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------------軍事板,2011/12/12(月)

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「朝目新聞」(2013/03/12)●世界史上,一番,人間を殺した人物

「朝目新聞」(2013/03/12)●【ペスト・天然痘】世界疾病史【インフルエンザ】

「朝目新聞」(2013/03/12)●昔から疑ってかかっていた日本史の通説

「朝目新聞」(2013/06/08)●世界史上で最も偉大だった政治家って誰?

「朝目新聞」(2013/06/08)●世界の議会国会の歴史慣習

「朝目新聞」(2013/06/28)●日本の歴史教育「年号を完璧に暗記しろ」 海外の歴史教育「こういうとき,大統領はどうすべきかね」

「朝目新聞」(2013/06/28)●日本史選択者が驚く世界史の常識

「朝目新聞」(2013/07/19)●厨二設定かよwwwな歴史上の人物

「朝目新聞」(2013/07/19)●日本史のトリビアが知りたい!できればあんまり有名じゃないの  (of 哲学ニュースnwk

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「カオスちゃんねる」◆(2012/02/18) 世界史における初期配置の重要さは異常

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「カオスちゃんねる」◆(2013/04/18) 面白い黒歴史のコピペ貼ってけ

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●アジア戦史

アジア歴史資料センター

内陸アジア史学会

ユーラシアを遊び,学ぶ(ブリヤート・モンゴル・テュルク)

『東アジア歴史教科書問題の構図 日本・中国・台湾・韓国,および在日朝鮮人学校』(菊池一隆著,法律文化社,2013/4/10)

●●日本史通史

「MURAJIの戯れ言so-net blog版」:(2009-12-28)やる夫鎌倉幕府第一部 終了

「カオスちゃんねる」◆(2011/11/06)日本史における不思議な出来事,奇談

家系図の倉庫

家紋World

家紋百景

行政歴史研究会
 徳川関係家系図の異様な充実ぶり.本家はもちろん,清和源氏系図,越前松平家まであるとは.
 他に各幕府の歴代将軍一覧や天皇在位一覧など.

近代日本軍事関係文献目録

源平倶楽部

膏盲記(信長・薩摩藩・幕末維新中心の歴史ブログ)

史華堂(室町時代)

事件史探求(昭和史以降)

つかはらの日本史工房

新はむはむの煩悩(相互リンク)

「新はむはむの煩悩」:くずし字辞典

源義経の部屋

     ●●●日本史通史>書籍

『オーラル・ヒストリー』(御厨貴著,中公新書,2002.4)

 副題は「現代史のための口述記録」

 第1章から,非常に興味深い議論が展開されている.
 当事者から情報を引き出すという行動には色々な性格付けがあり,マスコミなどが好む追及,議論型や,アメリカでヒストリアンを雇って 裁判の際の証言に役立てる予防型,日本の年史にみられる記念型などがある.
 著者の場合は,歴史家の検証に役立てるため,敢えて反論はせず,淡々と質問を積み重ね,その質問に対する相手の反応全体を保存する方式を取っている.
 いわば歴史法廷型と言えるだろう.

 ただ,個人的には若干の違和感も.

 ミクリヤさんは『社史』を,毒にも薬にもならない話しか載らない,非常につまらないものとして切り捨てているが,この意見は自分の専門を引き立たせるため偏りが感じられる.
 実際には当たり障り無い表現ながら,当事者ならではの視点から見た分析,実績などがさらっと書かれていることも少なくなく,その企業がある事件などでバッシングを受けているとすれば,それは静かな反論ではないかと考えられる.
 社史に関しては,むしろまだまだ未開拓の領域だと考える方が良い.

 同様に昭和時代以前は,記録を残すことに官僚たちが無関心で,高度経済成長の実態が分からなくなっているとも主張.
 私は高度経済成長時代の出来事を色々調べてきた経験上言うが,ちょっと極端じゃないかな.
 回顧録こそ量は減るかも知れないが,専門雑誌や業界新聞では,討論会なども企画されており,個別のインタビューもある.
 また,技術史の観点からは,当時どのような意図を込めて,その製品なりインフラを造ったかが,より細かい点まで触れられている.
 今では当たり前になっている法律,制度やスキームも同様.
 それを最初に作った時には,官僚個人の思想や省庁間の利害について,表に分かり易く示されていることが多い.

 ただ,この本での話も,私の感想も全て,軍事分野に置き換えても有用なものなので,戦記,証言系の本を漁って歴史を調べている方は,物の考え方を知る意味で必読.

 未開拓領域と言えば,上で示した当時の業界誌もそこに括られる.
 むしろ昭和時代の方が,率直な意見をぽんぽん出していると思われる事例も知っている.
 今の方がかえって,所属官庁のウェブサイトから抜粋しました的な状態とかね.
 どこの学会誌でもそういう,面白くない記事があるからなぁ.

 あれは会員にとっては,ニュースとして読むべき記事なんだろうけどさ.

――――――岩見浩造 ◆Pazz3kzZyM : 軍事板,2011/09/10(土)
青文字:加筆改修部分
 ただし,岩見浩造なる人物の情報は,鵜呑みは避けたほうが賢明な模様.
 その信頼性についての考察は,こちらを参照されたし.

『気候で読み解く日本の歴史 異常気象との攻防1400年』(田家康著,日本経済新聞出版社,2013.7)

『近代戦争史図書目録45/95』(日外アソシエーツ,1996.7)
 戦後日本で刊行された,アメリカ独立戦争(1775〜1783年)以降の国際戦争・紛争・革命などについて書かれた戦史・戦記,軍事史など約5,600点を収録

『皇族軍人伝記集成 復刻』9〜(佐藤元英監修・解説,ゆまに書房,2012.2)

『真相謀反・反逆の日本史 歴史を動かした事件の真実』(晋遊舎,2012.4)

『瀬戸内造船業の攻防史』(寺岡寛著,信山社,2012/9/3)

『対比列伝 戦後人物像を再構築する』(粕谷一希著,新潮社,1982.12)

『チェスト! とことん薩摩の歴史館』(竹下健一著,創年のパレット社,2012.5)

『天皇はなぜ生き残ったか』◆「海洋戦略研究」

『日本人はどのようにして軍隊をつくったのか 安全保障と技術の近代史』(荒木肇著,出窓社,2010/7/14)

■在野の軍事研究家

 この本を書かれたのは,メルマガ『海を渡った自衛隊 〜陸軍史あちらこちら〜』でおなじみの荒木肇先生です.
 本から略歴を引用します.

<荒木肇(あらき・はじめ)
 1951年東京生まれ.
 横浜国立大学教育学部教育学科卒業.
 横浜国立大学大学院修士課程(学校教育学専修)修了.
 日本近代教育史,国民教育と軍隊,日露戦後の教育改革と軍隊教育,大正期の陸軍幹部人事計画などを研究する.
 横浜市立小学校で勤務するかたわら,横浜市情報処理教育センター研究員,横浜市小学校理科研究会役員などを歴任.
 1983年退職.
 生涯教育センター常任理事,聖ケ丘教育福祉専門学校講師(教育原理)などを勤めながら,教育史の研究を続ける.
 近代陸軍は教育機関であり,国民のインデックスであることを主張し,陸上自衛隊との関係を深めてきた.
 主な著書に,『自衛隊という学校,正・続』,『学校で教えない自衛隊』,『指揮官は語る』,『自衛隊就職ガイド』,『学校で教えない日本陸軍と自衛隊』,『子供に嫌われる先生』(いずれも並木書房),『静かに語れ歴史教育』(出窓社)などがある.
 また,メールマガジン「海を渡った自衛隊 〜陸軍史あちらこちら〜」(週刊)も配信中.>

 荒木先生は,教員として仕事をされる以前の学生時代から,長きにわたって軍・自衛隊の研究を重ねてこられました.
 長い研究の蓄積と「学問」(学んで問うこと)の積み重ねを通じて得られた,「軍事への深い理解」があるからこそ,自衛隊,陸海空軍の教育,編制,用兵,歴史や兵器・武器への総合理解がすこぶる妥当で信頼性高く,読み手にひたりと迫ってきます.

 〔略〕

■どういう本?

 本著は,次に代表される「戦後日本の歴史の定説・常識」

・そんなに過去の日本人は戦争が好きだったのか?
・指導者たちは支那や半島をわがものにしようと考えていたのか?
・庶民は騙されて犠牲だけを払わされてきたのか?

に応えるために,次の構想と問題意識を通じて作られました.

 各時代の実態を,「国民の安保への考え方」「軍事を支えた技術」「思想を養う教育」の3つの面から見る中で,戦後日本でいわれてきた軍事にまつわる歴史上の定説・常識を鵜呑みにしてよいものかどうか考える.

 本著の特徴は,
「正確な軍事知識へのこだわり」
「現在の基準で過去を評価しないという,歴史に対する冷静かつ妥当な視座」
「歴史を生きた先達への敬愛」
「軍事教育,軍事技術をめぐる総合的で深い考察」
の4点です.

 印象は,
1.荒木肇先生のこれまでの執筆活動,研究の集大成
2.開闢以来初の「国民向けわが軍事史」の名に値する本
3.軍事理解のために必要な科学的姿勢の基準を提示した書
です.

 ひとことでいえば,歴史上の父祖たちへの温かい視線と冷厳極まりない技術解説が見事に両立した軍事史です.

 読んで欲しいと思う理由は次のとおりです.

1.無機質なデータや事跡の時系列羅列ではなく,人・武器・装備・出来事を主人公とする物語の数々を通じて,建軍以来のわが軍事の歴史が語られるストーリー性.

1.使用している資料は,「偕行社記事」などの軍部内向け本格資料や軍人の言が多く,それらを咀嚼した著者の記述の信用度はすこぶる高い.

1.軍事能力の核となる武器技術と教育を中心に,明治建軍から満洲事変に至る,わが軍事史を総合的に記述した内容で,歴史としての総合性と軍事専門性の両立という点で,他に例を見ない.

1.重要なのに知られざる軍事できごと(軍内部の教育や配属将校のこと,日露戦争の各種失敗など)を,信頼できる資料を通じて,わかりやすく解説している.

1.メルマガ記事を読みなれているものにとっては,ひとつひとつのストーリーの長さが適度で読みやすい.

1.あらゆる歴史事象に対し,現在の価値観で過去を裁く傲慢さがない.
 懸命に当時の現実のなかで評価しようとする姿勢に,信頼と好感を持てる.

1.帝国陸海軍の仕組み,軍事・軍隊の何たるかを,わかりやすく誠実な姿勢で,しかし,妥協することなく科学的に解説している.

 本著を以て国民は,維新以来はじめて,「国民のための総合的なわが軍事史」を手にできたと感じます.
 こういう事業が,ひとりの教育者の手によって成し遂げられたことに驚くとともに,荒木先生に対し,限りなき敬意を表します.

■日露戦争〜昭和初期に至る歴史

 私が本著にもっとも感謝するのは,第3章以降の著述を通じ,日露戦争から昭和初期の歴史に関する苛立ちー―「当時の歴史の全体像と,わが国の進路がおかしくなった分岐点が見えない」―ーを解消する視座を与えてくれたことです.
 どうやら,この時代の歴史を把握するキモは,「RMAと統帥権干犯問題」のようです.

 日露戦争(1904〜1905)から一次世界大戦(1914〜1918 大正3〜7年)の時期に,軍事の世界は大きく変わりました.
 RMA(軍事分野の革命)が確認されたのです.
 大正〜昭和初期の軍縮への動きは,RMAに伴う「軍近代化」という意味合いが,非常に大きかったようです.
 しかるに政治はこのことを正確に理解せず,マスコミ,軍部内の反対派や革新官僚と結託して,統帥権干犯問題の政局にしてしまい,(ちなみにこの主役になったのが前首相の祖父・鳩山一郎でした)陸軍の下克上,海軍の部内亀裂を招く種になったようです.

 このとき政治は,将来の国防の方向性,あり方を真剣に考え,国際社会における力関係,わが国力の実際,必要な安保体制など総合的な視点から,軍近代化という大問題は,軍関係者に丸投げすることなく政治の責任で進めなければいけなかったのでしょう.

 その責任を感じず,軍部に取り返しのつかない重大な傷を残し,将来の禍根を招いたことをさておいて,マスコミ・政治等の当時のエリート層は,それ以降に起きた総ての責任を軍部に押し付け,知らん振りしてきたのではないでしょうか.

 21世紀のRMAは,いまも現在進行形で進んでいます.
 「総力戦」が「新総力戦」,「軍縮」が「軍拡」になるなど,それぞれの言葉は違いますが,RMAに伴う世界規模の軍の変革は当時と同じような形で世界を飲み込んでいます.
 しかるに国民・マスコミの理解は低く,政治も意味を理解できていないようです.

■ここは圧巻!

 291ページからはじまる,「学校教育と軍隊」は圧巻です.
 荒木先生の面目躍如といいましょうか,帝國陸軍と学校教育の関係のここまで詳細な歴史が,一般の人の前で明らかになったのは初めてではないでしょうか.

 多くのマニアは「1925年(大正14年)からの現役将校学校配属制度」が,学校での軍事教育の始まりだと思ってますが,実際のところは明治はじめから行われていました.
 陸軍の要請でなく,文部省の要請ではじまり,文部省の熱意に対し,陸軍は冷淡だったという意外史も記されています.

 そんな陸軍も,現役将校配属制度が始まってからは,最優秀の将校を学校に派遣し,「軍民離間」が起きぬよう細心の注意を払って対応していたようです.
 その証左である,「行われた教育のハイレベルさ」には驚きました.
中学(現在の高校)では士官学校レベル,
高等学校(現在の総合大学教養部)・高専(現在の単科大学)では初級〜中級将校レベル
大学(現在の総合大学専門課程)では陸大履修者レベル
で企画されていたそうです.
 その際,学生に与えられた資料も,優れたものが多かったそうです.

 ところがこれに対する学生・学校側の反応は,次のようなものでした.

<生徒たちは真面目に話を聞こうとしない.
 二言目には,軍人などは頭脳のレベルが低い,体力自慢の人間である.もう戦争など起きないのに,ありもしない脅威を言い立てて,自分たちの飯のタネにしようとしているなどという>
(旧制高校配属の陸軍中佐)

<『軍隊ほど非人間的なところはない.人間の自由を陸軍ではどう考えているのか』
 そういう理屈をいうわりに,身の回りの整理整頓ができない.自由と放埓さを履き違えている>
(旧制中学配属の陸軍大尉)

<学生たちは教授に出会っても挨拶もしない.
 先生の方も,講義中に学生が私語をしても注意もしない.
 大学の構内では物を置き忘れたら,まずなくなってしまう.
 誰もが自分の利益だけを考えている.
 全体のために何かしようとすると,口だけは賛成するが,自分からは実行しない.
 よい会社や官庁に就職することだけが関心事で,学問も成績を上げるためだけにしている>
(ある帝国大学に入学した砲兵大尉)

<職員室では先生たちは,非協力で冷たい目を向けてくる.
 学校長ですら頼りにはならない.
 孤独に耐え,不平を言わず,ひたすら任務を果たすことに没頭すべし>
(某県立中学派遣の歩兵大尉)

「今と同じだ・・・」
 愕然とする人も多いのではないでしょうか.

 荒木先生は
<高学歴者のエリート意識,軍事への無関心さ,不当な評価を下して平然としている態度,学校教員の軍人への意地悪さなどは,現代でも少しも変わっていないように見える>
と指摘します.
 同感です.

■国民の軍事認識は江戸時代に先祖返りしただけ

 荒木先生が,本著で伝えたいもうひとつの重要なポイントは,次の言葉だろうと感じます.
<常説通り,過去の日本人たちがみな軍事に関心を持ち,侵略主義にこり固まっていたというのは,ほんとうの日本人の姿だったのだろうか.
 実は,それはある思想をもった人々の捏造だったのだ.
 近代以来,150年近くが経って,日本人は初めて長い平和の時代を体験している.
『戦争とか,国防なんて,お上の考えることですよ』
と答えた,江戸時代の日本人に戻っただけではないだろうか>
(p.310)

 また,先生は,「軍国主義の国民は軍事音痴である」という外国の言葉も紹介されています.
 先に紹介した,将校たちの言葉もこれを裏付けるものです.
 為政者やマスコミ,国家エリートは,これらのご指摘をよくよく考えなければいけないですね.

 〔略〕

 今回は満洲事変までですが,満洲事変から大東亜戦争開戦に至る時期を対象とする続編の構想もあるそうです.
 実に楽しみです.

 ぜひお読みください.

――――――おきらく軍事研究会,平成22年(2010年)7月28日(水)

『ハプスブルク史研究入門』(大津留厚著,昭和堂,2013.5)

『ハプスブルク史研究入門』を読む 「ハプスブルク」を歴史の中に位置づけて理解するために―― (2013-06-23)■「ストパン」

『早わかり!今さら聞けない日本の戦争の歴史』(中村達彦著,アルファポリス,2011/12)

『明治・大正・昭和華族事件録』(千田稔著,新潮文庫,2005.11)

 何気なく買ったら,しょっぱなから醍醐忠重中将の父親がその甥,つまり中将の歳の離れた従兄弟に殺されていたり,東郷元帥の孫娘が家出してカフェーの看板娘になっていたり,細川護貞侯と酒井恕博伯が学習院時代にホモだちだったり.
 でも一番「これはひどい」と思えたのは,軍事と関係ない,便所に入っていた妻を,汲み取り口から竹槍で突いて重傷を負わせたという本多某男爵.

――――――軍事板

『歴代陸軍大将全覧 明治篇』(半藤一利・横山恵一・秦郁彦・原剛著,中公新書,2009.1)

『歴代陸軍大将全覧 大正篇』(半藤 一利,横山 恵一,秦 郁彦,原 剛著,中公新書,2009.2)

     ●●●琉球・沖縄史

目からウロコの琉球・沖縄史

『海の王国・琉球 「海域アジア」屈指の交易国家の実像』(上里隆史著,洋泉社,2012.2)

『沖縄事始め・世相史事典 復刻』(山城 善三著,日本図書センター,2013.4)

『沖縄の真実 完全保存版 「楽園の島」の歴史と現在』(学研パブリッシング,2013.4)

『新琉球国の歴史 叢書・沖縄を知る』(梅木 哲人著,法政大学出版局,2013.3)

『琉球の時代 大いなる歴史像を求めて』(高良倉吉著,ちくま学芸文庫,2012.3)

●総記書籍

『annal of the siege』

 フランスの軍事技師が著した作.
 仮想の都市がフランスの歴史の節目ごとに攻囲を受けてきたという筋立てで,各時代の要塞技術を紹介.
 図版が章ごとにきちっと入っており,見ていくだけでもある程度内容をつかめる.

 フランスは十字軍の城郭研究でも先駆者が多く,西欧中世史の研究では侮れないというか,フランス史学があるわけで,その背景にこのような好事家の仕事があるのかと思う.

――――――軍事板

『Virtual History: Alternatives and Counterfactuals 』(Niall Ferguson編,Basic Books, 1999)

 タイトルどおり,「if」の歴史を,歴史学者が集まっていろいろ書いたアンソロジー.
 「クロムウェルなきイングランド」とか「英領アメリカ」とか,古手のものもあるが,近代史がメインで,
「カイザーのヨーロッパ連邦(1914年にイギリスが参戦しない)」
「ヒトラーのイギリス(BoBでイギリスが負ける)」
「ナチス・ヨーロッパ(独ソ戦にドイツが勝利)」
なんかが,ベタなネタだが面白い.

 戦後篇として.
「冷戦は避けられたか(ソ連の行動を検討)」
「ケネディが生きていたら」
「ゴルバチョフなき1989年」
なんかも入っている.

 軍事というより歴史で,ものにより玉石混交だけれど,英語が苦でなければ是非.

――――――軍事板,2009/12/02(水)

『亜細亜侵略史』(高橋勇著,霞ケ関書房,1941)

「歴史の歴史たる所以は,事実ではなく,実に事実に対する解釈である」
と,侵略側の都合により描かれた,武力行使以前より,段階的に進んでいく過程を追って書かれている.
 清国との戦争以前に,建前と共にぶち上げられた,民間による現地への経済的浸透,
 これを守るための法の不平等の段階で,もはや侵略の9割が達成の域にあると,その経済,文化的侵略の重さを,武力行使以上に述べる.
 少し古い本とはいえ,アジアへの侵略について,多少なりとも考えさせられる本ではある.

 本当に狡猾だよね,イギリスの植民地政策ってば.
 ちなみに,昭和16年発行.

――――――名無しの愉しみ : 軍事板,2011/09/28(水)
青文字:加筆改修部分

『ヴィジュアル版 「決戦」の世界史』(原書房,2008.5.29)

 図版多数収録って新聞広告にあったから,戦場の詳細マップや対峙する両軍の展開や戦術なんかが,見た目に分かり易く解説されてるんのかなーって思ったら……
 収録されてたのは大半が,戦争にまつわる歴史画なんかでした(泣)
 5k以上したのに……
 文による解説も初心者向けだし,失敗したよう(泣)
 原書房だからコアなミリオタむけと思ったのに.

――――――軍事板

『外国新聞に見る日本 国際ニュース事典』(毎日コミュニケーションズ,1993〜)

 図書館で発見.
 直接軍事に関係ない項目も多いがバックボーンとなる資料として素晴らしい.
 当時の視線・価値観で書かれた外国新聞の記事が,現代の風潮に媚びずに踊っている.
 惜しむらくは原文が並記されてなく,日本語の訳分のみなので,そっちを参照したい場合に一手間かかるという事ぐらいか.

――――――軍事板,2010/12/25(土)

『教養人の東洋史』下(社会思想社,初版1966/4/15)

 今読んでるのは34版1990/6/15.
 抜粋すると,
「中国はなぜ朝鮮に志願軍を送ったのであろうか.
 中国の指導者たちは,それはソ連が参加しないですむようにするためであった,といっている」
 で,
「アメリカとソ連が正面から戦えば,確かに世界大戦の可能性があった.
 また,志願軍と言う形式は,アメリカと中国が正式の戦争状態になるのを避けさせた.
 これは,永く人類に感謝されるべき,賢明な処置であったといえるのではなかろうか.」
「しかも,中国のはらった犠牲は巨大であった.」
と続く.

 こんなんなら,同じ文脈で大東亜戦争も肯定できるわ(笑)
 中国側の「志願軍」という名称が,「戦場を朝鮮半島内に限定したい」というメッセージだったんだろうというのは,実態が正規軍だったことが明らかになった後では,ほとんど通説化した見方だと思うんだが.
 アメリカとしても,戦場を広げたくないという点で利害が一致していたから,「志願軍」の建前を受け入れた訳だし.
 最初から両者の間に「限定戦争」という暗黙の了解があったという点で,第二次大戦とは全く意味合いが違う.
 マッカーサーの思惑通りに米中全面衝突まで行っていたら,話は違うが.

 他にも,北伐中の南京事件について,英米の砲艦が南京市内を砲撃したことは書いてあっても,国民革命軍が領事館を襲撃したことを書いてなかったり,日本が反対してたことを書いてなかったり.

――――――軍事板,2010/02/23(火)

『軍拡と武器移転の世界史 兵器はなぜ容易に広まったのか』(横井勝彦・小野塚知二編,日本経済評論社,2012/03)

 横井さんは日英経済関係,特に技術移転に関する歴史のエキスパート.
 『日英兵器産業史』などの著書があって,結構面白い分野を得意としている研究者.
 本書は,武器移転に関する様々な専門家による論述集で,様々な時代,国の武器の技術移転に関する流れを第一部で追い,第二部では,1933年以降のドイツの武器技術の移転,特に中国を中心とした武器輸出とその国産化支援,一方で,米国からの技術導入によるドイツのモータリゼーションの発展,第1次大戦後のドイツ再軍備に関する技術移転などを主に扱っている.

------------眠い人 ◆gQikaJHtf2 :軍事板,2012/03/10(土)

『殺戮の世界史』(マシュー ホワイト著,早川書房,2013/3/22)

 帯の時点で予測はしてたけど,ジューンガル征伐を,清のオイラト系諸部の移住ガン無視して,さも全滅させたみたいに書いてる.
(おまけに移住者は餓死したとか,大嘘ぶっこいてる)
 おまけに殺戮の世界史とかいいながら,新大陸征服ガン無視してるので,クソ本認定したい(真顔

------------遊牧民@目指せバクシ in twitter◆(2013/03/29)
https://mobile.twitter.com/Historian_nomad/status/317517321021296640
https://mobile.twitter.com/Historian_nomad/status/317517575502311424

『地獄の歴史』(アリス・K・ターナー著,法政大学出版局,1995.9)

 史上,人々は死後の世界をどう想像してきたか.
 シュメールから近現代までの死後の世界を,欧州はキリスト教の地獄の歴史を軸にまとめた本.
 天国はもっぱら精神的で,おぼろげな理想郷でしかなかったが,地獄は肉体的で,過剰なほどに具体的な想像の対象だった事が,よく分かる.
 想像の限りを尽くした,陰惨な地獄観から陽気な地獄観まで,欧州史の根底に流れる罪と死の概念と価値観を知るのに,大きな参考になるだろう.

――――――軍事板,2011/02/14(月)

『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』(ジャレド・ダイアモンド著,草思社文庫,2012.2)

『銃・病原菌・鉄.(上巻)一万3000年にわたる人類史の謎』を読み解く (2013/04/08)◆「国際インテリジェンス機密ファイル」
『銃・病原菌・鉄.(下巻)一万3000年にわたる人類史の謎』を読み解く (2013/04/11)◆「国際インテリジェンス機密ファイル」

『図解 世界史が簡単にわかる戦争の地図帳』(造事務所著,松村劭監修,三笠書房知的生き方文庫,2008/11/20)

 久しぶりに衝撃の一冊.悪い意味で.
 一言で言うと内容が無いよう.
 山川の世界史Bの教科書の方を買うべきだった.

――――――軍事板
 書評じゃないけど.

 書名とは裏腹,地図帳としては使えないのだけど,ポエニ戦争からイラク戦争までを網羅的にあつめた,戦史の概略書にはなっている.
 \638+税という安さなので,情報としては「あらまし」程度.
 この値段で2色刷なのは,頑張っているんじゃないのかな.

 なので,興味が世界史的な方向に進み始めた人に,ガイドラインとしてなら,財布にも優しくおすすめできると思う.

 松村さんも,こういう仕事してたんだね.

-------------軍事板,2012/04/16(月)

『世界史の名将たち 新版』(B. H. リデルハート著,原書房,2010.1)

『世界戦争史』(復刻)(伊藤政之助著,原書房,1984.9〜)

 うちの大学の中央図書館(学部の図書館じゃなくて)の,一般開架に置かれている各出版社の通史概説叢書の間に,全巻並んでて驚いた.
 戦前の陸軍将校が書いたもので,西洋のを中心に記述.
 別冊併せて11巻.
 普仏戦争とか南北戦争が「西洋最近篇」に入っていて,第一次大戦がない.

 しかし実は,原書の「戦争史」では世界現代編として
(一)で米西戦争,ボーア戦争,伊土戦争,バルカン戦争,(第一次)世界大戦,ソ連・ポーランド戦争,ギリシャ・トルコ戦争,モロッコ戦争,エチオピア戦争,スペイン戦争,満洲事変,チャコ紛争
(二)で支那事変 昭和12年〜16年,張鼓峯事件,ノモンハン,ドイツがポーランドからノルウェー,フランス,ユーゴスラビア,クレタ島攻略までを扱っている.

 また,国会図書館では,著者の伊藤政之助の「戦争史東洋編」の生原稿が所蔵されている.
 確か世界現代偏が復刻されなかったのは「この時代なら,今もっといい資料がある.」だが,個人的には現代偏(一)には伊土戦争とかソ連・ポーランド戦争とか,他に日本語文献があまり無い戦史もあるので,世界大戦や満洲事変を割愛してでも復刻して欲しかった.

――――――軍事板,2009/07/21(火)
青文字:加筆改修部分

 ちなみに,チャコ戦争は木俣滋郎著『世界戦車戦史』に一章を割いて書かれていますね.
 後,ソ連・ポーランド戦争は彩流社から阪東宏著『ヨーロッパ/ポーランド/ロシア 1918-1921』が中々面白いですよ.
 伊土戦争は『平和を破壊した和平』の上巻で取上げていたか,と.

――――――眠い人 ◆gQikaJHtf2 in 軍事板,2009/07/22(水)
青文字:加筆改修部分

『世界を動かした21の演説』(クリス・アボット著,英治出版,2011.2)

 政治指導者の世界観を,その演説を手がかりに探ろうとする試み.
 チャーチルの海岸演説,ビンラディン,アジェンデの最後の演説,レーガン,ブッシュ,サッチャーのフォークランド戦争勝利宣言,アイゼンハワーの軍産批判など,紛争関係のものが多い.

 イラク侵攻時の英陸軍中佐ティム・コリンズ「カインの印」演説が出色.
 こういう場面でのしゃべりは,イギリス人が一番だと思う.

――――――軍事板,2011/02/11(金)

『戦史に学ぶ勝利の追求』(ブライアン・ボンド著,東洋書林,2000.6)

 リデルハートの愛弟子,だとか英国の第1人者だとか書いてあったので興味を持ったんだけど,内容はぬるいです.
 論拠が乏しくて,内容自体の信憑性もイマイチですかな.
 第2次大戦あたりから怪しくなってきて,
「あなたがそう断じた根拠はナンなのよ?」
という感じがそこかしこ.
 まぁ,戦史をかたるのではなくて,勝利への追求を戦史から学ぼうと言う試みなので,真偽自体には重点を置いていないのでしょう.

 最後は綺麗にまとまっていたけど.

――――――名無しの愉しみ in 軍事板,2010/01/13(水)

「侵略戦争を始めた日独は,国土を灰にされて当然.
 原爆投下やドレスデンの非人道性など,敗者のたわごと」
だの,
「ベトナム戦争でアメリカが負けたのは,軍事を知らない反戦運動家どもが,背後で足を引っ張ったから」
だの,これが英国軍事史学会長の書く本かぁ?,とドン引きしてしまったよ.

 いやね,戦史的な部分に大ポカはないんですよ,戦史的な部分にはね.

――――――軍事板,2010/01/13(水)

『戦争と資本主義』(ヴェルナー・ゾンバルト著,講談社学術文庫,2010.6)

 興味ある部分を拾い読みした程度だが,近世頃の戦争の諸形態の変化と,経済の進展について書かれてある.
 軍隊の装備,給養,被服,造船について数字を挙げながら書かれていて,無味乾燥な数字の羅列だけではなく,近世の軍事史として見ても面白い.
 『図説 英国の帆船軍艦』に興味があるのなら,こちらもお勧め.

――――――軍事板,2011/08/03(水)
青文字:加筆改修部分

『戦争の世界史』(ウイリアム・マクニール著,刀水書房,2002.4)

 やっと読み終えた.
 軍事も歴史も素人の俺には,かな〜り歯応えあったけど,面白いわ,これ.
 つかオランニュ公マウリッツって,天才じゃね?

――――――軍事板,2010/12/23(木)

『戦争の世界史大図鑑』(R. G. グラント編著,河出書房新社,2008.7)

『戦争の日本近現代史 東大式レッスン!征韓論から太平洋戦争まで』(加藤陽子著,講談社新書,2002.3)

『戦争の変遷』(マーチン・ファン・クレフェルト著,原書房,2011.9)

 ようやくを読了.
 主権国家が政治目的のために戦争をするという,クラウゼヴィッツ的世界は近代の産物であり,古代中世近世現代の戦争を,クラウゼヴィッツの視点から見るのは適切ではない――っていうことを一生懸命説明して,これからの時代は低強度紛争であり,クラウゼヴィッツの戦争観がこの時代にそぐわない以上,クラウゼヴィッツの戦略観(ジョミニ等の近代戦略思想も)もまた捨てるべきである,っていうことを言っている.

 個人的には好きではない.
 冷戦の終盤やポスト冷戦期の軍事学史を,研究する上での価値はあるかもしれないけど,戦略思想の古典としての価値は持ち得ないと思う.
 そもそも,「戦略思想の古典」という地位を得ることを目的としてるわけではないから当然だけど,クラウゼヴィッツ批判の先行研究としての価値も,一応付け加えておく.
 やっぱり思想や哲学みたいな観念的な世界に入り浸ったり,タイタニック号を沈没させる方が好きだな.

-----------------軍事板,2011/10/19(水)
青文字:加筆改修部分
 クラウゼヴィッツの戦争論が前提とした,戦争とは「三位一体」(国民,軍隊,政府)の存在が,国益の為に争うもので,根本的には合理的行動であるという彼の戦争認識は,ウェストファリア条約成立後のヨーロッパを中心とした,ごく限れた時代と地域にのみあてはまるものであり,古代,中世,そして第二次大戦後の現代においては,的外れなものとなっている,という指摘をしている.
 現代の国民国家において,ハイテク装備を揃えた正規軍は,その力によってなんらかの政治目的を達成することが,極めて困難になっており,また主要先進国同士においては,核兵器という戦争後の結果として,確実に破滅が予想できる兵器システムの登場により,事実上戦争は不可能になったという事実を確認している.

 一方でまた,WWU後の世界において,正規軍同士の交戦で戦われた紛争の犠牲者の数が,著しく少ないことに反比例して,低強度紛争によっておびただしい数の犠牲者が出ており,こうした形態の戦争(低強度紛争)が,なんらかの形で先進国に飛び火する危険性について,警鐘をならしている.
 そして,正規軍同士の激突する通常戦争は死に掛けており,そこで使われるために洗練されてきた戦略や,ハイテク戦闘機,爆撃機,重装甲の戦車といった,大型で高価の兵器は存在価値を失い,未来のハイテク軍隊は,監視や追跡といった能力に技術をつぎ込むことになるようになっているのかもしれない……
 現代や未来に関しての分析は,こんなところ.
 戦争実行の主体として,山の老人(アサシン派)のような指導者が現れるかもしれないと予言していたが,これが2001年に(もっと前から彼はアメリカと戦っていたが)誰の目にもわかる形で現実化したのはご存知のとおり.

 著書の大部分は,かつての戦争において,誰が,何故,どのような手段によって戦ってきたのかを振り返ることで,戦争の歴史を振り返るとともに,上記のような認識にいたった経緯を,読者に納得させようとしている.

 俺はおもしろいとおもった.
 戦略論の類を読む人間には薦めておきたいし,軍事史好きにも楽しめると思う.

-----------------軍事板,2011/10/19(水)
青文字:加筆改修部分

『戦闘技術の歴史1 古代編』(サイモン・アングリム著,創元社,2008.8)
『戦闘技術の歴史2 中世編』(マシュー・ベネット著,創元社,2009.10)
『戦闘技術の歴史3 近世編』(クリステル・ヨルゲンセン著,創元社,2010.10)

 執筆陣が西洋軍事史が専門の欧米人なためか,イスラム世界の軍事に関する記述はあまり無いのが残念な所.
 オスマン帝国のイェニチェリとかは取り上げられてたけど.
 東洋は最終巻で取り上げられるからまだいいけど.

------------軍事板,2012/02/16(木)

『大国の興亡』(ポール・ケネディ著,草思社,1993.3)

 いい本ですよ.
 下巻の 中級大国の危機(ミドルパワーの危機)辺りからでも面白いと思いますよ.
 上巻は 明帝国が内に籠もっていく様から書かれてますから,1500年以降の世界史を知る上でも良書でしょう.
 で,1988年に読んでからずっと読み返してますよ.

 年齢を重ね,読み返すと深みが増していく,不思議な本でもありますな.

――――――軍事板
 上下を計160円でゲット.
 105円の本が,年末セールで80円になってた.

 実は上だけ入手済みだったのだが,今回見つけた上下は「決定版」と書いてあったので,ダブり覚悟で2冊ともレジへ.
 家に持ち帰って確認したら,先に入手した上は1988年に出た旧版だった.
 しかし脚注や参考文献などが略されており,1993年にそれらを追加,また気になる箇所を改訳したと,「決定版」の訳者あとがきにあった.

 ちなみにこの「決定版」は,2002年の第4刷.
 割とこつこつ刷られてるのね.

――――――軍事板,2010/12/25(土)

『「たら」「れば」で読み直す日本近代史―戦争史の試み』(黒野耐著,講談社,2006.8)

 〔略〕
 本著は,戦後教育を受けた大多数の人にとってブラックホールとなっている日露戦争から大東亜戦争までの時代に関する解説本です.
 「世界の中の日本」という観点から,11個のシチュエーションを切り取り,「あのときもしこうしていたら?」を軍事常識に基いて検討する過程で歴史を解説しています.
 歴史シミュレーションは「しょせんはあと講釈」との感を否めないものです.
 しかし国際的に見ると,優秀な歴史家は結構やってるんですよね.
 たぶん,わが国で展開されているシミュレーションなるものが,あまりにお粗末かつ幼稚なのでこころある人はそっぽを向いている,というのが現状なのでしょうね.
 でもこの著書は,私と同じ思いをしている方にもたぶん楽しめると思います.
 理由は2つあります.

1.日露戦争から大東亜戦争に到るまでのわが歴史を知ることができる
1.国家指導部の意思決定に必要な軍事的知見を知ることができる

 〔略〕

 たしかにシミュレーションですが,歴史書とよぶ方がいい感を持ちます.
 先ほども書きましたが,戦後教育を受けてきた人間には本著で取り上げられている期間の歴史知識(その前提となる軍事常識)がほとんどありません.
 あったとしても著しく歪められたものです.
 脳のリハビリという観点からも,本著を手にとって頂きたいと思います.

――おきらく軍事研究会,2006年10月30日

『通貨燃ゆ』(谷口智彦著,日本経済新聞出版社,2010.5)

 タイトルからは,円・ドル・ユーロの今後を占う経済本のように感じますが,軍事ネタ満載.
 地政学,ドルの投資額からグルジア紛争を警告.
 すごいじゃないですか.
 2005年の時点で,グルジア問題にこれだけ解説した本は,軍事関係でも少なかったのでは?
 もっと早く読んでいれば.
 朝鮮戦争では,北が韓国銀行の内部へ侵攻した時の顛末,
 あまり朝鮮戦争に詳しくない自分にとっては,面白く読んでいるところです.

――――――軍事板,2010/02/24(水)

『日本人のための世界史入門』を読み解く (2013/05/26)◆「国際インテリジェンス機密ファイル」

『ビジュアル博物館63 戦闘』(リチャード・ホームズ著,同朋舎,2000.8)

『文明と戦争』(アザー・ガット著,中央公論新社,2012.8)

『歴史と視点』(司馬遼太郎著,新潮文庫,2009.9)

 目的は陸軍戦車兵としてのエッセイ.
 読んでみると,独特の捕虜観をお持ちのようで.戦陣訓と軍人勅諭が全然違う重みという事を,わかりやすく解説.
 マニアには常識でも,素人+には非常に為になる.

 「降倭」について話は全く知りませんでした.
 WW2だけで日本人の戦争観を決めようとしてはだめですね,
 歴史は幅広いというのを学びました.
 良い本です.

 日本人にとって戦争とは,イヤ・スキの次元であって,「戦争はイヤだ」程度の認識なら,また戦争する可能性が高い.
 戦争は「できる・できない」の次元で考えて欲しいとの事.

 ところで,R元大佐ってどなたでしょうか?

――――――軍事板,2011/07/13(水)
青文字:加筆改修部分

 【質問】
 大学に行って日本史の勉強をしたいのですが,どこの大学がいいですか?
 また,そこの大学に行くには,何の勉強をしたらいいですか.
 中学生です.

 【回答】
 まずは本を読むことが大切.
 関心のあるテーマについての研究書を,分かり易いものから読んでいくこと.
 自分の興味のある所から,少しずつ深く,また広く他分野にも.

 同時に,大手の出版社が出してる概説書で,おおまかに通史を把握しておくことが必要かと.
 まあ,興味のある時代だけ読んでもいいんだけど,いちおう流れをつかんどいた方がいいからね.
 まだ中学生だから,視野を拡げる意味で,いろんなもの(歴史関係以外も)を読むべし.
 今の興味ある分野以外に,もっと強く興味を持つものが出てくるかも知れませんし.
 僕は元々戦国史に興味があったけど,大学入ってから古代史に目覚めたので.
 時間はあるから,今は自分の知識を広げることに頑張ってください.

 研究書についてどんな本を読んだらいいのかは,学校の先生に聞いてもいいし,大きな図書館や歴史資料館に問い合わせるもよし.
 本を読む以外にも,史跡や博物館などへ足を運んでみるのもいいね.

 あと,ふだんの勉強も,自分のやりたいことと関係ないと思っても,人並みにはやったほうがいいです.
 専門バカになってもしょうがないし,なにより高校,大学へと行くためには必要なので.
 とりあえず受験のためには,全教科できるようになっとかないと.
 地理は最低日本地理の地名や位置関係は把握してる方が良いでしょう.
 大学の講義は,とりあえず概論→史料購読→演習という風にステップアップしていきますから,今のうちから深く詳しい知識を持ってなくても大丈夫だと思います.

 また,個人的ですが,大学を選ぶ基準は3種類;
・学びたい学科・専門のある大学
・感銘を受けた・直接教わりたい教授のいる大学
・東京や京都の大学(近くに史料が豊富)
参考にしてみてください.

日本史板,2003/04/08
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 歴史学を独学で修めるのにオススメの書って,挙げるの無理?
 やっぱ歴史学は師匠がいないと,日本じゃダメなのかな.
 最近は独力でいろんな資料を,国を超えて集められるようになったから,地道に論文かけたらいいなあと思うんだよね.

 ちなみに応用物理学会と機械学会には論文出してるけど,人文系の学会や論文慣習は,オープン文書で読む以外全くわからんので,先達にご意見を伺いたいところ.

 【回答】
 歴史学者と対等の扱いを受けるには,独学じゃ難しい,
 肩書きは作家か,せいぜい郷土史研究家になると思うぜ,ってのは置いておくとして.

 岩波テキストの福井憲彦『歴史学入門』は,
 歴史学の考え方,研究史概説みたいな本で,ノウハウ的な本ではないが最初に読むには,言葉が堅くなくて悪くない.

 もうちょっと具体的なノウハウになると,加藤陽子のホームページが手軽なところ.
 日本近代史中心にはなってるが,歴史学の演習授業の進め方,資料の探し方,卒論の書き方の手順など,いろいろまとまってる.
 政治的にバランスが取れた戦争の歴史を書くってのも,ポイントだろうね.
http://www4.ocn.ne.jp/~aninoji/index.html

 あと,理系論文を書いたことがあるなら,わざわざ読まなくてもいいかもしれないけど,木下是雄『レポートの組み立て方』(著者は『理科系の作文技術』の人ね)は,文系学部の一年の時に指定図書で読まされて,よくできてる本だと思った.
 見出しの付け方みたいな構成の方法論,調査時のメモの作り方,参考文献の引用法,原稿用紙(今は関係ないなw)の使い方などなど.

 自分のテーマが絞れてきたら,その時代・地域の文献学の教科書を探すと,それに則した史料批判のお作法がまとまった本が出てくるかもしれない.
 関連研究やってる研究者のテキストや,大学で講座持ってるならそこの教科書とか,その辺から探してくと良いのが出てくるかもしれない.

 日本史の歴史研究で古文書扱うようなら,杉浦克己『文献学』は放送大学の文献学の教科書で,まさか悪くない.
 ただ,崩した文字の読み方の話で,いわゆる「史料批判」(厳密にはそのうちの内容批判)の華々しい部分ではないので注意.

 そこまで掘らないで,テキスト情報の信頼性精査(内容批判)のことになると,戦前の本だが,今井登志喜『歴史学研究法』というのが東大出版会から今も出てる.
「江戸時代に成立した本を史料として日本史研究やることが危ないよ」
という実例を通し,史料批判一般論の参考書的にもよく使われてる本だと思う.

 ついでに,数年前に俺がお世話になったサイト.
http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~tamaki/soturon/soturon.htm

軍事板,2012/04/04(水)
青文字:加筆改修部分

 学部生の時に歴史学の研究室に入ってたけど,史料批判の技術教えてもらえなかった.
 代わりに,先行研究をひたすら漁り,一次史料と照らし合わせることを教えてもらった.
 そうすれば
1,先行研究を補強するもの
2,先行研究を否定するもの
3,先行研究の穴を埋めるもの
が見えてくる.
 1と2は,論争を土台にするから組み立てやすい.
 3は,野心的.
 なるべく3を目指しなさいって言われた.

軍事板,2012/04/04(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 受験勉強に役立つ世界史の映画教えてください.
 「トロイ」は観ました.

 【回答】
アミスタッド(奴隷貿易),
トラトラトラ,
史上最大の作戦(第二次大戦),
博士の異常な愛情(冷戦),
アルジェの戦い(植民地戦争),
アマデウス(文化史),
フォレスト・ガンプ(アメリカ現代史の要点整理),
アメリカン・ヒストリーX(一応公民権運動かな?),
適当なゲバラ映画一本(たまにキューバ・ネタは来るので),
地獄の黙示録(ベトナム戦争),
ランボー1(ベトナム戦争後のアメリカ社会),

 近現代史では上記辺りを薦めるけど,もし点数上がらなくても責任はとらない.

ウーゴ ◆eaYqa3SeLE in 世界史板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 最近,金属加工やら冶金やらに興味あるんだが,いまいち何読めばいいのかわからんのよね.
 最新の技術というより技術史(?)が知りたいんだが…….

 【回答】
 技術文化史なら,ルートヴィヒ・ベックの『鉄の歴史』全17巻が金字塔.
 大きな図書館にはあるはずだから,取り寄せも視野に入れれば,大抵の地域で読めると思う.
(俺の市の図書館にあって,ずいぶん世話になった.
 製鉄製鋼の歴史だけじゃなくって,武器製造の歴史もけっこう詳しく書かれている)

 東洋の鉄文化なら『中国の青銅と鉄の歴史』(北京鋼鉄学院編集部,慶友社,2011.1)がいいと思う.
 古代中国の金属加工技術マジぱねぇ.

 もっと軽いのから読みたければ,田口勇『鉄の歴史と化学』(裳華房,1988.7).
 一般に興味を持たれるようなトピックを,膨らませる形で面白く読めるように書かれてる.
 若干,古代への憧憬が強すぎるように感じたのが難点か.

 近現代の日本なら,『現代日本産業発達史』の4が鉄鋼業.

 技術史を学ぶにあたって,技術そのものを簡単に押さえておきたいなら,『図解入門 よくわかる最新「鉄」の基本と仕組み』が,内容的にも入手先的にもお手軽でいいんじゃないかな.
 あと,日本の鉄鋼業は日本鉄鋼協会が熱心なこともあって,戦中戦後の業界動向がよく纏められた本が,何冊も出版されてるから,興味があればそっちも調べてみてもいいと思う.

軍事板,2011/02/26(土)
青文字:加筆改修部分

海軍製鋼技術物語(正続2巻) 堀川一男 アグネ技術センター
海軍装甲技術史 寺西英之 慶友社

 現在,入手可能か判らんが,両方ともある程度,鉄鋼をそれなりのところで勉強していないと,理解が難しいかもしれない…

金属工学入門 西川精一 アグネ技術センター

 金属工学全般の教科書的な内容をまとめた本だな.

軍事板,2011/02/27(日)
青文字:加筆改修部分

 他に,検索してみた限りでは,

『はるか昔の鉄を追って イラストでみる「鉄の歴史」探偵団がゆく』(鈴木瑞穂文・イラスト,電気書院,2008.12)
 中学生向けかも.

『鉄の時代史』(佐々木稔,雄山閣,2008.4)


 【質問】
 あんまはっきりした質問じゃないけど,アナバシスぐらい凄い,ローマか中国か近代ヨーロッパの本ってないの?

 【回答】
『ガレー船徒刑囚の回想』
ジャン・マルテーユ
岩波文庫
1996.9

 ルイ14世統治下のフランスで,宗教的理由から10数年に渡り,徒刑囚としてガレー船の漕ぎ手を勤めたプロテスタントの回想.
 ガレー船の構造や生活が克明に記録されていて,特に戦闘の描写には圧倒されます.
 当時の社会に付いても,興味深い事が色々と書かれています.
 初めて読んだ時は,あまりに波瀾万丈過ぎて小説じゃないかと疑いましたが(笑)
 実際,下手な海洋冒険小説より面白いかと.

 また,「アナバシス」読んだのなら,トゥーキュディデース「戦史」とか,アッリアノス「アレクサンドロス大王東征記」とか,面白く読めると思うよ.

軍事板,2011/04/16(土)〜04/17(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
>草思社の救世主と言えば「銃・病原菌・鉄」

 なんじゃ?,そりゃ.
 題名から内容が想像できない.


 【回答】
 「銃・病原菌・鉄」知らないってマジか?
 ここ数年の世界史本界隈じゃ,かなり話題になった本なんだが.

 簡単に言うと,文明の興亡についての話.
 西欧が他の地域を圧倒して発展した理由について述べてる.
 なぜヨーロッパやアジアは発展できたのに,アフリカやアジア,オセアニアは発展できなかったのか?を,食糧生産や技術革新,生存環境やらをひっくるめて興亡を考察する.
 それまで言われていたような,人種的・文化文明的な優越が勃興の原因ではなく,気候と植生(ひいては農業)の優位により発展し武器(銃・鉄)を獲得.
 銃・鉄・ウマを持たない他の地域(主に新大陸)に対しては,意図する・しないに関わらず病原菌(代表として天然痘)が大いに猛威を振るったという話.

 ある民族が同緯度で東西を移動する有利や,同経度で南北を移動する不利の考察も面白い.

 論が正しいかどうかはともかく,読んでて面白い本ではあるぞ.
 どっちかというと史料じゃなくて,資料を種にした本だけどね.
 基にしてるのが植物種子の分析とかだし.
 歴史学ではなく考古学・人類学寄りでは有る.

 歴史学者には批判されてるらしい.
 人間の選択や意志を軽視し過ぎているという批判.
 その意味では,マクニールの『戦争の世界史』と合わせて読むと非常に面白いよ.
 特にアジアの帝国での私有財産の在り方と,技術の発展の視点で.

軍事板,2010/05/20(木)〜2010/05/21(金)
青文字:加筆改修部分

▼ 最初の農耕と文明の発達部分に関して言えば,これも参考になると思います.
「しぃ助教授の世界史講義」(兵器史とは独立したシリーズです)
農耕と牧畜の開始

Fabius(KT) _ Felix in 「軍事板常見問題 mixi別館」
2010年06月02日 20:45

青文字:加筆改修部分


 【質問】
 アレクサンドロス大王とかの「大王」と「王」との使い分けは,何か明確な定義はあるのでしょうか?
 あるとしたら大王の定義を教えてください.

 【回答】
 アレクサンドロス大王の「大」はMegas.
 つまり「偉大な」アレクサンドロス王ということ.
 ヨーロッパではこんな感じに,君主や傑出した人物に尊称や渾名をつけることが多い.

 君主号自体が「大王」であるペルシア帝国などは別とすると,大王・大帝の基本条件は,「武力で領土を広げまくった人」.
 アレクサンダーとか超典型.
 明確な基準はなくて,習慣的なもの.
 同時代から偉い王様だと思われてそう呼ばれていた,とか,後世にそう呼ばれるようになった,とか.

 関係ないが「大教皇」というのも二人だけいて,うち片方は「口先八寸でアッティラ大王を追っ払った人」.

 ペルシャ帝国の場合は,皇帝の称号がシャー・ハン・シャーで,訳すれば「王の中の王」「王達の上に君臨する王」という意味になる.
 ゆえに王の上位者,すなわち大王.
 とりあえず一民族のトップが王で,複数の民族の上に立つのが大王と思えば良いさ.
 ペルシャ帝国は20の民族からなるんだってさ.

世界史板,2010/01/27(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 世界史上,一勢力によって最大の版図を治めたのはどの国家・勢力ですか?
 本国・植民地・実質上の領域,すべてを含めたものでお願いします.

 【回答】
過去の巨大帝国の面積や,都市人口の推定

第1位 大英帝国 35,500,000 km2 (1920年)
第2位 モンゴル 24,000,000 km2 (1309年)
第3位 ロシア/ソ連 22,800,000 km2 (1895年)
第4位 清/中国 14,700,000 km2 (1790年)
第5位 スペイン 13,700,000 km2 (1780年)
第6位 フランス 11,500,000 km2 (1946年)
第7位 イスラム 11,000,000 km2 (720年)
第8位 アメリカ 9,670,000 km2 (1899年)
第9位 匈奴 9,000,000 km2 (紀元前176年)
第10位 ポルトガル/ブラジル帝国 8,510,000 km2 (1889年)
第11位 漢 6,500,000 km2 (100年)
    明 6,500,000 km2 (1450年)
第13位 突厥 6,000,000 km2 (557年)
第14位 アケメネス朝 5,500,000 km2 (紀元前500年)
第15位 唐 5,400,000 km2 (715年)
第16位 オスマン朝 5,200,000 km2 (1683年)
    マケドニア 5,200,000 km2 (紀元前323年)
第18位 ローマ 5,000,000 km2 (117年)
第19位 吐蕃 4,600,000 km2 (800年)
第20位 ティムール 4,400,000 km2 (1405年)

 やっぱり大英帝国らしいね.

世界史板


 【質問】
 なぜ自虐史観だの自慢史観だのといったものが飛び交うのですか?

 【回答】
 普通の人々は誰も歴史を知らないし,知らないことを知らないからです.
 普通の人々が歴史だと信じ込んでいるものは,歴史によく似た神話に過ぎないのです.
 学校では細部まで詳しく教えられませんし,日常でも殆ど必要ではありませんから,大まかな流れしか知らない人が大半ですし,人によってはその大まかな流れさえ知りません.
 そういう人たちが「歴史」だと思い込んで吸収する知識は,小説だったり,マンガだったり,映画だったり,週刊誌だったりします.
 そこでは創作や思い込みが容易に入り込むので,史実と似ていても史実ではない「神話」を,「歴史」と取り違えて覚えてしまうことになります.
 そのような思い込みを育てるのは世相であったり,アジテーションだったりします.

 マイケル・イグナティエフ著『仁義なき戦場』では,旧ユーゴスラヴィアの内戦直前の状況について述べられていますが,当時,セルビア人の間では,史実に反してセルビア人の被害者意識を煽るような「神話」が,「歴史」として蔓延していたそうです.
 セルビア人の当時の世相として,ユーゴスラビアでの優位が崩れるという危機感が,そのような神話を定着させることを可能にした背景にはあったそうです.

 また,韓国在住歴の長い黒田勝弘は,韓国における様々な歴史歪曲例を挙げています.
 これは政治的アジテーションが背景にあると考えられています.
 その結果,「古代大韓帝国」のような妄想が教科書に載ったり,世論調査で半数近くが「朝鮮戦争は日本との戦争」と答えるような状況が生じているそうです.

 このようなことは,どこの国でも起こりえることです.
 アラブ諸国における事例は池内恵著『現在アラブの社会思想』を,アメリカにおける事例は町山智浩著『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』をご覧いただければ幸いです.
 そのほかの地域については寡聞にして存じませんが,おそらくは大差ないでしょう.

 一般的傾向として識字率が低ければ低いほど陰謀論がはびこる傾向にありますが,識字率の高い日本でもその例外ではないことは,例の田母神「論文」が示すとおりです.

 ですから,せめて知らないことを知っておきましょう.

 以上,中村うさぎ風に答えてみました.
 ……やはり,3行には収まらないなあ.

【ぐんじさんぎょう】,2008/11/22 21:00

>……やはり,3行には収まらないなあ.

 歴史上の出来事には,今の私たちから見て 『いいこと』 『わるいこと』 があり,自己の好む片方だけ見て,歴史を語ろうとするから.
 綺麗な山も,反対側から見れば,採石場だったりするのです.

――では,ダメか? (w`;

ベタ藤原 in mixi, 2008年11月20日 23:02

>……やはり,3行には収まらないなあ.

 学問と趣味の区別がついていないのです.
 自分の考えていることこそがこの宇宙の真実だ!と勘違いすることが多い.
 多くの場合,自分にとって小気味良い情報だけを取捨選択することで,偏った事象に至ってしまう.

 実際問題,本当にこれまでの歴史研究を蔑ろにして議論するからな〜・・・・・・
 歴史学者涙目,

 あ,でも歴史学者にも似たようなやつはいるから,真っ当な歴史学者が涙目です.

葉月@ in mixi, 2008年11月21日 00:02

 人間は分かりやすいフィクションを,現実に対しても求めてしまうからです.
 以上.

クローム・ツァハル in mixi, 2008年11月21日 18:06

 現代史学がイデオロギー闘争の戦場であった名残でしょう.
 客観的・実証的であるよりも,戦闘性が高くヒステリックなものに,より価値があったわけで.

しまだ in mixi, 2008年11月21日 22:28

――――――
「歴史とは,常にいいかげんなものだよ.
 重要なのは
『真実をどうやって伝えるか』
ではなく,
『何を自分達の都合のいいように伝えるか』
だからね」

――――――『アリソン』(時雨沢恵一著,メディアワークス,2002.3),p.55

キスケ(希助) by mailform

推奨する史観「子猫史観」


 【質問】
 中国軍や韓国軍の幹部候補生達は,きちんと戦史について学んでいるんでしょうか?
 例えば共産軍が国民党軍よりも日中戦争で勝利に貢献した等の,プロパガンダを学ばされていたりはしないんでしょうか?

 【回答】
 プロパガンダを学んだ上で戦史は戦史として,戦訓は戦訓として学んで研究してる.
 上の人がおちゃめして思想教育が吹き荒れる時期は別だけど.
 中国なら大躍進や文化大革命,韓国なら前大統領の人事方針がそれに当たるな.
 北朝鮮? 年がら年中思想教育だらけですが何か?
 過去にはスターリンの大粛清のように,有能だからという理由で大量の軍人が殺される事もあったが,今では軍人はリアリストでないと出世できないぞ.

>共産軍が国民党軍よりも日中戦争で勝利に貢献した

 これ,意外と否定できない.
 つか国民党は,日本は皮膚病だが共産党は癌って方針だったので,中国が日本に抵抗できる体力があるうちに,共産党の芽を摘み取って,そのあと反攻する方針だった.
 ただ,アメリカの支援を受けていたのは国民党だったので,日本軍に対抗するための火力の充実の面で見れば国民党だな.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 「スレッジハンマー(Sledgehammer)」とはどういう意味なんでしょうか?

▼ 【回答】
 仁川上陸作戦.
 機動力の有る部隊と,重装備の部隊とで,敵軍を挟み撃ちにする様を形容している.
 日本語では「金床と鉄槌」という訳が使われる.

 世界の戦史で古くから見られる戦術を表した言葉.

軍事板

(1)
 両手で持って使う大槌.
http://store.shopping.yahoo.co.jp/kougu/ea642kl-6.html

(2)
 WWIIにおける連合軍の作戦名.
 ソビエトまたはドイツが崩壊した際に発動されるはずだった戦争計画.
 フランスのシェルブールまたはブレストに侵攻し,ソビエトまたはドイツのうち,残された国が欧州に手出ししないよう牽制することを目的とした.
 英国の反対にあったために,侵攻地点はアフリカ北部に変更され,ジムナスト(体操選手)作戦(後のトーチ[たいまつ]作戦)として実行された.
http://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Sledgehammer

(3)
 2007年,イラク戦争における米軍の作戦名.
 サドル軍民兵の影響力を削ぐためにジャベラ(Jabella)の町で行われた武器などの捜索・押収活動.
http://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Sledgehammer_(2007_Iraq)

(4)
 アフガニスタン・ヘルマンド Helmand 州における,ISAFによる一連のタリバン掃討戦の一つ,Operation Palk Wahel(パシュトゥン語)の英訳「スレッジハンマーの一撃」作戦.
 Gereshk渓谷からタリバンを放逐することに成功した.
http://www.kojii.net/news/news070928.html
http://en.wikipedia.org/wiki/Helmand_province_campaign#Operation_Sledgehammer_Hit

(5)
 米陸軍第3機械化歩兵師団第3旅団の愛称.
http://www.globalsecurity.org/military/agency/army/3id-3bde.htm

 なお,朝鮮戦争における「スレッジハンマー作戦」というのは日本語だとちらほらあるのですが(ウィキペディア等),英語では朝鮮戦争関連ではまったく引っかからないです.
 ハンマー違いなんじゃないかなあ.▲

たれ(黄文字部分) & バグってハニー in 「軍事板常見問題 mixi支隊」
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 トランプの絵札のモデルは?

 【回答】
スペード
 キング:ダビデ王(古代イスラエル国王)
 クイーン:バラス・アテナ(ギリシャ神話の戦いの女神)
 ジャック:オジェ・ル・ダノワ(カール大帝の騎士)

ハート
 キング:カール大帝(フランク国王)
 クイーン:ユディト(ユダヤの女戦士またはカール大帝の子の妻)
 ジャック:ラ・イル(ジャンヌ・ダルクの戦友)

ダイヤ
 キング:カエサル(古代ローマの軍人,政治家)
 クイーン:ラケル(旧約聖書のヤコブの妻)
 ジャック:ヘクトル(トロイの王子)

クラブ
 キング:アレキサンダー大王(マケドニア国王)
 クイーン:アルジーヌ(シャルル7世の妻,アンジュー公女マリーまたは愛人のアニェ・ソレル)
 ジャック:ランスロット(アーサー王に仕えた円卓の騎士の1人)

世界史板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 日本の戦国時代みたいな感じで,諸将が覇権をかけて戦った時代って,各国それぞれにありますよね?
 その中でも,この国はこの時代の人気がある!って時代を教えて下さい.
 例えば中国の三国時代みたいな感じで,イギリスは〜時代が人気がある〜みたいな.

 【回答】
●中華
・隋末.各地に軍閥が勃興.魏が天下を獲ると目されたが,思わぬ不覚で崩壊.最終的に唐が生き残る.
 「隋唐演義」という小説になっているが,小説のデキ自体はイマイチかも.

・元末.各地に軍閥が勃興.貧農出身の朱という男が郭子興の軍でノシ上がる.
 郭軍閥を相続し,隣接の群雄を撃破・吸収.遂には強大な異民族の王権を追い払ってしまう.
 また政治家としてはかなりの暴君でもあり,ネタとして面白い.漫画・銀河戦国群雄伝ライみたいな話.
 この時代の適当な読み物は,あったかな…?

・『朱龍賦』って作品が元末明初の小説で,貧農出身の朱という男が主役の話.
 朱という男の息子の永楽くんの話も面白いけど,小説になってるかは分からない.

●ブリタニア
・ばら戦争

●ガリア
・フランクの成長期.シャルルマーニュという興味深い人物が中心.
 読み物で言えば,「ローランの歌」が絡む.叙事詩の方ではシュルルマーニュの周囲の人物たちが中心だが.

●西アジア
・モンゴル帝国崩壊期.ティムールがノシ上がる話.
 適当な読み物は,ちょい思いつかんが.

●北アジア
・モンゴル勃興期.滅亡寸前の氏族から,テムジンという男がノシ上がり,周辺の各氏族を吸収していく.
 有能な幼馴染で親友であったジャムカが宿敵に回るという数奇な流れも泣ける.
 読み物で言えば,「蒼き狼」が適当かな.

●東南アジア
 故郷を追われたならず者(出自の家柄は良いパラメスワラという人物だが,腹黒い)が,マレー半島に流れ着き,マラッカという港町を建設.
 これが成長し,それまで東南アジアの中心都市だったパレンバンと抗争した挙句,経済の中枢の地位を奪うという七転び八起きな物語があるが,読み物のことはわからん.

●インド
 ヒンドゥーの領主たちがイスラムの侵攻に抵抗し,最終的には征服されてしまうという悲劇調の叙事詩がある.
 しかしこれは,後年のイギリスの植民地化に不満を抱いた執筆者が,過去のイスラム侵攻に対する抵抗勢力に想いを挿げ替えて書いたものとされる.
 心情的にはイスラム侵攻当時を反映していないのでは?

●アラビア
 アラブが歴史の表舞台に立つことになったイスラム勢力の勃興が,そのまま胸ときめく物語といえる.
 ペルシアの従属的影響下にあったアラビアの一角にすぎない一地方都市で,預言を受けたと主張する男が出現する.
 胡散臭い奴だと追い払われるが,亡命先で年上の妻の協力も得て力をつけ,軍事的にも故郷を奪回する.
 周辺の都市国家を次々と併呑し,アラビアを統一.
 さらには文化的も先進国だった宗主国ペルシア,文化揺籃の地エジプトをも呑み込んでゆく.
 大体は,その宗教団体の教祖であるムハンマドの伝記そのものと重なる.
 読む機会は多いはず.

世界史板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 明治以前の皇居や皇族の守護はどうなってたんですか?
 中世や近代については高校の資料集に載ってたんですけど,近世にも禁衛府みたいなのあったんですかね?

 【回答】
 八瀬童子というのが居て(以下略
と言うのは冗談で,幕府から禁裏付と言う老中差配の役人が居て,その配下に御所の警備,公家衆の監督をする人間がいました.
 また,上皇の警備に関しては,仙洞付と言う役人が担っています.

 維新直前は,十津川郷士が禁裏の警備を行っていたこともありましたっけ.
 京都所司代は,警備と言うより行政のような気がするのですが.

眠い人 ◆gQikaJHtf2

 一応,平安時代から江戸時代末期まで,御所の守護は衛門府だったと思う.
http://www.sol.dti.ne.jp/~hiromi/kansei/o_fu_emon.html#Fu
http://www.sol.dti.ne.jp/~hiromi/kansei/o_fu_eji.html

 京都所司代は京都市内の治安維持と宮廷の監視だから,ちょっと違うかと思う.

 近衛府なんか江戸どころか平安時代中期には既に形骸化してる.
 平安中期は検非違使,後期院政期は北面の武士西面の武士,
 鎌倉時代は大番役,室町時代は禁裏五番,そして江戸時代は所司代.
 要するに平安中期からずっと武士にやらせてたわけ.
 今流行の外注だな.

 幕末の京都だと,防衛と治安の最高責任者が禁裏御守衛総督.
 軍事面から主に京都を守っていたのが京都守護職.
 京都守護職の指揮下にある京都所司代と京都町奉行は,主に司法と治安維持を担当.


 【質問】
 日本で初めての全国政権ってどれになるの?
 聖徳太子のころの大和王権って,蝦夷はともかく,東北も含めた全国の豪族を傘下に収めていたのでしょうか?

 【回答】
 どこまで征服すれば「全国」と言えるかの定義次第.
 聖徳太子の頃だと,東は関東・越後あたり,西は北九州あたりまでか.
 南九州は大隅国設置が713年,隼人の反乱が720年,
 種子島・屋久島の大隅編入が824年.
 東北は…東北の全豪族が傘下に入ったのは平安時代以降だな.
 ”全豪族”という縛りをつけないなら,飛鳥〜平安時代にかけて徐々に傘下に入れていった.

日本史板,2010/01/04(月)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 予備校の世界史の先生が
「アジアの小国日本が大国清,ロシアを倒した」
とある良く見る記述について,少なくとも7世紀から日本は,アジアの大国としての力と文明があったから,日本が清やロシアを倒したことは不思議ではないといい,モンゴルの侵略も2回防いだことにも,
「ベトナムとエジプトもモンゴルを破っているが,日本がモンゴルを破ったのと意味が違う.
 国力がモンゴルや宋やアッバース朝,さらに元を上回って…」
といいます.
 また,
「よく,植民地化を逃れたアジアア・フリカの国として,タイやネパールをあげるけど,タイやネパールが植民地にならなかったのと,日本が植民地にならなかったのは訳が違い,やはり西欧列強並みの国力が日本にあったから」といいます.
 実際どうなんでしょうか?

 【回答】
 その先生おかしんじゃないかな?
 エジプトのマムルーク朝は,独力でフラグの軍を破り,カリフを擁立してイスラムの盟主になったし,ベトナムもモンゴル軍を破り,むしろ追撃までしている.

 植民地化について言えば,国力の有無と植民地化とは,必ずしも相関関係があるとは限らない.
 ご指摘のネパールとタイは確かに植民地化を免れたけど,うまい外交政策の結果.
 属領カンボジアとミャンマーをくれてやることにより,伝統的タイ民族の居住地域を保持.
 ネパールはイギリスの宗主権を認めていない.
 ネパールはグルカ戦争の結果,形式としてイギリスの宗主権を認めたが,王国としての自治は保たれた.

 欧米諸国は機会主義で,日本は,明治政府が法制度や殖産興業など,何から何まで西欧諸国の真似事に走ったために,西欧化という名目で植民地化された他の轍を踏まずに,何とか逃げ切ったのだよ.

 だから日本を過剰評価し,よその国を下に落とすのはどうかと思うな.
 しかも先生がね.

日本史板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 軍事政権につていの質問.
 自称歴史オタクの友人曰く
"「鎌倉幕府」から「大政奉還」まで,日本は軍事政権国家だったと色々なサイトに書かれているが,実際はクーデターで「幕府」がなくなって代わりに天皇中心(建前)の「地方軍事国家連立政権」になっただけで,軍事政権は先の大戦終了までが本当の歴史"
と言っていました.
 これって現代日本史では主流意見なのでしょうか?

 【回答】
 国内に無数の小国が分立し,そのそれぞれが幕府とは別に武装していた体制が「軍事政権」ねえ.

 つうか軍事政権という近代的な概念を,それ以前の体制に無理やり当てはめること自体がおかしい.
 それを言ったら世界のたいていの君主制国家は,その発祥において軍事力を背景に主導権を掌握したわけだから,「軍事政権」ということになる.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 ▼【珍説】
 【質問】
 日本国際ボランティアセンター著『NGOの選択』(めこん,2005.11.6),p.161に以下のように引用されている西嶋説とは,いったいどんなものですか?

――――――
 日本は,東アジア世界から離脱して近代世界に参加することによって,その解体を積極的に進めたのである.
 いわば日本は,東アジア世界が産み落とした鬼子であり,この鬼子は自己の母胎を食い破ることによって,東アジア世界を解体させながら,近代世界の一員となったのである.

――――――西嶋定生著「古代東アジア世界と日本」(岩波現代文庫)

 西嶋説は歴史についての説明を試みているだけですか?
 それともそこから理論を拡張して,現代日本と東アジアとの関係論についても踏み込んでおられますか?

 西嶋説を引用している,『NGOの選択』の該当箇所では,以下のような論理展開がなされているのですが.

(1) 日本は東アジアの「鬼子」であり,日本の侵略の繰り返しの歴史が,戦後日本でもしばしば「負の遺産」として働いている
(この部分で西嶋説をも引用)

(2) 中でも朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係が著しく歪んでいる.【国名表現は原文ママ】
 「遅れた,貧しい,専制的な東アジア」という偏見をもって日本は北朝鮮を見ている.

(3) その中で行われる北朝鮮への人道支援は,北朝鮮への日本不信と,日本の北朝鮮への敵意という困難さに直面している

(4) 市民レベルのNGO支援は,市民対市民の関係を作ることにより,(3)のようなステレオタイプを打破できる

(5) 東アジアのナショナリズムを克服するのは,(4)のような打破である

怪人ヒトデ・プーチン in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 【事実】【回答】
 ……絶句.

 ええと,近代日本の歴史を,そない単純に纏められるものなら,日本史の試験は誰でも満点を取れるでしょうね,としか…….

 西嶋さんは政治的立場で言えば左だったけど,彼の古代東アジア世界論は東洋史の立場から広域史の中に日本を位置づけようとしたちゃんとした学説ですよ.
 無論「ちゃんとした」ってのは,「どこにも間違いがない」という意味ではなくて,「学問的に検討に値する議論」という意味です.
 彼の議論には提出当初からいろいろと批判も出されてますが,それは正常な学問の進展であって,珍説扱いするのはちょっと,いやかなりひどすぎます.

 〔略〕

 「鬼子」という語を,「日本鬼子」を意識して使ったかどうか分かりませが(私は「おにご・おにっこ」かと思った),「東アジア世界から離脱して近代世界に参加することによって,その解体を積極的に進めたのである」
という前段を踏まえれば,西嶋氏が言わんとすることの中身は,それほど奇異なものではないと思いますが.

 要するに,アジアの中で日本一国のみが近代化を達成して,半島・大陸へと進出し,それまでの中国中心の地域秩序(対等な国家間関係は理念上存在しえない)の破壊を,欧米と一緒になって進めたってことでしょう.

 「自己の母胎」という表現が,日本は自己の内的条件のみから成長して近代化していったのではなく,日本自身が周辺諸国を含んだ東アジア世界の中で,相互交流し自己形成してきたのだ,という西嶋氏の認識を示しているわけです.
 これを,「東アジア世界」の方を主語にして単語を過激にすると,ああいう表現になったんではなかろうかと.
 おちゃらけて言えば,
「ハルヒ作っちゃったよ! でもキョンがいないから世界が滅ぶ,長門は俺の嫁」
って感じでしょうか.

 西嶋説(古代東アジア世界論,冊封体制論)は,隋唐の頃の東アジアの国際秩序をモデル化したものなのですが,キーワードである「冊封」や「朝貢」を媒介とした国家間関係が,表面上は日清修好条規まで続いちゃったために,ある種,非歴史的な理解になってしまう危険性を孕んでいて,近現代史にそのまま当てはめるとおかしなことになる部分があるのは確かですけど.

HASU in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

▼>西嶋説は歴史についての説明を試みているだけですか?

 そうです.
 但し,固有名詞が出てくるのはせいぜい太平洋戦争までですが,現代を視野に入れていないわけではありません.

> それともそこから理論を拡張して,現代日本と東アジアとの関係論についても踏み込んでおられますか?

 触れていると言えなくもない部分もゼロではありませんが,一般論的なものです.

 そもそも当該書籍(『NGOの選択』)が引用している,西嶋氏の元の文章は1975年に執筆されたものです
(一般向けの文章で,学術論文ではないことにも注意).
 よって,この文章で「現代日本と東アジアとの関係論」に触れていたとしても,該書とはかなり文脈が違ってきます
(西嶋氏は1998年までご存命ですから,よその媒体で触れている可能性はありますが,それは措いておきます).
 北朝鮮のキの字も出てきません.

 (2)については,西嶋氏の該当論文をそういう目(例えば「日本を中傷する意図」ではないのか?という疑いの目)で読めば,そういう風に解釈できなくもない文章も無いではありません.
 生産的とはとても思えませんが.

 (3)以下は西嶋氏の文章とは無関係で,賛成反対はともかくとして,該書に即して理解すべきでしょう.

 西嶋説は再々申したようにいろいろ批判もされてますが,いいこと・重要なこともたくさん書いてますので,岩波現代文庫は図書館でも備えているところが多いでしょうし,一読することをオススメします.

HASU in 「軍事板常見問題 mixi支隊」



 【質問】
 西嶋氏の専門は東アジアの古代史ですよね.
 〔略〕
 極東が抱える現在の問題に関して,彼の学問的業績はあまり参考にならんと思うのですが?
 古代の世界観を現代に当てはめようとする時点で,珍説にしかならんと思うのですが?

バグってハニー in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 【回答】
 今月いっぱいは出張中で,ちゃんと原典に当たって答えられないのですが,西嶋氏の元々の専門は中国近代史です.
 江南の綿業史が元々の専門です
(イギリスの綿業が産業革命の象徴だった時代).
 そこから古代へとさかのぼっていったのです.

> 極東が抱える現在の問題

 そりゃそうですし,私もそう書いたと思うのですが,歴史的な展開,すなわち日本はいつ中華王朝の主催する世界秩序から離脱したのかという問題もあるわけです
(もちろん天皇という称号の発明も含まれる).
 そして近代人はしばしば,古代の状況(例えば聖徳太子の「対等」外交)なんかを敷衍して,日本は常に大陸との距離を保っていたと,国史と東アジア史を分離してはばからなかったわけです.
 例えば遣唐使とか勘合貿易といった言葉を使って,かつては決して朝貢貿易とか言わなかったわけです.
 そういった長期的な歴史のなかで,日本を東アジアに位置づけるという発想は,西嶋さんが嚆矢に近いと思います.

 でもって私が何を言いたかったかというと,西嶋説におかしなところがあっても良いのですし,実際あるわけですが,それは正常な学問の進展であって,学問的成果を無視して好き放題言ってる,どこぞの自虐史観とか自慢史観みたいな珍説ではないということなのです.

HASU in 「軍事板常見問題 mixi支隊」


 【質問】
 日本の歴史でナショナリズム意識が高まったのはいつの時代ですか?

 【回答】
 日露戦争のときの逸話ですが,出征する中国地方の兵士に
「何故戦争に行くのか?」
と問うと,
「三百年前の殿様の恥を雪ぐためだ」
と答えた例もあります.
 徳冨蘆花が東京近郊の農村で村人に明治帝が崩御されたことを伝えると,村人は
「その人に子供はいるのか? 亭主に先立たれておかみさんはさぞかしたいへんであろう」
と,東郷大将を知っていた村人が天皇を知らないことに驚いた,と『蚯蚓の戯言』で述べています.

 明治政府は維新後,国民に国家意識を浸透させようと,巡幸を繰り返すなど様様な手立てを行いますが,日本国民の多数が真の「ナショナリズム意識」を持つと言えるのは,詔勅の内容から鑑みても昭和初期のようです.と,専門外の漏れが戯れに言ってみる(苦笑

 詳しい人,補足よろしく.

日本史板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 Wikipediaの「米」のページのところで
「米は,日本においては非常に特殊な意味を持ち,長らく税(租・あるいは年貢)として,またある地域の領主や,あるいは単に家の勢力を示す指標としても使われた.
 これは同じ米を主食とする国でも,日本以外ではほとんど例がない」
と書いてあるのですが,他の米を主食とする国では農民は何で税を納めていたのでしょうか?
 また,米が主食ではない国の農民はどうだったのでしょうか?

 【回答】
 単にそのWikipediaの解説が間違っている.

 シャムのサクディナー制なんか身分の高下を田んぼの広さで表してるし,北タイのランナー王国は直訳すれば「100万の田んぼ」.
 ベトナム語では食事と飯米は,日本の「ご飯」がそうであるように,同じ単語.
 要するに「非常に特殊な意味を持ち」というのは程度問題であって,日本において特殊なら,タイやベトナムにとっても特殊.特殊さ加減の表現方法に違いがあるだけ.

 支那では宋の時代に銀で納めるようになり,金銭での納税になったくらいで,大体,前近代では,農耕経済圏ではどこでも,その土地の主たる生産物で徴税・貢納が行われていた.
 土地のみの価値の指標として穀物の収穫高を用いることも普通だった.
 領土の大きさ・価値を示すときに,戸数・人口で表すことも多いが,これも間接的に食糧生産高に比例している.
 米のとれるところが,支那で銭納になり,朝鮮は前近代では米のとれるところが少なく粟ばっかりだっし,ベンガル湾〜インドシナ方面をについてWikipediaに手を入れた人たちが単に無知だったからで,別に,米穀での徴税・貢納は珍しくもなんともなく.西はマダガスカルのメリナ王朝から,北は日本東はマリアナ諸島まで,前近代には広く存在していた.

世界史板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 領地持ちが武士や騎士でok?
 平安時代のさぶらうものは武闘派でok?

 【回答】
 平安時代に軍隊が廃止になったから,自衛の為に郎党などを武装させてガードマンみたいな感じにしたのが,武士の起源.
 後に便利な存在だからと,朝廷や貴族は警護に武士を採用.
 番人として詰める事を侍(さぶらう)と呼んだのが転じて,武士の別称がサムライ(侍)となった.
 また,厳密に言えば騎士も武士も,必ずしも領地持ちとは限らない.
 封地の代わりに給金を貰ってる場合もある.

世界史板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 歴史上の有名な女騎士を探しています.
 ジャンヌダルク以外で誰かいますかね?
 この際,物語上の空想人物でも.

 【回答】
 中華に於ける主な女傑
殷の婦好(帚好)
晋の荀灌
東晋の朱序の母の韓氏
北魏の楊大眼の妻の潘氏
北魏の任城王元澄の母の孟氏
梁の馮宝の妻の洗夫人
唐の高祖(李淵)の三女の平陽公主
唐の燕国公李謹行の妻の劉氏
唐の飛狐県令の古元応の妻に高氏(徇忠県君)
唐の平州刺史鄒保英の妻の奚氏(誠節夫人)
唐の剣南西川節度使崔の妻の浣花夫人
南宋の韓世忠の妻の梁夫人
元初の民叛乱の首領の許夫人
馬復宗の妻の韓娥
林三の妻の唐賽児
明の田州土官岑猛の妻の瓦夫人
沈至緒の娘の沈雲英
南明永寧王世子の妃彭妃
李文成の妻の張氏
『嚢仙』と称された王嚢仙
太平天国の女将軍の洪宣嬌と楊二姑
紅軍の女将軍
李貞・賀子珍・李珊・烏蘭・郭長春・聶力

 中国以外では……

呂母…知名度中
 姓は呂,名前は不詳.
 新朝に対する反乱軍である赤眉軍を創設した,軍運営者.

徴姉妹…知名度特大
 徴側・徴弐の姉妹.
 漢の支配下にあったベトナムで反乱を指導した,軍指導者.

ラクシュミー・バーイー…知名度大
 領主の妻になっていた人.ついでに美人との評.
 英国の支配下にあったインドで反乱を指導した,軍指導者.

甲斐姫…知名度小
 後北条家に属する地方領主・成田氏長の娘.ついでに美人との評.
 羽柴秀吉が主導する小田原の役で,父の留守中の城を守りきった,武芸達者の女傑.

ゼノビア…知名度中
 古代の都市国家・パルミラの女王.ついでに美人との評.
 亡命ギリシア人を参謀に抜擢すると自ら軍を指揮し,エジプトまで攻め込んだ,征服者.

※以下,物語上の女性武将
花木蘭…知名度中
 隋末唐初の頃に転戦したとされる伝承上の人物.
 質問者が抱く騎士のイメージに近いと思われる.ディズニー社も興味を持ち,アニメ映画化された.

シャ賽花…知名度中
 実在の人物がモデルだが,楊家将演義という小説の中でかなりの脚色が施されている.
 血族中心の半私兵の軍閥のような組織を支える.個々の武芸では,賽花以上の女傑も登場するが.

世界史板
青文字:加筆改修部分

▼ 上記回答に含まれて然るべき人物が抜けているので,追加を御願いいたします.

秦良玉:
 字は貞素.明代末期の人.
 三品官,四川総兵,都督僉事.明史の列伝第一百五十八に伝記あり.
 中国史上唯一,正史に列伝を持つ女将軍であり,
「良玉為人饒胆智,善騎射,兼通詞翰,儀度嫺雅」(胆力,智謀に優れ騎射が得意であり,詞文にも通じ,また立ち振る舞いは優雅であった)
と称された文武両道,才色兼備の人物.
 楊応龍の乱に,夫の石x宣撫使馬千乗とともに出陣.
 これの鎮圧に尽力し,南川においては戦功一等とされる.
 その後,夫の馬千乗が冤罪で獄死したため,彼女が石xの統治を引き継ぐこととなる.
 対後金戦でも活躍し,また奢崇明の乱を鎮圧,羅汝才を撃破するなど,明朝のために戦い続けたが,「蜀碧」で有名な張献忠との戦いでは,用兵に関してフリーハンドの権限を得られず,また献策も受け入れられず,結果,張献忠に四川を制圧されることとなった.
 後,南明の弘光帝に仕え,石xを保持して張献忠に対抗し続けた.
 老衰によって死去.享年は74歳.

名無しルーデル神教教徒 in FAQ BBS,2011/9/20(火) 12:23
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 中世風ファンタジーを書いてるんですが,堅固な山城に千に満たぬ兵力で籠城し,万を越える大軍相手に半年粘るが,落城という状況は不自然でしょうか?
 本編ではなくプロローグのみの描写で,『主人公の死んだ親父さん(城主)すげー』ってシーンなんですが,あまり荒唐無稽だとアレなんで.

 【回答】
 少なくとも城内に備蓄食糧の他,井戸が必要.
 櫓を使い川から水を汲むのは妨害できるし,その例もある.
 また,山腹に穴を掘って城の下に爆薬を仕込んで破壊,という手段も実際に試された例があるので,城が岩山の上にあってそれが困難,または事前に射線を遮る木を伐採してあった等の設定があると,説得力が増す.
 樹木の少ない岩山の細い一本道の先に城があれば,重武装の敵兵は姿を曝したまま,一列に進んでくるしか無く,兵力の集中投入ができないまま弓や銃の狙撃により撃退できる.

 ただし,水,食料,矢など備蓄が十分あれば理論上は無限に篭城できると思えるかも知れんが,実際問題として閉息され圧迫された環境は精神を酷く傷める上,殺人(同種殺し)は人間の本能が嫌悪する最大級のものだから,蓄積されるストレスを考えると,心身共に屈強な精鋭でも,戦力として維持できたのが半年というのは妥当.
 むしろ千以下の少数集団である事を考えれば,後世に語り継がれる故事になるほど.
 親父さんが中世(欧州?)の城主だという設定から,集めた兵力の平均練度や士気が低かったとしたら(地方豪族レベルで精鋭1000を常時維持とか無理),歴史上ちょっとした英雄になれるぐらい統率力ありすぎ.
 マサダのように狂信者に近いほど熱心な信仰心を持った集団が,弾劾絶壁の要塞に守られてたとかならまだしも.

軍事板,2009/05/10(日)
青文字:加筆改修部分

▼ 日本においては,南北朝騒乱時の楠木正成なんかどうでしょ?
 まさにそのものだと思いますが.
 最初に篭城した赤坂城は陥落してますが,でも正成自身は生き延びてます.

 で,糧食や武器の準備もそうですが,正成などがそうだったように,日本なら山の民や修験,中世の欧州なら山岳民や山間で生き延びている異端者や異教徒のネットワークを活用し,抗城側を苦しめぬいた,なんてエピソードを入れると,伏線にも使えるんじゃないでしょうか.

閻魔さくや,2009年07月03日 13:01

▼ 堅固な山城であれば,入口が幅1mの階段しかないとか言うのも珍しくない.それ以外が断崖絶壁なら,搦手からの寄せも難しいから,寄せ手が万単位の頭数いても力攻めできない.
 篭城側の数が少ない事は,食料や水の確保からはむしろ有利に働く.

 篭城期間を決めるのは,どっちかと言うと

・寄せ手がどんだけ長期に渡って包囲を続ける余裕があるか

・篭城側に降伏しないモチベーションがあるか(宗教,民族が違って降伏したら全員殺される,援軍の来るアテがあるなど)

あたりかねえ.

 篭城兵力は数千あったけど,西南戦争の熊本城がこれに近いような.
 この場合も,「篭城側に援軍のくるアテがある」状況だったし.

緑川だむ,2009年07月04日 09:51

 あ,「半年後に落城」か.

 パターンとしては,食料が尽きたか,または身内から裏切り者が出たかだねえ( ・・)/

緑川だむ,2009年07月04日 09:53

 ですね.

 それと,外部との連絡も重要だったと思うのですよ.
 おそらく戦国末期あたりの組織的大動員と,その維持ができるようになるまでは,包囲も結構ザルではなかったかと思われるので.

閻魔さくや,2009年07月04日 12:35

 マサダ要塞
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B5%E3%83%80
のお話なんかは,参考になりそうですね.> 篭城戦

極東の名無し三等兵,2009年07月04日 13:34

 篭城側が雨露をしのぐ建物の中にいるのに比べて,どうしても寄せ手は露天で野営になりますから,消耗が激しくなる.
 そうした点からも,包囲を続けるのは以外としんどいんですな.

 大きな城を攻める時は,手前に前線基地として簡易な城を作る事もありますし.(秀吉の墨俣城なんかはこういう野戦築城の例)

緑川だむ,2009年07月05日 15:03

以上,「軍事板常見問題 mixi支隊」より


 【質問】
 第1次・第2次大戦と,ボーンチャイナの関係について教えられたし.

 【回答】
 さて,骨を焼くと骨灰と骨炭が出来ます.

 骨灰の主成分はハイドロキシアパタイトであり,これは生体の骨や歯の主要構成物として,最近では,歯磨き粉にも添加されていたりもします.
 これは歯磨き粉に添加するだけでなく,文字通りの品物にも用いられています.

 18世紀に英国で開発された磁器であるボーンチャイナがそれです.
 Boneと名が付いているように,これは獣骨灰を磁土とカオリンに混ぜて焼成したものであり,乳白色で透光性に優れ,しかも衝撃に強いと言う特性を持っていて,日本でも高級洋食器に用いられています.
 当初は種々の獣骨が用いられていましたが,酸化鉄が少なく白色に焼成出来るという点で,牛骨が適しているとされ,盛んに用いられています.
 骨灰は焼成中1,000度で分解が始まり,ボーンチャイナ特有の反応を示すようになります.
 なお,JIS規格に於いては,ボーンチャイナは30%以上の燐酸三カルシウムを含むものとされています.

 英国では1749年に,ボウ窯のトーマス・フライと言う人が,初めて骨灰を用いた磁器の特許を取ったと言われ,更にStalk on Torrentのスポード窯でもボーンチャイナが製造される様になり,骨灰と磁土を混ぜ合わせ,これに鉛釉をかける事によって,白色磁器の焼成に成功しました.
 その後,Wedgwood,Royal Worcester,Royal Clown Derby,Mintonを始め,英国の代表的な磁器として広く愛用されています.

 元々,ボーンチャイナの起原というのは,15〜16世紀に欧州にもたらされるようになった中国磁器の素地の白さ,透光性,強度に優れた特性を模するものとして開発されました.
 骨を利用するのに着目したのが何故かは伝わっていませんが,仮焼し,沸騰水で良く洗滌した羊骨を加熱すると透明なガラスになる事が古くから知られており,1670年頃にはボヘミアやシレジアでは,骨灰を使って乳白ガラスが作られていたと言われています.

 日本では日本陶器(今の株式会社ノリタケカンパニーリミテド)が,1935年にボーンチャイナの製造を開始したのが始まりです.
 元々,第一次大戦による欧州の疲弊に伴い,日本陶器はその隙間をついて欧米に盛んにディナーセットを輸出したのですが,1926年以降には欧州も持ち直してくると共に,米国ではヴィクトリアスチャイナの著しい進歩,更に世界に於ける日本の国際環境の悪化に伴って,日本商品が売れなくなってきた事から,独特且つ高級品を開発する必要が生じ,目を付けたのがボーンチャイナでした.

 日本陶器では1932年から研究を開始します.
 当初,骨灰の製造は屠場から牛骨を仕入れて工場内で焼成していました.
 しかし,日本陶器の周辺は都市化が進み,悪臭の為,近隣から苦情が出た事から,東京八王子の人家の少ない場所を選んで,処理を依頼する事になりました.
 その後,牛骨灰の処理,素地に於ける骨灰の割合,成形,釉薬の調合など数々の問題を解決して,1935年2月からいよいよ本格的に生産が開始されました.

 当初は花生け,置物が製造されましたが,1938年からティーセットを大量に輸出し好評を得る事に成功し,その後注文が増加して,1939年には窯を増設するほどでした.
 この原因は,英国の製品が,象牙品を模した薄クリーム色の落着いた光沢のものでしたが,日本陶器では,白色透明度の高いボーンチャイナを開発した為です.
 白色度が高い方が一層高雅且つ色彩効果も上がり,優雅な乳白色,清純な透明性,艶麗な光沢,柔和な触感と芸術品の域に達しているとの評価を得たりしています.

 但し,時代は第2次大戦に入っていく,そして,日本は経済制裁で輸出が困難な時代に突入していくので,その真価と技術は歴史の闇に埋もれるところでした.
 日本陶器でも,特呂の部品などを生産することになり,一般陶器の生産が停止されていきましたが,ボーンチャイナだけは,1943年に技術保存の指定を受けたことから戦争中も生産が続けられ,戦後も装飾品から始めて,1970年代にはディナーセットの製造が急増しています.

 このボーンチャイナに用いられる牛の骨は膝から踝までのものを用います.
 その骨灰を生産する方法は,以下の通りです.

――――――
・脱脂を完全に行うと却って骨の成分を損なう為,簡単に煮沸する程度で釜に入れて焼く.
 釜は窯業の一般的なものである.
・焼成時間は夕方から開始して2〜3時間で骨の中の脂肪が燃え尽きるまで焼く.
・脂肪が燃え尽きたら一旦火を消して,朝までそのまま置く.
・翌朝,1,200度の高温で焼き上げる.
――――――

 焼き上げた骨は,冷めてから指で弾くと,チンチンと高い音がするようになります.
 膝から踝までの部位は骨の密度が高く,これを高温で焼き上げると硬質の骨灰となる訳です.
 これを粉砕したものが用いられましたが,骨を割った際に断面の全体が真っ白なものが良質で,焼き方に問題があると,真ん中が炭化して黒っぽくなります.

 こうした骨の焼成には試行錯誤が続きましたが,2度焼きを行ったのは極めて偶然からだったそうな.
 当初燃料に石炭を用いていたのですが,これを電気バーナーに切り替えた後のこと,ある日焼いている最中に停電があり,仕方がないので,復旧するまで途中で焼けたままにして放っておき,翌朝もう1度焼くと出来映えが良かった為に2度焼きを開始したと言います.

 尤も,最近では,骨灰そのものを用いる事はありません.

 1950年に東京工業試験所の伊藤亮と言う人が,ゼラチン製造工程中に生じる副産燐酸カルシウム化合物に石灰石を加えて強く焼き,ボーンチャイナの素地に配合する方法で特許を得ました.
 これは骨を塩酸で処理してゼラチンを分離後,石灰乳を加えて沈殿させ,乾燥させたものです.
 更に,1963年には磯野赳夫と言う人が,副産燐酸カルシウム化合物を1,000〜1,250度で軽く焼き,焼成第二燐酸カルシウムにしてから原料を配合し,素地焼成中に燐酸三カルシウムを合成すると言う方法を開発しています.

眠い人 ◆gQikaJHtf2,2010/03/22 20:46


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