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◆◆軍事組織関連書籍総記
<◆軍事組織総記 目次
総記FAQ目次


(画像掲示板より引用)


 【Link】

『軍事革命(RMA)』(中村好寿著,中公新書,2001/08)

>湾岸戦争以降,米軍のオーエンス提督の唱えた軍事革命(RMA)についてのわかりやすい解説書.

 著者は,防大卒業後,防大助教授,陸自東北方面総監部幕僚,防衛研究所主任研究員を経て退官した軍事アナリスト.
 現在進行中のRMAについて平易に語った好著,だと思う.
(まだ読み込んでないので)

------------軍事板,2001/08/24(金)
青文字:加筆改修部分

『軍事革命とRMAの戦略史 軍事革命の史的変遷1300~2050年』(マクレガー・ノックス & ウィリアムソン・マーレー編著,芙蓉書房出版,2004.6)

『現代の軍事戦略入門【増補新版】 陸海空からPKO,サイバー,核,宇宙まで』
(エリノア・スローン著,芙蓉書房出版,2019)
http://okigunnji.com/url/27/

 過去から今に至るすべての軍事戦略思想がつかめる事典と言って差し支えない内容ですね.
 冷戦以降の戦略思想の全貌がつかめるんです.
 とくに,「統合戦」「サイバー戦」「非正規戦」「核抑止」「宇宙空間」に関する戦略理論の全貌を掴める一般書はこれ以外にないと思います.
 他に例を見ないこの点が,最大最高のおすすめポイントですね.
 非常に優れています.

 重要なのは,マハンやドゥーエ,孫子やクラウゼヴィッツから,今現在のサイバー戦,核戦略,PKO,対テロ戦,宇宙戦略まで,時間軸の長さだけでなく幅の広さも兼ね備えている点でしょう.
 「いまの軍事戦略を考える」うえで必要不可欠な思想・考え方が,コンパクトに一冊のうちに含まれているわけです.

 著者のスローン女史は,元カナダ陸軍士官で現在は大学教授.
 我が国での知名度はあまり高くありませんが,海外では非常に高名な戦略研究者です.

 第一版が出たときも紹介しましたが,今回ご案内している増補版は,追記された項目があるだけでなく,既存項目にも加筆修正が加えられています.
 題名は同じですけど,別の本といって差し支えない内容といえます.

 個人的には,これまでリアルタイムで眺めてきた統合戦や対非正規戦,平和維持作戦について,はじめて総体を掴み整理できたことが大きいです.
 一時期ずいぶん使われた「トランスフォーメーション」なる言葉の位置づけも,この書を通じてようやくできた感があります.

 この本が扱う分野は
「いかにして戦争に勝つか?」
にかかわるアイデアであり
「何故戦争が起きるのか?」
の論考ではないところも押さえておきたいです.

 防大一年生レベルではむつかしいです.
 せめて防大4年生レベルの軍事戦略理解が必要です.
 とはいえ,弊メルマガの読者で,各連載記事を日常的に楽しく読めている人ならまず間違いなく楽しめるはずです.

 各テーマの記述が,ポイントをきちんと押さえているのに簡潔.
 実に素晴らしいですね.

 ありそうでなかった内容の本で,スローン教授には「いい仕事したなあ」と肩を叩いてあげたい思いです.

[中略]

 芙蓉書房さんのこの種の書でいつも言ってることですが,著者あとがきだけでなく,訳者あとがきが実に充実しています.
 うれしいことです.
 平山教授も訳者あとがきでおっしゃってますが,各章の最後にある論文・書籍紹介は,次の段階に進みたい人に格好な読書ガイドとなっています.
 地味ですが読み手にとり実にありがたくうれしいポイントといってよいでしょう.

 「いまの軍事・安保環境」を掴みたい.
 そう思っているあなたにおススメの一冊です.

------------おきらく軍事研究会(代表・エンリケ航海王子)
http://archive.mag2.com/0000049253/index.html
2019.4.6

『作戦司令部の意思決定 米軍統合ドクトリンで勝利する』
著:堂下哲郎
発行:並木書房
発売日: 2018/10/5
http://okigunnji.com/url/352/

 おはようございます,エンリケです.

 本著は,作戦司令部の意思決定プロセスがわかる書ですが,スタッフ組織の意義,大切さを理解,再確認できる点でも実に優れた内容です.
 わかっていそうでわかっていない,リーダーシップと意思決定の関わりを把握できます.
 作戦指揮官の意思決定は,作戦司令部がなければなしえないことがわかるとともに,これは何も軍だけのはなしじゃないぞ?ということに気づかせてくれます.

 危機対処にあたる「戦う組織」には,優秀で生産性の高いスタッフ(幕僚)能力が欠かせません.
 そのキモとなるのが,「長い年月の間に普遍化されてきた軍の意思決定プロセス」です.
 そこで堂下さんは,米軍が長年かけて作り上げた統合作戦司令部の「意思決定プロセス」の公開情報を元に,ご自身の艦隊司令部,米中央軍司令部等での経験を通じて感じたことなどをまとめあげ,すべての「戦う組織」の参考になる「作戦司令部の意思決定技法」を世に問われました.

 著者によれば,この本の目的は2つあります.
1. 軍事作戦を「規模との戦い」と「不確実性との戦い」という2つの側面からとらえる
2. 抽象度の高い戦略論や,個々の兵器レベルではない「作戦レベル」で,軍事作戦がどのような考え方や手順で計画・実施されているかを提示する

 政治・外交がらみの戦略レベルのはなしや,兵器レベルのはなしに終始するだけでなく,この本を通じて,両者をつなぐ「作戦レベル」の感覚を持てるようになり,現実の国際情勢をより深く把握できるようになるので,より正鵠を射た情勢判断へとつなげることもできるでしょう.

 本著の概略は次のとおりです.

 第一章は,戦いの階層,作戦の成り立ち,作戦術やJOPPの考え方を理解することで議論の土台を作る章です.

 つづく第二〜四章で具体的な手順の説明が行われます.

 第二章は,JOPPのステップ1と2にあたる初期的な「作戦アプローチ」の解説です.

 第三章は,前章で導かれた初期的な「作戦アプローチ」に対して,空間や時間的要素のアレンジを加え,「分岐策」などを組み込み,フェーズに区分して「作戦アプローチ」を完成させて視覚化する手順が解説されます.
 あわせて明らかになったリスクとその対策,計画作業を進めるうえで必要な仮定や制約,作戦評価や情報収集の準備を進め,JOPPの前半の作業のまとめとして,計画チームが行なった検討結果を部隊全体にブリーフィングして,以後の計画作業の指針を示すところまで描いています.
 通常の作戦アプローチはこれで完成です.

 第三章までで,作戦計画作りは計画チームの手を離れ,第四章からは,関係する全部隊の司令部の作業の解説となります.

 第四章は,「使命分析ブリーフィング」と「計画指針」として示された「作戦の包括的指針」を受けて,部隊ごとに「行動方針」を練り,ウォーゲームで分析・検討し,作戦計画や命令案を作る手順の解説です. 計画や命令が完成したら作戦の実行段階へ移行します.

 第五章は,作戦を実行する作戦司令部の組織や態勢について解説しています.
 「作戦指導」のあり方,業務処理上の工夫,指揮下の部隊や上級司令部との同期性を確保する方策,指揮官の意思決定や作戦指導のための4段階サイクルとそれを支援する態勢について説明しています.
 最後に「作戦指導」にあたってのいくつかの留意点について触れられています.

 第六章は,意思決定を阻害する「落とし穴」とそれを回避する方法について述べられています.
 意思決定を阻害する「要因」「落とし穴」は,意識することである程度回避することが可能であり,「レッドチーム」を機能させることでなお効果的になることがわかります

[中略]

 作戦はいかに設計されるか?を解説しながら,司令部というスタッフ組織への目を拓いてくれる軍の意思決定のリアルを伝える実用書.
 豊富な戦例を通じて血が通った解説.
 北鮮情勢や戦史の実例を取り上げたコラムなど,実のある読み物が充実したこの本を,あなたにもぜひ読んでほしいです.

------------おきらく軍事研究会(代表・エンリケ航海王子)
http://archive.mag2.com/0000049253/index.html
2018.10.9

『情報化時代の戦闘の科学 軍事OR入門 改訂版』(飯田耕司著,三恵社,2008.9)

 軍事意思決定に不可欠な知識である「軍事OR(オペレーティング・リサーチ)」の歴史的背景,主要理論を説明した実務入門書.
 内容は意外に平易だが,理系の数学やシステム工学・経営工学になじみのある人でないと,最初は少しとっつきにくいかもしれない.
 ただ,軍事ORについて書かれた一般書はおそらくこれだけだと思うので,少しでも興味がある人は早めに手にとっておいたほうがいい.
 この種の本はすぐに消えてなくなってしまう.
 著者の忌憚なき各種批判も,ひとつの読みどころ.

――――――おきらく軍事研究会)平成21年(2009年)3月15日

『統合軍参謀マニュアル』(J.D.ニコラス・G.B.ピケット・W.O.スピアーズ著,白桃書房,2009.9)

 積んでて読んでないから詳しくは言えないが,1959年に書かれた,アメリカの統合軍(陸海空軍の統合運用を行う組織)所属の参謀向けのマニュアル.
 中身は本当に実務参謀向けのマニュアルで,歴史や組織,国家戦略の話もしてるけど,作戦計画の策定,情報の分析の方法や会議をうまく行うコツ,さらに異なる組織の出身者が在籍する統合軍参謀としての心得といった,実務的な話が多い.
 巻末には分析などのテンプレートと,用語解説が付いている.

――――――軍事板,2010/08/19(木)

『猫でもわかる防衛論』(市川文一著,大陽出版株式会社,2018/3/21)

 この本は,あなたの防衛論の目を拓く虎の巻です.

 おかしな安保防衛の国会論議に的確な批判を,
奇妙な軍事防衛をめぐる報道に一喝を,
安保防衛軍事に関して変なことを口にする人々をひと言で黙らせることばを発揮できる知的ツールが,この本には詰まっています.

 元になっているのがメルマガ連載だから言うんじゃありません.
 メルマガ連載ではできなかったビジュアル面が充実しているこの本は,単なる連載まとめ本ではありません.
 著者もお書きになっていますけれど,防衛軍事の幹の部分に焦点を合わせたこの本は,軍事防衛に無縁だった防大新入生が,生まれて初めて防衛を学ぶレベルの内容です.
 理解に当たって軍事知識も安保知識も必要ありません.
 足し算引き算さえできれば理解できる,画期的にわかりやすい防衛論入門です.

 防衛論入門を謳う本を苦しんで読んでも,防衛や国防軍事の知識が増えるだけで,理解がさっぱり深まらなかった.
 もしかしたらあなたもそうではないですか?
 なら,苦しまずに読める真の防衛入門書を読めばいいんです.
 そんな本です,この本は.

戦力とは?
同盟とは?
集団的自衛権とは?
個別的自衛権とは?
核戦力とは?
などなど,軍事防衛安保を考える上で必須の概念理解が,これほどわかりやすく頭に沁みこむ本を,これまで読んだことありません.

 そう,この本は防衛を理解したい人のための虎の巻なのです.

 まずはあなたが読んでから,大切な人に勧めてあげてください.

[中略]

 著者の市川さんは,元陸将補[★★ 陸軍少将],元武器学校長.
 防衛ジャーナリスト・桜林美佐さんがMCをつとめる「国防ニュース最前線」(チャンネルくらら)に出演されているほか,弊マガジンで毎週水曜日20時に配信している「意外と知られていない面白兵器技術」の著者でもあります.
 略歴はつぎのとおり.
-------------------------------------
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ.長野県出身.防衛大学校27期生.1983年,陸上自
衛隊に入隊.
2002年に1等陸佐に昇任後,第13後方支援隊長,統合幕僚監部
人事室長,装備施設本部武器課長,陸上幕僚監部武器・化学課
長,東北方面後方支援隊長,愛知地方協力本部長として勤務,
2015年陸将補に昇任後,陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官.
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 ここまで読んでくれたあなただけにこっそりお話ししますが,特におススメしたいのは,核戦力の解説(第2章)です.
水爆とは?
核融合反応とは?
核分裂反応とは?
など,核を語る上で欠かせない常識もゼロからわかります.
 ここだけで一冊本を作ってもいいんじゃないか?と思うほどわかりやすくて完成度が高いです.
 これまで読んだ核兵器に関する解説では,もっともわかりやすく,ツボを心得た内容です.
 この快感をあなたにも味わってほしいです.

 心からおススメします.

追伸
「ネットから得られるのは情報で,本から得られるのは知識だ」
と喝破した方がいますが,そのとおりと感じます.
 同じものでも形が変わると質が変わるということでもあります.
 スポンジに水が沁みこむように,脳髄に栄養分が沁みこむように,自分の中に新たな知識が沁みこんでゆく快楽は,残念ながら本を読むことからしか得られません.

 おススメです.

------------おきらく軍事研究会(代表・エンリケ航海王子)
http://archive.mag2.com/0000049253/index.html
2018.4.21

『武力戦の諸相』(佐久間一総監修,内外出版,2008/6)

 わが自衛隊将校が集結してまとめあげた,今を生きる国民のための陸海空軍事教科書.
 陸戦を安村勇徳退役陸将,海戦を金田秀昭退役海将,空戦を大串康夫退役空将がそれぞれ代表してまとめあげた労作.
 他に例を見ない軍事啓蒙教科書であり,ぜひ手にとってほしい.

 ただ,ボリュームがそれなりにあり,少し高い.
 本格的教科書のため,分かりやすさという点で少ししんどく感じる人もいるかもしれない.
 しかし,この本のレベルをクリアしないと,政治に対する意見具申はできない.
 壁は乗り越えるためにある.
 ぜひ手にとってほしい.

 陸海空軍事の歴史,風土の違い,戦い方のセオリー,言葉・用語の違いもよく分かる.
 何度も何度も読み返してエキスを脊髄に染みわたらせる必要のある基本書といえるだろう.
 充実した索引,数十ページにわたる用語解説,佐久間退役海将の簡にして要を得たあとがきなど,どこをどう見てもわが国を代表する軍事教科書といえる.

――――――おきらく軍事研究会)平成21年(2009年)3月15日

『巻物 兵法大極大星伝』

 明和2年に鹿股次興という人物が,瀬戸五郎太に書き記した写本.

 大星伝などという事は,この兵法も武田流なのであろうかなどと.
北斗北辰・・・何故か死兆星が書き記されて・・・
理之大星
盤上の円,玉水上の胡蘆
心の大星
陽徳
・・・などと書かれても,どこら辺が兵法なのかと?
 一説には大星を分解すると,一人日生となり,これは天照を表しているとかいないとか.
 これに大極を組み合わせたものだから,時勢によって書かれた見解が,変化するものであるのだろうけど,結局書いてある事は,
「天を味方に付ければ,絶対に負けません」
なのであったりする.
 勧善懲悪というか,正しいが正義という理論というか.

 兵法というよりは,戦陣訓のような心構えに近いものかもしれない.
228 :名無し三等兵:2012/03/15(木) 23:52:20.17 ID:???

 孫子にも 「未だ戦わずして廟算して勝つ者は 算を得ること多ければなり」とある.
 当時 開戦出兵に際しては 先祖の霊廟で画策し 儀式を行うのが 古代の習慣であった(岩波『孫子』)

 その写本は孫子のリアリズムが確立される以前の より古い兵法書のことかもしれん.


232 :名無し三等兵:2012/03/16(金) 00:45:17.08 ID:???

 角川映画の「天と地と」にも,諏訪神軍という,意味不明なユニットが出てきてたなあ...
 史実の諏訪神社は普通の小豪族だったから,普通の小部隊だったはずだが.


235 :名無しの愉しみ:2012/03/16(金) 22:40:18.96 ID:???

 とりあえず,お侍さんは易経が必須科目だったんですぜ.
 ちなみに,易は未来を占うのではなく,ただ道を示すだけなんだそうだ.


237 :名無し三等兵:2012/03/16(金) 22:59:30.54 ID:???

 易教って決断テンプレ集みたいなもんだよね.
 コイントス法もあるから,試してみるといいよ.
 けっこう味わい深いから.


240 :名無しの愉しみ:2012/03/16(金) 23:11:43.88 ID:???
>>237
 易が決断のテンプレ,というのには同意ですね(笑


250 :名無し三等兵:2012/03/17(土) 08:01:09.14 ID:???

 迷った時にやるのが占いなのだから,決断テンプレ集である以外にないのである.
 殷の頃はなんでも占いだったが,春秋のころにはすでに,「迷う状況になければさっさと決めて実行だ」と言っておる.


251 :名無し三等兵:2012/03/17(土) 13:07:00.20 ID:???
>>250
 そういうことじゃなくて,それがオープンソースのアプリとデータベースになってておもしろいよ,って話だよ.
 易教なんてそんな高い本じゃないし,けっこう遊べるよってこと.
------------軍事板,2012/03/14(水)~03/17(土)

『ミリタリーバランス2010年版』

 折角の円高なので,発奮して買いました.
 当方ゆるいミリオタにつき,
「栄光のロシア陸軍が今や現役36万人ぽっち.
 だけど予備役は2千万人,戦車はやっぱり2万両」
とか,
「今のポーランド軍はレオ2とF16を装備してる」
とか,
「オーストラリア陸軍はM1A1持ってるのね」
とか,
「フィジー陸軍の保有火砲は儀礼用の25ポンド砲4門と81mm迫撃砲12門で全部」
とか色々飽きません.
 10年前の2000年版もあるので,両方見比べとかで,夏はこれで乗り切れそう…

――――――軍事板,2010/08/16(月)~08/17(火)


 俺がいつも注目しているのは,ウルグアイ軍の機甲装備なんだが,まだM4生き残っているのかあそこ?
 10年位前にパラグアイから中古のM4を買い取って,M4勢力を増強するという,世界一貧乏臭い軍拡をやったんだが,その後どうなってるのか気になる.

 中南米に渡ったM4は大抵,ブラジルのエンゲサがアップグレードしたり更新しているんだけど,この手のM4の中古を買い取ることで機甲戦力を維持しているんだよな,ウルグアイ.
 たぶん世界で最後のM4現用国だと思う.
 あとコロンビア陸軍の改修型M3スチュアートも気になる.

 ミリバラの見所は南米とカリブ海沿岸諸国とアフリカだと思う俺.
 凄い代物が生き残っていて,マニア的に熱くなれる.

――――――軍事板,2010/08/17(火)

 【質問】
 『デビルドッグ』とか『外人部隊の日本兵』みたいなドキュメンタリー物で,何かお勧めはない?

 【回答】
 密着取材や回顧録といっても陸海空他いろいろあるな.

 行間を読んで
「こんなのは気に入るんでは?」
と思ったのをニ,三挙げとく.
 どれも入手は容易.新版の在庫あり.

・暗闇の戦士たち―特殊部隊の全て (朝日文庫) アロステギ,マーティン・C
 西側特殊部隊モノとしては一番まとまってると思う.

・戦争ボランティア-高部正樹
 日本人傭兵モノブームの走り.この系統としてはフェイクも少なく内容的にしっかりしてる.

・極秘捜査-麻生幾(文春文庫)
 オウム事件の警察・自衛隊のオペレーションのドキュメンタリー.非常に生々しく詳細.

・兵士に聞け-杉山隆男(新潮文庫)
 自衛隊のありのままの姿を光と影を区別せずに迫った好著.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 現場指揮官の手記みたいなので,オススメなものって何でしょう?
 特に国とか時代とかはないんですが,そういう指揮官達の苦労や仕事が知りたいです.

 【回答】
 そういう条件では,戦記本の5割くらいが当てはまってしまう.
 100冊でも200冊でも.
 やはり時代とジャンル(陸海空など)を絞った方が回答し易い.
 とりあえず,読んだ中で思いついたのを挙げておく.

 海戦では
『艦長たちの太平洋戦争』
『25歳の艦長海戦記』
『鉄の棺―Uボート死闘の記録』ヘルベルト・ヴェルナー

 陸戦では・・・
『擲弾兵』クルト・マイヤー
『サムライ戦車隊長―島田戦車隊奮戦す』島田豊作
『若き将軍の朝鮮戦争 白善燁回顧録』白善燁
『ベトナム海兵戦記―アメリカ海兵隊員の戦闘記録』アーネスト・スペンサー

 空戦では・・・
 零戦乗りの苦労を知りたいのなら『修羅の翼 零戦特攻隊員の真情』(角田和男著,光人社NF文庫,2008.10)とか.
 勝った側は?というならゼムケの『P-47サンダーボルト戦闘機隊』
『飛行隊長が語る勝者の条件 最前線指揮官たちの太平洋戦争』雨倉孝之

 最後のはインタビュー集なんで,ちょっと条件から外れるかもしれないがお薦め.

軍事板,2010/04/20(火)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 初心者で申し訳ないのですが質問させてください.
 最近「沖縄・ペリリュー島戦記」を読んで,ノンフィクションの1兵士の物語に興味が沸いたのですが,その手のジャンルでは何がオススメでしょうか?
 どの戦争か,主体となる国はどこか,などは特別問いません.

 【回答】
・佐々木春隆のシリーズ
 下級士官の視線で中国戦線の実相を捉えている名作.
 まず『長沙作戦』を読んでみて,面白ければ他のを読んだらいい.

・土井全二郎
『歴史から消された兵士の記録』
『ガダルカナルを生き抜いた兵士たち』

 お奨め.
 一兵士の日本軍への恨み憎しみを,インタビューで丹念に引き出した秀作がいくつか.

・神子清『われレイテに死せず』

 最高傑作.
 本当に引き込まれる.
 「これ,小説か?」と疑って,何度もハヤカワのNFのラベルを確認した.
 この本は常に在庫を持っていてほしいがなあ.

・『虜人日記』
http://www.amazon.co.jp/dp/4480088830/

 民間人側から書かれたネグロス戦記.
 必読.
 補給途絶なのに,特に危なげなく終戦を迎えている.
 民間人というにはあまりにサバイバル達者な著者が成せる業なのか.

・『雪の中の軍曹』

・『歴史から消された兵士の記録』

 水木御大のズンゲン支隊の悲劇が書かれていて,本当に憤怒してしまう.
 オレが行けば大丈夫,必ず司令部を納得させるからって現状を伝えに言った軍医さんが,あまりに不憫な結末に.
 オレが撤退の全責任を取る!って言ってた士官も戦死して,責任取れる人もいなくなっちゃって,みんな逃亡兵扱いに・・・
 敵中に遺棄されたちっぽけな歩兵砲1門を,4人の決死隊で取りにいかされて,奇跡的に持ち帰るのだが,帰ってみたら原隊がどこかに消えてなくなってる・・・という砲兵さんの話も.

・『今ここに神はいない‐米海兵隊員が見た硫黄島の地獄』
http://www.amazon.co.jp/dp/4340140023

 米兵士の体験記.
 おススめ.

・『戦場の掟』
http://www.amazon.co.jp/dp/406214865X

 少しだけ古い話だが,いわゆる民間軍事会社に勤める人たちを取材した本.

・『戦地憲兵』 井上源吉著 図書出版社

 華北で一般歩兵として勤務した後,主に華中で憲兵として勤務した著者の本.
 隊内規律維持,占領地治安維持,思想戦といった憲兵の主要な仕事は一通りやっているから,憲兵の概説本としてみても良い本だと思う.

・『戦い,終わらず』
http://www.amazon.co.jp/dp/4890632522

 米軍の現役憲兵将校である日本人が書いた,自伝的な本.
 一兵士・・・と言えるかは微妙だけど(執筆時空軍少佐),この人も隊内での事件対処とかイラクでの対テロ警備とか,陸空軍で割と手広く色々なことをやってるので,独特な書き方と合わせて読みやすいし,面白い本だと思う.

・スタッズ・ターケル「よい戦争」

 WW2全体を取り扱った聞き書き大集成.
 必読.

・オットー・カリウス「ティーガー戦車隊」

 個人の長編.
 ただしこれは,必ずここ
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad/5870/tankist.html
と読み合わせる事.

・あと,『雷撃』もそうと読めない事もないかも.

 下級士官辺りまで範囲を広げれば,陸戦はもちろん航空機パイロットや小艦艇の艦長,中~大型艦乗組員の体験記なんかは沢山ある.

軍事板,2011/10/10(月)~10/11(火)
青文字:加筆改修部分

 欧州戦線の手記的なものなら下記とか

【パンツァー・フォー】カールアルマン(大日本絵画)
【SS戦車隊(上下)】ヴィル・フェイ(大日本絵画)
【コンバット 第二次世界大戦 ヨーロッパ戦域】ドン・コンドン(白金書房)

 特に,コンバットは従軍将兵の手記を集めたもので,陸海空とそろっております.
 せっかくなので簡易目次;
【コンバット 第二次世界大戦 ヨーロッパ戦域】ドン・コンドン(白金書房)
 ビスマルク追撃:海軍大佐 ルーセル・グレンフェル
 北アフリカ   :陸軍大尉 ダグラス・M・スミス
 エルアラメイン:陸軍少佐 H・P・サムウェル
 レーゲンスブルグ空襲:陸軍中佐 バーン・レイII
 カッシーノの激戦:フレッド・マズダラーニ(従軍記者)
 アンツィオ     :エリック・セヴァライド(従軍記者)
 ノルマンディー降下:陸軍大尉 ロレンス・クリッチェル
 ノルマンディー上陸:チェスター・ウェルモット(従軍記者)
 サンロー突破 :アラン・ムーアヘッド(従軍記者)
 火炎放射器  :陸軍大尉 アンドルー・ウィルソン
 ヒュルトゲン  :陸軍軍曹 マック・モリス
 斥候隊(バルジ戦):陸軍伍長 ラス・エンジェル
 バストーニュ  :陸軍大尉 ローレンス・クリッチェル
 ライヒスヴァルト:陸軍兵長 R・M・ウィンフィールド
 レマーゲン鉄橋:陸軍大尉 ケン・ヘクター
 ジークフリート線:陸軍大佐 ウォーレス・チーヴス

 上記,各作戦の書籍なら各種ありますが,主要戦闘実参加の将兵手記がこのラインナップでそろってるのは他で見たことないです.

 この【コンバット】太平洋戦域版もあるらしいのですが,残念ながら私は見たことないです.

Lans ◆xHvvunznRc : 軍事板,2011/10/10(月)
青文字:加筆改修部分

>この【コンバット】太平洋戦域版

 中央公論社(当時)から出た1994年初版の「最前線の戦闘--米軍兵士の太平洋戦争」に,その一部が入ってます.
 まえがきを見ますと,Combat--The War with Japan, edited by Don Congdon, Dell Publishing Co., Inc., 1962 から
「エビゼ島の戦い」マーシャル中佐
「ビアクの洞窟」リーゲルマン大佐
「悲劇の珊瑚礁」ハント大尉
「神風特別攻撃隊と戦って」モリソン提督
の4編が収録されています.

 Amazon見ると中古出品がありますよ.
 急げ!(笑)

軍事板,2011/10/10(月)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 落ち着いて考えると,本当に悲惨な従軍経験は,書物として出ないよね?,死んじゃうんだから.
 書物として出るのは,比較的マシな経験をした人の話だけ

 【回答】
 生き残った人の戦後の生活も過酷.
 戦友会に出てこれない人もいるし.

 勝戦国の艦長経験者でも,戦争終わったらその経歴があだになって,海外で出稼ぎ生活になる場合も.
「元艦長さんですか・・・あなた方が楽しく海戦をしていた時に,我々はひたすら耐え忍んでいたんですよ」
と民間企業の重役に言われちゃうんだよ.悲惨だ.
 興味があったら「死闘の駆逐艦」を読んでくれ.

 【反論】
 いくらなんでもあの艦長の戦後は悲惨すぎるけれど,あの人は海軍の中でも問題有りだったぽいから,元艦長ってのは関係ないんでね?

 本編読んでても,あれは経歴がアダになったというよりも,社会性や性格に問題あったんじゃないかという気がしないでもない.

軍事板,2010/12/02(木)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 スペインのテルシオシステムだとかオランダの三兵戦術だとか,そういう現代の軍システムにつながる昔のシステムを調べたいのですが,どのような書物を読めば良いでしょうか?
 それぞれの制度や組織について詳しく調べたくはありますが,それ以前に全体の流れすら俯瞰できていない状態なので,まずそのあたりを何とか学びたいと思っているのですが.

 【回答】
 やや古い('96年発行)だが,学研歴史群像グラフィック戦史シリーズ「戦略/戦術/兵器事典③ヨーロッパ近代編」
 同じシリーズの④ヨーロッパW.W.2編も全般的な記述は古いものの,巻末ね統計資料が充実しておりお買い得.

 他に,
・マイケル・ハワード「ヨーロッパ史と戦争」
 一冊でさらっとヨーロッパ軍事史を俯瞰できる良書.

・ジェフリー・パーカー「長篠合戦の世界史」
・バート・S・ホール「火器の誕生とヨーロッパの戦争」
・ウィリアム・H・マクニール「戦争の世界史」

 もうちょい詳しいのが欲しいならこのあたり.
 いずれも絶版本なんで入手は難しいだろうが,中身は折り紙つき.
 あとは洋書のオスプレイシリーズとか.

軍事板
青文字:加筆改修部分



 【質問】
 近くの図書館には,改訂前の「ヨーロッパ史と戦争」しか置いてないんだけど,改訂版である『ヨーロッパ史における戦争』とは,ほとんど別物なの?

 【回答】
 2009年版にそって,エピローグと索引が充実.
 あとは,石津朋之の解題が便利.

 文庫なので,買っても損はないと思うよ.

軍事板,2012/05/15(火)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 各国の軍事ドクトリンについて書かれている本は,何かありませんか?
 オールタンクドクトリンやらエアランドバトルの区別がつかなかったものですから…
 今のところ,Wikipediaの「軍事ドクトリン」の項にある,参考文献の『戦争学』を読もうと考えているのですが.

 【回答】
 Wikiからという事は,「戦闘教義」ということで,古代含めてですか?
 ならば下記あたりはどうでしょう?

「戦闘技術の歴史」創元社
1巻:ギリシャ・ローマ
2巻:中世
3巻:近代(ナポレオン前→ナポレオンは4巻)

「軍事の事典」片岡徹也(東京堂出版)

「現代戦略思想の系譜」ピーター・パレット(ダイヤモンド社)←入手困難(主に近代以降)

 もう少し現代にるならば,

『機甲戦の理論と歴史』

『歴史群像』の,「各国教範を読もう」みたいな企画


なども非常に良いと思います.

>オールタンクドクトリンやらエアランドバトルの区別がつかなかったものですから…

 その辺りなら

歴史群像アーカイブ3 現代戦術への道 (学研)
萌えよ戦車学校II型(イカロス出版)

が一番良いかもしれません.
 その後に
「機甲戦の理論と歴史」
に入ると良いかと.

 その先は・・・またのお越しをお待ちしてます.
 赤い世界が待っておりますので><

Lans ◆xHvvunznRc : 軍事板,2012/05/20(日)
青文字:加筆改修部分


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