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◆◆内戦 Polgárháború
<◆戦争と平和
総記FAQ 目次


(画像掲示板より引用)


 【link】

「FSM」:Failed state

nofrills in twitter ◆(2013/04/15)
「欧米/欧州/海外では人種差別は即逮捕」論の人,息してるか?
http://t.co/U6TWSXM4Fj
> 今年3月,フランス,パリの北駅でイスラエル大統領訪問中,黒人と北アフリカ系の職員は勤務禁止措置.
> 理由は「ムスリムかもしれないので」.
>(人種差別,宗教差別と二重の差別ですね)

「VOR」◆(2012/06/22)Google すたれゆく希少言語を救う

痛いニュース(ノ∀`) ◆(2010/06/20)世界ランキング上位6億人から税金徴収し,全世界の人々に最低限の生活を保障する「地球人手当」計画…法政大教授

「ザイーガ」◆(2012/06/03)各国別腐敗認識指数ランキング

「ダイヤモンド・オンライン」◆(2010/05/14)世界的な“紛争解決人”が説く問題解決の真髄 「力ではなく“対話”こそが国や企業を甦らせる」
>紛争が増え続ける国際社会や,大不況で経営の羅針盤を失った企業社会に,
>問題解決の方法があるとすれば,それは力ではなく「対話」に他ならない.
>「紛争解決ファシリテーター」として世界的に有名なアダム・カヘン氏が説く.

「ダイヤモンド・オンライン」◆(2012/06/04)【3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言】社会を持たない大衆には失うものがない 今日では失うべきイズムもない

「暇は無味無臭の劇薬」◆(2013/05/04) 「自国で内戦が勃発するとしたら何が原因か外国人が考えるスレ」海外の反応

●書籍

『Wrong Turn: America's Deadly Embrace of Counterinsurgency』(Gian Gentile 著,New Pr,2013/7/30)
COINを痛烈に批判した話題の新刊

『言語と貧困 負の連鎖の中で生きる世界の言語的マイノリティ』(松原好次・山本忠行編著,明石書店,2012/8/9)

『地域紛争の構図』(月村太郎編著,晃洋書房,2013/01)

『武装解除 紛争屋が見た世界』(伊勢崎賢治著,講談社現代新書,2004.12)

 先日目を通した書籍です.伊勢崎さん自体は以前から知っていたのですが,書籍に目を通すのがだいぶ遅くなりました.

【読むに至ったきっかけ】

 紛争における調停が知りたかったから.
 数ある調停事といえど,これ以上緊迫感のあることはないでしょうってことで.

【感想】
 DDRの現場について知ることができた.
 それと,海外への自衛隊派遣における実態とその成果について.交渉事自体については臨場感ある記述といったものは,ほとんどなかった.
 ちょっと残念.
 現状報告といった面が多分にあり,現場の写真をよく掲載していました.

 現状報告という側面を土台に,DDRにかかわっている人々の心情というものも報告し,さらにそれをまとめ上げてきた著者の意見や考え方が書かれています.

 著者についていうなら,非常に頭が良い人だろうと思います.
 文章を見る限り,論理展開のテンポが早い.
 非常に切れるな,という印象です.
 と同時に,ちょっと冷めた感じを持つ人でもあるんじゃないかな,と.
 しかし,写真を見る限り,非常にまわりから好かれそうだとも思いました.

――――――たっさん in mixi,2009年09月13日01:24

『平和構築における治安部門改革』(上杉勇司編,国際書院,2012.8)

『冷戦から内戦へ』(ハンス・マグヌス エンツェンスベルガー Hans Magnus Enzensberger著,晶文社,1994/12)


 【質問】
 「内戦」の定義は?

 【回答】
 世界銀行の認定している「内戦」の定義

1,戦闘関連の死者が,各当事者側の5%以上を含む1,000人以上である.
2,その戦争が国際的に認知された国家主権を脅かしている.
3,その戦争が認知された国境内で起きている.
4,その戦争に国家が主たる当事者として加わっている.
5,反乱軍は国家に対して組織化された軍事力を行使し,政府軍に多大な戦死者を出している.

(軍事板)

「内戦は存在が確認できる叛乱組織が軍事的に政府に挑戦するときに発生し,それに伴う暴力の結果として,戦闘関連の死者が,各当事者側の5%以上を含む1,000人以上であるもの」としています.
(少なくとも世銀の定義はこれ)

 世界銀行の発行している「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3)という本は,内戦の経済的コスト,社会的コストについて触れている,役立ちそうな本です.

(眠い人 ◆gQikaJHtf2 in FAQ BBS)


 【質問】
 内戦は何故問題なのか?

 【回答】
 内戦はたいてい,社会的および経済的に見て大惨事であり,経済的損失および社会的損失をもたらし,その国の開発を後戻りさせることになる.
 そのため,積極的な戦闘員よりも一般人のほうが,その悪影響に苦しむことになる.
 このような影響は,内戦終結後も長期に渡って継続し,また,内戦は地域的に,さらには世界的にも波及していく深刻な結末をももたらす.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.11-12を参照されたし.


 【質問】
 内戦で生じる経済損失には,どんなものがあるのか?

 【回答】
 1995年のGDPが3000USドル未満の国を平均的な途上国として定義すれば,平和の時期には対GDP比で約2.8%が軍事に支出されるが,内戦時期にはこれが5%まで増加する.
 したがって,インフラストラクチャや保健など,その他の公共支出を減少させる公算大である.

 にも関わらず,そのような軍事費は通例では反乱防止には効果がない.

 また,内戦に伴う主要な経済損失は,暴力による損傷によって発生する.
 内戦中,反乱勢力は,物理的インフラを戦術の一環として攻撃対象にする.
 モザンビークでは,農業・通信・および行政といった部門における固定資産の約40%が破壊されたという.

 さらに,内戦は難民を発生させるが,彼らはなけなしの保有資産を失うのが普通である.
 ウガンダでは,回答者の3分の2は,全ての資産を失っている.
 そうした損失見通しに直面した人々は,富を海外に移管することによって自己資産を守ろうとする.
 内戦に見舞われた典型的な国の場合,紛争前には民間資産の内,海外で保有されている割合は9%程度だったが,内戦終了時点ではこの比率は20%になる.

 内戦による破壊によって時間的な視野が狭くなり,混乱によって家族やコミュニティの結びつきが断絶する.
 これは共に,日和見主義的および,犯罪的な行動に対する制約が弱まることに繋がる.
 1994年のルワンダにおける大量虐殺では,保有資産が多いほど殺されるリスクが高かった.
 日和見主義と不確実性の高まりを受けて,人々は余り投資をせず,より安全な自給自足的活動に引きこもるようになる.
 ウガンダでは長期間に及ぶ社会的混乱下で,自給自足部門のシェアがGDPの20%から36%に拡大している.

 計量経済分析によれば,内戦に陥った国の成長率は,平和時に比べて約2.2%鈍化する.
 したがって,典型的な内戦が7年間続いた後では,内戦がなかった場合に比べて所得は15%程度減少する.
 これは,絶対的貧困者数が約30%増加することを示唆し,内戦中の所得損失を累積すれば,1年分のGDPのほぼ60%に達することになる.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.13-16 & 66を参照されたし.


 【質問】
 内戦で生じる社会損失には,どんなものがあるのか?

 【回答】
 内戦がもたらす最も直接的な人的影響は,死者と難民である.
 20世紀初頭には,犠牲者の約90%は兵士だったが,1990年代までには,武力抗争に起因する犠牲者のほぼ90%は一般人となっている.
 また,2001年で見ると,UNHCRは世界全体で難民1200万人,国内避難民(IDP)530万人に支援を提供している.
 リベリアでは,難民およびIDPの公式推定値は,総人口の70%でピークに達している.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.17-19を参照されたし.


 【質問】
 紛争,特に独立運動や民族運動というのは,対する正規軍側・国側が「公式に終了しました」と言えば,現実に軍事的な戦闘が終わる訳ではないと思うんですが,中身に大きな変化は無くても,国際的に・公式には終了という扱いになるんでしょうか?

 【回答】
 宣戦布告・講和会議という古いタイプの戦争ならともかく,お考えのような低脅威度紛争では,国際的とか公式とかいう概念はあまりないです.
 誰かエライ人が上から認定してくれるわけではないので.どちらかというと内外への報告といいますか,
「もう,とにかく終わりです!」
と宣言するだけ.
 国民はそれで一応安心するでしょうけれど,やられてた側がそれであきらめるわけではないし,諸外国も,
「ああ,その地域は安定したんだな,よろしいよろしい」
とは思わない.
 イラク戦争におけるアメリカでも,イラク正規軍との戦闘は圧勝し,ブッシュたんが空母で終結宣言を出しましたが,その後の治安維持作戦でのぐだぐだはごらんの通り.

 ただ,大国の実働部隊がいったん手を引いたといことで,国連などが停戦監視団などを送り込みやすくなる,そのタイミングとして使えるということはあるでしょうね.

軍事板
青文字:加筆改修部分

第2次チェチェン紛争
2009年に終結宣言が出されたが,状況は以前,予断を許さない
SVDのマグポーチを胸に2つも付けている兵士に注目

コソボ紛争での米露両軍兵士
コソボが独立宣言を出したことにより,紛争こそ再燃していないものの,より険悪化している

デビルマン紛争
幾つかの小規模な紛争の後,人類を巻き込んで一気に大規模化,人類を絶滅させるに至った


 【質問】
 内戦後にはどんな後遺症が残るか?

 【回答】
 貧困と悲惨という後遺症を永続的に残す.

 軍事支出は,内戦終結後も元の水準には戻らない.終戦直後の10年間には,平均してGDPの4.5%が軍事費に支出される.
 資本逃避は,終戦直後の10年間の平和時にも,26.1%へとさらに上昇する.
 将来的にも誠実な行動をしようというインセンティブが大幅に弱まり,腐敗も増大する.内戦だけが腐敗をもたらす原因ではないが,腐敗がもたらすコストは,内戦終了後も長く続く.

 政治制度の悪化にも繋がる.
 世界銀行が採用している国別政策制度評価(CPIA)では,
・内戦状態に陥っていない,あるいは内戦直後の平和な10年間という状況下にもない低所得国は,CPIA点数で2.75.
・内戦に陥った国では,内戦直前の5年間におけるこれら諸国のCPIAは,平均して2.56
・内戦直後の10年間には,2.29に低下する.

 Polity IV(世界各国の政治体制に関わる著名なデータベース)という標準的な政治学の指標では,民主化レベルは10段階評価で
・内戦状態に陥っていない,あるいは内戦直後の平和な10年間という状況下にもない低所得国は,平均して2.11
 対して内戦直後の10年間にある国は,1.49へと悪化する.

 内戦後も,内戦中とほぼ同程度に死亡率が高くなる.
 WHOが作成したDALY(傷害調整余命と傷害調整生存年)では,2000年度の推計において,1999年当時,継続中だったあらゆる戦争の直接的な効果として,844万DALYが失われている.
 その同じ年,1991-71年に終結した内戦の結果として,801万DALYが失われている.

 内戦による心的外傷の体験は戦後も続く.その数値化は困難だが,入手可能な証拠によれば,内戦の精神的影響は甚大であり,しかも非常に持続性が高い.
 ボスニア難民の臨床記録によれば,鬱病の症状が見られる割合が14~21%,PTSDは18~53%.
 タイ国境のカンボジア難民では鬱病が68%,PTSDが37%となっている.

 地雷は経済活動と健康の双方に影響する.戦闘終了後も,地雷は長期間に渡って人々を殺傷する.
 2001年では,地雷被害は1万5000~2万人と推定されている.
 カンボジアでは,1991年に戦闘が終了したにも関わらず,2001年現在,全村の64%に相当する6,422村落に,地雷か不発弾(UXO),あるいはその両方で汚染された地域がある.
 汚染地域では,家,農地,牧草地,水源,森林,学校,ダム,運河,市場,事業活動,保健所,パゴダ,橋梁,および隣村へのアクセスが制限されている.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.19-30を参照されたし.


 【質問】
 内戦は近隣諸国にも悪影響を与えるか?

 【回答】
 隣接地域全体に大損害をもたらす.

 近隣諸国は,大勢の難民を受け入れざるを得ない.そのことは,経済負担,軍事費,輸送コスト,および,投資家が抱いている地域の評判に対して影響が及ぶ.

 難民キャンプは感染症の温床となり易く,特にマラリアを伝染させる.難民1000人につき,避難先の国では新規のマラリア患者が1406人発生する.
 HIV/エイズの感染拡大も懸念される.

 内戦は近隣諸国の軍事費も増大させる.近隣諸国の政府は典型的には,対GDP比で約2%と,軍事支出を急拡大させることが多い.それは経済成長率を0.2%押し下げる.

 過去30年間における3つのグローバルな社会悪,ハード・ドラッグ,エイズ,国際テロは,大部分が内戦の副作用だと言っても過言ではない.
 広範囲に渡る農村地帯が,内戦の副作用として政府のコントロール外になっており,そこでは麻薬栽培が主流となる.現在,アヘンの世界生産の約95%が,内戦国で行われており,内戦終結後もそれはずっと続く.
 運び屋が麻薬原産国から消費市場に持ちこむルートも,内戦中および内戦終結後の状態にある諸国を経由する.欧州市場に出まわっているヘロインの70~90%は,これまでバルカン・ルートを経由していたが,近年,中央アジアとロシアを通過する代替ルートが開拓された模様である.

 アフガーニスタン内戦とアル・カーイダの結びつきは明白である.
 アル・カーイダはまた,西アフリカの係争中のダイヤモンドを持ち出すことにより,巨額の収入を得たという証拠もある.
 内戦が生み出した「避難所」は,大規模な国際テロにとっては必要不可欠なものとなっている.
 世界銀行の推計に基けば,9/11テロの結果,それがなかった場合に比べ,世界のGDPは約0.8%低下し,貧困者数が1000万人以上増加している.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.31-45を参照されたし.


 【質問】
 内戦は何故発生するのか?

 【回答】
 根本原因は経済開発の失敗にある.

 輸出の一次産品依存度が高く,1人当たりの所得が低水準で伸び悩み,その分配が不平等な国は,長い内戦に陥るリスクが非常に高い.
 collier and Hoeffler(2002c)の分析では,1人当たり所得が1%上昇する毎に,リスクはほぼ1%ずつ低下する.
 1次産品輸出の割合がGDP比で約30%にある場合,それ以外の点では典型な国の内戦発生率も33%に達する.同輸出が対GDP比で10%に留まれば,リスクは11%に低下する.
 最大の民族集団が人口に占めるシェアが45~90%の範囲にある社会では,反乱が発生するリスクが50%高くなる.
 それ以外の場合,民族的および宗教的な多様性は,むしろ反乱を低下させる.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.49-53を参照されたし.

 【格言】
「国の指導者が行う最悪の事は,国家を分裂させることである」(プラトン「国家」


 【質問】
 内戦における反乱勢力の特性は? 

 【回答】
 反乱勢力は政治組織であり,軍事組織であり,かつ企業組織であるという,3重の特徴を持つ.
 通常,反乱勢力のリーダーは,政府に対する不満について,何らかのストーリーを口にする.
 しかし,政治的な反対は,通常なら軍事組織を通してなされるものではない.私的軍事組織は典型的には小規模であり,上下関係が明確で,組織上層部に権力が集中しており,内部においては規律が厳しい.
 さらに,私的軍事組織は運営に相当のコストがかかる.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.52-53を参照されたし.

ある反乱軍指導者


 【質問】
 多くの反乱は何故民族的なのか?

 【回答】
 collier and Hoeffler(2002c)の統計的分析では,最大の民族集団が人口に占めるシェアが45~90%の範囲にある社会では,反乱が発生するリスクが50%高くなる.典型的な低所得国において,優勢な民族がいない場合に内戦が5年以内に発生するリスクは14.1%だが,優勢な民族がある場合,それは20.9%になる.
 それ以外の場合,民族的および宗教的な多様性は,むしろ反乱を低下させる.
 また,社会が完全に2極化している場合も,問題が生じる.そのリスクは,同質的な社会のほぼ2倍に達する.

 民族的相異が明らかに反乱の原因となる重要な環境に,ある国で石油など貴重な天然資源が発見されるという場合がある.
 天然資源の賦存が平均の2倍の場合における追加的なリスクは,イデオロギー的な内戦のリスクにおいて3.1%,分離主義的な内戦になるリスクにおいて8.2%増加する.
 内戦が分離主義的になるリスクは,石油がない場合で67.6%,石油がある場合では99.5%になる.

 反乱組織が結束を強めるために用いる別の一般的テクニックは,募兵をリーダーの出身部族という特定の単一民族グループからに限定するのである.
 つまり反乱軍は,既存の民族性という「社会資本」を活用することになる.
 反乱リーダーが結束を高めるために,積極的に民族性を打ち出していることが,反乱軍の主張の中では民族性が顕著であり,内戦の重要な根本原因になっているように見える,もう一つの理由であろう.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.52-58 & 64を参照されたし.

(画像掲示板より引用)


 【質問】
 エスニック紛争とは?

 【回答】
 民族・宗教や,植民地体制の崩壊にともなう主導権争い,また,既存のシステム打破を目指すときに起きる内戦などを指す.
 こうした国家は「破綻国家」とも呼ばれ,一度も強力な政府を有したことがない場合や,経済の破綻,権力保持の正当性喪失,外部からの圧力による破綻などがある.

 例えば,冷戦の終結によって,アフガニスタン・カンボジア・アンゴラ・ソマリアなどから,外国の軍隊は撤退したが,その共同体の中では紛争が続いた.
 旧ユーゴスラビアでは,チトー大統領の死・冷戦の終結によって,政府が民族間の紛争を調停する能力が衰え,また,政府自身がそれを推進したがために,悲惨な内戦が起きることになった.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授「国際紛争」(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 エスニック紛争の原因は,その地域の「民族性」で起きるのか?

 【回答】
 そうとも言い切れない.
 ナイ教授は次のように述べている.

――――――
 コンストラクティヴィスト[構成主義者]によれば,エスニシティ[民族性]は不可避的に戦争につながる不変の事実というわけではない.
 シンボルや神話,記憶が時とともに変化しうると言う意味で,エスニシティは社会的に構成されるものである.
――――――

 例えば1994年に起きたルワンダの大量虐殺の場合,人々は同じ言葉を話し,同じ肌の色をしていた,
 しかし,何世紀か前に牧畜文化とともに移住したツチ族と,元からの住民で,数が多い農耕民族であるフツ族の間で,社会的な地位が異なっていた.
 時代を経て,フツ族とツチ族の間で婚姻が結ばれたり,社会変動で幾分か緩和されたが,植民地支配の時代にそれは再び強化された.
 1994年の大量虐殺では,75万人のツチ族と,事態の沈静化を求めた穏健派のフツ族,ツチ族「のように見えた」フツ族の多くが同様に虐殺されている.

 1991年のユーゴスラビア連邦解体も,エスニック紛争につながった.
 発生した戦闘の多くは,ユーゴスラビア内でも異質性の高い,セルビア人・クロアチア人・イスラム教徒の間で行われた.
 しかしながら,これは農村地帯と都市部の紛争と見ることもできるとナイ教授は指摘する.

 この紛争を農村地帯と都市部のコミュニティの間の紛争とみなすことも出来る.
 前者では,古いアイデンティティと神話が最も強固であり,後者では,多くの人々が人種間結婚を重ね,クロアチア人やセルビア人,ムスリムとしてよりも「ユーゴスラヴィア人」として自己認識するようになっていた.
 ひとばびユーゴスラヴィアが解体し,武力衝突が起きると,[都市部の]こうした人々の中にも,新たなアイデンティティが押しかぶさってきた.
「これまでの人生を通じて,私は自分をムスリムではなくユーゴスラヴィア人だと思ってきた.
 今や私はムスリムである.そうなるように強いられているからである」
と,1993年にある人は私に語った.
 また,モスタルでの戦闘の間に,ボスニアのクロアチア軍司令官に,路上の人々は外見上区別がつかないのに,攻撃対象をどう識別しているのか,と尋ねたことがある.
 戦争の前には名前を知らねば識別できなかったが,今では制服で容易に識別できるのだ,という答えが返ってきた.
 理論家の中には,エスニック紛争の原因を,根深い古代からの憎悪や文明の大衝突に求めるものもあるが,エスニックな区別は,ジグムンド・フロイト(Sigmund Freud)の言う「わずかな差異のナルシズム」によることが大きいのである.

 エスニック紛争を理解するには,民族対立・古代からの憎悪だけではなく,わずかな差異を拡大化していく「内なる対立」に目を向けないとならないと言うことだろう.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授「国際紛争」(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi



 【質問】
 「わずかな差異」という曖昧な理由で,本当に殺し合いが起きるのか?

 【回答】
 「わずかな差異」は表面上の理由に過ぎず,最も大事なのは「内なる対立」だろう.

人間と言う動物は,常に自分たちを特定の「グループ」ごとに区別して,時には偏見や憎悪を持つ.
 しかしながら,こうした要因が「殺し合い」に発展することは稀である.

 全く同じ紛争などと言うものは二つと存在しないが,共通の「ダイナミズム」はある.
 「エスニック・シンボル」(言語・宗教など)や「神話」が亀裂を生み,経済的な競合・国家の威信低下などが原因で,社会的不安が加速・増大し,それを埋めようとして,指導者たちは,エスニック・シンボルに求心力を求める.
 結果,ボスニアの独立宣言や,ルワンダの大統領飛行機事故死など,何かのはずみで,紛争がおきるのである.

 歴史家のジョン・ミューラーによると,エスニック神話や不安を操作することで目的を達成しようとする「暴力集団」が存在しており,彼はその存在を強調している.
 ミューラーによると「エスニック戦争」という概念そのものが不適切であり,このような紛争は「少数の戦闘員」によって争われているのであり,彼らは「所属する集団の代表」と称して殺しあっているに過ぎない,と主張する.
 このような少数派集団について,ナイ教授は以下のように述べている.
――――――
 暴力に訴える少数派は,穏健な中間層の存在基盤を破壊し,病的で犯罪的な者たちが混乱の中を跳梁跋扈する.
 スチュワート・カウフマン(Stuart Kaufman)は,シンボル政治の役割を重視する.
 政治的な野心や極端な主張をする集団は,より大規模な集団の選好を再構築するために,エスニック・シンボルの感情的な力を利用する.
(中略)
 古典的な安全保障のディレンマは,無政府状態の下で,信頼や合意実現能力が欠如する時に深刻な紛争が,合理的なアクター[行為主体]の間でも発生することを示している.
 だが,カウフマンによれば,多くのエスニック紛争は「一方または双方が協調よりも紛争を望んだから」起こっているのである.
 シエラレオネあるいはリベリアの様な破綻国家では,教育にも職業にも恵まれない若者たちが,略奪や強奪に既得権益を見出していた.
 無政府状態という構造的条件下の下で合理的なアクターが直面する問題に加えて,エスニック紛争の初期段階に見られる安全保障のディレンマは,しばしば暴力を望む者による情緒的なシンボル操作から生じているのである.
 破綻国家や大量殺戮の危険のあるところでは,主権を無視してでも,脅威に晒されている人々を守るために外部の者は介入する権利を追及すべきだ,と信じる専門家も出てくる.
――――――
 今回のまとめとしては.

 エスニック紛争は,表面的な「差異」だけではなく「内なる対立」や,少数集団による戦闘のエスカレート,また,紛争を望むものたち,未来に希望が持てない人たちの自暴自棄などによって起きる.

といったところか.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授「国際紛争」(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 民族に関する基本知識を得られる本を教えてください.

 【回答】
Mukke 2009/01/28 01:05

 取り敢えず,近代的なナショナリズムについてだったら,
ベネディクト・アンダーソン(白石隆,白石さや訳)『定本 想像の共同体――ナショナリズムの起源と流行』書籍工房早山,2007
アーネスト・ゲルナー(加藤節監訳)『民族とナショナリズム』岩波書店,2000
の2冊が「基本書」ともいうべき存在です.

 ただ,入門という事であれば,
塩川伸明『民族とネイション――ナショナリズムという難問』岩波新書,2008
がわかりやすいかと思いますが,この本は著者の専門領域である旧ソ連・東欧以外の地域の説明に,不正確な部分があるので,概論の部分だけ読むといいと思います.

 ぼくも民族について体系的に学んだ訳ではないので,偉そうな事は言えないのですが,興味のある地域について掘り下げて調べてみてはいかがでしょうか?
 ぼくの場合は旧ユーゴスラヴィアで,この地域の近代について考えていく中で「民族とは何か」について考える事ができました.
 抽象的でわかりづらい話ですから,得意分野を作るのが近道になるのではないかと思います.
 実証あっての理論ですから.

「ストパン」■(2009-01-19)コメント欄
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 共産主義における民族概念については,本質的に相容れない側面があると思うのですが,どうでしょう?
 個人が十全に発展することができれば,無政府主義にいたると同様,民族なり国民なりの枠も意味を持たなくなるはず,ですし.

 でも実際は全くそうはいかなくって…というのがソ連だったり中国だったりユーゴスラヴィアだったりするのでしょうが.

Johann Gottlieb,2010/03/15 11:19

 【回答】
 そうですね.
 引用したエントリにも書きましたが,マルクスやエンゲルスはそれに価値を認めていませんでした
(原典をマトモに読んだことはないので,間違ってたら申し訳ないのですが).
 スターリンにしたところで,natsiyaはブルジョワジーの産物であると述べていて,社会主義が完成すればなくなると言っていたように思います.
 それを修正して,社会主義になってもなくならないよ,と言ったのがユーゴスラヴィアの共産主義者たちですね.

 最近の研究では,カルデリによって,ユーゴスラヴィア国家の存立の基盤となるイデオロギーが「(南スラヴ諸民族の)友愛と団結」から,社会主義的な国家の死滅を視野に入れた分権的イデオロギーに置き換えられた結果,ユーゴスラヴィアの理念的コンセンサスが崩壊して連邦が解体した,というようなことが指摘されています.
 そこはやはり難しい問題のようで……

Mukke,2010/03/18 17:26

以上,「ストパン」■(2010-03-11)コメント欄より
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 「先住民族」って何?

 【回答】
 「先住民族」は,単に「その土地に先に住んでいた」というだけの人びとではない.

 これは先住民族というもの,彼らが抱える諸問題をちょっとでも囓った人間にとっては常識に属することだが,どうも一部のヒトタチがわかってないようなので書く.

 ひとまず,Wikipediaにはこうある.

――――――
 先住民族(せんじゅうみんぞく)とは,国土の一定地域を先祖伝来の彼らの領域として暮らし,言語,文化,宗教などで他の民族集団とは異なる独自の特徴を有し,近代国家の成立に際してその主要な構成民族として関与せず,国家から従属を強いられ,又は侵略され,それ故に先住権と自決権を主張する民族集団である.

先住民族 - Wikipedia
――――――

 たとえば,在日朝鮮人を筆頭とする在日外国人に対して,大和民族は先住者としての立場にあるが,大和民族が先住民族であると言われることはない.
 大和民族は日本国において,その基幹構成員として大きな権力を有しているからだ.
 それを持たないというのが,言われるところの先住民族の特徴なのである.

「ストパン」■(2009-09-29)[アイヌ否定論]アイヌの運動を「利権狙い」と決めつけ,彼らを「自称アイヌ」と呼んで恥じない小林よしのりの醜悪な姿
青文字:加筆改修部分

▼ 「民族」の客観的定義は不可能である.
 だが,少数民族・先住民族への特別な政策を行っているような国では,「誰がその民族に属するのか」を定義することが政治的に要請される.

 アメリカ先住民の場合,その定義は複雑である.
 彼らを対象とした連邦法は,それぞれ異なる定義を示す.
(たとえば,1972年のインディアン教育法では「八分の一」の純血,1990年のインディアン美術工芸品法では公認部族の一員であること)※1
 一方,部族員の認定は,各部族政府に委ねられている.
 部族によって経済状況や混血の進み方に差があるからだ.
 ゆえに,「4分の1」の純血であることを要求する部族もあれば,自意識のみで部族の一員と定義する部族も存在する.

 ソヴェト連邦での「民族(natsija)」「準民族(narodnost')」の定義には,スターリンの民族理論が大きな影響を与えた.
マルクス主義における「民族」――エンゲルスからユーゴスラヴィアまで - Danas je lep dan

 少数民族は,まとまった居住地域を有している場合でも,多数派民族との「混血」化は免れ得ない.
 日本のアイヌは,彼ら独自の領域への大量の和人の入植によって,急速に「混血」化が進行した.
 同様な状況に立たされているのが,ドイツのソルブだ.
 その足下に眠る資源のゆえに,彼らはドイツ人に席巻され,周縁化された.
 「混血」によって生じる問題は,アイデンティティや文化の伝承に関わるものだ.
 ソルブ人はドイツ語を――下手するとソルブ語よりも――流暢に話すが,ドイツ人の多くはソルブ語を解さない.
 ゆえに,ソルブ・ドイツ混合家庭では,ドイツ人側の意識の高いわずかな事例を除いて,ドイツ語が共通語となってしまう.
 だが幸いにしてソルブ語は,カトリック地域においては,教会語として根強く生き延びている.
 最近では,「埋め込み」型の教育――すなわち,すべての活動をソルブ語で行う幼稚園も登場し,ソルブ人だけでなくドイツ人の一部にも人気を博しているという.
(隣接地域で,今後のビジネスチャンスが見込まれるチェコやポーランドの言語を習得しやすくするため,同じ西スラヴ語であるソルブ語を,というニーズが存在するらしい)

 では,ドイツの法律では,彼らはどのように定義されているのだろうか.
 まずはブランデンブルク州のソルブ法――「ブランデンブルク州におけるソルブ(ヴェンド)の権利を形成する法律」(1994年)の条文を挙げよう.

――――――
第2条
 ソルブ民族(ヴェンド)に属することを表明した者は,ソルブ(ヴェンド)民族に所属する.
 この表明は,自由であり,これを否認し,または審査することは,許されない.
 この表明によって,その市民に不利益が生じてはならない.※2
――――――

 同様の条文は,ザクセン州(正式にはザクセン自由国Freistaat)のソルブ法にも見られる.
 同州の「ザクセン州における,ソルブの権利に関する法律」(1999年)をみよう.

――――――
第1条
 ソルブ民族に属することを表明した者は,ソルブ民族に所属する.この表明は,自由である.
 これを否認し,または審査することは,許されない.
 この表明によって不利益が生じてはならない.※3
――――――

 これが,多数派民族の中に「埋め込まれた」少数民族を定義する場合の,最も妥当な方法論だろうと思う.
 その居住地域で多数派となっている少数民族――たとえば,カタルーニャ――はどうやっているのかは知らないが,多数派民族と何らかの形で関係を持たねば生きていけない少数民族の場合,「血統」や「言語」でその成員資格を限定しようとするのは,あまりにも現状を無視しすぎている.
 それはその民族の存続を,難しくさせることにしかならないだろう.

※1:阿部珠理『アメリカ先住民――民族再生にむけて』角川学芸出版,2005,p.97.

※2:渋谷謙次郎編『欧州諸国の言語法――欧州統合と多言語主義』三元社,2005,p.311.強調引用者,以下同じ.

※3:同,p.315

「ストパン」■(2010-03-27)[民族][中・東欧]誰が「民族」に属するか?
――少数民族の成員資格をめぐって


 【質問】
 アイヌ「民族」否定論者の主張を簡潔に纏めると,
「ボクちんの大好きな単一民族幻想を壊してくれる存在に対して,税金を使うな!」
ということになりそうです.
 そこで疑問ですが,
a) 少数民族の文化・自立性を認めること
と,
b) 同化政策を強力に推し進めること
とでは,どちらがコスト的に得であるか,という研究は過去に存在しないのでしょうか?
 当方の印象では,ユーゴ内戦やクルド問題などから推察するに,(a)>(b)ではないかと思うのですが,確たる証拠はありません.

 税金が!税金が!とわめく人たちに対しては,そういうコスト計算の面からの反論が最も効果的であるように思われるのですが,いかがでしょう?

謹賀新年(私信風味) - Hatena Recon

 【回答】
. 残念ですが,そのような研究が存在するかどうかはわかりません.
 特定地域に限定しての比較検討はなされているかもしれませんが,広範に扱ったものとなると…….
 日頃偉そうに語っておきながら申し訳ないです.

 ただ,幾つか言えることがあるのではないかと思います.

 まず,それは時期によって異なっているということです.
 また,近代化の進行速度によっても異なります.
 コンピュータ・シミュレーションによる最近の研究では,急速な近代化が行われ,

近代化の速度>同化の速度

という不等式が成立すると,かえって国民形成を阻害する,という説が提出されています.
(これは近代化によって国民統合を進展させようとするアプローチが,成り立たないことを示します)※1.

 ただ,これは逆に言えば,緩やかなペースでの近代化と同化の急激な促進が行われた場合,安定した国民形成が行われる,ということにもなるのではないかと思います.
 そして,日本の事例はそれに該当するのではないかと.

 また,同化しつくされ,国民形成が成功したかに見えた地域でも,最近,エスニック・リヴァイヴァルの動きがあるのは有名な事実です(ブルターニュなど).
 さらに近年,東欧では,ウェムコ人やカシューブ人※2,シレジア人などの,これまで「独自の民族ではない」と見なされていた集団が,次々と「民族」を主張しています.
 なので,一概に言うことはできません.

 ただし,ある程度まで同化が進んだ地点においては,少数民族の文化への権利を認めることは,純粋に行政的なコストからいえば割高です.
 なぜなら,そのような少数民族は,バイリンガルもしくは多数派言語のモノリンガルになっていることが多いからです.

 アイヌや沖縄はそうですよね.
 標準日本語が通じないひとは殆どいませんが,アイヌ語や琉球(諸)語が通じないひとは,多分いっぱいいます.
 そのような状況で,実生活上経済的なメリットが少ない少数派言語や文化を保全しようとすることは,コストパフォーマンスの面だけをいうなら高くつきます.
 多数派言語で事足りるのに,わざわざ少数派言語の文書や標識などを作成せねばならないのですから.
 また,少数派言語は放っておけばどんどん衰頽しますから,それに抗するためのてこ入れも必要になります.

 結果,言語維持にかかるコストは増大します.
 スペインのカタルーニャ自治州がいい例ですね.
 カタルーニャ語の保存状態は,少数派言語としては例外的に良好です――
 しかし,その維持のために,カスティーリャ語(所謂「スペイン語」)とは比較にならないほどの行政的努力を強いられています.

 要するに,こういうことです.
 「これから」同化政策を行うためには,莫大なコストを必要とするでしょう.
 けれど,ある程度同化が進んだ時点において,その状況を固定し,変えなければ,同化はゆっくりと進んでいきます.

 ただしこれは,あくまでも外見的な同化の話であって,民族意識についてはまた別の話です.
 ユーゴスラヴィア内戦以前,クロアチアのセルビア人は殆どキリル文字を用いず,ラテン文字を主に使っていたそうですが,クロアチアでトゥジマン政権が誕生し,民族主義的政策を推し進め,
「クロアチアではラテン文字のみが用いられる」
と憲法に書かれると,セルビア人たちは怒ってキリル文字を使うようになりました.
 だから,外見的差異を消し去ろうとするだけでなく,象徴的差異をも消し去ろうとしたら,大きな反撥にぶつかるでしょう.
 「単一民族」発言がそうなっているように.その意味では,同化政策のコストもまた大きなものになります.
 これは行政的なコストではなく,政治的なコストと呼ぶことができるかもしれません.

 ……うーん.纏まらないですね.

 ただ,日本の現状でアイヌ語や琉球(諸)語の振興を行おうとすれば,それは間違いなく行政的コストを増大させるでしょう.
 行政的コストだけを勘案するなら,日本語を暗黙の公用語として流通させる方が,遥かに安上がりなのですから.だからそこでコスト論を持ち出すことは,相手への有力な反論に成り得ないような気がしています.
「コストがかかったとして,だから何なのか?」
と訴えていくほかないのでしょうね.その点,

<以下コメント欄>

消印所沢 2011/01/08 20:26

 ご返事ありがとうございます.

 行政コストだけでなく,内戦などになった場合の紛争コストも合わせて勘案すると,また違った結論になるのではないかと想像されるのですが,自分で調べるのは,ちょっと無理な模様.
 〔略〕

Mukke 2011/01/16 13:02

>内戦などになった場合の紛争コストも合わせて勘案すると

 仰る通りです.
 貴兄が示唆したのは紛争のコストだったわけで,それを考えると行政面のみを強調したこのエントリは,ズレた応答になってしまっていたな,と反省しています.

 ただ,やはりそれもケースバイケースなのですよね…….
 同化政策に順応する集団も多くあったわけで(たとえばプロイセンのスラヴ系マズール人),現在それに抵抗して紛争が起きている集団の影に埋もれた,そういう集団をも勘案すると,色々ややこしいことになりそうです.

※1:山本和也『ネイションの複雑性――ナショナリズム研究の新地平』書籍工房早山,2008,pp.88-89.

※2:cf. http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/jp/news/116/news116-05.html

「ストパン」■(2011-01-07)同化のコストについて
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 反乱は政治的抑圧に対する反応なのか?

 【回答】
 反乱の主因は政治的抑圧ないし政治的機会欠如にある,との主張は,意外なことに実証的に裏付けることはできない.
 証拠は漠然としているが,独裁性は完全な民主制と同じくらい安全であり,部分的な民主制は,その両者よりも幾分リスクが高いようである.

 政治制度の変更と,その後の内戦の間には,もっとずっとはっきりした関係が見られる.
 1人当たり所得の水準が低いと,政治制度は民主制下におけるほうが,独裁性下よりも安定性に欠ける傾向が見られる.
 低所得国における民主的政治制度は,平均すると9年しか持続しない.
 1人当たりの所得が上昇すると,民主制は安定を増すのに対し,独裁制の安定性は影響を受けない.典型的には,年間の1人当たり所得が750ドル程度の水準に達すると,民主制は独裁制よりも安定的になり,所得が高水準になればなるほど,民主主義という政治制度は極めて強固なものとなる.
 歴史的に見ると,低所得国における民主主義という政治制度は,不安定性が比較的高いのが特徴であり,おそらくこれが内戦のリスクを高める役割を果たしたものと見られる.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.59-60を参照されたし.


 【質問】
 反乱は,極度の不満に対する反応なのか?

 【回答】
 不満の強さについて,効果的で客観的な測定値を見出すのは難しい.
 研究者が検討している2つの尺度は,家計所得の不平等と土地所有の不平等である.Collier and Hoeffler (2002c)によれば,所得あるいは土地の不平等はどちらも内戦リスクに無関係であるが,もし内戦が始まってしまうと,所得が不平等なほど内戦が長引く傾向にある.

 植民地時代の後遺症に関しては,同時代の名残が内戦リスクにある程度影響していると見られるものの,その関係は経済パフォーマンスに対する影響よりは弱いようである.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.60-61を参照されたし.


 【質問】
 秘密結社とは何ですか?

 【回答】
 日本で秘密結社というと世間からその存在を隠し,何かよからぬ事,多くの場合世界征服や国家転覆を企む存在と思われがちです.
 有名なフリーメイソンリー,また記憶に新しいところですと,ブッシュ前大統領が大学生時代に所属していたスカル&ボーンズも秘密結社(secret society)と呼ばれ,日本ではまるで何かの政治的な意図を持った団体のように思われています.

 しかしすべての秘密結社が政治的な目的を持ち,自分の存在を世間から隠しているかと言えば,決してそのようなことはありません.
 例えばフリーメイソンリーについてインターネットで検索をすれば,すぐに日本の大ロッジが開設しているHPに行き着くことができますし,そこで全国の支部の場所や入会方法,入会金についても知ることができます.
 スカル&ボーンズも,日本のテレビ局がのこのこと出かけても,大学側にきちんと許可を取れば何処にあるのか撮影出来ますし,またOBを含む会員名簿も見る事が可能です.
 また近年,会員の減少に悩むフリーメイソンリーは積極的に広報を行っており,建物の見学会ツアーや入社説明会も開催しています.

 そんな大っぴらに開放された秘密結社が秘密にしているものとは,その内部で行われる参入儀式(イニシエーション)であり,このような秘密結社は入社的秘密結社と分類されています
(KKKなど,政治的な目的の為に設立される秘密結社を政治的秘密結社と分類し,その特徴として目的が達成された場合には存在理由を失うため,永続する組織ではないとされる).
 イニシエーションという単語は,日本においてはオウム真理教によって良くないイメージが植え付けられているため(これには,本来の意味を解説せずに多用したマスコミにも原因があると言えますが),これだけで「やはり秘密結社とは怪しい団体だ」と決めつけられてしまうかもしれません.
 しかし参入儀式とは本来,共通の体験を元に秘密結社の構成員に一体感を持たせるもので,その起源は原始社会において行われていた,また今でも行われている通過儀礼に求めることができ,それは後に各種の密教儀式に受け継がれました.

 欧州ではキリスト教が広まったことで,この密教儀式が表側から一掃され,人々の記憶から忘れ去られました.
 やがて17世紀頃に再びフリーメイソンが表舞台で知られるようになったとき,人々はすでに忘れ去られていた未知の参入儀式に,キリスト教文明にはない新しい可能性がある事を感じました.
 それは現代で言えば,欧米における東洋への傾倒と同じものではないでしょうか.
 このキリスト教とは違う可能性に対する人々の興奮が,18世紀から19世紀に興った秘密結社ブームへと繋がったのでした.
 このような背景から,入社的秘密結社の事を「秘儀共同体」と呼ぶべきだという意見もあります.

 ただし,この秘密にされている事になっている参入儀式も,フリーメイソンリー関しては人々の好奇心の高さから,様々な暴露本や解説本が出され,少し探せば容易に知ることができます.
 しかしフリーメイソンリーは,それを殊更問題視はしていません.
 彼らにとって大切なのは,彼らの規則に基づいた儀式を信じるに値する仲間とともに行ったという,その事実こそがもっとも重要な意味を持つからです.

 なお,現在フリーメイソンリーに入社を求める人の中には,その中で行われる秘儀に過度な期待を持ったり,世界的なコネといった過大にして即物的な利益を求める人も多いようですが,大抵そのような人の活動は長続きしないようです.

 【参考文献】
・トンデモ フリーメイソン伝説の真相
・世界を支配する秘密結社 謎と真相
・秘密結社の事典

 あと,テレビ番組ですが,
・フリーメイソン:世界最大の秘密結社

寄星蟲 in mixi,2010年02月12日18:45

 澁澤龍彦の『秘密結社の手帖』もよろしく.



 【質問】
 通りすがりの,世界征服を企む悪の組織のものですが,自分たちは秘密結社に含まれますか?
 一応,川崎では秘密でも何でもありませんが.

 【回答】
 結社というより,世界征服を社是とする世界規模の企業ですかね(笑

寄星蟲 in mixi,2010年02月13日 01:46


 【質問】
 反乱の動機は何なのか?

 【回答】
 政治問題や経済問題よりは,反乱グループ固有の問題のほうが,集団的行動の問題が深刻でないため,反乱動機になり易い.
 仮に,反乱によって全員の状況が改善するということが約束されているのであれば,特に誰かが戦わなければならないというインセンティヴが失われる.
 一般化している不満なら,おそらくは小さな反乱グループの形成ではなく,大衆抗議運動に繋がる可能性が高い.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.61-62を参照されたし.


 【質問】
 レジティマシーとは?

 【回答】
 「正統性」「正当性」という意味の英語であり,人はおおむね,ルールや制度,政府などが『正統』『正当』であると考えたときには,自主的にそれに従うと考えられている.
 そのため,東大作によれば,和平プロセスの成否も,新政府なり和平合意なりについて,どれだけ多くの人に,それがレジティマシーがあると認識させることができるかにかかっているという.
 たとえばアフ【ガ】ーニスタンでは,カルザイ政権の腐敗の進行により,そのレジティマシーが揺らいでいることが,内戦悪化に拍車をかけているという.

 これに関して孟子曰く,

――――――
「法の整った善政が行われると,民はこれを畏れて悪いことをしないようになるが,徳の教えである善教がよくゆきわたると,民はこれを愛して心から従うようになる.
 善政をなせば,民がつとめて賦税を納めるから,国の財用は足るようになるが,善教を施せば,民が喜んで心から帰服するようになる」(尽心上)
――――――岡田武彦『岡田武彦全集15 東洋のアイデンティティ』(明徳出版社,2007.5.17),p.91

 【参考ページ】
東大作『平和構築』(岩波新書,2009.619)
岡田武彦『岡田武彦全集15 東洋のアイデンティティ』(明徳出版社,2007.5.17)

【ぐんじさんぎょう】,2011/10/31 20:10
を加筆改修

 「正統」ちう使い方がいいんか,ケチをつけてみます(笑

 あっしなんかは,
正当性>正統性
みたいな概念把握をしたりしますけどね.

正当性=普遍的に行なった行為や言動が正しい
正統性=権力が継続しているという点で正しい

 …字面としては,そんな感じになるわけでしてね.

 ちみに…

――――――
せい‐とう【正統】
1 正しい系統・血筋.嫡流.「源氏の―」 2 創始者の教え・学説・思想などを正しく受け継いでいること.「保守の―を自認する」 3 その時代,その社会で最も妥当とされる思想や立場.「戦争中―とされ...
――――――

 …「正統性」はこの辞書の語彙になし.

――――――
せい‐とう【正当】
[名・形動] 1 道理にかなっていて正しいこと.また,法規にかなっていること.また,そのさま.「―な理由」「―な権利」「―化」 2 実直なこと.また,そのさま.「無益の想像を繰り返すのをやめて―...
――――――
せいとう‐せい【正当性】
社会通念上また法律上,正しく道理にかなっていること.「主張の―を認める」
――――――

 政治学のレポートや論文では,この違いが議論のネタになることもありますね.
 逆の概念整理をしていたりする人もいて,なかなか面白かったりしました,昔は(笑

 例えば,自衛隊がクーデタを起こしました……
 で,一応,暫定政権の宣言をしたとしても,「民主党政権がクーデタを起こされるような政権だった」という主張があるだけで,「正統性」なんてありません.

 だけど,このクーデタ政権に文民の政治家や官僚が良く協力し,ものすごく統治能力を発揮し,民主党政権の悪いところをすべて正していきます.
 すると国民も,「彼らのやっていることは正しい」と認め,「正当性」が確保でき,ならば「彼らを正統な政権だと認める」となるかもしれません.

 というわけで,やはり,正当>正統で,レジティマシーには正当性の語を当てはめた方が,より適切ではないかと愚考する次第.
(※ご指摘に従い,修正しました――編者)

ソフトヒッター99 in mixi,2011年10月29日 21:32


 【質問】
 反乱グループの兵士はどのような者達なのか?

 【回答】
 第1に,実際に反乱活動に関与している人々の数が,社会全体に占める割合は通常は小さい.
 コロンビア革命軍(FARC)という比較的大きな反乱グループでさえ,2000人当たり1人の割合のコロンビア人しか,それに参加していない.

 第2に,反乱グループに参加する人には,若くて無教育の男子が圧倒的に多い.
 社会心理学者によれば,通常,人口の3%には精神的病質があり,実際に他人に対する暴力に喜びを感じるということである.
 ナイジェリアのマイタツィン地方では,1980年代に「預言者的」マルワによって反乱運動が組織され,8000~1万人の募兵が行われた.イデオロギー的な洗脳と宗教的教えが対象としたのはホームレスや難民である.
 彼らによる暴動で,およそ5000人が死亡した.

 第3に,ごく一般に見られる,募兵に応じる動機としては,安全性確保がある.難民が直面する飢餓や病気と比べれば,反乱グループの整備された施設は避難所を意味する.

 第4に,反乱運動の多くは徴兵も行う.
 例えばモザンビーク民族抵抗運動(RENAMO)の兵士の約80%は,徴兵によるものである.
 ブルンジの反乱グループは力によって子供を徴兵したが,それはケニアで路上生活者150人当たり500ドルで購入した少年達だった.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.62-63を参照されたし.


 【質問】
 反乱グループは,どのようにして組織の結束を維持しているのか?

 【回答】
 結束の維持は,反乱軍にとっては大きな難題である.
 法の枠外で活動しているため,通常の契約履行という手段に訴える手立てはない.
 政府は地方司令官買収によって,抵抗運動を分断することができる.これはクメール・ルージュに対して用いられた手法である.

 結束を維持するための一つの方法は,殆どの権限をカリスマ的なリーダーに集中することである.
 そのようなリーダーがいなくなると,急速に崩壊する反乱組織もある.
 例えば,アビマエル・グスマンが収監されると,ペルーの「輝ける道」は退潮した.また,ジョナス・サビンビ死後,アンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)からは大量の投降者が発生した.

 反乱組織が強制を強めるために用いる別の一般的テクニックは,募兵をリーダーの出身部族という特定の単一民族グループからに限定するのである.
 つまり反乱軍は,既存の民族性という「社会資本」を活用することになる.
 反乱リーダーが結束を高めるために,積極的に民族性を打ち出していることが,反乱軍の主張の中では民族性が顕著であり,内戦の重要な根本原因になっているように見える,もう一つの理由であろう.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.を参照されたし.

(画像掲示板より引用)


 【質問】
 反乱グループの資金調達方法は?

 【回答】
 3つの選択肢がある.既に裕福な人が反乱グループを創始する,寄付金を募る,商売を営む,のいずれかである.

 スーパー・リッチな人が時には独自の政党を創設することがあるが,そのような人ならば,場合によっては反乱さえ引き起こすことができる.
 オサマ・ビン・ラーディンはその最適例であろう.また,1994年にジョナス・サビンビがアンゴラで内戦を再開した際には,彼は世界で有数の富豪であった.

 反政府勢力の寄付金の場合,対峙している自国政府に敵対する外国政府と,富裕国に居住している海外離散者からのものが重要な財源となっている.

 第3の,反乱グループの「商売」とは,ゆすり・たかりの類や,一定の領域を軍事的に支配しさえすれば可能になる活動である.
 ゆすりは,経済的レントが大きい一次産品を生産している農村部に対して行われる.反乱グループが作物そのものを生産するわけではなく,生産に対して非公式な課税を行うのである.その好例は麻薬であり,違法なため,極めて高額である.
 また,最大のレントは,天然資源採取に由来するゆすりである.最も有名な例は,アンゴラとシエラレオネのダイヤモンドである.漂砂鉱床になっているダイヤモンドは,採掘技術が単純で,直接に採取プロセスに関与できるため,とりわけ反乱グループに適している.
 同じく,森林伐採も技術的に簡単である.
 最近特に顕著なのは,反乱グループが鉱物採掘権を事前に売却することによって資金調達を図る動きである.
 誘拐して身代金を稼ぎ出すビジネスもある.石油会社は誘拐のよくある標的であり,毎日のように誘拐被害に遭っている地域もある.
 また,外国人旅行者も誘拐の対象になっている.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.66-72を参照されたし.


 【質問】
 「紛争ダイヤモンド」って何?
 3行以上で教えて!

 【回答】
 「紛争ダイヤモンド」は,「ブラッド・ダイヤモンド Blood Diamond (血まみれダイヤ)」,「汚れたダイヤモンド Dirty diamond」「戦争ダイヤモンド War diamond」 とも呼ばれ,内戦地域で産出されるダイヤモンドをはじめとした宝石類のうち,反政府組織によって採掘されたものを指す.
(その種類はダイヤモンドに限定されないことに注意)
 ダイヤモンドの違法取引によって生じた利益は,軍指導者や武装勢力が武器を購入する費用として使われるため,紛争が長期化・及び深刻化することになる.
 罪のない人々が採掘に苦役させられることから,人道上でも大きな問題となっている.

 【参考ページ】
http://www.amnesty.or.jp/news/2007/0125_626.html
http://www.crystalfarm.jp/mineral/hunso.html
http://sanmarie.me/blooddiamond/
http://www.nihongo.com/aaa/diamond/d5others/d511funsou.htm
http://bigissue-online.jp/2013/07/17/diamond/
http://www.fragmentsmag.com/2015/03/peace-diamonds-2/

【ぐんじさんぎょう】,2016/01/27 20:00
を加筆改修

 コンフリクトフリーをうたうダイヤモンド屋さんも出ていることも書いておいて損はないでしょう.
http://www.brooch.co.jp/promise.html

ソフトヒッター99 in mixi,2016年01月28日


 【質問】
 武装勢力の武装解除は,具体的にはどのように進められるのか?

 【回答】
 「アメとムチ」を基本とし,あらゆる方面で小さな交渉による「根回し」を際限なく行うのみだという.
 以下引用.

 紛争地帯において,武装勢力を武装解除させる交渉の基本は,「アメとムチ」である.
 つまり,
「このまま抵抗を続けても,この国は変わっていくから,いずれ君達の居場所はなくなる」
と脅しをかけ,同時に,
「もし今,武装解除するなら,犯した罪は不問にする」
などの政治的なインセンティヴで譲歩する.
 アメを見せなければ交渉相手は動かない.
 しかし,これには慎重な根回しが必要だ.
 内戦中に虐殺を指揮した司令官などの場合,恩赦のやり方を間違えれば,被害住民の怒りに油を注ぐ事になりかねない.
 実は,紛争解決の仕事で派手な交渉の場面など何もなく,黒子としてあらゆる方面で小さな交渉による「根回し」を際限なく行うのみである.
 現政権の長と反政府ゲリラのリーダーが握手を交わすシーンが,メディアで流される裏には,虱を潰すような地味な努力が隠れているのである.

伊勢崎賢治 from SAPIO 2004/6/23号,p.24

 伊勢崎賢治は実際にアフ【ガ】ーニスタン等で武装解除作業に当たったベテランであり,上記文章の信頼性は高いと考えられる.
 ただし伊勢崎の信頼性には,問題もある.→more & more

 そしてまた,性急な結果を求める援助国政府によって,そうした地道な努力が評価されなかったりして瓦解することも多いだろうと予測される.

回収武器の破棄作業
(画像掲示板より引用)


 【質問】
 内戦は何故長く続きがちなのか?

 【回答】
 内戦は平均して約7年間継続する.

 長期化するのは,暴力が有効な政治戦略だということを,政府としては絶対に示唆できないため,暴力に対して譲歩することは避けたいと政府は考えるためである.自分達の目標を達成するためなら喜んで武力に訴えようと考えている集団が多い社会では,際限がなくなってしまう懸念があるためだ.

 また,仮に政府が反乱者の要求に応じることがやぶさかでなくても,合意の順守を保証できるような手段がないのである.それでは反乱グループは,もし戦闘能力を失えば,政府が合意を破棄するのではないかと心配であろう.

 さらに,複数の反乱グループが存在する場合,その要求全てを承諾するというのは,論理的にもっと不可能である.

 所得の分配が極端に不平等で,所得が非常に低い社会では,内戦はことに長引く.これはおそらく,貧困者が多い国では,反乱持続のためのコストが安いことは,そういう国では政府が弱いことが一因であろう.
 2つ3つの民族集団で構成されている社会の内戦も,長期化する傾向がある.これはおそらく,反乱者と政府の双方に対する支持のアイデンティティを鮮明にすることが容易なことが一因であろう.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.73-76を参照されたし.


 【質問】
 昔,駐在時に内戦まがいが起きて,最終的には帰国したのですが,そのときの内戦の様子がいまでも不思議です.
 というのは,昼間は経済活動(まあ発展途上国でしたが.まあ催涙弾?とかは時に発砲され,日本人営業マン涙目・・・),夜ドンパチ(外国人居住区外で)だったわけです.
 私たちは怖いながらも,そのドンパチを聞いて寝てたわけです.
 外国人狙いはないと最初のうちははっきりしていたので,安心してたところもありますが(宗教がらみだったので)
 こんな風に内戦って,時間を決めてやったりすることあるんですか?

 【回答】
 内戦に限らず,決着がなかなか付かないと,戦争はそういう風に「お仕事」と化していく.

 第1次大戦の時,戦線が膠着して戦況が固定化されたら,お互いいつも時間を決めて撃ち合ってた話は有名.
 ・・・あるとき本気出して「定時」以外に攻撃したら,奇襲状態になって楽勝!の一歩手前まで行ったが,相手も本気出してきたので結局押し返され,翌日軍使(戦闘中に軍同士の交渉をする人)が手紙を持ってきて
「ルール違反だろバカヤロウ.信じてたのに!」
って書いてあった,という話も結構有名.

軍事板,2009/07/18(土)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 なぜ内戦は再発し易いのか?

 【回答】
 内戦終結を迎えた典型的な国で,5年以内に再び内戦が勃発するリスクは約44%に達している.
 このような高リスクの一因は,最初に内戦を引き起こした同じ要因が,通常は依然として存在していることにある.

 また,暴力的な内戦は,社会における利害のバランスを変えるということが考えられる.
 内戦が,平時に有用な物を減らし,暴力だけに有用な物を増加させるということである.
 このような暴力資産の保有者は,自分の資産価値が崩壊するのを黙って眺めているはずがない.戦争で得したのだから,そこに戻りたいと思うだろう.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.76-81を参照されたし.


 【質問】
 内戦防止にはどのような方策が有効なのか?

 【回答】
 中所得国であるか,あるいは低所得ではあるが急成長している国の場合,経済パフォーマンスの加速化によってリスクを削減できる余地は,余り大きくない.
 その例外は,金融危機に伴うショックに弱い場合である.
 経済パフォーマンスの改善余地が小さいということは,リスク削減手段としては,政治制度改革をより重視するのが賢明なアプローチであるということを示唆している.
 一国が中所得水準に到達すれば,民主的な政治制度は明らかに有効であるという証拠があることも,この見方を後押ししている.
 しかし,政治制度の僅かな変化でも,それ自体がリスク要因であるため,政治制度はそもそも安定していなければならない.
 内部的に整合性のとれた制度は,自己強化的であるため,崩壊するリスクが最も低い.

 低所得国の多くは輸出収入として一次産品に依存している.総じて言えば,そういう依存は反乱リスクの高さ,統治のまずさ,および経済パフォーマンスの不振と関係がある.
 一次産品輸出は,4つのルートを経由して内戦リスクを大きくする.反乱者に対する資金供与,統治における腐敗の増加,分離独立のインセンティヴ増大,およびショックに対する脆弱性増大がそれである.
 このような問題はいずれも,天然資源賦存との共存が容易になるような政策によって対応が可能である.

 貧しいけれども平和な国には,総じて低成長という特徴が見られる.
 高成長は内戦リスクを削減する.
 3つの手段(国内政策,国際援助,およびグローバル市場へのアクセス)が成長率引き上げに有効であることに関しては,だいたいのコンセンサスができている.

 最大の民族グループが人口の過半数を占めているが,少数民族グループもたくさんあるという状況は,内戦リスクを高める.この民族的優勢のリスクを抑制するためには,政治的な解決が必要であろう.
 一つのアプローチは,個人の権利を保障することである.そうすれば各人が民族的優勢の個別事例に対して挑戦することができよう.これは主として先進国で採用されているアプローチである.
 例えば,スイスは民族的優性という点では典型的な例である.人口の75%がドイツ系,残りはフランス系とイタリア系の少数派で構成されている.
 スイスは徹底した分権化,多言語教育,および民族別割り当てという3つの工夫によって,少数民族の権利を保障している.
 逆に,多数民族が少数民族よりも大幅に貧しい場合は,グループの権利は多数派に注目することが必要かもしれないが,少数派に警戒心を抱かせないような方法でなければならない.
 有効なアプローチとしては,グループ間の再配分について長期的な戦略を明示することであろう.
 明示的な政策の利点は,少数民族の懸念を抑制する一方,多数民族に対しては彼らの懸念事項についての対応策が取られているということで安心させることができる.
 この好例はマレーシアである.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.112-128を参照されたし.


 【質問】
 内戦を終結させるには,どのようにすべきか?

 【回答】
 大きな反政府勢力のリーダー層ともなると,内戦で裕福に暮らしている.
ときには,リーダー達はまさしく巨額の富を蓄えている.内戦がそんなに美味い話しであれば,反乱者達には和平合意を達成しようというインセンティヴが全く沸かないだろう.
 反乱者の資金調達路を絶つには,
・反乱者の一次産品市場アクセスを抑制する
・反乱グループによる海外離散者からの資金調達を抑制する
方法が挙げられる.
 前者は例えばカンボジアで,後者は例えば北アイルランドで,内戦終結に貢献した.

 国際介入は,それがあった内戦は平均よりも長期化しない,という程度の効果はある.

 内戦が和平合意で終結する可能性は,国際戦争がそうなるよりもずっと低い.
 1940~90年の国際戦争を見ると,その55%は交渉のテーブルで終結しているが,45年以降の内戦で,平和条約調印で終結したのは30%未満でしかない.
 Walter (1997, 2002)の主張によれば,交渉による解決に到達する確率が低いのは,平和条約の条項の履行を確約した第三者が,信頼できる保障を提供できないためである.
 その他の説明も可能で,例えば狭量,組織上の惰性,希望的観測,および意思疎通の不良など幾つかある.
 必要なのは,外部による和解か,あるいは,平和が自立的に実現されていくような和解のいずれかとなろう.

 詳しくは「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.128-137を参照されたし.


 【質問】
 歴史上,専制的な王国って山ほどありましたけど,失敗したり安定したり,様々ですよね?
 社会主義・共産主義も実質的な専制に走りやすいんですけど,それがことごとく失敗しているのは何故なんでしょう?
 それとも,認識が間違っている?

 【回答】
 古代や中世,近世のまでの他民族国家や帝国の場合,中央集権と地方自治がバランスよく機能すると安定する.

 一方,近現代の社会主義陣営にありがちだった超中央集権国家の場合,政府なり軍隊なり警察なりの権力が強すぎて自家中毒起こしたり,暴動起こす気もなくなるくらい統制がきついと,社会全体に倦怠感が沸いて,根性一本槍な気風が蔓延する.
 共産主義社会建設ってのと資本主義陣営との対立,そして国内への締付けのスリーカードは,住んでる人間からすりゃ笑いたくなる程地獄らしいお.

世界史板


 【質問】
 たとえば,南極で「アルカイダ原理共和国」を建国宣言しますよね.
 で,南極基地の各国の軍人や民間人を殺しますよね.
 それに対抗する手段は,各国の軍にはあるんですか?
 戦車や自走砲は凍りついて使えない,歩兵は凍死てんじゃ,地上軍は出せないんじゃ?

 【回答】
 その「原理共和国軍」の装備はなぜ凍り付いたり,人員が凍死しないんだ?
 ぽっと出の新興勢力が実現可能な程度の寒冷地装備なら,南極観測隊を派遣するような国なら余裕で実現可能ってか装備済み.

 米ソ冷戦期には北極で激突ってオプションもあったんだから,極地戦部隊もあるし,ノルウェー,アメリカ,ロシアのあたりは寒冷地に駐屯地が有る.
 従って,それらの駐屯地の部隊が派遣されるのではないだろうか.

 船については砕氷艦もある.
 ちなみにイギリスの場合,フォークランド諸島に1隻,警戒に張り付いている船がいたはず.
 そこらがまず向かうんじゃないでしょうか.

 アルカイダも大人数はまず送り込めないので,オーストラリアとかディエゴガルシアとかそこらを基地に,砕氷艦とヘリで各国観測基地の人員を救出しながら,航空偵察で活動を把握し,沿岸部にでてきたところを打撃する方向で対応できるはず.

軍事板
青文字:加筆改修部分

そもそも,これだけ基地があっては,気づかれないように国家建設しようとするだけでも一苦労かと.
(画像掲示板より引用)


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