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兵器FAQ目次


 【link】


 【質問】
 早期警戒機や早期警戒管制機のフェイズドアレー・レーダーを回転させる理由は何?

 【回答】
 E-2CもE-767も素体は相当に古いシステムではあるが,相応にアップデートされているので問題はない.

 固定したフェイズドアレーレーダーより,回転型のフェイズドアレーの方が素子数が少なくて済む.
 もちろん同時監視はできなくなるが,問題ない速さでスキャンできていれば,わざわざ高価で重いものを積む必要はない.
 さらに,固定式フェイズドアレーを機体にどのように搭載するかの問題も起きる.
 機体の長軸に沿って搭載する方法だと,前後に死角ができ,それをカバーするための補助レーダーが要るが,これは機体の幅で長さが限られるため,性能が落ちる.

 機体上部に三角形にフェイズドアレーを置くことも考えられるが,回転レドーム(ロートドーム)の直径が同じ場合,図を書けばすぐわかるとおり,回転式のフェイズドアレーよりも一辺が短くなり,性能が落ちる.
 斜め方向の分解能も落ちるから,すべての方向で同じ性能にしようとしたらえらくでかいものになってしまい,空力的にとても大変なことになってしまう.
 というわけで,ロートドームの中身はフェイズドアレーになりつつあるが,回転させるメリットは大きい.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 AWACSでは,操縦席はレーダーの走査範囲に影響を与えないのですか?

 【回答】
 AWACSの胴体は電波遮蔽が為された構造になっています.
 そのため,外からの電波の影響も内からの電波の影響も受けませんし与えません.
 窓ガラス等の数少ない開口部も,電磁波を遮断するコーティングが何重にも塗られた,宇宙船の窓ガラスのごとくの構造になっています.ボーイングによれば「E-3の胴体内に居れば宇宙空間へ出たって大丈夫」だとか.
 また,搭載する大量の電子機器が発生させる熱を冷却する為,強力なエアコンと冷却設備を備えています.

 滅多に写真は出ませんが,E-3セントリーの乗降ハッチの開いた写真を見ると,明らかに母体になった旅客機よりも扉が厚く,また胴体の断面も分厚くなっているのが解ります.

 ただ,すべてのAWACSがそうなっているのか・・・というと微妙なところで,ロシアのIL-76改造のAWACS,A-50は当初胴体の電磁波遮蔽が不足していたので,搭載した機器が自身のレーダーの電磁波障害で壊れたり作動不良を起こしたり,逆にレーダー画像に搭載機器の発生するノイズが入ったりしたとか・・・.

昔の中華AWACS
(画像掲示板より引用)


 【質問】
 地上からの管制に比べて,AWACSはどういう点が有利なのでしょうか?
 データリンクが完備しているなら,安価なAEWを大量に投入して,管制は地上でやったほうが,人員の確保もコストも楽な気がするのですが.

 【回答】
 最初にAWACSの有効性が認識されたのは,ベトナム戦争におけるEC-121とレーダーピケット艦による敵領土上での航空管制において.
 つまり遠征軍である米軍にとっては可搬である事が重要だった,
 後に防空戦闘においても,先制攻撃・防空制圧に対する脆弱性を持つ固定施設に頼らず防空リソースを移動・集中出来るAWACSの利点が注目された.

 また,戦時には「データリンク」(を構成する諸々の要素)への攻撃も行われるし,リンクの不具合や電子的な妨害も考えられる.
 警戒システムと指揮システムが同一のプラットフォームに載っていれば,データリンクを妨害されるなどのリスクも減る.

 さらに防空指揮所を地上に置いとくと,核攻撃される惧れがある.現代ならテロ工作とか.
 如何に頑丈に作っても地上施設は動けないので,先制攻撃に弱い.
 可能性として核攻撃を受けることが予想される国の場合は,航空管制/早期警戒設備は空に上げておかないと,先制核攻撃で全滅する恐れもある.

 さらにまた,早期警戒レーダーを空に上げれば,地上設置レーダーの死角をカバーする事ができる.

>安価なAEWを大量に投入して,
>管制は地上でやったほうが,人員の確保もコストも楽な気がするのですが.

 真逆.
 安いからといってちまちました機材を大量に投入する方が,コストがかさむ.

(画像掲示板より引用)


 【質問】
「高性能だが大型で高価な軍用機であるため,開発,配備する国は限られている.
 そこで,AWACSより性能が劣る代わりに価格も安い,AEW&Cと呼ばれる機体も開発されている
(ただし,AWACSとの定義の違いに関してはあいまいである)」
という記述は正しいのですか?

 AEW&Cってのは,E737などのそれまでの機体より,低性能の航空機ができてからついたみたいだから,廉価版って思ってたんだけど.

 【回答】
 別にAEWでも管制ができないとか,そんなことはない.
 専門家の言葉を借りるなら

――――――
 E-767が「AWACS(空中警戒管制システム)」と呼ばれるのに対し,E-737は「AEW&C(空中早期警戒管制機)」で,E-2Cの「AEW(空中早期警戒機)」よりは「指揮管制」能力は強化されているが,AWACSほど「システム化」されてはいない.

――――――『軍事研究』 2009年4月号,石川潤一氏の記事『アジア・太平洋の早期警戒管制機』より)

 AEW,AEW&C,AWACSの境界は曖昧と言わざるを得ない.
 おおむねの傾向として,小型機はAEW,中型機はAEW&C,大型機はAWACSなのだが,例えばE-2Dとか,小型機だけどE-2Cよりは高性能のはずで・・・・
 という,なかなか扱いに困る代物も出てきている.

軍事板,2009/06/04(木)
青文字:加筆改修部分

大型機はAWACSと,小型機AEW
(うそ)
(画像掲示板より引用)


 【質問】
>低速低空性能的には有利だ

 えっ!?
 早期警戒任務は,できるだけ高高度から監視した方が有利じゃないんですか?
 高度が高い方が,水平線下に入ってしまう距離をより遠くにできるから.

 また,速度が速い方がより短時間で進出・撤収できるから有利じゃないんですか?

 【回答】
 長く高く飛ぶための翼の形状は,U-2とかB-29みたいに後退角なし,まっすぐ細長いもの.
 やりすぎると離着陸性能が悪化しますが.そうなると高速性能はあまり追求できません.
 可変翼という回答もありますが,コストと重量の問題があります.
 ちなみにF-14の可変翼は空戦性能以前に,超音速ダッシュとCAPの時間を延長させるという,相反する翼形状を両立させるためにあります.
 AEWに超音速ダッシュは必要ありませんし.

軍事板,2009/04/11(土)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 艦上型AWACSの後継機開発が,どこも不活発なのは何故ですか?

 【回答】
 色々あるけど,要するに大型の艦載機開発するのって大変なのよ.
 要求される性能が多くてそのどれもが無茶だから.

 昔みたいに予算がガンガン使える訳でもなし,それだったら失敗するリスクの大きい完全新型機や,エンジン体系を入れ替えた型を開発するよりも,現行で特に問題のない機体を,無理のない範囲で改良した方が総合的に見れば有利と言うこと.

 ちなみに創作作品だと,たまにホークアイのジェット型が出てきたりするが,ホークアイは基礎構造がジェットを前提としてないので,エンジンだけ換装してジェット化するってのはちょっと無茶.
 ヴァイキングの早期警戒型は,どうやっても乗員数が4人しか乗せられない(電子機器の操作に当てられるのは2人だけ)ので,早期警戒管制機としての能力に無理がある上に,小型過ぎて機内が狭苦しく,超長時間の任務に耐えない,というので諦められた.

 E-2の後継はS-2にレドーム乗っけた「ES-3」とでも言うべき機体が試作寸前まで行ったが,冷戦後の予算縮小で没った.

 E-2自身は電子装備を換装すれば今でも充分使えるので,新型開発するより改良する方が安く済むならそれでいい,ということでエンジンとプロペラブレードを新型にすればターボファンと効率は変わらない,いやむしろターボプロップの方が低速低空性能的には有利だ,ということでE-2は今後も使われ続れる.
 とは言え,最新型のE-2D アドヴァンスド・ホークアイは基礎設計を流用しているというだけで,ほとんど新規開発の別のヒコーキだ.

軍事板,2009/04/11(土)
青文字:加筆改修部分

(画像掲示板より引用)


 【質問】
 E-767が高価なのは,高性能な早期警戒管制指揮機はあれぐらいするのが当然だからですか?
 それともボーイングやアメリカのぼったくり価格だからですか?

 【回答】
 防衛庁がAWACSの導入を検討し,Boeingに見積もり出させた時点で300億程だったと思う.
(この時点ではE-3)
 しかし防衛会議での承認・大蔵省折衝等で遅れている間に,E-3の生産は終了し,新たなAWACS機材として発注されたE-767は550億にもなった.
(勿論,為替変動等の影響も有るが)

 増額分の多くは,E-767としての開発費,及び生産財の少数機生産の割りがけもよるものと考えられる.
 なお,日本の導入以前に,サウジがE-3をKE込みで8機導入した際の取引額は,(関連施設建設などを含めてだが)50億ドルを超えていた.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 E-3やE-767の後継機があれば教えてください.

 【回答】
 E-10マルチセンサー指揮管制機ってのを開発中.
 E-3,E-8C,RC-135,EC-130Hの後継を狙ってるそうです.

 E-10の
spiral 1ではE-8のような地上観察能力,
spiral 2段階でAWACS能力が追加され,
spiral 3でEC-135のようなSIGING/ELINT能力が追加されることになっています.
 ただAWACS能力はWedgetail並みと言うことで,AESAの能力が向上しない限り,E-3レベルの多様な情報は処理できないのではないか(逆にそのレベルに達するよう,AESAを開発熟成中)という話もあります.
 もう一つの問題は,ただでさえ数が足りない電子戦機を兼用化すると,絶対数が不足して動けなくなるのではないか.共用化にも限界があり,低価格化よりも数不足→高価な多機能機体を多数購入になるのではないか,という点も懸念されています.


 【質問 kérdés】
 E-2Dアドバンスドホークアイについて教えてください.

 【回答 válasz】
 2014年11月,防衛省は空自の新型AEWに既に運用しているE-2Cホークアイの最新型であるE-2Dアドバンスドホークアイの導入を決定しました.

早期警戒(管制)機の機種決定について:防衛省

防衛省機種選定,E-2D,グローバルホーク,オスプレイに決定【動画】:Fly Team

防衛省,空中早期警戒機「E2D」初導入へ オスプレイやグローバルホークの導入も正式決定:大艦巨砲主義!

 E-2Dは従来のE-2Cに搭載されていたAN/APS-145からAN/APY-9へ換装し,コックピットも新型のグラスコックピットに更新.
 また,機体構造の強靭化も行われました.
 E-2Dは空自が保有しているAEWの増勢分とされていますが,E-2Cの初期調達からそろそろ30年以上経つ事から,場合によってはE-2C初期調達分の更新としても調達される可能性があります.

 また,E-2DのAN/APY-9レーダーは新型のUHFレーダーで,ステルス機の探知も容易になる事から,ステルス機を開発している我が国周辺国に対するアドバンテージともなります.
 ステルス機を探知→JADGEを通じた戦術データリンクによりF-35AやF-15J改修型に情報伝達→AAM-4でBVR(視覚外戦闘)で迎撃,という空戦が可能になるからです.
 ネットワークでの戦いと言われる現代戦では,AWACSやAEW,哨戒機,無人偵察機(UAV)の運用はますます重要になってくるだけに,今回のE-2Dの導入は歓迎すべき事と思います.

ステルス機に有効なE-2Dの新型レーダー:航空宇宙ビジネス短信・T2

 さらに,ノースロップグラマン社からの解説からによりますが,海面目標の探知距離は半径359km,空中目標の探知距離は555kmとされており,BVRのみならず巡航ミサイル迎撃のための探知が今まで以上に容易になります.

E-2Dが日本にとって理想的な警戒機過ぎる…:軍事系まとめブログ

 毎度の事ですがノースロップグラマン社によるE-2Dの紹介・解説動画です.

 さらにまた,E-2Dは最新型からリンク16に対応しており,海自のイージス護衛艦や空自のF-35,F-15J改修型,さらにはE-767早期警戒管制機(AWACS)とも情報共有が可能.
 またE-2Dは無線機群と統合衛星通信能力(ARC-210/HF121C)を搭載している事から,リンク16にまだ対応していない(つまりリンク11のまま)F-2や海自の多くのDD,P-3CやP-1などの哨戒機とリンク16対応の装備とのJADGEやMOFシステムを介したデータリンクの中継の役割も果たせます.
 場合によっては陸自の野外通信システムや戦闘ヘリとのデータリンクが可能にする事が出来るでしょう.
 当方はF-15DJ電子戦型にリンク11対応装備とリンク16対応装備との中継をさせることを以前提案した事がありましたが,どうやらその必要はなくなったようです.

ねらっずーり in mixi, 2014年11月23日
青文字:加筆改修部分


 【質問 kérdés】
 対AWACSミサイル対策はあるの?

 【回答 válasz】
 私は以前,対AWACSミサイルの対策として,米軍がかつて開発していた対衛星ミサイル・ASM-135を対AWACSミサイル迎撃用に使用すべきと提案した事があります.

ASATを対AWACSミサイル迎撃または対AWACSミサイル,弾道弾迎撃ミサイルとして応用して開発してはどうか

 今日はソフトディフェンスについて述べたいと思います.
 対AWACSミサイルはどこの国も開発が進んでおらず,ロシアのKS-172も開発が停滞,また中国も同ミサイルを購入したという未確認情報があるものの,まだ噂の段階でしかありません.
 もし中国が対AWACSミサイルを開発に成功したとなれば,国威発揚も兼ねて声高々に発表するでしょうが,未だにその話は聞いた事がありません.

 しかし将来,対AWACSミサイルを中国やロシアが開発しないという保障はどこにもありません.
 そこで対AWACSミサイル対策として,自衛隊が保有している無人偵察機・TACOMにAWACSのレーダー波を持つ電波を発生させる装置を装備して飛翔させるという方法です.

飛行機ちゃんねる : 防衛省技術研究本部が開発中の自衛隊用無人偵察機「無人機研究システム(TACOM)」自律飛行・自動着陸映像

 TACOMは速度が亜音速であり,E-767に近い速度が出せますので,このTACOMにAWACSのレーダー波と同じ電波を発生させて飛翔させれば,レーダー波を探知して飛翔する対AWACSミサイルを撹乱する事が出来ます.
 複数飛翔させてエコーをAWACSに反射させれば,AWACSは電波を出さなくても探知できる空中マルチスタッティックレーダーにもなりえます.

バイスタティック・レーダー - Wikipedia

 また,特定域の波長の使用時間を極力短くして相手に気づかれなくするという手段や,TACOMを利用して発信と受信を分けるという手段もあります.

 さらに,某マイミクさんがおっしゃっていたように,AWACSにもフレアを搭載するを搭載するのも手段でしょう.
 既に米空軍などではAWACSにフレアや電子妨害装置が装備されています.
 空自のE-767にフレアや電子妨害装置を装備しているかどうは不明ですが,装備しても損はないかと思います.

 なお,空中マルチスタティックレーダー論はフォロワーの緑川だむさんが,波長の使用時間の短縮と発信と受信を分けるという論は,同じフォロワーのさかきまもるさんがご提案されました.
 ありがとうございます.

 対AWACSミサイルによる牽制への対策はいくらでもあります.
 政府・防衛省は防衛費の増額を決定しましたが出来る事なら,AWACSの防衛手段をも予算に計上して欲しいものです.

ねらっずーり in mixi, 2013年01月20日
青文字:加筆改修部分


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