September 11 Attacks　九一一襲撃事件｜軍事板常見問題　テロ別館

　【回答】
　ローン・ジョセフ博士は，遅くとも96年には計画が練られていたのではないかと推測している．
　この年，
・FBIは過激派3人がテキサス州の航空学校で訓練を受けたとの情報を入手
・モハメド・アタがハンブルクで「遺書」を作成
・同じくアフガーニスタンを訪問
などが起きている．

　詳しくは朝日新聞アタ取材班著「テロリストの軌跡　モハメド・アタを追う」（草思社，2002/4/25）p.160-163を参照のこと．

　【質問】
　911テロの資金は，どのような経路を辿ったのか？

　【回答】
　アル・カーイダの「金庫番」とされるマームドゥーフ・マハムード・サリム（スーダン人）が，シリア系ドイツ人の貿易商，マムーン・ダルカザンリに銀行口座を委任．
　ダルカザンリから，モハメド・アタらの「ハンブルク・グループ」の「ロジティクス担当」である，モロッコ系ドイツ人の電気工学科の学生，サイード・ハバジに資金が渡り，そこから実行犯達へ分配されたと推測されている．

　実行犯の渡米後は，UAEの「ムスタファ・アルハウザウィ」こと，アル・カーイダの財務責任者，ムスタファ・アフマド（33）から，ドイツの「アハド・サベド」ことラムジ・ビナルシブの口座へ銀行振込みされ，次に彼から，アタら実行犯に送金されたとされる．
　また，アフマドから直接米国に送金される場合もあったという．

　詳しくは朝日新聞アタ取材班著「テロリストの軌跡　モハメド・アタを追う」（草思社，2002/4/25）p.30～を参照のこと．

　【質問】
　なぜ国内のアルカイダ・メンバーに対し，アメリカは手をこまねいていたのですか？　CIAやFBIという強力な機関があるにも関わらず，911テロを防げなかったのは，不自然ではないですか？

　【回答】
　理由は大きく5つ．
・世論が対策を求めなかったため．
・コミュニケーションの問題．
・「狼少年」効果
・アメリカの国防戦略上の陥穽
・司法制度の限界

　まず，世論の問題について．

　1998年，アフリカのアメリカ大使館がテロ攻撃を受けた際，アメリカ連邦議会はNCT（テロリズム対策国家委員会）を設置，対テロ政策を見直し，改善する法律を定める任務をこの委員会に与えました．
　委員会は報告書を出し，アメリカ政府がそれまで国内におけるアルカイダの活動を予測する手段を与えておらず，「アメリカ国民が大殺戮の犠牲者となるテロが起きる危険性は，日に日に大きくなっている」と強調しました．
　しかし，報告書が発表されるや否や，数々の「同盟」「連盟」「組織」などと名づけられたグループが，自由に「決定的な陰り」が差し始めた，と，この報告書を非難しました．アラブ・アメリカ協会は，「マッカーシーの暗黒時代に逆戻り」だとしました．
　また，クリントン政権の行政機関で，市民権担当の責任者は，NCT報告書を批判し，報告書の中でアラブ系アメリカ人は不当な扱いを受けている，としました．同報告書にはアラブ系アメリカ人について一言も触れられていないにも関わらずです．
　このように，法律改正案に対する風当たりはあまりに強く，法律が可決されることはありませんでした．
　結果は周知の通りです．

（J.-F. Revel著「インチキな反米主義者，マヌケな親米主義者」，
アスキー・コミュニケーションズ，2003 May 10）

　コミュニケショーンの問題もありました．

「対テロ戦争の遂行には，外国語の翻訳者や通訳者が欠かせない．アラビア語やペルシャ語といった言語で交わされた会話や通信の傍受・盗聴記録は，FBIにも毎日，山のように上がってくる．アルカイダの次なるテロを未然に防ぐためには，こうした膨大な記録をすべて（そして素早く）翻訳する必要がある．
　だが9.11テロから2年以上たった今も，翻訳者の不足は深刻だ．FBIのロバート・モラー長官は，重要な盗聴記録の翻訳を12時間以内に仕上げるよう指示している．では，その指示は守られているのか．本誌の取材に，あるFBI幹部は自嘲ぎみに笑って答えを濁すだけだった．
　ジョン・アシュクロフト司法長官の強い要請を受けて，議会は対テロ戦争に伴う人員の補強に膨大な予算を振り向けてきた．おかげで翻訳者も増え，FBIではアラビア語の担当者が，以前の40人から200人に増えた．
　それでも，まだ足りない．スタッフを雇う金はあっても，FBIの官僚的体質や伝統的な外国人嫌いの体質が，イスラム教徒や外国生まれの翻訳者の採用を阻んでいるようだ．
　翻訳者不足は，アメリカの情報部門全体の問題だ．せっかくスパイ衛星で怪しげな通信を傍受しても，誰もその内容を理解できないことが珍しくないという．
　9.11テロ後に議会が行った調査でも，未解読の通信記録が大量に残っていた（FBIが傍受したアラビア語の会話も，35%は未解読だった）．2001年9月10日に国家安全保障局（NSA：National Security Agency）が入手したアルカイダ工作員の会話記録には，「明日は行動のとき」という発言もあった（翻訳されたのは9.11のずっと後だった）．
　〔略〕

　翻訳スタッフを志願する人間がいないのかというと，そうでもない．9.11テロ以降，FBIだけでも約2000人の応募がある．しかし，20年もロシアの二重スパイとして活動していた捜査官の存在が2001年に発覚して以来，FBIはスタッフ採用時の身元調査に厳しい基準を適用するようになっていた．

　たとえば，ニューヨークにはアラビア語を話すユダヤ人がかなりいて，数十人が翻訳スタッフに応募したが，イスラエル国籍の放棄を拒んだため不採用となった．アメリカ国籍であっても，外国暮らしの長い人だと，経歴のチェックはむずかしい．こういう人たちを排除すると，残るのは全応募者の1割に満たないという．
　〔略〕

　いずれにせよ，アラビア語に通じていれば誰でもいいというわけではない．つい最近も，テロ容疑者を収容するキューバのグアンタナモ米軍基地で，翻訳者3人がスパイ容疑で逮捕されている．ある国防総省高官は，米軍が9.11テロ以降，十分な身元調査なしで翻訳者を採用してきたことを認めている．最前線に立つ軍部に比べれば，FBIのほうが慎重に立ち回ってきたといえるかもしれない．

〔略〕
　「翻訳されないまま眠っていた情報を私たちが見過ごし，そのせいで核弾頭入りのスーツケース爆弾がロングビーチで炸裂するような事態になれば」と，この捜査官は言った．「そうなったらFBIは終わりだ」
　終わりを迎えるのは，おそらくFBIだけではない」

（ニューズウィーク日本版　2003年10月29日号　P.38）

　無数の警告は，かえって意味をなさない．誰も本気で注意を払わない，すなわち「狼少年」効果を生み出すものでもあるようです．

　私は立ち止まってラムズフェルドに質問した．国防長官就任直後，ラムズフェルドは明らかに，アメリカが何らかの不意討ち攻撃を受けることを予期していた．それも，9.11の類の，全く予想もできないような攻撃を．どうして分かったんですか？，と私は聞いた．
　弾道ミサイル委員会（正式名称は『米国に対する弾道ミサイル脅威評価委員会』）の委員長を務めていたとき，重要な数カ国における3つの重要な「事件」と兵器開発について，アメリカの情報機関がどこまで情報を掴んでいたかを吟味した，とラムズフェルドは答えた．いずれの事件の場合も，情報機関は事件発生後5年ないし13年後にようやく実情を知ったことが判明した．「あんなに驚愕した事件のことを，我々は何年も知らずにいたわけだ」　ラムズフェルドは，この話になると熱が篭り，アメリカの情報機関が，自分達が何を知らないかを知らないとき，すなわち自分が「未知の未知」と名づけた概念に該当するときが，最も危険なのだ，と口角泡を飛ばして弁じた．
　〔略〕
「『既知の脅威』は心配するに当たらない」と，ラムズフェルドは言った．イエメンでアメリカ海軍イージス駆逐艦「コール」に対する自爆テロが行われる前に，幾たび警告があったのかと質問したそうだ．数千回，というのが答だった．
「信じられるかね！」　無数の警告は，かえって意味をなさない．誰も本気で注意を払わないし，一々反応していたら，アメリカはイエメンのような場所からは追い払われてしまう，とラムズフェルドは言った．

（B.ウッドワード「ブッシュの戦争」，p.423-424）

　さらに，２00１年９月１１日の米同時テロに関する国家調査委員会が2004/7/22に発表した最終報告書は，中央情報局（ＣＩＡ）や連邦捜査局（ＦＢＩ）の情報共有不足など政府の深刻な組織上の欠陥により、同時テロを阻止できなかったと結論付けており，１５の情報機関を統括する国家情報長官および国家テロ対策センターの新設を勧告。
　また、議会の責任も指摘し、国土安保に関する常設委員会の設置を提言。国家情報長官の下には、外国、国防、国土安保に関する情報をそれぞれ担当する，３人の副長官ポストを設けるよう勧告している。

　同報告書は、ブッシュ、クリントン両政権において「最も重大なのは、想像力が欠如していたことだ。指導者たちは（テロの）脅威の重大性を理解していたとは考えられない」としながらも、同時テロを防ぐことが可能だったとの判断は下しておらず、ブッシュ大統領、クリントン前大統領ら個人の責任問題には言及していない。

（時事通信，2004/7/23）

　第4に，以下のような戦略上の問題も指摘しうる．

　本来，アメリカ本土が直接大規模な脅威に晒されるということを，国家の国防戦略としてアメリカは考えてきていないわけです．
　アメリカの国防戦略は基本的には，アメリカの領土外で，アメリカに脅威を与えうる敵を，前方展開戦略と同盟戦略を最大限に駆使し，遠方で封じ込める，遠方で処理するというものでした．
　したがってカナダ，メキシコの国境はもちろんのこと，太平洋岸，大西洋岸とも，米軍は防衛せず，僅かばかりコーストガードがいるだけです．
　このようにアメリカ本土は，殆ど丸裸の状態なのです．
　もっとも，戦略核兵器による攻撃に対しては，アメリカは第2撃の核報復によって抑止しているので，その点では本土防衛をしていることになりますが，少なくとも国境を防御するという体制はとっていません．

　しかし，この1～2年，徐々に脅威が米本土に近付いてきているという非常に強い認識を，アメリカは持っていました．
　98年や2000年に起きた米国大使館，米軍に対して行われたテロ事件だけではなく，98年には北朝鮮のミサイル「テポドン」が日本上空を通過する事件もありました．
　アメリカは，やがて敵のミサイルが本土に届くかもしれないという脅威認識を持ち，本土防衛の欠陥だと深刻にとらえていました．
　その結果として，例えばNMD（本土ミサイル防衛）を真剣に考え始めたわけです．

　このようにアメリカの国防計画担当者が，本土防衛というものを，歴史的に初めて真剣に検討し始めていたわけですが，それがまだ実行されていないときに，911テロは起きてしまったのです．

（森本敏，安全保障問題専門家， from 「『新しい戦争』を知るための60のQ&A」，
新潮社，2001/11/15, p.14-16，抜粋要約）

　アメリカの社会事情や司法制度，中東系の人間には似た名前の者が多いことも，計画発覚を妨げる要因になったという．

　〔モハメド・アタらが借りていた〕デルレイ・ラケットクラブのようなコンドミニアムには，自分で部屋を所有して住んでいる住民もいれば，アパートのように所有者と賃貸契約して入居している人もいる．
　所有者が不在の間，短期的に借りている住民もいて，出入りが激しい．
　だからオリバー〔同コンドミニアム自治役員〕は，捜査当局が彼らの情報を事前に掴んでいながら放置し，結果的にテロを許してしまった可能性が高いと思っている．

　米国では，データベースの個人情報から捜査を始めることが多い．
　不動産屋車を購入したり，クレジットカードや銀行口座を持ったりすれば，住所や電話，青年月日，同居人，逮捕歴などの個人情報がデータベースに登録される．
　氏名が分かれば，素早く捜査が始められる仕組みだ．
　しかし，似た氏名の人があらぬ嫌疑をかけられる危険性も孕んでいる．
　中東系の人には似た名前の人が多い．捜査の初期には混乱も起きた．

（朝日新聞アタ取材班著「テロリストの軌跡　モハメド・アタを追う」，
草思社，2002/4/25）p.192-193）

　捜査官はムサウィのホテルを捜索し，ノート・パソコンを見つけた．
　しかし，パソコンのデータを調べるには別の令状が必要だった．
　具体的なハイジャック計画も出ていない状態で，内容をチェックすることはできなかった．
　関係各国に情報照会をしたが，フランスから
「彼はイスラム過激派で，アルカイダと関係のある人物と友人だった」
という情報が寄せられただけだった．

（p.212）

　なお，ある程度漠然とした情報は，アメリカ政府も掴んでいた，という情報もある．それが米国内だとは考えず，標的は在外施設等だと思っていたという．

　なお，小川和久によれば，ある程度漠然とした情報は，アメリカ政府も掴んでいたという．

　実は9.11の1週間ほど前，アメリカ政府は日本と韓国にある米軍基地，大使館などのアメリカの施設，滞在中のアメリカ市民などに，テロ警報を出していました．
　つまり，テロの「発生時期」に関しては，ほぼ正確に予知していたわけです．
　しかし，「発生場所」をまるで読み違えてしまいました．
　時期を押さえていた点で，アメリカの情報収集能力が世界のトップ・レベルだったことが分かります．
　それでも，場所を掴むことができず，攻撃されてしまった点に，テロ対策の難しさが現れています．

　なぜｱﾒﾘｶ政府が，本土がテロ攻撃されるという可能性に目を向けなかったかといえば，一言で言えばアメリカの「油断」に尽きるでしょう．
　事件直後，私がアメリカに住む安全保障の専門家から受け取ったメールには，ｱﾒﾘｶは2000年にハイジャック機の自爆攻撃に対する演習を行い，場合によっては大統領命令で撃墜することも視野に入れていた，という記述がありました．
　ですから，9.11に起こった出来事の一部については，前年の段階で想定していたわけです．
　しかし，演習では同時多発テロという形は考えずに単発と想定しました．
　また，国防当局だけの演習にとどまり，連邦航空局（FAA）との連携が考えられていませんでした．
　つまりは「ありえない」という思い込みがあったわけです．

　実際，9.11以前のアメリカの国内線のチェックは，韓国などと比べても非常に甘いものでした．
　ニューヨーク⇔ワシントン間のシャトル便などは，金属探知機とエックス線検査装置さえ通れば，新幹線と同じような感覚で利用されていました．
　緊張状態にある国で派，パスポートのチェックがない国内線は，チェックがある国際線より危ないので，チェックも厳しいというのが常識ですが，アメリカにはその緊張感が欠けていたのです．

小川和久著「日本の戦争力」（アスコム，2005.12.5），p.152-153

　【質問】
　CIA自身は，9.11テロ抑止失敗の原因を，どのように認識しているのか？

　【回答】
　2011.8.21に要約版が機密解除された，2005年6月に纏められた内部監査報告によれば，
〈1〉　CIAは1998年にアル・カーイダの徹底掃滅を宣言したのに，テロ対策予算を別の使途に振り向けた[1]
〈2〉　同時テロ前にアル・カーイダについての包括的な分析報告すらなかった，[1]
（3）　対テロ活動の優先順位を十分に引き上げず，アルカイダの追跡・掃討作戦の立案や実施にあたり，CIA部内や他の米情報機関との情報共有や連携が不十分だった[2]
　とりわけ，CIAと通信傍受を受け持つ国家安全保障局（NSA）との溝が，深刻なものだった[3]

としており，テロ発生当時に長官職にあったジョージ・テネットについては，
「アル・カーイダに対する広範な戦略を作らず，究極の責任を負う」
と糾弾し，懲戒処分を勧告している．[1][2]

　テネットはこれに対して21日，
「報告は完全な間違い」
であり，
「テロと戦うしっかりした計画が，9.11以前からあったからこそ，テロ直後の15日に，大統領に対策を進言できた」
と反論する声明を出している．[1][2]

　【参考ページ】
[1]2007年8月22日14時40分，読売新聞（ワシントン＝貞広貴志）
[2]2007年8月22日12時52分，毎日新聞（ニューオーリンズ＝和田浩明）
[3]2007年8月22日12時29分，産経新聞（ワシントン＝山本秀也）

　【質問】
　9.11以前に，ビンラーディンを逮捕する計画はあったか？

　【回答】
　2004/7/26のニューヨーク・タイムズによれば、ＣＩＡは１９９８年５月に、国際テロ組織の指導者、ウサマ・ビンラーディン氏の誘拐する計画があったが、綿密に準備され着手間近だった同計画をテネット長官（当時）が中止させたという．これは米中枢同時テロを検証した独立調査委員会の最終報告書から明らかになった。

　同紙によると、ＣＩＡは偵察衛星などで、アフガニスタン南東部、カンダハル空港付近にあるビンラーディン氏の施設を詳細に把握。現地協力者などと協力し施設を夜襲、ビンラーディン氏の身柄強奪を計画した。
　演習を繰り返し、同年６月２３日を決行日に設定。
　しかし、決行が約１カ月後に迫った５月２９日、アフガン人の工作員の生命が危険にさらされることや、計画が失敗した場合の影響が大きいと判断、テネット長官は作戦の中止を決めたという。

http://www.sankei.co.jp/news/040727/kok007.htm

　【質問】
　タリバーンのスポンサーが伝えられているようにパキスタンならば，なぜアメリカに同時テロを起こすアルカイダを飼っているのか？
　辻褄が合わないだろう．

　【回答】
　パキスタン版関東軍の暴走，パキスタン軍内には多くの過激原理主義者が浸透していると見られている．（アジア経済研究所他）

　【質問】
　911テロで亡くなった方の総数を教えてください．

　【回答】
http://www2s.biglobe.ne.jp/~t_tajima/nenpyo-6/ad2001m.htm
　上記に記載（公式記録）がありますが，具体的な犠牲者数は3044名（犯人グループ19名含む）となっており，内訳は，貿易センタービルで2811名，ペンタゴンで189名，ペンシルバニアで44名となっています．

　【質問】
　9.11テロによる被害はどのくらいか？

　【回答】
　世界銀行の推計に基けば，9/11テロの結果，それがなかった場合に比べ，世界のGDPは約0.8％低下し，貧困者数が1000万人以上増加している．

　ソースは「戦乱下の開発政策」（シュプリンガー・フェアクラーク東京，2004/8/3），p.45より．

◇

　丁度この事件のあったときに近所に住んでいました．
　始めは火事だと思ってました．
　Ｆ１４，Ｆ１５が１週間以上，昼も夜も無く交代で，ＮＹＣ上空の警戒に当たっていました．

　退去命令が出ていたんだけど，バリケードから移動すると戻れなかったのと，こんだけの戦闘機が居りゃ，ここに居た方が安全かもと思い，本当は駄目なんだけど，家にとどまっていた所，ビル倒壊後，オフィス器機の燃えた臭いが町中に流れて，頭はクラクラ，涙は止まらない，咳も，鼻水も，，
　アスベスト，ダイオキシン出まくりでしょう．

　夜に出歩くと撃ちますってアナウンスがヘリコプターから流れ，サーチライトで定期的に辺りが照らされてました．

　現場から狼煙の様な煙が２週間以上もの間，燻っていましたし．３ヵ月後かな，チャイナタウンへやっと入れるようになっていった時にも，まだその臭いが漂っていましたよ．

　印象に残っているのは，日本人の私は，地震，台風等の災害対応を応用して，事件後直ぐ，スーパーマーケットに行って，まず水，そして日持ちのするビスケット等の食べ物を買いましたが，アメリカ人は，どいつもこいつも，コーラ，卵，肉！を山程買い込んでいました．

A-ちゃん in mixi支隊

　【質問】
　日本は9.11テロについては第三者なのか？

　【回答】
　小川和久によれば，日本が平和主義を掲げており，また，同テロで多数の日本人も犠牲になっている以上，日本も同テロの当事者であるという．
　以下引用．

私は，日本は9･11テロの「当事者」であると考えています．
　次の2つの意味で，日本も日本人も，対テロ戦争の当事者なのです．

　１つは，日本が平和主義を掲げているからです．
　日本は，自ら平和を追求し，世界でも平和を実現していくと，憲法その他で明確に打ち出し，世界に宣言しています．
　ですから日本は，戦後60年間一貫して，世界平和を乱す者に毅然として立ち向かう立場だったはずです．
　私達は「平和は大好きだが，平和を乱す者があっても知らんぷり」というインチキ平和主義を掲げているわけではありません．
　だから，日本は21世紀の最大のテーマである国際テロを根絶していくためにどうするか，という責任が問われます．
　その責任を果たすためには，テロに対して戦わなければだめでしょう．
　日本は，「平和主義だから対テロ戦争とは関係がない」のではなくて，「平和主義だから対テロ戦争を戦わなければならない」のです．
　9･11の同時多発テロを，日本の原理原則である平和主義に対する重大な挑戦と受け止め，日本はテロとの戦いの先頭に立たなければならないのです．

　もう一つは，アメリカの金融中枢を狙った9･11テロで，日本人20人以上の命が奪われているからです．
　多数の日本人がテロの犠牲になった以上，日本がそのテロの当事者であることは当然で，国民を挙げて当時者としての自覚を持って行動しなければなりません．
　〔略〕
　9･11テロの裁きがついたあと，対テロ戦争をどのように戦うかは，各国それぞれの考え方で動くこともあるでしょう．
　しかし，裁きをつける段階までは，日本は当事者として主体的に最大限の努力をすべきだ，ということです．
　この意味から，日本も日本人も2001年の9･11以降，「テロとの戦い」に加わったのです．
　別の項で詳しく述べますが，日本政府が米英軍によるイラクに対する軍事制裁＝イラク戦争をいち早く支持したのも，「テロとの戦い」に参加しているという自覚があったからです．

小川和久著「日本の戦争力」（アスコム，2005.12.5），p.157-161

　平和主義を掲げているから対テロ戦争の先頭に立て，というのは，日本の実力，ことに対テロ情報収集能力から考えて，非常に重い負担ではないか？と愚考するのだが．

　【質問】
　911テロの思い出を教えてください．

　【回答】
85 ：可愛い奥様：2007/06/16(土) 15:26:50 ID:UO7GSVOQ0

　その日の朝5時に起きて，移民局前で長蛇の列の中で待っていた．
　結局移民局のビルには入れてもらえずに，係員が
「今日はこれで閉めます」
と言うので，
「えぇ？　なんで？」
と憤慨していた時，帰りの車中，ラジオのニュースでテロのことを聴いた．
　これはとんでもないことになったと思い，家に帰ってテレビをつけたら，ちょうど２機目が突っ込むところで更に驚いた．

212 ：可愛い奥様：2007/06/19(火) 13:53:38 ID:qspr2Jmk0

　夫と行きつけの居酒屋で知った．
　ほとんどの客が無言でテレビに見入っていた．
　東京はどうなるのかね，という言葉をかわしたのを思い出す．

既婚女性板，2007/06/19(火)
青文字：加筆改修部分

▼西日本シティ銀行顧問・進藤恒男の証言；
　読売新聞九州版より引用．

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「全国地方銀行協会（地銀協）の例会出席のため，東京の自宅でくつろいでいると，家族が
『西日本銀行の名前がテレビに出ている』
と教えてくれた．
　すぐ本店に電話し，情報収集を指示．
　本店に対策室を作った．
　一晩中テレビを見ていたが，当行の名前は消えなかった」
「地銀協の会合は欠席し，福岡に戻った．
　対策室には大勢のマスコミがいて，1時間おきに説明を行っていた．
　ニューヨーク支店の行員２人のご家族が，本店近くのホテルに待機されていたので，足を運んだが，心が重かった．
　米国に行員を直ちに派遣したが，空港閉鎖で到着に数日かかった．
　10月になって１人の死亡を確認，ニューヨーク市がもう一人の死亡を認定した」
「たいへんショッキングな事件．
　当時，支店は9月初めで営業を終え，残務整理の最中だった．
　将来を嘱望された行員が，世界を震撼させた事件に巻き込まれる不条理を感じた．
　95年1月の阪神・淡路大震災で，神戸支店が被災したのを教訓に，非常事態マニュアルを作ったが，こういう形で使うとは想像もしなかった」
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Q州ダンスィー by mailform
青文字：加筆改修部分

▲

▼　「軍事評論家だった父〔天川勇〕が，福田赳夫元総理や福田派の外交･安全保障問題のアドバイザーだったこともあり，私が生まれる前から家族ぐるみの付き合いだった」という天川由記子（帝京大学･短期大学助教授）の証言；

――――――
　〔9/11の〕あの日，貿易センタービルに旅客機が突入するシーンが，夜のニュース番組で繰り返し流される中，私はワシントンの友人に電話をかけた．
　海軍出身のトーケル・パターソンNSCアジア上級部長･大統領特別補佐官だ．
　彼は筑波大大学院への留学経験があり，学生時代から私とは親友だった．
　オフィスの電話は繋がらなかったが，彼は私がコールした携帯電話にすぐ出てくれた．
　私が，
「何かしてほしいことはある？」
と聞くと，パターソン氏はきっぱりと言った．
「テントや毛布は要らない．これは天災じゃないから」
「とにかく」と彼は続けた．「しかるべき人に世界に向けて，テロは許さないと声明を出してほしい．
　僕の考えはそうだけど，ライスさんに聞いてみる」
　ホッとした私が次に電話をしたのは，福田〔康夫〕官房長官の携帯だった．
「大丈夫？」
と何気なく聞くや，
「大丈夫じゃないよ！」
という声が跳ね返ってきた．
「アメリカ政府側と連絡がとれない．誰も捕まらないから，探しているんだ」
「パターソンに連絡つきましたよ」
と言うと，
「なんでパターソンを知っているんだ」
と驚き，
「おいおい，それで，パターソンは何て言ってるんだ？」
と聞いてくるのだ．

　一方，深夜に記者団に囲まれた小泉首相は，
「怖いね．予測不能だから」
と一言だけ言って，公邸に入ったという．
　一部マスコミが，
「日本人も犠牲になっているのに，他人事のような発言だ」
と批判するが，朝方，総理の発言は一転する．

　早朝，私は福田官房長官に電話をした．
「ライスさんも，テントは要らないと言ってますよ．総理から大統領へのお悔やみの電話も要らない．
　その代わり，しかるべき人にテレビに向かって，テロは許さない，アメリカを支持すると言ってほしいって」
　しかるべき人物が誰かとは聞かなかった．
　福田氏は慌てた様子で，
「な，な，何だって？　もっとゆっくり言ってくれ」
と，メモをとっている様子である．
　福田氏はそのまま小泉首相に伝えたのだろう．
　午前中の会見で，小泉首相は力強い演説を行った．
「極めて卑劣かつ許し難い暴挙であり，米国のみならず，民主主義社会に対する重大な挑戦である．
　こうしたテロ事件に対して，世界各国が力を会わせて対処していくことが必要だ」
　全世界に訴えかける言葉だった．
　その日，首相官邸では98年のテポドン発射事件以来の安全保障会議が開かれ，日本政府の対処方針が決められたのである．

　パターソン氏からすぐに電話がかかってきた．
「こんなに早く反応をしてくれてありがとう．大統領も深く感謝している．これこそ日米同盟だ」

――――――「週刊文春」2006/10/12号，p.28

▲

　【質問】
　911テロを利用して，アル・カーイダが株式相場で利益を上げた，というのは本当か？

　【回答】
　そうだと思われる不審な株式取引が，30銘柄にも上るという．
　例えばユナイテッド航空の親会社UALやアメリカン航空の親会社AMRの株が，テロの5日ほど前からプット･オプションで大量に売られている．
　これは，テロ被害を受けた航空会社や関連会社は株価が下がることを見越した上での信用売りであり，正確なテロ情報を持っている者だけができる「インサイダー取引」だという．

　詳しくは朝日新聞アタ取材班著「テロリストの軌跡　モハメド・アタを追う」（草思社，2002/4/25）p.145-146を参照のこと．

　【質問】
　911テロに際し，なぜプーチン政権はアメリカに協力的だったのか？

　【回答】
　江頭寛によれば911テロ以前から，アフ【ガ】ーニスタンのアル・カーイダ勢力を叩くため，アメリカと手を組みたがっていたからだという．
　それはチェチェン武装勢力の供給基地がアフ【ガ】ーニスタンのアル・カーイダだったからだという．

　詳しくは，江頭寛著『プーチンの帝国』（草思社，2004.6.22），p.237-238を参照されたし．

　【質問】
　中東のおばちゃんたちが，WTCが崩壊したとき狂喜乱舞した姿を見れば，それだけアメリカに対して恨み骨髄の思いがあったのだと察することができるのでは？

　【回答】
　フォト・ジャーナリスト長倉洋海氏によれば，それは犠牲者が出たことを知らなかった段階での映像で，死人が千人単位で出たことを聞かされると，彼女達も乱舞をやめ，悲しげな表情になったとか．

　エドワード・サイードの『オリエンタリズム』でも言及されていることですが，とかくメディアというものは，
「イスラーム対欧米」
の図式を作りたがる傾向があります．
　そのほうが「分かり易い」からね．

　でも，「分かり易い」ということと「真実」とは別物なのです．

消印所沢 in mixi

　【質問】
　9.11テロ後，欧米において，イスラーム教徒は迫害されているか？

　【回答】
　イスラーム教徒に間違えられた者が殺害されたり，モスクやイスラーム教徒への嫌がらせが後を絶たない．
　差別的発言をする議員すら現れている．
　以下，ソース．

　さて，今度の同時「テロ」事件以後，アメリカ人のイスラム教徒，アラブ系アメリカ人達は，差別や「憎しみの犯罪」（ヘクトクライム――特定の人種，もしくは宗教グループに対する無差別の暴行）の対象になり，にわかにメディアに取り上げられることになった．
　もっとも有名なのは，ネブラスカ州でシーク教徒が射殺された事件だ．
　シーク教はヒンズー教から分離した宗教であり，イスラム教ではない．
　殺されたシーク教徒はアラブ人でもなかった．
　しかしターバンや立派な髭などから，オサマ・ビンラディンの同類だと思われたのだろう．
　容疑者の白人の若者は，
「私はアメリカを愛している」
と，悪びれずに語ったという．
　カルフォルニア州ではエジプト出身のコプト（キリスト教の一派）教徒が何者かによって射殺された．
　メンフィスでもパキスタン系アメリカ人のグロサリ・ストア（雑貨店）が襲われ，店主が射殺されている．
　モスク（イスラム寺院）に豚の血がぶちまけられたり，車が突っ込んだり，ヘシャブ（頭の被り物）を着けたイスラム教徒の女性への嫌がらせなどが，後を絶たない．
　ニューヨークのマンハッタンでは，パキスタンやバングラデシュ出身のタクシー運転手のフロント・ガラス目掛けての投石が相次いだ．
　ルイジアナ州選出の下院議員は，
「頭におしめのような物を被り，それをファン・ベルトで巻いているような人物は，尋問され，身体検査されれるべきだ」
と述べた．
　世界貿易センターへの攻撃から僅か2週間の間に，4人が殺され，45人が暴行され，60のモスクが襲撃された，とアメリカ人イスラム評議会は警告した．

　〔略〕　ブッシュ大統領は，
「これはイスラム教徒に対する戦いではなく，テロに対する戦いだ」
と繰り返し述べてきたが，現実にはアメリカ国内のイスラム教徒は，異分子として排斥される運命を味わっているのだ．

（芝生瑞和（しぼう・みつかず）＝国際ジャーナリスト from 「だれでもわかるイスラーム」，
河出書房新社，2001/12/31, P.152）

　テロから1週間後，ロサンゼルス郊外で一発の銃声が響いた．
　胸を撃たれた雑貨店主，エジプト出身のアデル・カラス（48）は，店の玄関まで歩いて倒れた．
　犯人2人は逃げた．

　テロのあと，全米各地でアラブ系やイスラム教徒と見られる人々が殺される事件が相次いだ．テロの報復として無関係な人々が襲われたのだ．ヘイトクライム（憎悪犯罪）と呼ばれる．
　カラスは実は，エジプトに古くから根付いたキリスト教の一派，コプト教の信者だった．イスラム〔過激〕原理主義者達から迫害され，自由の国アメリカへ逃れてきた．
　その彼が皮肉にもイスラム教徒と間違えられて殺された．
　イスラム教徒が90％を占めるエジプトで，コプト教徒は7％だけだ．イスラム〔過激〕原理主義が蔓延ると，コプト教会は焼かれ，コプト教徒は虐殺された．
　南カルフォルニア大のリチャード･デクメヤン教授によれば，難を避けるためにこの30年，コプト教徒のエジプト脱出が相次いだ．全米には80ほどのコプト教会があり，信者は30万人いる．
　その多くは，より良い生活を求めて移住した人々だ．

（朝日新聞アタ取材班著「テロリストの軌跡　モハメド・アタを追う」，
草思社，2002/4/25）p.219）

　在独トルコ人会などによると，街角で
「イスラム教徒は国へ帰れ」
と罵られるトルコ人やアラブ系の人々が，一段と増えているという．
　在独トルコ人会のハッキ・ケスキン会長（58）は言う．
「イスラム教徒全体を潜在的な敵と見る傾向が出てきた．
　社会の中に対立が生まれる危険がある」

（同，p.118-119）

　【質問】
　アメリカの宗教右派は，9.11同時多発テロ事件の原因を，どのように見ているのか？

　【回答】
　比較宗教学者の藤原聖子（ふじわら・さとこ）によれば，通説的見方に加え，アメリカ社会の非道徳性が，イスラーム世界の反感を買ったためという解釈が目立つという．
　破廉恥なハリウッド映画や，宗教を馬鹿にするドラマが，アメリカから世界に向けて発信され続けた結果，イスラーム教徒が怒り，そのような不信心者たちを成敗しようとした，という解釈である．
　こうした解釈は，アメリカ国内のリベラル派を叩くのに具合が良い，という都合も見え隠れすると，藤原は指摘している．

　過激原理主義に近づけば近づくほど，ご都合主義になるというのは，洋の東西を問わない模様．

　【参考ページ】
『宗教と現代がわかる本 2010』（平凡社，2010.3.4），p.54

【ぐんじさんぎょう】，2010/12/10 20:30
を加筆改修

◆◆◆◆◆犯人

　【質問】
　9.11テロで逮捕された者はいるのか？

　【回答】
　「20番目の男」の他，スペインにおいて，事件の容疑者を支援したとして，イスラム過激派メンバー３人がテロ容疑で逮捕、起訴されている．

　同国検察当局は2005/2/14、、それぞれ禁固７万４３２５年を求刑する方針を明らかにしている。
　対象となるのは、２00１年１１月に逮捕されたシリア出身のイマド・ヤルカス（別名アブ・ダダ）ら。彼らは、国際テロ組織アル・カーイダのために資金収集やテロリスト養成にあたったとして逮捕、起訴された。

　米同時テロでは２９７３人が死亡しており、検察当局は１人の死亡につき禁固２５年として算出した。
　ただ、スペインには死刑も終身刑もなく、実際には重犯罪者を対象とした禁固４0年が適用される見通し。
　これまでも、バスク地方の独立を目指す非合法組織「バスク祖国と自由」のメンバーが１000年単位の禁固刑を求刑されながら、実際には減刑されてきた。

　３被告に対する裁判は、３月中旬に始まる予定。

（読売新聞，2005/2/15）

　また，米国で逮捕されたムサウィには，終身刑が下っている．
　以下引用．

米同時テロで唯一起訴されたムサウィ被告に終身刑

　［アレクサンドリア（米バージニア州）　３日　ロイター］
　２00１年の米中枢同時テロ事件で唯一起訴されたザカリアス・ムサウィ被告の裁判で，陪審団は３日，死刑ではなく終身刑の評決を下した．
　ムサウィ被告は，同時テロの実行犯ではない．しかし，連邦検察側は，同被告が身柄を拘束の際，テロ計画を当局に明かさなかったことを強調，これは直接実行したのと同じ罪になる，と主張していた．
　検察側のこの主張は，陪審員全員の同意は得られなかった．死刑には全会一致が必要となる．４日に裁判長から正式に刑が言い渡される．　
　ムサウィ被告は，米国で航空学校に通っていた際に逮捕され，米中枢同時テロ事件が発生した２00１年９月１１日には，獄中にいた．
http://www21.tok2.com/home/tokorozawa/faq/faq02w08.jpg

ロイター，2006年5月4日14時44分

　【質問】
　「アブカタダ」とは？

　【回答】
　ロンドンに住むパレスチナ人で，本名はオマル・オスマン（40）．
　ベツレヘムで生まれ，1994年頃英国へ政治亡命．
　その後，テロに関わったとして，ヨルダンでの欠席裁判で終身刑を宣告さる．
　911テロやビン・ラーディンを公然と支持．
　911テロの実行犯，リチャード・リードや，「20番目の男」ザカリア・ムサウィをアル・カーイダに勧誘したと見られている．

　詳しくは朝日新聞アタ取材班著「テロリストの軌跡　モハメド・アタを追う」（草思社，2002/4/25）p.135-137を参照のこと．

　【質問】
　911実行犯達は何故イスラーム過激原理主義に転んだのか？

　【回答】
　「アイデンティティの危機」説がある．
　欧米で中東の学生が女性とのトラブルか何かを経験し，「アラブ人を差別している」とひがむのは，ブルジョアのイスラーム教徒にはよくあることだという．

　また，アラブ社会では政治に無関心だった学生が，欧米に留学した途端，その自由な空気に触れて，初めて母国の抑圧体制を認識，政治意識に目覚めることもよくあるという．

　詳しくは朝日新聞アタ取材班著「テロリストの軌跡　モハメド・アタを追う」（草思社，2002/4/25）の「第2部」を参照のこと．

◆◆◆◆◆マイケル・ムーア

　【珍説】
　「華氏９・１１」と名付けられた，アカデミー賞受賞監督のマイケル・ムーアの新作の配給に待ったがかかった．配給会社の親会社のディズニーの圧力によるという．
　オサマ・ビンラディン氏の家系を含むサウジアラビア王族とブッシュ家の関連や，９・１１後のブッシュ政治を批判するドキュメンタリーだ．

《天声人語》，朝日新聞 2004/5/9

　【事実】
　マイケル・ムーア自身によるやらせ．
　以下ソース．

マイケル・ムーア監督は商売上手

Moore may be an Oscar-winning filmmaker and a best-selling author, but he is also a world-class provocateur. If he had not capitalized on the Disney distribution deal to promote his movie, that would have been news.
　マイケル・ムーアは優れた監督であるだけでなく優れた挑発者でもある．ディズニーに配給されないことは最初からわかっているのに，それを上手く利用してニュースにした．

UPI

マイケル・ムーア監督の新作映画配給禁止騒動，実はPRの為の自作自演だった

　先日ニューヨークタイムス1面で報道され波紋を呼んだ，”アカデミー賞受賞映画監督（ドキュメンタリー部門）”のマイケル・ムーアの
「マイケル・ムーア監督のブッシュ批判映画配給を禁止」
というニュース．

　この映画は911を題材にしたドキュメンタリー映画でブッシュ政権を批判しているがために，1日前に急遽ミラマックスから配給禁止を言い渡されたと主張していた．

　が結局，騒動から24時間もたたずにインタビューで
「カンヌ映画祭に向けて，自映画PRのため話題づくりとして行い，配給しないことは1年前から知ってた」
と，ムーア監督自らやらせを認めた．

http://abcdane.net/archives/001058.html

　【珍説】
　『華氏911』は，タカ派やイスラエルが有利になるような配慮を持って制作された可能性が大きい（田中宇）

　【回答】
　町山智浩は，この田中の見解に対し，以下のような疑問を投げかけている．

「まず，田中は，ムーアが「タカ派やイスラエルに有利になるよう」に『華氏911』を作ったとしながら，なんで彼がそんなことをしたのか，理由がどこにも書いてありません．
　それによってムーアがどういう利益を得るのか，その動機も書いてありません．
　もちろんネオコンと彼のコネクションを裏付ける事実も書いてありません．

　そこで，田中氏がその説のソースにしているネット記事を読んでみたら，
「『華氏911』を観たら，アメリカのイスラエル援助への批判が出てこないし，サウジを批判しているので，ネオコンにとって得な内容だと思う」
と書いてあるだけでした．

　田中氏は，ムーアが常日頃からイスラエルへの支援に徹底して激しく反対していることを知らないのでしょう．　　ムーアは『アホでマヌケなアメリカ白人』でアメリカのイスラエル援助を徹底的に批判しています（Ｐ208～）．
　また，『アホの壁 in USA』では「イスラエルは中東から出て行くべきだ！」と堂々と書いています．
　田中氏の文章を読むと，これについて田中氏が知っていてたとは思えません．

　田中氏は，おそらく『華氏911』も見てないと思います
（彼がこの記事を書いた段階で日本では試写は行われていないし，田中氏にも６月25日以降渡米した記録はない．ネットでダウンロードして観た可能性は否定できないが，もし観ていたとしたら，映画の内容について伝聞体で書くはずがない）．
　だって映画を観れば，「イスラエル援助を批判してない理由」はすぐわかるはずですから．
　理由は「とりあえず関係ないから」．
　これは同時多発テロとイラク戦争についての映画であって，たった二時間の映画だから，論旨を絞っているのです．

　しかも，田中氏は「『華氏911』はイスラエル支援に賛同している」という理由ではなく，「『華氏911』はイスラエル支援について何も言っていない」という理由で，ムーアがイスラエル支援を擁護していると論じています．
　この理論はあまりにムチャクチャです．
　田中氏の理論に従うと，「『華氏911』は北朝鮮を批判してないから北朝鮮の味方」ということも言えてしまいます．
　『マリみて』もイスラエル支援について何も言ってないけど，イスラエルの味方でしょうか？

　それに「華氏911」では，ネオコンのウォルフヴィッツは誰よりもヒドイ扱いを受けています．どのくらいヒドイかは観てのお楽しみ（ゲロゲロです）．
　あと，軍産複合体というか，軍需産業と石油開発企業のパーティに潜入した映像も強烈だ．

　こういう無責任な言説は世界的に批判にさらされるべきだ，と思ったら，ID:hiyori13 氏が英訳して国際的なさらしものにしてくれました．ご苦労様．
http://cruel.org/candybox/e0716moore.htm
　英訳の終わりにID:hiyori13氏がつけた訳者コメントが抜群に面白いのですが，邦訳すると言葉がキツすぎるのでみなさん頑張って読んでみてください」

（町山智浩アメリカ日記 2004/7/16，抜粋要約）

　田中宇は他にも幾つもの珍陰謀論を展開しており，2004年8月現在，今やソースとしては「問題外」のレベルにまで低下したと言えるだろう．
　仮にも国際ジャーナリストを名乗るなら，「綿密な取材」と「極力，客観的に行う分析」という基本に立ち返ることを，彼には提案しておきたい．

　【珍説】
　サウディアラビアの実力者達は，14億ドルもの金を，ジョージ・W・ブッシュ大統領の一族や知人と繋がりのある企業に提供していた．

（マイケル・ムーア「華氏911」）

　【事実】
　実際には繋がりは希薄．
　以下引用．

　これはざっと調べただけでも，ムーアの主張に無理があることが分かる．

　ムーアはジャーナリストのクレイグ・アンガーの著書「ブッシュ家，サウド家」を元に，14億ドルという金額を持ち出している．
　その内9割近い11億8千万ドルは，ただ一つの「供給源」からもたらされたもの．サウジ政府が90年代，同国の軍隊と警備隊を訓練した見返りとして，アメリカの軍事コンサルタント会社BDMに与えた報酬で，この会社がブッシュの父親と関係があるという．
　BDMは当時，有力な投資会社カーライル･グループ傘下にあった．
　同グループのアジア部門には，ブッシュ元大統領が顧問として名を連ねていた．

　やけに遠回りな「BDMコネクション」だが，とりあえずそこには突っ込まないでおく．
　この主張の最大の問題は，ブッシュ元大統領が顧問に就任する5ヵ月前に，カーライル･グループがBDMを売却した事実があることだ．
「ブッシュとBDMは何の関係もない」
と，同社の広報担当クリス・ウルマンは言う．

　カーライル･グループが，いわゆる「ブッシュ株式会社」の手先だというムーアの主張も怪しい．
　同社は他の有力企業同様，共和党にも民主党にもコネを持っているからだ．
　何よりムーアは，ブッシュ政権がカーライル･グループに利益を図ったという証拠を示していない．

　ブッシュ政権が，カーライル･グループの利益に関わる決定を下したことはある．
　だがそれは，カーライル側にとってマイナスになるものだった．
　カーライルの関連企業ユナイテッド･ディフェンスは，110億ドルの予算で米軍用のロケット砲システムを開発していたが，ドナルド・ラムズフェルド国防長官は，クリントン政権時代から続いていたこの計画を2年前に中止させたのだ．

　ムーアが問題にしている事柄全てが疑わしいという訳ではない．カーライル･グループのような企業やサウジ人が，米政府に与えた影響は，調べるに値する．
　だがムーアは，事実を歪曲し，都合の悪いものは省くことで，政治的議論を促すという自分の意図を台無しにしている．

（マイケル・イジコフ＆マーク・ホーゼンボール
in "Newsweek" 2004/7/21, p.36-37）

　まあ，よくあるデマゴーグやね．
　それにいまだに踊らされる人が多い，というのは，どうかと思うが．

　【珍説】
　9.11テロ直後，在米サウジ人を国外脱出させるフライトが認められ，テロ事件について知っている可能性のあったサウジ人を，FBIの十分な調査なしに出国させた．
　これこそ，サウジ政府がブッシュ政権に大きな影響力を持つ証拠だ．

（マイケル・ムーア「華氏911」，2004年）

　【事実】
　この点は，9.11テロ独立調査委員会が否定している．
　FBIが，要注意人物リストのデータベースでサウジ人乗客の名前をチェックし，中には面談まで行った人がいることも確認済み．

　確かにFBIの中には，出国を認めたサウジ人をもっと調べるべきだったという主張もある．
　それでも，これこそサウジ政府がブッシュ政権に大きな影響力を持つ証拠だという主張は，どうにも納得し難い．

　ホワイトハウスの誰がゴー･サインを出したのか，ムーアは触れていない．なぜか？　答は，その人物がブッシュでもチェイニー副大統領でもなく，クリントン政権時代から政府のテロ対策を担当していたリチャード･クラークだからだ．
　9.11テロ後に辞任してブッシュ批判に回ったクラークは，FBIの承認が得られたから飛行許可を出したと証言している．
「フライトは妥当なものだと判断した」と，クラークはABCニュースに語っている．「9.11テロ後，報復対象になることをサウジ人が恐れたのは当然だ．
　国外脱出した内の誰かが，FBIが関心を持ちそうな人だったとの証拠は今もない」

　当然ながら，ムーアはクラークの言い分は取り上げていない．　

　詳しくは"Newsweek" 2004/7/21, p.37（マイケル・イジコフ＆マーク・ホーゼンボール著述）を参照されたし．

　まあ，マイケル・ムーアというのは，「アポ無し突撃取材」――例えば映画「ボーリング・フォー・コロンバイン」でも，全米ライフル協会会長チャールトン・ヘストンに突撃取材している――で有名になった「米国版松村邦洋」なので，それを検証もせずに，偉い政治評論家のご託宣か何かのように信じこむのは，どうかと思うぞ．

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