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<総記FAQ目次
(画像掲示板より引用)
「Togetter」◆(2010/09/25)塹壕に於ける白兵戦の王者,または音をたてずに人を殺す10の以下略
「Togetter」◆(2011/09/28)だよもん星人による『主戦等陣地の前縁(FEBA)の解明の難しさとその重要性』
「Togetter」◆(2011/11/15)「整備兵氏(@seibihei)の陣地攻撃についてのお話」
「カラパイア」◆(2010.2.20)【動画】世界最強の格闘技は何か?科学的に解明してみた
【質問】
会戦とはどんな戦争ですか?
【回答】
対戦する両軍が特定の時機に特定の場所で出会うべくして出会って戦闘となる,そういった戦争です.
予期しない場所や時機にばったり出くわして戦闘となる遭遇戦と異なり,十分な準備で相対することになるので,双方とも見事な戦いを展開することとなる場合が多いと言えるでしょう.
ワーテルローの会戦とかが典型的.
【質問】
リデル・ハートに言わせると,アドルフもフレデリックもエパミノンダスの応用ということになるらしいが,欧州の戦術思想は古代ギリシャから進歩していないの?
日本史板,2009/08/24(月)
青文字:加筆改修部分
【回答】
単純な流れでも,
古典期ギリシャの単純な重装歩兵戦術
→ペロポネソス戦争に始まる散兵の活用
→アレクサンドロスによる諸兵科連合
→ローマのマニプルス戦術とそれを発展させたコホルス戦術
→古代後期〜中世前期の東ローマの重装弓騎兵戦術
→中世騎士のランスチャージの全盛期
→中世後期における長槍歩兵の復活
→火器とテルシオ戦術の普及による騎兵の衰退
→グスタフ・アドルフの三兵戦術による騎兵の復活
→常備軍の発達
→マスケット歩兵による横隊戦術
→ナポレオン期の散兵,縦隊,横隊を組み合わせた混合隊形,
と2000年の間に目まぐるしく変化しています.
トビ in FAQ BBS,2010/2/21(日) 16:34
青文字:加筆改修部分
【質問】
>2000年の間に目まぐるしく変化しています.
変化はしていますが,ループして一回転して元に戻っているように思うのですが?
結局,ナポレオンや米独立戦争時代になって,ようやく古代ローマを超えたのではないかと.
<対応表>
ランスチャージ⇔古代の戦車
中世後期の長槍歩兵⇔ギリシャの重装歩兵
三兵戦術⇔アレクサンドロスの諸兵科連合
常備軍の発達⇔ローマ共和国から帝国への変化
季節労働者@mixi in FAQ BBS,2010/3/1(月)
21:50
青文字:加筆改修部分
【回答】
古代オリエントの,主に機動射撃プラットフォームとして運用された戦車と中世の重装騎兵の共通点はなんでしょうか?
結果として似たような武器でも,対歩兵用の武器として生まれたサリッサと,対騎兵用に発達したパイクでは,運用法も発生した理由も違います.
例えば,常備軍が発達した理由の一つに,古代の書物による影響があった事などは否定できませんが,表面的に似ているからといって,安易に「一回りしている」と判断するのは危険だと思います.
そもそもの話,軍事システムに「進歩」とか「退化」という概念を当てはめる事自体が,間違っていると思います.
生物の進化と同じく軍事システムもその時の地理,社会制度,技術,文化などに適応して戦い,そして周りの環境が変化するにあわせて,軍事システムも変貌していきます.
ある環境によりうまく適応できるシステムが存在するのは確かですが,それを「進歩」とか「退化」などという言葉で評価したり,優劣をつける意味があるとは思えません.
密集隊形が消え去り,散兵戦術が取って代わったのは散兵戦術が,それまでのシステムと比べて「進歩」していたからではなく,単にライフル銃の普及という環境の変化により適応していたとう事なんです.
古代の軍隊も中世の軍隊も,その時の環境にもっとも適した方法で戦っていたわけで,それをどっちが優れていたかとか退化したのか進歩したのかなんて,議論する事自体が的外れなんじゃないかと……
トビ in FAQ BBS,2010/3/4(木) 20:2
青文字:加筆改修部分
【質問】
日本の戦国時代では,信長の三段撃ち(異説有り)が知られていますが,西洋近世(太陽王からナポレオンまで)では,配列を変えて撃っていたのですか?
それとも一斉に撃って,一斉に弾込めするのですか?
それとも撃つ人,込める人と分担していたのでしょうか?
【回答】
ライフル銃が一般化するまでは一斉装填一斉射撃が基本.
ライフル(旋条)が刻まれていない滑腔銃は,命中率が低かったので,近距離で一斉射撃しなければ相手に大きな損害を与えることができなかった.
また,当時は黒色火薬なので,射撃後に煙が立ちこめ,すぐに視界が悪くなるため,装填補助が要るほど連続射撃はできなかった.
たとえば19世紀初頭の戦闘では,横列を組んだ銃兵が歩調を合わせて前進し,100m以内まで接近してから装填し,一斉射撃を行った.
撃たれて倒れた者が出た場合は,後列の兵士がその穴を埋めた.
間合いを詰めたところで銃剣を装着して突撃をかけ,相手の隊列を壊走させるというのが基本.
いわゆる「三段撃ち」みたいな射撃法(反転行進射撃)は,ヨーロッパでは16世紀後半から17世紀にかけては使われていた.
ちなみに言うと,途切れずに撃ち続けるためには3段じゃ無理で6段は必要だった.(最初は10段でやろうとしていたらしい)
似たような戦い方を騎兵で行う「カラコール」という戦術もあったけど,これは全然効果的じゃなかった,というかうまくいかなかった.
【質問】
なんで日本では,ファランクスのような集団戦術が存在しないのですか?
▼ 【回答】
次回から軍板で聞いてね.▲
学問としての日本史とは,なんの関係も無い質問だから.
簡単に言うとナポレオンの登場まで,欧州の軍事思想が古代ギリシヤから進歩していないのに対し,日本は一足飛びに散兵戦術を確立したから.
これだけだと近代史板や世界史板のオタが噛みついてきてうざそうなので,もうちょい補足.
米独立戦争 米軍ー素人兵の散兵・ゲリラvs英正規軍ー横隊隊形→英軍苦戦
↓
半島戦争 英ウエリントン散兵(小部隊)vsナポレオン不在の仏軍→仏軍苦戦
↓
ナポレオン散兵縦隊戦術→各国がこれにならう
ってのが欧州での流れ.
リデル・ハートに言わせると,アドルフもフレデリックもエパミノンダスの応用ということになるらしい.
日本史板,2009/08/24(月)
青文字:加筆改修部分
▼ 古代のペルタスタイ以来,前哨戦や側面攻撃のため散兵は常に存在していました.
それが密集歩兵に取って代われなかった理由は,弓や投石のみでは密集隊形を崩すのが難しく,また騎兵によって簡単に蹂躙されるからです.
銃が戦場の主役になったあとも,それは変わりません.
散開していては,弾の装填に20秒以上かかるマスケットでは,騎兵の突撃を阻止できないからです.
だから私が知る限り,後送銃やボルトアクション銃の発明以前に,散兵が主兵科になるのは不可能なはずです,
一方,近代以前の日本の歩兵部隊が欧州ほど密集していなかったのは確かですが,屏風絵などを見る限り,「散兵」と言えるほど散開しているとはとても思えませんし,
例えば,長柄隊に散兵戦術を取らせて,何の意味があるのか解りません.
有名な「長柄を同時に挙げ,拍子を合わせて一斉に打ち下ろす」という戦術も,散開していては不可能です.
トビ in FAQ BBS,2010/2/21(日) 16:34
青文字:加筆改修部分
中世・近世の日本の軍事制度は,独自の発展を遂げているので,安易に西洋・中国軍事史と同じ俎上に載せるのは,却って混乱するのでやめた方が良いと思います.
先ず,日本独自の軍事発展史を構築した上で,西洋または中国軍事史と比較するべきでしょう.
…ということを随分前から行っているのだが,ナカナカ難しい.
備とかを取っ掛かりにはしているのだが.
HI in FAQ BBS,2010/3/2(火) 11:55
青文字:加筆改修部分
本当にその通りだと思います.
全く異なる環境で発生したシステムを,片方の土台で比較しても,得られる物は無いでしょう.
トビ in FAQ BBS,2010/3/4(木) 20:2
青文字:加筆改修部分
▲
ファランクス
faq061217fs2.jpg
faq061217fs.jpg
(一部ウソ)
(画像掲示板より引用)
【質問】
攻撃と主導の関連,またその要素は?
【回答】
防御側は,守るべき地積があるのに対し,攻撃側は攻撃主軸の選択,つまり戦闘正面をどこにするかの自由がある点.
これは我に
・接触時機含む時間計画
・主戦場
・機動
等の要素の自由がある事を示す.
防御の受動性を克服するために着意すべき事項は,
・敵の機動自由を奪う事(障害)
・上記と併せ主戦闘正面を限定出来る要衝となりうる地形に戦闘陣地を築く事(築城)
・効率的火力運用に努める
・柔軟性な機動打撃能力を持った機動予備の待機
・これらを活かす情報資料
まだまだあるが大きくはこれらに留意すべきである.
日0TK@おっぱいマイスター ◆Y2ynCgeGhk
in 軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
軍事評論家松村劭氏が
「攻撃側が兵力同等以下で攻撃した例の方が56%と多く,劣勢で攻撃成功する確率は72%であるから,攻勢3倍の法則は戦後の日本だけで言われる誤った俗説である」
と主張していることを根拠にして,近代的で堅固な防御陣地を攻略するにも,攻撃側は優勢な戦力である必要は無いと主張する人物が,他板にいたのですが,戦略的攻勢はともかく,堅固に構築された陣地を守る側が攻撃側より遥かに優位であることは,第一次・第二次大戦の塹壕戦や陣地攻略戦を見るまでもなく明らかだと思うのですが?
本当に松村劭氏がこのような主張をしているのか疑問に思いましたので,質問させていただきます.
【回答】
それは見積もりとしてこの程度の兵力が必要であるという話と,実際の戦例でこの程度の兵力で攻略できたという話の違いだと思います.
たとえばベルギーのエベンエマール要塞は,グライダーで降下した空挺工兵で制圧されてしまいましたが,単純な頭数の比率で言えばおそろしく効率が良かったはずです.
また,もう一つ大きいのがどちらが主導権を握っているか,つまり先手を打って攻めているのはどちらかという問題です.
寡兵でありながら大軍を押し捲る話も歴史にはあります.
そりゃまぁ,機械的に3倍則で考えて3倍の兵力を集めたから安心というものではないけど.
軍事板
今手元に無いので確認できないんですが,『戦争学』(文春新書,1998.12)か『新・戦争学』(文春新書,2000.8)のどちらかに記述があったと思います.
あと,近代の戦例に絞った話が,『勝つ戦争学』(文春ネスコ,2002.12)にあったはず.
で,松村氏は更に
「双方の兵力量に3倍以上の格差があるなら,まず決戦は生起しない」
と述べています.
よく考えてみて欲しいんですが,陸戦で兵力量に3倍の差があるということは,劣勢側は編制単位が一個上の規模の相手と戦うことになります.
まずそういう状況なら,普通は決戦を回避しようと試みるわけで.
丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM in 軍事板
また,短期間の戦闘レベルの一つ上の事になりますが,防御側は補給経路を奪われたら,奪回しないかぎり時間の問題.
もちろん防御側は,ソレをとても警戒していますので.
航空機による空中投下という手段も,その航空機を叩くという手が有る.
物理的制約から,投下する航空機は輸送機が中心ですし,速度と高度が低いというあたりが狙われやすいです.
(これ以上はロジの問題ですね)
キルロイ ◆dtIofpVHHg in 軍事板
戦力差
(画像掲示板より引用)
【質問】
「戦術と指揮」を読みました.
質問させてください.
P69〜P73によると,
アクティブ・ディフェンス=陣地防御+機動防御
エアー・ランド・バトル=アクティブ・ディフェンスを発展させたもの
ですよね.
しかしp.282では「機動防御方式」=エア・アンド・ランド・バトルの応用と書いてあるのですが,これはどういうことですか?
アンドが入るだけで意味が変わるということですか?
私も誤記かもとは思いました.
しかしたとえそうでも,「機動防御」がエアー・ランド・バトルの応用であるという意味に取れるため,おかしいと思いました.
「アクティブ・ディフェンス」はドイツの将軍が使ったと書かれてあるのですが,一体誰なのかもわらないです.
見つけたのはwikiのマンシュタインの項に書かれてある「機動防御」だけでした.
さらに「エアー・ランド・バトル」はアメリカ軍が使ったと書かれてあるのに,「イスラエル軍が使った」という記述もどこかで見ました.
もう,何がなんだかさっぱり…
【回答】
アクティヴ・ディフェンスは,機動防御の1形態であり,米軍およびNATOが欧州で想定し策定したドクトリンの固有の呼び名にすぎません.
エアランドバトルも当初は,欧州でアクティヴ・ディフェンスに変わる米軍のドクトリンでしたが,米軍では,その攻撃的な性格から,防御だけでなく,攻撃も含めた広範なドクトリンとし用いました.
またイスラエルですが,こちらはエアランドバトルというよりは,空地一体の機甲戦であり,エアランドバトルのヒントになっています.
<大まかな流れ>
WW2(電撃戦)→対ソ戦で独軍が機動防御を多用 ※これが戦訓となる
→戦後,米NATOが対ソ戦時の欧州戦域の基本ドクトリンとして機動防御を重視しアクティヴ・ディフェンスを策定
→ソ連がOMG構想を進め,アクティヴ・ディフェンスの有効性に疑問が出てくる
→おりしもイスラエルが中東戦争で航空機による航空阻止を有効に使い機甲戦で大成功
→それら戦訓を参考として研究し,米軍がエアランドバトルとしてドクトリン化
(その後,ソ連も対策として,第1梯団強化に偏向したのは秘密です.うらー)
あと,ここいらはソ連側の全縦深同時打撃から,OMG構想への変遷も絡むのですが…
Lans ◆xHvvunznRc in 軍事板,2009/10/19(月)
青文字:加筆改修部分
アクティヴ・ディフェンスやエアランドバトルの流れを知りたいなら,『湾岸戦争
砂漠の嵐作戦』と『熱砂の進軍』がオススメ.
後者は,実際にドクトリン作成に関わった人物の話が中心なのが良い.
また,「歴史群像アーカイブ3 現代戦術への道」にも,エア・ランド・バトルを始めとした,WW2以降の様々な戦術が,よくまとまった形で紹介されてる.
同2の「戦術入門」では,元になったWW2のそれも一通り押さえてあるので,併せて読んでみると理解し易くなると思う.
軍事板,2009/10/19(月)
青文字:加筆改修部分
洋書でよければ下記も.
『The framework of operational warfare』
Lans ◆xHvvunznRc in 軍事板,2009/10/19(月)
青文字:加筆改修部分
OMG
(画像掲示板より引用)
【質問】
では,「ドイツの名将マンテゥフェル(誰なんだ?)が使っていたのは,アクティヴ・ディフェンスとは呼ばない」
ということでしょうか?
ドイツの名将が使っていたのは「機動防御」と呼ぶということですか?
そうすると戦術と指揮 P73 「ドイツのマンテゥフェル将軍は,陣地防御と機動防御をたくみに組み合わせて」と書かれてあるのはどういうことなんでしょうか?
【回答】
簡単にいえば…
マントイフェルの頃には「アクティヴ・ディフェンス」という単語は存在していません(笑)
戦後に,それらの戦例を研究し米軍とNATOでドクトリン化されたのが「アクティヴ・ディフェンス」 .
マントイフェルの取ったのは,陣地防御と機動防御をたくみに組み合わせた行動で間違いありません.
これがアクティヴ・ディフェンスのご先祖様です.
そしてこれを「アクティヴ・ディフェンス」と呼ばないのは,簡単に言えば…
「アクティヴ・ディフェンス」は汎用的な言葉ではなく,米軍とNATOの固有のドクトリンの名称(具体的な作戦方針みたいなもの)だからです.
その戦術方面に具体的に拘束しすぎる所や,そもそもが消耗前提の防勢指向であったり,敵の第2梯団に対する対応力の欠如などが指摘され,
「これってドクトリンとしてどうよ?」
と批判されたのは別の話になりますががが…
もっと砕けて言えば…
Aを改良してBを開発しました.
でもAはAであり,改良後のBの名前では呼ばないですよね.
せめて,Aを説明するのにBが有名であれば,Bのようなものとか言うかもしれませんが…
Lans ◆xHvvunznRc in 軍事板,2009/10/19(月)
青文字:加筆改修部分
【質問】
ありがとうございます.
少し自分でも聞きたいことがわかってきましたので,もう一度聞かせてください
機動防御とはドクトリン(おそらく「戦闘教義」のことでいいですよね)なのでしょうか?
戦術と指揮を読むと,防御の基本的行動の一つとして使用されているように感じます.
wikiにおける戦術での機動防御の説明では,そのようなものとして使用されているようです.
機動防御は戦闘教義なのか,それとも防御の基本的行動の一つなのかが分からないのです.
アクティヴ・ディフェンスが米軍の戦闘教義(ドクトリン)だというのはよくわかりました.
「機動防御」とはドイツ軍の独自の戦い方(戦闘教義)なのでしょうか?
それとも各国の軍隊が防御の時に使っていた防御の行動の一つなのでしょうか?
【回答】
機動防御はドクトリンではありません.
あくまでも基本的な作戦形態の1種の呼称です.
しかし,行動形態であるので,
「ドクトリンとして機動防御を採用する」
というような表現はありになると思います.
なお,西側でドクトリンというと狭義の戦闘教義になりますが,東側の場合,もっと大規模な上位に位置するモノになりますので,ご注意を.
うらー
Lans ◆xHvvunznRc in 軍事板,2009/10/19(月)
青文字:加筆改修部分
【質問】
戦争直前,または戦時中に敵国の軍民問わず重要人物(政治家,軍司令官,企業家,評論家など)を拉致,殺害するのって,作戦としてはアリじゃないかと思うんですが,寡聞にして聞いたことがないし,難しい,意味がない作戦でしょうか?
【回答】
結構その手の作戦は行われている.
有名な山本五十六長官機襲撃作戦とか.
ナチスのラインハルト=ハイドリッヒは,イギリスの特殊部隊に暗殺されてるし.
逆にナチス・ドイツ側も「ラインの守り作戦」(日本ではバルジ大作戦がポピュラーですが)にて,アイゼンハワー暗殺を計画したが,成功しなかった.
イラク戦争でもアメリカは,フセインをことあるごとに暗殺しようとしてた.
ただ,その手の作戦はバレると自国の評価が思いきり下がり,「戦争の正義」を失うことになりかねない.
また相手にも重要人物を狙われる事は解り切っているので,万全(実際万全にできるかは別)の警備体制を取っている.
どうせ特殊作戦をやるなら,それをくぐり抜けて暗殺を実行することにリソースを割くよりは,同じリソースを工場設備の破壊とかに投入した方がずっと効果は高い.
ちなみにチェコ副総督に就任したハイドリヒは,抵抗運動の弾圧と並行して労働者の待遇改善などの宥和政策を行っていたが,その死後ドイツにより「リュディツェの虐殺」などの激しい報復が行われた.
暗殺を計画した英国のSOE(特殊作戦部)とチェコ亡命政府は,ハイドリヒの排除の他に,弾圧によってチェコ国民の対独感情を悪化させることを目的の一つにしていたといわれている.
軍事板
▼ 奥山氏のブログに関連する話題があります.
「首切り戦略」
http://geopoli.exblog.jp/6738529/
http://geopoli.exblog.jp/6747211/
──────────────────────────────────
簡単にいえば(アメリカが)戦争に勝つために相手の政府のトップだけをつぶしてしまう,という戦略のことです.
この戦略の底にあるのは
「一番悪玉のトップをつぶしたんだから,戦争は一気に終結する」
という想定(アサンプション)であります.
──────────────────────────────────
また,ミアシャイマーの『大国政治の悲劇』(奥山真司訳,五月書房,2007/1/28)ではこの首切り戦略を,”非現実的な戦略”と評してます.
理由は実現が困難であり,特定のリーダーを殺しても,側近たちが穴埋めしないとは保証出来ないからだそうです.
ですが,私は必ずしも非現実的な戦略ではないと考えます.
日本のような官僚型の組織,
アメリカようなの民主的リーダーに大きな権限を与える組織,
個人のカリスマによって成立している組織,
細胞タイプの組織
など相手の組織の文化によって,首切り戦略の効果は違うでしょう.
基本的に相手のリーダーは殺せるなら殺したほうがいいんでしょうけど,イラクでのザルカーウィーのときもそうですが,その作戦のために費やした資源は,果たして効果に見合うものだったのか?,という疑問は出るでしょう.
また漫画『海皇紀』でよくある展開ですが,無能な上官が有能な部下の足を引っ張ってくれているのに,結果的に有能な人物を指揮官に就けるということになれば,攻撃側からすればマイナスです.
まとめますと,
相手の組織の文化,
その人物が居なくなった場合の効果(プラス面,マイナス面),
実行にかかるコスト
などを,全て天秤にかけて効果があるかどうか検討する必要があると思います.
また
>その手の作戦はバレると自国の評価が思いきり下がり,「戦争の正義」を失うことになりかねない.
とありますが,これも敵の組織とその人物,そして自国の政治体制次第で必ずしもそうだとは言えないと思います.
▲
【質問】
戦術機動と戦略機動の違いを教えてください.
【回答】
戦略機動:
方面隊をまたがるような数百km以上の移動.
装軌(キャタピラ)は数百km自走させると故障するので,装輪が有利.
概略最高速度70-80km/h前後.
戦略機動中にクラスター爆弾落とされると,高機動車では死傷を免れない.
他の先進国では歩兵は装甲車乗車だが,日本は予算の関係で装甲車配備が少ない.
戦術機動:
敵の砲弾が届くような戦域での機動.
路外を機動する場合も多く,その場合装軌が圧倒的に有利.
戦車は路上70km/h 路外50km/hくらいで走れ,装輪だと路外で戦車に追随は困難だが,自衛隊では予算不足で戦車随伴に96WAPCが配属されていて不評.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
映画『ブラザーフッド』などで共産国の「人海戦術」の映像をみました.
こんな数百数千人の歩兵が無秩序に?突撃するような光景は本当にあったのでしょうか?
小隊や分隊といった編成の意味がない気がするのですが,あれはあれで指揮統率が取れているのでしょうか?
【回答】
例えば,1951年4月の共産軍の第五次攻勢は朝鮮戦争でも最大級の規模のものでしたが,投入された戦力は約35万,これを国連軍の正面約250kmにわたって展開した大攻勢でした.
単純に割り算をすると,1kmあたり1400人を投入したことになります.
これは単純計算に過ぎるにしても,その密度は想像できるのでは.
実際,共産軍は大隊規模での夜襲などざらで,数十個の手榴弾がまとめて飛んできたりしたとか.
共産軍の指揮は銅鑼やチャルメラによる単純なもので,一回鳴らせば突撃,二回鳴らせば投擲といった具合だったそうです.
名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE in 軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
後退と複合行動(これからは遅滞といいますね)とは,どう違うのか?
【回答】
遅退行動というのは,敵の侵攻を遅滞することを目的とする「進む・止まる・退く」を複合させた行動のことです.
しかし,攻撃や防御でも同じ目的を達することはできるわけで,両者も遅退行動ではないか,という疑問は出てきます.
ここで考えなければいけないのは,「目的の有無」なんですね.
遅退行動は,行動だけで成り立っているのではなく,そこには目的が必ず含まれているんです.
たとえば攻撃は,「停止しているか,わが方に進撃してくる敵に対し,我が積極可動的に進撃する戦術行動」であり,防御は「敵の攻撃を待ち受け,あらかじめ準備した場所において交戦する戦術行動」と定義されてます.
いずれも「行動のみ」なんです
しかし遅退行動には「決戦を避け,敵の前進を遅滞して時間の余裕を獲得するため,1〜数線の陣地による抵抗を行いながら後方に移動する防勢的な行動」とあり「時間稼ぎ」という目的が定義に含まれています.
しかし前線では「攻撃」「防御」「遅退行動」は同次元で選択肢にのぼります.
これは,攻撃に「敵の撃破」,防御に「敵の侵攻を阻止」と,限られた目的が既にあるためです.
【質問】
退却戦の場合,平地における退却と,細い山道における退却では,どっちが防御側に有利でしょうか?
個人的には,平地での退却の場合は様々な攻め口からの追撃が可能であるのに対し,細い山道では防御正面が限定できるため,細い山道のが有利と思うのですが.
これが一つと,もう一つ,兵力的には退却側が大軍(2万くらい)で,追撃側が少数(1万)程度だった場合は,結論に違いが出るでしょうか?
【回答】
一言で言ってしまうと状況と,時代及び戦術によりけり.
時代を特定してくれると,それぞれ専門の回答者が答えやすいかもしれないが.
とりあえず,細い山道の場合,退却側は伏兵を置いたり,殿役が追っ手を食い止めたりするのに有利な状態で戦ったりは出来るのだが,一度に大勢が通るのが難しいために,退却そのものが困難(敵に追いつかれやすい,渋滞して退却速度が遅くなる)という場合もある.
その点では,平地の方が進行の障害となる地形は少なく,逃げやすい.
大陸の戦争で古来騎馬遊牧民族が席巻したのは,平地が機動力を活かし,攻撃にも離脱にも有利な地形だから,というのが大きい.
平原に置いて追撃側が少数の場合,反撃を食らうと逆に負ける危険性があるが,元から機動力のある少数部隊だけで追跡を行い,逃げる敵の背中から引っ掻き回して逃げ足を鈍らせ,追撃本隊が追いつく時間を稼ぐことも出来る.
山道の場合,前述の通り道が狭くて大勢が通行できない上に,渋滞起こしていると退却側が仲間同士で身動きが取れず,一方的に後ろから食われてゆくと行ったことも起こる.
しかし追撃側は元から少数なんで,そんな気にしなくていい(比較問題だが)
あと,砲兵がいるならば,山道でもたついている敵を砲撃したり,分断したりもできる事もある.
どのみち,地形に関係なく退却というのは容易な行為ではない.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
「縦深浸透」とは何か教えてください.
【回答】
敵の戦線に広い範囲で攻勢をかけて崩壊させるのではなく,戦線の一点にこちらの戦力を集中させてそこを突破し,突破した後は突破点を広げずに,戦線の後方に向かって,戦況図だとちょうど自軍の部隊が縦一列に並んでいるように敵領域に深く侵攻し,しかる後に部隊を広範囲に展開させて一挙に敵戦線の後方を制圧する戦術.
【質問】
衝撃力とは?
【回答】
衝撃力とは,敵の戦闘力を発揮させないための総合的能力.
具体的には,
・飽く迄AXISによる有機的機動を心掛け,事前計画に固執しない相対的に優越した機動力の積極的発揮による
,敵の防御戦闘指導計画の無意味化
・圧倒的火力による敵前線の破砕を行い,接敵維持部隊の再改編,ダメージコントロール,応急防御にリソースを割くことを強要し,攻勢転位を困難にする.
・出力に優れた通信機材やセンサを活かし,流動的状況に臨機応変に対応し,情報,指揮の相対的優越を作り出し,敵の戦闘指揮を封殺する.
・敵の突撃破砕射撃や支援火力を,装甲,地形地物の積極活用により克服し,敵離脱経路や交通要衝を飽く迄固持しつつ攻撃し,敵の離脱や陣前機動打撃等の機動力発揮を阻害する.
等.
攻勢での主導に関しては,先程の衝撃力,徹底した偵察による地形地物,障害,編成等の情報資料の収集,不明状況の排除が肝要である.
能動的指揮運用による流動的状況の創出と,その積極的コントロールが,攻撃の主導を実現する関連要素と云える.
衝撃力は総合概念であり,特に示すならば,装甲により防護された正確な火力及び,卓越した機動力の発揮により,敵に戦闘能力を発揮させるいとまを与えないこと,等.
またこの場合であれば,特に激烈な攻勢を部隊の能力内で最大限発揮する事――つまり突破不能なのに突撃等の積極的攻勢を継続したり突破後の深追い,無理な戦果拡大はしない――が,衝撃力の維持に繋がる.
築城防御もまた敵に戦闘能力を発揮させない手段だが,そも,戦術とは敵に戦闘能力を発揮させない手段なので,ぶっちゃけ指摘されてもそれとは違うから,としか云えんぞなもし.
日0TK@おっぱいマイスター ◆Y2ynCgeGhk
in 軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
助攻って何?
【回答】
指揮官が自分の使用できる戦力や労力(リソース)の大部分を投入し,作戦の主目標を攻撃を担うことを主攻といいます.
一方,主攻の任務遂行を容易にするために持ちうる戦力やリソースの一部を割いて充てて行う攻撃が助攻.
丼炒飯 in mixi支隊
【質問】
突破正面における助攻の配置,役割は何ですか?
【回答】
一般論で言うなら,こんな感じです.
┣
┣
┣
┣
┣
助攻 ―→
主攻 ――――→
助攻 ―→
┣
┣
┣
┣
┣
丼炒飯◆HY/YgdSbHM
突破口補強のための助攻なら.突破の際,助攻は主攻と敵の間に割って入る.
それらの部隊は,機甲部隊が開けた突破口の維持・補強・拡大が仕事.
例えば,助攻には敵を引きつけて拘束し,敵が主攻へ反撃しづらくする役目もあります.
例としてクルクス戦で独軍は,ソ連突出部の上下(南北)に主攻である機甲部隊を配置し,ソ連突出部の先端(西側)に歩兵部隊を助攻として配置しています.
また,緒戦のポーランド戦でも,敵中深く突破する機甲部隊とは別に,ポーランド軍を西部国境に張り付けるために歩兵部隊が配置されました.
それ以外にも陽動作戦として行われる場合もある.
空いたスペースに小野伸二が走り込んできて,彼に相手チームのディフェンスが寄って行った隙に,闘利王がロング・パスのを貰ってシュートを叩き込んだという場合,小野が助攻で闘利王が主攻.
【質問】
市街地戦闘って,どのように行われるのでしょうか?
歩兵で突っ込んだら,高い建物からの狙撃や,伏撃喰らいそうだし,ましてや装甲車を盾にして行ったらRPGでたこ殴りになりそう.
建物だってひとつの町にかなりあるから,部隊がひとつひとつ索敵したら途方もない時間がかかりそうだし.
【回答】
第二次世界大戦のブレスト,アーヘンやベトナム戦争のユエのような例から,イラク戦争のファルージャ(第一次,第二次)のような例,ロシアのチェチェン侵攻でのグロズヌイと,市街戦の事例は様々ある.
具体的に市街地内での戦闘としては,歩兵と戦車が小さい単位で緊密に共同し,歩兵中隊を横一線に並べて,互いの速度を調整しながら面を塗りつぶすように丁寧に掃討していくなどの形態がある.
その前の段階では市街地を包囲し,敵の増援と支援を絶ち,市街地内での移動を遮断し,部隊を市街地へ投じる足場を確保するなどの準備が必要となる.
市街戦のステップを大ざっぱに書くと〜
@掃討する一帯を見渡せる場所・建物を歩兵が確保し周囲の監視.
敵が潜んでいそうな建物に,MBTの機銃やIFVの機関砲を注いだりしてあぶり出す.
反撃があればMBTの砲で潰す.または砲爆撃の支援によって潰す.
A敵の反応が無くなったら前進を試みる.
監視部隊はそのままに,歩兵とリモコン兵器で建物をクリアリング.
MBTとIFVは通りをカバーしつつも,状況に応じて支援を行うが,このフェーズでは特に誤射に注意が必要.
建物が綺麗になる→車両が前進しても真横などからの不意打ちを受けない範囲が広がる→車両も前進する.
クリアリングが終わった歩兵は,そのまま@の監視当番になり,@で監視をやっていた歩兵が次のお掃除当番に.
基本はこの@とAの繰り返し.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
創作で市街地戦を考えていたのですが,建物の壁の耐久性のイメージがどうにも漠然としています.
実際のところどんなものでしょうか?
【回答】
壁の内側に隠れている人間を狙って撃つわけにはいかないでしょ.
小銃の弾が壁を貫通して,偶然背後の人間に当たる可能性は相当低い.
そんな偶然を考慮に入れて戦術を組んだりしない.
砂漠の戦闘で,スモークグレネードの煙に隠れて撤退とか普通にやってるんだぜ.
実際には見えない敵に向かって発砲とかしない.
発砲中は一番スキができるから,逆に別の方向から自分が撃たれる可能性が上がるだけ.
逆に言えば,中に何か脅威になるものがあると判っているなら,壁だろうが何だろうが撃ちまくって穴開けるんだけどね.
そういうのは小銃じゃやらないね.
重機関銃か分隊支援用ライトマシンガンかになると思う.
WW2後期のソ連戦車には,砲塔上に12.7mm重機関銃が付いていたが,専ら対空迎撃ではなく,パンツァーファウスト持ったドイツ兵が立て篭もる建物の壁を撃ち抜くのに使われた.
youtubeにあったファルージャ戦の動画でも,スナイパーが隠れてる場所に装甲車が機関銃を撃ち込んでたな.
軍事板,2010/01/16(土)
青文字:加筆改修部分
【質問】
殿(しんがり)って何?
【回答】
殿とは後備え(あとぞなえ),殿軍(でんぐん)とも言い,後退する部隊の中で最後尾の箇所を担当する部隊を,そう呼びます.
本隊の後退行動の際,殿は敵の追撃を阻止し,本隊の後退を掩護することが目的.
勝ちに乗じて一気呵成に攻めてくる敵を,負けてテンションだだ下がりの兵を率いて,孤立無援の状態で食い止め,本隊を守って交戦しながら退却するのですから,一歩間違えると生命を失いかねない,最も危険な任務です.
【参考ページ】
http://www.sakanouenokumo.jp/dic/archives/2006/01/post_368.html
http://kotobank.jp/word/%E6%AE%BF%E8%BB%8D(コトバンク,使えねーな…)
http://blogs.yahoo.co.jp/tumon100/25594071.html
http://www.nodaj.com/rekisi/rek_03.htm
http://homepage2.nifty.com/inutomononohu/newpage(simaduyosihiro9).htm
子(し)の曰(のたま)わく,
孟之反(もうしはん),伐(ほこ)らず.
奔(はし)りて殿(でん)たり.
まさに門に入(い)らんとす.
その馬に策(むちうっ)て曰わく,
あえて後(おく)れたるにあらず.
馬,進まざるなり.
−−−−−−『論語』雍也第六 十五
【質問】
『後詰め』の役割とは何でしょうか?
何の為に必要なのでしょうか?
籠城する味方への援軍と言う,戦略級での後詰めの話ではなく,味方前衛の直ぐ後ろに控えると言う,戦術級での後詰めのお話が聞きたいです.
【回答】
多分,戦術レベルでの予備戦力の事が聞きたいんだろうね.
後詰めというのは古語だから,現代ではまず使われないよ.
戦況というのは不測の事態や,敵味方の作戦展開で刻々と変化するのが当たり前だから,それに対応しつつ我の主導権を保持し続けるために,戦力の一部を作戦開始時に投入せず,手元に置いておくのが常套手段.
このとき,手元に置かれた部隊を予備というが,多分これが質問者が想定している状況.
攻める時に後もう一押しがほしい場合の増援として,守る時に破れた/破れそうな防衛線の穴埋めとして,後方に予備兵力を備えておくのは,軍事のイロハ.
ちなみに予備というと,一般的な感覚では二線級やみそっかす的なイメージをもつかもしれないが,軍事的にはここぞというときに投入される,とっておきとして精鋭に割り振られる場合が多い役割.
軍事板,2009/08/18(火)
青文字:加筆改修部分
【質問】
とるべき「戦術行動」の違いは,どこから生じるのか?
【回答】
〔略〕
〔たとえば〕ハサミにとって,「紙を切ること」と「肉を切ること」のどちらが効率的な使用法なのでしょうか?
もともとハサミは,薄い紙を切るために使いやすく作られたものですね.
紙じゃなくて布でもまったく同じことです.
ハサミの場合,肉よりも紙や布を切るのが効率的な使い方といえます.
紙や布を力を使わずに切れ,好きな形に切り取れる.
これがハサミを使う最大のメリットといえます.
ですから,ハサミの場合,紙や布を切るのが一番効率的な選択になるんです.
道具を効率的に使わない場合は,補助となる道具を併用したり,使用に当たって細やかな気配りが必要になります.
(肉をハサミで切る場合は,きちんと消毒するとかですね)
戦術行動もこれと同じなんです.
たとえば攻撃という戦術行動がもつ最大のメリットは「敵の撃破」「地域の占領」です.
しかしそれ以外にも,敵をけん制するのが目的の攻撃もあるんです.
この場合,先にご紹介した例でいうと「攻撃という道具を効率的に使わない」場合に相当します.
ですので,「敵の撃破」や「地域の占領」というメリットを得るための攻撃よりも,「目標をどう選定するのか?」「いつ攻撃を始めるのか?」といった面での細やかな気配りが必要です.
どの道具はどういうメリットを持ち,どういう特性を持っているのか?
これを知ることなしに,道具の効率的な扱いはできません.
「戦術行動という道具をいかに効率的に扱うか」の前に,把握しておくべきことがあるんです.
おきらく軍事研究会,平成19年(2007年)3月5日
【質問】
数十人程度の部隊単位の戦闘を仮定します.
敵集団が複数いる場合,強い相手からつぶすのと,弱い相手からつぶすのとは,どちらが推奨される戦い方ですか?
また,敵が複数の兵科だった場合は,優先して潰す兵科はなんですか?
【回答】
歩兵部隊同士ということかな?
会敵した状況などによってセオリーは大分違ってくるからなんともだが.
相手よりも積極的に攻撃に出るには,展開が遅れていると判断した場合なら,敵の行動を阻止しやすい位置で防御して支援を呼ぶ.
相手よりも早く展開できると判断したならば,最初の一撃で敵の継戦能力を奪うべく積極的に攻撃にでるべし.
どちらにしても,同数の歩兵のみで相手を殲滅するのは難しいので,他部隊の支援は欲しいところ.
兵士個人レベルで優先的に狙う相手としては,敵の,指揮>通信>てき弾手>機銃.
ただし,こういう狙う相手のえり好みが出来るのは,アンブッシュで最初の一撃を加えるときくらいで,一度ドンパチが始まれば,とりあえず見える相手から撃っていくだけ.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
敵の位置が分からない状況で,市街地や複雑な山岳地帯でどう動くか判断するのって難しいよな?
典型的なシチュエーションを除けば,絶対的な正しい判断や定石,必殺技みたいなのはなく
「高いところは有利」
「稜線や建物のシルエットから体や銃身さらけ出すと見つかりやすい」
「死角を考慮しつつ注意深く進むべき」
「物音立てない様に注意すべき」
「チーム単位でも個人単位でもお互いに援護することが重要」etc
みたいな基礎的な事柄に気を付けながらがんばるしかない?
【回答】
戦術判断に絶対的とか必殺技なんてものは,そもそも無い.
しかし,状況に応じた妥当的判断は要求される.
ちゅうか,指揮官クラスの訓練ってのは,それを養うもの.
天才的指揮官が常に絶対的に正しい判断を下しても,隷下部隊全員が認識を共有して,その状況に応じた行動を取れなければ無意味どころか大混乱に陥る.
それよりは凡人の定石に則った戦術判断を全員が共有し,限定された戦術行動からの選択であっても,それを確実に全員が遂行する方が,部隊としての任務達成率は高まる.
その条件は敵も同じである以上,敵の動きも,ある程度は予測可能.
軍事板
【質問】
>「指揮統制を正常に行いながら反転し,
>交錯する補給網で一杯になっている道路を通って
>戦闘部隊を後方に通り抜けさせるのはほとんど不可能.
>たちまち言語を絶する交通渋滞に陥って動きがとれなくなってしまう.
>近代的な軍隊は背後から攻撃されれば敗北したのも同然.」
という記述を見かけたのですが,双方数個師団の戦力がぶつかる規模の戦闘についての見解としては,これは妥当な見方なのでしょうか?
【回答】
その部分だけで全体の評価はできないが,その段落だけを考えると,後方が補給路になっているので反転しにくいのはその通り.
ただし反転できないわけではないし,機動戦なら後ろから追及してくる味方部隊もいる.
さらに,補給路が一杯なら背後から攻撃する敵も身動きができなくなるわけで,まず補給部隊を攻撃して蹴散らせば,その先にいる相手の戦闘部隊に反転する余地を与える.
なので,背後から攻撃されることが即敗北とはならない.
むしろ補給路を遮断して包囲したほうが,敗北につながり易いかと.
◆qcfwv4iQQw in 軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
「のぼうの城」で,城攻めで水攻めやってたけど,そんなことをしたら,攻め手も攻められなくて困るのでは?
【回答】
完全に孤立させて外部との往来を断てば,篭城側はいつか物資が尽きて降参か,飢えて全滅するしかなくなる.
城攻めの場合,基本的にはあくまでも拠点である城を無力化することなので,自軍に一兵の損害もなく敵城を機能不全に陥とせれば,それに越したことはない.
もちろんそれにはかなりの時間が掛かるわけだが,元々「城攻め」を決意した段階で,相応の時間が掛かることは承知済みなのだし,場合によっては完全に孤立さえさせれば,篭城側が
「これはもう駄目だ,幾ら篭城しても無駄だ」
と降参してくることもある.
あのように大規模な土木工事を即座に行えるだけの余裕を見せ付ければ,篭城側に援軍の来る見込みが薄ければ,心理的に士気が崩壊してしまうこともありうるし,それを狙うことも出来る.
ただし,
「そんな悠長な時間はない」
という場合には,損害をある程度無視して力攻めするしかないわけだが.
さらに水攻めに限って見てみると,城壁に兵を寄せる必要は無くなる.
囲んで敵の兵糧が尽きる,或いは救援軍が駆けつけるのを,てぐすね引いて待ち受けることになる.
城内との交渉は,氾濫した水面を小舟で渡って行えばいいし,水が完全に満ちなかった場合でも,泥田を渡っていけばいい.
なんなら矢文もあるだろう.
ちなみに,秀吉が攻めた備中高松城の場合,清水宗治は小舟の上で腹を切ったといわれている.
蛇足で,救援軍が来ることを見越して,外側に土塁を築いて防ぐというのもあり.
有名なところではローマ共和政末期のユリウス・カエサルが,ガリア人のウェルキンゲトリクスが篭るアレシアを包囲するとき,二重に土塁を巡らし,防備を固めて兵糧攻めしている.
外側には救援軍から軍団を守る土塁で,内側には町から包囲を打ち破ろうと突出してくる軍から守る土塁を築いた.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
三国志や戦国時代ではおなじみの水攻めですが,現代戦においても有効な手段ですか?
機動力や偵察技術が優れた近年の軍隊には,あまり有効じゃないような気がしますが.
また,近年の戦史において,水攻めが行われた代表例がありましたら教えてください.
【回答】
現代でも水攻めはやばいです.
ただし悠長に水貯めてる時間はないんで,既存のダム吹っ飛ばすのが主流.
攻める側も守る側もやります.
敵部隊そのものを叩くよりも,産業基盤の破壊や想定戦場を水浸しにするなどの,より戦略的な効果が期待されます.
例えば60年代ごろまで,オランダはソ連の侵攻に対し,洪水を起こして防御することを考えていました.
もっともWW2のドイツ軍の侵攻は,洪水では止められませんでしたが・・・
ほかにはノルマンディー上陸のときに,わざと土地を冠水させて空挺部隊を妨害するというのもありました.
実際に溺れ死んだ空挺兵も結構いたようなので,このときは有効だったようです.
これ以外にも、WW2のヨーロッパでルール工業地帯の電力を奪うため,ダムが破壊されてるし,連合軍の進撃を阻むためにダムを破壊して人工的な沼沢地を作っています.
80年代だったかには北韓が,有事には決壊させてソウルを冠水させるのが本当の目的と思われる「水力発電ダム」――ただし送電線も発電施設もない,という代物――を建設.
それに対抗して,韓国側が冠水を防ぐための「愛国ダム」という名のダムを建設したという一幕もありました.
あと,フィクション映画になりますが,ナバロンの嵐という映画を見るといいかも.
軍事板
青文字:加筆改修部分
▼ 中国も日本軍の進撃を止めるために,黄河の堤防を決壊させた事が有りましたね.
死者百万被災者一千万とも言われる災害に,引きあうものだったかは知りませんが.
決壊までしなくてもダムを放水して増水させるだけでも,渡河作戦が困難になるのかな?とも思いました.
hiiragi,2010年01月30日 23:54
当時の黄河にも長江にもダムはありませんでしたから,水攻めで渡河作戦を困難にしようと思ったら,堤防切る以外ありませんでした.
HASU,2010年01月31日 00:33
以上,「軍事板常見問題 mixi別館」より
青文字:加筆改修部分
▲
【質問】
背水の陣って,軍事的には禁忌ですよね?
韓信が背水の陣を敷いて,戦闘に勝利したってのは創作ですか?
【回答】
基本的にやるを勧められない戦法というだけで,それを逆手にとって,味方を精神的に追い詰め,実力以上の力を出すように強要したり,相手を心理的に混乱させたりするためにわざと陣を敷いたりすることはある.
「韓信の背水の陣」が史実で本当に行われたのかはわからない.
ただ,純軍事的に見るなら,その「背水」が本当に誰も渡ってこれないし,向こうから遠距離兵器で攻撃したりも出来ない,のであれば,背後から攻撃されることも全周包囲されることもないので,そういうメリットはある.
サラミスの海戦とかも似たパターンなんだよな.
以下は松村劭「戦術と指揮」より,一部改変の上で引用.
――――――
(中略)
敵の弱点に乗じようとする側がもっとも「ワナ」に自分からはまりやすいのは,あるいは敵の仕かけた「ワナ」にはめられやすいのは,「敵自身に弱点がなく,敵の体勢に弱点がある」場合である.
敵の体勢の弱点に乗じたくなるのは人情である.
しかし,敵もまた自分の体勢の弱点を明確に認識しているのが通常であり,十分対策を考慮している.
場合によっては,体勢の弱点を意図的に攻撃側に示して,「ワナ」に誘致導入をはかることがある.
名将たちはしばしばこの手を使ってきた.
――――――
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
敵を包囲すると有利っていいますけど,具体的にどうして有利になるか教えて欲しいです.
初心者的には,包囲されている側全員が外側を上手く向けば,1VS1になるような気もしますし,背水の陣みたいに,包囲されている側の戦意が向上したりしそうな気もするんですけど.
【回答】
包囲されてるほうは行動範囲が狭くなるから不利
全てが戦闘部隊と仮定すると,包囲されている側は包囲の内側の兵が遊兵化する.
逆に包囲側は現存兵力の大半が敵に接触しているので,兵力を有効に使える.
すなわち軍隊ってのは,古今東西停止した状態で攻撃を受けるのが一番危険なわけ.
例外は城砦や塹壕による陣地などだけど,野戦では絶対に停止してはいけないわけ.
んで,包囲すると軍隊は停止するよね?
すると野砲にしろ小銃にしろ,格好の的になるわけ.
図で見れば一目瞭然.
○○○○○○○○○○○○○○○○
vs
●●●●●●●●●●●●●●●●
○○○○
○ ●●●● ○
○ ●●●● ○
○ ●●●● ○
○ ●●●● ○
○○○○
加えて近代戦だと,後方部隊が壊滅したり,補給路が遮断されたりと致命的なオマケが付く.
包囲されると補給が受けられなくなるから,手持ちの物資が尽きるとそれで終わり.
背水の陣ってのは,奇想天外であり得べからざる戦法を実施したから歴史に残っているだけ.
実際にそんなことをする指揮官は,歴史に残る馬鹿の汚名をかぶらざるを得ない.
軍事板
【質問】
色々な戦争映画を見て疑問に思うのですが,どうして,航空機による攻撃が可能なのに,歩兵で突入するのでしょうか?
たとえば「スターリングラード」では,序盤の戦闘では歩兵が突っ込んでいる(でも,このシーンがすごく迫力あるのですけど)し,先日放送していた,「ワンス・アンド・フォーエバー」でも敵の陣地が分かっているのに,歩兵で突入していました.
ヘリなどから,山の形が変わるくらいにブリブリ爆弾を落とせば,死人が出ずに終わると思うのですが,なぜなのでしょうか?
【回答】
・地上の塹壕やトーチカは意外と耐える.
・投入できる航空機の数も限度がある.
・守る側も穴を作るまいとよそから兵力を補充する
WWIIの硫黄島の話なんか調べられるとわかりやすいかもしれません.
太平洋戦争のときの硫黄島では,艦砲射撃と爆撃で植物が根こそぎ吹き飛び,山の形が変わるほどの火力を叩き込んでも,日本軍とその陣地はおおむね健在でした.
最近の事例ではNATO軍の空爆が行われ,9千発の爆弾やミサイルが打ち込まれたコソボ紛争においてですが,このとき攻撃の標的となったユーゴスラビア軍は,やはり大した打撃を受けてません.
「ほとんどユーゴスラビア軍の戦力は打撃を受けていない.あれだけの大規模空爆で,撃破した戦車は20台くらいではないだろうか」
「陣地構築や偽装,移動などで手抜きをしなかったユーゴスラビア軍は,大規模空爆下でも健在だった.
部隊の動かしかたから見て,指揮通信系等も機能していたことがわかる.
空爆では訓練された地上軍を潰せないことがわかった」
とは,現地視察へ言った外国の軍人の言葉.
ということで,空爆や砲撃は敵の戦力を削るのには役に立ちますが,その殲滅や陣地の占領はできず,それらは歩兵にしかできないってことです.
【質問】
近代戦では,「203高地」や「擂鉢山」なんかの高地の取り合いになるのはなぜですか?
確かに周囲を見通しやすいですが,良く目立つため砲撃の目標になりやすそうだし,補給物資を運ぶのも労力,手間がかかりやすそうだし,遮蔽物もなく危険なような気がしますが.
【回答】
高い場所に陣取ってる側は見通しが効くので,砲撃するにも銃撃するにも有利.
高地を占拠したら砲なんかは稜線の影,つまり山の後ろに置く.
敵からは見えないし当方は好き放題撃てる.
つまり高地自体が遮蔽物になるんだ.
例えば203高地の場合は,そこを奪えば旅順港を見渡せるため,離れた場所から旅順の港を一方的に砲撃できる重要なポイントだった.
ここを奪われると旅順港は事実上使えなくなるので,ロシア側は死守したし,日本側にとっては絶対に奪わなければいけない場所だった.
擂鉢山は硫黄島の上陸予定海岸――硫黄島で大規模に上陸用舟艇が揚陸できるのは,その海岸しかなかった――を広く見通せるので,擂鉢山に日本軍が居座ってる限り,アメリカ軍は安全に上陸できない.
例え海岸を占領しても,延々と擂鉢山から攻撃されることになるので,第1陣が海岸を確保して以降の作戦が困難になってしまう.
なので絶対に確保する必要があった.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
高地に陣地を敷いている敵に対して,効果的な戦術はどんなものですか?
ただ歩兵で突撃したら,203高地のように甚大な被害をだしますよね.
【回答】
迂回してすませることができれば,それにこしたことはないが,高地を放置したら,こちらの動きが丸見え(つまり観測点になる)だし,背後を脅かされるので頑張って落とすことも多い.
基本的に戦車や火砲に支援させ,あるいは浸透戦術で一角を突き崩し,そこを足掛かりに陣地を制圧していく.
昔と違って,陵線の向こう側を航空機で偵察出来るようになって楽になった
モッティ ◆uSDglizB3o in 軍事板
青文字:加筆改修部分
203高地は,高地にいる敵部隊を何とかしなきゃならなかったんじゃなくて,高地を奪取するのが目的だったから攻撃しただけ.
どうしても取ろうというなら,以下のような方法が編み出されてる.
・包囲して水を絶つ.
・迂回して,追撃に出てきたところを叩く.
・穴を掘って地下に仕掛けた爆薬で吹っ飛ばす.
・掃射されないようジグザグに塹壕を掘って接近して,近くから突撃する.
・支援砲撃で,突撃に邪魔な機関銃ポストとか鉄条網を壊す.
・機関銃ポストとかを破壊するのに便利な,迫撃砲・火炎放射器などを歩兵に持たせる.
・航空爆撃などの超絶火力で徹底的に叩き潰す.(これは防御力との兼ね合いだが.)
852 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2009/01/26(月) 19:29:18 ID:???
悪魔の兵器「白燐弾」を使えば,味方の歩兵は無傷で敵陣地にとりつけるよ.
853 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2009/01/26(月) 19:31:58 ID:???
ここは笑心者スレじゃねーぞ.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
『機動戦士ガンダム 08MS小隊』の小説版で,
「ジャングルの戦闘は線ではなく点だから,戦線などというものはない(と考えろ)」
のようなことを言っていましたが,これは本当ですか?
【回答】
視界射界の確保が困難であるため,散兵線や外哨線を構成しての地図上での陣取り合戦が困難.
容易に浸透されるため,線を構成できず,線によって確保された面を維持できない.
これは軽歩兵レベルでの話であり,それに限定するなら本当.
車両化部隊の機動は,限られたルート上に限定される(MSに至ってはさらに限定されるだろう)ため,兵站の維持は基本的に線の奪い合いになる.
軽歩兵にしても車両や航空機に依存せねば,点としてしか存在できないのでは,「地域を確保する」という歩兵の任務を全うできないので,拠点を中心とした面の確保と,兵站連絡線周囲の支配権確保を目指し,これによってより大きな「面」を確保する.
結局の所,線を押し進めていくか,点で塗りつぶしていくかの方法論の問題であって,どちらも目的とする所は「地域(面)の確保」
【質問】
防御戦術で重要なことは何ですか?
【回答】
防御は一にも二にも,予め用意した障害や配置の組み立てと計画的火力運用が重要である.
この際,機動予備の投入時機の決心を始めとした,あらゆる要素を精査,決定しておき,敵の突撃衝力が防御計画を無意味化するのを避けなければならない.
計画的且つ確実に敵攻撃企図を挫き続ける事で,敵の攻撃に間隙を作り出し,そこから一挙に機動打撃する事で,状況の受動性を覆す糸口とする.
また,防御陣地帯には十分な縦深を持たせて,逐次遅滞防御を実施し,敵攻撃の暫減を行う.
これを確実に実施しながら,攻勢転位への機を伺う事が重要.
日0TK@おっぱいマイスター ◆Y2ynCgeGhk
in 軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
森林における防御の方法を教えてください.
【回答】
1 森林外縁部における防御
(1) 森林外縁部においては極めて敵火力の集中を受けやすいので,防御築城は特に留意すること
(2) 外縁部よりも内部に後退した防御陣地を確保し,敵に対して奇襲的な攻撃をしかけるべし
2 森林内部における防御
(1) 森林内部では浸透・突破がたやすく,極めて流動的な戦闘になる場合が多いので
基本的に機動防御をむねとし,常に主導権を握りつつ攻撃的な防御戦闘を心掛ける
(2) 交通上重要な要点を確保し,それらと常に連携せよ
(3) 部隊の統制が難しいので,小規模な独立部隊を多用せよ,またそれらの連携は重要である.
【質問】
現代の戦闘では,火力の迅速な集中と戦車などの突破力があるから,塹壕などは無意味?
どんなに強固な塹壕でも,火砲で細切れにされるだろうし……
【回答】
防御って,永遠に続けていても負けるよ(笑)
防御の意義は,時間稼ぎと地域の確保だからねえ.
攻勢する味方の準備地域や時間を稼ぐとともに,攻撃経路を確保する意味もあるんだよ.
攻撃部隊の準備を助ける(=地域及び時間)防御は「集結掩護」
攻撃部隊の準備及び攻撃経路の確保までをやるのが「進出掩護」
防御部隊の勢力を確保しつつ上記任務を達成するのに,塹壕は有効なわけだよ.
緑装薬4 ◆8R14yKD1/k :軍事板,2006/01/22(日)
青文字:加筆改修部分
逆に考えるとすぐわかると思います.
塹壕なしでみんな突っ立ってたら,砲弾一発でバタバタ殺されます.
仮に最終的には放棄せざるを得ない戦況であっても,殺してください状態で野ざらしは意味ない.
塹壕で頑張って「火力の迅速な集中と戦車などの突破力」を相手に強要し,その分時間を稼ぐと共に,他の戦線での敵の動きを止める.
塹壕は十分有効です.
ただ,昔と違って何週間も保つものではありませんから,戦況を見切って迅速に撤退〜降伏する判断が必要でしょう.
軍事板,2006/01/22(日)
青文字:加筆改修部分
塹壕によって敵軍を食い止めよう,という戦術は成り立たないだろう.
しかし,現代でも塹壕は兵が砲弾や銃弾から身を隠すものとして非常に役に立つ.
むしろ,火力が増大している分,それから身を守る手段としての塹壕の意味は大きいともいえる.
塹壕戦によって国境を守る,といったような意味での塹壕はもはや無意味だろうけれど,塹壕そのものが無意味になった,ということはない.
軍事板,2006/01/22(日)
青文字:加筆改修部分
第1次大戦における塹壕内部:ドイツ軍
(画像掲示板より引用)
【質問】
死守命令(事実上は玉砕命令)を受けて,乏しい戦力で敵地のど真ん中に取り残された指揮官が,圧倒的な敵軍を撃退した後,帰還してきたらどのような処分を受けるでしょうか?
無断撤退の罪で処刑されるでしょうか?
それとも,功績を挙げたとみなされ,昇進や勲章の対象となるでしょうか?
あるいは功績と命令違反の罪が相殺されて,「何もなし」となるでしょうか?
御教示願います.
【回答】
WWIIのドイツの例ですと,第三次ハリコフ攻防戦時,SS装甲軍団を指揮したハウサーは,総統ヒトラーのハリコフ死守命令を拒絶して一時撤退していますが,その後のハリコフ奪還の功績により,この命令違反は問われることがなかったようです.
逆にヒトラーから柏葉騎士十字章を授けられているそうで.
ただ,彼の上司だったランツ中将は,割を食ってクビになっています.
(むしろ彼はハウサーに命令を守らせようとしたのですが・・・)
中間管理職って辛いなあ・・・.
一方,日本軍なら状況の如何を問わず,指揮官は死ぬことになるでしょう.
それも軍法会議を通さない「圧力」によって.
日本軍でこの手の話を探せばいくらでも出てきます.
知られたところでは,ノモンハン戦での無断撤退事件ですね.
第二次ノモンハン事件のソ連軍の8月攻勢によって,ホルステン川の南北にあるフイ高地・ノロ高地などの守備拠点は,包囲殲滅される危険性が出てきたために,24日にはフイ高地の井置支隊・26日にはノロ高地の長谷部支隊が撤退しています.
ところがこの撤退が無断撤退であったと叱責され,両支隊長は自決しました.
そのほかにも,ラバウル戦線でのズンゲン守備隊,ミートキーナでの水上少将の自決など,腹を切らされる,もしくは強制的に玉砕させられるなんてことはありました.
名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE in 軍事板
青文字:加筆改修部分
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