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兵器FAQ目次


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Missile Index

「カラパイア」:【画像】 大陸間弾道ミサイル「タイタンI」地下格納庫廃墟

「週刊オブイェクト」◆(2012/05/01) 運動エネルギーロッド弾頭散開システム

●MD

「Defense News」◆(2012/05/15)NATO Determined to Move Ahead on Missile Shield: Chief
「VOR」◆(2012/05/02)NATO MDシステムのコンピューター・モデル モスクワでの会議で披露

「DoD」◆(2013/05/09) Officials Call for Continued Ballistic Missile Defense Modernization

「Military.com」◆(2013/05/09) Pentagon Plans East Coast Missile Defense Sites

「VOR」◆(2012/04/19)米国のMDをロシアのレーダーで強化

「VOR」◆(2012/05/18)米国のMDプロジェクトは「スター・ウォーズ」よりも悪い
>仏国際戦略研究所のボニファス所長は,米のMDシステム欧州配備は軍拡の再開をもたらすだろう,と指摘.

「VOR」◆(2012/11/29)メドヴェージェフ首相:米のMD問題が解決される見込みはない

「VOR」◆(2012/12/14)「グローバルMDは核軍縮を止める」,ロシア戦略ロケット軍司令官Z

「VOR」◆(2013/03/05) 中国の専門家:米国MDの展開はロシアの安全を著しく脅かす

「VOR」◆(2013/03/16) 米国 欧州MDの第四段階をあきらめ

「VOR」◆(2013/03/17) 米国のMD計画変更が米ロ交渉の新ラウンドへの道を開く

「VOR」◆(2013/04/06) 米国 グアムにミサイル防衛システム配備の準備完了

「アルファルファ」◆(2013/04/02) 米軍が朝鮮半島近海に派遣した「高性能Xバンドレーダー」の画像が想像以上に凄いと話題に

「週刊オブイェクト」◆(2013/03/19) GBI14基追加配備,SM-3ブロック2B開発凍結

「東京の郊外より・・・」◆(2013-03-16) 米本土のBMD能力強化を発表


 【質問】
 クラスタ・エンジンって何?

 【回答】
 エンジンのクラスタ化.
 おんなじエンジンを何本か束ねて使う事.

軍事板


 【質問】
 NASAのロケット打ち上げみたいに,弾道ミサイルも膨大なチェックリストや当日の天気などを見て,何度も発射時期を延期するのでしょうか?

 【回答】
 試験発射なら延期もありだろうけど,もし”実戦”になったらそんな事は言ってられないので,天候は無視する.
 その事による成功率の低下は織り込まれている.
 どの程度の悪天候までなら発射と,その後の飛翔に影響がないのか,は重大機密なので,公表はされてない.
 一応,ICBMの発射基地は極力,砂漠や乾燥平原など天候の影響を受けがたい地域を選んで建設されている.

 チェックは核ミサイルサイロの,打ち上げの担当と整備担当の将兵が行う.
 即応性が求められる弾道ミサイルは,ロケットに比べればチェックは簡略化されているが,かつての「大陸間弾道弾=衛星打ち上げ用ロケット」だった時代には,ロケットと同じ手間がかかった.

 ただ,最近のICBMは固体燃料のものが多く,これは液体燃料ロケットほどの事前チェックを必要としてない.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ICBMの配備は意味ありますか?
 領海のある国なら,SLBMに全部置き換えればいいのでは?

 【回答】
 米ソのような大国同士の核戦略として説明するならば,敵核戦力を目標とするカウンターフォースを考えるなら必要,
 敵国民そのものを標的としたカウンター・バリューだけであればSSBNだけでもおっけ.

 ICBMは固定サイロから撃つので,命中精度がSLBMよりも高く,敵ICBMのサイロも破壊できる.
 なので,核戦争の最初の段階でサイロに配備されたICBMは,双方で撃破されると考えられている.

 SLBMは移動する潜水艦から発射されるので,サイロを破壊するだけの命中精度を出すことは困難と考えられている.
 そのかわり,その生残性をもって報復戦力として機能することが期待されている.

 敵の核戦力を削る,というドクトリンをすっ飛ばして,国民そのものを殺しまくるぞ,であればSSBNの配備だけでも良い.
 ただ,12海里しかない領海にSSBNが潜んでいるわけではない.
 ま,領海が無いということは海も無いということではあるが.

 なので,早期警戒システムがあればとか安いとか言ってるこれ↓は.

>地上配備の方が,原子力潜水艦より金も手間もかからない.
>SLBMの方が奇襲性は高いが,
>対弾道弾早期警戒システムを確立しておけばその優位は打ち消せる.

大ウソ.
 早期警戒衛星があっても最初の核交換でICBMは全滅が確定していますから,対応もへったくれもありません.
 カウンターフォースによる核の直撃に耐えるようなサイロを作れば,生残性は保てるかもしれませんが,その場合はサイロの建設費がすごいことになります.
 過渡期としてはありえますが,米ソともSSBNを保有しました.

ふみ in 軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 米軍ではICBMを発射する際,ミサイル指揮官が2人同時に発車キーを回さなければ発射出来ないと記憶してますが,もし2人のうち片方が,何らかの事情でキーを回さない場合,その人はどうなるんですか?

 【回答】
 任務拒否で罪に問われる.
 場合によっては反乱行為扱いでとてつもなく重罪に.

 思想信条を理由に発射指令を拒否した場合は,保安要員によって連行され,予備の要員が充当される.
 思想信条の問題ではなく生理的,心理的な問題により任務が果たせない場合は,予備要員が替わりに任務に就く.

 また,ミサイル発射要員は,いざという時にそういった問題を起さないように,頻繁に健康(心身とも)チェックが行われ,自分で少しでも自覚症状がある場合は自己申告する事が義務付けられている.
 自己申告を怠って生理的,心理的な問題によって任務を果たせなくなった場合は,自己管理不充分,ということで規定にしたがって処罰される.

 実際,ミサイル発射要員の任務はストレスが大きく,肉体的,心理的理由で転属する(させられる)人はとても多いらしい.


 【質問】
 たとえ核兵器が無くとも,ICBMにより本土を叩き合う能力があるだけでは,抑止力にならなかったでしょうか?

 【回答】
 ICBMの可搬重量は1トン前後.
 半数必中界は現在でも100m,当時は1kmの単位だった.
 たとえ1000発のICBMを撃ち込んでも,やたら外れた1トン爆弾が1000発落ちるのと同じで,パニックは起きるだろうが,国の戦闘能力を奪うことはまったくできないし,都市部に撃ち込んでも,それほどひどいことにはならなかったろうね.

 弾頭重量という点ではV-2と同程度.
 ただ,あれは半数必中界が17kmと一桁大きいが,目標に当たらんという意味では同じ.
 ロンドンに500発以上落ちた,V-2による犠牲者は2万人ちょい,20万戸の家屋.
 重大な被害だが,それで終わってしまうなら,二大大国衝突の抑止力にはならないだろう.

軍事板,2001/04/22(日)
青文字:加筆改修部分


◆◆◆◆サイロ関連

 【質問】
 サイロの中からミサイルが発射されるようになっている国がほとんどなのでしょうか?

 【回答】
 ICBMのような大型のものは地下サイロ,中・近距離弾道弾については移動式が多い.
 これは戦訓として,中途半端な発射場は敵の空襲などで簡単に潰されてしまうことがわかっているから.

 移動式ってのはトレーラー数両で簡単に引っ張っていけるシステム.
 これを全て潰すのは非常に厄介なのだけれど,長距離ミサイルを発射するには,精度の点で不安が残る.

 一方,固定式にもメリットはある.移動式にくらべて設備が充実させられるとか.即時発射の態勢を備えたままでいられるとか.
 非破壊率の問題も,大陸国なら内地に作って防空設備も備えておけば良い.

 だから大国は,移動式と固定式の組み合わせで弾道ミサイルを保有してる場合が多い.

 ただ,固定式にするって事は当然,そこを弾道ミサイルで狙われる可能性が非常に高いわけで,だったら核に耐えられる地下施設にしてしまえば,怖くない.って発想なんですな.


 【質問】
 地下にミサイル基地を造る意味がよくわからないのですが.
 サイロ型にするほうが造りやすいのでしょうか?

 【回答】
 サイロ式の方が露天式より技術的困難度が若干高い.
 施設も,さらに大掛かりなものを建造する必要が出てくる.

 しかし地下に作れば,直撃以外は何とかなる.
 地上に立てておくと,周囲に被弾しただけで発射不能になりかねない.

 後は衛星監視から逃れやすいってメリットも.


 【質問】
 硬化サイロって何ですか?

 【回答】
 核弾頭の直上爆発に耐えるだけの防御力を持った弾道ミサイル発射基地.

 ICBMサイロの破壊は温度や衝撃波ではなく,クレーター形成に伴う地形変化で生ずる圧力によります.
http://www.inesap.org/bulletin17/bul17art17.htm
に推算表がありますが,通常の航空機バンカーの強化コンクリート破壊に必要な圧力の20倍から100倍以上の圧力が必要なようです.

 サイロの深さは簡単に言えばゼロ.
 地表に蓋があり,それを開けてミサイルを発射するわけですから.
 その蓋を含めて,地下の構造全体を変形破壊し,ミサイルの発射を不可能にするのが「サイロの無力化」というものです.

 ICBMサイロの詳細については,
http://govinfo.library.unt.edu/ota/Ota_5/DATA/1981/8116.PDF(PDFファイル)
が参考になるでしょう.

軍事板,2005/07/02(土)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 弾道ミサイルなどの目標設定って一カ所限定なの?
「複数の目標を設定しておいて発射直前にそのいずれかから選択する」
っていうことはできないのかな?

 【回答】
 まず,弾道ミサイルの照準には膨大なデータと複雑な計算が必要なので,そう簡単にはできない.
 土壇場で
「あ,別の目標を狙うことにしたから数値入力し直してくれ」
ってのは基本的に無理.

 で,複数のデータを入れとくと「目標の選択を間違えた」ってことが起きる可能性があるし,そもそも核戦争発生状態で大本の発射管制(参謀本部レベル)で
「ここの目標はこれに変更して,替わりにここの目標をこっちに狙わせて・・・」
なんてことはやってられない.
「A基地のミサイルはAA目標を照準している,B基地の…」
ってふうにある程度は固定化しておかなければ,攻撃計画が立てられなくなる.

 今もそうなってるのか分からないが,昔(20年くらい前)観たドキュメンタリーでは,発射管制要員はサイロの発射管制室に潜るときに,司令部で担当するミサイルの目標のデータを紙とデータパック(磁気テープかROMカセットかどっちかだと思う)で手渡されていた.
 多分それを入れ換えればミサイルの照準は変えられるのだと思うが,基本的には固定されてると思われる.


 【質問】
 飛んできたICBMが核弾頭装備なのか通常弾頭装備なのか見分けることは,以下引用の記事にもあるように,本当にできないのですか?

対テロでICBM改造と米国防長官=ロシア側は懸念示す

 【ワシントン27日時事】ラムズフェルド米国防長官は27日,アラスカ州フェアバンクス近郊でロシアのイワノフ国防相と会談した.
 米メディアによると,長官は米軍が保有する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の一部を改造し,テロ組織に対する先制攻撃に使用できるようにする計画を伝え,理解を求めたが,イワノフ国防相は強い懸念を示した.
 〔略〕
イワノフ国防相は,改造されたミサイルが発射された場合に核ミサイルと誤認され,標的となったテロ組織が核兵器で応戦する恐れがあると指摘.巡航ミサイルなど他の手段で対応することは可能と主張した.〔略〕

時事通信,2006年8月28日13時1分

 【回答】
 kojii.netによれば,実は可能だという.

 「ミサイルが飛んできたら,それが核弾頭装備か通常弾頭装備か分からない」と思いがちなんですが,実はちゃんと逃げ道があります.

 赤道上に陣取っている米軍のDSP,あるいはその後継となるSBIRS衛星はいずれも,赤外線センサーを使ってミサイル発射を探知します.
 そこで,ICBMを通常弾頭装備に改修する際にはロケット・モーターに手を加えて,核弾頭装備型とは異なる赤外線放射特性を意図的に持たせることで,核弾頭型と通常弾頭型を区別できるようにしよう,という手法があるのですね.
 ただし,どういう赤外線放射特性を持っているのか,という情報を事前に周知徹底しておく必要がありますが.

 ちなみに,ミサイルの排気炎を検知するセンサーには,赤外線だけでなく紫外線を使うモノもあります.
 主として航空機搭載用のミサイル接近警報装置が用いる方法で,確かAN/AAR-47なんかが該当します.

kojii.net@ココログ別館,2006/8

 ただし,ウソは書いてないんですが,この話が出てきたのは,通常弾頭型トライデントの絡みです.
 つまり,通常弾頭型トライデントを撃ったときに,中国やロシアが「すわ核攻撃」と早とちりしないように,わざと区別がつくようにしようということです.

 だから場合によっては,意図的にロケット・モーターを同じにして,紛らわしくする選択肢もあり得ます.
 あくまで,赤外線放射特性によって識別できるかどうかは,ミサイルをこしらえる側の良心に依存するということで…

井上@Kojii.net in mixi支隊

……というわけで,ヒヨコのオスメス鑑定士のような公的資格,「ICBM鑑定士」は将来的にもできそうにはない.


 【質問】
 ソ連製の弾道ミサイルに良く使われる「恒星補正付き慣性誘導」とかいう誘導方式はどのようなものなんですか?
 慣性誘導は分からなくもないけど,恒星補正というのが分かりません.

 【回答】
 文字通り,恒星の位置を観測して,ミサイルの現在位置を確認します.
 要するに,六分儀を使って星を頼りに現在位置を割り出す,というのを自動化したもの.

軍事板

 六分儀で天測ができるのは,水平面が既知で,正確な時間が既知で,ここで特定の恒星の角度を測ることで地球上の位置がわかるというもの.
 つまり,弾道飛行してるミサイルのプラットフォーム上は,水平の基準が存在しないので,天測によってわかるのはジャイロプラットフォームでわかる情報と変わらず,これに加速度の積算を加えてもINSと同じ機能しか期待できない.
 よっぽどジャイロがあてにならなかったのかな.
(広い宇宙空間で,地球の直径くらいの距離移動しても,恒星マップの相対位置は変化しないからね.)

千の蚯蚓の放送局 in 軍事板

 グロセキュからトライデントの天測に関する部分を引用.

upon completion of the TS rocket motor burn and separation, (TS rocket:最終段ロケット) the PBCS positions the ES, which is maneuvered in space (PBCS:ブースト後制御システム,ES:装備段) to permit the guidance system to conduct its stellar sightings.
Guidance then determines any flight trajectory errors and issues corrections to the ES flight path in preparation for reentry vehicle deployment.

 星の方向を知るのはスターラッカーを使うはず.
 まあ自動化された六分儀だが.
 ICBMやSR-71などに使われている

 そして,以下のようにあるので別に地球(の水平線)を見るセンサーもあるんじゃないかな.
 そうすると,普通の六分儀と同じように,正確な時計があれば緯度経度がわかるんじゃないかなと.
 推測で何だが一応.
あとスタートラッカーで水平線を捉えるものもあるようだ.

In these applications the precise attitude capabilities of these devices provide the fiducial precision reference for pointing of the vehicle and Earth or planet sensors.
http://www.answers.com/topic/star-tracker

軍事板

 水平線センサーは重要なポイントだと思います.
 それがあるんだったら,三軸のジャイロはいらないだろとさえ思うし.
ちょっと頭をひねってみたんだけど,最終段が燃え尽きてから後の弾道ステージでは,加速度センサーまったく動かないんですよね.山なりに頭が下がってくるのさえGセンサーでは検知できない.
 したがって加速度センサーだけだったら,最終段が燃え尽きた瞬間の進行方向に直進したと認識する.
 ただ,頭の悪いやつが北極星すら見つけられない現実を考えると,いきなり星野のどこかを見せられたセンサーが,宇宙のどっち方向か判定するのって,60年代にあったとすれば結構凄いなと思いました.おわり.

千の蚯蚓の放送局 in 軍事板

>それがあるんだったら,三軸のジャイロはいらないだろとさえ思うし.

 精度的にはそうかもしれないが,位置の決定には少し時間がかかるはず(少なくとも昔のものは).
 だからジャイロの校正を時々スタートラッカーでやるような感じ.
 また,上昇するときの方向制御にはジャイロ+加速度計は不可欠じゃないかな.

 少なくとも昔の軍用スタートラッカーは視野の狭い望遠鏡をぐるぐる回し,光のパルスを捉えた(星を捉えた)時間のパターンから方向を出すようなモノじゃなかったかな.
 うる覚え+推測でスマソが.

 SR-71のものは56個の星を記憶しているそうだ.
>Originally equipped with data on 56 selected stars,

 ICBMを開発したあたりで「さあ誘導をどうしよう」と思った連中が開発したんじゃないかな?
 ケコーウ高価だったはず>>軍用スタートラッカー

軍事板


 【質問】
 弾道ミサイルはターゲットが遠ければ遠いほど,命中率が下がったりMDによる撃墜率が上がったりするのでしょうか?
 それとも宇宙空間を経由しているからあまり関係ないのでしょうか?

 【回答】
 一つの傾向として,弾道ミサイルの命中精度は射程が長くなるほど落ちる.
 一概には言えないけど,遠距離を飛ぶ弾道弾は中間誘導しないとまともに当たらない.
 だから「遠ければ遠いほど命中させるのが難しい」

 ・・・・・ただ,法則性としては曖昧という印象だなあ.
 誘導装置の改良などで時代と共に精度が上がっていることも多い.

 弾道弾の描く放物線は,射程が長くなるほど大きくなり,かつ弾の落下速度が速くなる.
 そのためミサイル迎撃を考えると,長射程ほど迎撃はより困難になる.
 大陸間弾道弾なんかではそのために,わざわざ放物線の頂点を高くするものまでいる.
 ただし弾道飛行の時間は伸びるので,対処時間という観点からは少しだけ余裕ができる.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 弾道弾にはGPSはついてるの?

 【回答】
 弾道弾の誘導にはふつーGPSは使用しない.
 最近になって精度向上のために使用という話も出ているが,
 再突入後の制御となるため難度が高いし,核戦争下ではGPS衛星はじめ,衛星資産が使用できるかどうかも不明.

 だから慣性誘導を基本として,精度を上げるために天測を行うのが一流核保有国のたしなみ.
 軌道上でバスが天測を行って軌道,速度修正を行ってから弾頭を切り離す.
 多目標であれば,次の目標用にまた軌道,速度修正を行って次弾頭を切り離す.

軍事板

▼ 何しろ弾頭が核兵器だから,数百メートルほどズレても問題ないことが多いのです.
 弾着精度5mと50mは,核弾頭ミサイルの場合,超強化目標相手でない限り意味がない上,その精度を出すためには高濃度の大気中で超高速の弾頭をコントロールする必要があり,
減速してのんびり誘導 = 減速加速度で故障,しかものんびり落ちてきて被迎撃
超高速のまま超誘導 = ちょっと狂ったら大間違い,しかもGPS妨害されたら目もあてられない
だったら,目をつぶったまま慣性誘導の精度を上げる方がマシ,が現状です.

 また,ICBMを開発装備する国は,現状米ロとオマケで中国くらいですが,GPSはアメリカの持ち物なので,中ロはアテにしません.
 電波止められたら終わりなので.
 自前の計画は将来の話ですし.

 IRBMでは中国が「できる」と主張したりしてますが,これは単に中国に,慣性誘導精度を上げる基礎技術がないからで,まあ,カタログスペックを主張するためのいいわけと思ってください.

 その上で,時期的にGPSが利用可能だったのはアメリカのピースキーパーですが,そもそも戦略核兵器を使おうという状態で,GPSでもナブスターでも「外部の航法支援が受けられるか」というと,これが利用できないことは十分に考えられるわけです.
 ソビエトはキラー衛星というものも実用化していましたし.

 なんで,発射地点を基点にするINSと,恒星を天測しながら位置を知るアストロトラッカーで,必要な精度を出すことにしたわけです.
 発射した地点とお星様を妨害することはできないので.

 弾道弾がGPSを利用するケースが無いわけではないでしょうが,戦略核兵器としてのICBMがGPSを利 用するかというと,想定される使用状況は過酷の一語なので,おそらくは無いと思います.

 ただ,ミサイル・サイロ攻撃とか考える場合,爆発力を上げるよりは精度を上げたほうが効率が良いので,最近の弾道ミサイルは高精度化の傾向にありました.
 INSの高性能化はもちろん,星を見ることで軌道を修正する恒星天測装置を併用したりもしました.

 さらに精度が要求されるような場合は,ミリ波レーダーを併用することもあります.
 GPSも有力候補.
 ICBMじゃないけど,例えばパーシング2.
 最近だとトライデントを通常弾頭化した上でGPSを付けて,ピンポイント攻撃に使おうなんて案もありました.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 何故ピースキーパーはミニットマンⅢより先に退役したのでしょうか?
 搭載弾頭数,CEPなどはミニットマンより勝っているように思うのですが管理コスト等の問題でしょうか?

 【回答】
http://www.missilethreat.com/missiles/peacekeeper_usa.html
によくまとまっていますが,たしかに維持管理費用が最大の問題.
 しかも,多額の費用をかけて巨大な破壊力を維持する必要はなくなり,むしろ相互核削減を行う方が世界の安定,米の利益につながると考えられたからです.

 同時に上記サイトにあるように,精確でデコイ,ジャミング機能も持った10MIRVはソ連(ロシア)に対して大きな脅威であり,一撃目でソ連のICBMサイロを壊滅させる可能性があると考えられました.
 これと米原潜によるロシア戦略原潜への常時追尾行動,米空軍の圧倒的優勢からピースキーパーの存在は,逆にソ連の核の引き金を軽くする(全部たたかれる前に撃ってしまえ)可能性も指摘されていました.


◆◆◆◆飛翔コース関連

 【質問】
 大圏コースって?

 【回答】
 大圏コースとは,地球上の2地点間を結ぶ最短距離.
 地球儀でヒモ持って2地点間を結ぶと求まる.
 始点及び終点から見た場合,コースは直線になります.
 地球断面から見たら円弧.

 ただし,メルカトル図法などの地図図法によっては,いろんな曲線に見える(心射方位図法なら直線)

 北韓からアメリカ本土を攻撃するなら,千島列島~アリューシャン諸島経由するのが一番近道なのは,大圏コースだからですね.

軍事板

 なお,今回,明け方に発射されたことで,人工衛星という主張は説得力を失ったという.
 以下引用.

 〔韓国〕軍当局関係者は,北朝鮮が「発射したのは人工衛星だ」と主張する可能性があるとみているが,明るい日中を避け明け方に突然発射したことからも,人工衛星とする主張は説得力がないと話している.

聯合ニュース,2006/7/5


 【質問】
 これに書かれている事は本当ですか?

 ※先日,What Newで,北朝鮮はアメリカを狙うには,東に向けて弾道ミサイルを撃つしかないと書いたら,北朝鮮から北極圏の上空を経由して,アメリカ本土を狙うのが常識というメールを頂きました.
 そのことですが,弾道ミサイルが進歩したロシアや中国なら,そのような弾道でアメリカを核攻撃すると思います.
 しかし,未熟な北朝鮮の弾道ミサイルは,射程を伸ばすために,地球の自転を利用して東に向けて撃つしかないという意味です.テポドン発射のように日本海を飛び越え,東北地方の三陸海岸の上空を通過する東コースです.
 アメリカが空自の車力駐屯地(青森県)に移動式Xバンドレーダーを配備するのはそのためです.

神浦元彰 from 「J-RCOM」(06.5.19更新分)

 【回答】
 地球の自転を利用して東に向けて打ち上げれば,確かに射程は伸びます.

 地球の自転方向(東向き)に向けて発射すると,自転速度が加算されますので,ロケットは宇宙速度(地球周回軌道に乗る第1宇宙速度,太陽周回軌道に乗る第2宇宙速度)に達しやすくなります.
 故に宇宙ロケットは,なるべく赤道に近い(自転速度が地表で最も速い)場所から東に向けて打ち上げるのが一般的です.

 弾道弾に関しても,地球の自転は射程に影響します.
 自転方向に撃った場合と逆方向に撃った場合を比べれば,自転方向の方が射程が長くなります.

 等速運動を行う慣性系では,例えば,電車の中でボールを投げた場合,電車の外から観測すればボールの速度は電車の速度が加算されていますが,電車の中から観測した場合,ボールの速度は投げた速度のままである,そして飛行距離も変わりがありません.

 一方,回転している系では,慣性系の例を直接当てはめる事は出来ません.
 もちろん地球の自転が問題にならないくらいのスケールの現象では近似的に成り立ちますが,地球を4分の1周もするような弾道弾では差異が大きくなります.
 同様な違いが現れる現象にボールを真上に打ち上げる例があります,
 速度が第2宇宙速度以下の場合地表に戻ってくる訳ですが,慣性系の例ではかならず元の打ち上げた地点に戻りますが,実際に地球から打ち上げた場合は第二宇宙速度に近づくにつれ着地点が自転方向の後方にずれていきます.

 実際 極端な例として赤道から東と西に撃つ場合を考えると,
自転周速度が460m/s程,ロケットの速度増分を7km/sとした場合
東に撃った場合の射程(地表面径路,自転による地表の移動を考慮しない)は11800km程
西に撃った場合の射程は7000km程
になります.
 その間の自転による地表の移動量が800km程,
 大雑把にですが両者の実際の射程差は3200km程にもなります.

 最適弾道を取った場合の亜軌道径路の地表面投影径路長(射程)は,
Lmax:射程(地表面経路),
v0:初速,
V1:第一宇宙速度(7.9km/s),
R:地球半径(6350km)
vr=v0/V1
として,
Lmax=2R・asin(vr^2/(2-vr^2))
となります.

 式を見れば判るように,第一宇宙速度に近づくにつれ射程は急激に伸び,その間の自転移動による補償効果からの乖離が大きくなります.

 適当にシミュレートしつつ解説図を作ってみますと,次のようになります.
faq21b.gif

 というわけで,確かに真東に発射すると,アラスカ大圏コースに比べて200kmほど射程が伸びてはいるんですが・・・
 それを利用するためには,軌道修正用に大量の推進剤が必要で,その質量増の分ペイロードが減らされるわけで・・・
 弾頭積めなくなるよね・・・

 ところが神浦氏の主張では「米本土を狙うのに真東に撃て」なのだから,途中の飛行経路で確実に大きな旋回が必要となる(既にこの時点で弾道ミサイルには不可能な機動…)
 つまり,大きな旋回を行って消費する燃料,増大する必要飛行距離を上回るレベルでの射程増加が無いといけない.

 5000km級の射程のテポドン2を想定した比較でこれでは,微小過ぎ・・・神浦氏の主張は,やはり無理があるなぁ・・・

 というか,弾道ミサイルを北朝鮮から東に向けて発射してアメリカ本土に着弾させる場合,ミサイルは大幅な軌道修正を行いつつ飛行する事になりますが,もしそういう事が出来る弾道ミサイルがあるならそれは高度な技術力で造られた兵器です.
 ・・・だって飛行経路の観測から着弾地点を算出する事が非常に困難になるのですから.
 ちょっと北朝鮮が開発できるとは思えません.

>テポドン発射のように日本海を飛び越え,東北地方の三陸海岸の上空を通過する東コースです.

 1998年に三陸沖に着弾したテポドン発射実験は,単純に射程距離の関係から着弾地点(実験である以上,精密にポイントを観測する必要がある)を其処にせざるを得なかったというだけの話です.
 冷戦時代ですら北朝鮮が長射程ミサイルを開発する事を認めていなかったロシアや中国が着弾地点の提供を行うわけが無い以上,東か南の公海上に向けて撃つしかないのです.
 そして,人工衛星打ち上げという言い訳を使う以上,東を選ぶのは当然です.

 以上により,

>アメリカが空自の車力駐屯地(青森県)に移動式Xバンドレーダーを配備するのはそのためです.

は間違いです.

JSF,あげ他 in 週刊オブイェクト,およびそのコメント欄,2006年05月19日

 しかし,神浦氏の想定する条件を備えた兵器システムは存在する!!

 ただしそれは弾道ミサイルではない.

 旧ソ連の秘密兵器・・・部分軌道爆撃システム(FractionalOrbitalBombardmentSystem,FOBS)がソレだ.
 これは核弾頭を第1宇宙速度まで加速させ・・・つまり衛星軌道に乗せて,その後に再突入させる.

 これならば東に向けて撃つ事に大きな意味が出てくる.
 変針についても,軌道に乗せる時の制御で再設定が可能だ.ただその場合,部分軌道ではなく完全軌道にした上で適当な位置で再突入を図る…….

        ,.ィ , - 、._     ,
.      ,イ/ l/      ̄ ̄`ヽ!__
     ト/ |' {              `ヽ.            ,ヘ
    N│ ヽ. `                 ヽ         /ヽ /  ∨
   N.ヽ.ヽ,            ,        }    l\/  `′
.  ヽヽ.\         ,.ィイハ       |   _|
   ヾニー __ _ -=_彡ソノ u_\ヽ,   |  \    つまり神浦氏は,
.      ゙̄r=<‐モミ、ニr;==ェ;ュ<_ゞ-=7´ヽ   > 
.       l    ̄リーh ` ー‐‐' l‐''´冫)'./ ∠__  北朝鮮が軌道爆撃システムを完成させた
       ゙iー- イ'__ ヽ、..___ノ   トr‐'    /
       l   `___,.,     u ./│    /_ 事に気付いたんだよ!!!
.        ヽ.  }z‐r--|     /  ト,        |  ,,
           >、`ー-- '  ./  / |ヽ     l/ ヽ   ,ヘ
      _,./| ヽ`ー--‐ _´.. ‐''´   ./  \、       \/ ヽ/
-‐ '''"  ̄ /  :|   ,ゝ=<      /    | `'''‐- 、.._
     /   !./l;';';';';';';\    ./    │   _
      _,> '´|l. ミ:ゝ、;';';_/,´\  ./|._ , --、 | i´!⌒!l  r:,=i
.     |     |:.l. /';';';';';|=  ヽ/:.| .|l⌒l lニ._ | ゙ー=':| |. L._」
      l.    |:.:.l./';';';';';';'!    /:.:.| i´|.ー‐' | / |    |. !   l
.     l.   |:.:.:.!';';';';';';';'|  /:.:.:.:!.|"'|.   l'  │-==:|. ! ==l   ,. -‐;
     l   |:.:.:.:l;';';';';';';';| /:.:.:.:.:| i=!ー=;: l   |    l. |   | /   //
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    _)  ナ ゝ        ナ ゝ  /   ナ_``  -─;ァ              l7 l7   (_
    _)   ⊂ナヽ °°°° ⊂ナヽ /'^し / 、_ つ (__  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ o o    (_
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 /イ  ,ィ/l/ |/ リuヽlヽト, |   ゝ ,、.___,  \  >       ,       !  | ,ィ/l/ l/ uハlヽトiヽ. |
  イ /r >r;ヘj=:r‐=r;<ヽ│  「 ./       u \  |  ≧  , ,ィ/ハヽ\   |   |/゙>r;ヘ '-‐ァr;j<`K
  r、H   ┴'rj h ‘┴ }'|ト、  |./        ヽ |  1 イ/./ ! lvヾ,.ゞ, ! .ry   ┴ 〉   └'‐ :|rリ
  !t||u`ー-‐ベ!` ` ー-‐' ルリ r|´゙>n-、ヽ-rj='^vヽ _レ「゙f.:jヽ ーT'f.:j'7`h |t|.   ヾi丶     u レ'
  ヾl.     fニニニヽ  u/‐'  :|r|  ー "j `ー ′ h゙リ {t|!v ̄" }  ` ̄  !リ ヾl u  iニニニヽ   /|
    ト、  ヽ.   ノ u,イl.    ヾ! v  ヾ__ v イ‐' ヾl   ヾ_  v ./'    ト、  、__丿u ,イ ト、
   ,.| : \  `ニ´ / ; ト、    ト.、u L_ フ , ' |.    ト,u ヾー `> /.|.   ,| ::\     / ; / \
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軍事板


 【珍説】
 中国からアメリカ本土に向けて発射するICBMが北極圏の上空を通るとは,私にはあんまり思えないですし,ましてグリーンランドのレーダー基地が中国のICBMを捕捉する確率は相当低いでしょう.

 【事実】
 ・・・う~ん・・・地球は丸いんですが・・・.
 地球儀を見ればすぐ分かるのですが,大圏コース(二つの地点を結ぶ最短通路)を通ろうとするとそうなる(北極上空通過)んですよ.
 これくらいの事は,MDを語る以前に,弾道ミサイルの飛行経路として把握して置かないといけません.

 それでは地図を使って説明しておきます.
 ここでは北極点を中心とした心射方位図法を使います.
 これは任意の大圏コースを直線で表すことができる図法です.(あくまでコースが正確なだけで,距離や面積,形状は歪みが大きくなる)

【弾道ミサイル飛行経路図】
赤:中国(西部) 青:中国(東部) 黒:北朝鮮

 このようになります.赤と青は中国の基地,黒は北朝鮮の基地から弾道ミサイルが発射された場合の飛行経路を示しています.
 アメリカ本土東海岸を狙う場合,どの飛行経路も北極圏上空を通過,発射地点によってはグリーンランド上空を横切っていきます.

週刊オブイェクト,2006/3/22


 【質問】
 コリオリの力は弾道ミサイルの飛翔に影響しないの?

 【回答】
 僅かに影響する程度.

 コリオリ加速度は最大でも2ωv(ω:地球の自転角速度7.3x10^-5[rad/s],v:速度)だから,ミサイル速度を秒速2kmとすると,
加速度=2×7.3x10^-5[rad/s]×2.0x10^3[m/s]=0.29[m/s^2]
 6分間飛んだとすると,ずれ量は,
0.5×0.29[m/s^2]×(6[min]×60)^2=19[km]

 実際は速度ベクトルvと地球の自転角速度ベクトルの成す角θのsinがこれに掛かるので,もっと小さいはず.

軍事板


 【質問】
 弾道ミサイルが降りてくる間,ある程度翼やブレーキ?を持っていて,自力で軌道を修正したりしているのですか?

 【回答】
 弾道ミサイルの場合,弾道部分を投げて落下状態に入ったら,着弾修正はほぼ不可能です.
 落下速度がとんでもないことになるので,この運動エネルギーはそうそう曲げられるものじゃありません.
 弾道ミサイルの「誘導」は,弾頭を切り離すまでに,計算上の「理想的な射出ポイント」までブースターをふかす物です.
 よって,弾道ミサイルの命中精度というのはがんばってもかなり悪い.
 元々核積むことを前提にしているので,多少着弾がバラついても問題ないんですが.

軍事板

 なお,再突入後機動可能な弾道ミサイルとしてはパーシングIIがあります.

あげ in FAQ BBS

 また,ロシアの短距離弾道弾「イスカンダール」と大陸間弾道弾「トポルM」も,落下中に軌道変更を行って迎撃を回避する能力があります

M-61 in FAQ BBS


◆◆◆◆燃料関連

 【質問】
 大陸間弾道弾は燃料供給後,72時間以内に発射しないと酸化剤でミサイル自体がおしゃかになるって本当ですか?

 【回答】
 かつてそんなレベルの弾道弾もあった,という話です.
 現在の大陸間弾道弾は固体燃料の場合,相当長期の即応体制が可能ですし,液体燃料でも確か月単位で燃料を充填しておけたはずです.

 テポドン2の場合,技術レベルが上記の「かつての弾道弾」レベルの可能性もあります.

 もしヒドラジン-硝酸系燃料なら常温で液体なので,液酸液水のように注入した端から漏れてく事はないが,ヒドラジンも硝酸も金属腐食性が高く,ミサイル(ロケット)のタンクは軽量化のため防腐食処理は重視してないので,注入後数日~数週レベルのはず.
 より具体的な値は,打ち上げ能力と運用思想とのトレードオフになる.
 注入後待機可能期間が長い程,射程や弾頭重量上限は悪化する.

軍事板


 【質問】
 液体燃料型のミサイルは燃料を注入したあと,発射中止ということで燃料を抜くことは可能なのでしょうか?
 時間がたったら燃料がタンク内で気化し,その気体が充満した空間が出来て,誤って引火して爆発する危険 性とかないんでしょうか?
 満タンにした以上飛ばしたほうが逆に安全だったりする?

 【回答】
 可能です.ただし注入するのと同じぐらい手間がかかりますし,危険もあります.
 爆発といっても,燃料タンクには燃料の蒸気しかありませんから,爆発のしようがありません.
 陰圧になってきたら,危なければ窒素で加圧して排出しますから無問題.

 しかし燃料も酸化剤も常温型は毒性が強く,液体水素/酸素系はもちろん温度管理が必要なので,どちらもそれなりの設備(常温型は野戦運搬可能なレベル)と手間と技術者が必要です.


 【質問】
 ロケット燃料は固体のほうが簡単で,液体が難しいというのは本当ですか?

 【回答】
 これ間違い.注意しよう.

 小型のロケットの場合,たしかに固体の方が簡単で液体は複雑.

 しかし,ある程度大型になると,固体は非常に難しくなり,液体は相対的に容易になる.
 これは,固体ロケットはその構造上,大きな燃料ケースの内部全体が燃焼し,ケース全体が非常な高温高圧に耐えねばならないため.
 また,燃料が均一に意図した通りに燃焼する必要もある.

 液体の場合,頑強に作る必要があるのはロケットエンジンの燃焼室だけであり,容易にスケールアップして大型化できる.
(もちろん,大型化したエンジンを正常動作させるのはそれなりに難しいが.)
 よって,技術力の無い国家の弾道弾はスカッドのように液体燃料が主であり,アメリカやごく最近のロシアのような兵器先進国は,固体燃料のICBMを配備している.

 なお,世界最大の固体燃料ロケットは日本のMVであり,アメリカのピースキーパーなどがそれに続く.


 【質問】
 酸化剤って何?

 【回答】
 「燃焼」というのは何らかの物質と酸素が結びつく(反応する)こと.
 普通に地上で物質を「燃焼」させるには,きっかけさえ与えれば大気中に含まれる酸素が燃焼反応を継続させるが,大気のない宇宙空間ではそうはいかない.

 なので,液化させた酸素を「酸化剤」という形で燃料とともに積み,エンジンの燃焼室で混ぜ合わせて燃焼反応を起こさせる.

 ジェット・エンジンは大気中の酸素を酸化剤としてつかう.
 だから酸化剤は要らないかわり,周囲の酸素が少ないと動かなくなる.
 ジェット機に上昇限度がある理由の一つ.

 対してロケット・エンジンは酸化剤を持参する.液体酸素や過酸化水素,赤煙硝酸などの形で搭載する.
 だから吸気機構が無く,大気圏外でも動く.
 その代わり酸化剤の分だけペイロードが減り,航続力が減ったりする.

 で,固体燃料のように燃料と酸化剤混ぜて放置OKなものは最初から混合して作ってあります.
 液体水素と液体酸素なんかだと沸点が違うし,燃焼室までの扱いも違うので混ぜません.
 そこから先.液体燃料には自己発火性のものが多く使われ,スカッドをはじめとしたテポドンなどの非対称ジメチルヒドラジンと赤煙硝酸(硝酸に二酸化窒素を溶かし込んだもの)などは,混合するだけで発火します.
 これは危険ではありますが,発火装置が要らず,確実に点火するため,たいへん便利です.
 ヒドラジンと過酸化水素も同様の自己発火性の組み合わせになります.
 このような場合,酸化剤は強い腐食性を持っていますし,燃料側も有毒だったりすることが多く,いろいろな意味でお近づきになりたくないものです.

軍事板


 【質問】
 なんでシャトルみたいに,液体水素とか液体酸素のようなエコな燃料で弾道ミサイル作らないの?
 環境に悪いだろ.

 【回答】
 液体水素や液体酸素,ケロシンだと,注入してすぐに発射する必要がある.
 しかも本体がでかくなって面倒が増えるうえに,注入作業がやたら面倒で,注入後に待機できる時間が異常に短い.
 ICBMみたない超長距離弾道弾では用いられたこともあるが,今は使われてないはず.
 宇宙開発なんかの商用や学術目的なら,こちらでも短所が余り問題にならないので使われる.

 一方ヒドラジン系だと,比推力は劣るけど,前者に比べて注入や保管の手間が格段に向上するし,メンテや待機でも融通が利くようになっている.
 弾道弾では特に即応性と安定性が求められるので,こちらが選択される.

 まあ,北朝鮮の場合は,ソ連から供与された基礎技術の段階から液体・ヒドラジン系なので選択の余地が無いけど.

軍事板
青文字:加筆改修部分


◆◆◆弾道弾迎撃


 【質問】
 TMDとかMMDとかSDIとか,ミサイル防衛に関する略称って多くて,よく分からないんですが,詳しく教えていただけませんか?

 【回答】
 BMD:弾道ミサイル防衛(Ballistic Missile Defense)
 戦略兵器である弾道ミサイルを迎撃撃墜する構想・計画.
 NMDとTMDの二つからなる.

 NMD:国家ミサイル防衛(National Missile Defense)
 BMDの一つで,アメリカ本土を道ミサイルから防衛するもの.
 最前線で運用するためのTMDに比べ,当座の優先順位は低いとされる.

 TMD:戦域ミサイル防衛(Theater Missile Defense)
 海外に展開するアメリカ軍と同盟国を弾道ミサイルから防衛するもの.
 現在はこちらのが優先的に進められており,こんど日本に配備されるのもコレ.

 SDI:戦略防衛構想(Strategic Defense Initiative)
 その昔レーガン大統領がぶち上げた戦略防衛演説に端を発する.
 宇宙兵器を主体とした,ソ連の弾道ミサイルを無効化するためのミサイル防衛システム.
 別名スターウォーズ計画.
 レールガンとかちょっとSFチックな計画だったが,これを聞いた旧ソ連が慌てふためいたのも事実.
 結果的にソ連崩壊の原因の一端を作ったともいえる.
 現在のMDはこれの末裔,縮小版に近い.

 日米や米欧が共同でやってるのがTMD.
 米国が独自でやってるのがNMD.
 イージス艦やら何やらってのはTMDのほう.

 この,イージス艦などによる海上配備型TMDは,上層システム(NTWD)と下層システム(NAD)に別れる(陸上配備型も上層,下層に別けられる)
 前者はSM-3ミサイルを使い,大気圏外で迎撃する事をを想定しており,
後者はSM-2ミサイルを使い,大気圏内で迎撃する事を想定している.

 また,巡航ミサイル防衛(CMD)ってのもある.


 【質問】
 MDとABMの違いを教えてください,

 【回答】
 最大の違いは,ABMが,米ソの交わしたABM条約により,首都防衛の為の1カ所とICBM基地の為の1カ所の 計2カ所しか設置を認めなかったのと(1974年からは首都防衛の1カ所のみ),弾頭数も100発までで,移動式基地(艦船とか人工衛星)は禁止されていましたし,ABMシステム自体も古く,そのレーダーの多くはロシアに向いたものばかりで、最近の北朝鮮のテポドンをはじめとするロシア以外の弾道ミサイルの脅威が高まった為,イージス艦やABL等様々なプラットホームを使用できるNMDに移行することになりました.
 そして,洋上にフェイズドアレイレーダーを配置する為に必要性もあり,2001年12月アメリカはABM条約を脱退したのです.
 まぁ条約自体抜けが多かったのもありますが(;^^

 故にABMはレーダーを含む発射システム自体が固定されているのがABM.様々なプラットフォーム(艦船・航空機・人工衛星等)に対弾道ミサイル迎撃システムを持ち移動型レーダーをも備えるのがMD.と解釈してもよいのではないでしょうか.


 【質問】
 MDの開発で命中精の低さが課題となってますが(SM3とか少しマシになったけど),それ以前にABMってありましたよね? あれの迎撃率ってどんなもんだったんでしょうか?
 通常弾頭やキネティック弾頭よりも,核弾頭のほうが効果ありそうに思えますけど.

 【回答】
 米軍の議論で,核ABMは通常弾頭ABMに対する優位性は無い,という結論が出たはずですよ.

 核ABMは1度爆発すると,暫くの間地上レーダによる観測を非常に妨害し,2発目以降の弾頭を防ぎ辛くするということ,核ABMといえども目標弾頭を破壊するには,それなりに近くで,かつクリティカルなタイミングで起爆させる必要があり,その誘導における技術的ハードルは通常弾頭ABMと大差ないとされること,等々の理由があるようです.


 【質問】
 SDI計画とは?

 【回答】
 レーガン時代に計画されたミサイル迎撃網構想.
 技術的資金的に無理じゃないか?などと言われているうちに,冷戦終了で計画中止に.

 以下引用.

そして最後に出てきたのは,「スターウォーズ計画」という別名でもおなじみの,レーガン大統領による「SDI計画」(the Strategic Defense Initiative)です.

 これを簡単にいえば,現在のミサイル防衛計画(MD)と同じように,アメリカ本土,もしくは友好国周辺にレーダーなどで防御網を張り,発射されたミサイルを先に打ち落とすというもの.

 構想が持ち上がった時点では,衛星からレーザーが発射されるなどという,まさにスターウォーズ並みの話もありましたが,実行されれば資金が莫大にかかるのと,元々技術的にムリだということが言われておりました.

 また,この計画によって,今まで安定していたソ連との核兵器のバランスが崩れるとか,72年に締結されていたABM条約に反することになる,などの批判が相次いでおちます.

 そうこうしているうちに共産圏の崩壊が始まり,91年にはソ連消滅と共に冷戦が終了し,アメリカの核戦略の中心である「抑止理論」というものの必要性がなくなってしまったかに見えてきたわけです.

「地政学を英国で学ぶ」,2005-05-14-05:30

 引用元は英国で戦略学についても学んでいる人のブログなので,記述の信頼性は高いと考える.
 検索結果も上記引用との齟齬を生じていない.

 なお,レーザーによる迎撃システムはMDでも開発中.


 【質問】
 アメリカのSW計画について,現在の評価はどうなってますか?
 ハッタリ? コストでout?
 もし実現可能性がある程度あるなら,これほど確実な防衛手段はないような気がしますが・・・.

 【回答】
 SW・・・・スター・ウォーズ計画,SDIのこと?
 「当時の技術では無理があった」との評価です.
 ソ連の持つ数千発のミサイルを迎撃しようとしていたわけですから,目標が大きすぎたのもあります.
 ただし,終端迎撃については手ごたえがあったと,当時の科学者が言っています.

 また,SDI計画への対抗策という形でソ連に負担を強いた点では効果があったと言われています.
 戦わずして勝利したと言うのならその価値は大きい.
 冷戦後の世界の混乱は置いておいて.

 さらに蛇足ですが,SDIってのは単独の計画ではなくて,ABMから続く一連のミサイル防衛計画の1つです.
 SDIで開発された技術は,その後のGPALS,TMD等にも生かされています.
 その意味では,単なる予算の無駄遣いとは言えないかもしれません.

軍事板



 【珍説】
>SDI計画への対抗策という形でソ連に負担を強いた点では効果があったと言われている.

平然とウソ書くなよ
http://d.hatena.ne.jp/D_Amon/20060607

amo◆bb6OCCHf8E in 軍事板

 【事実】
 SDIが結果としてソ連を疲弊させたと説く書籍なら,それこそ山のようにあるが?
俺の手元にもS・ソンタグの本が有る.

 そのリンク先だが,経済学者でも軍事専門家でもソビエト研究家でもない天文学者であり作家を兼業してる人をそこまで神格化して絶対視する必要性はない気がするが.

wikipedia:カール・セイガン

 【質問】
 SDIで計画されていた中性子ビームが,物質に当たるとどうなるですか?
 話に聞くには,ノイマン効果で貫通するとか何とか.

 【回答】
 中性子じゃなく中性粒子.
 当たったところが加熱され,溶けたり蒸発したり,蒸発の衝撃で標的が壊れたり.
 それ以前に中性粒子線はターゲット衝突後,荷電粒子シャワーを生むので,電子機器にとってはこっちの方が閾値の低い加害要因に成るだろうね.

 詳細な原理は物理関係の本で,高エネルギーの荷電粒子線や中性粒子線について一から学べ.
 わかんないところがあったら,物理板で聞くべき.

 なお,ノイマン効果は関係ないと思われる.
 ノイマン効果は漏斗型にした炸薬の作用により,付属の金属がメタルジェットとなって飛ぶ現象.
 高速のメタルジェットの勢いで標的表面を削ることができる.

 中性粒子線も超強力なものであれば,メタルジェットのような効果があるんだろうが,非現実的.
 また,仮にそういうメタルジェットみたいな効果が実現できても,それは漏斗型炸薬を使わないので,ノイマン効果とはぜんぜん違う.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 多層防御(レイヤード・ディフェンス)システムとは?

 【回答】
 金田秀昭〔元海将〕によれば以下の通り.

 01年7月,上院軍事委員会で,ウォルフォウィッツ国防副長官およびケーディッシュ弾道ミサイル防衛局長(当時)が計画提示したもの.

 弾道ミサイルが発射されてから着弾するまでの飛翔領域を,上昇・中間・終末の3段階に区分,それぞれの領域区間(セグメント)において,それぞれ地上・海上・空中・宇宙配備の迎撃システムを駆使した態勢の構築を目指すというもの.
 あらゆる可能性を追求するための実験を重ね,その上で実行可能性のあるものから配備していくという方針が示されている.

 上昇段階防衛システム(BDS: Boost Phase Defense System)としては,
航空機搭載レーザー(ABL: Air Borne Laser),
宇宙配備衛星搭載レーザー(SBL: Space-Based Laser),
海上配備迎撃ミサイル,
宇宙配備衛星搭載迎撃ミサイル
が構想されている.
 この内,ABLは,09-11年度の配備を目指しており,ボーイング747型輸送機を改造して強力なレーザーを搭載し,雲上からのレーザー照射により,ミサイルを撃破する方式として開発が進められているが,その射程は大気によるレーザー・エネルギー拡散により,数百km程度となるものと見られている.

 中間段階防衛システム(MDS: Mid-course Defence Systemとしては,
地上配備中間段階防衛(GMD: Ground-based Mid-course Defense)システム,
海上配備中間段階防衛(SMD: Sea-based Mid-course Defense)システム,
宇宙配備衛星搭載レーザー
が構想されている.
 この段階は,交戦のための最も広範な空間・時間を弾道ミサイルが提供する一方,デコイ等の対抗措置にMDSが脆弱という欠点もあり,技術的に克服すべき課題もある.

 終末段階防衛システム(TDS: Terminal Defense System)としては,
地上配備型パトリオット PAC-3,
THAAD
が構想,実用化されている.
 THAAD(Theater High-Altitude Air Defense)は,地上配備の大型移動式レーダーと,高高度直撃方式迎撃ミサイルを組み合わせたシステムで,終末段階ではあるが,大気圏内外という高高度での迎撃が構想されている.07-08年配備が目指されている.

 これらの段階的防衛システムは,有効なセンサーや通信手段を使用して,弾道ミサイルの発射・飛翔情報をリアルタイムに収集・評価すると共に,短時間で的確な意思決定を行うよう,関連システムを有機的に結合させ,適切に指揮・管制するためのBMC3I(Battle Management, Command Control Communication and Intelligende:戦闘管理・指揮・管制・通信・情報)システムがなければ,効果的には運用できない.

 主要なセンサー・システムとしては,早期警戒衛星(ミサイルの発射を探知する赤外線センサーを搭載した衛星)として,
DSP(Defense Support Program),
その後継の宇宙配備型赤外線探知システム(SBIRS-High: Space-Based Infra-Red System, High orbit),
アラスカのシェミア島への設置が検討されている精密識別用の地上配備Xバンド・レーダー,
同じくイージス艦に搭載する海上配備Xバンド・レーダー,
および低軌道を周回する衛星24基による赤外線センサー精密追尾システムSTSS :Space Tracking and Surveillance System(旧称SBIRS-Low)
などが構想されている.

 これらに加え,全ての関連情報を収集・評価し,迎撃システムの指揮・完成を行い,攻撃効果の評価などを行うための通信ネットワークや指揮統制所などが必要となる.

( from 「世界の艦船」,2003/9,p.72-74,抜粋要約)


 【質問】
 高エネルギーレーザー地域防衛システム (HELLADS)とは?

 【回答】
 戦闘機に搭載し,数十キロ先のミサイルを破壊できる,小型の強力レーザー光線兵器です.
 これはBMDのブースト部分を担当するもので,以下の説明にある「B747ー40 0Fジャンボ機の機体に出力数MW(メガワット)の酸素ヨウ素ガスレーザを搭載する機上レーザ(ABL Airborne Laser)YALー1Aを開発中」という部分に該当 します.
 以下,コモ辞書さんからの引用です.

「弾道ミサイル防衛は,弾道ミサイル拡散に対処するため,アメリカが同盟国と共に推進中,
 宇宙には監視衛星を展開,迎撃兵器は地上・海上発射型とし,指向エネルギー兵器はブースト段階迎撃(BPI boostーphase intercept)に使用する機上レーザに,当面は限定する開発方針を採用.
 従来は世界各地の戦域ミサイル防衛(TMD Theater Missile Defense)とアメリカ本土防衛・国家ミサイル防衛 (NMD National Missile Defense)の二本立てだったが,ブッシュ政権は両者を 併せて弾道ミサイル防衛と呼ぶ方針に転換,2001年1月にミサイル防衛庁 (MDA: Missile Defense Agency)を新設し,BMDシステム(BMDS: BMD System) を
ブースト防衛,
ミッドコース防衛,
ターミナル防衛の各セグメントに区分し, ミサイル飛翔経過に対応して「上層」及び「下層」に区分したシステム開発を推進することになった;

 ・ブースト(上昇段階)防衛セグメント(BDS:Boost Defense Segment)は,弾 道ミサイルを発射直後の加速(ブースト)段階で迎撃する構想のシステムで,米空軍はB747ー400Fジャンボ機の機体に出力数MW(メガワット)の酸素ヨウ素ガス・レーザを搭載する,機上レーザ(ABL Airborne Laser)YALー1Aを開発中で,2002年7月18日,初飛行に成功.
 このほかにも宇宙設置レーザ(SBL SpaceーBased Laser)の実験を12年に予定;

 ・ミッドコース(中間飛行段階)防衛セグメント(MDS:Midcourse Defense Segment)弾道ミサイルを飛翔途中の大気圏外で迎撃するシステムで,陸上設置ミッドコース防衛セグメント(GBMDS: GroundーBased MDS)は従来の国家ミサイル防衛(NMD)である,
 2001年7月20日の第4回実験でハワイ上空の大気圏外 で標的を直撃破壊しており,今後導入までの期間に同種の迎撃実験6回を予定 している,
 海上設置ミッドコース防衛セグメント(SBMDS SeaーBased MDS)は従来の海軍戦域広域防衛(NTWD Navy Theater Wide Defense)で,イージス武器システム(AWS Aegis Weapon System)が管制するスタンダード・ミサイル3 (SMー3 Standard Missile 3)が運搬する重量18kgの軽量大気圏外迎撃弾体 (LEAP Lightweight ExoーAtmospheric Projectile)が目標を直撃する,
 日米両政府は1998年8月の交換公文で共同技術研究を開始しているが,03年,SMー3 の早期導入を決定;

 ・ターミナル(終末段階)防衛セグメントターミナル防衛セグメント(TDS: Terminal Defense Segment)弾道ミサイルを終末(ターミナル)弾道部分で迎 撃するシステムで,従来の戦域ミサイル防衛(TMD)である,
 戦域高高度域防衛 システム(THAAD: Theater High Altitude Area Defense)は1999年に連続2 回の迎撃破壊に成功し,2004会計年度から次の飛翔試験に進む,
 陸軍のパック3 (PACー3 Patriot Advanced Capabilityー3)は1999年3月に目標を直撃破壊し,2002年には部隊配備を開始,
 一方,中距離拡大防空システム「ミーズ」(MEADS: Medium Extendedーrange Air Defense System)は米独英の共同開発計画で,航空機・巡航ミサイルを含む弾道ミサイル迎撃用,
 また,イスラエル・米国共同開発のアロー(Arrow)は,1999年11月に空対地ミサイルを標的として迎撃試験 に成功,2000年3月から配備を開始」

 なお,英国の科学誌「ニューサイエンティスト」によれば,米国防総省の付属機関 である国防高等計画局(DARPA)が2005年9月,小型の強力レーザー光線兵器の開発に成功 したとのことです.
 国防総省はDAPRA計画で兵器の開発を行っており,これまでは大きすぎ て戦闘機にはとても搭載できませんでしたが,今回開発された兵器は重さが全体で750キロ,大きさは2立法メートルほどと,大幅な小型化となりました.
 戦闘機搭載可能になったということで,意義は大 きいのかなと思います.

(おきらく軍事研究会)


 【質問】
 THAADは機動発射機4両とBM/C3I情報・射撃管制ステーション1基,TMD-GBRレーダー・システム2基で1セットであってますか?
 ググって調べてみたのですが,BM/C3I情報・射撃管制ステーション3基と書いてあるものとあったので.

 【回答】
 管制車両群が3つも必要だとは思えないがなあ

http://www.globalsecurity.org/space/systems/thaad-deploy.htm
最後から二段落目.

大隊は4個中隊から成り,各中隊は発射機3,迎撃体24,Xバンドレーダー1,TFCCシステム1から構成される.
トラック・個人武器・発電機といった軍標準装備も与えられる.

 少なくとも,米軍の調達予定ではこの編制で行くようだ.
 1セットというと・・・・一個中隊か大隊か,どっちだっけ.
 これはちょっと記憶に無い.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問 kérdés】
 MDは戦術兵器? 戦略兵器?

 【回答 válasz】

ミサイル防衛と抑止 - 防衛省防衛研究所(PDF注意)

 これは2001年に防衛研究所に在籍していた軍事学者の小川伸一氏が執筆した,ミサイル防衛と抑止力に関する論文です.
 この論文を元に論じてみたいと思います.

 そもそもミサイル防衛は,米ソ冷戦時代だった1980年代に当時のアメリカのレーガン大統領が提案した戦略防衛構想(SDI)が原点でした.
 このSDIは当時の技術力では難しく,その開発は税金の無駄遣いと言われたほどでしたが,これが冷戦終了後に重要な意味合いを持つことになります.
 というのも冷戦終結,ソ連崩壊後に独裁国家の間で弾道ミサイルや核兵器・生物化学兵器の保有・開発が行われるようになりました.
 イラク,イラン,北朝鮮はもとより,この頃から大国化し始めた中国などは,中距離核戦力全廃条約(INF)が米ソ間でしか効力がないのをよいことに,準中距離弾道ミサイルや中距離弾道ミサイルの開発を開始しました.
 それがノドン,テポドン,そしてそのイラン輸出型のシャバブ,または中国のDF-21です.

 これに対し,クリントン政権はSDIの中距離弾道ミサイル迎撃型のGPALS計画を破棄し,TMDとしてスタート.
 これがBMDやNTMDへと発展し現在に至っています.
 1993年からスタートが開始されたこの構想も,今ではPAC-3やSM-3ブロックⅡAとなって,かなりの面において実用化がなされました.

 このMDに北朝鮮や中国が反対しているようですが,小川氏は次のような見解を出しています.

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 懸念国からの限定的な弾道ミサイル攻撃に対処するミサイル防衛が配備されれば,少なくとも懸念国との紛争に関する限り,米国は自らの本土や海外駐留米軍に対する報復の危険を恐れることなく軍事作戦を遂行することができる.
 その結果,懸念国を念頭に置いた同盟国向けの軍事コミットメント,あるいは拡大抑止への信頼性も高まることになるのである.
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 弾道ミサイル迎撃は米軍にとっては自国軍だけでなく,同盟国への軍事コミットメントの確保にも繋がる事になるという位置づけを持っています.
 もちろん米軍にとっての最優先事項は自国軍の防衛ですが,それと同時に同盟国の防衛,さらには同盟国との共同防衛もあるという事なのです.

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 懸念国が米国との戦闘に敗れ,自国への米軍の侵攻を招き,しかもその政権が生き残る可能性がなくなったと判断した場合,残存した大量破壊兵器搭載弾道ミサイルを,米国あるいは米国とともに軍事作戦行動を採る諸国に向けて使用することも考えられる.
 こうした「死にゆく者の最後の一擲」は,いかなる手段を用いても抑止できるものではない.
 また,これとは別に,弾道ミサイル保有国が増大するにつれ,事故や誤認に基づくミサイル発射の危険も高まる.
 このような事故や誤認に基づく弾道ミサイル発射に対し,報復的抑止が無力であることは言うまでもない.
 いずれのケースにおいても,実際に飛んでくる弾道ミサイルやそれに搭載された弾頭を迎撃する以外に手だてはないのである.
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 敵国が米軍の侵攻に対して米軍や同盟国を道連れに弾道ミサイル攻撃は,私も想定していませんでした・・・.
 その可能性は無きにしもあらずかも知れません.
 これだと確かに相互確証破壊は何も意味がありません.

 また,誤射についてもそうでしょう.
 MDなら地対空ミサイルですから誤射しても特に問題はありませんが,弾道ミサイルだとそうはいかず,これを落とすには迎撃しかありません.
 そう思うと,日本もA2ADを採用しろ等と言う弾道ミサイル保有論や巡航ミサイル保有論がいかに間違っているかがわかります.

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 また,日中間の地理的近接性や完璧性を期し難いミサイル防衛の特質を考慮すれば,日本のNTWDが中国の報復能力を総て取り去ることは考えにくい.
 言い換えれば,日本がNTWDを配備しても,中国の究極的な対日核抑止力は残るはずである.
 さらに言えば,中国は,無条件の核の先行不使用,並びに同じく無条件の消極的安全保障を宣言している.
 にも拘わらず,日本のNTWD研究に批判を繰り返すのは,はからずも中国が日本を核ミサイル攻撃の目標に据えていることを露呈することになる.
 要するに,日本のミサイル防衛が戦略環境の悪化をもたらすとの中国や北朝鮮の批判は,両国が弾道ミサイルを配備することによって得られた,一方的な対日軍事優位が脅かされることを恐れてのことにすぎない.
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 この頃はまだ反日的志向のあった江沢民政権で,まだ中国はロシアからミサイル防衛システムであるS-300を調達していなかったので反発していましたが,今では中国も反発していません.
 S-300が手に入ったのもそうなのでしょうが,これ以上日本のMDを批判すると,日本やアメリカへの核攻撃を行いたいと思われるのを恐れたからなのでしょう.

 ただ,大陸間弾道ミサイル迎撃については,中国のみならずロシアからも反発が起きています.
 これについて小川氏の見解はこのようになっています.

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 ブースト段階迎撃には,海上,地上,空中,それに宇宙配備の迎撃システムが考えられるが,このうち海上配備や地上配備のブースト段階迎撃システムであれば,ロシアや中国の内陸奥深くから発射されるICBMや,ブースト段階迎撃システムから遠く離れた海洋から発射されるSLBMを迎撃することが困難であることから,ミサイル防衛に対するロシアや中国の懸念を和らげることが期待される.
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 これは現在も変わりありません.
 米本土防衛型のGBIは少数のICBMを撃墜する事しか出来ず,しかも中間コースでしか迎撃出来ません.
 さらに実験には失敗が続いており,まだまだ開発途上です.
 また,終末段階でマッハ20以上の速度で落下し,多弾頭であるICBMを撃墜する手段はまだ存在せず,これからも開発は出来ないかも知れません.
 SM-3ブロック2Bは対北朝鮮なら限定的にICBM迎撃機能を持ちますが,ロシアや中国の内陸部や北極海のロシア領海から発射されるICBMやSLBMを撃墜する事は出来ません.
 その意味からすれば,戦略核兵器による相互確証破壊はまだ生きていると思います.

直径27インチ,液体燃料,SM-3ブロック2B:週刊オブイェクト

 しかし中距離弾道ミサイルで,例えば我が国に対してスタンドオフ攻撃をしようとする国に対しては,政治的かつ外交的な効果はあると思います.
 つまり,北朝鮮の瀬戸際外交や中国のA2ADを阻止し,北朝鮮の核武装や中国の台湾有事や尖閣有事を匂わせる行動に対して釘を刺す事が可能になるからです.

 その意味でMDは戦略兵器だという事をまず理解すべきでしょう.

ねらっずーり in mixi, 2013年05月03日
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ABM禁止条約があるのに,NMDとかOKなんですか?
 最強のならず者だから,なんでもあり?

 【回答】
 抵触します.
 正確にはABM制限条約で,レーダーサイトの数,ミサイルサイトの数,ミサイルの数などが規定されています.
 NMDが目標とする最低限の機能(1~2発の原始的欺瞞手段しか持たないICBMの撃破)ですら,制限内では困難ではないかと思われています.

 ただ,ABM制限条約は,これまでの核削減の基礎の一つであり,冷戦時代ですら,むやみな核軍備拡張の歯止めとなっていたものです.
 このため,NATO諸国はNMDによるABM条約破棄に反対しており,もっとも親米的な英国ですら,NMDに対する懸念を表明しています.

 実際,アメリカがNMDを配備すれば,ロシアの核削減が停止し,中国が核配備を増強するなどの反応も十分考えられます.
 また,アメリカとNATOとの関係が悪化し,孤立化,独善化していく可能性もあります.
 困ったもんです.

 【反論】
 条約というものについて基本的に理解していただきたいのは,条約は正義ではなく,契約だと言うことです.
 正義,法廷というものは,その後に絶対的な力があればこそ成立するものであり,お互いが互角の力を持っている場合,そこには正義も有罪も無罪も存在しません.

 条約は,お互いにむちゃな力を行使することで,無意味な犠牲が発生することを予防するための,いわば経済的な方法です.
 破棄する方が,自分の利益になると思えば,ためらわず破棄することが国益というものです.
 もちろん,信用の失墜というマイナスも,考慮した上での話ですが.

 例えば,湾岸戦争も民間人の被害から経済制裁,貿易規制をはじめとして,人権に対する犯罪であるとして,アメリカは告発されています.
 「だからなんだ」というのがアメリカの回答であり,また,それは理性ある態度だとも思います.
 軍事が関わるレベルの現実には,正義など存在しません.
 人間と利害と,おそらく多少の理性があるだけです.

軍事板,2001/05/11(金)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 日本のTMD,アメリカのMD,イスラエルのアロー,そして欧州も似たようなミサイルシステムの開発とかあるみたいですが,これらを一まとめにして開発したほうが費用的にも効率的にもいいのでは?
 想定しているミサイルのモノが違うのかもしれないですが,ある程度のところまでは協力てきるのでは?

 【回答】
 ブッシュ政権は地球規模の弾道ミサイル防衛網の構築を目指しており,その為には同盟・友好国との同調が必要であるとの認識の下,多くの国が計画へ参加出来るようにMD構想を解放する方針を採っています.
 MDA長官のケーディッシュ中将は同盟国の弾道ミサイル防衛計画への参加促進の為,以下の4つの原則を示しています

①アメリカの友好・同盟国と2国間ベースで弾道ミサイル防衛を開発する
②アメリカの友好・同盟国による参加について,多様なレベルを用意する
③弾道ミサイル防衛において,アメリカの友好・同盟国に多様な参加方式を提供する
④弾道ミサイル防衛システムの設計や構築において「最善の価値」ベースで外国の企業の参加を認める

 第1の原則は,各友好・同盟国のニーズに合わせて共同開発・協力分野を特定する事により,それぞれの国の得意分野を弾道ミサイル防衛開発に生かす事が可能になります.
 第2第3の原則は,友好・同盟国内の政治的制約などを考慮した参加態様を柔軟に受け入れる事で,参加に対する各国内の敷居を下げる事を狙ったものです.
 第4の原則は企業間レベルでの参加を認めるもので,各国政府の政治的参加可否との判断とは別に,企業としての開発・技術協力の道を開くものです.

 これまで同盟国に対してでさえ,優位確保の技術戦略を採ってきたアメリカが,このような柔軟な参加促進体制を示すのは,地球規模での弾道ミサイル防衛網構築の為,可能な限り早い段階での同盟国の参加を望んでいるという事と,効果的なシステムの構築の早期完成に向け,友好・同盟各国の最新技術を取り入れたいとの思惑があると考えられています.

軍事板,2006/02/28(火)
青文字:加筆改修部分


 【質問 kérdés】
 レールガンはMDにも寄与するの?

 【回答 válasz】

 米THE National Interest誌は,北朝鮮の中距離弾道ミサイルはレールガンによって無力化されるという記事を発表しました.
 レールガンとは電磁誘導により加速して弾丸を撃ち出す装置で,早い話が磁石の反発を利用した砲です.
 速度は約マッハ5,射程は約370㎞,射高は約152㎞というもので,長距離からの艦砲射撃や艦対空射撃などに用いられます.
 アメリカ海軍が開発を行っており,2016年会計年度中にレールガンの試作機を最新鋭の高速輸送艦ミリノケットに搭載,各種テストを行う予定ですが,このレールガンの性能をミサイル防衛に転用すれば,SM-3やTHAADやPAC-3に続き,レールガンがミサイル防衛装備になる可能性が出てきました.

How the Third Offset (Think Railguns) Could Nullify North Korea's Missiles | The National Interest Blog

航空宇宙ビジネス短信・T2:: ★北朝鮮ミサイルはレイルガンで一気に無力となる

「レールガン」とは一体どのような兵器なのか | 安全保障 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 レールガンは連射も可能なので,SM-3やPAC-3のようにミサイルによる迎撃失敗のリスクを軽減する事が可能です.
 また,性能もTHAADの射程200㎞,最大射高150㎞を上回り,高高度のターミナルフェイズからの迎撃も可能です.

 ただ,レールガンは電磁誘導を行うので大量の電力を消費するというのが難点.
 米海軍ではズムウォルト級ミサイル駆逐艦以外は搭載出来ず,海自でもこんごう型やあたご型のDDGの艦載も不可能.
 出来るとすればいずも型かひゅうが型のDDHでしょうか.

 しかしこのレールガンをイージスアショアのように地上に配備し,陸海空自衛隊共同運用を行う事で,ターミナルフェイズのミサイル防衛は可能になります.
 地上ならいくらでも電力を供給できますからね.
 その事もあってか,防衛省でもレールガンの開発を技術戦略に明記ました.

レールガン,水陸両用車の開発明記 防衛省が「技術戦略」作成 - 産経ニュース

 また,レールガンは弾道ミサイル防衛以外にも巡航ミサイル防衛にも転用は可能なので,A2AD戦略を封じる事も可能になる抑止力とも成り得ます.

ねらっずーり in mixi, 2016年09月04日
青文字:加筆改修部分


 【質問 kérdés】
 MEADSって何?

 【回答 válasz】

 パトリオットミサイルの後継SAMとして,MEADS(中距離拡大防空システム)が2011年まで開発されていました.
 MEADSはPAC-3MSE型に自走式プラットフォームと野戦防空システムを組み合わせたもので,弾道ミサイルだけでなく航空機,巡航ミサイルを迎撃出来る万能防空システムになる予定でした.
 2011年に提案したアメリカが,次いでドイツ・イタリアも計画を破棄し,開発は中止になってしまったものの,米ロッキード・マーティンとレイセオン,ドイツLFK,イタリアMBDA各社はその後も開発を続けています.

中距離拡大防空システム - Wikipedia

MEADS 「まだだ,まだ終わらんよ」 - 海国防衛ジャーナル

Medium Extended Air Defense System (MEADS):Lockheed Martin

 また,MEADSの中核となるPAC-3MSEの開発は今も続行されています.
 PAC-3MSEはPAC-3の性能を50%上げたもので,射程も20kmから30kmに延長されています.
 当然射高も延長され,最高速度も上げられている事が予想されます.
 そうなると射高は22500km,最高速度もマッハ6〜7レベルになっていると思われます.

MEADSは消滅したけれど…PAC-3 MSE 発射試験成功 - 海国防衛ジャーナル

Patriot Test Fires PAC-3 MSE Missile - May 4, 2011:Raytheon

 これだけ性能が向上すれば短距離弾頭ミサイルと準中距離弾道ミサイルだけでなく,ムスダンのような中距離弾道ミサイルも迎撃が可能です.
 というか短距離弾道ミサイルや中距離弾道ミサイルは,いずれも飛翔距離で便宜上分けられているものなので,短距離弾道ミサイルだから迎撃可能とか中距離弾道ミサイルだから迎撃不可というのはナンセンスです.
 これだけ性能が向上すれば,短距離弾道ミサイルと準中距離弾道ミサイルには効果的なものの,中距離弾道ミサイルの迎撃が難しいとされたPAC-3は中距離弾道ミサイルをも迎撃が可能になります.

 これとは別に,アメリカとオーストラリアが開発しているSM-2の後継ミサイルのSM-6というミサイルが存在します.
 このミサイルは射程370kmから航空機と巡航ミサイルを迎撃出来るもので,AEWやAEW&Cとデータリンクする事も可能です.

RIM-174スタンダードERAM - Wikipedia

 このSM-6を基に,米国防総省ミサイル防衛局(MDA)と米海軍では,大気圏内での弾道ミサイルをも迎撃出来るミサイルの開発を予定しています.
 既に米議会調査局でも勧告とも言えるレポートがあります.

Navy Aegis Ballistic Missile Defense (BMD)
Program: Background and Issues for Congress:Congress Research Service(PDF注意)


 もっとも,米強制予算削減の影響もあり,果たして進むかどうか怪しいところですが,MEADSも国防当局による開発は中止したものの,企業では開発が続行されている点から考えて,まだ望みはあります.
 このSM-6を基にした弾道弾迎撃ミサイルの開発も日本も参加すべきでしょう.
 SM-3の最低射高は70km,PAC-3の射高はMSEでも22.5km.この間の穴を埋めるミサイルはやはり必要ではないかと愚考いたします.

 なお,SM-6を基にした迎撃ミサイルを仮にSM-6と同じ370kmだとすると,もし能登沖にイージス護衛艦を配備するとなれば,東北,関東,甲信越,北陸,東海までが射程に入る事になります.
(図No. faq130428sm)
 開発で射程が延びれば,近畿や中国,四国まで伸ばす事は可能でしょう.

 余談ですが,SM-6は巡航ミサイルも迎撃可能なので,沖縄本島沖にイージス護衛艦を配備しておけば,AWACSやAEWと連携することでAWACSやAEWが発見次第迎撃が可能になり,場合によっては中国の沖合で撃墜が可能になります.
(図No. faq130428sm2)
 まぁ,巡航ミサイルの先制攻撃による被害は,AWACSとAEWがあれば,F-15JやF-2のような空自戦闘機や,PAC-3,さらには陸自の03式中距離地対空誘導弾でも撃墜は可能なので,杞憂に過ぎないのですが.

ねらっずーり in mixi, 2013年04月28日
青文字:加筆改修部分


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