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 【link】

「kojii.net」■(2010/06/28)抑止効果というものについて考えてみた

「kojii.net」■(2011/08/08)脅威・リスクとの向き合い方に関する徒然

Masashi Okuyama in twitter◆(2012/08/27)
>「安全保障の話をすると,すぐに「右翼だ」となる.しかし,そうやって誤魔化す段階は,もう過ぎたのではないか」(田原総一郎)」
 彼自身も,「安全保障を真剣に考えさせない」側に加担してきたような気が・・・

「Togetter」◆(2010/11/06)セキュリティに一番重要なもの

「VOR」◆(2012/10/15)アルマゲドンウィルスが人類を脅かす

「VOR」◆(2013/05/22) 国際サロン「複合的な安全保障2013」,人間と社会を守る

安全保障学を学ぶ

「たむたむ」◆(2011/07/12) 「政治と安全保障」講演録(田村重信・10)

「地政学を英国で学ぶ」;安全保障ジレンマ

「地政学を英国で学ぶ」◆(2010/05/25)抑止:その1

「リアリズムで防衛を学ぶ」◆(2010-06-22)インフラとしての安全保障

「リアリズムで防衛を学ぶ」◆(2010/06/26)[書評]「安全保障のポイントがよくわかる本 ―安全と脅威のメカニズム」

『〈人間の安全保障〉の諸政策』(岩浅昌幸・柳平 彬編著,法律文化社,2012/9/3)

『「人間の安全保障」論』(メアリー・カルドー著,法政大学出版局,2011/3/24)


 【質問】
 軍事力で戦争から国や国民の生命・財産・自由を守る,具体的かつ現実的な方法を答えてください.

 【回答】
 そんな方法はありません.

 軍事力に出来ることは

・戦争が近づかないように他国の戦争意欲を抑止すること
・戦争になったときに国や国民の生命・財産・自由の損害を減らすこと

ぐらいです.
 どちらの効果も完全ではなく,戦争を仕掛けられることを完全に防止することは出来ません.

 しかし,それは軍事力以外の手段を用いても同じことで,
『軍事力以外の何らかの力で戦争から国や国民の生命・財産・自由を守る,具体的かつ現実的な方法』
も,今のところ存在しないと思われます.

(ごっぐ ◆2aCs6PCFec)

 むしろ,軍事力以外の手段で,戦争から国や国民の生命・財産・自由を守る,具体的かつ現実的な方法を答えてください.



 【質問】
元統合幕僚会議議長,すなわち自衛官のトップの地位にあった栗栖弘臣氏(故人)は,『日本国防軍を創設せよ』(小学館文庫,2000)という本の中で,以下のように述べる.
「国民の生命,身体,財産を守るのは警察の使命(警察法)であって,武装集団たる自衛隊の任務ではない.
 自衛隊は『国の独立と平和を守る』(自衛隊法)のである.
 この場合の『国』とは,わが国の歴史,伝統に基づく固有の文化,長い年月の間に醸成された国柄,天皇制を中心とする一体感を共有する民族,家族意識である」(78項)
 文化だの国柄だの家族意識などというものを,軍事力でどうやって守れるというのか.
 さらに言えば,自衛隊が国民の生命,財産を守ることを前提としない武装集団であるというのなら,そんなものをどうして税金で維持しなければならないのか,理解に苦しむ.

 しかしまあ,これが〔略〕プロ意識というものを勘違いした「軍人」が考えることなのだろう.

林信吾著『反戦軍事学』,p.204-205

 【回答】
>文化だの国柄だの家族意識などというものを,軍事力でどうやって守れるというのか.

 質問と解釈して,僭越ながら回答させていただきます.

 栗栖の記述にも問題点はあるようですが,林の同書に比べれば,そんなに外しているわけでもありません.

 一つ上の項目で述べられているように,軍事力にできることの一つは,

>戦争が近づかないように他国の戦争意欲を抑止すること

ですので,抑止することによって『国の独立と平和を守』っていることになります.

 そしてひとたび『国の独立と平和』が失われた場合,戦史を紐解きますと,強制的な同化政策が行われ,被征服民族の文化が破壊・抹殺される場合が多々あります.
 21世紀でもチベットなどにその例を見ることができます.
 亡命者情報によれば,子供に親のことを密告するよう奨励するなど,家族意識を破壊する施策も行われていると聞きます.
 旧ソ連時代のロシアや,そのソ連軍の占領下のアフ【ガ】ーニスタンでも,同様の例が伝えられています.

 したがいまして,

>文化だの国柄だの家族意識などというものを,軍事力でどうやって守れるというのか.

という質問に対する答としては,
「抑止力を発揮することで,間接的に守ることができる」
ということになるでしょうし,それを税金で維持するのは大事なことだといえるでしょう.

 余談ですが,

>プロ意識というものを勘違い

などと書かれていますが,この箇所を含め,ちょっと調べればすぐに分かるようなミスが同書には多く,プロ意識のかけらも見ることができません.
 そのような著者に,他人のプロ意識をどうこう言う資格はないように思えるのですが……

 【質問】
http://www.magazine9.jp/juku/006/index.html
 このページで
「軍隊は国民の生命財産を守るものではないのだから,憲法9条を変えて軍隊を持つ必要はない」
と主張されてますが,軍事的には「軍隊は国民の生命財産を守るものではない」との見解は正論なんでしょうか?

 【回答】
 国によって軍隊の性質が違うから,正論にも穿った見かたにもなりえます.

 例えば,国民の中の反政府派を軍や警察に命じて問答無用で虐殺するような政権にとっては,その軍隊は悪く言えば,国民のためのものというより政権の私物.

 日本を始めとした民主主義国家の場合,その指揮権は国家元首を通じて間接的に国民が持ちますので,国民のためのものと言えます.
 ただ,一応は軍隊は国民と国家と国土を守るけど,いざ戦争になったら,敵が攻めてきても国民を守り切れなかったり見捨てなきゃならないときもある.
(作戦上仕方なく,後で戦力集結して奪回するため,敵に占領されるのを見ながら撤退する等)

 軍事力に限らず,「力はそれを持つ者の性質を如実に現す」というのが,人類の普遍的な教訓と言えます.

 今の自衛隊は間違いなく,「国民の生命財産を守るもの」と言えるでしょう.
 他所の国の軍隊が実際に攻めて来たときは無論の事,抑止力としてもそうです.
 今の日本国という組織を守るのが軍隊の役目です.自衛隊の任務は,国外からの侵略に対して我が国の平和と独立を守る事と,必要に応じて公共の秩序維持です(および最近は海外貢献も).
 それによって,憲法以下の各種法体系で保護されている日本国民の私有財産や自由が守れるのです.
 もし自衛隊がなければ,日本は外国の軍事的圧力に屈するしかなく,また,外国から日本に対する投資も激減するでしょう.
 イラク派遣のように,一見,「国民の生命財産を守る」事と無関係に見える行動もありますが,これは外交関係から国益にかなう,と政治家が判断しての事です.
(無論,その判断が正しいかについては賛否両論がありますが)

 したがって,
「軍隊は(必ずしも)国民の生命財産を守(れ)るものではない」
が妥当.

 ちなみにそこは,護憲論を口実として,反軍事・反軍事を通じ,国民が自分を守ることへのネガティブキャンペーンを行うようなサイト.
 軍事的に見れば,現実に行われている宣伝戦の一環として見ておくほうが良いかと.
 例えて言うなら,日本軍がアメリカに対して行った東京ローズみたいなものだ.

 あと,そのサイトの最後のほうに描かれているのは少し違います.
 国体とか抽象的なものを守るんじゃあなくて,例えば国民が1億人いて,10万人ぐらい見捨てても残りが助かることがあるなら,大多数のほうが生き残れればそれでいい,が正しい.
 それに,軍隊が1億人の代わりに死ぬ10万人という見方もあるし,軍隊を構成する人間だって国民だし.
 どっかの徴兵制度ある国では,
「徴兵の義務に応じるから市民権がある=国民として国の一員である資格がある」
としたところもあります.
 また,第二次世界大戦でフランスはドイツに占領され,軍隊は国民を守り抜けなかったことになるけど,フランスで国民が軍隊に不信感を抱いてるなんて話は聞きません.
 なんでかというと,元々国民が軍隊に参加して,自分で自分と自分の国を守ってる意識があるからです.

 そもそも戦争って,政権と軍隊だけが関わるものじゃありません.
(なぜ,国民は戦争に関わらず政権と軍隊が勝手に戦争始めると思ってる人も希に居るのかがわからないけど…)
 歴史的に見れば,ヨーロッパで起きた市民革命を経ることにより,政治は完全に市民のものになったが,同時に戦争も市民のものになった.
 日本は西洋民主主義のみ並行輸入したことによって,戦争が自分達のものであるという意識が乏しく,戦後平和主義がこれをさらに加速させたのでは?と.

国民の「萌え」を守るための軍隊


 【質問】
 軍隊は市民を守るためのもの?

 【回答】
 副次的な意味で国民を守ります.
 国家を構成する3要素,「領域」「人民」「主権」を守るために軍隊はあるわけですね.

葉月 in mixi

:

 〔日本でも,〕少なくとも自衛隊ではそう定められています.

Cpt.hige in mixi

 そして実際に自衛隊は日本国民を守っています.
 抑止力を発揮する,という形でです.

 反戦平和主義者が軍事を語る際,この「抑止力」という概念を忘れがちになることがあるので,注意が必要です.
 江畑謙介も「軍隊の任務の第一は抑止力である」旨,述べています.


 【珍説】
 軍事力によって,「脅威」が防げるというのは,依存症の一種ではないかなと思うんですね.「軍事力依存症」と呼んでもいい.
 「暴力依存症」というのがありますよね.妻や親,子どもに暴力をふるう.
 暴力で周りより優位に立ちたい,そうでないと自分の存在を脅かされるような心境に陥ってしまう−−そういう病理なのですが.

トリトン in mixi
(軍事学的考察上の必要性に鑑み,
引用権の範囲内で引用しています)

 【事実】
 そんな言い方してると

9条によって,「平和」が守られるというのは,依存症の一種ではないかとなと思うんですね.「9条依存症」と呼んでもいい.

こういうふうに返されても文句言えなくなりますよ.

Hais von Ruty in mixi

 軍備を揃えるのはその国家の集団利益の追求のためです.
 個人意識の集合体,即ち一種の統制機構である国家と,その個人の内面意識の問題を一緒くだにする意図が理解できません.

いっくん in mixi

 悲しいかな現在の世界は,今もって「軍事力」によって平和が保たれているのが現実です.
 「軍事力による恫喝」がまかり通っています.

 「依存症」呼ばわりは,こうした現実を見ていないと見られてもやむなし・・・と私は考えます.

平作 in mixi


 【質問】
 「恐怖」はどのように戦争に関わってくるのか?

 【回答】
 恐怖は攻撃を引き出す大きな要因になるという.
 以下引用.

 人間の社会で行われるあらゆる争いの原因は三つある,ということを,ギリシャの戦史家ツキディデスは言ったわけですが,とくに最初の「恐怖」という部分は非常に面白い.

 たとえば犬.
 「弱い犬ほどよく吼える」とよく言いますが,たしかにこれはある程度当っております.
 どういうことなのかというと,小さい犬というのは,恐怖を感じるからよく吼える,ということですな.

 人間でも同じです.
 不安を感じた人間というのは攻撃的になります.
 心理学でも
「強烈な不安を感じると人間は怒る」
とよく言われてますが,怒りは攻撃性につながります.
「カッとなって殺した」
というのは殺人事件の動機としてよく聞かれる言葉です.

 戦争でも同じです.
 リアリスト系の学問ではこのへんの研究がすでにけっこう進んでいて,戦争というのはどうやら,ある大国の国力が落ち始めて,国内社会が不安になった時に起こりやすい,という研究結果を出しております.
 要するに不安が恐怖感につながって攻撃的になる,と.

 簡単な例としては第一次世界大戦.
 この時はドイツが
「まわりに囲まれてしまう!」
という恐怖におののいて,戦争を仕掛けたという部分がとても大きい.

 これを踏まえると,東アジアで次の戦争が起こるタイミングもおぼろげに見えてきます.
 そうです,(囲まれている!と感じた)中国が,国力の落ち始めた時です.

 また,恐怖については,地政学の戦略でも同じことが言えます.
 地政学ではスパイクマン(一説にはスピークマン)が第二次世界大戦中に「リムランド論」というものを提唱しているのですが,この戦略の底にあったのは
「ユーラシア大陸からデカイ国(ドイツかソ連)が出てきたらやばい!」
というアメリカの不安でした.
 これを防ぐにはどうしたらいいのか?と考えたスパイクマンは,なんと逆に
「ユーラシアの周辺地区をとりにいけ!」
ということを主張したのです.
 要するに「攻撃は最大の防御」というわけですな.

 格言:不安・恐怖は攻撃性のタマゴ

「地政学を英国で学ぶ」,2005-07-11 09:06

 また,アルカーイダなどのテロ組織も
「イスラームを害する敵に周りを囲まれている」
と,国際情勢に疎い大衆を煽ってテロに駆り立てている部分が大きい.

 攻撃的な独裁国家も,絶えず国民に「外敵への恐怖」を植え付けようとしている面がある.

 そう考えると,上記は,極めて普遍的な真理を突いていると思われる.


 【質問】
 集団安全保障とは何か?

 【回答】
 アメリカ大統領,ウッドロー・ウィルソンが考えた,国際秩序のシステムのこと.

 基本的にリベラルの考え方で,今まで主流だった「バランス・オブ・パワー(均衡勢力)」に対して,国際的なルールを作り,多数の国で「非侵略国家連合」の様なものを作り,侵略国家へ,この連合をもって対抗しようと言う考えである.

 根底には,第一次世界大戦があまりに悲惨であり,バランス・オブ・パワーを維持するための戦争に,世界は耐え切れないというところから出てきた考え方だろう.

 ただ,色々な問題点がある.

 1.そもそも,提案したアメリカが集団安全保障の国際連盟に参加しなかったこと.

 2.各国家の主権を認めすぎたゆえ,拒否権が各国にある状態であり,強制力にあまりにも乏しかったこと.

 3.全会一致が原則であり,権力の発動としては利害調整の作業があまりにも煩雑なこと

 まぁ,1.の時点で,相当怪しい体制ではあったと思う.

 詳しくはジョゼフ・S・ナイ「国際紛争」(有斐閣,2005.4)第4章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 冷戦崩壊後における「パワーの移行」に関する危険性は,どのようなことが考えられるのか?

 【回答】
・パワーの急激な移行は紛争の大きな原因の一つとなる.
・パワーの移行を予想することは困難である.
・「一極化」と「多極化」の考え方がある.
・アメリカは確かに大きな力を有しているが,それは帝国と呼ぶにはあまりにも政治統制が脆弱である.

***

 色々な歴史・政治学者が述べてきたように,急激なパワーの移行は大規模武力紛争の原因になる.
 これは,WW1・WW2におけるドイツの隆盛,WW2以後における米ソの二大極化と対立などの例を見れば明らかだ.

 冷戦後は,米の一極化,中の台頭,ロシアの後退に伴う急激な力の移行期があった.
(ただしロシアは力をかなり取り戻しつつあり,逆に米は少し力を後退させはしたが)

 この力の移行に関しては変化の方向性を予測するのが困難で,この予測の困難さこそが紛争の原因ともなっている.

 変化の方向性の一つは多極化で,フランスのシラク前大統領は,多極世界への回帰を呼びかけた.
 しかし,これを19世紀型の世界秩序に求めるのは間違いだ.
 19世紀の秩序とは5大国(イギリス・ロシア・オーストリア・フランス・ドイツ)のバランス・オブ・パワーに基づいて構築されたものだが,冷戦後の力関係は同等と呼ぶには程遠い状況で,ロシアは核兵器を保持し続けているが,1990年代を通じては力を後退させ続けた.
 逆に中国は長期にわたって高い経済成長を成し遂げたが,依然として発展途上国である.

 日本とドイツは超大国になる・・・という予測も1990年代にはあったが,これは間違いで,経済規模ではEUが同等であるものの,軍事的にはアメリカが唯一の超大国になっている.

 経済については,ヨーロッパ,アジア,北米の三つの経済圏を中心に組織されるという見方もあるが,グローバル化と多国籍企業,エスニック・グループのような非ブロック,非国家主体の増大によって,これらの要素が,自らの行動を制約する能力には限りがあるだろう.

 また,ハンチントンが述べるような文明間の視点から論じることにも限界がある.

 2003年のイラク戦争で,国際秩序をアメリカの世界帝国化と言う人たちもいた.
 これについて,ナイ教授は以下のような見解を述べている.

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 多くの点で,帝国という比喩は魅力的である.
 アメリカの軍事力は世界中の基地と共にグローバルに展開しているし,その地域ごとの司令官たちは時には総督のように振舞う.
 かつてラテン語がそうであったように,英語は時には国際語である.
 アメリカ経済は世界最大で,アメリカ文化は磁力のように人を惹きつける.

 だが,優越の政治を帝国の政治と混同するのは,誤りである.
 19世紀や20世紀のヨーロッパの海外帝国について我々が考えるような意味では,アメリカは決して帝国ではない.
 というのも,そうした帝国主義の中核的特徴は政治的支配だったからである.
 アメリカとより弱小な国々との間には,確かに不平等な関係が存在するし,搾取を導きうるが,公式の政治的統制を欠くものを「帝国」と呼ぶのは,単に不正義なだけでなく誤解を招く.
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 イギリスが世界帝国を築いていた時よりも,現在のアメリカは大きなパワーを有しているが,当時のイギリスに比べれば,他国に対する統制という意味では,アメリカがパワーを行使しうる場面は限られている.

 これについて,ナイ教授はイギリスとの対比を引き合いに出している.

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 対外関係は言うに及ばず,ケニアの学校や税金,法律,選挙は,イギリスの関係に統制されていた.
 今日のアメリカはそうした統制力をほとんど持たない.
 2003年に国連安保理でアメリカは,メキシコやチリがイラク問題をめぐる2度目の決議案に賛成投票を強いることすらできなかった.
 帝国論者たちは,「帝国」という言葉は単なる比喩だ,と答える.
 だが,この比喩に伴う問題は,それがワシントンからの統制を含意しており,こうした統制は今日のパワー分布の複雑なあり方とほとんど合致していないことである.
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 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第9章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 21世紀の軍事的安全保障はどのように変化していくのか?

 【回答】
 これは,非国家的主体の存在により,さらに複雑化していく可能性が高い.

 21世紀の国家安全保障委員会は,1814年以来,アメリカは他国から侵略された事はなく,アメリカは,遠隔地にて兵力を展開し,そこで戦うような性格を持っている.

 だが,9.11で脱国家的なテロリストの攻撃によって,1941年の真珠湾攻撃以上の打撃を被った.
 これについて,ナイ教授は以下のような見解を述べている.

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 今日では,攻撃者は政府,個人,またはそれらの組み合わせかもしれない.
 2001年9月11日にアメリカを攻撃したアル・カーイダのネットワークは,多くの国々出身の個人と集団を含んでおり,(アメリカを含む)50カ国にものぼる細胞組織を持っていたといわれる.
 だが,攻撃者の中には匿名で,攻撃目標国[アメリカ]に近づきさえしない者もあるかもしれない.
 1998年に,7件のモスクワのインターネット・アドレスが国防省とNASA〔米航空宇宙局〕の秘密情報の盗難事件に関与している,とアメリカ政府が不満を述べた時,攻撃が行われたとされる電話番号は使われていない,とロシア政府は回答した.
 アメリカには,ロシア政府が事件に関与していたか否かを知る術はなかった.
 30カ国以上が攻撃的なコンピューター戦争計画を開発しているが,コンピューターの知識がある者ならわかるように,このゲームには個人でも参加できるのである.
 ほんの少しキーバードを叩くだけで,世界のどこにいるかわからない匿名の犯人が,主要都市の(民間の)電力網や(公共の)緊急対応システムに入り込んで撹乱するかもしれない.
 マレーシアのハッカーが,シカゴ電力を切断して,世界の反対側から大きな被害を与える事ができる.
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 21世紀の安全保障にとって,核兵器や国境警備,地域間のバランス・オブ・パワーも引き続き重要であり続けるだろうが,それだけではもはや不十分になるだろう.

 まとめ

・脱国家的組織は,国家の安全保障にとって,新たな脅威ファクターとなる.

・情報化社会では,国家や組織どころか,個人レベルで国家にダメージを与える事も可能である.

・21世紀の安全保障は,従来のものに比べて,さらにこれらの脅威に対処する必要が出てくる.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第8章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 これから起きうる「脅威」に対しては,どのような対処が必要となってくるのか?

 【回答】
・21世紀の脅威には,従来の安全保障の概念以外の物が必要である.

・テロリストを支援している国家が明確に立証される場合は少ない

・ウェストファリア的な考えでは,新たな脅威に対処できない.

***

 テロリストに対して,従来の抑止が限定的であることを見ても,新しい概念の安全保障が必要になるだろう.

(※ただ,これは散々言ってきたが,従来の安全保障が必要なくなるということではない,
 そうではなく,従来の安全保障だけでは十全ではなくなってくるという意味.
 だから厄介なんだけど.)

 アフガニスタンのように,ある国家がテロリストを支援していることが立証される場合はともかく,報復先が明確な場合は稀だからだ.

 また,911以前のアメリカにおける最悪のテロはオクラホマ市の連邦ビル爆破に見るとおり,完全に国内的な問題だったが,現在では国際的な問題であることが多い,国際的なテロリズムのネットワークが情報革命とともに確立されたから.

 テロ組織の行動について,ナイ教授は以下のように分析している.

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 犯罪集団が,ある国家の政府を制御しながら,表向きは国際法を遵守して行動し,内政干渉に対して主権保護の権利を主張するかもしれない.
 このような場合,他国は干渉することに正当性を見出すだろう.

 ラテンアメリカやカリブ海には,この状況に近づいているところもある.
 1989年のアメリカによるパナマ侵攻とマニュエル・ノリエガ大統領の拘束,そして麻薬密売の罪によるアメリカ国内での裁判がその例である.
 2002年にジョージ・W・ブッシュ大統領は,テロリストの脅威に直面した場合の先制攻撃を容認する,新しい「国家安全保障戦略」を発表した.
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 国家の枠組みを超えた脅威が広まるにつれ,国内問題と国際問題を区別するウェストファリア条約的な基準で国家を捉えることに疑問が生じるだけではなくて,それを超えた安全保障と防衛の概念が生まれている.

 国家を超えた安全保障の概念に関して,ナイ教授は以下のように述べている.

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 新たな脅威の大部分は,強大な軍事力では対応できないものとなるであろう.
 民間セクターによる施設の保護や防犯対策とともに,諜報,税関,警察組織の緊密な協力が重要な役割を見出すであろう.
 もし民主主義がこうした課題達成に失敗し,大量破壊兵器を用いるテロリストが,国家間ではなく個人間の無政府状態を創出すれば,将来に関するフクヤマの見通しはより怪しいものになろう.
 もちろん諸国の政府がこの挑戦に立ち向かいテロを封じ込めることができたとしても,国家間秩序に関するより伝統的な問題は残るであろう.
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 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第9章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 脱国家的な脅威は,これからの安全保障にどのような影響を与えるのか?

 【回答】
・冷戦後に核開発に参入してきた国が核兵器を使用する可能性は冷戦時よりも高いかもしれない.

・脱国家的テロリストが大量破壊兵器を使用する状況というのは,21世紀において最大レベルの脅威である.

・新たな攻撃手段として,サイバー攻撃が出現してきた.

***

 冷戦時代,核兵器は精密な安全装置によって管理されており,発射には複雑なシーケンスが必要だった.

 だが,新たに核開発を行おうとする国々の多くは,おそらくこの手の装置を備えないだろう.

 冷戦の終結と技術の拡散によって,核軍拡競争に参加しようとする国が核を使用する可能性は冷戦時よりも高まる可能性もある.

 だが,今世紀において最も大きな脅威の1つが,「国家の枠組みを超えたテロリスト集団」が大量破壊兵器を所有することだろう.

 ビン・ラーディンとアル・カーイダのネットワークはこうした兵器を入手しようとしており,パキスタンの科学者と接触したことがわかっている.

 核分裂兵器(いわゆる通常の核兵器)の生産は困難で,持つのには莫大な費用がかかる,

 だが,核兵器だけが唯一の脅威ではない.
 イラクの例を見ればわかるように,さまざまな国がBC兵器を開発している.

 生物化学兵器をテロリストが所有することの脅威について,ナイ教授は以下のように述べている.

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 生物兵器は核兵器よりも製造が容易で(製造法はインターネットで検索可能),無防備な民間人に脅威を広めるために使用可能である.
 1993年に,ニューヨークにある世界貿易センターの地下駐車場でトラック爆弾を破壊させた国際テロリストが,高性能爆薬に炭素禁や化学兵器のサリンを併用していれば,数千人の犠牲者を生み出したであろう.
 2001年にテロリストたちは,ハイジャックした民間航空機を巨大な巡航ミサイルにして,この目的を達成した.

 もし彼らが核兵器を入手していたら,数十万の命を奪ったであろう.
 アル・カーイダのネットワークが壊滅しても,問題が解決するわけではない.
 1995年に,日本のカルト宗教集団オウム真理教が東京の地下鉄でサリンを使って,12人の犠牲者を出した.
 オウム真理教はすでに国家の枠組みを超えて拡大し始めており,生物兵器の開発実験を行っていたし,核兵器の調査も行っていた.

 テロリスト集団はまた,病院や航空管制や銀行取引用の電力をつかさどる情報システムを攻撃することで,大損害を与えることが可能である.
 このような攻撃は,基幹となるサーバ・コンピュータのある場所を高性能爆薬で爆破することによっても実行可能であるが,何万マイルも先のコンピュータをハッキングすることで国際的に実行することも可能である.
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 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第9章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 現在の国際社会において,軍事力はどの程度の影響力があるのか?

 【回答】
 もちろん,紛争解決に決定的な役割を果たすのは間違いないが,パワーの分布が複雑すぎて,「決定的な」影響を与える場面は限られてくる.
 つまり,さまざまなパワーが多層的なチェス盤の上にあるような状況であり,しかもそれぞれが交差しているので,単純には語れない.

 ナイ教授の見解では,

-------------------------------------------------------------------------
 仮に軍事力が貨幣のような代替可能物品であって,あらゆる分野で結果を左右できるのであれば,このような複雑さは問題とならない.
 しかし,今日の世界政治上の経済や脱国家的ゲーム盤では,軍事力はそれらの結果を左右するほどのパワーは持っていない.
 アメリカは,どの国よりも多様なパワーの源泉を所有し,恵まれてはいるが,現在の世界秩序は古典的な意味でのアメリカ帝国の時代を意味しない.
 世界で唯一の超大国も独りではやっていけない.
 グローバリゼーションにより,国際的な課題を巡って,最強の国でさえ他と協力せざるを得ないのである.
 たとえば国際金融の安定や世界的な気候変動,伝染病の拡散,脱国家的な麻薬,犯罪,テロ・ネットワークなどを考えて見ればよい.
-------------------------------------------------------------------------

 軍事力は確かに巨大な強制力であって,決定的な役割を果たす力は持っているものの,それを行使する場面は限られており,さらに,軍事力で解決できな分野の問題は増え続ける・・・もしくは,違った意味合いでの軍事力行使が必要になると思う.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第9章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 「人間の安全保障ドクトリン」とは?

 【回答】
 イラク戦争の反省を踏まえ,2004年9月に発表された,EU独自の安全保障戦略.
 純粋な軍事機構ではなく,平和維持活動と軍事介入の中間的なものと考えられている.
 以下引用.

 実は,イラク戦争の反省から,ヨーロッパは,世界の安全保障に向けて新しい方向性を模索している.
 それはアメリカのやり方とは一線を画した補完性を持つ,「棲み分け」の方法でもある.

 EUは,NATOとは異なった目的と形での独自の安全保障政策を進めようとしている.
 98年の英仏首脳会議でのEU独自の安保機構を構築するための合意以来,EUの緊急展開部隊創設の準備は進められているが,2003年末にはEUとして初めての独自の安全保障戦略(ソラナ報告)を発表した.
 イラク戦争での反省から,EUはアメリカからの批判に応えて,世界の安全保障への積極的なコミットの姿勢を表明した.
 そこで強調されたのは,国連を中心としたマルチラテラリズムの対応や,予防外交の重要性という,アメリカとは異なった力点を持つ主張だった.

 そして昨年9月には,軍事力と文民組織を混合した軍民組織(警察,法律家,人権監視員,税専門家,医師,看護師等を含む)の派遣を含む「人間の安全保障」ドクトリンを発表した.純粋な軍事機構ではなく,文民の比重を重んじた,平和維持活動と軍事介入の中間的なものと考えられている.

 知り合いのフィンランド人のEU開発支援専門官も,
「EUのやり方は,ゆっくりとだが,堅実なのだ」
と強調する.
 〔略〕
 EUの決定は確かに,多数の加盟国で協議した結果であるので,遅く,また,妥協的なものである.
 それは現地の政府やアメリカや他の国際機関との協調的・補完的活動なのである.

(渡邊啓貴 わたなべひろたか〔国際関係論専門家〕
from 「中央公論」, 2005/7, P.155-156)


 【質問】
 抑止力は軍隊の存在意義であるなら,抑止力の話は軍事関連の話題?

 【回答】
 軍事力は外交や政治の一手段に過ぎないが,やはり無いよりははるかにマシ.
 軍事力無くて政治や外交だけで国を守れるのは特殊状況下の国々,つまり
「攻めて占領するほど価値が無い(南太平洋の小さな島国)」
とか
「攻撃したら国際社会信用的にデメリットしかない(バチカン市国とか)」
「攻撃するより味方につけてるほうが得になる」
とか.

 かと言って,軍事力だけあって政治力とか外交力とか経済力とか輸出資源とか無い,価値の無い国にも意味は無い.
 そんな無価値な国と取引する国はあんまり無い.
 抑止力としての軍事に,他の外交取引材料が加わってこそはじめて意味がある.

 軍事力ってのはポーカー(外交)する時の絵札と同じなのよ.
 キングが一枚だけあっても意味無いだろ?
 クィーンにジャックにエースもあって,初めて役が完成する.
 逆に他があるのに軍事力が無いと,やはり作れる役の幅は減る.
 減る分不利になる.

軍事板,2010/03/11(木)
青文字:加筆改修部分

▼ 内容を否定する気はありませんが,例えにポーカーを使うのはおかしいように思います.

> 軍事力ってのはポーカー(外交)する時の絵札と同じなのよ.
> キングが一枚だけあっても意味無いだろ?

 通常のポーカーのルールに従うと,キングが2枚,3枚と重なると,どんどん手役が高くなりますよね.
 よって,回答者の主張とまるで逆の例えになってしまうように思います.

 また,細かい突っ込みですが,

> クィーンにジャックにエースもあって,初めて役が完成する.

 あの〜,まだ役が完成していないのですが….

 以上より,ポーカーの部分は消した方が良いと考えます.

トバルカインカードゲーマー in FAQ BBS,2010/4/14(水) 23:9
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 抑止力は自分でも作らなければならないもの?

 【回答】
 マイミクのzyesutaさんのブログ「リアリズムと防衛を学ぶ」で,実に興味深い記事が更新されました.
抑止力の正体:リアリズムと防衛を学ぶ

 記事の内容はとても素晴らしいものでした.
 さらにフォローするなら,抑止力は自分で作らなければなりません.
 なぜなら米軍に頼っているわけにもいかないからです.
 アイスランドやパラオのように絶海の孤島で,敵国が攻めてくる心配のない国なら,非武装で安全保障を他国に委ねても問題はありません.
 しかし日本の周辺は,脅威になる国ばかりです.
 しかもその脅威となる国は,いずれも軍拡をしています.
 そうなるとどうしても,独自の抑止力=防衛力が必要になるのです.

 そしてその防衛力は,その国の地政学と戦略に沿った装備をしなければなりません.
 ですので,清谷信一さんのように「軍用航空機の輸出を増やせ」では,話になりません.
 防衛力の維持には稼働率の向上が不可欠だからです.
 その意味で,日本の航空自衛隊の稼働率は,世界からも評価されています.

――――――
浜田防衛大臣海上自衛隊へP-3C派遣を命令! ソマリア沖海賊事案:北大路機関

 イラク復興人道支援任務に際しての航空自衛隊のC-130H部隊派遣を見ても,自衛隊は少数機を長期間にわたり高い稼働率を維持させる整備能力が,各国に評価されており,今回のP-3C派遣任務に際しても,任務完遂へ期待がもたれる.
――――――

 このように,空自の高い稼働率を維持させる整備能力は,世界でも評価されています.
 これを持続させるのもまた抑止力なのです.
 高い稼働率でF-15J/DJやF-2,さらには予想されるF-Xを維持してこそ,抑止ともなりえるのです.

 一方で海自はそれを怠っているのが,ちょっと気になります.
P-3Cモスボールの件についてお詫びと訂正:週刊オブイェクト

――――――
海自は次期哨戒機を何機調達できるか:清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所

 恐らく海幕は抵抗するでしょうが,財務省は
「だって,P−3Cの稼働率が低いのに放置しているじゃないですか.
 それで問題があるならば,何故他の予算を削ってもでもP−3Cの稼働率を上げないのですか?」
と質すでしょう.
―――――

 P-3Cを部品取りに使用する行為は,いくら予算がないとはいえ言語道断です.
 清谷氏の言うように,P-3Cの稼働率をまず上げるべきでしょう.
 この件については,清谷氏の意見に賛同します.

 もっともその清谷氏も,上記のようにやれ輸出しろとか,稼働率を思いっきり下げるような提言をしているので,何というかな・・・.

バルセロニスタの一人 in mixi,2010年06月15日13:39

※ 要予算


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