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(画像掲示板より引用)

 【link】

「CSM」◆(2012/07/11)Gunboat diplomacy on a rebound?
(砲艦外交の復活?)

「FSM」◆(2009/08/04) EBO(Effects-Based Operations)
 新種の「エアパワー万能論」について

「FSM」:EBOの評価

「FSM」:EBO補足

「FSM」:シー・パワー 海軍の役割

その1

その2

その3

「FSM」:うみシリーズ ~リハビリ 約束の地を目指して~

Historic Naval Ships Association(英語)

「JIIA」◆(2012/10/08) 海洋の安全保障;エアシー・バトルとオフショアコントロール
http://www2.jiia.or.jp/pdf/research_pj/h24rpj03/report-yagi-20121008.pdf

Rank insignia

Special Warfare Net Database

「Strategy Page」◆(2013/04/05) LEADERSHIP: Why Armies Do Not Trust Air Forces
 なぜ軍隊は空軍を信頼しないのか?

「Togetter」◆(2011/10/15) 戦争序盤の航空撃滅戦について

海を往く者

 サイト主は過去に海外(イギリス)勤務経験があり(現在日本在住),海運業従事者です.
 海運業の立場から見た海洋(資源利用)政策や海上安全保障などについて,(イギリスを含めた海外の様々な仕組みについても)書かれています.
 この記事はそのままFAQとして使えると思います.

――――――H8 in FAQ BBS,2010/2/21(日) 13:38

海上防衛学入門

基礎講座 no.1 ミリタリーシンボルの解説

●書籍

『エア・パワー その理論と実践』(石津朋之,立川京一,道下徳成,塚本勝也編,芙蓉書房出版,2005/6/10)

――――――
 本書は,芙蓉書房出版の「シリーズ軍事力の本質」の第一巻として2005年に刊行され,翌年には「シー・パワー」,さらに翌年には「ランド・パワー」とシリーズが続いている.

 手にとる前は,本書について,エア・パワー,いわゆる航空戦力について,体系的に説明した教科書的なものと想像していたのだが,実はそうではなく,研究者たち10名による10本の論文集という形をとっている.
 この中には,2名の現職航空自衛隊幹部も含まれている.

 体系的な教科書のようなものではないと言ったが,これら10本の論文を通じて,エア・パワーの萌芽から発展の歴史,その本質,戦略と運用思想の変遷,さらに今日における特性などが,トータルに網羅されており,エア・パワーについて学ぶ,あるいは考察する人にとって,入門書的に読み進めることも十分できるかもしれない.
 また,自衛隊におけるエア・パワーの発展態様ならびに意義等についても触れられている.

 ただし,あくまでこれは研究者による論文集であって,入門書や教科書といった目的で書かれているわけではなく,さまざまな用語や概念について,文中にも簡易な説明はされているものの,やはり航空戦力,とりわけ空軍について一定程度の基礎知識があることが前提されている.
 そのため,この分野に初心の方々については,読み進めながら適宜に他の資料を参照しながら,エア・パワーたるものの概念をざっくりと大きくとらえるようにされればよいと思う.

 また,現職航空自衛官をはじめ,既に一定程度の知識,概念理解を得ている方々については,これら論文集を読みながら,あらためてそれら知識を体系づけ,さまざまに自ら思索を深めることができると思う.

 加えて,いま述べたような防衛関係者あるいは研究者,そしてそれを志す人々に限らず,本書は,政治に関わりあるいはそれを志す,あるいは研究する人々,広く国際関係,安全保障を学ぶ人々にも,きわめて有益な知見を提供すると思う.
 むしろ,そういう人々に広く読まれることを期待したい.
 そうしたことが,我が国においても,いわゆるシビリアン・コントロールの質を高め,また国家としての軍事的リテラシーとでもいったものを高めることになるだろうと思うからだ.
 軍事力の(もちろんプレゼンスを含めた)適正な使用は,ただ軍事専門家たちの研鑽努力だけで全うすることはできない.

 軍事力というものが,外交,国際政治において常に重要なファクターのひとつであることは言うまでもないが,一方で,そうした向きへの好適書は,我が国においては稀少だ.
 軍事力という中においても,今日ますますその重要性が認識されつつあるエア・パワーについて,マニアックにはしるのではなく,その本質について考え,理解するには,本書はまさに好適といえる.

 各章について,簡単に紹介すると,

1章は,エア・パワーとは何か? そしてその発展の歴史について概観されている.

 2章,この道では知らぬ人はいない名前のひとつ,初期の航空戦略の提唱者,ドゥーエの思想について概説されている.
 ここでは単にドゥーエの思想をただそれとして知るというだけではなく,「制空」「戦略爆撃」「ターゲティング」といった,エア・パワー運用における基本的な概念について知り,考えることができるだろう.

 3章では,戦略爆撃思想の変遷が述べられる.

 4章は,海軍におけるエア・パワーの発展の歴史が描かれている.
 加えて,個人的には,あらたな革新的運用思想が組織に導入される際の,その後の発展を左右する組織デザインのあり方という点で,米英両海軍の比較考査がたいへん示唆に富んでいたと思う.
 また,今後将来にわたる,空母機動部隊の有効性についての議論も,個人的には大いに関心しているところだが,本論文でも末尾に若干触れられている.

 5章において,我が国陸海軍における航空運用思想の変遷が記されている.

 自衛隊については6章だ.
 そのエア・パワーの建設,発展の歴史が概説されるとともに,時代々々における我が国の防衛思想と併せて記述されており,よく整理されていてたいへん理解しやすいと思う.
 また,冷戦期において自由主義陣営の一員として日本のエア・パワーが果たした役割についての指摘は重要であると思う.

 7章,エア・パワーと言って,米国を論じないわけにはいかない.
 大戦後の米国におけるエア・パワーの建設,発展の様子が本章で概説される.
 あくまで概説であるので,たとえばベトナム戦における米空軍の蹉跌であるとか,湾岸で脚光されたワーデン大佐の重心理論等について,関心に応じて類書にあたることになるだろう.

 8章では,現代の動向として,特に湾岸戦争とコソヴォ紛争を題材に考察がなされている.
 湾岸戦争については我が国においても幾多の書物が出ているが,コソヴォについては案外注目されることが少ないように思う.
 しかし,軍事関係者のみならず,あるいはむしろそれ以上に,政治家や外交関係者,国際政治分野の方々にとって,コソヴォ紛争から得られる教訓は多いと思う.
 また,軍事関係者にとっても,ことによるとエア・パワーのある種の限界について,コソヴォについては研究すべき点が多いだろう.

 前章のコソヴォとも関係するが,9章はたいへん興味深い.
 テーマは,今日の非対称戦における,いわゆる弱者側にとってのエア・パワーについての考察である.
 強大国による一方的なエア・パワーの行使に対して,弱小国はどのように対応し得るかということだ.
 筆者は,英ロンドン大学キングスカレッジのフィリップ・セイビン氏ということであるが,英国参謀大学では氏の提唱により現に「演習・弱小国」という講座が開設されているとのことである.

 10章は些か趣をかえて,軍事ドクトリンという概念とその意義について考察されている.
 考察の題材としてはエア・パワーが使われているが,そもそも,この問題は独りエア・パワーのみにおけるものではなく,広く軍事力全般の整備運用について重要なものであろうと思う.
 ドクトリンがその軍の装備,訓練から実際の運用までの全過程において与える影響は計り知れない.
 我が国においても,こうした点が広く認識され,研究と適用が進むことを願ってやまない.

(Shu UETA)

――――――おきらく軍事研究会,平成20年(2008年)11月14日

『海戦 (Truth In Fantasy 84)』(世界戦史研究会著,新紀元社,2011.2)

 新紀元社 Truth In Fantasyシリーズ84巻に「海戦」が上梓されました.
 シリーズの作風からして,古代~近世あたりまでの諸海戦を網羅しているものと思いきや,第二次大戦まで言及してます.

 とりあえず読みやすいので,簡単に理解する分には向いてますが,空母赤城「号」のような,従来普通に読んでる歴史書では,まずお目にかかれないような表現が,そこここにあるのはちょっと戸惑うでしょう.

――――――ゆうか ◆u8WC078ef5ch :軍事板,2011/03/14(月)

『海洋戦略入門』(ジェームズ・ホームズ著,芙蓉書房出版,2020/09/10)
http://okigunnji.com/url/97/

 こんにちは,エンリケです.

 「目の前にある仕事」以外のことには口をつぐむ.
 これは海軍の体質で,すべての現代海軍が抱える問題を示しているとされます.

 その体質をブレイクスルーするため,米海軍では,戦略的な優位を成し遂げる行動指針を明らかにし,話し合うための「共通の基準」(大局観と語彙)を必要としているそうです.

 今の若手士官は,自分の公私の振る舞いがもたらす戦略効果を無視して生きることはもはやできません.
 いまや海軍若手士官は,自分の関わる「戦術レベル」の動きが作戦レベルにどう貢献するのか?,戦略レベルの目的に合致しているのか?について早く意識することが望ましい時代です.
 また,こういった意識を持たず,戦略レベルの理解が不十分なままだと,「戦略レベルに貢献しない作戦」を立ててしまう可能性が高くなります.

 これが海軍初級士官,官僚,学生を対象に記された,マハン,コーベットなどの大家による議論を中心に,海洋戦略を総合的に学べるこの本の生まれた背景です.
 なぜプロの海軍軍人に,海洋戦略の入門書が必要なのか?という問いへの答えです.

 ちなみに海洋戦略の世界では,マハンとコーベットを超える理論家はいまだ登場していないそうです.

 ここまで海軍の話として書いてきましたが,大きく見ると一般人も同じではないの?と思った方は,私だけではないはずです.

 海洋戦略の見取り図を提供してくれるこの本は,
海の地政学とは?
海洋国家とは?
シーパワーとは?
という海洋国家としての根幹の疑問が生まれたとき,まず最初に読むべき本です.

 というのは,いまの国際情勢は,海を舞台に展開されており,海洋戦略の基本を学ぶ必要はすべての方に求められるからです.
 海洋戦略の理解は,いま生きる我々の共通言語だからです.
 学校を出たばかりの海軍初級士官,学生,官僚,ビジネスマン向けに簡潔・凝縮・簡明に書かれたこの本は,その目的にぴったり合っています.

 地球表面の7割は水です.
 8割の人々は水辺で暮らしており,交易の9割は海上輸送されています.

 わが国は,国益がシーレーン,漁場,海底の天然資源採掘など,の安全に依存している島国です.
 わが軍事戦略の大半を占めるのは海洋戦略であり,わが自衛隊が戦略的競争を展開する場のほとんどは,本質的に海洋的な場所です.

 そのうえいまの国際情勢は,海を舞台に展開されています.

 ですから,すべての軍人は海洋戦略の基本を学ぶ必要があります.
 海洋戦略の理解は,三軍が統合作戦で共に戦うための共通言語だからです.
 海上における統合・共同作戦を円滑に動かして力を発揮するための潤滑油が本著といってよいかもしれません.

 重要なポイントとして海洋戦略,シーパワー,港湾・海軍基地,心の地図があります.

海洋戦略

 海洋戦略とは,アクセスについての術(アート)と科学(サイエンス)であるとされます.
 その目的は遠方の地域で流通と消費を可能とすることにあり,交易と通商は海洋戦略の鼓動する心臓といわれ,通商のためのアクセスが至上の命題となります.
 地上・航空戦略と違うのは,「平戦時ともに機能する」という点です.

 キーワードは「資源・輸送・情報・支配」です.

 しかし我が国の人々は,どういうわけか「海に無知」で,こういうことに目を向けません.
 そもそも,あまりに海が身近すぎて「海とは何か?」を考えたことがないからかもしれません.

 その結果,
「海の区分」
「領海・接続水域・EEZ・公海」
「海洋は海洋公共財のまま」
「国連海洋法条約」
「公海航行の自由は分割できない」
「北極海航路が持つ意味合い」
といった海をめぐる感覚を知らずわきまえていないから,いま「公共財としての海洋が縮小する動きが出てきている」という最大の問題が起き始めていることに理解が至っていないように思われます.

シーパワー

「シーパワーとは,「生産」「海軍及び商船隊」及び「市場(植民地)」の3つの連鎖である」(A・S・マハン)

 シーパワーは「生産(通商,産業)」「海軍と商船隊(艦船,海運)」「海外市場(港湾・基地)」を総合する連鎖の循環のことをいいます.
 海軍はシーパワーの一部に過ぎません.

 シーパワーの生みの親マハンは,「シーパワーは国家の活力の根元」ともいっています.
 真の海洋大国は,シーパワーの連鎖を構成する3つの要素のすべてを自ら賄います.

 シーパワーは「通商」「艦船」「港湾・基地」の三要素の掛け算としても表現され,どこかの要素をおろそかにすると国家の繁栄を危うくするという点で非常に重要です.
 いずれかの要素が0になると,シーパワーは0になってしまうのです.

 シーパワーは「公海へのアクセスの利便性」「喫水が深い港の数・場所に恵まれる」「海岸線の長さ」といった「不変の自然条件」が基盤となっています,

 ちなみに現代は「地上に基盤を置いたシーパワーの時代」であり,戦闘艦隊,海軍の独壇場ではなくなっています.

 シーパワーの力を決めるのは「その国のビジネスに対する姿勢」であり,シーパワーと通商(ビジネス)は不可分一体と言えます.
 そのため「商業を軽蔑する社会」は,シーパワーに対する「国民的資質」をほとんど示しませんでした.
 シーパワーを動かし続けるには,国民啓蒙を含めた賢明な国政運営が必要だ,ということなんですね.

 この面で考えると,どうもわが国には「金儲けを卑しむ「ビジネス,商業蔑視」」の感覚が強く,これが,海国であるにもかかわらず,海洋戦略やシーパワーへの視座をあまり感じない理由かもしれません.
 わが国がなぜ,地上国境を抱える国と同じような戦略発想しかできないのか?
 少なくとも,林子平が「六無斎」にならざるを得なかった江戸時代からは続いている問題のように見えます.
 いや,水軍=海賊ともいうべき発想が生まれてくる背景を考えると,もっと昔からでしょうか.
 非常に根が深い問題かもしれません.
 深く知ってみたいですね.

 本著では「自由主義政体」と「専制主義的政体」で,シーパワーの建造管理にどのような違いがみられるか?というテーマも取り上げられており,興味深い結果を提示してます.

 けっきょくのところ,通商や海上戦に対する海洋国家の政策は,海軍を設計して建造・維持するには特別な産業が必要といった面や,海運事業に人々を集めるという点でも社会に広く大きなインパクトを与えるわけです.

 政府が防衛に金を出さないのは16世紀のむかしから同じようですが,国がシーパワーに必要な資源を注げない原因は「その国の文化」にあり,国民の性格を刷新することが緊急の事業なのかもしれません.

 なおこのテーマは,わが国だけでなく,現代の米をはじめとする主要国が,海洋事業に向けた国民の気風を保つことができるか?という大きな問いとして成り立ちます.

港湾・海軍基地

 港湾は,本国の生産者と海外市場に商品を運ぶ運送業者の接点であり,海外の販売者と本国の購入者の接点でもあります.

 港湾はそれだけで生産と消費の原動力となり,「アクセス」という価値を生みます.
 港湾の数,能力,能率は,生産,流通,消費の有用な測定基準となっており,港湾とそれに連なるサプライチェーンは,海外市場における商品需要を満たすうえで極めて重要な存在です.

 ただ,港湾を作ることはそう簡単なことではありません.
 また,孤立は港湾の価値を低下させる要因となることに注意が必要です.

 なお海軍根拠地が持つ軍事的戦略的な価値は,「地理的位置」「防御力」「資源」「海軍基地」から成り立っています.
 なかでも,社会・政治的な機能不全は海軍基地の「場所の価値」を低下,もしくは完全に無効にすることを忘れないようにしたいですね.

心の地図

 オバマ政権時のクリントン国務長官はメルカトル図法で惑わされた,というケーススタディに代表される「地図による認知のゆがみ」は,非常に重要な視点ですが,あまり深く掘り下げた話を聞きません.
 心の地図が人によって違うことや,国家の文化の一部を構成している面があるからかもしれません.

 地上の常識と海の常識は違っており,これが,海洋戦略と地上・航空戦略の違いを生んでいます.
 では何が違うのか?について著者は,「心の地図による誤解」と表現し解説しています.

 海と陸はまったく違う特性を持つ別個の領域として扱う必要があります.
 陸の兵士が山や丘,隘路や高所といった視点から考え,パイロットや潜水艦乗りは三次元で考える,など,発想の根元から異なるんですよね.

 地理的環境に精通することが,競合を前提とする各種事業計画を成功させる必要条件であることは確かなようです.

 個人的に響いたのは,「制海をめぐる戦い」で取り上げられていた以下の点でした.
・より強力な側のオプションと自らの劣勢を克服せねばならない側のオプションの違いとは?
・キーワードとなる「防勢」は,急場をしのぐ方法
・防勢の強さと本質は「反撃」にある.
 著者のジェームス・ホームスは海軍士官で,どちらかといえば「うるさ型」の人のようです.
 略歴は次のとおり.
ジェームズ・ホームズ
 1965年生まれ.
 米海軍大学J.C.ワイリー海洋戦略講座教授.
 バンダービルト大学の予備役将校訓練課程(ROTC)卒業後海軍士官に任官.
 戦艦ウィスコンシンに砲術士兼応急士として乗り込み湾岸戦争に従軍.
 復員後,海軍の勤務と並行して国際関係論の修士号(MA),国際安全保障及び戦略研究の学位(Diplomat),数学の修士号(MA),法と外交の修士号(MA),国際関係論の博士号(Ph.D.)を取得.
 2002年からジョージア大学で教鞭をとり,2007年から米海軍大学の准教授,2017年から教授.
 25冊以上の著書があり,本書のほかに『太平洋の赤い星』(バジリコ 2014年)が邦訳されている.

 前米国防長官のマティス海兵大将は「うるさいやつ」,元米海軍作戦部長のハワード海軍大将は「波風を立てる男」と氏を評しているそうですw

 インド太平洋地域に強い関心を持っており,とくに中共への関心が強い方ということです.

 本著ではマハンの言葉を多く引用されてますが,けっして無批判なマハン信奉者ではありません.

 翻訳を担当されたのは,平山茂敏さんです.
 略歴は次のとおり.
平山茂敏(ひらやま・しげとし)
 1965年生まれ.
 防衛大学校防衛額教育学群教授(戦略教育室).
 防衛大学校卒業後,海上自衛隊で勤務.
 英国統合指揮幕僚大学(上級指揮幕僚過程)卒業.
 ロンドン大学キングスカレッジで修士号(MA)を取得.
 防衛学修士.
 護衛艦ゆうばり艦長,在ロシア防衛駐在官,海上自衛隊幹部学校防衛戦略教育研究部戦略研究室長などを経て現職.
 訳書に『アメリカの対中軍事戦略』(監訳,A.フリードバーグ著,芙蓉書房出版),『現代の軍事戦略入門』(共訳,E.スローン著,芙蓉書房出版)がある.

 訳書の前2著はいずれもご紹介したはずです.

 正直言うと,肌が合う訳者さんです.
 担当された本はすべて面白く興味深く,再読すれば再発見があり,ためになっています.
 今回もそうで,これからもそうなる予感がします.
 注目の訳者さんです.

 ご紹介している『海洋戦略入門』は,まさに海洋戦略の入門書です.
 海洋国家にとって好ましい循環とは何か?を解説する本です

 海洋国家にとって好ましい循環について,「シーパワーの作り方」「好循環を維持する方法」「海軍はなにをするのか」の三章で解説しています.

 では中身を見ていきましょう.

■目次

第1章 シーパワーの作り方
 海とは何か/シーパワーとは何か/誰が正しい素質を有しているかを測定する:マハンの「シーパワーの要素」

 この章では,「海とは何か?」「海洋における協力・競合の相互作用」「シーパワーとは何か?」について書かれています.

第2章 好循環を維持する方法

 本国と海外の商業海港/本国と海外の軍港/軍港の候補者を評価する:君たちの地図を見よ/船舶:商船隊/艦艇:海軍/海に対する戦略的意志

 この章では,シーパワーの循環(作って,運んで,売る)をいかに回し続けるか?について書かれています.
 「軍港の問題」「シーパワーを支える商船」「海軍について」「艦隊に命を吹き込む戦略的意志」などへの言及があり,最も重要な章といえます.

第3章 海軍はなにをするのか
 戦略の不変性/外交的役割/警察的役割/グレーゾーンにおける警察的役割と軍事的役割の協力/軍事的役割/特別な例:「累積」作戦/トラブルメーカー戦略:分遣隊による戦争/新しくつくられた古いアイディア:接近拒否と領域拒否/マキャベリの警告:文化に気を配れ

 この章では,シーパワーの要素の中で最も目立つ「海軍」について「海軍が何をなすべきか?」という視点から論考されています.
 おそらくあなたが一番興味をひかれる章でしょう.
 キッシンジャーの核抑止理論からはじまり,わが国もなじみ深い,ケン・ブースの「海軍の3つの役割(外交的役割・警察的役割・防衛的役割)」の解説もあります.
 著者はここで軍艦が発するメッセージを活用する外交的役割が最も重要としています.
 海洋サプライチェーンの流通の輪を「守り奉仕する」ことが警察的役割としています.

 軍艦は存在そのもので意図と決意を意味します.
 海軍力の展開や兵器は目に見える戦闘能力です.
 平時の武力誇示が印象的であればあるほど「敵に投げかける影」は長く暗くなるのです.
 わが武力誇示が敵に投げかける影が長くなればなるほど我が国は安全になり,逆になると我が国は危険になります.

 また,わが国にとって身近な,同盟に潜む「見捨てられ」「巻き込まれ」の問題,グレーゾーン問題に関する考察も興味深いです.
 グレーゾーン問題については中共・ロシアの手法,軍事的役割の本質とは何か?という観点から考察されています.

 国家が,ある海路の支配に「もっとも確実な繁栄」を見出した場合,互いにそれを支配するために争うことになるのは国際関係の鉄則です.
 わが国と韓国(中共?)はその関係にあります.
 海洋をめぐる優越競争は,主として海軍の優越いかんであり,部分的には決定的な位置の占有次第となります.

 中でも興味深かったのは,中共に関する記述です.
 中共の海洋進出の本質(P182-188)や,中共の窮状をめぐる分析が面白かったです.
 地勢的に見て,西太平洋とインド洋へのアクセスが阻止されている中共は,長い陸上国境を接していることから,つねに海洋への志向から注意をそらされる宿命に置かれています.
 また,大国のはざまという,戦略的に見て比類なく厳しい場所に置かれています.
 中共は,封鎖に対して脆弱なままの状態にあるのです.

 昨今の南シナ海問題は,世界覇権を中共が握るか否かの試金石,という面があります.
 この問題の危険性を軽く見てはいけません.
 南シナ海でルールが変わると,全世界に影響が及び,中共が全世界で発言力を拡大する可能性が高まります.

 ロシアやイランの動きともつながっています.
 米英わが国などの海洋国家諸国ががはるばる現地に出向く理由はそこにあります.

 海洋国家としての視座があれば,中共の南シナ海における異常な振る舞いに,英米等の海洋国家諸国が敏感に反応している理由はすぐにわかります.
 それにしても,根無し草だったカルデンは,中共に居場所を得たようですね.

 中共の戦略は,国内問題を地域,世界の問題の上に置く傾向があるとされます.
 大陸国家に共通して見られる特有の傾向かもしれません.
 たとえば「接近拒否,領域拒否」という言葉がにぎやかですが,これは別に新しい概念ではありません.
 この概念については219ページで解説されています.

 また中共は,大量の商船を維持し,戦時に簡単かつ迅速に商船を改装するため,商船を軍用規格で建造することを要求しています.

 ちなみに,国有の商船隊は,海洋戦争の要求,困難,リスクを軽減する戦略となる「ヘッジ」をかけます.
 戦争が起きたとき商船と乗員は,海軍と海運という二つの機能を果たすことになるのです.

 中共が言っている「第一列島線」「第二列島線」の意味もよくわかります.

 忘れてはいけない大国・インドについても興味深い話があります.
 海洋戦略的に見て理想的なインドの戦略環境はなぜ混乱しているのか?
 その答えは「中共との陸上国境」です.
 中共への備えに回すため,シーパワーに大規模な資源投入ができないのです.
 地上国境を抱える国の戦略は,隣国の動向に左右されるということです.

・分散された商船隊は,回復力に富んでいる.
・分散は持続力を与える.
・リムランドは海と大陸内部の中間地帯のこと
・専門家でも,将来の敵の戦闘能力を計測することは困難.
・効率性の追求は,戦略的な危機を招く
・海で暮らすものは,自らの外交的手腕に磨きをかけることこそふさわしい.
・小規模編成でも,海軍全体の代理人として機能できる
・戦闘艦隊から与えられる防御の上に,沿岸部隊は海を護っている.
・古典からいかに学ぶか?のアイデアを海洋戦略論のエッセンス紹介を通じて提供してくれる本
・充実した注釈が,ブックガイドや参考書・辞書的存在として役に立つ
・地中海とカリブ海は似ている
・大東亜戦争における帝国海軍の失策の数々が取り上げられている
・機動展開,戦闘艦隊等の解説を通じ,総予備への視野が開ける
・戦闘能力の過大はそれ自体危険であることがわかる
・潜水艦は主力艦なのだろうか?
・沿岸警備隊が強力な装備を保有している理由
といったことも描かれています.

 米海軍,米のシーパワー,海洋への目を把握するうえで参考になる記述も多々あります.

 たとえば,,,

・米には欧州に向かって東を向く自然の傾向がある.
 パナマ運河創設により,東を向く傾向があった米ははじめてカリブ海に南面し,その後,西の太平洋に向かった.

・パナマ運河を狙ってカリブ海とメキシコ湾に海軍基地を建設されることをマハンは懸念した.

・パナマ運河は米海洋戦略の障害といえる.

・横須賀と佐世保,バーレーンのマナーマは外地にある米の母港といってよい存在.

・米にとってハワイが持つ意味の大きさ.

・米海軍両洋艦隊の基準とは?
 この本をよむまで,海洋戦略とはどういうものか?が雲をつかむようで手につかめていなかった
 海と陸はなぜなじみあえないのか?
 感覚が違う.

 その理由がわからなかったわけですが,この本を読んで,平戦時問わず動き続ける海洋戦略,シーパワーは海洋国家の生きるすべ,国家戦略そのものであり,ドンパチの話は欠かせない要素だが,それがすべてでは全くなく,むしろビジネス(通商)のほうが重要な要素であることがわかりました.
 海洋戦略の見取り図がハッキリ見えるようになり,海軍がその一部に過ぎない「シーパワー」の意味がつかめ,見る地図の違いが生み出す根本的な差異がわかりました

 大陸の発想と海洋の発想のどこがどう違うのか?を掴めました.
 陸と海は相互依存,共生関係にある.
 戦略的な地理には需要と供給の関係がある.
 テクノロジーが海と陸の間の相互関係に新生面を開いている.
 シーパワーは海軍や海上だけで維持できるものではない.
――ということがわかりました.

 地理経済学,水路測量学といった,興味深い学問の存在を知りました.
――などの気づきがありました.

 また,わが国は海洋国家であり,海から国を考える姿勢が不可欠ということを改めて覚えた.
 この本により海から世界,日本をみるきっかけが手に入りました.

 経済的利益は海洋戦略の主たる目的であり,その原動力でもあることがよく理解できたから,ビジネス,通商等への関心をもっと広げ深めてゆきたいと感じました.

「自由主義的政体と専制主義的政体ではシーパワーの建造と管理にいかなる違いがあるのか?」
という大きな問いに対する貴重な知見を得られました.

 「陸対海」という二項対立でものごとを考え見るのではなく,海洋国家としてのわが国,という立場から防衛や国防安保,軍事を見てゆく基礎が培えました.

 著者は,本著を通じて,海の武人,学者,ビジネスマンが自らのキャリアを通じて戦略とその歴史を学び,本著を批判的に読んで海洋戦略に関する独創的なアイデアに発展させてほしい,と望んでいるようです.

 海国日本で生きるために必須の知性「海洋戦略という発想」を身につけ手に入れるきっかけとなる格好の書.
 軍事戦略だけでなく,商船・商業港湾など「公共財としての海」をめぐる戦略まで幅広く取り上げた総合入門書.
 戦闘能力を伴わない海軍外交家の言葉には何の重みもない,という現実感覚に重みを与えてくれる戦略書.

 海洋戦略の双璧マハンとコーベットを中心に,ワイリー,リデルハート,ウェゲナー,ルトワック,ブース,ティルなどの戦略理論にまで言及したこの本は,すべての戦略理論を網羅せず,戦術談議を排除し,マハンやコーベットの理論の縮刷版でも要約版でもなく,一生かけて学ばなきゃいけない「戦略学習」の入り口にいざなってくれる魅力を与えてくれる本なのです.

 よむべき戦略書籍に終わりはありません.
 もっといえば,戦略理解はできるものではなく,その研究に終わりはないのです.

 ちなみに戦略とは,勝利のマニュアルやアルゴリズム,チェックリストをまとめることではありません.

追伸
 石原さんの「漫画 マハンと海軍戦略」と合わせて読むと面白いです.

------------おきらく軍事研究会(代表・エンリケ航海王子)
http://archive.mag2.com/0000049253/index.html
2020.10.

『三千年の海戦史』(松村劭著,中公文庫,2010/8/21)

 微妙な出来だなと思った.
 事実誤認とし思しきは,ガレオンに衝角が付いてたり,極東の軍船は帆走メインで,漕走は亀甲船以外無いとか.
 あと,長距離砲戦主義という結論が先走ってる感じで,当時の火砲技術の低さを無視して,過去の事象を批判してる気がする.

 細かいが,亀甲船をやたら持ち上げてるのは不思議だ.
 参考文献見ると,朝鮮の役関係だけ妙に多い.
 いや,その他,機密資料となってる文献がもっと多いのかもしれんけれど.
 旧軍以来,日本はわりと李舜臣ファンが多い気がするが,その辺関係するのかしら.

------------軍事板,2012/03/11(日)

『シーパワーの世界史』全3巻(青木栄一著,出版協同社,1982)

 けっこう面白かったです.
 十六世紀から十九世紀までの一巻(海軍の誕生と帆走海軍の発達),
第一次世界対戦までの二巻(蒸気力海軍の発達),
そして戦間期ならびに第二次大戦の三巻
…はまだ出てません.
 というか,多分三巻は出ないでしょう.
 二巻が出たの昭和五十八年ですし.
 二巻では,各国海軍の発達史が初心者気味な自分にはありがたかったです.

------------軍事板,2002/10/25
青文字:加筆改修部分

『水軍の日本史 上 古代~源平の合戦まで』新装版(佐藤和夫著,原書房,2012/6/20)
『水軍の日本史 下 蒙古襲来~朝鮮出兵まで』新装版(佐藤和夫著,原書房,2012/6/20)

『戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方』(松村劭著,PHP文庫,2006.3)

『戦略論大系〈8〉コーベット』(高橋 弘道著,芙蓉書房出版,2006/10)

 「近代海洋戦略思想の父」コーベットの海洋戦略論を詳細な用語解説・注釈で読む!コーベットの海洋戦略は,第二次世界大戦後から実用的なドクトリンに受け入れられ,今やマハンに代わる影響力を与えている.
 「近代海洋戦略思想の父」と言われるコーベットの海洋戦略論を詳細な用語解説と注釈で読む一冊.
 古典を通して現代における「戦略」とは何かを考える叢書.

――――――おきらく軍事研究会,2006年10月30日

◆◆◆海軍


 【質問】
 そもそも海軍って何ですか?
 主に何を任務としてるんでしょうか?

 【回答】
(1) 制海権の「獲得」
(2) 敵が獲得することを「拒絶」
(3) 制海権を獲得しての海洋の「利用」

などが海軍の存在意義.

 なお,(3)は戦力投射に留まらない.
 たとえば海上通商路の安全確保などもここに含められるから.
 ちょっと海上保安庁とか水上警察とかも広義ではかぶさるんだろうけど,広義のシーパワーってことでは,たぶんこういう風に説明されると思う.
 詳しいことはコーベットを読んでください.

 具体的に言うと,海自の場合

.国民の期待
⇒日米航路を航海する米軍の援軍や,補給物資,石油食料を積んだ船を,中露の原子力潜水艦などから守る,「船団対潜護衛」

陸自の期待
⇒沖縄・先島はとらせて取り返すから,揚陸艦作って揚陸艇買えよ.
 艦隊決戦とかいらないから.
 潜水艦で敵の上陸軍の補給線をちょん切ってくれ.
 15旅団への補給と撤退のネズミ輸送.

かつてのアメリカの期待
⇒守ってやるから,有事になったらカムチャッカのソ連核原潜をP3Cと大型DDで狩って,米本土を核攻撃から守れ.
 自分だけ守ってもらおうとか自己中心的過ぎ.
 イージス買って米空母を護衛しろ.
 それが嫌なら,防衛費を4倍に増やして,自分の国は自分で守りやがれ.

海自の中の人
⇒どっちかっつーと,地味な対潜船団護衛より,米空母に随伴してオホーツク原潜聖域とかに斬り込む,派手な仕事がいいな
 とにかく対潜が仕事だし,空襲怖いから,立派なSAMつけて欲しい.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 突然すみません.
 自分は小説を書くのが趣味で,最近ふと架空戦記を書こうと思い立ったのですが,海軍や水軍関する戦略・戦術がわからず多少なりとも勉強したいと思っています.
 初心者向けの,海軍戦略・海戦戦術解説書はありませんでしょうか?

 海軍や水軍関する戦略・戦術戦術に関しては,火砲登場以前~WWⅡまでの戦術の変遷を系統的に知りたいのですが…

 【回答】
・「船の歴史事典」アティリオ・クカーリ, エンツォ・アンジェルッチ, 堀 元美 (原書房)

 上記がガレー船から原潜まで,船の進歩に伴う有名な船型/艦船名/海戦などを概観説明しています.
 戦闘の変遷も大雑把ですが,1冊で接舷切り込み/ギリシャ火/衝角戦法/縦隊砲戦/近代海戦の流れが概観できます.
 事典というだけに,かなり分厚い本(つまり凶器クラス)で,本来は定価で1万の大型本ですが,なんか最近コンパクト版が出てるらしいですね.
 私は大型を持ってましたが…会社で資料として貸したまま行方不明に…
 泣くぞ,このやろう…orz

・学研「戦略戦術兵器事典③ヨーロッパ近代編」

 基本は陸戦中心ですが,海軍に関する記述もあります.
 短いですが,帆船軍艦の系譜と装備戦術という記事と,戦史紹介に
・レパントの海戦
・アルマダ海戦
・トラファルガー海戦
のよくまとめられた記事あり.

 あくまでも陸の付録としてちょっと載ってるだけなので注意.
 でもそのおかげで,短く要点をまとめてあります.

 あとは…帆走戦列艦時代ならホーンブロワー読めや(笑)
(ただしブリテン脳におかされる危険性が大)

Lans ◆EDLansNRRQ in 軍事板
青文字:加筆改修部分

 む,トラファルガル海戦やナイルの海戦,トラファルガル海戦物語やネルソン提督伝といったネルソンモノを無視するとは癇癪起こりますね!!11!!

 特にネルソン提督伝は,同時代のイギリス人がナポレオン戦争をどう見ていたかというのが伝わってくるので面白いです.

軍事板
青文字:加筆改修部分

 しかし彼は,海戦の変遷を知りたいのだよ,ネルソン君.
 君は,数百年にわたる帆走戦史の頂点であり集約点ではあるが,めくるめく進歩の中ではなく,定まった確定した世界における活躍にすぎないのだよ.

Lans ◆EDLansNRRQ in 軍事板
青文字:加筆改修部分

レパントの海戦
(画像掲示板より引用)


 【質問】
 コーベットの海洋戦略思想について教えられたし.

 【回答】
 『太平洋戦争1 「日米激突」への半世紀』(黒野耐他著,学研,2008.12)によれば,日本海軍が模範としてきたイギリス海軍では,エリザベス朝時代のサー・ウォルター・ローリー(「海洋を制する者は貿易を制し,世界の貿易を支配した者は世界の富を支配し,勢いの赴くところ,世界そのものを制するのではないか?」)やフランシス・ベーコン(「海洋を制する者は自由を得,思いのまま戦争できる」)の金言に示された英国流の戦い方,用兵思想をサー・ジュリアン・コーベットが「海洋戦略」として体系化しています.

 コーベットは海戦の目的として「海洋管制(海上におけるコミュニケーション」の掌握)」の確保としており,これによって敵の富を捕獲・破壊(「通商破壊」「通商阻止」)して敵国民生活や戦争努力を破壊して屈服させる事を目的としています.
 また艦隊決戦(=敵主力艦隊の撃滅)についてはそれ自体に意味を見出していません.
 (敵の海上交通路を攻撃する前に自らの海上交通路を保護する必要があり,艦隊決戦の戦力(戦艦)に力を入れすぎると保護が手薄になってしまう)
 そして海軍の役割は海からの陸へのアプローチに寄与することであり,海軍戦略は陸軍戦略の代替になることはできず,海軍戦略は陸軍戦略と一体化した「海洋戦略」の一部でしかない,と主張しています.

 コーベットはアルマダの海戦での勝利後もエリザベス朝ではスペインとの戦争が続いた事,トラファルガー海戦での勝利後もナポレオンとの戦争は続き,最終的な勝利はワーテルロー会戦での勝利だった事を指摘し,外交,とりわけ陸軍と協調しない限り海軍の及ぼす事のできる効果は薄く,大切なのは海洋コミュニケーションの掌握により,陸軍の兵力を望む所に上陸させる事としており,海洋管制は敵上陸部隊の拒止,味方上陸部隊の運航の為の手段であり,陸上決戦の為の手段だと考えています.

 この他,クラウゼヴィッツやモルトケが防御の利点を重視した事を高く評価,劣勢海軍の採るべき道として果敢な攻勢に出るよりも好機到来まで防勢を保ち,それにより敵の積極的な戦果獲得を妨げ,自国艦隊の温存を図る事を薦めています.

 この項目では,よく大陸国家の戦略と海洋国家の戦略という二分法が使われるが,コーベットが陸海軍戦略は一体であり,クラウゼヴィッツやモルトケの思想を海洋に拡張していくべきと考えていた事からすれば,海軍戦略の独立性の過度な強調は,イギリスの戦略理解としては正鵠を欠く事になる,としています.

グンジ in mixi,2008年11月24日14:17


 【質問】
 最近『マハン海上権力史論』(原書房,2008.6)が出たが,内容はどんなもんじゃろ?
 日本人の軍オタなのに,海上戦略に関する本をまともに読んだことないんだよね.
 マハンもコーベットも.
 この本を買うより,『戦略論大系』シリーズ(芙蓉書房出版)のマハン,コーベットあたりから始めたほうがいいのだろうか?
 こちらなら大学の図書館で借りられるんだが.

 【回答】
▼ 「海上権力史論」は,アルフレッド・セイヤー・マハンによって1890年に刊行された,海軍戦略の古典.
 セオドア・ルーズベルトが読んで感激したといわれる.
 それ以降,マハン流のシーパワー確立がアメリカの国家戦略となった.
 そして,セオドアの甥のフランクリン・ルーズベルトが海軍のことを「My Navy」というくらい,ルーズベルト家は海軍に肩入れすることになる.
 米国の国策に関して絶大な影響があった本である.

軍事板,2001/02/16(金)
青文字:加筆改修部分

 丁度手元にあるので参考までに.
 原書房版の内容は抜粋で全訳ではなく,また復刊なので訳も25年前の旧版のままのようです.
 『戦略論体系』も抜粋だったと記憶しているので,どちらから読まれても問題ないでしょう.
 先に大学で『戦略論体系』を借りられてみて,興味がわいたら『海上権力史論』も購入してはいかがでしょう.
 『戦略論大系』の解説は,時代背景等掴むのに役立ちますしね.

46式 in 軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 近代までの海戦について概略(場所,陣営,推移etc)を調べるのに適している書籍で,お勧めなの教えてください.

大火力太郎 ◆X4ci4K5oFg :軍事板,2011/07/22(金)
青文字:加筆改修部分

 【回答】
*新紀元社「海戦(Truth In Fantasy)」
*中央公論新社「三千年の海戦史」 松村劭

軍事板,2011/07/22(金)
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 本気で海戦に進みたいなら,下記おすすめ.
 海上戦における作戦概念についての専門書.

Operational Warfare at Sea: Theory and Practice : Milan N. Vego
Naval Strategy and Operations in Narrow Seas : Milan N. Vego

 両方ともペーパーバックが出て,買いやすいです.
(同著者の統合運用本は,まだハードカバーのみ…orz)

Lans ◆xHvvunznRc :軍事板,2011/07/22(金)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 昔のソ連海軍,大日本帝國にあったことですが,何故,これらの国は軍事大国や覇権国家の海軍に対抗するときに,継戦能力,シーレーン防衛力,輸送能力,後方支援能力等を切り捨てて,迎撃力,決戦に傾倒するのでしょうか?

 【回答】
1.
 日本海軍の基本方針は侵攻部隊を迎撃して一撃で殲滅し,早期講和に持ち込む短期決戦方針でした.
 日本海海戦での勝利が日露戦争での勝利につながった事例以来,決戦で勝負をつけて講和に持ち込むという決戦主義が海軍のドクトリンだったのです.
 対米戦では,それ以外は国力がもたないからです.
 支援艦艇を揃えるというのは長期持久方針になるので,相反する事になります.
 現実には両方(短期・長期)の方針を並立させようとして,当然ながら国力不足で二兎を追うもの一兎を得ずになりましたが.

2.
 ソビエトの場合は守るべき通商路が無かったので,決戦兵力にリソースを集中出来ました.
 そして,ソ連海軍がアメリカ海軍に対抗できる唯一の要素は,水上艦艇・潜水艦による対艦ミサイル一斉射撃による飽和攻撃でした.
 それは大規模な場合数百発の対艦ミサイルを叩きこむ戦法だったので,先制攻撃に成功すればイージス艦登場以前はそれなりに効果があったと考えられています.

3.
 日本とソ連の選択肢は違うようですが,揃える戦力が違うだけで,迎撃艦隊という意味で同一です.
 2で書いたようにソ連は対艦ミサイルで,日本は戦艦や航空機が,それぞれ迎撃の主力だったと.
 で,ドイツの場合は潜水艦ばかりのつもりじゃなく,水上艦も揃える計画があったんですが,ヒトラーの誤算もあり,艦隊整備以前に第二次大戦が始まってしまったわけです.
 で,戦争が始まってからは,国力の中から海軍にけるリソースが少なかったので,効率的に海上封鎖が行える潜水艦戦が主力となった・・・
 というかそれ以外の方針をとりようがありませんでした.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 内陸国にも「海軍」があるというのは本当ですか?

 【回答】
 本当.

▼ モンゴル海軍とか.
 後に初代海軍司令官となる人物が,「魚の養殖技術」を学ぶためにソ連に留学したとき,書類上の手続きミスで「航海術」を学んでしまい,そのまま海軍司令官に任命され,モンゴルの小さな湖に哨戒艇を浮かべて任務に就いていたという.

 パラグアイ海軍は,国境の河の警備に当たってる.
 19世紀には,ブラジル・アルゼンチン・ウルグアイ連合軍と,派手な海戦というか河上戦もやっている.

 オーストリア海軍,現有兵力,哨戒艇2隻.
 ハンガリー海軍,現有兵力,掃海艇3隻.
 どっちも河川軍だな.
 オーストリア海軍は,かつて,アドリア海に面していた関係で,戦艦まで保有し,青島で日本海軍とも戦ったらしいけど,WW1の敗戦で海軍も解体.

軍事板
青文字:加筆改修部分

 詳細が月刊「丸」に述べられていたので,以下に引用する.

―――――――
 兵力は1800人で,これとは別に1700人・6個大隊の海兵隊さえ配下に擁している.組織は6軍管区に分かれ,それぞれ1艦隊ずつ配置されている.
 彼らの行動の舞台は,国土の西方に網の目のように広がるアマゾン川の支流と,有名なチチカカ湖だが,やはりメインは,琵琶湖の軽く10倍の広さを誇る後者.
 また,この湖は隣国ペルーとの国境でもあるだけに,『我が国の領"海"を守るのは我らだ』というモチベーションも成り立っている.
 海軍の主力は,60隻以上にも及ぶ各種哨戒艇.殆どは小ぶりのものだが,旧アメリカのボストン級捕鯨船を武装した軍艦が15隻ほど存在しているのが興味深い.
 さらにこの他にも,各種支援艦艇が18隻ほどあるが,この内のリベルタドール・ボリバル級輸送艦1隻は,外洋を航行する船舶で,隣国アルゼンチンとウルグアイの港湾を借り受けて大西洋を遊弋させている.
 このように,ボリビアの『海軍』に対する熱意は一種,異様とも思える.その理由は,同国の歴史を1世紀ほども遡れば納得する.というのも,19世紀まではこの国は太平洋に面していたのである.
 しかし,領土を巡って1879-83年に隣国チリと戦火を交えたものの惨敗.太平洋岸のアントファガスタ地方を割譲され,以後100年以上も,海のない生活を強いられている.ちなみに,この戦争も『太平洋戦争』と呼ばれている.

 この他にも,内陸国パラグアイにも同様に海軍が存在する.ただし,ボリビアより明らかに強力だ.
 兵力は2000人で,これには海兵隊900人(4個大隊)と海軍航空隊100人が含まれる.
 保有艦艇は,
パラグアイ級2隻(120mm砲4門搭載)
ナナワ級2隻(アルゼンチン製ブカール外洋掃海艦,40mm砲4門搭載)
イタプ級1隻(河川型;40mm砲1門,20mm機関砲1門)
カピタン・カブラル級1隻(河川型;40mm砲1門,20mm機関砲1門,1908隻建造の超高齢艇)
カピタン・オルティス級1隻
台湾・海鴎級2隻(元イスラエル・デボラ改級)
その他台湾製2隻
といった哨戒艇を核に,小型警備艇20隻,各種支援艦艇5隻(戦車揚陸艦,測量艦,輸送艦など)が存在する.
 もちろん,この国には海はないが,パラナ河,パラグアイ川という,川幅の大きな河が国土を縦断し,また,流れも非常に緩やかなことから,言わば『海』と同一視したほうがよいかもしれない.
 事実,一部の外航船は大西洋からラプラタ河を介して延々1000km以上遡り,この国にやって来ている.
 そのためか,前述した哨戒艇の中には,わざわざ『河川型』と注釈して,他と区別している艦艇が存在する.換言すれば,海洋航行可能な船もあるということだろう.支援艦の内のポケロン級1隻は旧アメリカ中型揚陸艦で,ヘリコプター甲板さえ備えている.
 隣国アルゼンチンの許可を貰って川を下り,ブエノスアイレス沖合い付近で,海上演習をしばしば行ってもいる.

 カスピ海に面しているアゼルバイジャン,トルクメニスタン,カザフスタンの3ヶ国にもそれぞれ「海」軍が存在する.
 まずアゼルバイジャン azerbaidizhan だが,この国でも,軍艦を保有する軍隊を正式に「海軍」と呼んでいる.総兵力は2200人で,司令部を首都バクーに設け,6個の警備管区で自国の「領海」を警備している.
 保有艦艇だが,以前はペチャⅡ級フリゲイトといった大型戦闘艦を2隻ほど有していたものの,現在は手放しているようである.
 小ぶりの哨戒艇が現在の戦力の中心で,内海高速艇(チュルク級1隻,オサⅡ級1隻,ステンカ級1隻以上),内海哨戒艇(ジューク級1隻以上,ソヴュトリャク級1隻以上),内海掃海艇(ソーニャ級3隻,エフゲーニャ級2隻),ポルノクヌイ級中型揚陸艦(180t搭載)2隻,調査艇(バディン・ポポフ級1隻,バレリアン・ユリバエフ級1隻),その他国境警備用として,アメリカ製内海哨戒艇1隻,というラインナップである.
 艦艇の大多数は,1991年のソ連邦崩壊によって「相続」したもの.同海軍はCIS(独立国家共同体)集団安保条約に従い,これまで事実上ロシア海軍(カスピ小艦隊)の指揮下に入っていたのだが,ナゴルノカラバフ紛争の際,敵対する隣国アルメニアにロシアが軍事援助したことに腹を立て,1999年,安保条約から抜け出し,以来,独自の海軍建設に磨きをかけている.
 とにかく民俗紛争を内部に抱え,また,沖合いには豊富な「海底」油田が埋蔵されていることからか,機雷対策の艦艇が多いのが特徴的で,また,戦力増強にも熱心だ.

 次にカザフスタンであるが,正式には「国境防衛隊配下の海上国境警備隊」となる.
 兵力は3000人で,内海哨戒艇(ガーディアン級1隻以上,アルマティ級4隻以上),小型警備ボート5隻と,比較的小所帯である.

 最後にトルクメニスタンであるが,ここはさらに小規模で,小型哨戒艇を5隻ほど保有しているに過ぎない.
 なお,カザフスタン,トルクメニスタン共に,これら戦力はCIS集団安保条約に従い,ロシアが指揮するカスピ小艦隊に編入,共同歩調を取っている.

 余談であるが,カスピ海の「海?湖?」論議は,国際政治の舞台では,今だはっきりした決着がなされていない.
 というのも国際法では,「湖」と規定した場合,沿岸国は領海を設定することができず,湖全体は沿岸国の「共同所有」となるからである.
 この湖底には有望な油田・ガス田が眠っているが,自国付近で有効な資源が見つからなかったロシアやカザフスタンは,他国の「海」説に反対して,当初「湖」説を主張.
 ところが昨今,近海でも油田が発見されるに及ぶと,と単に「海」説容認へと傾いたのである.
 つまり,領海を設定して地下資源独占を狙っているわけで,現在のところ,「海」というのが国際政治における認識となっている.
 しかし,再び「湖である」と異論を唱える国が出ないとも限らないのである.

――――――深川孝行「"海のない国"のネイビー事情」 from 「丸」 '02 Sep.

 また,「世界の艦船第334集1984.4」収録の「各国海軍の現勢その49 オーストリア」によると,ドナウ川警備に陸軍大尉指揮の水上部隊が存在するという.
 士官1名,准士官以下13名で国軍施設学校校長の管理下にある.
 主力は75トンの「ニーダーエスターライヒ」,75トン・22ノット・20ミリエリコン機関砲1門他
 他に「オーベルスト・ブレヒト」,10トン・10ノット・12.7ミリ機銃1丁
 アメリカ製M3巡視艇2.9トンが10隻

 ドナウ河川艦隊についてのサイトは,略歴については, 「オーストリア=ハンガリーの戦闘艦艇写真集第2巻」バウムガルトナー&ジーヒェ共著からの抜粋を原文の独文から英文に翻訳したものが,
http://www.gwpda.org/naval/daunbe.htm
に,河川艦隊の個々の艦船については,
http://stile.covnetry.ac.uk/cbs/staff/beach/ahnavy/DonFlot.htm
に簡単な戦歴めいたものがズラーッと出ている.

世界史板


 【質問】
 「セイルの張り具合を変えるな」って,どういう意味?

 【回答】
 帆船時代の海軍の戒めに,
「当直交代後,30分間はセイルの張り具合を変えるな」
というものがあります.
 前直の当直士官が,4時間の立直中の経験でいちばん良いと考えた帆の張り具合を軽々に変えると,後で失敗に気付いて後悔することが多い,という戒めで,現在でも新任の部隊指揮官や職場の管理職の,むやみな張り切り方を戒める際に良く使われています.

 とくに,長い間の伝統の中で自然に培われてきた軍事制度や伝統を,そのことを何も知らない素人が,「根の浅い知識」や「短絡的な思考」でもって壊すことは,「後で気が付いても取り返しがつかない」ため,非常に危険です.

おきらく軍事研究会,平成22年(2010年)5月24日(月)


 【質問】
 海軍には主に,どの様な任務があるんですか?

 【回答】
 海上交通路の防衛及び妨害.陸上への戦力投射.が基本.

 個々の任務で言ったらいろいろありますからー.
 船団の航行を防衛する.
 船団を狩ろうとする潜水艦を逆に狩る.
 艦隊どうしで戦う.
 沿岸部の敵基地や工業地帯を攻撃する.
 海賊を狩る.
 海難事故を救出する.
 陸軍部隊を港から港へ輸送する.
 潜水艦から戦略ミサイルを撃つ.
 沿岸地域の災害救助をする.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 MOOTWとは何か?

 【回答】
 元海将・五味睦佳によれば,次のように説明される.

 1. 定義

 MOOTW (Military Operation Other Than War)は,米軍統合参謀本部では,次のように定義している.

"A wide range of activities where the military instrument of national power is used for purposes other than the large scale combat operations usually associated with war."

 したがって,
(1a) 戦争抑止
(1b) 平和推進
(1c) 他省庁支援
を目的とした,大規模な戦闘行動までには至らない,小規模な戦闘行動も含む軍事作戦が主体であり,さらには,武力行使には至らない人道支援までも包含する,幅広い軍事作戦として位置付けている.

 2. MOOTWのタイプ

(2a) 戦闘行動を伴うか,それを前提とするもの

 2a1. 制裁/海上阻止行動の実施

 2a2. 排他的水域設定/実行:
 排他的水域とは,ある地理的な区域内における特定の行為を,制裁国が禁止するために設定する海域である.
 この区域は海上・陸上・空域に設定される.

 2a3. 船舶防護

 2a4. 攻撃/急襲:
 攻撃は,政治目的達成のため,攻撃目標に損害を与えたり,捕獲したり,撃破する攻撃的作戦である.
 急襲は,情報入手のための威力偵察,敵撹乱,重要施設破壊のため,敵領内に迅速に侵入するような小規模作戦を言う.

(2b) 戦闘行為と非戦闘行為の中間的なもの

 2b1. テロとの戦い
 防御的対抗策(Antiterrorism)と攻勢的対抗策(Counter-terrorism)から成る.
 前者は主としてテロによる脆弱性の減少を図るのに対し,後者はテロを妨害・抑止し,先制攻撃,救出作戦などを含む.

 2b2. 対麻薬作戦

 2b3. 海洋・航空の自由航行の保障
 沿岸国は海洋法条約により,領海内における管轄権を行使すると共に,その領海の無害航行を保障するとされている.
 国際空域の航空機の自由航行は,国際法で確立された概念である.

 2b4. 非戦闘員避難

 2b5. 平和維持作戦(PKO, PEO)
 PKOとPEOの違いは,PKOが,ほぼ全ての関係国が,PKO実施に同意しているのに対し,PEO(Peace Enhancement Operation)は,関係国の一致した同意がないことである.

 2b6. 救難・収容作戦

(2c) 戦闘行為を伴わないもの.

 軍備管理,国内支援活動,人道援助,国家支援(相互的合意に基づく外国への軍事・非軍事的支援),示威行動,反乱幇助.

(「MOOTW 戦闘以外の新しい海洋軍事行動」from 「世界の艦船」 2003/6,
P.84-85,抜粋要約)

 要するに,1939年以前の海軍の平時の任務に戻ったという…….


 【質問 kérdés】
 なぜ米海軍作戦部長は2016年に,A2ADという用語を使用停止にしたの?

 【回答 válasz】

 岡崎久彦元駐タイ大使が主催するシンクタンク・岡崎研究所によれば,米海軍のリチャードソン作戦部長が,今後A2ADを用語としては使用停止にすると発表しました.

>米海軍作戦部長が使用禁止にした「A2AD」  WEDGE Infinity(ウェッジ)
>http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8079
>リチャードソン米海軍作戦部長が,National Interest誌のウェブサイトに10月3日付で掲載された論説において,今後米海軍としてA2AD(接近阻止・領域拒否)という用語を使用することは控える,と述べています.

 その理由としていくつか挙げられています.

------------
1) A2ADは何も新しい現象ではない.
 紛争地域を含め,海域を支配し力を投影することは昔から行われており,米国が海軍力に頼るのはまさにそのためである.

2) 「領域拒否」の「拒否」という用語はしばしば既成事実という印象を与えてしまうが,より正確には願望である.
 「拒否」は立ち入れない領域という印象を与えるが,実際ははるかに複雑で,そのような領域に入るのは危険が伴うが,脅威は乗り越えられないものではない.

3) A2ADは本来的に防衛を志向しており,当該領域に外から接近することが想定されているが,当該領域の内側から攻撃することも可能である.

4) A2ADにとらわれると,対立と競争の次のレベルの問題を考慮できなくなる.
------------

 (1)海域の支配と火力の投影については,太平洋戦争でも証明されました.
 その後朝鮮戦争やベトナム戦争では海戦はほとんど行われませんでしたが,米海軍が北ベトナムのハイフォン沖に航空機投下式のディストラクター(爆弾型機雷)を投下し,ハイフォン港を封鎖して北ベトナムとの和平交渉のテーブルに就かせる事に成功しています.

>機雷戦の歴史:海上自衛隊
>http://www.mod.go.jp/msdf/mf/butai/mwsc/sjrekishi.html

 (2)については接近を拒否する手段として爆撃機によるASMや対地巡航ミサイルによる攻撃や潜水艦からのUSM攻撃,対艦弾道ミサイルが上げられますが,ASMやUSMは米海軍のAN/WLR-1シリーズや海自のNOLQシリーズなどの電子戦装備があれば対処は可能ですし,ESSMやSM-2,SM-6などのSAMでも対処できます.
 索敵手段もNIFC-CAやJADGEなどのデータリンクシステムもあります.
 対地巡航ミサイルも空自や米空軍による迎撃すれば可能で,現状では空自単独でも迎撃は可能と言えるでしょう.
 ですから突破は不可能というわけではありません.
 また,対艦弾道ミサイルもSM-3でミッドコースで迎撃すれば無力化は可能です.

 (3)については,接近を拒否するという戦略が防衛的で攻撃や侵攻には向いていないと言えます.
 まして巡航ミサイルや弾道ミサイルは戦闘機やSAM,弾道ミサイルはBMDでも迎撃が可能なので,これ等で制空権を奪還するというのは不可能です.
 むしろこれ等の攻撃は陽動のようにも思えます.
 また,A2ADが防衛を目的とするなら,自衛隊こそA2ADを米ソ冷戦時代から行ってきた軍事組織と言えないでしょうか.

 (4)についてはそれが顕著に出てて,F-22の生産中止やUAVの多用化による他の装備へのしわ寄せが問題になっています.
 F-35も国際共同開発でなければ開発が中止になっていた可能性だってあります.
 また,UAVの多用化により空中給油などの任務まで付与して炎上してしまったUCLASSのケースもあります.

 A2ADは陽動の意味合いもあり,しかも防衛的であるとすればさほど脅威に思う事もないでしょう.
 巡航ミサイルや弾道ミサイルは今の技術でも迎撃可能です.
 A2AD脅威論に踊らされて他の装備にしわ寄せが来るとなれば,それこそが本末転倒と言えるのではないでしょうか.

ねらっずーり in mixi, 2016年11月05日
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 中立国が交戦国の船を,公海上で臨検することは可能ですか?

 【回答】
 国際法上できる.
 臨検は自国の安全を確保するために,軍艦に与えられた当然の権利だから.

 ただし臨検に至る手続きはそれなりに面倒だし,対象船の所属国との外交関係が悪化する恐れも大きいから ,その辺は臨検国の覚悟の度合いが試される.
 実際やれるだけの覚悟と装備があるかは別問題.

 というか,やはり法律上の問題から言うと,公海はともかく自国領海内を通航する交戦国船舶に対しては,臨検「しなければならない」.
 なぜなら,軍需物資を積載した船舶が自国領海を通航した場合,当該交戦国を利する行為とみなされ,「中立の侵害」が成立するからだ.

 ちなみに中立国が自国領海内で,軍需物資を積載した船舶の通航を認める場合,今度は全ての国にそれを認めなければならない.
 「公平性の確保」というやつだ.
 つまり中立国は,自国内に交戦国の軍事的影響が及ぶ場合,
全て受け入れる
or
全て跳ね除ける
の難しい二者択一を迫られるのだよ.
 もちろんケースバイケースではあるが.
 例えば軍艦の入港と生鮮品補給は認めるが,陸軍の駐留は認めない,とか.

 つまり中立国は交戦国双方を平等に扱い,交戦国とのトラブルを覚悟するならば,国として持つ権利を無条件で行使できるということ.
 中立国は国として持つ権利(臨検等)を制限されたりはしない.

軍事板,2009/03/22(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 海上封鎖は軍事行動なのか?

 【回答】
 国連憲章上は軍事行動の範疇.憲章第42条に明記されて入る.
 また,同第43条では,全ての加盟国に便宜供与を約束する旨,規定している.

 詳しくは佐々淳行著『危機管理宰相論』(文芸春秋,1995.12.15),p.88-89を参照されたし.


 【質問】
 不審船やゲリラの木造船が密入国してくるのを完全に対処することは難しいと思うのですが,それらの船を陸地に上陸される前に海上で発見するための理想的な対処法とは,どういったものなのでしょうか?
 P-3C等で24時間体制の領海監視とか,そういったものになってしまうのでしょうか?

 【回答】
 はっきり言えば,理想的な対処法などない.
 海だろうと陸だろうとね.

 空だけから監視すると無数の船が行き交っているのが見えるが,細かな確認の方法がない.
 空中及び水上艦艇の双方で濃密な哨戒を行うのが,現実的な解になる.
 哨戒をおこなう海上保安庁(や類似の組織)にも,予算規模と人員規模という問題があるので,なかなか完全には実施できないが.

 アメリカではカリブ海での密輸対応のため,沿岸警備隊が海軍からE-2Cを借りたり,C-130AEWを試験導入したりしたが,費用対効果の面でうまくいかず,今は武装ヘリを使用.

 さらにキューバやメキシコからの密入国(不法移民)やテロ対策で,税関国境警備隊がプレデターUAVを導入したが,目立った効果はない.
 ちなみに沿岸警備隊でもグローバルホークUAVを導入予定.

 一時はメキシコからの不法移民対策で,州兵を数メートルごとに歩哨に立てようという話すらあった.
 キューバからの密入国はもう難民扱いとして,洋上では阻止するが,上陸すれば滞在許可を与えるという方針になってるし.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 水軍は水兵でそ?
 海軍なら海兵じゃないの?
 なんで水兵って言うの?
 なんでなんでー??

 【回答】
 軍艦に乗り組む兵士の事.海軍の兵士.

 この意味で海兵とはあまり言わない(海兵というと海軍兵学校の事を指す).
 また,海軍兵のことを「海兵」と呼ぶこともある.
 これは紛らわしそうであるが,これも日本軍においてだけの表現であり,一般的には水兵というので大丈夫であろう.
 セーラー服のセーラー(水兵)とマリーン(海兵隊員)とは全然違います.
 海兵隊は陸海空の要素を兼ね備えた特殊作戦部隊で,戦争で一番先に敵前上陸する過酷な任務を背負った部隊です.

自衛隊板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 海軍のダイバーってどんな任務に就いてるの?
 観光案内はしないよね?

軍事板,2010/07/23(金)

 【回答】
 水中での,機雷などの爆発物処理.
 水中,または上陸後の破壊工作/カウンター工作のための警備.
 水中の障害物の撤去.
 水中での人命救助.
 韓国哨戒艦撃沈事件では,行方不明者捜索中のダイバーにも死者が出ている.

 ちなみに,ぐぐると「ハチワンダイバー」ばっかり……

 【参考ページ】
http://blog.godivers.net/?eid=882362
http://karapaia.livedoor.biz/archives/51545133.html
http://japanese.china.org.cn/olympic/2008-08/07/content_16155652.htm

【ぐんじさんぎょう】,2010/08/04 21:00
を加筆改修

 上陸作戦を行う場合,上陸用舟艇や両用戦車が乗り越えにくいサンゴ礁等を,朝日新聞記者なみに自然破壊しておく・・・・っつう仕事が真っ先に頭に浮かんだ^^;
 あと,日本の企業が請け負った,スエズ運河改修の時の不発弾処理みてーなのとか・・・・・^^;

へち in mixi,2010年07月27日 01:23

(画像掲示板より引用)


 【質問】
 戦闘終了後,敵兵が海にプカプカ浮いているのを発見(生死は不明)
 でも司令部からは,至急移動せよという命令が出ている

 この場合,命令を無視してまで救助する必要があるのでしょうか?

 【回答】
 状況によりますが,浮輪位投げてやらないと後々面倒(戦犯に問われる等)が起こる可能性はあります.
 ただ,質問のような戦闘直後や最前線では,
救助続けると攻撃を受ける恐れが高い=危険受容限度を超える
として無視することもあり得ます.
 余裕がある状況では,現場艦艇の船長に(上に状況説明し指示を仰いだ上で)命令無視してまで救助する義務は一般的にはありませんが,この場合命令者が義務違反に問われるおそれはあります.

<海上にある軍隊の傷者,病者及び難船者の状態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(第二条約)>

第十二条〔保護及び看護〕
 次条に掲げる軍隊の構成員及びその他の者で,海上にあり,且つ,傷者,病者又は難船者であるものは,すべての場合において,尊重し,且つ,保護しなければならない.
 この場合において,「難船」とは,原因のいかんを問わず,あらゆる難船をいい,航空機による又は航空機からの海上への不時着を含むものとする.

 ②
 それらの者をその権力内に有する紛争当事国は,それらの者を性別,人種,国籍,宗教,政治的意見又はその他類似の基準による差別をしないで人道的に待遇し,且つ,看護しなければならない.
 それらの者の生命又は身体に対する暴行は,厳重に禁止する.特に,それらの者は,殺害し,みな殺しにし, 拷問に付し,又は生物学的実験に供してはならない.それらの者は,治療及び看護をしないで故意に遺棄してはならず,また,伝染又は感染の危険にさらしてはならない.

 ③
 治療の順序における優先権は,緊急な医療上の理由がある場合に限り,認められる.

 ④
 女子は,女性に対して払うべきすべての考慮をもって待遇しなければならない.

第十三条〔保護される者〕
 この条約は,海上にある傷者,病者及び難船者で次の部類に属するものに適用する.

  (1)
 紛争当事国の軍隊の構成員及びその軍隊の一部をなす民兵隊又は義勇隊の構成員

 (2)
 紛争当事国に属するその他の民兵隊及び義勇隊の構成員(組織的抵抗運動団体の構成員を含む.)で,その領域が占領されているかどうかを問わず,その領域の内外で行動するもの.但し,それらの民兵隊又は義勇隊(組織的抵抗運動団体を含む.)は,次の条件を満たすものでなければならない.

  (a) 部下について責任を負う一人の者が指揮していること.
  (b) 遠方から認識することができる固着の特殊標章を有すること.
  (c) 公然と武器を携行していること.
  (d) 戦争の法規及び慣例に従って行動していること.

 (3)
 正規の軍隊の構成員で,抑留国が承認していない政府又は当局に忠誠を誓ったもの

 (4)
 実際には軍隊の構成員でないが軍隊に随伴する者,たとえば,文民たる軍用航空機の乗組員,従軍記者,需品供給者,労務隊員又は軍隊の福利機関の構成員等.但し,それらの者がその随伴する軍隊の認可を受けている場合に限る.

 (5)
 紛争当事国の商船の乗組員(船長,水先人及び見習員を含む.)及び民間航空機の乗組員で,国際法の他のいかなる規定によっても一層有利な待遇の利益を享有することがないもの

 (6)
 占領されていない領域の住民で,敵の接近に当り,正規の軍隊を編成する時日がなく,侵入する軍隊に抵抗するために自発的に武器を執るもの.
 但し,それらの者が公然と武器を携行し,且つ,戦争の法規及び慣例を尊重する場合に限る.

軍事板,2005/06/02(木)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 海軍の将官の階級は,英語と米語とでは,どう違ってくるの?

 【回答】

 『世界諸国の制度・組織・人事 1840-1987』(東大出版会・秦郁彦編)では,
元帥
英 Admiral of the Fleet
米 Fleet Admiral
となるので,翻訳の際には気をつけてください.中尉・少尉も呼称が違います.

大将 Full Admiral (Fullは省略されることも),
中将 Vice Admiral
少将 Rear Admiral
代将(海軍では准将といわないことが多い) Commodore
で共通なのですが.

 ちなみに海兵隊は,米陸軍と同じ階級とのこと.

軍事板 & 眠い人 ◆gQikaJHtf2 in mixi支隊


 【質問】
 海軍では英語で大佐をキャプテンといいますが,どういう風に,そういう呼び名に落ち着いたんでしょう?

 【回答】
 元々はキャプテン=船長
大型軍艦が特に貴重な時代は,
「軍艦の艦長=将官除いた最高階級」
だったので,自然とキャプテン=大佐になったものだと思われる.

 蛇足を加えると,Caput(頭,転じて高位,統括する)する人なのでCaptain

 余談ですが,アドミラルはイスラム系統のアミールが語源だそうです.
 コマンダーは正式の艦長ではない指揮官であり,元はマスター&コマンダーだったような.
 本来の船長であるマスターの上に陸兵を率いた隊長,つまりキャプテンが乗り込んできて,マスターは航海長となったっていう経緯らしい.

軍事板


 【質問】
 昔の太平洋戦争題材の映画で,敵機動部隊を攻撃に向かう攻撃隊と護衛戦闘機隊が,その途上,まさに自分達の母艦を攻撃に向かう敵攻撃隊とすれ違う場面がありました.
 その映画では,我が家が丸焼けになっては元も子もないと戦闘機隊が編隊を離脱して引き返し,敵攻撃隊を排除,一方攻撃隊は援護なしで敵艦隊攻撃を強行し,ほぼ壊滅してしまったのですが,これは指揮官の判断として正しかったのでしょうか?
 もっと良い選択肢があるようにも思えるのですが.

 【回答】
 結果次第.

 敵艦隊に大損害を与えたのであれば,母艦は無事で敵は大損害だからひとまずOK.
 ただし「攻撃隊」が貴重な場合は考慮の余地あり.

 護衛戦闘機が同行していれば敵艦隊に大損害を与えられたのに,戦闘機隊が引き返した結果として敵艦隊に損害を与えられなかったのであれば,その判断は誤り.

 どっちみち攻撃機隊は大損害を受け,しかも敵には大した損害を与えられなかったのであれば,母艦だけでも守ったのは正解だが,それをいうなら最初から出かけなければ良かった.

 要するに,「もっとも良い選択肢」など後知恵で主張するだけの物であり,明瞭な誤りでない限り,本当に正しかったか,何がベストだったかは誰にもわからない.

軍事板
青文字:加筆改修部分


◆◆◆空軍


 【質問】
 空の組織や運用的で初心者的な本を教えてください.

 【回答】
 もう組織形式がかわっちゃったけど…

【トムクランシーの戦闘航空団解剖】

や,初心者向け運用解説集なら

つ【続・軍用機知識のABC】

 軍用機知識のABCの1冊目は航空機自体が中心ですが,続は作戦運用解説が主体.
 航空機自体の解説は少ない為,人気がなかったのか,あまり発行部数は多くない模様.

 私は,この【続だけ】買いました.
 つまりは,そういった方向を向いた珍しいムック(笑)

Lans ◆EDLansNRRQ in 軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 なぜわざわざ空軍を創設するんですか?
 陸軍航空隊や海軍航空隊じゃダメなんですか?

 【回答】
 結局それらは「本家を支援する」任務しかやってくれないから.
 都市戦略爆撃のような,「陸軍の作戦にも海軍の作戦にも直接関係ない」作戦には,非協力的になるので戦略空軍敵な存在になれない.
 日本は海軍の対艦長距離攻撃機を都市戦略爆撃に投入したが,損害が大きいこともあって,海軍からは「本来の任務に支障が出る」と不評だった.

 一方,大戦中のアメリカの戦略爆撃機部隊は,軍制上は陸軍航空隊の所属だが,戦略爆撃任務の航空隊は任務指揮系統上は統合参謀本部直轄で事実上,陸軍の指揮系統からは独立していた.

 実際,空軍を独立させても陸軍の戦術支援ばかりしていた国もある.
 また,空軍を独立させた途端に,陸軍・海軍と予算の分捕りあいを始めて,国家としての戦略方針を立ててそれに邁進することよりも,空軍を肥大化させることそれ自体が目的化してしまったのか?と思える例もある.
(逆に陸軍は固定翼機は装備しないように決定すると,変り種回転翼機の開発始めちゃったりな)

 要は空軍が組織として独立し,その長が陸軍・海軍の長と同格の階級となることは,良く働くこともあれば,悪く働くこともある.

 アメリカ陸軍航空隊については,対極で海軍航空隊が海外の拠点防衛に当たっていたおかげで,本国国土の防空を考える状態にあった.
 戦略爆撃を重視したのはリソース云々よりも,戦前の孤立主義による.

 当時,カナダや南米に危険性は無く,戦争が起こるとすれば欧州の強国や日本との間で,海を隔てた戦争になる.
 そこで,陸軍の仕事の中に航空機による攻撃と,敵が同じことをした場合の防空(P-38やP-39などが開発されるんだが,それほど脅威は感じていない)

 加えて,戦争中の生産力が大きいの小さいの言う以前に,戦前に良好な性能の航空機用過給器が開発され,しっかり禁輸措置とって抱え込んでたことから,高高度防空戦闘機も爆撃機も他国よりスタートで半歩前に出ていた.

 航空自衛隊の場合,「自衛隊」という軍隊そのものの目的が「防衛」に特化しているので,「戦略空軍としての自衛隊」っは当然「防空専門軍」になる.
 まあ実際は単純に,アメリカで空軍が独立しているから,それにならって設立されたというだけの話だが.
 戦後もアメリカ空軍が独立していなかったら,航空自衛隊もなかったかもしれない.

軍事板
青文字:加筆改修部分

▼ 一応,補足をば.

 世界で最初に空軍を設立させた英国ですが,これは陸軍と海軍の航空隊が統合してできました.
 確かに説明で書いてある迎撃や支援も,重要な任務ですが,なにより空軍設立時に重要だった任務は「偵察」で,この偵察で得た情報は,陸海で分割して管理するよりも,一つの組織で統合して渡したほうが作戦遂行上都合が良かったのです.

 WW1当時,英国空軍在籍は30万人に膨れ上がりますが,そのほとんどは偵察とその解析任務のための人員です.
 戦闘はあくまで副次的なものだったんですね.

 もちろん,偵察も支援の一部ですから,「陸海の片方しか支援しないから」という説明も間違いではないので,あくまでこういう歴史的背景もあるという参考までに.

saizwong in FAQ BBS,2009年6月4日(木) 22時32分
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 制空権を握ったってどういう状況のことを言うんですか? 敵の戦闘機全部落とせばOK?

 【回答】
 基本的には自国の航空機が敵国上空を悠然と飛行できる状態.
 また,敵国の航空機が出てきても,即座に数を集中させ,対応できる状態.
 別に戦闘機全機を落とさなくても,飛行できない状態にするだけでOKです.

(眠い人 ◆gQikaJHtf2)


 【質問】
 防空識別圏とは?

 【回答】
 奇襲攻撃に備えて領空の外側に線引きした空域.
 飛行するには識別信号の発信か飛行計画の提出を求められるのが一般的で,それがないと防空部隊が緊急発進することもある.


 【質問】
 飛行情報区とは?

 【回答】
 各国が航空交通管制や他機の飛行情報,気象情報などを提供する空域.
 公海上にも及び,境界線が防空識別圏と重なったり,近接したりするところもある.


 【質問】
 陸軍や海軍と違って,空軍にはいわゆる「名将」って言う人がいない気がするんですが,なぜですかね?

 【回答】
 陸海に比べて空軍の発足が一般に遅いから.
(米軍でも空軍として独立したのはWW2の後)

 とはいえ,名将がいないわけではない.

 英空軍大将ヒュー・ダウディングなどは英独のバトルオブブリテンで賞賛されることもあります.

 どちらかというと組織者としての手腕の話になりますが,ボマー(爆撃屋)ハリスなども有名です.
 毀誉褒貶があるけど.
http://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Pointblank

 爆撃機部隊の人員損耗率は極めて高かったのも影響していると思われる.

 それから,ドイツならアドルフ・ガーランドやルーデルなどが有名だし,カムフーバー(夜間防空)も知られている.

 ルーデルは軍事板では超人的な挿話が知られていますが,部隊指揮官としてもそれなりにあると思う.

軍事板
青文字:加筆改修部分


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