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◆◆戦略
◆USA
<米州FAQ 目次
「Chicago Tribune」●(2012/11/03) US shale
gas boom requires rethink of natgas export
policy: Senator
米国の有力上院議員,ガス輸出は米国のエネルギー自立を妨害と
「Forbes」◆(2012/08/13)How NATO Expansion
Makes America Less Safe
ダグ・バンドウ「NATOの東方拡大はアメリカを危険にする」
http://ykdckomori.blog.jp/archives/1015295834.html
「OSINTSUM」◆(2010/08/18)高卒公務員でも理解できる米外交の基本方針
「Platts」◆(2012/06/21)White House supportive of US LNG exports: aide
「Strategic Studies Institute」◆(2012/09/10)Op-Ed:
Rethinking the American Way of War and the
Role of Landpower
「アメリカの戦争方法」における「ランドパワー」の役割は?
「The American Interest Magazine」◆(2012/07/18)Energy
Revolution 3: The New American Century
エネルギー革命のおかげで「新しいアメリカの世紀」が到来
by ラッセル=ミード
The Campaign Spot(大統領選情報,英語)
「VOR」◆(2012/03/27)ミット・ロムニー氏 ロシアは米国の主要な敵
>米共和党の最有力大統領候補であるロムニー元マサチューセッツ州知事はCNNとのインタビューの際,米にとっての地政学的な敵はイランや北朝鮮ではなく露だ,と指摘し,露は国際舞台における非友好国だとしており,最悪な国際的プレイヤーをいつも支援し,米に最も大きな脅威を与えていると語る.
「VOR」◆(2012/06/25)米国 ハリケーンの影響で石油・天然ガスの採掘が困難に
「VOR」◆(2012/10/31)ハリケーン「サンディ」でサレム原発が運転停止
「VOR」◆(2013/04/01) 米アーカンソーの原発で事故 1人死亡,3人負傷
「VOR」◆(2013/04/05) 米国最大の核廃棄物保管施設,爆発の恐れ
「WP」●(2012/08/21)Can natural gas solve
global warming?
米国では,シェールガスなどの普及が,地球温暖化へ与える影響が議論に
「海洋戦略研究」:米戦略指針「核体制見直し」方針案?
>核拡散が続く中で,これ以上同盟国に核拡散を広げないために,
>「核の傘」の信頼性を強調することになる
「くろいあめ,あかいほし」★(2010年 04月 24日)オバマ政権における汎地球即時攻撃(PGS)計画
「孤帆の遠影碧空に尽き」◆(2013/04/13) アメリカとロシア 人権問題での対立続く 安全保障面では対話の動きも
「孤帆の遠影碧空に尽き」◆(2013/09/11) アメリカ オバマ大統領「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」
「古森義久」◆(2012/12/11)オバマ政権「アジア重視」に疑問も
「産経」◯(2012/01/16) シェールガス沸く北米 エネルギー大手,環境リスク無視の掘削競争(リンク切れ)
「人民網」◇(2012/10/26)米国,2020年までに石油産出量が世界一に
「ダイヤモンド・オンライン」◆(2010/11/11)米国がLNGの“輸出解禁”へ 期待される日本への波及効果
「たむたむ」:安全保障シンポジウム 米新政権とアジアのゆくえ
「地政学を英国で学ぶ」:ウォルトが指摘するアメリカの二つの「不均衡」
「地政学を英国で学ぶ」◆(2010/03/17)マレン・ドクトリン?
「地政学を英国で学ぶ」◆(2010/03/20)ブキャナンの「民主制度拡大反対論」
「地政学を英国で学ぶ」◆(2011/02/14)ティーパーティーの新しい言論誌の中身
「地政学を英国で学ぶ」◆(2011/02/15)ティーパーティーの新しい言論誌の中身:その2
「地政学を英国で学ぶ」◆(2011/02/24)ミード: ティーパーティーと米国の対外政策
「地政学を英国で学んだ」◆(2011/05/17)アメリカの国防政策 by 福田毅
「地政学を英国で学んだ」◆(2011/05/17)宮崎氏のメルマガから転載:ルトワックの意見
「東洋経済オンライン」◎(2012/02/10)サイバーセキュリティを重視した米国の新国防戦略指針,立ち遅れる日本の対応
「東洋経済オンライン」■(2012/12/06)シェールガス革命がもたらした米国の独走
「日刊 アジアのエネルギー最前線」(2013/10/27)◆ U.S. support of grid energy storage charges
up | SmartPlanet.com (blog)-著者: Chris Nelder
米国は再生可能エネルギーに対する蓄電設備で,成果を上げている
「日刊 アジアのエネルギー最前線」(2013/10/27)◆ シェールガス採掘が群発地震誘発か:アメリカ・オクラホマ州|ハフィントンポスト
「日経」●(2013/01/28) 「シェール革命,米エネルギー安保にプラス」ダニエル・ヤーギン氏
「町山智浩アメリカ日記」◆(2010/09/14) 「カジノ・ジャック」 米国史上最悪のロビイスト!
「町山智浩アメリカ日記」◆(2010/10/10)バンクシーが作った「シンプソンズ」のオープニング!
>シンプソンズのキャラクター・グッズが中国の労働者を劣悪な条件でコキ使って作られている事実まで批判!
「町山智浩アメリカ日記」◆(2010-10-29)レーナード・スキナードはティーパーティのテーマソング
「町山智浩アメリカ日記」◆(2010-10-31)正気回復大会に行ってきました
『アメリカの国防政策』(福田毅著,昭和堂,2011.6)
「シリーズ アメリカ・モデル経済社会」の第9巻.
ベトナム戦争からイラク戦争までの,米国防政策の概観.
ポスト・ベトナム以降,米軍の思考に基本的な変化はなく,最近やっとペトレイアスがCOINを再発見したという主張.
――――――軍事板,2011/07/01(金)
ゼミ後の食事会でちょこっと話題が出たんですが,いい本ですよ.
凄く勉強になりました.
これまでは評判そのものを聞きませんでしたが,埋もれたままにするのは惜しい,お勧めの一冊です.
------------@yamada_youkou in twitter◆(2012/03/18)
『オープンスカイ・ディプロマシー アメリカ軍事民間航空外交1938〜1946年』(高田馨里著,有志舎,2011.7)
本の腐海の中に埋もれかけていたので,掘り出してみた.
軍事と言うよりも,国際政治と,経済政策に興味がある人なら買い.
航空と言う分野を下敷きにした,米国内の状況把握と,戦後世界の形成と言うのが,大きなテーマ.
膨大な一次資料を駆使しているので,その辺に興味のある人は面白いけど,切った張ったに興味のある人には,お勧めしかねるかな,と.
――――――眠い人 ◆gQikaJHtf2 : 軍事板,2011/09/06(火)
青文字:加筆改修部分
『殺す理由 なぜアメリカ人は戦争を選ぶのか』(リチャード・E.ルーベンスタイン著,紀伊國屋書店,2013.4)
『終戦論 なぜアメリカは戦後処理に失敗し続けるのか』(ギデオン・ローズ著,原書房,2012.7)
>それは大統領が「直近の戦争」の失敗を避けながら、一方で戦後政策を成り行き任せにしているからだという
『新・世界戦争論』(ジョージ・フリードマン著,日本経済新聞社,2005.12)
『ザ・カミング・ウォー・ウィズ・ジャパン』の著者だが,この本はゲーマーとして面白かった.
まあ,相手の合理性を信頼しすぎると,思わぬ落とし穴にはまるモンだがね.
真珠湾のアメリカとか,「カイジ」の利根川とか(笑)
――――――軍事板,2010/01/13(水)
『第五の権力アメリカのシンクタンク』(横江公美著,文春新書,2004.8)
『歴史の教訓 アメリカ外交はどう作られたか』(アーネスト・メイ著,岩波現代文庫,2004.4)
統合参謀本部にも勤務経験のある歴史学者が,アメリカの為政者たちがその政策決定にあたり,歴史をどのように引用・考慮してきたのか,ということを具体例(冷戦,朝鮮戦争,ベトナム戦争)を出しつつ考察し,タイトル通り「歴史の教訓」の誤用と活用について論じた本.
第1部では,歴史的事象に対して,アメリカの為政者たちがどのように,歴史を引用して行ったのかを考察する.
基本的に為政者は,ある重大・緊急の出来事に対し,比較的近い時代の類似している(ように見える)重大な出来事を,参考にしながら対処しようとする.
そして為政者の歴史認識自体も,その政策決定を拘束していく.
「見えるもの」と「見えないもの」が生まれてしまい,考えが狭窄的になってしまうのである.
第2部では,歴史の活用と予測について論じている.
著者はまず,ベトナム戦争中に論じられた,「和平のための爆撃」論を,他の歴史的事象,特に日本やイタリアと比較しつつ,批判的に検証している.
続いて著者は,膨大な考慮要素が存在するとして,それらを列挙しながらも,自分なりの10年後(1983年)の歴史の予測を行う.
そして著者は,費用の問題や情報公開に対する,官僚組織の抵抗感などがあるにせよ,政策決定にあたり,歴史をより一層正しく活用していくことは重要だと主張し,教育による要員育成や史料の早期公開を提言している.
原著の発行年の都合上,まだ史料が十分に公開されていない出来事もあるため,必ずしも全ての分析が正しいとは言えないが,その後の史料によって裏付けを得ているような分析も多い.
また,本の末尾には復刊時に追加された,訳者の解説がある.
著者の経歴や本書出版後の流れ,さらに本書で取り上げられている歴史的事象についても,新資料を考慮しつつ解説を加えているので,それなりに有用である.
歴史を教訓としてどのように引用し,政策形成に役立てていくのか?という難しいテーマを正面から扱った本であり,歴史は政策決定に限らず,広く社会一般で引用されるものであるから,読んでおいて損はないだろう.
------------------軍事板,2011/08/
青文字:加筆改修部分
●バラク・オバマ
「D.B.E. ミニ型」:オバマ大統領がカミングアウト!? 「僕はジェダイ・マスター」 /情報源HK-DMZ PLUS.COM
「gooニュース」:オバマ氏が語る「正しい戦争と正しい平和」 大量破壊兵器を作った男の平和賞を受賞して(2009.12.11)
「Tech Mom from Silicon Valley」:2009-12-05 オバマのいわゆる「Twitterおよびネット戦略」の今更解説
「フォーリン・アフィアーズ」:オバマ大統領の安全保障問題チーム
「国際情報センター」:オバマのノーベル賞受諾講演(その1)
「国際情報センター」:オバマのノーベル賞受諾講演(その2)
「国際情報センター」:オバマのノーベル賞受諾講演(その3)
「古森義久iza」:オバマ大統領で日米関係が変わる――新刊書『オバマ大統領と日本沈没』から
「佐伯洋一」:MDとオバマ 『オバマで変わるアメリカ 日本はどこへ行くのか』書評
「地政学を英国で学ぶ」:オバマ正戦論,クライメートゲート,トヨタの社長
>英米での報道や論評は,保守派を中心にけっこう高評価.
>
>どうすごいかというと,欧米で国際関係論を多少学んだ人ならおわかりのように,
>彼はリアリズムの議論(とくにニーバーの得意とする道徳論)を使って,
>人間性や悪の存在,それに戦争と平和という永遠のテーマを語ったからですね.
「地政学を英国で学ぶ」◆(2010/05/09)オバマは憲法違反である,だから彼には従わない
『オバマの戦争』(ボブ・ウッドワード著,日本経済新聞出版社,2011.6)
日本経済新聞社に出版社が変って,紙が薄くなった.
めくりにくく,破れ易い.
内容は,いつも通り精密.
なんか,透明人間になって,あちこちの会議に参加しているみたい.
――――――軍事板,2011/07/01(金)
ブッシュ親子の4作に比べると,盛り上がりに欠けるというか,物足りない感があった.
パキスタンは複雑で信用できないとか,アフガニスタンの増派兵力の数をどうするとか,そんな話しかしてなかったような感じになる.
ラディン殺害後まで書かれてたら面白かったんだけど,「あの時,米政権内部では・・・」みたいなのが無いのが,物足りなさの原因かな.
オバマが大統領になった時から,アフガン増派開始までの,オバマ政権の中にいるような感じになれる,貴重な本ではあるけどね.
――――――軍事板,2011/07/04(月)
【質問】
なぜアメリカの対外戦略は,場当たり的になりやすいのか?
【回答】
ドミニク・リーヴェンによれば,ロビーと利益集団の競争が,一貫した外交政策を困難にしているためだという.
以下引用.
――――――
政治的要素を例にとろう.
ドイツは1890年から1918年にかけてヨーロッパにおける覇権を目指した.
この企てを挫いたのは,なによりもドイツの政治的要素であった.
重要なのは,ドイツの政治システムは,国内のロビーをコントロールし,対外的な現実と他国の反応を考慮するようなやり方で,外交政策の各目標の優先順位を決定することができなかった点だ.
アメリカも同じような困難に直面する兆しがある.
そこでは,ロビーと利益集団が死に物狂いの競争を繰り広げているため,一貫した対外政策は困難になり,アメリカ以外の見解や利益を,本当の意味で調和させる余地もないのである.
――――――Dominic Lieven著「帝国の興亡」(日本経済新聞社,2002/12/16)上巻,p.12-13
同書以外にも,ロビイストの弊害はたびたび指摘されるところであり,上記の指摘の信頼性は高いように思われる.
【質問】
アメリカにとって敵国とはどの国か?
【回答】
ギャラップに拠れば,アメリカ国民の最新の解答は:
<ワースト10,2008年>
1)イラン,
2)イラク,
3)中国,
4)北朝鮮,
5)米国自身,
5)アフガニスタン,
6)パキスタン,
7)ロシア,
8)サウジアラビア,
9)ベネズエラ,
10)その他
昨年に比べて,中国は(11%→14%)と3%アップ,北朝鮮は(18%→9%)と9%ダウン
ニュース極東板
青文字:加筆改修部分
【質問】
アメリカ軍はイラクみたいな軍事力弱い国としか戦争しないんですか?
【回答】
湾岸戦争時のイラクは世界有数の軍事大国でしたし,冷戦ではソ連とガチバトルする気でした.
まず軍隊というのは戦争をする存在のみではなくて,抑止力を形成する主要な要素なのです.
なので,戦争に至らずとも様々なレベルで軍隊は活動していますし,その中には他国軍との接触を伴うことがあります.
次に言いたいのは戦争の勝敗は通常戦力の優劣のみにて決まるわけではありません.
あくまでも戦争目的(名実ともに)を達成できたか否かで決まります.
そして,核戦力の存在を指摘しないわけにはいきません.核を持つ者同士では,互いへの疑心暗鬼から一挙手一投足を注視しており,かつ,互いの能力と状態をあらゆる手段でもって常時知ろうと心がけています.
核戦争に至らずとも,軍事力を行使しうる条件を求めて様々な駆け引き,理論が登場しますが,ともかく代理戦争や第三国への直接侵攻は起きたものの,直接軍事力で対決する事態は起きませんでした.
しかし,冷戦時代は欧州に大規模な軍事力を駐留させ,本国からの増援を演習するなどしていたのは事実でもあります.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
ケリー候補の国防政策はどのようなものか?
【回答】
国防政策を真剣に考えているのか,との疑いの念が起こる.
ケリー政権の国防長官候補は興味深い顔ぶれで,
共和党右派のアリゾナ州上院議員,ジョン・マケイン
やや中道派の上院軍事委員会のジョン・ワーナー委員長
中道左派のクリントン政権の国防長官であるウイリアム・ペリー
左派のカール・レビン上院議員
がそれである.
右派から左派までのこの顔ぶれは,いわば,オーバー・ザ・レインボー連合とでも呼べば良いのだろうか.
しかし,この4人の顔ぶれからわれわれは一体どういう国防政策を想定したら良いものやら.
マケイン上院議員はイラク戦争に最初から賛成で,ブッシュ政権がむしろ中途半端で兵力の出し惜しみをしていると批判してきた.
レビン上院議員はイラク戦争に反対する最左端にいる.
マケイン上院議員は北朝鮮への強硬派として良く知られた人である.
彼はクリントン政権時代の1994年枠組み合意に反対した事で知られ,北朝鮮への見識が評価された.
レビン上院議員は勿論枠組み合意を支持しており,現在も北朝鮮との同じような,新たな合意案を作り上げることを主張している.
この顔ぶれから判断できることは,ケリー政権の国防政策に展望や計画が無いことである.
ケリー候補は,現政権に変わるより良い政策を提案すべきであるが,このリストからは国防政策を真剣に考えているのか,との疑いの念が起こる.
詳しくはWSJを参照されたし.
【珍説】
★日本の新たな軍事的野心
日本が20世紀に行った植民地化を今なお記憶にとどめている近隣アジア諸国は,平和主義に貫かれた戦後体制の見直しに向かおうとする日本の変化を快く見てはいない.
アジア太平洋地域では,ナショナリズムが高まり,戦略上の問題も抱えているうえに,米国が数多くの安全保障条約や相互協力条約を交わしてきた結果,軍拡競争が止まらずにいる.
この地域は今や中東に次ぐ世界第二の武器市場となっており,1990年から2002年の間の購入額は1500億ドルを超えた(19).
日本にとっても,豪州,韓国,台湾をはじめとする他の対米同盟国・協力国にとっても,米軍との連携上の運用能力を維持することが目標となっている.アフガニスタンやイラクに見られるように,米国との共同作戦を実施する可能性が増大しているからだ.
多くの国が米国の新型装備を調達しており,たとえば豪州,日本,韓国は艦隊戦闘システム「イージス」を導入した.
しかし,米国が「軍事革命(RMA)」に乗り出して以降,アジアに向けて行ってきた先端軍事技術の輸出が度を越していることは,地域内でも批判する国が出てきている.
APCSS主催の別の会議の議事録によれば,これらは「テクノロジーそのものの偏愛」に傾いた「思い付き,技術革新,テクノロジーの世界」に属するものであって,「低強度の脅威,特にテロへの対処や暴動鎮圧作戦には不向き」である(20).
この会議の参加者たちは,米軍再編がアジア太平洋地域に及ぼす波及効果を懸念した.
「米国の軍事的優位の確定と強化を目的としている」限り,米軍再編は「新たな脅威を創出する」ことになりかねない.
防衛力を進化させることのできない国々は,「低強度の攻撃(暴動やゲリラなどの戦術)のように非対称的な手段に出るか,大量破壊兵器(核・生物・化学弾頭を搭載したミサイル)の能力を増強する」可能性があるのだ.米国政府がアジア太平洋地域で展開する安全保障政策のパラドックスはまさしくここにある.
エミリー・ギヨネ特派員(Emilie Guyonnet)ジャーナリスト,
「ロベール・ギラン日本報道賞」受賞 訳・阿部幸
【事実】
>米国が数多くの安全保障条約や相互協力条約を交わしてきた結果,
>軍拡競争が止まらずにいる
日本とアメリカは同盟国ですが,日本はここ5年くらい軍縮を続けていますが,その事は無視ですか.
>多くの国が米国の新型装備を調達しており,たとえば豪州,
>日本,韓国は艦隊戦闘システム「イージス」を導入した.
イージスシステムが出来てから20年以上経つんですが,未だに「新型装備」とは片腹痛いですな.
ちなみにスペインやノルウェーもイージスを導入しました.
今や普通に選べる兵装システムですよ.
>米国が数多くの安全保障条約や相互協力条約を交わしてきた結果,
>軍拡競争が止まらずにいる
東アジア地域での軍拡の牽引役をやっているのは中国なのだが,どういうわけか名指しもされていない.言い訳程度に「ナショナリズム」「戦略上の問題」という言葉が添えられているだけ.
よく読めば,日本の「ナショナリズム」「戦略上の問題」が日本の軍事的野心に結びついているとは直接は書かれていないのだが,★日本の新たな軍事的野心という言葉を最初に持ってくることにより,「ナショナリズム」「戦略上の問題」によって日本が軍事的野心を持ちはじめたかのような印象を持たせようとしている.
ちなみに,その中国に兵器を売りたがっているのが,他ならぬフランス.
フランスの人間が,どのツラ下げて東アジアの軍拡を非難できるのかね? 真っ先に批判すべき対象が,著者のすぐ身近にあるんじゃないのかね?
>アジアに向けて行ってきた先端軍事技術の輸出が度を越していることは,地域内でも批判する国が出てきている.
その根拠として引用されているのが,
>「低強度の脅威,特にテロへの対処や暴動鎮圧作戦には不向き」
なのだが,これはハイテク兵器を用いた巨大な軍事力の投射は必ずしもテロ抑止には結びつかないという批判であって,何ら「先端軍事技術の輸出」に関係しているものではない.
明らかなミス・リード.
>この会議の参加者たちは,米軍再編がアジア太平洋地域に及ぼす波及効果を懸念した.
それがどんな団体の会議なのか知らんが,現実を見ていない,ということしか意味しない.
現実にはアジア太平洋地域は米軍再編をして,自国にも有利になるように策動している.
オーストラリアでは伝統的に米軍基地受け入れに積極的であるし,シンガポールやフィリピンも同様.
かつての仇敵ヴェトナムすら,中国の脅威を前にして,米国と急速接近中だ.
こんなのに日本報道賞をくれてやっているようでは,ディプロもまだまだだね.
【質問】
バラク・オバマに対する評価は?
【回答】
それについては
「ザ・アトランティク」:オバマという危険 Byバージニア・ポストレル
The glamour of Obama may be hard to resist,
but could it get the country into trouble
if he wins the presidency?
by Virginia Postrel The Peril of Obama
Dispatch April 3, 2008
という記事がある.
独自の鋭い感性で,ユニークな評論を書き続けている「スタイル評論」のバージニアポストレルのオバマ論.
他とは異なる彼女の視点でオバマを定義し,分析するもの.
曰く,オバマはglamourである.
JFK以来,久しぶりにglamourな政治家が登場したのだが,このglamourというのは人に夢や希望を与える,つまり美しいイルージョンを与える存在であって,glamourはミステリーとグレースから成り立つ言葉である.
ポスト・ベトナムの,ポスト・ウォーターゲートのアメリカ政治にあっては,是はたいへん稀な存在である,という.
オバマはglamourであるからして,その支持者は彼が実際に何を思い,何を考えているのかとは関係なく,支持者自身の希望を投影して彼を見ている.
つまり楽観主義者にとって,オバマは(中身がわからないために)希望であり得るのだけれど,悲観主義者にとって,中身の知れないことは恐怖であり得る云々.かなり辛口で,鋭い.
ニュース極東板
青文字:加筆改修部分
【質問】
東アジアに対するオバマの戦略構想は,どんなものか?
【回答】
2007年6月1日15時0分,時事通信によれば,6カ国協議のような特定の問題に限定した取り決めを超える,東アジアでの新たな多国間枠組みの構築を目指すものだという.
オバマ論文は7ページのもので↓
Renewing American Leadership Barack Obama From
Foreign Affairs, July/August 2007
時事通信の参照しているのは多国間安全保障(NATOライク)について述べている部分.
――――――
REBUILDING OUR PARTNERSHIPS
In Asia, we belittled South Korean efforts to improve relations with the North.
In Latin America, from Mexico to Argentina, we failed to adequately address concerns about immigration and equity and economic growth.
And as we strengthen NATO, we must build new alliances and partnerships in other vital regions. As China rises and Japan and South Korea assert themselves,
I will work to forge a more effective framework in Asia that goes beyond bilateral agreements, occasional summits, and ad hoc arrangements, such as the six-party talks on North Korea.
We need an inclusive infrastructure with the countries in East Asia that can promote stability and prosperity and help confront transnational threats, from terrorist cells in the Philippines to avian flu in Indonesia. I will also encourage China to play a responsible role as a growing power -- to help lead in
addressing the common problems of the twenty-first century. We will compete with China in some areas and cooperate in others.
Our essential challenge is to build a relationship that broadens cooperation while strengthening our ability to compete.
――――――
【質問】
国防長官としてのロバート・ゲーツの功罪は?
【回答】
今年の夏に退任するロバート・ゲーツ米国防長官.
この方については,昨日の日記で,F-35に関する利権を持っていると思われたのですが,どうやら違うようです.
この点についてはロバート・ゲーツ米国防長官には謝罪いたします.
誠に申し訳ありませんでした.
では何故,ゲーツ長官はF-35にこだわったのでしょうか?
そして何故,整備コストが安いはずのF-22の生産を中止したのでしょうか?
それはどうやら,ゲーツ氏の「事業仕分け」だったようです.
以下引用
――――――
天才ゲーツの米軍改造大作戦:NewsWeekJapan
米空軍はステルス戦闘機F22ラプターへの思い入れが強過ぎるせいか,ソ連が崩壊した今,もはやアメリカと互角の軍事力を持つ国は存在しないことに気付いていないようだ.
実際,アメリカが現在戦っているイラクとアフガニスタンでは,米空軍が保有する約135機のF22は,1機も使用されていない.
今もF22が製造され続けている訳は,その工場が44州に散らばっているせいだ.
ゲーツは今回の予算見直しで,F22の追加発注を停止する方針を明らかにした.
――――――
しかし一方でロシアはT-50,中国はJ-20というステルス戦闘攻撃機を開発しています.
J-20についてはまだ,アメリカ側に優位性があるにしても,F-35とF-22の二本立てにしておけば,T-50に対してもそれなりのアドバンテージが得られたはずです.
というか,せめてLM社が主張していたように,海外輸出分だけでも生産を認めようという発想はなかったのでしょうか?
それをF-35に投資するのは厳しいにしても,LMにしてみればこちらは同盟国軍との取引なのだし,F-35は予定通り開発するから,その他の商売についていちいち文句を言われる筋合いはないと言われても仕方ないでしょう.
――――――
天才ゲーツの米軍改造大作戦:NewsWeekJapan
ゲーツは米海軍の「欲しいものリスト」にも切り込み,駆逐艦の発注計画を縮小するとしている.
だがF22ほどの思い切りは見られない.
現在11ある空母打撃群(空母1隻を中心とした戦闘艦のグループ)を,今後31年間で10に減らすという程度だ.
――――――
これも中国海軍の増強を無視した発想です.
それに駆逐艦は,地上攻撃用トマホークの発射プラットフォームにもなりえますので,旧式艦艇の更新を含めると,とても妥当は言えないのではないでしょうか?
――――――
天才ゲーツの米軍改造大作戦:NewsWeekJapan
こうした要請には,もっとスリムで費用効率の良い軍事力で対応できる.
潜在的な敵の軍事力を考えればいい.
米海軍は11の空母打撃群を有するが,中国はゼロだ.
またアメリカの09年度の軍事予算は6550億ドルだが,中国は700億ドル,ロシアは500億ドルにすぎない.
アメリカの国防予算の超過額だけでも,中国とロシア,イギリス,フランスの年間軍事予算を足したよりも多い.
これでは抑止力の確保というよりも,壮大な無駄遣いだ.
――――――
しかし現実,中国海軍は空母「ヴァリヤーク」をアーセナルシップ化して,さらに2015年度までに5隻体制にする方針です.
J-20も開発が軌道に乗れば,日本はともかく台湾は苦しくなります.
結局,ゲーツ氏のこの「米軍改造計画」は,中国やロシアの軍拡を助長させる結果に終わりました.
これはもう,壮絶な失敗だったと言えるでしょう.
ゲーツ氏はCIA官僚出身ですが,どうやらCIAの諜報能力低下は本当のようですね.
あまりこんな事は言いたくはないのですが.
まぁ,ピッグズ湾でやらかしたからなあ・・・.
バルセロニスタの一人 in mixi, 2011年05月03日10:07
青文字:加筆改修部分
【質問】
マルコ・ルビオって誰?
【回答】
フロリダ州上院議員.
1971年生まれのキューバ移民の子供で,2000年,下院初当選.
トランプ旋風が無ければ,2016年大統領選で共和党本命候補の一人だったはずのお気の毒な人物.
* * *
1971年5月,キューバ移民マリオ・ルビオとオーリア.ガルシアとの間に第三子として,フロリダ州マイアミに生まれる.[1]
1993年にフロリダ大学で政治科学の学士号を取得し,1996年にマイアミ大学法学部でJ.D(法学博士号)を取得.[1]
2000年,フロリダ州において下院議員に当選.[3]
2007年から2009年まで下院議会の議長として奉仕.[1]
2011年1月,米国上院初当選.[1][3]
2015年12月17日,大統領が新キューバー政策を打ち出した直後,ルビオは単なる個人的感情を表明し,キューバとの国交正常化に反対.[1]
2015.4.13,大統領選挙共和党予備選に正式出馬.[1]
ただ,ルビオは同じくマイアミを基盤とするジェフ・ブッシュと比較して,資金力に乏しいといわれている.[3]
ティーパーティに支持された若手議員の一人.[1]
彼は移民の子供である為,上院議員として選出された最初の数年間は移民改正法を支持し,上院で超党派の8人のグループが起草した包括的な移民改正法案の起草者の一人であったにも関わらず,ティーパーティ活動家と移民活動家の間で板挟みになったルビオは,実質的にこの法案の支持を放棄している.[1]
また,2015年現在,共和党中枢からも支持がある.[2]
ルビオは新鮮そのものであり,いわば「共和党のオバマ」であるため.[2]
さらに,メディアからの評価も高い.[3]
若さと行動力に加え,「フロリダ州の未来のための革新的な100のアイデア」という本を出版し,その半分以上を実際に法案として成立させるなど,アイデアマンとしても知られているため.[3]
また,幅広い層の支持を得られる可能性が最も高い共和党候補であるためでもある.[3]
外交においては,ルビオは上院外交委員会東アジア太平洋小委員会の筆頭委員であり,2014年1月に来日した際には,日本が中国の拡張主義的な政策に反対していることに支持を表明.[2]
2015年夏にも,東シナ海,南シナ海における中国の行為を強く非難し,尖閣諸島の日本の領有権も明確に認めている.[2]
【参考ページ】
[1]大統領候補者としてのマルコ.ルビオの弱点 | アメリカ ウオッチ Yuko's Blog
[2]http://www.yomiuri.co.jp/adv/gakushuin/opinion/op036/page_01.html
[3]http://news.kyokasho.biz/archives/31742
【質問】
>http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-921.html
>(来日時のマルコ・ルビオ上院議員の発言は,)「靖国参拝の安倍首相を援護」(古森)とは到底言えない
ってホント?
【回答】
文谷数重および古森義久(文中敬称略,以下同)両氏の記述を見た限りでは,
「どちらとも言えないのでは?」
としか言えない.
ただ,文谷の記述にはミスリードがあり,狙って行ったのなら悪質.
文谷は次のように述べている.
> だいたい,古森さん自身の説明でも,ルビオさんは別に安倍首相を援護もしていません.
> 発言中で安倍首相を責めていないだけで,靖国社参拝を別に肯定もしていません.
確かに上記ブログに引用された発言だけを取り上げればその通りなのだが,古森の記事には実は後段がある.
すなわち,
> 1月21日にはルビオ議員は東京で安倍首相と会見した.
> この会見は米側ニュースメディアでも,
>「米側の靖国参拝に対する失望声明の後,米国政界の有力者が初めて安倍首相を訪問した」
>として注視された.
> ルビオ議員がオバマ政権の問題視した靖国参拝についてどう対応し言及するのか,関心の的となったので ある.
>
> ところがルビオ議員は安倍首相との会談では,靖国参拝に一言も触れなかった.
> 批判めいた言葉は皆無だった.
> 逆にルビオ議員は会談の冒頭で以下のように安倍首相への高い評価の言葉だけを送ったのだった.
>「安倍首相が日本の安全保障分野での能力を高めるために下した種々の決断や取り組みを支持する.
> 特に日本の領土に対する冒険主義的な近隣国による非合法な主張を踏まえると,安倍首相のそうした姿勢は心強い」
つまり古森は,文谷が引用した発言だけでなく,その前後の発言や状況をも勘案した上で,
「靖国参拝の安倍首相を援護」
と判断したのである.
この後段は,有料の会員限定記事になっている.
つまり大半の読者は,後段でどのように書かれているのかまでは知らない.
それをいいことに文谷は,記事の無料で読める部分だけをピックアップして,古森叩きをしているのである.
これはミスリードと言われても仕方ないのではないか?
狙って行ったのなら悪質である.
そんなミスリードをせずとも,古森の記事の論拠の希薄さを突けばいいだけの話.
事実,古森の記事は,
「ルビオが安全保障分野で安倍首相を評価したからと言って,それが靖国参拝や慰安婦問題に関する安倍の姿勢も,同様に評価していることにはならない」
と指摘することができる.
来日時のマルコ・ルビオ上院議員の発言は,「靖国参拝の安倍首相を援護」と言えるかどうか?に限れば,
「どちらとも言えないのでは?」
としか言えないのである.
そもそも文谷は,
>相手のルビオ議員は「ティーパーティの王子様」※※と言われる程度の政治家です.
や
>結局は野党議員で,しかも若手であって,注目株ではあっても影響力も大したものではないといったあたりでしょう.
などと同議員を過小評価しているが,2016年の大統領選の共和党予備選において,ルビオが有力候補の一人となっている点から見ても,どうみても不当な過小評価.
また,文谷が論拠として挙げた記事
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/us-politics/8106646/Midterms-2010-Tea-Party-Crown-Prince-Marco-Rubio-wins.html
にも,
>Republican strategists are already seriously discussing Mr Rubio as
a potential vice-Presidential candidate for 2012.
(共和党の選挙参謀たちは既に,ルビオを2012年大統領選の副大統領候補とすることを真剣にを検討している)
とあって,影響力が大したものでないかどうかは,この箇所からも分かるはずだが…
もしかして文谷は,「ティーパーティの王子様」というフレーズに幻惑されて,先入観まみれの記事を書いてしまったのではないか?
上述のミスリードの件と言い,どうもそのように感じる.
上記ブログ冒頭において,文谷は
> なんか,同じ穴のムジナという感がしてならないのです.
と書いているが,こんなミスリードをやっているようでは,文谷こそサラ・ペイリンやドナルド・トランプと同じ穴の狢という感がしてならないのです.
mixi, 2016.2.5
◆◆資源戦略
【質問】
米議会でPu-238の再生産予算が否決,今後の原子力電池の生産は不可能
に - Technobahn
http://www.technobahn.com/news/200908111139
これはどのくらい深刻な話なのか?
【回答】
「またテクノバーンか!」と言われそうなところですが,今回だけはガチで深刻なお話ということで.
元々は以下のお話でした.
----
米エネルギー省,原子力電池用核燃料備蓄が枯渇
- Technobahn
http://www.technobahn.com/news/200905080452
----
というわけで.
ところで,どうやってPu-238を生成するのか,その製造技術は以下に詳しく記載されています.
【参考文献】
Plutonium-238 Production at the Savannah
River Plant
P.L.Roggenkamp,
Savannah River Plant
Transactions of American Nuclear Society,
55, p.239 (1987)
上記には機微情報に該当しかねないほど,こちらが心配になるぐらい大変詳しく載っています.
しかし,私自身のような専門従事者ならともかく,一般の方にいきなり米国原子力学会論文誌を挙げるのは,かなり厳しいというわけで,以下に日本語で書かれた論文が掲載されています.
----
プルトニウム238熱源の製造と宇宙探査用電源としての応用
http://www.rada.or.jp/database/home4/normal/ht-docs/member/synopsis/040098.html
----
以下,該当部分引用.
----
(米国)サバンナリバープラントでは,NpO2-AlサーメットにAlをかぶせて照射し,硝酸液中に溶解後イオン交換技術で,年間約50kgのPu-238を製造している.
こうして得られたPu-238 112gを含む酸化Puを,ペレット状に成形したもの4ケを,イリジウム合金容器に封入したものが,汎用熱源(GPHS)モジュールで,すでにガリレオのアイソトープ熱電発電器(RTG)の熱源などとして使用されてきたものである.
----
【参考】サバンナリバープラント(サバンナリバーサイト)については以下参照.
Savannah River Site - Wikipedia, the free
encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Savannah_River_Site
というわけで,原子炉によるウラン燃料の中性子照射(ウランの燃焼他)から生成されるNp-237を,他の核物質とは分離して,また原子炉にて中性子照射することによって,Pu-238を生産してきた訳です.
しかし,このNp-237が実はくせ者であり,IAEAによる厳重な核査察対象物質でもあります.
詳細は機微情報に当たりかねないため,詳しく説明できませんが,1987年の段階で米国サバンナリバーサイトには,分離精製されたNp-237が約400kgもあり,米国サバンナリバーサイトの原子炉群によるNp-237の年間生産能力は約80kg以上有った,と言われています.
しかし,以上の懸念と諸事情により,当該のNp-237生産炉(原子炉)は1988年に閉鎖.
その後は長らく在庫のNp-237を元に,Pu-238の生産を再開する計画(機微情報該当のため詳細不明)もあったのですが,これも実現せず.やむなく,上記のようにロシアに依存していたのですが,ロシアも生産を止めたため,とうとう在庫が払底して現在の状況になったわけです.
【参考文献・出典】
The Challenges of Fissile Material Control
David Albright and Kevin O'Neill (eds.),
Institute for Science and International Security
(Washington, DC: Institute for Science and
International Security Press, 1999)
【参考】
現在は版元品切れのためweb上で公開されている
「Challenges of Fissle Material Control」
http://www.isis-online.org/publications/fmct/book/
のうち,特に
「Chapter 5 -- Troubles Tomorrow? Separated
Neptunium 237 and Americium--David Albright
and Lauren Barbour」
http://www.isis-online.org/publications/fmct/book/New%20chapter%205.pdf
を参照願います.
ただし,機微情報を含みうるため,私の方から詳細な解説は一切出来ないことをあらかじめお断りさせていただきます.
【参考】
「Institute for Science and International
Security」は米国の民間シンクタンク.
日本語訳では一般に(米国)科学・国際安全保障研究所とされるが,ISISの略称で呼ばれることが多く,北韓やイランの核開発疑惑など軍事分析,とりわけ核(兵器)関連の分析を得意とする.
しかし,上記で記したPu-238の生産プロセスは,ぶっちゃけて言ってしまえば「核兵器開発級」のものであり,それにかかるマンパワーや建設・維持費用も膨大な額になります.
実際,米国サバンナリバーサイトではデコミッション(廃止措置・環境浄化)の作業が行われていますが,それも膨大な資金を必要としているとのこと.
さらに核兵器関連物質のカット・オフ(生産中止)が叫ばれている昨今です.
そのため,いくら平和・学術目的であり,深宇宙探査には不可欠な原子力電池用とはいえども,現在の米国の置かれた状況では,生産再開断念という結論になったわけであり,このことは多かれ少なかれロシアにも当てはまるものと推測されます.
今後は原子力電池に代わる手段...が有ればよいのですが,現状の技術ではほぼ絶望的.
ただ,原子力電池は単純に言えば,中長半減期のα線を放出する放射線を利用して熱源とし,それを熱電変換で電源としているわけです.
よって,現実的には解決法は2つに1つ.
分離・精製こそされていませんが,実際には日本国内にも存在するPu-238を分離・生成・回収するか(ただし非常に困難),それともマイナー・アクチニド(MA)と呼ばれる,未利用で処分が難しい核種の中から,適切なものを回収するか(こちらの方も特に核種の分離が困難・また物性の違いも考慮しなければならないため,さらに困難)となります.
事は一見平和・学術目的のみに見うけられる本問題ですが,実際は上記のように核関連の機微情報に該当するものばかりであり,核保有国を除いては,先の研究のように日本やドイツのような
「核開発が可能なほどの高度な原子力技術」
をもちながら,なおかつ
「IAEAによる厳重な査察に耐えうるだけの信頼性」
を持った国でなければ,解決不能という底なしの状況であること.
そして,人工衛星の開発や核関連技術などの軍事的側面とも無縁でないことを,ここで指摘させていただきたいと考えます.
以上,ご参考まで.
へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」,2009年09月05日
17:47
青文字:加筆改修部分
▼ 関連.
NASA FY 2011 Budget
http://www.nasa.gov/pdf/420990main_FY_201_%20Budget_Overview_1_Feb_2010.pdf
>将来のミッションに向けてDOEと一緒にPu-238を再生産するよー
だそうです.
有人月探査中止,アレス死亡,オリオン死亡とまぁ.
D.B. in 「軍事板常見問題 mixi別館」,2010年02月02日 11:50
> Restarts Plutonium-238 production w/
DOE to support future missions;
先述の通り,1987年の段階で米国サバンナリバーサイトに有ったとされる,分離精製されたNp-237:約400kgからPu-238を再生産する分には何とかなるでしょうが,各種廃止措置でその生産ラインの所々が欠落しているため,その復活は財政的に難しいでしょうね.
まあ,米国の場合,財政的に難しいと言っても,社会的に難しいとまでは言えないため,議会がそのための予算を通せば何なりと方法はあるかと考えます.
一方,その原材料となるNp-237の再生産となると,さらにハードルが高くなります.
詳しいことは機微情報にもなりますのでお話しできませんが,Pu-238の再生産とその原材料となるNp-237の再生産は別にされる可能性があり,NASAとDOEが何処まで本気を出して取り組むのか,核不拡散関連でも注目すべき事と考えています.
へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi別館」,2010年02月02日 20:53
▲
【質問】
米エネルギー省は,核再処理・高速炉建設 を中止の方針
ニュースソースをググッテも出てこず,Atomicaのほうにも無かったので,ガセ情報の可能性が極めて高くなったのですが,師匠の解説をお願いします.
bernoulli,2009年07月23日 12:03
【回答】
まず,マジレスをすると,残念ながらこれらは全て真実です.
さらに言うなら,このような決定がなされるであろうことは,米国大統領選挙で民主党オバマ氏が有力候補となる以前から,民主党有利の段階で必ず下されるであろう政策であったことは,この業界の人間であれば基礎的な素養と言えるぐらい,「ガチな鉄板で予想されたこと」です.
そもそも,米国民主党はカーター政権下での核不拡散政策により,米国内での高速増殖炉や商業再処理にとどめを刺した上に,使用済核燃料についても無責任な先延ばしの態度をとり続けることで有名です.
そして,これら施策は米国民主党のブレーンが一新されない限り,伝統的なものとして受け継がれることは必至でした.
そのため,商業再処理や高速(増殖)炉はまだしも,ユッカマウンテンでの使用済核燃料処分にも予算を配分せずに,処分費用だけを電力会社(ひいては消費者)から取り続けるという,あまりにもその無責任な態度に,今現在米国エネルギー省(DoE;DOEと記すこともあります)は突き上げを食らっている始末.
まあ,米国民主党政権が続く限り,それでもこのような政策・施策は続くのでしょうが,ユッカマウンテンでの一件は,その代替手段の有効性を立証しない限り,徹底的に批判されるべきと私個人は考えています.
へぼ担当,2009年07月23日 22:08
一番心配なのは,外宇宙探査機用の原子力電池が作れなくなる点ですな( ・・)/
緑川だむ,2009年07月23日 12:23
> 外宇宙探査機用の原子力電池が作れなくなる点
上記に記したとおり,現在でも米国国内では高速増殖炉を保有していませんし,商業再処理も実施していません.
しかし,DoE他にて「原子力電池」となるプルトニウムを供給している段階で,上記のオバマ政権の政策と,「原子力電池」の供給不安は別次元のものであると断言できます.
(実際には他の要素で,大変懸念されている問題があるのですが,こちらは別問題ですので,ここでは一旦割愛します.)
> それを受けた「科学ニュース+」住民の反応
お仕事モードでなくとも本音をぶちまければ,「科学ニュース+」住民が如何に原子力分野(原子炉物理学・原子核物理学・核融合分野)を全く理解していないのか,絶望的なぐらいよく分かるレスの嵐と愚考します.
思わず,
「絶望したっ!
2ちゃんとはいえ,この程度のレベルで軽々しくも科学を語るぐらいだから,日本の科学界の将来は真っ暗だ!
本当に絶望したっ!」
と,絶望先生になってしまうのが避けられないですね.
個人的には,以下の>>93のレスに激しく同意.
私個人の場合,この観点だけで小一時間でも,1ヶ月でも問い詰めることが出来,これらレスの問題点が究極にまで濃縮されているものと考えます.
――――――
93 :名無しのひみつ:2009/04/25(土) 23:13:18 ID:ocAfvOMD
兵器級とそれ以外のプルトニウムの違いを言ってみろ,
仮に消滅処理をするとして,依存するのはビームのエネルギーなのかフラックスなのか.定性的でいいから,反応断面積と中性子エネルギーの関係を言ってみろ.
計算しなくても,って計算の前提を理解してないと,どんな高級なコンピューターで計算しても意味が無いだろ.
だから何度も言うように,レーザー爆縮を偏愛する愛情で消滅処理について勉強してこい.
それから宿題の核融合の歴史的経緯と,なぜ困難だったかについてもな.
ついでに言うと,もっと原始的なところで『プロジェクトX』辺りを見るところから始めた方が良いかもしれん.
お前はなんでもかんでも簡単だ簡単だと言い過ぎる.
――――――
少なくとも>>93のレスにまともに答えることが出来なければ,
「原子力専攻もしくは理学部物理学科専攻の大学3年生レベルの原子炉物理学と原子核物理学」
の単位はもらえないことを保証します.
原子力専攻でしたら学部を卒業させてもらえません.
それくらいのレベルの低さだ,と考えていただければ結構です.
以上,ご参考まで.
へぼ担当,2009年07月23日 22:08
>「絶望したっ!」
原子力分野じゃなくても似たようなもんです,はい.
ゆきかぜまる,2009年07月23日 22:33
以上,「軍事板常見問題 mixi支隊」より
青文字:加筆改修部分
【質問】
>原子力専攻でしたら学部を卒業させてもらえません.
>それくらいのレベルの低さだ,と考えていただければ結構です.
N速どころか軍板でも,原子力・核兵器関連の駄目っぷりは酷いものですが,でも学部の原子力専攻レベルを基準にするのは酷すぎると思いますが…
ちなみに私は,及第点をもらえるような解答が出来る自信はありません!
いや,専攻違いますし,興味あるから量子系の授業を受けてるだけのフリークなので(言い訳)
D.B. in 「軍事板常見問題 mixi支隊」,2009年07月24日 23:18
【回答】
自虐的になりますが,「大学4年生卒の原子力専攻者」レベルというのは,他の学科に比べてそれほど高くないのです.
と言うのは,原子力専攻の場合,普通に受講すれば放射線・放射能を用いるものは機械・物理・化学・医学(放射線保健物理学)他ほぼ全て履修することになりますので,他の学科に比べて「広く・浅く・定性的に」という傾向が「非常に強い」のです.
また,数学のレベルで言えば,微分方程式の解法や行列演算式の解法を求められても,特別な例外を除き基本的には「スカラー量」しか必要としないため,ベクトル量を必要とする他の工学部各学科とは大きな違いがあります.
そのような中,「中性子のエネルギー分布,核反応断面積,中性子束(flux)」の概念は,原子力専攻者であれば,基礎中の基礎.原子力分野の根幹をなす部分のため,それすら理解できない人間には極めて厳しい評価が下ることとなる訳です.
<逆にそれさえ理解できれば,「大学4年生卒の原子力専攻者」レベルでは,後は定性的なお話でほとんど済むという点もあります.>
まあ,身内に対して技術的な立場では,極めて厳しく妥協を許さない(社会的に許されないという事情もありますが)態度(後輩からは鬼とか悪魔とか言われましたが(大汗))を取る私個人の特性もあります.
その点は割り引いていただき,原子力専攻外の方にはお気軽に考えていただければ幸いです.
へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」,2009年07月25日 00:18
【質問】
なぜアメリカはプルサーマルに熱心ではないのか?
【回答】
アメリカにはウランを含め,国内にエネルギー資源が豊富にあり,再処理しなくてもウラン価格が比較的安価なため.
また,核不拡散という安全保障戦略の観点から,ウラン濃縮を他国が行うことに対しての警戒感があるため.
しかしMOX燃料は元々,濃縮ウラン不足の懸念があった当時のアメリカで考案されたアイディアであり,カーター政権以前には行われていた.
また,2008年12月末でも,アメリカでは7基の原子炉においてMOX燃料が使われている.
【参考ページ】
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=04-09-02-03
『知ってナットク原子力』(宅間正夫&藤森礼一郎著,日本電気協会新聞部,2005.2.25),p.40-42
【ぐんじさんぎょう】,2011/05/20 20:10
を加筆改修
【質問】
スリーマイル島原発事故での,住民への危険性はどの程度のものだったの?
【回答】
3月30日,周辺約8km以内の幼児と妊婦の退避が勧告された.
しかしこれは,周辺の放射線測定結果が誤って伝えられ,さらに,1次冷却系内の水素が爆発するかもしれないという,根拠のない情報が伝わったことに起因するものだった.
実際には,事故による周辺公衆の被曝線量は最大でも1mSv(100mrem)以下で,健康に与えた影響はほとんど無視できる程度であった.
たとえば,被曝線量が最大となると考えられる,サスケハナ川東岸にあるTMI原子力発電所北門付近において,事故発生から数日間連続して屋外に居たと仮定した場合でも,その値は100ミリレム以下,また,TMI原子力発電所から半径80km以内の住民約216万人についての集団線量については,家屋の遮へい効果を考慮した場合2,000人・レム(個人平均約1ミリレム)と評価されている.
内部被曝に関しては,環境試料測定値からよう素131の吸入又は摂取による甲状腺被曝線量の最大値は,作業従事者の約54ミリレムと算定されている.
周辺公衆760人について全身測定を行った結果,有意な体内汚染は検出されず,これらの被曝による健康への影響は外部被曝より少ないと考えられている.
作業従事者の集団線量は,3月から6月末までで約1,000人・レム,事故直後に全身被曝線量が3レムを超えた者は3名で,最大は約4.2レムであった.
その後,9月末までに3レムを超えたものは合て7名となっているが,年間の線量限界(5レム)を超えて被曝した者はない.
これらの被曝によって生じ得る健康への影響(発ガンなどの身体的影響と遺伝的影響)は,これらの被曝がなかった場合に比べて,無視し得る程度であった.
たとえば,半径80km以内の約216万人の住民のうち,自然に,あるいは何らかの特定できない原因によって今後発ガンによる死者は,約325,000人と推定されているのに対し,TMI事故によって増加するガンによる死者は1名未満と推定される.
放出量についてはいくつかの推定があるが,原子力安全委員会(米国原子力発電所事故特別委員会第3次報告書)資料によれば,放射性希ガス約250万キュリー,よう素のうち,よう素131が約15キュリーと推定されている.
事故後,来日したボーチン博士(英国放射線医学の重鎮)によれば,
「周辺住民の受けた危険性は,半年間にタバコ1本分の喫煙程度」
だったが,中村政雄によれば,日本では実態が解明されないまま,危険性だけを浮き彫りにするような報道がなされたという.
周辺公衆の受けた健康上の影響の最大のものは,放射線被曝による影響より,むしろ精神的影響であったと考えられる.
上述の避難勧告で,一般市民もまた避難行動を起こしてパニックが発生し,事故
2 年後までは,多くの地域住民が慢性的に高いストレス症状を示したという.
【参考ページ】
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=02-07-04-01
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=02-07-04-03
http://mzpubdata.maruzen.co.jp/www09/mzpubdata/stress/Stress517.pdf
http://www.bycomet.com/2011/03/blog-post_23.html
『原子力と報道』(中村政雄著,中央公論新社,2004.11),p.74-75
【ぐんじさんぎょう】,2011/06/29 20:40
を加筆改修
【質問】
「アメリカの日量1000万バレルの油田(埋蔵量はあと300億バレル)があと7,8年で枯渇.
するとアメリカの石油メジャーは崩壊,アメリカ経済も崩壊するわけだ.
アメリカの2200万人の公務員の生活基盤が崩壊する」
というのは本当ですか?
【回答】
それはちょっと,無茶な話.
確かに米国の内陸油田は枯渇が始まってますが,海上はそうじゃない.
って言うより,米国は環境法でメキシコ湾とカリフォルニア沖での新規油田開発は凍結されていたはず.
陸上油田も州によっては,既存の井戸の改修のみの処があったはず.
ちょっと昔,この措置を「国内油田の温存による戦略備蓄」と捉えた論調が多かった.
この措置をかいくぐるために,メキシコ湾のメキシコ領内での開発が進められ,今はメキシコは確か産油国.
輸出がどのくらいか,手元に資料が無いんで不明だけれど,米国の石油戦略を舐めない方が良いと思いますよ.
すでに水深1000mを超える海底油田が開発されて,稼働してる時代に,米国オワタを石油からつついても無理ですな.
〔略〕
どっちか,ったら,農業つついた方が,アメオワタに近い結論が出ると思うんだが,かなり農業に詳しく無いと,情報を分析できないからねぇ・・・・
地球の裏側 ◆/lYVcP7um2 in ニュース極東板
青文字:加筆改修部分
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