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中近東FAQ目次


 【link】


 【珍説】
 国連憲章では「武力行使は慎まなければならない」と定められている以上,「深刻な結果」が直ちに武力行使に結びつくとは解しがたい.
 経済制裁の強化もある.
 なお,1441号決議は国連安保理の新決議がなかったから無効.

 【事実】
 あのですね,こんなこと言いたくはないんですが,あなた関連資料をちゃんと調べてから書き込みしてますか?
 ちゃんと決議1441を全部読みました?

 678決議には,
「以降のすべての関連する決議を支持,実行し,その地域に国際の平和と安全を回復するため,国連加盟国にあらゆる手段を行使する権限を与えた」
とありますね.
 そして,「以降の関連する決議」の一つである687決議には
「イラクは,あらゆる化学・生物兵器,生物・化学剤のすべての在庫,関連するすべてのサブシステム,構成部分,およびあらゆる研究・開発・支援・製造施設を国際的監視の下で破壊,除去,または無力化することを無条件に受け入れなければならない 」
「イラクは,核兵器または核兵器に使用できる材料や研究・開発・製造施設を入手または開発しないことに,無条件で同意しなければならない」
という内容が含まれております.

 つまり,687決議違反を理由に,678決議を根拠に,武力行使を行うぞと,そういうのが1441決議なのです.
 イラクの義務違反については,フランスやロシアなども認めていました.つまり安保理の判断です.
 争点は武力行使に新たな決議が必要か否かということだと思われます.

 では,
「新たな決議は必要無し.1441で充分」
というアメリカの判断がなぜ通ったかといわれれば,これは「大国の一致」を原則とする国連のシステムすなわち拒否権が,アメリカに与えられていたからです.

(軍事板)


 【珍説】
 伊藤正巳・加藤一郎著『現代法学入門』(1997 有斐閣双書)54頁には,

“法令が新たに制定され,または改正された場合には,「後法は前法に優先する」あるいは「後法は前法を廃する」という原則がある.
 法令の制定・改正の場合には,それと抵触する規定はそれに応じて削除されるか改正されるのがふつうであるが,それが残されていた場合でも,後法が優先する”

と述べられている.

 ゆえに,武力行使の根拠となる国連決議678号や687号は,1441号によって無効.
 その1441には武力行使について述べられていないので,アメリカの行為は国際法違反.

 【事実】
 国連決議1441号は,678号や687号の改正決議ではないので,その原則には当てはまりません.
 また,国連決議1441号は678号や687号の決議を無効とする条文が無いので,前決議も当然ながら有効です.

 仮に,法令が新たにされても武力行使の根拠の法令に関して,1441ではなんら触れられてません.
 要するに武力行使に関して,1441で後法が制定されていないので,前法の効力は残ります.

 それどころか,

13,これに関連し,安全保障理事会がイラクに対し,義務違反が続けば同国は重大な結果に直面するであろうと,再三警告してきたことを想起する.

とも1441には書かれているわけだが.

軍事板



 【反論】
本には「法令が新たに制定され,または改正された場合には」と書いてるのに
「改正決議ではないので,その原則には当てはまりません」と反論してる.
読解力ないにもほどがあるぞw

FAQ 2nd BBS

 【再反論】
 「改正決議ではない」ならば,「改正された場合」に当てはまらないのは当然だと思うのだがなぁ.
 そもそも1441号が678号,687号の改正だって話は,どこを読めば出てくるんだ?
 他人の読解力を気にしてられる状況なのか?

戦争板,2010/06/16(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 911実行犯はイラクと接触していた,というのは本当か?

 【回答】
 信憑性は高いと思われる.
 実行犯の一人,モハメド・アタは,チェコ政府が認めた分だけでも,2000年6月と翌年4月の2回,プラハに滞在している.
 地元紙ホスポダルスクの報道では,この2回の滞在で,駐プラハのイラク大使館書記官アフマド・エルアニと会っていた,と報じている.
 イラク政府は否定したが,チェコのグロス内相は2001年10月,アタとエルアニの接触を公式に認めた.

 エルアニは,イラクに批判的なプラハのラジオ局「ヨーロッパ自由放送局」を狙ったテロ計画に絡んだとして,2001/4/22,国外退去処分を受けている.

 なお,社会主義時代にはチェコにはスパイ養成機関があり,イラクなど中東諸国出身者も学んでいた.
 テロ対策を担当するチェコ安全情報局の年次報告書によると,チェコは西側諸国を狙ったテロの「ネットワーク作りと破壊行為の絶好の後背地」とされている,という.

 詳しくは朝日新聞アタ取材班著「テロリストの軌跡 モハメド・アタを追う」(草思社,2002/4/25)p.151-154を参照のこと.


 【珍説】
 〔略〕イラク攻撃に踏み切った「アメリカの大義」とはなんであったか,あらためて確認しよう.
 いろいろな場所で述べてきたことだが,煎じ詰めれば,
(1)イラクのサダム・フセイン政権は,アルカイダなどイスラム過激派のテロ組織と深い関係があり,9・11にも関与していた疑いがある.
(2)イラク軍は,核物質や毒ガス,細菌など,大量破壊兵器を保有しており,米国や同盟国にとって重大な脅威である.

……というものであったはずだ.
 そして,読者の多くも御存じのように,大量破壊兵器は発見されなかったし,9・11への関与についても,最初から確たる証拠があっての議論ではなかった.

林信吾著『反戦軍事学』(朝日新聞社,2006/12/30),p.130-131

 【事実】
 歴史を歪曲してはいけませんね.
 上述のように,アメリカの当時の主張は,
『サダム・フセイン政権はWMDを開発している疑いが濃厚.
 これは大量破壊兵器がテロ組織に渡る危険を阻止するための戦争』
ということです.

 (1)ですが,テロリストのアブ・ニダルを庇っていたことは,当時のイラク政府も認めていた事実ですし,9・11テロの前の1993年のWTC爆破テロ事件の実行犯の1人,ラムジ・ユセフはイラクへ逃げこんだことが確認されています.
 同テロではまた,アブドル・ヤシンはイラク情報部の工作員の可能性が高いとされています.

▼ またサダム自身も,アル・カーイダとの関係,または将来関係する可能性を疑われても仕方ないような発言を行っている.
 以下はアル・カーイダによるテロ事件についての,サダムの発言.

米軍駆逐艦コール爆破事件、2000年10月12日

 「(イラク国民は、)あらゆる分野において、あらゆる手段を使って、闘争とジハードを強化すべきである」 イラク・テレビ、2000年10月22日 (国営) 9月11日同時多発テロ事件  「米国は、その指導者らが世界にまいた種から育った作物のとげを収穫しているのである」   サダム・フセイン、2001年9月12日

 「(9月11日テロ事件の)真の犯人は、崩壊した建物の中にいる」   アリフ・バ紙、2002年9月11日 (国営紙)

  「(9月11日テロ事件は、)神の懲罰である」   アルイクティサディ紙、2002年9月11日 (国営紙)

 「9月11日の同時テロが3000人の命を奪ったならば、50州の100都市がニューヨークおよびワシントンと同様に攻撃された場合の損害はどの程度だろうか? 何百機もの飛行機が米国各地の都市を攻撃したらどうなるだろうか?」   アルラフィダイン紙、2002年9月11日 (国営紙)

 「米国は自らを燃やし、今世界を燃やそうとしているというのが、(9月11日テロ事件の]単純な真実である」   アリフ・バ誌、2002年9月11日 (国営誌)

 「人間の手に収まるような小さな缶で、すべてに影響を及ぼすウイルスをまくことのできる生物兵器を使用することも可能である」  バビル紙、2001年9月20日 (国営紙)

 「米国は自らの毒を味わわなければならない・・・」  バビル紙、2001年10月8日 (国営紙)

[/quote]
―――「駐日米国大使館」:サダム・フセイン語録

 さらに,「敵の敵は味方」となる可能性が高い国際社会では,フセイン政権とアル・カーイダが結びついたとしても,何の不思議もありません.
 これはただの可能性ですが,核テロとなるかもしれないとすれば,「ただの可能性だから」と手をこまねくにはリスクが大きすぎますね.

 さらにまた,9・11関与説はそもそも議論の本筋ではありません.

 (2)ですが,「保有していた」と疑われたのではなく,「開発していた」と疑われたものです.
 何しろ10年にわたって査察妨害を繰り返していますし,湾岸戦争後に行方不明になったWMDの行方も分かっておりません.
 湾岸戦争後にはクルド族に対して毒ガス攻撃をかけたりもしていますね.

 このような前科がありながら「イラクを疑ったことはおかしい」と主張する人々は,では,これまで査察違反や妨害,査察拒否などを散々繰り返してきた北韓についても同様に,北韓の主張を信頼しちゃうんでしょうか?

▼ 中央大学政策文化総合研究所の折田正樹教授も,次のように述べる.

――――――
 イラク戦争については,その後,大量破壊兵器が発見されなかったこともあり,事後的に,特に米国に対して,種種の観点からの批判を行うことは容易である.
 しかし,2002年から3年にかけて本件について英国政府と協議をしていた筆者から見ると,イラクが湾岸戦争時からの一連の安保理決議を遵守し,安保理理事国がイラクの決議逸脱に一致して対処し,2003年以降も一致した認識,判断,行動をしていれば,武力行使の事態は防げたのではないかとの思いがする.
 特に9・11の同時多発テロ以降,米国がイラクの大量破壊兵器保持の可能性を,国際社会に対する脅威よりも自国の安全保障への脅威と受け止めることとなり,米国内では自衛のための先制攻撃論まで議論されたことの深刻さについて,他の安保理理事国の理解が不充分であり,そのことがイラクのサダム政権に,国際社会は割れているとの印象を与え,米国の意図を過小評価し,イラクの大量破壊兵器の存在について曖昧な戦略を許す事態となったのではないかというのが,筆者の考えである.

 また,当時,安保理において米,英,西と仏,露,独の意見が対立したことに注目が集まったが,安保理を構成している他の諸国が,意見対立を調整するためにどれほどの役割を果たしたかについても,疑問の残るところである.

―――――― 『グローバルガバナンスと国連の将来』(中央大学出版部,2008.8.10),p.113-114

 さしあたりイラク戦争の批判者に求められるのは,時系列,当時の状況を踏まえた上で,
「では,何が最善だったか」
を,非現実的ではない形で示すことだろう.
 「後知恵」によるものではなく.
 そうでなければ説得力がない.▲

 それにしても,この『反戦軍事学』では小林よしのりもこきおろしているのですが,その小林とホホイとが似たような珍説かましているというのは,実に興味深いですね.


 【質問】
 結局,イラク戦争は大義のない戦争ということなんですか?
 また,戦争には大義なんかあってもなくても構わないということなんですか?

 【回答】
 大義が,戦争の正当性という意味なら「予想されるWMDテロに対する予防戦争」
 大義名分,戦争の口実という意味なら査察非協力(国連決議1441号違反)

An Essential War By GEORGE P. SHULTZ
WSJ:必須である戦争    by ジョージ・P・シェルツ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 上は,WSJのコメンタリーにある前国務長官のシェルツの論文だが,現在のテロとの戦争を歴史的なパースペクティブで論じていて考えさせられるものがある.現在の国際社会の最大の脅威は国際的なテロリズムだが,それは国家システムの失敗を利用し,既存の国家システムを破壊するものだという.

 ソマリアやアフガニスタンのような破産国家がテロの巣窟になるようにサダムのイラクなどの独裁国家も同じ性格を持つ脅威である.第一次湾岸戦争の後,サダムは和平案に調印して各種の軍備解除をおこない平和国家に変わって国際社会に復帰することが期待されたが,サダムはそれをことごとく無視し,国連などの国際社会の既存のシステムはサダムの路線を修正させることに失敗した.その結果が第二次イラク戦争である.

 シュルツは現在の状況を第二次世界大戦前の1937年になぞらえていて,1930年代に国際社会が充分なことをしなかったのが第二次世界大戦につながった,と警告する.こうした政治情勢下では柔軟策(和平策)は一切無力だ,という.シュルツのいう脅威にはイランと北朝鮮などが想定されているようにみえる.

(軍事板 & 極東ニュース板

 まず,戦争においては,大義はないよりは,あった方がいいと言う程度.それより,勝てるかどうかのほうが最重要課題.
 勝てば「大義」を書き換えることも可能だが,「大義」で勝敗をひっくり返すことはできん.

 それに,大義なんて星の数ほどある.
 その中で自分の得になる「大義」をチョイスすればいいだけの話.

 イラク戦争の場合,「テロ支援国家を潰すことでテロを撲滅する助けの一つにする」も立派な大義だわな.
 以下の記事からも分かるように,イラク戦争を目の当たりにして態度を変えた国もあるわけだから,その大義通りに世界が動いているとも言える.
 過激原理主義勢力の強い(国民の2割)パキスタンでさえ,カーン博士の責任を問う方向で動き出している.

大佐が明かした核の闇ルート

 昨年12月,大量破壊兵器(WMD:Weapons of Mass Destruction)開発計画の放棄や国際機関による査察受け入れについて米英と合意したリビアが,かつての盟友である「ならず者国家」のWMDについても重要な手がかりを提供しはじめた.
 おそらく最高指導者カダフィ大佐の命令で,リビア当局者が核兵器関連の「ヤミ市場」にかかわる企業や個人名を明かしつつある.
 これでヤミ市場を一掃できる可能性は低いが,爆弾用のウランを濃縮する遠心分離装置については進展があった.「パキスタン核開発の父」と呼ばれるアブドゥル・カディル・カーンから技術漏洩したと思われる証拠がリビアで見つかったのだ.
 カーンは70年代に,勤務していたヨーロッパのウラン濃縮事業会社から遠心分離装置の設計図を盗んだ疑いのある人物.ヤミ市場の分離装置の大半は,この設計図を基にしているというのが捜査当局の見方だ.
 米政権のタカ派にとってイラク戦争の大きな目的は,核保有に走ればサダム・フセインと同じ運命をたどると,世界中の独裁者に見せつけることだった.フセイン拘束の数日後にリビアがWMD放棄を宣言したことに,大いに満足しているだろう.

――――――ニューズウィーク日本版 2004年1月14日号 P.28 抜粋要約

 んで,大量破壊兵器は「テロ支援国家である事を証明する」ものだから探しているんだが,
「WMDを捜索するはずのスタッフは抵抗組織を捜索する仕事にかり出されていて,殆ど動いていない」
http://abcnews.go.com/sections/primetime/US/bush_sawyer_excerpts_2_031216.html
ということだから,見つからなくてもおかしくないし,上述のように,仮に見つからなくても全然不思議ではない.

 そうした「大義」を,国際法上(といっても国際法自体があやふやな面を多く含むが)の諸条件を一応クリアして始めた戦争という時点で十分だろう.

 ところで,大義がないから反対ということなら,大義があれば賛成なのか?
 それはそれで恐ろしいような.

(コヴァ板・軍事板出張スレッド)

なお,オハンロンによれば,この「予防戦争」は特に新しいものでもない.

Doctrine not radical
先制攻撃ドクトリンは新しくもなんともない
 ブッシュ政権はテロリストからの攻撃にさらされる時代に際して,先制攻撃を可とする政策を公的に認めた.
 このため,ブッシュ政権の先制攻撃ドクトリンはブッシュ・ドクトリンなどと呼ばれ,政治的な攻撃の対象にされたりする.

 しかし,先制攻撃というのは国家が敵からの攻撃の危機にさらされた場合には行って当然の自衛的な権利のことなので,本来が自衛であり,昔からアメリカがやってきたことである.
 冷戦時代のアイゼンハワー政権は敵の攻撃にさらされる場合の先制攻撃を政策にしていたし,キューバ危機のケネディ政権は先制攻撃敵にソヴィエトにミサイル撤去を要求した.クリントン政権は1994年の北朝鮮の核施設に,殆ど先制攻撃を行う寸前であった.
 こういう具合に,アメリカの歴代政権は先制攻撃オプションを持ち,時にはそれを行使してきた.
 NATOがミロセビッチに行った空爆攻撃も先制攻撃のひとつであり,欧州とてアメリカと異なるわけではない.

 ブッシュ政権は先制攻撃を政策であるかのような表明をしたので誤解があるのだが,先制攻撃とは必要な場合に使う道具である.ブッシュ政権はそれを宣伝しすぎてアタマの悪さを示しているのだろうか?
 まず,先制攻撃論というのはブッシュ政権に鷹派的なイメージを与え,世界の多くの国を引かせるようなところがあるのは事実だ.
 しかし,ブッシュ政権が先制攻撃を辞さず,としていることがリビアやシリアやらをWMD放棄させる要因の1つになっているかもしれない.

 先制攻撃ドクトリンは,イラク戦争直前の国連安保理のように,同盟国をアメリカの戦争に同調させにくくする効果があるのかもしれない.
 あるいは,先制攻撃ドクトリンは北朝鮮をかたくなにさせ,ますます核爆弾製造に励むようにさせるかもしれない.

 勿論この北朝鮮の場合について,先制攻撃をあきらめるのは正しくない.朝鮮半島で戦争が起これば悲惨なことになるわけなのでアメリカ大統領は軽々しく扱うことはあり得ない.
 深刻な自衛の危機にはそれがなされるべきであるが,それにしても6か国協議の幾つかの国はアメリカに賛成しないように先制攻撃論はアメリカの敵に同情するものを増やす効果はある.

 イラクのWMD諜報が正確ではなかったことが政治的問題になった現在,先制攻撃オプションは軽々しくは使えない.
 ではそれをどうしたらよいのか?
 イラクでは諜報機関が相手を過大評価していたが,リビア,イラン,北朝鮮などは従来の評価は過小評価だった.

 ブッシュ大統領の言っていることで基本的に正しいのは,大統領は敵がWMDを増やし続けて攻撃してくるのを手をこまねいて待っているわけにはいかない,ということなのだ.
 そううわけで先制攻撃論は大統領の政策として正しいのだが,誤解を招きやすいこの議論は大っぴらにせず,密かに隠しておくほうが賢いといえるだろう.
Michael O'Hanlon Brookings Institution

 ちなみに,小林よしのりすら,SAPIO 2003/5/14のp.57において,
「産経新聞系ポチ保守が掲げていた,
『大量破壊兵器がテロ組織に渡る危険を阻止するための戦争』
というアメリカの大義は消滅する」
と書いており,大義はWMDの存在そのものではなく,WMDテロ予防戦争が大義であったことを認めた格好になっている.



 【質問】
 上記意見は相対主義も甚だしいのではないか?
 色々な価値観,大義があるにしても,回りを納得させるだけの言葉というものが常に求められる,それが政治というものではないのか?
 【回答】
 それは,全員が納得する戦争が有ると仮定しないと成り立たない議論.
 俺は,そんなモノ無いとおもうけどね.
 「イラクによる隣国クウェートの侵略」に対して,「国連決議で決められた多国籍軍によるクウェート解放戦争(湾岸戦争)」ですら,何を突きつけられようが,意地でも納得したがらない人がいた訳だから.

 また,アメリカの主張する大義に普遍的に優越する,イラク戦争反対の論理があるというのであれば,それを提示してもらいたい.
 ただの,化石左翼じみた『何が何でも絶対平和主義』にしか見えないけど?

 アメリカの主張するところの大義に普遍的に優越するような価値観を,もし提出できたら思想家としても大成できるだけでなく,その思想が世界に恒久平和をもたらすことができるだろうねえ.w

(コヴァ板・軍事板出張スレッド)

 もし,フセイン政権への武力行使が国際協調に逸脱しているというのであれば,武力攻撃に反対した国々は,

 危険度を求める式 (危険の程度)×(その危険が起こる確率)=危険度

において,「危険の程度」をゼロに感じているのではないかと疑われても不思議ではない.
 確かにその国は自国が直接危険に晒される確率はゼロに近いし,アメリカに賛成しないことで不利益を被るという間接的な危険の程度を含めた,総合的な危険度は,アメリカの何分の一かにすぎないだろうということは言える.
 その国にとっては武力行使を容認するに足る危険度ではないというだけの話だ.

 しかも,フランスのシラク大統領は過去からイラク戦争直前までイラクのフセイン政権と武器や石油に関する取引に密接に関わり合い,フランス企業も大きな利権を持っていた.武力行使がなされれば,不利益になることは明らかだ.

 武力行使の是非についても危険や利益,幸福の期待値が判断の重要な要素になる.
 国内の場合は,期待値から判断される行動が法律に違反する場合が,しばしば見受けられ,そのような事例はテレビや映画のテーマになったりする.
 例えば,悪事を働く組織があって,逮捕されるのは手下ばかりで,ボスは常に安泰という場合,法律を破ってボスを殺したら刑務所行きだが,ドラマを見ている観客はヒーローに惜しみない拍手を送るであろう.

 だが,国際社会には今のところ,国家間の危機に関する限り,期待値から得られる判断を蔑ろにするような,具体的で強力な国際法は今のところ存在しないし,あったとしても統一政府がない以上,機能しない.

http://www.imd-g.com/Debate_on_Iraq.htm

 さらに,以下の記事によれば,フセインは石油を巡る賄賂を資金として,各国の政治家に対する買収工作を行っている.買収された彼らもまた,何があっても納得しないであったろう.

Volcker's U.N. Cleanup
ボルカー前ERB議長による,国連の大掃除

 国連のオイル・フォー・フード・スキャンダルの解明のために,ボルカー前FRB議長が任命されたわけだが,コフィ・アナン国連事務総長がボルカーに就任以来をしたのは実際には2週間前のことだった.
 何故そんなに時間がかかったのかといえば,調査委員会の捜査に協力を約束させるための国連安全保障委員会の決議を渋る国があったからで,そうしたフレーム・ワークなしに高名なボルカー前議長を担ぎ出しても意味はない,と英米がアナン総長に圧力をかけたからである.

 アナン事務総長は最終的に英米の主張を認めたのだが,ロシアの国連大使はそうした安保理議決に反対しており,
「調査委員会には賛成するが,新たな安保理決議が必要とは思わない」
といっている.
 サダムの石油ビジネスの最良のパートナーの言として,ロシアの言い分は良く理解できる.
 フランスは安保理決議について特に発言していないが,その胸のうちは容易に想像できる.

 フィナンシャルタイムズ記事によれば先週,Shakir al-Khafajiがサダムの石油賄賂を受け取ったことを認めた.彼は前のWMD調査官Scott Ritterに資金援助し,サダム擁護のドキュメンタリーを作らせた.さらに反戦派議員への献金も行っている.
 この繋がりについて,議会での調査委員会の聞き取りが予定されている.

 国連の人道支援プログラムが各国の政治家への賄賂に利用されたのは,国連の歴史を汚す一大事であるし,この事件はサダム拘束後とはいえおろそかに出来ないものである.
 それはイラクの現状を見ても,破産国再建のために国連の果たすべき役割が増大しているからである.
 国連の権威を保つためにも,国連のプログラムの失敗を解明し,大掃除をして内部を清浄にしなければならない.

(WSJ)

国連高官へ贈賄図る 旧政権「数百万ドルの用意」 査察担当者証言
 【ニューヨーク=長戸雅子】イラクの旧フセイン政権が,同国の大量破壊兵器査察を担当していた国連高官に,政権に有利な報告をする見返りに巨額のわいろの提供を持ちかけていたことが分かった.
 国連の「イラク石油食糧交換プログラム」をめぐる不正事件を調査している独立調査委員会(ボルカー委員長)の関係者の話としてロイター通信が十日伝えたもので,独立委員会が,一九九〇年代にイラクで活動していた国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)のロルフ・エケウス委員長(当時)から事情聴取して判明した.
 エケウス氏によると,国連との交渉を担当していたイラクのアジズ副首相(当時)が「正しい報告をすれば数百万ドルを用意する」と持ちかけたが,エケウス氏は「これは(母国の)スウェーデンでの仕事のやり方ではない」と断った.
 エケウス氏は先月,オランダのハーグで独立委員会からの聴取を受けた.
 独立委員会は二月に発表した暫定報告書で,プログラムの最高責任者だった国連幹部に「倫理的に不適切な行為」があり,不明朗な現金収入が存在することを指摘したが,この幹部が個人的に利益を得たかどうかについては結論を示さなかった.
 しかし,エケウス氏の証言は,旧フセイン政権が国連高官にわいろ攻勢をかけていたことを示すもので,こうした接触がどこまで行われていたのか,今後の調査が注目される.
 独立委員会の関係者はまた,同委員会が来週にも,同プログラムをめぐる不正関与の疑惑が浮上しているアナン国連事務総長の息子についても報告を発表する予定だとしている.

2005年3月12日2時50分(産経新聞)



 【質問】
 そもそも,実際に攻撃されるまではこちらから攻撃してはならないという論理だっていいだろう?
 【回答】
実際に攻撃されて被害が出てからでは困る.脅威を解消できる手段はある以上,黙視せず手を打つべき.
何しろ真っ先に狙われるのは俺たちだし,相手は前科だらけの札つきの悪党だ.
 
こう反論されたらどうするんですか?
(つか実際そう言ってるんだが)

(名無し四等兵 ◆clHeRHeRHo in コヴァ板)

 例えば北朝鮮問題でも,どこかのバカが言ったような,
「一発だけなら誤射かもしれないから,先制攻撃は絶対ダメー」
な態度では,国民感情が到底納得しないでしょう.



 【質問】
 その理屈が通るなら,アメリカは世界中あらゆる国を攻撃してもいいてことになるんじゃないの?
 今は親米的でもいつ牙を剥くか分からないんだから.
 【回答】
 そもそも,なぜイラクが先制攻撃理論の下の攻撃対象になったのかを完全に忘れてますよ,それ…….

 そしてまた,この「先制自衛容認」こそがアメリカ外交の最大の特色の一つであり,これを可能とするための国際法上の努力を,アメリカが一貫して行って来たということにも注目すべき.

 アメリカは国連憲章第51条に関しても,友好関係原則宣言に関しても,その批准に際し,一貫して
「これらは先制自衛を禁止しているとはいえない」
との解釈を主張.
 そして国際法には,一貫した反対国に対する慣習法の不適用の原則があるため,例え「先制自衛禁止」が国際慣習法化してしまっているとしても,アメリカの行う「先制自衛」については違法性を問えない.

 覇権国家はしたたかです.

(名無し四等兵 ◆clHeRHeRHo他 in コヴァ板)



 【珍説】
 いや〜驚いた.というか呆れた.「新・ゴーマニズム宣言13巻 砂塵に舞う大義」発売以降,親米論壇に連日舞い飛んだ「大義なんかいらない」の暴論の嵐!
 こいつら開戦前はアメリカの掲げる「大義」を大宣伝してたんだよ.
 完全論破されたらふてくされて居直るクソガキ以下の知識人の醜悪さを見よ.
 醜悪な日本人になりたくなかったら大義を手放すな.13巻を読め!

(時浦〔小林よしのりアシスタント〕from SAPIO 2004/3/24号,
p.57欄外)

 【事実】
 幼稚な歪曲やね.

 小林「この戦争に大義はない」
⇒反論「アメリカなりの大義はあるし,大義はそもそも重要ではない」

ってのが議論展開.

 このうち,
「(アメリカなりの)大義はある(し,)大義はそもそも重要ではない」

「大義はある」「大義は重要ではない」
と()を取り去って,
「大義はある」
「大義は重要ではない」⇒「大義なんか要らない」
と変換すると,あら不思議,さも矛盾しているかのような「論説」が一丁できあがり,と.

 こんな安っぽい歪曲しかできないアシスタントに存在価値あるの? もう少し優秀なスタッフを雇ったら?



 【珍説】
 戦争するのに大義も正義もいらんだと?
 今の国際社会が単なる「弱肉強食の戦国時代」と捉えるネオコンまがいの馬鹿な知識人が,何でこうも次々出てくるんだ?
 良くも悪くも「国際法」の時代じゃないか.
 今も日本人を原爆と都市空襲で100万人虐殺したような戦争ができるとでもいうのか?

小林よしのり from SAPIO 2004/3/24号,p.58欄外

 【事実】
 できますよー.
 小林よしのりクンが庇っていたターリバーンと同じ過激原理主義仲間のバシール・スーダン政権は,今も虐殺やってるよーん.
 ちょっと前には,ルワンダでも大虐殺があったしねー.
 その前には,セルビア人勢力による「民族浄化」ってのもあったねー.

 インドとパキスタンは,どっちも核戦争やる気満々だしねー.

 武力衝突にまで至らない「軽い」国際法違反なら,中国の潜水艦がしょっちゅう沖縄の海域でやってるけどー?

 結局,法的拘束力も強制執行機関もない国際法は,国際世論に訴えることしかできないから,ごく限定的な役割しか果たせないってことです.
 「ないよりはマシ」程度だし,しばしば国益のために無視される,あるいは言い逃れされてしまう,と.

 そんな実行力の薄いものに一所懸命しがみつこうとしている有り様を見ていると,憲法9条に一所懸命しがみつこうとしている自称「平和主義者」とだぶって見えてしまうんですけど.
「戦争とは,敵を強引にこちらの意に従わせるための武力行為である.
 武力には国際法とか慣習と呼ばれる,ことさら言うまでもないような,幾つかの自らの課した微々たる制限がついているが,それが武力を弱めることはまずない」

(カール・フォン・クラウゼヴィッツ)



 【質問】
 なぜそこまでアメリカを支持するのか?

 【回答】
 別に支持も不支持もしていない.
 アメリカの主張に一定の正当性を認めることと,アメリカの主張を支持することとは別問題.

(軍事板出張スレッド in コヴァ板)



 【反論】
>「大義がないから反対ということなら,大義があれば賛成なのか?」

 まず第一に,この文章は賛成と反対以外にも中立,無関心,態度を明らかにしない,などといった選択肢があるのを忘れています.
 反対の理由がなければ賛成だ,ということにはなりません.
 よってこの文章は,誤った二分法です.
 その上,もし仮に賛成と反対しか選択肢がないとしても,この文章は間違っています.

 その場合でも,「戦争反対の理由は大義がないからだ」という文章は,「大義があるなら戦争賛成」という文章と等価ではありません.
 なぜならば,その場合,「大義があるなら戦争賛成」という文章と等価な文章は,「戦争反対の唯一の理由は,大義がないからだ」という文章になるからです.
 「戦争反対の理由は大義がないからだ」,という文章にはなりません.
 よって,
戦争反対の理由の全て=大義がないから
という前提が正しくない限り,
「大義がないから反対ということなら,大義があれば賛成,なのか?」
という文章は間違っています.

 これは
「XはYである.Yである.故にXでもある」
という形式の論理であり,これは論理学で後件肯定の虚偽と呼ばれています.
 命題から論証なしで「逆」を導き,それを用いる論証です.
 このタイプの推論は,前件否定の虚偽と同じように,XとYが論理的に同値の時にしか成立しないので,恒真命題ではありません.

 よってこの文章は,
「シャチは哺乳類である.故に哺乳類はシャチである」
という推論と同じ論理構造の詭弁です.
 シャチが唯一の哺乳類でない限り,
「シャチは哺乳類である.故に哺乳類はシャチである」
という推論は成り立ちません.

 だから,仮に「戦争反対の理由は大義がないからだ」という前提が真であったとしても,その前提から「大義があるなら戦争賛成」と結論することは,論理的に誤りです.
 戦争反対の理由は,大義がないという理由からかもしれないですが,大義がないから以外の理由かもしれないし,大義がないからという理由からだけではないかもしれないからです.
(逆は必ずしも真ならず)

 よってこの文章は,論理に2つの間違いがあります.
 訂正を要求します.

 間違っている文章は枝葉末節の部分なので削除したところで,回答の要旨とは関係がありません.
 なので該当する文章を削除すべきです.

 参考ページ:
HPのURL goo辞書こうけんこうてい‐の‐きょぎ【後件肯定の虚偽】
Yahoo!辞書こうけんこうてい‐の‐きょぎ【後件肯定の虚偽】
ウィキペディア,詭弁

ss in FAQ BBS,2011/4/29(金) 18:1
青文字:加筆改修部分

 【再反論】
 一般論であれば,貴氏の申される通りかと存じます.

 ただしこの回答は,コヴァ(小林よしのり信者)相手の議論の一部分を取り出したものであることに,考慮する必要があるかと存じます.
 戦争の正当性という意味における大義について,太平洋戦争に関しては,コヴァおよびその「教祖」は,「日本に大義があった」とする主張を繰り返しています.
 そのことから,イラク戦争についても,「大義があれば賛成するのか?」とつっこまれているものです.
 このツッコミには,
(大義があってもイラク戦争に賛成しないなら,ダブスタではないか?)
(まず初めに反米ありきな小林にとって,大義がどうこうというのは,ただの口実に過ぎず,実態は「何が何でもイラク戦争反対」なのではないか?)
という意味が言外に含まれていると推測されるのですが,その点はいかがでしょうか?

2011.5.8
http://twitter.com/post_tokorozawa/status/67024327345831936
http://twitter.com/post_tokorozawa/status/67024450012450817
http://twitter.com/post_tokorozawa/status/67024705445576704
http://twitter.com/post_tokorozawa/status/67024862757138432

 確かに消印所沢さんの言うとおり,この質問と回答に至る全体の流れの中で捉えれば,自然に見えるのかもしれません.
 よって,詭弁と決め付けたのは,たぶん私の間違いです.
 謝ります.本当にすいません.
 しかし,私は,それでもこの私が問題にした文に関して,納得できない点があります.
 それは,この質問と回答だけで見れば,小林さんたちの意見をまるで知らない人が見れば,詭弁であると誤解しかねないのではないかという点です.
 もしよろしければ,この点について,御一考くださるとありがたいです.

Sss on twitter, 2011/5/8
http://twitter.com/siroseiz/status/67207988934479872
http://twitter.com/siroseiz/status/67208260582785024
http://twitter.com/siroseiz/status/67208371459198977

 もちろんその懸念はあります.
 その点では,貴氏の申されることも尤もです.

on twitter, 2011/5/9
http://twitter.com/post_tokorozawa/status/67610388493115392


 【質問】
 第二次湾岸(米・イラク)戦争は,証拠もなく大量破壊兵器があるかもしれない疑惑だけで攻撃したものですよね?
 それで戦争を起こして押し通す(大国としての)アメリカの行動は,これまでそれはいけないとしていた世界秩序を崩す行為であり,世界の治安を脅かすものにならないでしょうか?

 【回答】
 当時を考えると非常に難しいところで,
・国連による査察は「米軍の武力なしには機能せず」
・米軍が査察をイラクに遵守させるためだけのために,湾岸に大軍を貼り付け続けるにも限界があり,
・地上戦闘を不能にする砂嵐が迫っており,
・WMDテロを阻止できるほかの有効な手段を,他のどの国も提案できず,それどころか,責任を持って解決しようと言う国がなく
…といった状況では,戦争にならないほうがおかしいかと.

(私見を述べさせていただくなら,当時ロシアやサウディアラビアが提案していた,秘密工作によるサダム・フセイン政権転覆が,正面切った武力よりもマシなやり方だったと考えますし,アメリカはロシアの秘密工作を最大限サポートして,政権打倒を目指すべきだったと愚考します.
 ですがこれとて成功したかどうか,成功したとして,その後のイラクがどうなっていたか,は歴史のIFに属する話であって,
「確実にアメリカのやり方よりもマシなものとなっていたか」
については,保証の限りではありません)

 戦争抑止の観点から,イラク戦争を反省するならば,
・核査察において,必要最低限度の強制力(軍事力)を持たせる
というところになるのではないでしょうか.
 今,問題になっている北韓の核兵器開発も,KEDO合意のような安易な妥協はせず,核査察を断固として勧めていたならば,今日のような混迷を招かなかったでしょう.

 …そんな動き(強制力を持った核査察部隊の編成)は,全く見えませんけどね.

 イラク戦争の不当性を訴える方々が,本気で戦争抑止を考えているのか,疑問に思うのは,そういう点です.

消印所沢 in mixiに加筆

なお,上記文中の「私見」には,当方がプーチンびいきであるがゆえのバイアスが,無意識のうちに混入している可能性もありますので,これまた念のため
faq49m01dg02.jpg
faq49m01cl02.jpg
faq49m01jk03.jpg


 【珍説】
 共同体と言う社会構成の中に必要な了解があるはずだ.
 それを俺は道徳や倫理,合わせて大義と呼びたいのだが,国家,世界と言う枠組みでも同様のはずだ.
 そうでなければ暴力団になったもん勝ちじゃないか.

(擬似林間)

 【回答】
 あるはずだ,とかいう個人の主義主張など根拠にならんのだが.

 ここで踊っている林間もどきは,倫理や道徳のみが法の源泉だと思っているようだけど,実際はもう少し複雑な側面があるんだけどなー

 例えば自動車の右側通行の規則(外国では左側のくにも多いけど)とかを考えると,
「交通方向をどっちかに統一した方が,個人にとっても社会にとっても便益が最大化される」
という理由なんだけどね.
 法の源泉ってのは,そういう「社会全体の利益の最大化」という側面抜きでは語ることができないのよね.
 この辺り,ゲーム理論を勉強すればよく分かるんだけどね.
 というか,今時
「社会における法の源泉は?」
とかいう疑問に答えるのに,ゲーム理論を引かずに説明するのは殆ど不可能なんだけど.

 そういうゲーム理論を学ぶと,国際社会や国内社会は案外,ホッブズ的な社会契約論よりもロック的世界観の方が正確なのかも知れないね.
 まぁ,林間君もこれを機会にゲーム理論の一つでも勉強してみれば良いと思うよ.
 俺のお薦めとしては「社会科学の理論とモデル7 法律」(太田勝造,東京大学出版会,2000年11月)かな.
かなり難しい本だけど,いつもえらそうな口を利いている林間君ならこれぐらいは軽いよねw
いやマジおすすめだから,すごくムズイけど

軍事板

 また,「全世界共通な道徳・大義」などありえない.
 宗教一つとっても,対立の歴史だ.
 宗教ってのは,特に一神教の場合は,「神から与えられたもの」だ.
 異教徒を認めないのは,神がそれを認めないからで,人間の立場からはそれに反論することは許されない.

 その辺の感覚は,多神教に端を発し,長い歴史の中で多くの事物を取り込んできた日本人には絶対に,といってよいほど理解できない.
 はっきり言うが,「何とか違いの克服を」なんて,欧米やアラブではそういう発想すら浮かばん.
 ある意味で「寛容」というのは,日本人に極めて特徴的な感覚なんだよ.
 欧米のそれはパワーゲームにおける現状維持とか取引材料とか,そういう認識の方が良い.
 市民レベルはともかく,政府レベルでは絶対にそう.

軍事板


 【質問】
 大義が口実だろうが何だろうが,ブッシュは
「大量破壊兵器がある!」
と言って戦争をしかけて,今になって,
「大量破壊兵器を持とうとする意思がフセインにはあったから,この戦争は正当」
と言っているんだから,スリカエをやったことには違いないだろ?

 【小林主体思想】(別名,マルチスタンダード)

(中西輝政批判に続き,)
 だが周知のように,今回,国際社会の場で,
「フセイン独裁体制は人道上,打倒すべきか否か?」
などという議論は行われていない.

 「独裁体制」が問題だったのではなく,「大量破壊兵器の有無」が問題だったはずだ.

(小林よしのり「戦争論」3,p.105)

 【回答】
 WMDの有無は「WMDテロ予防戦争」の論拠の内の一つに過ぎない.

 スリカエを言うのなら,
「現状では将来WMDテロが起こる可能性が高く,それに悪の枢軸が関与する可能性が高い」(9.11テロ直後のブッシュ大統領声明)
だった戦争動機に関する議論を,その可能性を証明する論拠の一つである
「WMDがあるかないか」
の問題を議論のメインとするようスリカエたのは,サダム・フセインの開き直りのほうだったとも言える.
 死線を何度もくぐりぬけてきたサダムのほうが,ボンボン息子の小ブッシュよりもやり手だったと言うことだ.

(コヴァ板・軍事板出張スレッド)


 【珍説】
 大義は重要ではない,というのは,外交交渉を行う事を念頭に置いていない意見である.
 何も援軍や物資供給をさせずとも,中立を保たせるなども重要な課題であるし,戦争目的そのものを突っ込まれる要素を作るべきではない.

 また,終戦後であっても大義に穴がある事を理由に,諸外国にカードを売り渡すのと同義の事態が予測されうる.

 【事実】
 外交交渉を行なう相手が「大義」で動いてくれると思うことこそ,楽観主義.

 例えば,第2次大戦では米国は非戦闘民を殺しまくったわけだが,だれか強制力のある「突っ込み」を入れたか?
 圧勝が全てを書き変えるいい例さ.

 最後にスターリンのお言葉を.
「法王は何個師団持ってるのかね?」

(軍事板)



 【珍説】
 今はまだ突っ込みが,アメリカには入っていないだけである.
 一度アメリカが衰退すれば,わかりやすい大義の山が,束となってアメリカに襲い掛かってくるであろう.
 アメリカが常に最強であり続けなければならないのは,このような理由も含まれると考える.
 【事実】
 アメちゃんが衰退した暁にすら,大義無し戦争の非難など起きんよ.
 アメちゃんを支持したり批判したりする理由とは,アメちゃんに力が有り,それを世界で行使できるからだ.
 それを喪失した国を,あえて叩くのは労力のムダに過ぎん.
 かつてのアラブやインドで二枚舌外交やらかしたイギリスも,衰退後はあまり叩かれない.
 ソ連の脅威が衰えてからは,ソ連の大義無し侵略戦争の前科など,どの国も非難しない.
 西欧の大概の国は植民地支配を行ったが,殆どの国が植民地を手放した今,今更それを誰が批判するかね?

 現実がそうであるならば,大義やら正義云々で批判を繰り返す連中には言外の目的があると見るのが普通さ.
 まさか,ユダヤ人がネチネチと繰り返すドイツ非難や,朝鮮人・中国人が同様に未来永劫続ける事を宣言してる日本非難に,何も裏が無いなんて言わんよな?

(軍事板)



 【珍説】
 これまでのアメリカの勝利を支えてきたのは,国際的に支持を得られた大義ではないのかな.
 まずは大義を勝ち取る外交こそがメインであり,軍事的勝利はそれを処理したに過ぎない.
 ヴェトナム戦争でアメリカが負けたのも,大義がなかったからではないか.

 逆に,大義に沿った戦争は,勝利をもたらしている.
 南北戦争で言えば奴隷解放宣言による黒人兵の徴用であり,独ソ戦で言えばロシア文化の崇高性などを謳い上げたスターリンの演説(正式名称はよく知らないが)である.
 【事実】
 ベトナムでは大義が無いから士気が下がったんじゃない.
 大軍を突っ込んでも勝てないから,世論が「あれ? おかしいぞ」となったもの.
 ヴェトナム戦争でも最初は,米国世論はイケイケドンドンだったことを忘れてはならない.
 ヴェトナムで勝ちたいなら,大義をどうこう言うより,戦争のやり方を見直すべきであったわけだが.

 独ソ戦にしてもスターリン演説で勝ったわけではなく,戦車台数などの兵力差で勝ったのだが.
 南北戦争の黒人兵徴用など,南北戦争全体に与える影響から見れば,ほんの僅かなものだ.
 元々南部同盟は北部に対して国力差がありすぎて勝ち目がなかった上に,制海権を取られたのが大きい.

 大義を重要視しすぎて精神主義に走ってはいないかね?

(軍事板)


 【珍説】
 かくして「国益」の前に,正義は死に,戦争の道義は死に,戦争のルールが顧られることもなく,戦争犯罪は不問に付されることとなった.

 あの大東亜戦争の後の「東京裁判史観」は,遂に,覆すことができなくなった!
 勝者にのみ正義があり,敗者にのみ「悪」の汚名が着せられ,勝者が書いた歴史のみが残っていくのである

(小林よしのり「新ゴーマニズム宣言」 from SAPIO '03 Apr. 09,P.56)

 【事実】
 正義や道義が存在しなかったかどうかは,上述参照しとくんなはれ.

 「戦争のルールが顧られることもなく」の例(?)として,同じコマの中に,
・劣化ウラン弾による奇形の子供
・MOAB
・民間人殺傷
という文字と共に,それらの絵(グロ注意)が描かれていますが,劣化ウラン弾の害が確定していない内に,決めつけちゃってるのは,かつて南京虐殺問題を小林が取り上げていたときに,彼が非難していた「印象操作」やないんでっか?
 また,MOABは当時まだ実験段階で,1発のみイラク戦争に持ちこまれたのみで,使われてもいまへんで.
 別に,破壊力の大きい爆弾を使うこと自体は,戦争法違反ちゃいますし.

 民間人殺傷って言いますけど,これほど精密誘導爆弾を使うことで民間人の犠牲を最小に抑えようとした軍隊は,史上希でっせ.
 それにイラクのどの都市も無防備都市宣言してへんさかい,民間人そのものをターゲットにしてへん限りは合法でっせ.フセイン政権側にも,民間人を疎開させる義務があること,忘れとるんちゃいますか?

 小林は,重慶爆撃に関して,この無防備都市と防守都市の違いの議論もしてたんちゃいますか? 同じページで,
「あくまでも『大東亜戦争肯定』の立場でアメリカを見る」
言うてるやないですか.
 同じページの欄外には,
「情報操作で『信頼』を破壊する手口は,今まで全て見てきたので,くれぐれも情報操作に乗せられないように」
と書いてはるやないですか.
 欄外で情報操作に気ぃつけや言うてるくせ,本文で本人が情報操作してたらあきまへんがな.

 後段2行については,論理が飛躍し過ぎちゃいますか? イラク戦争で「勝者が書いた歴史のみが残っ」たという実例挙げとくんなはれ.

 ほんまに小林主体思想(マルチ・スタンダード)は,幾凡の人間にはついてけまへんわ.さっぱりわやややで.


 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 さらに今回のイラク攻撃で,
「政治と道徳は切り離すべきだ」と主張しているポチ公もいた.

 だが,そもそもアメリカが「悪の枢軸」という言葉で,道徳的に,あるいは倫理的に,相手国を断罪しているではないか!

(小林よしのり「戦争論」3,2003/7, p.108-109)

 【ツッコミ】
 相手の非道徳性,非倫理性を攻撃し,目的や行動の正当性を主張するのは,極めて現実主義的な戦略だと思うけど.(´ー`)y─┛~~
 ねえねえ「建前」って知ってる?

 イラク戦で息子を失った両親に向かって,
「貴方の息子は,貴方や貴方の友人がローンで買ったメイド・イン・ジャパンのSUVや,ハリウッドや東海岸のセレブが買ったハマーが,無駄にガブ飲みする石油を確保する為に死んだんです」
と言うか,
「貴方の息子は,自由主義社会の正義の為ウンウンカンヌン」
と言うか,どっちが聞こえが良い?
 世の中,魂の平穏を保ちつつ平穏に生きる為には,ある程度ファンタジーは必要ですよ.

(鳥坂 ◆nSC8E.bvp6他 in コヴァ板)



 【質問】
 政治における建前の是非を論じているのではない.それは話のすりかえである.

 例え建前であっても,米帝が善悪を口にし,倫理や大義を掲げた瞬間に,世界中のメディアからその倫理や大義を注目され,監視されることになるのである.

 その結果,米帝が,そのメディアを通じた国際世論の非難を恐れるあまり,倫理道徳に沿った行動を軍に強い,軍隊の行動を自ら縛ることになっている.
 例の捕虜虐待の一件での処罰などまさにそうであろう.

 このように,現代では道徳・倫理・大義が国益に優越せざるを得ない状況にあるのだが,にも関わらず,いまだに国益が大義に優越するなどと主張しているのが親米ポチであり,ゆえに現実を見ていない証拠なのである.

(タリバン警護隊 ◆x6mY8MRvkA)

……という意見があるが?
 【回答】
 う〜ん,そもそもねぇ. 道義とか気にせずに軍が戦略目的を達すればいいなら,ファルージャなんか絨毯爆撃で吹っ飛ばせるのよ.(´ー`)y─┛~~
 でも,それじゃあ余計に反発を買ったりテロがひどくなる恐れがあるでしょ.
 そういうのはタリ警のいう国益に全く沿わない訳.

 まあ,おいらはイラク戦争は大義がある派だからいいんだけどね.(´Д`)y─┛~~

 あ,タリ警が出した,その行動も国益を守る為にやってる事だからね.(´ー`)y─┛~~
 ただでさえ大規模のテロやらなんやら想定外の事が起こってるのに,これで士気がさがっても困るでしょ.
 タリ警はまず国益になるのに米が道義を守る事により国益を損ねているという例を出さなきゃ.(´Д`)y─┛~~ 

>このように現代では道徳・倫理・大義が国益に優越せざるを得ない状況にあるのだが,

 それこそ,
>政治における建前の是非
 でしょ.彼らは別に己に誓った大義に縛られているのではなく,人事部と有権者と議会に気を使っているんだから,充分に政治的手段でしょ.
 軍隊は政治の暴力装置であり,軍事的整合性より政治的側面が優先される事がある.
 同じイスラム教徒を吹っ飛ばしても厚顔無恥の大義無き無法者集団・馬鹿タリバンとは違って,制約が多いんだよ.

>国益が大義に優越するなどと

 「モノは言いよう」の大義が先に来るのではなく,国益を追求する行動を正当化する為に大義が後に来るのだ.
 ソレを取り違えると,ソマリア・モガディシオ(BHD)みたいに散々な目に遭う.

(鳥坂 ◆nSC8E.bvp6他 in コヴァ板)



 【質問】
 ファルージャを絨毯爆撃しないことで,陸上部隊への負担を増加させていることこそ,国益を損ねている行為ではないのか?

(タリバン警護隊 ◆x6mY8MRvkA)

 【回答】
>でも,それじゃあ余計に反発を買ったりテロがひどくなる恐れがあるでしょ.
>そういうのはキミのいう国益に全く沿わない訳.

 これ読んでるかい? まず落ちつこうね.OK? (´ー`)y─┛~~
 まあ,戦術レベルで絨毯爆撃で,君のいう陸上部隊への負担を軽減できたとしよう.

 んで,それでサドルが死んだらどうなるだろう?
 第一に,宗教指導者が殉教した場合に,ファルージャ以外のサドル支持層が活気付く可能性が十分あるよね.宗教指導者は生きてる時より殉教した時の方がなお怖い.
 道義的じゃないやり方に,他の宗教指導者が立ちあがる可能性もある.
 これだけでも大変なのに,他国のシーア派がイラク国内にぶりぶり入ってきたりしたら,広いイラク国内でアメリカはどうするの?
 テロ頻発. 新しい武装集団の出現.君がいったような負担の軽減なんて一瞬で立ち消えるよ.

 あとさ,イラク政府だって,アメリカがファルージャで武装勢力民間人ともども消し飛ばしたらどうなるかな? イラクの暫定政府にシーア派の人だっているのに快くなんて思わないでしょ.戦術的勝利を重ねて和解だってできるのに.
 アメリカはイラクの暫定政府にまで敵にまわすの?

 あと,イスラム国家の反発を受けて領海領空を使わせないと言われる可能性もあるし,兵站が大切な事くらい解るよね?
 上記に関連して,他の派遣部隊の撤退までありうるわけよ. 

 で,最後に国内の世論が撤退に向いたら,民主主義国家な以上どおいしくないでしょ? 選挙もあるし.

 もう少しさ,視野を広くしてデメリットを考えるようにしようよ. いやマジで(´Д`)y─┛~~

(コヴァ板)


 【質問】
 予防戦争が良いか悪いかは意見が分かれますが,この戦争が発生するに当たり,フセイン政権の側の落ち度は有りますか?

 【回答】
 予防戦争については,たしかに賛否ある.実際に大量の犠牲者が出てから行動したら,「予見できたのに放置した」と,より批判されるのが,火を見るより明らか.

 落ち度:

◎湾岸戦争後,幾度にも渡る国際査察への妨害.

 国連による査察をごまかして核開発を続けていたのが,フセイン・カーミル亡命事件により発覚しています.(酒井啓子「イラクとアメリカ」,岩波新書)
 逆に言えば,この事件がなかったら,NBC兵器開発が発覚していなかったかもしれないわけです.

 また,その前もその後も,イラクはゴネまくって査察を妨害し続けています.(アメリカ側の言い分による,査察妨害の数々
 イラク戦反対を唱える人々がスコット・リッターを引用する際に,一様に無視しているのが,スコット・リッター自身,猛烈な査察妨害を受けていることを記述していることです.

「アメリカの元諜報将校で,当時の査察団の中心メンバーであったスコット・リッターは,97年10月初めに自らが指揮した抜き打ち検査とイラク官憲との一触即発状態を,次のように回顧している.
『(イラクで最も機敏な組織である特別公安機関を,夜間,抜き打ち査察しようと決めた我々査察チームの車は)交差点に差し掛かり,イラク官憲側の随行車が不審を抱いていないのを見て……そろそろと黄信号の中を進んだ.共和国防衛隊の若い歩哨が飛んできて,我々を止めたが,同僚の車は進み続けた.……前進し続ける車の後を,イラクの随行車と交通警察のパトカーが追いかけ,……(他の)査察メンバーの車は,マシンガンを水平に構えた兵士に囲まれ,ロケット砲まで持ち出されていた.威嚇射撃が行われる音を聞く頃には,私は同僚に命じていた.
"止まれ.こいつらは銃を持っている"』」(「イラクとアメリカ」)

 さらに,怪しいと思われる場所にすんなり入れるわけでもありませんでした.証拠類を他に移すような時間稼ぎは幾らでもできたわけです.

◎自国民を虐待する指導者のいる国には介入してよし,という国際常識の変化を見誤った

◎そして,最終的には これ↓を無視したこと
 ブッシュ大統領,サダム・フセインに対し,48時間以内の国外退去を通告
http://usembassy.state.gov/tokyo/wwwhj20030319a1.html


 【反論】

 「諸君!」6月号で岡崎久彦,中西輝政,両氏が対談している.
 その中で,わしについての批判があるので反論しておく.

 2人は,イラク戦争の動機だったはずの「大量破壊兵器」の問題には一切をつぶって,開戦後に出してきた「独裁政権の打倒・民主化」というアメリカの都合としての正義を,本気で信じているのか,日本人に布教しようとしているのか知らないが,懸命にアメリカの正当性を話し合っている.

 フセイン政権が独裁だから「悪」という発想そのものが,幼稚だとわしは思うが…….

 「自由」「民主」という標語のみを絶対の正義と信じている姿は,かつての「所沢高校」の生徒を彷彿とさせる.
 それは「リベラル・デモクラシー主義者」 つまり,サヨクである!

 彼らの観点からは「歴史」というものが,すっぽりと抜け落ちている!

(小林よしのり from "SAPIO" 2003/6/11, P.56)

 岡崎・中西氏らポチ保守しょくんは,もう二度と
「日本人の歴史と伝統」
などと言わないでいただきたい.

 「自由」と「民主」を絶対の価値とするリベラリストとなって,かつての所沢高校のサヨク生徒と共に戦ってくれ!
「ケータイ持ってるか?」
「カメラ付きじゃねーと,自由と民主を謳歌してねーぞ!」

(同 p.62)

 【再反論】
 一言で言えば,小林の曲解.

 まず,この「日本人の歴史と伝統」の「歴史」とは,その前のページで述べられている,
「せっかくの2000年の歴史を忘却していく」
を差すらしいのですが,彼らに必要であるべき歴史的観点とはどのようなものなのか,全く説明されておらず,意味不明です.
 「伝統」に至っては何の説明もありません.
 日本の長い歴史に生まれた様々な伝統文化の,どれのことなんでしょうかね?

 ここでも,小林や社民党などがお得意の詭弁手法「具体的には示さず,曖昧なままにしておく」が使われているわけです.

 また,WMDは「動機」そのものではありません.
 動機は「WMD拡散とそれによるテロの防止」であり,WMDの有無はその動機の論拠の一つに過ぎません.
 後出しジャンケンで,そのようなスリカエをすべきではないでしょう.

 それはさておき,岡崎・中西両氏が「「自由」「民主」という標語のみを絶対の正義と信じている」箇所,「懸命にアメリカの正当性を話し合っている」箇所は,同誌の対談からは見出すことができません.

 「懸命にアメリカの正当性を話し合っている」と小林が紹介している部分は,おそらく「浅薄な反戦平和主義」への批判の部分を曲解しています.
 以下に引用します.

------------
中西 今夏のイラク戦争で目についたのは,ネオコンサーヴァティヴ(新保守派)というより,ネオリベラル(新自由主義)というかネオパシフィズム(新平和主義)の発作的な症状でしたね.
 とりわけ日本では,新聞・雑誌ジャーナリズムは反戦派と戦争容認派とが互角だったからまだしも,テレビは,仏独の『古い欧州』筋の情報に依拠しつつ,バランス感覚をすっかり忘れて連日反戦キャンペーンをやった.
 曰く,
『戦争になれば罪のない大量のイラク市民が傷つくから絶対戦争は避けるべきだ……,ラムズフェルド国防長官やウォルフォウィッツ国防副長官といったネオコンは危険だ!』
の一点張り.

 でも,NGOなどの調査では,全土制圧がほぼ終わった4月中旬の段階で,市民の損害は2千人程度で,英米軍の死者も150人程度だという.
 2千万人のイラク国民を人質にして立て篭もっていたフセイン一派を撃破したことを思えば,犠牲は極めて少なかったといえるんじゃないでしょうか.
 もちろん,亡くなった方々はお気の毒というしかないですが,昨年のモスクワ劇場占拠事件の時,800人の観衆を人質にとられたものの,百人以上の死者を出しつつも,テロリストと妥協しなかったプーチンに対しては,フランスもドイツも世界各国が『勇断だ!』と賞賛したことを思えば,今回のブッシュに対しても同じことが言えます.

 湾岸戦争のときと違ってフセイン体制を完全に打倒した点で,今回の戦争は『愚かな戦争』ではなく,まだ今のところ『賢い戦争』とまでは言えなくても,より明白に『正義のための戦争』であったとは言えます.
 人間は古来から『正義』と『平和』を天秤にかけて戦争を考えてきたのに,今回は戦争をする前からことさら『平和』や市民の犠牲のみを強調し,『正義』には一切目を瞑るようなことをテレビ・メディアが助長した.
 そのため,人類の叡智,人類の理性すらが損なわれかねない状況が生じたというのが,今回の戦争報道の特徴だった.
 それにつけても,いざ戦争が始まってからは,明けても暮れても,もう他のどんなニュースも後回しにして,
『市民の犠牲が……』
と異口同音に呪文のように唱え,これでもか,とばかりに負傷者の悲惨な情景を延々と映し出し,ニュース番組の有名キャスターたちが殊更な表情で何度も憂えてみせるのは,いささかうんざりというか,異様というしかありませんでした.

 岡崎 ワイドショーにはほとほと参りました.朝から晩まで浅薄な反戦平和主義と反米の繰り返しだけ.
 戦争が始まった時は,もうこれからはこんなことを聞かなくて済むとホッとしたくらいです.
 ところが開戦後は,
「人が死んだ.人を殺して良いのか」
の繰り返しばかり.
 こういう人に対しては,
「では,あなた方はサダム・フセインが毒ガスで殺したクルド人達や,処刑された反体制派,政治囚達にはなぜ今まで同情してこなかったのか?」
と言い返すだけで十分でしょう.
 フセインを打倒しなければ,まだまだ多くの市民の命が奪われていたのですから,それをストップしただけでも意味があった.

 中西 湾岸戦争が終わってから今日までの12年の間に,今回の戦争で亡くなった市民の百倍にも相当する20万人もの人々を,フセイン政権が粛清殺害していると言いますからね.
 それに,僅かではあれ,イラク市民が悲惨な被害に遭ったのも,その一部は,ロシアや北朝鮮がイラク軍に売り込んだとされる精密誘導妨害装置のせいだ,ということには全く触れていませんでしたね.
 イラク市民の犠牲を目一杯多くして,それを戦争に利用しようというのが,フセイン体制の狙いだったことははっきりしていたのに」

------------「諸君!」 2003/6号,P.32-33

 つまり,
「反戦平和主義に比べれば,まだしも開戦支持のほうに利がある」
と言っているに過ぎません.
 両氏の論旨には,論証が甘いように思われる部分もありますが,そういった点を批判するならともかく,具体例を示すこともなく,
「懸命にアメリカの正当性を話し合っている」
とするのは見当違いです.

 なお,この「浅薄な反戦平和主義」を批判している書として,小林よしのりの「戦争論」なる本があることも書き添えておきます.

 第2に,岡崎・中西両氏が「自由民主という標語のみを絶対の正義と信じている」箇所もまた見当たりません.
 「自由と民主主義」という言葉を使っている箇所はあります.
 しかしこれは,
「小林よしのりらの国際法の解釈には誤りがある」
ということから始まって,
「国際法は絶対平和主義を謳ってなどいない」
という説明の中で出てくるものです.

 掻い摘んで引用します.

------------
中西 しかし今回,多くの反戦論で共通していたのは,アメリカが『国際法を無視して戦争を始めた』という声でした.
 その中でもおやっと思ったのが,さっきの小林よしのり氏が,
『逼迫した危機に対する自衛であること.
 国連決議を経て国際的合意を得ること.
 少なくとも以上2つを満たさなければ,自衛戦争にならない』
のだから,アメリカがイラクを攻撃したのは『国際法違反』『アメリカは確実に侵略者』だと決め付けていることです.

 いずれか一つで国際法上は合法なのですが,おそらく間違ったマスコミの解説報道のせいかもしれません.
 専門の国際法学者も
『国家体制を打倒する戦争は国際法違反である』
と語る例が少なくないようですが,日本のマスコミや識者は,国際法というならもう少し勉強して欲しいですな.

 岡崎 小林さんは素人としてはよく国際法など,あまり役にも立たない学問を勉強する気になったと,誉めてあげたくはなりますがね(笑).

 中西 戦後の日本ではいつもそうなのですが,そもそも日本の国際法学者の議論には,根本に重大な欠陥がある.
 近代国際法の父と言われるグロティウス(1583-1645)は,『戦争と平和の法』で,
『国家主権は絶対的なものであり,内政不介入という原則は国際法の原理である』
と指摘しており,日本の国際法学者達は,この系統の議論を金科玉条にして,アメリカは侵略戦争を行ったと批判しています.

 しかしこの文には,『とはいえ』という但し書きがあって,
『人類の敵のような人道に反する体制,独裁,圧政に対しては,外から内政介入してでも打倒することは,許されるべきものと言うに止まらず,名誉な行為ですらある』
として,武器を取って介入すべきことを奨励しているのです.
 つまり,『主権国家』が集まって『国際社会』があるものの,それとは別に『人類社会』,ラテン語で言うところの『マグナ・ユニベルシタス』があり,文明の原理からして,人類社会の基盤を揺るがすような悪に対しては,内政介入が正当化されるとされていたのです.

 この考えは18世紀になっても受け継がれ,現代国際法の直接の始祖であるバッテルも,その著『諸国民の法』の中で,
『ある国の内部に耐え難い圧政が出現したら,全ての外国は,圧迫された人民のために武力をもって介入し支援する正当な権利を行使しうる』
と言っている.

 ところが20世紀になって,とりわけ国際連盟(1920年発足)ができてからは,そういう議論が無視されるようになってしまいました.
 戦後,国際連合も発足しましたが,20世紀はグロティウスが説くところの『戦争と平和の法』の但し書が無視された世紀でもあったんです.『文明』より『平和』が最大の価値とされてしまった.あまりに大きな戦争の惨禍を前にして,『人類的正義よりも,とにかく平和』となったのです.

 しかし21世紀には,戦争の被害はこんなに小さくなりましたから,この点でも20世紀は終わるわけです.

〔略〕

 また,かつて核大国で全体主義国家だったソ連が,一応『民主ロシア』となり,核の全面戦争の脅威はなくなった.
 そこで『戦争から平和へ』と,歴史のパラダイムが再びシフトするわけです.
 『正義』という言葉がいやなら,『文明』と言ってもいい.あるいは,この『文明』は,『自由と民主主義』と言い換えてもいいでしょう.

 今回のイラク戦争にしても,一昨年のアフガーン攻撃,99年のコソボ空爆にしても,『文明』を破壊しようとするテロ勢力やならず者国家への内政介入的な制裁戦争を行うことによって,人権侵害の続行と拡大を阻止することができるようになった.
 ですから21世紀においては,『文明の敵』『自由と民主主義の圧殺者』を打倒する『正義のための戦争』を正面から肯定する新しい国際法体系が再び求められているわけです.

 そこでは勿論,こういう制裁戦争への一定の歯止めは必要であり,それが国連安保理決議だという意見がありましたが,安保理は既に破綻した,20世紀の遺物だという事が,今回非常にはっきりしました.
 問題の一つは,まだしもましな圧政と耐え難い圧政の線をどこに引くか,ということだと思いますが,自国民の大量虐殺や,体制悪によって何百万という餓死者を出すのは,明らかに『耐え難い圧政』と見なされるでしょう.

 岡崎 『自由と民主主義』という文明的価値観が,かくも世界的に支持されるといった事態は,人類史上初めてでしょう.
 アメリカは,自由と民主主義,そして人間性を尊重する政治原則を,外交政策の上でも重視していくとの世界戦略を打ち出しています.
 これは,ウェストファリア条約前の中世において,カソリックが絶対的価値を体現し,カソリック以外は人に非らずと見なされていたのにも匹敵するほどのことだと思います」

------------「諸君!」 2003/6号,P.35-37

 さて,ここで問題.
 上の引用文の中で,「自由と民主を正義と信じている」のは誰でしょう?
 岡崎・中西?
 違いますね.
 「文明的価値観」が,そう信じるようになってきた,世界的に支持されるようになってきた(と,岡崎・中西が考えている),ということですね.

 繰り返しますが,中西らの主張を全面肯定するものではありません.
 疑問点もなくはない.
 しかし少なくとも,曲解を基にして「所沢高校の生徒と同じだ」「サヨクだ」「ポチ保守だ(これの定義はいまだに明らかではありません)」とレッテルを貼るような愚は冒したくないものですな.



 【珍説】
 「自由」と「民主」と言う標語のみを絶対の正義と信じている姿は,かつての「所沢高校」の生徒を彷彿とさせる.
 それは「リベラル・デモクラシー主義者」,つまり,サヨクである!

(小林よしのり from "SAPIO" 2003/6/11, p.56)

 【事実】
 「リベラルデモクラシー = 所沢高校」とかいう表現にも笑わせてもらいました.
 そもそもリベラル・デモクラシーってのは,民主政が過剰にならないように(大衆による多数者専制,人民独裁など),自由主義的諸原理(政治的代表制,法の支配,司法審査制など)を組み入れたもの.
 ヨーロッパが昔から築いてきた伝統的な知恵ですよ.
 それを所沢高校のプロ市民と同一視するって,アホすぎ.

 まあ「リベラルデモクラシー」の字面だけで判断しちゃったんだろうねえ.
 西部邁も,ちょっとは教育してやれないのか?

 あと,所沢高校の連中はイラク戦争反対でしょ.
 ああいう奴らって100パーセント小林に近い.
 「左翼=人権,自由」と未だに本気で思ってること自体,典型的な「古臭いブサヨ」そのもの.

 こんな理屈がまかり通るなら,北朝鮮は右翼で,アメリカと日本は左翼だということになるよ.
 だいたい左翼が,
「イラクの人権改善のために戦争賛成」
なんて口が裂けても言わんしね.

 以上,今週号でも人権の傘にきて言論の自由を謳歌しまくる反体制左翼漫画ゴー宣への批評でした.

(エセ保守監視小屋)


 【反論】

 中西氏は,アメリカを正当化するために,次のような趣旨の発言をしている…

 近代国際法の父,グロティウスは,『戦争と平和の法』で,
『国家主権は絶対的で,内政不介入は国際法の原理』
としたが,この文には,『とはいえ』と但書があって,
『人類の敵のような人道に反する体制,独裁,圧政に対しては,外から内政介入してでも打倒することは許される』
と書いてあるのです.

 だが周知のように,今回,国際社会の場で,
「フセイン独裁体制は人道上,打倒すべきか否か?」
などという議論は行われていない.

 「独裁体制」が問題だったのではなく,「大量破壊兵器の有無」が問題だったはずだ.

 ましてや一国の体制打倒をアメリカが決めていいという国際法はない.

(小林よしのり「戦争論」3,p.104-105)

 【再反論】
 上述の引用からも分かるように,小林のこの「引用」は,一部を抜き出して文意を歪曲する,お馴染みのトリックですね.

 原文の前後を読めば分かるように,小林が引用している部分は,実は,戦争と平和に関する歴史のパラダイス・シフトを中西が説明している部分の一部です.
 その一部だけを,いかにも中西がアメリカを擁護しているかのように,持論に都合のよいように小林は抜き取ってきたわけですな.

 その上で,
>「フセイン独裁体制は人道上,打倒すべきか否か?」
>などという議論は行われていない.
などと,小林の空想の中の「中西の論理」に反論していますが,そのような行為をしたところで,現実世界の中西に対する何の反論にもならないことは,言うまでもありません.


 【反論】

 アメリカが最後通告で言った
「フセインよ,降伏しろ.
 さもなくば戦争だ」
が,国際法の前例から見て無茶苦茶だと,さすがに岡崎氏も認めて笑っている.

(小林よしのり from "SAPIO" 2003/6/11, P.56)

 【再反論】
 後段を勝手に切って,文意を捻じ曲げているとしか思えません.

 「諸君!」 2003/6号の該当箇所(p.37最終行〜p.38)で岡崎が述べているのは,
「前例がない形式の通告だが,しかし,国際法は刻々と変わっていくものである」
ということです.

 以下に抜粋します.

岡崎 ところで,今回のアメリカのイラク攻撃が,旧来の国際法から見て違反かと聞かれれば,確かに違反の側面はある.
 だって,ブッシュの最後通牒は
『サダム・フセインと彼の息子は48時間以内にイラクを離れろ.
 さもなくば,彼らは,我々が決めた時間に軍事的衝突に直面することになる』
というものだったでしょう.
 国際法に則った最後通牒ならば,ハルノートではないけど,
『我々の条件はかくかくしかじかであり,これらを守らなければ攻撃する』
といった具体的な条件のものであるべきですが,今回のアメリカは,要するに
『フセインよ,降伏しろ.さもなくば戦争だ』
という主旨の最後通牒ですから,国際法の前例から見て,無茶苦茶と言えば確かにその通りです(笑).

 でも,憲法9条の解釈だって,制定時と今とでは変遷し,変わったように,国際法も日々変動して行くものです.
 例えば攻撃の前の2/26に,アメリカン・エンタープライズでブッシュが演説をしていますが,これはさっそくロンドン・エコノミストが『ニュー・ブッシュ・ドクトリン』と名付けています.
 掻い摘んで言うと,
『イラク攻撃の目的はイラク解放≠ナあり,イラクの自由化,民主化,ひいてはパレスチナ問題の解決,中東全域の自由化,民主化を目指す』
というのです.
 大量破壊兵器の破棄は,目的の一つでしかないという.

 こういった理念が戦争目的になってくるということは,過去にもあった.
 まず,大東亜戦争がそうですよ.
 昭和16年の開戦の詔勅では『自存自衛のための戦い』であったけれども,昭和18年11月の大東亜会議以降は,東アジアの植民地を独立させ,解放するのが最大の目的になったのは事実です.
 しかし当時,他国の植民地を解放するために侵攻すると言うのは,内政不介入を原則とする国際法違反の最たるものだったはずですが,大東亜戦争後は,逆に植民地解放は正義の戦争になった.
 だから,フランスやオランダが,ベトナムやインドネシアを再支配しようとしても結局上手くいかなかった.

 国連憲章にしても内政不介入を原則としているから,戦後初期の段階では,
『植民地を保有することに他国が干渉するのは国際法違反だ』
と思われていた時期があったんですが,こういうふうにパラダイムが変わり,国際情勢が大きく変動すれば,国際法や国連憲章の解釈も自ずから変化していく.
 今も,その端境期と言えるでしょう」

 大東亜戦争を巡る岡崎の解釈には疑問点もありますが,岡崎がどんな点を主張したかったかは,これを見れば自明でしょう.



 【反論】
 慣習法としての「国際法」や,日本が敵国条項に入れられている「国連」を,信仰してもしょうがないが,

 そうまで「国際法」が無意味だというのなら,
なぜ「国連を脱退せよ!」と主張しない?
 そう言わないのはなぜだ?

(同)

 【再反論】
 岡崎・中西も,国際法が無意味とは言っていないわけで.
 岡崎が「無意味」としているのは,「『国際法』『国連憲章』を絶対視して,この是非善悪を評論家的に論じ」る,例えば小林がやったような行為のことのほうなのですが.

中西 国際法や国連憲章が,あたかも国内の憲法や諸法の如く,国際社会に絶対的なものとして存在すると考える,『地球市民主義』というか『ネオ・ユートピア主義』も見られましたが,実はちっとも古くない,むしろ古色蒼然たる圧制容認の絶対平和思想で,全くナンセンスなこともはっきりしました」(P.38)

岡崎 結局,国際社会は主権国家の集まりであって,そこは『法の支配』があまり及ばない所だという認識を持つことが必要ですよね.
 現実に実効力を持たない『国際法』『国連憲章』を絶対視して,この是非善悪を評論家的に論じても意味がない〔強調:サイト管理者〕.
 意味があるのは,国際情勢の正確な潮流を掴んで,日本国と日本国民の利益を最大限に生かすような行動を,政府がとることです」(P.39)

 小林は,本当にこの対談を読んだのか?という疑問すら覚えます.
 まさか,スタッフに代読させ,小林は要点を纏めさせたものを見てるだけ,というんじゃないでしょうね?
 なお,SAPIO誌上における落合信彦のように,国連脱退論を唱える人も存在します.
 小林は,少しは自分の漫画が掲載されている雑誌の,活字の記事も読んではいかがでしょうか.(ちなみに「日本にも核武装を!」論でも,同じSAPIO執筆者である潮の寄稿を読んでいないことが丸分かりな主張を小林はしていますね.活字も読みましょう).
 他にも「日本は国連脱退か,改憲か,どちらかを選べ」と主張する小室直樹のような人もおります.
 5分,google検索しただけで見つかるわけですから,他にもまだまだいるでしょう.

 「脱退せよ!」と主張していない人間も,そうしないのは国際法に意味があると思っているからではありません.
 例えば古森義久は,その著書「国連幻想」において,国連に対する錯誤の認識を捨てるべきだと主張.
「国連を日本にとって多数ある外交の道具の一つとして扱わねばならない」
と,幻想を壊して現実を直視することを彼は訴えています.
 このように,「国連には使える部分もあるから,闇雲に捨てることもない」が,大勢ではないでしょうか.

 まして日本には,「国際連盟」から脱退し,戦争への坂道を転げ落ちた苦い記憶があります。
 歴代の総理大臣が幾度となく「国連を重視する」と発言しているのも,そうした民族的記憶があるからでしょう.
 編者の私見ですが,「あつものに懲りてなますを吹く」ではないかと思えるような姿勢が,国連に対する日本政府のそれにあるように思えます.特に「常任理事国入り狂詩曲」など見ていますとね.



 【反論】

 国連も国際社会の縮図であり,国益が衝突し,対話される場でしかないのだ.
 親米保守派も,結局,サヨクと同じで,国連を超越的存在とでも見なしていたのだろう.
 まるで子供である.

 今からでも遅くはない.
 「国連脱退」を主張しろ!

(小林よしのり「戦争論」3,p.107)

 【再反論】
 対話される場所なら,わざわざ国連を経由しなくとも,いくらでもチャンネルはありますな.
 したがって,そんな場でしかないのなら,別に巨額の国連拠出金を各国が出してまで,そんなものを維持する必要がないわけですが.

 それとですな,……
今からでも遅くはない.
「国連を超越的存在と見なしていた親米保守派」の名前を言ってみろ!

 勝手に自己のイメージする架空の存在を作りだし,それを批判して悦に入っている.
 まるで子供である.

 【珍説】
 わしが今回のアメリカの攻撃は,「国際法違反」で「侵略」であると主張したのを,親米保守派の中西輝政氏が見たらしい.
 岡崎久彦氏との対談で,わしを名指しで批判.
「国際法なんか役にも立たない.
 国連なんか非力だ」
と,まるで不良少年みたいに言い合っているのである.

(小林よしのり「戦争論」3,幻冬舎,p.104)

 【事実】
 上述のように,「不良少年みたい」どころか,中西は理路整然と反論しています.

 SAPIOで書き,戦争論でもまた触れるとは,よっぽど悔しかったんだね.


 【反論】

 そもそもアメリカのイラク攻撃の目的自体が,
「大量破壊兵器」から,
「体制転換」へスライドしてしまっている事実を見ても,
「覇権的先制攻撃」
=「侵略」
だった証拠である.

(小林よしのり「戦争論」3,幻冬舎,p.104)

 【再反論】
 プロパガンダの言葉が色々変わるのは,戦況の変化に応じてどこの国でもよくあることで,それ自体は何の証拠にもなりませんが,何か?


 【珍説】
 彼ら親米保守派は,もはや国際法も国連も役に立たない,だから日本は国際協調なんか捨てて,アメリカにだけ必死でついていけばいいのだと言うのだが… 

(小林よしのり「戦争論3」,p.105)

 【事実】
 言ってません.別項参照.



 【珍説】
 親米保守派は,その軍隊を軍隊たらしめる「国際法」を「役にも立たない」と,一笑に付しているのだから,わしはもう,呆れ果てた.
 これでは「戦争論2」で,「戦争になったら誰を殺しますか?」と言ってた連中と一緒だ.

(小林よしのり「戦争論」3,P.107)

 【事実】
 既述のように,別に一笑に付してません.



 【珍説】
 仮にも「保守」と,自称する者達が,
「アメリカと共に国際法なんか踏みにじってしまえ」と,
唱和しているのだから,わしはもう茫然自失である.

「こっわ〜〜〜〜〜〜っ
 まるで愚連隊みたいな人たちだな…」

(小林よしのり「戦争論」3,P.108)

 【事実】
 唱和などしていません.
 しかも,愚連隊になぞらえる印象操作までしているというオマケつき.
 悪質です.



 【珍説】
 中西輝政氏は
「人類の敵のような人道に反する体制・独裁・圧政に対しては,外から内政介入してでも妥当する事は,許される」
と,国際法にはあると主張している.

(小林よしのり from "SAPIO" 2003/6/11号,p.59)

 【事実】
 主張していません.

 【反論】

 そもそもアメリカのイラク攻撃の目的自体が,
「大量破壊兵器」から,
「体制転換」へスライドしてしまっている事実を見ても,
「覇権的先制攻撃」
=「侵略」
だった証拠である.

(小林よしのり「戦争論」3,幻冬舎,p.104)

 【再反論】
 プロパガンダの言葉が色々変わるのは,戦況の変化に応じてどこの国でもよくあることで,それ自体は何の証拠にもなりませんが,何か?


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