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◆国際組織と国際法
<総記FAQ目次
「Togetter」◆(2011/02/25)小倉秀夫弁護士と語る軍事同盟と平和条約と不可侵条約の「経験則」とは
『International Theory: Positivism and Beyond』(Steve Smith, Ken Booth, Marysia Zalewski (eds))
イギリス学派(イングリッシュ・スクール)の国際関係論の理論の本なんですが,イギリス学派の主要論者たちがが冷戦後に書いた論文をまとめたもの.
基本的にイギリスの学者はアメリカの数量計算やゲーム理論をはじめとする合理選択理論などを信じておらず,歴史とか哲学などを強調しますので,そこら辺からの批判がなかなか鋭いものがあります.
かといってコンストラクティビズムのようなものとはちょっと違った視点からものごとを捉えているという部分があり,とても興味深いものばかり.
文体もけっこう読みやすいものが多いです.
たまにはこういうものを読むのも面白いものです.
しかし読後の感想はなぜかちょっとむなしくなるのですが・・・.
―――「地政学を英国で学ぶ」,2005-08-11-07:39
『国際弁護士,どんな仕事か,何と戦うのか』を読み解く (2012/11/09)◆「国際インテリジェンス機密ファイル」
『国際連合―その光と影』(明石康著,岩波新書,1985/12/20)
ご存知元国連事務次官の明石氏による,国連の歴史と役割について.
「国連は期待されすぎている」との一文が印象的.
氏の本は殆どが絶版で,かろうじてこれだけが入手可能だが,怪しいかもしれない.
国会図書館で資料あさるついでに読むといいかもね.
------------軍事板,2001/06/14(木)
『国際連合における拒否権の意義と限界』(瀬岡直著,信山社,2013/1/10)
『国連の政治力学 日本はどこにいるのか』(北岡伸一著.中公新書,2007.5)
『赤十字の基本原則 人道機関の理念と行動規範』(ジャン ピクテ著,東信堂; 2010/04《第2版》)
『赤十字標章の歴史 “人道のシンボル”をめぐる国家の攻防』(F・ブニョン著,東信堂,2012/09)
『冷戦,国際連合,市民社会 国際連合60年の成果と展望』(浦野起央著,三和書籍.2005.8)
国連設立から5.60年の活動を振り返り,学術的に解析し分析を試みている.
理論展開は各国の議決動向や,各種活動の豊富なデータを軸に進められており,地に足の着いた論調が心地よい.
アナン氏を持ち上げすぎかなーって気もするけど.
それはそうと国士様が,世界有数の親日国だと主張するパラオって,日本との議決一致度ブービー賞だったんだね.
――――――軍事板,2011/02/27(日)
【質問】
国際法と国際組織の基本的な考え方とは?
【回答】
そもそも「主権」と「非介入」こそが,国際法・国際組織の原則であり,介入は基本的に違法である.
また,これらは国内法と違い,絶対的なものではなく,強制力も共通のものではない.
以下,ナイ教授の文章を引用.
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第一に,ほとんどの国際組織の憲章は,加盟国の主権が保護されるとしている.
国連憲章第2条第7項は,
「この憲章の如何なる規定も,・・・国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく」
としている.
すなわち,国際組織というものは国民国家を代替しようする試みではないのである.
--------------------------------------------------------
詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.
▼ たとえば国連では,付託された国際紛争に対し,安保理も総会も最初は強制力を持った行動をとることはできず,勧告をする能力しかない.
強制行動(経済制裁または軍事的措置)は,討議をしてその結果,それが平和への脅威,破壊,または侵略行為であると認められた場合にしか検討され始められることはない.
詳しくは,
『世界一わかりやすい国際法入門』(尾崎哲夫著,ダイヤモンド社,2005.12),p.143-147
を参照されたし.
しかもこれまでの史実を見れば明らかなように,経済制裁は極めて限定的な効果しかなく,決議内容によっては抜け道だらけとなる.
軍事措置も,曲りなりにせよこれまで効果があったものは,湾岸戦争ただ1例に過ぎない.
そもそも国連の目的の一つは,「諸国間の友好の発展と世界平和の強化」であって,国家の存在を念頭に置いていることが分かる(同書,p.128-129)▲
【質問】
新しい世界秩序は,どのようなものになるのか?
【回答】
・新しい世界秩序については,まだ明確な答えが出ていない.
・グローバリゼーションと情報革命が,国家の主権にあらたな課題を提起してきている.
***
まず,国際政治とは依然として「自助」を前提としたシステムであることを理解しなければならないだろう.
国家は常に安全保障のジレンマに直面する可能性があり,その場面では,何かしらの力が必要となる.
それは,バランス・オブ・パワー・国際規範・国際法・国際組織などで,緊張を緩和することはできるが,歴史的には,これらは全ての紛争を防止してきたわけでもない.
以下,ナイ教授の言葉を引用.
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ツキュディディスが描いた交際紛争の論理が適用適用可能な地域は,今日の世界でも存在する.
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本題の「世界秩序」だが,これは冷戦の終結後,様々な議論が行われてきたものの,いまだ明確な答えは出ていない.
これについて,ナイ教授は以下のような見解を述べている.
--------------------------------------------------------
第二次世界大戦後に成立した2極体制が崩壊したと言う意味では,新しい秩序が生まれた.
しかし,それは世界政府を欠く,無政府状態の国際システムの下での秩序であり,必ずしも公正な秩序と呼べるものではなかった.
無政府状態の国際システムがかかえる問題から脱却することが,新しい世界秩序だと考えるものもいたが,そのような世界は実現可能だったのであろうか.
冷戦の初頭に,イギリスの歴史家アーノルド・トインビー(Arnold Toynbee)は,国民国家と核兵器が同じ地球上に共存することは不可能であると述べた.
主権国家によって構成される世界では,究極の防衛の形態が戦争であり,核兵器が究極の兵器である.
彼は,そのような世界ではいずれか,望ましく国家が退場しなければならないと考えた.
さらに,前二章で見たように,グローバリゼーションと情報革命も,善かれ悪しかれ,国家主権に新たな課題を提起している.
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詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第9章を参照されたし.
【質問】
ネタ抜きで,宇宙人と戦争になることってあるかな?
【回答】
現在,銀河系内には多く見積もって25000の文明があると言われます.
これらの文明は平均して3000光年ずつ離れています.
各文明が光に近い速さで航行できるような宇宙機を保有しているとしても,隣に行くだけで大事業です.
しかも,資源だけならいくらでもあります.
太陽系に比較的近い範囲で観測しても,すでにこれだけ惑星が見つかっています.
http://www.extrasolar.net/starlisttour.asp?StarcatID=normal
掘り尽くすのは大事業です.
戦争する必要が生じそうにありません.
では,戦争を趣味にしている文明ではどうか?
やはり隣に行くだけで大事業です.
それ以前に,隣の文明を見つけるだけでも大事業です.
というわけで宇宙戦争を実施するのは難しいと思われます.
TFR ◆ItgMVQehA6 in 軍事板
楽観論では,銀河系内には25000の文明があるとされる,これは多いようで少ない
1000億個の恒星のうち,知的生命がいる惑星を持つものは25000,つまり
2.5×104÷1011=2.5×10-7(4×106分の1=400万分の1)
です.
銀河系を半径5万光年,高さ2万光年の円柱とすると,その体積は
2π×5万光年^2×2万光年≒3×1014光年~3
の広さであり,知的生命が存在する数で割ってみると,体積にして
約2π×5万光年^2×2万光年≒3×1014光年~3,
半径はだいたい1500光年だ.
まり,文明と文明はざっと3000光年離れているわけだ,
これでは,亜高速で飛ぶ船でも万年単位の時間がかかる,探し出すのも大変.
この距離を隔てて侵略してくる意味があるはずも無い,
なぜなら,資源だけなら半径1500光年の中にいくらでもあるからだ.
そして,戦争大好きな知的生命体の文明でも,まだ他の文明との戦いの楽しみなど知らないので,母星を後にして何万光年も旅はしないはず.
フォン・ノイマン型ロボットが探査しにやってきたとしても,探査が目的なので侵略にはならないはずだ.
そもそも,これは楽観論中の楽観論,
中間的な考えでは2,5個程度の文明しか同時に存在しないはずだとしている.
悲観論ならば,この宇宙に何億光年間隔でいるかどうか.
仮にやってきたとしても,戦争が始まる可能性は50%あるかどうか程度だろう,
まして侵略などもってのほか.
つまり,これ以上ないほど可能性は低い.
名無し上級大将 ◆80fYLf0UTM in 軍事板
260 :名無し三等兵 :2007/02/01(木) 17:46:14 ID:???
恒星間飛行のために,光速に近い速度で飛ぼうとすると,莫大なエネルギーが必要となると言われるが,そのせいで近所の資源使い果たして,他の恒星まで行く必要が出てきて(以下一行目に戻る)
……とかいう馬鹿な宇宙人を想像してしまった.
軍事板
(画像掲示板より引用)
◆◆国際組織
【質問】
国連構想の原案は,誰が作ったのか?
【回答】
中央大学政策文化総合研究所の武山眞行教授によれば,そのルーツは,ルーズベルトとチャーチルとの間で結ばれた大西洋憲章(1941.8.13発表)だという.
その後,アメリカ国務省が1943/12/23にルーズベルトに提出した「国際の平和と安全の維持のための国際機構設立計画
Plan for the Establishment of an International
Organization for the mainte-nance of International
Peace and Security 」において,後の国連と称されるものの構成主体・目的・機関・意思決定方法などが,荒削りながらも初めて具体的に描かれたという.
これを元にアメリカ政府案としての最終案が作られ,ダンバートン・オークス会議(1944/8/21〜10/7)において米・英・ソ・中から他の連合国諸国に提案する新機構の基本条約草案策定作業が行われ,最終的にサンフランシスコ会議最終日の1945/6/26,連合国51ヶ国によって国連憲章が採択され,署名が行われたという.
詳しくは
『グローバルガバナンスと国連の将来』(中央大学出版部,2008.8.10),p.21-41
を参照されたし.
【質問】
なぜ国連は比較的無力なのですか?
【回答】
ぶっちゃけた話,国連独自の実力行使手段,ようは武力が無きゃ国連ってのは何も出来ない訳よ.
「PKOの資金を神様が支払ってくれるなどと,思い込んではならない」(by
マデレーン・オルブライト )
「彼らは,何処かの国が兵員を出すべきだと盛んに主張していたが,自分達の国が出すとは決して言わなかった」(by
マイケル・バーネット)
この二つの発言に象徴されるように,国連の活動ってのは大国に負んぶ抱っこ状態な訳だ.
その為に,冷戦時代は米ソが対立する局面では役立たず,そうでなくとも最大の出資/兵員拠出国であるアメリカが,自らの国益にそぐわないと判断したら,活動は事実上止まる.
ルワンダ/ソマリアPKOのケースは,まさに典型例だったと言えるな.
法秩序ってのは強制力があって初めて意味を持つ訳で,そういう意味じゃ国連は無力だ.
【質問】
国連決議の問題点とは?
【回答】
決議の「意味」を巡って議論が起きる場合があり,曖昧さが残る点.
決議とはそもそも国家を拘束する法律などではなく,国連憲章の中で,国家が完全に拘束されるのは「平和に対する脅威・破壊,侵略行為」について定めた第7章だけだ.
安全保障理事会が制裁を必要とする侵略行為があったと認めた場合,国連加盟国は,制裁を実行しなければならない.
1990年にイラクがクウェートに侵攻したときや,2001年にアメリカの同時多発テロの時に,これらは実行された.
新しい国際的な法律を作ろうとして,取られるのは,大規模な国際会議で条約案を作成して,政府に署名させようとすることである.
ただ,このような会議は,大規模で複雑になりがちであり,成立までに多くの時間がかかる.
ナイ教授は次のような例を挙げている.
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1970年代に海洋法会議が開かれたが,そこでは100以上の参加国が12海里の領海,200海里の排他的漁業経済水域,海洋底のマンガン塊を人類共通の資産にすること,などについて原則を打ちたてようと試みた.
問題は条約案の一部についてだけ合意する国家があったということで,それによって,[どの部分が受け入れられた国際法なのかという]国際法としての結果が不明確になってしまった.
にもかかかわらず,南沙諸島周辺海域に対する中国の主張に1995年にアメリカが対抗しようとした時には,アメリカは国際海洋法に訴えたのである.
国際法は,基本的には国際政治の分裂的傾向を反映している.
共同体意識が希薄だと言うことは,何かに従ったり自らを抑制したりすることが,義務感とか権威を受け入れられるといったことからはなかなか生まれない.ということである.
強制力の正統な使用を独占する共通の行政府が存在しないと言うことは,主権国家は自助の領域に存在し,力と生存の領域に存在しているということを意味する.
そして生存に関わる問題が生じれば,法律は第2の席に座らざるを得ない.
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・国連決議で決定的に強制力があるのは,国連憲章第7条くらいである.
・南沙諸島の例を見るとおり,糾弾する口実として,国際法を用いる場合が多い.
・自国の生存と比べた場合,法律は決定的な意味を持たないことになる.
詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.
【質問】
なぜフランスも国連常任理事国になれたのか?
【回答】
武村眞行・中央大学教授によれば,設立計画案の段階では常任理事国は4ヶ国のみであって,フランスは問題にされていなかったという.
しかしワシントンDCにおけるダンバートン・オークス会議(1944.8.21〜10.7)の際,フランスに大国の地位を与えることを英国が強く主張した結果,英・米・露・中華民国の間でそのように意見の一致を見たという.
英国のその動機だが,ドイツのそばでその再興を監視し,かつ,ヨーロッパ大陸にあってソ連との対抗勢力となりうるのはフランスだけであり,フランスをそのために「大国化」しておく必要があったと,武村は述べている.
詳しくは
『グローバルガバナンスと国連の将来』(中央大学出版部,2008.8.10),p.25-26, 33,
40
を参照されたし.
【質問】
なぜ日本は常任理事国入りできなかったのか?
【回答】
中央大学政策文化総合研究所の折田正樹教授によれば,以下の要因が大きいと言う.
1. AU決議案との一本化ができなかったためにAU諸国の票を獲得できる見込みが絶たれたこと,
いわゆるG4(日独印伯)決議案の他に,AU(アフリカ連合)決議案や,コンセンサス・グループ(韓国,イタリア,メキシコ,パキスタン等)による決議案とがあり,G4はAUとの間で決議案の一本化を図ったが,失敗し,それら決議案は全て採択の見通しがたたず,廃案となった.
2. アメリカの反対
アメリカはかねてより,日本の常任理事国入り支持を明らかにしていたが,G4決議案の国連改革の部分において,受け入れられないものがあったので反対した.
3. 中国が世界的に「G4決議案」反対の外交攻勢をかけたこと
中国は歴史問題を口実に,日本の常任理事国入りを阻んだのみならず,アジア太平洋諸国にも働きかけをした.
同諸国は,日本の常任理事国入りを支持する国が多かったが,その中国の働きかけにより,表立って「G4決議案」を支持するとした国は限られた.
なお,G4決議案では新常任理事国の具体的な前は記されておらず,総会における選挙により,それぞれの地域から選出された国が常任理事国となるとするものであって,もしG4決議案が通っていたとしても,必ずしも日本が常任理事国になれたとは限らないことにも留意すべきである.
詳しくは
『グローバルガバナンスと国連の将来』(中央大学出版部,2008.8.10),p.96-102
を参照されたし.
【質問】
国連安保理決議に対し,何らかの枷(かせ)はあるのか?
【回答】
エクス・マルセイユ第III大学(現ポール・セザンヌ大学)准教授・J.
F. マルキ J. F. Marchiによれば,安保理というのはこれまでの事例から考察するに,法的な機関ではなく政治的な機関であるため,いかなる措置をとるかについても,また,決定の内容についても,裁量を有し,また,法的な平等原理は働かず,ある状況に対して行動するもしないも自由だという.
さらに安保理は,自らの認定に拘束されることもなく,過去の安保理自身がどう認定したかが,今後の認定を左右することもないという.
加えて,安保理自身には何らの法的枷もなく,安保理に対する制限は,決議の投票段階における締結国の政治的立場の表明だけだという.
詳しくは
『グローバルガバナンスと国連の将来』(中央大学出版部,2008.8.10),p.13-15
を参照されたし.
まあ,そもそも国際法自体,脆弱な枷でしかないわけだが.
【珍説】
安全保障理事会などが米ソ両陣営に分裂し,機能しなかったというのは,過去の話である.
むしろ,過去の教訓を生かして,PKO活動の強化を中心に,国連の機能を高める方向で,世界規模での治安維持と軍縮を考えるのが,もっとも現実的な道である.
――――――林信吾著『反戦軍事学』,p.220
【事実】
非現実的です.
安保理が機能していないのは過去の話ではありません.
2008年現在も有効に機能しているとは言えない状況にあります.
ミャンマー問題でも,ダルフール紛争問題でも,拒否権を発動されて有効な手が打てない事実を忘れているのでしょうか?(それとも見て見ぬふりかな?)
むしろ,二大陣営間の対立という構図が崩れて,利害関係が多極間で発生するようになった事実から考えれば,冷戦時代よりも安保理はさらに
北韓の核実験への決議すら,大して有効ではない経済制裁程度に終わってしまいましたが,そんな機関に世界規模での治安維持と軍縮を期待するのは,過大な期待と言うものです.
「機能を高め」れば可能?
希望的観測に国家安全保障を委ねるというのでは,「バトル・オブ・ブリテンにドイツが勝ってくれたら,アメリカも講和に応じてくれるかもしれない」という希望観測の下に日米開戦を決めた,当時の軍部と大差ありません.
>我々のような戦争を知らない世代も,事実はきちんと受け止めなければならない(『反戦軍事学』,p.221)
と書いている以上は,有言実行していただきたいものですな.
【質問】
集団安全保障がほとんど「秩序」を作らないのなら,国連その他の国際組織は無意味では?
【回答】
国際組織には大きな政治効果がある.
例として,国連を挙げてみよう.
国連憲章に武力禁止の条項があるからこそ,それが「違法ではない」という証明責任は,武力を使用する側に発生する.
これは外交・政治のコストを引き上げるものだろう.
国連の持つソフトパワーについて,ナイ教授はイラク戦争の例を挙げている.
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2003年にアメリカが思い知らされたように,国連は国家のソフト・パワーにも影響する.
第二の国連安保理決議を得られないままアメリカは対イラク戦争に向かったが,そのため対米支援は限定され,戦争とその帰結よりもコストの高いものになった.
また,国際的暴力が安保理で議論されることは,〔国際社会の〕集団的関心があることを劇的に示し,危機における関心を集中させる効果がある.
安保理の議論は,さまざまな見解を集約・明確化し,侵略武力行使のコストを高め,外交にとっての安全弁の機能を果たす.
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また,国連の平和維持活動についても,限定的ではあるものの有益なものだと述べている.
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国連平和維持軍の役割は,限定的だが有益なものである.
これらの〔踏み越えると引火する〕仕掛線には緩衝地帯が有用なことは,くりかえし諸国の認識するところとなっている.
冷戦が終わって,国連が力を振るう,より多くの機会が生まれた.
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冷戦後の国連平和維持活動には,成功と失敗が存在する.
成功例
・ナミビアの非植民地化
・エルサルヴァドルでの人権監視
・ニカラグアでの選挙監視
・カンボディアでの行政支援
・キプロスでの平和維持
失敗例
・ルワンダの虐殺阻止
・アンゴラの内戦勃発
・ボスニアでの内戦
ボスニアについては,より強力なNATO軍が介入するまで,国連は有効な活動を行うことができなかった.
エスニック紛争について,国連(中立の軍隊)の介入が常にうまくいくわけではない.
ただ,東ティモールのように,オーストラリア等が率先して派兵する場合,国連は依然として重要な正当性を与える機関として機能する.
また,イラク戦争において,この「正当性」を無視したために,高いコストを支払う結果になったと,ナイ教授は指摘する.
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2003年に米英が武力行使を明確に容認する第二の国連安保理決議案を得られなかったことで,両国のイラク占領ははるかにコストの高いものになったのである.
もともとの集団安全保障の考え方が,かつて考えられたほどにはきれいに当てはまらないとしても,国際法や国連を切り捨ててしまうのは間違いである.
それらは,無政府的な国際システム〔anarchic state system〕における政治的現実の一部だからである.
国際組織と法について,冷笑的になることも,また甘い見方をすることも,共に間違いなのである.
国家は法によってのみ生きるわけではないが,法をまったく抜きにしても生きるわけではない.
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上記を纏めると,
・国連を利用することで,政治的コストを下げることが可能である.
・冷戦後の国連平和維持活動には,成功例と失敗例がある.
・他国が介入を行う際に,介入に正当性を与える機能を国連は持っている(介入のコストを下げることが可能)
・国連にたいして,過度の期待をすることも,完全に無視することも賢明ではない,状況を考えて,国連を利用するのは,政治・外交のコストを引き下げるうえで必須である.
この見方は,本当にナイ教授らしいと思う.
詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.
▼ ちなみにスタンダードな見解では,国連による抑止力とは,以下のように説明されている.
――――――
抑止力は,みんなである約束をすることで生み出されます.
その約束を簡単に説明すると,
(1) 「武力行使,平和の破壊および侵略の禁止」または「国連憲章に従うこと」
(2) 「もし(1)を破って武力行使をした場合には,国連加盟国が一致団結して,(1)を破った国に抗する」
という内容です.
つまり,国連加盟国が全て同盟関係にあるようなものだといえるでしょう.
同盟関係とは,もし同盟国が攻撃を受けた場合に,他の同盟国が助けるという関係を言います.
このような体制を築くこと_よって,どの国も(1)の約束を容易に破ろうとはしなくなるでしょう.
なぜならば,その場合には国連加盟国すべてを敵に回すことになりかねないからです.
これが抑止力です.
――――――『世界一わかりやすい国際法入門』(尾崎哲夫著,ダイヤモンド社,2005.12),p.143-144
抑止力だけが国連の影響力ではないが,一例として紹介まで.
これが「大きい」政治効果と言えるかどうかは,大小の定義が不明ゆえ,解釈は人それぞれだろう.
なお,安全保障において,多国間同盟は2国間同盟に劣るとする指摘もある.
(平間洋一著『日英同盟』,p.200)▲
【質問】
こういう事例を見ると,ナイ教授が言うほどの効果が国際組織にあるのかどうか,疑問に思えてくるわけですが.
FT:ジンバブエが,国連人権評議会のSustainable Developmentの議長国に
Zimbabwe to chair UN commission
By Mark Turner at the United Nations Published: May 2 2007 19:28
A UN diplomat on Wednesday said that Francis Nhema, Zimbabwe’s environment minister, looked almost certain to get the CSD position after being nominated as Africa’s candidate in April
あのジンバブエが人権評議会の会議の議長国って…
国際組織があることによって
>外交・政治のコストを引き上げる
という話は,先進国限定と言えるのでは?
【回答】
それはナイ教授も指摘しています.
「生存性が著しく低い国々」では,まず,そちらが優先されるのも,また事実です.
ただし,それ以外の場合,国は揉め事を大きくするようなことを避けるので,やはり国際組織などに頼ることになります.
それに現在は,国同士の関係を断ち切るのが非常に難しいので――最貧国を見れば分かるように――,その調整としても国際組織を使用すると言えるでしょう.
【質問】
「国民国家」を克服させるための構想というのは,どのようなものか?
【回答】
・国民国家を代替する手段としては,5つの方法論が考えられている.
・それぞれに一長一短があり,全てのアプローチにはそれなりの合理性があるものの,現在の国民国家より優れているとは言い切れない.
・環境や情報革命は,21世紀において,大事な役割を担うだろう.
***
これは,5つの代替構想がある.
以下,5つの構想をあげると
1.世界連邦
これは,ヨーロッパでの最も古い伝統的思想の一つで,国際連邦を元に,無政府状態である国際社会の問題を解決しようとする試みである.
国家が自ら軍備放棄に合意して,中央政府の権限をある程度受け入れるという考えで,18世紀にアメリカ東部13植民地が連合した例がある.
彼らの中には,歴史はより大きな集団に向かうという主張をするものがいる.
しかしながら,連邦制度が非常に優れた構想なのかは定かではない,
平和だけが全てではなく,福祉・正義・自治も欲するが,世界政府がそれを保証してくれるとは信じていない.
さらに,世界連邦制度が,戦争の解決システムであると確信している人は(有識者の中では)ほとんどいない.
これについて,ナイ教授は以下のように述べている
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無政府状態の国際システムが戦争の原因であるとしても,独立国家を消滅させることが必ずしも戦争の廃絶に繋がるわけではない,
既に見たように,近年の戦争の大部分は,国内で起こっているのである.
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2.機能主義
世界連邦構想の限界が見えてくると,今度は「国際的な機能」を重視する考えが台頭してきた.
1940年代に広がったこの構想は,経済・社会協力により,国境を越える共同体を生み出し,その結果,戦争を廃絶しようとする試みだった.
この構想では,主権はさして重要ではなく,国家の外枠は存在するものの,敵対的な性格は減衰すると考えられた.
WW2の終わりに,この機能主義に基づいて,国連食糧農業機関(FAO)や,世界保健機関(WHO)などの,専門機関が設立された.
この機能主義は,NGOや多国籍企業などがありふれた現代でも,垣間見ることはできる,
しかしながら,機能主義は世界秩序のグランドデザインとするには充分ではない.
大部分の国家は,過度に相互依存が進むことによって,他国に対する脆弱性が増すのを歓迎しないからである.
3.地域主義
これは,EUなどに見られる地域主義的な考えである.
そもそもは,1950-60年代に盛んだった地域統合の隆盛を受けて,フランスの計画長長官だったジャン・モネが,地域レベルでの機能主義的なアプローチによって,独仏を結びつけ,WW1とWW2の原因となった,紛争の再発を防止しようとする試みだった.
1950年に,ヨーロッパでの地域統合プロセスは,西欧の石炭,鉄鋼業を統合するシュリーマン・プランで始まり,1957年以降,ローマ条約に基づいて創設された,ヨーロッパ共同市場の下で,貿易障壁の段階的撤廃,農業・経済全般での調整が進められ,これが1992年のEU設立に繋がった.
この動きは,NATFAの動きを見るように,他の地域でも模倣されようとしている.
このEU構想について,ナイ教授は以下の見解を示している.
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1965年に当時のフランス大統領ドゴール(Charles de Gaulle)将軍が,さらにその後,1980年代にはイギリス首相のマーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher)が地域統合の進展に限界を設けた.
1990年中ごろまでに,EU加盟国の間には,主権をどの程度まで地域政府に割譲するかについての動揺が広まっていった.
2002年にユーロという共通の新通貨が流通し出したが,全ての国においてではない.
しかし,たとえ統合に向けての動きが減速し,東ヨーロッパの新加盟国を認めるにつれて,組織上・憲法上の問題に直面したとしても,既に検討したそれ以前の時代に比べて,ヨーロッパがよい方向に変化したことは間違いない.
EUは,進行中でダイナミックな国際関係の実験を代表している.加盟諸国が農業から共通の防衛力にいたる争点を扱う様々な多国間機構の網の目を苦労してくぐりぬける過程で,明確にヨーロッパ固有のアイデンティティが浮上してきた.
確かに,政策決定のレベルで国家間の相違は残っているが,世論調査によれば多くのEU市民が自身を,フランス人,ドイツ人,スペイン人と同様に,ヨーロッパ人とみなしている.
コンストラクティズム(構成主義)の理論は,理念や文化が政治的なアイデンティティや信条の形成に果たす役割を強調しており,この現象と合致する.
コストと利益の計算に照らして,完全な国家の独立よりも協力が有利だと言う信念からEUの加盟諸国は複合的相互依存の増大を選択してきたのである.
今日,ヨーロッパでは誰もが同じ船に乗っているわけではないだろうが,彼らの別々の船はかつてとははるかに異なり,さまざまな形で1つに結び付けられている.
たとえば,多くの領域でEU法は国内法に優先する.
EUは国際政治体制の新しい形態の象徴ではあるが,地域的なものにとどまっている.
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4.環境主義
1970年代に大きく注目された主義.
これは,脱国家的な領域と領土は,資源不足の状況下で相互依存を進展させるという主張である.
これを主張したのは,リチャード・フォークで,彼は大衆主義的な価値が徐々に上昇してゆき,国民国家の枠組みを超えて行くだろうと主張した.
これに,反植民地主義,反人種主義,更なる平等,環境保護活動などを通じて,国連の多数派が力を持ち,世界で枯渇しつつある資源に関して,新たなレジームが構築されることになると予想した.
その結果,平和・平等・環境に関して,安定した国際的な規範が確立されて,新たな世界秩序が形成される・・・というわけだ.
これに,技術的な変化・経済的成長が環境問題を際立たせて,基本的には共有地として扱われてきた海洋・大気・生物的な多様性が資源への負荷を増してきた.
20世紀後半には,漁業や酸性雨,オゾン層の破壊,絶滅に瀕している朱の保護,南極大陸,海洋汚染といった共通の懸案事項について,170以上の環境条約を結んできた.
その3分の2以上は,1972年のストックホルムで開催された最初の国連環境会議以降に成立している.
環境・地球温暖化に関する,重要な国連の会議が,1992年にブラジルで,そして1997年に日本の京都で開かれ,国境を越えたロビー活動を展開するNGO団体を多く生み出した.
ほとんどの先進国は,環境問題への強い関心を示している.
だが,フォークの主張には,資源不足の進展に関して過大評価があり,新技術の進展を過小評価していた.
先進国では環境問題に関心が深いのは事実だが,貧しい国では,それらは経済発展の二の次の問題になる.
5.電脳封建主義
ピーター・ドラッガーや,アルビンとハイジ・トフラー夫妻のように,情報化時代の組織理論家は,情報革命により,組織階層がよりフラット化し,ネットワーク組織がそれに取って代わりつつあると主張する.
また,彼らによると,20世紀の中央集権的な政府は,21世紀には分権的となり,より多くの機能がNPOや民間市場によって果たされるようになると予測されている.
さらに,インターネットの果たす役割について,ナイ教授は以下の見解を示している.
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インターネットの専門家のエスター・ダイソン(Esther Dyson)は,非集権的な組織や仮想共同体がインターネット上で発展するにつれて,それらが国境を越えて独自の統治方法を発展させると主張する.
国民国家は存続するが,市民生活における重要性と利便性はかなり低下するであろう.
人々は複数の自発的な契約を結んで生活し,[パソコンの]マウスのクリック1つでコミュニティ[共同体]を渡り歩く.国境をまたがる共同体と統治の新しい形態が,ウェストフェリア体制が成立する.
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ただし,このような方向性で国民国家を克服したとしても,これは「仮想的な共同体」であり,現在の「地理的な共同体」がどのように対立するのか,暴力と安全がどのように取り扱われていくのかについては,まだまだ未解決である.
また,この新しい情報技術は善用も悪用も可能で,テロリスト達はこれらを駆使して,武器の情報を入手し,インターネットを通じ資金を移転させ,調整を行っている.
遠くのハッカーは,物理的に国境を越えることなしに,他国に損害を与えることが可能である.
こうした状況を前にして,市民は結局,弱い政府ではなく,保護を提供できる強い政府を持った国家を求めるかもしれない.
ホッブスが指摘したように,国家間の無政府状態は危険を伴うが,非国家主体に対する保護を提供する政府が存在しないといった状態の無政府状態よりは,まだしも危険ではない.
詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第9章を参照されたし.
6. 銀河帝国による征服
(画像掲示板より引用)
【質問】
国連などの国際組織が「世界政府」となる可能性はあるのか?
【回答】
現行のシステムでは,極めて難しいと言わざるを得ない.
まず,国際的な組織において最も問題になるのが,その「政治的脆弱性」である.
国際司法裁判所という裁判所は確かに存在するものの(9年任期で,15人の判事から構成される),残念ながら,世界の最高裁判所とはいえない.
なぜなら,国家は,裁判所の結果が持つ司法権を無視することができるからだ.
さらに言うと,国際裁判所の司法を受け入れたとしても,その判決を受け入れないという選択を取ることもできる.
例えば,1980年代にアメリカがニカラグァの港に機雷を敷設したとき,国際裁判所は,これを違法とみなす判決を下したが,レーガン政権はこれを拒否した.
ナイ教授は,次のような捉え方をする.
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仮に,国連総会をアメリカ連邦議会にあたるものだと考えたとしたら,国連総会とは何とも奇妙な立法府である.
国連総会は1国1票の原則を基盤にしている.
国連総会では,インド洋の南に位置する人口10万人のモルディヴも1票を持っていれば,10億人以上の人口を持つ中国も1票である.
国連総会では,1人当たりの1票の価値で比較すると,モルディヴ人の1票は,中国人の1票の1万倍の価値を持つことになる.
したがって,立法府に関する民主主義的基準には,国連総会は上手く当てはまらない.
同様に,国連総会は,権力を反映したものでもない.
モルディヴが,国連総会ではアメリカやインドや中国と同じ1票を持っているのだから.そうした奇妙な点があることから,国連総会で拘束力を持つ決議を通すことに国家は消極的になる.
国連総会決議は決議にしかすぎず,法律ではないのである.
最後に,国連事務総長が世界の新しい大統領にあたる存在だと考える人がいるかもしれない.
しかし,これもまちがっている.
事務総長とは,極めて弱い行政の長に過ぎない.
仮に事務総長に権力があるとしても,その権力は,大統領の備えるハード・パワーとソフト・パワーというよりも,ローマ法皇のソフト・パワーに近いものである.
このように,国際組織を国内政府の類推で捉えようとする試みは,間違った答えを導き出す確実な道といえるであろう.
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私見だが,「ローマ法王のソフトパワー」とは,多分に権威的なパワーの事だと思うけど,国連事務総長にその「パワー」が備わるかは,極めて個人の資質が大きいと思う.
(ローマ法王にしたところで,基本的にはそうだろうが)
詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.
▼
秘密警察にしろ,軍隊にしろ,歴史上の役割をみると,外敵に備える場合だけでなく,それ以上の役割として治安装置としての役割があります.
ごく最近の数十年の一部の国を除いて,軍隊は外敵への備えだけでなく,それぞれの国や地域の支配層の既得権を破壊する恐れのある,国民や市民を抑えつけるために活用されてきました.
過去に学ぶと,どうしても強大な軍事力を単純に一機関に委任するのは危険かと思います.
二重,三重,もしくはそれ以上の市民でチェックし,市民でコントロールできるシステムが必要かと思います.
でないと,かつてのスターリン主義と大差なくなる恐れもでてきます.
例えば徹底した情報公開,選挙などの何重もの民選システムの実施,徹底したシビリアンコントロールなどがすぐに考えられますが,おそらくこれらだけではまだ不十分かと思います.
現在の国連の意思決定の手段は,機関によっては,拠出金の大小によって手持ちの票数が変動することもあり,また独裁に近い国家も少なからず存在しています.
民主的手法,といっても,アメリカの考える論理と,ヨーロッパの考える論理は,違っているところもみられ,社会主義,イスラム,あるいは中進国,途上国によっても,「民主」の意味自体が変わってくるでしょう.
システム構築を考えるとともに,その前段階として,多様な世界を認識し,そこでの包括的なコミュニケーションを実現していく,コミュニケーションや交流やディスカッションなどの下地作りも必要となるでしょう.
おそらく,数十年単位で,様々な異文化や異国と自然に意思の疎通ができる,
そういう意識を私たちが獲得した上で,改めて考えてみるのもいいかもしれません.
そもそも世界政府自体がナンセンスであるという見方も強いという.
以下引用.
戦争を世界からなくすには「世界政府」(World Government)を作ればいいという議論もありますが,これはある意味でナンセンスである,という見方が強いみたいです.
なぜなら,世界政府ができても,その下で「内戦」(civil war)が起こったら意味がないからです.
しかも内戦というのは,あらゆる戦争のなかでも最も血が流れる残酷な戦争が多いらしい.
たしかに一つの国家の中でも,ロシアとチェチェンのように戦争しているところもありますし,アフリカなんか手がつけられない状態です.
これについてはアンゴラから来てた女の子が実感を込めて語っておりました.
今の人間界で世界政府が機能するのは,映画「インディペンデンス・デイ」みたいに,宇宙人が侵略してきて,人類共通の敵が現れた時,という議論もあるそうです.なんじゃそりゃ.
そういえば,日本が戦争を仕掛ければ,南北朝鮮なんて一気に実現できる,という話を聞いたことがあります.
ひょっとして,これもそれと同じこと?
まあ日本は頼まれても朝鮮半島なんかに攻めに行かないとは思うんですが(苦笑
以上を踏まえると,世界政府を無理に作っても,圧政的になったり,内戦になったりする可能性が比較的高い模様.
▲
【質問】
↓本当に王道?
――――――
大国の利害でしか動かなかった(動けなかった)過去の国連のあり方は,真摯に反省すべきだが,それを踏まえて,弱者のため,被抑圧民族のために本当に機能する国連に組織し直していくことこそが,世界平和実現への王道なのである.
――――――林信吾著『反戦軍事学』,p.220-221
【回答】
むしろ,かなり回り道だと思われます.無想と五十歩百歩というところでしょう.
まず,国連というものが大国による国際社会管理機関であるという側面を,その誕生時から持っており,今もなお拒否権という形でその側面を残しているということを考えれば,「弱者のため,被抑圧民族のために本当に機能する国際組織」に国連を作り変えるということは,国連を一から作り直すのと同じことになるでしょう.
それなら新たに弱者救済の国際組織を作ったほうが,拒否権がないだけスムーズでしょう.
次に強制執行の問題.
「弱者のため,被抑圧民族のために本当に機能する国際組織」であるためには,抑圧側に国連の言うことを強制的にでもきかせねばなりません.
しかし,それは紛争とどこが違うのでしょうか?(まさか「話せば分かる」などと言い出さないでしょうな?)
ずいぶんと世界平和とかけ離れた話のように聞こえます.
ま,この手の主張する人は,単に米国主導で日本の安全保障が担保されているのが気に入らないから,その代わりに国連を持ち出しているというだけ(本書の220ページ以前もそんな感じ)で,国連の実相なんぞに関心はないんでしょうねえ.
【質問】
脱国家的主体や,非国家的組織は,グローバルな情報化時代の中でどのようになっていくのか?
【回答】
既に大きな役割を果たしているが,情報量の拡大・情報コストの縮小によって,さらに大きな役割を果たすようになると思われる.
伝統的な国際政治では,国家を単位として議論が行われてきた.
以下ナイ教授の文章を引用.
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「ドイツがアルザスを欲した」とか「フランスはイギリスを恐れた」とか言うが,これらの表現は,とりわけ国際政治の古典時代を取り扱うにはそれなりに便利である.
18世紀には,君主が国家として発言した.フリードリヒ大王がプロシアのために何かを欲したとすれば,フリードリヒはプロシアであった.
19世紀においても,広範なエリート階級が対外政策の決定を支配していた.
また第一次世界大戦においてすら,ヨーロッパの外交は比較的狭い範囲に限られた官房外交であった.
さらに国際政治の古典時代においては,政策課題は極めて限られていた.軍事的安全保障の問題が圧倒的で,これは主に外務省によて処理されていた.
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これに対して,脱国家的主体は質的には,何世紀にも渡り活動してきたが,20世紀後半には,量的に拡大し,これが国際政治に重大な変化を起している.
地球規模で相互依存が進んだ結果,国際政治の課題は広範囲に渡るようになり,誰しもがこの舞台に上がろうとしている.
例えば,アメリカでは,国内官庁が何かしら国際的役割を果たしていると,ナイ教授は述べている.
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農務省は国際的食糧問題に関心があるし,環境保護庁は酸性雨や地球温暖化に関心がある.
沿岸警備隊は海洋投棄の問題に,商務省は貿易に,財務省は為替の問題に関心があるというわけである.
国務省は,これら全ての問題を制御する事はできない.
アメリカ政府のそれぞれの部局が,みな自らの小外務省を持っていると言っても過言ではない.
実際,外国においてアメリカを代表している外務官の構成を見れば,殆どの大使館で国務省から派遣されている要員が少数派であることが分かる.
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まとめ
・脱国家的な主体は,数世紀に渡って存在してはいたが,20世紀後半以降のそれは,量的に拡大しており,国際政治に大きな影響を与えている.
・相互依存の進んだ世界では,誰も彼もが自ら国際政治の舞台に上がろうとしている.
・これから,脱国家的主体などによって,国際問題はもっと広範囲に渡る様になると予測される.
詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第8章を参照されたし.
【質問】
NGO(非政府組織)の役割は,これからどうなっていくのか?
【回答】
もう既に重要になっているが,これからもますますこの手の組織は増えていき,国際政治に影響を与えて行くだろう.
好むと好まざるとに関わらず.
NGO組織は,WW1以前では176が存在しているに過ぎなかったが,
1956年には1000,
1970年には2000,
1990年には6000,
2000年までに2万6千まで増えた.
しかも,このNGOは「公式に結成されたもの」だけであり,これ以外を見る必要もある.
NGO組織について,ナイ教授は以下のように分析している.
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多くのNGOは,個々の国家権限を越えた,あるいは国家が無視しがちな広範な公共の利益を代表して,「グローバルな良心」として行動しようとしている.
これらの組織は民主的に選出されたわけではないが,直接的には政府や企業の指導者に政策変更を迫る事で,また間接的には政府や企業がなすべきことについての人々の認識を変えることで,新しい規範の形成に貢献する事がある.
パワーの源泉という点で,こうした新しい集団はほとんど大したハード・パワーを有してはいないが,情報革命は彼らのソフト・パワーを大幅に増大させてきた.
政府は今や,ソフト・パワーの拡大のために情報を活用し,世論を動員する事で直接・間接に圧力を掛けるアクターと,同じ舞台を共有しなければならない.
インターネット時代にあって利用可能な大量の情報の中から重要情報を取捨選択するのが,メディアの有力編集者だとすれば,脱国家的組織の増大しつつある重要性を測る大まかな方法は,主要なメディアでそうした組織が言及される回数を数えることである.
この方法によって最大規模のNGOは,有力な編集者達の注目を集める戦いで,確固たるプレイヤーに成長していった.
たとえば,ヒューマン・ライツ・ウォッチが「2003年世界報告」を発表して,テロとの戦いでアメリカ政府の行動を強く批判すると,その後10日間で,288の新聞や雑誌でこの組織に言及する記事が登場したのである.
過去10年間の報道は,このカテゴリーの主体の成長を物語っている.
1992年以来,「非政府組織」ないし「NGO」という単語への言及頻度は17倍になった.
ヒューマン・ライツ・ウォッチに加えて,アムネスティ・インターナショナル,国際赤十字,グリーンピース,国境なき医師団,トランスパレンシー・インターナショナルなどのNGOは,主流メディアでの言及頻度が指数級数的に上昇した.
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脱国家・脱政府的な接触は,回数が増えただけではなく,その中身も変質している.
最初は,脱国家的関係とは,規模的な経済の恩恵を受けている多国籍企業やカトリック教会と言った巨大な官僚組織に支配されていた.
こういった組織はこれからも重要だろうが,情報革命,とりわけインターネット時代では,コミュニケーションのコストが極めて低くなったので,殆ど本体を持たないタイプの組織や個人も舞台に上がれるようになったわけだ.
こういった組織について,ナイ教授は以下のように分析している.
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こうした非政府組織やネットワークは,国境に関係なく国家に浸透する上で,とりわけ効果的である.
というのも,こうした組織には,いくつかの国々で国内政治上著名な市民がしばしば関与しており,自分達の望む問題で政府やメディアの関心を集める事ができるからである.
先に述べたように,地雷禁止条約は,インターネットを基盤とした組織とカナダのようなミドル・パワー,そして故ダイアナ(Diana)妃のような著名人や政治家とが協力した,興味深い連合の産物であった.
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環境問題もまた,一つの好例と言える.
NGOの役割は,1997年の京都議定書へ各国の代表団をつなぐコミュニケーションのチャンネルとして重要だったし,産業界・労働組合・NGOなどの組織が,脱国家的な戦いの中で,主要国のメディアの関心をひきつけるべく京都で競合した.
もちろん地理的な共同体は,今後とも長期に渡り,世界政治の中で重要な役割を果たし続けるだろうが,その自立性は低下して,もっと浸透性の高いものになるだろう.
これについて,ナイ教授は次のような見解を示している.
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地理的共同体と主権国家は,自分達のソフト・パワーを拡大するために情報を活用でき,政府に直接働きかけたり,一般市民を動員する事で間接的に働きかけるアクターと,舞台を共有せざるを得なくなるであろう.
急速な発展を望む政府は,外部の監視の目から自らを守ってきた情報流通の障壁のいくつかを撤廃せざるを得なくなるであろう.
高度の発展を望む政府は,もはや自身の財政・政治状況を,ビルマ[ミャンマー]や北朝鮮がそうしてきたように,ブラック・ボックスの内側で維持し続けることができなくなろう.
主権のそうした形態は,あまりにも高く付く過ぎることが判明している.
アメリカのようなハード・パワーを有する大国ですら,新しいアクターと舞台を共有しているのであり,国境を管理する事がより困難になっていると自覚しているのである.
サイバー・スペースは地理的空間には代替しないし,国家主権を廃止する事にもならないが,封建制度の市のように,[国家主権と]共存し,主権国家や強大な国の意味を大いに複雑にするであろう.
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まとめ
・非政府組織は,この10年で爆発的に増え,また,その役割や影響力も拡大している.
・これらの組織は,主権国家に圧力を掛ける事もしばしばあり,それを無視できない場合も多々ある.
・インターネットにより,緩やかで実体を殆ど持たない組織でも,国際政府の舞台に上がれるようになった.
・主権国家はこれからも重要であり続けるものの,非政府的組織や脱国家的主体の影響力も拡大し,より複雑になるであろう.
詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第8章を参照されたし.
【質問】
多国籍軍と国連軍の違いですが
国連軍 :国連が指揮する
多国籍軍:国連はお墨付きを与えるだけ
という理解でいいんでしょうか?
この場合,「国連が指揮する」というのは国連が司令官を任命して一任するということでしょうか?
【回答】
原則上は国連憲章に定められたものが「国連軍」,それ以外が多国籍軍ということになりますが,現実には大した違いはありません.
国連憲章では,制裁手段として軍事的手段を有することを定めています.
憲章第42条
安全保障理事会は,第41条に定める措置では不充分であろうと認め,又は不充分なことが判明したと認めるときは,国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍,海軍または陸軍の行動をとることができる.
この行動は,国際連合加盟国の空軍,海軍又は陸軍による示威,封鎖その他の行動を含むことができる.
この軍事手段が「国連軍」です.国連軍は
(1)安保理と各加盟国が締結した「特別協定」に基づき提供される兵力で構成され,
(2)「軍事参謀委員会」が安保理の下に戦略的責任を取り,総司令官はその助言を得て安保理が任命する
こととなっています,建前は.
しかし,この第42条に沿った国連軍はいまだ編成されたことがありません.
朝鮮戦争にせよ,ソ連が棄権したので米軍主体の連合軍を国連軍と呼んだだけです.そのことは,経緯を見れば明らかです.
北朝鮮軍の南侵開始は6/25
安保理の北朝鮮侵略非難決議が6/26
マッカーサーに対して米政府が米空軍海軍の投入する権限を認めたのが6/27
韓国に必要な支援を与えることを勧告する国連決議が6/28
マッカーサーに対して米政府が陸軍を投入する権限を認めたのが6/30
日本駐留の米陸軍の韓国への投入開始が7/1
国連が国連軍の司令部創設を決議し,人事組織についてアメリカに委ねたのは7/7
マッカーサー元帥が国連軍司令官に就任したのは翌7/8
一方,多国籍軍は文字通りの寄り合い所帯であって,「国連がお墨付きを与える」かどうかは全く別です.
ただし,武力行使が前提でしょうから,国連のお墨付き(国連決議が多いです)を旗印にすることが多いですが.
つまり,現実には,
国連軍 :国連がお墨付きを与える
多国籍軍:国連はお墨付きを与えることもある
くらいの違いしかないのが現状です.
【質問】
国連の平和維持活動についてだけど,wiki見ると諜報活動,対ゲリラ作戦,戦犯被疑者の逮捕ってあるけど,公式に発表されてるのでしょうか?
かなり危険な任務だと思うのですが.
【回答】
情報活動という意味での諜報活動ならば,例えば
・派遣された宿営地の周りの住民と交流して,派遣国が出来る範囲のことで,地元全体のためになることを知る,部隊が活動していく上で気をつけなくてはならないマナー(例えば子供の頭を撫でてはだめとか,女性には自分から話しかけてはだめとか,トイレの入り口がみえるところに車両を止めないとか),地元民なら知っていて当然のこと(黒いターバンを巻いた人は宗教指導者,白い衣を纏えば屍衣で殉教の覚悟あり)
などを把握するってことではないかと.
最近の陸上自衛隊でのこの種の活動については,産経新聞のサマワ本を読むといいと思います.
色々な活動をしていたことが伺えます.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
国際情勢が悪化して平時の国連軍ってのを設置することになったって言う設定の小説を考えているのですが.
目的は,国連安保理での出動が決定してから,
各国の軍隊で多国籍軍を編成するまで(数日程度)に,現地へ緊急展開して後続の国連軍が到着するまでの足場と時間稼ぎを作って,後続の国連軍が到着した後に合流して敵勢力を排除するってのが概要なんですが(出動勧告が無い時はPKO活動などもやる).
この場合で,陸海空でどの程度規模の人員と設備と装備が平時からあれば妥当でしょうか?
【回答】
そういう寄り合い所帯と緊急即応部隊とは,全く相容れない存在だと思う.
じっさい国連の平和執行部隊は全く機能しなかったわけだし.
装備や費用は参加国のいくつかがごねて届かず,司令官の任命では安保理が紛糾(とくにアメリカは他国人の指揮下に自国の将兵を置くのを嫌がる)
構成員は貧しい国から志願(という名の出稼ぎ)が主力で,先進国は血を流したがらず,練度は最低.
軍法の解釈でまた国連は紛糾…….
そんな感じになると思う.
常設国連軍が妄想扱いされる主な理由は,予算の都合.
1997年の国連の通常予算額は,年間13億ドルとなっています.この額は,ニューヨーク市の年間予算の約4%に過ぎません.
平和維持予算は,1996年時点で16億ドルとなっています.
戦争を行って,その被害を補償するためにどれだけの金額が必要になるかを考えれば,平和維持活動に使ったお金は有意義だといえるでしょう.
http://www.unic.or.jp/know/budget.htm
平時に編成できるのは,各国から出向した連絡将校からなる事務所程度じゃないか.
常任理事国と非常任理事国から数名ずつ派遣(下働きの下士官込み)で20名ぐらい.
あるいは,エグゼクティブ・アウトカムズ(民間軍事企業)が昔提案したみたいに,国連の金で傭兵一個旅団雇って待機させた方が,まだスムーズに運用できるかもな.
参考までに,「戦争請負企業」(NHK出版)に掲載された,エグゼクティブ・アウトカムズ社提案の国連即応旅団の編制.
◎旅団司令部(36人)
旅団長以下,参謀長の下に人事,内務(広報),作戦,兵站,財務の各参謀.
兵站参謀の下には旅団司令部支援中隊として通信,食事,倉庫,訓練,技術,工兵,医療担当セクション.
◎即応大隊―3コ(各大隊375名)
2コ小銃中隊(3コ分隊X3コ小隊+81mm迫撃砲1個分隊で,中隊は120名)
1コ支援中隊(81mm迫撃砲小隊,30mm擲弾発射機小隊,RPG7装備対戦車小隊,機械化工兵小隊各1個)100名
◎支援(臨時救援)大隊―1コ(311名)
工兵中隊(地雷啓開,舟艇,設営小隊各1コ)112名
兵站中隊(燃料,糧食,警備小隊各1コ)76名
航空補給小隊33名
通信小隊36名
訓練小隊15名
衛生小隊36名
◎航空団55名
セスナ357x1(2名),M17x5(16名),M2x1(6名),AN26x2,AN12x2,ボーイング727x2(16名)
地上要員6名
合計1527名(各大隊と航空団には参謀がつく)
どっちにしても,アメリカが国連に相当入れ込んでるような設定でないと,国連軍を快く思うとは思えないよなぁ.
アメリカはアメリカ軍を絶対他国の指揮の下に置かないから,アメリカ人が指揮官である部隊の統制下に他国の軍を置く場合しか認めない.
そしてアメリカは常任理事国でもあるわけで.
あの手この手でアメリカ軍が主力になるようにするか,アメリカがこれを潰すかの,どっちかになりそうだな.
190名前:名無し三等兵[sage]投稿日:2005/10/14(金)18:53:40ID:???
いっそ個人資産で運用される私設軍隊(軍事版サンダーバードw)にすれば,かなり問題点はクリアできないか?
それが国連の委任を受けて動く,と.
でも,常任理事国(特にアメリカが)がネックだなぁ.
そうだ! 宇宙人に支配されている世界にして,形上現在の枠組みは残されているが,国連は宇宙人の出先機関で,各国の思惑なんか関係なく動ける,とか(笑)
【質問】
PKO活動や他国の支援のために外国に自国の軍隊を出す時は,派遣先に迷惑をかけて自国の評判が下がったり,現地で武装勢力相手に苦戦する事が無いように,軍隊の中でも規律が高くて戦闘能力も高いエリート部隊を出すのでしょうか?
【回答】
例えば道路の整備のために部隊を派遣するとして,特殊作戦用の部隊を出すなんてことがあるか?
そんな事する国は無い.
その任務に一番適切な部隊を出すまでだよ.
軍事板,2009/08/12(水)
青文字:加筆改修部分
平和維持活動に求められるスキルと,戦争にもとめられるスキルは異なる.
つまり,平和維持活動には平和維持活動の教育訓練を受けた部隊が最適ということ.
兵士一人一人が外交官のごとく有らねばならない,と良く言われる.
故に,平和維持活動に熱心な国は,普通の戦争には向かない事を承知で,平和維持活動向きの部隊を育成したりしている.
国連待機軍とか呼ばれてるやつだ.
戦争の援軍に出す軍の質は,ケースバイケースだな.
国の威信を賭けて精鋭部隊を送り込むこともあれば,つきあい程度に部隊を出す事もある.
本国を離れて活動するわけだから,兵站などに一定の質は必要だけど.
外貨稼ぎのために派遣する事すらある.
そうした部隊では不祥事を時々起こしている模様で,これはとうていエリート部隊とは言えないだろう.
モッティ ◆uSDglizB3o in 軍事板,2009/08/12(水)
青文字:加筆改修部分
【質問】
国連軍も性犯罪を起こすことはあるのか?
【回答】
性犯罪常連であろうことは,ほぼ確実.
人権団体の他,当の国連を含む,幾つかの報告がある.
(a) 2006/5/8に,英国のNGO「セーブ・ザ・チルドレン」が発表した報告書.
同報告書によれば,西アフリカのリベリアにおいて,同団体が2005年末,避難民のキャンプと帰還先の集落,計8か所で,少年少女158人を含む,300人以上に聞き取り調査を実施した結果,
・対象地域の少女たちの半数以上が,食料や僅かな現金を得るために売春をしている
・8〜10歳の少女売春の例も
・売春の相手は国連平和維持部隊員やNGO関係者,教師,警官など.
食料の配給や,車に乗せることと引き換えに性的関係を迫る例もあるという.
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060509-00000215-yom-int
(リンク切れ)
(b) 「The New American」の報道
・「ハイチ法律家ネットワーク」の調査によると,2007年だけでハイチだけで,114人の国連軍兵士が幼女強姦の疑いで除隊され,母国に強制送還されている.
彼らは除隊だけで,処罰はされなかった.
7歳の女児への強姦や,13歳の女の子が1ドルで,国連平和維持軍の兵士たちを相手に売春させられていた例も.
・「ウィキリークス」の暴露によれば,2010年,米国外交官は,世界中の国連活動について
「国連軍兵士たちは,食料や物資と引き換えに現地の幼い少女たちをセックス奉仕させている」
と,極秘扱いで本省にレポートしている.
・ コートジボワールのツレプル市では,未成年の女の子のうち80%が,国連軍と国連NGO相手の売春させられており,この件で現地国連スポークスマンは,「性的虐待を防ぐための環境がない」ことを認めた.
・2004年,アナン国連事務総長も,国連によるこれらの強姦と幼児への性犯罪の,大量の「明らかな証拠」を認め,「残念で,恥ずべきことだ」と声明.
・2006年,国連PKO事務局のJane Holl LuteはBBCに,
「国連駐屯地の住民搾取の問題は,国連PKOを始めたときからずっと存在している」
と語った.
「いまだに国連や国連軍を取り締まる組織は存在しないことが,大きな原因」
と,同報道は指摘している.
http://www.thenewamerican.com/world-mainmenu-26/africa-mainmenu-27/8910-un-troops-accused-of-sex-crimes-worldwide
(c) 国連のニュース発表(2005年1月7日)
・2004年6月〜9月,コンゴ東部ブニアの町で行われた調査によれば,国連はPKOに対して売春や未成年者との性交を禁じているにもかかわらず,PKOが少女への性的虐待を続けてきたことが確認された.
買春相手の中には孤児もおり,報酬は最高でも5ドル,最低だと卵2個.
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=12990&Cr=democratic&Cr1=congo
(d) BBC報道,2008.5.27
・コートジボワールにおいて,「PKOに誘拐,強姦された」と,13歳の少女が証言.
国連スポークスマンのNick Birnbackは,
「国連平和維持活動は世界で20万人も加わる,途方もない規模であるので,犯罪があっても仕方がない」
とコメント.
・英国のNGO「セーブ・ザ・チルドレン」によれば,2007年には慈善団体のワーカー3人が,17歳少女相手の買春行為により解雇されている.
・2003年にはコンゴにおいて,PKOのネパール兵が性的虐待で告発され,6人が後に投獄.
・2004年にはブルンジにおいて,PKO隊員2名が,性的虐待で告発され,本国送還された.
・2005年にはスーダンにおいて,レイプや性的虐待で国連軍が告発さる.
http://news.bbc.co.uk/2/hi/7420798.stm
(e) 「テレグラフ」紙の報道,
・南スーダンにおいて,国連PKOとNGOの児童強姦多発.
被害者は数百人以上.
1日に20人以上が国連軍に強姦されることもある
・UNマークの車で誘拐して目隠しして強姦するのが今の流行
・売春の場合は3ドルで奴隷契約.
・住民たちは逃げようにも,周囲は砂漠で隠れる場所もない.
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/1538476/UN-staff-accused-of-raping-children-in-Sudan.html
on twitter, 2014/9/6
【質問】
PKFとは何か?
【回答】
おおむね小型武器を携行する歩兵などの部隊であり,停戦監視,緩衝地帯での駐屯または巡回,武器の搬入または搬出の検査または確認,放棄された武器の処分などの任務を与えられたものを意味するとして理解されている.
ただし国際海洋法裁判官・柳井俊二によれば,PKF(peace-keeping
forces,平和維持隊)は明確に定義されたものでなく,また,国際的に広く使用されている用語でもないという.
むしろ日本において,武器使用と憲法との関係についてしばしば用いられているものでしかない.
詳しくは
『グローバルガバナンスと国連の将来』(中央大学出版部,2008.8.10),第4章
を参照されたし.
【質問】
PKFは平和執行部隊と同じものではないのか?
【回答】
武装の程度,部隊展開目的などの点で異なる.
平和執行部隊は,ブトロス・ガリ国連事務総長が1992年6月に安保理に対して提出した「平和のための課題
Agenda for Peace」という報告書,および1995年1月に提出された,その「追捕」の中で提言されているもの.
国際海洋法裁判官・柳井俊二によれば,安保理の下に置かれ,停戦の維持・回復のために利用される,これまでより強い強制力を持った重装備部隊.
ただし同報告書では,「平和執行」の明確な定義はないという.
詳しくは
『グローバルガバナンスと国連の将来』(中央大学出版部,2008.8.10),p.65-66
を参照されたし.
PKFについては上述の項目参照.
【質問】
国連憲章の旧敵国条項とは何でしょうか?
国連憲章の第何条に旧敵国条項という明確な項目が挙げられているのでしょうか?
また,その条項には,日独伊など具体的な国名が書かれていますか?
【回答】
一般的に「敵国条項(旧敵国条項)」と呼ばれているものは,正しくは「国際連合憲章53条」と「国際連合憲章107条」のことだが,これはそれぞれ
――――――
http://www.lares.dti.ne.jp/~m-hisa/uncharter/index.html
第53条〔強制行動〕
1 安全保障理事会は,その権威の下における強制行動のために,適当な場合には,前記の地域的取極又は地域的機関を利用する.
但し,いかなる強制行動も,安全保障理事会の許可がなければ,地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない.
もっとも,本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で,第107条に従って規定されるもの又はこの敵国に おける侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは,関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする.
2 本条1で用いる敵国という語は,第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される.
第107条〔敵国に関する行動〕
この憲章のいかなる規定も,第二次世界戦争中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし,又は排除するものではない.
――――――
とあり,「敵国条項(旧敵国条項)」という具体的な名前ではないし,
>第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国
とはあっても,具体的に”大日本帝国”とか書いてはいない.
いや,読めば日独伊(その他)のことであることははっきりしているが.
蛇足するなら,完全に死文化しており,国連憲章は変更が大変難しいため,他の優先される議題が山積していることもあって,放置されているだけの状態.
ゴミ箱に入ったが忙しいから完全削除されていない,みたいなもの.
【質問】
日本が国連常任理事国入りする場合の障害は?
【回答】
〔略〕
■日,安保理常任理事国になるならば [中央日報 2004/9/26](リンク切れ)
>中国に加えて日本が常任理事国になれば,同一地域にある韓国は完全に加入の機会を失う.
なんと,韓国は自分が常任理事国入りしたいから日本の常任理事国入りに反対するらしい.
NPT協約違反の核開発といい,彼の国はそこまで大国化への野望を抱いているのか・・・
とりあえずKの国のような特殊例はさて置いて
(イタリアですら常任理事国入りは諦めているのに,韓国が入れると思う方がおかしい)
日本が常任理事国入りする場合の障害について考えて見ます.
中国や韓国,及び日本国内の一部の左翼団体の主張には
「戦後,ドイツは謝罪と賠償をきちんと行ったが,日本はそれが出来ていないので資格が無い」
というものがありますが・・・
・ドイツは戦後保障をまだ終えていない
・日本は戦後保障をキッチリ終えている
ということなので,中国や韓国の主張には無理があります.
それにフィリピンやタイ,マレーシア,ベトナムなどのASEAN諸国は日本の常任理事国入りを支持していますから,「戦後の謝罪と賠償云々・・・」は説得力に欠けるでしょう.
そもそも,ポーランドはドイツの常任理事国入りに反対していますから,
「ドイツは周辺諸国から信頼を勝ち得て,常任理事国入りを支持されている」
という主張は崩れ去ります.
確かにフランスはドイツの常任理事国入りを支持しています.
ですがそれは,「フランスの票が増えるから」という事なので,フランスにメリットがあるからです.
よく日本国内の反対意見に
「日本が加盟したって,アメリカの票が増えるだけだ」
というものがありますが,もしその論理が正しいとしても,ドイツが加盟するとフランスの票(EUとしての票)が増えるので相殺されます.
イギリスは自国の利益に従って,アメリカに付いたりEU(仏+独)に付いたりするでしょうし,欧州連合とアメリカに接近しつつあるロシアは,アメリカと欧州連合の力関係が拮抗しているなら,イギリスとはまた違った意味での均衡戦略を取ることができます.
すると困るのは?
そう,中国は蚊帳の外です.
そして日本国内からの反対意見に
「安保理で決定された武力行使に参加させられてしまう」
というものもありますが・・・
これについては政府与党はおろか,最大野党たる民主党までも
「国連としての派兵なら問題が無い」
と言っていますので,障害になりません.※
ところで中国やロシアは多国籍軍に参加したことありましたっけ?・・・
安保理常任理事国でも,行きたくなければ行かないでも済みます.
もちろん,理事会で武力制裁に賛成しておいて,出さないという事は出来ませんけれど.
そして一部の反対意見には
「常任理事国入りは憲法改正に繋がるから反対」
と言う人もありますが・・・
「それが目的ですがなにか?」と平然と言い放つ町村外相
http://plaza.rakuten.co.jp/obiekt/diary/200409290000/#machimura
恐らく首相官邸サイドは常任理事国入り工作にあたり,中国を直接説得するよりもアメリカや欧州,国連および世界各国への根回しを優先し,中国が拒否権を使い辛い状況を作り上げる事を目標にしているのではないかと思います.
新任の町村外相は靖国問題で一歩も引く気は無く,中国に積極的に譲歩しようという状況にはなり得ないでしょう.
「常任理事国?
うん,入れたらいいね.
入れなかったら・・・国連分担金を減らしちゃおうか.
中国が拒否権を使ったら?
その時はしょうがないね,
中国が世界から孤立してもいいなら,どうぞ」
こんな感じかな・・・
そもそも小泉首相は常任理事国入りに積極的ではなかった人なので,中国に媚を売ってまで入ろうとはしないだろうし,入れなくてもあまり気にしません.
だから,取ろうとしている外交戦略はなかなか強気なものとなります.
※その後の,テロ特措法延長問題の際の,民主党の主張の迷走ぶりを見るに,政争のためなら簡単に主張を変える可能性が高いため,アテにならないかもしれない.
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