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◆◆◆エンジン
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◆航空 目次
<兵器FAQ目次
(画像掲示板より引用)
「Defense News」◆(2012/06/28)Rolls-Royce Execs Confident Despite Pending Budget Cuts
『ジェットエンジンの仕組み』(吉中司著,講談社,2010.0)
流体力学の本で得た知識を元に,実際にジェットエンジンを作るとどうなるか,順ををって考えてみるのに役立つ本.
なぜジェットエンジンが必要とされたのか,どんな経緯で開発されたのかという話題から始まり,原理と効率,各部の詳しい機能,問題発生の種類とその対策,そして今後の展望等一通り満遍なく解説していて超最高.
これできみもジェットエンジンはかせだ!
――――――軍事板,2010/11/18(木)
【質問】
戦前の戦闘機みたいに馬力は公表されないんですか?
【回答】
意味無くは無いが,ジェット・エンジンの物差しとしては適当ではありません.
推力は単純に「力」です.
推力1000kgfであれば,質量1000kgの物を1G下で持ち上げる力であり,SI単位系だと1000×9.8(重力加速度)=9800N(ニュートン)になります.
ジェット・エンジンが推力で,レシプロ・エンジンが馬力(仕事率)で表示されるのは,ジェットエンジンが直接「力」を発生する原動機であり,レシプロ・エンジンは軸出力(仕事)を発生する物ですから,その方が自然なのです.
ジェットエンジンの仕事率は,同じ推力であっても速度により変化し,(まあ実際は推力自体も速度で変わってきますが)レシプロ機はエンジンで発生した軸出力をプロペラで推力に換え,機体を推進しています.
なお,静止推力であれば通常のプロペラは1・5s/馬力だそうです.
プロペラ機の推力は馬力に1・5を掛ければ推力が求められます.
つまり,三千馬力のエンジンを積んだプロペラ機の静止推力は4・5tとなります.
ご参考までに.
(航空学入門 第12章プロペラの話より)
軍事板
【質問】
戦闘機の最高速度のことなんですが,スペック見ると最近の戦闘機ってみんなマッハ2ぐらいになってます.
でも,エンジンの推力を見ると,約7トン単発から約18トン双発ぐらいまであります・・・
なんでこんなにエンジンのパワーが違うのに,最高速度があんまり変わらないんでしょうか?
【回答】
基本的には,単にマッハ2以上の速度をあまり必要としていないので,機体の形状やエアインテークの構造などを,低速での機動を有利にするように設計してる為.
マッハ2以上の最高速度のメリットが少ない,出せても実戦で使えないって事で,出す為の工夫(大きなのはインテークと耐熱)にコストを払ってない.
F-16の様な単純なトンネル状のインテイクでは,マッハ2付近に達すると吸入効率が悪化してエンジン出力が維持できなくなる.
これを避けるにはF-15の様な複雑な可変式インテイクが必要になる.
F-16はその辺を割り切って簡略化してある.
また,最大速度の数値というのは結構いい加減だったりもする.
F-16やF/A-18の最大速度は,以前はマッハ1.6とする資料が多かったが,最近ではマッハ2とされている.
要は「マッハ2級」という事.
燃料も食うしね.
空気抵抗は速度の二乗に比例するので,マッハ1→マッハ2で4倍にもなるわけだ.さらにマッハ3だとマッハ1の9倍…
ちなみにマッハ3を越える航空機と言えばご存じSR-71だが,そこまで行くと空気摩擦で機体表面がごっつい温度になるため,熱膨張を考慮した設計やら専用塗料やら必要になる.
整備性も劣悪なため,結局90年代に退役したしね.
軍事板
米空軍極超音速実験機 FALCON-HTV
(画像掲示板より引用)
【質問】
戦闘機開発で一番難しいのはやはりエンジンなのですか?
ジェット・エンジンの基本構造ってのは,とっくに出尽くしてると思いますが,コピー自体が難しい作りなのでしょうか?
【回答】
ジェット・エンジンの構造的な面に付いては,既にほぼ完成されている.
とはいえ,それを見よう見真似でコピーしよったって無理.
例え見よう見真似でコピーできたとしても,ちゃんと作動させるには,莫大な数の試作品を作ってはテストで壊し,問題点を直してはテストで壊し…ということを繰り返さなければ行けないだろう.
また,
「どこの部分にどんな金属を使うか?」
といったことも,イチからやるなら莫大な数のトライorエラーが必要になる.
要は,
「こうしたら,こうなった」
という基礎データがなければ,高度工業製品は作れない−コピーすら出来ない−ということ.
例えば君が,包丁を渡されて
「これと同じ物を作れ」
と言われたとする.
刃物の作り方(作られ方)や刃物の材質については,ネット等で調べれば,いくらでも文献が見つかるだろう.
また,包丁というものは既に完成され切っている.
でも,
「どんな種類の鉄がいいのか?」
「どんな温度で熱すればいいのか?」
「ベストな切れ味を出すには,どの角度で刃をつければいいのか?」
ということは,やはりやってみなければ解らない.
おそらく,マトモな包丁が出来るまで膨大な数の失敗品ができ,莫大な年月がかかるだろう.
「技術に裏打ちされた品を作る」というのはそういうこと.
軍事板,2006/01/10(火)
青文字:加筆改修部分
【質問】
戦闘機のエンジンは暖機不要なのでしょうか?
スクランブル発進の機や,迎撃機は急速にそのまま飛び上がっていますが,エンジンが暖まっていない状態で出力は上がるのでしょうか?
【回答】
少し昔の機体は暖気がというか,エンジンが始動するのにやや時間が必要だったが,現在は特にそういうことは無いというか,出力が上がるまでの時間が短縮されている.
極寒地の北欧とかロシアとかでは,冬に航空機のエンジンが凍り付いてしまって,時間掛けて暖めないと動かないなんて事も起こりうるようだが.
また,エンジンオイルなどは外部から暖まったものを循環させ,エンジンをかけなくても,暖まった状態をキープしている.
昔だと迎撃などで待機している機体は,整備員が時々エンジンを動かして暖めていた.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
何故戦闘機のエンジンの主流はターボファンエンジンに移ってしまったのでしょうか?
ざっと調べたところ,
・レスポンスが非常に悪い(アイドルからミリタリーまで1分とか),
・アフターバーナーとの相性が良くない
といった欠点が挙げられていました.
戦闘機のエンジンとしては結構致命的な欠点だと思うのですが・・・
さらに,F-22なんかのエンジンはバイパス比が非常に低く,半ばターボジェットのようなエンジンだとも聞きました.
そこまでして何故,構造が複雑で気難しいファンエンジンにするのでしょうか? ファンエンジンには上記の欠点を補ってまだ余りある利点があるのでしょうか?
【回答】
ファンエンジンの利点;
・巡航時の燃費が良い>航続距離が稼げる.
・アフターバーナーの推力増加率が高い.
戦闘機のターボファンエンジンが低バイパス比なのは,マッハ0.9を越えたあたりからファンが抵抗になって逆に効率が下がるから.
抵抗を減らすには,ファンを小口径化し,より高速でファンを回すしかない.
それでもマッハ1.8あたりが限界になってくるが,現在の戦闘機にはそれ以上の高速はほとんど要求されない.
したがって,戦闘機のエンジンとしては低バイパス比のターボファンエンジンが最も適している.
レスポンスの悪さ(と言うよりはスロットル操作に対するナーバスさ)や吸入空気の状態にたいする過敏さといった欠点は,スロットル制御用のソフトの導入・改良と機体・エンジン双方の構造的改良で解決されています.
因みにF-15(F-100搭載)では初期において高高度での低速飛行や急激なスロットル操作が禁止されていた様ですが,その後ソフト的な改良によって全高度・速度域でスムーズなスロットル操作が可能となっています.
逆に,F-14(TF-33搭載)はエンジンの信頼性の低さに泣かされ続け,これはエンジンを換装するまで続きました.
「アフターバーナーとの相性が悪い」のは,旅客機のエンジンとは異なり,燃焼されて高温・低酸素のコア流と,燃焼されていないバイパス流がバーナーダクトで合流するため不整燃焼を起こしやすい点と,何よりバーナー使用時の圧力変動がバイパスを逆流し,吸入ファンを振動・失速させてエンジン全体に悪影響を及ぼす点.
前述のF-14の項目に関連しますが,同系のエンジンを搭載したA-7コルセアU(アフターバーナーなし)ではその種の問題は発生していないので,やはりターボジェットと比べてA/Bとの相性は良く無い様です.
これも現在では解決されています.
バイパス比に関しては,搭載機体の性格によっても要求される値が違うので一概には言えません.
超音速を要求される機の場合,どれだけ推力が大きくても排気の速度以上の速度は出せないので,傾向としては低バイパス比・高速型のエンジンとなります.
軍事板,2006/02/15(水)
青文字:加筆改修部分
コルセア
(画像掲示板より引用)
【質問】
ピュアジェットに比べてバイパス比の大きいターボファンの方が,燃費がいいメカニズムを教えてください.
ピュアジェットの高速過ぎる噴射ガスは,効率が悪い,という説明がよくされているんですけど
,推力は噴射ガスの速度×ガスの量で決まる筈で,一々ガスの速度を落として量を増やす変換を行わなければならない理屈が理解できません.
ピュアジェットは何故効率が落ちてしまうのか,判りやすく説明いただければ幸いです.
【回答】
ロケット排気の基本,効率のいいロケットの排気は動かない.
つまり,ジェット排気が静止した地面に対して後に動いていくとしたら,ジェット機に完全に運動量を渡していないことになる.
運動量を完全に機体に渡していれば,その排気は地面に対して静止する.
そのためには排気の速度は,機体速度と同等程度が理想ということになる.
ピュアジェットではそうはいかないということ.
【質問】
双発機のメリット・デメリットを教えてください.
【回答】
双発はエンジンが二つある分出力が大きく,兵装や増槽の取り付けられる量が比較的余裕がある.
その分機体が大型化し総重量も増えるが,それも出力でカバーする.
単発はエンジンが一つしかない上に必然的に比較的小型になり,兵装搭載量などは少ない.
また,機体が小さい分内部機器の取り付けスペースにも制限がある.
出力が低いが,軽い分機動性は高い.
(ただし,一般的な認識であり,軽い双発機,重い単発機というのはある)
第5世代戦闘機の開発に限らず,性能に余裕をもって,とか冗長性を期待したいなら,できれば双発の方が望ましい.
例えば空自FS-X開発の時,当初は双発が良かったのだが,諸事情でF-16がベースになり,F-2は将来発展性に苦労することになったのは周知のとおり.
貧者の戦闘機や局地戦闘機でもない限り,第5世代戦闘機は双発が望ましい.
第5世代機は開発コストも生産コストも従来の戦闘機よりも多めに掛かるから,同じ開発するなら高性能な双発にするにこしたことはない.
単発にすると,冗長性や拡張性,発展性が小さくなり,F-35のように炎上したりF-2のように泣くハメになる.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
洋上での運用を主任務としている戦闘機や攻撃機が双発エンジンが好まれ,単発エンジンがあまり好まれないのは何故でしょうか?
【回答】
単発エンジンはエンジンが止まったら終わりだから.
陸上なら不時着すると言う手もあるが,洋上では着水するしかなく(機体を回収することが出来ない),パイロットも救助が来なければ確実に死ぬ.
なので双発が好まれる.
あと,空母から発艦する必要性から,エンジン・パワーは大きければ大きいほど良く,大出力のパカでかいエンジンを一つ積むよりは,中出力の双発にした方が一つあたりのエンジンを小さく出来るし無理もせずに済む.
軍事板
つい最近まで,日本〜アメリカ本土の太平洋路線は全て四発機(実質B747がほとんど)しか許されませんでした.
どれかエンジンが止まった時に規定時間以内に着陸しなくてはならず,海の上では欧州路線と違いそうした空港がないのでエンジン数を増やしてその規定時間を多くするしかなかったからです.
最近,エンジンの信頼性の向上と共に,その規定時間が延長され,B777等も許可されるようになりました.
この,エンジンの信頼性の向上による規定時間の延長をETOPSといいます.
多発エンジン機
faq01a01f.jpg
faq01a01f02.jpg
(画像掲示板より引用)
【質問】
でも,単発の艦載機ってたくさんありますよね?
【回答】
そもそも双発機は「好まれる」というレベルであるというのには気をつけておいた方がいいかと.
ジェット時代になってからも単発の艦載機は少なくありません.
F3H,A-4,A-7と単発機は採用され続けております.
その内エンジンの信頼性に問題が有ったF3Hを除いて単発は特に問題となっておりません.
確かに双発/単発は「好まれる」程度の問題といえるでしょう.
軍事板
【質問】
2次元ノズルって何?
【回答】
2次元ノズルという言葉は,使われ始めた頃と最近ではやや意味が変質しているようなので,注意が必要と思います.
元々2次元ノズルは2次元インテークに倣った言葉です.
超音速機のインテークとノズルは,気流の圧力/温度と運動エネルギーを変換するという意味で機能的に類似したところがあり,インテークが,それまでの軸対称を矩形にし圧縮方向を1軸にすることで(A-5,MiG-25,F-15等の2次元可変インテーク),超音速時の衝撃波位置・スロート面積のコントロール(更に迎角変化への対応も)を容易にしたように,ノズルも矩形化することで,可変CDノズルの機構を簡易化し更に推力変更も可能にするという事で生まれたのが,2次元(推力変更)ノズルです.
しかし圧力容器であるノズルを矩形にするには,重量面等でデメリットも有ったようです.
その後,F-15ACTIVEに,軸対象で可変機構と,1軸でなく自由に推力変更を可能にするノズルがテストされ,これが前身の2次元ノズルに対し3次元ノズルと称されました.
(F-15ACTIVEの前身であるF-15S/MTDには2次元推力変更ノズルが付けられていました)
以降,1軸推力変更ノズルを矩形/軸対称の別なく2次元ノズルとする記述を雑誌などでも見ます.
(個人的には違和感がありますね)
ちなみに70年代末のHiMAT計画(無人高機動実験機)では,後期フェーズで2次元推力変更ノズルの装着も計画され,その中にはヨーのコントロールも行なえる物も計画されていたと記憶します.(計画どまり)
軍事板,2005/06/18(土)
青文字:加筆改修部分
【質問】
推力偏向ノズルって何?
【回答】
私も3年前まで恥ずかしい話,知らなかったのですが,最近の戦闘機のターボエンジンには,推力偏向ノズルと呼ばれる技術があるようです.
推力偏向 - Wikipedia
推力偏向ノズルとは,主に固定翼機で何らかの機構を用いて,推力の発生方向を変化させる技術です.
この技術を応用すれば,V/STOL機の開発やドッグファイトでの機動性が向上します.
ハリアーやV-22はこの推力偏向ノズルが使用されている他,F-35BやF-22,さらにはATD-X「心神」のXF-5にもこの技術は用いられています.
さて,この技術ですが,次期F-Xにも大きく関わっています.
というのも,現在次期F-Xの候補1にのし上がったユーロファイター・タイフーンが選定された場合,日本向けの追加装備を許可しているからです.
日常の出来事と地元等の報告です…
次期主力戦闘機『最新鋭戦闘機を日本に売り込め〜欧米の攻防』
blade_masterさんの話によれば,XF5-1の推力偏向3枚パドルノズルの技術を用いて,ユーロジェットEJ200エンジン推力偏向3枚パドルノズル搭載のエンジンに変えるというものです.
これは先月発売の『軍事研究』でも紹介されています.
軍事研究 2010年5月号
これが実現したら,ドッグファイトでの機動性が,通常のタイフーン以上に上がるのは間違いありません.
しかもアビオニクスは,J/APG-1改が搭載されれば,Su-30に対するキルレシオは格段に上がります.
それにしてもいつの間にか,日本が推力偏向3枚パドルノズルを開発していたとは・・・.驚きです.
バルセロニスタの一人 in mixi,2010年05月12日13:55
【質問】
ジェット機のインテークは,どうしてあんなに広々としているのでしょうか?
人や物が巻き込まれそうで心配なのですが.
目の粗い金網を張るだけでもだいぶ変わると思いますが,実際問題行っていないと言うことは,何か理由があるのでしょうか?
【回答】
空気取り入れ口に何かを付けると,空気の流入量が減る.
その結果エンジンの出力が落ちます.
また高速で飛行していると,空気取り入れ口の周辺で乱流が発生し,空気が充分に取りこめなくなる事も.
ロシア(ソビエト)の戦闘機には,未舗装滑走路や凍結滑走路で石や氷の塊を吸いこまない様に,空気取り入れ口をシャッターで閉じられるようになっている機種もあります(その場合は機体上面のルーバーを開ける)
軍事板
【質問】
「アフターバーナー」が登録商標って本当?
【回答】
確か,アフターバーナーが GE の登録商標で,リヒートがロールスロイスの登録商標でしたっけ?
2009年10月10日 17:35,井上@Kojii.net
GE:アフターバーナー
P&W:オーギュメンター
ロールスロイス:リヒート
だったような.
2009年10月10日 23:03,邪夢@蛸神教
航空機等整備基準上では"オグメンタ"なのです.
2009年10月10日 17:33,hide@RJTJ
以上,「軍事板常見問題 mixi支隊」より
青文字:加筆改修部分
【質問】
ラプターがアフターバーナー無しでマッハ1.5で飛ぶのと,
F−15Eがアフターバーナー有りでマッハ1.5で飛ぶのと,
燃費の比はどれくらい違うのでしょうか?
【回答】
F-15の場合は,F100-PW-100でアフターバーナー全開にすると,増槽3本つけてても15分飛んだら燃料がなにもなくなる.
増槽1本にミサイル計8本の通常制空装備だと,5分持たない.
F-22は通常の制空装備(ミサイル計6〜8本)で,増槽なしのスーパークルーズを30分は継続できると言われているので,1:6くらいということになるな.
一般的認識なら
「アフターバーナーを使った超音速飛行は,スーパークルーズの超音速飛行とは燃費は比べ物にならない」
でいいだろう.
ただしF-15に限らず,多くの戦闘機のバーナー使用時間が5分程度に限られているのは,冷却が原因だ.
フルアフターバーナーにし続けたらエンジンが融けちゃう.
F-15が大西洋横断飛行をした際には,バーナーの断続使用で約1時間程度,超音速飛行をしている.
しかしだからと言って,仮に魔法でまったくエンジンが熱されないようにしたとしても,アフターバーナー入れての超音速飛行が膨大な燃料を消費することには変わりない.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
スーパークルーズって何?
【回答】
スーパークルーズ(supercruise,超音速巡航)とは,航空機が長時間,超音速で飛行することです.
F-22,ユーロファイター,ラファールなどは,ジェット.エンジンや機体そのものの技術の革新に伴い,アフター・バーナーなしでのスーパークルーズが可能です(ただしユーロファイター,ラファールは機外兵装,特に爆装するとスーパークルーズは無理)
また,アフターバーナーを使用して,超音速“巡航”を行う機体もあります.
燃費は悪いものの,大量に燃料を積むことによって,長時間の飛行を可能にしています.
そんなわけで,大量に燃料を積むことのできる大型機の方が,スーパークルーズ能力の獲得は早かったりします.
極東の名無し三等兵 in mixi,2009年02月05日
22:55
新所沢の三等兵.◆Uk in mixi,2009年02月06日
07:10
JSF in mixi,2009年02月06日 21:06
のレスから再構成
【質問】
「スーパークルーズ」の定義は何ですか?
アフターバーナーなしで超音速に達することができるのと,スーパークルーズの差は,どこにあるんでしょうか?
持続可能時間に常識的な枠みたいなものがあるんでしょうか?
【回答】
その昔の航空ジャーナルではスーパークルーズについて,
「30分以上超音速飛行を継続できる能力」
としていて,これが米空軍の定義のよう.
仏空軍やスネクマが,この定義を適用しているかどうかは知らないし,また適用しているとは思えないんだけど.
たとえばF-5も試験では,アフターバーナーなしで超音速水平飛行を達成してるが,「スーパークルーズ」とはダレも言わない.
結局,どれだけの時間継続できるかがはっきりしないと,スーパークルーズのある無しは明確にはならないと思う.
・30分なら文句無しに合格
・10分程度でもまぁ文句は言えない
・1,2分しか継続できないのなら論外,
というところではないか?
軍事板,2002/12/15
青文字:加筆改修部分
【質問】
ジェット機のエンジンを語る時に出てくる単語の「バイパス比」なる物の意味を教えてください
バイパス比が高い場合と低い場合,具体的に何が起きるのでしょうか?
また,バイパス比が高いエンジンと低いエンジンが存在している以上,双方にメリット,デメリットがあると思いますが,それもお願いします.
【回答】
燃焼室を通らずに,ファンによって加速され排出される空気の量と,燃焼室を通過する空気の量の比率が「バイパス比」です.
バイパス比が高いほうが,燃焼させる空気の量が少ないため,より低燃費となり,また後方に噴出する空気の質量が大きくなるため,より低速で空気を噴出することになります.
このため,経済的,低騒音,超音速飛行に向かない,という特徴があります.
まずはエンジンの形の説明からになっちゃうんだけど,ジェットエンジンには元になるターボジェットエンジンがあって,その発展型にターボファンエンジンがあるの.
ターボファンエンジンには,ターボジェットエンジンの前に低圧ファンが取り付けられてて,燃焼室を介さないで使われるの.
そのファンの出力と燃焼室を介した出力の比をバイパス比と言ってる.
詳しくはここを
http://www.jal.co.jp/jiten/dict/p217.html#01-02-02
高バイパス比のエンジンは輸送機や旅客機,低バイパス比のエンジンは戦闘機向きです.
ちなみにB747-400に使用されているPW4062がバイパス比4.8から5.1,F-15なんかに使われてるF100-PW-229でバイパス比0.36.
軍事板
【質問】
航空機のエンジンの冷却について教えてください.
高空では非常に気温が低いのでエンジンもよく冷えると思っているのですが,気温が高い地上近くの低空を飛び続けた場合,エンジンの冷却に問題は生じないのでしょうか?
【回答】
稼動中の航空機エンジンは非常に高温となり,当然ながら効率的に冷却を行わない場合は故障の原因となります.
空冷式のレシプロエンジンの場合,エンジンを覆うカウリングの後方にカウルフラップがあり,ここを空気が抜けます.
始動時などエンジンが冷えている場合はカウルフラップを閉じ,カウリング内に空気が留まる様にしてエンジンを暖めます.
離陸上昇時などエンジンをフル稼働させる場合は冷却効果を高めるためにカウルフラップを開きます.
ターボジェットエンジンの場合,タービン温度が1,300℃を超える場合もあります.
タービンブレードの冷却は,ブレード内に冷却空気を流し込みます.
詳細はこちらをご覧ください.
http://www.jal.co.jp/jiten/dict/p217.html#01-03-03b
高空,低空飛行時のエンジン燃焼温度についてはちょっとわかりませんが,最近のターボジェットエンジンの場合,外気温による影響よりも,エンジン出力による燃焼温度の増加の方が問題でしょう.
軍事板,2006/02/22(水)
青文字:加筆改修部分
【質問】
ジェット機やヘリで,胴体のエンジンが入ってる部分にラインが入ってますが,何の為ですか?
【回答】
エンジンによる異物吸い込み事故(FOD:Foreign
Object Damage)防止のための,警告線だったと思います.
要するに,機付き整備員などに,エンジン稼働中は
この線より前に出るな,装備,工具,はたまた人間を吸い込んで事故を起こすぞ,と警告するためのラインです.
人身事故はもちろんですが,エンジンの強力な吸引力で,硬い工具などを吸い込むと,ブレードなどを壊して,修理に時間も費用もかかる事になってしまいます.
整備員の工具がヒモで体につないであったりするのも,一つはこの予防のためだったと思います.
system :軍事板,2001/06/17(日)
青文字:加筆改修部分
補足(蛇足?)説明すると,プロペラ機の場合(特に古めの機種)の場合にも,そこがプロペラのラインなので近づくな,という警告ラインがあります.
P-3C(最近のはないのかな?)にも入ってるはずなので,こんどオープンハウスなどがあれば,近づいて見てみてください.
確かDANGER PROPELLER LINEとかなんとか,そういうことが書き込んであるはずです.
海の人 :軍事板,2001/06/17(日)
青文字:加筆改修部分
◆◆◆◆エンジンの種類
【質問】
「ターボファン」「ターボジェット」「ターボプロップ」,それぞれのメリットがイマイチ分かりません.
先輩達,教えて下され.
【回答】
http://www3.ocn.ne.jp/~nobmatsu/jetengine3.html
に,図解入りのいいページがあります.
ここを見られれば,だいたいのことがお分かりになると思います.
ターボプロップは比較的低速で巡航することが可能であり,また,その時に燃費も良くなります.
ターボファンは通常はターボジェットより燃費が良く,また冷排気が熱排気と混合するため,軍用機においては排気の熱が目立たなくなるという利点もありますが,超音速では空気抵抗が大きくなります.
さらに速度が速くなると(マッハ3前後),タービンによる圧縮はむしろ,吸入気との対気速度によって自然に生ずる圧縮の邪魔になるため,ラムジェットになり,マッハ5前後からは空気流が速くなるため,通常の燃焼室では燃焼が維持できず,燃焼自体が超音速で伝播する超音速燃焼ラムジェット,すなわちスクラムジェットになります.
軍事板,2001/05/18(金)
青文字:加筆改修部分
【質問】
原子力エンジンの飛行機はないんでしょうか?
【回答】
昔,アメリカで原子力エンジンを搭載した航空機計画があった.
ConvairX-6.
原子力エンジン案は当初は間接サイクル方式だったが,重量が重くなる等の理由で,高濃度の放射能を大気中に排出する直接サイクル方式に変更になった.
X-6計画は1953年,実機が生まれることなく中止となった.
ヨカッタ,ヨカッタとオモタラ,こんなのが.
Convair NB-36H Crusader
原子力動力のX-6の前段階としてシールドテストや放射能が電子部品に与える影響を調べるために作った機体.
小型原子炉(P-1)は搭載したが,推進力としては使われていない.
乗務員保護カプセルのため,機首はB-36Hに比べ形状を大きく変えているが,それでも乗務員の被爆量は多かった.
飛行試験には常に,放射線測定のB-50と,万が一墜落不時着した場合に地域封鎖・隔離する完全防備の降下隊が搭乗するC-119が随伴した.
X-6計画が中止になった後も,シールド・テストの名目で試験飛行は続けられた.
((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル
軍事板
【質問】
ターボプロップとレシプロは同じプロペラでもどう違うんですか?
と言うか,プロペラは何種類くらいのエンジンがあるんですか?
【回答】
ターボプロップとは,乱暴に言うとジェット・エンジンのファンの軸を延長して,その先にギアボックスを繋ぎプロペラ・ブレードを廻して飛ぶ飛行機.
初期のジェット・エンジン(ターボジェット・エンジン)は低速回転が苦手だったので,低速で飛ぶことが難しい上,燃費が異様に悪いので航続距離が短かった.
必然的に「速度は早くなくてもいいから長距離を飛びたい」という用途に向かないので,それをフォローするために考えられたのがターボプロップ.
このターボプロップのプロペラの替わりに,ターボジェット・エンジンの前に周囲を筒で覆ったファンを回すことで,ターボプロップと同じ能力を発揮させる設計にしたのが,現在「ジェット・エンジン」の主流である「ターボファンエンジン」.
これの登場で「ジェットの高空高速性能」と「レシプロの低空低速安定性能」,それに「燃費のよさ」を両立させることができるようになった.
軍事板
青文字:加筆改修部分
補足みたいなものを.
飛行機の用途や任務,要求性能によってジェット・エンジンがいいか,プロペラがいいかという選択がある.
プロペラで要求する速度が出せるとか,そっちのほうが燃費が良いとかでプロペラが選ばれたら,こんどはエンジンの選択に入る.
現在であればレシプロかターボプロップ.
ただ,レシプロで大出力エンジンをつくるとすると,究極的にはシリンダーをいくる並べるのかという話にしかならないため,重く複雑,高価になる.
ジェット・エンジンは出力に比して「構造が簡単」という利点があるので,大型のプロペラ機なら,タービンの回転を取り出してプロペラの回転数まで落とすギアボックスが必要という不利を差し引いても,ターボプロップを選択する.
レシプロだって一つのプロペラを回すエンジンの出力が足らなければ,結局,複数のエンジンをギアボックスで結ばなきゃならないし.
二次大戦で大出力レシプロエンジンの本家のイメージのある米軍ですが,B-29でもエンジン故障,火災,墜落のコンボは結構ありますし,戦後の対潜哨戒機のP2Vのレシプロエンジンもそれで苦労しています.
川崎がP2Jを作ったときは,真っ先にレシプロをターボプロップに変更してエンジン整備の手間を減らし,足らない馬力は補助ジェット・エンジンで補いました.
ふみ in 軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
ロケットエンジンとロケットモーターでは何か違いがあるのでしょうか?
【回答】
単なる呼び名の違いですが,厳密に言えば,
エンジン:熱エネルギーを運動に転換する装置.この場合は燃料の燃焼エネルギーをロケットの運動に転換する.エンジンはモーターに含まれる.
モーター:エネルギーを機械的エネルギーに変換し,結果として運動を起こすもの.エンジンを含む.
だからイオン推進のロケットではロケットエンジンと呼ぶよりロケットモーターというのが適切なはずだが,実際にはイオンエンジンとか言われてしまう不思議.
軍事板
なお,宇宙ロケットの場合,慣習的に液体燃料ロケットを「エンジン」,固体燃料ロケットを「モーター」と呼んでいたと記憶します.
【質問】
石炭で動く飛行機は現実的ではないのですか?
【回答】
蒸気機関だとしたら,重さの割にパワー不足.船や機関車ならまだしも,軽快さの必要な航空機向けではない.
ただし液化した石炭なら,生産性を別にすれば石油と似たようなものだし,石炭の粉末を使ったエンジンも研究されてたりするので,蒸気機関にこだわらなければ,全く現実的じゃないというわけでもないよ.
少なくとも,ごく初期のエンジンには,石炭粉の使用を考えていたものもあった.
経済性はともかくとして,技術的には不可能ではない.
蒸気機関飛行機より,ずっと現実的だろう.
実際に石炭で推進力を得る構想の,やたら平べったい航空機は研究されたことがあったが未完で終わってたはず.
石炭じゃなくて液化石油ガスだけど,蒸気機関でもここまで速いのもある.
http://wiredvision.jp/news/200812/2008121220.html
蒸気航空機
http://en.wikipedia.org/wiki/Steam_aircraft
他にもモジャイスキーの蒸気飛行機という例がある.
架空の19世紀末〜20世紀初頭の技術レベル世界を舞台にするなら,ガソリンエンジンより先に蒸気飛行機が実用化されたという設定は可能だと思われ.
ガソリン・エンジンが登場すれば,10年か20年後には(少なくとも軍用機としては)駆逐されるだろうが,その前に蒸気タービンがものになって,それからジェットエンジンが登場して,ガソリン・エンジンが傍流で終わるというのも,創作としてはありだろう.
軍事板
青文字:加筆改修部分
▼「Wikipedia」:さらなる挑戦・コールタービン
>オーバーサイズの微粉炭がタービン・ブレードを破損させた.
お後がたいへんだったようで.
部外者 in FAQ BBS
青文字:加筆改修部分
▲
【質問】
「ガンダム0083」でアルビオンが月面からの高出力レーザーで推進剤を噴射させる,レーザーロケット推進を使用してましたが,あれと同原理で「レーザージェット」は可能でしょうか?
航空機の表面を外部からのレーザーを受信できる構造にし,そのエネルギーでエアインテークから吸入圧縮した大気を膨張,噴射し,その反動を推進力として飛行する,みたいな感じで.
うまくいけばグライダーに毛が生えたような構造の機体でも,とんでもない飛行性能を発揮しそうなんですが.
【回答】
円盤型のクラフトの底にレーザーを照射して,大気の膨張で上昇する乗り物の研究はされています.
原理的に,クラフト側に機械的な仕組みが無くても使えるので,ロケットよりも安価な乗り物として注目されています.
こんな研究もあった.
http://www.mech.titech.ac.jp/~ryuutai/topics.html
今,この研究室ではこの研究はしていないが・・・・
要約すると,地上からレーザーを飛翔体の貯水タンクに当て,レーザー照射によるエネルギーで水が膨張して推進力を得るというもの.
水が推進剤になっただけだね.
欠点は驚異の運動性を得ようとすると,色んなところにレーザー照射器を作る必要があることか.
軍事板
青文字:加筆改修部分
◆◆◆◆◆ターボプロップ
【質問】
ターボプロップはプロペラがついたジェット機って認識で合ってる?
レシプロとターボプロの燃費はレシプロの方がいいの?
ターボプロップの方がスピード出る?
【回答】
元々ジェットエンジンは,プロペラ推進に対しガスの噴流から直接推力を得るエンジンを称して付けられた.
そのため初期はロケット推進も含まれたが(JPLも名称などはその名残),後に作動原理の違いから分けられた.
エンジンをを駆動する方法には,ガスタービン,ラム圧等があり,それぞれターボ(ファン)ジェット,ラムジェットと駆動方法による分類が行われる.
wikipediaではターボプロップを広義のジェットエンジンに含め狭義と分けているが,英語版ではターボプロップ・ターボシャフトは厳密にはジェット・エンジンではないとしている.
カテゴライズの仕方の問題だが,ガスタービン駆動とジェット推進を同義に扱うのは無理がある.
軍事板
【質問】
ターボプロップとレシプロの違いは?
【回答】
ターボプロップというのは,ターボジェットエンジンの回転軸にギアを通じてプロペラを繋ぎ,プロペラを回して動力を得る.
ターボジェットエンジンは燃費が悪くて低速回転が苦手で,長距離飛行にも低速飛行にも不向きだったので開発された方式.
軍事板
一方,Wikipediaの項目にありますように「レシプロ」と言った場合,それは往復動機関そのものを指すものです.
これはあくまで動力源で,推進方式と直接の関係はありません.
ジェットやプロペラと言った語は推進方式そのものを指すもので,動力源とは無関係です.
例を挙げればターボ・ジェットやレシプロ・プロップの他,タービン動力プロペラ推進(ターボプロップ)やレシプロ駆動ジェット推進(カプロニ・カンピーニN1の動力)といった感じになります
カプロニ・カンピニ N.1
【質問】
世界で最初にターボプロップ・エンジン Turboprop Engineを実用化した国は?
【回答】
ハンガリーです.作ったのは,George Jedrassikと言う人で,ガンツ車輌工場の技術者だった人.
1932年に彼はまず,100hp Engineの設計を行い,それは1937年に試運転にこぎ着けています.
そして,その間,彼は次のCs-1Turbopropを設計しています.これは,13500rpmで,1000hpを発揮する予定だったそうです.
このEngineは,鋳造製インレット・ハウジング,ギア比0.119の減速ギア,2個のベアリングで支持され,大口径中空シャフトで結合された,15段のコンプレッサーと,11段のタービン,折れ曲がった逆流式アニュラー型燃焼機,空気冷却式タービンディスクと延長翼部を有するブレードなど,現在のものと余り変わらなかったらしいです.
Cs-1は1940年8月に試運転され,このエンジンは,国産のX/H(RMI1)双発戦闘爆撃機の動力にも採用されました.
もし,対ソ宣戦が無ければ,1942年くらいには,Turboprop軍用機が空を舞ってたかもしれません.
1941年に,この野心的な計画は,資源集中の観点から中止させられ,ドイツのDB605エンジンの供給と,Me-210のライセンス生産が決まったのです.
(眠い人 ◆gQikaJHtf2)
【質問】
ターボプロップの軍用機はいつごろ登場したのですか?
WW2の頃にはもうあったのでしょうか?
【回答】
ハンガリーで,1940年頃にターボプロップの原型が作られ,1941年にはそのターボプロップを用いた双発重戦闘機が計画されています.
しかしながら,大戦の進行で,そんな際物を作る余裕が無く,Me-210の量産になってしまいました.
眠い人◆gQikaJHtf2
ターボプロップ方式の航空機が実用化されて空を飛ぶようになったのは,WW2が終ってから.
ちなみに,世界で始めて実用化されたターボプロップ旅客機はイギリスのヴィッカース・バィカウント(1948).
元祖のアメリカはジェットの方に走ったので少々遅れ,ロッキードL188エレクトラ(1957)が始めての実用ターボプロップ旅客機.
ついでに言うとロッキードP-3Cオライオンは,このエレクトラを改設計して対潜哨戒機に仕立てたものだ.
軍事板
【質問】
ターボプロップの欠点というものはあるのでしょか?
燃費が悪いと聞きましたが,それだけなんでしょうか?
【回答】
ターボプロップは「レシプロと比べて」というだけで,”ジェットエンジン”としては燃費はいい.
つかそのために開発したようなモンなんだし.
ターボプロップは当然ながら,というかメリットの裏面として,
「高速を発揮するのに向いてない」
という普通のジェットエンジン(ターボジェットエンジン)に対する,絶対的なデメリットがある.
プロペラブレードがあるから,絶対に超音速は出せないし.
そもそも,「高速を発揮できるが燃費が悪すぎるし,逆に低速で巡航するのに向いてない」というターボジェットエンジンの欠点を補うために生み出された機構で,技術の発展でターボジェットとターボプロップのいいとこを併せ持った「ターボファン」が誕生した後は,わざわざターボプロップ使うメリットはあんまりない.
本当に低速飛行しかしないのであれば,ターボファンよりも効率は良かったりはするけど.
軍事板,2010/04/19(月)
青文字:加筆改修部分
【質問】
ターボジェットよりターボファンのが,効率がいい理由がわかりません.
ロスが無くなるとはよく聞くのですが,具体的にはどうしてなのですか?
あと,ターボファンはどうしてプロペラじゃないのですか?
ファンとプロペラは原理が同じらしいのに,レプシロはプロペラでジェットがファンなのはなぜですか?
【回答】
具体的に,との事ですので,数式とともに説明します.
長文になるので平にご容赦を.
計算がしやすいよう,対気速度0の地上静置状態で各所での効率を100%とし,バイパス比は1対1(コアエンジンの排気とファンに同じ流量を担当させます),
エンジン内部はブラックボックス化します.
また,現実のターボファンは低圧圧縮機の前にファンがあり,圧縮にも一役買ってますが,複雑になるので今回はそれぞれ独立してるとします.
物体の運動エネルギーは,古典的なニュートン力学でとても簡単に求められます.
物体の運動エネルギー=1/2×(質量)×(速度の2乗)
(この公式が分からなければ,単純明快な積分計算で証明できるので,適当にぐぐって下さい)
これをジェットエンジンに応用すると,
ターボジェットの排気出力=1/2×(排気の質量)×(排気の流速の2乗)
排気の質量は,排気の流量に比例すると見なせるので,
ターボジェットの排気出力=1/2×(排気の流量)×(排気の流速の2乗)
排気のエネルギーの半分をタービンに吸収させたとすると,排気の流量は変わらないので(流速の2乗)が半分になり,(流速/2)の2乗と表せる.
1/2の平方根=0.707106781……より,
ターボファンの排気出力=1/2×(排気の流量)×(排気の流速×0.707106781……)
よって,排気の流速を半分にした際の出力は,およそ71%になる.
一方,ファンの方も,排気の半分のエネルギーを利用し,バイパス比が1対1なので,
ターボファンのファン出力=1/2×(排気の流量)×(ファンの流速の2乗)
ターボファンのファン出力=1/2×(排気の流量)×(排気の流速×0.707106781……)
以上により,両者を合わせると元出力のおよそ1.41倍になり,入力エネルギーを変えずに出力が増加します.
また,それとは別の理由として,隣り合う気流の流速が違う場合,境界線に渦が発生し抵抗になることが多いです.
そのため,排気の速度が落ちる事は,流速の差が減ってロスが減るので嬉しいです.
後半,プロペラとファンについてですが,これはトルクの問題です.
プロペラもファンと呼ぶので,ここではあえてロー・トルク・ファンとハイ・トルク・ファンと呼ぶ事にします.
ロー・トルク・ファン 面積が狭く,回転辺りの揚力発生が少ないですがパワーがあります.
ハイ・トルク・ファン 面積が広く,回転数辺りの揚力発生が多い代わりに重く回すのに力がいります.
※これは受動的に仕事を受ける側になると(例えば風車など),逆になります.
これらは,自転車のギアに例えると簡単です.
ロー・トルク・ファンは非力なエンジンでも,パワーを発揮できます.
自転車で発進や坂道に差し掛かったときは,軽いギアを使いたいですが,それと同じです.
ハイ・トルク・ファンは動かすのに力がいりますが,その分,仕事は抜群です.
自転車ではスピードに乗ってるときは,重いギヤで漕いでいくのと同じです.
ジェットエンジンはレプシロと違い,サイクルの一部のみ仕事をするという事がないので,燃費は悪いですが,重量&容積あたりの出力が桁違いです.
この有り余った出力を活かすため大型エンジンでは,翼面積の大きなハイ・トルク・ファンを持ちい,強力な推進力を発揮しているのです.
逆に出力の小さな小型のガスタービンエンジンでは,ロー・トルク・ファンを用い,ターボプロップにしているのが普通です.
ファンナセルの有無は,プロペラ後流の効率化に関わっています.
後流が強いトルクを持っているロー・トルク・ファンでは,どうにかしてそれを打ち消してやらないと,渦ばかりで推進力の無駄になります.
そこでファンの後部に静翼をおき,整流装置としているのですが,後流が強い全圧をもっているため,すぐに拡散して整流装置がうまく働きません.
これは,軸流圧縮機がナセルで覆われてるのと同じ理由ですが,外から覆いをつけて流路を制限してやる事により,この問題を解決できます.
同時に通常のプロペラでは,ファンで与えられた全圧のうち,ベクトル分解して後方にあたる部分だけが推力になりますが,ロー・トルク・ファンは強力に空気をかき混ぜますので,これでは横に拡散する方が多く,ロスが非常に多いです.
そのためダクトで覆い整流してやる事で,ダクトの入り口と出口で圧力を単純化してやり,それにより効率化を進めています.
とはいえ,やはりナセルというのは空力的にはとてもお荷物です.
今のところはメリットの方が多いのでつけていますが,できれば抄訳してしまいたいのが本音なので,これを実現するため,プロップファンの研究が進められています.
が,ターボファンの性能向上が著しいので,最近は以前ほどの熱がありません.
以上,長文失礼.
※ 誤解を招かないように言うと,ベクトル分解した力のうち,気流を後方へ動かした部分の反作用と表現したかった.
より厳密には,揚力理論による圧力差で得た揚力だけど.
軍事板,2010/12/06(月)
青文字:加筆改修部分
上記を読んだけど,用語やロジックに怪しい所は有るねえ.
でも大元の所は誤ってない.
最初に何を示そうとしてるのか,きちんと提示すれば良かったのに.
「純ターボジェットをバイパス比1のターボファンで置き換える,使うエネルギー(≒燃料)一定の場合推力はどうなるか」とかね.
式で示すと
T=dmv (T:推力,dm:流量,v:排気速度)
E=dmv^2/2 (E:時間当たり排気に与えるエネルギー∝燃料流量)
∴T/E=2/v
言葉にすれば,排気速度を下げ,その分流量を増やせば,燃費は良くなる.
でも,エアブリージングエンジンの実際の飛行中の式は,もうちょっと複雑になる,
T=dmΔv (Δv:排気増速分)
E=dm((V+Δv)^2-V^2)/2=dmΔv(2V+Δv)/2 (V:飛行速度)
∴T/E=2/(2V+Δv)
言葉にしたら,結論は大して変わらないが.
軍事板,2010/12/06(月)
青文字:加筆改修部分
【質問】
レシプロエンジンが廃れたのは,ターボプロップエンジンが登場したからだと言われていますが,ターボプロップエンジンも完全にはレシプロエンジンよりも優れているとは言えず,どこかしらレシプロエンジンに劣る部分があるのではないでしょうか?
レシプロが廃れた経緯を始め,その辺りを詳しく教えてください.
【回答】
高性能のガソリンレシプロエンジンは,燃料に関しても神経質.
タービンエンジンはその点は許容度が高い.
軍としては燃料は,イザと言う場合にはなるべく共通化したい点も重要.
ガソリンは危険度も高い点ももちろんある.
加えて言えば,既にターボプロップ機も廃れつつある.
現在新型の軍用機として生産されてるC-130系やE-2などは,基本設計がはるかに昔の物ので,基本フレームは弄らない発展型だ.
同じ用途の物を新設計するなら,ターボファンエンジン付になる.
代表的な例でいうと,P-3Cの後継機などがそう.
ターボプロップは,ターボジェットに対して燃費が良いから,比較的低速で長時間飛行する物に対しては有利だった.
しかしターボファンに比べると非効率.
更に環境的に考えると,ターボプロップ機は騒音の問題もある.
ターボジェットの煩さとプロペラの煩さが,相乗作用で騒音レベルが高い.
COIN機のような物は地域紛争などで,多くの発展途上国では必要だろうが,専用機というより身近にあるもの何でもいいから改造して任に当たらせるものだから,こういうのは例外と思う.
ナム戦でブロンコが行っていたFAC(A)などはこの手の低速機では,現在は任務を果たせないと言う事で,普通のジェット機がやってるしね.
軍事板,2010/04/19(月)
青文字:加筆改修部分
【質問】
スカイレイダーのようなレシプロ(ターボフロップ)の戦闘攻撃機が今後,開発・配備されることは無いのでしょうか?
レシプロ機ならひゅうがでも運用出来そうな気がするんですが.
【回答】
マンガ以外で,そんな楽しい「戦闘攻撃機」が,お兄さんジェット機達のお守りなしで役に立つシーンはあり得ないことを考えると,ひゅうがに何が積めるかは別として,君が書いてるのがおとぎ話だったことはわかるだろ.
百歩譲って,役に立つシーンがあったとして,それはたぶん,地上基地から飛び立つお兄さんジェットたちだけで片付く問題だと思うよ.
つまりこの分野の機体,すなわちプロペラ対地攻撃機そのものの需要がない.
試作機の発注すら稀で,プライベートベンチャーとか.うまくいって少数生産.
その希少種をひゅうがに持ってくると言っても,今度は何ならできるのかという問題が解決しない.
軍事板
青文字:加筆改修部分
◆◆◆◆◆レシプロ・エンジン
【質問】
水平対向エンジンを飛行機に積むことはありえますか?
また,そのメリットは?
【回答】
私が大学生の頃,ポルシェの空冷水平対向エンジンを軽飛行機のエンジンにする話があったような.
ちなみに,180 度 V 型と水平対向は別物です.
2010年04月01日 10:14,井上@Kojii.net
ほう!
と,言うことは何かしらの利点があるのでしょうかねぇ・・・
拙い知識だと,低重心化に有利って事と振動が少ないぐらいしか・・・(・・;
(ただ,航空機みたいに低速トルクより高回転を重視するのであれば,あまり意味を為さないと愚考したり)
むしろ軽飛行機なら,バイク用の2気筒ボクサーが使いやすいんじゃないかなぁと思った.
2010年04月01日 10:47,びちお
車なら,あくまでも傾向的なものでしょうが,
・V型エンジンと比較すれば,サイズ全体が小型におさまる傾向.
リアシップカーに4?6気筒ボクサーが多く採用される所以.
・比較的重心が低い→車体も重心低く設計・デザインでき,
コーナリング時の振れが少なでき安定的.
・ミッドシップのスポーツカー,フォーミュラーカーなどでも,
エンジン周りの設計もコンパクト化しやすく,空力的にも有利なデザインを可能とする.
と,フェラーリの12気筒ボクサーエンジン時代を知ってる俺の乏しい知識だと,こんなメリットが挙げられていたかと.
……え? 飛行機に採用するメリット?
……知らん(笑)
2010年04月01日 11:59,ソフトヒッター99
日本でボクサーエンジンといったらやっぱりスバルなので,ちょっと見てきました.
http://www.subaru.jp/legacy/touringwagon/index2.html
で,テクノロジー→SUBARU BOXER→SUBARU
BOXERの特徴とたどって表れる文章を要約すれば…
・水平対向エンジンは理想的なパワーユニットのひとつ
・ピストンの運動に伴って発生する慣性力を,対向するピストンが互いに打ち消し合う
(要は低振動?)
・回転バランスに優れ,高回転域まで滑らかに吹け上がるフィーリング
(この部分は確かに飛行機にも向くかもですね)
・全高低く軽量コンパクトで車体の低重心化に貢献
(先の俺の書き込みに相当)
2010年04月01日 13:13,ソフトヒッター99
Junkers社の航空機用ディーゼルJumo205/Jumo207は,水平対向みたいモサリね.
昔読んだSA誌によれば,ディーゼル特有の振動抑制や,重くなりがちな重量の低減を狙ったと記憶してるモサリ.
Ju86の他は,DornierとBlohm Vossの色物水上機ぐらいしか採用してないエンジンモサリが.
2010年04月01日 20:56,モッサー=ハルゼー
以上,「軍事板常見問題 mixi別館」より
青文字:加筆改修部分
▼ レシプロ軽飛行機のエンジンはほとんど水平対向ですよね.
たとえばライカミング.
>Lycoming produces the most complete line
of horizontally opposed, air-cooled four-,
six- and eight-cylinder aircraft engines
前面投影面積を小さくできるし,整備のためのアクセスもしやすいので,小型機には向いている,ということのようです.
BMP in FAQ BBS,2010/4/20(火) 23:49
青文字:加筆改修部分
▲
【質問】
星型エンジンの構造について教えてください.
【回答】
http://www.warbirds.jp/kakuki/sanko/hosigata1.htm
に,図解入りで紹介されていますので,そちらを参照してください.
軍事板
【質問】
液冷式の星型エンジンってないのでしょうか?
星型をパワーアップする場合,同じエンジンを重列しますが,後ろの気筒に冷却風が当たらなくて2列,3列までが限度だったりします?
いや,言葉を換えるなら,液冷エンジンの水平,V字の2気筒を,星型にして気筒数をコンパクトに増やせるのではないか?と.
全長を短くでき,なにより日本が最も苦労したという,ながいクランクシャフトの鍛造も短くできると思うのですが.
【回答】
あることはある.
Junkers Jumo222 6x4=24気筒
Lycoming XR-7755 6x6=36気筒
液冷星型エンジンは親子コンロッド式の単列星型を前後方向にマルチバンク化したもので無く,直列型を円周方向にマルチバンク化した構造(V型,W型,X型の派生)になる.
前後長を押さえようとすると極端な,カミソリ・クランクになるので,これはこれでたいへん.
もっと変態な多気筒エンジンには,Napier Delticなんてのもある.
軍事板,2006/02/02(木)
青文字:加筆改修部分
液冷式ではありませんが,水冷式なら,1911年に猿六村,もとい,Salmsonが水冷星形7気筒,次いで9気筒エンジンを製作しています.
ちなみに,日本でも川崎造船所,東京砲兵工廠などで国産化されました.
記録では,空冷星形エンジンよりも馬力が出るので,戦闘機乗りはこれを好み,V型,直列は,クランクケースを破損することが多かったので,忌避されることが多かった様です.
星形の場合は,クランク軸が短く出来,ベアリングも前後二つでOK.
また,内部モーメントも発生しないので,当時としては前面面積の大きさは十分にカバーされていました.
つまり,機械的な摩擦による損失が,直列型に比べ短いので慣性による荷重がゼロになります.
また,クランクシャフトを短くすることにより,長くなればなるほど,振動の原因になり,内部モーメントが無いので,厄介な問題は生じにくい訳です.
但し,星形エンジンは一本のクランクピンに全シリンダーのコネクティングロッドを接合できないので,リンクロッドを円板上のナックルピンに接合,この円盤を歯車を介して固定歯車の周りを回し,更にリンクによってシリンダの位相角やストロークの差をなくすと言う複雑でコスト高の機構が必要となりました.
BMWもFocke-WolfFw-238に搭載予定のBMW803を開発していました.
こちらは液冷4列星形28気筒4000馬力の代物で,前部と後部の二重星形を反対方向に同軸上で回すコントラプロペラを駆動するものでした.
これは,後部エンジンの動力を歯車によって5本の軸に分け,全部エンジンのシリンダの間隙を縫って前方に導き,再び歯車によって,プロペラ軸に繋ぐと言う複雑なものでした.
また,NASAルイス研究所では1980年にContinentalと協同で,星形3気筒,6気筒航空用ディーゼルエンジン,ドイツでは,Zocheが星形4気筒,または8気筒の航空ディーゼルを開発していました.
眠い人 ◆gQikaJHtf2 :軍事板,2006/02/02(木)
青文字:加筆改修部分
【質問】
レシプロ・エンジンの最大馬力はいくつぐらいでしょうか?
プロペラ回転で推進力を得る方法で御願いします.
【回答】
確か,LycomingのXR-7755で,1944年当時で5000馬力.
目標馬力は7000馬力でしたが,試作のみで,これを搭載した機体は作られていません.
そもそも,1基3200kgで,Bore×Strokeが162×171mmで,星形9気筒を4列並べた36気筒なんで,そんな重くて大きいエンジンをどんな機体に載っけるんじゃボケェ(意訳)と言われたもので.
眠い人◆gQikaJHtf2
実機に積まれたヤツだと,
・プラット&ホイットニーR-4360-35(3,500馬力)
・プラット&ホイットニーR-4360-53(3,600馬力)
辺りが最大クラスでないか?
前者はボーイングB-29D,別名B-50に搭載.
実機への搭載数は四発.
後者がコンベアB-36ピースメイカーに搭載.
実機への搭載数は六発に加えて,推力2,450kgのジェットが四発.
軍事板
XR-7755エンジン
【質問】
初期型の零戦のエンジンは1,000馬力で時速500キロ,スカイラインGT-Rもエンジンやコンピュータをフルチューンすれば,1,000馬力近くまで引き上げることが可能ですが,戦闘機の1,000馬力とクルマの1,000馬力では,意味合いがまったく違うのですか?
【回答】
日産のVG30をチューンして1000馬力級のエンジンをでっちあげ,米でレーサーを作ったことがあったが,まともに飛べなかった.
整備さえうまくいけば,素晴らしい性能を叩きだしたらしい.
つまり,数値に嘘はないが,モノはまったく別ってこと.
基本的に自動車用エンジンは小排気量であり,回転で馬力を稼ぐので,低回転で大トルクを要求される航空機用には向かない.
ついでながら過去,ポルシェやホンダが航空機用レシプロエンジンに手をだしたが,両社ともこの違いが理解できず,「小排気量高回転大馬力で省燃費」を歌い文句にして見事失敗.
軍事板
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【質問】
プロペラ戦闘機における大馬力エンジンの欠点を教えて下さい.
スペースや燃費を考えなければ,単に出力が大きければ大きいほどいい,というものではないのですか?
【回答】
大馬力なエンジンは当然大型化する傾向があります.
レシプロ戦闘機の多くは機首にエンジンを積みますので,大きなエンジンの為に前下方の視界を遮り,離着陸時の難易度を上昇させます.
又,空冷星型エンジンだと,そのまま前面投射面積の増加を招きますし,液冷エンジンでもラジエーター面積の増加が必要となり,空気抵抗が増えて馬力の増加分に見合った速度の増加などを得られない場合が多いです.
軍事板
さらに,トルクによる反作用の問題もあります.プロペラの反作用で機体が逆方向に回転しようとするものです.
エンジン出力が大きくなればなるほど,この問題が目立ってきます.
対策としては二重反転プロペラにする,尾翼をオフセットしてとりつける,などがあります.
以下,対策諸例.
1 垂直尾翼をオフセット(取り付け角)
中島 天山艦攻 | 初期は左へ2.10度 量産機は左へ3度 |
中島 彩雲艦偵 | 左へ3度 |
ビーチクラフト T-34A | 左へ1度 |
富士 T-3 | 右へ1度 |
その他,図面上で確認できる垂直尾翼のオフセット | |
左へ | 川西94式2号水偵 愛知流星艦攻 富士KM-2など |
右へ | 川崎キ61飛燕 |
2 エンジンをオフセット(取り付け角)
三菱雷電 | 右へ3度(設計変更はしたが実施したかどうかは不明) |
富士T-5 T-7 | 右へ3度 |
3 二重反転プロペラ
川西 紫雲水偵 |
4 固定タブを取り付け,適宜角度を調整
三菱零戦をはじめ大多数の単発機 |
5 垂直尾翼の断面形を左右非対称に
メッサーシュミット Bf-109 |
詳細は
「プロペラ機の反トルク」( from インターネット航空雑誌「ヒコーキ雲」)
を参照されたし.
【質問】
発動機の数値で出てくる「1段1速」などで表されているのは,ある種のギア比みたいなものでしょうか?
【回答】
過給器付きレシプロエンジンの「1段1速」は,過給器が1段しかなく,エンジン回転に対し過給器も一定の回転数で回る形式の物をいいます.
これが2段2速とかになると,過給器が2段階になり,より高い過給が可能となり,回転数を切り替える事で高度に対する順応性が高まります.
軍事板
【質問】
なぜ最近のピストン・エンジンは,シリンダの数が以前より少なくなってきているのですか?
【回答】
発動機の出力は概ね排気量に比例する.
で,排気量を増やすには「シリンダを大きくする」「シリンダを増やす」って手がある.
但し,シリンダを大きくすると燃焼が不均一で不完全になるので,あまり大きくはできない.
結果として,適切なサイズのシリンダで,数を増やす方向に落ち着く訳.
その代わり,シリンダが増えるとピストン以下の構造も当然増える.
結果的に機構が複雑になって,機械的に脆弱になったりする.嵩張って冷却に問題が出たりとかもするし.
だから,燃焼技術が進歩して,より大きなシリンダが使えるようになると,シリンダ数を減らす方向にいく訳.
軍事板
【質問】
航空機の星型空冷エンジンのことで質問です.
栄は7シリンダ×2列で14気筒
誉は9シリンダ×2列で18気筒
なぜシリンダは片側奇数個で設計されているのですか?
【回答】
一般的には4サイクル機関ですので,二回転でサイクルが一回りします.
また,振動対策の面からは隣り合うシリンダーが順次点火されることは好ましくありません.
そのために,たとえば栄ならば
1→3→5→7(ここまでで一回転)→2→4→6(2回転目終わり)→1
と点火します.
これが単列あたり偶数だと,二回転する過程のどこかに必ず隣り合わせでの点火が必要になってしまいます.
ちなみに2サイクル機関では,偶数個のシリンダの星型空冷エンジンがあります.飛行機ではありませんが,下記のグランプリ・カー「モナコ・トロッシ」のエンジンなどがそれです.
http://f1.aaacafe.ne.jp/~pupukids/f1GP/f1cars/f1etc/monacotrossi.html
http://www.kolumbus.fi/leif.snellman/c8b.htm#MONA
軍事板
【質問】
よくわからなくなったのでお願い致します.
「スーパーチャージャーは機械式で,軸出力の一部をそのまま圧縮機に用います.
ターボチャージャーは排気ガスを利用します.ゆえに,複合ガス発電と同じで,廃熱を利用するので,熱効率が高まるのと同じで,無駄にしていたエネルギー(排気ガスの圧力=空気分子の運動エネルギー)を,圧縮に利用できます.
その結果,ターボチャージャーのほうが,ロスが少ないです.
で,ジェットエンジンはその構造上,ターボでも,スーパーでも,同じになります.
排気ガスがそのまま後ろに噴出されて反動で飛ぶからです.
プロペラで空気をかいて進むのと,ここが異なります」
という解釈でよろしいでしょうか?
ただ,この解釈ですと,立ち上がりの悪さとか,高度依存性以外は,ターボのほうがよいような気がします.
マリーンエンジンが,スーパーチャージャーで優秀なのはなぜでしょうか?
【回答】
君は根本的な勘違いをしており,疑問自体,その勘違いから生じている.
ロスが少なければ優秀なのではなく,どんな手段を用いようと必要な性能が出せれば良い.
そこを間違えている.
この場合,スーパーチャージャーを駆動するための出力の損失がどれだけあるかではなく,過給によって最終的に得られる出力はどうか?ということが問題.
ロスが少なければ良いのではなく,最終的な出力が仕様を満たしているかが重要.
過給器については正確に言えば
スーパーチャージャー(過給器)
→ 機械式スーパーチャージャー = いわゆるスーパーチャージャー
→ 排気タービン式スーパーチャージャー = いわゆるターボチャージャー
これ以外に圧力波過給器,ラム圧過給器などがある.
機械式スーパーチャージャー自体にも,ルーツ式やリショルム式(自動車用としてよく使用される)
,遠心式(航空機用レシプロエンジンはたいていこれ),その他がある.
また,航空機では機械式(遠心式)スーパーチャージャーと排気タービン式(ターボチャージャー)を
組み合わせて使うのが一般的だった.
マーリンのは大きさの違う2つの羽根車を使った二段式スーパーチャージャー.
低回転域では小さな羽根車の方を使い,高回転&高高度では大きな方を使って圧縮をおこなう.
大戦中は他も二段二速式スーパーチャージャーの開発に血道をあげていたが,ほとんどが実用化ならず.
燃費等は?と言えば,ベンチで回すのでは無いので,航空機に搭載した場合のトータルな性能が重要となる.
マーリンの場合,初期の型で推力排気管による増速が確認されていたのと,過給圧を高めて高出力を狙い始めた時点で,既存の型式は実機に搭載されていたので,搭載機の大幅な設計変更を必要とする排気タービンは敬遠されたという経緯もある.
軍事板
【質問】
レシプロ機のプロペラの羽の数は機によって2〜4つだったりしますが,これは何を基準に決められているのでしょうか?
【回答】
航空機のプロペラの役割は,エンジンの出す力を機の周囲の空気に伝えることです.
エンジンの出力が大きくなると,その力を効率よく空気に伝えられるように,プロペラも工夫しなければなりません.
そのための方法には,単純にいうと,次の2つがあります.
1.プロペラの回転速度を速める(エンジンが一定時間に回転する回数を増やす)
2.プロペラの翼の面積を増やす(プロペラが1回転ごとに動かす空気の量を増やす)
(ここでは,プロペラの翼形はすでに最適な形になっていると仮定します)
つまり,プロペラ機のエンジンの力をより効率よく空気に伝えるには,単純に考えると,より大きなプロペラを,より速く回せばよいわけです.
けれども,どんなに強いエンジンを使っても,プロペラを「より速くまわす」方向には限界があります.
飛行中に回転しているプロペラは,機体の前進につれ,らせん運動を行いながら前進しています.
ということは,プロペラは機体と同じ速度で前進しながら,機体より長い距離を飛行していることになります.
言い換えれば,プロペラのは,機体より何割も速い速度で空中を飛行しているのです.
この飛行速度は,プロペラの先端に近い部分ほど速くなります.
当然,プロペラの直径が大きいほど,先端の飛行速度は速くなります.
プロペラの回転速度を速くすると,その先端の飛行速度は機体より速く音速に近づきます.
音速とは,空中を音が伝わる速さであると同時に,空気が切れ目なくつながったままで動くことのできる速さの限界でもあります.
空中を動く物体の速度が音速に近づくと,空気は何とかつながったままでいようとして激しく抵抗します.
このため,プロペラ先端の速度が音速に近づくにしたがって抵抗が急激に増し,プロペラの大事な役目である,エンジンの力を空気に伝える効率も急激に悪化します.
しかし,回転速度を抑えて単純にプロペラを大きくしたのでは,同じ音速の限界が働きます.
プロペラの直径が大きくなるほど,先端の飛行速度は速くなるからです.
そこで,プロペラの直径を変えずにプロペラに付いている翼の枚数を増やすのです.
こうすれば,1回転あたりにプロペラが動かす空気の量は増えるし,先端の速度が音速に近づくこともありません.
速度が命の戦闘機などでは,前大戦の初期には2枚羽根や3枚羽根だったプロペラが,大戦末期には4枚羽根は当たり前で,中には5枚羽根や6枚羽根のものもありました.
軍事板,2004/12/18
青文字:加筆改修部分
【質問】
通常の双発プロペラ機,
Do335のようにタンデムエンジンで前後にプロペラを配置した双発機,
キ64のようにタンデムエンジンで二重反転プロペラを装備した双発機
にはそれぞれ,どのような利点と欠点があるのか教えてください.
【回答】
通常の双発
利点:構造がシンプルで信頼性が高い
欠点:前面投影面積が大きいので空気抵抗が大きく,総合出力馬力の割には低速
タンデム
利点,欠点共通常方式の逆.延長軸や二重軸,冷却配管等により構造が複雑になる.
空冷エンジンの採用はほぼ無理.
【質問】
水上機版プファイルのようなデザインの,串型配置エンジンの水上機というのは,バランス等で問題があるでしょうか?
【回答】
なぜ串型か.
フルフェザーできないプロペラだと,片発が止まると落ちる.
回転方向との関係で,止まると特にイヤンな側が出来,クリティカルエンジンと呼ぶ,左右逆回転でも片発飛行が出来る飛行機は少なく,出来ると特記されたり.
むろん逆回転は機構の複雑さ・重量的に,当時はかなり不利.
かといってフルフェザー出来るペラが行き渡るのは大戦後半・・・
「どうせ背負い式にするしかない」ので,ワールとかダボハゼとか,串型に「できている」ともいえる.
・・・まさか串型双発の水上戦闘機(ドルニエのあれにフロート)とかいわんよね?
だとしたらダメだよ.
後ろのペラが水被る.
エンジン間にコクピット,前ペラなら,無理が通れば道理は引っ込むかも.
機械・技術系のifで作るのなら,苦手といっていてはいけない.
Do335に近い配置はDo26の例がある.
つか,飛行艇でこのレイアウトがものになったから,Do335みたいな串型配置をやる自信がついたわけ.
上述のように,後部プロペラが水しぶきをかぶるため,Do-26のエンジンナセル後部はヒンジで結合してて,離着水のときは後部を,プロペラごと上向きに傾けられるようになってた.
軍事板,2010/06/19(土)
青文字:加筆改修部分
【質問】
SM79やJu52のような3発機は 2発機や4発機に比べて少数派のようですが それはなぜですか?
【回答】
双発と四発の中間なので性能的に中途半端だから.
エンジン出力を得たいなら,いっそ四発にした方がいいし,
双発と同じような用途に使うなら,エンジン一個分が余計(性能上の無駄が出る)
また,余談ながら3発式の航空機の中にはエンジン出力が足らない(技術的な問題を抱えている場合が多い)
ので,双発にできず3発式にしてしまったという機種も存在する.
3発機ってのは,まだ双発では十分な出力を得られなかった時代にはよく見られた配置.
▼ あまり知られていないけど,Ju52ってのは本来Ju52/3mという表記が正しい.
3mとはエンジン3基っていう意味で,原型のJu52が2発だったのを,性能向上を図ってエンジンを増やしたもの.
Ju-52の原型機はもともと機首エンジン1基のみの単発機ですよ.
両主翼に各1基,合計2基のエンジンを追加したのが/3mです.
出典としてはアレですが日本語Wikiにも書かれているくらいですし,下記ページに写真も出てます.
http://www.geocities.com/hjunkers/ju_ju52_a1.htm▲
そのほかにもフォードトライモータやフォッカーF7b/3mなど,1920〜30年代には3発機は結構飛んでいた.
その後,単体のエンジン出力が上がった30年代末期には,3発機は廃れることになる.
サボイア・マルケッティSM-79@スペイン内戦
【質問】
レシプロ・エンジンの中で最大出力のものは,B-29に搭載されたR-3350なのですか?
リノ・エアレースとかで今でも,そういう類のエンジンを使用してるのでしょうか?
水冷の方はあまり詳しくないので,その辺の事情も含めて聞けたらいいです
【回答】
単純にでかいエンジン,ではなく,戦闘機の中から,一番でかいエンジンを積んだ,大戦末期の飛行機を選んでいる.
液冷か空冷かは直接レースの結果に影響していない.
金さえかければ整備はできる.
ただ,そのエンジンはレース期間中…予選から決勝まで持てばいい,ってな改造を施されているので,チューンされて添加剤どばどばの140オクタン相当の燃料で,4000馬力とかそれ以上を出し,低空の周回コースなのに500マイルに達する.
レース中の2/3は旋回でバンクをかけ,90度傾けた垂直旋回を繰り返すので,キャノピー大きくしただけでも(側方面積が増えるので90度バンク中の)揚力が上がるだの,普通は直進安定性を増すためにやるはずの垂直尾翼の増積を,旋回中に高度を落とさないためだの,スロットルはレース中は全開のままで,微調整はブースト圧でやるだの,いろいろと常識が通用しない.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
レシプロ+(ダクテッド)ファンなんてないの?
【回答】
Caproni Stipaというイタリア産の航空機が存在する.
高速性を追求して開発されたが性能は振るわず,その一方で,意外にも素晴らしい低速性能と,異常に頑固な静安定性を発揮した.
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/f/fb/Stipa-Caproni.jpg
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/thumb/f/f3/Caproni_Stipa_from_front.jpg/300px-Caproni_Stipa_from_front.jpg
あと,ジェットエンジン産みの親の一人ホイットルが,レプシロをコアエンジンに利用したレプシロジェットエンジンを構想している.
これはダクト内にエンジンとプロペラ(+アフターバナー)を推進式におさめたもの.
ただしこれは,どちらかと言えばジェットエンジンに至る前の思考実験の側面が強く,構想段階でレプシロ特有の出力重量比不足がネックになって没になった.
軍事板,2010/12/06(月)
青文字:加筆改修部分
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