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◆◆◆◆◆「思いやり予算」 Költségmegosztások az amerikai erők állomásoznak Japánban
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<◆◆集団安保 目次
<◆日本 目次
<東亜FAQ目次
【質問】
米軍は福生に広大な飛行場(横田基地)を持ってますが,アメリカは年間いくらの借地料を日本に払っているのでしょうか?
【回答】
¥0.
日本に駐留する米軍の経費は,日本政府が防衛施設庁を通して,全部払ってます.いわゆる「思いやり予算」というやつです.
その額は年間総額約¥6500億にも上ります(防衛予算総額の約一割).
横田基地の場合,基地内には民間人所有の土地もありますが,日本政府が地主に借地料を支払った上で,米軍に無償で提供しています.
【質問】
何が悲しゅうて,金を払ってまで,あんな広大な土地をアメちゃんに提供せにゃならんの?
【回答】
物事には両面があり,米軍が駐留しているから,防衛費をGDP1%で抑えていられる(世界平均は2.3%).
仮に,同じ経費を自衛隊に注ぎ込んで,在日米軍に匹敵する戦力を用意できるかっつーと無理なんで,リーズナブルな傭兵料ではないかと.初心者質問スレッド
例えば,アメリカが太平洋にかけている軍事費は20兆円(陸軍含まず),日本は陸海空まとめて5兆円,
これらが太平洋の海洋交通路の安全を保証しているわけだが,そこから得られる利益としての日本の貿易量は,アメリカの太平洋における貿易量の2倍.
アメリカの国家戦略に乗っかって儲けまくってる日本がアメリカに
「たかられむしられ,お前らマゾっすか?」
というなら分かるという関係だ.
一方,以下のように「日米安保安上がり論」を否定する意見もある.
以下引用.
------------
防衛費,つまり日本国民が支払う税金の一部で維持されている自衛隊は,アメリカが世界のリーダーであり続けるために必要不可欠な戦略的根拠地である日本列島を守る戦力です.
すると,日本はアメリカに対して防衛費(年に5兆円強)分の資金的な分担も行っているという議論も成り立ちます.
実は,日本に展開するアメリカの空軍,海軍,海兵隊の航空機(戦闘機や攻撃機)のうち防空任務についているものは1機もありません.
日本列島丸ごとではありますが,在日米軍基地の防空を担当するのは,航空自衛隊の地対空ミサイルと要撃戦闘機であり,陸上自衛隊の地対空ミサイルであり,海上自衛隊のイージス艦などミサイル護衛艦だという言い方もできます.
また,在日米軍基地をテロやゲリラの攻撃から守るのは陸上自衛隊です.
さらに,世界第2位の対潜水艦戦能力を誇る海上自衛対は,日本の資源輸入・製品輸出ルートである海上交通路(シーレーン)を守るだけでなく,戦略的根拠地の日本列島から出撃・帰還を繰り返し,補給物資を運び込む米軍のシーレーンをも守っているのです.
過去に私は,以上のような議論をアメリカ側と繰り返してきましたが,「そんなバカな」という反論を受けたことはなく,専門家は皆「その通りだ」という認識です.
これは日米安保条約の片務性という錯覚を打ち消す見方であり,民主主義国の日本で税金がどのように使われているかという問題でもあるのです.
このような戦略的根拠地としての日本列島の実像を知るほどに,日米両国で口にされてきた「日米安保安上がり論」がいかに根拠を欠いたものか分かるでしょう.
マスコミはしばしば「日米安保は安上がり」とするアメリカ側要人の発言を鬼の首でも取ったかのように引用してきましたが,その発言の多くが在日米軍基地について全く無知だったか,財政面に絞り込んだ「高いか,安いか」という質問に対する回答でしかなかったことを忘れてはいけません.
東西冷戦時代を通じて,日米両国では
「日本に基地を置いて軍事力を展開することは,アメリカにとって安上がりだから」
といった議論がまことしやかに語られてきました.
だから私は,機会を見つけてはアメリカ側の要人達に次のように確認を求めてきたわけです.
「安上がりなのは,確かにアメリカにとって望ましいことでしょう.
しかし,単に財政的に助かるから日本に基地を置いているのか,それとも戦略上の要請から根拠地を維持したいのか,その点をはっきりさせてほしい.
仮に日本がびた一文出せないような貧乏国であっても,アメリカは軍事基地を維持し続けるつもりですか.
それともカネの切れ目が縁の切れ目で,そそくさと撤退するのですか」
専門知識を備えた要人であるほどに,アメリカ側の姿勢は明快なものでした.
「アメリカが日本に基地を置くのは,日本の地政学的条件を踏まえた戦略的な選択の結果です.
日本の財政面の支援はありがたいが,二義的な問題です.
仮に日本経済が悪化して,アメリカが逆に基地の使用料を払わなければならなくなったとしても,アメリカの国益のために在日米軍基地は確保しておく価値があるのです」
もう一度強調しておきます.
1990年代にジョセフ・ナイ元国防次官補(ハーバード大学ケネディ・スクール学長)が論文で指摘したように,日米同盟によるアジアの信頼を基盤として,アメリカは政治・外交・安全保障面のみならず経済面においても,年間4000億ドルもの貿易取引をアジア・太平洋地域と行っているのです.
また,アメリカ国内において300万人の雇用を創出しています.
------------小川和久『日本の戦争力』(アスコム,2005.12.5),p.130-133
ただ,上記の論は,
・例え米軍基地がなかったとしても,専守防衛を日本が掲げている限り,防空能力を厚くせざるを得ないし,陸海の自衛隊も,米軍基地がなかったとしても不要となるわけではない.
したがって,それらまで「米軍のための負担」に算定するのはおかしくはないか?
・戦略的価値が高いからと言って,いざというときに,それを直ちに現金化できるわけでもない.
つまり,仮に今,米軍にバイバイしてもらっても,それで直ちに「現金(有効な抑止力)」を用意できるわけではない.
したがって,戦略的価値をコストと同等視するのは,いささか問題があるのではないか?
という疑問を生じさせる.
▼
ちなみに在日米軍には,日本は年間六千億円以上を駐留経費として負担しているけど第七艦隊のイージス艦9隻を調達するだけで九千億を超えるのですから.
他に空軍基地,海兵隊,日本が支払っている以上の部隊を運用している.
在日米軍が運用しているのは第七艦隊以外にも,三沢,横田,岩国,嘉手納などの空軍基地,普天間の海兵隊,座間の陸軍部隊など.
コスト面で,これだけの利益を日本は得ています.
日本の防衛費はGDP1%前後をうろうろしているけど,多くの国では3%程度.
乱暴な比較ではあるし,これも極論だとは思いますが,日本は安保条約によって必要とされる防衛予算を三分の一に圧縮できているともいえます.
togetter,2011-02-04
青文字:加筆改修部分
▲
【質問】
米軍は,中東なんかの紛争に介入する際に,日本の基地を中継地点にしてるだけじゃん.
日本の防衛のために米軍が駐留してるって考え方は,おめでたすぎるんじゃない?
【回答】
中継地点は重要です.
「日本の防衛のために米軍が駐留してるって考え方……」
などとは,だーれも言っておりません.日米安保条約をご覧あれ.
仮に貴君の言うように,日本の基地が米軍にとって展開拠点の意味しか持たなくても,基地を守らないでどうしますか? 結果として日本の防衛にも役立ってます.
要するに,善意や信義とは程遠い,利害の一致にもとづく関係です.ヤクザにみかじめ料払うようなもの.
国際政治に「善意」や「信義」を期待する考え方のほうが,おめでたすぎると言えるでしょう.
【質問】
国際政治つまり外交に善意や信義は存在しますし,またアメリカ軍をヤクザにたとえるのもいかがかなものかと思われますが?
【回答】
そりゃそうだ.
善意や信義は存在する.
回答も善意の存在を否定しているわけじゃない.
でも,だからと言って,それを「期待」したり「アテにする」のは間違いではないでしょうか.
WW2でドイツが友好国のソ連相手にいきなり戦争おっぱじめた件,
太平洋戦争末期,ソ連は,講和の仲介を求めていた日本に対し,中立条約を破棄通告と宣戦布告を行った件
他にも,善意や信義を期待して裏切られた事例は,探せば腐るほどあるんじゃないのかな.
現在では北の国なんかがそうだ.あの国の外交政策に善意や信義を見出せるかい?って話さ.
外交における善意や信義は,軍事力や経済力に比べれば,とても小さな力に過ぎないということ.
だから回答では「期待するのはおめでたすぎる」と言っている.
この項目は,書き方はアレだが,間違ったことは書いてないと思う.
極東の名無し三等兵◆5cYGBbCsjQ in FAQ BBS
【格言】
「自ら検証できない問題に,国運や国益をかけることはできません」
小川和久著「日本の戦争力」(アスコム,2005.12.5),p.183
【質問】
「思いやり予算」とは?
【回答】
在日米軍駐留経費の一部をわが国が負担することを意味しますが,これは70年代からの物価高騰を受け,在日米軍
に対し「思いやりを持って対処するとの観点」から,78年度に基地従業員の福利費を肩代わりしたのがはじまりとされています.
04年度は総額2441億円となっています.
一方,小川和久の解説では微妙にニュアンスが異なる.
――――――
防衛施設庁の予算に含まれる「在日米軍駐留経費」――いわゆる「思いやり予算」は,1978年に日本側が在日米軍基地の日本人従業員給与の一部(初年度62億円)を負担したのが最初です.
背景に急激な円高ドル安があったものの,それまで払っていなかった(払うべき理由もなかった)支出だったわけで,趣旨を問われた当時の金丸信防衛庁長官が,
「ま,思いやりってことだ」
と述べたので,そう呼ばれるようになったとされています.
――――――小川和久著「日本の戦争力」(アスコム,2005.12.5),p.124
まあ,小川は「アメリカは例えカネを出してでも在日米軍基地を維持しようとするだろう」論者なので,解説もそれに沿う形となっている.
【質問】
以下は本当か?
――――――
「思いやり予算」は,アメリカでも「Omoiyari Yosan」と呼んでいる.
どうしても英語にしなければならない時は,「Host Nation Support」(駐留国受け入れ支援)という.
思いやり」に当たる英語がないから,というのが日本の外務省の見解だが,どう見たって「思いやり予算」をそのまま「Sympathy Budget」(同情予算)と訳したら,アメリカ人が怒ってしまうから,というのが本当の理由である.
――――――小林よしのり in 『SAPIO』 2004/11/24号,p.69
【回答】
疑わしい.
「Omoiyari Yosan」という単語でgoogle検索をしてみたが,引っかかるのは殆ど日本語のサイトばかりである.
仮に本当にそのような呼ばれ方をしているのなら,外電記事や米政府系サイトなどがもっと検索に引っかかって良いはずだが,そのようなものは皆無に等しい.
しかも,日本語のサイトでは出典は殆ど明記されないまま,ほぼ小林の文章のままの記述のものが並んでいる.
「単に小林のデマ――ただし小林のことだから,元ネタがあるのかもしれない――が広まっただけ」と見るのが,より真相に近いだろうと愚考する.
【質問】
地位協定24条(“日本国に合衆国軍隊を維持することに伴う全ての経費は,日本に負担をかけないで合衆国が負担する”)とあります.
これは,「米軍に対して,日本は費用負担する必要は無い」という意味なのですか?
何か,意味が食い違っている気がするのですが.
【回答】
たしかに地位協定には
第24条(経費の負担)
1 日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は,2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか,この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される.
と書かれていますが,これは「全く日本側が経費を負担しない」ということを定めたものではなく,この後に続く,
3 この協定に基づいて生ずる資金上の取引に適用すべき経理のため,日本国政府と合衆国政府との間に取極を行なうことが合意される.
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/pdfs/24_03.pdf
という条項によって,必要があれば別に随時「取極」をしますよ,ということになっています.
この一例が読谷補助飛行場におけるパラシュート訓練移転時の日本側負担で,この時の日本の負担は,
「地位協定第24条についての新たな特別の措置に関する協定第3条に基づき負担する」
と明記されています.
つまり,「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と取り決めておきながら,別の協定を作る抜け道を予め用意しておいて,そっちの協定に基づいて日本が財政的負担を負う,という巧妙な構造になっているんですね.
「地位協定第24条についての新たな特別の措置に関する協定」がまだ出来ていなかった時点でも,「日米地位協定合意議事録」によれば,地位協定第24条について,
この協定のいかなる規定も,合衆国がこの協定に基づいて負担すぺき経費の支出のため,合衆国が合法的に取得したドル又は円資金を利用することを妨げないものと了解される.
として,米国が合法的に取得する資金であればそれを利用して良い,つまり,日本側が自主的に支出しようとするなら,それを受け取って利用させてもらいますよ,という方法が可能となる合意をしていました.
【質問】
「思いやり予算」はどのように膨らんでいったのか?
【回答】
「日米特別協定」を結び,それを改定していくことによって,手当ての項目や限度額を増やしていったのだという.
以下引用.
在日米軍の経費については,日米安保条約と同時に結ばれた「日米地位協定」第24条に,
(1) 日本は全ての施設および区域並びに路線権を,アメリカに負担をかけないで提供(必要であれば所有者や提供者に日本が補償),
(2) それ以外は日本に負担をかけないでアメリカが負担,
の2点が定められています.
防衛施設庁が在日米軍基地に管理棟,隊舎,格納庫,倉庫,工場,家族住宅,学校,診療所,教会,野球場,レクリエーション施設などを建てるのは,「施設および区域をアメリカ側に負担をかけず提供すること」と言えなくはありません.
そこで,提供施設の整備に振り向ける思いやり予算はどんどん増えました.
しかし,施設や区域とは関係ない従業員給与の一部肩代わりは,地位協定24条と矛盾してしまいます.
これは具合が悪いので,日米両国は1987年に「日米特別協定」を結び,米軍基地労働者に対する調整・扶養・通勤・住居手当,夏季・年末・年度末手当の経費を,2分の1を限度として日本側が負担することにしました.
その後,特別協定はしばしば改訂され,手当ての項目や限度額が増えました.
さらに,公益事業に使う電気・ガス・水道・下水道・燃料代,暖房・調理・給湯用の燃料代の日本側負担や,米軍が訓練施設・区域を変更する場合の移転費の日本側負担などが盛り込まれていきました.
現在では提供施設の整備,基地従業員対策等,労務費の負担,光熱水費の負担,訓練移転費の負担の5項目が在日米軍駐留経費の対象で,2005年度予算では総額2378億円となっています.
小川和久著「日本の戦争力」(アスコム,2005.12.5),p.124-125
この件に関しては,日本外交の無能ぶりを指摘されても仕方なかろう.
【質問】
「思いやり予算」以外には,どのような経費負担を日本はしているのか?
【回答】
SACOの経費,基地周辺対策費,基地の借料・補償経費等.
在日米軍駐留経費(思いやり予算)以外に,各省庁が在日米軍基地関係のコストを負担する場合がある他,「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)の経費というものもあります.
これは沖縄基地の縮小や移転に関する支出で,施設建設費,訓練移動費(兵員・物資の輸送費),移転先の基地周辺対策費など2005年度予算で263億円です.
さらに,防衛施設庁が負担している基地周辺対策費557億円,基地の借料・補償経費等1263億円なども,米軍が使う基地の分については在日米軍に対する支出と考える事ができます.
ところで日米安全保障条約は,第6条に
「アメリカ合衆国は,その陸軍,空軍および海軍が日本国において施設および区域を使用することを許される」
とあるだけで,別に賃料をどうするとは書いてありません.
日米地位協定も同様で,右に紹介した第24条の規定(日本人の地主への賃料や補償が必要なら,日本側が払う)以外,賃料をどうするとは書いてありません.
それにも関わらず,在日米軍は日本に対して,日本国内で使用する施設や区域の賃料などを一切支払っていないのです.
一方,アメリカのペンタゴン(国防総省)は毎年,議会報告「共同防衛への同盟国の寄与」(Allied Contribution to the Common Defence)を出し,同盟国の駐留米軍に対する寄与を査定しています.
その2003年度版によると,
「日本は他のどんな同盟国から受け取るよりも多い直接経費の分担レベル(35億ドル)を供給している」
のです.
2001年度に日本が負担した直接経費は34.57億ドル,間接経費は11.58億ドルで,合計46.15億ドル(5000億円前後)となっています.
ここでいう直接経費は,防衛施設庁の出す在日米軍駐留経費を始め,日本側が直接支出しているコスト,間接経費は賃料や税金の免除など国家予算に計上されないコストを意味しています.
報告書は,日本は在日米軍駐留経費の75%を負担しており,アメリカの同盟国ではオマーンの79%(総額は0.3億ドル)に次ぐ高い分担率であるとも述べています.
ちなみに50%を超える国は,他にスペイン,サウジアラビア,クウェートだけです.
小川和久著「日本の戦争力」(アスコム,2005.12.5),p.125-127
なお,小川は同書で,日本人の納税者意識の低さを指摘しているが,軍事知識の極めて貧困な中にあって納税者意識だけ発達しても,外交政策がいびつなものになるだけではないか?とも思えるのだが.
【質問】
アメリカが日本に対して支出している軍事費はどれくらいなのでしょうか?
またアメリカが日本への軍事的な支出をうち切った場合,日本単独での防衛費などの軍事費はどれくらいになるのでしょうか?
【回答】
2000年代では2300~2500億円.
一応,軍事費じゃなくて「駐留経費」な.
>日本単独での防衛費などの軍事費はどれくらいになるのでしょうか?
これは,その時に日本がどういう防衛構想をとるか,によるのでなんとも言えない.
兵器生産のライセンス供与あたりまで打ち切られたとしたら,そのあたりの再開発費も含めると,相当な額になるのは確かだろうけどね.
参考までに,大統領が「アメリカから統帥権を取り返す!」と頑張っている韓国では,アメリカ抜きの国防を考えた場合,軍事費がGDPの3%を突破するのは確実,と言われております.
【質問】
「思いやり予算」の存在意義は?
【回答】
「過去二○年をふり返って見ると,この予算が日米
同盟に果して来た役割は絶大なものがある」
と,岡崎久彦は述べる.
以下引用.
「自分は常々議会に対して,日本のすぐれた貢献が手本だと説明している」
コーエン国防長官.一月五日,瓦防衛庁長官に対して.
「日米関係は大変底が深いが,その底を支えているものに日本政府の駐留米軍の支援があり,同盟関係の証左として米議会でも高く評価されている」
ハムレ国防副 長官.昨年十一月二十六日,河野外務大臣に対して.
「これは従来通り,日本の最も重要な貴任分担の貢献である」
九九年国防報告.
「米国の海外プレゼンスへの日本の寛大な支援は,同盟国への,そして地域の安全 への重要な戦略的貢献となっている」
九九年国家安全保障報告.
これは過去一年の主だった例であり,過去二○年間同じ讃辞が絶えず繰り返されている.
ふり返って見れば,九六年の橋本-クリントン会談,九九年のガイドライン関連法 で,日米関係は今や安定軌道に乗っているが,実は冷戦終了後の十年間は日米同盟の危機だった.
冷戦直後は,米国では,ソ連の脅威の後は日本の経済的脅威だという事が有識者の 間で真面目に議論されていた.また冷戦時代の同盟はもうない,今や日米中,または日米中韓の協調体制で行くべきだという論がアメリカでも日本でも行われた.中国は今でもそれを言っている.
その雰囲気の中で行われた日米経済交渉は戦後最悪の交渉だった.米側の考え方では,日本という国は自由化させても通産省が裏で指導して米製品を買わせないから無意味だ,数値目標を受諾させて政府指導で買わせれば良い.
そういう自由経済の原則 にも反し,日本の行政経済の実体にも反した論理で無理押しをした交渉であり,その末期には極度の円高が起こり,米側の交渉当事者が,日本に同情する理由がないと発言する毎に円は高騰,日本の輸出産業は壊滅に瀬した.
この危機を救ったのがぺンタゴンであった.
いわゆるナイ報告は,「経済摩擦は同盟の基礎を揺がしてはならない」と明記した.米側交渉当事者が,これでは日本を動 かす最大の梃子を失うと慨歎したと伝えられ,ロンドン・エコノミストがこれでもう 日本は安心して交渉で降りないと論じたのはその時である.
ジム・アワーがヒドン・サクセス・ストーリーと呼んだ冷戦未期の日米軍事協力関係,その見えるシンボルとしての思いやり予算に裏付けられた日米安全保障当局間の相互信頼関係が,日本を救った一幕であった.
二○世紀を通じて,世界の真の権力者は米国の世論と議会であった.どの国にとっても,米国議会対策は,その国の死活に関するものである.
日本の米議会工作の力は,同じ英語国であるイギリスやカナダに較べて劣るのはやむを得ないものがあるが,日本が現在持っている唯一最大の金看板はこの特別予算だと言って過言でない.
どの会社でも,その会社の金看板となっているような広告を維持するためには,その経費は惜しまない.
この特別予算についてもそういう考え方をすべきであろう.
【質問】
「思いやり予算」は減額してもいいのではないか?
【回答】
岡崎久彦は,「好ましくない」と主張する.
「思いやり予算」のもともとの発想は,日本は武力で協力できないから,お金で,出来る限りの事をし ようという事であった.
私は,日本のそういう態度が何時までも持つとは思っていない.本当に有事となって米兵が血を流している時に,今のままでは同盟が危うくなる恐れがあると常々思っている.
しかし現状では,日本が武力で貢献できない事の唯一 の代償がお金である現実は変っていない.
それさえも渋るという事の深刻な意味合いは十分認識すべきであろう.
要は,米軍の駐留は,日本の安全にとってアジアの平和にとって,自由民主主義国家群の世界戦略にとって,必要であり,日本はその維持のための支持を惜しまないという日本政府の方針に,いささかの疑いも持たせない政治的姿勢を貫くことである.
それはこの問題に限らず沖縄などの基地問題についても全く同じである.
「思いやり」予算の減額の話を聞いた米国通の某財界人は「何というケチな事を 」という反応を示した.ビジネスの感覚はそうであろう.
たしかに,光熱水料がタダならば,湯水の如く使うのは人間の本性であるから,そこに歯止めを設けるのは妥当な話であろうが,日本は不景気で米国は景気が良いのだからもっと出せというような話は,同盟の意義についての日本の認識を疑わしめる.
どうせ多かれ少なかれ特別協定は存続させるのなら,せっかくのアメリカ議会向けの金看板の価値とその効用を傷付けないような交渉ぶりを期待する.
一方,全廃すべしと主張するのは太田述正である.
彼曰く,
何よりも問題なのは,これ〔思いやり予算〕が国をうる行為であっただけではなく,国を売るような政権を頂く日本という国に対し,米国に拭いがたい不信感,侮蔑感を植え付けたことである.
そもそも米国は,1万名にのぼる英領アメリカ駐留英軍の駐留経費の一部(最大4割程度(26))を植民地側に負担させることを目的として,英国が制定した砂糖条例(1764年),印紙条例(1765年),さらにこれらに代わって制定されたタウンゼント法(1767年)に基く諸税への怒りを端緒として,英領アメリカのうちの13州が対英戦争を行って勝ち,英国から独立してできた国である(27).
租税制度を決定する英国議会に代表を送っていない(というより空間的距離の大きさから代表を送ることは不可能であった)英領アメリカは,英国とはあくまでも別個の存在であり,英軍の駐留経費を賄うための税金を負担することは英領アメリカが英国に隷属することを意味するがゆえにこれに反対し,英国から完全に分離独立するに至ったということなのである.
このような米国自身の成り立ちに関わる経緯=「国是」に照らせば,自ら他国に隷属することを潔しとする日本のような国は,米国から見て理解不能な国,民主主義の何たるかを知らない異質な国という事になる.
だからこそ,駐留米軍の経費負担を増やせば増やすほど,米国はリップサービスはしてくれるであろうが,日本に対する不信感,侮蔑感を必然的に募らせていくことになるのである.
(26) Microsoft Encarta 95中の Causes of the <American> Revolutionの項参照.
(27) レオ・ヒューバーマン『アメリカ人民の歴史』(上)岩波新書,1953年(原著は1947年),83~92頁.
(ア)〔集団的自衛権行使を禁じる政府憲法解釈の変更〕によって米国に対し,日本が今後積極的に国際貢献に取り組む姿勢を明らかにした上で,在日米軍駐留経費負担(1978年以降に始めた部分)を10年間で全廃すると米国に通告する.
「思いやり」予算が日米の信頼関係を損ね,かつ米軍の合理的な資源配分を捻じ曲げている点については既に述べたが,それに加えて,米軍基地で働く日本人従業員の給与や米軍の光熱水費を「思いやり」の一環として100%負担していることが,米軍や米軍軍属,さらにはその家族を堕落させていることに注意を喚起したい.
他人に経費を100%負担してもらえれば,人間誰しも節約する気がなくなり,電気も水道も使い放題となる.
米軍人が家族ともども夏季休暇で本国に帰郷する際,クーラーをつけっぱなしにするという話は,作り話ではない.
基地従業員の給与を100%負担したことも,とんでもない結果を生んだ.
従業員給与でも「思いやり」を始めて以来,在日米軍の軍人や軍属の数は減り続けたのに,基地従業員数は増え続け,とりわけ100%負担になって以降の従業員の増え方は大きい.
米軍が,いらない従業員まで雇っているばかりでなく,従来は米軍人や軍属がやっていた仕事を従業員に肩代わりさせているのだ.
とりわけ,日銭商売をして独立採算性を取っている軍関係諸機関は,そこで働いている人々の給与相当額を100%日本政府が負担していることにより,大変な黒字となっている.
その黒字が本国に吸い上げられ,全世界の米軍人や軍属,家族がその恩恵を受けているが,誰もそのことを知らず,感謝もされていない,という笑い話にもならない状態となっている.
むろん,予算には限りがあるので,予算を使い切れば,それ以上の部分は米軍側の負担となる.
しかし,その予算も,つい最近まで,過去3年間の使用実績を踏まえて,上方修正するルールになっていた.
その結果,100%負担経費の額はうなぎ上りに増え続けたのである.
太田述正著『防衛庁再生宣言』(日本評論社,2001/7/5),
p.50-51 & 78-79
ただし同書は「自衛隊は実質戦力ゼロ」説などを唱えるなどの問題もあるため,クロス・チェック無しに信頼するべきではないだろう.
【珍説】
〔在日米軍強化の〕最大の要因は,いわゆる「思いやり予算」で日本が米軍の駐留経費を負担している事です.
あつこば(小林アツシ) in mixi
(軍事学的考察上の必要性に鑑み,
引用権の範囲内で引用しています)
【事実】
馬鹿も休み休み言ったほうがいい.
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/world/K2006093000980.html
「アイスランド政府は基地の駐留経費の全額負担などを申し出て駐留継続を促してきたが,米国側は「地球規模の戦力再編成の一環」と突っぱねた.」
漢字は読めるだろうね?
全額負担を申し出たアイスランドの要求すらトランスフォーメーション上必要ないと突っぱねた米国が,そんなことを最大の要因にするかね.
まったく,思想が偏向すると全てが偏向して見えるんだな.
お前さんの言うとおりなら,米国はなぜアイスランドから撤退したのかね?
ちなみに,本当に強化されているのかについては上述参照.
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