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【質問】
オクタン価って,ガソリンの純度のことなの?
【回答】
オクタン価
ノッキングを起こしにくさ,或いはノッキングを起こさずに高い圧縮比を得られるかの尺度.
具体的には,2,2,4トリメチルペンタン(イソオクタン)のオクタン価を100,ノルマルヘプタンのオクタン価を0としたもの.
レギュラーガソリンのオクタン価は91程度,ハイオクガソリンでは98〜100オクタン程度.
ノッキング
内燃機関において,空気/燃料気混合物の過圧縮による,点火前のシリンダー内での爆発.
タイミング前に発火するため,エンストの要因となる.
ガソリンエンジンなんかのピストンエンジンはシリンダーの中で燃料と空気の混合気を圧縮して爆発させる事で動力を得るんだけど,この圧縮比が高いと同じ排気量のエンジンでも効率がよくなるの.
で,圧縮のし過ぎでこの爆発が起きるタイミングが早くなっちゃう――気体を圧縮すると温度が上がるため――のがノッキングという現象で,故障や出力低下を招くのでエンジンにはよくない.
このノッキングの起こりにくさを示すのがオクタン価.
数字が大きいほうがノッキングが起こりにくい.
イソオクタンとかノルマルヘプタンがどうのとか,化学的な定義は辞書にも載ってるよ.
誉エンジンなどの高性能を狙った高圧縮比エンジンには,高オクタン価燃料を使いたいところだけど,日本軍の航空機用ガソリンは確か87から92オクタン程度,
対するアメリカ軍は,アンチノック剤の添加などで140オクタン相当のガソリンを使っていたらしいよ.
設計時の想定以上のオクタン価の燃料だからって馬力が上がるわけじゃないけど,アメリカでのテスト時はプラグなんかも高性能のアメリカ製(強い火花が出せる)にしてたそうだから,日本では発揮不可能な『真の実力』が出たという事かな.
【質問】
100オクタン・ガソリンと100オクタン/130グレード・ガソリンとでは両者の対爆性は同等なのでしょうか?
今まで,100オクタン・ガソリンに添加物等を加えて対爆性を向上させたものが100オクタン/130グレード・ガソリンだと思っていたのですが,
つまり対爆性は100オクタン・ガソリン<100オクタン/130グレード・ガソリンであると,どうなんでしょうか?
【回答】
ガソリンそのものは引火し易い燃料です.
オクタン価と言うのはガソリンエンジンに使用した場合のアンチノッキング性能.
これは出力向上に欠かせない高圧縮比のエンジンに使用した場合の,不正規発火(ノッキング)のしにくさを示す性能指標です.
対爆性能とは余り関係有りませんが,あえて言うなら揮発しにくいので,オクタン価が高いと引火しにくい傾向はあります.
三等自営業◆LiXVy0DO8s
【質問】
F-15とSH-60は同じ燃料を使ってるんですか?
【回答】
違います.
航空自衛隊では航空機の燃料としてワイドカット系のJP-4を使用しています.
これに対して海上自衛隊ではケロシン系のJP-5を使用しており,当然F-15Jは前者,SH-60Jは後者と言うことになります.
これは米空/海軍の仕様を踏襲したものです.
米空軍は湾岸戦争時にJP-4からケロシン系のJP-8に使用燃料を切り替えましたが,米海軍はJP-5を依然として使用しており,米空/海軍においても両者の使用燃料は違うことになります.
名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE :軍事板,2004/11/29
青文字:加筆改修部分
【質問】
ジェット機とレシプロ機は,どっちが燃費が良いのですか?
飛行機って,そもそもどのくらいの燃費なのでしょうか?
今と大戦中では,燃費はかなり違うものなのでしょうか
【回答】
大戦末期に実用化されたジェットエンジンの燃費は,推力1kgにつき1時間当たり燃料1.5kgを消費した.
これは急速に改善されていって,朝鮮戦争が始まったころは(約5年後)は1kg/1kg/h,終わるころには0.8kg/1kg/h,現在のターボファンは,巡航時だと0.5kg/1kg/h以下とされる(バーナーを焚くと10倍近く跳ね上がる)
で,大戦中のレシプロ燃費は,平均すると現代のターボファンに近い線になる.
ジェット機は大きなペイロードを持ち上げて,空気抵抗が少ない高空を巡航できるので,単位重量×キロあたりの燃費になると,かえってプロペラ機より安くなることも多い.
ただ短距離輸送は不利だし,時間あたり最低消費量は大きいので,長時間の滞空も不利.
軍事板
【質問】
米空軍機と海兵隊艦載機とのあいだでまだ使用燃料が違いますが,この両者を混ぜて普通の戦闘機に使用しても問題ないのでしょうか?
【回答】
私は航空機に携わってきた関係で,今でも飛行場で燃料の匂いを嗅ぐと当時を思い
出してしまいます. みなさんも羽田や成田で灯油臭い匂いを嗅いだ事がないでしょうか.
航空機は早い話灯油で飛んでいます. 航空機燃料,特に民間用ジェット燃料の成分の99%は灯油を使用しております.
だから灯油の匂いがするのです.
灯油はケロシンと言われています.これに
各種添加剤を加えて航空機に使用するのに適した状態にしています.これはケロシン単体では,タンクや配管を腐食させてしまうことがあるからです.
添加剤 には,燃料タンクの腐食を防ぐ腐食防止剤,凍結を防止する氷結防止剤,酸化抑制用
酸化防止剤などが使用されています.
この辺は自動車に給油するガソリンに 似ています.
ジェット・エンジン用の燃料には,航空自衛隊で使用しているJP-4,米軍の空母艦載機などに使用されるJP-5,民間用のJET-A,JET-A1などがありますが,ここではご質問にある軍用のJP-4とJP-5についてご説明
します.
JP-4は航空自衛隊や米軍で使用しており,私もこれを航空機に給油しておりまし
た.
JP-5はJP-4より高引火点の61℃に調整した燃料で,民間用
の燃料の引火点約38℃に比べれば遥かに高い引火点の燃料です. ケロシン単体の引火点は43℃から72℃ですから,JP-5の61℃というのがいかに高
いかがわかります.
物質の引火点が低いほど危険な物質ですから,引火点が高い安全性の高いものを空母艦載機などに使用します.
因みにガソリンの引火点は約ー38℃です.発火点はケロシンもガソリンも約26
0℃前後ですので,引火点が低いと危険が高いことがわかります.
母艦の甲板や格納庫は狭いので,他の航空機のエンジン熱などの影響を受け易いですから,引火点の高い燃料を使用するのは当然と言えます.
つまり,まだ燃料が違うのでは無く,引火点を変えたものを使用しているのです.
また,私は混ぜて使用した例は知りませんが,航空機の燃料は温度によって膨張率が変わるため,燃料の種類を変える事は,搭載可能な燃料量にも影響を与えます.
ご質問の普通の戦闘機という意味がわかりませんが,戦闘機という航空機そのものが普通ではありません.
みなさんも高回転エンジンのバイクに乗った時,冬寒冷期にかかりが悪く,スパー
クプラグがあっと言う間にかぶってしまった事を経験された方も多いと思います.
F-4EJファントムなどエンジンの始動に失敗すれば,恐ろしい量の燃料が燃
焼室内に溢れ出て,すぐには始動不可能な状態になります.特にスロッ
トルレバーのA/B(アフターバーナー)を使用したときは,排気口にも燃料が出ますので,その消費量は驚くべきものがあります.
戦闘時にMAX A/Bを使用するのは,短時間に制限されるのはこのためです.
この状態では長時間の飛行は不可能です.戦闘機などは燃料とエンジンが空中に浮かんでいるよ
うなものです.戦闘機の燃費を知ったら誰も自分のお金では乗りたくないかもしれ
ませんね.
余談ですが,航空機燃料を通常の灯油ストーブに使用すると,最小でも大の火力を
発生します.
ただし,危険ですので絶対にマネしないでください.それだけ通常の灯油より出力
が高いということです.
【質問】
飛行中に速度を稼ぐためのロケットを装備した航空機はないのですか?
【回答】
実験用ならF-104改造機とか多数あります.
例えば,フランスのSud-OuestS.O.9000/9050Tridant戦闘機のコンセプトは,巡航及び離着陸時には,翼端のマルボレあるいはギャビゾターボジェットで飛行し,戦闘時には,胴体後部に装備したSEPR481/631ロケットをブースターとして併用します.
同じようなコンセプトの機体は,米国のRepublicXF-91,英国のSaunders-RoeS.R.53があります.
これらの中で曲がりなりにも実用配備されたのは,DassoultMirageIIICです.
これも,ターボジェットの下部にSEPR844ロケットを装備しています.
後,少し性格は違いますが,米国の重爆撃機B-36とか米英の哨戒機なんかでは,レシプロエンジンの他に加速用にジェットエンジンを装備したものがあります.
(眠い人 ◆gQikaJHtf2)
【質問】
燃料タンクがカラの機体に燃料を満タンにするまで,どれくらいの時間がかかるものでしょうか?
レシプロ単発戦闘機:(隼やメッサー)
ジェット戦闘機:(軽量小型なA-4やF-16)(大柄なF-15やMig25)
大型機:(C-130輸送機やP-3C哨戒機,747旅客機)
以上,それぞれの機体でわかる範囲で教えてください.
【回答】
B-747は大体満タンにするのに1時間半くらい.
純粋な給油(タンクに燃料流し込む)自体は1時間あればできる.
隼や零戦は機体タンク容量がどちらも約500リットルくらい(型によって違う),
手回しポンプで根性入れれば,15分で満タンにできたとのこと.
もっともそれやると,終わった時には立つ気すらしなくなってたそうだが.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
飛行機に増槽がついたのはいつからですか?
【回答】
落下式増槽が概ね正規の装備品として軍用機で使われ出すのはWW2の前頃から.
日本では日中戦争時代,欧米ではスペイン内戦の頃からです.
個々の使い始めの事例は詳しく書くと長いので,ここ
http://www.warbirds.jp/ansq/11/A2002229.html
を参考に.
対して非落下式の増設タンクの歴史は古く,飛行機がこの世に登場して長距離飛行を競いだした時代から既に存在します,
軍用機では,WW1の複葉爆撃機など初歩的な戦略爆撃を行い出した頃から既に盛んに使われています.
(なんせこの頃の飛行機は中身スカスカですから,機体の空き空間にドラム缶と配管を追加しただけで簡単に設置できます,よって現地改造の事例も少なくありません)
WW2では主に爆弾倉を持つ機体では長距離の空輸や偵察飛行時などに,非落下式の増設タンクを爆弾倉内に搭載して航続距離を稼いでいます.
最近流行のCFT(コンフォーマルタンク)も,非落下式の脱着可能な増設タンクと言えます.
軍事板
【質問】
捨てた増槽ってどうなるんですか?
可能なら後で回収する係みたいなのがいるんですか?
【回答】
基本的に使い捨て.
まぁもしも回収できるのであれば回収してスクラップ屋に売るが,基本的には切り離す=捨てる.
ただ,平時の軍隊では広大な砂漠があるような国でもない限り,陸地の上で切り離したりはしない.危ないし.
そもそも訓練で増槽を切り離すなんて事がまずないが,もし陸地の上で切り離した場合は,あとで回収しに行く.
海の上に落した奴は使い捨て.
余談だが,WW2中アメリカは,米軍機が捨てた増槽をドイツが拾って金属資源として使ってると知り,戦闘機用に樹脂で固めた増槽を作った.
これなら再利用は出来ねぇだろってことで・・・.
でもコストがかかる上に,時々燃料が漏れて来たりと使い勝手が悪かったそうだ.
捨てられた増槽(?)の再利用例
(画像掲示板より引用)
【質問】
FASTパックとは何ですか?
【回答】
FASTパックは要するにコンフォーマルタンク.
つまり機体にぴったり沿う増槽.
http://www.iai.co.il/SIP_STORAGE/files/8/32428.gif
空気抵抗が少ないかわり,飛行中の切り離しはできない.
F-22用には存在しない.
F-22は増槽4つを外付け.切り離し,さらに取り付け用のハードポイントも排除する(飛行中にできる仕掛けになってる)と,元のステルス性を確保できる.
F-22の増槽4つ搭載時のフェリー距離は8000kmに達し,F-15のコンフォーマルタンク
+増槽3つの5500kmを遙かにしのぐ.
【質問】
航空機の代替燃料って何かありますか?
車両や艦船だと水素・電池・核などイロイロ聞きますが,航空機はあまり聞かないような気がするのですが.
将来,化石燃料がなくなって飛行機が飛ばなくなったら,仕事が半分以上なくなるので(笑)
【回答】
旧ソ連が一時,水素燃料を実験していましたね.
ボイジャー(探査機じゃないよん)の様に超高空を飛ぶ偵察機みたいな機体だと,太陽電池でモーターを回すというものがあった様な記憶がありますだ.
あとは,アルコール.
これは旧軍が薩摩芋から精製していましたし…
あ,忘れちゃいけないのが松根油でしょう(ぉ.
上手くすれば,天麩羅油でもOKかも.
それとラムジェットだったら,石炭の粉末を燃料に出来ますね.
蒸気飛行機だったら,石炭と水??
ボイラーを小型化出来れば有り得ない事ではないのかも.
核は原子炉を積んだ飛行機はありましたが(X-6),流石に落っこちた後が大変なので,実際に核でタービンを回して放射能垂れ流しと言う飛行機は作られませんでした.
B-70のジェットエンジンは,特殊な燃料じゃなかったでしたっけ.
確か,化学燃料で,燃やすと有毒ガスが出るからどうとかと言うのを,遠き日の航空ジャーナルで見た記憶がありますね.
ちなみに,下掲画像は,X-6とその発達型.
その1
その2
その3
眠い人 ◆gQikaJHtf2 in 「軍事板常見問題 mixi別館」
B-70 の燃料は "Zip Fuel" といって,いわゆるボロン燃料ですね.
井上@Kojii.net in 「軍事板常見問題 mixi別館」
代用ガソリン...というのは冗談で,今はやりのエタノール系燃料が一部で試験運用されているようです.
ただ,ブラジルなどよほど恵まれた条件でない限り,アルコール系の燃料を精製するには,ほぼ同量の石油が必要という,笑うに笑えないようなお話しもありますが.
ちなみに原子力は端から論外
(原子炉を積んだ実験機は,単なる遮蔽実験用で動力用ではありません).
電池は重すぎてこれも論外
(太陽電池で浮揚・滞空する程度のNASAの実験機はありますが).
水素も水素ボンベや水素吸蔵合金が重すぎて,こちらも難しいと言うことで.
マジレスすると菜種油(を処理したバイオディーゼル燃料)
もともと軽油の代替燃料なので,そのままガスタービンエンジンに使用できます.
発熱量も,軽油46MJ/kgに対し,菜種油40MJ/kgと,それほど悪い値ではありません.
よく言われているエタノールは,実はジェットエンジンには向きません.
エタノールは,アンチノック性が高く,常温でも気化しやすいという優れた特性を持ち,ガソリンエンジンに使用することができる稀有な存在です.
しかし,発熱量が27MJ/kgと低く,また水との親和性が高いため,通常の保管方法では吸湿してしまい,燃料の管理が大変です.
石炭は,やはりそのままでは乗り物に使うには向きません.
発熱量は石炭の種類により異なりますが,普通の物で30MJ/kg程度と軽油の65%のエネルギーしかありません.
(ただし,石炭液化技術の進展を見るにつき,人造石油などはかなり有望視されています)
蒸気機関は…… 無理ではないかもしれませんが,熱効率がちょっと……
そういえば,1980 年代に入ってからアメリカで「脱・石油のために蒸気機関車を !」という企画をブチ上げて,大コケしたことがあったなあ…
井上@Kojii.net in 「軍事板常見問題 mixi別館」
そういえばアメリカの開発予定のスクラムジェット爆撃機,燃料はスラッシュ水素を予定しています.
エコロジー爆撃機の誕生か.
・・・これは自分のネタにしよう.
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