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 【Link】

「ワレYouTube発見セリ」:STEALTH SHOT DOWN -MUST SEE-!!!!

『ステルス戦闘機 スカンク・ワークスの秘密』(ベン・R・リッチ著,講談社,1997.1)

『世界のステルス戦闘機完全ガイド』(イカロス出版,2012/11/27)


 【質問】
 ステルスの基本的な理論等は,もう世界中に知られていますよね?

2009年10月21日 20:19,キズメガネ

 【回答】
 概念は公知のものですが,波長の短いレーダー波に対して,航空機は巨大な分布定数回路として機能してしまいますので,航空機でその概念を現実のものにするノウハウが門外不出の物では?と考えられます.

2009年10月22日 01:53,クローム・ツァハル

 ステルス…… というより,「レーダー反射の小さい機体」ですか.
 ぶっちゃけると,空力設計と低RCSの両立というのは,それほど難しくないんです.
 航空機の設計・製造経験の浅い日本ですら,その手のものを作れるわけですから.

 じゃあ,何故作らないかと言えば,低RCSだけでは戦闘機として不完全だからです.
 例えば,戦闘機搭載用レーダーですが,ステルス機であれば,敵に逆探知され難いレーダーが必要です.
 機体がステルスでも,レーダーが電波垂れ流しでは意味ないですからね.
 F-22ではスキャン時間を大幅に短縮し,敵に察知され難いレーダーを使用していますが,これを作れるのは米国のみです.

 次点で,ステルス(というか第四世代以降の戦闘機の開発)にはお金がかかると言う単純な話.
 冷戦が終わって,どこの先進国も軍事に関しては財布の紐が硬くなりました.
 F-22は冷戦の遺物ですし,それ以降で開発された戦闘機は,F-35くらいしかないです.
(計画が10年遅れたタイフーンを除く)
 高い金払ってまで必要性を感じないと言うことですね.

 最後に一番重要かもしれませんが,ステルス機を作るには,敵のレーダーについて,かなり詳しい情報が必要になります.
 それが得られるのは米軍だけです.
 詳しくは下を読んでください.
http://www10.atwiki.jp/fsx375/pages/97.html

2009年10月22日 02:41,極東の名無し三等兵

以上,「軍事板常見問題 「軍事板常見問題 mixi支隊」」より

▼ 参考情報ですが,「Introduction To Rf Stealth」という本に電磁波に対するステルス設計の情報が載ってるみたいです.
 amazonでも買えます.

 概要は以下のサイトに書いてありました(英語です).
http://www.scitechpublishing.com/index.asp?PageAction=VIEWPROD&ProdID=163

 私は未読なので,内容についての判断できません.
 しかし,ステルス技術を解説した工学書が出版されており,入手可能ということは,クローム・ツァハルさんが述べられているように,その概念が公知であることの証拠ではないでしょうか.

 参考になれば幸いです.

ふくすけ in 「軍事板常見問題 mixi別館」,2010年02月14日 03:30


 【質問】
 今のところステルス技術はほぼアメリカが独占してますが,F-16の代替としてF-35を世界中で採用することになりました.
 ステルス性を持っている機体を海外に売却して,ステルス技術を流布しても良いものなんでしょうか?
 あのF-22はステルス技術や,その他もろもろの技術を流布しないため,輸出禁止してるのにも関わらず.F-35はそう易々と輸出しても良いのですか?

 【回答】
 まず契約国はアメリカと仲がよい国に限られていること.
 契約によって技術の流出が禁じられていること.
 最もセンシティブな部分は,契約国にも情報を提供していないこと.
 これらによって,外見や写真以上の情報はなかなか得られないようになっています.

 特にステルス性の測定や部分変更(素材やデザイン,付加物)が全体に及ぼす影響についての情報は,大きく制限されており,このために英国がごねているほどです.

 また,赤外まで考えたステルス性は,機体全体のすべてのシステムを考慮しないと作れず,システムのシステムと言われています.
 部分的な構造が分かってコピーしても,全体としてまともに機能するものは作れません.

 今のステルス材料も,日本の技術をもってしてもコピー不能です.
 この樹脂はもともと,日電が電子レンジ用に考案開発したんですけどね(日電は欠点が多くて捨てた)
 で,日本以外の国がF-35を入手したとして,たとえば20年以内に同等の樹脂を造れるかどうかは,ものすごく疑問.
 その間にアメリカは先逝ってるでしょうし.

 もちろん輸出なしで作れば一番よいのですが,すげえ金かかるので,さすがの米国も他国の金なしでは必要数調達できない,というのももちろん大きな理由の一つです.

 さらに,F-35のステルス性はF-22よりもかなり限定的なものだったはずです.
 いわば簡易版.
 アメリカ側が技術を開示しているといっても,それはかなり限定されたものです.

青文字:加筆改修部分


 【質問】
 レーダー波をいろんな方向に反射するというよりは,機体の他の部分と角度を合わせて,どんぴしゃりと跳ね返してしまう機会をなるべく少なくするということでしょうか?

 【回答】
 それがステルスの基本的な考え方です.
 反射波を特定の方向にまとめてしまい(その方向は敵が位置する可能性が最も低い),結果として「自分に向けられた」レーダーへの反応を防いでいるのです.

 このステルスの性質を逆用し,「特定方向にまとめられた」強力な反射波を別のレーダーで受信し,全体でリンクすることでステルス機を見つけ出す探知システムも提唱されています.
 提唱されています・・・が,それには巨大なレーダーネットワークを有機統合する膨大なコストがかかるため,現時点では実用化のめどは全く立っていません.
 この先電子部品の高性能・低コスト化が進行すれば,あるいは実現するかもしれないですね.
 原理だけならこれは,現状のステルス技術に対する決め手足り得るものですから.

ゆうか ◆9a1boPv5wk in 軍事板
青文字:加筆改修部分

 ステルスのためにレーダーを立ち上げる,というのは膨大なコストがかかるが,携帯電話の基地局,TV局などの既設の電波発信源からの電波をモニターし,これが乱れる,途切れる瞬間に「何かが通った」と判別することで巡航ミサイルやステルスを探知するシステムは存在する.
 数百の電波監視ノードをナノセカンドで同期させる費用としては200億円程度とサーブは見積もったが,冷戦の終結を理由に計画は中止された.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 戦闘機や爆撃機で,レーダー反射面積を減らす工夫が始められたのはいつごろからなんですか?
 後知恵で考えれば,レーダーが出現するのと同時に,上記のことが考慮され始めてもよさそうな気がしますが.

 【回答】
 第二次大戦中は,殆どの航空機はレーダー反射面積のことは考慮されていない.
 レーダーを潰すには,アルミ箔をまくか低空飛行のみで対処していたし,それ以外については(航空機では)考えていなかったようだ.
 性能を優先することが先に来ていた上に,高度なステルス機を設計するには,高度な計算機(コンピューター)が必要だった
ため.
 手計算では無理.

 ただし例外的に,WW2末期の独逸第三帝国の試作爆撃機Go(Ho)229に関しては,ステルス性考慮されていたと考えて良い.

 1.主翼前縁部にカーボンの粉が埋め込まれていた.
 レーダー波を吸収(物理的には,損失によって熱に変換してる)する意図があった.

 2.エアインテークがエンジンを隠すように設計されていた.
 コンプレッサー部のレーダー波反射を避けるため,インテークが下に開口する様な設計がなされた.
 ただし,エンジンが変わったので無理になった.
 が,変わる前の写真が残っている.

▼ 以下引用.

――――――
「Ho229の設計を率いたのは,元々はグライダーの設計者だった三男のライマール・ホルテンだ.
 空気抵抗の削減と性能の向上を突き詰めていく中で,全翼機のデザインばかり考えるようになった」
と,アメリカのフロリダに拠点を置く航空歴史学者のデイビッド・マイラ氏は話す.
 マイラ氏は,1980年代初頭からホルテン兄弟が亡くなる1990年代末まで,実際に何度も兄弟にインタビューを行っており,1998年には『The Horten Brothers and Their All-Wing Aircraft(ホルテン兄弟と全翼機)』という著作を発表している.
 マイラ氏は続ける.
「一方,次男のヴァルター・ホルテンはドイツ空軍の軍人で,“バトル・オブ・ブリテン”などのイギリス軍との空戦で多くの仲間を失っていた.
 復讐(ふくしゅう)に燃えるヴァルターは,イギリスが開発した“チェーンホーム”というレーダーシステムをなんとかしてかいくぐる方法を探していた.
 そこで,弟のライマールにそのような爆撃機を設計できないかと頼んだのだ」.

 〔略〕

 このステルス性能をHo229が本当に備えていたのか明らかにするため,プロジェクトチームはまず現存するHo229に対して,第2次世界大戦当時のレーダー技術に基づく携帯レーダー装置を用いて調査を行った.

 そして,2008年の秋から冬にかけて,カリフォルニア州のモハベ砂漠にあるノースロップ・グラマン社所有の部外者立ち入り禁止の試験施設で,Ho229の実物大の複製が製造された.

 素材や製造技術も当時のまま再現されている.
 ただし,滑空は可能だが自力での飛行能力はないという.
 2009年1月には,復元されたHo229に向けて,第2次大戦当時と同じ形式のレーダー波が放出された.

 航空機のステルス性能は2つの要素から成り立っている.
 レーダー波が発信源に跳ね返らないようにする形状と,レーダーエネルギーを吸収する素材である.

 戦後になってホルテン兄弟は,「ステルス爆撃機を作るつもりだった」と話したが,ポール・E・ガーバー施設のリー氏など,一部の専門家はその点を疑問視している.
 リー氏は,「ホルテン兄弟は速度を追求しただけで,あのような形状になったのは空気力学的な理由によるものだ」と話す.

 それに対し,前述のマイラ氏などは,意図的にステルス性能を持たせるように設計されたと考えている.
 マイラ氏は,
「次男のヴァルター・ホルテンはドイツ海軍士官とも交流があり,潜水艦のレーダー回避技術の話を聞いていた.
 だからドイツ空軍の中でも独創的な発想ができたのだ」
と話す.

 Ho229復元プロジェクトのリーダーでノースロップ・グラマン社のステルス技術専門家のトム・ドブレンツ氏は,「Ho229の複製をレーダーでテストした結果,その流線形の先進的なデザインには,実際にレーダーを回避する効果があったことが判明した」と話す.

 ホルテンHo229は,どうやら本当に世界初のステルス爆撃機だったようだ.
 ただし,それが意図的に設計されたものだったのかという点は,まだ問題として残っている.

 ドブレンツ氏は,
「個人的には,独特な形状は空気力学的な理由から設計された可能性が大きいと思っている.
 ただし,現存するHo229をレーダーでテストした結果,合板の層の間に炭素材が挟まれていることが判明した.
 この素材はレーダー回避ぐらいしか役割が思いつかない.
 それでも,ホルテン兄弟がその性質を理解していたのかという点については何ともいえない」
と断言を避ける.

――――――「ナショナルジオグラフィック」:“ヒトラーのステルス戦闘機”を復元(June 26, 2009)

 また,F-80だかT-33だかに電波吸収剤を塗ったくってテスト飛行を行った事例が紹介されている.
 50年代か60年代初頭…だったような.
 飛ばすと塗料が剥げて効果なくなるるわ,重くてまともに飛ばないわでさんざんだった模様.

 現代のレーダー反射面積低減理論の基礎を築いたといわれるのはソ連人ピョートル・ウフィムツェフ.
 しかし1957年に発表した論文はソ連では省みられず,米で花開くことになる.


 一応,米国の偵察機SR-71にはレーダー反射面積にたいする工夫がなされている.
 RCSを気にして,垂直尾翼を内側に傾けたりブレンデッドボディを採用したりしている.
 初飛行は1964年.
(前作U-2も努力はしたが,効果殆ど無し‥)

 もっと本格的なステルス機はF-117で初飛行1981年を待つ必要がある.
 戦闘機や爆撃機で「レーダー反射面積を減らす事を目的とした」機体形状の設計が「意図的に」行われるようになったのは,恐らくは1980年代のハブ・ブルー(F-117の原型というか技術実証機)あたりから.
 ただし,ノースロップのXB-35の飛行実験中に(偶然)ステルス効果を目の当たりにしたあたりから,反射面を減らす考えはあった.

 しかし,F117以前はむしろ,電子戦に対応するためにアンテナを収めたフェアリングを機体表面に張り出させたり,効率的なエアインテークの設計などむしろ飛行性能や,急速に発達する技術への対応が求められた時代と言ってよい.
 レーダーへの対処策としては機体形状よりも電子戦装備によるソフト的な対処や,低空飛行による物理的な対処,機体ハード面では現在でも有効な電波吸収性を持つ塗料の開発などが主だった時代とも言える.

 また,戦闘車両等に比べて機体形状がモロに運動性能に繋がるだけに,ステルスよりは性能を重視した機体設計にならざるを得なかった.

 それに,大量のコンピューティングパワーが使える近年まで,ステルス機の開発はできなかった.
 スパコンが出来て初めて,機体内部を通過する電磁波が共振して電波を放出することのないよう機体設計できるようになった.

 ステルス性とは機体の外形だけで決まるものではない.
 機体の外板は電波を完全に反射するわけではなく,一部機体内部に透過する.
 透過した電波は機体の内部構造に当たって反射します.つまり機体内部構造の電波反射まで考慮しないと,「レーダーにほとんど写らない」というレベルのステルス機にはならない.

 さらには,超音速飛行をすると,機体表面付近の大気が電離することがある.
 これが電波の反射源となることがある.
 これも効果的に制御できなければならない.

 これらの要因により,ステルス機開発は
機体設計コンピュータの発展を待つ必要があったのである.

ふみ他,日時不明
軍事板,2004/09/18(黄文字部分)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ノーマルな戦闘機機のRCSをF-22程度まで軽減できる電波吸収塗料が開発され,比較的安価で量産可能になったら,世界の軍事バランスにどの程度の影響が出るでしょうか?

 【回答】
1.
 桶屋が儲かる.

2.
 あんまりかわらないと思う.
 塗料がぬれない部分,たとえば,エンジンのファンブレード,などは,依然としてレーダーを反射する.
 比較的新しいレーダーなら,航空機を探知するにはそれで十分なんだ.

 また,いくら電波吸収塗料を塗ったとしても,中身の電子機材が旧式では意味がない.
 ECMで無力化されるか,レーダーの発信電波を逆探知されて,居場所がばれる.
 それじゃステルスの意味が無いんじゃないのかな?

 そもそもステルス性とは,単にRCSを低くすれば良いという話ではないんだよ.
 ステルス機とはプラットフォームをどうこうというだけでなく,軍全体の運用にかかわってくるんだ.
 だから,形だけの低RCS機が拡散しても,第三世界の小国同士のバランスが崩れることはあるかもしれないけど,世界規模の軍事バランスにはほとんど影響しないと思うよ.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ステルス技術は実はソ連製だったと聞きましたが本当なのでしょうか?
 それならソ連のステルス機があってもいい気がするのですが…

 【回答】
 ロッキードがステルス機を開発する際に,ソ連の電気工学者ピョートル・ウフィムツェフ(ユフィムツェフでは英語読み)の論文を発掘してそれを応用した.
 この論文は,あまりに難解すぎてソ連当局は重要性に気づかず,機密指定も行っていなかった.
 それをアメリカ空軍が翻訳して国内で紹介していたもの.
 だからステルス技術のヒントになったと言うか,開発の近道を提供したというくらいの位置付け.

軍事板


 【質問】
 スホーイやイーグルをライセンス生産している国なら,F/A-22やF-35並みの次世代戦闘機を作れるようになりますか?

 【回答】
 スホーイやイーグルがデスクトップパソコンの製作なら,F/A-22やF-35クラスはノートパソコンの製作に匹敵します.

 具体的に言うと,F/A-22では赤外ステルス対策とスーパークルーズのため燃料を循環させて機体を冷却しますが,これはステルスの要求仕様によって循環量が変わると言うことになり,つまり機体の重心位置も変わってきます.
 すると安定を保つための制御面の動きが生じ,電波ステルスに影響がでる.
 逆に電波ステルスの仕様を一定にすると・・・.

 また,レーダーも通信,ECMにも使用されますから,それぞれのパーツや仕様が固まらないと,とりあえずレーダーとして積んで飛ばしても,ECMの要求でレーダー全体作り直しになり,結果として外寸,重量にまで変化がでれば機体全部やり直し.

 とりあえず殻を作って飛ばし,機体のテストと追い込みをしながら各部分システムを仕上げて足していく,という手法が使えず,統合した状態でしか有効な開発が進まない面倒なものなのです.

 この統合技術が今,最先端機の最大の障壁といわれます.

軍事板


 【質問】
 最近の戦闘機についてるカナード翼って,機動性向上のためについているの?
 ロシア戦闘機の新しいのには廃止されたみたいだし,アメリカ製にはついていないし,ステルス性にもよくないって話だし,あまりメリットがないの?
 でもタイフーンやラファール,このあいだの中国製にはついているんだよね.

 【回答】
 運動性向上のためについてるのが一般的.
 カナードの最大の特徴は,主翼の干渉を受けない位置についている事.
 この為,尾翼より劇的に揚力を得る事ができ,運動性が向上する.
 また,尾翼をつけずデルタ翼を採用した場合,超音速時には有利だが,離着陸時には主翼のフラップを使えないため不自由するという欠点がある.

 この場合,カナードがあるのなら無理のないエレボン操作の範囲内で姿勢を上げる事ができ,同時にカナードを用いて,主翼表面に流れる気流を制御することもできるので,高迎角をとっても気流を剥離させずに安定して飛行する事ができる.
 カナードとベクタードスラストの組み合わせは,変態飛行を実現するかなりの近道と思っていい.

 その反面,カナードがあると余計にレーダを反射してしまうので,ステルス性は悪化し,ステルス機の設計はやりにくくなる.
(逆に言えば,そこまでのステルス性を持ってない機体には,大きな違いは無いという見方が出来る.
 どっちを重視するかはその国次第だが,高度なステルス機を作る技術を現時点で持ってないような国とかは,機動性向上の方を選択するって事もある)

 さらに機体制御の大きな部分が,カナードにかかってくるため,高度かつ信頼性の高い制御技術がないと,未亡人製造機になる.

 で,ぶっちゃけた話,そこまでの機動性を得ても意味があるのか?って根源的な問題があるんだ.

軍事板,2008/11/17(月)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 カナードによる機動性向上効果は,その後の技術進歩で,デジタルによる機体制御とエンジンの推力偏向能力で,同じかそれ以上の効果が出せることが分かったので,最近では廃れたんでは?
 タイフーンやラファール,それに大陸中国の殲10型の基になったイスラエルのラビなんかは,一世代古い設計思想なので,上述の研究成果を取り入れていないため,カナードが付いているし,FSXにもカナード案があったけど,やっぱり研究を詰めた結果,
「カナードつけなくても,デジタルフライバイワイアの能力でなんとでもなる」
ということになって終わった

 【回答】
 機体制御技術の進歩(CCV/FBW)で必要性が薄くなったのは,あくまで尾翼付き機に更に追加するカナード(所謂スリー・サーフェス).
 無尾翼デルタの離着陸時の要高迎角特性を緩和するには,現在でもカナード(クロース・カップルド・デルタ)を超える解決策は無い.
 他の方法ではカナード並の機動性を得るのは無理なんだ.
 空力の原理をキャンセルする手段を見つけない限りは.

 で,RCSへの悪影響が無尾翼/カナード・デルタのメリット以上に深刻なので,将来は廃れるであろう事が予想されてるわけ.


71 名前: 名無し三等兵 投稿日: 2008/11/17(月) 20:36:37 ID:Mr4GxTv2

 あれ?
 ラプターはタイフーン以上の運動性があるのでは?


74 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/11/17(月) 20:54:12 ID:???

 他の条件が揃ってないでしょ.
 特にエンジン.

軍事板,2008/11/17(月)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
1 前進翼がステルス性が悪いのは何故ですか?
 また,前進翼はどの程度ステルス性を損なうのですか?
2 全翼機がステルス性が高いのは何故ですか?
3 以前,90度でまじわる凹面がステルス性を悪くするという事を読んだ覚えがありますが,それは何故でしょう?
4 カナード翼はどの程度ステルス性を損なうのですか?
 主翼とかさなるし,尾翼に比べればわずかな物だとおもうのですが.

 【回答】
 程度問題は後でまとめて記述

1電波は前縁のようなエッジに当たった場合,反射波は円錐状に散乱されてしまいます
 また,エッジ以外でも光のような入射角と反射角が等しい反射以外に小さな散乱を生じます
 前進翼では前縁で反射された電波が胴体に当たり更に反射され──を繰り返すため,反射の計算が複雑となり不利であると言われてます.

2全翼機は主翼と胴体,垂直尾翼と水平尾翼の組み合わせといったコーナーリフレクター効果を生じる要素が少ないです(コーナーリフレクター効果とは3のこと)
 また,反射する要素自体も少ないので反射の計算も比較的容易となります.

3発信者の方向へ電波が反射してしまいます.
 とりあえず中学校の理科と数学の教科書でも引っ張り出して復習してください.

4例えば,前方からの照射に対し尾翼式の機体は主翼で尾翼は隠れるのに比べ,カナード式ではカナードの各角度での反射の計算+主翼での反射の計算となり,反射の計算は複雑になる上,反射方向の制御は困難になります.
 また,電波は尖った部分でも散乱を生じる事がカナード式を不利にしています

 程度問題
 RCSはその形状に依るものが大きいため,そのような曖昧な質問では答えられません.
 電波吸収材の効果は気休め程度と思ってください.それでも有る無しでは大違いですが(後述)

>尾翼に比べればわずかな物

 レーダーの探知距離はRCSの4乗に反比例します.
 例えRCSを1/2にしても探知距離は0.84倍にしかなりません.多少RCSを下げた程度では大した効果はないのです.
 逆を言えば,探知距離を縮小するには多大なRCSの削減が必要となるのです.
(例え全体から見れば効果が少ないと分かっていても電波吸収材を使用するのはこのためです)
 そのため複雑な反射の計算が求められる形状は,散乱や回り込みなどといった電波の特性もあり,反射の制御が難しく敬遠される傾向にあります

名無しAPG● ◆yvNqrnvsYY :軍事板,2006/03/14(火)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 エッジレスのステルス機は作れないのですか?

 【回答】
 いくらコンピューターを使っても,現用レーダー波長の物理的性質は変えられないから,曲面オンリーで高いステルス性を得るのは困難だろう.
 現在の反射方向制御とは,まったく異なる発想が出てくれば別だが.

 つまり,機体前面を連続曲面だけで構成した場合,必ず正面からのレーダー波に対して垂直な部分が生ずる.
 この部分は当然強い反射を返してしまうから,ステルス性が落ちる.
 その面を最小にしようとすると,その部分だけ極端に曲率を小さくしたカーブ,つまりはエッジが出来てしまう.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ステルス機は以前はF-117みたいに角張ってたのに,最近はそうではなくなってきたのはなぜ?

 【回答】
 最初はステルスというのは,一方向に鋭い反射を返すと見つかりやすいから,丸くして全体に薄めて反射する,という発想でした.
しかし「発信してきたレーダーの方にさえ返さなけりゃいいじゃないか?」という発想に変わり, F-117的なファセット(切子)風のデザインとなったわけです.
 同時に,コーナーリフレクターの原理でレーダーの方に反射波を返しやすい直角部分が嫌われるようになったと.

 F-22のノーズも最初は切子状でしたが,ロックマーティンの技術がさらに進み,
「どうすれば反射が少なく,滑らかなノーズを作れるか」
が分かって現在の形となったそうです.

軍事板

faq01a09f117.jpg
(画像掲示板より引用)


 【質問】
 前進翼のステルス性が高いというのは本当なのでしょうか?

 【回答】
 前進翼は角度的に翼が反射した電波を胴体が乱反射する事になるので,ステルス性に劣ると言われる.

 ただこれには反論があり,普通の航空機を翼だけ前進翼にしたらそうだろうが,総体として設計すればそうでもない,という説や,むしろ胴体含めてステルス形状ならば却って有利,という説もあって判然としてない.

 前進翼のステルス機は今のところ,公開されてるのは巡航ミサイルしかなく,これは前進翼にわざわざしなければならない理由が見当たらないのに前進翼にしてるので,実はステルス性を損なうってのは違うんでは?という考察も.

 あと,高いステルス性能を持つ戦闘機や攻撃機の場合,前進翼がもたらす高機動性の必要性がそもそも薄くなる.
 アメリカのF-22がそうであるように,相手のレーダーに映らず一方的な視界外戦闘ができるのに,目視近接空戦を意識した高機動性能が必要なのか?という.
 もちろん近接格闘戦が全くできない機体では困るだろうが,F-22なんかの場合は短距離用の赤外線ミサイルでさえ,視界外戦闘に近いことができるのに,わざわざドッグファイトをするのか?と.

 攻撃機が地上を這うように飛ぶのは,レーダーに捕捉されるのを避けるためだが,ステルス性の高い攻撃機がわざわざそういう飛び方をしなければいけないのか?という.
 もちろんステルスであっても,極力レーダーを避けて飛んだ方がいいに決まってはいるんだけど.

 そういうこと考えると,構造強度の増大その他といった問題を圧してまで,前進翼機にする意味があんまり見いだせなかったりする.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ステルス機は,ステルス性を確保するために,敵レーダーにジェットエンジンが映らない様,エアインテークをS字に曲げています.
 しかし日本のATD-Xには,レーダーブロッカーなるものが装備され,エアインテークをS字に曲げなくてもレーダー断面積を上げずに済むようになったそうですが,このレーダーブロッカーとは何なのですか?
 エアインテークをS字に曲げるのと同等のステルス性を確保できるのでしょうか?

 【回答】
 画像中央にあるファンっぽい奴の事.
(画像はスーパー・ホーネットのレーダー・ブロッカー)

 正面から照射された電波をこれで反射させ,あらかじめ設定された方向へ,制御された反射波を返す事を目的とする構造.
 この装置によって,エンジンの複雑な構造によりどこで増幅されるか,どっちの方向に強い反射がいくか分からないという事を防ぐことができたらいいな,と.
 機体全体を使って反射方向を設定できるインテークの設計よりは方向に制限があるが,より少ない労力かつ少ない空間で使えるため簡易&小型機向きといわれてはいる.
 しかし実際問題,B-2やF-22,心神について具体的にどの程度の反射がどの方向に行くのかは,機密の中の機密に属するので答えは誰にも出せない.

 技本の研究発表会で心神の写真(CGイメージ?)が公開されてたが,エンジン前面に装着するステーターかIGVに似た形状の物で,(おそらくRAMで構成された)翼断面が伸ばしたS字状に成っており前方からエンジンを隠している.
 B-1Bのインテークバッファを同心円状にした物と言えると思う.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ステルス機って,絶対に敵に探知されないんですか?

 【回答】
 現状ステルスとは「絶対に探知されない」のではなく,「探知されにくくする」事.
 あるていど以上に近づけばやはり探知されてしまうし,障害物の何もない高空を飛べばやはり探知されてしまう.

 すげえ簡単に書くと,レーダーっていうのは

電波を出す→何もないところでは電波は行ったきり→何かあると反射して発信元に戻る→探知

という仕組みのもの.
 ステルス機というのは機体の形状を工夫して,電波を乱反射(正確にはちょっと違うんですが)させ,発信元の方に十分に反射しないようにしている
 一部電波吸収材も使っているが,肝は形状.
 んで,レーダーとの距離があまりに近いと乱反射させきれず,探知されることがある.
 ステルス機の方としては,この距離に近づく前に発射できるミサイルなんかを装備して奇襲できるようにするわけ.

 しかし,より近づかないと探知されないという事は,相手が対応する余裕時間が少なくなり,撃墜される確率も減る,という感じ.

 電波が反射する方向を極力限定する,というステルスに対しては,離れた場所から同時に複数のレーダーで同じ地域をサーチすれば,反射の大きかったいずれかのレーダーに探知される可能性は上がる.
 普通は設備投資が過大になるため,レーダー覆域はあまり大幅には重複させないけどね.
 ま,ステルスはその裏を突いてるわけ.

 また,探知する方法として研究中なのが,レーダーの電波を発信するところと受信するところを別にして,ステルス機の形状の工夫を無効化するシステムがある.
 これをバイスタティック・レーダーという.

 他に,問答無用の大出力レーダーで微小な反射波を拾うなども考えられている.

軍事板

▼ 米USNI Newsによれば,中国海軍の新型駆逐艦・052D型駆逐艦に搭載されているタイプ346AESAレーダーとタイプ518Lバンドレーダーは,F-35を350km先から探知が可能と露地政学問題研究所のコンスタンティン・シブコフ氏が述べています.
 タイプ346はSバンド,タイプ518はLバンドですので探知は可能でしょう.

Can China's New Destroyer Find U.S. Stealth Fighters? | USNI News

ステルス機の優位性はどんどん失われつつある:航空宇宙ビジネス短信・T2

 なお,記事ではHQ-9Bの射程は200kmとありますが120kmとも言われており,こちらははっきりしないものの,だいたい150km以内が射程と見ていいでしょう.

HQ-9 - 航空軍事用語辞典++

 また,米海軍では既に配備され,空自の次期AEWの有力候補であるE-2Dアドバンスドホークアイに搭載されているAN/APY-9・UHFバンドレーダーは,ステルス機の探知を可能にしています.
 もし空自に配備されれば,ロシアのT-50や中国のJ-20,J-31に対する探知が容易になり,空戦においては空自や米海空軍の優位性は確保されます.

航空宇宙ビジネス短信・T2 軍事航空,ISR,無人機,安全保障,最新技術: ステルス機に有効なE-2Dの新型レーダー

 こうなるとF-35やJ-20,T-50の存在意義に疑問の声が出てくるのは当然です.
 実際,F-16設計者のPierre Sprey氏はF-35は駄作だと一刀両断しています.
 まぁ,この方は典型的なファイターマフィアの方であり,BVR主導のステルス機に対し敵意を抱いている方ですから,ある程度は割り引いて話を聞いた方がいいかもしれません.

F-16設計者,F-35が駄作な理由を語る : ギズモード・ジャパン

 こうなるのならいっそF-22を再生産するか,生産を継続し日本やイスラエル,サウジアラビアへの輸出許可を出した方がよかったような気もします.
 そうなれば次期F-Xの再選定もありえるかも知れません.
 まぁ,現状ではF-22の生産を中止したロバート・ゲーツ前米国防長官の路線を,そのまま継続しています.

 ただ,F-35計画やその空自の次期F-X選定は間違っていたとはさすがに言えないでしょう.
 F-35は搭載されているAN/AAQ-40 EOTSにより死角は全くなく,高機動な格闘戦の必要がなくなりました.
 これはパイロットの条件のハードルをさらに下げた事になります.
 長距離レーダーやAESAレーダーにより矯正視力の人物でもパイロットになれる時代,ETOSでさらにパイロットのハードルを下げる事が可能になります.

F-35 LightningⅡ ライトニングⅡ:EAGLET

 また,ステルス性の優位性の低下は無人ステルス爆撃機の撃墜をさらに容易にさせる事から,UCLASS計画にも大きく影響が予想されます.

 ステルス性の優位性低下は空戦においては1980年代からの戦術,つまりパイロットの飛行時間と技量,さらにそれを裏付ける装備の運用と稼働率の時代に戻ったという事になります.
 そうなると稼働率が90%以上,飛行時間が240時間と世界有数の空軍力を持つ我が国にとってはむしろ・・・という気がします.▲

ねらっずーり in mixi, 2014年06月22日
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ステルス機はまったく電子的ノイズを発しないのですか?

 【回答】
 航空機が発する電子ノイズは電波の波長について言えば,無線通信,レーダー,電子妨害などです.
 もちろん黒体輻射から始まって回路から発生するノイズ等は避けられませんが,電波波長域については,それを実用的な距離と精度で探知するシステムはありません.
 従って,高度測定レーダーから敵味方識別装置から全てオフにした状態で飛行すれば,ステルス機に限らず,問題になるほどの電子ノイズは発生しません.
 それでも最近は,そのようなノイズをパッシブに検出する研究が進められている(ウクライナは実用化したと主張していますが,まったく未確認)ので,ステルス機では一般の航空機以上に漏洩ノイズ対策が行われているそうです.(HN "System" )

軍事板


 【質問】
 ステルス戦闘機についての質問なんですけど,スティーブン・セガール主演の映画「暴走特急」の中で,レーダーに映らないステルスを撃墜する方法として
「乱気流だ,ステルスが飛ぶと乱気流が発生する」
と言ってましたが,実際にそんな事が可能なのでしょうか?
 又,乱気流ってレーダーに映るんですか?
 それともレーダー以外で乱気流を判別出来る方法が在るのでしょうか?

 【回答】
 不可能だとは言わないが,晴天乱気流などだとレーダーでも映らないからな.
 雨粒の挙動などを見る気象レーダーなどある.
 コンディションによるだろう.

 まあそれでステルス機を見ると,どう見えるかは知らない訳だが,反射断面積がどんどん変わるのであれば,一つの物として追いかけられるかどうかは謎.

 雲など水滴の動きがわかるなら,空気の動きである乱気流は捉えられるだろう.
 だが,この場合は乱気流というよりは,長い尾を引く翼端渦を捕らえるようなものになるのではないか .
 実際に捕らえられるかは知らんが,周囲にあまり気流の乱れが無く,エコーを返す水滴などが豊富にあれば,捕らえられても不思議ではないと思われる.

 まあ,ステルス機側としては,雲などに長時間入らなければ良い訳だし,普通は積乱雲とかは避けるわな.
 小型の戦闘機や攻撃機の場合は,さほど大きな翼端渦はで無いだろうし.

 以下,研究中の物が多いが,ドップラーレーダーは空港などに導入が進められているだが,いずれにせよ対象となる水滴や氷の粒が小さいほど返ってくるエコーは小さいので,雲などが無い部分では探知距離が小さいとか探知困難とかになるだろう.

風のつめ跡/突風Q&A
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000000611080009

>MBの発生時には,強い降水(とくに雹)域の落下や,中層での収束流などが
>見られるので,ドップラーレーダー,2重偏波レーダーなどによってこれを
>観測し,予知に生かそうとする努力が続けられている.
http://kobam.hp.infoseek.co.jp/meteor/downburst.html

乱気流
http://www.jal.co.jp/jiten/dict/p272.html

 それと,今でもそうだが,「暴走特急」製作当時のステルスはさらに謎めいていた.
 製作側も「ステルス=レーダーに100%映らない」と信じていて,
「乱気流だ!ステルスが飛ぶと(ry」
というセリフが,苦肉の策として生まれたのかと思われ・・・
 実際,なにかの映画でもステルス爆撃機がなんかを作動させて,レーダーから消え去るシーンもあったからね.
 映画のタイトルは忘れたけど.

青文字:加筆改修部分


 【質問】
 電波を出す場所と受ける場所を別々にしたり赤外線探知を行うなどすれば,ステルス機も普通に見つけられそうな気がしますが,どうしてステルス機は今のような圧倒的な優位性を保てているんでしょうか?
 F-22がF-15を5機を同時に相手にしても,3分で勝利する,などの話がどうにも信じられません.

 【回答】
 受ける場所を別にしてステルス探知・・・と言うのは,今熱心に研究されてる分野ではあるが,まだ実用化はされていない.
 ステルスも電波を一方方向のみにだけではなく分散させて散らすよう努力されてるし,吸収もするようにしてるから,話はそう簡単ではない.
 また,複数のレーダーによる検出は,それぞれのレーダーの検出結果をつきあわせて計算せなあかんために,膨大な計算能力を持ったコンピューターと,煮詰めまくった計算アルゴリズムが必要.
 なので,現在は実用化されていない.

 赤外線探知についても,それで探知されないようにステルス機は工夫されてる.
 ステルス機は赤外線の放出も抑えるように工夫されているし,そもそも赤外線誘導はあまり信頼性が高くない.

 何があっても探知されないわけではないが,現状,既存の技術でステルス機を早期に探知する事は,上記の理由で不可能にちかい.
 なので,現在はF-15にとっては「見えない相手に一方的に殴られる」状態になってしまう.
 なにしろ,F-15のレーダーからだとF-22は「マッチ箱1個分」にしか見えないらしい.

 なお,そういうステルス機を探知可能なレーダー(バイスタティックレーダーという)を中露が現在開発中らしい.

軍事板


 【質問】
 FPS-XXがステルス機を捕捉できるのは何故?
 単に出力と感度が高いだけ?

 【回答】
 ステルス機は見えないわけじゃない.
 この場合電波ステルスに話を限りますが,反射波が大変弱いだけ.
 しかし地上から見た場合,バックは空なので,バックから帰ってくるノイズはない.
 したがって十分感度を上げれば,ステルス機を拾い出すことができます.
 もちろん,回路内ノイズとか,サイドローブとか,地上の電波源とか,実際にはノイズは豊富にあるわけで,信号処理(変調,フィルタリングなど)の方式も大変重要ですが.
 また,航空機搭載の場合,ルックダウン状態になると,これもなかなか処理が大変でしょう.

軍事板


 【質問】
 UWBが対ステルスレーダーとして使えるのはなんで?

 【回答】
 電波ステルス性は,一定の周波数に対して最適の特性を持つから.
 もちろん色々な工夫や多重使用によってかなりの範囲をカバーしようとするが,多様な周波数を使用されると,どこかでボロが出ることがある.

 また,長波長のレーダー波を使用されると,吸収材などでは消しきれず,構造材の金属梁が共鳴してしまう.メートル波レーダーにステルス機が映りやすい理由.
 幸い,メートル波の分解能ではミサイルを十分正確に誘導できないことが多く,また相対角度が変わると見かけ上の長さが変わるので共鳴が消える.
 一点からでは継続した追跡が困難.
 そこで多数の受信機をネットワークして・・・となる.

軍事板


 【質問】
 「心神」などの開発に含まれるスマートスキン・レーダでは,ステルス機を探査できないのですか?
 薄いフェイズドアレイ・レーダーのようなものだと伺ったのですが……

 【回答】
スマートスキンて
http://www.mod.go.jp/j/info/hyouka/17/jizen/honbun/07.pdf
上のことでしょうか.
 まさに薄いフェイズドアレイ・レーダですね.
 どちらかと言うと全周警戒用だと思います.
 ステルスの探知は出来る,出来ないではなく,どこまで延ばせるかですから,合成レーダとして(見かけのアンテナが大きくなる)使えると思いますが,スマートスキン(あるいはコンフォーマルAESA)自体が構想段階,せいぜいごく初期の実験段階ですから,実用化された際にどの程度の能力になるかはわかりません.
 そもそもその時期にはステルス機も当然,進歩しているでしょう.

 最近の一般的な兵器の開発期間と,コンフォーマルAESAが持つ,ハードウェア,ソフトウェアの課題を考えると,10年や20年で実用化されることはちょっと考えにくいでしょう.
 その時,そのレーダーが相手にするのは有人機なのかUAVなのか,パッシブステルスなのか,アクティブステルスなのか.

 ともあれ,理屈では面積が増えるので分解能は増す勘定であり,側方や後方の目標の検出力は明らかに増す(というか発生する)でしょう.
 前方に対しても翼前縁に長い素子列を置けるので,これもかなり向上するでしょうし,地上と双方をスキャンする際に,地上は機体のAESAに任せ,前方のレーダーは空中目標に集中できますから,さらに有利になるでしょう.
 今のとこは妄想に近い話ですが.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ステルスはある特定の方向に反射を集中することにより,その方向以外からの探知を難しくさせる技術であり,かつまたその反射の方向を正面からずらしてやることによって,正面からきた照射電波を,元のきた方向に戻さないという方策が採られていると聴きました.
 ならば,ただ単に照射部と反射受信部を単にズラスだけではだめで,ステルスが設計されている反射角度にピッタリあったところに反射受信アンテナがないと,写らないし,目標が動いたり姿勢を変えて,照射電波の当たる角度が変わればまた,よく写る受信点がずれるはず.
 結局,受信アンテナを沢山横一列において一瞬きらめいた反射の情報をコンピューターで合成してステルス機の位置を推定するシステムを開発することになると思うが,単純に照射出力を上げたり,ビームを絞ったりするより簡単に開発できるものなのですか?
 もしそうだとしたらそれはなぜです?
 また,ステルス船は横ではなく,上に反射点をずらすわけですが,この手のステルス相手なら受信アンテナを縦分散するためにやたらと高い塔が要りそうですが,どう対処するのですか?
 技術解説お願いっします.

 【回答】
 ステルスは仰るとおり,電波の反射を放射方向から出来る限り外すように設計したものです.
 また,照射されたレーダ電波を吸収させることにより反射を減らすと言うことも同時に行われている場合もあります.

 ただ,悲しいことに,やはり反射しても,波の性質を持つ電波は回折現象を起こし,僅かながら元来た方向へも電波を反射させてしまいます.
 それが極度に小さいから探知しにくいと言うだけですね.
 探知するとしたら,パラボラ型の好感度アンテナだと良いかとは思いますが,やはり巨大化させないと,十分な受信は難しいでしょう.
 ペンシルビームにより探知する方法はフェーズドアレイレーダがそうですので,このたくさんある小さな送受信部からの信号を平均化してノイズ部だけを取り除けば,探知の可能性も上がります.
 と言うのも,ノイズレベルの信号は,殆どが送受信部の回路内の雑音ですので,それを取り除けば,共通している反射信号が得られるからです.
 それにより,怪しいと思われる部分があれば,そこを集中的に探知すれば,目標を捕捉できると思われます.

 ・・・以上は理論ですが,特別に難しい装置でなくても,実際にはかなり見えます(笑)

 船のステルスですが,こちらはかなりRCSが大きく,どうしても見えてしまいます.
 船が進んだときに出来る航跡(波)は消しようがありませんし,1t程度のボート程度のレベルでもしっかりレーダには映りますので,それ以下にRCSを落とすのは,現在の技術ではかなり困難であるのが実際ですね.
 何しろ,ミサイルでさえ,レーダにはしっかり映って見えてしまいますので.
 それこそミサイルのRCSは0に近いのに,通常の航行レーダではっきり見えましたから.
 FCSが使えるのも頷けます.

名無し電探 : 軍事板,2003/03/30
青文字:加筆改修部分



 【質問】
>ただ,悲しいことに,やはり反射しても,波の性質を持つ電波は回折現象を起こし,
>僅かながら元来た方向へも電波を反射させてしまいます.

 ここらへん敢えて端折っているのだろうけど,回折による効果を考慮した上で,後方への反射が小さくなるようにしてるんだよね?

 【回答】
 回折しても真後ろにはいかないですし,もちろん効果は考慮してますね.

 さらに加えると,反射波の干渉による減衰も,かなり考慮していると思われます.
 まず,どの方向にも電波は回折して伝わっていきますが,違う場所から反射した電波は,ぶつかり合うとき(=干渉),打ち消すか増幅するかのどちらかになります.
 と言うわけで,レーダの反射波が下斜めから来る物と仮定して,各突起部分ごとに,その反射方面に反射する電波が最小限になるよう,干渉させてnullに近づけていることも考えているのではと言うことです.
 単純に散乱させるだけだと,やはり無理があるので.

名無し電探 : 軍事板,2003/03/31~04/10
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 これからの時代,非ステルス戦闘機,非ステルス攻撃機,非ステルス爆撃機は新機種が開発されなくなり,どんどん廃れていくのでしょうか?
 それとも,ステルス機がカバーできない隙間需要の中で細々と残って行きますか?

 【回答】
 非ステルス戦闘機→確実に廃れる.
 ステルス戦闘機相手に非ステルス戦闘機はほとんど太刀打ちできず,主要任務である制空権の確保ができなくなるからである.

 非ステルス攻撃機→敵地攻撃や敵防空網制圧では廃れるが,近接航空支援や自軍圏内での活動が主な機種なら残る.
 非ステルス機はステルス機に比べて安価で,整備性も良いのがポイント.

 非ステルス爆撃機→軽爆撃機と重爆撃機は,戦闘機や攻撃機の発達で既に廃れた.
 戦略爆撃機だが,この種の兵器は,アメリカ,ロシア,チャイナ,ジャポニアなど限られた国でしか使い道が無い.
 巡航ミサイル発射母機として使うのを主とするなら,ステルス性は無理に付ける必要が無い.

 ステルス機を用意できない第三世界では当分残るだろうが,先進国では主流で無くなるのは確実.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 友人が量子コンピュータの実現でステルス機がステルスじゃなくなる(レーダーで見えてしまう)とか言ってたのですが,本当でしょうか?

 【回答】
 携帯電話やらテレビ放送やらの電波雑音がステルス機に反射するので,その反射波を拾って解析するとステルス機を探知することができます.
 ご存知の通り,ステルス機といっても電波を反射しないのではなく,送信レーダーとは違う方向に電波を反射する(減らしはするが)ので,レーダーに映りにくいだけだからです.
 ただ,その解析には膨大な処理が必要なので,現状では低い性能しか得られません(すでに使われてはいます).

 電波雑音を利用するのではなく,現在運用されている多数のレーダーを,それぞれが自分の出した電波の反射波だけ見るのではなく,他のレーダーの反射波も拾って同様の解析を行う方法もあります.
 各レーダーの発射波をコード化し,どのレーダーがいつ発射した電波か見当がつくようにすることで,高い精度で目標位置を決定できる(合成開口の原理によって捜索レーダー波長でミサイルのロックまでできるという「噂」)といわれています.これも同様に膨大な計算処理が必要です.

 計算能力と同じぐらい問題なのが,有効な計算アルゴリズムの設計だという話です.
 コンピューターだけではダメ.

軍事板,2006/03/04(土)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 自らレーダーを使ったらすぐに位置がバレてしまうと思うんですが,ステルス機はどのような方法で解決してるのでしょうか?

 【回答】
 探知距離の長いレーダーを短い間だけ作動させる,という方法もある.
 これなら相手の電波警報装置は一瞬しか作動しないし,こちらはより長距離から余裕を持って攻撃できる.

 他にはAWACSに探知してもらってそのデーターを貰う,とか.

 あと,F-22は高度な電波逆探知装置を搭載してるので,自分はレーダーを作動させなくても,自分に対して照射されてるレーダー波を分析して,発信源をある程度までは正確に解析できる,という能力を持っている.

軍事板


 【質問】
 これは本当ですか?

~~ ~~ ~~
 F-22はステルス性能を売りにしていますよね.
 でも,敵機に照準を合わせてピン(レーザー)を打つときは,ステルスではありません.
 ホンの一瞬のことですが,このときはステルス性は失われるのです.
 その失ったごく_の一瞬を検知して分析するプログラムを中国が作っており,もうすぐその技術ができるという情報が入っています.
 そうすると,ステルス機なのに,瞬間的に居所が空間座標軸で正確に把握されてしまう.
 ステルスに対する技術というのは中国でもそこまで進んでいる,となれば,ステルス性は将来的にあまり意味をなさないともいえるでしょう.
 特に日本の場合は(軍事研究者).

~~ ~~ ~~ http://www.nikaidou.com/2009/02/f22.php

 【回答】
 いや,「軸」知られてもなぁ.困らないだろ常識的に考えて.
 「空間座標」じゃなくて「軸」はないよなぁ.
 「軸」なんて人間が便宜的に置いてるもんですよ?
 や,まぁ,「軸」知られたからって「距離」(よするに空間座標)わからないと意味ないよね.ということで.

 「空間座標」だったとしても,時間(軸)固定かつ1箇所からのデータだけで,どうやって判断するのかしら.
 そりゃー,当然3地点以上からの観測データあれば,はじき出せる可能性はあるでしょうが.

 一通り読んだけど胡散臭い記事なのですわ.コメンティーヌ(誰

邪夢 in mixi,2009年02月18日02:15


 【質問】
 ステルス機は非ステルス機に比べて,マルチロール化やマルチロール化が困難と言われていますが,それは何故でしょうか?

 【回答】
 F-22もF-35も「ちょっとステルしい」なF/A-18も,みんな立派にマルチロール機なので,
「ステルス機は非ステルス機に比べて,マルチロール化やマルチロール化が困難と言われていますが,」
が誤り.
 F-22でもJDAMと空対空ミサイルともに,機内ベイに搭載して出撃できるわけで・・・
 それどころか,F-22は電子情報収集能力が高いからという理由で,電子戦機としてイラクに派遣させられかけたりしたわけで・・・
 F-35はAESA使った攻撃的電子戦に使えるとか言われてるわけで・・・

 ただし,機内体積には限界があるから,マルチロールするために搭載する兵装は外装となり,「ステルスを保ったまま」「マルチロール任務を実行する」ことは難しい.
 それだけ.
 各種兵装を機内に納めないとステルス性能を維持出来ない.
 そうすると搭載量が減ってしまうし,搭載量を増やそうと機体内容積を増やすと機動力が落ちてしまう.
 おまけに多大な兵装を抱えて戦闘機動を行うには,機体構造を強化しないといけない.

 それでも,機内ベイに収容できる分だけ,ステルしい状態にはなる.

 ちなみに機内体積増やしてカバーしようとすると表面積がでかくなり,レーダー反射面積も増える.
 エンジン出力も増加するから,正面の空気取り入れ口のカバーも困難になるし,赤外ステルス性も悪化する.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ステルス機はアフターバーナーを使用したらバレてまうんでしょうか?

 【回答】
 そもそもステルスというのは電波ステルス・赤外線ステルス・光学ステルス・磁気ステルスなど多数の要素から構成される.
 そして,一般にステルス機といった場合,電波ステルスを特に重視した機体をさす.(赤外線ステルスや迷彩なども考慮されるが優先順位が段違い)
 ステルス機がアフターバーナーを使用した場合,問題となるのは温度の増大,つまり赤外線探知での被発見率の上昇.
 ところが空の世界じゃ,赤外線は短距離探知用なので,赤外線で探知される距離なら大抵はレーダや目視で見つかってる.
 つうわけでAF炊いてもそんなに困らない.

 ・・・・あくまでもステルスという観点ではな.

軍事板
青文字:加筆改修部分

光学ステルス
その1
その2


 【質問】
 ステルス戦闘機は自分から電波を出したら意味が無いので,レーダーや無線は使わないんですよね?
 となると,他の味方からの一方通行の指示や情報しかないのですか?
 また,ミサイルのロックオンも誘導も,他の味方にやらせるんでしょうか?

 【回答】
 低被探知性(指向性が高く,周波数拡散とパルス圧縮)の通信を行う.
 F-22では同機種間でしか通信できない特殊なデータリンクを使用.
 F-35は機体各所に備えた平板型指向性アンテナで,データリンクを構成する.
 レーダーも同様の低被探知性レーダーを使用するが,使用しない機体を先行させて,後続の機体がレーダーを使用し,敵情報を先行する攻撃役に送るなどの戦術もある.

 将来的には赤外線探査追尾装置(IRST)とレーザー測距装置を応用して,レーザーによるデータリンクを構築する,というプランもある.
 しかし指向性が鋭すぎて維持するのが大変なこと,高度と天候によっては有効距離が短くなることなどから,実用化されても近距離の機体間での使用に留まるだろうと言われている.

 指向性エネルギー兵器,特にレーザー兵器が実用化されれば,それを通信用に使えば距離が伸びる,という話もあるのだが,ここまでくるとまだ妄想と区別が付かない段階.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ステルス戦闘機って作戦中はどうやって通信しているんでしょうか?
 通信波を探知されてステルス機の存在を敵に察知されるというようなことは起こりえるのでしょうか?

 【回答】
 通信封止が基本だけど,機体各部の指向性のあるアンテナを使用し,低出力周波数分散通信を行う.
 探知不能とまでは言わないが,大変探知しにくいらしい.

 とはいえ探知されることが「起こり得るか」と言われれば,そりゃ絶対ないとは言えない.
 低探知性通信,ってぐらいだから.

 F-22は優秀なセンサー,低探知性で性能の良いレーダーを利用して先進して情報を収集し,後続機にこれを与えて全体像を把握し,指示を行うミニAWACS的な運用も考えられている.

 F-35も同様であり,このため特にデータリンク機能が不完全なF-22の改良が急がれている.
 F-35の場合は確か機体の6箇所に平面アンテナが設置されており,これを用いて大容量の画像情報などを含んだデータ通信を行う.

 とはいえ,「1日目」に既知の敵対空基地を攻撃する,AWACSなどが探知した敵機を迎撃する,といった任務の場合には受信のみで無線封鎖が基本となる.

 レーダーについても低探知性レーダーを使用するのみならず,先行機はレーダーを使用せず,後続機がレーダーを使用して得た敵位置情報をデータリンクで先行機に送り,先行機は敵にまったく知られずに有利な位置に占位して攻撃を開始する,といった戦術が考えられている.

 探知されないのが取り柄のステルス機だから,電波輻射も最小限にするのは当然だが,だからといってまったく使用しないということではない.
 いろいろと使い方があるということ.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ステルス戦闘機は,格闘戦能力は低いの?

 【回答】
 F-35がF-16程度の機動力しかないという都市伝説は,今でも某掲示板の軍事板で語られているようですが,その批判はあまり意味がないかと思われます.
 以下引用.

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次期戦闘機にF35採用へ,40機購入で調整 防衛省:独りで歩いてく人のブログ

 現代の航空戦では,視界外の遠距離からレーダーで捕捉し長距離ミサイルを発射する戦闘が主流であり,(BVR戦闘といわれる) そんな戦いの中では,レーダーから捕捉されにくくするステルス技術は圧倒的に有意なのです.
 こちらからはステルス機を捕捉できないのに,あちらからは一方的にロックオンされミサイルを放たれる.
 F-22 との模擬空戦を体験したF-15戦闘機 のパイロットは,
「まるで見えないボクサーに一方的に殴られているようだ」
と,わかりやすいコメントを残しています.
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 現代の航空戦においては,もはや格闘戦(ドッグファイト)はあまり用いられず,視界外の遠距離から長距離探知レーダーで敵機を補足し,長距離ミサイルを敵機へと発射する,視覚外戦闘(BVR)が主流になってきています.
 これはレーダーやミサイルの性能技術の向上が挙げられます.
 そのためドッグファイトは,よほどの事がない限りは行われません.
 これは潜水艦での戦闘に似ていると,ライターの井上孝司さんは述べています.
その該当記事が
ステルス戦闘機の戦術を考える:井上孝司‐Jウイング2011年4月号 P28
 以下引用.

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 ステルス機の最大の特徴は,非ステルス機と比べると,相対的にレーダー被探知の可能性が低い点にある.
 その特徴を殺してしまうような作戦・戦術は,ステルス機にとって好ましいものではない.
(略)
 ステルス機の戦いは,従来の戦闘機よりもむしろ,潜水艦に近い部分があるかも知れない
------------

 ステルス機といえど,接近すればレーダーで探知出来ます.
 距離が離れたところにいれば,ステルス機はレーダーでは探知しにくいのです.

 ここで誤解がないように書いておきますと,ステルス機はレーダーに全く探知されないわけではありません.
 やはりどうしても,レーダーの電磁波に探知されてしまうところもあります.
 ただ,長距離でレーダーに写りにくい構造になっているというだけなのです.

 私の日記を見ているマイミクさんには,そう考えている人はいないでしょうが,某掲示板でそう思っている人がちらほら見かけるんですよね・・・.

 また,井上さんの記事によれば,現在の非ステルス戦闘機での主流になっている,アクティブ探知からESM(電子支援手段)を用いたパッシブ探知が主体となっています.
 最近では,F/A-18E/Fに搭載されているAPG-79のように,電磁波で敵のミサイルを撹乱させるレーダーや,F-35に搭載されているAPG-81のように,敵のレーダーそのものを電磁波で撹乱させるレーダーも出てきています.

【軍事】F-35に搭載されるAN/APG-81・ASEAレーダーにはEA(電子攻撃)機能が搭載されている
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1674189204&owner_id=23170483

【軍事】F/A-18E/Fブロック2の電子攻撃機能はどうやら本当の可能性が高いようです
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1670337855&owner_id=23170483

 繰り返しになりますが,F-35がF-16程度の機動力しかないという都市伝説は,今でも某掲示板の軍事板で語られているようですが,その批判はあまり意味がないかと思われます.
 ドッグファイトに至る前に撃墜すればいいだけの話ですから.

バルセロニスタの一人 in mixi,2011年04月12日10:42
青文字:加筆改修部分

 まぁ,ミサイル発射位置を優位に取れる機動性は大事ですが,有視界での近距離戦はもはや過去のものでしょうね・・・.
 近距離戦が重要なら,アメリカのAIM-9Xも導入が進むはずですが,ほとんど普及してないってことですから.

ますたーあじあ in mixi,2011年04月12日 16:59


 【質問 kérdés】
 ステルス機にも格闘戦のための短SAMは必要なの?

 【回答 válasz】

 元空自幹部で作家の数多久遠先生のブログはいつも拝見させてもらっていますが,いくら何でもこれはないかとは思います.
 かなりナンセンスなところが散見できます.

------------
F-35の短射程ミサイル搭載等について: 数多久遠のブログ シミュレーション小説と防衛雑感

 EODASは,相当遠距離でも目標を捕捉できる可能性があり,AMRAAMの必要性がなくなる訳ではありませんが,当然の事として,侵攻側としては雲を利用するなど対策を講じてきます.
 雲を出たとたんに,目の前に敵機がいたというような状況が想定され,ステルス対ステルスでは,非ステルス対非ステルスの現代と比較しても,間違いなく近距離戦闘の可能性は高くなります.
 この状況で,短射程ミサイルを搭載していないことは,致命的でしょう.
------------

 この短射程ミサイルとは恐らくAIM-9XやAAM-5の事を言っているのでしょうが,これって必ずしも必要なのでしょうかね?
 確かに搭載していれば便利でしょう.
 AIM-9XもAAM-5も発射後ロックオン(LOAL)機能があるので,レーダーで発見後に発射すればミサイルは自動的にロックオンして標的へと向かいますが,必ずしも必要な装備は言えないでしょう.
 AIM-120はも目視外空対空戦闘(BVR)と格闘戦能力も備えています.
 AIM-120と同等の性能を持つAAM-4も同じように格闘戦能力があると見ていいでしょう.

AMRAAM:Aerospace

 ちなみに空自も,格闘戦に用いるAIM-7スパローの中でもAIM-7F以降のシリーズは最大射程が70kmであり,明らかにBVRをも念頭に置いています.
 AIM-7F以降のスパローは空自も保有しています.

スパロー (ミサイル) - Wikipedia

 さらにロッキード・マーティン(LM)社のスティーブ・オブライアン副社長は,長さがほぼ同じであればスペース的な問題は生じず,太さ1インチの差というのは大した差ではなく,装着用アタッチメントを変更するだけで済むと,航空ファン2011年10月号のインタビューで述べています.

F-35 (戦闘機) - Wikipedia

 さらにLM社では,F-22とF-35向けにCudaと呼ばれる空対空ミサイルの開発を行っています.
 このミサイルはAIM-120やAAM-4に比べて全長が短く(1.78m.AAM-4は3,667 mm,AIM-120は3.7 m)性能はAIM-120と同等の性能を持つと思われます.
 F-35のウェポンベイには現在AIM-120は2基しか搭載出来ませんが,そうなるとこれで4基かそれ以上に搭載が可能になるででしょう.
 Cudaの開発については日本企業も開発に参加すべきです.

Lockheed Martin社がステルス機搭載用に謎のCudaミサイルを開発中: アシナガバチの巣作り日記

 また,ステルス機VSステルス機が格闘戦になるというのも賛成出来ません.
 ステルス機はその名の通り隠密であり,レーダーに映りにくい構造になっています.
 もちろんレーダーに映らないことはないのですが,映りにくいので発見は難しくなるのです.
 さらに当方のマイミクでseisei1127kai9614253ことrhinocerosさんのお話によれば,空中では磁場の関係で空電ノイズが発生します.
 近距離ならレーダーでもディスプレイから排除出来ますが,遠距離だからだと電波が弱くなりますので,空電ノイズに紛れると全くレーダーに映らないか,空電ノイズとパイロットが判断してしまう事になるのです.
 ステルス機はまずは敵に探知されないようにしてミサイルの射程距離まで接近する事が第一のポイントです.

ステルス機について レーダーに映りにくいってなんですか? 結局映るんですか? - Yahoo!知恵袋

 さらにステルス機のもう一つのポイントは敵を発見する事.
 実はステルス機はレーダーに対して絶対的に万能というわけではなく,バイスタティック・レーダーやパッシブ・レーダーで探知する事は可能です.
 現在弾道ミサイル追跡に運用されている空自のJ/FPS-5固定式警戒管制レーダーは,バイスタティックレーダーの機能であるマルチスタティック運用も念頭に置いていると言われています.

ステルス戦闘機が映るようになるレーダーというのは現在,日本は開発を進めていま... - Yahoo!知恵袋

J/FPS-5 - Wikipedia

 また,技本で開発が進めらている弾道ミサイル追跡の光波センサーシステム・AIRBOSSも,ステルス機の探知能力があると言われています.
 AIRBOSSは開発が終われば,空自のAWACSやAEW,海自の電子戦機等に搭載されると思われます.

AIRBOSS ミサイル標的の探知・追尾に2度目の成功:防衛省技術研究本部

 これは当方の見解ですが,ステルス機とステルス機の空戦は先に敵を索敵し,敵に気がつかれずに接近して先制攻撃をするという形になるかと思います.
 まぁ,これはいろいろな意見がありそうですが.

 数多先生はどうもファイターマフィア的な思考になっていないでしょうか.
 確かにF-15やF-16のような格闘戦向けの機体を見てきたのならF-35だと不満があるでしょうが,F-35がステルス機だという事,ステルス機にはステルス機の戦い方があるという事なのです.

 ちなみに次期F-Xの候補だったF/A-18E/Fブロック2も,BVR重視とステルス性に準じた機体構造を持っています.
 また,F-35の機動性はF-16かそれ以上と言われています.
 低高度ではF-16の機動性はF-15をも上回る事もあるという事も言及しておきましょう.

 ただ,これは賛成出来るところがあります.

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 ステルス戦闘機でアラート任務に就く場合,わざわざレーダーリフレクターを装着する理由について.
 アラート機が対象機に接近する際は,可能な限り後方に回り込んで接敵します.(いきなり撃たれると困るため)自ずと,対象機のレーダーの覆域外です.
 リフレクターを使用する理由は,存在をアピールするためではなく,ステルス性能を情報収集されないためです.
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 レーダーリフレクターとはレーダー波の反射器の事です.
 つまりこれを装着するとRCSは悪化します.
 私はF-35のアラート任務には増漕と空対空ミサイルを外部パイロンに装備しておけばいいと思っていましたが,さすがにこれだけではステルス性を隠す事は出来ないという事でしょうか.

 ちなみにF-22は外部パイロンに空対空装備を装備出来ないので,レーダーリフレクターだけでは防空識別圏に侵入してきたELINT機にステルス性を分析されてしまう危険性があったのも,輸出が認められなかった理由の一つではなかったかと思われます.

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 最後に,配備地とその理由について.
 空自が,F-35を三沢基地に配備予定なのは,各種訓練・試験の際に,データ取りをされないためではないかと思います.
 また,この要素だけなら,百里の方が望ましいでしょうが,三沢の方が,ロッキード・マーチンの技術者が,米軍の定期便等で,サポートに来日し易い事も影響しているでしょう.
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 なるほど,これは見落としていました.
 だから三沢に配備したわけですか.
 そうなると三沢のF-2飛行隊のうちの一つをF-35飛行隊にし,三沢以外の基地に配備されたら ,三沢のF-35飛行隊を飛行教育集団の教育部隊に改編するのでしょう.
 そしてかつて配備されていたF-2を松島の第4航空団に捻出するという事でしょう.

 実際,海自の哨戒機も対艦ミサイルを装備し,P-3CはASM-1Cは4発搭載が可能,P-1だと8発搭載が可能です.
 南西方面でも築城のF-2の飛行隊は1つだけで,鹿屋と那覇に海自の哨戒機部隊があります.
 北方でも三沢の2個飛行隊以外にも,八戸に海自の哨戒機部隊がありますので,無理して2個飛行隊を維持する事もないという事なのでしょう.
(そうなるとP-1の配備先は厚木,下総に続いて八戸になる可能性もあります.)

 なお,当方は3月17日の記事で,
「そうなると新たに飛行隊を作る事になりますが,空自では1航空団2飛行隊が原則で,松島の第4航空団は既に第11飛行隊(ブルーインパルス)と第21飛行隊(F-2部隊)があります.
 そうなると第11飛行隊をF-35A教育部隊に改編し,ブルーインパルスを嘗てのように第21飛行隊戦技研究班か,もしくは第4航空団戦技研究班と第4航空団直属の組織に改編していくべきでしょう」
と書きましたが,マイミクでもあるTACCOさんのご指摘で,それは組織改編が理由ではない事,さらに上記で当方が書いたこともあり,この部分は撤回いたします.
 大変ご迷惑をおかけしました.
 深くお詫び申し上げます.
 さらにTACCOさんご指摘ありがとうございました.

ねらっずーり in mixi, 2013年03月20日
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 これまでに,ステルス機同士の模擬戦闘が行われたことはあるの?

 【回答】
 米の空戦模擬戦は空戦ドクトリンの確認,開発が主目的なので,現実的な設定でしか行いません.
 少なくとも大規模なものは.現実的な設定では,敵側にF-22,F-35クラスは存在せず,比較的ステルシーな F/A-18クラスなどを仮想敵機とした演習になるわけです.

 また,F-22の部隊もまだ立ち上げたばかりで,演習場まで移動して整備して空戦して,といった任務をこなせる機数は限られています.
 赤と青に分かれるほどの数があるかどうか疑問.

 今後,仮想敵国がF-35クラスのステルス性で戦闘機,攻撃機の初期生産機を飛ばすようになってくれば,米もステルス機対ステルス機の模擬戦を行うでしょう.
 それまではただのオタクは待ってるしかないです.
 ただ,慣熟,戦技向上のために,F-22の部隊内で1対1,2対2程度のじゃれ合いはやるかも,というより,すでにやっていそう.
 しかし訓練的な意味であり,実戦的な状況で行われるとは考えにくいけど.

青文字:加筆改修部分


 【質問】
 どうして艦艇はステルス形状が当たり前になってるのに,戦闘機はアメリカしかステルス処理やってないんですか?
 せめてラファールとかユーロファイターとか,とりあえず形状だけでもツルッとしたステルスにしないんですか?

 【回答】
 空中でひっくり返ったり回ったりと3次元の動きをする戦闘機と,基本的に2次元の動きしかしない艦艇を比べること自体が非常にナンセンス.

 船の場合は基本的には吃水以上の船体部だけの話だから,係留作業がやりにくくなる程度で,ステルス性付与は比較的簡単.
 しかも艦艇のステルスは,「レーダーに映るサイズが原寸大からイルカなみに!」なんてびっくり効果じゃない.
 気休め程度だし,使いにくくなるくらいならってんで艦艇のステルス性に注意を払わない国も多い.

 航空機の外形は空力と整合させなきゃならん.それに加えてのステルス性付与はかなり難しい.
 F-117はFBWなしには飛ぶ事はできなかった.
 しかも,F-117のようにレーダーには映らない(これだけでも相当大変なこと.ただ外板を斜めにすりゃあいいってもんじゃない)けど,大幅な機動制限がついた上に亜音速しか出ないようじゃ,戦闘機として失格.

 設計技術の向上で,ようやくF-22やF-35のような空力とステルス性を両立させる事が可能になったが,実用化しているのはまだアメリカのみ.
 F-22とかのステルス形状は曲面で形成されているけど,計算上はポリゴンのように無数の平面で形作られている.
 面が交わる頂点部分の電波の拡散の計算が必要なので.見様見真似ではとても作れない.
 だからコンピューターの計算能力がしょぼかった頃の機体であるF-117は,大きな平面で作られている.
 ラファールもユーロファイターも基本設計は80年代の機体だから,ステルス性の付与はそもそも考慮されていなかった.
 フランスは,最低限のステルス性をラファールは持ってると言っているけどね.

 機動性とステルス性の両立ってのは難しいのよ.

 また背景がクリアな(SN比の良い)空中で有意なステルス性能を発揮するには,高度なRCSの低減が必要.
 艦船はとりあえずクラッタにまぎれ,SSMに対し的を小さくするくらいの事を狙っての,ある程度のRCS低減なら比較的取り入れやすい.
 航空機でも正面からのRCSのピークを押さえるくらいのステルシーは,B-1Bに始まり多くの機体に適応されている.

 そして最も大切なのは「ステルスが飛行性能をある程度犠牲にしてまでも必要なのかどうか」,要求性能においてどこに重点を置くか,ということ.

軍事板

 なお,その後,タイフーン,スホーイT-50といったステルス性のある航空機が,米国以外からも現れており,中国も開発中との情報もある.


 【質問】
 ラプターの機体表面塗装がステルス維持に重要で,事故か何かでキャノピーを機体表面で引きずったら,ステルス性が落ちたと聞きました.
 たとえば,離陸滑走中にカナブンとか(別にカナブンでなくてもいいのですが),そういった硬い虫にぶつかったらステルス性が落ちてしまうとか,そういうことはありませんか?

 【回答】
 ありうるよ.
 深い傷が付くと,そこRCSが増大してしまう.
 ステルス機特有のギザギザの繋ぎ目も,そういうのを避ける為のものだし.
 虫の場合はそのまま張り付いて,飛行中に氷に成長するとかの方が怖いね.
 着氷でステルス性悪化なんてのは,F-22とかじゃなくても起こる事態だし.
 飛行性能も悪化するから当然,対策してるが.

軍事板,2009/06/06(土)
青文字:加筆改修部分


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