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◆◆国家戦略
<◆中国FAQ
<東亜FAQ目次


 【質問】
 中国の国家戦略の基本軸は?

 【回答】
 川島真〔中国近代史専門家〕は,「近代外交史を支える基本軸」という言葉を使った上で,「3つある」と述べている.
 以下引用.

 第1は中国の統一・国権回収
 第2は侵略と抵抗,
 第3は文明国化と大国化である.
 これらは中国近代史の3ラインと共に,「中国」の村立基盤にも関係する.

 第1の中国統一・国権回収は,例えば敗戦した結果としての条約であれ,また,借款供与の担保として得られた利権であれ,本来,中国のものなのだから返されるべきだというものである.
 したがって,領土・国権が奪われる過程,それを取り戻す過程が,外交史の基軸の一つをなす.
 現在,回収すべき最後の対象は台湾である.
 これは,中国内部では統一問題として認知されるが,この問題の発端は,そもそも日清戦争の結果,台湾が日本領となったことに求められ,それだけに「台独」と日本統治の関係が意識される.

 第2の侵略と抵抗では,侵略に対していかに「抵抗」したか否かが問われる.
 この「踏絵」は,最後にその抵抗を完遂したのが中国共産党だ,という党の正当性にも繋がる.
 ここで抵抗せずに侵略者側に立った者は「漢奸」「売国奴」となり,政府・政権には「偽」が冠せられ,共産党内部の主流に「逆らった」勢力・人物と共に,否定的に描かれる.

 第3は,中国が国際社会の一員として条約を遵守し,国際標準を受け入れてきた過程を強調する,昨今重視される方向性である.
 このような国際強調の結果として,中国自身が国際的地位を向上していくという歴史を描く.

(from 「中央公論」, 2005/7, P.63)

 これはそのまま,基本戦略と読み替えることができるだろう.


 【質問】
 中国の西域経営の基本戦略は?

 【回答】
 古来より,北方の遊牧勢力と南方のオアシス諸国との密接な交渉の間に,東方から中国政府が,その軍事力を動員して無理に市場や交通路の支配を目差して割り込み,中国に活動を集中させようとするものであるという.
 以下引用.

 漢朝はまず河西に出兵してこの通廊を占領し,酒泉を基地化したが,やがて大宛国への遠征を起こして,このとき基地を敦煌に移した.
 敦煌はターリム盆地にとって,その最東端を占める一オアシスである.だから,タクラマカン砂漠の北を通る道を,また南道もこの町に会し,河西通廊を経て中国に向かう.
 この重要なオアシスを基地化したことは,中国が初めて西域に玄関口を開いたことを意味する.
 漢朝の西域貿易が急速に盛大になったことも,また,漢朝が河西に植民を送り込んで,この通廊の経営に努力したことも当然であった.

 はじめ西域の南北道は,ロブ・ノールの東岸で分岐していた.
 だから漢朝は,この湖の南岸や北岸に,また北道が湖北から天山山脈の南麓に達した部分などに屯田兵を配置した.
 遂には,屯田兵を統領する西域都護を烏塁城(今のチャーディル)に駐在させた.紀元前60年の西域都護府の設置である.
 その主要な目的は,オアシス諸国を常に中国に結びつけておき,中国人の隊商を保護することにあり,シルクロードと市場の確保に他ならなかった.
 また,東部天山を越えて南下する匈奴の勢力を,この辺りで断ち切ることも目的とされた.
 中国史を彩る西域経営の始めである.

 ここで特に留意しておかねばならないのは,この現象が従来説かれているような歴史の自然の流れではなく,北方の遊牧勢力と南方のオアシス諸国との密接な交渉の間に,東方から中国政府が,その軍事力を動員して無理に市場や交通路の支配を目差して割り込んだ形をとっていることである.
 シルクロードは既に東トルキスタン諸オアシスの隊商活動によって中国に結びついていたのであるが,それを政治力で支持して中国に活動を集中させようととしたのが西域経営の主旨であった.
 中国歴代政府の西域経営は,全てこのような軍事力の行使と見てよい.

山と渓谷社編「シルクロード1 中国・ソ連・アフガニスタン」(山と渓谷社,1975/6/1),p.94

 現代でも同じ戦略かどうかは未確認だが,私見では基本的には変化ないように思える.


 【質問】
 中国の対東南アジア戦略は?

 【回答】
 資源の安定確保という見方と,覇権を唱えようとしているという見方とがある.

 前者の見方は次のようなものである.

 開放経済で石油需要が高まり,国産石油で賄い切れぬ中国は,中東からのタンカー・ルート確保に強い関心を見せている.

 76-79年にカンボジアを支配した残酷なポル・ポト政権を,中国が積極支援した背景には,カンボジア南端のシアヌークビル港を拠点にして,インド洋での中国船舶の航路を確保する意図もあったと見ることができる.

 ポル・ポト政権崩壊後,すかさず中国はミャンマーに接近,鉄道,港,端などのインフラ整備,さらに南に連なるアマンダン諸島の港湾建設に協力してきた.
 ミャンマーの陸路を使えば,マラッカ海峡経由を最大3000kmほど短縮して,インド洋と中国雲南省を結ぶことができる.
 増強中の中国海軍がミャンマーの港を拠点に,中国船舶保護に当たることも想定される.

(浅井信雄「アジア情勢を読む地図」,新潮文庫,2001/12/1,102-103,抜粋要約)

 中でもミャンマーは,インドと中国が影響力を競い合っているという.
 以下引用.

ミャンマーに急接近天然ガスなど確保狙う中国・インド

 【シンガポール9日勝木晃之郎】インドと中国が天然ガスなど豊富な天然資源を持つミャンマーに接近している.
 九日にはインドのカラム大統領がインドの大統領としては初めてミャンマーを訪れ,軍政最高決定機関・国家平和発展評議会(SPDC)のタン・シュエ議長と会談し,エネルギー分野などでの協力拡大を確認した.
 中国も投資拡大を図っており,人権侵害で国際社会から孤立するミャンマーにとって国境を接する両大国の接近は渡りに船だ.
 カラム大統領はタン議長との会談で,ミャンマー沖で産出する天然ガスをバングラデシュ経由でインドに送るパイプライン計画の推進や,両国を結ぶ船舶航路の再開などを協議した.
 すでにインドの国営石油会社が韓国企業と組んで探査活動を進めており,ミャンマー沖で九百億立方メートル近い埋蔵量を持つ天然ガス田が確認されている.

 インドと並び,ミャンマーの資源獲得に熱心なのが中国だ.
 中国の温家宝首相は二月半ば,訪中したミャンマーのソー・ウィン首相と原油・天然ガスや鉱物資源の開発,中国企業の投資促進などに合意.
 中国はミャンマーから中国雲南省を結ぶ内陸の原油パイプラインの敷設を進める計画で,ミャンマーで産出する原油に加え,中東産の原油をマラッカ海峡を通らずに輸送する構想も進める見通しだ.

 ミャンマーは民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんの自宅軟禁で国際社会から孤立し,西側諸国からの投資や援助が滞っているだけに,経済大国として浮上してきたインドや中国との関係強化は欠かせない.
 特にインドは先に訪印したブッシュ米大統領との間でミャンマーの人権侵害を非難する声明を出しながら,急増する国内エネルギー需要への対応から,経済面で軍政との関係を強化する「政経分離」の姿勢を強めている.

北海道新聞,2006/03/10/01:23

 一方,そのような,「資源の安定確保を図ろうとするもの」と見る見方に疑問を投げかける見解もある.

 本当の意図は,もっと地政学的・権力的なものではないだろうか.
 それというのは問題のアジア権益には地元消費用として地域経済に深く織り込まれているものが多く,おいそれと対中供給源に転用しづらいものが少なくないからである.

 例えばタイ.
 〔中国が買収しようとしている〕ユノカルは,タイ湾上に100基のプラットホームを構え盛んに天然ガスを掘り出しているものの,出てきたガスの大半はタイへ送られ,同国の発電を支えている.
 実際,同社がアジアで掘り出す石油と天然ガスには地元の直接消費用が多く,そのせいで売り値は国際市況価格をそのまま反映したものになりにくい.
 それがユノカルの低利益率につながっているとの見立てがあるほどである.

 そんな権益を手に入れて,中国は資源確保に役立てることができたと言えるのだろうか.
 もし言えるのだとすると,現有鉱区以外の採鉱がよほど成果を上げるのでない限り,タイやインドネシアはいざという時,自分に回るはずのガスや石油が中国へ持っていかれる事態を見越しておかねばならないことになる.

▼海上プラットホームが基地になる日?

 すなわちユノカルを手中に収めた中国は,これら諸国に対して無言の圧力をかけられ,常日頃にらみを利かせる力を手に入れられることになる.
 ユノカルを買うとは,中国にとっては覇権の装置を買うことを意味する.

 またユノカルは,西側による制裁下にあるミャンマーで操業を続けた数少ない米国企業の1つだった.
 これが中国の手中に入ると,ミャンマーを衛星国化しようとしてきた中国にとっては十分の相乗効果を見込めることともなろう.

 そして海上プラットホームに必ずあるのがヘリポートである.
 東シナ海からインドネシア,タイ,ミャンマーにかけてユノカルが持つプラットホームが中国の手中に入り,今後さらに増えていくならば,中国人民解放軍ヘリの寄港地がシーレーンに沿って100の単位で散らばることを意味する.
 これは米第七艦隊が提供し続けてきたシーレーンの守りに対し少なからぬ挑戦を意味しよう.
 それら洋上のヘリポートが構造材の補強によって垂直離着陸型ジェット機の基地にも転用し得ることは,平松茂雄・杏林大学教授がつとに指摘するところだ.

(谷口 智彦=編集委員室主任編集委員&ブルッキングズ研究所CNAPSフェロー
「中国海洋石油,ユノカル買収に向かった深層」

 しかし,米石油大手シェブロンが,180億ドルでユノカルを買収.中国による買収は阻止された.(産経新聞,2005/4/4)

 ……と思いきや,中国は買収額を引き上げて再度参戦.

 ●中国の石油大手「中国海洋石油」が,米国の石油会社「ユノカル」買収に手 を上げています.
 ユノカルについては,米石油会社「シェブロン」が買収する ことで基本合意していますが,買収額を引き上げて参入してきたものです.
 →2005/6/22日にユノカルが「買収提案を受けた」と明らかにしたものです.
 この種のビッグ・ビジネスに関する中国の企業活動は,共産党の指導下にありますので,単なる私企業間の買収合戦と見るのは甘すぎると思います.
 資源確保 のためになりふり構わない中国の姿勢を強く感じます.
 エネルギー事情は逼迫の度を高めているようです.

(おきらく軍事研究会)

 けれど最後に2005/8/2,米石油大手ユノカル の買収を断念.
 今年初めに買収意向を決めていましたが,迅速な対応を取ることなく,共産党と買付資金の手当の相談をしているうちに,石油大手シェブロンに割り込まれました.
 より高い値段で買収する意向を示したシェブロ ンとの間で買収合戦がはじまりましたが,7月頃より米議会から
「エネルギー 安保上,CNOOCによる買収には問題がある」
との反発が強くなってきました.
 ここでCNOOCは,ユノカルに対し「米議会の批判を抑えるよう」求めましたが, この中華的態度がユノカルの経営陣を激怒させ,7/19に行なわれた取締役会で ユノカルがシェブロン支持を決定したものです.

 この件については,当初より民間企業によるM&Aと主張していた中共ですが, お里というものは隠しても隠し切れないものです.

(おきらく軍事研究会)


 【質問】
 「厚黒経」って何?

 【回答】
 「孫子」と言えば,中国には数多の兵法書がありますが,兵法進化論の行き着くところというか,毛沢東が愛読して発禁にした2書があるそうです.

 一つは方位術で「奇門遁甲」ですが,肝心なのは「厚黒経」だそうです.
 今の中国を考えると恐ろしい兵法書です.
 必ず御一読を.

dr-tantan in おきらく軍事研究会,平成20年(2008年)4月7日


 【質問】
 パンダの戦略利用の歴史について教えられたし.

 【回答】
  2008年5月12日付,『AERA』によれば,一説によればパンダの戦略利用の歴史はAD685年ににさかのぼるという.
 中国四川省臥竜のパンダ施設の展示資料には,次のような記述があるという.
「685年,唐の女皇・武則天が生きた雌雄の白熊と毛皮70枚を,日本の天武天皇に贈呈したと,『日本皇家年鑑』に記載されている」
 ただし685年には則天武后はまだ皇帝として即位しておらず,上記は史実かどうか疑わしいという.
 『日本書紀』(岩波文庫版)には,斉明天皇4年(658年),「阿部引田臣比羅夫」が「生羆二つ,羆皮七十枚」を献じたとあり,それが誤って伝わった可能性を,同誌は指摘している.

 一方,同誌によれば1941年,蒋介石夫人,宋美齢がニューヨークのブロンクス動物園に赤ちゃんパンダを贈っており,これが近代におけるパンダの戦略利用の始まりと考えられる.
 第2次大戦後も,ニクソン訪中時に当時の周恩来首相がパンダを贈っている.

 ワシントンのコンサルティング会社「パシフィック21」のディレクターで,中国の「公共外交」に詳しいマイケル・ユーは,
「あどけないパンダのイメージと結びつくことで,中国は対米外交戦略で予想外の成功をおさめた」
と著書で指摘すしており,それは「トロイの木馬」だと揶揄する向きも,米国内にはあるという.
「パンダは中国にとって,もっとも国際競争力のある『商品』なのです」(ユー)

 詳しくは同誌を参照されたし.



パンダきました.
          _         _        _
         /::::::;ゝ-──- 、._/::::::ヽ-──- 、._/::::::ヽ
        ヾ-"´         \::::::|       \::::::|
    フフン  /              ヾノ         ヾノ  フフン
 フフン   ,,.r/     _     _ ヽ_     _ ヽ
       ,'::;'|     ゞi" ̄ フ‐! ̄~~|  | i" ̄ フ‐! ̄~~|  |  フフン
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フフン  |::ヽ` 、   、、、  / "ii" ヽ  /、、、 / "ii" ヽ  /  フフン
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 フフン   `ー--' ヽ:::::::::::l l;;;;::::ノ`' ヽ:::::::::::l l;;;;::::ノ
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 【質問】
 呉邦国とは?

 【回答】
 政治局常務委員兼全人代常務委員長.
 胡錦濤国家主席に次ぐ党内序列ナンバー2

 「現代中国に関する考察」,2008/05/24 20:23付によれば,メドヴェージェフ・ロシア大統領訪中の際,面談者の中に呉邦国がいたことから考えて,ロシア利権を握っているのがこの人物であろうと言う.

 詳しくは同ブログを参照されたし.


◆◆資源戦略


 【質問】
 中国の石油戦略は?

 【回答】
 中国としては,戦前の日本の失敗を研究していますから,米欧の有力者をできるだけ引き込んでおきたいはずです.
 キッシンジャーなんかもそのいい例でしょうね.
 まず,中国海洋石油総公司(CNOOC)には

Evert Henkes
Director at
CNOOC Limited (ADR)
n/a
ENERGY/OIL & GAS OPERATIONS
Director sinceSeptember 2003
60 years old

Evert Henkes served as the CEO of Shell global chemical business from 1998 to 2003. Since joining Shell in 1973, he held various executive positions worldwide, including Managing Director of Shell Chemicals UK Ltd., Managing Director of Shell UK, President of Billiton Metals, Shell's Metals Coordinator, Shell's Chemical Coordinator, and Director of Strategy & Business Services of Shell International Chemicals Ltd. He also served as directors in regional and global industrial bodies, including CEFIC and ICCA. He is also a director of Tate & Lyle Plc, BPB Plc, SembCorp Industries Ltd. and OutokumpuOy.

 および,
Erwin Schurtenberger
Director at
CNOOC Limited (ADR)
n/a
ENERGY/OIL & GAS OPERATIONS
64 years old

Erwin Schurtenberger was the Ambassador of Switzerland to the People's Republic of China, the Democratic People's Republic of Korea and the Republic of Mongolia from 1988 to 1995. He joined the Swiss Foreign Services in 1969. Over the years, he held various diplomatic positions in Bangkok, Hong Kong, Beijing and Tokyo. He also served as the Ambassador of Switzerland to Iraq. He has been an independent business advisor to various European multinationals, American groups and humanitarian aid organizations. He was the President of the Swiss-Asia Foundation. He serves on the boards of directors of ROBERT BOSCH RBint and its International Advisory Board, BUHLER GROUP Switzerland, FIRMENICH-China, TAIKANG Life Insurance, WINTERTHUR Insurances (Asia). Dr. Schurtenberger is also a senior advisor to the China Training Center for Senior Personnel Management Officials. He received a Ph.D. Degree in Economics and was trained in political science and philosophy. Dr. Schurtenberger is presently Chairman of our International Advisory Board.

Kenneth S Courtis
Director at
CNOOC Limited (ADR)
n/a
ENERGY/OIL & GAS OPERATIONS
58 years old

European Institute of Business Administration Master of Business Administration in Finance
Sussex University Master of Arts in International Economics
Kenneth S. Courtis is the Managing Director of Goldman Sachs and Vice Chairman of Goldman Sachs Asia. He specializes in economics and strategy throughout the Asia-Pacific region as well as in Europe and North America. After graduating with honors from Glendon College in Toronto, Mr. Courtis received an M.A. in international economics from Sussex University, England, an M.B.A. in finance and strategy from the European Institute of Business Administration and a Ph.D. from the Institute of Economic and Political Studies in Paris. Prior to joining Goldman Sachs, he served as Chief Asia Economist and Strategist for Deutsche Bank.

 ちなみにKenneth S Courtis はビルダーバーガーだす.

 一方,中国石油(ペトロチャイナ)には,

Franco Bernabe
Director at
PetroChina Company Limited (AD
n/a
ENERGY/OIL & GAS - INTEGRATED
Director sinceJune 2000
55 years old

Franco Bernabh, aged 55, is an independent non-executive director of PetroChina. Mr. Bernabh is the Chairman of the Franco Bernabe Group and Vice Chairman of H3G, a mobile telephone company which owns a third generation mobile licence in Italy. He is also Chairman of Kelyan, an internet professional services company of the Franco Bernabe Group. Mr. Bernabh is a member of the board of FIAT and the TNT Post Group. He serves in the Executive Committee of Confindustria, the Italian Confederation of Industry, in the Board of the Peres Centre for Peace and in the International Board of the World Economic Forum. He also serves as a special representative of the Italian government for the reconstruction of the Balkan region. Mr. Bernabh joined ENI in 1983 to become the assistant to the chairman; in 1986 he became director for development, planning and control; and between 1992 and 1998 was the Chief Executive Officer of ENI. Mr. Bernabh led the restructuring program of the ENI Group, making it one of the world's most profitable oil companies. Between 1998 and 1999, Mr. Bernabh was the Chief Executive Officer of Telecom Italia. Prior to his joining ENI, Mr. Bernabe was the head of economic studies at FIAT. Earlier, he was a professor of economic politics at the School of Industrial Administration, Turin University. Mr. Bernabh has been an independent non-executive director of PetroChina since June 30, 2000.

 このおっさんも,ビルダーバーガーだす.

 つまり中国は,ビルダーバーグ人脈をペトロチャイナと中国海洋石油総公司(CNOOC)を通じて招き入れていることになる.
 うまい!!.したたか.

 理由はあくまでも個人の能力,情報力,政治力,さらには保険的な意味合いもあるんでしょうなー.

 しかし,打診を受け入れるかどうかには,その個人の判断と共に,欧州インナーサークルなり,ビルダーバーグ会議なりの意向が反映されるかもね.
 受け入れれば中国の情報を入手できるわけですから,就任によって相互依存が成立するわけですな.
 ただし,途中で嫌だと言えば関係は切れますが..

 ビルダーバーグが主体的に送りこむというのは,あまり聞いたことがないかも.

 そして,中国はカナダ・ロシアにも触手を伸ばしています.

China's oil sands role tests U.S.
Balancing open markets, secure supply
By DAVE EBNER
Thursday, December 30, 2004 - Page B1

Russia May Offer China's CNPC 20% of Yuganskneftegaz
Thursday, December 30, 2004

(YS)

 また,中国はアフリカでの影響力を拡大させており,米国と戦略上の衝突を起こす恐れがある.
 以下引用.

中国資源外交,アフリカで拡大 テロ支援・独裁国家へ接近

 米国政府内外では,中国がアフリカで石油や鉱山資源の獲得のための活動を急拡大し,とくに独裁国家とのきずなを深め始めたことへの懸念が強く表明されるようになった.
 中国が資源戦略の対象として接近する諸国はみな,米国が独裁やテロ支援を理由に対決を深める国であるため,アフリカを舞台に米中両国の新たな利害の衝突が起きてきたといえる.
 ブッシュ政権の内外ではこのところ,「中国のグローバルな台頭」が真剣な関心の対象になり,世界規模での中国の経済,政治,軍事各面での影響力の拡大が米国と衝突しつつある現状への警戒が発せられるようになった.
 アフリカは,その中国の戦略的な進出がとくに顕著で,しかも米国の利益とぶつかりあう構図が明確となってきた.経済進出でも中国の場合,政府と一体の国有企業が主体で軍事援助などと絡むため,戦略的要素が強くなる.
 中国は自国への石油輸入全体の25%をアフリカに頼り,産油国に多様な形で関与しているが,自国向けの産出を確保する形ばかりで,他の諸国のようにその産油国の生産全体が増し,世界全体への輸出量が増加する形の投資をしないことが特徴だ.

 七月から八月にかけてワシントンで議会下院国際関係委員会が開いた「アフリカでの中国の影響力」と題する公聴会での政府代表の証言や,政府関連研究機関による調査報告を総合すると,米国が懸念の対象とする中国のアフリカ進出の主要な例は次のようになる.

 【スーダン】中国は国有企業の「中国石油」や「中国海洋石油」を通じ総額40億ドルを投資し,スーダンからは輸入石油全体の7%を得ている.中国は技術供与や油田防衛の警備部隊供与から,ダルフールでの虐殺に関するスーダン政府への国連の制裁を弱めることまでを含む,「包括援助」をしている.
 中国は軍事援助をも急速に増やしてきた.

 【アンゴラ】スーダン同様に自国民の人権弾圧を非難される政権は,中国からの石油関連の特別融資総額二十億ドルを受け入れた.
 中国にとってアンゴラは世界第二の石油輸入国で,アンゴラ政府高官用に住宅多数を建造して寄付した.

 【チャド】台湾との外交関係を保つこの国へも,中国は触手を伸ばし,「中国石油ガス」との間で石油共同生産協定を結んだ.

 【ジンバブエ】人権弾圧と独裁で世界的に悪名の高いムガベ大統領に対し,中国は「パートナーシップ」を誇示し,戦闘機十二機を売却した.国連でのジンバブエ非難をも抑えてきた.
 中国はその代わりに,ジンバブエのプラチナ(白金)を独占的に入手できる協定を結んだ.

 【ナイジェリア】中国はこの七月に国有企業の「中国長城工業」を通じて,ナイジェリア政府のために人工衛星を打ち上げると約束した.
 そのための具体的な技術支援は,ナイジェリアの石油と天然ガスへのアクセス権と引き換えのようになっていた.米英やフランスの企業計21社を抑えてのアクセス権獲得だった.

 以上のような中国のアフリカ進出の過程では,独自の経済援助を民主主義の統合とか政府の透明性という条件をつけることなく供与し,相手側が払えなくなると,アフリカ諸国31に対し,総計13億ドルほどの債務放棄をしてきた.

 中国のアフリカへのこうした進出に対し,米国側では
「米国が対外政策では民主化を最大の支柱として推しているのに,中国は米側が敵視や警戒をする非民主的な傾向の強い国々を,とくに選んで接近している」(米中経済安保調査委員会のキャロリン・バーソロミュー委員)
として,米国への正面からの挑戦として受けとめる向きもある.
 事実,スーダンやジンバブエは米国政府が人権弾圧国家とかテロ支援国家と特定するリストに載っている.

(古森義久 from 産経新聞,2005/8/28)

米中摩擦グローバル化軍事,資源…「新冷戦」指摘も

 〔略〕

 ブッシュ政権の中国に対する新たな警戒の姿勢は,八月中旬のライス国務長官の「中国が国際政治で大きなパワーとなったこと」を踏まえての「過大な軍拡」への懸念表明に象徴される.
 中国の軍事力増強については,ラムズフェルド国防長官も六月上旬の国際会議で
「いま中国に脅威を与える国は存在しないのに,なぜ軍拡を続けるのか」
と詰問した.
 軍事面での米側の態度は,七月に中国人民解放軍の朱成虎少将が台湾有事での「米国主要都市への核攻撃」の発言をしたことで一段と硬化した.

 経済や政治にからむ絡む国際戦略面では,「中国のグローバルな台頭や拡張」が,もっぱら米側の政府や議会での論議の主対象となってきた.
 典型的なのは米国連邦議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」が七月下旬に開いた「拡張する中国のグローバルな影響力」と題する公聴会だった.
 公聴会では,中国の最近の石油などエネルギー資源獲得の動きがアフリカ,アジア,中東から米国の勢力圏内の中南米にまで広がってきたことへの米側の対応が論じられた.
.こうした対中認識は,あくまで台湾など東アジアでの米中衝突を論じる従来の構えとは基本的に異なる.

 こうした対中硬化はついに米中戦争の具体的な予測論文にまで発展した.
 米大手総合雑誌「アトランティック・マンスリー」六月号は「われわれは中国といかに戦うか」と題する長文の論文を掲載した.
 同誌の国際専門記者による論文は,米中間ですでに摩擦や対立が構造的に明確となり,グローバル規模の冷戦が始まったことを宣言し,米中の軍事衝突,さらには戦争がどう起きて,どう進展するかを詳述した.
 米国議会下院でも,中国のグローバルなパワー拡大への対処を集中して協議する「中国議員連盟」が六月中旬,超党派の十五議員により結成された.同連盟は「米国の対外関係はイラクの治安維持や北朝鮮の核問題に追われているが,真に取り組まねばならないのは中国のグローバル規模での軍事,政治,経済各面での急速な進出と拡大であり,米国の利害への意味づけだ」と言明した.
 中国がエネルギー資源を求める対外戦略はスーダン,ジンバブエ,リビア,イラン,ミャンマー,ベネズエラなど開発独裁の諸国家ときずなを結ぶことが主体であり,全世界に民主主義を広めようというブッシュ政権の対外政策とは真正面から衝突する.
 〔略〕

(同,2005/8/30)

 【参考画像】
世界の国別石油消費量の推移


 【質問】
 「中国海洋石油」CNOOCがユノカルを買収しようとしている意図は何か?

 【回答】
 谷口 智彦(日経新聞編集委員室主任編集委員&ブルッキングズ研究所CNAPSフェロー)は次のように述べている.

 年明け早々英フィナンシャル・タイムズ紙は,中国の国営会社・中国海洋石油(CNOOC= China National Offshore Oil Corp.=スィーヌック)が,米国石油関連企業のUNOCAL(ユノカル)を買収したがっている模様だと報じた.買収提示金額として伝えられたのは130億ドル(約1兆3650億円).実現すれば中国企業の海外企業買収案件として史上最大となることは言うまでもない.
 その後,買収工作を担当する主幹事金融機関が米メリルリンチ証券であることも明るみに出ている.

 〔略〕

 ユノカルは,2003年8月に英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルと組み,CNOOCとともに上海南方500kmの洋上,2万2000平方kmにわたる範囲の資源開発に乗り出して,日本側関係者の心胆を寒からしめた企業だった.相手が中国だけならまだしも米英企業が北京の味方についたとなると,領土未確定な水域に進出された場合利害がいたずらに錯綜すると恐れられたからだ.
 その点に気づいたか,ユノカルとシェルは2004年9月共同事業から撤退した.
 このたびの買収が成功した暁には,ユノカルが再び問題の水域に戻ってくるのはほぼ間違いあるまい.

 〔略〕

 カスピ海から南下する経路にユノカルが手を染めるかどうかはいざ知らず,いま世界中で進行中のパイプライン事業のうち地政学的に最も波乱含みで,それだけに一番有名だと言ってよいプロジェクトに,ユノカルは当初から加わっている.アゼルバイジャンのバクーを出てグルジアのトビリシを経,トルコのジェイハンで地中海に出るパイプラインのことで,3地点の頭文字を取りBTC計画と呼ばれるものだ(日本からはインドネシア鉱区などを巡りユノカルと年来関係の深い国際石油開発,それに伊藤忠商事が参加している).

 グルジア情勢の安定化と親米政権擁立のため,米国がトビリシにカネと力を注ぎ込んだことは,今や公然の事実だが,ユノカルを手に入れることは中国にとって,カスピ海・コーカサス地方で米国や,BTC計画の推進役で石油大手のBPを抱える英国と並び,一夜にして無視できない勢力となることを意味する.
 ユノカルが持つアゼルバイジャンの鉱区権益それ自体も,決して小さくはない.日産20万バレルを掘り出すカスピ海油田共同事業体の10.28%に当たる持ち分を,ユノカルは持っているからだ.

▼中国流「大東亜共栄圏」?

 ユノカルの資産には北米鉱区が含まれるものの,CNOOCは買収後,これを売却してアジアの鉱区に資源を集中するだろうとの観測がもっぱらだ.
 では,ユノカルが持つアジア資産とは何か?を眺めると,それはインドネシアからタイ,ミャンマーにかけての油田ならびにガス田であって,要するに旧日本軍が進出確保しようとした南方権益そのものと言ってよい.
 言い換えれば中国は,日本が軍事力によって果たせなかった夢をカネの力で実現しようとしているわけである.

「中国海洋石油,ユノカル買収に向かった深層」


 【質問】
 中国は紅海湾岸諸国に対し,どのような連帯強化を進めているのか?

 【回答】
Dubai Inc. in China: A New Vista for Gulf-Asia Relations
「ジェームズタウン財団」:チャイナ・ブリーフ:ドバイ株式会社と中国,ガルフ・中国連帯
By Samir Ranjan Pradhan 29 April 2008

によれば,貿易額が約50%増加し,中国企業の進出,武器輸出を進めているという.

 曰く,UAEの首相で副大統領の,Shaykh Mohammedが3月31日に中国を訪問し胡主席,温首相,習 副首相に面会している.これはここ数年でUAEと中国が経済的な新たな勢力として台頭すべく連携を強めている事の象徴的なニュースであり,
・ドバイと中国の貿易は2002-20007年に47%増大し,石油以外の貿易も42%増大している
・中国の石油企業,建設企業,化学企業がUAEに進出を図り連携を強化する戦略がある
・金融分野でドバイ・中国の連携によるインベストメント・ファンドが設立され開発投資の勢いを強めている
・中国のハイテク企業,通信企業,不動産開発企業などがドバイへの進出,ジョイントベンチャー設立に積極的である
・中国の武器輸出にUAEが協力して,そのビジネス拡大を図る動きがある
・UAEからみると中東で敵対するイランとの対抗上,中国とのビジネス連携を強めるという狙いがある.安価な中国製の武器の供給はUAEから見てメリットがある.
・UAEはインド洋に面する一大貿易基地であり,中国はインド洋へのプレゼンスを高めたい戦略があるので,UAEの極東への影響力拡大の狙いとあいまって,互いに利益のありそうな分野で手を結ぶ動きが顕著になってきている

……という.

ニュース極東板


 【質問】
 中国の原油戦略備蓄計画はどんなものか?

 【回答】
 2006年末より中共政府は原油の戦略備蓄に乗り出す.
 計画によれば2020年までに,輸入量の90日分(約4400万トン)を蓄えるための施設を,沿岸地域の7箇所に建設する.
 建設は〜8年と〜20年の2期に分けて行なわれる.建設予定地は以下のとおり.

・08年までに建設予定の施設の所在地
大連(300万トン.〜08年),
黄島(山東省:300万トン.〜08年),
鎮海(セッコウ省:500万トン.〜06年),
舟山(セッコウ省:〜08年)

・〜20年までに建設予定の施設の所在地
河北省,広東省,海南省

 【参考】中共政府の原油輸入の伸び
00年:約7千万トン
01年:約6千万トン
02年:約7千万トン
03年:約9千万トン
04年:約1億2千万トン
05年:約1億2千700万トン

○参考
「データブック・オブ・ザ・ワールド」二宮書店
「中国,原油を戦略備蓄」【日本経済新聞朝刊】(2006年4月26日)

おきらく軍事研究会,平成18年(2006年)5月1日


 【質問】
 中国の天然ガス戦略は?

 【回答】
 石油から天然ガスの転換を睨んで,中央アジアの天然ガス資源に手を伸ばそうとしているという.
 以下引用.

 中国は石油産出国である.国内に大慶,遼河,勝利,玉門,四川の5油田を擁している.
 だが,玉門を除いて,近年いずれも生産量が頭打ちとなっている.
 また,玉門油田の生産の伸びも大してない.

 そこで,熱エネルギーの石油から天然ガスへの転換が行われている.
 にも関わらず,国内のガス産出量や見込みも十分ではない.
 そこで中国石油・天然ガス集団公司は,中央アジアの天然ガス資源に着目した.
 具体的には,トルクメニスタン共和国南部のソビエト・バード,マリー,チャウジャウの3油田〔原文ママ〕(この3ガス田のすぐ南に,アフガニスタンのシバルガン付近の2ガス田がある)から,パイプラインでウズベキスタン共和国,タジキスタン共和国,キルギスタン共和国,タリム盆地を経て,中国本土へ運ぶというもの.同パイプラインは,山東省の連雲港に達する.

 このガス・プロジェクトには,日本の三菱商事も関与している.連雲港まで到達したガスを,日本へ運ぼうというのである.
 その場合,LNG(液化天然ガス)にするか,生ガスを海底パイプラインで運ぶかの問題がある.
 海底パイプラインでガスを運ぶのは,従来,安全性の面で問題があった.
 だが近年,材質の進歩によって,技術的に解消される見通しとなった.
 〔略〕

 現在のところ,計画には入っていないが,アフガニスタン北部のガス田も,トルクメニスタン南部のガス田と近く,パイプラインを少し伸ばせば,接続も可能である.

 だが問題は,パイプラインの経由地にある.
 途中のウズベキスタン,タジキスタン,キルギスタン,さらに中国西部に,治安維持の面で,パイプラインの安全確保に大きな問題がある.
 すなわち,以上の地域に根を張っている反政府武装組織の存在である.〔略〕
 元から民族が混交している上,スターリン時代,国家安全保障を理由として,カフカス地方からチェチェン民族,メスヘチフ民族,極東から朝鮮民族などが,この地域に強制移住させられている.
 それに加えて,支配民族たるロシア民族の流入政策が採られてきた.

 〔略〕

 宗教面では,ソ連統治時代は,イスラムに対して抑圧政策が採られてきたが,水面下で,民衆の間でイスラムは生き続けられてきた.

 以上のような民族・宗教政策に,貧困も加わって,独裁者スターリン死後の1953年〜54年,中央アジア各地で反ソ連の暴動が相次いだ.
 その鎮圧は,行政警察であるミリツィオネール(民警)では対応できず,内務省の重装備を持つ国内治安軍が投入された.
 〔略〕

(松井茂〔軍事・外交評論家〕著「21世紀のグレート・ゲーム」
光人社文庫,2002/1/18,p.76-78)

 エネルギー源確保にやっきになっている中共ですが,ミャンマーとカザフスタンからの原油パイプラインで陸上ルートを確保しそうです.
 中共国有の石油大手「シノペック」は,ミャンマーから雲南省を経由して重慶市に至る原油パイプラインを建設します.
 シノペックはミャンマーでの油田開発調査にも乗り出しており,3年後には年産100万トン級の油田で生産をはじめる方針です.
 また,「ペトロチャイナ」はカザフスタンと新疆ウイグル自治区を結ぶ原油パイプライン建設に着手しており,これは年内に完成します.将来は04年度の原油輸入の約6/1にあたる年間2000万トンを輸入します.

 ロシアルートでは,シベリアから原油,樺太沖から天然ガスをそれぞれパイプラインで輸入します.
 原油輸入について現在中共は,スーダン,ベネズエラなどとそれぞれ関係を強化しつつあります.

(おきらく軍事研究会)

 トルクメニスタンとの間では,中共は天然ガスパイプラインを建設することで合意しました.投資額は100億ドルだそうです.
 このパイプラインですが,ウズベキスタン,カザフスタンを経由する模様です.

 トルクメニスタンは中共に対し,09年から30年間ガスを輸出します.
 中共企業はトルクメニスタンのガス田開発に参画します.

おきらく軍事研究会,平成18年(2006年)4月10日


 【質問】
 中国の今後の原発開発の計画は?

 【回答】
 メール・マガジン[ 日刊アジアの開発問題 No.161 2007/10/26]によれば,今後の成長に備え,数億KWの能力レベルを予定し,2035年には全電力の10%,2050年には30%になるとの見とおしを立てているという.
 また,ウラン235を使う従来型ではなく,資源包蔵が100倍以上のウラン238を使う高速増殖炉の技術の完成を目指しているという.

 なお,同メール・マガジンは以下をソースにしたとのこと.
三峡ダム:年内目標達成,貯水量66億立方メートル
中国,10月24日14時23分配信 サーチナ・中国情報局


中国,今後の成長備え,原発開発を加速へ
China to ramp up nuclear power

China, RSC


◆◆◆日中関連


 【質問】
 日本の対中戦略はどのようにすべきか?

 【回答】
 短期的にはどうしようもないので,長期的視点から人的交流すべきと,田中明彦〔国際関係論MIT博士〕は述べる.

「東シナ海の資源開発の問題や中国海軍などの動向もあり,政治面では摩擦が続く可能性が大きい.小泉首相が靖国神社に再び参拝すれば,「冷たい関係」は継続し,中国内の「反日的」雰囲気は継続するであろう.
 かなり長い間,参拝しない状態が続けば,ある程度首脳交流などはできるかもしれないが,あまりはっきりとした状態にはならないであろう.
 日中関係は,個別の問題を処理しながら,良好な状態が続いている経済関係に悪影響を与えないで推移させるという程度であろう.
 より長期的な視点で,さまざまな領域での人的交流を深めるといった地道な活動が重視されるべきである.

 とりわけ重視すべきは,東アジアにおける地域協力の枠組みの進展である.
 〔略〕
 中国への経済援助は徐々に削減し,被援助国から「卒業」してもらい,援助する側として日中協力ができるような環境ができると良いと思う」

( from 日本経済新聞,2005/01/07,p. 31,抜粋要約)

 米国議会の政策諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」の委員ラリー・ウォーツェルによれば,日本は中国へ自分の意図を明確に伝えるべきだという.

〔略〕

――では日本に対し,同盟国の米国としてどんな対中政策を推薦するか?

「対中外交を改善し,拡大するには,第一に日本政府は尖閣を含む沖縄など自国の領毎,近海に正当な安保上の利益を有することを,中国側に明確に伝えることだ.
 この日本の正当な安保上の利益の範囲には,台湾海峡の平和や安定も含まれる.
 第二には日本は東シナ海の海底エネルギー資源を平和的に開発するための合意を,中国側に求める意図を強調すべきだと思う.
 第三には,日本側は過去の歴史の一部についての反省や謝罪を明確にしたうえで,首相が戦争での自国の犠牲者の霊に弔意を表すること,つまり靖国神社に参拝することへの意思を明示すべきだ.
 小泉首相は中国からの圧力で靖国参拝を中止するようなことはすべきでない」

(古森義久 from 産経新聞,2005/9/27)

「皮肉なことに,チャイナ・クラッシュ〔中国のバブル崩壊〕が発生して初めて,日中はお互いが大切なパートナーと悟るかもしれない」
と述べるのは山崎養世(やすよ)〔経済評論家〕である.

 日本の支援がなければ,中国はバブルの処理ができないだろう.さらに日本の省エネ・環境技術も不可欠だし,地域の生活格差を小さくしながら成長する方法も,日本から学ぶ点が多いのではないだろうか.
 一方,財政赤字と少子高齢化,一向に変わらない東京一極集中と高コストに悩む日本にとっても,中国は大切な生産基地だ.
 そして,今や中国が最大の貿易相手国でもある.
 日本の国連安保理の常任理事国就任のためにも,北朝鮮の核問題の解決のためにも,重要な国は中国だ.

〔略〕

 そして,日本が今,中国に要求すべきなのは情報公開である.
 バブルの問題に限らず,経済,さらに,歴史や社会の問題で,事実を中国内外に知らせるよう要求することは,中国国内の心有る人達の共感を呼び,また,世界からの支持を得易い国家戦略だ.
 正しい情報が伝わることが,パンドラの箱からあらゆる禍禍しい物が飛び出した後に残る「希望」になるだろう.

( from 「中央公論」, 2005/7, P.59)

「脅威を感じたら対決するというのでは知恵がなさすぎる.真に脅威を覚える大きな存在とは,まず友好を求めるべきである」
と述べるのは五百旗頭真(いおきべ・まこと)である.

米中両国と協力目指せ,「脅威」とは友好を

 〔略〕

 近代日本は猛然と西洋文明の力の秘密を学んだ.優れた外部文明に学んで自己改革し,それでいて自立性を失わない.それが日本の得意芸である.
 いにしえの中国文明に対しても,近代の西洋文明にも,その手法をもって日本は成功した.
 今年百周年を迎える日露戦争の勝利は,日本が開国後わずか五十年にして近代化に成功したことを実証した.
 それは非西洋社会も,近代化さえ遂げれば西洋列強と肩を並べられることを,世界に知らせる意味を持った.

 それはよい.
 問題は,世界の列強の一つ,アジア唯一の帝国となった日本が道を誤り,よきリーダーとなれなかったことである.
 世界的に帝国主義は第一次大戦後に下火となった.
 そのころアジア諸国もナショナリズムにめざめた.
 中国は英国や日本が獲得していた権益を奪回しようとした.
 これにどう対するかが,日本にとって存亡のかかる大問題となった.

 一言でいえば,日本と同じく自立と発展を望むようになった近隣諸国のナショナリズムを,日本は受けとめることができなかった.
 逆に,日本の正当な既得権に対する悪しき挑戦者と認定した.「暴支膺懲(ようちょう)」のスローガンに示されるように,周辺国の愛国心を力によって粉砕する道へのめり込んだ.
 それが日本を終わりのない戦争と滅亡へと導き,戦後も長くアジアに恨みを残す結果となった.

東南アジアとは「静かな和解」

 戦後の日本は,戦前の悲劇的ジレンマから解放された.
 「富国」を「強兵」によって支えねば生きて行けないとの強迫観念にとりつかれていた戦前と異なり,戦後は安全を米国の「強兵」に委ね,日本自身は「富国」を追求する経済国家となった.
 もはや他国に刃を向けることはなかった.経済的利益を追求する平和的発展の国となった.
 それは敗者の宿命や,冷戦下の対ソ安全策という面もあった.
 しかし吉田首相は,自由主義的な経済国家として再生する強い希望をもって,戦後日本を染め上げた.
 それが定着したことは,東アジアの国際環境に長期的意味を持った.

 一九六〇年代に奇跡の経済成長を遂げた日本に,米国は目を細めたが,アジアの反応は冷ややかであった.自らに戦災を及ぼしながら,さっさとアジアで独り豊かになる日本を不信の目で見ていた.
 七四年に田中首相を襲った東南アジアの反日暴動は,講和と賠償が済んでも,心の和解は遠いことを告げた.
 対日不信は過去の構図が将来にも続くとの想定に立脚していた.
 「経済的大東亜共栄圏」と当時言われたように,強者となった日本経済が東南アジアを犠牲にして拡大することを当然視していた.

 七七年に福田首相はマニラのASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議に招かれ,「福田ドクトリン」と呼ばれる演説を行った.
 それは日本が「軍事大国とならない」と告げ,「心と心のふれあう」友好を求め,東南アジア地域への経済協力を行って安定と繁栄に寄与することを約した.
 この言葉が,その後四半世紀の日本の行動であった点で注目される.
 翌年から三年間で,日本のODA(政府開発援助)は倍増し,その多くが東南アジアに注がれた.
 石油危機からよみがえり,工業生産競争力において世界最強となった日本経済は,アジアに恩恵をもたらした.
 拡大する貿易と直接投資とODAによって,強い日本経済は東南アジア諸国の工業化と輸出立国を後押しした.

 戦前の日本帝国はアジアから惜しみなく奪い,アジア諸国が自らと同じ発展を遂げることを許さなかった.
 戦後は違った.自らと同じく東アジア諸国が工業製品を輸出して富を築くよう支援した.己の欲した経済発展を隣人たちも達成するよう助けた.九七年の東アジア経済危機に際しては,日本自身が「失われた十年」の最中にあり金融危機に頻していたにもかかわらず,タイ,インドネシア,韓国などに多大の援助を提供した.
 このころには東南アジアに日本の戦争を責める声は聞かれなくなっていた.日本の存在をうとむ声はなく,日本がもっとリーダーシップを発揮しないことが問われるようになった.
 日本は東南アジアとの間で「静かなる和解」を遂げたのである.それは過去についての謝罪を繰り返すことによってではなく,彼らの発展に寄与,つまり彼らの現在および将来を支えることを通して達成された.

残るは対中関係 対決姿勢は誤り

 〔略〕

 残るは中国である.中国に対しても,日本は経済発展を後押ししようとした.ケ小平が文化大革命を収拾し「改革開放」路線を打ち出した七八年,日本は中国と平和友好条約を結び,翌年大平首相は対中経済協力協定を結んだ.以後二十年余,やはり貿易,直接投資,ODAによって日本は中国の経済発展に寄与した.
 その心は,革命運動に荒れる中国ではなく,国際システムの中で成長し,国際社会の中で信頼され重きをなす中国の台頭である.
 私見では,この日本の対中策はかなりの成果をあげた.
 現在の北朝鮮や,七九年のイラン革命によって原理主義に傾いた中東イスラム社会と比較してみるがよい.
 中国は堅実な国家建設を続け,東アジア全域が経済発展にいそしむ地域となることを決定づけた.

 ただ中国は難しい.日本による戦災が断然重かっただけではない.抗日戦争の中で革命中国が生まれた.人民中国にとって,愛国・建国と抗日・反日はコインの表裏をなしている.
 それゆえ,他国のように時間が戦争と反日を和らげるとは限らない.
 建国教育・愛国教育が改めて反日を再強化することもある.
 東アジアの二大国としてのライバル性も否定できない.
 中国が軍事力の効用をなお重視する大国であることも重い.
 サッカーファンやインターネットの反日運動,海洋でのエネルギー開発,外洋調査船,潜水艦の領域侵犯などを受けて,中国を潜在敵のように見る日本人もいる.
 九八年に来日した江沢民主席が日本の過去を糾弾して以来,日本国内の一角には反中強硬策を推進する勢力が生まれた.
 毅然たる対中対決姿勢を要求する声が日々に高い.

 けれども日本が中国と対決に向かうのは大きな誤りである.
 脅威を感じたら対決するというのでは知恵がなさすぎる.真に脅威を覚える大きな存在とは,まず友好を求めるべきである.
 日本を破壊する能力を最も持つのは米国であり,次いで長期的に中国である.
 戦後日本は米国との間に友好関係を築くことに成功し,安全と繁栄を手にした.日米同盟は今後とも決して見失ってはならない資産である.

 しかし米国との同盟をたのんで中国などに粗い対応をしていると,アジアでの活動に困難をきたし,いつか米中双方からうとまれる事態を招こう.
 とりわけ東アジア首脳会議開催が合意され,東アジア共同体が討議される今日,日本はアジアでの存在感を喪失してはならない.
 米中両国と協力できるか否かが,二十一世紀の日本の運命を左右するであろう.

( from 日本経済新聞,2005/2/9)

 具体的に「どうせよ」というのが示されていないのが,この論の弱いところだが.


 【質問】
 日本の対中ODAは,中国の軍事力増強にも貢献したのか?

 【回答】
 古森義久は,「そうだ」と主張する.
 以下,引用.

「1997年八月,米国の国防大学戦略研究所が中国の軍拡に関する論文集を出した.
 鉄道,自動車道路,空港,通信網などが戦闘能力の強化にどれほど寄与するかが詳述されていた.
 日本のODAがまさに,建設に投入されるインフラだった.

 論文の作成にあたった専門家の一人は
『中国軍は,核ミサイルなどの主要兵器を内陸の山岳部に配備し,有事に沿岸部にすばやく運ぶことが死活的に重要だから,日本のインフラ建設援助は,中国軍の総合軍事能力をまともに増強することとなる』
と警告した.
 その年の十二月,台北で李登輝総統に会見した.李氏は日本の対中政策に触れ,
『日本のODAも結構だが,中国軍の台湾攻撃能力を高める,福建省の鉄道建設援助だけはやめてほしい』
と懇請した.

 一方,日本の外務省は
『中国全土の電化鉄道の四割は,日本の援助で建設された』
などと宣伝し,軍事寄与への警戒はゼロであることを露呈していた.
 福建省では七十億円を確かに鉄道建設に供していた.
 中国全体では九千億円などというすごい巨額を五年一括で献上し,中国側の示すインフラ建設のリストをそっくり受け入れていたのである.

 〔略〕

 その後,北京に住み始めてからの対中ODA調査の結果は,驚きとショックのみだった.
 日本がこれだけ熱を注ぐ援助も,中国側は国民には知らせず,日本側に感謝もせず,軍事への寄与が明白な一方,無駄が多い.
 私はこの実情をくわしく報道した.
 そんな形のODAは日本の国益という観点からは停止が望ましいとも主張するようになった.
 対中ODAが続いたそれまでの二十年近く,日本の対中政策の大黒柱であるはずのこの経済援助は,日本側ではだれも欠陥や問題を指摘することがないという歴史も知るようになった.
 これほど大きな課題が,論評や言及されることは皆無のままだったのだ.

〔略〕

(from 産経新聞,2005/03/19)


 【質問】
 日本の対中ODAは中国人にどの程度知られているのか?

 【回答】
 約2割にしか知られておらず,中国国民は日本を軍国主義だと思っている.
 以下引用.

日本の経済援助78%知らず軍国主義と中国市民

 【北京23日共同】北京大と日本の民間団体などが23日発表した世論調査で,中国市民の78%が日本の対中経済援助を「知らない」と回答,日本の対中経済協力は中国で一般にほとんど理解されていないことが明らかになった.
 調査は,北京大と学識経験者らを集めた日本の民間非営利団体(NPO)「言論NPO」,中国英字紙チャイナ・デーリーが実施.日中両国で,それぞれの国のイメージなどについて聞いた.

 それによると,中国市民が日本の政治について持つ印象は
「軍国主義」(60%)
「民族主義」(50%)の順.
 逆に日本人が持つ中国政治の印象は
「共産主義」(72%)
「軍国主義」(36%).

 また,日本の対中経済援助について,中国市民の78%は「知らない」と回答.大学・大学院生に限って聞いた場合は76%が「知っている」と答え,知識層と一般市民の間で認識の違いがあった.

(共同通信,2005/8/23)

 なお,産経新聞報道によれば,中国自身,近隣国へ「ODA(政府開発援助)」を実施しているという.
 以下引用.

外貨準備,世界一中国「ODA」攻勢へ 近隣国囲い込み狙う

 中国政府が実質的に世界一に躍り出た外貨準備高を背景に,中国版「ODA(政府開発援助)」を積極化させる動きが二十日,明らかとなった.
 中国輸出入銀行を通じた融資と自国の産業支援を一体化した大規模な基金の設立が検討され,「潤沢な外貨準備の活用で近隣諸国への経済外交の強化を図るのが狙い」(国際金融筋)とみられる.
 〔略〕

 国際金融筋によると,中国の経済計画を立案する国家発展改革委員会のシンクタンクの報告書の中で,中国は潤沢な外貨準備を活用した還流基金を創設し,十三の隣国に中長期の借款を供与して社会インフラ施設の整備支援を提言していることがわかった.
 しかも,借款の半分は,中国企業による設備と技術の購入にあてる“ひも付き契約”を求めており,同筋は
「自国の産業支援と資源エネルギー獲得が目的.援助と輸出,投資を一体化し,貿易投資を強化している」
との見方を示している.
 基金構想は資金貸し付けだが,中国政府は国家発展改革委,商務部,外交部,人民銀行などの責任者で構成する外準還流基金の取締役会と理事会を中国輸出入銀行に設置できるとし,ここを実行部隊とする可能性が高い.
 中国輸銀の昨年の輸出額は前年比33%増の約九百十七億元(約一兆二千八百億円)で,基金が実現すれば,近隣諸国への影響力拡大は必至だ.
 日本や米国などのODA供与とは,OECD(国際経済協力開発機構)開発援助委員会(DAC)に属する先進国が,一定の所得水準以下の開発途上国に有償,無償の援助を行うと同時に,軍事転用を防ぐため援助国もDACの審査を受ける.
 中国はODA被援助国であって通常のODAはできないが,北朝鮮などアジアやアフリカ諸国に無償援助を行うなど,中国版「ODA」の供与実績を重ねてきた.

  中国の外貨準備高は今年六月末で七千百五十九億ドルだが,千二百二十億ドルの香港を含む合計は八千三百七十九億ドルで,八千三百四十億ドルの日本を抜いて実質世界一となった.
 巨額の対米貿易黒字を稼ぐ一方,人民元の対ドル上昇を抑えるため,人民元を売ってドルを買う市場介入を続ける中国は,五年後に外貨準備高が約一兆二千億ドルになるとも試算される.
 来年から始まる経済社会発展の「第十一次五カ年計画」でも,外貨準備の効果的運用が課題とされる.
 〔略〕
     ◇
中国輸出入銀行
 1994年4月,中国国務院直属の3つの政策銀行のひとつとして政府100%出資で設立.翌年に中国政府による開発途上国への対外援助実施機関として業務を開始した.
 中国政府低利借款のほか,中国企業の国際展開を支援するため,プラント設備輸出などを行う輸出金融,一般投資・資源開発などにかかわる海外投資金融などを行う.

産経新聞,2005年11月21日


 【質問】
 2005年4月の中国の大規模反日デモは,軍事的には何を意味しているのか?

 【回答】
・台湾有事の問題に絡むという見方が出ている.
・背景には反日教育や排外体質があるとも見られる.
・ただし一連の件は,逆に中国のイメージ・ダウンになっただけの可能性も高い.
・しかし,いずれにせよ,10年先,20年先を考えると,中国の反日を放置するのは,日本の安全保障にとって好ましい話ではない.

◇     ◇     ◇

 デモでは「日本の安保理常任理事国入り反対」が声高に叫ばれている.
 そして,シンガポールのリー・クアンユー顧問相は,「中国が日本の国連安全保障理事会常任理事国入りに反対する理由は,日米両国が二月に今後の日米同盟の指針となる共通戦略目標として,台湾海峡問題を掲げた点にあると喝破した」(産経新聞)という.
 以下,続きを引用.

 2005/4/16付のシンガポール華字紙,聯合早報によると,リー顧問相は「(共通戦略目標では)米国と中国が台湾問題で衝突した場合,日本は米国を支援する」ことになり,中国にとって「警戒水域を越えたことを意味する」と警鐘を鳴らした.
 日中関係悪化の背景には,中国側が主張する歴史認識問題だけでなく深刻な安保問題が横たわっているというわけだ.

(藤本欣也 from 産経新聞,2005/4/19)

 これを裏付けるかのように,「中国当局がデモをコントロールしていた」という説も出ている.
 宮崎正弘は,以下のように述べている.

上海「反日デモ」当日のための公安当局の指示書が発覚
当局が高校,大学,各種学校を巡回してデモの参加を要請していた

 上海での「反日デモ」は4月16日だった.
 事前に当局が周到に作戦を立てて,動員を大学,高校および各種学校に要請していた事実が判明した.

 まず集合場所として@人民英雄記念碑前とA「人民広場」に集合と書かれている.
 コースは@南京路へ向かいAの人民広場で合流し,延安路から日本領事館へ.」
 延安路は人通りの少ない,クルマ専用道路といってよく,平行しての銀座通り(ハイファイチュンルー), 江沢民別邸(衛山路)を大きく迂回している.多国籍企業が蝟集し,外国人が多いためである.
 これが「自発的」の実態である.

 さらに当日の「注意事項」がちゃんと指示されていたこともわかった.

 それによると
@飲料水など各自が用意し,
A日本製品を携帯しないこと.
B貴重品も持参せず,
C排便を済ませておくこと.
Dとくに日本製デジカメ,形態,パソコン,ラジカセ,ウォークマンを携帯するな.
E出席をとるので筆記用具を持参しなさい.
F領事館前では投石をしてはいけない.
G小泉のポスターを踏みつけ,国旗を焼くライターなどを持参しなさい.
Hシュプレヒコールは「日本製品を買うな」「歴史教科書改竄抗議」「日本製品排斥,国産品愛用」「日本の国連常任理事国参加反対」「釣魚島を取り返そう」など」.

 くわえて細心の注意事項が追加添付されており,それらは
@日本の右翼を支持する友人を呼ばない
A付近の日本商店やレストランに投石するな
B国旗を焼くときは自分の衣服に燃え移らないように気をつけよう.
B警備の警察の指示にしたがえ
C上海の国際都市イメージを保持するため,リーダーの指示に従って整然とデモ行進を
D以上を踏まえ広く友人の参加を呼びかけてくれたまえ!」
 などと詳細にインストラクションがなされていた.

 4月9日の広東省深センでのデモは「武装警官が市民に変装しての行進」だったことがすっぱ抜かれたが(『大紀元』,4月10日付け),上海も基本の動員が巧妙になされていたことが判明したのである.

(「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」,2005/4/21 )

 また,服部健治は,次のように述べる.

 首相の靖国参拝や尖閣諸島の領有権,歴史教科書などの問題は以前からあり,デモが暴徒化する説明にはならない.
 中国政府がこの時期に暴徒化を黙認したのは,
「日本の国連安保理常任理事国入りの問題で民衆の反対が強烈なので,反対せざるを得ないのだ」
というポーズを取る狙いがあるのではないか.
 だとすれば,秋の国連総会に向けてデモは断続的に続くだろうが,それを過ぎれば沈静化に向かう.

 ※はっとり・けんじ 大阪外大卒.南カリフォルニア大学大学院修了後,財団法人
日中経済協会に入会.日中投資促進機構北京首席代表など北京駐在歴は10年以上
.平成13年から愛知大現代中国学部教授.専門は中国産業論,対中投資論.

(産経新聞,2005/4/19)

 濱本良一〔読売新聞元中国総局長〕も,ほぼ同じような見解である.

 中国政府の立場に立ってデモ騒動の引き金となる状況を再構築してみると,次のようになろう.

 (1) 国連改革の動きに乗じて安保理常任理事国入りを狙う日本に対して,中国政府は日本の要求を拒否する言い訳となる国民の声,明確な態度表明が必要になった.
 日中関係は悪化していたほうが,反対し易いのは,自明の理である.

 (2) 米国と連携を深め,日米同盟史上初めて台湾問題を取り上げ,同海峡の「平和的解決」を「共通の戦略目標」とした日本は,中国にとって最大の切り札となる台湾との武力統一カードを潰そうとする動きに出ており,小泉政権を強く揺さぶる必要を感じた.

 (3) 中国指導部の再三に渡る反対要求を無視して靖国神社に参拝し続ける小泉首相に圧力を加えるため,靖国参拝非難を一段と強化する必要性が生じた.

 (4) 日本の過去の対中侵略の歴史を改竄しようとする歴史教科書の修正を日本政府に迫ることで,更なる日中摩擦を演出できる.

などの4つの要因が複合的に絡み合っていたが,最大の狙いは(1)と(2)だった,というのが,複数の中国消息筋の一致した見解だ.

 〔略〕

 中国語に「指桑罵槐」という表現がある.桑を指して槐を罵る.
 中国にとって仕掛け易く,世界にもアピールできる靖国問題で小泉批判を展開するが,本当は日本の安保理常任理事国入りに反対表明が可能となる環境を醸成しているのである.
 そう解釈すれば,中国がなぜ今この時期に,ことさら日本叩きに執心するのかが分かる.

(from 「中央公論」, 2005/7, P.73-74)

 4月最初の終末となった2日から3日にかけて,湖南省長沙,四川省成都,広東省深●,福建省アモイで街頭での抗議署名集めや集会などが開かれた.
 〔略〕
 この頃までに「新浪(sina)」「捜狐(SOHU)」「網易(Net Ease)」の中国3大ポータル・サイト上での署名集めは1000万人を超え,中小規模の様々なサイトでも署名活動が繰り広げられた.
 中国では党・政府を批判する反体制分子や違法組織「法輪功」などのウェブサイトや個人メールは徹底的に強制削除しており,日本叩きの署名活動を中国当局が容認していたことになる.
 重複分を差し引いても「4177万5000人」(5月下旬現在,GA〔在外華人系組織グローバル・アライアンス〕集計)という膨大な署名が集められた背景には,中国当局の容認がある.

 4月9日の北京の日本大使館へのデモ隊の攻撃や,同16日の上海での日本総領事館への攻撃では,いずれも警備に当たる武装警察官達は,ペットボトルや生卵・石などを投げ込むデモ参加者達のそばで傍観しており,不法行為を取り締まる様子は見せなかった.

(同, p.77)

 ●=土へんに川

 米国議会の政策諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」の委員ラリー・ウォーツェルの見解.

――中国が日本への非難を続けるという形での日中関係の悪化が懸念されているが,第三者の米国の中国専門家としてその原因をどうみるか?

「中国政府はここ一年はどの日本の安保関連の政策に対しいらだち,反発している.
 第一は日本が昨年末に米国との共同のミサイル防衛開発を決めたこと,
 第二は今年二月に米国との共同戦略目標として台湾問題の平和的解決への期待を明言したこと,
 第三には日本の国連安保理常任理事図入りへの動きだといえる.
 これら原因が合わさり,中国側は日本の安保政策への対応を見直し,不満を表明するようになったのだと思う」

(古森義久 from 産経新聞,2005/9/27)

 一方,中国動揺説を唱えるのはアーミテージ前国務副長官である.彼はこれを,反日デモ過熱直後の呉儀副首相側の会談キャンセルの際に述べている.

日本の対応で中国側動揺とアーミテージ氏指摘

 米国のアーミテージ前国務副長官は28日,都内の学習院大学で講演し,中国の呉儀副首相が小泉首相との会談をキャンセルして帰国した問題について,「非外交的な活動」と中国側を批判するとともに,日本側の毅然(きぜん)とした対応が中国側の動揺を誘ったとの見方を示した.

 アーミテージ氏は,「長年,中国が日本の『戦争における過ち』を取り上げると,日本は『政府開発援助(ODA)をもっと出しましょう,申し訳ない』と謝ってきた」と指摘したうえで,「今回,中国は同じシナリオを使おうとしたが,日本は『お詫びはした.今は新しい時代で,前に進まなければならない』と頭を下げず,中国側は『違った反応が出てきた』と混乱した」との分析を披露した.

 〔後略〕

(読売新聞,2005/5/28)

 ただし,渡辺修※2は,こうした見方に慎重である.

 反日デモの背景を理解するには,もう少し分析が必要だ.
 不満が歴史認識なのか国連安保理問題なのか,生活の不平に対するはけ口なのか,判然としない.
 (デモは)日本についてあまり知らない内陸部からも発生している.
 反日言動が匿名性の高いインターネットからで,なぜ今発信されるのかとの問題も残る.
 ※2わたなべ・おさむ
 昭和39年,東京大学法学部卒後,通産省(現・経済産業省)入省.
 平成9年同省事務次官.
 14年から日本貿易振興機構(ジェトロ)理事長.
 小泉内閣の対外関係タスクフォース委員.

(産経新聞,2005/4/18)

 もちろん,この背景として,中国での反日教育がある.
 外交評論家,岡本行夫※3は,次のように述べている.

 中国で,戦争を直接体験した世代よりも若い人たちに嫌日感情が強く6割が「日本は嫌い」と答えるのは,教育の所為以外の何物でもない.
 中国の学生たちは日本人が2000万の中国人を殺したと教育される.
 当時の江沢民主席は1998年に早稲田大学で,日本は中国の軍民3500万人を死傷させたと演説した.
 論争を避ける日本政府は,こうした数字に抗議しないから,ますます中国人にとってこの数字は正しいものとなる.
 父母の時代に2000万人殺されたと信じれば,その加害国との友好など,どの国の若者にとっても笑止千万の話だろう.
 日中は,米国とイラン,インドとパキスタンのように,ほとんど不倶戴天(ふぐたいてん)の敵同士となってしまう.
 悲観論者はアテネとスパルタと言うかもしれない.

 1972年の日中国交正常化からの経緯をよく知る人たちが,専門知識の故に,見失うことがある.それは,今や反日感情は,これまでのような「循環」ではなく,拡大深化する「趨勢(すうせい)」であることだ.

 第一に,組織的な愛国反日教育は94年から行われ,反日感情の再生産は今も続いている.
 学校ばかりでない.中国各地に抗日記念館の建設が続き,日本軍の残虐行為の展示を,全国で年間に何百万人という小中学生が見る.
 この累積的な効果が,いまや臨界点を超えてしまったのである.

 第二に,1999年秋から中国で急膨張を続けるインターネットの伝播(でんぱ)力がある.壁新聞の時代とは違う.
 以前から,中国のインターネットに「日本製品ボイコット」の語が登場する規模を検索してきたところ,結果は
去年の9月が28万ページ,
今年2月が39万ページ,
そして現在が80万ページだ.
 日本の安保理常任理事国入りに反対する署名サイトもいくつもできた.署名は秒単位で増加し,途方もない数になっている.

 第三に,経済が大躍進し宇宙開発にも成功する中国で,若者の誇りと自信は年ごとに,ナショナリズムを高めている.

 もちろん小泉首相の靖国参拝,尖閣や海洋権益を巡る日中の衝突,中国人の自国政府への不満の高まりなどの最近の事象も反日感情を加速化しているが,何よりも,ここ10年以上の「趨勢」が背景にあることが基本構図である.

 趨勢である以上,中国に「感情的にならずに冷静に」と呼びかければ済む話ではない.
 ※3 91年外務省を退官し岡本アソシエイツを設立.橋本内閣および小泉内閣で二次にわたり首相補佐官.外交評論家.

(産経新聞,2005/4/20)

 しかし一方,川島真〔中国近代史専門家〕は,中国における反日教育は江沢民体制になってから始まったものではない,と述べる.

 考えなければならないのは,中国自身の国家形成過程である.
 「中国」が中国として自らを認知したのは,実はこの1世紀,あるいは僅か150年前のことである.
 それ以前は「清」「天朝,聖朝」あるいは「華」であり,今のように「中国」という自称が用いられていたわけではない.
 いわゆる「中国ナショナリズム」は20世紀の産物であり,王朝史ではない「中国史」という歴史の語りも20世紀初頭の産物である.
 この「物語」が形成され,「中国」それ自体が形作られる過程で,「敵」であったのは,まさに「中国保全論」から突出しようとしていた「日本」であった.
 〔略〕

 この20世紀初頭の「中国」形成期から,「侵略・抵抗」に基く中国近代史叙述がなされており,中華民国前期(北洋政府時期)の教科書においても既に日本を敵として描き,教員の使用する教授用教科書では,より強い日本への敵対,中国ナショナリズムが示されている.
 民国後期(国民政府期),戦後台湾の歴史教科書においても,それが継承された.
 「反日」教育があるとすれば,それは江沢民,あるいは中国共産党が「発明」したものではなくて,むしろ20世紀を通底する中国の歴史認識・歴史教育の基礎的内容だという事になる.

 だからこそ,日中間の歴史教科書問題,歴史認識問題もまた,なにもこの20年の産物ではなく,20世紀を通底する問題なのである.
 例えば教科書問題についても,実は1915年,1919年などには,日本側から中国側に「排日教材」についての抗議がなされていた.
 これは教育だけに突出したものではなく,中国で活発になる「排日運動」(日貨ボイコットなど)の一環として語られていた.
 中国側は,日本側の指摘した教材が,教育部の許可した教科書ではなく,副教材であることなどを理由にして,問題化することを忌避するが,問題は次第に深刻化した.
 1932-33年にリットン調査団が,事件調査に伴って包括的な近代日中関係史を調査すると,教科書問題が取り上げられ,議論されることになった.
 ここでは,中華民国側も日本の教科書を精査,その中に中国への誤解・蔑視・反中的な文脈があるとし,日中双方が互いの教科書を反日,反中であると非難することになった.
 国際連盟では,この教科書問題と共に,歴史認識もまた議論された.
 日中間の歴史認識はすでに1930年代初頭において大きな問題となり,田中上奏文と共に議論の対象となっていた.

 ここでは,今年〔2005年〕百周年を迎えた日露戦争についての応酬を紹介したい.

 中華民国の代表は顧維鈞.顧は述べる.
「日本は絶えず支那の無秩序を訴えながら,而(しか)もその統一を妨害する政策をとっている」
と非難した後,日本の「大陸政策」について以下のように述べた.
「日本の膨張政策の何たるかを理解することが必要である.
 これは日本側の所謂大陸政策で,北は北支那,南は南支に進出することである.
 この政策は既に,豊臣秀吉が明の征服を企図したに始まり,……これ等の歴史的事実は今日の日本の対支及対大陸政策に多いに関係がある.
 ……之によって見れば,日本の大陸政策は支那より始まる.
 日清戦争による遼東半島,台湾の割譲の主張,琉球諸島の奪取,日露戦争による南満の占領と朝鮮の併合,……1915年の21箇条要求,東部シベリアよりの撤兵遷延,1927-28年の済南占領,及び今回の事件(満州事変――筆者注)は皆,以上の立場から説明し得られる」

 日本代表は松岡洋右.松岡はこれに反論した.
「日本は支那の統一を妨げたと言うけれども,支那共和国を救ったのは日本である.……孫逸仙博士が日本に亡命し来た時,日本は彼の南京臨時政府が危殆に瀕するのを救う為めに三百万ドルを貸し与えた.
 ……日清戦争の結果,李鴻章は南満を日本に割譲する下関条約に調印すると共に他方,露仏独3国をして所謂三国干渉を行わしめ,戦争の結果を奪い去らしめた.
 ……ロシアは南下し,南満はもちろん朝鮮国境にまで迫った.
 日本は余儀なく戦い,満州の地を取り戻し,それを支那に返した.我々は数十万の生霊を失い,20億円の負債を残した.
 この犠牲に対して感謝の一言くらいあって然(しか)る可(べ)きである.
 ……然るに吾々は,満州に何等の権利なき者の如く,又侵略者の如く取り扱われた」(「国際連盟に於ける日支問題議事録 後編」 国際連盟記録刊行会 1933)

 顧維鈞は,
「松岡氏は,日本に大陸政策なるものなし,日本は如何なる国よりも平和を好む国民であり,取るよりも多くを与えていると断言されたが,琉球諸島,台湾,朝鮮および今回の満州,これ等は今日誰の手中にあるか,松岡氏はこれを言わなかった」
と述べた.

(from 「中央公論」, 2005/7, P.65-66)

 毎日新聞は,中国人の排外主義体質を指摘する.

 日中の反日デモ外交は,日本が国連安保理の常任理事国になるべきか,いけないのかを世界にアピールしあう宣伝戦でもある.
 常任理事国入りを中国人は「入常」と略す.日本の「入常」がいやな中国は,愛国デモで国民が反対してます,と世界に訴えている.
 「愛国」カードは,世界に通用するカードだ.日本が他国の愛国教育に文句を付ける道理はない.
 しかし,今回の反日デモは愛国かもしれないが,投石などの行動は,理性に欠けた排外的な人種差別感情の発露だ.レイシズム(人種差別)なら,世界の同情は得られない.

 上海では,デモの群衆が日本料理店に激しく投石し,日本酒のびんをたたき割った.
 日本車を運転していた中国人女性に,「売国奴」と怒鳴りながらファックを意味する指サインを突きつけ,車をひっくり返そうとしたと,香港紙の記者が現場ルポしている.
 暴徒はデモの約2割だったという.
 各地のデモで主催者が用意した横断幕やプラカードには「日本ブタ」「日本イヌ」「小日本(日本人に対する差別語)」の文字が見えた.「殺光小日本(日本人皆殺し)」まである.

 無意識のうちに中国人の深層心理にある排外的民族主義に火が付いた.民主化運動の天安門事件と違う.

 清朝末期に,外国人を襲った義和団運動が起きた.中国人は体内にある排外主義のDNAを「義和団コンプレックス」と呼んで,実はとても気にしている.
 「人民日報」が,デモの過激化を抑えようとする論文を発表した.「我が民族の素養」という言葉がある.世界から「中国にはまだ義和団のような暴徒がいる」と思われたくないのだ.
 中国外相は愛国主義批判には反論しても,人種差別に知らんぷりはできなかったろう.

(金子秀敏論説委員,毎日新聞,2005/4/21)

 もし台湾有事に絡んだものだとしても,今回の件は国際的には,むしろ中国にとって逆風となる可能性がある.

「『日本がスケープ・ゴートにされた』とする正確な分析は欧米のメディアに多い.
 反日デモの本質は反政府,反共産党である,とする解説が日本以外には蔓延している」
と宮崎正弘は述べる.(「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」,2005/4/19)

 また,「歴史教科書の記述がおかしいのは,逆に中国のほうだ」という報道が,アメリカの複数の主要メディアで報じられている.

 米紙ワシントン・ポストは18日,「中国の身勝手な記憶」と題して,中国が日本に「歴史を直視する」ように求める一方で,自らは権力維持のため恣意(しい)的に歴史を解釈していると指摘する論評を掲載した.
 筆者は,かつて同紙の北東アジア総局長(東京)を務めたフレッド・ハイアット論説面担当部長.
「中国では歴史解釈はひとつしかなく,変わるのは共産党がそう決めた時だけだ」と前置きし,日本では,教科書問題などをめぐり「新聞や雑誌,大学の場で,開かれた議論が行われている」現状と対比した.

 さらに,中国の教科書が,3000万人が飢饉(ききん)などで命を落としたとされる毛沢東の大躍進政策の失敗には全く触れていないことや,天安門事件については
「(共産党)中央委員会が適時に対処し,平静を取り戻した」
としか記述していないことなどを紹介.
「権力維持のため歴史を利用する独裁体制では,開かれた論争により歴史解釈が見直され真実に近づくという希望は持てない」
と,中国の“歴史悪用”を批判した.

 さらに論評記事は,中国共産党が,「アジアで先導的な役割を果たす上で,日本を便利な悪役に仕立て上げる」以前には,ロシア批判を自己正当化の道具としていたと指摘し,「来年は米国の番かもしれない」と警鐘を鳴らしている.

 一方,同日付のロサンゼルス・タイムズ紙社説は,
「中国は日本が帝国主義に戻らないことを知っており,歴史問題は日本を威圧するためのこん棒」との見方を示した.その上で,「共産党指導部を最も当惑させるのは,日本による真の謝罪」であり,日本は過去の清算に踏み切れないことで「敵の手に落ちている」とする論旨を展開した.

(読売新聞,2005/4/19)

中国の歴史教科書が書かないこと

中国・上海(AP) 中国の歴史教科書には書いてないことがいくつかある.
 たとえば1989年の民主化運動.あるいは中国共産党の失敗がもたらした飢饉(ききん)で死亡した数百万人のこと.
 あるいは中国が攻撃を開始した中印紛争や中越戦争のこと.

 中国政府と,中国で反日デモに参加する市民は口々に,日本政府が検定で合格させた新しい歴史教科書が従軍慰安婦問題など旧日本軍の悪行を隠蔽していると批判している.
 一方で,中国で使われている歴史教科書は,共産党体制下の自国の歴史や周辺国との関係について,相当部分を省略している.

 米メリーランド・アナポリスの海軍士官学校で歴史を教えるマオチュン・ユ教授は,
「中国でナショナリズムが高まる中,ナショナリズムの要請に応じて歴史を書き直し修正する動きが,国中でさかんになっている」
と指摘する.

 中国の歴史教科書の主題は,中国人民がいかに日本など諸外国にひどい目に遭わされたかという国家的被害者意識を強調すると主に,1949年に政権を握った中国共産党を礼賛し,反政府の声を一切切り捨てることだという見方をする専門家は多い.

 中国の教科書は,抗日戦線など日本をはじめ諸外国との戦いで死んでいった者のことを,国のために「崇高な犠牲をはらった」者として称えている.
 教科書には,中国人が外国の侵略者に抵抗する姿などを描いたプロパガンダ画が使われている.
 教科書に掲載されているこの図とよく似た姿で,反日デモに参加した若者たちは日本大使館や総領事館などに投石していた.
 中国随一の国際都市・上海で使われている8年生の歴史教科書は,日本人のことを繰り返し「日本鬼子」という蔑称で呼んでいる.
 この教科書は日本軍による残虐行為に焦点をあて,1937〜45年の日中戦争で中国人3500万人が犠牲になったという中国政府の公式見解を繰り返している.
 教科書には,「日本軍は行く先々で放火し殺害し盗み略奪した.連中が行わない悪行などなかった」と記述している.

 この教科書はさらに,中国はとりわけ1949年の共産党政権発足以来,侵略者では決してなかったというイメージを強調するため,重要な歴史上の事件を省略している.
 たとえば教科書には,1962年に中国人民解放軍の攻撃で始まった中印国境紛争についての記述がない.
 中国政府と友好関係にあったカンボジアにベトナムが侵攻し,ポル・ポト政権を崩壊させたことへの懲罰的意味も込めて,中国軍が1979年にベトナムを攻撃した中越戦争についても,何も触れていない.
 このほか,中国の歴史教科書には──
・1989年の民主化運動と天安門事件.
・1958〜61年に農工業の大増産政策として毛沢東政権が導入した「大躍進政策」.経済混乱と飢饉につながり,中国国内の3000万人が餓死したとされている.
──の記述がない.
 また歴史教科書は,朝鮮戦争の開戦のきっかけについて,中国の友好国・北朝鮮が1950年6月に38度線を越境して南側に侵攻した事実に触れず,単に「内戦が始まった」と書くにとどまっている.
 また,米国が中国領土を侵略しようとしたため,中国はやむなく介入せざるを得なかったという説明をしている.
 7年生の歴史教科書では,朝鮮戦争で米軍が生物兵器を使用したと断定.これは中国や北朝鮮,旧ソ連政府が一貫して主張したことだが,立証はされていない.

 英オックスフォード大学の中国専門家シンミン・ショー氏は,日本の教科書が歴史を歪めているのは,自分たちの恥を受け入れたくないからのように見えるが,中国による歴史の改ざんは共産党体制の維持が目的のようだと指摘.
「(中国にとって)過去を認めないのは,計算された政策だ」
とショー氏は話している.

(CNN日本語版,2005/4/18)

 さらに古森義久によれば,日本側の主張への関心が,アメリカでは高まっていると言う.
 以下引用.

米マスコミ 「歴史問題」…日本の主張,関心高まる

在米大使館抗議,3回とも掲載
 【ワシントン=古森義久】
「日本は過去の戦争行動の責任を受け入れていない」
というような不正確な日本の「歴史認識」糾弾の記事類が米国の各新聞に四,五月に出て,在米日本大使館が二週間に三回の抗議の投書をしたところ,そのすべてが掲載された.
 この種の投稿が短期間にせよ,皆載るのは例がなく,米国マスコミが歴史問題での日本側の主張に従来より真剣な関心を向けるようになったともいえそうだ.

 ワシントン・ポスト五月二十六日付に在米日本大使館の広報担当の北野充公使の「日本の過去に直面する」と題する投稿が掲載された.投稿は同紙の同十四日付に載った東京発記事への抗議だった.
「日本が戦時の天皇に栄誉をささげる」
という見出しの同記事は,四月二十九日を「昭和の日」にするという日本の国会の決定を報じ,
「この動きは,日本の軍国主義的過去を美化する最近の措置の一つ」
とか,
「戦後の平和主義からの離反の一環」
と断じていた.
 同記事はまた,
「日本のアジア侵略をごまかす教科書が,新たに承認された」
とか
「日本は第二次大戦で失った島や領海の返還の要求を始めた」
とも伝えていた.

 この記事に対し,北野公使の投稿は
(1)「昭和の日」は昭和時代全体への懐古であり,過去への反省
(2)日本は戦争放棄の憲法を有し,軍事大国にならない政策を保持している
(3)日本は戦争で失った領土の返還は一度も求めていない
−などと述べ,元の記事の主要部分を否定していた.

 ワシントン・タイムズ五月十六日付も同公使からの投稿を載せた.
 この投稿も同紙四月三十日付のポール・グリーンバーグ記者の「南京『事件』の騒ぎ」というコラムへの抗議だった.
 このコラムも
「日本の教科書は南京大虐殺を単に事件と呼び,大量殺人を否定する」
とか
「日本はドイツと異なり,過去の残虐や侵略を完全に認めたことがない」
などと記していた.

 北野公使の投稿は冒頭から
「グリーンバーグ氏は,日本の教科書や過去への認識についてほとんど理解していない」
として,日本の教科書はみな南京での虐殺に触れており,日本の首相は歴代,侵略行動への謝罪を表明してきたことを強調した上,
「同氏が日本を『道義的な記憶の喪失症』と断じることには事実の裏づけがない」
と反論していた.

 同公使の投稿は,五月十四日付のボルティモア・サンにも「日本は第二次大戦での役割について謝罪した」と題して掲載された.
この投稿は同紙が四月二十五日に載せた
「日本はドイツのようには罪を認めていない」
という解説記事への反論だった.

 在米日本大使館関係者によると,同大使館では以前から米側のこの種の記事に投稿という形で反論や抗議をしてきたが,その投稿が実際に掲載される比率は三分の一以下だった.
 今回のように二週間以内に送った三通の投稿が全て掲載されるという前例はないという.

 その背景として同関係者らは
(1)日中の今回の摩擦で,「歴史問題」の重要性が米側でもより大きく認識されるようになった
(2)従来は中国側の主張が米側で採用されることが多かったが,今回の中国での反日デモの無法性などにより,日本の主張への関心が高まったとみられる
−という点を挙げている.

(産経新聞,2005/6/5)

 サミット前の協議でも,中国に対して逆風となった模様.

「中国加入」協議せず サミット 反日デモ,各国に悪印象

 七月六日から八日まで英国・スコットランドで開かれる主要国首脳会議(グレンイーグルズ・サミット)で,サミットへの中国の正式な参加問題に関する本格的な協議は見送られることが一日,明らかになった.
 英,仏,独,伊など主要国(G8)の多くが,高度経済成長を続ける中国の正式参加に前向きな姿勢を示していたが,今年春に中国国内で吹き荒れた反日デモの影響で,政治体制が違う中国を正式メンバーに加えるのは時期尚早との判断が主要国間に強まったためだ.

 複数の外務省筋によると,今年に入って本格化したG8の事務レベルの協議で,中国の正式参加問題が取り上げられたという.
 しかし,「歴史問題」を理由とした中国各地の反日デモで,中国政府が当初,デモを厳しく取り締まる姿勢を見せなかったことで,中国の正式なサミット参加に前向きな姿勢を見せていたG8各国に,
「国際ルールを無視する中国をサミットの正式メンバーとして迎えることへの抵抗感が一気に広がった」(外務省筋)
という.

 中国の参加問題をめぐっては,今回のサミットで議長を務める英国のブレア首相が昨年六月に米国で開催されたシーアイランド・サミット終了後の記者会見で
「サミット改革の中で新たにどの国を招請するかについて話し合われている」
と述べ,中国などを念頭に新たな加盟国を検討する考えを示したほか,イタリアのベルルスコーニ首相は
「世界経済に大きな影響を持つ国との対話なしに,サミットの討議を進めることには意味がない.
 G9とかG10という考えもある」
と,中国などの加盟が必要だとの認識を示していた.

 中国は二〇〇〇年の沖縄サミットで,日本からのオブザーバー参加の打診を拒否したが,二〇〇三年にフランスで開かれたエビアン・サミットで,胡錦濤国家主席がG8首脳と発展途上国首脳との対話に出席するために,初めて参加した.
 今回のサミットにもブラジル,インドなどの首脳らとともに参加する.
 ブレア首相が議長を務めるため,当初,中国を正式メンバーとして認めるかどうかの議論が行われるとの見方が強かった.

(産経新聞,2005/7/2)

 中国政府が,当初のデモ黙認姿勢から,デモ鎮静化へ方針転換したのは,ある意味必然だったと言えるだろう.

 デモの今後だが,前出の服部健治は「デモが長期化することはない」と述べている.

 反日デモを受け中国国内で日本製品の不買運動が本格化するという見方については否定的だ.
 不買運動は一般庶民にそれほど浸透しないはずだ.
 内陸開発,東北部(旧満州)の振興に日本の支援が欠かせないので政府も奨励しないだろう.

 中国生産の日本製品には,台湾や中国企業の部品も多く使われている.
 不買運動で困るのは中国側メーカーや従業員で,その点を政府関係者は痛いほど理解している.

 デモが今年いっぱい続くことはないだろう.
 長期化すれば日本からの投資が冷え込む懸念があり,日本国内の「嫌中派」が増えるのも得策でない.
 〇八年の北京五輪への影響のほか,欧米に「中国は非近代的」との見方が広がる可能性もあるからだ.

(産経新聞,2005/4/19)

 同じく前出の渡辺修の見方.心理不安の面を彼は指摘している.

 この三年ぐらいで,日系企業と中国企業の「工程分業」が進み,部品や半製品の相互やり取りが必要不可欠となった.つまり緊密度の高い分業体制が出来つつある.
 こうした構造は簡単に変えられず,反日デモが直ちに日系企業の活動や投資活動に大きな影響を与えることはないだろう.

 しかし,中国の過激な反日行動への心理的な不安が,ジワリと重苦しく広がりつつある.出張中止など,何らかの動きが日本企業の一,二割に出ている.
 中国国内では,日本製品の引き揚げや取扱店で客から暴行や暴言を受ける被害が報告されている.
 より大規模な不買運動に広がれば,直接の売り上げにも影響が出るのは必至だ.
 反日風潮が強まり,社会的な批判を恐れた中国企業が,日系企業からの部品調達も控える事態になれば対中投資そのものに響くだろう.

 外国人の安全やビジネス環境を守るのは法治国家の基本.
 中国当局からこの件で明快な発言がないことは極めて遺憾だ.
 上海のデモでも一部,過激な行動が放置されたが,世界に与える中国のイメージが傷つくことは避けられない.

(産経新聞,2005/4/18)

 今後,日本はどのようにすべきか?
 渡辺修は,「中国には健全な世論が育っていないので,直接対話が重要」だと主張する.

 国際摩擦の解決には通常,新聞や学識者といった健全な世論の存在がある.
 しかし,中国にはそのような世論がない.
 このため,直接に本音をぶつけあう対話がより重要となる.
 民間も,中国での知的財産権の侵害をもっと訴えるなど,主張していくべきだ.

 中国の若者を修学旅行などで受け入れれば,日本が軍国主義に向かっているといった観念的に教わってきたことと現実の違いが見えてくるはず.腰をすえて大規模な若い世代の相互交流を図らないと,相手の国を見誤ってしまう.

(産経新聞,2005/4/18)

 岡本行夫は,
「このまま放置すれば,10年後,20年後には,嫌日感情の強い世代が中国の政府,軍部,社会を支配する.日本の国家安全保障に直結する事態となる」
と警鐘を鳴らしている.
 そして,その上で,「最悪のシナリオを双方が認識し,それでいいのかと問うことから始めよ」と述べる.

 ここまで日中関係が来てしまった以上,日中双方が考えるべきことは「日中友好」などという,通り一遍の言葉ではない.
 逆に,国際社会で日本を孤立化させようとの今の中国の目論見も百害あるだけだ.
 最悪のシナリオを双方が認識し,それでいいのかと問うことから始めよう.

 日本側では,60周年の今年も,95年同様に総理談話を出すべきだろう.
 過去は消せないにせよ,歴史と教科書を日中が共同で検証し,せめて1980年代の日中関係に戻すための戦略を日中で考えよう.
 中国にその用意がないのであれば,東アジアの将来は暗い.

(産経新聞,2005/4/20)

 また,以下の事例からも,過去の戦争に絡んで日本を非難できるなら,中国政府は「何でもアリ」だということが分かる.

「侵略を美化」と批判・両陛下の訪問で中国紙

 【上海28日共同】天皇,皇后両陛下のサイパン訪問をめぐり,中国各紙は28日「侵略を美化する」などと批判する記事を掲載した.共産党機関紙,人民日報は報じていないが,上海紙の新聞晨報や北京紙の北京青年報,新京報など大衆紙に批判的な論調が目立つ.

 新聞晨報は,天皇は「殺人者」と「被害者」への対応を区別すべきだと指摘.
「先の大戦によって命を失った全ての人々を追悼する」との天皇の言葉が「侵略者を美化する言葉で,歴史に対する正確な認識と反省を欠いている」と批判した.

 新京報は,天皇が慰霊する戦死者は
「靖国神社の戦犯と同じ穴のむじなだ」
と断じ,天皇の慰霊の旅が
「小泉純一郎首相の靖国神社参拝に大きな支持を与えることになる」
とする日中関係研究者の見方を紹介した. (23:03)

(日経新聞,2005/6/28)

 【質問】
 日本で中国大規模反日デモのお先棒を担いだ団体はあったか?
 【回答】
 「ピースボート」がデモ行進を行っている.
 共同通信によれば,そのデモは以下のようなものだったと言う.
「中国の反日デモは侵略戦争を反省しない日本政府の責任だ」
と訴えるデモ行進「緊急ピースマーチ」が2005/4/22,市民団体ピースボートの呼び掛けで東京都内で行われた.

 チャイナドレスなどアジアの民族衣装に身を包んだ女性ら約70人が参加.
 ピースボートの共同代表,野平晋作さん(40)が
「ジャカルタの日中首脳会談で小泉純一郎首相は謝罪してほしい」
とあいさつした.

 参加者は,中国が「侵略戦争を美化している」と反発している扶桑社の中学歴史教科書について,「検定合格の撤回を!」と書かれた看板などを手に,東京都港区の芝公園から約2キロを行進した.

 東京HIV訴訟原告の川田龍平さん(29)も参加し,
「国の責任が曖昧にされてきた点で薬害エイズ問題と同じ.政府は戦争責任について何が悪かったか明らかにしてほしい」
と訴えた.

(共同通信 from 産経新聞,2005/4/22)

 世界を船で回ったからと言って,視野が広くなるとは限らないようで…….

 【質問】
 日本の歴史認識や小泉首相の靖国参拝が,中国を硬化させ,日中関係を悪化させたのでは?

 【回答】

▼ 鳴霞によれば,それはウソだという.

――――――
鳴霞
 〔略〕
 12億人の中国人のうち7億人は北京語を理解できず,3億人以上は小学校を卒業しているかどうかさえ疑問で,2億8000万の家庭のうち半分以上は全く新聞,雑誌を読まず,1億人以上は自分の名前すら書けない,といわれているんです.
 つまり,中国人の多くは靖国神社がどういうものか,知るはずがないんです.
 だから,中国政府の
「中国人民は小泉首相の靖国参拝を怒っている」
との声明は嘘です.

――――――『SAPIO』 2005/8/24-9/27号,p.12

 米国議会の政策諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」の委員ラリー・ウォーツェルによれば,歴史問題・靖国問題は単なる口実であり,中国は日本が米国の堅固な同盟相手である限り,さらに日本が台湾の安定や尖閣諸島の日本領としての平和を自国の安全保障の主要な利害の対象とみなす限り,日本への不満を多様な名目をつけて,ぶつけ続けるだろうという.
 以下引用.

――日本の歴史認識や小泉首相の靖国参拝が中国を硬化させ,日中関係を悪化させた,という主張が日本側にあるが?

「歴史問題や靖国問題は,実際には日本の安保関連の政策決定への不満を表明する手段にすぎないと思う.
 歴史や靖国は,中国が日本の弱点を突き,日本は道義という面でも国際的に低い立場にあると思わせる口実だろう.
 中国は歴史認識に関しては当初,日本へ反省や謝罪を求め,日本側で小泉氏を含む歴代首相や天皇が謝罪の意を表明すると,今度はそれでは不十分だと主張する.
 この態度の変化を見ても,中国の『歴史認識非難』は単なる対日攻撃手段であることが明白だ」

――首相の靖国参拝については?

「小泉首相が靖国参拝の中止を言明すれば,日中関係が改善されるという見方にはまったく同意できない.
 中国は日本が米国の堅固な同盟相手である限り,さらに日本が台湾の安定や尖閣諸島の日本領としての平和を自国の安全保障の主要な利害の対象とみなす限り,日本への不満を多様な名目をつけて,ぶつけ続けるだろう」

(古森義久 from 産経新聞,2005/9/27)

 ちなみに,中共の前国家主席・江沢民の言葉を集めた本が10日から発売された(全3巻)が,このなかには,
「日本に対して台湾問題を深く徹底的に話さなければならない.歴史問題は終始強調しなくてはならず,永遠に話さなくてはならない」
「日本政府による歴史教育が不十分だから,国民の不幸な歴史に対する知識は極めて乏しい」
という文句がある.

おきらく軍事研究会,平成18年(2006年)8月14日

▼ ポール・スティーブンスも,おおむね似たような認識である模様.

――――――
 先代ブッシュ政権で国防長官補佐官などを務め,日米関係にも詳しいポール・スティーブンス氏が論評した.
「中国が小泉首相の靖国参拝を叩くのは,日本の弱みとなる歴史問題を使って日本を威嚇し,日本を国際的に劣等,かつ弱体な立場に抑えつけておくことが真の狙いだろう.
 アメリカでは私自身を含めた数の国民が,南北戦争の南軍のロバート・E・リー将軍の墓地を慰霊のために訪れるが,その意図は南軍が結果として守ろうとした奴隷制を支持することなどではなく,リー将軍の武勇を讃え,霊を慰めるということなのだ.
 靖国参拝にも似た部分が多いのではないか」

――――――古森義久 in 『SAPIO』 2005/8/24-9/27号,p.36

▼ また,以下のような要因を指摘する者もある.
 それによれば,
 ・中国のネット掲示板が,いたずらに人を煽る仕組みになっている
 ・有人宇宙船打ち上げ成功などによる大国意識から,侮日感情が起こっている
のだという.

------------------
 一連の反日デモと共に存在感を見せているのが,過激な言葉が綴られるネット掲示板と,数千万単位の票を集めたと喧伝される「常任理事国入り反対書名」だ.

 しかし実は,中国のネット掲示板には,ユーザーが書き込みをしたくなる仕掛け≠ェ存在する.

 例えば,掲示板に何か書き込むとしよう.
 そのためには,まずユーザー登録を行う.
 登録後はその人物の「名前」(ハンドルネーム)と「ポイント」が公開されるが,この「ポイント」が曲者なのである.
 このポイントは書き込んだ回数に応じて加算される.
 ポイントを稼げば稼ぐほど,自分がそのサイトの「常連」だということをアピールでき,掲示板内の他の利用者から一目置かれる存在となる.
 また,そのポイントを換金したり,バナー広告を出す権利などと替えることもできる.

 そうやって掲示板利用者は常に何か書き込みたい気持ちにさせられるのだが,そこで恰好の材料となるのが「日本」.
 反日ムード全盛の中,書けば書くほど読者に喜ばれ,喜ばれるために過激なことを書く.
 中国の3大ポータル・サイト(日本のヤフーやグーグルに当たる)「新浪網」「網易」「捜狐」ではトップページに「反日掲示板」を大きく掲載し,ネット利用者を反日に誘導している.
 その結果,インターネットを通じて一気に反日運動は中国全土に広がった.

 ネット上で展開されている,日本の常任理事国入り反対署名活動もしかり.
 彼らが数千万人集めたと自画自賛していても,この数字をそのまま鵜呑みにしてはいけない.

 3大サイト・トップページの最も目立つ最上部に置かれた「署名サイト」.
 クリックすると,署名者リストが最新のものから並べられたページに切り替わった.
 署名方法は実に簡単.
 名前を入力し,国籍を選択し,あとは署名ボタンを押すだけだ.
 同じパソコンから同じ名前を何度入力しても「エラー」となることはなく,いい加減な名前を入れてもボタンを押せば,それで署名者リストに加わる.
 あまりにいい加減なシステムなので,筆者は試しに,プロ野球各球団名や有名俳優を入力した.
 投票者の実数は公表数字の何分の1,何十分の1,それとも数百分の1か.
 「反日の正体見たり」といったところだろう.

―――米山龍=中国在住ITライター in 『SAPIO』,2005/5/11号,p.9
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 中国で暮らす私の親しい日本人たちに,今回の反日騒動について尋ねると,
「近年の対日感情は反日というよりも侮日というのが実態に近い」
との答が異口同音に返ってくる.
 躍進する経済を背景にした自信からか,これまでの対日コンプレックスの裏返しとして,日本への侮蔑感情が急激に表面化しつつある.
「中でも一昨年の有人宇宙船の成功がターニング・ポイントになっている.
 日本は実現していませんしね.
 日本など問題ではない,中国はついに米国,ロシアに次いで世界第3位の大国になったのだ,との優越感が蔓延した」(日本大使館筋)
 夜郎自大な中華思想が広がっているのである.

―――青木直人 in 『SAPIO』,2005/5/11号,p.11-12


 【質問】
 胡錦涛は,対日関係悪化による中国経済への影響を心配していないのか?

 【回答】
 統計的事実から見て,対日関係が悪化しても経済には影響しないと考えている模様.
 以下引用.

 中共の経済が,客観的に踊り場にさしかかっている上に,中共の平均的な人々が経済成長の恩恵に全くあずかっていないと感じているとすれば,共産党の権力維持に黄信号が灯っていることになります.
 そんな時に,胡錦涛政権が日本との経済関係を悪化する懼れがあると思っておれば,政治面において,日中を一層離間させる,靖国問題の蒸し返しを行うはずがありません.

4 絶好調の日中経済関係

 しかし,昨年来の日中政治関係の悪化(注4)にもかかわらず,日中経済関係は一層緊密化しています.

 (注4)昨年4月には,昔からの歴史認識問題に加え,日本の国連安保理常任理事国入り問題や領土問題ないしエネルギー資源問題があって,反日行動が起きた(コラム#687,689〜700,702〜707,712,713,717,718,721).

 2005年の日本の対中共直接投資は自動車やエレクトロニクス関係企業を中心に,その前年に比べて19.8%も増え,史上最高の65億米ドルに達しました(注5).

 (注5)2005年の中共への外国直接投資総額は約600億米ドルだった.

 その背景には,中共はこれまで,低賃金が売り物の日本の企業の生産基地であったところ,最近では,その巨大な消費者を当て込んで日本の企業が製品を売り込む先になりつつある,という実態があります.
(以上,http://news.ft.com/cms/s/8c91360e-c2fe-11da-a381-0000779e2340.html
(4月4日アクセス)による.)

 中共の人々の対日感情も,一層好転しています.
 中共当局のお声掛かりがあったと思われますが,3月半ば,中共の中央テレビ(CCTV)の海外ドラマチャンネルのゴールデンタイムに日本ドラマ「白い巨塔」が登場し,大ヒットしたほか,上海の地方局では「女系家族」が放送され,これも大人気になりました.
 昨年の4月には,日貨(日本製品)排斥運動参加が呼びかけられていた中共のインターネットでは最近,日本ドラマへの熱烈な賛美があふれており,「もう韓流は終わり,これからは日本ドラマだ」という声まで出ています.※
(以上,http://www.sankei.co.jp/news/060405/kok006.htm(4月5日アクセス)による.)

 ですから,胡錦涛政権としては,日中政治関係が一層冷え込んだとしても,両国の経済関係に全くマイナスの影響はない,とふんだに相違ないのです.

太田述正コラム#1167(2006.4.6)

 ※
 ただし,コンテンツ人気がその国への人気に比例するとは必ずしも限らない.
 例えば,中東ではハリウッド映画に高い人気があるが,だからといって親米とは限らない.


 【質問】
 「戦略的互恵関係」とは何か?

 【回答】
 「戦略的互恵関係」(a mutually beneficial strategic relationship)なる言葉の意味がわからないので調べてみると,以下のような意味ということがわかりました.

――――――
戦略的互恵関係とは

2007/04/11-21:03,時事通信


 地域の安全保障や経済,環境,エネルギーなど幅広い分野で,共通の利益を目指すという日中両国の関係.
 小泉純一郎前首相の靖国神社参拝で冷え込んでいた両国関係の立て直しに向け,昨年10月に訪中した安倍晋三首相と胡錦濤国家主席が首脳会談で「共通の戦略的利益に立脚した互恵関係」の構築で合意した.
 今回の温家宝首相の訪日はこうした関係の具体化を図るのが狙いで,両国は閣僚級の経済対話の開始や省エネ分野の協力強化などを確認した.(了)>

――――――

 2006年にできた,シナとの間にのみ使われる特殊用語ということですね.
 ぜんぜん中身を感じませんね.たぶんシナ独特の目くらましプロパガンダなんだと思います.
 これに踊らされるとひどい目に合うでしょう.

おきらく軍事研究会,平成20年(2008年)5月12日

▼ 戦略的互恵関係ですが,一番説明らしきものをしているのは,中国訪問時の安倍総理の談話ですね.
http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2006/10/08chinapress.html

 このあたりかな.

――――――
 戦略的な互恵関係というのは,共通の戦略的利益の上に立脚した互恵関係を作っていくということである.
 まず,経済の分野については,先ほど申し上げたように,現在でも大変良い関係が作られている.
 更に今後日中韓の投資協定を早期締結していくということを提案し,意見の一致を見た.経済の分野においてもお互いが互恵的になっていく分野が沢山ある.
 基本的に経済の分野はそうであろうと思う.

 また,政治分野についても,北朝鮮の核開発を阻止していく,あるいはまたミサイル問題に対応していく,また,六者会合において,そうした問題を処理していく上において日中間がお互いに協力していき,お互いに影響力を行使していくことが重要であろうと考える.
 また,環境,エネルギーの分野でお互いが協力できることは沢山あるのではないか.
 それも,やはり,政治の分野でお互いが意見を交換し,共通の目標を作っていくことが大切であろうと.そうした積み重ねを行っていくことによって,先ほど申し上げたような戦略的な互恵関係を構築していくことができると,このように思う.
――――――

 基本的には「Win-Winの関係を作りましょ」ってえ事だとは思います.
 また経済はともかく,政治の分野では「共通の目標を作っていく」ことが大切とあり,つまりまだ「共通の目的」ははっきりしていない,それはお互いの意見交換で決めていくということかと.
 とはいえ,都合よく使われそうな言葉ではあります.

BMP in FAQ BBS


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