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<◆◆◆シリア内戦
<◆◆戦史
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中近東FAQ目次


 【質問】
 アラブ連盟シリア監視団って何?
 3行以上で教えて!

 【回答】
 シリア内戦における茶番狂言の一コマで,2011.12.25よりアラブ連盟から派遣された,本来はアサド政府による市民への暴力停止を目的とした「監視団」.
 アサド政府側は条件闘争に持ち込んで,ゴネにゴネた上で,内容を緩和させてようやく承諾.
 しかし全く役立たずで,反政府勢力のみならずアラブ連盟内部や監視団員からも実効性への疑問噴出,しかも,団長が虐殺関与疑惑のあるという人物というブラック・ジョークにしかならないもので,アサド政府の時間稼ぎに貢献しただけに終わった.

*     *     *

「おしゃべりクラブ」
 これがアラブ連盟 Arab League / Arab Liga に対する昨今の評価である.
 アラブ諸国の諸問題を自ら解決する役には全く立っていないという揶揄が込められている.

 シリアでバッシャール・アサドが市民を殺し始めても,アラブ連盟は相変わらず「おしゃべりクラブ」のままだった.
 そのため,批判の矛先はアサドのみならず,アラブ連盟にも向かうことになった.

 そこで,ようやく重すぎる腰を上げたアラブ連盟は,2011.11.17[1],シリアに対して暴力停止,軍隊の市街地からの撤退[3],そして監視団受け入れを要求し,[1][3]
「3日の間にシリアが市民の保護及び監視団の派遣に関する議定書に署名しなければ,経済制裁に関する議論を始める」
と決定した.[1]

 もちろん,アサド政府はこれを素直には受け入れない.
 ゴネにゴネた.
 規模を縮小しろ[2].
 議定書への署名はシリア内で行わせろ.[3]
 署名に伴って,シリアのアラブ連盟資格の凍結及び経済制裁は無効にしろ[3]
 その他いろいろ.

 アラブ諸国の中にはそもそもシリア制裁に消極的な国も多く[3],3日の猶予期間が過ぎても経済制裁が実施された気配がなく[4],猶予期間を大幅に過ぎた2011.12.19,ようやくシリア外相は議定書に署名した.[4]
 ここまででアサド政権は,すでに1か月以上の時間稼ぎに成功したことになる.

 12.25,監視団の先遣隊がシリアに漸く到着.
 しかしアサド政府はその前に,多くの負傷者を病院から軍の基地に移送していた.[5]
 彼等から監視団が話を聞くのを妨げるためだ.[5]

 そんな態度の連中が,暴力停止,軍隊の市街地からの撤退といった約束を守るはずはなく,12/25~12/30の間だけでも,軍に殺害された市民の数は少なくとも98人に達したという.[6]
 もちろんこれは未確認の数字ではあるが,軍が市民を攻撃し続けていることだけは確か.

 にも拘わらず,監視団団長ムハンマド・アフマド・ムスタファ・アル=ダビ Mohammed Ahmed Mustafa al-Dabi は12/28,
「現在までの事態は落ち着いている」[7]
「シリアでは特段のひどい状況は見ていない」[6]
などと発言.
 そもそも団長はスーダン軍の准将[9]で,ダルフール虐殺への関与が疑われている人物.[10]
 とても適任とは言い難い.
 これなら,こっちの団長のほうがまだマシなんじゃないかな?

 そんなこんなで,監視団の能力が早くも疑問視されることとなり,
「("事態は落ち着いている"という発言は,)シリア政府が監視団に対して真摯に対応しているという意味であり,現地情勢について言ったものではない」[7]
「"シリアでは特段のひどい状況は見ていない"という発言はしていない」[6]
と火消しに追われる羽目に.
 反政府活動家は,
「監視団はアサドの蛮行の目くらましに使われている」
と批判していた[8][9]が,その批判の信憑性を高めることになった.
 ホムスでは多くの市民が監視団をとり囲み,口々に治安部隊の行動について訴え,団長が「ホムスは平静で激しい弾圧は目撃しなかった」と語ったと伝えられたことに対して,激しい怒りを表明[9]
 自由シリア軍のアサアド大佐は,監視団がアサド政権の弾圧を隠す役割を果たしているとしてその撤退を要求した.[11]
 国連も,アラブ連盟監視団到着以来の死者は400名近くに上ると発表.[12]
 カタール外相(アラブ連盟シリア委員会の委員長)でさえ,監視団は若干の過ちを犯した(その内容は不明)と語った.[11]

 当の監視団の中からも,
「監視団はシリア政府の煙幕として使われている」
として,抗議のための辞任をする者が複数現れ[13],2012.1.24には,サウディが監視団の現状に不満として,自国監視員の撤退を表明.[14]

 監視団到着から1.22までには,シリア市民の死者は推定1000人に上り[16],一方,アサド政府の外相は,
「アラブ連盟外相会議は監視団の報告書を真剣に討議しなかった」
と逆に非難してくる始末.[17]

 1.28,遂にアラブ連盟は監視団の活動を「一時凍結」.[15]
 その後,それが「解凍」されることなく,結局2.10には監視団は廃止された.[18]

 反政府側は当初から,「アサド政府の時間稼ぎに過ぎない」と評していた[4]が,結果的にはそれが正しかったことになる.
 「おしゃべりクラブ」は「目くらましクラブ」にジョブ・チェンジしたようだ.

 【参考ページ】
[1] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4015589.html
[2] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4017537.html
[3] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4037117.html
[4] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4050519.html
[5] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4051617.html
[6] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4060973.html
[7] http://syriaarabspring.info/?p=6428
[8] http://www.democracynow.org/2011/12/29/syrian_activist_speaks_out_from_hiding
[9] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4059154.html
[10] http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/e/76ab31d0ab5756b6cf74d6ca9f54ab07
[11] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4067966.html
[12] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4073156.html
[13] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4074952.html
[14] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4086278.html
[15] http://www.afpbb.com/articles/-/2854056
[16] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4084452.html
[17] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4086278.html
[18] http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4102994.html

アル=ダビ団長
(引用元は画像中に記載)

【ぐんじさんぎょう】,2016/07/05 20:00
を加筆改修

<年表(監視団派遣決定以降)>

こちら等による死者数の数字は,殆どが反政府側発表のもの)

 11月15日,al jzeerh net によれば各地で衝突があり,20名以上が治安部隊と反政府軍人との衝突等で死亡.また,シリア軍もイドリブで14名が死傷し,ダラアでも5名が死亡.
 ホムスにおいて,先にバース党民兵が誘拐した被害者のものと思われる死体19が発見さる.
 また,各地で逮捕が続行されたが,同時にこれまで逮捕された者のうち1180名が釈放されたとシリアTVが報じる.

 英紙dayly telegraph によれば,イラン政府関係者がシリアの反政府派と対話を始めた由.それによれば一部の反政府派とは1月前から接触があったが,最近シリア国民の保護を要求している国民評議会にもより同情的になっている由.
 11月16日02:30頃,haretz net によれば,反政府軍兵士が首都ダマスカスの北にある空軍基地内の空軍情報機関を,RPG及び機関銃で攻撃.兵士6名死亡,20名以上が負傷し,現場近くは隔離され,ヘリが飛び回っているとのこと.空軍情報機関は軍情報機関と共に軍隊内部の反抗を阻止することが任務で,その将校は殆どがアラウィ派.
 11月16日,al sharq al awsat netによれば,モロッコとUAEの駐シリア大使館がアサド派群衆に襲撃さる.また,サウディとカタールの大使館も再び襲撃された,との未確認情報.
 al qods al arabi net によれば,自由シリア軍が臨時軍事評議会を設立.評議会議長は自由シリア軍司令官のriyadh al asaad 大佐で,メンバーは9名.その中には中佐が4名,少佐が3名含まれているとのこと.
 11月17日,al jazeerah netによれば,各地で抗議デモが行われ,これに対し軍等の弾圧,逮捕が続いた.シリア各地での死者は12名で,ホムス,ハマ,ダラア等で殺害された.ホムスでは更に政府軍の増強が続けられており,住民の人道的状況はさらに悪化.市内の病院は兵舎として使われ,病気の市民の治療もできないという.
 18日朝のBBC放送は,ハマで大規模な殺害があったと伝える.
 また,al jazeerah netによれば,国民評議会等の反対派は,政権が宗派対立を煽って,宗派間闘争の危険が出てきたと警告.

 11月19日,al jazeerah net によれば,シリアでは少なくとも19名が死亡.その中には情報機関員が含まれる.シリア軍は全土で市街地,群衆への攻撃および逮捕を続行したが,イドリブ,ハマ,ホムスで反政府軍が政府軍と交戦.
▼ 11月20日未明,バース党の支部を「自由シリア軍」がロケット弾攻撃.
 11月20日未明,al qods al arabi netによれば,付近の住民の話として,バース党の支部がロケット弾2発の攻撃を受ける.
 ただし,BBCが同様記事を削除したことから見て,ガセネタの可能性もあり.

 11月20日,al jazeerah netによれば,相変わらず軍等治安部隊の弾圧が続行され,シリア各地で8名が軍の銃撃で死亡(ホムスで5名,イドリブで2名,ハマで1名)
 また,自由シリア軍の「abu abidah al jarrah大隊」が,ダマスカス郊外で軍を攻撃.

 同日付のtoday's zaman net とhurriyet net によれば,トルコ外務省の話として,サウディからの巡礼帰りのトルコ人がシリア軍兵士に襲われ,負傷者発生.巡礼を載せた3台のバスがホムスの近くの検問所に来たところ,乗客が下車を命じられ,兵士がトルコ人と聞くと無差別に発砲し,巡礼者は走って逃げたが,運転手及び巡礼者の各1名,計2名が負傷したとのこと.
 負傷者2名はトルコに帰国後国境に近いAntakyaの病院で手当てを受けた.
 today's zaman net によれば,英国を訪問中のギュル大統領は記者団に対し,バスは間違ってホムスの緊張地帯に入った模様で,それが事件の主たる原因と思われるとした上で,事件は誇張されるべきではないとして,このような事件の再発がないことを希望している,と極めて冷静に述べた.

 11月21日,al jazeerah net によれば,政府軍により21名が殺害さる.
 11月22日,al jazeerah net によれば,政府軍はシリア各地で弾圧を続け,26名が殺害さる.ホムスでは町から出ようとしていたサウディ人1名が殺害され,サウディ政府が調査を要求.
 国連総会人権委委員会はシリアの人権侵害を非難し,流血を即時中止するように要求する決議を賛成122,反対13,棄権41の圧倒的多数で可決.

 11月24日,al jzeerah net によれば,シリア各地で軍等による弾圧活動が続けられ,全土で数十人が死亡.ホムスでは少なくとも26名が軍等の銃撃で殺害さる.また,ホムス県では,政府軍と反政府軍との衝突により,政府軍兵士11名,反政府軍兵士2名が死亡.
 同紙による続報では,政府軍および反政府軍の死者は,シリア全土で合わせて40名.戦闘の大部分はホムス県で行われ,果樹園地帯で激戦となり,政府軍は重火器を使用.また,それらの戦闘の一つでは,空軍パイロット7名が死亡したとのこと.
 11月25日,「我らを守る自由シリア軍の日」と題した抗議デモが各地で行われ,政府の弾圧行動で25名が死亡.
 11月26日,al jazeerah net 及びal qods al arabi netによれば,治安当局は国内各地で,弾圧活動を続行し,政府軍の銃撃で28名が死亡.また,ヨルダン外相は,最近シリアの徴募兵百名がヨルダンに亡命してきたと発表.
 一方,政府軍発表は,空軍基地が攻撃され,操縦士6名を含む10名が殺害されたと述べる.

 11月27日,アラブ連盟はシリアに対する経済制裁を決定.BBCはこれをアラブ連盟として前例のない措置と解説.
 政府軍の弾圧活動で,各地で合わせて少なくとも市民40名が死亡.人権組織によればダラアでは武装ヘリも攻撃に参加した由.
 シリア政府は,ホムスでの武力衝突で,武装テロリスト12名が殺害されたと発表し,ダラアでは軍車列が攻撃され,多数の車両が破壊されたとのこと.
 また,イドリブ県でも衝突があり,政府兵士12名が死亡したとのこと.

 11月28日,al qods al arabi net およびal jazeerah netによれば,政府軍の弾圧が続行され,ホムス,ダマスカス郊外,ハマ等で19名が殺害さる.うち12名はホムス.
 ダマスカスではシリア制裁に反対する大規模集会.

 シリアの国民評議会議長Burhan Galiounが,シリア・トルコ国境に近いhatay県で,秘密裏に自由シリア軍のアサアド大佐らと会合.会合にはSNCからAhmed Ramadan及びAbdulbaset Seidaも参加.会合でSNC議長は自由シリア軍の闘争を支援すると約束した由.
 11月29日,治安軍の発砲で11名が死亡.その大部分はホムス及びダマスカス郊外での犠牲者.
 イドリブでの反政府軍兵士との衝突で,シリア軍兵士3名が死亡し,2名が捕虜となる.他方,政府は「ホムスでの衝突で,叛徒4名を殺害し,17名を逮捕した」と発表.

 11月30日,al jazeerah net 及びal qods al arabi net によれば,政府の弾圧により20名の市民が殺害され,多数の市民が逮捕さる.
 ダラア県では,反政府軍人との交戦で輸送車両複数が破壊され,7名の政府軍兵士が死亡.
 シリア政府は912名を釈放.
 シリア国防省は,従来一部の事情のある者に対して行政措置として実施してきた徴兵延期の措置を,一時的に中止.
 アラブ連盟の制裁委委員会は,アラブ諸国への入国禁止のシリア要人17名のリストを作成.

 12月01日,al jazeerah net 等によれば,シリア軍は各地で町を攻撃し,市民多数を逮捕し,多くの住宅を破壊.ダラア県のdaliaでは戦車,装甲車数十台が町に突入した.市民の死者は21名に達したが,その大部分はハマ周辺での犠牲者.
 同日付のイスラエル紙ネット及び2日付al jazeerah netによれば,ロシア軍事筋が「ロシアはシリアに対して対艦ミサイル(超音速の Yakhontミサイル)を既に供与した」と語る.同ミサイルはシリアとの間の三億ドルに上る兵器供与協定の一部とのことで,供与の時期は不明だが,供与は総て完結したとのこと.イスラエル紙によれば,引き渡される予定のミサイルの数は72発.
 12月03日,al jazeerah net によれば,各地で殺害された民間人は少なくとも20名に上った.最も多いのがホムスで,他はダラア,ダマスカス郊外等での犠牲者.
 シリアの人権組織によれば,11月中に殺害された民間人の数は734名に上り(うち29名が女性,52名が児童,33名が拷問による死亡の由),月間の民間人の殺害数としては,抗議運動開始以来最大の数になるとのこと.また同筋によれば,抗議運動開始以来の政権側の兵士等の死者も1100名に上るとのこと.

 12月04日,各地で合わせて34名の市民が,アサド政権の兵士の銃撃で死亡.al jazeerah net によれば,全土で少なくとも40名が死亡
 北部のイドリブ県では,空軍情報機関から12名以上の兵士がトルコへの逃亡に成功.これら兵士を追跡したアサド軍との間の交戦で,10名が死傷したとのこと(どちらの側の損害かは不明)
 al jazeerah net 及びhaaretz net によれば,シリア軍がシリア東部で大規模な軍事演習.外国の軍事介入の場合には,レバント地域が戦火に覆われるというメッセージを伝えるためと見られている.
 12月05日,特にホムスを中心に多数の死傷者.死者は少なくとも22名.
 ホムス市内では,バース党民兵に誘拐された者の遺体数十が発見さる.

 12月06日,al jazeerah net によれば,この日一日でシリア各地でアサド軍の銃撃で殺害された市民の数が34名に.うち30名はホムスでの死者.
 同日付のal qods al arabi net 及びtoday's zaman netによれば,トルコ・シリア国境で,トルコからシリアに越境しようとしていた武装者35名をシリア軍が入国を阻止したとシリア通信が報じる.トルコ紙は更に,国境地帯で双方の間で交戦があり,武装者の数人は負傷し,トルコ国境に引き上げた彼等はトルコ軍により保護され,負傷者はトルコ軍の車両で運ばれたとシリア通信が伝えているとも報じる.
 12月07日,アサド軍の銃撃等により21名が殺害さる.その大部分はホムスでの殺害.また,ハマはアサド軍により包囲,閉鎖さる.
 ハマスはカタールとトルコの圧力の下,殆どの成員に対してダマスカスを離れるように指示.同日付のwall street journal によれば,ハマスはこの数月間で,シリアにある不動産,投資,銀行口座等を処分し,すでに90%の要員はダマスカスを離れ,ガザに移駐しているという.
 12月08日,al jazeerah net によれば,アサド軍及びバース党民兵の銃撃により,市民29名が死亡.その多くがホムスでの犠牲者.
 人権組織の統計によれば,拷問で死亡した者の数は240名に上り(うち8名が児童,女性が1名).そのうち112名がホムスで,次いでダラア27名,22名がダマスカス及び郊外.
 これまで比較的静かであったダマスカスの中心部,アレッポでもアサド軍の弾圧行動が行われた.同市の大学の医学部及び工学部を軍,民兵が攻撃し,多くの学生を逮捕.
ダマスカスでは中心のロシア文化センターの前で行われ,当局は青年6名,婦人4名を逮捕した.
 シリア国民評議会は,アサド軍のホムスにおける苛烈な弾圧は,虐殺とも言うべき様相を帯びており,これが宗派間戦争をもたらす危険があると警告.他方,国際赤十字委員会は,シリアの人道状況は極めて危険であるが,未だ内戦と言う状況にはないと説明.

 反政府組織「シリア国民評議会」代表は,シリアの反政府派を支援するための欧州議会での集会において,シリアでは引き続く騒擾のために100万人が飢えに苦しんでいるとして,外部の軍事解決が無ければ人道危機が訪れるとの見解を表明.
 12月09日,各地でアサド政権軍による市民への弾圧が行われ,全土で44名が殺害さる.その多くがホムスでの犠牲者.
 ダマスカス郊外のゴータ(果樹園の多い所でダマス市民の憩いの場所)で,アサド軍と反アサド軍兵士が衝突し,アサド軍は住宅に中火器や迫撃砲で攻撃.また,戦車多数が初めてこの地方に送り込まれた.

 レバノン南部で国連軍仏部隊に対する攻撃.現地の状況から,シリアの意を受けたヒズボッラーの犯行の可能性が高いと考えられている.
 12月10日,アサド軍により16名が殺害さる.仏等はアサド軍のホムスに対する本格的攻撃の可能性がり,その場合かってのハマの大虐殺の再現になると危惧.
 シリアに隣接するトルコのアンタキア市の住民の多くが,アサドと同じアラウィ派だが,彼等の間に「アサド政権が倒れると,シリアのみならず周辺地域まで不安定になる」との不安が広まっている由.

 12月12日,al jazeerah net およびal qods al arabi netによれば,アサド軍の銃撃で,ホムス他で20名が殺害さる.そのうち3名が女性.
 同日は反アサド勢力の呼びかけたゼネストの2日目であったが,アサド軍,治安関係者及びバース党民兵が各地で街を回り,店を閉鎖しているものを逮捕.
 イドリブとダラアにて,アサド軍と反アサドの兵士との間で戦闘.
 ホムスではアサド軍が市内各所に障害物を設けて市民の通行を妨げ.

 haaetz net によれば,自由シリア軍の中佐の言葉として,アサド軍がホムス市民に与えた72時間の最後通告の期限が迫りつつあるという.反政府側によれば,アサド軍はホムスの周辺にホムスを壊滅するだけの多数の軍隊を終結させており,市の周辺には塹壕が掘られて,市は完全に包囲,閉鎖.
 AFPが入手した国連高等弁弁務官の報告書によれば,シリアでの市民の死者は5000名に上りつつあり(12月だけで200名に上る),14000名が逮捕されていて,12400名が隣接国に避難.

 12月13日,アサド軍の銃撃等で39名が死亡.
 アサド軍は反アサド兵士及び反政府抵抗者に対して,ホムスとイドリブで本格的な軍事活動を開始.
 イドリブのMaaret Musreenと Kfar Bahmoulでアサド軍が葬列に発砲して2人を殺害した.これに対して村民が道路を封鎖したところ,アサド軍は無差別発砲で村民11名を殺害し,26名を負傷させた.これに対して反アサド兵士が報復して,アサド軍兵士7名を殺害.反政府軍も10名死亡,20名負傷の損害を受けた.
 シリア軍は,イドリブ県の農村を掃討し,反アサド兵士を捜索し,住民や住宅に銃砲撃を加えている.対する反アサド兵士は待ち伏せ攻撃で反撃.彼らはトルコ領内からシリアに潜入し,丘陵地帯の地形を利用し,住民の保護を頼んで活動している.アサド軍は国境地帯のパトロールを強化し,反政府兵士に同情的な農村を攻撃している.
 ホムスでは激しい銃撃音.ダラアの中心部では,2つの爆発.
 シリア放送によれば,アサド軍はトルコ領から越境しようとしていた反アサド兵士2名を殺害.
 英紙によれば,欧州のシリア制裁のために,これまでシリアで操業していたガルフ・サンズ石油(アラビア語からの音訳,本社英国)がシリアでの操業を全面停止.
 ロシア外相は,西側がアサド政権に制裁する一方,反政府側の暴力を攻撃しないことを非道徳的と非難.

 12月14日,アサド軍の銃撃等で35名が殺害さる.そのうち10名はハマでの犠牲者.他方,ハマでは反アサド兵士の待ち伏せ攻撃により,アサド軍兵士8名が死亡.
 12月15日,15名がアサド軍により殺害さる.このうち4名は,市民への発砲を拒否して射殺された兵士.
 ダラア県では各地で,アサド軍及び治安当局の兵士27名が,反アサド軍との交戦により死亡.交戦は主として道路の封鎖線,軍の集結地点で起きたという.
 イドリブ県では多くの軍人,兵士がアサド軍からの離脱を宣言.
 シリア人権団体によれば,これまでの民間人の死者5089名(男性4616人,女性122人)に達し,児童の死亡も351に達した由.他方,殺されたアサド軍兵士は1100名に上るという.また,これら団体は,市民の殺害等人道に対する犯罪に関係した74名の名前を特定したという.
 ロシアが突然,シリアでの暴力の継続を非難し,平和的抗議運動に対する暴力行使中止を呼び掛ける等の決議案を安保理に提出.これに対して仏等の西側諸国は,驚きとともに歓迎する反応を示したが,暴力に主たる責任のあるアサド政権と反政府側を同列に扱っている点,アラブ連盟の調停案受け入れを要求していないところなど不十分で,バランスがとれていないとして修正を求める意向を示した.

 12月16日,全土で金曜日の抗議デモ.反政府派によれば,これまでの抗議デモで最大の参加者があったという.
 弾圧による民間人の死者は22名.うち9名がホムス,3名がハマとダラアでの死者.民衆は多くの町で,「アラブ連盟が我々を殺している」とのプラカードを掲げ,アラブ連盟がシリア政府の条件つき交渉に付き合って,シリア情勢に緊急に対応していないことを強く非難した模様.
 ヨルダンに近いダラア県では,反アサド兵士が過去3日間アサド軍と衝突して,45名を殺害したために,アサド軍は戦車多数を動員して,反アサド兵士に対する捜索を強化.
 アサド政権は,ホムスで病院を攻撃しようとしたテロリスと(反アサド兵士)を撃退し,そのうち17名を殺したと発表.また,シリア通信(政府系)はシリア東北部で,鉄道線路を破壊する妨害行為があったが,損害はないと報道.その他にもこれまで数か所で鉄道線路破壊工作があったとのこと.

 12月17日,al jzeerah netによれば,40名の市民がアサド軍により殺害さる.そのうち2名が児童2,1名がレバノン人.その大部分はダラアとホムスでの犠牲者.
 シリア軍は各地で弾圧行動を継続しているが,特にイドリブ県では,戦車50両を伴った軍が農村地帯を掃討.これに対し,各地でアサド軍の兵士が軍を離脱する動きあり.

 12月18日,各地で合せて23名の市民が殺害さる.その大部分がホムス及びイドリブでの犠牲者.多くの都市でアサド軍は無差別発砲を繰り返しながら,攻撃を強めており,病院を含む多くの施設が破壊されたとのこと.
 12月19日,シリア軍は広範囲で軍事活動を強化し,反アサド兵士80名を含む114名を殺害.
 人権団体は,アサド軍は虐殺を実行しているとして,イドリブ県のkansafrah で72名の反アサド兵士を殺し,その死体を隠したと報道.
 また,同県のal haskaa では中佐を含む8名の反政府兵士が殺された.
 さらに,34名の民間人がダマスカス,ダラア,ハマ,ホムス,ディールッズールで殺された.特にホムスは封鎖され,掃討作戦が進められている.ダマスカス・ホムス道路も閉鎖され,空軍機及び臼砲fがホムス市を砲・爆撃している.

 国連総会はシリアの人権侵害を非難する決議を採択.
 12月20日,al jazeerah netによれば,82名が殺害さる.その大部分はイドリブ県,残りがダラア,ハマ,ホムス,ダマスkス郊外等での犠牲者.イドリブのkafr awiidや近くの農村では,住民が包囲され虐殺されたとのこと.
 アサド政府は多数の逮捕者をこれまでの通常の拘禁所から軍の基地等にある収容所へ移送し始め,また,アサドは,テロの目的をもって武器を配布する者を死刑に処する命令を発した.
 他方,ダマスカスの南の待ち伏せ攻撃で,アサド軍兵士14名が死亡.

 12月21日,アサド軍は38名を殺害.最も犠牲者が多かったのはイドリブ県のjabal al zawiah であり,同地域では戦車が激しく砲撃.また,ホムスでは大砲が使用され,多くの建物が崩壊した.さらにダマスカスの旧市街及び郊外でも,治安部隊の広範な活動があった.
 レバノンのal safir紙の記者がダマスカスの抗議デモ取材で治安部隊に逮捕さる.
 ホムスにて,ダムの建設に従事していたイラン人5名が何者かにより誘拐さる.
 在スーダンのシリア大使が,ハルツームの中心でシリア人により殴打.

 12月22日,アラブ連盟監視団の先遣隊がダマスカスに到着.
 シリア各地では40名がアサド軍により殺害さる.その大部分はイドリブとホムス.

 12月23日,シリア国家治安局および情報機関の拠点に対し,自爆テロ.
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4053857.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4054321.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4055292.html
 シリア各地では,金曜礼拝の後で「死の議定書」と題する,アラブ連盟の融和政策がシリア市民の殺害を許していることに抗議するデモ.
 また,全土で合わせて28名が殺害さる.死者が出たのはイドリブ,ホムス,ダラア等.加えてダラアでは1名が拷問で死亡.

 12月24日,軍や治安機関のホムス,ダラアその他の町に対する攻撃が続き,28名の市民が銃撃等で殺害さる.そのうちホムスでは,子供3名を含む16名が殺害さる.
 また,イドリブ県のjabal al zawiyah では戦車の砲撃が続き,2名が殺害され,ダマスカス郊外でも4名が殺害さる.

 12月25日,アラブ連盟監視団の団長muhammad al dabi がダマスカスに到着.
▼ アサド軍の銃砲撃で10名が殺害さる.犠牲者の大部分はホムス,ダラア,dir al zur.
 また,アサド軍はシリア各地で砲撃を続け,市街地に対する攻撃を続行し,逮捕を継続.

 同日夜,バース党本部は,シリア軍医務隊の中佐が正体不明の武装者により殺害されたと発表.
 12月26日朝,ホムス,ダラア,ハマ等において数時間で13名がアサド政権軍により殺害さる.そのうち3名は児童.また,1名はアレッポのデモで殺害された由.
 バース党本部は,バース党中央委員会委員のghazi zaghibがホムスで,テロリストにより家族とともに暗殺されたと発表.

 同日一日では,シリア全土でアサド軍の攻撃で,56名が死亡.21名はホムス, 6名がハマ,残りがダマスカス,アレッポ,イドリブ等での死者.
 イドリブ県では25名が逮捕さる.同市では多くの狙撃手が屋上に配備されているとのこと.
 レバノン国防相は,最近シリアとの国境の検問所の無い地域で,アル=カーイダ等の不法越境が見られると語る.

 12月27日,同日付のal qods al arbi net は,ロシア情報機関がシリア政府に対し,その治安機関等が侵透されていると警告したと報じる.
 シリア通信は,武装テロリストがホムスの近郊でガスのパイプラインを爆破したと非難.逆に反政府派は,政府軍のヘリコプター複数が施設を爆撃したと非難.
 12月28日,同日メッカ時間06:30のal jzeerah net は,過去24時間でアサド政権のために死亡し市民の数は42名に上ったと報じる.
 そのうち17名がホムスで,7名がハマで,ダラア及びダマスカス郊外でそれぞれ4名,ダマスカス大学で3名,イドリブで3名が殺害された由.
 jazeerah net等の記事によると,ホムスでは大勢の市民が(7万人との数字もある)監視団を出迎えてデモをして,口々にアサド政権の虐殺を訴えたとのことで,また監視団到着前に戦車が市街地から撤収するのが目撃されたとのこと.

 同日には19名が殺害されたが,その大部分は監視団の次の訪問地ハマであった.ハマでは治安部隊が,市の中心広場に行こうとする抗議デモと激しく衝突し,銃撃,催涙ガスを多量に使用.
 監視団はホムスで最も激しい弾圧のあったババ・アムル地区も訪れ,監視団団長(スーダンの准将)は監視団の行動は自由で今のところシリア側の対応に満足していると語った.
 また,ホムスでは多くの市民が監視団をとり囲み,口々に治安部隊の行動について訴えたが,団長がホムスは平静で激しい弾圧は目撃しなかったと語ったと伝えられたことに対して,激しい怒りを表明.
 シリア国民評議会は,アサド政権が弾圧を強化していることに関し,シリア政権は監視団を騙し隠れ蓑に使おうとしていると非難し,ホムスの状況を検討するために,緊急アラブ外相会議の開催を要請.
 シリア政府は逮捕者のうち755名の釈放を発表.
 ドイツ外務省は,シリアの情報機関がドイツ国内で,反政府派を攻撃したとの情報について,説明を求めるためにシリア大使を招致.
 アサド大統領は,トルコ製品に対して30%の課税をする法案を発布.

 12月29日,ホムス,ハマ,イドリブ,ダラア等において,35名が治安部隊によって殺害さる.
 ダマスカスのミダーン地区では抗議デモ隊が封鎖され,治安部隊とバース党民兵の射撃を受く.
 監視団の到着にも関わらず,アサド政権の殺人が減少しないことに関連し,市民の間に監視団に対する失望と不信が広まりつつあり.

 12月31日,16名がアサド政権により殺害さる.大部分はハマ.
 シリアの多くの都市,特にイドリブ,ダラア,ハマで多数が抗議集会に参加.
 連盟監視団はシリア政府に対し,狙撃手を建物の屋上から遠ざけるよう要求.
 反アサド活動家の間では,ごく少数のアラブ連盟監視団が政権側の殺人行為を阻止する能力について,悲観論が強まりつつあり.
 シリアの反政府組織シリア国民評議会とシリア国民調整組織の2組織が,カイロでの会合で,今後の政治原則について合意したが,合意発表後,直ぐに見解の差が表面化.


 2012年1月1日,7名が政府軍により殺害さる.
 ダマスカスを含む多くの都市で,新年の機会に夜間抗議デモ.
 ダマスカス郊外ではアサド軍と反政府軍兵士が衝突.死傷者等の詳細は不明.
 アラブ連盟の監視団では,先に団員がアサド政府軍の狙撃兵を屋上で見たと発言したことに対して,団長が不正確であるとして訂正.また,団長が,先にホムスで特段緊張は見なかったと伝えられたことに関しては,団長はそのような発言はしていないと否定.

 1月2日,ホムス,イドリブ,ダマスカス郊外等で24名がアサド軍により殺害さる.
 イドリブ県の jabal al zawiah では反乱兵士が,治安部隊の検問所2箇所を攻撃し,数十名を捕虜に.第3の検問所では戦闘があり,死傷者が出たが,その数は不明.
 アラブ連盟のアラビ事務局長は3日の記者会見で,「シリアでは未だ殺害が続いており,狙撃兵も目撃されている」「市街地に反政府派の死体があるとの報告を受けた」「シリア政府は3484名の囚人を釈放した」などと述べる.
 スイス政府はアサドの甥でシリア中央情報局のダマスカス支部長のhafiz makhloufに対する査証発給を拒否.

 1月3日,21名がアサド政権により殺害さる.11名がハマで,4名がホムスで,3名がイドリブで,2名がダラアで,1名がダマスカス郊外での死者.
 反アサド軍兵士がダラアにて,アサドの治安軍兵士18名を殺害.
 シリア通信は,「テロリストがホムス郊外で発電所向けの天然ガスのパイプラインを爆破」と報道.これに対して反政府派は,政府側が連盟監視団の到着に合わせて自ら爆破したと非難.

 1月4日,アサド治安部隊の発砲で20名が死亡.その大部分はホムス.
 政府軍の発砲による負傷者が,シリアの病院に収容されると政府軍や医師等により殺害されるとして,多くのシリア負傷者がこっそりレバノンの病院に運び込まれている,とBBCが報道.
 元副大統領のハッダームの率いるグループは,英首相キャメロンにシリアへの軍事介入を要請.
 シリアは,米国がアラブ連盟の監視団の仕事に干渉しているとして非難.
 シリアのムスリム同胞団指導部は,イランの最高指導者ハメネイが10/3,特使をイスタンブールに送り,同胞団に対してシリア政府の重要閣僚4名の提供と引き換えに,アサド政権を支持するように勧奨したと述べる.これに対して同胞団は,イランはシリア問題でアサド政権を偏って支持しているとして,その仲介を拒否.

 1月5日,ホムスを中心に23名が殺害さる.
 1月6日,シリア全土で26人が,アサド軍の発砲等により死亡.その多くが北部のdir al zur.
 反政府派は,ホムスでは家屋3500が破壊され,アサド軍の封鎖のために食料,医薬品も供給が少なく値上がりしており,人道危機に直面していると述べる.また,イドリブ,ダラア,ホムス等では監視団をごまかすため,戦車等は障害物の陰に隠され,あるいは警察車両に見せるために水色に塗られており,アサド軍は未だに市街地から撤退していない,とも.
 自由シリア軍のアサアド大佐は,監視団がアサド政権の弾圧を隠す役割を果たしているとして,その撤退を要求.また,シリア情勢の平和的解決は困難で,武力でアサド政権を倒すしかなく,来週にも大規模な作戦を始めると語り,さらに,既に兵士4万人が政府軍から離脱したと主張.
 最近反政府派に投じた首相府及び国防相第1査察官は,多くの兵士が反政府派に合流したいと考えているが,家族の安全を考えてためらっていると述べる.
 シリア政府は暴力行為に関わっていない552名の政治犯を釈放したと発表.
 シリア外相はトルコがシリア情勢を不安定化させていると非難.

 BBCによればダマスカスの中心部,ミダン地区において爆発事件が発生し,バスの中での自爆により数十名が死亡.al jzeerah net の速報によれば,少なくとも死者25名,負傷者46名.国営放送はテロリストの仕業であると報じる他方,自由シリア軍は事件の裏にアサド政権があると非難.
 1月7日,アサド軍の銃撃により,各地で29名が死亡.死亡者の多かったのは,ホムス,イドリブ,ダマスカス郊外.
 バス停爆破事件の死亡者の葬儀が行われ,葬儀に合わせて政権支持の大規模デモが行われた.

 1月8日,各地でアサド軍の銃撃により32名が死亡.特に多かったのがホムス,イドリブ,dir al zur ,ダマスカス郊外等.
 他方各地でシリア軍からの離脱兵が増加し,彼等とアサド治安軍とが各地で衝突.特にホムスでは激しい戦闘があった由.また政府軍兵士11名が死亡した由.

 1月9日,シリア各地において,アサド軍の銃撃により,少なくとも21名が死亡.特に婦人,子供の犠牲者多数.また,拷問で死亡した者も9名に.
 アラブ連盟監視団の団長はカイロからダマスカスに戻ったが,監視団の一部がホムスから首都へ帰るところで,その車に銃撃.被害や犯行者等は不明.
 バース党の一部が「シリアを救い,多党制からなる民主国家を作るため」として,政権に反対し,反政府側に立つことを表明.但し,そのメンバーの氏名,数等は一切不明.

 1月10日,同日付のal jazeerah net によると,同放送のシリアに関するニュース番組がこれまでも何度も妨害を受けたので,衛星を運営しているアラブサットに調査を依頼していたところ,このほど妨害の元凶はイランであるとの報告書を受けたとのこと.al jazeerah 放送は東経26度を回る衛星バドル4号で送られていたが,この放送が何度も繰り返し妨害を受けていたという.
 アサド大統領が自称「重要演説」を行う.しかし,2時間のその演説の中で,彼は専ら,「抗議運動は外国の陰謀.参加者はテロリスト.シリア政府は断固これを鎮圧する」と,従来の主張を繰り返すにとどまる.
 シリア各地では39名が治安部隊により殺害さる.その大部分が北部のdir al zurでの死者.国連によれば,アラブ連盟監視団到着以来の死者は400名近くに上るという.

 1月11日,主として湾岸諸国からのアラブ連盟監視団員11名が,ラタキアでデモ隊等から攻撃を受く.クウェイトの士官2名が負傷したが,犯人は不明.他方,監視団の1人は「監視団はシリア政府の暴力を隠すために使われている」として辞任.
 同日付のal qods al arabi net によれば,リマソール港で給油のために立ち寄った船が,ロシアからシリア向けの弾薬等を積載していたため,キプロス当局が立ち入り検査.同船はシリア向けの弾薬,爆発物,武器35tを積載していたとのこと.
 シリア各地では,仏人記者も含めて23名が死亡.特に死者が多かったのがハマ郊外 ,dir al zur.
 ホムスでは,政権支持のデモ隊に向けて爆発物が投入され,同市を訪れていた仏報道者を含め,6名が死亡.爆発物は手榴弾とのニュースもあるが,臼砲との説もあり,反政府派は臼砲を所持しているのは政府軍だけであると主張している.
 ダマスカス郊外のyaafurにおいて,軍の施設に爆発物が仕掛けられ,兵士4名が死亡し,8名が負傷.

 1月12日,シリア各地でアサド軍の銃撃により,市民26名が殺害さる.そのうち7名がトルコ国境に近いイドリブ,5名がホムス.また,シリア軍はイドリブにて,早朝から市街地に対する砲撃を続けた.
 人権団体によれば,北部のjisr al shghourにおいて,アラブ監視団に近づこうとした市民にアサド軍が発砲.負傷者も出た.
 アラブ連盟監視団の更に2名が,「監視団は何の実効性もない」として辞任の意向.
 欧米やアラブ諸国に居住しているシリア人150名が,食料,医薬品等の救援物資とともに市民との連帯を訴えるためにトルコ国境からバス,乗用車の車列で,シリアに入国することを計画していたが,国境でシリア治安当局により入国を拒否された模様.

 1月13日,先にキプロスで留め置かれ,シリアには向かわないとの約束の下に出航を認められたはずのロシア船が,シリアのタルトゥス港に入港.
 シリア各地ではアサド軍の銃砲撃により25名が死亡.特に政府軍の活動が激しかったのが,ハマ,ホムス,イドリブ,ダマスカス郊外等であったが,アレッポでも抗議参加者が逮捕された.
 シリア国民評議会は声明にて,自由シリア軍と両者の間の協力と調整について合意に達したと発表.この合意に従って,自由シリア軍のところに連絡事務所が設置される由.

 1月14日,al jazeerah net 及びal qods al arabi netによれば,シリア各地ではアサド軍の銃撃のため,少なくとも13名が死亡.アサド軍はダマスカス郊外の憩いの場,zibdaniにて猛攻.
 シリア軍北部軍管区の最高幹部の一人,mustafa al sheikh中将がシリア軍を離脱.

 1月15日,al qods al arabi net 及びal jzeerah netによれば,シリア各地において,アサド軍の銃撃で32名死亡.特にホムス(11名)とイドリブ(7名)で死者多し.一方,zubdani(ダマスカス郊外)への攻撃は,監視団到着による中断後,猛攻再開.
 アサド大統領は今般の抗議運動で種々の容疑で逮捕された者に対する一般恩赦を発表.

 シリアの著名な反政府活動家,nawwaf al bashirがトルコに亡命し,シリア国民評議会に参加.
 1月16日,al jazeerah net 及びal qods al arabi net によれば,シリア各地でアサド軍の銃撃により市民21名が殺害さる.そのうち,9名がホムスで,4名がal haska ,そして1名が,それまで平穏だったアレッポでの死者.
 1月17日,al jazeerah net 及びal qods al arabi net 等によれば,シリアではアサド軍の銃撃のため37名が殺害さる.その大部分はホムスでの死者.同市では政府軍の激しい砲撃が市内各地で続いているという.
 アレッポでも大学町での夜間の抗議デモに対し,軍が介入.学生寮などの建物を破壊し,一部の者を逮捕.
 自由シリア軍のアサアド大佐が,国際社会の軍事介入を呼び掛け.

 1月18日,al jazeerah net 及び al qods al arabi net によれば,シリア各地においてアサド軍の銃撃より23名の市民が死亡.特にホムス(9名),イドリブ及びダマスカス郊外での死者多し.
 ダマスカス郊外のzubdaniでは,政府軍と自由シリア軍の休戦(地元の有力者が国防次官に対し斡旋したものの由)が維持され,マーヘル・アサド(アサド大統領の弟で国民弾圧で悪名高い)の指揮する第4師団が町から撤退した模様.自由シリア軍は市街地には姿を見せないことになっている由.
 この休戦は政府軍が町の攻略に失敗したためで,自由シリア軍は政府軍の装甲車4両と輸送車2両を破壊した模様.
 レバノンのヒズボッラーは,zubdaniをカチューシャ・ロケット(ロシア製の連装ロケット砲)で攻撃したとの反政府派及び一部アラブ報道を,事実無根として否定.

 1月19日,al jazeerah net およびal qods al arabi net によれば,シリア各地において,政府軍の銃撃により24名が死亡.最も死者が多かったのはハマ,イドリブ,ジャバルッザーウィア.
 反政府派は,分離兵士がハマで政府軍の准将を殺したと発表.この准将は軍情報部のadel mustafaで,彼が一般市民に対する発砲を命じたことに反発した兵士が,彼を射殺した由.

 1月20日,al jazeerah によれば,シリア各地でアサド軍の銃撃で21名が死亡.このうち7名がイドリブ,3名がダマスカス郊外での犠牲者.
 反政府クルドyakiti党の政治局員は,クルド国民評議会に属するクルド政党(複数)は,反政府各党は,国民調整委員会,国民評議会,民衆的変革のためのダマスカス宣言の3組織に対するメンバーシップを凍結したと表明.
 記者,作家等から成るアラウィ派のグループが,アサド政権が自分たちとアラウィ派を同一視しようとしていること,及び反政府派も宗派対立を煽っていることを非難する声明をネット上で表明.また市民的自由を求めるはずの反政府運動も宗派的観点を持ち出していることを非難.
 声明に署名したのは詩人のrabah hassan(女性)及び同じくrashah amran(女性),女性作家のrouzah yasin hassan ,同じくsamr yazbak,女優のlouize abdel karim ali同じくaiman jaber,女性記者のroula al asad 同じくkhula dunnya,男性記者のyamin hussein等.

 1月21日,al jazeerah net 及びlqods al arabi net によれば,シリア各地でアサド軍と分離派の兵士とが衝突し,数十名が死亡.
 イドリブ県のkhorbah ghazalaでは,自由シリア軍との衝突で政府軍に23名の死者.同じ県の別の場所でも政府軍9名,反政府兵士1名が死亡.
 また,イドリブでは逮捕者を乗せた車列の近くで爆弾が破裂し,15名が死亡.
 反政府派によれば,同市の病院では遺体60が発見され,21日の死亡確認者は少なくとも95名に上ったという.
 反政府側が支配している唯一の町であるzubdani(英語の報道ではzabadani)では,自由シリア軍の兵士が政府軍の攻撃再開を予測して,最後まで抵抗するとしている.

 1月22日,同日付のhaaetz net 及び y net news は,ダマスカスから20kmのところにある町doumaが,政府軍と反政府兵士との戦闘の後,反政府兵士に完全に制圧されたと報じる.
 al jazeerah net及びal qods al arabi net によれば,シリア各地で22名が政府軍の銃撃で殺害さる.大部分がダマスカス郊外での犠牲者だが,ホムスでも3名,イドリブでも2名,ダラアとdir al zur では各1名が死亡.
 アラブ監視団の到着後,アサド軍の銃撃で死亡したものは976名に上る.そのうち347名がホムス,166名がイドリブ,131名がダマスカス及びその近郊,111名がハマ,221名がそれ以外の各地での死者.
 シリア政府はこれまで5255名の逮捕者を釈放.

 1月23日,アラブ連盟が,シリアに関する調停案を全会一致で決議.シリア政府は即時にこの調停案を拒否.
 シリア各地ではアサド軍の銃撃により28名が死亡.その大部分はホムス及びイドリブでの犠牲者.
 ホムス県の農村で,検問所でアサド軍と反政府兵士の衝突があり,政府軍兵士5名が死亡し,13名が負傷.反政府兵士の方の損害は不明.
 イドリブでもダマスカスーアレッポ道路で両派の兵士の衝突があり,また,dir al zur でも同様の衝突があった(兵士の損害は不明)

 1月24日,ダラアでは政府軍と反政府軍の衝突が激しくなっており,政府軍は24日夜から市の東部,西部の入り口に,重火器を含む増援部隊を配備し,攻撃の構えをとっている.市内は政府軍が支配しているが,反政府軍が方々で抵抗.
 シリア各地での死者は68名.その大多数はホムスでの犠牲者.
 アラブ連盟はシリア問題を国連安保理に委ねることに.

 1月25日早朝,4名がアサド軍により殺害さる.
 25日一日では,民間人死者は26人に上った模様.
 イドリブ近辺ではイドリブの赤新月社(非ムスリム国の赤十字社に該当するもの)の責任者で同時にシリアの赤新月社副総裁abdel razzak jabiru(アラビア語からの音訳)で,ダマスカスからイドリブへ車で向かう途中,射殺された模様.政府はこれをテロリストの仕業としているが,反政府派は政府軍兵士の仕業であると主張.
 ハマ,ホムス,イドリブ,ダラアではアサド軍が1日中激しい銃砲撃を.
 1月26日,al jazeerah net 及びal qods al arabi net によれば,各地で政府軍の銃撃により62名が死亡.その大部分はホムスでの犠牲者で,児童11名も死亡.ホムスでは住宅地帯に対し砲撃が行われ,多くの家が倒壊.
 ドゥマでは政府軍は数方面から,戦車等も使って攻撃開始.
 ハマで600名が逮捕さる.
 アラブ連盟監視団の任期が1年延長.シリア政府も受け入れに同意したが,GCC諸国は監視員を引き上げ.但し資金的,ロジ的支援は継続する由.

 al jazeerah netによれば,自由シリア軍の一部隊がホムスで,イラン人7名を逮捕.うち5名は士官を含む革命防衛隊員で,武装をしており,シリア空軍情報部の指揮下で狙撃手をしていたが,残りの2名は民間人で発電関係で働いていたもので,この2名は直ぐ釈放されると発表.他方,イラン外務省の報道官は,シリアの聖墓地を訪問するために,アレッポからダマスカスに向かった11名のイラン人が何ものかに誘拐されたとして,シリア政府に安全の確保方依頼したと発表.
 1月27日,シリア各地でアサド軍の銃撃で102名が死亡.そのうち38名がダマスカス郊外,21名がハマ,15名がダラア,14名がアレッポ,10名がホムスでの死者.ダマスカス郊外では,各所で激しい衝突.ハマは治安部隊により封鎖され,アレッポでは大学町に150名のテロ対策部隊が配備.ダラアには大規模な増援部隊が送られた.
 ホムスではアラウィ派の民兵がスンニ派の家族14名を殺害.
 1月28日,65名が政府軍の銃撃で死亡.そのうち9名がダマスカス郊外のmisraba,7名がホムス,4名がダラアとハマでの死者.
 ハマでは17名の,頭を撃たれた遺体が道路で発見さる.彼等は前に治安当局に逮捕された者たちだった.
http://www.aljazeera.net/NR/exeres/CF5B7E61-5D8D-400C-B431-F47FBF290C46.htm?GoogleStatID=1
http://www.alquds.co.uk/index.asp?fname=latest\data\2012-01-28-13-13-04.htm
 ダマスカス郊外にて,准将をトップとする300名の兵士が,政府軍を離脱して反政府軍に合流.また,ホムスではアサド軍と自由シリア軍との間で激しい衝突.
 dir al zur にて,ガスのパイプラインが爆発.政府はテロリストの仕業としているが,反政府派は政府軍の砲撃の結果であるとしている.
http://www.aljazeera.net/NR/exeres/CF5B7E61-5D8D-400C-B431-F47FBF290C46.htm?GoogleStatID=1
http://www.alquds.co.uk/index.asp?fname=latest\data\2012-01-28-09-41-53.htm
 アラブ連盟は,状況悪化のため(監視団に危険がある為)監視団の活動を停止すると発表.これに対してシリア政府は驚きと不快感を表明した.
http://www.aljazeera.net/NR/exeres/EDD9223C-2735-48EA-A92F-96EF200414FD.htm?GoogleStatID=1
http://www.alquds.co.uk/index.asp?fname=latest\data\2012-01-28-13-32-33.htm
 1月29日,シリア各地では自由シリア軍及び民間人が66名死亡.このうち26名が民間人.死者が多かったのは,イドリブ,ダマスカス周辺,ホムス,ダラア,ハマであった.一方,政府は政府軍兵士6名が死亡したと発表.
 自由シリア軍によれば,ダマスカス郊外の各所で,政府軍と自由シリア軍の衝突,兵士の政府軍からの離反が続く.最も首都に近い所では,首都から8kmのところで衝突.特にゴータの森では60台の装甲車と32台の戦車に支援された政府軍が攻撃.

 1月30日,シリア各地では政府軍の銃砲撃により約100名が死亡.その大部分はホムス及びダマスカス郊外での死者.
 政府は,テロリストがホムスとバニヤスをつなぐガス管を爆破したと非難.

 反政府派は,現在ダマスカス郊外では,激しい市街戦が続いていると語っており,また目撃者は首都でも,政府軍は市の中心の主要広場に戦車等を配備していると語った.
 1月31日,シリア各地で37名が政府軍の銃撃で死亡.その大部分はホムスとイドリブでの死者.
 その後のニュースでは,31日の死者は合計45名になったと報じられる.
 シリア政府は「ダマスカス郊外でテロリスト集団(自由シリア軍及び同調者のことか)をせん滅して,多くの者を逮捕し,米国,イスラエル製を含む多量の武器,弾薬,爆発物を押収した」と発表.政府軍と反政府軍との衝突があったのは,ドゥマ,ハラスター,サクバー,ホムーリーア,カフルルバタン等の由(いずれもダマスカス郊外の町)

 2月1日,シリア各地では政府軍の銃撃により63名が死亡.そのうち30名がwadi bardahと言うダマスカス郊外の一つの町,14名がホムス,残りはダラア,イドリブ等での死者.
 自由シリア軍のアサアド大佐は,「シリア全土の50%は政府軍の完全な支配下になく,今後,自由シリア軍はゲリラ戦を仕掛ける作戦である」と語る.また,自由シリア軍の別の幹部は,「近くトルコ国境に近いイドリブまたはjabal al zawiahを(リビアのベンガジと似た)開放区に宣言する予定で,そうなればこの地域に更に逃亡兵士が合流し,情勢が大きく変わるであろう」と述べる.

 al jazeerah net では,シリア電子軍と称する組織が,そのネット上に「反政府運動が腐敗と殺戮と流血をもたらしている」という記事を,違法に挿入しようとしたが,ネットの専門家が短時間で,この問題を解決.
 2月2日,シリアでは政府軍の銃撃による死者17名.そのうち4名がダラア,3名がホムス,イドリブ,アレッポ,1名がクネイトラ,ハマ,ダマスカス郊外及びal riqqaswでの死者.
 他方ダラア,イドリブ等でシリア軍と自由シリア軍が衝突し,双方に負傷者.
 政府軍はダラアに増援部隊を派遣し,3方向から市を包囲.
 政府はダマスカス近郊で首都から15~20km圏内の総ての町,農村を奪還したと発表.また,レバノン国境に近いzubdaniに対する攻撃を準備中の由.


 【質問】
 2012年ホムス攻勢について,3行以上で教えてください.
 Kérem, mondja el a 2012 Homs támadó a három vagy több sorban.

 【回答】
 ホムスはシリアの二大都市,ダマスカスとアレッポの中間に位置する.
 ここへのアサド軍の攻勢は,2012年2月初めに始まり,街を包囲.
 アサドに忠実な第4機甲師団が投入されたが,長期戦となり,2012年4月14日,国連仲介の停戦により,この街への砲撃はいったん止んだ.

***

 シリアの二大都市,ダマスカスとアレッポの中間に位置するホムスは,世界最古のダム,ホムス湖ダム(紀元前1300年頃)があることで,ダム・クラスタにとってはお馴染みの街である(かどうかは知らない).

 ここへのアサド軍の攻勢は,2012年2月初めに始まり,2/3には「ホムスの虐殺」とも呼ばれる,200人近いホムス住民が死亡する惨事となる.
 もちろん,住民の死者自体は,それ以前から出ているが,2月初めになってその数は急上昇.
 アサド軍は町を包囲し,間断なく砲撃を続けたと見られる.

 2月下旬からは空軍も投入.
 2/22には米記者,仏カメラマンらジャーナリストも戦火に巻き込まれて死亡した.

 3/1には,反政府派の最大拠点だったババアムル地区が,政府軍に制圧さる.
 この地区に突入した政府軍は,アサド大統領の弟のマーヘル率いる第4師団であり,この弟がアサド{父}の時の弟のりファート・アサドと同じように,反政府派に対する容赦ない弾圧を一手に引き受けている,という.
 特殊部隊も投入したとの報道も.

 3月上旬,アサド政府はホムスでの戦いにめどがついたと見たのか,主力はイドリブへ向かったが,その後もホムスでの市民に対する攻撃は続き,即決処刑も行われるようになる.
 また,アサド派民兵による,女性に対する残虐行為も報告される.

 2012/4/10,国連仲介による停戦期間に入るが,皮肉なことに,ホムスその他で民間人の死者は増える.
 国連停戦監視団がシリア入りする前にカタをつけてしまおうとの魂胆が見え透いていたが,監視団が現地入りした4/21,とにもかくにも砲撃は攻勢以来初めて停止.
 もちろん,その日も市民の死者が出なかったわけではなく,つかの間の平和に過ぎなかったのだが…

 【参考ページ】
https://en.wikipedia.org/wiki/2012_Homs_offensive
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4169098.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4175179.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4175179.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4175179.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4140108.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4133943.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4133077.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4127114.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4128107.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4119976.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4115119.html
http://www.aljazeera.net/NR/exeres/9D80BDB5-7068-43E3-B86B-BEE895C116DB.htm?GoogleStatID=1

【ぐんじさんぎょう】,2016/08/01 20:00
を加筆改修

<年表(ホムス攻勢以降)>

こちら等による死者数の数字は,殆どが反政府側発表のもの)

 2月3日:ホムスの虐殺.
シリアでは200名以上が政府軍により殺害された模様.死者の大部分はホムスで,ホムスでは政府軍が特にal khaldiyah地区で夕刻から,地区を封鎖して,戦車砲及び臼砲を無差別に発射したために,人々は砲撃で倒壊した建物の下敷きになって多くが死亡し,500名以上が負傷.政府軍の攻撃は続行されており,死傷者はさらに増える模様.
 日本時間夕刻のal arabi net(サウディ系の人工衛星TV局のネット)はホムスの死者は337名に上り,負傷者が1300名に上ったと報道.
 これだけ激しくホムスが狙われた事情について,反政府活動家は同地で政府軍からの離脱兵が相次いだことが原因だと話す.
 ムスリム同胞団は,ホムスの虐殺の関係者を国際刑事裁判所で裁判にかけるよう要求.
 その他死者の多かったのはダマスカス郊外及びアレッポだが,内訳は不明.
 人権団体humanrights watchは,アサド政権は児童(小さい子供では13歳の由)も拷問していると非難.同団体は2011年アサド軍が児童を逮捕し,拷問し,殺害したケースとして,最低12件の証拠を集めたとしている由.またアサド軍は学校を留置所,拷問の場所として使っているとも.
 2月4日,国連では決議案の採決が行われ,米,英,仏,独,ポルトガル,モロッコ,インド,南アフリカ,パキスtン,コロンビア,アゼルバイジャン,ガテマラ,トーゴの13国は賛成したが,ロシア,中国の拒否権で,決議案は否決.
 2月5日,シリア各地で43名が政府軍の銃撃により殺害さる.そのうち14名はホムス,それ以外はダマスカス郊外,ダラア,イドリブ等での死者.
 シリア政府は反政府軍との交戦で兵士12名が死亡し,相手にも多数の死傷者を出したと発表.
 jabal al zawiyah では政府軍は500発の砲弾を撃ち込む.

 2月6日,85名が政府軍の銃砲撃で殺害さる.このうち56名がホムス,13名がダマスカス郊外,9名がイドリブ,5名がアレッポでの死者.
 反政府勢力側では,al sheikh 中将を首班とするシリア最高軍事評議会が設置されたが,これに対して自由シリア軍はアサアド大佐名で,
「al sheikh 将軍は自由シリア軍に属しておらず,この評議会の設立については何ら協議されていない」
として,距離を置く声明を発表.
 米国は,シリア政府が大使館の安全確保のための十分な措置を取らなかったとして,館員の安全のために外交官全員を退避させ,大使館を閉鎖.

 2月6~7日にかけては,シリアでのアサド軍による殺りくは128名に.このうち95名がホムス,15名がダマスカス郊外,11名がイドリブでの死者.ホムスではbaba amrou地区だけでも,アサド軍は500発の砲弾を撃ち込み,同地区では61名が死亡.
 zubdaniの自由シリア軍は,アサド軍に7日午前中にその周辺からの撤退を求め,要求が入れられなければ,戦略的要点を攻撃すると警告.

 2/8,ホムスではアサド軍の激しい砲撃が再開.イドリブとzubdaniでも激しい砲撃が続く.
 GCCは7日,GCC諸国がシリアの大使を追放し,自国の大使を召還することを決定.
 クウェイト内相は,在クウェイトのシリア大使館に乱入したシリア人抗議者は,本国では身に危険があるので,シリアに送還しないと発表.
 シリア政権系の放送局は,「シリアが逮捕している49名のトルコ情報局員の釈放について,両国間の交渉が始まった」と報道.トルコのネットでは関連記事はなし.
 シリア国民評議会と自由シリア軍は共同の声明で,海外のシリア人実業家,アラブ実業家,およびアラブ政府に対し,シリア国民の自衛及び民間地区をアサド軍から守るための行動に対して,資金的援助をするよう呼びかけ.

 シリア各地では,アサド軍の銃砲撃で117名が死亡.そのうち93名がホムス,7名がイドリブ,6名がダマスカス郊外,3名がハマ,アレッポとダラアでそれぞれ2名の死者.ホムスでの死者には児童21人が含まれる.
 ホムスの被害の大部分は砲撃によるもので,ババ・アムル地区では砲撃で30個の家が崩壊.
 シリア政府は民間住宅地域への砲撃を否定し,武装勢力の臼砲に責任があると主張.
 シリアのムスリム同胞団最高指導者は,ホムスでのアサド軍の殺戮はジェノサイドであると非難.

 ドイツにおいて,シリア外交官が情報機関の為にスパイ活動をしていた事件2件を摘発.
 2/9,シリアでは政府軍の銃砲撃で131名が死亡.そのうち107名がホムスでの死者.ホムスではアサド軍は激しい砲撃を再開.特にal khalidiyah,al bayadhah,bab amrou.等への砲撃が激しく,多くの建物が倒壊.
 ダラア近郊では自由シリア軍が待ち伏せ攻撃により,治安部隊の2の車列を攻撃.兵士7名が死亡し,数十名が負傷.
 シリア政府はリビアの外交官に対し,9日から3日以内にシリアから退去するように求める.
 独外相は4名のシリア外交官を,独国内にてシリア人反政府派に対してスパイ活動をした嫌疑で追放したと発表.

 2/10,bbc net ,al jazeerah net ,al qods al arabi net等 は,アレッポで2の大きな爆発事件があったと報道.シリア政府はこの爆破事件は反政府派の手によるものと非難したがが,BBCは,反政府派はこれを否定し,政府の自作自演であると非難していると報道.一方,al qods al arabi net は,離反兵士のaref hammoud 大佐が仏放送に対して,この2の爆発事件は自由シリア軍が内部の内通者と協力して,軍情報部の支部及び治安本部を狙った作戦であると語ったと報道.
 シリア全土での政府軍銃砲撃による死者は61名.このうち39人がホムス,13人がアレッポ(うち4名が自由シリア軍),7名がダマスカス郊外,2名がダラアでの死者.
 ホムス周辺では多数の戦車及び約1000名の兵士が集結中.
 シリア各地で「ロシアが我らの子供を殺している」と題するデモ行進.
 ロシアの外務次官は,西側諸国がシリアの情勢を扇動していると非難するとともに,反政府側に流血の継続の責任があると非難.

 2/11,シリアでの死者は67名.このうち34名がホムス,ダラア,イドリブ,ダマスカス郊外にてそれぞれ死者11名.その他ハマ,アルハスk等でも死者あり.特にホムスではアサド軍は砲撃を一段と強化.
 自由シリア軍が確保していた,ダマスカス郊外でレバノン国境に近いzubdaniについて,政府が政府軍が戦闘の末勝利して同市を制圧したと発表したことについて,地元の反政府筋はこれを否定し,流血を避けるために自由シリア軍と政府軍との休戦協定が結ばれ,食料や医薬品を搬入するための休戦であると声明.
 11日朝,ダマスカスで,テログループが衛生准将を,またdir al zourでは県治安長官補佐の准将を殺害したと発表.これに対してダマスカスの反政府組織は,ダマスでの殺害を否定し,この事件は政府の手によるものであると非難.
 レバノン治安筋によると,北部のトリポリでスンニ派住民とシリアのアサド政権支持のアラウィ派住民との間で衝突が生じ,双方に1名づつ死者が出たほか,18名が負傷.

 イラク内務次官が,イラク人のイスラム原理主義者がイラクからシリアに入った事,及び武器もイラクからシリアに流出していると警告.
 2/12,各地で政府軍の銃砲撃で,児童3名を含む27名が死亡.そのうち3名は拷問の結果の死亡.
 アサド軍はハマに対する包囲を強化.他方,これまで連日激しい砲撃にさらされてきたホムスでは,アサド軍が砲撃を緩和.この機会に脱出する家族もある.また一部電力の戻った地区もある.
 al sheikh 准将は反アサド軍指導部の統合の話が進んでいて,近日中に合意できるであろうと述べた.

 同日付のhaaretz netは同紙の特種として,ハッカー集団Anonymousグループがシリア大統領官邸のイ―メイル,サーバーに侵入して盗み出した文書の中にイランがシリアに対する制裁破りのためにシリアに対する援助をしていることが示されていると報道.
 同日付のal qods al arabi net はバグダッド発の記事で,アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリがシリアの抵抗運動に対する支持を表明したと報道.
 アラブ連盟外相会議はアラブ連盟シリア監視団の職務停止を決めるとともに,シリアへの国連・アラブ連盟合同秘話維持軍の創設を安保理に呼びかけ.
 2/13,アサド軍の攻撃により,市民43名が死亡.ホムスで特に激しい攻撃.他にハマ,イドリブ,ダラア,ダマスカス郊外,ディールズール等でも死者あり.
 シリア国民革命機構等の反政府組織は,アイマン・ザワヒリのアルカイダのシリアへの介入宣言を拒否する声明を発表.

 2/14,シリア各地で政府軍の銃撃により44名が死亡.そのうち11名がホムス,4名がアレッポ,5名がdir al zurでの死者.イドリブでも住民9名の遺体が見つかる.
 ホムスは数日間で最も激しい砲撃にさらされ,また,政府軍はイドリブを包囲し,戦車がハマ及びダラアを砲撃.

 2/15,アサド軍による銃撃等で死亡した者の数はシリア全土で52名に上った.その大部分はイドリブ及びダマスカス郊外での死者で,他に10名がイドリブ,各3名がホムス,ハマ,ダラアで死亡.
 アサド軍はホムスに対する砲撃を継続するとともに,ハマに対しても大規模な攻撃を開始.
 ロシア外務省は,シリア軍がロシア人専門家の指導の下にガスを使用しているとの報道を否定.ロシアを貶めるための単なる宣伝戦であると強調した.
 ロンドンを本拠地とするシリア人権擁護ネットは,シリア各地の情報を総合すると,14日までにシリアの死者は8000名を超えたと発表.

 ホムスの石油パイプライン(製油所へ石油を送るラインの由)が爆破さる.これでホムスでの石油パイプライン爆破は3度目.政府系放送は武装テロリストの仕業であるとし,現地の反政府組織は政府の砲撃であると主張した.
 2/16,シリアでは政府軍の銃砲撃により63名が死亡.そのうち15名はイドリブで逮捕者が殺されたもの.
 ハマの郊外では政府軍との交戦で,自由シリア軍10名,政府軍4名が死亡.
 ダマスカスのイラン大使館前で,アサド政権に反対し,自由シリア軍を支持するデモ.
 アレッポでは,空軍航空学校長のfaiz amrou准将が,政府軍から離反することを表明.イドリブでも士官,兵士10名以上が離反を表明した.
 米国国家情報長官は米上院での証言で,ダマスカス及びアレッポでの自爆テロ2件は,いずれもアルカイダの手口と酷似しており,「イラクのアルカイダ」が,そのメンバーをシリアに潜入させて,実行した可能性が強いと述べた.また,同長官は,シリアの反政府派が分裂していて,その中にアルカイダが潜入しつつある可能性について,懸念を表明.

 2/17,シリアでは45名~56名が死亡.その大部分はホムスであり,ババ・アムルだけでも14名の死亡が確認されている.ホムスでは過去2週間で最も激しい砲撃が行われ,空軍も投入された.
 また,ホムスでは自由シリア軍兵士12名が処刑された.他方,ダラアや他の都市でも正規軍と離反兵士との衝突が増加している.
 シリア軍検閲本部のmuhammad ali al khatib准将が離反を声明し,他の将兵にも離反を呼びかけ.
 ダマスカスを含む多くの都市で,アサドの退陣を求め,自由シリア軍を支持するデモが発生.

 エジプトのカイロでは,数千人がシリア大使館を包囲し,アサドの人権蹂躙に抗議.
 2/18,シリア各地で政府軍の銃砲撃により,21名が死亡.
 ダマスカスの中心部のメッザ地区で,先に殺された5名の葬儀があり,大規模な抗議デモに発展.これに治安部隊が発砲し1名が死亡.また,ダマスカスではその他の多くの地区でも抗議デモが行われた.
 政府軍はホムスノババ・アムル地区への砲撃を強化.
 イラクはシリアとの国境の警備を強化し,テロリスト及び武器の密輸を防ぐため,断固たる治安措置をとることを決定.
 米国の軍事責任者は,米国は無人偵察機で,シリア領内でシリア軍の攻勢を偵察していると語った.

 イラン海軍の艦船2隻がスエズ運河を通過し,シリアのタルトゥス港に到着.
 2/19,シリアでは政府軍の発砲により,少なくとも24名が死亡.そのうち10名がホムス,9名がイドリブでの死者.その他,ダラア,ハマ,ダマスカス郊外等でも死者あり.
 歩兵の増援部隊がホムスに到着.町では食料,医薬品が底を突く.
 ローマ時代の遺跡で有名なパルミラにも政府軍が展開し,動くものは何でも銃撃を浴びせている.
 イドリブでは県の副知事(naib am と言う肩書きですが正確な職名は不明です)と判事が暗殺.アサド政府と反政府派は互いに相手の犯行と主張.
 ダマスカスの多くの地区が,前日のような大規模抗議デモを阻止するため,治安部隊により封鎖さる.

 2/20,シリア政府は,ダマスカス,特にアル・マッジ al mazzah 地区にて軍隊,治安部隊の展開を強化.
 ホムスでは激しい砲撃が続く.
 米統幕議長はCNNとのインタビューで,「シリアの反政府派にアルカイダが参加しているとの情報もあり,シリアの反政府派とは何者かが明らかならない時点で,反政府派への武器援助等を考えることは時期尚早である」と述べた.

 クルド人反政府派の幹部のnasr al din burhaq が車を運転中に別の車から暗殺者に狙撃さる.同氏は病院で手当てを受けたが,22日,死亡.
 2/21,シリア各地で政府軍の銃撃等で死亡したのは54名に上った.最も多かったのがイドリブで33名死亡.
 ホムスでは依然として激しい砲撃.シリア国民評議会は人道的見地からホムスの包囲を説くことを訴えた.
 ダマスカス各所の中心広場で数百人規模のデモがあり,治安部隊や民兵が発砲して解散させた.
 ガザでは数百人がシリア革命を支持してデモ.
 現在シリアで活動している唯一の国際人道団体である赤十字{赤新月)は,ホムスの様な人道危機に見舞われている都市の民間人を救うために,少なくとも毎日2時間程度の休戦を行うように求める.

 2/22,シリア軍の砲撃により,ホムスでは米記者,仏カメラマン及びシリアのカメラマンを含む90名以上が死亡.ババ・アムル地区だけで60名が死亡した.
 イドリブでは27名が死亡し,また,250名以上が逮捕さる.
 シリア国民評議会はシリアに「安全地帯」設置を要求.
 アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリがシリアの反政府派を支援するように呼びかけたことに関し,イラクの2過激派,イラク・イスラム軍及びイスラム・ラシド軍はこれを拒否し,精神的支持にとどめると表明.

 2/23,シリア各地では69名が殺害さる.その大部分はハマ及びdir zourでの死者.
 ダマスカスでは,軍が装甲車等も使いデモ参加者を追い散らした.
 ホムスでは装甲車,戦車等がババ・アムル地区に突入.
 国連人権理事会の独立委員会の報告書は,シリア軍は,女性子供も含めて無差別に発砲,殺害しており,住宅地域にも無差別攻撃を加え,病院では負傷者を拷問していると非難.同報告はまた,自由シリア軍も人権違反を犯しているとしている.

 2/24,シリアでは政府軍により87~103名が殺害さる.その大部分はホムスとハマでの死者.
 ホムスのババ・アムル地区には,122mm砲による砲撃が行われ,ダラアでは戦車が一部市街地に突入し,戦車砲を乱射.
 各地で金曜礼拝の後,数万人の群衆が抗議デモ.

 2/25,シリア軍の銃砲撃により107名が殺害さる.主としてホムス,ハマ,アレッポ,イドリブ等での死者.ホムス及びハマでは激しい砲撃.
 シリア軍はトルコ・シリア国境に地雷埋設.
 シリア反政府派は「外国在住反政府が銃,通信機材,暗視装置等をシリアに搬入しようとしている」と語る.
 レバノンのドゥルーズ派指導者ジョンブラートは,シリアのドゥルーズ派に対し,圧制者である政権に反抗することを呼びかけるとともに,シリアの反政府派に戦線統一を呼びかけ,これに対する武器援助を呼びかけた.

 2/26,シリア各地で政府軍の銃撃で60名が殺害さる.そのうち,24名がホムス(特にババ・アムル地区では16名死亡),9名がハマ,5名がダマスカス郊外,各7名がダラアおよびal haskaでの死者.政府軍はホムスで激しい砲撃を続けた他,アレッポ郊外,ハマ,その他で戦車,装甲車等を使い攻勢を強めた.
 アサド政府は憲法改正のための国民投票を実施.

 2/27,シリアではアサド軍の銃砲撃により128名が殺害さる.その大部分はホムスでの死者.
 ホムスでは集団処刑された青年の死体64が見つかった.彼等は町から脱出しようとして,検問所で引っ掛かり,処刑されたもののようで,一緒に居た女性達はどこかへ連れ去られた模様.
 国際赤十字は人道支援物資(食料品及び医薬品)がハマに到着したと発表.
 シリア政府は憲法改正の国民投票について,投票率57・4%,支持率89%と発表した.
 イラクのクルド地区民兵(ペシュメルガ)は,30名のシリア軍クルド離反兵士が避難してきて,亡命を認められたと語った.またそれとは別に20名のクルド民間人も避難してきた由.

 2/28,シリアにおける政府軍攻撃による死者は102名.そのうち26名がホムスのババ・アムル地区,50名がホムスの他の地区,27名がハマ郊外,6名がアレッポ郊外,5名がイドリブ郊外での死者.
 アレッポでは治安部隊とバース党の民兵が大学の歯科学科,情報学科,電気学科等を襲撃して,多数を逮捕.
 クリントン長官は,アサド大統領は戦争犯罪人であると非難.

 2/29,シリアでは104名が殺害されたが,その大部分はホムス及びハマでの死者.
 治安当局はババアムル地区に突入し,一軒一軒,下水道も武器の隠匿,テロリストを捜索していると発表.また,政府軍はハマの郊外,ダマスの郊外でも市街地に入り,住民を逮捕.
 下士官,兵37名が軍を離脱し,トルコに避難.

 リビアは,シリア国民評議会にトリポリの事務所開設を認めるとともに,シリア向けの人道援助として一億ドルの供与を決定.

 3/1,前日夜から1日朝にかけ,政府軍がホムス市のババ・アムル地区へ突入.特殊部隊投入の報道も.
 同日中にババアムル地区は政府軍に制圧さる.
 ホムスは反政府派の最大拠点だった.
 仏figaro international net は,この地区に突入した政府軍はアサド大統領の弟のマーヘル率いる第4師団であり,この弟がアサド{父}の時の弟のりファート・アサドと同じように,反政府派に対する容赦ない弾圧を一手に引き受けている,という.
 赤十字の車列はババアムル地区への立ち入りを拒否さる.
 シリア国民評議会議長は,評議会が最近設立した軍事評議会を通じて,自由シリア軍等の抵抗組織に自衛のための武器を供与する組織を作ったと表明.
 「トルコの情報機関が,自由シリア軍司令官のアサアド大佐を誘拐しようとするシリア情報機関の陰謀を潰した」とのトルコ紙報道.記事によるとシリア人女性がトルコのハタイ地区にある自由シリア軍の基地に潜入し,その補助者とともにテントから大佐を誘拐しようとしたが,この女性に不審の念を持っていたトルコ情報機関が彼女らのたくらみを阻止し,トルコ人エイジェントとともに逮捕したという.

 3/2,シリアでは75名が政府軍により殺害さる.その大部分はホムスのババアムルとアル・ラスタン地区での死者.特にアル・ラスタン地区では抗議運動をしていた民衆に砲弾が撃ち込まれて13~16名が殺害され,ババアムルでは10名が処刑された.その他,アレッポで5名,イドリブで4名,dir al zourで3名が殺害された.
 ダマスカスやラタキアでも広範な発砲,逮捕が行われた.
 イラクのバグダードでは,市の西方で数千人がシリア政府の弾圧に抗議する集会を行い,シリア政府を非難するとともに,シリア民衆を助けるために戦闘員の派遣を呼びかけた.

 3/3,活動家によれば,シリアでは政府軍により67名が殺害された.そのうちの44名はイドリブで処刑された脱走兵.シリア軍はホムスに対して砲激を再開.
 自由シリア軍はダマスカス郊外のmunin地区で政府軍兵士135名を殺害し,多量の兵器を捕獲したと発表.

 3/4,政府軍はホムス,イドリブ,ダマスカス郊外,dir zour 等で砲撃を加え,少なくとも52名が殺害さる.ホムス郊外のalrastan では砲撃により,児童を含む一つの家族が全滅.
 3/5,アサド軍はシリア各地で弾圧行動を続け,各地で11名以上が殺害さる.特にホムス郊外のラスタンで激しい攻撃.ホムス郊外では石油輸送管が爆発.
 活動家によれば,ダマスカス郊外の空軍情報基地がRPGで攻撃され,ダマスカスの警察署では火災発生.

 3/6,アサド軍の砲銃撃で41名が死亡.その大部分はホムスでの死者.ホムスのラスタン地区では激しい砲撃が続いている.イドリブでも多数が殺害され,ババアムル近辺では軍及び民兵による虐殺が続いている.
 アレッポ空港の近くでアサド軍と自由シリア軍の間で激しい衝突.ダラアのharrakでも両者の衝突が続いており,政府軍は四方から町を包囲している.
 シリアの人権組織は,アサド軍がホムスからレバノンへの負傷者,避難民の逃げ道になっている国境近くの橋を標的に砲撃していると非難.
 オバマ大統領は記者会見で,シリアの情勢は悲劇的だが,米国は単独では軍事介入はしないと述べた.

 中国のシリア問題特使がシリアを訪問し,中国の調停案を提示.
 シリア通貨が歴史的下落.


 【質問】
 2012年イドリブ攻勢(仮称)について3行以上で教えてください.

 【回答】
 アサド政府軍は,ホムスでの作戦のめどがついた(と思ったらしい)2012年3月上旬から,徐々にイドリブでも圧力を強め始めた.
 イドリブはホムスのほぼ真北にあって,トルコ国境にほど近い,シリア北西部の都市.
 アサド政府軍はまず砲撃を加え,3/7頃から増援部隊を派遣.
 3/10頃から市民の死者が急増する.
 3/13には,市民を即決で集団処刑したことが発覚.
 一方,同市には自由シリア軍が多数存在しており,政府軍に対して抗戦したものの,14日までにイドリブは陥落したが,政府軍による攻撃は4月になっても続いた.
 トルコ国境には難民が急増したという.

 【参考ページ】
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4130369.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4132181.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4133077.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4133943.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4135762.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4136512.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4140937.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4141830.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4142695.html

【ぐんじさんぎょう】,2016/07/12 20:00
を加筆改修

<年表(イドリブ攻勢以降)>

 2012/3/7,シリア各地でアサド軍が殺害した数は80名.その大部分はホムスであり,同市では3家族全員が児童も含めて処刑された.ハマでも1家族全員が処刑された.
 アサド軍はイドリブに対して増援部隊を派遣.42両の戦車,131両のトラックがラタキアからイドリブへ向かうのが目撃さる.
 仏の中東専門家によれば,ごく少数の外国人イスラーム過激原理主義者が反政府派のために戦っているとの旨.
 adnan qasim farzat准将が住宅地に対する砲撃に抗議して政府軍を離脱すると声明しているビデオが流される.このニュースが正しければ,彼は政府から離反した2人目の准将となる.

 3/8,アサド軍による銃撃等での死者は68名に.その大部分はホムスでの死者.
 ホムスのラスタン市とal qasir では政府軍と自由シリア軍との間で激しい戦闘.
 シリア軍はイドリブで大規模な作戦を進めており,更に増援部隊をつぎ込んでいて,ババアムルの次の主作戦地域がトルコに近く,自由シリア軍兵士も多いイドリブ地方と思われる.また,ダマスカス郊外の町(複数)でも攻撃を強め,多数を逮捕.
 ロシアは,リビアがシリアの反政府派に対してリビア国内で軍事訓練をしていると非難したが,リビア政府はこれを否定.

 シリア通貨は24時間以内に13%も下落して1ドル100シリア・ポンドをつけた.
 3/9,少なくとも77名が政府により殺害さる.その大部分がホムス及びイドリブでの死者.政府軍はダラア,ダマスカス郊外,ハマデも活発に活動.
 トルコ通信は,准将2名,大佐1名,下士官数名が軍を離脱してトルコ領内に避難したと報じた.また,ダマスカス郊外でも自由シリア軍の新しい部隊が組織された.
 リビアのベンガジのあるモスクの導師は,ベンガジ及びリビア東部州の戦士数十名が自由シリア軍に参加するためにシリアに到着したと語った.
 レバノン大統領は,同国最高防衛委員会がシリア・レバノン国境について,武器の密輸,戦闘員の密入・出国及びレバノンからの軍事作戦を防ぐために必要な措置を取ることにしたと語った.

 3/10,軍の攻撃により少なくとも64名が殺害された.その多くはイドリブでの死者.他にホムス,ハマ,ダラア,ダマスカス郊外でも死者発生.
 また,シリア軍は各地で即決処刑も行った.さらに,拷問死も少なからず.
 シリア各地で702の反政府集会(デモ)が行われた.
 自由シリア軍は政府軍への攻勢強化を呼びかけており,アサアド司令官によるとイドリブではヘりコプター1機,戦車6両を破壊したとのこと.

 3/11,シリア全土で80名が殺害さる.そのうち13名はイドリブで砲撃で家屋が破壊されたための死者.同市では軍と自由シリア軍との間に戦闘が続いており,政府軍はイドリブ大学近辺で歩兵を中心に攻勢を強める.これに対して自由シリア軍は戦車1両等を破壊したとしている.
 ダマスカスの中心rkun al din 革命通りでも,政府軍と自由シリア軍とが交戦.


 3/13,少なくとも104人が政府軍により殺された.そのうち,52名は13日早朝政府軍及びバース党民兵がホムスで殺したもの.
 ホムスのkaram al zeitoun,adawieh 地区では子供26人,婦人21人の遺体が見つかった.それらの遺体は活動家が安全地帯に運んでから撮影されたが,刺殺されたり首を絞められたりしていた.政府はテロリストの仕業であるとしている.また同じkaram al zeitounでは目撃者によると,民兵等が十数名の女性を広場に集め,公衆の前で裸にして辱めたという.
 ダマスでは虐殺に抗議して,群衆により主要道路が閉鎖され,その写真がネットで公開された.
 ダラア,ハマその他の地方で政府軍と自由シリア軍との間で多くの衝突があり,双方に死傷者が出た.
 イラクのさる部族長(匿名が条件の由)はシリア民衆とともに戦うために,数百人の戦士を小銃等とともにシリアに送ったと英紙dayly telegraphに語った.

 イドリブでは63名が殺されたが,そのうち40名は現場での即時処刑.ホムスでは27名が殺されたが,14名が即時処刑であった.そのほか,ハマで7名,アレッポで3名,ダマスカス郊外で4名,ダラアで2名が殺された.
 シリア軍は多くの町で住宅街に戦車砲,大砲で無差別砲撃し,多くの建物が破壊さる.アレッポでは大学町が攻撃された.
 方々で政府軍と自由シリア軍の衝突があり,ダマスカス郊外では自由シリア軍の待ち伏せ攻撃で,政府軍数十名が死傷した.

 3/14,シリアでの死者は85名に上った.その多くはイドリブでの死者.アサド軍はイドリブ市を完全に制圧したが,イドリブ市の陥落直前にアサド軍は青年40名を集団処刑した.
 また,ダラアでは11名,アレッポでは3名が殺された.ダラアには戦車を含む多数の政府軍等が各方面から攻撃をかけた.アレッポの大学町も引き続き攻撃を受けた.
 シリア国民評議会を辞任したシリアの政治家kamal al lubwaniは,AFPに対して,国民評議会の議長は自己の利得にしか関心が無く,アサドと同様に独裁的で自己に反対する者は政権の同調者と非難する等全く民主主義に欠けると非難.彼はまた,ムスリム同胞団は,自己の人気を高めるために,武器供与及び人道援助を独占しようとしているとも非難した.
 国連人権委員会においてキリスト教徒のシリア人女性が,アサド政権は国民の宗派に関係なく,キリスト教徒であろうとアラウィ派であろうとバース党に反対する者は片端から逮捕して拷問・強姦していると証言.
 3/15,政府軍等の銃撃で,少なくとも72名が殺害さる.そのうち23名はイドリブで,婦人・子供の他,空軍中尉を含む4名の離反兵士も含まれる.政府軍はイドリブ,ホムスの他,ダラア,ダマスカス旧市街等に対しても攻撃.
 アサド政府支持の大規模なデモがダマスカスであった一方,多くの都市でアサド退陣を求めるデモが行われた.

 3/16,政府軍はシリア各地で45名を殺したが,その多くがアレッポ及びハマの東に位置する沙漠地帯al raqqa県であった.
 蜂起1周年に当たるため,政府軍の弾圧にもかかわらず,ダマスカスを含む各地で群衆が国際社会の介入を求めてデモ行進.
 ダマスカス郊外では夜になると軍と自由シリア軍との衝突が続く.
 リビア外相はリビア人がシリアで戦っていることを認めたが,彼等は個人の資格であり,政府の公式政策とは関係ないとした.

 3/17,シリア各地で少なくとも45名が政府軍の銃撃により死亡.その大部分はホムス,イドリブ,ハマ,ダラア,al raqqahでの死者.
 シリア各地で反アサドの抗議集会.
 政府は,空軍情報本部及び税関刑事治安部(双方ともダマスカス)の2か所で車爆弾によるテロがあり,少なくとも27名が死亡し,97名が負傷したと発表.

 3/18,アレッポで2件の爆破事件.
 政府軍の攻撃により,少なくとも25名が死亡.そのうち11名はal raqqaでの死者.
 政府軍はダラア,イドリブ,al raqqa 等で攻撃を強める.イドリブでは新たな虐殺の跡が発見さる.
 他方,反政府側は15名の政府軍兵士を殺したと発表.
 シリア・ムスリム同胞団幹部は,「アサド政権が倒れないのはイスラエルの支持を受けているからである」と非難.

 3/19,ダマスカス郊外,ホムス,dir l zur,ハマ,ダラア 等で政府軍が戦車を先頭に攻勢.自由シリア軍との衝突もあり,各地で少なくとも30名が死亡.
 ダマスカスのメッゼ地区では早朝に戦闘.銃撃戦及び爆発音が聞こえ,反対派によればこれまで最も激しい戦闘とのこと.
 国連代表団がダマスカス到着.
 ロシア通信は「ロシア艦が海軍歩兵部隊を載せて,シリアのタルトゥス港に到着し,そこに滞在していた監視船等の他のロシア艦と合流した」と報道.海軍歩兵はまさかの時にロシア人の引き揚げを支援するためと見られる.他方,al arabiya net は艦上の部隊は特殊部隊であると報道.

 3/20,政府軍の銃撃等により,シリア各地で57名が殺害さる.その大部分はホムス,ハマ,イドリブ等での死者.
 政府軍は各地で攻撃を強めており,自由シリア軍はdir al zur より撤退.また,政府軍は特にダマスカスでの治安維持に腐心しており,軍を首都の各地に集結.
 国際人権団体のヒューマンライツ・ウォッチは,シリアの反政府武装組織が,政府軍及びアサドの支持者を誘拐し,拷問したり処刑したりしていると非難.

 3/21,政府軍の砲撃により,各地で80名が死亡.その多くはダマスカス郊外,ホムス,ハマ,ダラアでの死者.
 ホムスでは抵抗組織が39体の損壊された遺体を発見.これらはおそらく,自由シリア軍が先に回収できた48の遺体と同じ時に虐殺されたものと思われる由.
 政府軍はダマスカス郊外の2か所で攻勢.
 アレッポでは50名以上の兵士が政府軍を離脱.
 「ヌスラ戦線」がヴィデオで,17日のダマスカスでの2件の爆発事件の犯行を声明.

 3/22,シリア各地でシリア軍の銃撃により少なくとも51名が殺害さる.その大部分はホムス及びイドリブでの死者.イドリブ郊外では民間人の乗った車が銃撃され,女性子供等10人が死亡.これらの町及びハマでは,政府軍及びバース党の民兵が戦車と共に攻勢.
 シリア軍から逃亡した兵士が,ダマスカス及びその郊外で反政府軍事組織を形成し,軍事評議会を形成したと発表.自由シリア軍との関係は不明.

 3/23,シリア各地で政府軍により少なくとも37名が殺害さる.
 反政府派はこの日(金曜日)を「ダマスカスへ向かおう」と題し,政府軍による弾圧にもかかわらず,各地で抗議集会を開催.首都ダマスカスではメッゼ地区,メイダーン地区,カファルスーサ地区,al qabun地区,ベルゼ地区,アルアサーリ地区,ハジャルルアサワド地区で抗議集会があり(規模は不明),政府軍は銃撃等で群衆を解散させた.また,アレッポでも抗議集会.

 3/24,シリア各地で政府軍の銃撃により少なくとも41名が殺害さる.死者が最も多かったのはホムス.ホムス県の各地で政府軍は未だに激しい攻撃を続けており,方々で虐殺の跡が見つかった.
 自由シリア軍はトルコにおいて,「反政府運動を統一するため,軍事評議会が設立された」と発表された.評議会議長はmustafa al sheikh 准将で,10名の准将及び6名の大佐で構成.従来の自由シリア軍指導者アサアド大佐は総ての軍事行動を調整する由.

 3/25,シリア各地では政府軍の銃撃等で少なくとも58名が死亡.その多くはホムス,及びハマでの死者.
 アレッポの郊外の村では政府軍のヘリが銃撃をし,死傷者発生(数は不明).
 自由シリア軍はダラア近郊の村でバース党民兵と交戦し,15名を殺害したと発表.シリア各地では反アサドの抗議運動が続く.
 シリアのムスリム同胞団は,アサドの退陣後のシリア政体について,総てのものが平等で自由と人権を尊重する,多党制に基づく市民民主主義を目指すとした文書を発表.

 同日付のhaaretz net は,ヨルダン当局がシリアから逃亡してきた10名の軍人を,シリアからの難民に対するシリア政府の為のスパイ容疑で逮捕したことを確認したと報道.
 3/26,政府軍の銃砲撃により,シリア各地で少なくとも54名が死亡.その大部分はホムスでの死者.政府軍はホムスの11の地区に対して砲撃.自由シリア軍によれば,ホムスにその要員はいない由.
 シリア政府は兵力動員との関係で,18~42歳の青年男子について,事前に動員局の許可を得ていなければ出国させないとする規制を導入.
 トルコは在シリア大使館を閉鎖.

 3/27,シリアでは少なくとも57名が政府軍により殺害さる.イドリブでは23名が即決処刑され,イドリブ郊外の町では52軒の家が焼却さる.
 シリア正規軍が短時間レバノン領内に越境.シリアと隣接する東部国境で,そのシリア側では激しい戦闘が行われていた.
 シリア政府は,シリアの男子成年が事前に動員局の許可なしに外国旅行することを禁止した,26日の決定を取り消すと発表.
 トルコ航空は,シリア便を4/1より停止すると発表.

 3/28,シリア各地でアサド軍は少なくとも40名を殺害.このうち17名がホムス,14名がハマ,残りはイドリブ,ダラア,アレッポでの死者.
 アサド軍はハマの近郊に対して17日連続の砲攻撃を続ける.
 ホムス及びダラア等では,アサド軍と自由シリア軍との間で銃撃戦.
 シリア政府によると,アレッポで空軍学校の准将が武装勢力に暗殺さる.

 3/29,シリアでは少なくとも31名が政府軍により殺害さる.その大部分はホムス及びダマスカス郊外での死者.
 シリア軍は4日間の砲撃の後,イドリブ県のsaraqb市を制圧.同市では25日以降,60名が虐殺されている.

 3/30,シリア軍は各地で少なくとも24名を殺害.その大部分はdir al zur,イドリブ,ホムス,ダラアでの死者.
 群衆は30日の金曜日を「アラブ,イスラム諸国に裏切られた日」と名付け,多くの都市で抗議デモ.
 トルコ・シリア国境において,トルコ軍兵士とシリア軍兵士の間で銃撃戦があったとal araiya netが報道.
 米国はシリアの国防大臣,副参謀長,大統領護衛隊長等シリア軍人に対する制裁を決定.制裁は米国内の彼らの財産の凍結及び米国人が彼らと接触することの禁止等を含む.

 3/31,シリア各地で政府軍は少なくとも59名を殺害.その大部分はホムス,イドリブ,ダラアでの死者.
 シリア政府が「治安が回復されれば,政府軍は都市から撤退する」と声明したことに対し,自由シリア軍は「政府軍が都市から撤退し,特に戦車,大砲,重火器を撤去すれば,停戦に応じる」と声明.

 4/1,シリア軍は各地で少なくとも70名を殺害.その大部分はホムス,イドリブ,ダラア,dir al zurでの死者.
 西側外交官によると,GCC諸国は,シリア軍から離脱したシリア兵の給料等の支払いのために,シリア国民評議会に対する援助基金を設立.
 トルコ警察,アサド政権支持を叫ぶ約50名の抗議者を,催涙ガス等を使って解散さす.

 4/2,政府軍はシリア各地で少なくとも30~80名を殺害.その大部分はホムス,イドリブ,アレッポ郊外での死者.
 ダラアでも大規模な攻撃があり,政府軍は多くの建物を破壊.
 ホムスでは,自由シリア軍が制圧した国立病院において,身元不詳の75の遺体が発見さる.
 dir al zour では政府軍と自由シリア軍との間で戦闘が続く.
 国際赤十字の活動強化のため,赤十字の総裁がシリアに到着.
 イランの革命防衛隊副司令官masoud jazairi は原理主義のネットにたいして,シリアの反政府運動を支持しているアラブ,外国の反動勢力に制裁を加える時が来た,と激しい口調で語った.
 シリア反政府派はネットに,イラン革命防衛隊員と称する男の写真を載せ,彼を含め11名の「イラン人傭兵」を逮捕したと発表.

 4/3,シリア各地で政府軍は少なくとも40名を殺害.その大部分はホムスとイドリブでの死者.これらの町では政府軍は戦車砲等で激しい砲撃を加えており,またダマスカス郊外の村も53台の戦車で包囲中.
 英紙dayly telegraph は,自由シリア軍の高官が,初めて自由シリア軍は大都市を守ろうとして甚大な被害を出し,撤退に追い込まれ,今後はゲリラ戦に徹することにしたと語ったと報道.

 4/4,シリア各地で政府軍の銃砲撃で少なくとも92名が死亡.その大部分はイドリブ,ホムス,ダマスカス郊外での死者.イドリブのtaftanazでは43名が死亡し,多くが倒壊した建物の下敷きになった.ホムス郊外では3家族を含む16名が死亡.
 政府軍は戦車,装甲車を戦闘に各地で激しく砲撃を加えており,イドリブでは政府軍と自由シリア軍との間で市街戦.政府軍は戦闘ヘリを投入.

 4/5,政府軍の攻撃により,シリア各地では少なくとも61名が死亡.その大部分はホムス及びアレッポでの死者.
 アレッポでは歩兵学校内で衝突が起きたとの報道.また,アレッポ郊外では政府のヘリが撃墜されたとの報道.
 アサド政府軍はダマスカス郊外のdumaにおいて,これまでで最大規模の攻撃.停戦前に反対派を抑えつける作戦の一環か.

 4/6,政府軍の攻撃により,少なくとも42名が死亡.その大部分はホムスでの死者.同市市内各所でシリア軍は砲撃を加えた他,その郊外のrastanの町にも砲撃.
 ダマスカス各所を始め,多くの町で抗議集会.

 4/7,シリアでは政府軍により156名が殺害さる.その多くがハマでの死者で,ハマの郊外のtaminah だけで70名が殺害された.同市では軍による虐殺が行われたが,そのうち12名は離反した将校の家族.その他,ホムスで31名,アレッポで24名,イドリブで18名,ダラアで16名が死亡.
 シリア軍は抗議運動は離反者の出た町に対して,組織的に住宅の破壊を進めている.
 レバノンとの国境でイラクへの巡礼者を乗せたバスの車列がシリア領内から砲撃され,1名死亡し,10名が負傷.
 パリ在住の退役シリア大佐は,イランはシリア正規軍に対しても群衆に対する鎮圧等の訓練を行っており,訓練に当たる者の中には革命防衛隊も多いと話した.また,同大佐はホムスのババ・アムル地区での虐殺に見られるように,シリア軍の規律は崩壊しており,兵士や将校の殺人を止めようがなくなっていると指摘.

 4/8,政府軍の攻撃により,各地で1359名が死亡.その多くがホムスでの死者.政府軍はハマ,ホムス,イドリブ,アレッポで激しい砲激を加え,住民に対する焦土作戦を展開しているが,特にアレッポ郊外では戦車の他に戦闘ヘリも参加.
 4/9,シリア各地で政府軍は160名を殺害.うち52名がホムス,45名がアレッポ郊外,36名がハマ郊外,16名がイドリブ,6名がダマスカス郊外での死者.そのうち40名が女子供で,8名が自由シリア軍兵士であった.
 政府軍は各地で攻撃・逮捕を行ったが,ダマスカスでも市内各所で逮捕を行った.

 トルコとシリア国境の検問所iazaz付近で政府軍と自由シリア軍との衝突があり,自由シリア軍は撤退し,政府軍は増強さる.この衝突で自由シリア軍は政府軍及び税関職員6名を殺害.
 トルコ領内のシリア難民キャンプにシリア領方面から銃弾が飛来し,難民1名が死亡,難民がパニックに.
 4/10,アナン国連特使の調停による停戦期限を迎えたが,シリア各地での政府軍による死者は101名.うち,56名がホムス,22名がハマ,12名がイドリブ,6名がダラア,3名がアレッポ等での死者.
 ホムスでは先に殺害された者の遺体37の共同埋葬地が発見された.
 シリア軍はイドリブの周辺でも激しい攻撃を続けた.
 自由シリア軍は,政府軍に対し撤退まで48時間の余裕を与え,その後は再び攻撃を再開するとした.

 越境してトルコ領へ逃げ込もうとする難民を妨害するためにシリア軍が銃撃.トルコ領内の難民キャンプにも弾丸が飛来したが,人的被害はなかった由.
 4/11,各地で少なくとも32名が政府軍の手により死亡.その大部分はホムス,イドリブ及びダマスカス郊外での死者.
 シリア軍は戦車・臼砲等を投入して各地で攻勢.また,各所で自由シリア軍とも衝突している.
 初めて戦車部隊がダマスカスの中心街に展開.同市の道路は方々で閉鎖されるか,または検問所が設けられ,軍の他治安関係者,民兵が多数動員されて,方々に配置されている.
 他方,ダマスカス中心の各所で青年たちが無言のデモをしており,また,屋上からは拡声器で「アッラーホアクバル」の声が流れている.
 トルコのエルドアン首相は,「トルコの忍耐にも限度があり,必要となったらトルコは何をすべきかの用意ができており,そのような方向にトルコを強制できるのはシリア政権だけである」と激しい口調で述べた.

 4/12,06:00からがシリア政府の約した(2度目の)停戦の期限.アラビア語のネット等は,シリアでは基本的に全土で政府軍,自由シリア軍双方から停戦が守られていて,全般的に静かであると報道.
 但し,人権団体によれば,戦車部隊の都市部からの撤退は,午前中の段階では全く見られないとのこと.

 停戦にも拘わらず,シリア治安部隊の発砲で20名が死亡.そのうち6名がホムス,4名がイドリブ,2名がダマスカス郊外,その他ダラア,ハマ,アレッポ等での死者.特にアレッポでの発砲が多発.
 シリア内務省は停戦に伴い,シリアの難民に対して帰国するように呼びかけ.

 4/13,シリア各地で数万の市民が街頭に出て,アサド退陣を求めるデモに参加.これに対して軍及び治安部隊が発砲し,少なくとも7名が死亡.死者が出たのはイドリブ,ハマ,ダラア,ダマスカス郊外等.
 また,政府軍はダマスのnahar aishat 地区の総てのモスクを包囲.ダマスカス旧市街でも多数の治安部隊,バース党民兵がモスクを包囲し男達を逮捕した.
 ロシア通信は「ロシア海軍はその艦艇を当分の間シリア近海にとどめる」と報道.

 4/14,停戦期間中にもかかわらず,シリアでは政府軍の銃撃で27名が死亡.主にホムスとアレッポでの死者.アレッポでの多くの死者は,先に殺された青年の葬儀の列に発砲されてのもの.
 また,ダラア及びダマスカス郊外でも,抗議集会に対して発砲.
 ホムス市の中心部では,日夜から政府軍は激しい砲撃.
 安保理は全会一致で,シリアに停戦監視団を派遣することを決定.

 イスラエル紙「Y net」は,アサド政府の停戦に対する欺瞞的姿勢を,「アサドの最良の時」と批判的論評.
 4/15,国連の停戦監視団の先遣隊がシリア到着.
 にもかかわらず,政府軍による銃砲撃が各所で生じ,シリア各地で26名が死亡.死者の大部分はホムス市民.ホムスでは政府軍が砲撃.
 アレッポ近郊では政府軍と反政府の兵士が衝突.
 ダラアでは,離脱しようとした兵士7名がその場で処刑さる.
 シリア政府は「武装勢力が10数件の停戦違反をしている」と非難.

 停戦監視団団長のノルウェイーのmood 将軍が,ダマスカス到着直後に出国し,辞任したとの一部報道.
 4/16,シリア各地で政府軍の銃砲撃で50名が死亡.その多くはホムス,ハマ,イドリブ,アレッポ,ダラア,ダマスカス郊外での死者.
 イドリブ県では,朝から政府軍と反政府兵士との間で衝突.

 4/17,アサド軍の攻撃により,シリア全土で53名死亡.そのうち35名はイドリブでの死者.
 政府軍はハマに臼砲の攻撃を仕掛け,ホムス,ダマスカス郊外でも銃砲撃.
 停戦違反はシリア各地で76件に上る.内訳はハマで22件,アレッポ周辺で15件,ダマスカス周辺で10件,ホムスで9件.
 国連停戦監視団は最初の訪問地としてダラア及びal sarayaにシリア政府軍に付き添われて訪問し,知事等とも会談.
 国連事務総長はシリア政府に対し,監視団の行動の自由を保証するよう要請.事務総長はまた,欧州連合に対して,監視団のためにヘリ及び航空機を提供するように要請.
 トルコ首相はトルコ人記者2名が数カ月もシリア治安当局に「誘拐」されたままであるとして,シリア当局に説明を要求.

 4/18,シリア各地で政府軍の銃撃により22名が死亡.その大部分はホムス,ダラア,イドリブでの死者.
 政府軍はまた多くの町で攻撃を続け,反対派の逮捕を続けた.
 停戦監視団はダマスカス郊外の2か所を訪問.
 イラン製武器・弾薬をシリア向けに輸送していると疑われるバハマ船がトルコの港に入港し,武器弾薬類をトルコ当局が押収.
 西側外交筋及び民間企業によれば,シリア中央銀行は輸入に必要な外貨を稼ぐために外貨準備の金を売却しつつある由.

 4/19,シリア各地で政府軍は25名の市民を殺害.その大部分はホムス及びdir al zur での死者.その他,ハマ,ダラア,ダマスカス郊外,ダマス,アレッポ,ラタキア,イドリブでも市民が殺害された.
 ホムスの中心では政府軍は砲撃続行.ダマスカス及びその郊外アレッポその他でも政府軍は攻撃や大規模な逮捕を続ける.
 米国防長官はシリア情勢につき,反政府派は分裂しており,また政府軍の大規模な分裂も期待できないとしながら,アサド政権が倒れることは必然である,と議会の公聴会で証言.

 4/20,シリア各地で政府軍の銃砲撃により57名が死亡.そのうち14名がホムス,9名がイドリブ,7名がダマスカス,4名がアレッポ近郊,2名がダマスカス近郊での死者.
 ホムスでは市の中心及びその郊外で,朝から砲撃.
 政府軍の弾圧にも拘わらず,ダマスカスを含めて多くの町でアサド打倒を叫ぶデモが発生.
 政府によると車爆弾等で治安部隊の18名が死亡.


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