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 ただし,「である」「です」調の統一のため等の補正を除く.

※既に分類され,移動された項目を除く.

※レス回収基準は「Ver.5」


■○創作関連質問&相談スレ 59○■

目次

 【質問】 あまり銃に慣れていない,小太りで指が短かめの中年男性に,30口径から上の拳銃を持たせたいのですが,銃砲店に行ったら,どんな拳銃を勧められるでしょう?

 【質問】 『銀河英雄伝説』で,負傷した艦隊司令官の中将が,司令部で唯一健在な次席参謀の准将に指揮権を委譲するシーンがあるんだけど,参謀が指揮官を差し置いて,指揮権を委譲されるってことは普通無いよな?

 【質問】 特殊技能などが無い,ただの中隊長だった人物では,傭兵稼業は難しいでしょうか?

 【質問】 銃弾が薬莢ごと発射される間違い描写って,何で起こるんでしょう?

 【質問】 『風の谷のナウシカ』のクロトワは,軍人としては有能だったのでしょうか?

 【質問】 『機動戦士ガンダム』に出てくる61式戦車は,何故あんなに時代遅れなデザインなのでしょうか?

 【質問】 軍オタに評価の高いロボットアニメや戦争アニメは皆無なのですか?

 【質問】 現存する61式戦車の総数,だいたいの推定で良いので分かりませんか?

 【質問】 酸素の無くなった潜水艦内で,酸素魚雷を分解して酸素を取り出すことは可能でしょうか?

 【質問】 74式戦車で砲手に105mm主砲を撃たせつつ,車長が砲塔上の12.7mm機銃を撃つのは可能?

 【質問】 九九式襲撃機の機体下部に搭載した20mm斜銃による掃射で,戦車の上面装甲を撃ち抜き,撃破することは可能ですか?

 【質問】 戦争系ノベルを書くにあたって,参考図書としてオススメなものってありますか?

 【質問】 第2次世界大戦初期のソビエト軍に,普通の中国人が紛れ込むことは可能でしょうか?

 【質問】 仮に,「砲身長を一定の範囲で可変可能」という砲が存在したとして,砲身長が伸びたり縮んだりできる性能的メリットって何かある?

 【追記】 もし,神風特攻を木製の機体でやっていれば,成功率の変化はあったとおもいますか?

 【質問】 米国側がカナダの政府機能一時避難施設の破壊に,核兵器を用いるとすれば空軍や海軍などの航空戦力以外の手段,弾道弾,巡航ミサイルでは何を用いるのが最適だと思われますか?

 【質問】 近代以前の将官の執務室は,お城の中にあるのでしょうか?

 【質問】 ファンタジー世界で,平民が将軍になる話を書きたいのですが,どういう設定ならリアリティがありますか?

 【質問】 現代の自衛隊に,捕虜や展開先の住人等へ対して非人道的な行動をとらせる描写は,リアリティとしてはどうなのでしょう?

 【質問】 太平洋戦争において機雷堰を敷設すれば,米潜水艦による通商破壊を大幅低減可能だったのでしょうか?

 【質問】 海自ですが,B-29に敷設されまくった機雷の掃海の経験は陳腐化してて,ペルシャ湾で掃海した時に大恥かいたって本当ですか?

 【質問】 シューティング・ゲームとフライトシムは別物?

 【質問】 16世紀レベルの世界で,500万人の軍隊は多すぎますかね?


 【質問】
 アメリカのセールスマンで,あまり銃に慣れていない,小太りで指が短かめの中年男性に,30口径から上の拳銃を持たせたいのですが,銃砲店(商売っけのあまりない)に行ったら,どんな拳銃を勧められるでしょう?

 【回答】
 普通の護身用に,そんなに高くて強力なモノは勧めないだろうから,口径でいうと38口径の小型リボルバーか,安価な.22LRや.380を使う小型オートマチックあたりか.
 客が貧乏人なら,いわゆる「サタデーナイトスペシャル」(マイナーメーカーによる安物拳銃,性能はピンキリ)の類だろう.

 9mmパラベラムの銃を勧めるような場所だとすると,相当治安悪い.
 H&KとかSIGなんてアメリカではバカ高いし,リアリティが無い.
(ただし,SIGでも380オートのはS&Wに比べても同じ程度の価格帯,
 S&Wでもマグナムは800ドル以上と高い)
 ちなみにアメリカで買える,比較的安価な拳銃を作ってる有名メーカーだと,スタームルガー,次いでS&Wあたりね.
 そして中国製ノリンコ.
 それ以外に,聞いたことも無いようなマイナーメーカーの安物も色々あるけど.

 次に握り易さについて.
 当方やせ型中背の日本人で,手袋は7か7 1/2 .
 正しい持ち方が出来るのは32オート程度まで.
 ガバもハイパワーも92もインチキ持ちになります.
 パイソンもM29もしかり.
 昔の拳銃のほうが全般に細くて握りやすいかと.
 お話の展開によるが,P09とか,リボルバーならニューナンブの元になったような類とかを,倉庫の奥から出してきてくれる・・・というのはどうだろう.
 威力や装弾数の少なさのデメリットと,正しく握れるメリットを,どう描くか次第だろうけれど.

 州法で銃所持の制限に差があるから,州を指定する必要もある.
 たとえばワシントン州は,全米でも銃規制が最も厳しい場所で,長年家庭での銃の所持が禁じられていたほど.
 2008年に最高裁でそれは違憲であるとされたが,代わりに登録が義務づけられた上,10発以上装弾できる拳銃は禁止.
 登録自体,警察に何度も出向いて写真や指紋の登録など,相当の手間と時間がかかる.

 店主の反応までは面倒見切れない.

軍事板,2010/07/08(木)〜07/10(土)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 『銀河英雄伝説』で,負傷した艦隊司令官の中将が,唯一司令部で健在な次席参謀の准将に指揮権を委譲するシーンがあるんだけど,普通こういう場合って,副司令官の少将か,そいつが健在じゃない場合は,健在な戦隊司令官の少将か准将が階級順や先任順に従って,指揮権を引き継ぐよな?
 この参謀は,指揮権委譲後,艦隊を率いて戦ってるから,戦隊司令官クラスも健在だと思うのだが.
 参謀が指揮官を差し置いて,指揮権を委譲されるってことは普通無いよな?

 【回答】
1 軍隊における「指揮」は厳密に定義された語であって,指図,指導,助言,暗黙のうちにおける主導権,リーダーシップ等は異なる.
 PKO法案で揉めたときに「指図」と言い替えて,さらに揉めたのが例.
2 指揮権の継承順の原則は,
a 階級順,先任順による
b ただし,兵科将校にしか認めない(海軍の機関将校,陸軍の軍獣医将校,各軍共通の軍医将校等には認めない)といった制限はあり得る.
 兵科将校でも参謀には認めない(児玉源太郎が微妙な言い方したり)という制限もあり得る.
 むろん,参謀でも指揮権を継承できるという設定でも,それで統一されているのなら不自然ではない.
3 昇進させる権限の設定も各軍による.
 上級者の昇進ほど,より上級の者の許しを必要とする.
 通常,高級士官の昇進は(名目上は)国家元首の裁量となる.
 下士官以下については,現場の高級士官に昇進させる権限があることもあり得るが,師団長や軍団長レベルである.
 直接の上司には昇進させる権限はなく,昇進を推薦することができるのみ,というのが通例.
 直接の上司には昇進させる権限を与えない.
 「代将」のような,臨時措置が通例化した制度もある.
 いずれにせよ,「現場の臨機応変」も,「事前に設計された制度内」で行うのがお役所.たとえば「独断専行」も「事前に定義されている」.

 事実上誰が仕切るのかとは別だけど.

 そうした現実を踏まえた上で,該当の場面を銀英伝1巻読み直してチェックしてみたけど,そこに副司令官ならびに戦隊司令官ってのが登場して無いんだよな.
 別の場面では役職上,「副司令官」は艦隊にちゃんといるっぽいけど…
 副司令官も戦隊司令官も同じ艦に乗ってて,艦隊司令官ともども負傷したってのは,他の巻では別の艦に搭乗している副司令官とかが出てきているので,まず無い.

 となると,他に考えられるのは,
「艦隊の指揮統制が出来る指揮機能設備が,旗艦にしかない(設備がある艦を旗艦にする)ので,司令部の人員が負傷して指揮を取れなくなっても,副司令官の艦や戦隊司令官の艦では,旗艦機能の代わりを果たす事が出来なくなる」
のかもしれない.

 艦隊としてそれはあまりに脆いといわざるを得ないけど,1艦隊1万隻以上,人員数十万人以上の超大所帯の司令部となると,現実の海軍の艦隊とは比較に出来るもんじゃないし,コスト面で司令部機能を持つ艦を複数用意する事が出来ないとかなるのかもしれん.
 どちらかと言うと,航空自衛隊の航空総隊司令部が破壊されて,各航空方面隊は個々には戦えても,航空総隊の代替機能を持つところは無い,みたいな?

(つーか大佐が艦長務める艦艇が万単位でいるのに,最高位の将官が中将という時点で,C4Iが無茶苦茶になってるような…
 艦艇1隻=兵士1人のノリと,現代海軍の軍制を組み合わせるのって,無理があるよな)

 現実には「司令部戦隊以外全滅している」状況ではないので,絶対にもっと上位の指揮官が生き残ってると思うが,別の戦闘でも司令官が負傷して,参謀長に指揮権を委ねてるシーンがあるので,あるいは「あの世界」では司令官が指揮不能になった場合には,参謀長以下の司令部幕僚が指揮権引き継ぐのが通例なのかもしれない.
 参謀も指揮継承の序列に入ってる軍隊.
 史実でも陸でボコになったときとか人居なくて,参謀だの幕僚だのが指揮取ってましたって話は聞いたことある.

軍事板,2010/07/13(火)〜07/14(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 個人で傭兵をやっていて,作戦立案から部隊指揮から訓練までやる人物を出そうと思います.
 年齢は30代後半.米陸軍の大尉だった人物と言う設定です.
 特殊技能などが無い,ただの中隊長だった人物では,傭兵稼業は難しいでしょうか?

 【回答】
 現役の高級軍人や特殊部隊員,諜報関係者,ジャーナリスト,PMCや大企業の幹部,政治家など有力なコネや情報源がどれだけあるかが重要.
 本人が軍事面の作戦〜戦術しかこなせないという事は,自分で仕事を探してくる,必要な情報を集めるといった前準備が出来ないって事になる.
 そうなると,上記のようなコネで仕事を貰ってくるか,それが出来る人間と組むしかない.

 乱暴に例えれば,国内でそれなりの実績があるプロスポーツ選手が,海外進出しようとしてるみたいなもの.
 本人がどれだけ選手として優秀でも,それだけで好きなチームと契約出来るわけじゃない.
 面識や知識の無い海外のチーム関係者に,ビデオやらなんやらを使って売り込み,オファーが来た中から一番良い物を選び,その上でなるべく好条件で契約を結ぶには,やはり有能な代理人や通訳が必要不可欠.
 その辺を本人がやっても構わないんだが,今まで扱った事が無い分野だけに,慣れるまで手間が掛かったり,失敗や外れを引く確率が高くなったりする.

 単独で仕事する以上,傭兵も結局は個人事業主の一人に過ぎない.
 その為にコネと情報を獲得する努力は,欠かせないという事.

 コネといっても自分から売り込むんじゃなく,既にどこかの軍や国に雇われて契約してる同業の傭兵で,原隊時代に友人や同僚だった人から,誘いが来る場合もあるけどね.
 プロスポーツだって代理人業という,チームと選手の仲介をしてる人もいるし,その業種こそコネが必要.
(本人がプレーするんじゃなく,プレーできる奴と顔見知りで,そいつが欲しいと思うチームに引っ張ってこれる能力で食っていくわけだし)

 まあ,士官教育を受けている傭兵ってのは,兵卒の傭兵よりは需要があると思うが…
 前線指揮官の経験がある人物で,人格者で,部下の統率が出来るってのなら,小隊長経験まででも,傭兵仲間にとってはありがたい存在だろう.

 某傭兵業作家の著作だったかにあったと思うけど,取り立てて能力は無いけど,小隊長経験のある人は仲間に人気があり,信頼も寄せられてたが,能力に自があって小隊長に任ぜられたワンマンな奴は,人気がなくて隊の士気も悪かったとか.
 正規軍から送られてきた士官だと,人気が無い上に傭兵たちを掌握できないとか.
 「指揮官の経験があり,部下の気持ちを把握できる奴」ってのは,十分技能だろう.
 中隊長までいけてるなら,上部からの命令と部下たちの要望との調整もできないはずは無いだろうし.

 つきつめていくとPMCになるけどね.

軍事板,2010/07/14(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ふと思った.
 銃弾が薬莢ごと発射される間違い描写って,何で起こるんだろうか?
 リボルバーの再装填描写とか,当たり前にあるのに.

 【回答】
 元映画屋から一言.

 いちおうガンアクションがある映画には,この板にも常駐してそうなマニアのガンアドバイザーが,ちゃんとついているのが普通だ.
 というか撮影用の銃器は,そういうアドバイザーが許可を得て使ってるので,普通じゃ簡単に手に入るシロモノじゃない.

 ただ,日本映画の製作現場は監督の権限が強すぎて,そういう下っ端が口を出せない雰囲気があるんだな.
 いちおうサード助監督が,持ち道具など美術をとりまとめる役なのだが,あれはいちばん下っ端がやるもんと相場が決まってるので難しい.

 監督自身がマニアか,あるいは下積み経験があって,プロのスタッフに任せられるタイプでないと,メチャクチャな絵になってしまうのはそのためだ.

軍事板,2010/07/18(日)
青文字:加筆改修部分

 薬莢付の弾丸(=新品の弾丸なわけだが)の写真は,簡単に手に入るが,実弾部分だけの写真(それも新品) が殆ど存在しないのも,原因の一つだろうねぇ.
「銃弾の資料ある?」
「はい,これです」(銃器店のパンフレットを渡す)
じゃ,薬莢付の新品の弾丸の写真しか手に入らないだろうし.
(自分もいまだに,すでに射撃済みで潰れた弾丸しか見たことない)

 また,昔の大砲が(今もか)砲弾と火薬(装薬)は別個で装填し,火薬が爆発して砲弾が飛んでいくっていうのを半端に知ってるから,現在の銃弾や薬莢付きの砲弾もそうなんだろうな,程度に思ってる人もいるんじゃないか?
 そもそも「薬莢」が何のためにある部分なのか,知らない可能性がある.
 あれも砲弾・弾頭の一部だと思ってるのかもしれない.

 ちなみにルパン3世のオープニングの場合は,「素で間違ってる」のか,「先にンの点の部分を薬莢付いた弾丸のでデザインしたから,作画の方で薬莢ごと銃から発射されて,ンの字に収まるというふうに合わせて描いた」 のかよくわからん所がある.

軍事板,2010/07/18(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 『風の谷のナウシカ』のクロトワは,「うだつの上がらない平民出身」と自分で言っていますが,クシャナに次ぐ地位にいる以上,軍人としては有能だったのでしょうか?
 劇中では間抜けそうに見えるシーンも多かったですが.

 【回答】
 そのへんは,Wikipediaのナウシカの登場人物のところに詳しく書いてるが.
 かれこれ25年前の映画なんだから,ぐぐれば資料サイトが山ほどあるぞ.

 27歳で王政国家で平民から軍の参謀になる人間が,うだつの上がらない無能なわけが無い.
 かつてはコルベット乗りで,空中戦で見事な技量を見せてるから,兵からの叩き上げと思われる.
 平民出身で兵から叩き上げて,27歳で参謀というのは破格の出世.
 ずば抜けて有能じゃないと無理.
 あと,クロトワは兵の信望が厚く,指揮官としても有能なところを見せている.

 劇中で間抜けというか,あれは軍人として常識的な考えで動いてたら,非常識のナウシカに出会って道化になる,という単なる劇作手法にすぎんのだが.

軍事板,2010/07/20(火)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 機動戦士ガンダムに出てくる61式戦車は,作品の時代背景,舞台設定,科学力などに比して,何故あんなに古臭く時代遅れなデザインなのでしょうか?
 ガンダムを作るぐらいなのだから,ガンダムのビームライフルの様にザクを一撃で破壊できるビーム砲を搭載した新型戦車が作られ,それが劇中に出てきてもおかしくないと思うのですが.

 【回答】
 まず,設定がガンダム内部で閉じている質問は,原則としてシャア板を推奨.
 普通の軍オタに,ガンダム系作品は手がつけられない
(設定の把握すら困難という点において)
 ガンダムは設定が山盛り過ぎて,まずそれを確認するのに長文数レスのやりとりが必要になっちゃう.
 教えようとしてスレッド一つ使い切っても論争が終わらないから隔離専門板がある.
 そういう世界なんで.
 「極端に軍事常識から外れたSF兵器」に該当してる(笑)

 さて,件の戦車だが,作中設定で既に,1stガンダムの一年戦争の時代の,さらにとっくの昔に旧式陳腐化してて,しかし大きな戦争とかなかったので更新の必要性が無く,そのまま使い続けられているという設定になっている.
 そして,連邦軍はジオンのMS開発をダミーだと思ってたので,それに対抗することを,戦争が始まるまであまり真面目に考えてなかった.

 戦車の「理想の形」っていうのは重力下で使うのなら,ほぼ最適解が出ているわけで,時代が進んで技術が進歩しても,外見はそう変化はしてないだろう.
 それに,あれだって今の戦車から比べたら,革新的な技術の進歩がないと作れない,超未来技術の戦車なんだし.
(ただ,あの61式,設定が正しければ,今の戦車と比べると異様に大きい車輛なんだよね・・・.
 むしろあの大きさだと,「MSとしか戦えない」だろうな.
 大きい分装甲は厚いにしても,現代の戦車とやりあったら大きく目立つ分,ただの的だと思う)

 あと,ガンダムのMS用ビームライフルは,1stガンダムにおいて,ガンダムやガンキャノンに装備しているものが史上初で,MSサイズに小型化実用可能となった物である設定.
 戦車なんかに装備できる代物じゃあない.
 確かに,ビームライフルよりも戦車の砲塔の方がデカイし,数ヶ月後に,更に小型のジムのビームガンが開発されている.
 だが,砲身積めても「エネルギー源」がなぁ……
 ガンダムのビームライフルって,マガジン交換というかエネルギーパックの様なものが交換されてて,あれにエネルギーが充填されてると思いきや,あれに入ってるのは,加速して弾体として飛ばすための「メガ粒子」だそうで,ビームの電力はMS本体から供給されている.
 戦車にビーム撃たせたいなら,戦車にも核融合炉積まなきゃならない.
 さらに,あの設定のビームライフルとかは,エネルギーキャップ方式という一種のバッテリーのようなものを使用.
 エネルギーキャップ方式は再充填に専用の設備が必要で,艦船レベルの容量がないと搭載できなかった.
 そのため連邦MSでも90mmマシンガンなどの実体弾装備を使っていたりする.
 その上,1stのビームライフルのレベルでさえ「戦艦の主砲(ビーム)並の威力」だから,戦車なんかに積む意味はあまりない.
 オーバースペック.
 ビームの性質的にも徹甲弾しか発射できず,榴弾が使えないというのと似た状態になるし――劇中描写では地面に当たると爆発してる謎ビームだけど――,光学兵器を戦車に積むって発想からして意味は薄いと思う.

(同様,ザクマシンガンを戦車に積めても,そこまで発射・装填速度要らないし,そもそも戦車砲がマシンガン化するほどの砲弾を戦車に積めない.
 人間の歩兵にヘリ用ミニガン持たせる意味が無いのと同じ)

 エネルギーや弾体を解決しても,仰角が足りないので,股関節とか融合炉のある胴体,頭部を狙い難い.
 機動性を考えて回転翼機(ヘリコプター)か,火力が必要なら追尾型ミサイルなどで後方から支援する方が良いのかもしれないね.
 「MS IGLOO2」では,ザクはジャンプして一気に61式戦車に肉薄,目前でめまぐるしく動く脚部に照準できず,また仰角不足でボディを狙えない.
 苦肉の策として,撃破された味方戦車に乗り上げ,仰角を稼いでいる.

 「MSは地上ではでかくて遅くてただの的」ってよく言われるけど,アニメの中では歩行速度めっちゃ早いというか,あの図体で機敏に動くから歩幅は大きく取るし,時速換算でどのくらい出てることか…
(作品毎に異なるけど,人間がジョギングするのと同じ位の動作速度で走ってる場面を元にすると,その10倍の大きさの巨人が同じ速度で手足を動かしてる事になるし)
 さらにあいつら,核パルス推進器を搭載してるから,短時間なら地球上で「飛べる」しな.
 やってることは単に物凄いジャンプな上に,数秒間の滞空程度なんだが,ガンダムはそれでジオンの航空機(おそらく音速出ないだろうけど)と互角どころか圧倒している.
 その運動能力でできる事を考えると,既存の地球上の兵器の枠を逸脱しすぎて,旧来戦車が想定してる「相手」とは何もかも違う.
 戦車と同等の速度を持って,火力は艦艇の速射砲で,部分的にヘリみたいに三次元機動可能とか化け物.
 ミサイルなど交わせそうだけど,飽和攻撃や十字砲火で数頼みするしかないかもしれない.
 粘着爆弾を持って突撃だけはしたくない...

 ただ,カタログスペックが劇中描写と矛盾してる(重量が異様に軽いとか,推進力が地球上であんなジャンプできないとか)があるから,にわかが幻惑されがちなだけで,劇中描写に合わせて設定上のスペック数値を直したら,どんな常識外れな代物かよく判る.
 というかあいつらは元々,「宇宙戦闘機」なんだぜ…

 ガンダムのカタログ・スペックは,素人が本当にてきとーに考えて作った物だし,そのカタログ内で相当な矛盾があるものだしなあ.
 例えばMSの平均重量が50〜70tはあるんだが,144分の1のガンプラと,同スケールの食玩の戦車なんかを並べると,とても同じ重量とは思えないくらい,大きさや密度に差がある.
 これではMSは装甲も骨格もペラペラというか,航空機並の軽さ.
 紙で出来てるのか?ってくらい,構造材が薄い事になってしまう.
 設定上の数値が嘘情報やデタラメに近いから,真面目に考える事自体が負け.

軍事板,2010/07/21(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 軍オタに評価の高いロボットアニメや戦争アニメは,やはり皆無なのですか?

 【回答】
 別にそんな事は無い.
 ただ,軍事的にとか科学的にとかの「正しさ」「合理性」「現実的」が無い作品を,批判したり叩いたりするのが格好いいとか正義だとか勘違いしている,「軍オタになったばかりの中二病患者」が時々喚くだけの話.

 演出の一環でわざとやっていることを叩くアホウとか多いからなあ.

<例>
中学生の少女が対戦車ライフルを抱えて走り回り,腰溜めで撃つアニメ
                   ↓
実際は対戦車ライフルは,少女の特殊能力によるものであるという演出

 演出なのか,本気でやってるのか判らんのも多いから困る.

 軍オタとしてのそれと,ロボットアニメを楽しむのとはそれぞれ別個の趣味で,別に矛盾しないし両立もする.
 混同するほうがどうかしている.
 それに,戦争映画で「全体的に硬派なミリタリーだが,最終的にはご都合主義な英雄物語」というのを許容できるのに,「全体的に荒唐無稽なロボットアニメだが,部分的に『なんかそれっぽい』ミリタリー要素」は許容できないというのも変な話.

 そりゃまあ,軍事的趣味とロボットアニメのロマンを両方同時に満足させてくれるような作品があったら,嬉しいのは確かだけどね.

 むしろ,ツッコミ入れるのも野暮なくらいぶっ飛んだ作品のほうが,それはそれで魅力あっていい.
 戦争ものじゃないけど,「少林サッカー」みたいな.

軍事板,2010/07/21(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 各駐屯地等に展示その他のために現存する61式の総数を,だいたいの推定で良いので分かりませんか?
 また,(現存するものがまともに動けたとして)これを使ってT-55に対抗したいのですが,「手作り爆発反応装甲」と「新開発!整形炸薬弾」でなんとかなるでしょうか?
 無理そうならやめるか,相手をT-34にします.

 【回答】
 戦車と全然ゆかりの無い駐屯地に,なぜか61式戦車が敷地内のあちこちに点在して4台も5台も置いてあったり,逆に戦車大隊が駐屯してるのに.展示の61式戦車が正門入ってすぐの展示場の1台以外置いて無かったりと,展示数ってほんとマチマチで推定すらできねーです.

 あと,展示の61式はエンジン抜いてるのが多くて,動かすにはまず「現存するエンジン」,あるいは「代わりに積めるエンジン」を探さないといけないです.

 保存用以外はぶっちゃけ解体される順番待ちで置いてあるようなもんだし,武装関係も使用不可の状態にされてるはず.

 あと,ERAはそんなにお手軽なもんでもなくて,意外とノウハウが必要.
 HEAT除けなら金網をロールに巻いて,くくりつけた方が良いかも.
 それから61式の90mmにはHEATも用意されていたよ.

 素の61式でも地の利を生かして近距離に誘い込めば,T-55相手なら何とかなるかもしれんが,どっちにしろ動かないわ,武器の使用不可な状態だわじゃ,どうにもなんないね.
 数台なら復帰させることもできるかも知れんが,大量には難しいかと.

軍事板,2010/07/25(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 自身の小説で潜水艦の話を書きたいのですが,酸素の無くなった潜水艦で,搭載されている酸素魚雷を分解して,一時的に酸素を取り出すことは可能でしょうか?
 もし,可能ならばどの程度の時間は持つでしょうか?
 艦の大きさは海大型(100m)程度の予定です.

 【回答】
 アイディアとしてはありだが,実際はおそらく最後のわずか数時間を稼げる程度で,そこに貴重な酸素と人員を投入するんだったら,普通に復旧作業やったほうがマシ.
 確実に数時間後に救助が来るならまた別かもしれんが,実戦でそんなのあり得ん.

 また,そういう訓練を以前から受けてるなら別だが,すべての魚雷を即興で解体なんてやってたら,逆に死ぬまでの時間が短くなる可能性のほうがずっと高いよ.
 潜水艦の艦内じゃあ事故が恐ろしくて出来ないような,物凄い危険な作業だったはず.
 それで魚雷の解体に失敗して,艦内に被害が出てりゃ世話は無い.
 万が一事故ってそのまま艦内火災とかなったら,窒息するより前にお陀仏の可能性がある.
 酸素魚雷のは酸素っても,濃度の高い状態の純粋酸素.
 しかも燃焼剤(酸化剤)として使うものだし.
 リスクが大きすぎるし,そもそも安全に解体できるだけの必要な工具や設備があるのか?とか,解体できたとして,酸素を安全に艦内空気と混合させられるのか?とかの問題がある.

 どう考えても,復旧に関係ない人員は動かず,休ませておいたほうが,まだ時間稼げる.
 当たり前だが人間が動けば動くほど,酸素消費量が増えて残り時間は減る.

 で,可能かどうかはさておき,もしできたらどれくらいの時間になるか計算してみた.
 以下,滅茶苦茶乱暴な計算なので鵜呑みにしないように.
 計算ミスあったらごめんね.

 95式魚雷の酸素室の容量は383リットルで,圧力はわからないが,仮に93式魚雷と同じなら225気圧.
 つまり86,175リットルの酸素が充填されてることになる.
 酸素濃度20%の空気にしたら430,875リットル分.

 一方,1人の人間が大気圧下で,毎分20リットルの空気を消費するとする.
 海大型の乗員70名が普通に呼吸していると,1時間あたり84,000リットルの空気が消費される.
 海大型の搭載全弾14発の魚雷があれば,だいたい71.8時間分の空気になる.

 ただし人間は酸素濃度16%以下の空気を吸うと気を失ってしまうので,最後まで酸素を使い切ることはできない.
 20%の状態から4%減ったらアウトというわけで,つまり実際に使えるのは全酸素量の2割.
 この比率を掛けると,14発の九五式魚雷からは,乗員70人のための14.4時間分の酸素が得られる.
 半日ほど長く潜航していられる「かもしれない」代わりに主兵装たる魚雷を全て失うわけだが,割に合うかどうかは話次第だろうね.

 尚,これは魚雷から出てくる酸素を直に漏れなく吸った場合の話.
(本当は,魚雷のは純粋酸素だから酸素濃度高すぎて,じかに吸うと中毒になる)
 単に魚雷の酸素室を空けて,艦内に酸素を拡散させた場合は,もっと効率は落ちるだろう.
 しかも放出量をコントロールして,20%を超えないようにしないと,酸素酔いになるし,爆発事故起こすぞ.

 二酸化炭素吸収材を使えばもうちょっとは長持ちする気もするが・・・
 旧海軍ではどんなの使ってたのやら.

 あとはその海域の水温が高いと,艦内の温度も上昇して体力の消耗が激しくなるので,その辺もかなり辛いらしいね.
 暖かい海域で作戦した潜水艦の話では,艦内温度や湿度との戦いも結構書かれてるね.

 なお,林譲治の架空戦記に,全く同じシチュエーションがあった.
(兵隊元帥シリーズだったかな?)
 手元にないので確認できないけれど,取り出せる酸素の量や,それで乗員が生存可能な時間も,具体的な数字が書かれていたな.

 『雷撃深度十九.五』ていう小説で,搭載している回天の酸素を抜いて急場しのぐという話もあったな.

軍事板,2010/07/25(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 今書いてるやつで,74式戦車が出てくるシーンがあるんだけど,砲手に105mm主砲を撃たせつつ,車長が砲塔上の12.7mm機銃を撃つってのは変?
 主砲の衝撃で死ぬ?
 砲手に任せたりしない?

 【回答】
 死にはしない.
 戦車帽とヘッドセットをちゃんと被ってれば,衝撃も耐えられる.
 実際,90だと安全係が顔出したまま射撃する事もあるわけだし.

 ただ,90式以前の国産戦車は銃架が無理矢理な位置にあるから,砲塔ぶん回して戦闘中に使用するのは難しい.
 あれ使うくらいなら,砲手の持ってるSMG or 89R使うか,手榴弾ばらまくよ(手榴弾ラックは車長席にある)

 あと,射撃自体は砲手任せだけど,小隊長の無線聞きながら弾着観測判定や次目標選定なんかの射撃指揮をやってるから,車長も忙しいよ.

軍事板,2010/07/26(月)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 九九式襲撃機の地上掃射能力を補うために,爆弾の代わりガンポットを搭載した型を生産,フィリピンなどで対戦車攻撃に使用する.というのを考えたのですが,機体下部に搭載した20mm斜銃による掃射で,M3中戦車や初期のM4戦車の上面装甲を撃ち抜き,撃破することは可能ですか?

 【回答】
 20mmと一口に言っても,陸軍の機関砲ならホ5とホ1/3系列が考えられるけど,どちらでもあり得なくはないが,非常に難しい.

 まず相手を考える.
 M3中戦車の車体上面装甲は12.7mm,砲塔上面は31.8mm.
 M4は,砲塔と車体どちらも上面25.4mmとなってる.

 次に,ホ5の徹甲弾は100mで20mmの装甲を貫通できるとされてる.
 角度は明言されてないが,恐らく垂直に命中した場合だろう.
 数字だけ見れば,M3中戦車の車体上面だけは貫通できる可能性もある.
 しかし,ガンポッドで多少角度がついているとは言え,垂直に着弾させるには結構な急角度で降下しながらでないといけない.
 距離100mから垂直に銃撃するとなると,その先は地面に突っ込むしかないコースじゃないだろうか.

 ホ1 or ホ3の場合,これは97式自動砲と同じ弾を使う機関砲なので,貫通力も同程度期待できる.
 自動砲の曳光徹甲弾はいずれも垂直の着弾で,30mm@220m,25mm@420m,20mm@700mだ.
 貫通力に余裕があるので,多少緩やかな角度で降下しながら射撃しても,M3の車体上面装甲は貫けるだろう.
 しかし,M4の上面に対してはほとんど余裕がない.
 こちらも地面ダイブ・コースでないと,貫通は期待できない.

 それと,斜銃は機軸に沿った位置に配置する例が多いと思うが,翼にガンポッドとして20mm以上の斜銃を搭載した例は聞いた事がない.
 ホ1や3は強力な弾を使う分,反動も強烈だが,後付のガンポッドで構造的に耐えられるだろうか?

 もし機体が耐えられたとしても,前述の通り20mm級の機関砲の対戦車能力はかなり限定的だから,対戦車攻撃をさせるなら,素直にタ弾を積んだほうが余程うまく行くと思う.
 航空爆弾のタ弾は,「二式30kgタ弾」と「二式50kgタ弾」で,「二式40mm散布弾」をそれぞれ30発ないし76発格納した一種のクラスター爆弾.
 99式襲撃機なら50kgを4発搭載できるはず.

 二式40mm散布弾は,タテ器から発射する小銃擲弾とほぼ同型のものだが,安定翼と回転翼式の安全装置が付いてる.
http://www.inert-ord.net/jap02h/t2sub/index.html
 貫通力は小銃用と同じなら凡そ10cmだが,一説では航空爆弾用のものはライナーの形が違って,貫通力を抑える代わりに破壊効果を高めてあったという.
 戦車の上面装甲は10cmも無いから合理的な選択ではあるが,共通化できないんで生産上はあんまり良くないかもね.

 戦車を機銃掃射で撃破しようと思うと,やはり30mm級の機銃が必要.
 例えば,対戦車専用機として開発されたHs-129当初,爆装+20mm機関砲だった物が,装甲車輌に爆弾は直撃させないと効果が薄く,20mmは主力戦車には非力と言う事で,タングステン弾芯を使用した徹甲弾を使う30mm機関砲をガンパックで装着,に変更されている.

 開戦時に間に合いそうな30mm級の機関砲はホ203ぐらいしかないようだが,ホ203には徹甲弾が用意されていないし,例え用意したとしても,94式戦車砲と同初速でさらに軽い弾だから,対戦車ライフル弾薬を使えるホ1よりも高い貫通力は期待できないんじゃないかな.
 ホ204まで待てば九八式戦車砲クラスの初速になるけど,相変わらず弾頭重量は軽い.
 貫通力は不明だが,300mで30mmくらいはいけるんじゃなかろうか.
 出来ればもっと薬莢の大きい機関砲でないと,対戦車攻撃には荷が重いけども,残念ながら陸軍にはホ204以上の37mm機関砲はない.

 陸海軍の違いを無視できるなら,海軍の九六式25mmが貫通力良好なんだがな.
 一応ベルト給弾化して航空機搭載も計画されていたし.
 九六式25mm機銃の徹甲弾は,距離1300mで30度傾斜した25mmの装甲板を貫通できるとされてる.
 概算だか砲口付近では40mm近く貫通できそうなんで,車体側面か背面装甲(どちらも38mm)の貫通くらいならあり得る話.
 実際に当時の米軍資料でも25-mm antiaircraft-antitank automatic cannonとして紹介されていることがあるし,対戦車火器としてはある程度脅威であると認識されてたのは間違いない.
 それもそのはず,九六式25mm機銃の元を辿ると実は対戦車砲だったりする.
 なので対戦車火器というのも,あながち間違いとは言い切れない.
 もっとも対戦車砲としては威力不足,でも命中精度と弾道特性が非常に良いので,それを機銃に転用した,という…….

 鍾馗の積んでた40mm機関砲,ホ301にHEATってのも面白いかもな.
 40mmのHEATなら,タ弾相当の威力で貫通能力100mmか.
 これならアクロバットして上面装甲狙う必要もないし,重量も通常の37mm機関砲やロケット弾よりずっと軽い.
 弾道特性悪いといってもロケットよりはまだ良いだろうし,高い発射速度を活かして,15発一気にばらまけば精度は補える.
 でも,ホ301はライフリングで弾丸を回転させるから,貫通能力はもっと落ちるだろうな.
 絵的にJu87Gと似ちゃうのも問題.
(ちなみに,鍾馗の40mmで戦車狩りというアイディアは,谷甲州の『覇者の戦塵』に出てた)

 ホ401 57mm機関砲なら十分な威力なんだけど,これを搭載するとなれば,行き着く先はキ102になるわけで.

 その上,1944年10月以降のフィリピンで九九式襲撃機を使うのは,どう考えてもマゾヒシズムに溢れた話になるぞ.
 米軍航空機のカモ・・・・いや,餌だ.

 というか,そもそも対戦車攻撃機は,対戦車以外の用途では汎用計攻撃機より使いにくくなっちゃうんだから,戦車戦が島嶼戦のおまけでしかない太平洋戦線ではあまりお呼びでないんじゃないかなあ.
 結局,もう使い物にならない航空機に,あれやこれやと手入れをするより,先行量産型とかを物になるようにする方が資材の節約にもなるし,汎用性も上がるのよね.
 一点特化の低速襲撃機(しかも軽攻撃機)を投入する戦場も人員も多く無いのに,そんな事してたら上からの命令であっても無茶すぎる.

 開発年度から考えるなら,37mm積んだ屠龍あたりをそのまま対地攻撃機に転用するのが,一番現実的なんじゃね?
 屠龍は実際に襲撃機として運用されてたから,そのまんまで問題ない.
 ただ,襲撃機としてどう運用されて,利点欠点がどうだったかといった話は,よくわからない.

 第一,戦場への距離が近くないとその手の近接支援は成立せん.
 太平洋戦線だと距離があるから,現場に行く前に落とされちゃう.
 大陸ならまだ可能とはいえ,目標とすべき戦車がない.

軍事板,2010/07/26(月)〜07/31(土)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 戦争系ノベルを書くにあたって,参考図書としてオススメなものってありますか?
 小説でも図鑑でもなんでもいいです.
 時代は第1次世界大戦や第2次世界大戦あたりで.

 【回答】
 どういう小説を書くのかによる.
 例えば戦場での兵士の情景などを書くのか,戦記風にしたいのかなどだ.

 あと,第1次世界大戦と第2次世界大戦の状況は,全く別だよ.
 第1次世界大戦が別名「欧州大戦」と呼ばれるように,戦場の中心がヨーロッパだったのに対して,第2次世界大戦は欧州,インド,北アフリカ,地中海周辺,東アジア,太平洋と戦域が広く,戦争参加国の数もずっと多い.
 まず,自分が書きたいと思っている小説の舞台が何時の時代なのかを,きっちり決めてからじゃないと資料を絞れないぞ.
 軍装や兵器などの配備状況一つとっても,WW1とWW2は全く違う.
 ざっくりとした資料が見たいだけなら,Googleなどを使って検索していくだけでも,それなりの資料が出ると思うが.

 WW2欧州ならカレル,ジョン・トーランド――『バルジ大作戦』とか,視点が変わって面白いかも――,コーネリアス・ライアンなど,太平洋戦争なら伊藤正徳,児島襄などがとっつきやすいと思う.
(もし,カレルを読むならロシアからの視点として,このページが面白い)
 あんまりドイツに染まって欲しくないけれども,他の国のあんまり翻訳してくれないorz

 小説だと,わりと最近,書評スレッドで勧められて読んだスティーヴン プレスフィールド著『砂漠の狐を狩れ』が,砂漠での英国の戦車隊,長距離挺身隊の生活,戦闘をしっかり描いていて面白かった.
 一応,小説にはいるのかどうか,ってとこだが,マリオ・リゴーニ・ステルン著『雪の中の軍曹』は,イタリア山岳兵の一軍曹の視点からロシア戦線での戦闘(わりとちょこっと),塹壕での生活や退却行なんかが書かれている.

 あと,余計なお世話かもしれないが,レスを読む限り,余り軍事や戦争の知識があるように見えない.
 まずはWikipediaの「軍事」「戦争」辺りのカテゴリを,片っ端からチェックしてみて,なんとなくでも知識を得てからの方が,本を読むときの理解がし易くなる.
 読みながら,出てきた語句や固有名詞を調べるのも良い方法.
 各記事には参考文献も紹介されてるので,新しく興味が湧いた事柄について書かれた本を読むのもいい.

軍事板,2010/08/01(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 第2次世界大戦初期のソビエト軍って,民族も言語もバラバラで,兵隊の識字率も低く,戦死しても家族に連絡も行かないという,(人員に関して名簿等で)全然管理されていない感じですが,普通の中国人がその他のアジア系(モンゴルぐらい?)だと偽って,ちゃっかり適当な部隊に紛れ込むことは可能でしょうか?
 それとも,モンゴル人だとモンゴル人ばかりの部隊に送られてバレちゃったり,あるいは
「お前怪しいねん! どっから来たんじゃ!」
と懲罰大隊に送られちゃったりするでしょうか?

 【回答】
 普通の中国人じゃまず無理.
 モンゴル系かモンゴル国境近辺に住んでれば,ごまかせるかもしれない.
 大陸国なので意外と移住者や混血は昔からゴロゴロしてるから.

 あと,ロシアはモンゴルに占領されたことがあるので,スラブ系でもたまにアジア人そっくりの子供が生まれることはあった.
 だから,ロシア語が堪能な混血の中国人という手も使える.
 逆に北方の漢民族に,たまに北欧系みたいな顔の子供も生まれる.
 同じ民族でも南方とは,現在でも平均身長からしてかなり違うのだ.

 それと,文字の読めないソ連軍にも軍隊手帳的な身分証明書はあるよね?,たぶん.
「身分証明書は戦闘の最中になくしたんです,もといた部隊名も覚えてません!」
っていうんじゃ,さすがにきついかなあ.
 でも,しれーっと紛れ込んでたら,指揮官もアジア人の顔なんて覚えてないだろうし,なんとかなるかなあ.

軍事板,2010/08/02(月)
青文字:加筆改修部分

 沿海州から強制移住させられた朝鮮系,ということにしておくのはどうでしょ.

丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM in 軍事板,2010/08/02(月)
青文字:加筆改修部分

 何その金日成.


 【質問】
 仮に,「砲身長を一定の範囲で可変可能」という砲が存在したとして,砲身長が伸びたり縮んだりできる性能的メリットって何かある?
 あれば自作小説の設定の中に取り入れたいのだけれど…
 ちなみに,可変機構を組み込むことによって生じるデメリットは講釈しなくていいです.
 現代技術で伸び縮みする砲とか実現不可能なのはわかってるし,小説も現代技術の枠内でやる作品ではないので.

 【回答】
 曲射砲として使うなら,固定装薬でもある程度,弾道を自由に変えられるかな.
 固定装薬のほうが簡単に自動装填装置を適用できるから,高発射速度の榴弾砲を作りやすくなる可能性が.
 砲身を短くした場合,余った発射ガスが,弾道に悪影響を与えるかもしれないけど.

 さらに一歩進めると,固定装薬かつ仰角固定の砲でも,旧軍の擲弾筒のように射程距離を変えられるようになる.
 日本陸軍の八九式重擲弾筒は,発射角度は45度固定で,調整ねじを使う事で射程距離を増減させる事が可能だった.
 砲身そのものの長さではなく,腔内容積を変化させるって形だけど.

 砲身の伸縮メカニズムの重量次第ではあるけど,仰俯角機能を省いた超軽量な歩兵砲や自走砲が可能になるかも.

 また,長砲身だと地面に引っかけたり(4号駆逐戦車ラング),振動が収まらない(ヤクトティーガー)とか,そういう問題もあったりするんで,機動の時は短くして,射撃位置についたら伸ばす,と言う使い方なら ,超長砲身の砲の運用が楽になる,と言うのはあるかも知んない.
 あとはシルエットが変化することにより,戦力の判定が難しくなるとか.

軍事板,2010/08/14(土)〜08/15(日)
青文字:加筆改修部分


 【追記】
6962010/08/15(日) 10:47:15 ID:LvnmTNF0
ゴルゴ13に,米軍基地に潜入し新型戦闘機を破壊して,基地のレーダー網をくぐり抜けて脱出するって話しがあったのですが,
この時の脱出法は,古い木製の複葉機でレーダー網をかいくぐるというものでした.(金属部品をほとんど使っていないからレーダーに映らないとのこと)
そこで思ったのですが,もし,神風特攻を木製の機体でやっていれば,成功率の変化はあったとおもいますか?


6972010/08/15(日) 10:51:53 ID:???
調整すればそういう飛行機でも写る.
雨でも木の葉でもレーダーで捕らえることは可能.


6982010/08/15(日) 11:12:48 ID:???
>>696
現代のレーダーでは小型飛行機は写りにくいが
第2次世界大戦当時はそのサイズが標準だから気付かれないはずは無いだろう
それに,当時も木製飛行機もちゃんとある
今の普通はレーダーは普段そういう小型飛行機をフィルター排除してるから写りにくいか,
あるいは写ってもそれが探してる非行物体だとは区別しにくい
あと,電波反射が少ないものは確かに写りにくいと言えば写り難いのも事実だが…

そして
>雨でも木の葉でもレーダーで捕らえることは可能.
これも,そうは言ってもレーダーに映ってるのが雨なのか木の葉なのかまで識別できないんだよね
ノイズの影としては確かに写るんだけど


6992010/08/15(日) 12:14:35 ID:???
>>696
木製機だってエンジンや脚は金属製だってことを忘れちゃいけないよ.


7002010/08/15(日) 12:29:48 ID:???
>>698
んなことはないよ

当時は一度にどかっと来なきゃ軍事的に無意味だったので貧弱なレーダーでも映ったわけで,
レーダーがそういう調整してたから映りやすかったなんて事実はとくにない
低空で木製の小型機がレーダーに映りにくいのは過去も現代も同じ

ただ特攻の場合は,そもそも爆弾ある程度積めるサイズの飛行機で何の意味もないわけで,
たとえば赤とんぼに非武装で,熟練パイロットに薄暮狙って単機で特攻させるとかさせれば,
そりゃその作戦自体は成功する可能性が通常よりかなり高くなるだろうさ

そのことに何か意味があるかと言えばまったくないが


7012010/08/15(日) 15:00:24 ID:???
>レーダーがそういう調整してたから映りやすかったなんて事実はとくにない
んな事誰も書いて無いんじゃね?

軍事板,
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 冷戦真っただ中の1980年に,アメリカとカナダが全面戦争になる火葬戦記を考えているのですが,米国側がカナダの政府機能一時避難施設のディーフェン・ブンカ―などの防護された施設破壊に,核兵器を用いるとすれば空軍や海軍などの航空戦力以外の手段,弾道弾,巡航ミサイルでは何を用いるのが最適だと思われるか,ご教授のほどお願い申し上げます.
 ミニットマン等の大陸間弾道弾などでは近すぎて問題があるのではないか(ソヴィエトなどを必要以上に刺激してしまう)など思ったものでして.

 【回答】
弾道弾ならMGM-31 パーシングU
巡航ミサイルならAGM-69 SRAM
が適当だと思う
 時期的に多少前後してもよければ,もう少し候補が増えるけど,1980年と限定すると,たぶんこの2つにほぼ限定される.

 ただし,厳密にはAGM-69の方は,航空機からの発射が前提となるので,航空戦力は絶対禁止というなら,これは除外.

 あとは核砲撃が考えられるけど,この時期,運用している核砲弾は最大でも155mmだったはずで,前述の二種とは比較にならない短射程なので,これも攻撃目標を考えると採用しづらいかな.

 あと,もう少し短射程でも良ければ,弾道弾にはMGM-52 ランスも追加.

軍事板,2010/08/16(月)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ファンタジーを書きたいのですが,質問です.

 将官の執務室はお城の中にあるのでしょうか?
 お城の構造と言っても色々あると思うのですが,王族の住居と同じ宮殿内
(例えば,東棟に軍本部,西棟に政務本部,奥に王族の住居,真ん中は広間とか来賓のもてなしスペースといった感じです)
 お城をググってみても,あまりよく分かりませんでした.

 【回答】
 将官の執務室はどこか?というのはかなり分かりにくい質問です

 将官と言ってもたくさんいますし,立場や任地でも変わりますね.
 地方軍の将官なら,王城とは遠い,国境近くの砦の中に執務室を置くでしょう.

 国軍の総司令官なら,王城の内部に執務室を置きます.
 効率から考えれば,王のいるお城の中心部と,城内の練兵場の間が適切だと思います.
 書類仕事と報告があるでしょうから,やや中心部寄りの場所になるでしょうね.

 それ以外の将軍なら,領地にいないのなら城壁内城下の自分の屋敷にいると思います.
 自分の屋敷があるので,わざわざ個別の執務室は作らないと思いますよ.

 以上は封建制の場合ですね.
 封建制では貴族と将軍の区別すら,非常に曖昧です.
 文官とか武官とかの区別も,王から貰った特別な役職が無ければありません.
 そもそも大概の貴族は領地経営してて,王様の仕事なんか手伝いませんし.

 そこから進んで,絶対王制・官僚制の場合,文官と武官の区別がついています.
 恐らくは王城の中かすぐ近くに,軍務用の建物が用意され,そこを本部として,本部付きの武官はその中で事務仕事をするでしょう.
 参謀本部などが設置されていれば,そこで戦略を練ったりもするでしょうね.
 総司令官でなくても将官ごとの執務室は与えられるでしょうが,総司令官か方面軍司令官クラスでもなければ,部下と共有された仕事場程度ではないでしょうか.
 将官には軍事学校上がりの平民も混ざって来ます.
 貴族の方が多いでしょうが,領地の跡取りになる長男は殆どいないでしょう.
 次男三男が厄介払いで将官になっています.
 平民将官と貴族将官の扱いは,少なくとも制度上は平等になるでしょう.

 最後に共和制の場合ですが,王城の代わりに議会や官邸の近くに軍務省の建物が置かれ,そこで仕事をする事になります.
 基本的には官僚制と一緒でしょうが,貴族という特権階級は廃止されているでしょう.

 組織化の進み具合はともかく,常備軍の規模や組織体制というのは,文化・経済規模・農業技術・兵器技術・政体にかなり影響されますから,リアリティに拘るなら注意が必要です.

軍事板,2010/08/17(火)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ファンタジー世界で,平民が将軍になる話を書きたいのですが,どういう設定ならリアリティがありますか?
 地方領主の貴族は居ますが絶対王制だと思います.

 【回答】
 近代に入るまで,常備兵力の基本単位のうち最大のものは「連隊」でした.
 レジメントと英語では呼ばれる,この千〜3千人程度の集団は,大佐(カーネル)によって指揮されます.
 それ以上の地位の軍人がいる,ということはそれは既に近代以降の軍隊ってことになります.

 そして,ナポレオン戦争以前の史実がベースだと,アジアや中東を除くと平民が貴族クラスに伸し上がるというのはまれであって,その辺りを物語の主軸としたいなら,主人公はある程度自由に動ける傭兵,それも「比較的お行儀のいい」傭兵部隊の長とかの方がいいかも.
 あるいは昔は名家だったけど,今は没落して下級貴族同然になっちまった家の次男坊とかが,王族のお抱えになるとかかな.

 傭兵軍の将軍だけど成り上がった例としては,「ジョン・ホークウッド」とか「ガッタメラータ」でぐぐってみると良いでしょう.
 こういった傭兵に関しては菊池良生著『傭兵の二千年史』で簡単にまとめられていますから,好きなとこだけ拾い読みしてみましょう.
 また,ちょっと逸れるかもしれませんが,17世紀スペインを舞台にして,国が必要としたときだけ国軍のテルシオ(歩兵連隊と意訳してある)に雇われる傭兵を描いた,『アラトリステ』という小説が結構面白いです.
 当時の歴史文化生活宗教と様々な注釈も入ってて,この辺りが分からない人でも結構読めると思います.
 図書館か立ち読みで,ちょっと試し読みしてみてはいかが?
 翻訳が集団で行われてて,それそれの専門家が居るという,軍事モノでも見習って欲しい大変羨ましい体制であったりします orz

 あと,決してアジアや中東だと条件が非常にゆるいというわけでも無いので,勘違いはしないでね,
 平民が中々伸し上がれないというのが階級社会だから.
 むしろ軍人がプロフェッショナル化した,近代の方が成り上がりやすいです.
 傭兵部隊がローマ法王に許可をもらって,征服した土地に王国を築いて,自分が国王になった事はあるけれど,無茶苦茶しすぎてポーランドとリトアニアの連合王国に滅ぼされた例もあるからなぁ.

 極端な話,金持ち病とかで貴族の軍人を大量処分してしまえば,目はアルかなと思わないでも(笑)
 普通はありえないことでも,設定次第で生かせると思いますよ.
 フランス革命からナポレオン戦争の時代がまさにこれで,貴族を一掃したからそこらのパン屋や桶屋が将軍や元帥になれました.
(まあ,全然ファンタジーじゃないがな)



790 :名無し三等兵:2010/08/20(金) 20:37:53 ID:???

 そう考えると,「皇国の守護者」で主人公が置かれてる立場は上手かったな.
 義理の姉が比較的開明的な大貴族の嫁になったお陰で,相続権持たない養子(厳密には違うが)になって,政治的取引の結果,元首の親衛隊(という建前の平民出身部隊)に放り込まれたら,大戦果を挙げちゃう,と.


791 :名無し三等兵:2010/08/20(金) 23:55:49 ID:???

 ヴォーバン元帥って一応貴族だったんだなぁ.


792 :名無し三等兵:2010/08/21(土) 00:09:24 ID:???
>>791
 貧乏貴族の子→親と死別→孤児→農村で極貧生活→教会に保護されると言う,家柄がクソの役にも立たない生い立ちだがね.


793 :名無し三等兵:2010/08/21(土) 13:10:30 ID:???

 家柄がなかったら保護されなかった可能性も高いので,そうでもない.


794 :名無し三等兵:2010/08/21(土) 23:06:08 ID:???

 ああいう世界では家柄は重要だもんな.
 出世にしても平民の孤児よか,極貧の下級貴族の方がまだ「格が」モノを言うからな.


795 :名無し三等兵:2010/08/21(土) 23:10:45 ID:???

 家柄があれば,教育を受けさせた後,貴族や商人向けの密偵に仕立て上げるとか普通にやるのが,歴史ってもんでもある.
 個人の能力よりも,「○○の家に生まれたホニャララ」というのが優先される社会だから.
 だからこそ,物語を作り易いというのもあるんだけれどね.


796 :名無し三等兵:2010/08/22(日) 19:46:07 ID:???

「○○の家に生まれたポニョ」
に見えたのは,暑さのせい.

軍事板,2010/08/17(火)〜08/22(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 自衛隊が活躍する作品で何時も,自衛隊が良い者〜〜という感想を見かける時があるのですが,軍事オタクの人達的には,現代の自衛隊に,捕虜や展開先の住人等へ対して非人道的な行動をとらせる描写は,リアリティとしてはどうなのでしょう?

 【回答】
 現代日本人が自国の人間で構成された組織を
「良くも悪くもお人好しの多い国だから,その軍隊もお人好し」
と思っているから,良い者というより悪い人間が極少数派であると考えるのは当たり前だろう.
 それは軍事オタクに限らず,一般大衆の心理として当然の帰結.

 同様に,の国も,
「俺たちの国民性はこんなもんだから,軍隊の兵士もそんなもんだろう」
って考えるのが当然かつ自然.

 たとえばアメリカの戦争映画なんかでは,
「自由と正義のための戦争をしているはずなのに,いざ従軍するとその正義が何のためなのか,本当に正義なのかわからなくなる」
という,愛国心を信じる(今まで平和に生きてた)純朴なアメリカの若者が,現実と直面して苦悩するのもリアリティだし,
「自国内でさえ人種差別やってるんだから,出生先の異国異民族の敵や民間人を平気で殺戮するような差別主義者も,軍隊にいるのは当たり前だろ」
って感じで,非道を行う兵士が描写されるのもリアリティ.
 ていうか,どっちもアメリカ国内で社会問題になった事実や社会背景をベースにしてるからね .

 中国とかロシアとか,広くて地域性の差が大きい国や,イタリアの各都市,フランスの南部と北部みたいに地域で人の性格に差がある国も,
「○○地方・州の人間は,ああだから,やっおありそうなるだろう」
って考える.
 リアリティというか,納得しうる説得力だな.

 まぁ,良くも悪くも軍人は普通人の集まりだから,ふとした拍子にやっちゃうこともあるだろう.
 アメリカのソマリア民間人虐殺なんて良い例だ.
 とはいえ,比較的安全性の高い「派兵」を心がける自衛隊が,そこまで必要性にかられるってのが,あまり想像できんな.
 そんな現地が緊迫した状況なら,そもそも承認されんだろう.

 しかも自衛隊が専守防衛である以上,能動的に攻撃するような事態が想像しにくい.
 外国への派兵なら前線は当事国の軍隊だろうし,他国が前にいることが前提にあって,それをどういう要因で押しのけるかという辺り,必然性がないとつらいね.

 ただ,人間って普段良い人でも,「赤信号みんなで渡れば」な集団行動だと,案外簡単にモラルハザードに陥っちゃうけどね.
 報復とかの大義名分があれば特に.
 自衛隊のダークサイドを書きたいなら,日本に対して大きな危害を加えた国相手とか,本から孤立してパニクってる部隊とか,指揮官が上手く社会に溶け込んではいるけど実はサイコパスとか,日中戦争やナム戦みたいに,敵側が便衣兵を使って攻勢を掛けてくるとか,それなりのお膳立てが必要だろうね.
(でも自衛隊だと,ある程度旧軍のノウハウもあるから,米軍みたいな無様は晒さないかもなぁ .
 ベトナム戦争では,ゲリラ相手に韓国軍は結構有利に戦えたらしい.
 何でかって聞いたら,
「自国の内戦の経験から割と慣れてるんで」
ったそうだ.
 当時の下っ端程度な韓国兵がそれだけのノウハウを持ってる訳だから,まして皇軍のゲリラ戦に対するノウハウなら…)

 また,過去の日本軍の行動から類推して考えるならば,自発的に戦争犯罪をやりまくるというより,その場ではベターに見えた場当たり的対応が積み重なって,気が付いたら虐殺か大敗北かの二者択一を迫られました,的な展開の方が”それっぽい”と思うなぁ.

軍事板,2010/08/17(火)〜08/18(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 『太平洋戦争のif』(中公文庫)を読んでいたら,秦郁彦教授が,連合軍側潜水艦の侵入路になり得る,南方資源地帯の各海峡に対潜機雷を大量敷設し,機雷堰を敷設すれば
(史実でも研究が行われ,機雷さえ揃えばバシー海峡以外は敷設可能という結果が出たらしい)
WW1による英海軍の機雷作戦から判断する限り,米潜水艦による通商破壊を大幅低減可能だったのではないか,との考察(というか仮説)を出しています.

 そこで質問なのですが,
・史実日本の工業力で実際に数十万個の機雷を生産可能かはともかく,仮に他兵器のリソースに大きな影響を及ぼすことなく,生産・敷設が可能だった場合でも,本当に機能するのでしょうか?
(WW1の戦訓をWW2に単純適用してよいのか?)

・仮に予想通り機雷堰が有効だったとして,米潜水艦隊としてはどのような対策が取り得るでしょうか?

 【回答】
 日本近海の対潜機雷に引っ掛かって沈没した米潜は,結構(といっても全体の1割程度だけど)いるわけだし,米海軍も機雷堰を警戒して新型ソナーを潜水艦に載せてるので,発想としては比較的マトモかもしれない.
 費用面から見ても,機雷は海防艦や航空機よりはるかにコストパフォーマンスがいいわけだから.

 でも昭和20年も半ばになると,さっきいった対機雷用新型ソナーが本格配備されて,日本海にすらバンバン侵入されるだろうし,
(詳しいことが知りたければ「海上護衛戦」読もう)
それを何とかしたとしても,B29が機雷撒きまくるわ,米機動部隊が空襲してくるわで,やっぱり海上交通線は崩壊するだろう.

 また,機雷を用意出来てもそれを敷設する艦が足りない.
 大井篤氏の『海上護衛戦』でも,ストックしている機雷を放出して機雷堰を作れって話が出ているけど,それですら敷設艦が不足してる.
 問題なのは機雷そのものの製造能力より,その機雷を敷設する手が足りないって部分.
 その教授はそこを無視している,あるいは判っていない.

 補給でも同じで,量を揃える事が可能でも,それを必要な場所にきちんと配れるかって部分で,問題を起こす事が多い.
 よく,「なんで無駄死になんかさせる」と非難される玉砕死守命令も,
「撤退できるための輸送舟艇と護衛艦艇があるなら,撤退してるよバーヤバーヤ!」
って面が大きい.
 包囲された島嶼にいる味方を救出するのに,その倍の損害を出す覚悟がいるとかで,割に合わないどころか無益ってんで,結果的に見捨てる事になった島もあったし.

 さらに,機雷の困ったところは敵味方を選ばないことで,本気で封鎖するつもりで敷設すると,自国もその海域をまともには使用できなくなること.
 地雷原と違って地図に書いておけば避けられる,というようなもんじゃないんだ.
 それが対潜用であっても,索が切れて漂流したら,ただの危険物になるから,将来掃海する手間考えたら,なるべく使いたくない兵器なのだ.
 米軍は掃海のことなどまったく考えずに,日本の港湾を封鎖したけど.
(一応,米軍が空中投下した機雷は,カタログ上では設置から2週間で不活性になるように設計されていたがいまだに生きてるのが見つかるらしい)

 というか米潜水艦の本当の脅威は,最終的には機雷敷設で主要港湾を軒並み封鎖されてしまい,国内海運輸送すら不可能になったことだからなあ.
(実際,それを掃海するのに10年以上かかったし,いまでもたまに不発弾みつかる)
 つまり機雷は本気で敷設するなら,自国の海運に影響のない海域でやるものなのだ(笑)

 まあ,局所的な機雷敷設ですらかなりの効果はあったのだけど,残念なことに日本はそれが必要になった時期に,必要なだけのリソースを持ってなかった.
 逆にリソースがあったときは,それを他に使わないと目の前の戦争すら,まともにできない国だったってことだな.

 ちなみに海上自衛隊の掃海能力が,世界的に異常に高く評価されてるのは,米に敷設されまくった当時最新鋭の「掃海不可能な機雷」などを,やむを得ずとはいえ,きっちり処理したという実績によるノウハウが蓄積されているせいでもある.
 その点において,日本よりも実戦経験持っている軍隊は皆無.

軍事板,2010/08/24(火)〜08/25(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 海自ですが,B-29に敷設されまくった機雷の掃海の経験は陳腐化してて,ペルシャ湾で掃海した時に大恥かいたって本当ですか?

 【回答】
 掃海部隊に限らず,自衛隊の問題点の大半は,「予算不足で欲しい物が手に入らない」こと.

 湾岸戦争以前の掃海部隊に問題があったらしいのは事実.
 人員の技量は高かったらしいが,処分具を含む装備が旧式で,いちいちダイバーが潜って処分していたので,効率が悪く危険だったという話.
 すがしま型以降はフィードバックを受けて,欧州系の装備を入れた.
 いきなり探知ソナーやら処分具が欧州製になった.
(今は国産に戻った)
 海自自身がこれはまずいと考えたからこそ,装備品にも変化が出たのだろう.

 もっとも,まず与えられた道具で任務をこなして,事後にはまともにフィードバック・改善が効いてるんだから,対応としては及第点じゃないのかね.
 問題発生の前に予測ができれば完璧だが,なかなかそれは難しいだろう.

 恥だの何だのという議論は不毛.
 旧式装具でも高い技量ってのは,むしろ誇りだわな.
 戦車でも旧式火器管制で,各国参加競技会の成績で世界第1位だし.
 むしろ最新装備使ってるはずの他国こそ,それで負けてるのは恥だろう.

軍事板,2010/08/25(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 シューティング・ゲームとフライトシムは別物

 【回答】
 家庭で手軽に楽しめるレベルである以上,どっちもエンターテイメント.
 違いは,それらしさに重点を置くか爽快さに重点を置くか.
 何十発もミサイルの撃てるシューティングゲームは「娯楽」重視,弾数や燃料が実機データ準拠のフライトシミュレーターは「再現」重視
 コンバットフライトシムを例にあげると,何百回出撃しても並のパイロットじゃ,1機も撃墜できないようなバランスのリアル(現実はそんなもの)を追求したら,ごく一部のマニア以外,誰も買わない.

 本格派シムで難易度設定をリアルにすると,まずエンジン始動,タイヤストッパーの解除から始める.
 単発レシプロ機だと,トルクで真っ直ぐ進んでくれないから,あて舵やトリム調整したり.知識が無いと離陸すら無理.
 そしてマップ表示もないので,無線の指示に従って方位や高度を決める.
 先に離陸したなら,飛行場上空で僚機を待って旋回し続ける.
 敵地で味方にはぐれたら,おおまかな方位や地形を見ながら勘で戻るほかないし.
 そしてMe262のスロットル全開を続けると,エンジンが燃え始める,隼一型で600km/h以上の急降下は死,などの実機の知識が必要.
 知識の無い一般客,完全においてきぼり.

 また,「IL-2 シュトルモヴィク」シリーズは,「何百回出撃しても並のパイロットじゃ1機も撃墜できないようなバランスのリアル」が可能なシム.
 洋上を何時間も飛んだり,全く敵機と遭遇しなかったり.
 ただしエディットで難易度を下げられるので,世界的にはそれなりにヒットしてる.

 まあ,求めるモノは個人が要求するリアルという意味では,シューティングと同種のものだな.
 そのリアルさも,本物の戦闘機なんか触った事さえない奴が,「すげーリアル!」とか狂喜してる程度のもの.
 リアルも何も,単に煩雑な動作を,意味もわからずありがたがってるだけだというのに.
(ただし,本当の航空機の教習用シミュレーターとして使えるほど,本格的に作ってるフライトシミュは実在する.
 日本ではまったくと言っていいほど普及して無いが)

 そもそも,死んでも何の減点もなしに,簡単にやり直せる時点で,もうリアルとは完全にかけ離れてて,どれだけよりリアルに近いかの程度問題にしかならん.
 たとえば「1941」だって,「インベーダーゲーム」に比べりゃずっとリアルだ.
 俺が要求するリアルのほうが高尚だ,みたいな発想がすでに間違ってると思う.
 単にリアルさのレベルが違うだけだ.

 むろん俺TUEE!!の厨房がまざってくると,話はまた別になるのだが,ここはそれを叩くところではない.

軍事板,2010/08/27(金)〜08/28(土)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 歩兵の装備が板金鎧だったり,火薬技術や治金技術などの辺りが16世紀レベルの世界を舞台にした創作上での質問です.
 凄いカリスマを発揮してる皇帝の命令で,可及的速やかに全軍集結出来る感じにしたいと思ってるんですが,500万人の軍隊は,やはり多すぎますかね?
 200万人位の方が良いのかな.

 皇帝がチートで,唯一神の現人神としての霊威(あくまでそういう「権威」)を持ち,哲学・法学・政治学で誰も反論出来ない程にしっかりと理論武装してて,所領を,何の後腐れも無いようにしっかり管理してて……
 全世界の歴代の名君を全て統合して10倍パワーアップさせた程度のスペックがある設定です.

 【回答】
 人口10億人なら単純な人口比で,総兵力500万人の軍というのはアリだろう.
 現代中国の人民解放軍が2〜300万人だ.

 ただし,その国の成り立ちや周辺諸国との関係しだいだが,史実18〜19世紀の政体で,10億人の人口を統一するのはとても難しい.
 絶えず内紛や分裂しようとする動きが出るのではないか.
 16世紀の10億人だと,世界総人口の倍くらいだろうか.

 むしろ国内の統一と治安維持だけで,100万人くらいの(中央政権に強い忠誠心のある)軍や準軍事組織がほしいところだが,技術的な限界から,統一維持は無理な方に賭けて良いかも.

 また,500万人の兵站を維持するために,支える膨大な人口が,そして国土面積が必要になるし,狭い範囲に500万の兵を駐屯しておける余裕は無いから,兵はかなり広範囲に分散して配置する必要が出てくる.
 全軍結集なら200万でもまだ多い.
 ノルマンディー上陸作戦だって300万人なんだぜ?
 ていうか500万の他に,兵站支援の非戦闘職種の兵がいるんだろ?
 全軍で1000万超えるぞ.
 ソ連の戦闘要員が予備役込みでMax300万近かったっけ?
 後方も含めて800万くらいと訊いたことがある.
 16世紀レベルだと,陸200万+海120万に減らしてもヤバい.

 現実的な例だと昔の中国の,全土で戦闘・兵站両職種含めて200万,動員可能兵力最大50万ってくらいの規模が妥当.

 そういや前漢と後漢の間の新という時代に,皇帝が異民族との戦に比喩表現でなく,文字通りに100万の軍勢を動員しようと,全土から兵役と物資を徴集した結果,食糧不足で多くの民が死ぬことになって,ついに飢えに耐えかねた数万の群集が略奪
→家畜も作物も,人間でさえも食う
→食いつくしたので,別の地域を略奪
という人間イナゴな状態になって,大反乱の引き金に…


959 :名無し三等兵:2010/08/31(火) 22:00:36 ID:???

 世の中にはAKDという,中坊の夢の国があってな(笑


962 :名無し三等兵:2010/08/31(火) 22:05:44 ID:???

 ありゃあ文明が発展しまくって,むしろ衰退・下降状態になる人類の末期状態で,なおかつとっくに複数の太陽系に人類が進出・殖民して数千年が経過しており,劇中の人類の寿命も300年くらい.
 クローン技術で,手足失っても気軽に治療できますって世界だから,惑星一つにあった全ての国家を統一した,最強帝国が存在してても何でもありだよ(笑)

 ついでにいうと,石油由来の繊維で出来た服も,
「太古の生物の死骸で作った,臭くて汚いものを着てるとか,なんて非常識な!!」
って言われるくらい,なんか別の素材で衣服を作れる,想像も付かない発展した社会だから.


軍事板,2010/08/31(火)
青文字:加筆改修部分


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