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 【link】

 なお,リンク先の記述を全て支持するとは限らないので念のため.
(他のどのページもそうだが,特にここでは念を押す)
 ここでは両論併記を基本方針とし,その方針に従ってリンクを拡充する予定.

「BLOGOS」◆(2015/09/09) 慰安婦問題 なぜ冷戦後に火が付いたのか - 木村幹(神戸大学教授)

「U-1速報」◆(2013/05/18) 「大阪おばちゃんが橋下発言を捏造翻訳して全世界に流布」 Facebookに日本の主張がねじ曲げられて伝わる

「U-1速報」◆(2013/05/29) 「橋下会見を嘲笑する超絶的馬鹿野次が韓国記者の大きな話題に」 親韓派から汚物扱いされる韓国慰安婦の現実

「VOR」◆(2013/05/23) ロシア外務省代表:橋下氏の慰安婦関連発言は「シニカル」

「慰安婦問題とアジア女性基金」◆ クマラスワミ報告書全文[pdf]

「黒マッチョ」◆(2013/05/15) 橋下市長 「安倍首相の言う『日韓基本条約で解決済み』は,慰安婦を傷つけてる.慰安婦の苦痛には配慮すべきだ」

「黒マッチョ」◆(2013/05/15) 橋下氏「もっと日本人は歴史を勉強すべきだ」 慰安婦発言の橋下氏が反論展開 政府は問題拡大警戒

「黒マッチョ」◆(2013/05/15) 「風俗発言,慰安婦容認…橋下氏の発言は国際社会に通用しない.政治家としての資質すら問われよう」

「黒マッチョ」◆(2013/05/29) 橋下代表 「西村氏の発言は韓国人に対する侮辱だ.政治家としては駄目だ」 議員辞職要求

「首相官邸」◆(2014/06/20) 慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯 ~河野談話作成からアジア女性基金まで~

「中国・韓国・在日崩壊ニュース」◆(2017/1/17) 【拡散】韓国の慰安婦像設置を最初に許したのは民主党だった!!! と ん で も な い 売国の実態が今明らかに!!!

「まとめたニュース」◆(2013/05/15) 【政治】橋下氏「慰安婦容認していない」と釈明 首相答弁を批判… 元慰安婦には「配慮は必要だが,傷つけているとは思っていない」

「まとめたニュース」◆(2013/05/24) 韓国の自称元慰安婦「橋下に会いに来たけど橋下が嫌いだから会いたくない.無理」


 【質問】
 外交問題としての慰安婦問題の始まりは?

 【回答】
 社会問題として大々的に取り上げられたのは,1991年12月,韓国のフェミニズム団体と福島瑞穂ら日本人弁護士に支援される形で,元朝鮮人慰安婦3人が東京地方裁判所へ,日本国を相手取って各2000万円の補償を要求したのがきっかけ.
 そして,日本やアジア各国の支援組織の呼びかけで,北韓,中国,台湾,フィリピン,インドネシアなどで次々に「元慰安婦」が名乗り出る.
 それと前後して,朝日新聞を筆頭とする日本のマスコミもキャンペーンを張り,「慰安婦」たちの悲惨な「身の上話」を裏付けなしに流した.
 中でも「済州島へ慰安婦狩り」に出かけたとする吉田清治の証言と著書は,彼女たちが官憲の手で「強制連行」され,慰安婦に送り出されたというイメージを,内外に定着させたが,その後,この証言が虚偽であったことが判明している.

 【参考ページ】
常石敬一・秦郁彦・佐瀬昌盛監修『世界戦争犯罪事典』(文藝春秋,2002),p.107-108
http://koramu2.blog59.fc2.com/blog-entry-901.html


 【質問】
 吉田清治証言とは?

 【回答】
 日本軍が済州島で女性を慰安婦として強制連行したという主旨の証言.
 秦郁彦らの調査で虚偽だと立証されているという.

 以下引用.

------------
 〔略〕
 吉田氏〔元日本軍憲兵・吉田清治〕は同書〔『私の戦争犯罪・朝鮮人強制連行』〕の中で,自分が済州島で日本軍兵士とともに地元の若い女性たち数百人を「慰安婦狩り」として無理やりに連行したという体験を述べていた.
 この「吉田証言」は朝日新聞などによっても大きく報道されたが,その後,歴史家の秦郁彦氏らの調査などで 虚構だったことが立証された.
 〔略〕

------------産経新聞,2007/4/13

▼ 後の調査によって分かったところによれば,吉田は阿片密輸に関わって入獄した経験を持つ,典型的な詐欺師であった.
 また,1937年4月30日(当時の吉田は23歳独身),朝鮮人男性を養子としている.
 吉田の著書によると,その男性は1938年9月1日に戦死したとされているが,秦らの調査によって,この男性は1917年生まれ(吉田の4歳下)で,1942年に結婚し,戦後九州で労組運動の幹部として活動した後,1983年に死亡したことが明らかとなっている.
 さらに,1947年,下関市議会議員選挙に日本共産党から立候補して落選した経歴もあった.

 済州島の新聞「済州新聞」や秦郁彦らの調査により,遅くとも1999年には吉田清治証言の虚偽が判明していたが,朝日新聞が誤報を認めたのは2014.12.23になってからのことだった.

 【参考ページ】
常石敬一・秦郁彦・佐瀬昌盛監修『世界戦争犯罪事典』(文藝春秋,2002),p.107
http://matome.naver.jp/odai/2141070301999607501
https://ja.wikipedia.org/wiki/吉田清治_(文筆家)

吉田清治証言に関し,朝日新聞が訂正した主な記事一覧
こちらより引用)


 【反論】
------------
 そもそも,慰安婦問題で日本が責められているのは,吉田証言が原因ではない.
 人身売買と管理買春が原因である.
「軍の強制連行ではなく,『関与』を示すものでしかない」(森)
と述べているのは問題の本質を誤っている.
 「関与」そのものが問題なのである.

http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1252.html
------------

 【回答】
 上記ブログ主の文谷数重(文中敬称略,他も同じ)は,慰安婦問題の経緯について良くご存じではないようです.

 ではここで,吉田清治証言記事の何が問題なのか,おさらいしてみましょう.

 今日まで尾を引く慰安婦問題の火をつけたのは,一般に
『1992年1月11日,朝日が「慰安所 軍関与示す資料」「政府見解揺らぐ」などの見出しで大々的に報道した記事』
だと言われています.
 これ『は,5日後に迫っていた宮沢喜一首相の訪韓を慌てさせる』ことになり,この問題に関してろくに準備をする間もなく訪韓した宮沢首相は,沸騰した韓国世論の前に,謝罪を何度も繰り返すことになりました.

 その下準備として朝日新聞は,91年には4回も吉田清治を紙面に取り上げています.
 また,『植村隆朝日記者の挺身隊と慰安婦の同一視報道(1991年8月)や韓国人慰安婦の提訴(同12月)も行われて』いました.
 まるで放火魔が,一所懸命に火を煽って大きくするようなことをやっていたわけです.

 しかしその吉田清治証言は,『朝日が1982年に吉田清治を紙面で取り上げてから7年後(89年8月)には現地記者が済州新聞で事実無根を報じ』,『さらに2年余後には秦郁彦氏が現地調査(92年3月)して同様の見解に至り,産経が報道(同4月)してい』たのです.
 つまり,朝日新聞は,デマを基に世論を焚き付けようと図ったわけですね.

 ですので,もはやifの話になってしまいますが,『慰安婦問題がクローズアップされるこの時点で,マスコミが感性を働かせて防衛研究所の資料を確認すれば,一連の朝日報道への疑問が起こり,ドミノ現象のように吉田証言への懐疑となり,宮沢首相訪韓時(1992年)の謝罪や河野談話発出(93年)の抑止へとつながったかもしれ』ず,また,『その後に続く,「日本軍性奴隷」とした国連のクマラスワミ報告(1996年)や「強姦所」としたマグドウーガル報告(98年)における日本糾弾も避け得た』かもしれません.

 しかし現実にはそうならず,日韓関係が大きく冷え込む一因となりました.
 朝日新聞はデマを流布して二国間の友好関係に,修復不能な罅(ひび)を入れることに成功したわけです.
 これでは朝日新聞が責められるのも道理かと存じます.
 道徳感情論で言えば,損害を過不足なく補填して初めて国民感情はこれを許すことができるのですが,朝日新聞は渋々と誤報を認めただけであり,そのデマによって生じた損害を補填しようとするそぶりすら見せておりません.
(そもそも補填し切れるものかどうか,大いに疑問ですが)
 ですので今後も,右派左派関係なく,国民の道徳感情に起因する非難が続くでしょう.

 ゆえに,文谷のブログ記事は,吉田清治証言がどのような点で問題があるのかという視点から逸れた,ピントの外れた「反論」にしかなっていないことがお分かりかと存じます.

 さて.ここまで書いてきたことのうち,『』でくくられている部分は実は,文谷が槍玉に挙げている,森清勇の記事に出てくるものです.
 しかし,有料であるため,多くの人はここまで読むことができません.
 多くの人が読むことができないのをいいことに,わざとピントを外れた「反論」を文谷が行っているのだとしたら,悪質なミスリードと言われても仕方ありません.
 もしミスリードのつもりがなかったのなら,速やかに訂正なされるべきでしょう.

 わざわざそのようなミスリードをしなくとも,おそらく多くの人々が
「産経こそがクォリティ紙に相応しい」
などという発言には首をかしげますでしょうし,森の記事に全面同意はしないと思います.
 むしろミスリードを行うことにより,かえって森のジャーナリズム論の怪しさを覆い隠す結果になってしまいかねません.
 自重しましょう.

2016.6.10


 【質問 kérdés】
 朝日新聞の慰安婦キャンペーンの後の日本政府の対応は?

 【回答 válasz】
 終始謝罪モードだった.

 朝日の慰安婦キャンペーンが始まった1992.1.11は,宮沢首相訪韓の僅か5日前であり,予定変更も対応策を打つこともできないまま訪韓した宮沢首相は,14日の記者会見で
「軍の軍の関与を認め,お詫びしたい」
と謝罪した他,訪問先のソウルでも,日韓首脳会談や韓国国会での演説において謝罪を繰り返した.
 毎日新聞ソウル特派員だった下川正晴によれば,
「1時間25分の首脳会談で,宮沢首相は8回も謝罪と反省を繰り返した」
という.

 1993年には韓国政府は日本政府に対し,日本の教科書に慰安婦について記述するよう要求.
 その結果,94年度用高校日本史教科書の全て(7社9種)に,慰安婦に関する記述が掲載されるようになった.

 一方,慰安婦の強制連行に関する日本政府の第一次調査では「軍の関与」は認めたものの,「強制連行」を立証する資料は無かったとした.
 これに対して,韓国政府は強制性を認めるよう要求する.
 2017年の今に至るまで何の証拠も,吉田清治による偽証以外の証言も無く,「日本は謝罪しろ」派の学者・吉見義明らですら「広義の強制性」という言葉で後退せざるを得ないような話を,「認めろ」とは横暴である.

 しかしここでも日本政府は韓国の要求をギリギリの形で受け入れる.
 それが「河野談話」である.
 1993年8月4日,宮沢内閣は慰安婦調査の結果報告「いわゆる従軍慰安婦問題について」を発表し,強制連行を示す資料は存在しなかったと明記したものの,同日,政府調査発表の際に,河野洋平官房長官が,「日本政府が強制したということは認めたわけではない」が,日本軍の要請を受けた業者によって女性が意志に反して集められ,慰安婦の募集について
「官憲等が直接これに加担したこともあった」
「慰安所における生活は,強制的な状況の下での痛ましいものであった」
として,「日常生活に強制性が見られた」と解釈,反省とお詫びの意を示した.

 韓国への配慮は,閣僚人事まで左右するようになる.
 1994年,法相・永野茂門が辞任に追い込まれる.
 辞任原因は,彼が
「慰安婦は公娼である」
と述べたためである.
 慰安婦が公娼制の中から登場したものであることは,吉見義明さえ認めているにもかかわらずである.

 1995年8月15日には「村山談話」が出される.
 村山富市首相はこの中で,従軍慰安婦問題についても
「女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,私はこの機会に,改めて,心からの深い反省とお詫びの気持ちを申し上げたいと思います.
 我が国としては,このような問題も含め,過去の歴史を直視し,正しくこれを後世に伝えるとともに,関係諸国等との相互理解の一層の増進に努めることが,我が国のお詫びと反省の気持ちを表すことになると考えており,本計画は,このような気持ちを踏まえたものであります」
と反省の弁を述べた.

 しかし,いかに謝罪のためとは言え,ウソをつき続けることはできないのは,世の真理である.
 1997年1月,第140回通常国会において,第2次橋本内閣の平林博内閣外政審議室長は,
「政府が調査した限りの文書には慰安婦の強制募集を直接示すような記述は見いだせなかった」
との答弁をおこなった.

 その前の1995年には吉田清治が,著書が自身の創作であったことを認める.

 1999年までには教科書から,慰安婦を強制連行した旨の記述が消える.

 2014年6月20日には,河野談話の作成過程について,但木敬一,秋月弘子,有馬真喜子,河野真理子,秦郁彦の5人からなる検討チームの報告書「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯〜河野談話作成からアジア女性基金まで〜」が政府の名義で公表され,談話が政治的取引の産物であったことが明らかにされる.

 しかし挺対協側はその都度烈しく反発し,日本を非難している.

 おまけに,上記のような日本側の
「もうこれ以上,ウソはつけない」
「もうこれ以上,自分自身を騙すことはできない」
という態度をして,「韓国を煽っている」呼ばわりするような人までいる.
 例えば,自衛官OBを自称する文谷数重という人は,以下のように述べている.

------------
http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1724.html
■ 敵対を煽る無駄

 この無駄は今の日本の外交・安保政策も同じものだ.敵であるといった理由で強硬策ばかりをしているが,結果は敵方に追いやり敵愾心を増すだけの話だ.靖国神社や従軍慰安婦,強制連行,南京大虐殺がそれ.悪いことをしたのは仕方もないので,あまりフッかけられないようにイナしておけば良いものを,現実的には何の利益もないのに敵対を強化している.それで中国や韓国との安保外交を超えた敵対を引き起こすあたりは無駄なものだ.

 昔の日本はそのあたりの知恵もあったものだがね.ベトナム戦争終了と統一後,日本は統一ベトナムに援助を持ちかけていた.要はソ連に追いやることを防ぐ知恵だ.カンボジア侵攻で援助できずとオジャンになったものだが,賢いやり方だっただろう.
------------

 この種の人々にとって「賢いやり方」とは,
「自分や他人に嘘をつき続けろ」
ということなのだろうか?
 不可解でならない.

 【参考ページ Referencia Oldal】
秦郁彦著『慰安婦と戦場の性』(新潮選書,1999.6)p.11-14, 249-251

2017.5.10


 【質問】
 河野談話は,軍が強制的に売春婦をやらせた事実を認めたものじゃないの?

 【回答】
  〔略〕
 その経緯については,当時の官房長官であった加藤紘一,河野洋平の両氏,そして内閣官房副長官として歴代内閣を支えた石原信雄氏の証言をもとに,櫻井よしこさんが文藝春秋(1997年4月号)に詳細にまとめられています.
 そのなかで石原氏は,こう証言されています.
「私共は資料があるといえばどこにでも飛んでいって調査しました.
 各省庁に資料提出を求め,その他にも国立国会図書館,アメリカの公文書館,様々な研究機関も,八方手を尽くしました.
 警察関係の各所にも求めました.
 けれども,韓国側が気にしている強制的に徴用したというのが,文書ではどうしてもないわけですよ.」
「当時,彼女たちの名誉が回復されるという事で強制性を認めたんです.」
(櫻井「強制性はいわば善意で認めたのですか?」)
「そうです.両国関係に配慮してそうしたわけです.」

DEADRISINGer@パパ in mixi

 参議院予算委員会でも,当時の内閣外政審議室長平林博氏が
「軍による強制性を標す資料は一切発見されなかった」
と答えており,河野談話は訂正されている.
 河野談話は証言の裏付けを行わないうちに発表されてしまったと,国会答弁で言明済み.
 河野談話は裏付け調査無しとハッキリと明言されています.

------------
140-参-予算委員会-8号 平成09年03月12日

○小山孝雄君 お配りしております資料をごらんいただきたいと思いますが,この
「朝鮮人強制連行」という見出しが入って,写真が入って,その下の段の真ん中辺に「警察官や役人が土足で家に上がり,寝ている男を家から連れ出すこともありました.
 抵抗する者は木刀でなぐりつけ,泣きさけびながらトラックに追いすがる妻子を上からけりつけたともいわれます.」
と,わずかこのページの中でこれだけのことが書かれております.
 外政審議室にお尋ねいたしますが,つぶさに政府資料等々,平成四年,五年当時,お調べいただいたようでございますが,こういうことが日常茶飯行われていたんでしょうか.

○政府委員(平林博君) 内閣外政審議室長の平林でございます.
 今の強制連行につきましてでございますが,私の方で調査いたしましたのはいわゆる従軍慰安婦の関係でございますが,従軍慰安婦に関する限りは強制連行を直接示すような政府資料というものは発見されませんでした.
 その他,先生の今御指摘の問題,朝鮮人の強制労働等につきましては我々が行った調査の対象外でございますので,答弁は関係省庁にゆだねたいと思います.
(中略)

○小山孝雄君 お隣の韓国でも今年度,この三月から新学期が始まっているようでございますけれども,歴史教科書に,あそこは国定教科書でありますから一つであります,
 慰安婦の問題について記述が入ったと,こう聞いておりますが,外務省は手に入れていらっしゃいますか.

○政府委員(加藤良三君) 九七年三月から使用される韓国の中学校それから高校用の国定歴史教科書,いわゆる従軍慰安婦に関しまして,これは日本語の翻訳でございますけれども,次のような記述があると承知いたしております.
 まず,中学校の教科書でございますが,
「女性までも挺身隊という名でひいていかれ,日本軍の慰,安婦として犠牲にもなった.」.
 次は高等学校の教科書でございますが,
「女性たちまで挺身隊という名でひいていかれ,日本軍の慰安婦として犠牲にもなった.」.
 以上でございます.

○小山孝雄君 私が調べて皆様に配付したのと同じでございますけれども,ここではもうまさに挺身隊というのと慰安婦とイコールに受け取られるわけであります.
 外政審議室にお尋ねしますが,そういう制度でありましたか,調査した結果.

○政府委員(平林博君) 慰安婦と女子挺身隊とは全く異なるものでございます.
 女子挺身隊の方は日本の制度として存在しましたが,慰安婦というものは政府ないし軍の制度として存在したということでは,法令に基づく制度ということでございますが,ないのではないかと理解しております.
 韓国の教科書に今外務省から紹介しましたような記述がございまして,そういう記述にあったような例があるいは当時あったかもしれませんが,今申し上げましたように,女子挺身隊と慰安婦が混同され,これが一般化された形で読む人に受け取られるということがないようにというふうに考えたいと思います.

○小山孝雄君 今御答弁ありましたように全く別のものでありまして,こういったことが混同して韓国の少国民に教えられるということは,これは問題だと思います.外務大臣,この訂正方を申し入れいたしますか.

○政府委員(加藤良三君) 韓国との関係におきましては,今御指摘のような問題もあるわけでございますが,これを全体として未来志向の関係に持っていくという点をも踏まえまして,いろいろな分野において非常に緊密な対話というものが行われている状況にございます.そのような視点を踏まえて,御指摘の問題につきましても,我が方の考え方というものは韓国の方にも周知させるように努力しているつもりでございます.

○小山孝雄君 努力しているつもりって,この問題について訂正を申し入れしないんですか.

○政府委員(加藤良三君) 従軍慰安婦問題に関する我が国の調査結果とか認識というものについては韓国側に外交ルートを通じて通報してきているということでございまして,このような対話というものを今後も引き続き行ってまいりたいと考えております.

○小山孝雄君 外務省組織令第二十四条三項には何と書いてありますか.

○政府委員(加藤良三君) まことに申しわけございません.ちょっと組織令を手元に持っておりません.

○小山孝雄君 「外国の教育資料等における日本に関する事項の調査及び是正に関すること.」と,こう明記されております.間違いないですか.

○政府委員(加藤良三君) 今読み上げていただきましたところ,確認はできませんけれども,そのようなことかと存じます.

○小山孝雄君 外務大臣,海外広報課の事務として明記されております.訂正まで入っておりますから,きっちりと申し入れをするようにお願いを申し上げます.いかがですか.

○国務大臣(池田行彦君) 私どもといたしましても,海外のそういう教科書等に関する情報等につきまして収集に努めておりまして,また我が国といたしましてそういった記述が正しいものになるようにいろいろな場で話し合いをしている次第でございまして,そういったところで今後とも適切に対応してまいりたいと思います.

○小山孝雄君 ちゃんとした法令にもこうやってあるわけですから,訂正まで,収集するだけじゃだめですよ.
 それに基づいて,かつてはちよんまげを結った,そして日本刀を腰に差した侍が家電の山に埋もれて生活しているような,そんな記述もあったわけでありますから,きっちりとこの組織令の業務を守って訂正申し入れまでしていただきたいと思います.
 もう一度お答えください.

○国務大臣(池田行彦君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり,私どもとして果たすべき役割を適切に果たしてまいりたい,こう考える次第でございます.

○小山孝雄君 重ねて要請しておきます.
 そこで,先ほど外政審議室長から答弁もございましたが,もう一度お尋ねをいたします.
 一月三十日の本委員会で,片山委員の質問に対しまして,政府のこれまでの慰安婦問題に関する調査では慰安婦の強制連行はなかったという答弁をされましたけれども,もう一度外政審議室に確認をいたします.

○政府委員(平林博君) お答え申し上げてきておりますのは,政府の発見した資料の中に軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接示すような記述は見出せなかった,こういうことでございまして,その点は確認させていただきます.

○小山孝雄君 そうしますと,ジャーナリストの櫻井よしこさんに社団法人神奈川人権センターというところから抗議がありまして,櫻井さんが,強制連行の事実はなかった,また慰安婦として働いていた人たちに対する同性としての同情の念を本当にあらわしながら,事実はなかったということを私は思いますということを言論活動で申されたら,そこに神奈川人権センターが抗議を申し入れて二つの講演会が中止されたという事実が報じられております.
 人権センターがそういう申し入れをするとはいかがなものかと思いますが,これはまさしく人権に関する問題だ,言論封圧だと私は思いますが,これは人権問題でありますので法務大臣に所感をお尋ねいたします.

○国務大臣(松浦功君) お答えを申し上げます.
 事実関係がどういうことであったか私どもにも十分確認されておりませんので,十分調査をいたします.
 その上で,人権擁護という観点から措置すべき問題があるとすれば,当然のこととして法務省として活動することにいたします.

(中略)

○小山孝雄君 さきに戻りまして,再び外務省にお尋ねいたします.
 韓国の教科書の訂正の申し入れの問題,韓国政府がまとめました従軍慰安婦実態調査中間報告の中にはっきりと,
「このような女性動員の趣旨は基本的に慰安婦調達とは性格を異にするものと思料される.」
「女子勤労挺身隊と慰安婦は基本的に関係がなく,また,国民学生勤労挺身隊も慰安婦とは無関係である.」
と,このように記述されております.
 そういうことで,韓国政府の認めるところでもありますので,教科書に正しくお書きいただくように訂正の申し入れをなさっていただきますよう再度お尋ねをいたします.

○国務大臣(池田行彦君) 今,委員御指摘の韓国側の調査というのは一九九二年七月の調査報告書だと思いますが,この報告書はかなり長いものでございまして,いろいろなことが書いてございます.こういうふうに見られるとか,こういうふうに推定されるとか,そういう記述があちらこちらあるわけでございます.
 ただ,そういった中で,勤労挺身隊と慰安婦の関係につきましては,これは「無関係である.」ということを記述しております.しかし,その「無関係である.」というところに続きまして,「但し,都市や日本の工場で韓国女性を詐術的方法や人狩りの手法または工場管理者の協力で慰安婦にひつばられていったケースがあったものと見られる.」という記述もあるところでございます.
 また,その後に続けて,
「またこの中にもともと女子勤労挺身隊員や国民学校挺身隊員であった人が含まれていた可能性はある.」
ということでございますが,こういったふうな記述というものが韓国側の報告書の内容になっている.
 いずれにいたしましても,そういったことも踏まえまして,先ほど御答弁申し上げましたように,適切に対応してまいりたい,こう考える次第でございます.

○小山孝雄君 ケースがあったとかあるいは可能性があるということとそうだというのとは別でありますので,その点も十分踏まえて韓国政府と折衝を願いたいと思うわけでございます.
 次に進みますが,外政審議室にお尋ねいたします.
 先ほど慰安婦の強制連行はなかった,政府の資料から見出せなかったということを御答弁になりましたけれども,どうしてそういうことを平成五年八月四日の調査結果を報告するときに記入しなかったんでしょうか,
 あるいは発表しなかったんでしょうか.
 それどころか,報告書には「業者らが或いは甘言を弄し,或いは畏怖させる等の形で本人たちの意向に反して集めるケースが数多く,更に,官憲等が直接これに加担する等のケースもみられた.」と,ここまで書いております.それはなぜですか.

○政府委員(平林博君) 平成五年八月の調査結果におきましては,個々の出典とか参考にした文献,証言等を個別に言及しておりません.
 実態として,今まで申し上げましたように,政府の発見した資料の中には強制連行を直接示す記述は見当たらなかったのでございますが,その他各種の証言集における記述でございますとか韓国における証言聴取とか,その他種々総合的にやった調査の結果に基づきまして全体として判断した結果,一定の強制性を認めた上であのような文言になったということでございます.

○小山孝雄君 全体としてというのでは本当によろしくない.
 例えば,午前中,本委員会に入る前に科技庁長官から東海村の動燃の事業所での爆発事故の経緯説明がありましたけれども,こうしたことは一つ一つ真相を常に明らかにして進んでいくということが大事だと思います.
 再び外政審議室長にお尋ねしますが,政府の報告書の中で,調査資料の中で強制連行があったと判断したもとの資料は何でしょうか.

○政府委員(平林博君) 政府の発見しました資料の中からは軍ないし官憲による強制連行の記述,そういうものはございませんでした.
 今申し上げておりますのは,ほかの証言,資料等も含めまして総合的に強制的な要素があったということを申し上げている次第でございます.

○小山孝雄君 ここに報告書の写しを持っております.私がここに持っておりますので,どれがどれで,どれが公開されて,どれが非公開なのか,明らかにしてください.

○政府委員(平林博君) 今,先生のお持ちの資料の中には,日本の関係省庁,それから国立国会図書館,アメリカの国立公文書館等のほかに,関係者からの聞き取り先,あるいは参考としたその他の国の内外の文書及び出版物が並べられておると思うんですが,このうち公開していないものは関係者からの聞き取りだけでございまして,その他はすべて公開をしている次第でございます.

○小山孝雄君 参考とした国内外の文書は全部公開でしょうか.

○政府委員(平林博君) 原則として今おっしゃったとおりでございますが,韓国の太平洋戦争犠牲者遺族会というのがございますが,ここの資料だけは内部資料だということで渡されておりますので,これは例外的に非公開ということになっております.

○小山孝雄君 そうしますと,我が日本国の各行政機関,それから国立国会図書館,国立公文書館,そして米国国立公文書館から出たものは全部公開されている.
 そこには強制連行を直接示す資料はなかったということが確認された.
 そうすると,残りは関係者からの聞き取り調査です.
 すなわち,元従軍慰安婦を中心とした関係者からの聞き取り調査は明らかにされていない.
 それから,参考文献の中に太平洋戦争犠牲者遺族会等韓国の遺族会がまとめた元慰安婦の証言集,これが非公開ということですね.

○政府委員(平林博君) そのとおりでございます.

○小山孝雄君 その証言集の裏づけはとっておりますか.

○政府委員(平林博君) お答え申し上げます.
 個々の証言を裏づける調査を行ったかという御趣旨でございましたら,それは行っておりません.
 個々の方々,これは元従軍慰安婦もおりますし,元慰安婦もおりますし,それから軍人さんたちのあれもございますが,それの証言を得た上で個々の裏づけ調査をしたということはございません.
------------

JSF in mixi


 【質問】
 「河野談話」は何故出されたのか?

 【回答】
 当時,韓国国内世論は吉田清治証言によっていきり立っていた.
 これを受けて韓国政府は,「強制連行」を日本側が認めれば補償要求はしないと条件を付けた.
 日本政府がこの交換条件に応じて出した,政治的取引の産物が「河野談話」なのだという.

 【参考ページ】
常石敬一・秦郁彦・佐瀬昌盛監修『世界戦争犯罪事典』(文藝春秋,2002),p.107-108
「首相官邸」◆(2014/06/20) 慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯 ~河野談話作成からアジア女性基金まで~

2015.7.27


 【質問】
 河野談話見直し論について教えてください.

 【回答】
 1993年に出された河野談話を,その後の歴代内閣は継承してきたが,安倍晋三は第一次内閣のときに,
「安倍内閣でそれを見直すことは考えていないわけであります」
と表明しつつも,下村博文内閣官房副長官が
「河野談話はもう少し事実関係をよく研究しあって,その結果どうなのか,時間をかけて客観的,科学的知識を収集して考えるべきではないか」
と発言.
 また,2007.3.5の参議院予算委員会において,基本的には河野談話を継承していくとしつつ,
「狭義の意味においての強制性について言えば,これはそれを裏付ける証言はなかった」
「官憲が家に押し入っていって人を人さらいのごとく連れて行くという,そういう強制性はなかった」
「政府が発見した資料の中には,軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」
とする政府答弁書を閣議決定した.

 第二次内閣においては2014年2月,菅義偉官房長官が,談話の根拠となった元慰安婦による証言内容を検証する意向を示し,同年4月,政府は有識者による検証チームを設置した.
 そして2014年6月20日,政府は「慰安婦問題を巡る日韓間のやり取りの経緯 河野談話作成からアジア女性基金まで」を公表.
 談話作成に際して日韓両国間で文言調整した経緯を明記し,また,談話の土台となった元慰安婦証言に関する裏付け調査を実施していなかったことを指摘した.

 菅官房長官のこの国会答弁は,数日前に同じ予算委で参考人として招致された石原信雄元官房副長官の証言を受けてのものと考えられている.
 石原はおよそ以下の旨,証言していた.

(1)慰安婦を「強制的に従事させ」たと裏付けられる「文書は発見できなかった」「客観的に裏付けるデータは見つからなかった」.国内外で探したという.
(2)16人の元慰安婦に対する聞き取り調査の「事実関係の裏づけ調査は行われていない」
(3)談話作成過程で韓国側と「意見のすり合わせは当然行われたと推定される」

 これは櫻井よし子が石原信雄や河野洋平に取材して書いた論文(文芸春秋1997年4月号)と概ね同じであり,櫻井や秦郁彦などは発表直後から河野談話に批判的だった.
 ただし,実際に見直しされた際に必ず行われるであろうネガティヴ・キャンペーンに対し,どうするかの視点が彼らには欠如しているように見られる.
 「正しい(と彼らが思っている)説明さえすれば国際世論は必ず説得できる,とでも考えているのであれば,その考えは非常に甘いと言わざるを得ない.

 反対に吉見義明は,見直しの動きには強く反対の立場をとっている.
 彼によれば,河野談話は海外の意見に沿うものであり,
「官憲が家に押し入っていって人を人さらいのごとく連れて行くという,そういう強制性はなかった」
といった類の意見は,海外の意見とは大きな相違があるとしている.
 そしてその上で,河野談話は「歴史研究・歴史教育を通じて」このような問題を長く記憶にとどめ,同じ過ちを繰り返さないという固い決意を表明すると言っているのだから,言ったことは守れ,中学校の歴史教科書から「慰安婦」の記述を削除するようなことはするなという旨主張している.

 ただし吉見は,少なくとも下掲書の中では,石原信雄証言については全く触れていない.

 【参考ページ】
https://thepage.jp/detail/20140402-00000016-wordleaf
秦郁彦『慰安婦と戦場の性』(新潮社,1999),p.248-258
吉見義明『日本軍「慰安婦」制度とは何か』(岩波書店,2014),p.2-3,61-62

2016/04/28


 【質問】
>韓国議長,歴史認識で譲歩を要求『日本政府は河野談話,村山談話を揺るぎなきものに…』
>[韓国の国会議長の]鄭氏は歴史認識問題に関し「日本政府は河野洋平官房長官談話や村山富市首相談話を揺るぎなきものにするよう努力してほしい」と述べ,日本側に譲歩を要求した
>http://www.sankei.com/politics/news/141027/plt1410270045-n1.html

 これは「譲歩を要求した」と言えるの?

 【回答】
 結局それは,何をもって「譲歩」と考えているか,どのような視点からものを見ているのか?という問題になると思います.

 確かに,「これのどこが『譲歩の要求』なんだ」と,疑問を呈している人もいます.
 たとえば自称「自衛隊OB」のブロガーは,次のように述べています.

------------
 河野談話も村山談話も,日本は取り下げていない.現状で存在している前提を,維持してくれというものが,譲歩要求となるのだろうか?

 この問題は,両国の主張をぶつけたところで,両国民のナショナリズムを刺激するだけであり,何の利益も生まない.両国の強硬派とマスコミが互いに憎悪をぶつけ,それによって憎悪が増幅する状況は,政府関係者として問題視することは妥当である.だから,両国関係を安定化するには,互いに言いたいことを言わないように,政府としては現状維持しようという,妥当な提案に過ぎない.

 伊吹衆院議長も,反駁していない.両談話について,積極的に維持を言及することはできないまでも,その趣旨には賛同しているということだ.

 韓国の議長はそう言及し,日本の議長も黙示的ながら賛同している.

 それを「譲歩」要求と捉えた記事と新聞は,頭が悪いか,頭が悪い読者に迎合しているのだろう.読者の頭のなかでは,日本にとって両談話は無効になっているとか,両談話を無効にすることを宣言するという,確信がある,それへの迎合なのだろう.あるいは,記者もそう信じているのかもしれないが.

 頭が悪いから「例の朝日新聞の誤報で,従軍慰安婦問題は空中楼閣となった」と信じているのだろう.

http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1227.html
------------

 ではここで,なぜ産経新聞が現状維持要求を譲歩要求と考えているのか推論してみましょう.
 上述ブロガーの言うような,吉田清治証言のせいでしょうか?

 ここで,河野談話を巡る歴史を簡単に振り返ってみましょう.
 1993年に出された河野談話を,その後の歴代内閣は継承してきました.
 それは安倍政権も変わりません.
 しかし一方,河野談話を検証する動きがあり,その中で出てきたのが,石原信雄元官房副長官の国会証言です.
 石原(文中敬称略.他も同じ)は,およそ以下の旨,証言しました.
(1)慰安婦を「強制的に従事させ」たと裏付けられる「文書は発見できなかった」「客観的に裏付けるデータは見つからなかった」.国内外で探したという.
(2)16人の元慰安婦に対する聞き取り調査の「事実関係の裏づけ調査は行われていない」
(3)談話作成過程で韓国側と「意見のすり合わせは当然行われたと推定される」

 つまり,河野談話は韓国と裏取引して出された,何の根拠もないものであることが明らかになってきたわけです.
 この段階で河野談話への信頼は,少なくとも日本国内では大きく揺らいだと見ていいでしょう.

 ですのでそのような視点から見れば,鄭議長の要求は,見直されても当然であるものを「見直すな」と言っているのに等しく,まさしく譲歩要求でしょう.
 少なくとも,産経新聞はそう考えているに違いありません.

 もちろんそうでない視点に立脚する者から見れば,ただの現状維持要求であり,譲歩という表現を使うことは妥当ではありません.
 結局,どの視点に立脚してものを言うかであって,「譲歩」というワンフレーズだけ切り取って「正しい/間違っている」を判定することはできないのです.

 このように,ある主張に違和感を感じたときは,「その主張をしている者は,なぜそのように考えているのか?」を推論してみることが重要です.
 それをせずに対象への悪口雑言を書き殴っても,何の進展もないからです.

 まず相手を分析し,その上で対抗言論を構築する.
 これは戦術戦略でも同じことだと思うのですが,上述のブロガーは自衛隊OBを自称しているにもかかわらず,戦略戦術が不得手なようです.
 不思議ですね.

2016/04/30


 【質問 kérdés】
 「アジア女性基金」とは?

 【回答 válasz】
 正式名称を「財団法人・女性のためのアジア平和国民基金(Asian Women's Fund)」といい,元「慰安婦」に対する補償(償い事業),および女性の名誉と尊厳に関わる今日的な問題の解決を目的として,1995年7月に設立された財団法人.
 日本国政府からの出資金と,国内外からの募金によって運営され,慰安婦問題のみならず,
(1) 今日的な女性問題をテーマとする国際フォーラムの開催
(2) 今日的な女性問題に取り組むNGOの広報活動の支援
(3) 女性に対する暴力など今日的な女性問題の実態や原因究明及びその予防についての調査研究事業
(4) このような問題に悩む女性へのカウンセリング事業
等を実施した.
 すべての償い事業が終了したため,2007年3月31日をもって解散している.

 元駐韓大使・武藤正敏によれば,アジア女性基金設置の際には韓国外務部は当初,
「日本政府の基金設立は,一部事業に対する政府予算の支援という公的性格が加味されており,また,今後事業が行われる際,当事者に対する国家としての率直な反省および謝罪を表明し,過去の真相究明を行い,これを歴史の教訓にするという意思が明確に含まれている.
 こういった点で,これまでの当事者の要求がある程度反映された,誠意ある措置であると評価したい」
とした.

 しかし挺対協は同基金を「単に国家の責任を回避するために設立したもの」「国が法律を作ったうえではないので,国家補償には当たらない」と決めつけ,元慰安婦に対し,「償い金」や村山首相からの謝罪書簡の受け取りを拒否するよう圧力をかけ,受け取ろうとする元慰安婦には嫌がらせをした.
 韓国政府も挺対協の意向を気にして,
「団体(挺対協)からの反発が強くて困っている.
 表立って協力することは難しいので,水面下で行っていきたい」
と,徐々に態度を曖昧にしていき,しまいには
「どのような形式であれ,被害者たちが納得する措置を日本政府にはとってほしい」
とまで言い出した.

 結局,韓国で名乗り出た女性約240人のうち基金を受け取ったのは54人にとどまり,しかも挺対協に配慮する韓国政府によって,それは内密に行われた.
 村山首相からの謝罪の手紙が読み上げられると,元慰安婦達は感動のあまり声をあげて泣いたというが,そうした事実は殆どの韓国国民には知られないままであるという.

 【参考ページ Referencia Oldal】
http://www.awf.or.jp/2/foundation.html
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/asia_jk_genjyo.html
https://kotobank.jp/word/アジア女性基金
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/hosei-8/toda.pdf
武藤正敏『日韓対立の真相』(悟空出版,2015), p.42-57

mixi, 2017.6.28


 【質問】
 クマラスワミ報告って何?

 【回答】
 国連人権委員会から慰安婦問題の実情調査のため派遣された,ラディカ・クラマスワミが1996年2月に提出した報告書.
 以下のような論旨から成る.
1) 募集方法に関する情報は,殆ど元慰安婦の証言のみ.それを裏付ける文書は見つかっていない.
2) ブローカーや朝鮮人警察官が女を騙した例が多い.
3) 吉田清治は慰安婦狩りの体験を証言している.
4) 河野談話を引用.
5) 慰安婦の総数は約20万人.その大部分は殺された.
6) 慰安婦の生活条件は悲惨を窮めた.

▼ つまり,根拠が殆ど吉田清治証言だけであるため,その虚偽が明らかになった現在では,日本政府はこの報告書の撤回を求めている.
 ただし,この報告書には事実関係の間違いが多い上,その虚偽が明らかになった吉田清治証言や,元慰安婦の怪しい証言を鵜呑みにしており,日本政府はこの報告書の撤回を求めている.▲

 【参考ページ】
常石敬一・秦郁彦・佐瀬昌盛監修『世界戦争犯罪事典』(文藝春秋,2002),p.108
秦郁彦『慰安婦と戦場の性』(新潮社,1999), p.265-282
http://space.geocities.jp/japanwarres/center/library/cwara.HTM

2015.7.30


 【質問】
 クマラスワミ報告書は日本に対し,どのようなことを勧告しているのか?

 【回答】
 朝日新聞夕刊(1996.2.6付)によれば,
1.日本軍によって設置された慰安所制度が国際法違反であることを認め,その法的責任をとること
2.日本軍性奴隷制の被害者個々人(元慰安婦)に対し,原状回復と賠償を行うこと
3.慰安所について,日本政府が所持するすべての文書の完全な開示
4.名乗り出た日本軍性奴隷制の女性被害者,個々人に対し書面による公的謝罪をなすこと
5.歴史的現実を反映するように教育内容を改めること
6.慰安所への募集及び収容に関与した犯行者をできる限り特定し,かつ処罰すること

2016.8.11


 【質問】
 クマラスワミ報告書の問題点は?
Hol van a probléma a Coomaraswamy-jelentés?

 【回答】
 秦郁彦は
1) 事実に基づかない,または信頼性の低い資料を引用している
2) 勧告内容は,既に実施済みであるものを除けば,人権上の重大な問題を孕んでいる
点を指摘している.

 (1)については,
1a) 強制連行をしたという話を,元「慰安婦」と吉田清二証言に依っているが,前者は話に信憑性が薄く,後者は創作であることが既に判明している.
1b) 事実関係に関わる部分は,全てジョージ・ヒックス『慰安婦』からの引用だが,同書も歪曲や誤記が多く,信頼性が低い
1c) 秦郁彦との質疑の内容を,正反対に歪めて紹介している
といった指摘がなされている.

 内容に誤りが見られることは,秦郁彦のみならず,吉見義明も同意見である模様.
http://space.geocities.jp/japanwarres/center/library/cwara.HTM

 (2)については,報告書の勧告内容
1.日本軍によって設置された慰安所制度が国際法違反であることを認め,その法的責任をとること
2.日本軍性奴隷制の被害者個々人(元慰安婦)に対し,原状回復と賠償を行うこと
3.慰安所について,日本政府が所持するすべての文書の完全な開示
4.名乗り出た日本軍性奴隷制の女性被害者,個々人に対し書面による公的謝罪をなすこと
5.歴史的現実を反映するように教育内容を改めること
6.慰安所への募集及び収容に関与した犯行者をできる限り特定し,かつ処罰すること
のうち,(1)と(6)が問題になると見られている.

 すなわち,
・解釈と運用次第によって,「関与者」の処罰の対象者はいくらでも広がる可能性がある
・不確実な状況証拠しか存在しないので,処罰が難しい
・時効の壁を越えて処罰するには,特別な立法措置が必要
といった問題がある.
 これについて秦郁彦は次のように指摘する.

-------------
 時効無しの事後立法,しかも後で述べるような不確実な状況証拠だけで,日本の「関与者」だけが裁かれるとなれば,かつての東京裁判やBC級戦犯裁判,近くは光州事件どころではない.
 オウム事件級の凶悪犯罪でも,この種の暴論は出ないのに,なぜか日本のマスコミ,法曹界,学界,宗教界には,クマラスワミ勧告を全面的に支持する声が強い.

-------------下掲書, p.263

 こうした指摘に対する,日弁連や吉見義明の有効な反論を,まだ編者が目にしたことはない.
 もし今後見つかれば,随時追記する次第.

 【参考ページ】
秦郁彦『慰安婦と戦場の性』(新潮社,1999), p.259-277
http://space.geocities.jp/japanwarres/center/library/cwara.HTM
吉見義明『日本軍「慰安婦」制度とは何か』(岩波書店,2014),p.60-63

2016.8.15


 【質問 kérdés】
 慰安婦問題で火に油を注いでいるのは,以下のブログにあるように,日本政府のほうなのですか?

------------
http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1587.html
2016.03.08

やればやるほど不利になる歴史戦

 歴史戦とやらはロクなものではない.神がかり保守が余計なことをやった挙句,古傷を抉られる結果しかもたらしていない.

 政府まで余計なことをいって火に油を注いでいる.「国連女子差別撤廃委『慰安婦問題に多くの課題』」では

外務省の杉山晋輔外務審議官が慰安婦問題に関して軍や官憲によるいわゆる「強制連行」は確認できなかったなどと初めて包括的に反論したが,その内容について言及はなかった.
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160307-OYT1T50153.html

とある.

 だが,すでに慰安婦問題の焦点は強制連行の有無にはない.人身売買や慰安所での奴隷的拘束,それを追認した日本政府といった非人道的な取り扱いが問題となっている.

 そこで区々とした「強制連行ガー」といっても,日本の心証を悪くするものでしかない.外務省はそれに気づいているのだが,日本の国内事情からそう言わざるを得ない立場にあるのだろう.

 日本国内向けの政治闘争,歴史戦とやらのせいで日本全体が不利になったというものでしかない.

 結局,歴史戦は犯罪者の自己正当化でしかない.50年前にアジアといった村ひとつを焼きつくした放火犯が釈放された.その後,村で迷惑をかけた村人から冷たいまなざしを投げかけられるからといって,反論してどうするのかね.結局は放火犯が「可燃物を集めた村人が悪い」「村の消防体制が悪かった」「昔のことを」と言い出すものでしかない.
------------

 【回答 válasz】
 まるで,ここまで悪化したのは日本政府のせいだと言わんばかりの主張だが,この手の勘違いは,ブログ主の文谷数重(文中敬称略.他も同じ)以外にも散見される.
 こうした勘違いは,問題を時系列順に把握することができていないために起こる.

 慰安婦像を韓国国内外に建てまくるなどして,プロパガンダ活動にいそしんでいるのが中韓の政治団体であることは,今や常識レベルの話.
 それに対して,過去,日本政府は「歴史戦」とやらをやってきたわけではない.
 文谷が主張するような態度,すなわち殆ど反論も何もせずに,朝日新聞の慰安婦キャンペーン開始直後から謝罪を繰り返してきたわけで,その結果,文谷が主張するような良い結果が得られたかと言えば,その反対に今日の慰安婦像乱立の状況がある.
 別項で述べたように,対抗プロパガンダの方法がまずいのは事実だが,「対抗プロパガンダも何もするな」も悪手であることは,何もしなかった結果が現在の状況であることからも明らかである.

 例えて言えばこういうことである.

 昔,「さわぎり」事件というものがあった.
 護衛艦「さわぎり」において悪質ないじめ(暴行,恐喝)がはびこっていたため,とうとう自殺者が出て,遺族に訴えられたという事件である.
 いじめなど言語道断である.
 立派な犯罪行為であり,海自は真摯に謝罪する必要がある.

 ところが仮にここに「海自いじめ対策協議会(海対協)」なる団体が登場して,
「海上自衛隊なんかに入ったら,新人隊員は例外なくいじめられる.
 毎年10万人も自殺している.
 海自幹部は遺族に対し,全員丸坊主で土下座して謝って賠償金を1兆円払わねばならない.
 そうでなければ彼らは反省しているとは言えない」
などとプロパガンダを繰り広げたとしたらどうだろうか?
 文谷は「いじめの有無が焦点であって,人数は焦点ではない」などと言って,土下座と法外な賠償に賛同するのだろうか?
 文谷は海自OBであったそうだが,進んで丸坊主にして土下座して賠償金を払うのだろうか?

 普通の人間ならば,そんな要求にはさすがに反論するのではないかと思うのだが.

 ぜひともブログ主の見解を伺いたいものである.

mixi, 2017.4.19


 【質問 kérdés】
 釜山の日本総領事館前に置かれた慰安婦像は,ウィーン条約違反になるの?

 【回答 válasz】
 ウィーン条約には「外交関係」と「領事関係」に関する条約があり,外交関係は大使館,領事関係は領事館の保護などを義務付けている.
 いずれの条約も受け入れ国に,公館を保護し,安寧の妨害と威厳の侵害を防止する措置を取る「特別の責務」があると定めている.

 日本政府が韓国政府に慰安婦像撤去を求める根拠は,条約に記されたこの「安寧」の妨害と「威厳」の侵害となる.

 これについて,玉井克哉(Katsuya TAMAI) ‎@tamai1961(文中敬称略,他も同じ)は,次のように解説する.

------------
「ウィーン条約というのはさまざまな状況に適用されるのが予定されているので,抽象的で幅の広い文言を用いているのです.
 そして,日本政府の立場がその幅の中にあることは,件の合意で韓国政府が認めていることです.
 条約の解釈上ありえない立場を「認識」した上で,尊重し努力するなど,ありえない」
「合意以前の段階であれば日本政府の見解を否定するのも一つの立場でありえたが,日本政府の見解が条約のありうる解釈だと認めた合意によって,韓国政府の選択肢からそれが消えたということです」

https://togetter.com/li/1069633
------------

 したがって,日韓合意にも拘わらず,慰安婦像撤去を行わないということは,
>前々から文句言ってて,この間の合意で「適切に解決されるよう努力する」って言っていたのに,むしろ悪化させる方向に進んでるじゃねーか,約束と違うじゃん!!
>ちゃんと市民団体と話してくれよ!!
>http://www.kangaerujikan.com/entry/2017/01/06/211935
という話になる.

▼ 元駐韓大使・武藤正敏も次のように述べる.

------------
「そもそも,大使館に対する示威行動は百メートル以上離れた場所で行わねばならない.
 これは,外交に関するウィーン条約を受けて韓国が定めた法律に示されている.
 デモ行為者は"これはデモではなく記者会見だ"と偽って示威行為を行っており,明らかに法律違反である.
 像の設置を許可することは,韓国政府がウィーン条約の規定を順守していないことになる.

------------武藤正敏『日韓対立の真相』(悟空出版,2015),p..36

 同氏によれば,加えて警備上の問題も起きているという.
 テロリストが慰安婦像に近づくふりをして,日本大使館に向けて火炎瓶を投げたという事件も発生している.
(同,p.39)

 そして,類似ケースで実際に撤去されたこともある.
 2002年,米軍装甲車が地元女子中学生を轢死させる事件が起こると,若干離れた場所ではあったが,米国大使館前に市民団体が少女像を設置した.
 しかしこれもまた行政の許可なく建てられたものであったので,米韓関係が好転した6か月後には撤去されたという.
(同,p.37)

 要は行政がきちんと遵法意識を持って行動すれば,すぐにも撤去できるのである.▲

 ちなみに,
> アレ政権が「釜山領事館の前の銅像を撤去しろ」といい出した.
> それに応じなければ韓国に外交的圧力を掛けるという.
> 騒げば騒ぐほど自国の威信が傷つくのに,国内政治での右派向けアピールだけを考えてそれをしている.
>http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1760.html
などと見当違いの批判をしている自称「自衛官OB」,文谷数重もいるが,約束事が守られないのであれば,そもそも外交が成り立たない.

 ゆえに合意遵守を求めるのは,韓国との外交を続けるのであれば当然の話.
 それともこのブロガーは,韓国と断交するほうが良策だとでも思っているのだろうか?
 そういう意味で,このブロガーには

>韓国と断交と言い出すヤツがでている.

>まったく支持者の頭の程度は知れたものだということだ.

などと,無名の他人のコメントをあげつらう資格は無いように思われるのだが.

 まあ,韓国史を鑑みるに,韓国にとって「自分達に正義があるなら」約束とは守らなくてよいものという意識があるらしいので,彼らに約束を守らせるなんてェのは至難の業.
 そこで日本側も撤去一辺倒ではなく,対抗手段として世界各地に「日韓友好の像」を置いたらどうか?,と前々から言うているんやけどね.
 その中に
「100回以上謝罪している解決済みの問題を蒸し返し,従軍売春婦の中に酷い扱いを受けた者がいるという話を,針小棒大に誇張して問題悪化を図ろうとする一部の連中がいますが,我々はそんなものに惑わされず,友好関係継続に最大限努力しましょう」
と明記.
 「友好」に反対する人なんていないでそ?

 【参考ページ Referencia Oldal】
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017010600797&g=tha
http://www.kangaerujikan.com/entry/2017/01/06/211935
https://togetter.com/li/1069633
https://togetter.com/li/1069140

2017.5.27



 【反論 kifogás】
------------
 だが,その国の外交施設の門前での安寧確保を言いだすなら,中国に「東京の大使館前のデモを取り締まれ」と言われたらどうするのかね?

 「ウィーン条約」な御仁なら,それには賛同するのだろう.佐藤正久さん以下も「外交施設の威厳や安全を確保することは国際常識」であり,そのためにはその国の「政府は責任持って民間の抗議活動を抑圧すべき」なのだろうから,そのような態度を取らなければ平仄は合わないことになる.

 もちろん,今「ウィーン条約,ウィーン条約」と繰り返している御仁は大抵が恥知らずなのでそれには口をつぐむだろうがね.

http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1760.html
------------

 【再反論 Surrebuttal】
 もちろん,ウィーン条約の定めにある範囲において,適切な取り締まりが実施されなければなりません.
 しかし一方,世界のおおよその共通認識として「表現の自由の保障」があるので,たとえば天安門事件の如き弾圧を行うのも好ましいこととはされません.
 ですので現状,既に日本国警察が実施しているように,デモの進路に沿って警察官を配備することにより,平和的なデモと考えられる範疇を逸脱した範囲の,諸々の違法行為があった場合にのみ取り締まりを実施する形になるでしょう.
 その取り締まりの有無の境界線は,その時々の適法観念,社会通念などによって時代・地域による差異がありますので,一律的にどうこうは言えません.
 ウィーン条約において抽象的で幅の広い文言が用いられているのは,上述のようにそのためです.

 これがもし,何らかの外交交渉が日中間で行われ,「デモ隊に関する日中合意」なるものができ,日本政府が中国政府に対して
「適切に解決されるよう努力する」
と約束し,その上でデモ隊を放置したとなれば,やはり大きな問題になるでしょう.
 「合意以前の段階であれば中国政府の見解を否定するのも一つの立場でありえたが,中国政府の見解が条約のありうる解釈だと認めた合意によって,日本政府の選択肢からそれが消え」てしまうからです.

 そしてそのような問題となった場合,中国政府なら大使引き上げだけでは済まず,尖閣諸島問題の時に行ったように,
・日本人ビジネスマンの拘束
・通関時のルール適用厳格化による輸出入の事実上の差し止め
・巡視船の派遣
くらいのことも行うでしょう.

 というわけで,文谷数重の物言いは,実際には何の反論にもなっていないことがお分かりかと存じます.

 なお,
> もちろん,今「ウィーン条約,ウィーン条約」と繰り返している御仁は大抵が恥知らずなのでそれには口をつぐむだろうがね.
>http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1760.html
というのは,「詭弁の特徴」の一つである
1:事実に対して仮定を持ち出す
に過ぎず,議論材料にも値しません.

mixi, 2017.5.30


 【質問】
 2015.12.28の日韓合意は「最終的,不可逆的な解決」だそうだが,蒸し返される懸念はないの?

 【回答】
 残念ながら,蒸し返される可能性のほうが,そうでない可能性よりも圧倒的に高いかと.

 まず,朝鮮半島史を見ましても,対外的な約束を守ったケースが殆どありません.
 一番酷い例になると,モンゴル帝国に対し,和議を結んだものの,和平条件を時の政権が遵守することはなく,そのためモンゴル帝国を怒らせて国土を焼け野原にされる,というのを高麗時代に5度も繰り返したりしています.
 最終的にモンゴル帝国は,高麗に約束を遵守させるためには,高麗の王子をモンゴル皇帝の側近として仕えさせ,モンゴル人女性を妻にさせ,それを高麗王に据える,という「高麗王族のモンゴル化」を図る必要がありました.
 このような民族にとって,殆どペナルティも無いに等しい約束など,紙くず同然でしょう.

 また,韓国の政治思想においては,「前政権を断罪し,改革する」ことが「正義」であるという面があります.
 韓国留学経験があり,韓国の社会思想に詳しい小倉紀蔵は,次のように述べています.

------------
「たとえば韓国には革命という思想が中国から入ってきた.政権はいつでも打倒できるし,政権交代のダイナミズムがある.政権交代したら,前の政権は徹底的に悪かったというふうに描く.ところが日本には,革命を説いた『孟子』を乗せた船は,中国から日本に来るときに必ず遭難したという伝説がある.日本の政権はどんどん変わるかもしれないが,天皇の万世一系は変わらない.そういうところが韓国人にとってみれば,日本の万世一系の天皇制が,非常に『非文明的な』システムのように見える.つまり,革命が起きないというのは,中華のシステムから見ると『非文明的』なのである」
------------『心で知る,韓国』(岩波書店),p.202

「だから歴史を見る目がだいぶん違う.なぜ日本人は過去の糾弾をしないのかということを,韓国人はよく言う.過去の糾弾というのは,儒教的な意味で言えば毀誉褒貶の『春秋の説法』で,どれが悪くて,どれが善かったという,必ず善悪の価値をつけて歴史を描く.そういうことこそが文明だと思っている.死ねばすべて仏なんだというような歴史観は,儒教的な意味では野蛮に見える」(p.203)
------------『心で知る,韓国』(岩波書店),p.203

 この正義感の下では,前政権の約束も「悪」であると断罪されれば反故にされますので,政権が代わればどうなるか分かりません.

 日本人の考える正義感では,約束を守ることが正義ですが,世の中には別の正義感もあるということは,認識しておかねばなりません.
ドラえもん「どっちも自分が正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ」

 さらに,この問題で韓国において大きな影響力を持つ「挺対協」が求めているのは,ナチの戦犯並みの「関係者の時効なき断罪」でありますので,この程度の妥協では絶対に納得しません.
 謝罪も,電話で「ゴメン」程度では納得しません.
 鳩山に対してやらせたように,土下座でなければ駄目です.
 故に今回の合意に対しても,強硬に反対するでしょう.
 その上,「俺らはただの民間団体だから」という口実の下に蒸し返し続ける可能性もあります.
 慰安婦像撤去に対する韓国政府の言い訳を応用するなら,この可能性はたいへん高いと言えます.

 第4点.
 ルトワックによれば,『日本との争いを欲する熱意』は,韓国の安全保障の責任逃れをしようとする姿勢の,歪んだ形での表れ
(『自壊する中国』芙蓉書房出版,第16章)
でありますので,安全保障をめぐる韓国の環境が変わらない限り,そういう姿勢も変わらないでしょう.

 懸念されるのは,この高い確率で予想される「合意反故」という事態により,日韓両国の互いに対する嫌悪感場が,さらに高まることです.
 このようなことがたびたび繰り返されると,関係修復は不可能に近くなります.
 そのとき,それを防ぐ知恵を持ち合わせている政治家は出てくるのでしょうか?
 当方には,それも悲観せざるをえないのですが…



 【質問】
 韓国が日韓合意を反故にしたら,それをネタに世界に広く訴えればよいのでは?

 【回答】
 そのような言説をよく見かけますが,日本外交は果たしてそんなに巧みでしょうか?
 過去の日本外交史において,そんな事例があったでしょうか?
 「広く訴える」と言いますが,これまでも日本は,「解決済みの問題である」と,よく似た主張をしてきました.
 それが効果があったでしょうか?
 効果があったのなら,今回のこのような合意は必要なかったのではありませんか?

 だいたい,これまで慰安婦問題に関し,そのようなネガティブ・キャンペーンをやった経験が日本の外務省にあったでしょうか?
 韓国で慰安婦問題について主導的な役割を果たしている「挺対協」など,北韓のフロント団体とする見方が,韓国国内にさえあるのですが,そのような格好のネガティブ宣伝の材料さえ,全く利用していませんよね?,日本政府は.
 未経験の素人が,いきなりプロパガンダ戦の現場に放り出されて,うまくやれるなどとは到底思えないのですが…



 【質問】
 今までネガティブ・キャンペーンをやってこなかったし出来もしなかった,でも,それで今後も渡っていける世界情勢ではないのでは?

 【回答】
 むしろ,遅すぎるくらいかと.

 で,一つ疑問なのは,その準備はできている,または準備されつつあるのでしょうか?という点で.
 いや,それ以前に,そもそも,そういった何か一つの戦略の下に日韓合意だの何だのがなされれたのでしょうか?という疑問があります.

 と言いますのも,日本外交には構造的欠陥があるように思われるからです.
 「情報を集め,分析し,それをもとに国家戦略を策定する」という基本が,どうやらできていないらしいのです.
 小川和久氏が常々言っておられるように,そうした国家戦略を提言できる水準にあるシンクタンクが,まず日本には存在しないそうです.
 ですので,現状どうしているかと言えば,古森義久氏が述べておられるように「アメリカのシンクタンクに丸投げ」だそうで(苦笑)
 これではアメリカの思惑が多分に入る提言しか出ないでしょうし,まして,アメリカが中立を保ちたい案件については,日本の国益など二の次にされる可能性が高いでしょう.
 「日韓両国の内,譲歩させることが容易なほうに譲歩させる」かのような「提言」が出ても不思議ではありません.

 なお悪いのは,情報を集めて分析する諜報機関が,日本には存在していないことです.
 現状は各省がバラバラに,海外に比べて極めて小規模に行っているにすぎません.
 ましてプロパガンダ戦など,どの省庁でも行っていません.
 やっているのは,パンフレットを配って説明する,ということだけです.

 たとえれば,目も見えなければ,耳も聞こえないボクサーが,自分の頭では何一つ考えることなく,セコンドの言いなりで拳を振り回しているにすぎません.
 こんな状態でネガティブ・キャンペーンなどやっても,上手くいくとはとうてい信じられないのですが…

 【反論 kifogás】
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 日本は韓国を揺さぶれているのだろうか?

 日本は領事館前の慰安婦像で大使召喚の一歩手前,一時帰国までやった.保守のうちのアレ右派はそれで韓国に打撃を与えられたと考えている.

 だが,韓国はそれどころではないからだ.

http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1767.html
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 【再反論 Surrebuttal】
 大使の一時帰国を行ったのは,「韓国揺さぶるため」であるという見方がおかしいのではないでしょうか.
 日本政府の主張は一貫して,日韓合意の履行.
「交わした約束を守れ」
というものです.
 揺さぶるもへったくれも無い.
 外交というのは約束事の積み上げですから,約束事が守られないのであれば,外交が成り立ちません.
 外交が成り立たないのであれば,大使を派遣する意味など無いのではないでしょうか.

 この大使一時帰国については,朴裕河(文中敬称略.他も同じ)も
「韓国を屈服させるため」
などという謎の見解をtweetしておりましたが,こと慰安婦問題に関しては,
「約束した事は守れ」
という一般常識が通用しない方々が見受けられます.
 不思議な話です.

 ブログ主の文谷数重に至っては,
「日本側の言いがかり」
などと言いだしています.
 まあ,ご自身が「言いがかり商法」を常套手段としてきた文谷のような人にとっては,他人もそのようなことをしているように見えてしまうのでしょうが.

mixi, 2017.6.2


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