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◆◆◆◆◆「防空識別圏」設定
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<◆日本 目次
東亜FAQ目次


(画像提供:塩津計)


 【質問】
 尖閣諸島における中国の防空識別圏設置には,どこに問題があるのですか?

 【回答】

 防空識別圏を他国の領空に設ける事自体には問題ない.
 領空の12海里なんて,飛行機ならあっという間に通過できてしまうので,防空識別圏は通常,領空よりさらに広く設定されている.
 これにより,他国の未識別または目的不明の航空機が防空識別圏に侵入する姿勢を見せた時点で,対応の構えを取り,領空侵犯を未然に防ぐことができる.

 今回問題なのは,これを中国が領空と勘違いしているかのような運用をしていること.

 東シナ海の航空管制は,ICAO=国際民間航空機関のルールで,日本,韓国のインチョン,台北,中国の上海の各管制機関が空域を分担して行っており,日本,韓国,台湾の防空識別圏は,それぞれの管制空域に沿う形で設定されている.
 ところが中国の防空識別圏は担当エリアを大きくはみ出し,日本,台北,インチョンの管制空域に食い込んでいる.

 フライトプラン=飛行計画書の扱いも異なっている.
 日本は通常の管制業務の中で,国土交通省がフライトプランを受け付け,防衛省にも提供している.
 ところが中国は担当する上海だけでなく,新たに設定した防空識別圏と重なる日本,台北,インチョンの管制空域のフライトプランも,提出するよう求めている.

 さらに,日本の場合は領空に接近する航空機を対象にしているが,中国は,防空識別圏内を飛行するあらゆる航空機を対象にするとし,これ協力しなかったり指示や命令を拒んだりした場合,武力による緊急措置を取ると脅している.※

 つまり,その空域では中国の領空と同じ対処を取るように規定している.
 したがって今回の宣言は,「防空識別圏を新たに設定した」のではなく,「領空を張り出した」のと同義.

※ 佐藤優によれば,その後,斎木昭隆次官は程永華駐日中国大使から,
「今回の措置は民間機を含めて,飛行の自由を妨げるものではない」
との言質をとり,中国当局に日本の航空会社が飛行計画を提出しなくても,運行を妨げないということを実質的に表明させた.
 これは非常事態のときに負の連鎖を防ぐ,外務当局者同士の努力の現われだと,佐藤は述べている.
 ただし,問題の根本解決とはなっていない.

 【参考ページ】
https://mobile.twitter.com/RecruitTokoroza/status/406765239477092353
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131130/k10013468611000.html
http://www.weblio.jp/content/%E9%98%B2%E7%A9%BA%E8%AD%98%E5%88%A5%E5%9C%8F
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131201/stt13120121090005-n1.htm
http://blogos.com/article/74690/
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20131202/256558/?P=1
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20131202/256558/?P=2

【ぐんじさんぎょう】, 2013/12/05 20:00
を加筆改修


 【質問】
 質問です.
 中国が尖閣付近で防衛識別圏設定と報じられました.
 戦わずして勝つ孫子の兵法,成功でしょうか?
 先に手出しすることを日本が躊躇うことを見越した上で,実効支配を一歩進める.
 なんか,そんな妄想が頭をよぎります.

 【回答】
 国境や領海が接近してたり接してたりすると,防空識別圏(もしくはそれに類するもの)が,他国の領域(領空・領海・領土)の上に設定してある例は珍しくもなんともない.
 日本の防空識別圏だって,ロシア(ソビエト)の領空と領海に被ってた.
(少なくとも冷戦中とその直後は)

 ただ,「うちの国の防空識別圏はこの範囲です」って,正直に公表してる国は少ないし,それをわざわざ国際的に公言する国もそんなにはない.
 他国と揉めてる領域に設定したことを公言するのは,まあ,挑発行為だな.

軍事板,2013/11/24(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 中国が尖閣付近に防衛識別圏を設定したのは,対日
圧力のため?

 【回答】

 中国側から見れば,領土を主張している以上,その上空は防空識別圏どころか領空なわけだから,当然の行為になります.
 むしろ,そうしなければ日本に譲ったと取られかねませんから,今回の行動は単に無能でないというだけのことです.

 戦闘になったとしても,中国側から見れば領空防衛のため出動したわけで,落としても落とされても,自分が正しいことに変わりはないわけです.

 国際的には,最初に撃った方が非難を受ける可能性が高いので,要は国家間のお約束チキンレースしてるだけのこと.

system ◆system65t. :軍事板,2013/11/26(火)
青文字:加筆改修部分

 【反論】
 あんたは国際関係に疎いんだから,余計なことは言わない方がいい.
 現実はどうなったかというと,中国が尖閣を一方的に防空識別圏に含めたことで,米がはっきりと日本側に立ってしまった.
 この間の国家主席訪米で,なんとか関係を改善したのが台無しだ.
 これまでの,現状を維持しながら着実に日本のクビを締め,米の好意的中立を確保するという戦略の方が,遥かに中国の国家利益にかなう.

 尖閣を防空識別圏に含めたのは,今の中国政府や軍が無能な証明だ.

 でもって,これまでは日本も米も,中国の指導層が有能であるという前提で行動していたんだが,これで信頼できないことがはっきりした.
 北東アジアが今後どうなるかは,神でも見通せない,最悪の状況になってしまった.

軍事板,2013/11/26(火)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 今回アメリカが直接的挑戦に出てきたことで,中共がアタオタしてる原因を考えてみた.

 中共は,1990年代に領海法みたいのを作って,尖閣諸島が自国領土と宣言した.
 だけどアメが直接出てくることはなかった.
 更に最近,日本の領海侵犯を繰り返すようになったが,アメが直接出てくることはなかった.
 だからアメは出てこないと判断して,今回は防空識別圏を設定したんだと思う.

 そこで中共と同じ頭しかない俺に気づいたんだが,何故アメリカは今回は直接的挑戦に出てきたんだろう?
 防空識別圏なんて,海でいえば接続水域みたいなもんでは,と思うのだが.

 【回答】
 アメリカの対共産圏(今の中国が共産国家であるかどうかは別)外交政策の基本部分は,60年代から変わっていない.
 エスカレーション戦略だ.
 中国の一方的な尖閣領有宣言段階では,日本が尖閣を有効支配していて,しかも中国には尖閣まで進出占拠する軍事力はなかった.
 だから無視していればいい.
 去年辺りから,中国がしばしば公船を尖閣の日本領海に侵入させだしたら,「尖閣は日米安保の対象となる」宣言をした.
 この時点で,中国側が米に期待した態度と異なっているが,どうも過去の中国指導部よりも賢明さで劣る今の指導部は,米のエスカレーション 戦略が変わっていないことに気付いてない.

 で,今回の防空識別圏の一方的設定と不当な拡大では,今の中国空軍,海軍の戦力からみて,実力行使の可能性が無視できないため,アメリカとしては力を見せ付けることになる.
 今後,中国がさらに火遊びをすると,アメリカは得意の「外科手術的武力行使」の選択を取り出すだろう.
 しかし,今の中国指導部は自信過剰であり,かつ,少しでも弱体な様子を国民に見せれば権力が危うい(中国共産党政権が倒されるという 意味ではない)ので,火遊びを止める選択肢は取れない.

軍事板,2013/11/29(金)
青文字:加筆改修部分


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