Moskva at Sevastopol
8/1995.
・Helicopter cruiser (PKR) Leningrad (Project
1123 "Kondor"), Sevastopol, 1/1995.
・Another view of Leningrad.
モスクワは1995年8月撮影なので,予備役に編入されて「PKR108号艦」になった状態だね(舷側の艦名は,そのままのようだが)
レニングラードは,既に除籍されているので(1991年除籍),兵装や電子機器の一部が撤去されているね.
それにしても,このフネはウクライナにくれてやっても良かったような気が・・・・(笑)
【関連リンク】
「ロシア・ソ連海軍」:ソ連海軍ヘリ空母モスクワ級の「晩年」
【質問】
1123-3型とは?
【回答】
1965年に設計開始された改モスクワ級.
原級に比べ,全長が10m,幅が1m,排水量が2,000t増加.対空ミサイルが強化されていた.
当初,「キエフ Kiev」の名前はこの艦に与えられる予定だった.
しかし1967年,ゴルシコフ総司令官らはYak-36
V/STOL攻撃機の試験を視察して,その性能に感激,これと親衛のマラヒト対艦ミサイル(P-120型/SS-N-9)を1123-3型に搭載するよう指示した為,起工は見送られ,プラン1143型に発展.
この1143型が後のキエフ級である.
詳しくは「世界の艦船」2005年1月号,p.161-162(A.
V. Polutov著述)を参照されたし.
「軍事板常見問題&良レス回収機構」准トップ・ページへ 本館サイト・マップへ