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◆◆車輛
<◆陸戦兵器 目次
<兵器FAQ目次


(画像掲示板より引用)


 【link】

「militaryphotos」:Captured vehicles thread
 鹵獲車輌スレッド

MISSING LINKS(AFV模型総合,英語)

「Strategy Page」◆(2013/03/26) ARMOR: Finding Post-War Work For 20,000 MRAPs

TANKS!

「Wired.jp」◆(2013/04/24) 【NEW】DARPAコンテストで100万ドルを受賞した「水陸両用の戦車」

www.jagdtiger.de(博物館の車輛,英語&独語)

]−(戦車)

戦車研究室(装甲車輛含む,相互リンク)


 【質問】
 戦車と自走砲の違いって,前線で歩兵と一緒に前進するか,後方で長距離の砲を撃ちまくって味方を支援するか,という理解でいいですか?
 この両者の役目を同時に果たせる車両ってあるんですか?

 【回答】
 最初の質問はYES.
 次の質問は,両方を兼ね備えると中途半端なものになるので,基本的に兼ね揃えるものはない.
 まあ無理やり使えないことも無いが不経済と.

 戦車は直接射撃(目標を直接照準器に捉えて撃つ)に適した砲を持ち,最前線で歩兵を支援し,敵の戦車や装甲車,そして陣地を潰す.

 自走砲は間接射撃(観測部隊などの指示に従って,自分からは直接見えない目標を距離と方角から撃つ方向を計算して撃つ)に適した砲をもち,個別の目標というよりは砲撃する「地点」に弾を降り注がせて,命中すると破片をばら撒く弾を使って弾が落ちた地点の回りの物を吹き飛ばす.
(正確に狙うことが出来るなら,直撃を狙う事もある.トーチカとかは極力そう狙う)

 戦車はガンガン撃ち返される状況で使うので,弾に当たり辛く発見され難いよう,なるべく背が低く小型の方がいい.
 装甲だって,厚ければ厚いほどいい.重くなりすぎて動けなくならない程度には.
 また,最前線を走り回るので,どんな場所でも高速でパワフルに走れる必要がある.

 自走砲はある程度は撃ち返される事を考えておいた方がいい(弾の飛んできた方向から逆探知する事が出来るので)から,そこそこの装甲は必要だが,戦車のような機動力や分厚い装甲はいらない.
 その代わり,砲身を急角度に出来ないと遠くに弾が飛ばせないので,戦車のように砲塔式にすると,やたら背の高い砲塔がいる(平べったい砲塔では,砲を急角度にするのに不都合なので).

 この両者を兼ね備えられるようにすると,分厚い装甲,巨大な砲塔,パワフルな走りを可能にする巨大なエンジンと足回り,ということになり,大き過ぎ重すぎて戦争に使えなくなる.
 背が高いから,戦車として使うと遠くからでも発見される上によく弾に当たるし,自走砲としては分厚い装甲が過剰すぎる.

 戦車の大砲を限界まで角度をつけて(それでも足りない時は傾斜した築堤作って車体毎斜めにする),自走砲として使うことは出来るしそうした例はあるし,不利なのを覚悟で自走砲に直接射撃やらせて,戦車と撃ち合った例もある.
 でもどちらも,「本来の仕事でないことを無理やりやらせる」ので,あまり効果がないしもったいない.

 結局,2種類に分けて専業にした方がよい,というのが今の結論.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 何故,戦車などの地上車輛の共同開発は,戦闘機などの航空機の共同開発に比べて上手くいかないのですか?
 空は万国共通同じ空だけど,地形は国によって千差万別なのが関係しているのでしょうか?

 【回答】
 防空艦システムや戦闘機の開発は,膨大な金を必要とする.
 どこの空/海軍も単独開発するカネがないので,気に入らないことがあっても妥協してプロジェクトの空中分解を回避しようとする.

 戦車開発はそれに比べると,開発費が安いから,
「オーダーメイドが欲しい」
という軍人の要望が通りやすい.

・海自のFCS3がAPARほどの性能があるのかといえば甚だ疑わしい.
 単独開発は結局開発予算の制約で性能のイマイチなものしか出来ない.
・共同開発がそんなに損なら,欧州各国はなんで共同開発を続けるのか?
 それなりにメリットがあるからだ.
・共同開発だと防衛省は発注権を単独で握れないから,天下りなどの利権が得られないから反対しているのだ.
などという意見もあるが

・共同開発は船頭多くしてなんとやらで,遅れる,予算超過する,重量超過する
のは間違いない.

 ただ,弾薬や交換部品の相互融通など兵站の面からは,共同開発に参加すべきなんだろうね.
 特に弾薬・ミサイル・防空システム・誘導砲弾・ジャマー・航空機など.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ストライカーやFCSなどで従来よりも早く展開し,空挺部隊と接続できる,空挺部隊と共に投下可能な装甲車や空挺戦車の有効性薄れたということなのでしょうか?
 逆にいえば,ドイツは重装甲の装甲車や戦車が多く,展開速度がアメリカの即応部隊よりも遅い為,装甲ハンヴィーよりも残存性が高い装甲車は,いまだ有用であるということなのでしょうか?

 【回答】
 いや,単に能力の限界.
 旧式化したのもあるけど,軽戦車が消滅したので,その空挺版もなくなった.
 防御がもろいので危なくて前に出せない.運用も苦しい.
 空挺作戦自体があんまり行われないのも・・・
 もっともジェリダンも空輸可能なガンランチャーキャリアーと割り切れば,使い道はある気がするので,時代が早すぎたのかも.

 ストライカー,MCS,ウィーゼル,はもっと割り切った設計になっていて,求められる機能を数両で分担することで能力不足を補ってる.
 ロシアのBMDシリーズ以外は,空挺投下能力は求められてないと思う.
 ジェリダンやBMDすら降下失敗を恐れて通常空輸する事が多いし.

モッティ ◆uSDglizB3o in 軍事板,2009/06/17(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 機甲師団装軌式車輌を中心に配備し,普通師団(歩兵師団)装輪式車輌を中心に配備するんですか?

 【回答】
・機甲師団 戦車部隊(装軌)+歩兵部隊(自動車化or機械化)
・歩兵師団 歩兵部隊(徒歩or自動車化or機械化)
が,大まかな概念.

 で,徒歩はいいとして,自動車化ってのはトラックや軍用自動車など,無装甲かもしくはそれに近い軽装甲に搭乗する歩兵.
 それら車輌のほとんどが装輪だが,半装軌や装軌の車輌も存在した.

 一方,機械化は最低限小銃弾に耐える程度から,戦車に準じるぐらいの装甲が施された車輌に搭乗しているもの.
 こちらは装輪も装軌も存在するが,数的には装輪メイン.
 ただし,重装甲になるほど装軌の傾向ある.

 最後になるが,充足率という概念があり,時代や国によっては,トラック1台を中隊で共有とか,車輌が配備されない自動車化部隊とか存在するので注意.

戦争板,2010/07/01(木)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 予算あるんだったら,正面装備は全部装軌にしたいものというのは,本当ですか?

 【回答】
 本当.
 戦車やIFVといった正面装備は重量がかさむので装軌が原則.
 歩兵を運ぶだけのAPCでも,装輪は不整地走行能力が低くて歓迎されない.
 何時スタックするか分からない車両なんて乗りたくない.

 相輪のメリットは軽い・安い・整備が楽・道路上でのみ速い.
 この特性から,空輸などで運ぶ緊急展開部隊や治安維持などの後方活動で使われます.
 単に装軌を運用するだけのお金がないということも多々あります.
 どこかの陸自のように.

モッティ ◆uSDglizB3o in 軍事板
青文字:加筆改修部分

 ただし自衛隊の装備更新をみていると,かつては装軌車両の60式装甲車などを使っていた部隊にも,装輪の96式装輪装甲車が入っている例がある.

 従って装輪であってもある程度お金をかければ装軌の代わりになる.
 あるいはそれらの部隊の戦場での役割に,何らかの変化があったということだと思う.

 今のところどうしても装軌であるべきとされるのは戦車,歩兵戦闘車,自走砲などではないかと思う.

 この中で歩兵戦闘車は各軍とも未だに模索している観があり,装輪装軌以外でも車体の大きさ,装甲の度合い,武装を機関砲とするか砲とするか口径はどの程度かなど,各国によって大きく異なっている.

 装備の開発は予算と時間との競争の面があるから,一概に装輪,装軌に拘らず,どちらの技術も育てる方向なんじゃないかと思える.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 装甲車って民間人でも所有できるのでしょうか?
 武装が無ければ問題なさそうな気がしますが?

 【回答】
 戦車は「動く砲台」であり,大砲の部品と考えられるから,特殊な場合(学術的,歴史的意義があり,展示などの目的で特に許可されるなど)でもなければ,無理だろう.

 装軌装甲車は武装なしで運用されるのも常態の一つであり,乗員保護が目的だから,大型特殊車両として許可される可能性大だと思うし,装輪の小型装甲車の類(例えばパナール)なら,禁止される方がおかしいだろう.

 事実,税関の公式サイトだと,装甲車が輸入できない理由はない.
http://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/kinseihin/kinseihincontents_jr.htm

 現行の輸入禁制品リストにも,装甲車は含まれていない.
http://www.mof.go.jp/singikai/kanzegaita/tosin/kana161215be.pdf(PDFファイル)

 ただし防弾,装甲装備は,犯罪に使われる可能性があるから無制限に購入はできないだろう

軍事板
青文字:加筆改修部分

個人所有の「戦車」
(画像掲示板より引用)


 【質問】
 日本国内で,海外で放出品となった戦車・装甲車などを走らせることはできますか?
「お城やクルーザーを買いませんか?」
というDMが送られてきたのですが,その中にこのような内容があり,質問しました.

 【回答】
 戦車・装甲車でも,武装を完全に取り除いてある場合,法的には中古外車扱いになりますから,理論上は輸入可能です
 しかし中古輸入車は,日本国内関連法の法基準に合致するように改造し,そののち国土交通省の認可を受ける必要があります
 年間50台未満の輸入車には優遇措置がありますが,この措置を適用しても,諸手続きの経費としてだいたい1000万円ほどかかります.

(画像掲示板より引用)


 【質問】
 戦車シミュゲーをやっていると,第二次世界大戦の戦場では列車の線路がたくさんあります.
 そこで気になったのですが,戦車が線路を踏みつけた場合,線路は傷ついたり,場合によっては潰れて破損してしまい,列車の走行に支障をきたしてしまうのではないかということです.
 さらに,大戦中,戦車乗りたちはそういうことに気をつけるように伝令を受けていたりしたのでしょうか?
 またあのような激しい戦闘の最中に線路のことなんかに気を配っていられたのでしょうか?

 PS
 実際キャタピラで線路が破損していないかどうかのチェックは行われていたのでしょうか?
 キャタピラで破損した線路が原因で列車が脱線するなど事故が発生した事例はあるのでしょうか?
 戦場の線路についての疑問は尽きません・・・

 【回答】
 線路の傷よりも,路床の崩壊の方が深刻なダメージとなるでしょう.
 ただし,国内が戦場になってしまうような事態なら,輸送力の確保は最優先事項であり,多少の障害があっても運行するかも知れません.

 とはいえ,戦闘で線路が損傷するのも天災で損傷するのも,復旧に関する技術的な問題は同様ですので,自力で鉄道を運行管理できる組織なら復興も可能です.

 戦車乗りが行動地域のインフラを保全するか否かは,その時の状況によります.
 線路を強行的に横断せねばならないような状況は,それなりに緊迫していると考えられますので,おそらく気にせず渡るでしょう.
 それでも線路を保全しなければならない必要があれば,事前の行動命令に含ませて下達されるでしょうが,その命令が伝令形式で伝えられるとは限りません.

(画像掲示板より引用)


 【質問】
 非戦闘車輌って何?

 【回答】
 軍用車輌のうち,戦闘に直接参加させる目的で造られてはいないものを指す.
 その殆どは非武装か,または自衛程度の軽武装しかなく,装甲も持たない.
 中には民間車輌を徴用または購入して,そのまま軍用に使用しているケースもある.
(戦場で見られるTOYOTAは,殆どがこのケース)
 各種トラックから,架橋戦車,火砲牽引車,救急車,消防車,自転車,リヤカー等等,その範囲は幅広い.

 【参考ページ】
http://ja.wikipedia.org/wiki/装甲戦闘車両
http://en.wikipedia.org/wiki/Armoured_fighting_vehicle

非戦闘車輌はどれ?
faq060612d.jpg
faq060616d.jpg
faq060630d.jpg
(いずれも画像掲示板より引用)

【ぐんじさんぎょう】,2012/08/08 20:40
を加筆改修


 【質問】
 ソフトスキンって何?

 【回答】
 軍用車両のカテゴリーの分け方のひとつで,戦車などの装甲化された車両に対して,装甲化されていない車輌を指す言葉.
 具体的にはトラック,コンパクトな4輪車,バイク,土木機械,自転車など.
 撃ち合いの場に出ることは殆どないが,輸送,補給,回収修理,野戦築城など支援役として,軍隊を円滑に動かすのに重要な役割を担っている.
 にも関わらず,平時には予算などで軽視されることも多い,悲しい存在.

 【参考ページ】
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BD%A5%D5%A5%C8%A5%B9%A5%AD%A5%F3
http://pk510.akazunoma.com/newpage9.html

【ぐんじさんぎょう】,2012/01/30 20:30
を加筆改修

ドイツ軍のソフトスキン車輌
一番上(自転車除く)はVWイルティス
真ん中は東ドイツ軍のIFAトラック
一番下はMAN 7トン 6X6トラック

軍事板,2011/10/23(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 イラクに展開している米軍の車輛が,誤射を防ぐため,「戦闘識別パネル」というものを取り付けているそうですが,写真を見ると,ただの波板にしか見えません.
 どういう仕掛けがあるのでしょうか?

 【回答】
 アレは赤外線で観ないと意味無いんです.
 こんなカラクリになってます.
 つまり,サーマルイメージセンサーを通してみると熱い車体の真ん中に温度の低い部分が出来るんで,敵味方識別に使えるって言う形式です.
 つか,戦闘識別パネルで検索すれば,CIPって言う名称が出てくるんだからそこからさらに検索しなさい.
 「cip combat panel」でトップに出たぞ.


◆◆◆自走砲


 【質問】
 戦車自走砲ってどう違うんですか?

 【回答】

戦車・・・・・ 装甲した車体と強力な砲を備え,その強力な砲で敵を攻撃する車輛.
砲は敵装甲車輛の装甲を直接照準射撃で正面から打ち抜く事を求められ,装甲はそれらを正面から受け止める事を求められる.
 
自走砲・・・ 自立移動能力を備えた砲.自分で動ける牽引砲と考えて良い.
間接照準射撃にて,目標を面で制圧する任務を持つ.
目標に対し,短時間でより多くの砲弾を発射する事が求められ,射撃終了後は,速やかに移動出来る能力を持つ事が求められる.
支援的任務が主とされる為,装甲は破片,小銃弾を防ぐ程度しか装備していない.

4号戦車派生型の自走砲 sdkfz.165/1 10.5cm le f.h.18/1(sf)
(試作のみ)
(引用元:かつ丼日記)


 【質問】
 自走砲は対戦車戦にも使うものなんですか?

 【回答】
 自衛のために直射能力を持つ自走できる榴弾砲は,現代でも多いです.
 また,その国の教義によっては,砲兵が積極的に直接前線の部隊に協力して,直射で敵を攻撃するとしているところもあります.

 ちなみに第2次世界大戦の昔は,自走砲の範疇に,対戦車自走砲という対戦車を専門とするものがありました.

 次に間接射撃についてですが,今の自走できる榴弾砲は戦車を含む敵部隊に対して射撃をすることはあります.敵の頭上で砲弾を炸裂させ,当った破片の大きさによっては天蓋を貫くこともあるでしょうし,撃破できずともハッチを閉じさせ,車上の装備を破壊する,或いは随伴する非装甲車輛を足止めするなどの効果が期待できます.

 そして,誘導砲弾も開発されてはいます.
 これはレーザー照射による誘導や砲弾自体を運搬容器として自己誘導できる賢い子弾を放出して攻撃させるものなどがあります.
 実戦で使われた例は小数ながらあります.
 また,地雷を地上に撒く型の砲弾もあります.


 【質問】
 「自走砲」ってゲーム『大戦略』だと,戦車とかを間接攻撃する兵器ですよね?
 だけど,実際はどうなんですか?
 戦車とかを攻撃する兵器なんですか?

 【回答】
 文字通り,自走能力のある砲が自走砲です.
 ですから戦車だって自走砲といって悪くないようなもんですが,これは戦車と言うし,機関砲積んだ歩兵戦闘車も,自走砲とは呼びませんね.

 基本的には直接射撃,間接射撃を問わず,砲による射撃を第一義とする(ここで歩兵戦闘車は除外される)車輌で,戦車を除くもの,となりそうです.
 このあたり,定義に詳しい方のフォローをお待ちします.

 で,常識的には,砲兵の代わりとなる自走砲と対空自走砲が主です.
 対空自走砲は文字通りのものとして,通常の自走砲は,砲兵として155mmなどの大口径の砲を使用し,射程数キロから数十kmの,主として間接射撃による面制圧を主任務とします.
 したがって本来は,戦車のような点目標は主な攻撃対象ではありません.

 ただ,最近は誘導技術の進歩によって,ピンポイントで戦車を破壊できる砲弾,子弾が普及してきたため,戦車の数km直射という攻撃距離を,アウトレンジして攻撃する対戦車兵器としての運用も十分可能になってきました.

 とはいえ,やはり現在のところ,第一の存在目的は陣地,集積地,歩兵部隊などを,大量の弾薬を用いて面で制圧し,こちらの侵攻を容易にすること,そして敵の砲兵に対して対抗射撃を行い,これを撃破することでしょう.

 例外的に,WW2のドイツ軍の場合,砲兵科所属の物は,戦車を直接照準で撃つ車輌でも,「自走砲」になります.

軍事板,2001/05/30(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 対迫,砲レーダなる物があると最近知ったのですが,
レーダー発達
→射撃地点ばれる
→陣地転換を急いでやらなきゃ!!
って感じで自走砲は発達した.と思っていいのですか?

 また,レーダー対策で「ステルス化でレーダーに映らない砲弾」等は開発されているのですか?

 【回答】
 最近は,対砲レーダに対抗するために発射レート・陣地転換の早さが必要だということで,そういう能力を伸ばす方向で発達している.
 もちろん他に,データリンクとか長射程化とかもある.

 歴史的には,対砲レーダが登場する以前から自走砲はあった.
 砲の機動力を向上させたいという要求から,自走砲は出現したと記憶している.

>また,レーダー対策で「ステルス化でレーダーに映らない砲弾」等は開発されているのですか?

 知る限りでは無い.
 知らないだけかもしれんが.
 ステルス化ってのは一般に金がかかる.
 ミサイルならともかく,安価が売りの砲弾にそんなことするかねえ.

軍事板
青文字:加筆改修部分

イスラエル軍のL-33 SPG(Self-Propelled Gun :自走砲)
(画像掲示板より引用)


 【珍説】
 XM2001「クルセイダー」155mm自走砲は重くて使い物にならないのに,軍産複合体の圧力で採用にいたった(TV朝日『サンデー・プロジェクト』)

 【回答】
 使い物にならないなんて事は無い.使い方次第.
 最大約30kmの射程を誇る155mm榴弾砲を自走させれるだけで,かなりの意味はある.牽引式の155mmに比べれば,確かに重いが.

 大体サンデープロジェクトの情報の信用性はアリアド○以下・・(RANRANRAN※

 なお,Pzh2000や99式などの最新世代の自走砲に比べて重いということはありません.
 空輸による緊急展開を考えると重すぎるということになるようです.

(初心者質問スレッド)

 「軍産複合体」と表現すると,一枚板で自分らの集団を利する圧力団体が有るように思えるでしょうが,昔から兵器メーカの競争は激しかったのですが,ことに冷戦後はもっと厳しくなりました.
 別項の例のように,軍用機を作っている航空機メーカの吸収合併だけでもこんなんです.

 MLRSのような新しいものと比べて「使いものにならない」ということでしたら,MLRSはもともと,NATO正面にワルシャワ軍が地面を覆って来た場合に,一斉射で面制圧するためのもので,そのような使い方に向けて作られております.
 大規模の集結した目標の多くが無力化した後の「落ち穂拾い」のような砲撃を主とする場合などは自走砲の砲がずっと使い易いです.
 あとMLRSは高価です.これ1セットの納入価格で155mm自走砲が何台買えることやら.

 また,自走砲自体の能力の進歩はわずかでも,運用方の改良で実力は進歩しています.
 MRAというかデータリンクで敵の位置へより早く正確な砲撃/修正射が可能となる.

 155mm砲自体は大昔からあるものだが,大口径を生かした弾頭の進歩への期待.
 対ソフトスキンのクラスターというのはかなり前に耳にした.これは容易でしょう.
 トップアタック型対戦車自己鍛造弾頭というのもどっかで目にしたが怪しいかも.

 重量面においても,105mmクラスに比べ重くても,有効射程が長いので配備数は少なくてすむ.いろいろな面でどちらが有効かはともかく.

 まあ,JDW(日本語訳)にもこういった記事が合ったそうで.

「ロンドンの,匿名の金融関係者は,今回のイラク戦争に関して,昔ながらの装備の重要性が再認識された,という見方を示している」

 続きは以下をどうぞ.
http://www.kojii.net/jdw/jdw030423.html

(キルロイ◆dtIofpVHHg in FAQ BBS)

 ※原文ママ


 【質問】
 牽引野砲自走砲のそれぞれの長所・短所を教えてください.

 【回答】

価格  陣地変換  整備所要  戦場機動力
牽引野砲  安い 遅い 少ない 低い
自走砲 高い 早い 多い (装軌なら)高い

 大口径の自走砲は戦術輸送機では運べないため,急速展開部隊の装備は牽引野砲になりがちです.イラク戦争でも,米海兵隊が牽引の155mmをせっせと使ってました.
 最近は専用トラックの荷台に載せ,牽引野砲の運搬性と自走砲のヒット&ラン(対抗砲撃前に陣地転換)性能を併せた兵器が,低価格という利点もあって普及しつつあります.(HN "System")


 【質問】
 203mm自走榴弾砲が廃れたのは何故でしょう?
 現在155mmは長射程化に進んでいるように見えますが,203mmならもっと容易に実現できるのでは?
 米軍は203mmをMLRSに置き換えましたが,同時に155mmを203mmに置換えることは検討されなかったのでしょうか?

 【回答】
 M110もほとんど退役したけど,基本的には203mmの威力はいらないということ.
 それに203mmを長射程化するには,砲身を延長する必要があるし,発砲の衝撃に耐えるだけの車体を用意する必要がある.それは重量の増大を招くから.
 大型の砲を撃つには,プラットホームとしての安定性が必要で,そのためにはサイズの3乗で重量が増大するわけだな.
 ロシアには203mm長砲身砲を搭載した2S7という自走砲があるが,装甲防御もない露天形式なのに46tもある.
 装甲やらなんやら取り付けたら60t近くになるだろうし,サイズも地上で運用するのに困難なサイズになる.
 威力向上の利点と重量増大そのほかの欠点を比較した場合,203mmはボツとなったってとこ.


 【質問】
 現代の自走榴弾砲に装甲をつけるメリットってあるんですか?
 価格がハネ上がるだけで効果が少ないような気がするんですが.
 75式とかは第七師団専用になってしまったし,99式などは七師に行き渡るのに30年くらいかかりそうです.
 M110みたいに非装甲の装軌車輛にFH-70を乗せちゃえば,低コストで量産できて,全国の師団に充当することができると思います.

 【回答】
 例えば日本のような縦深のない戦場では,砲兵もすぐ敵の攻撃に遭います.
 装甲が甘く,また機動性の足りない装輪車輛では,大変消極的な運用をするか,自軍の奥深くに置いて限られた範囲だけを攻撃することになります.
 接地圧の関係で,装輪車輛は重量を軽くしないと同サイズ(車長,車幅)の装軌車輛と同じ機動性が得られず,運用可能な地形も制限されます.
 軽いということは装甲にも搭載する砲の射程,発射速度にも制限が加わるということで,数だけ増えても攻撃力としては逆に減ることが考えられます.
 実用的に運用できる車輛サイズには限界があるので,結局装輪自走砲は能力が劣り,運用に制限の多い兵器となってしまうわけです.
 いくら数あっても,使えないものは使えないので無意味,と.

 別にAPFSDSを止めようってわけじゃないんです.
 敵の榴弾の破片でやられたらたまらないですし,50口径ライフルくらいには対処したいわけです.
 自走砲は本来後方に位置するものですが,砲の射程やミサイルなどを考えると,後ろにいれば安全という事にはならなくなってきたということです.
 コマンド部隊,或いはゲリラによる近接からの小火器の攻撃も考えられるだろうし.

 また,砲兵は砲兵同士で撃ち合うんだよ.よって,155mmの破片に対する防御は必須でコレを考慮すれば小銃弾程度の全周防御って話になる.

 さらに,生産性を考慮すれば,流用可能な部品は多い程有利なのは言うまでもない.

 なお,北部方面隊の師団砲兵は全て75式.第7師団専用というわけではありません.
 実は価格もFH-70と変わらない.
 それに,第七師団には40門しか特科がないのに,
>99式などは七師に行き渡るのに30年くらいかかりそう
ということにはなりません.


 【質問】
 装輪式の自走榴弾砲って聞かないけどあるの?
 日本とか欧米みたいな道路がしっかりしている国なら,装輪式の方が便利な気がするのですが・・・

 【回答】
 南アフリカのG6ライノ自走砲,チェコスロバキアが開発したダナ自走砲等があります.
 装輪式は戦域間の展開能力に優れます.

 多くの国では自走砲は機動打撃部隊の火力支援のために配備されています.
 戦車のすぐ後ろをついていかなきゃいけないんです.
 ですから装軌車両となっている場合が多いです.


 【質問】
 アメリカ陸軍では,今後の自走砲の発展の方向についてはどのようになっているのでしょうか?

 【回答】
 C-130で輸送可能な大きさ(貨物室に自分で出たり入ったりできる)
+C-130で意味がある距離を運んでもらえる重さ
 で,あとはネットワーク志向のシステムに依拠したFCSの一環で構想されています.
 NLOS-CとNLOS-Mなどがそうです.
 前者は視程外=榴弾砲,後者は視程外=迫撃砲とでも訳せるでしょうか.
 前者は155mm38口径の榴弾砲のようです.
 また,NLOS-LSちゅう精密攻撃を長距離で行う兵器も構想されています.
 これは垂直発射コンテナを運ぶ無人車輛です.コンテナの中に長距離滞空型ミサイルや精密攻撃高速誘導弾などが詰まっています.


 【質問】
 MLRSが再装填に要する時間は?

 【回答】
 MLRSは6発を一纏めにしたキャニスター・モジュールのランチポッド方式なので,1本ずつロケットを積み込む場合よりも短時間で再装填が行えます.
 つまり撃ち終わったモジュールを抜き出し,新品のモジュールを挿し込み・・・といった作業で,6本組ロケットを2回の抜き挿しで交換できるので,1本ずつ積み込む場合の3分の1の回数で済む事になります.

 参考までに,普通に1本ずつ差し込んで装填する方式の,ロシアの多連装ロケットランチャー「BM-30 スメルチ」は,300mm12連装ロケットを再装填するのに36分掛かります.

それではMLRSの場合は・・・

M270 MLRS Self-Propelled Loader/Launcher (SPLL) :GlobalSecurity

M270 MLRS Self-Propelled Loader/Launcher (SPLL) :FAS

M270 Multiple Launch Rocket System - Wikipedia

 上記英語サイトはどれも元の資料は同一のようで,全て「Reload Time 9 minutes」とあります.
 再装填時間は9分です.

MLRS - Wikipedia

 日本語版ウィキペディアでは「再装填時間: 8分」とあります.

MLRS - Weapons School
>乗員1名でも3分以内に再装填を完了できる.

 こちらでは3分以内となっています.・・・随分と数値が違いますね.

MLRS自走多連装ロケット・システム - 戦車研究室
>全弾発射後の再装填時間はわずか93秒で終了する.
>〜中略〜
>M270A1 AVMRLでは,射撃統制装置が近代化されると共に,
>発射機のメカニズムの改良で,ロケット弾の再装填時間が
>従来の93秒から16秒に短縮されている.

 こちらではM270発射機で93秒,M270A1で16秒としています.

 16秒は幾らなんでも有り得ないんじゃ・・・
 抜いて挿して抜いて挿して,4行程を16秒と言う事は一つの作業を僅か4秒で?
 ランチポッドは2トン以上あるのに?

 そこでMLRSに関する,93秒ないし16秒の記述がある英語サイトを調べてきました.

M270A1 LAUCHER - FAS
--------------------------------------------------------------------------------
The ILMS provides a tremendous capability as well. It is designed to reduce fire mission and reload cycle times. This is achieved by providing a faster drive system that moves simultaneously in azimuth and elevation. The ILMS will decrease the traverse time from stowed position to worst case aim point by approximately 80 percent (from 93 to 16 seconds). The ILMS also decreases the mechanical system reload time over 30 percent. The reduced time spent at the launch and reload points increases the survivability of the launcher crew and associated rearm personnel.
--------------------------------------------------------------------------------
M270A1 an MLRS launcher with leap-ahead lethality - BNET
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M269A1 ILMS. This materiel change dramatically improves responsiveness. ILMS allows the launcher to move simultaneously in both azimuth and elevation. It reduces the stow-to-aim point time of 93 seconds (worst case) to just 16 seconds--a reduction of 83 percent. Additionally, reload times improve nearly 38 percent, decreasing from 260 seconds to approximately 160 seconds.
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Multiple Launch Rocket System - Army Technology
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The IFCS provides additional capacity to accommodate complex munitions and modern computer electronics, including video display, onboard navigation with global positioning system, architecture for ultrafast signal processing and advanced mission software. ILMS reduces the time to aim the launcher to 16 seconds (compared to 93 seconds). The reloading time is cut from four to three minutes.
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 どうやら93秒や16秒といった数字は,全弾再装填時間の事を意味するのではなく,照準に要する時間の事を指していることが見て取れます.
 ここまで何となく理解したのですが,詳細をよく理解できなかったので,プロのライターの井上孝司さんに説明して貰いました.

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>The ILMS will decrease the traverse time from stowed position to
> worst case aim point by approximately 80 percent (from 93 to 16
> seconds).

 旋回・俯仰を同時にこなすことで,発射位置に指向するためにかかる時間を短縮.最長のケースで 93 秒 (つまり,もっと速い場合もある) だったのが,16 秒になったと.

>The ILMS also decreases the mechanical system reload time over 30 percent.

↑だから,それに加えて再装填の時間も 30% ほど速くなったのですね.

------------------------------------------------in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 つまりFASの記述を基準にすると,M270の再装填時間が9分掛かるとすると,M270A1 AVMRLは6〜7分で再装填できるということのようです.
 ただ装填に要する時間と,其処から発射位置に指向するのに要する時間は別物ですから,厳密に考えると若干違ってきます.
 また「4分→3分」 (Army-Technology)は,ランチポッド1基分の抜き差しの話だと考えれば理解できます.
 左右両方で8分→6分ならMLRS1基分の再装填時間なのでしょう.
 「260秒→160秒」(BNET)も同様.
 FASの30%という数値よりも若干高い38%ですが,これは元の資料が違っていた可能性があります.

 そうなると日本語サイトの「Weapons School」「戦車研究室」は,MLRSの再装填時間を誤って記述していた事になります.
 ・・・2つとも著名なサイトで皆が良く引用しているだけに,数値の間違いは影響が大きいです.
 実を言えば私も今回調べてみるまで,勘違いしていました.

2008年06月19日付「週刊オブイェクト」


 【質問】
 駆逐戦車って何?

 【回答】
 敵戦車の破壊を目的とした装甲戦闘車輌で,対戦車自走砲の一種てるん.
 普通の対戦車自走砲や突撃砲よりも攻撃力と防御力に重点が置かれた,対戦車戦闘向けに設計されているてるん.
 もっとも,その乗員の兵科が何かによって管轄が違ってくるために,ご都合主義で突撃砲と駆逐戦車とが分けられることもあるみたいてるん.

 【参考ページ】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A7%86%E9%80%90%E6%88%A6%E8%BB%8A
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B6%EE%C3%E0%C0%EF%BC%D6
http://www.taekwondo-ksk.com/ishiblog/blognplus/index.php?e=66

 【関連リンク】
駆逐戦車 - アンサイクロペディア

【ぐんじさんぎょう】,2008/11/13 21:50
に加筆

 これに関しては昔「2ちゃん」で名回答があったなあ・・・
 「借金で頸が回らなくなった戦車」とかなんとか(笑)
 上まあ,WW2中のドイツで,戦略爆撃により砲塔旋回のベアリングが足らなくなったっつう説もあるが^^;

へち in mixi,2008年11月13日 19:02
青文字:加筆改修部分

SU-122-54駆逐戦車
faq25g04s122-54.jpgへのリンク
faq25g04s122-54b.jpgへのリンク
(画像掲示板より引用)


 【質問】
 ゲパルトのような自走対空砲って意味あるんですか?
 あの程度の中途半端な威力の機関砲で航空機が落とせるようには思えないんですが.

 【回答】
 あれがあると,低空に航空機が寄れません.
 自走対空砲の主な任務は機甲部隊に随伴して,低空侵入してくる攻撃機と攻撃ヘリを撃退する事です.
 戦車は対戦車攻撃を行なえる航空機に対して無力なので.特に低速,低空を飛行する攻撃ヘリに対しては有効です.
 あの程度で十分ミッションキルできますし,油断して来たら本気で落とせます.A-10ですら,23mmの破片OKレベル.
 欠点は射程距離が短く,精密誘導兵器にレンジアウトされること.
 敵がそんな上等なものを持っていない場合,こっちが多層防御している場合,どちらも有効な武器になります.
 シルカですら,いまだに侵攻時には要チェックアイテムです.

 ただし,高空を飛ぶ航空機を相手にする事はあまり得意とは言えません.それはSAMのお仕事と言う事で.

 後,一応ですが対人戦闘も考慮に入れています.
 例としてベトナム戦争に使用されたM42ダスターは拠点防衛や輸送部隊護衛等の対地任務に多用され,大口径機関砲の長射程を利用して,アウトレンジからベトコンをミンチにしています.
 他にも,大戦時に米軍で使用されたM16/M17が,「ミートチョッパー(肉切り包丁)」と言う物騒な渾名を与えられています.


 【質問】
 ドイツのゲパルト対空自走砲の左側だけにあるフェンダー上部の網のようなものはいったい何でしょうか?
 放熱口でしょうか.
 この網目のパネルの中には何があるのでしょう?
 エンジンは後ろなので排気パイプとは思えませんが.

 【回答】
 マフラー(排気管).

 ゲパルトの車体前部左側には補助動力装置が配置されてる.
 これは主エンジン切ってても砲や電子装置に電源を供給するため.

 単純なパイプ・マフラーにすると赤外線センサーに悪影響が出るので,長く引き回して主エンジンの排気管と繋げてある.
 ゲパルトは射撃中は車体上部のあらゆるところに空薬莢が落ちてくるので,空薬莢に当たって壊れないように金網状のカバーで守ってる.

軍事板


 【質問】
 現代の自走砲は,走りながらでも撃てるの?

 【回答】
 走行間射撃可能な自走砲はないこともありません.
 イスラエルのスラマー155mm自走砲,中国のCM23A1(これは自走迫撃砲だけど)がそう.
 しかし,米のM109パラディンA6バージョンはじめ,たいていは不可能です.
 米海兵隊がそのような要求を出したこともあったようですが,単に撃てるだけでなく,当たるように撃つには巨大な砲を安定化する必要があり,費用と重量,体積増が効果に(あるとしても)見合わないということになったようです.
 パラディンにしても,走行中から一旦停止して照準,発射まで60秒.無理に走行間射撃可能にする必要はないわけです.


◆◆◆乗員


 【質問】
 戦車1台の構成員教えていただきたいのですが.

 【回答】
 WW1の菱形戦車Mk.1は8人.
 ルノーFT-17は2人.
 A7Vなら,なんと18人.


 WW2だと3人〜5人.
 戦車長,砲手,操縦手,装填手.
 WW2のドイツ戦車兵だと上記に加えて前方機銃手兼無線手が加わる.
(軽戦車だと戦車長兼砲手,操縦手,無線手の3名だけど)

 小口径砲の時代は砲手が装填手を兼任してたし,車長兼砲手という無茶な国も有った.
 豆戦車じゃない限り,前方車体機銃手(国によっては無線手兼任)が居るのが普通だった.

 戦後の戦車では前方車体機銃は廃止されてるので,4人が標準.
 最近の戦車だと自動装填のため,装填手が廃止されてる場合も有る.

 階級は現代米軍の例だと車長が2等軍曹以上,砲手が3等軍曹,装填手,操縦手は伍長以下.
 普通は操縦手が先任.

 ただし国によっては,大隊長などが乗っていた事例もあり.
 概して砲手,操縦手は下士官,装填手は兵卒が多い.

 WW2の独軍の戦記なぞを読むと,大隊長車には無線手に幕僚が乗ってたりする.
 大隊長車無線手に「無線士官」とかが乗ってる場合があるんだよ.
 乗らない時は本部中隊長の役割をする.

 現代の米軍でも,副長車に前線航空統制官を乗せてるんじゃないか?というような記述があったり,大隊長は指揮所に居るような記述が有ったりする.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 現代の戦車部隊では,どの程度の階級・地位の士官まで,実際に戦車に乗るのでしょうか?

 【回答】
 中隊長,大隊長あたりくらいまで.
 大隊長は一応,自分の車があるけど,人によっては大隊全体の予備扱いかも.
 だから,階級だと中佐くらいまで.

 ちなみに,2003年4月のバグダッド市街地への機甲襲撃のときは,旅団長(大佐)がM113に乗って,車列とともに今のグリーンゾーンまで乗り込んでいる.

 また,サンチェス回顧録にはNTC(仮想敵と旅団級の戦いをする演習場)で旅団長時代,戦闘の指揮をどこで とるべきか悩み,突破口に突入したこともあったとかかれている.

 クルスク戦で大ドイツ師団麾下のパンター戦車を指揮した,フォン・シュトラハヴィッツ伯爵(大佐)は,戦車に乗って戦っている.

 他はSS第12師団長のクルト・マイヤーあたりも,かなり前線に出ていたような話があったと思う.

 日本軍も占守島じゃあ,連隊長が部下を置いて真っ先に突進したとか.

 戦車に乗ったわけじゃないが,朝鮮戦争のときのディーン少将は,バズーカを自分で撃っているし,後には捕虜になっている.

 だから,そこらは指揮官の指揮の執り方次第かもしれない.

 ちなみにフォン・シュトラハヴィッツは,
「単独行動を好み本部からの無線に応えず,指揮が拙劣」
と報告書で批判されてるけど,その報告書を書いた第10戦車旅団長デッカー大佐は,旅団の指揮権を,GD戦車連隊長だったフォン・シュトラハヴィッツ大佐に奪われているんで,内容は彼の腹立ちまみれの告発だったことを考えて読んだほうがいいと思う.

名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE(黄文字)他 in 軍事板,2009/12/11(金)〜12/12(土)
青文字:加筆改修部分

▼ 補足部分に追加情報.
 韓国第一師団長(当時)の白将軍(当時の階級失念:後・大将)は,指揮下の米軍戦車に同乗する形で,平壌一番乗りを目指して進んだかと.
 本人の著作より.
『韓国戦争一千日 白善Y回想録』(ジャパン・ミリタリー・レビュー,昭和63年)
だったかなあ・・・???
(何方か確認を)

bugaisha in FAQ BBS,2010/2/20(土) 21:55
青文字:加筆改修部分

▼ ドモ,ニダー板で白将軍の伝記を書いておりますpcpdがお答えいたします.
 当時准将だった白将軍は,米軍のへニング大佐からタンクデサントをして指揮を執べきだと助言されたところ,なんと将軍は本当にタンクデサントをして指揮を執りました.
 この話は草思社から出てる,「若き将軍の朝鮮戦争」の263ページから266ページのあたりに記載されています.

pcpd in FAQ BBS,2010/3/2(火) 21:48
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 佐官が自ら戦車に乗って戦う事ってありますか?

 【回答】
 大隊長クラスの佐官が戦車に乗って前線に出ることは,ないとは言えない.
 WW2ドイツの場合だが,佐官クラスが乗る「指揮戦車」(無線機を増設した戦車)もちゃんとあった.
 人名を忘れてしまったが,佐官クラスで戦車に乗って前線に出てた人がいたかと.

 ロシアにも,連隊長用や大隊長用(つまり佐官搭乗)の指揮戦車があったりはする.

 あと,戦闘に積極的に参加したかは微妙だが,「マラヤ電撃戦」の島田戦車隊の隊長,島田豊作少佐は戦車に乗って実際に前線に出た佐官だね.
 当時,島田少佐は中隊長(戦車第6連隊第4中隊長).

 日本陸軍の場合,連隊長(大佐or中佐)は基本的に乗車して前線に出ている.
 あと,重見少将(戦車第2師団の戦車第6旅団長)は乗車して突入玉砕したはず.

 しかし昔と違い,無線通信技術が進歩すると,「指揮官が最前線で状況を自ら把握しなければ,ちゃんと指揮が出来ない,ということもなくなってるので」,佐官クラスが乗るような「指揮戦車」の必要性は薄れた.
 今は後方の指揮所で指揮を執るか,ちょっと後ろから指揮無線設備を積んだ装甲車で,前線部隊に追随するのが普通.

 あと,通常の戦車に無線設備を増設した指揮戦車といえども,やはり最前線で戦闘には積極的に参加はさせられない(指揮官死んじゃったらどうするんだよ,以上に自分自身が戦闘に関わってたら戦況を把握した全体指揮が出来ない)し,そうなると戦車が1台(連隊,大隊クラスだと副官が乗る副官車ってのがあるのが普通なので,2台かそれ以上になる)無駄になる.
 予備戦力としての使い路があるものの,前線に出してるのに戦闘に参加しない車両があるのはもったいない.

 そういった理由もあって,指揮官自ら戦車を駆って最前線を,ということはまずなくなった.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 戦車乗員の所持武装(拳銃,SMG等の大まかな区切りで結構です)教えていただきたいのですが.

 【回答】
 武装については,車内が狭いこともあり拳銃か短機関銃.
 狭い車内に入れておく関係上,小型にならざるを得ない.
 でもって拳銃じゃ,いざって時に不安がありまくりだから,サブマシンガンになる.
 最近だと,折り畳み式銃床の小銃だったりもする.

 ただし小銃,SMGは人数分は無いのが普通.
 車長は拳銃だろう.

 タミヤの資料集によると,4人乗りのレオパルトTで
*拳銃 4丁
*機関短銃 2丁
*自動小銃 1丁
装備されていたそうだ.

 イラクでの米軍の場合,戦車に搭載される正規の装備の他に,戦車兵個人個人で自動小銃を持ち込んでいる模様.
 M16×2丁だったと思う.

 国(イスラエル,米)によっては装填手用機銃は砲塔にマウントされてるから,ソレも外して使える.
 大概の戦車には,装備してる機銃を外して普通の機関銃として使うための三脚が積んである.
 12.7mmだから一人では持てないけれど.
 戦車を放棄するようなシチュエーションでだけど,創作ではアリかも知れない.

丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM(黄文字部分)他 in 軍事板
青文字:加筆改修部分

▼ ※FN MAGなんかの7.62mmの機関銃を積んでる車輛もある.▲

名無し in FAQ BBS
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 M1戦車はなんで装填手乗っけてるんですか?
 あのアメリカが,自動装填装置開発できないわけないですよね.T-64だって積んでるわけだし.
 不整地や走行中の装填なら,どう見ても装填手<<自動装填装置ですよね?疲れないし,確実だし,早いし.戦車が被弾した時のこと考えても,自動装填装置なら壊れるだけだけど,人なら死んじゃいますよね.
 人命重視のアメリカとしては,装填手乗せるメリットないような気がするんですが,いかがでしょうか?

 【回答】
 そのあたりは国によって考え方が違います.
 自動装填装置にキャタピラの修理はできないが,装填手にはキャタピラの修理ができる.
 自動装填兼用多目的ロボットができれば,どの国も自動にするでしょう.ちゃんと動けば.

 基本的な整備は装填手だけでなく,乗員みんなでやるんです.
 で,一人減るということは,その分の負担が残りの乗員が負うわけで.
 実際90式なんかは大変らしいです.

 ちなみに,M1A3では自動装填装置を予定.
 遡るとMBT70でもやってる.

 しかし,米,独では小型化,砲塔無人化のためにさらに,2名にする研究をしている.
 職人級の装填手だと,少しの不整地なら,自動装填よりも素早くできる.
 要は,どっちを取るかって事.運用思想に寄るって事.

 イスラエルは停車して,周囲警戒が多いから,自動装填にはかなり懐疑的.

 余談だけど,米軍の戦車はM1がでてくるまで割と遅れてた.ずっと改修で旧式を乗り回していた.
 いつか,西ドイツと共同の新型ができるはずと思っていたけど,開発失敗.
 ガンランチャにこだわった結果,砲身の開発も遅れ気味だった.

丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM他

マンパワー十分過ぎる戦車の例
(画像掲示板より引用)


 【質問】
 戦車兵が使うヘッドホンとマイクについて.
 ドイツ戦車兵が使っているような喉当てマイクは雑音を拾いにくい,狭い車内で邪魔になりにくいと言う長所があると聞いております.
 では,陸自が使っている,普通に口元に,ヘッドホンから伸びたマイクがある方式
(http://yamaneko-lynks.up.seesaa.net/image/0060528110.jpgより引用)
はどのような長所短所があるでしょうか?
 また,喉当てマイク方式にはどのような短所があるでしょうか?

 【回答】
 まず誤解がある.
 喉当てマイクは雑音を拾いにくいのは確かだが,戦車内の戦闘騒音の中ではやはり使いにくく,ドイツの戦車兵も会話は簡潔,かつ発音を明瞭にするようにして対処している.
 邪魔にならないと言うのも誤りで,常に首輪つけて,それも喉からズレないように心がけながら使わなければならない.

 そもそもなのだが,戦車の中でヘルメットや保護帽を被ると言うのは,頭を守る上で非常に重要.
 実際,戦車とは言わなくても,狭いところで作業とかしてみると判るよ.
 ヘルメットを被れば,頭の容積は増しているんだが,ぶつけても痛くないので,狭い所で動く時に頭をぶつけないような注意しなくて良くなる分,行動の自由度は増す.

 で,頭を保護するヘルメットや大きめの保護帽を被ると,咽頭マイクは干渉して使いにくい.
 雑音については,どっちみち拾ってしまう.
 そのため咽頭マイクを採用するより,戦車長が砲手の操作をオーバーライドしたり,次の目標は戦車長が決めておいて,現在の目標を攻撃し終わったら自動的に次の目標に砲塔が向くとか,会話が成立していなくてもスムーズに戦闘が出来る方式が採用されている.

軍事板,2009/07/15(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 戦車の野戦整備って具体的に何をするんでしょうか?

 【回答】
 戦車に限らず,重機の類は動かしたら必ずオイルフィルターの清掃と各所のグリスアップが必要.それも1箇所や2箇所ではない(最近の重機は比較的メンテフリーになったが,モノによっては百ヶ所くらいあるぞ).
 まして戦車は,「壊れる為に動いてる」なんて言われるくらい無理の多いメカなので,走ってるだけで各所がイカれる.
 そして戦車の場合は,切れたキャタピラを繋いだり,エンジンの煤を取ったり,トランスミッション調整したりといった作業が加わる.
 これに加えて戦闘後は,主砲砲身を清掃したり,空薬莢捨てたり,機銃のメンテナンスしたりしなきゃならん.
 あと当然,弾薬と燃料の補給.戦場だと手回しポンプで燃料入れなきゃならなかったりする.数百リットルをね・・・.
 とても一人では出来ません.

 アメリカのM1A2エイブラムスの場合,戦闘行動時は稼動状態にもって行くのに,一日当たり25マンアワー(1マンアワーとは人間一人が1時間働く事)は最低必要と言われる.
 つまり一人でやったら,一日動かすのに丸一日整備しなきゃならんわけだ.
(あと戦車は,どうしても一人当たりの視界が狭いので,複数人数で多方向を監視するようにしないと,死角が多すぎてどうにもならない)

 一応スウェーデンのStrv103戦車(Sタンク)は,一人だけで操縦と戦闘が出来るが,これは一種の例外.
 それもただ「やろうと思えば出来る」というだけで,実際一人しか乗せずに作戦行動を行うのは無茶.


 【質問】
 乗員一名の戦車ってありますか? あるいは一人で全て行える戦車は.

 【回答】
 一人乗り戦車は,1925年,陸軍少佐のSir George Martel(後に陸軍中将)が自分の家のガレージで,旧式のMaxwellの自動車用,後輪用車軸をフォードのトラック用など,種々の自動車部品を使って試作した,Morris-Martel Tanketteが代表的です.
 試作品は自動車メーカーのMorrisで4両製作され,1926年3月に完成しました.
 うち,3両は一人乗りでしたが,操縦しつつ機関銃を扱うのは難しいとして,2名乗りに変更されました.

 これが後のCarden-Loydに繋がる訳ですが,Carden-Loydも
試作車(兵士の上半身剥き出し)
→Mk.I(それじゃ狙撃されるでしょ,と言うことで,乗員周りに小型防楯3枚と軽機関銃を搭載してみた)
→Mk.I改(装軌式だと速度が出ないので,左右に1輪ずつ大径の空気タイヤ付車輪と後部に1輪の操舵輪を付けてみた)
→Mk.II(ボギー式転輪をMk.Iに付けてみた)
→Mk.III(Mk.IIにMk.I改の走行装置を付けてみた)
と発展し,やっと,二人乗りの豆戦車に繋がっていきます.

眠い人 ◆gQikaJHtf2

▼ また,スウェーデンのSタンクはその気になれば一人でも操縦できなくはないが,これはかなり例外的.
 Sタンクの通常の乗員構成は,車長兼操縦手兼砲手と砲手兼操縦手と後方操縦主兼無線手兼装填手.

 逆にWW2当時,ソ連軍はT-34の乗員を4名から5名に増やした.
 4名だった頃は車長が砲手を兼ねていたが,照準していると索敵や指揮が疎かになり,索敵していると照準が出来ない,という不具合から車長と砲手を分けた.

 現代であっても,車長,砲手,操縦手にそれぞれ重要な仕事があるのは同じ.
 自動化がかなり進まないと,少なくともMTBでは兼任は難しい.

軍事板,2008/11/09(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 最前線へ行った戦車隊は,寝るとき戦車のなかで寝るのでしょうか?
 トイレとか着いてますか?

 【回答】
 弾の飛び交う戦闘中なら寝てる余裕なんかないので起きたまま.
 最前線でも警戒中とかではなく,ある程度の余裕があるなら,接収した民間の建物とかで寝るし,第二次世界大戦のときは,戦車に斜めにテント用の布を立てかけ張りした簡易テントを作ったり,戦車の下に塹壕掘ってそこで寝た.

 普通戦車や装甲車両内にトイレはないが,イスラエルの戦車や装甲車には簡易トイレ(災害用やキャンピングカーについてるようなやつ)が設置されているものがある.
 これは市街戦とかで長時間の警戒中,車外に出て用を足しに行ったら背後から襲われた,という事例が結構あったことから.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 戦車にはトイレはついていないんですよね?
 ウンコしたくなったら,下部脱出用ハッチをあけて,車外にウンコするって認識でいいでしょうか?

 【回答】
 戦車の中での寝泊りは通常しないので,簡単な陣地なり休息所なりを用意します.
 その際にトイレを設けるか,排便すべき場所を定めます.
 着陣している時や1日の行軍を終えて休息するときは,そこで排便をします.

 行軍中は小休止などの際に,少々離れた(ただし戦闘地域だとあまり離れると危険)ところに,穴掘って排便します(そこは歩兵と同じ).
 排便後は衛生上および防諜上の観点から穴を埋めます.

 戦闘中は便意を感じている余裕などないが,戦闘が一段落しても狙撃や砲撃による被害を防ぐために,暗くなるまで戦車の中で,便意を我慢しながら待機することも.

軍事板
青文字:加筆改修部分

 戦車ではありませんが,実用例ではイスラエルのナメル(ナメラ)歩兵戦闘車にはトイレが装備されていると言われます.
 歩兵戦闘車では,ほかにもスウェーデンのCV90や,英国のウォリアーには,ビニール袋式の簡易トイレなら搭載されているようです.
 この手の簡易トイレなら,民生品を使って臨時に搭載する例もあるでしょう.
 車両内で使用したかは知りませんが,イラク派遣時の自衛隊が買い込んでましたね.

 あとは空薬莢とかペットボトルとか,現場の工夫は色々あるようで.
 冷戦時代のNBC戦想定で,車載トイレを研究してた例もあると思うんですが,識者待ち.

◆yoOjLET6cE in 軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 よく小林源文さんの漫画で,ドイツ軍の破壊された戦車から脱出した乗員が描かれていますが,彼らは戦場にほっぽり出された後,どうするんでしょうか?
 そのまま歩兵と一緒に戦うんですか?

 【回答】
 戦車兵にかぎらず,何らかの事情で戦闘を続行できなくなった,もしくは道に迷ったり逸れたりした兵は,ひとまず後方へ下がり,原隊復帰を試みるのが基本.
 ただし,そう都合よく原隊と合流できるものでもないので,とりあえずとにかく仲間を捜すという行動に出る事が多い.
 原隊に復帰できた後は,特別な事情がない限り,以前と同じ任務に回される事になる.
 戦車兵の例であれば,戦車の操縦という特殊技能を持った人間を,不馴れな歩兵として活用しても得るものは少ないので.
 後方で補充車両をもらう,撃破された戦車を回収して修理してもらうなどがある.

 ただ,末期のドイツ軍の様に乗り換える戦車が絶望的に少なかったりすると,仕方がないから上の判断で歩兵になったり,駆逐戦車に乗ったりすることもある.
 あるいは後方で一時待機という命令が下る事も.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 何年か後には,無人戦車が戦場の主役となるの?

 今月号(2005/3)の軍事研究に載ってるが,ARV−A武装ロボット車強襲型は30ミリ砲とヘルファイヤー代替のJCMミサイル搭載でかなり無人戦車っぽい.
 しかもこれ,10年以内に実現だぜ?

 【回答】
 アメリカを含めてどこでも,「10年以内実現」は「10年以内にプロトができたらいいな」という事になる.
 そこから制御ソフトのコードでもつれたり,システムの統合化で苦労したりして,10年ぐらいして初期低率生産が始まり,その10年後に充分な数が配備される.
 ところが途中で要求仕様がころころ変更され,
「別になくてもいいような気がする」
と議員が言いだして予算が削られ,最後の段階まで来て
「現在の世界情勢と我が国の戦略目的を考えると,無人兵器は印象悪く,好ましくない」
とか言われてポシャったりする.
 バカなマスコミじゃないんだから,安い惹句に飛びつかないように.

 で,自律型についてはこれまで書かれているように,未だに短距離を移動することすらできない.
 考えてみれば
「前方に草原.手前に段差あるが,余裕でクリア.ゴー」
とか言ってる幼稚な「自律」では,水田に突っ込んでスタックするのが落ち.
 不整地を走るのが値打ちの装軌車だから,自律走行戦車は難しい.
 しかも,A地点からB地点への移動は,戦車の目的ではまったくない.
 逆に,任意の地点に強固な火点を設置できるのが戦車の目的であり,そこでは自律の必要などない.
 脅威を判別し,目標を選択し,攻撃する,あるいは攻撃しないのが主要な行動だから,「自律」などされた日にはとんでもないことになる.
 人間ですら誤った判断をふつーにするわけで,人並みの人工知能ができるまで,とても自律戦車など存在し得ない.

unknown

▼ そもそも,現代のAIの設計理論では「想定してなかったアクシデント」に対する反応が無理ってされている.
 AIをアクシデントに対応させようとすると,今度は「何がアクシデントなのか」を判断できなくなる.
 「敵戦車と思しき反応が至近にある」と,「周囲の温度が上昇している」は,プログラムにとって全く等価な情報だから,プログラマが前者がやばいと教えてやる必要がある訳だが,実際に現実に起こりうる全ての事象に対して,トリガーインシデントを色分けするのは不可能だし無意味.
 人間なら自分で判断できるし,不要な情報は「どんぶり勘定」という便利な道具で無視できるけど,プログラムにはそれができないから,適当かつ適切にイメージで判断する事が非常に苦手なわけ.

 一応,ファジィ・プロセッサの研究は進んでいるのだが,現行のそれは「ファジィ命令を処理する」,すなわち人間が
「これはファジィな項目だぞ.こうやって処理しろよ」
と,あらかじめ定義したものを処理しているにすぎない.

軍事板,2008/11/09(日)
青文字:加筆改修部分

 さて,遠隔操縦型だが,現在既にUAV(主に偵察)が何機か飛ぶと,通信帯域が混んできて優先順位を決めるアルゴリズムが必要,とか言われてきている.
 アメリカのドクトリンはネットワーク依存にどんどん移行しており,通信帯域は弾薬や燃料同様,貴重な資産に なっている.
 試験的な遠隔操縦戦車一台動かすならともかく,画像やセンサー情報で帯域食う,しかも時間遅れなく反応する必要がある優先順位高い通信が何十台も同じ区域で動いた日には,万能の米軍と言えども「人多過ぎ」状態で身動きが取れなくなる.UAV,UCAVの行動も制限されそう.
 そこに兵士同士のネットワークも押し込まないといけないわけだ.

 無人戦車は,得られる利益に対して払う代償が(開発費=そのためにあきらめる別のシステムの含め)大きすぎるだろう.
 システムのごく一部に過ぎない戦車の,それもM1A1で十分無敵状態である状態で,そんな代償を払うことは誰も望まないだろう.少なくとも今は.

 有線誘導については言うまでもない.ちょっと離して置いたATGM発射機や,それにマシンガン付けたもの,程度にしかならない.
 不整地でどこまで動かせるかも大きな問題だし,数ブロックの待ち伏せ用,待ち伏せ予防用として使える程度のものにしかならない.無人戦車と言えるものにはならない.
 いいとこ,移動式クレイモア?



 【質問】
 人間はその場でそのアクシデントを「解析」し,「分析」し,「対応を考え」て,「対処」することができるじゃない(人によっては)
 それをコンピュータができないのは,処理能力不足のせいじゃないの?

 【回答】
 困ったことに,その判断は意外にいい加減だったりする.
 実際,たまに間違えるでしょ?
 現在のコンピュータは論理の化け物.
 曖昧な処理は苦手で,理論背景となるべき数学も,曖昧さを扱うと難解.

 楽観的なAI技術者は,計算機の処理能力や理論面での進歩が飛躍的だという点から,90年代までには人間レベルのAIも何とかなると予測していたし,実際コンピュータの性能は20年で1万倍ぐらいにはなったんだが,まあ結果は見ての通り.

 人間が「想定してないアクシデント」に「例は違うけど,過去にも遭遇したことがある」というだけでさえ,その後の対応や対策を即座に思いつけるかどうかがかなり変わって来るしね.
 過去の無数の蓄積された「直接関係ない情報」から,どうにかして使える情報だけ集めてきて,なんとか対応策を構築することができるのが人間.

<例>
「あ,メモ帳が無い!」→「てか,書ければ本の表紙でも自分の手でも何でもいいじゃん」
「ペンとかが無い!」→「文字が書ければ,ペンでなくても炭でも口紅でもいいじゃん」
「荷物作りするのにロープが足りない!」→「まてよ,延長コードでもLANケーブルでも紐状なら使えるじゃん」
「入力したい漢字があるんだが,変換候補に無い!」→「そうだ,読みや意味の方でぐぐって,漢字をみつけて,コピーアンドペースト,ついでに辞書登録しとけばいいんだ」
(自分の場合,鏖という漢字が無かったんで”みなごろし”でぐぐって見つけてきたことがある)


488 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/11/09(日) 14:08:27 ID:???

 そこでファティマ(FSS)の登場ですよ!

軍事板,2008/11/09(日)
青文字:加筆改修部分

 この議論は派生議論スレで続きやってたけど,
・人間がそうやって対処できるのは人生で作ってきたデータベースを持ってるから.
・生物はボトムアップで処理してるらしい.コンピューターはトップダウンで効率的に処理し得してる.
コンピューターでボトムアップのプログラム組んだら昆虫ぐらいの事はできた.
・人間の脳細胞の数を考えると,一万倍ぐらいじゃ情報処理能力足りないじゃないの?
・将来的にはコンピューターは,能力向上で人間並になる.
・理論を示せ? 無限のリソースを使っていいなら,人間の脳をコンピューターでシミュレーションすれば解決.

みたいな結論になりました.

hiiragi in 「軍事板常見問題 mixi別館」,2010年01月03日 19:56

「無人くん」
faq25f18w.jpg
faq25f18w02.jpg
(画像掲示板より引用.原出典はNHKの番組?)


 【質問】
 ニュースでアメリカのキャタピラ式のロボットが出ていましたが,射撃などは人間よりも命中率が高そうに見えました.
 部分的にはロボ>人間という捉え方でいでしょうか? 
 それとも,まだ人間兵士と比較するのは変でしょうか?

 【回答】
 あれは射撃は遠隔操作ですよ.
 ユタ大+GDの自律ロボット車輌でも,射撃は遠隔操作です.
XM307搭載無人偵察車輌
 野山を敵を追って駆け回るのは当分無理にしても,都市部のパトロールくらいなら近年中に目処が付くでしょう.


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