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<◆国際組織と国際法
<総記FAQ目次
国際航時法
Paganus@homepage(戦時国際法等)
『国際法 第2版』(浅田正彦編著,東信堂,2013/04)
『国際法 第5版』(松井芳郎著,有斐閣,2007/3/28)
『国際裁判の判決効論』(玉田大著,有斐閣,2012/10/24)
『国際法判例百選 第2版 (別冊ジュリスト204)』(小寺彰他編, 有斐閣,2011/10/3)
『ジュリスト』 2006/10/15号(国際法特集)
【質問】
国際法って何?
【回答】
主権国家同士の関係を規律するルール.
この,一定のルール,お互い認識している「常識」がバラバラだと,意味の無い争いが起き易くなるとされている.
近代的な意味での国際法は,1648年のウェストファリア条約が起源とするのが通説.
【参考ページ】
『世界一わかりやすい国際法入門』(尾崎哲夫著,ダイヤモンド社,2005.12),p.37-43
http://www4.ocn.ne.jp/~tishiki/kokusai-dai1.html
http://hosei-ils.sakura.ne.jp/il.html
【ぐんじさんぎょう】,2010/06/02 21:00
を加筆改修
【質問】
あるルールが,国際法たりうるかどうかの基準は?
【回答】
国際法の法源とされるのは,おおかまに,(1)条約,(2)慣習法,(3)法の一般原則,(4)判例および学説の4つ.
その他,国際機構の行為や,ソフト・ロー,衡平法が考えられる.
また,「後法は前法を破る」「特別法は一般法を破る」「強行規範」「対世的義務」などの原則があるが,それぞれの用語については別項に譲る.
【参考ページ】
『世界一わかりやすい国際法入門』(尾崎哲夫著,ダイヤモンド社,2005.12),p.54-60
【ぐんじさんぎょう】,2010/05/13 21:14
を加筆改修
【質問】
国際法における法源の優先順位は?
【回答】
ケースに応じて優位する順位は変化するが,「後法は前法を破る」「特別法(条約)は一般法(国際慣習法)を破る」「後の一般法は前の特別法を廃止しない」という原則がある.
他に,国際社会全体によって認められる規範である強行規範
jus cogens があり,これはそれに抵触する条約を一切無効にする.
対世的義務 obligation erga omnes というものもあり,これは国際慣習法の原則であり,全ての国が遵守すべき義務をいう.
【参考ページ】
『世界一わかりやすい国際法入門』(尾崎哲夫著,ダイヤモンド社,2005.12),p.59-60
【ぐんじさんぎょう】,2010/05/30 21:00
を加筆改修
【質問】
国際法にとって「条約」とは?
【回答】
国家の間で,文書の形式でなされる合意であり,国際法の法源の一つ.
誰でも文書によって確認できるという意味から,「文書形式」でなくてはならない.
また,協定,議定書,憲章,規程,宣言,合意,規則,条項というものは,条約と同じ意味を持つという.
【参考ページ】
『世界一わかりやすい国際法入門』(尾崎哲夫著,ダイヤモンド社,2005.12),p.54-55
【ぐんじさんぎょう】,2010/05/17 21:00
を加筆改修
つまり,さだまさしのアレは国際法の条約と同じであると(誰でも文書によって確認できるという意味で
ぎんなんそう in mixi,2010年05月13日 22:26
>さだまさしのアレ
続編が出るたびに
「追加議定書Ⅰ」
「追加議定書Ⅱ」
とか付くんですね.
クロームツァハル in mixi,2010年05月15日 09:28
【質問】
国際慣習法って何?
【回答】
国家の慣行から推測できる,法と認められる国際慣習.
(1) 国家による一般慣行が認められること(ずっとある行為を繰り返し行ってきたこと)
(2) その一般慣行は法的確信に基づいて行われていること(それをルールだと考えて行ってきたこと)
が,そうと認められる要件.
法的確信かどうかは,国家の行為,または行為に対する国家の意思表明(たとえば,大量虐殺事件について,それを非難する声明など)によって判断される.
……あの本の中の世界では,
「国際紛争はまず麻雀で解決を図る」
というのが国際慣習なんだろうなあ.
【参考ページ】
『世界一わかりやすい国際法入門』(尾崎哲夫著,ダイヤモンド社,2005.12),p.55-57
【ぐんじさんぎょう】,2010/05/25 22:07
を加筆改修
でも必殺技にその国独自の軍事技術とか出てくるあたり,やっぱり最後にものを言うのは腕っ節,なのでしょうか.>ムダヅモ
Kureseki in mixi,2010年05月19日 08:11
【質問】
国際法における「法の一般原則」とは?
【回答】
既存の国際法や各国の国内法を手がかりにして,導き出されるものの.
裁判所が,ある事件に対して適用すべき条約や国際慣習法を見つけられないという事態を回避するために,法源に組み込まれたという.
ただし,国内法を法源とする場合,どの法原則が「文明国に認められた法の一般原則」になるかは,議論の対象となる.
【参考ページ】
『世界一わかりやすい国際法入門』(尾崎哲夫著,ダイヤモンド社,2005.12),p.57
【ぐんじさんぎょう】,2010/05/28 21:00
を加筆改修
【質問】
国際法における判例や学説の位置づけは?
【回答】
「判例」には国際裁判所判例・国内裁判所判例の両方が含まれるが,特定国の法体系の中での判例が,国際法として用いるに妥当であるかどうかは,考慮されねばならないという.
また,国際法では判例には先例拘束の原理はなく,参考程度に用いられる程度だという.
学説については,それが反映されるのは,国際司法裁判所における学者の意見表明など,ごく一部の場に限られているという.
【参考ページ】
『世界一わかりやすい国際法入門』(尾崎哲夫著,ダイヤモンド社,2005.12),p.58
【ぐんじさんぎょう】,2010/05/29 21:00
を加筆改修
【質問】
戦争の開始や終わりは,どんなところで判断されるのですか?
【回答】
政府主導の戦闘行為が継続して行われ始めたら=『開始』
戦闘行為が終結し,「講和条約」あるいは「友好条約」が締結されるか, もしくは,当事国相互が「戦争終結宣言」を出せば=『終わり』
【質問】
戦争というものは,それなりの国がそれなりの国に宣戦布告しちゃえば始まってしまうものなんですか?
【回答】
戦争の違法化が進む前はそのとおりです.
戦争が違法化された現代では,「実際の武力行使の開始をもって,戦時国際法の適用が開始されるとするのが妥当」(防衛法学会編『平和・安全保障と法』,平成8年,内外出版)ということになります.
戦争は国際条約で禁止されていることもあり,宣戦布告はされないのが今のたしなみ.
「先制的行動」とか「事前防衛処置」とか「国家自身による犯罪の防止」「海外治安活動」とか,いろいろ言いながらとりあえず爆弾落としたり,港を封鎖したりします.
短期間にはマスコミ等がどう報道するかで「戦争」かどうかが決まりますが,国によって解釈が違ったりもするので,少し時間がたってから「紛争」になったりもします.
最後まで国によって
「あれは戦争だった.勝った」
「あれは紛争だった.手を引いてやった」
などと意見が分かれたままになったりもします.
常識的には,国軍が政府の指示の元に他国の領土に侵入し,攻撃を行えば国際紛争か戦争でしょう.
小規模な戦争と大規模な国際紛争の間に,明確で客観的な線引きはありません.
逆に,1949年ジュネーブ四条約共通2条1項はこれらの条約が武力紛争などにおいて当事国が
「戦争状態を承認するとしないとを問わず,適用する」
としており,したがって当事国間が戦争状態に合意するということは,少なくとも法的意味での戦争状態の有無になんら関係のないことです.
(´-`).。oO(昔,大学の国際法の授業で,「戦争の開始は一方的行為だが,戦争の終結には当事国間の合意が必要」と習った覚えがあるなぁ…)
【質問】
戦争は,いつから「宣戦布告」といったものをするようになったんですか?
【回答】
1904年の日露戦争での明示の戦意表明のない開戦に対する批判を契機に,07年のハーグ平和会議で〈開戦に関する条約〉が成立した.
これにより締約国は,理由を付した〈開戦宣言(宣戦)〉または〈条件付開戦宣言を含む最後通牒〉という形式の明瞭な事前の通告なしに相互間に戦闘を開始してはならないことを承認した.
もっともこの条約には,非締約国が1国でも加わる戦争にはこの条約は適用されないという総加入条項が付されている.
国際連盟体制下で戦争自体が違法化されるとこの条約の意義も減じ,逆に違法という非難を避けようとして戦意の表明さえなしに開始される事実上の戦争が出現するに至った.その代表例は,満州事変,日華事変を契機とする日中戦争であった.
国際連合体制は国家間の武力行使のみならず武力による威嚇をも禁止するから,最後通牒さえ国連憲章と両立しがたく,憲章上定められる自衛権の行使においても宣戦を行う余地はなくなったといえる.
しかし現実には,現在,戦意の表明がなく戦争状態の承認されない武力紛争が多く見られるが,これらについても49年のジュネーブ諸条約など戦争法の適用は認められる.
(世界史板)
【質問】
宣戦布告の文書・宣言はどうやって作るのでしょうか?
何時までに誰が誰に対して宣戦布告文書・宣言を渡す又は通知すべきなのでしょうか?
その宣言は日本語だけで良い?それとも日本側が英訳したのを準備して渡すべきでしょうか?
【回答】
大使など,国の意向を代弁できる外交官僚を通じての手渡しで良いようです.
渡すのは,本国で書かれた原文の必要は無く,本国からの連絡内容の伝達でかまいません.
体裁としては,最後通牒とセットになります.
(要するに,何年何月何日までにこっちの要求を飲むか,有効な譲歩案を出さないと戦争しますよー!)
ちなみに真珠湾攻撃は,本国から在米の日本大使館に宣戦布告の打診がされていました.
防諜の面で大事な時期にも関わらず,肝心の日本大使館側は規律が緩んでおり,攻撃前に対米断交通告を渡すことができませんでした.
さらに,この通告書には,肝心の宣戦布告にあたる文章が欠落している,すなわち,交渉を打ち切る宣言でしかない(執筆者は加瀬俊一アメリカ局第1課長)ので,米国側はこれを受け取った時刻ではなく,帝国議会において開戦の詔勅がなされた時刻をもって,日本からの宣戦布告があった時刻と解釈しています.
【珍説】
>また,国連は国際正義の執行または推進機関などではない
国際法がわかってない.
現在の国際社会(国連加盟国内)で合法的とされる武力行使とは,自衛権の行使を除けば国連決議を得た武力行使に限られる.
国連は唯一の戦争の正当性を担保する機関である.
それが有効に機能しているか否かは全く別問題.
初心者スレ住人 in 2nd FAQ BBS,2010/10/22(金)
23:18
青文字:加筆改修部分
【事実】
「有効に……」と書いている点から,原則論を貴方は言っているのだと推察されますが,そうだとしますと,国連だけが唯一の国際法の法源であるかのように述べるのは,間違いです.
原則論で言えば,国際法の法源とされるものは,主として
(1)条約,(2)慣習法,(3)法の一般原則,(4)判例および学説
の4つ
(『世界一わかりやすい国際法入門』(尾崎哲夫著,ダイヤモンド社,2005.12),p.54-60)
です.
また,各国の国内法でさえ,互いに他国に影響し合って,徐々に国際ルールを作り上げている面もあり,それを研究する比較公法学というジャンルもあります.
『比較公法学の諸問題』(伊藤満先生喜寿記念論文集編集委員会編,八千代出版,1990.10.5)
など参照のこと.
したがって原則論上では,国連の存在の有無は国際法に関係せず,したがって原則論上は,「国連は唯一の戦争の正当性を担保する機関」ということでもありません.
(というか,珍説者の主張の論拠は何?)
2行目以下で述べられていることは,国際法とは関係ありませんね.
また,貴方をして
>有効に機能しているか否か
とわざわざ述べなければならないほど,政治色の濃く,公平性が担保されていない点において,国連が国際正義の執行または推進機関などではないことは明白.
例えばコソボの独立は認めても,チェチェンやクルドの独立は認めない等.
そもそも正義の尺度が世界各国で異なる以上,「国際正義」などというものは実在しません.
正義の尺度が世界各国で異なる事例としては,例えば,大量汚染を巡る問題があります.
これを国際犯罪に入れるべきかどうかについては,ILC(国際法委員会)の中でも疑問の声が少なくありません.
なぜならこれが,「平和に対する脅威」とは決定されていないからです.
しかし,たとえばチェルノブイリ原発事故のように,大量汚染の潜在的な国際インパクトは大きいため,
「自決権,人権,基本的な自由の侵害は,必然的に平和に対する脅威を構成する」
として,国際犯罪の概念を新しい形に置き換えるべきとの主張もあります.
詳しくは,斉藤功高「国際違法行為における国際犯罪と国際不法行為の区別」(伊藤満先生喜寿記念論文集編集委員会編『比較公法学の諸問題』,八千代出版,1990.10.5),p.213-214
を参照してください.
もっと端的に言えば,ターリバーンの主張する善悪と,国際社会のそれとが大いに異なっていることなど,今更説明の必要も無いと思います.
繰り返しますが,万国共通の「国際正義」などというものは実在しません.
実在するとすれば,いわゆる自称「地球市民」の頭の中に,だけでしょう.
【質問】
ホッブズは「万人の万人に対する闘争状態」という,彼の述べたあまりにも有名な言葉により,世上しばしば好戦主義者と目されているが,実際はどうか?
【回答】
田中浩によれば,「このような短絡的なホッブズ評価は,ドイツや日本のような思想後進国に多く,英米系の思想先進国では殆ど見られない.このようなホッブズ解釈は全くの誤解であり,ホッブズこそが,近代における絶対平和論の始祖である」という.
彼は以下のように,その根拠を述べている.
すなわち,ホッブズは主著「リヴァイアサン」内で,19の自然法を挙げている.
その第1の基本的な自然法として,人間は,生きるためには全力を挙げて平和を獲得せよ,という命題を彼は冒頭に掲げている.
そして,第1の自然法の趣旨を達成するためには,各人は生まれながらにして持っている自然権――生きるためには何をしてもよい,「人を殺しても構わない」という権利・自由――の行使を放棄せよ,と述べている.
なぜなら,各人が自然状態において,各自の自然権を行使すれば,そこに「万人の万人に対する闘争状態」,すなわち悲惨な殺し合いが起こる危険性があり,それでは平和の確保はできないからである.
第3以下の自然法は,「自分がされて嫌な事は,人にするな」といった,日常的な社会生活を円滑に運営するのに必要な道徳的ルールが列挙されている.
結局,ホッブズ自然法理論の核心部分は,人々に平和と人権を確保することを求めた,第1・第2の自然法にあったと言えよう.
ここで注意すべき事は,「自然法を放棄せよ」というホッブズの言葉は,「生きる権利を捨てよ」と言っているわけではなく,具体的には,武装して自分で自分の身を守ることをやめよ,ということである.
このことは,社会契約を結び,平和と人権を守るために一つの政治集団――市民社会,コモンウェルス,国家――を形成して,そこで作られる平和のルール=法に従って生きよ(法の支配)という考えに繋がっていく事になる.
詳しくは,「民族と国家の国際比較研究」(未来社,1997/10/1),
p.24-25を参照されたし.
【珍説】
そもそもホッブス〔原文ママ〕の言う「自然状態」なんてありえない,
実際にあるのは「歴史状態」である.
当たり前ではないか.
人も国も「関係」というルールの中で生きている.
それはすでに,歴史的に形成されてきている.
(小林よしのり「戦争論」3)
【事実】
いかなる形態にせよ,そういうルール形成を普通,ホッブズ言うところの「社会契約を結ぶ」というんだよ.
【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)
アメリカが本当に「国際法」を踏みにじって,世界をホッブスの「自然状態」にしようとしているのなら,「歴史」を守るために真の保守は,アメリカを批判しなければならないはずだ.
(小林よしのり「戦争論」3,2003/7, p.108)
【ツッコミ】
いや,だから,「歴史状態」というものが意味不明な代物なのに,それを「守れ」と言われましても…….
「自然状態」についての解釈も,なんか勘違いしているようですし…….
ギャグで書いてんですよね?
ギャグだよ
ギャグに違いない・・・(フェイドアウト)
【質問】
社会契約によって,「個」は「集団」へと結合されるが,このことは,人間が自然状態において持っていた「個」としての主体性の制限・放棄を意味しないか?
【回答】
意味しない,と田中浩は述べる.以下はその論証.
これについては,ホッブズは次のように言う.
すなわち,人間は孤立したままでは,生命の安全は必ずしも保障されるとは言えず,そればかりか,「生きる手段」の奪い合いのために紛争・戦争の危険性すら発生する.
そこで人々は結集――平和と人権を守るために社会契約を結ぶこと――し,「集団」という強い力によって相互に身の安全を図れ,と.
そして,集団の力をホッブズは「共通権力 Common Power」と呼び,これが契約社会における最高権力であるとした.
この共通権力は,構成メンバー全員の意思であるから最高権力であり,今日の国民主権主義の原型である,と言うことができる.
(田中浩「民族・個人・国家」from 「民族と国家の国際比較研究」,
未来社,1997/10/1, p.25-26,抜粋要約)
【珍説】
ホップズが考えている契約とは,強者が弱者に対し,
「殺されたくなかったら,カネを払うかオレのために働け」
と強要し,弱者が
「言うことをきくから殺さないでくれ」
とそれに従う,というものである.
【事実】
(引用開始)
国家はあくまで自由な個人から支配を委任された存在に過ぎず,その国家が支配を他に委ねることは,国家が委任の範囲を超えて個人の権利を譲り渡すことを意味するからである
(引用終了)
―――『国際政治とは何か―地球社会における人間と秩序』(中西寛著,中央公論新社,2003年),89頁~
ホッブズが生まれた18世紀頃のヨーロッパは,産業革命による都市の発達による中産階級が生まれていた頃です.
ホッブズの読者層は彼らです.
ヨーロッパは自治が認められている都市が多いため,都市国家間の戦争が起こり易い.
ホッブズは都市の上位概念に国家を設定し,その国家とは各個人が契約を結んだ集合体と見なしたわけです.
従って,国家自体が「暴力に関わる一つの運動体」ではあっても,殺されずに済む「強者による一方的な契約体系」ではありません.
第一,当時の読者が納得しませんぜ♪w
ホッブズの限界は,当時の近代国家の上位概念を作らなかった事です.
しかし,彼の生まれた近代ヨーロッパでは,まだ近代国家の概念(各個人の契約による国家)が出来つつある時です.
今のような国家間戦争をホッブズに想定させるのは無理がありますな.
(引用開始)
ホッブズは「万人の万人による闘争」は万人相互が契約によって国家を作り,万人がその契約に従うことで平和が確立すると説く.
国家とは仲裁者であり万人の紛争を仲介する.
万人が自力救済を目指せば自己保存を生じ紛争の発生は必然とホッブズは説く.
紛争の解決のために国家の暴力の集権化が行われる.
ホッブズは近代国家の成立に貢献し,国内の平和について熟考しているが,国家間の平和については言及していない.
(引用終了)
―――『国際政治とは何か―地球社会における人間と秩序』(中西寛著,中央公論新社,2003年)
近代国家が人々に安全を提供する代わりに,自ら国家の支配を受け入れる事を是としたホッブスが嫌いな日本人は多いのかね?
【珍説】
ホッブズはロックやルソーに対して,相対的に君主主義で王政復古的.
【事実】
ホッブスの経歴を簡単に書いとこう♪
(引用開始)
1640年に「法学要論」を出版したが,これには「人間論」と「市民論」の概略が含まれてあった.
かれの著作は議会派の要求に反対して王党派を支持しているように思われたため,ホッブスは危害が及ぶのを恐れて,その年の終わり頃にパリに亡命し,11年間も隠れて生活していた.
ホッブスは再びメルセンヌ神父の仲間に入って,しばらくは若き亡命王子の数学家庭教師を勤めたが,その王子は後にチャールズ2世となった人物だ.
(中略)
フランス亡命中の王党派に裏切り者呼ばわりされたホッブスは,「リヴァイアサン」刊行直後にイギリスに帰り,国務会議の前に出頭した.
その後まもなく,かれは哲学三部作の残る二巻――『物体論』(1655)と『人間論』(1657)を刊行.
(中略)
1660年の王政復古の後で,チャールズ二世はホッブスを相談役にして年金を与えた.
1666年のロンドン大火の後,英国の下院はホッブスの「リヴァイアサン」を発禁リストに加える議案を出してきた.
この議案は,王様の介入で貴族院を通過しなかったけど,今後著作を出すときにはまず自分に精査させろと王はホッブスに言った.
ホッブスはこれに従ったので,彼のその他の政治的な著作物は,死後出版となった.
(引用終了)
http://cruel.org/econthought/profiles/hobbes.html
〔ホッブズが君主主義だとすると,〕「リヴァイアサン」を刊行直後に王党派や教皇派に暗殺されかけた(?)のは何故でしょう?
トマス・ホッブズ,ジョン・ロック,ジャン=ジャック・ルソーの功績は社会契約説の確立です.
ホッブズも王政復古に批判的でしょうが(笑)
(引用開始)
政治体の存在根拠を求めて自然状態論に行き着いた彼らは,思想史的に考えれば,当時猛威を振るっていた「王権神授説」に対抗するために,極めて慎重な議論の歩みを進めたと評価できる.
王権神授説が聖書を根拠にする以上,それを凌駕する緻密さが必要とされたのである.
(引用終了)
http://ja.wikipedia.org/wiki/自然状態
〔もちろん〕社会契約説の詳細に関しては,ホッブズ,ロック,ルソーの3者とも異なる.
しかし,今回私が問題にしているのはなぜ社会契約説が出現したか?
社会契約説が現れたのは,「王権神授説」に対抗するためであって,王政復古的価値観を擁護するためではない.
相対的比較を行って王政復古に誰が近いかを議論するのは不毛.
【質問】
「自然状態」(無政府状態)については,ホッブズ以外の見方もあるのか?
【回答】
ジョン・ロックの様な見方もある.
ホッブズの時代は,内戦続きの状態であったため,不安感からくる武力と,それを行使した生存性に重きが置かれていたが,ジョン・ロックの時代には,やや安定していたため,人間関係の強化,契約の締結・履行により,無政府状態と言っても,それほど脅威のあるものとはみなされなかったようだ.
結局,その時代の背景を理解する必要があるということだろう.
詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授「国際紛争」(有斐閣,2005.4)1章を参照されたし.
【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)
戦争は承認された暴力と言える
本来的には略奪も強姦も虐殺もあらゆる暴力が承認された状態
小林よしのり「戦争論」1,P114
でこれは何を言いたいんだといえば(下は要約)
「戦時国際法は欺瞞以外の何ものでもない」
「ピンポイント攻撃で軍事施設だけ狙っても周辺の民間人に(略)」
「このような事が有るから,戦時国際法が現実的ではない」
(同)
【解説】
戦時国際法が無いほうが良いってのかな?
不思議なことに,同じ本の戦時国際法の目標選定についての所では,「まきぞえで民間人の被害者が出る」という事は明確に許されるものとして書かれています.
これの続きで(要約だが内容はそのまま)
「ベトナム戦争において米軍が戦争犯罪行為を行った」
この書き方は,米軍のみが戦争犯罪を行ったと主張に限りなく近い.
両ベトナムの政府組織,南北ベトナム軍,ベトコン,米以外の参戦国の軍の存在を知らないのだろうか?
私に言わせれば北側の戦争犯罪,残虐行為のほうがはるかに追及されていない.
(アメリカの映画や小説やノンフィックションで知られてはいるが)
また,
「相当酷かったのに(米軍は)裁かれていない(カッコ以外ママ)」
ともあるが,米軍は民間人射殺などについて裁判をしている.
少なくともベトナムよりは遥かにこのような裁判をしている.
(キルロイ ◆dtIofpVHHg)
【質問】
「人道的介入」は,国際法上は合法なのか?
【回答】
駒村圭吾(慶應大教授)によれば,自衛の場合を除き,武力行使は包括的に禁止されているため,合法な人道的介入があるとしたら,それは国連憲章7章に規定された,安保理による強制措置として行われる場合に限られるという.
そして,そのような合法性の大系に分類されうる人道的介入は今のところ,実例はほとんど存在せず,
「今や人道的介入は国際慣習法化している」
という構成を採りでもしない限り,違法であるという.
にもかかわらず,同時に,何らかの水準でこれを「正当化」し,違法の評価を乗り越えようとする試みが精力的になされてきたのも,「人道的介入」の特徴であり,ユーゴ紛争に対するNATOの介入に対して下された,コソヴォ独立国際委員会報告書による評価,
「違法であるが,正当である illegal but legitimate」
が,一つの標準的な法的評価としては有名であると述べている.
詳しくは,
『ジュリスト』,2009.5.1-15号,p.104-113
を参照されたし.
【質問】
国際法上,先制的自衛 anticipatory or pre-emptive
self-defence は許容されているのか?
【回答】
上智大学教授,村瀬信也によれば,これについては学説は賛否相半ばしており,国際実行も一様ではないという.
一応の基準として参考とすべきものとして,2005/3/21に発表された国連事務総長報告があり,そこでは急迫した脅威と,潜在的または急迫していない脅威とに区別し,急迫した脅威に対する先制的自衛権は,国連憲章51条でカバーされるが,急迫していない脅威に対しては安保理が処理すべき問題であり,自衛権行使は認められないとされているという.
ただし国連憲章採択は1945/6/26であり,当時はまだ核も弾道ミサイルも宇宙兵器も想定外だったので,これら新兵器に対して憲章規定をそのまま字義通りには適用できないとの見解もあることを,村瀬は指摘している.
詳しくは
『ジュリスト』,2008.2.1号,p.103
を参照されたし.
これに対して浅田正彦は『21世紀国際法の課題』(有信堂高文社,2006),p.314-317の中で,先制的自衛論については,国連や加盟国の立場から見て正当化できないと評価している
――と,『ジュリスト』 2009.5.1-15号,p.117にて紹介されている.
【質問】
他国間の戦争において,第三国がどちらかの国に補給や情報提供などで協力した場合,戦争協力として,協力した国の敵国から攻撃される理由にはなりますか?
自国の敵対国と戦ってくれている国に対し,「敵の敵は味方」の理論で,遠回しに協力行為をした例はありますか?
【回答】
前者;
攻撃する側から見れば十二分に理由となるし,攻撃される側から見れば,不当で卑劣ないいがかり.
最終的な判定はどちらの側が勝利したか,もしくはどちらの肩を強国が持ったかによって決まる場合が多い.
まあ世の中そんなものさ.
一応,国際法的にいっておくと,戦争協力を堂々と行えば,それだけで開戦理由になるけど,外交はそんなに簡単に白黒つくような単純なののじゃないからね.
後者;
公然も秘密裏も,共に古今東西数多の例がある.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
A国がB国を占領,B国内にいる同盟国C(BとCが同盟)の外交官や民間人は国際法上,どのような扱い,処遇になるのでしょうか?
【回答】
外交儀礼と国際法を守るまともな国家同士の場合,中立国の大使館は引き続いて当面の立場を保証され,外交官の身分もまた同様に国際的慣習に基づいて保証されます.
民間人も同じく身分を保障され,犯罪行為や統治の妨害をしない限り,生命財産及び一定の自由は保証されます.
しかし,それらは全て建て前の話.
本来であればB国の民間人も含め,それらは保証されているのですが,力を持たない人間が何を騒ごうとそれがどんなに正論であろうとも,銃を持つ軍隊の行動はひとえに相手の都合にゆだねられます.
占領軍側が民主的な先進国の軍隊で醜聞を避けたがっている場合や,解放軍など好意的なアピールをしたい場合には,紳士的な対応も期待できますが,WW2のベルリン陥落時のソ連軍などかなり最悪に近いケースも歴史上散見されます.
ソ連軍の場合,憲兵隊による風紀取締の苛烈さも有名ではありますが,それを遥かに上回る悲劇が伝え残されているのも否定できない事実でしょう.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
ICCとは?
【回答】
京都大学教授・高山加奈子によれば,国際刑事裁判所(Internatioonal
Criminal Court)の略称であり,1998年の「国際刑事裁判所に関するローマ規程」によって設立が定められたもの.
ニュルンベルク裁判,東京裁判,旧ユーゴスラビア国際刑事法廷,ルワンダ国際刑事法廷といったアドホックな裁判所の実務の集積を通じ,
・ジェノサイドの罪,
・人道に対する罪,
・戦争犯罪,
・侵略の罪
の4つが,国際法上の「コア・クライム」であると考えられるようになったことから,それらの処罰を目的として常設の国際裁判所として創られたという.
しかし,
・侵略の罪の定義が先送りにされていること
・犯罪の成立範囲や刑罰の幅が極めて広いこと
・犯罪地国か被疑者国籍国のいずれかの受諾がなければ,非加盟国に対する管轄権が生じないこと
・国連安保理の政治的関与を許す,幾つかの制度が設けられていること
が難点となっていると述べられている.
詳しくは『ジュリスト』 2008.1.1-15号,p.182-183を参照されたし.
まあ,人道を露ほども配慮しない国々を,かえって有利にするような制度にならなきゃいいんだけどね.
【小林主体思想】
戦争において勝者が敗者を裁くのは野蛮である
(小林よしのり「戦争論3」,第5章タイトル)
【解説】
野蛮であるかどうかは主観的なものですから,水掛論にしかなりませんが,冒頭でクラウゼヴィッツの
「戦争は政治に(略)」
という言葉があるのだが.
「戦争は野蛮であるが否定してはいけない」
と考えており,
「本来戦争はルール無し」
と主張している.
なのに
「戦勝国が戦敗国を裁くのは野蛮で非文明的で犯罪ですらある」
と言っちゃうのか.
「日露戦争に勝った日本はロシアに優しくしたが,米はWW2やイラクのように野蛮である」
と続く所から,いつもの米憎しからの考えだろうが.
(キルロイ ◆dtIofpVHHg)
【質問】
戦略爆撃や誤爆は戦争犯罪なんですか?
【回答】
前者はやや非人道的なキライがあるものの,れっきとした軍事作戦であり,後者はただの過失.
(軍事板出張スレ in コヴァ板)
【質問】
戦略爆撃は民間人が巻き添え食って死ぬことがほぼ確実なわけですよね?
それなのに,軍事作戦だから非人道的だが戦争犯罪ではないという理屈がよく分かりません.
やはり小林よしのりが言うように,そういうふうに白人がルールを捻じ曲げた?
【回答】
つまりね,迷惑行為が全て犯罪行為になるわけではないのと同様に,非人道的行為の一部を戦争犯罪と判断してるわけ.
問題は何を戦争犯罪とするかが,人によって違うこと.
法の欠陥ということも言えるのかもしれない.
陸戦の場合,戦闘部隊には,略奪は禁止されるし,民間人の保護に留意するようにという国際法(条約)が適用されるわけです.
ところが爆撃,ミサイル攻撃による都市攻撃は,以下の要件を満たしている限り禁止されないわけでね.
「攻撃目標には防守都市と軍事目標がある.
防守とは,都市の占領を企図して接近する敵に対し,軍隊が抵抗することを意味する.このような都市に対しては無差別攻撃が認められる(陸戦規約25条).ただし,同27条には宗教施設・学術施設・医療施設などは軍事上の目的に使用されない限り可能な限り被害を免れるように努力しなければならないとする規定がある.
無防守都市に対しては攻撃対象は軍事目標のみに限定され,民間のものに関しては攻撃が禁止される.この原則を軍事目標主義(Doctorine of Military Objective)という.陸戦だけでなく,海上や空中からの攻撃にも同様の制約がある(海軍砲撃条約第2条・空戦法規案第24条).ただし軍事目標への攻撃で民用物に付帯的な被害が出ても,故意になされたものではなく,また,目標の破壊による軍事的な利益に比較して軽微な場合には違法ではないとされる」http://www.mahoroba.ne.jp/~felix/Notes/PeaceResearch/Law_of_War.html
当然に,巻き添えが出て当たり前だし,上の規定を拡大解釈して,住民の殺傷を狙って行なうことも横行する.
それにストップをかけるのは,せいぜいで国際世論だってことになります.
まあ,その気になれば,いくらでも無視できますね.
ルールを捻じ曲げてんじゃないですよ.最初からそういう,いわば「欠陥」がある.理屈じゃなくてね.そういう仕組みになっちゃってると.
んで,ひとたび,軍事裁判になれば,そりゃ勝った側の恣意が当然に入りますからねえ.ますます,「理屈がよく判らない」ということになるわけですね.
(軍事板出張スレ@コヴァ板)
ハーグ空戦規則案(批准が行われていないため,法としての効力は発生していないものの,空戦に関して各国はこれに準拠している)では,24条1で,軍事目標に対する爆撃のみが適法であるとされています.ここでいう軍事目標とは,「その破壊もしくは毀損が明らかに軍事的利益を交戦者に与えるような目標」と規定されています.
また,24条3では,陸上軍隊の作戦行動の直近地域でない都市への爆撃は禁止され,4では,直近地域にある場合には,「兵力の集中が重大であって,爆撃により普通人民に与える危険を考慮してもなお爆撃を正当とするに十分であると推定する理由がある場合に限り」適法である,とされています.
25条では,4の場合にも爆撃の対象とならない施設と,その施設を明示する標識,および標識の不正な使用の禁止について述べられています.
第二次世界大戦以前の法的な状況は以上のようなものなのですが,問題は,第二次世界大戦において総力戦が遂行されるとともに,文民やあらゆる産業が戦争遂行体制に組み入れられるとともに,航空機および防空能力が飛躍的に向上したことです.
この流れの中から現れたのが「目標区域爆撃」という概念で,これは,軍需工場(戦争の遂行に必要な産業)の密集地域で個々のの軍事目標の選択が不可能な場合,その地域全体を一つの軍事目標とみなす,とする考え方です.
これを最初に提出したのはイギリスですが,日本では,都市全体を防護する防衛施設や軍隊が駐屯する都市を,それが戦場から遠く離れていても防守都市と見なし,それへの無差別攻撃を正当とする拡張された防守都市の概念も現れました.
第二次世界大戦中の法概念の変遷は,概略以上のようなものです.
ちなみに,戦後は,ジュネーブ条約の第一追加議定書(1978年,効力発生)において
「紛争国当事国の軍事行動は,軍事目標のみを対象とする」(48条)
とされており,51条5(a)で,目標区域爆撃は無差別攻撃として禁止されています.
また同時に同議定書においては,軍事目標の定義についても,空戦規則のものより更に精密なものになっています(52条2).
また,爆撃の被害を避ける予防措置についても,攻撃側に一定の義務を課し(57条2a-c),同時に,被攻撃側にも攻撃の影響から文民が被害を受けることを予防する義務を課しています(58条).
以上,国際人道法(藤田久一著)pp.109-117より
58条絡みでこないだのイラク戦争でフセイン政権がやった「人間の盾」が非難の対象になったのは,記憶に新しいところ.
(軍事板)
【珍説】
「ジュネーブ条約が出来た時は,ミサイルや航空機による爆撃など想定されていなかったから,柔軟に解釈すべき???」
【事実】
追加議定書は1977年制定ですよ…
人類は既に,30年以上前の第二次世界大戦で,無差別戦略爆撃とミサイル空襲(V1,V2)を経験済みですよ…・
ここまで来ると最早漫才ですが,本当にあった怖い話です.
Posted by JSF at 2005年12月11日 11:18:53
【質問 kérdés】
領空侵犯した無人機の撃墜は国際法上可能なの?
【回答 válasz】
政府は日本の領空を侵犯した無人機は撃墜も可能にする部隊行動基準や武器使用基準の作成を検討すると発表しました.
領空侵犯の無人機,「撃墜可能」も検討へ:読売新聞
では,実際に領空侵犯した無人機の撃墜は国際法上可能なのか.
これを考えてみたいと思います.
第1編 国際法の側面:絹笠泰男の防衛・軍事法学論集
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(4)国際慣習法上の領空侵犯措置基準
以上の各事例について分析検討した事項を踏まえて国際慣習法上の領空侵犯措置を一般的基準としてSOP的に類型化すれば,凡そ次のようにまとめることができる.
戦時の中立国の対応については中立法の適用があることから,ここでは,平時における慣行について整理・類型化することにする.
① いかなる侵犯機も被侵犯国の同意なしに,その領空の飛行を継続することはできない.但し遭難機等窮迫した事態に遭遇している航空機は,この限りではない.
② 侵犯機は急迫又は不可抗力にあらざれば着陸・退去・航路変更等あらゆる被侵犯国の合理的命令に服従しなければならない.
③ 侵犯機をコントロールするについて被侵犯機国は,侵犯機搭乗員を不必要かつ不合理に危険にさらしてはならない.
Ⅰ.侵犯機の敵対行為に対しては,警告なしに攻撃が可能.
Ⅱ.敵対行為の場合を除き敵性又は不法と信ずべき理由ある場合は警告(着陸又は退去命令)を与え従わない場合攻撃できる.
Ⅲ.侵犯機が民間航空機であることが明らかな場合,その他侵犯機の意図が明らかに無害と知り得る場合は,着陸又は退去命令に従わなくても攻撃してはならない.
④ 侵犯機が軍用機であっても外国軍艦に慣例上認められる不可侵特権は認められない.
⑤ 被侵犯国は,不法に領空侵犯した侵犯機を没収し,搭乗員を処罰できる.
侵入が急迫した事情に基づき或は乗員の過失によらない場合は違法性が阻却され機体の没収乃至乗員の処罰はできない.
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無人機に関しては⑤は無人機ですから不可能,④は特に問題はありません.
①と②については,GPSによる電子妨害で退去や強制着陸を行う事が出来ます.
イランは米空軍のRQ-170をそれでイラン国内の空軍基地に強制着陸させました.
問題は③ですが,Ⅰは自衛隊法や部隊行動基準からしても妥当として,Ⅱについては無人機であるから警告する事は不可能であり,侵入した時点で撃墜は可能と言えるでしょう.
まぁ,一応モールス符号を航空灯で発信する事はすべきと思いますが,せいぜい撃墜した時の警告の証拠以上の何物でもないと当方は愚考いたします.
実際,イランでのRQ-170撃墜・機体捕獲については,アメリカの領空侵犯という国際法違反行為により,アメリカのイランに対する機体返還義務は存在せず,無人機撃墜事件の非は明らかにアメリカにあると指摘する弁護士の方もいます.
イランがアメリカの無人偵察機「撃墜」 オバマ大統領の返還要求を拒否するイランの方が筋が通っている:Everyone says I love you !
また,イスラエルではレバノンから飛来するシーア派民兵組織・ヒズボラが飛翔させ,イスラエルの領空を侵犯しているイラン製無人機をイスラエル空軍が撃墜しています.
UASによる領空侵犯に断固対応しているイスラエル空軍の事例は日本にとって他山の石でしょうか:航空宇宙ビジネス短信・T2
無人機は日本の航空法では無操縦者航空機という事で,無人機に対してミサイル破壊命令と同じような撃墜命令は出せませんが,領空侵犯した機体ならば,以上のケースからしても撃墜は可能でしょう.
ただ,無人偵察機の光学センサーや合成開口レーダーにより,何も領空侵犯しなくとも偵察活動は可能で,無理して領空侵犯しなくてもいいという事情があります.
実際,9日での中国空軍の翼竜とおぼしき無人偵察機は,尖閣諸島から200kmも離れた北東の公海上を飛翔していました.
尖閣北方に国籍不明の無人機,空自が緊急発進:読売新聞
領空を侵犯していない無人機の場合は,撃墜は国際法上でも難しく,せいぜいGPS妨害で追い払うのが限度でしょう.
今回の政府の無人機が領空侵犯した場合の撃墜の検討に関する発表は,無人偵察機を飛ばす中国軍側への牽制とも考えてもいいかと思います.
なにしろ本来は秘匿にしなければならない無人偵察機の運用を,中国側が自らバラしてしまっているのですからね.
「中国の無人機を撃墜する」,日本の思い上がった発言など完全に無視してよい―中国紙 (XINHUA.JP) - Yahoo!ニュース
それにしてもまた羅少将が出てきましたか・・・.
この人も相変わらずぶっ飛んでいるなあ・・・.
ねらっずーり in mixi, 2013年09月23日
青文字:加筆改修部分
【質問】
無防備都市宣言をした都市を攻撃したら,攻撃した国はどんなペナルティを受けますか?
【回答】
戦争はスポーツじゃないが,まあ傍観してた国が介入してきたり,第三者である国との関係が悪化したり,国内の反戦世論が盛り上がったりするかもね.
それでさえ,あるかどうか怪しいもんだが・・・
それに,その国の国際的地位他次第の面もありますが,勝てば少々のことは封殺できます.
攻撃時点での「ペナルティ」なんかありません.
まあ,まっとうな手順で「無防備都市宣言」すれば,そこには攻撃して排除しなければならない対象も存在しないはずなので,攻撃する理由自体がありませんが.
弾薬のムダ使いすれば,指揮官が上官にメッ!されるでしょう.
【質問】
無防備都市宣言の話題で
「宣言がなされた地域には,紛争状態にある国に対する第三国は災害派遣を行えなくなる」
という人がいたんですが,これは本当なのでしょうか?
たとえ災害派遣であってもそれは軍事活動で,それに従事する自衛隊員は戦闘員,という扱いなのでしょうか?
【回答】
「無防備都市宣言=中立」じゃないよ.
左翼の人はそう宣伝してるが.
無防備都市宣言ってのは,都市単位の降伏みたいなもんだと思ってりゃいいよ.
で,降伏->敵国軍に占領されたら,治安維持やら,災害復旧(まぁ,やらんだろうけど)ってのは占領軍の方の義務になるんだよ.
したがって,治安維持,災害復旧などは占領軍の管理下になると思われ.
もし強引に行くとすれば,丸腰で行くから災害派遣は違反ではない!と派遣国側が強弁することになるでしょうが,敵国側が「ハイ,そうですか」と素直に納得してくれるとも思えず.
無理に行って戦闘が起こって,住民・都市に被害が及んだら宣言を出した意味が無いですしね.
ありそうにないですが,仮にやるとすれば双方合意の下,救助・支援活動などに入るという事態のほうがまだ可能性が高いかも.
【珍説】
アメリカと追随日本政府も認めないかもしれないが,「戦闘員と一般住民を区別しない兵器や不必要な苦痛や被害をもたらす兵器と交戦方法を使用しない」
という国際人道法に明らかに違反している.
(虫)
【事実】
「戦闘員と一般住民を区別しない兵器」→銃,砲,爆弾などの兵器は戦闘員と一般住民を区別して攻撃する事ができる.
故意に民間人を狙わなければいいのだから.目標から逸れてしまって結果的に誤射・誤爆となるのは,国際人道法において違法ではない.
「不必要な苦痛や被害をもたらす兵器」→国際人道法が禁止しているダムダム弾や散弾銃等の戦場での使用は行われていないので,違法とは認められない.
「交戦方法」→民間人を巻き込むような交戦方法とは,武装勢力側が行っている『民間人を目標にしたテロ攻撃』の事.
或いは意図的に民間施設の近くに軍事施設を構築したり,軍事施設に民間人を配置したりすること.(→人間の盾)
平和学・平和研究について調べているFelixさんのサイトから,Peace Researchの[戦争法]より.
軍事目標主義(リンク切れ)
攻撃目標には防守都市と軍事目標がある.
防守とは,都市の占領を企図して接近する敵に対し,軍隊が抵抗することを意味する.
このような都市に対しては無差別攻撃が認められる(陸戦規約25条).
ただし同27条には,宗教施設・学術施設・医療施設などは軍事上の目的に使用されない限り,可能な限り被害を免れるように努力しなければならないとする規定がある.(←この追加部分は読者からの指摘による.Special Thanks to 某S氏.)
無防守都市に対しては攻撃対象は軍事目標のみに限定され,民間のものに関しては攻撃が禁止される.
この原則を軍事目標主義(Doctorine of Military Objective)という.
陸戦だけでなく,海上や空中からの攻撃にも同様の制約がある(海軍砲撃条約第2条・空戦法規案第24条).
ただし軍事目標への攻撃で民用物に付帯的な被害が出ても,故意になされたものではなく,また,目標の破壊による軍事的な利益に比較して軽微な場合には,違法ではないとされる.
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>ただし軍事目標への攻撃で民用物に付帯的な被害が出ても,故意になされたものではなく,
>また,目標の破壊による軍事的な利益に比較して軽微な場合には違法ではないとされる.
要するに戦争法(国際人道法)は,誤射や誤爆を認めてしまっています.
ジュネーブ条約の第一追加議定書(1978年)によって基本的に無差別攻撃が全面禁止された後も,故意に狙ったのでなければ,民間目標に被害が出てもそれは国際法に触れません.
勿論,民間目標に被害が出ないように努力することは攻撃側,被攻撃側双方に求められます.
(つまり「人間の盾」は違法)
・・・私は別に「法に触れないならアメリカ軍は何をしてもいい」と言う気はありません.
ですが,戦争法について何も知らずに,
「違法行為だ!」
と喚き散らし,結果的に嘘を主張することは,明らかに間違っています.
【質問】
>戦闘員と一般住民を区別しない兵器や不必要な苦痛や被害をもたらす兵器と交戦方法を使用しない
これはNBC兵器のことですね?
【回答】
NBC兵器も入りますが,それだけを指し示すわけではありません.
『戦闘員と一般住民を区別しない兵器』
これに地雷が入る,と解釈する場合もあります.
対人地雷は問題になっていますので.
(欧州での戦争や太平洋戦争では問題になっていないのだがなぁ.
埋めた場所をきちんと記録しておけば,地雷は民間人にとって怖くないのに・・・)
『不必要な苦痛や被害をもたらす兵器』
要するに,スカっと殺せる兵器ならOKという法だったりします.
何気に怖い.
軍隊ではダムダム弾は使用禁止です.
ショットガンも使用禁止.
どちらも弾の摘出が難しく,治療が困難だからです.
JSF in 「週刊オブイェクト」コメント欄,2004年10月06日
【質問】
国際社会の主流は「憲法>国際法」とのことですが,国際情勢の現実を見ますと,上は大国から下は北朝鮮,スーダンにいたるまで,秩序など無視して好き放題やっているように思われます.
例えば,アル・カーイダ幹部のUAVを用いた暗殺から,チェチェンやチベットや…(リストは延々と続くので中略)…ダルフールでの各種非人道行為,正規軍ではない武装組織による虐殺,等等.
それらが各国の憲法を遵守している行動のようには,到底思われないわけですが,その点はいかがでしょうか?
2009年10月11日 20:14,消印所沢
【回答】
国際社会の主流というわけではありません.
上述したソースの通り,各国により事情が異なります.
少なくとも,『他の国がやっているから日本もやって良い』という話にはなりません.
各国により事情(憲法と国際法の関係)が異なります.
2009年10月11日 20:26,ゆきかぜまる
私は国際社会の主流と言う考えで間違いないと思っています.
ゆきかぜまるさんのソースも見てもらえば分かりますが,国際法を憲法より上位と見做す国も,あくまで「場合によっては」であることが分かります.
ちなみに私がソースとしました「国際法講義」では,要約すると
「一般的には憲法>条約>国内法という法体系が多いが,憲法>条約=国内法としている国もある.
例外的に,一定条件化の下で条約≧憲法の効力を認めている国もある」
と言う書き方をされています.
これを各国毎に違うと考えるのか,主流は憲法>条約と考えるのかは,個人個人の捉え方だと思いますが,「一般的に多い」「例外的に」と言う言葉が使われている点を重視して,私は憲法>条約が主流という考えを取ります.
くどいようですが,この考えはあくまで国内法体系に限るものです.
同じく「国際法講義」においても,
「国家は国際法上の義務を免れるために,憲法を含む国内法を援用することは出来ない」
ということが確立された通説であるとされています.
その上で,質問に対する回答ですが,憲法を遵守しているかどうか,ということは即ちそれらの国が立憲国家として憲法が機能しているかどうか,と言う問題に過ぎません.
それはあくまで国内問題ですので,国際社会が
「あなたの国が行っていることは憲法違反ではないのですか?」
などと言える筋合いはありません.
ちなみに憲法が守られているかどうか,ということを考える時に「合憲推定」と言う考え方があります.
これは違憲審査権を持つ当該機関が違憲認定しない限り,全ての法令は合憲であると推定される,と言う考え方で,立憲主義の基本的な考え方です.
質問にあわせて回答するのであれば
「アメリカだろうが北朝鮮だろうがスーダンだろうが,当該国のしかるべき機関が違憲認定しない限りは,全ての行為は合憲です」
ということになります.
2009年10月12日,shigezo
「国内法体系では憲法>条約だけど,国際法上の義務を憲法を理由に免れることは出来ない」
についての補足です.
ジュネーブ条約を日本は締結していますが,日本が憲法で軍隊を放棄しているからと言って,日本国及び自衛隊がジュネーブ条約に定められた義務の履行,被履行を免れるわけではない,だからと言って自衛隊が日本の正規軍になるわけでもない,ということを具体的事例として考えていただければ分かると思います.
ちなみに国会では
「日本は憲法で軍隊を放棄しているので自衛隊は軍隊ではない.
しかし,ジュネーブ条約においては自衛隊の任務の性質上,国際法上の軍隊となる」
との説明がなされています.
2009年10月12日 16:44,shigezo
以上,「軍事板常見問題 mixi支隊」より
青文字:加筆改修部分
【質問】
「国際法」と「国内法」の具体的な違いは?
【回答】
「法の執行」に関する強制力が確立されているのが国内法で,「法の執行」に関して強制できる行政府が存在しないのが国際法.
国際法は,そもそも国家間の「自助」システムにすぎず,伝統的に,それは「大国」が執行してきた場合が多い.
また,国内法には,秩序だった法体系が存在し,それを確実に執行する機関があるが,国際法にはそれが存在しない.
これについて,ナイ教授は海洋法を例に挙げて説明している.
--------------------------------------------------------
たとえば,海洋法について,各国は領土から3海里までを領海とすることができる,という慣習が出来上がってきた.
19世紀にウルグアイが自らの漁業資源を保護しようとより広い領海を主張した時,時の海洋大国であったイギリスは,これらの国の3海里の内に軍艦を派遣したのであった.
このようにして,大国によって慣習法が執行されたのである.
それでは,もしイギリスが法を犯したのなら,誰が法を執行するのか?という疑問が浮かぶ.
答えはどうなるであろう.
自助のシステムにおける執行は一方通行だ,
これである.
--------------------------------------------------------
ストラスプールの欧州裁判所は地域的な例外にしても,国際法における裁判とは,国家によって起こされるものであり,個人が提訴するものではない(当たり前だが).
世界の個人個人が提訴するのではなく,国家のみが提訴を行うことができる.
この場合,国家は「勝つ見込み」がない場合以外で,まず提訴することはない.
故に,国際裁判所の扱う事件数は少なくなる.
1990年代にボスニア・ルワンダと言った紛争で,戦争犯罪人を裁こうと,特別法廷が設置され,2002年には,大多数の国によって,虐殺や,戦争に関する犯罪者を裁こうと,交際刑事裁判所を設立した.
しかし,アメリカを含む主要国は,主権が侵害されることを恐れ,この条約に対する批准を拒否した.
さらに,これらの慣習法を,原則について合意があったとしても,どのように解釈すべきかという問題がある.
ナイ教授は保障問題を例に挙げる.
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例えば,[財産などの]収用の原則について考えてみよう.
国家が自国内で操業する他国の企業を国有化することができるということは,受け入れられる原則である.
もちろん国家は,その財産価値に見合った補償をしなければならない.
しかし,どれだけが正当な補償だと,いったい誰が決めるのだろうか.
多くの低開発国は低い補償で充分だと主張するのに対し,裕福な国々は通例,高い補償を求める.
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以上を纏めると,
・国際法と国内法では,「法の執行」の強制力に最も差がある.
・国際法の慣習法は,しばしば大国によって執行されてきたが,大国がその慣習法を犯したばあい,罰する国というものが存在しにくい.
・原則についての合意があった場合でも,解釈がかみ合わない場合が多い.
詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.
【質問】
国際法に強制力がないというのであれば,国際法や国際組織が存在する意味はないのでは?
【回答】
国際法や国際組織は,「予測可能性」と「正統性」の二つの面から国家にとって利益がある.
・予測可能性について
国家というものは,直接・間接を含めると,年中紛争に関与していると言える.
国際的な取引のほとんどは,公的・私的を問わず貿易・観光・外交使節のやりやり取り,国境を越えた市民交流を通じて行われるが,相互依存が深まるにつれてこのような交流は増大し,それにともなって摩擦も多くなる.
国際的な取引で摩擦が生じたとき,政府は国際法のおかげで,直接的な軍事力の行使といった紛争を防ぐことができる.
ナイ教授は次のように解説している.
--------------------------------------------------------
アメリカ人観光客がメキシコで麻薬密輸の嫌疑で逮捕されたとか,北海でイギリスがノルウェーの船と衝突したとか,インドの会社が特許を侵害したと日本の会社が訴えたとかである.
しかし政府はそのような私的な衝突が他の関係を損なうことを望まないのである.
そのような問題を国際法と合意された原則に基づいて処理することで,事態を非政治化し,予測しやすくすることができる.
予測可能性こそは,取引を増大させるための,そして取引の増大によって必然的に起こる紛争を,秩序だって処理するための必要条件なのである.
--------------------------------------------------------
・正統性について
政治とは単に物理的な暴力をめぐっての争いだけでなくて「正統性」をめぐっての争いでもある.
「パワー」と「正統性」は対立するものではなくて,お互いに補完する関係といえる.
これについて,ナイ教授は以下のような見解を述べている.
--------------------------------------------------------
人間は完全に同義的な存在でもなければ,完全に懐疑的(シニカル)な存在でもない.
正邪に関する信念が人の行動を促すということは政治的な事実であり,したがって正統性はパワーの源泉なのである.
もし国家の行動が正統的なものでないとみなされれば,政策コストは高くならざるをえない.
国家は,国際法や国際組織に訴えて自らの政策を正当化し,他国の政策を非正当化しようとするし,それによって国家の戦術や結果にしばしば影響が表れるのである.
そして,正当性は国家のソフトパワーを増大させる.
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・国際法・国際組織は「予測可能性」「正統性」の二つの側面から,国家に利益をもたらす.
・予測可能性は摩擦の増大を抑える,正統性は,政策のコストを引き下げ,ソフトパワーを増大させる.
詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.
【質問】
トミー・リー・ジョーンズの「告発のとき」という映画を見てきました.
作中で,
「国旗を上下逆さまに掲揚するのは,『緊急事態,助けてくれ』というサインだ」
という台詞があったのですが,これは本当にあるのでしょうか?
上下逆にしたのが分かりにくい国旗や,上下もへったくれもない国旗などでは,どうするのでしょうか?
【回答】
現在は遭難旗はオレンジ地になります.
中央に黒の四角,丸もしくはその双方を置くこともあります.
そう言った信号旗の無い時代は,赤旗を用いる,もしくは普通の旗を上下逆に結んで掲げました.
現在の天地逆掲揚は,哀悼の印,会戦の敗北,忌み嫌う外国指導者の来訪などの政治的な事件や状況による抗議の印としてが多く,先述の様に遭難旗としての使用は稀です.
その原因は,貴殿が書かれて居る様に,天地逆にしても正常時の意匠と同じになるものが多いからです.
眠い人 ◆gQikaJHtf2 in 軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
オッペンハイムって誰?
【回答】
オッペンハイム Lassa Francis Lawrence Oppenheim
(1858~1919) は国際法の泰斗.
ドイツ,フランクフルト近郊のWindeckenに生まれ,ベルリン,ゲッティンゲン,ハイデルベルク,ライプチヒの大学で学んだ.
1881年,ゲッティンゲンの大学で法学の博士号を取得.
Then he completed his "Habilitation"
in Freiburg in Breisgau.
1895年には英国に渡り,1900年に市民権を取得.
以後,終生同国に住んだ.
さて,19世紀までの国際法学では,自然法,神法,条約,慣習法,裁判例,国家布令,学説など多様なものが一律に,法源として挙げられていた.
こうした状況を見かねたオッペンハイムにより,実質的法源と形式的法源の区別が主張され,また彼は国際法の基礎は諸国の同意にあるとの観点から,形式的法源は条約と慣習法に限るとした.
すなわち,実定国際法のみが科学の1分野たりうると述べて,明確に自然法を法源から排除すると共に,条約と慣習法のみを厳格に法源として挙げ,学説,国内裁判所の判例等は明白にそれから除外した.
この方法は,20世紀初頭に出版された彼の主著「国際法」においてかなり厳格に透徹されており,同書における国際法の体系は,今日まで多くの著名な国際法学者によってほぼ踏襲されており,この点で彼は20世紀国際法学の創始者としても位置づけられている.
大きな影響を与えた理由には,彼が多くの国家実行を集積し,それについての説明が客観的で公平なことが挙げられよう.
たとえば,Robert Jennings and Arthur Watts
"Oppenheim's International law"
は,国際法を勉強するものであれば,一度は手にする体系書である.
国際法の研究は,ここから始まるといっても言い過ぎではない.
ほとんどすべての論文に,「オッペンハイムによれば……」という引用が見つかるはずである.
【参考ページ】
http://en.wikipedia.org/wiki/L._F._L._Oppenheim
http://kaken.nii.ac.jp/ja/xmlb.cgi?o=0&i=70063732
DICOS / 国際協力(キャッシュ)
http://hosei-ils.sakura.ne.jp/data/2009/r09-kiso-hougen.doc
【ぐんじさんぎょう】,2010/04/15 21:31
を加筆改修
【質問】
ハーグ陸戦条約などが締結された当時,それらの規定の条文などの将兵に対する教育を,各国の軍隊は行ったのでしょうか?
農村から徴兵された文盲の兵士にまで,いちいち「捕虜の処遇について~」などと手間ひまかけて教えていたのか疑問に思います.
極端な話,赤軍兵士や日本軍兵士あたりは投降してくる兵士を見たら,片っ端から虐殺していたようなイメージがあるので...
【回答】
ハーグ陸戦条約自体は,ロシア皇帝が主唱者です.
でもって,日露戦争では,日本側は士官を中心にきちんと条約の内容を教えています.
更に,各師団に,法律顧問が付いて,師団全体に国際公法を知らしめるようにしています.
これは当時,日本が国際公法から逸脱した行為を取れば,ロシアの方が有利になると,首脳部が理解していたからです.
しかし,時代が下ると夜郎自大になった日本軍や,そもそも,国際公法について無知だった赤軍については,そう言った教育を行っていません.
軍隊の規模が大きくなると,教育も大変になりますから.
眠い人 ◆gQikaJHtf2,2007/01/03(水)
基本的に将校なら国際戦時法の教育を一通り受けています.
まあ,真面目にやる軍もあれば,中には授業中寝てるのや内職するのがいたり,教官もそれを注意しないなんぞという,ふざけた士官学校もあるようですけど.
兵士は将校の指揮に服しますので,捕虜の虐殺が起きるかどうかは将校の責任です.
ですから
>赤軍兵士や日本軍兵士あたりは,投降してくる兵士を見たら片っ端から虐殺
などというのも将校の問題ですので,兵士の学歴は関係ありません.
日露戦争では小学校にも行ってない兵士が多かったのですから.
そして将校の質はどうか?というのは,国により&時代により様々ですので,一概にはいえません.
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