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◆国際組織と国際法
総記FAQ目次


 【link】

『International Theory: Positivism and Beyond』(Steve Smith, Ken Booth, Marysia Zalewski (eds))

 イギリス学派(イングリッシュ・スクール)の国際関係論の理論の本なんですが,イギリス学派の主要論者たちがが冷戦後に書いた論文をまとめたもの.
 基本的にイギリスの学者はアメリカの数量計算やゲーム理論をはじめとする合理選択理論などを信じておらず,歴史とか哲学などを強調しますので,そこら辺からの批判がなかなか鋭いものがあります.
 かといってコンストラクティビズムのようなものとはちょっと違った視点からものごとを捉えているという部分があり,とても興味深いものばかり.
 文体もけっこう読みやすいものが多いです.
 たまにはこういうものを読むのも面白いものです.
 しかし読後の感想はなぜかちょっとむなしくなるのですが・・・.

―――「地政学を英国で学ぶ」,2005-08-11-07:39

Paganus@homepage(戦時国際法等)

国際法協会・日本支部

『ジュリスト』 2006/10/15号(国際法特集)

日本の国際法判例


 【質問】
 国際法と国際組織の基本的な考え方とは?

 【回答】
 そもそも「主権」と「非介入」こそが,国際法・国際組織の原則であり,介入は,基本的に違法である.
 また,これらは,国内法と違い,絶対体なものではなく,強制力も共通のものではない.

 以下,ナイ教授の文章を引用.

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 第一に,ほとんどの国際組織の憲章は,加盟国の主権が保護されるとしている.
 国連憲章第2条第7項は,
「この憲章の如何なる規定も,・・・国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく」
としている.
 すなわち,国際組織というものは国民国家を代替しようする試みではないのである.
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 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 新しい世界秩序は,どのようなものになるのか?

 【回答】
・新しい世界秩序については,まだ明確な答えが出ていない.

・グローバリゼーションと情報革命が,国家の主権にあらたな課題を提起してきている.

***

 まず,国際政治とは依然として「自助」を前提としたシステムであることを理解しなければならないだろう.
 国家は常に安全保障のジレンマに直面する可能性があり,その場面では,何かしらの力が必要となる.
 それは,バランス・オブ・パワー・国際規範・国際法・国際組織などで,緊張を緩和することはできるが,歴史的には,これらは全ての紛争を防止してきたわけでもない.

 以下,ナイ教授の言葉を引用.

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 ツキュディディスが描いた交際紛争の論理が適用適用可能な地域は,今日の世界でも存在する.
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 本題の「世界秩序」だが,これは冷戦の終結後,様々な議論が行われてきたものの,いまだ明確な答えは出ていない.
 これについて,ナイ教授は以下のような見解を述べている.

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 第二次世界大戦後に成立した2極体制が崩壊したと言う意味では,新しい秩序が生まれた.
 しかし,それは世界政府を欠く,無政府状態の国際システムの下での秩序であり,必ずしも公正な秩序と呼べるものではなかった.
 無政府状態の国際システムがかかえる問題から脱却することが,新しい世界秩序だと考えるものもいたが,そのような世界は実現可能だったのであろうか.
 冷戦の初頭に,イギリスの歴史家アーノルド・トインビー(Arnold Toynbee)は,国民国家と核兵器が同じ地球上に共存することは不可能であると述べた.
 主権国家によって構成される世界では,究極の防衛の形態が戦争であり,核兵器が究極の兵器である.
 彼は,そのような世界ではいずれか,望ましく国家が退場しなければならないと考えた.
 さらに,前二章で見たように,グローバリゼーションと情報革命も,善かれ悪しかれ,国家主権に新たな課題を提起している.
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 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第9章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 ネタ抜きで,宇宙人と戦争になることってあるかな?

 【回答】
 現在,銀河系内には多く見積もって25000の文明があると言われます.
 これらの文明は平均して3000光年ずつ離れています.
 各文明が光に近い速さで航行できるような宇宙機を保有しているとしても,隣に行くだけで大事業です.

 しかも,資源だけならいくらでもあります.
 太陽系に比較的近い範囲で観測しても,すでにこれだけ惑星が見つかっています.
http://www.extrasolar.net/starlisttour.asp?StarcatID=normal

 掘り尽くすのは大事業です.
 戦争する必要が生じそうにありません.

 では,戦争を趣味にしている文明ではどうか?
 やはり隣に行くだけで大事業です.
 それ以前に,隣の文明を見つけるだけでも大事業です.

 というわけで宇宙戦争を実施するのは難しいと思われます.

TFR ◆ItgMVQehA6 in 軍事板

 楽観論では,銀河系内には25000の文明があるとされる,これは多いようで少ない

 1000億個の恒星のうち,知的生命がいる惑星を持つものは25000,つまり
2.5×104÷1011=2.5×10-7(4×106分の1=400万分の1)
です.
 銀河系を半径5万光年,高さ2万光年の円柱とすると,その体積は
2π×5万光年^2×2万光年≒3×1014光年~3
の広さであり,知的生命が存在する数で割ってみると,体積にして
約2π×5万光年^2×2万光年≒3×1014光年~3,
半径はだいたい1500光年だ.
 まり,文明と文明はざっと3000光年離れているわけだ,
 これでは,亜高速で飛ぶ船でも万年単位の時間がかかる,探し出すのも大変.

 この距離を隔てて侵略してくる意味があるはずも無い,
 なぜなら,資源だけなら半径1500光年の中にいくらでもあるからだ.

 そして,戦争大好きな知的生命体の文明でも,まだ他の文明との戦いの楽しみなど知らないので,母星を後にして何万光年も旅はしないはず.
 フォン・ノイマン型ロボットが探査しにやってきたとしても,探査が目的なので侵略にはならないはずだ.

 そもそも,これは楽観論中の楽観論,
 中間的な考えでは2,5個程度の文明しか同時に存在しないはずだとしている.
 悲観論ならば,この宇宙に何億光年間隔でいるかどうか.

 仮にやってきたとしても,戦争が始まる可能性は50%あるかどうか程度だろう,
 まして侵略などもってのほか.

 つまり,これ以上ないほど可能性は低い.

名無し上級大将 ◆80fYLf0UTM in 軍事板

260 :名無し三等兵 :2007/02/01(木) 17:46:14 ID:???

 恒星間飛行のために,光速に近い速度で飛ぼうとすると,莫大なエネルギーが必要となると言われるが,そのせいで近所の資源使い果たして,他の恒星まで行く必要が出てきて(以下一行目に戻る)

……とかいう馬鹿な宇宙人を想像してしまった.

軍事板


◆◆国際組織


 【質問】
 なぜ国連は比較的無力なのですか?

 【回答】
 ぶっちゃけた話,国連独自の実力行使手段,ようは武力が無きゃ国連ってのは何も出来ない訳よ.

「PKOの資金を神様が支払ってくれるなどと,思い込んではならない」(by マデレーン・オルブライト )

「彼らは,何処かの国が兵員を出すべきだと盛んに主張していたが,自分達の国が出すとは決して言わなかった」(by マイケル・バーネット)

 この二つの発言に象徴されるように,国連の活動ってのは大国に負んぶ抱っこ状態な訳だ.
 その為に,冷戦時代は米ソが対立する局面では役立たず,そうでなくとも最大の出資/兵員拠出国であるアメリカが,自らの国益にそぐわないと判断したら,活動は事実上止まる.
 ルワンダ/ソマリアPKOのケースは,まさに典型例だったと言えるな.

 法秩序ってのは強制力があって初めて意味を持つ訳で,そういう意味じゃ国連は無力だ.

メッサー=ハルゼー in mixi


 【質問】
 国連決議の問題点とは?

 【回答】
 決議の「意味」を巡って議論が起きる場合があり,曖昧さが残る点.

 決議とはそもそも国家を拘束する法律などではなく,国連憲章の中で,国家が完全に拘束されるのは「平和に対する脅威・破壊,侵略行為」について定めた第7章だけだ.

 安全保障理事会が制裁を必要とする侵略行為があったと認めた場合,国連加盟国は,制裁を実行しなければならない.

 1990年にイラクがクウェートに侵攻したときや,2001年にアメリカの同時多発テロの時に,これらは実行された.

 新しい国際的な法律を作ろうとして,取られるのは,大規模な国際会議で条約案を作成して,政府に署名させようとすることである.
 ただ,このような会議は,大規模で複雑になりがちであり,成立までに多くの時間がかかる.

 ナイ教授は次のような例を挙げている.

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 1970年代に海洋法会議が開かれたが,そこでは100以上の参加国が12海里の領海,200海里の排他的漁業経済水域,海洋底のマンガン塊を人類共通の資産にすること,などについて原則を打ちたてようと試みた.
 問題は条約案の一部についてだけ合意する国家があったということで,それによって,[どの部分が受け入れられた国際法なのかという]国際法としての結果が不明確になってしまった.
 にもかかかわらず,南沙諸島周辺海域に対する中国の主張に1995年にアメリカが対抗しようとした時には,アメリカは国際海洋法に訴えたのである.
 国際法は,基本的には国際政治の分裂的傾向を反映している.
 共同体意識が希薄だと言うことは,何かに従ったり自らを抑制したりすることが,義務感とか権威を受け入れられるといったことからはなかなか生まれない.ということである.
 強制力の正統な使用を独占する共通の行政府が存在しないと言うことは,主権国家は自助の領域に存在し,力と生存の領域に存在しているということを意味する.
 そして生存に関わる問題が生じれば,法律は第2の席に座らざるを得ない.
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・国連決議で決定的に強制力があるのは,国連憲章第7条くらいである.

・南沙諸島の例を見るとおり,糾弾する口実として,国際法を用いる場合が多い.

・自国の生存と比べた場合,法律は決定的な意味を持たないことになる.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【珍説】
安全保障理事会などが米ソ両陣営に分裂し,機能しなかったというのは,過去の話である.
 むしろ,過去の教訓を生かして,PKO活動の強化を中心に,国連の機能を高める方向で,世界規模での治安維持と軍縮を考えるのが,もっとも現実的な道である.

――――――林信吾著『反戦軍事学』,p.220

 【事実】
 非現実的です.
 安保理が機能していないのは過去の話ではありません.
 2008年現在も有効に機能しているとは言えない状況にあります.
 ミャンマー問題でも,ダルフール紛争問題でも,拒否権を発動されて有効な手が打てない事実を忘れているのでしょうか?(それとも見て見ぬふりかな?)

 むしろ,二大陣営間の対立という構図が崩れて,利害関係が多極間で発生するようになった事実から考えれば,冷戦時代よりも安保理はさらに

 北韓の核実験への決議すら,大して有効ではない経済制裁程度に終わってしまいましたが,そんな機関に世界規模での治安維持と軍縮を期待するのは,過大な期待と言うものです.

 「機能を高め」れば可能?
 希望的観測に国家安全保障を委ねるというのでは,「バトル・オブ・ブリテンにドイツが勝ってくれたら,アメリカも講和に応じてくれるかもしれない」という希望観測の下に日米開戦を決めた,当時の軍部と大差ありません.

>我々のような戦争を知らない世代も,事実はきちんと受け止めなければならない(『反戦軍事学』,p.221)

と書いている以上は,有言実行していただきたいものですな.


 【質問】
 集団安全保障がほとんど「秩序」を作らないのなら,国連その他の国際組織は無意味では?

 【回答】
 国際組織には大きな政治効果がある.

 例として,国連を挙げてみよう.
 国連憲章に武力禁止の条項があるからこそ,それが「違法ではない」という証明責任は,武力を使用する側に発生する.
 これは外交・政治のコストを引き上げるものだろう.

 国連の持つソフトパワーについて,ナイ教授はイラク戦争の例を挙げている.

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 2003年にアメリカが思い知らされたように,国連は国家のソフト・パワーにも影響する.
 第二の国連安保理決議を得られないままアメリカは対イラク戦争に向かったが,そのため対米支援は限定され,戦争とその帰結よりもコストの高いものになった.
 また,国際的暴力が安保理で議論されることは,〔国際社会の〕集団的関心があることを劇的に示し,危機における関心を集中させる効果がある.
 安保理の議論は,さまざまな見解を集約・明確化し,侵略武力行使のコストを高め,外交にとっての安全弁の機能を果たす.
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 また,国連の平和維持活動についても,限定的ではあるものの有益なものだと述べている.

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 国連平和維持軍の役割は,限定的だが有益なものである.
 これらの〔踏み越えると引火する〕仕掛線には緩衝地帯が有用なことは,くりかえし諸国の認識するところとなっている.
 冷戦が終わって,国連が力を振るう,より多くの機会が生まれた.
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 冷戦後の国連平和維持活動には,成功と失敗が存在する.

成功例

・ナミビアの非植民地化
・エルサルヴァドルでの人権監視
・ニカラグアでの選挙監視
・カンボディアでの行政支援 
・キプロスでの平和維持

失敗例

・ルワンダの虐殺阻止
・アンゴラの内戦勃発
・ボスニアでの内戦

 ボスニアについては,より強力なNATO軍が介入するまで,国連は有効な活動を行うことができなかった.

 エスニック紛争について,国連(中立の軍隊)の介入が常にうまくいくわけではない.

 ただ,東ティモールのように,オーストラリア等が率先して派兵する場合,国連は依然として重要な正当性を与える機関として機能する.

 また,イラク戦争において,この「正当性」を無視したために,高いコストを支払う結果になったと,ナイ教授は指摘する.

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 2003年に米英が武力行使を明確に容認する第二の国連安保理決議案を得られなかったことで,両国のイラク占領ははるかにコストの高いものになったのである.
 もともとの集団安全保障の考え方が,かつて考えられたほどにはきれいに当てはまらないとしても,国際法や国連を切り捨ててしまうのは間違いである.
 それらは,無政府的な国際システム〔anarchic state system〕における政治的現実の一部だからである.
 国際組織と法について,冷笑的になることも,また甘い見方をすることも,共に間違いなのである.
 国家は法によってのみ生きるわけではないが,法をまったく抜きにしても生きるわけではない.
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 上記を纏めると,

・国連を利用することで,政治的コストを下げることが可能である.

・冷戦後の国連平和維持活動には,成功例と失敗例がある.

・他国が介入を行う際に,介入に正当性を与える機能を国連は持っている(介入のコストを下げることが可能)

・国連にたいして,過度の期待をすることも,完全に無視することも賢明ではない,状況を考えて,国連を利用するのは,政治・外交のコストを引き下げるうえで必須である.

 この見方は,本当にナイ教授らしいと思う.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi

 【質問】
 こういう事例を見ると,ナイ教授が言うほどの効果が国際組織にあるのかどうか,疑問に思えてくるわけですが.
FT:ジンバブエが,国連人権評議会のSustainable Developmentの議長国に
Zimbabwe to chair UN commission

By Mark Turner at the United Nations Published: May 2 2007 19:28


A UN diplomat on Wednesday said that Francis Nhema, Zimbabwe’s environment minister, looked almost certain to get the CSD position after being nominated as Africa’s candidate in April
 あのジンバブエが人権評議会の会議の議長国って…

 国際組織があることによって
>外交・政治のコストを引き上げる
という話は,先進国限定と言えるのでは?

消印所沢 in mixi

 【回答】
 それはナイ教授も指摘しています.
 「生存性が著しく低い国々」では,まず,そちらが優先されるのも,また事実です.

 ただし,それ以外の場合,国は,揉め事を大きくするようなことを避けるので,やはり国際組織などに頼ることになります.

 それに現在は,国同士の関係を断ち切るのが非常に難しいので――最貧国を見れば分かるように――,その調整としても国際組織を使用すると言えるでしょう.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 「国民国家」を克服させるための構想というのは,どのようなものか?

 【回答】
・国民国家を代替する手段としては,5つの方法論が考えられている.

・それぞれに一長一短があり,全てのアプローチにはそれなりの合理性があるものの,現在の国民国家より優れているとは言い切れない.

・環境や情報革命は,21世紀において,大事な役割を担うだろう.

***

 これは,5つの代替構想がある.
 以下,5つの構想をあげると

1.世界連邦

 これは,ヨーロッパでの最も古い伝統的思想の一つで,国際連邦を元に,無政府状態である国際社会の問題を解決しようとする試みである.
 国家が自ら軍備放棄に合意して,中央政府の権限をある程度受け入れるという考えで,18世紀にアメリカ東部13植民地が連合した例がある.

 彼らの中には,歴史はより大きな集団に向かうという主張をするものがいる.

 しかしながら,連邦制度が非常に優れた構想なのかは定かではない,
 平和だけが全てではなく,福祉・正義・自治も欲するが,世界政府がそれを保証してくれるとは信じていない.

 さらに,世界連邦制度が,戦争の解決システムであると確信している人は(有識者の中では)ほとんどいない.
 これについて,ナイ教授は以下のように述べている

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 無政府状態の国際システムが戦争の原因であるとしても,独立国家を消滅させることが必ずしも戦争の廃絶に繋がるわけではない,
 既に見たように,近年の戦争の大部分は,国内で起こっているのである.
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2.機能主義

 世界連邦構想の限界が見えてくると,今度は「国際的な機能」を重視する考えが台頭してきた.
 1940年代に広がったこの構想は,経済・社会協力により,国境を越える共同体を生み出し,その結果,戦争を廃絶しようとする試みだった.
 この構想では,主権はさして重要ではなく,国家の外枠は存在するものの,敵対的な性格は減衰すると考えられた.
 WW2の終わりに,この機能主義に基づいて,国連食糧農業機関(FAO)や,世界保健機関(WHO)などの,専門機関が設立された.

 この機能主義は,NGOや多国籍企業などがありふれた現代でも,垣間見ることはできる,
 しかしながら,機能主義は世界秩序のグランドデザインとするには充分ではない.
 大部分の国家は,過度に相互依存が進むことによって,他国に対する脆弱性が増すのを歓迎しないからである.

3.地域主義

 これは,EUなどに見られる地域主義的な考えである.
 そもそもは,1950-60年代に盛んだった地域統合の隆盛を受けて,フランスの計画長長官だったジャン・モネが,地域レベルでの機能主義的なアプローチによって,独仏を結びつけ,WW1とWW2の原因となった,紛争の再発を防止しようとする試みだった.
 1950年に,ヨーロッパでの地域統合プロセスは,西欧の石炭,鉄鋼業を統合するシュリーマン・プランで始まり,1957年以降,ローマ条約に基づいて創設された,ヨーロッパ共同市場の下で,貿易障壁の段階的撤廃,農業・経済全般での調整が進められ,これが1992年のEU設立に繋がった.

 この動きは,NATFAの動きを見るように,他の地域でも模倣されようとしている.

 このEU構想について,ナイ教授は以下の見解を示している.

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 1965年に当時のフランス大統領ドゴール(Charles de Gaulle)将軍が,さらにその後,1980年代にはイギリス首相のマーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher)が地域統合の進展に限界を設けた.
 1990年中ごろまでに,EU加盟国の間には,主権をどの程度まで地域政府に割譲するかについての動揺が広まっていった.
 2002年にユーロという共通の新通貨が流通し出したが,全ての国においてではない.
 しかし,たとえ統合に向けての動きが減速し,東ヨーロッパの新加盟国を認めるにつれて,組織上・憲法上の問題に直面したとしても,既に検討したそれ以前の時代に比べて,ヨーロッパがよい方向に変化したことは間違いない.
 EUは,進行中でダイナミックな国際関係の実験を代表している.加盟諸国が農業から共通の防衛力にいたる争点を扱う様々な多国間機構の網の目を苦労してくぐりぬける過程で,明確にヨーロッパ固有のアイデンティティが浮上してきた.
 確かに,政策決定のレベルで国家間の相違は残っているが,世論調査によれば多くのEU市民が自身を,フランス人,ドイツ人,スペイン人と同様に,ヨーロッパ人とみなしている.
 コンストラクティズム(構成主義)の理論は,理念や文化が政治的なアイデンティティや信条の形成に果たす役割を強調しており,この現象と合致する.
 コストと利益の計算に照らして,完全な国家の独立よりも協力が有利だと言う信念からEUの加盟諸国は複合的相互依存の増大を選択してきたのである.

 今日,ヨーロッパでは誰もが同じ船に乗っているわけではないだろうが,彼らの別々の船はかつてとははるかに異なり,さまざまな形で1つに結び付けられている.
 たとえば,多くの領域でEU法は国内法に優先する.
 EUは国際政治体制の新しい形態の象徴ではあるが,地域的なものにとどまっている.
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4.環境主義

 1970年代に大きく注目された主義.
 これは,脱国家的な領域と領土は,資源不足の状況下で相互依存を進展させるという主張である.

 これを主張したのは,リチャード・フォークで,彼は大衆主義的な価値が徐々に上昇してゆき,国民国家の枠組みを超えて行くだろうと主張した.
 これに,反植民地主義,反人種主義,更なる平等,環境保護活動などを通じて,国連の多数派が力を持ち,世界で枯渇しつつある資源に関して,新たなレジームが構築されることになると予想した.
 その結果,平和・平等・環境に関して,安定した国際的な規範が確立されて,新たな世界秩序が形成される・・・というわけだ.
 これに,技術的な変化・経済的成長が環境問題を際立たせて,基本的には共有地として扱われてきた海洋・大気・生物的な多様性が資源への負荷を増してきた.

 20世紀後半には,漁業や酸性雨,オゾン層の破壊,絶滅に瀕している朱の保護,南極大陸,海洋汚染といった共通の懸案事項について,170以上の環境条約を結んできた.
 その3分の2以上は,1972年のストックホルムで開催された最初の国連環境会議以降に成立している.
 環境・地球温暖化に関する,重要な国連の会議が,1992年にブラジルで,そして1997年に日本の京都で開かれ,国境を越えたロビー活動を展開するNGO団体を多く生み出した.
 ほとんどの先進国は,環境問題への強い関心を示している.

 だが,フォークの主張には,資源不足の進展に関して過大評価があり,新技術の進展を過小評価していた.
 先進国では環境問題に関心が深いのは事実だが,貧しい国では,それらは経済発展の二の次の問題になる.

5.電脳封建主義

 ピーター・ドラッガーや,アルビンとハイジ・トフラー夫妻のように,情報化時代の組織理論家は,情報革命により,組織階層がよりフラット化し,ネットワーク組織がそれに取って代わりつつあると主張する.
 また,彼らによると,20世紀の中央集権的な政府は,21世紀には分権的となり,より多くの機能がNPOや民間市場によって果たされるようになると予測されている.

 さらに,インターネットの果たす役割について,ナイ教授は以下の見解を示している.

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 インターネットの専門家のエスター・ダイソン(Esther Dyson)は,非集権的な組織や仮想共同体がインターネット上で発展するにつれて,それらが国境を越えて独自の統治方法を発展させると主張する.
 国民国家は存続するが,市民生活における重要性と利便性はかなり低下するであろう.
 人々は複数の自発的な契約を結んで生活し,[パソコンの]マウスのクリック1つでコミュニティ[共同体]を渡り歩く.国境をまたがる共同体と統治の新しい形態が,ウェストフェリア体制が成立する.
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 ただし,このような方向性で国民国家を克服したとしても,これは「仮想的な共同体」であり,現在の「地理的な共同体」がどのように対立するのか,暴力と安全がどのように取り扱われていくのかについては,まだまだ未解決である.

 また,この新しい情報技術は善用も悪用も可能で,テロリスト達はこれらを駆使して,武器の情報を入手し,インターネットを通じ資金を移転させ,調整を行っている.
 遠くのハッカーは,物理的に国境を越えることなしに,他国に損害を与えることが可能である.
 こうした状況を前にして,市民は結局,弱い政府ではなく,保護を提供できる強い政府を持った国家を求めるかもしれない.
 ホッブスが指摘したように,国家間の無政府状態は危険を伴うが,非国家主体に対する保護を提供する政府が存在しないといった状態の無政府状態よりは,まだしも危険ではない.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第9章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 国連などの国際組織が「世界政府」となる可能性はあるのか?

 【回答】
 現行のシステムでは,極めて難しいと言わざるを得ない.

 まず,国際的な組織において最も問題になるのが,その「政治的脆弱性」である.
 国際司法裁判所という裁判所は確かに存在するものの(9年任期で,15人の判事から構成される),残念ながら,世界の最高裁判所とはいえない.
 なぜなら,国家は,裁判所の結果が持つ司法権を無視することができるからだ.

 さらに言うと,国際裁判所の司法を受け入れたとしても,その判決を受け入れないという選択を取ることもできる.
 例えば,1980年代にアメリカがニカラグァの港に機雷を敷設したとき,国際裁判所は,これを違法とみなす判決を下したが,レーガン政権はこれを拒否した.

 ナイ教授は,次のような捉え方をする.

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 仮に,国連総会をアメリカ連邦議会にあたるものだと考えたとしたら,国連総会とは何とも奇妙な立法府である.
 国連総会は1国1票の原則を基盤にしている.
 国連総会では,インド洋の南に位置する人口10万人のモルディヴも1票を持っていれば,10億人以上の人口を持つ中国も1票である.
 国連総会では,1人当たりの1票の価値で比較すると,モルディヴ人の1票は,中国人の1票の1万倍の価値を持つことになる.
 したがって,立法府に関する民主主義的基準には,国連総会は上手く当てはまらない.

 同様に,国連総会は,権力を反映したものでもない.
 モルディヴが,国連総会ではアメリカやインドや中国と同じ1票を持っているのだから.そうした奇妙な点があることから,国連総会で拘束力を持つ決議を通すことに国家は消極的になる.
 国連総会決議は決議にしかすぎず,法律ではないのである.

 最後に,国連事務総長が世界の新しい大統領にあたる存在だと考える人がいるかもしれない.
 しかし,これもまちがっている.
 事務総長とは,極めて弱い行政の長に過ぎない.
 仮に事務総長に権力があるとしても,その権力は,大統領の備えるハード・パワーとソフト・パワーというよりも,ローマ法皇のソフト・パワーに近いものである.

 このように,国際組織を国内政府の類推で捉えようとする試みは,間違った答えを導き出す確実な道といえるであろう.
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 私見だが,「ローマ法王のソフトパワー」とは,多分に権威的なパワーの事だと思うけど,国連事務総長にその「パワー」が備わるかは,極めて個人の資質が大きいと思う.
(ローマ法王にしたところで,基本的にはそうだろうが)

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi

 秘密警察にしろ,軍隊にしろ,歴史上の役割をみると,外敵に備える場合だけでなく,それ以上の役割として治安装置としての役割があります.
 ごく最近の数十年の一部の国を除いて,軍隊は外敵への備えだけでなく,それぞれの国や地域の支配層の既得権を破壊する恐れのある,国民や市民を抑えつけるために活用されてきました.
 過去に学ぶと,どうしても強大な軍事力を単純に一機関に委任するのは危険かと思います.
 二重,三重,もしくはそれ以上の市民でチェックし,市民でコントロールできるシステムが必要かと思います.
 でないと,かつてのスターリン主義と大差なくなる恐れもでてきます.

 例えば徹底した情報公開,選挙などの何重もの民選システムの実施,徹底したシビリアンコントロールなどがすぐに考えられますが,おそらくこれらだけではまだ不十分かと思います.

 現在の国連の意思決定の手段は,機関によっては,拠出金の大小によって手持ちの票数が変動することもあり,また独裁に近い国家も少なからず存在しています.
 民主的手法,といっても,アメリカの考える論理と,ヨーロッパの考える論理は,違っているところもみられ,社会主義,イスラム,あるいは中進国,途上国によっても,「民主」の意味自体が変わってくるでしょう.

 システム構築を考えるとともに,その前段階として,多様な世界を認識し,そこでの包括的なコミュニケーションを実現していく,コミュニケーションや交流やディスカッションなどの下地作りも必要となるでしょう.
 おそらく,数十年単位で,様々な異文化や異国と自然に意思の疎通ができる,
 そういう意識を私たちが獲得した上で,改めて考えてみるのもいいかもしれません.

風〜hangin〜 in mixi

 そもそも世界政府自体がナンセンスであるという見方も強いという.
 以下引用.

 戦争を世界からなくすには「世界政府」(World Government)を作ればいいという議論もありますが,これはある意味でナンセンスである,という見方が強いみたいです.
 なぜなら,世界政府ができても,その下で「内戦」(civil war)が起こったら意味がないからです.

 しかも内戦というのは,あらゆる戦争のなかでも最も血が流れる残酷な戦争が多いらしい.
 たしかに一つの国家の中でも,ロシアとチェチェンのように戦争しているところもありますし,アフリカなんか手がつけられない状態です.
 これについてはアンゴラから来てた女の子が実感を込めて語っておりました.

 今の人間界で世界政府が機能するのは,映画「インディペンデンス・デイ」みたいに,宇宙人が侵略してきて,人類共通の敵が現れた時,という議論もあるそうです.なんじゃそりゃ.

 そういえば,日本が戦争を仕掛ければ,南北朝鮮なんて一気に実現できる,という話を聞いたことがあります.
 ひょっとして,これもそれと同じこと?

 まあ日本は頼まれても朝鮮半島なんかに攻めに行かないとは思うんですが(苦笑

「地政学を英国で学ぶ」

 以上を踏まえると,世界政府を無理に作っても,圧政的になったり,内戦になったりする可能性が比較的高い模様.


 【質問】
 ↓本当に王道?

――――――
 大国の利害でしか動かなかった(動けなかった)過去の国連のあり方は,真摯に反省すべきだが,それを踏まえて,弱者のため,被抑圧民族のために本当に機能する国連に組織し直していくことこそが,世界平和実現への王道なのである.

――――――林信吾著『反戦軍事学』,p.220-221

 【回答】
 むしろ,かなり回り道だと思われます.無想と五十歩百歩というところでしょう.

 まず,国連というものが大国による国際社会管理機関であるという側面を,その誕生時から持っており,今もなお拒否権という形でその側面を残しているということを考えれば,「弱者のため,被抑圧民族のために本当に機能する国際組織」に国連を作り変えるということは,国連を一から作り直すのと同じことになるでしょう.
 それなら新たに弱者救済の国際組織を作ったほうが,拒否権がないだけスムーズでしょう.

 次に強制執行の問題.
 「弱者のため,被抑圧民族のために本当に機能する国際組織」であるためには,抑圧側に国連の言うことを強制的にでもきかせねばなりません.
 しかし,それは紛争とどこが違うのでしょうか?(まさか「話せば分かる」などと言い出さないでしょうな?)
 ずいぶんと世界平和とかけ離れた話のように聞こえます.

 ま,この手の主張する人は,単に米国主導で日本の安全保障が担保されているのが気に入らないから,その代わりに国連を持ち出しているというだけ(本書の220ページ以前もそんな感じ)で,国連の実相なんぞに関心はないんでしょうねえ.


 【質問】
 脱国家的主体や,非国家的組織は,グローバルな情報化時代の中でどのようになっていくのか?

 【回答】
 既に大きな役割を果たしているが,情報量の拡大・情報コストの縮小によって,さらに大きな役割を果たすようになると思われる.

 伝統的な国際政治では,国家を単位として議論が行われてきた.
 以下ナイ教授の文章を引用.

--------------------------------------------------------------------------
 「ドイツがアルザスを欲した」とか「フランスはイギリスを恐れた」とか言うが,これらの表現は,とりわけ国際政治の古典時代を取り扱うにはそれなりに便利である.
 18世紀には,君主が国家として発言した.フリードリヒ大王がプロシアのために何かを欲したとすれば,フリードリヒはプロシアであった.
 19世紀においても,広範なエリート階級が対外政策の決定を支配していた.
 また第一次世界大戦においてすら,ヨーロッパの外交は比較的狭い範囲に限られた官房外交であった.
 さらに国際政治の古典時代においては,政策課題は極めて限られていた.軍事的安全保障の問題が圧倒的で,これは主に外務省によて処理されていた.
--------------------------------------------------------------------------

 これに対して,脱国家的主体は質的には,何世紀にも渡り活動してきたが,20世紀後半には,量的に拡大し,これが国際政治に重大な変化を起している.

 地球規模で相互依存が進んだ結果,国際政治の課題は広範囲に渡るようになり,誰しもがこの舞台に上がろうとしている.
 例えば,アメリカでは,国内官庁が何かしら国際的役割を果たしていると,ナイ教授は述べている.

--------------------------------------------------------------------------
 農務省は国際的食糧問題に関心があるし,環境保護庁は酸性雨や地球温暖化に関心がある.
 沿岸警備隊は海洋投棄の問題に,商務省は貿易に,財務省は為替の問題に関心があるというわけである.
 国務省は,これら全ての問題を制御する事はできない.
 アメリカ政府のそれぞれの部局が,みな自らの小外務省を持っていると言っても過言ではない.
 実際,外国においてアメリカを代表している外務官の構成を見れば,殆どの大使館で国務省から派遣されている要員が少数派であることが分かる.
--------------------------------------------------------------------------

まとめ

・脱国家的な主体は,数世紀に渡って存在してはいたが,20世紀後半以降のそれは,量的に拡大しており,国際政治に大きな影響を与えている.

・相互依存の進んだ世界では,誰も彼もが自ら国際政治の舞台に上がろうとしている.

・これから,脱国家的主体などによって,国際問題はもっと広範囲に渡る様になると予測される.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第8章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 NGO(非政府組織)の役割は,これからどうなっていくのか?

 【回答】
 もう既に重要になっているが,これからもますますこの手の組織は増えていき,国際政治に影響を与えて行くだろう.
 好むと好まざるとに関わらず.

 NGO組織は,WW1以前では176が存在しているに過ぎなかったが,
1956年には1000,
1970年には2000,
1990年には6000,
2000年までに2万6千まで増えた.
 しかも,このNGOは「公式に結成されたもの」だけであり,これ以外を見る必要もある.

 NGO組織について,ナイ教授は以下のように分析している.

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 多くのNGOは,個々の国家権限を越えた,あるいは国家が無視しがちな広範な公共の利益を代表して,「グローバルな良心」として行動しようとしている.
 これらの組織は民主的に選出されたわけではないが,直接的には政府や企業の指導者に政策変更を迫る事で,また間接的には政府や企業がなすべきことについての人々の認識を変えることで,新しい規範の形成に貢献する事がある.
 パワーの源泉という点で,こうした新しい集団はほとんど大したハード・パワーを有してはいないが,情報革命は彼らのソフト・パワーを大幅に増大させてきた.

 政府は今や,ソフト・パワーの拡大のために情報を活用し,世論を動員する事で直接・間接に圧力を掛けるアクターと,同じ舞台を共有しなければならない.
 インターネット時代にあって利用可能な大量の情報の中から重要情報を取捨選択するのが,メディアの有力編集者だとすれば,脱国家的組織の増大しつつある重要性を測る大まかな方法は,主要なメディアでそうした組織が言及される回数を数えることである.
 この方法によって最大規模のNGOは,有力な編集者達の注目を集める戦いで,確固たるプレイヤーに成長していった.
 たとえば,ヒューマン・ライツ・ウォッチが「2003年世界報告」を発表して,テロとの戦いでアメリカ政府の行動を強く批判すると,その後10日間で,288の新聞や雑誌でこの組織に言及する記事が登場したのである.

 過去10年間の報道は,このカテゴリーの主体の成長を物語っている.
 1992年以来,「非政府組織」ないし「NGO」という単語への言及頻度は17倍になった.
 ヒューマン・ライツ・ウォッチに加えて,アムネスティ・インターナショナル,国際赤十字,グリーンピース,国境なき医師団,トランスパレンシー・インターナショナルなどのNGOは,主流メディアでの言及頻度が指数級数的に上昇した.
-------------------------------------------------------------------------

 脱国家・脱政府的な接触は,回数が増えただけではなく,その中身も変質している.

 最初は,脱国家的関係とは,規模的な経済の恩恵を受けている多国籍企業やカトリック教会と言った巨大な官僚組織に支配されていた.

 こういった組織はこれからも重要だろうが,情報革命,とりわけインターネット時代では,コミュニケーションのコストが極めて低くなったので,殆ど本体を持たないタイプの組織や個人も舞台に上がれるようになったわけだ.
 こういった組織について,ナイ教授は以下のように分析している.

-------------------------------------------------------------------------
 こうした非政府組織やネットワークは,国境に関係なく国家に浸透する上で,とりわけ効果的である.
 というのも,こうした組織には,いくつかの国々で国内政治上著名な市民がしばしば関与しており,自分達の望む問題で政府やメディアの関心を集める事ができるからである.
 先に述べたように,地雷禁止条約は,インターネットを基盤とした組織とカナダのようなミドル・パワー,そして故ダイアナ(Diana)妃のような著名人や政治家とが協力した,興味深い連合の産物であった.
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 環境問題もまた,一つの好例と言える.
 NGOの役割は,1997年の京都議定書へ各国の代表団をつなぐコミュニケーションのチャンネルとして重要だったし,産業界・労働組合・NGOなどの組織が,脱国家的な戦いの中で,主要国のメディアの関心をひきつけるべく京都で競合した.

 もちろん地理的な共同体は,今後とも長期に渡り,世界政治の中で重要な役割を果たし続けるだろうが,その自立性は低下して,もっと浸透性の高いものになるだろう.

 これについて,ナイ教授は次のような見解を示している.

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 地理的共同体と主権国家は,自分達のソフト・パワーを拡大するために情報を活用でき,政府に直接働きかけたり,一般市民を動員する事で間接的に働きかけるアクターと,舞台を共有せざるを得なくなるであろう.
 急速な発展を望む政府は,外部の監視の目から自らを守ってきた情報流通の障壁のいくつかを撤廃せざるを得なくなるであろう.
 高度の発展を望む政府は,もはや自身の財政・政治状況を,ビルマ[ミャンマー]や北朝鮮がそうしてきたように,ブラック・ボックスの内側で維持し続けることができなくなろう.
 主権のそうした形態は,あまりにも高く付く過ぎることが判明している.
 アメリカのようなハード・パワーを有する大国ですら,新しいアクターと舞台を共有しているのであり,国境を管理する事がより困難になっていると自覚しているのである.
 サイバー・スペースは地理的空間には代替しないし,国家主権を廃止する事にもならないが,封建制度の市のように,[国家主権と]共存し,主権国家や強大な国の意味を大いに複雑にするであろう.
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まとめ

・非政府組織は,この10年で爆発的に増え,また,その役割や影響力も拡大している.

・これらの組織は,主権国家に圧力を掛ける事もしばしばあり,それを無視できない場合も多々ある.

・インターネットにより,緩やかで実体を殆ど持たない組織でも,国際政府の舞台に上がれるようになった.

・主権国家はこれからも重要であり続けるものの,非政府的組織や脱国家的主体の影響力も拡大し,より複雑になるであろう.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第8章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 多国籍軍と国連軍の違いですが

国連軍 :国連が指揮する
多国籍軍:国連はお墨付きを与えるだけ

という理解でいいんでしょうか?

 この場合,「国連が指揮する」というのは国連が司令官を任命して一任するということでしょうか?

 【回答】
 原則上は国連憲章に定められたものが「国連軍」,それ以外が多国籍軍ということになりますが,現実には大した違いはありません.


 国連憲章では,制裁手段として軍事的手段を有することを定めています.

 憲章第42条
 安全保障理事会は,第41条に定める措置では不充分であろうと認め,又は不充分なことが判明したと認めるときは,国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍,海軍または陸軍の行動をとることができる.
 この行動は,国際連合加盟国の空軍,海軍又は陸軍による示威,封鎖その他の行動を含むことができる.

 この軍事手段が「国連軍」です.国連軍は
(1)安保理と各加盟国が締結した「特別協定」に基づき提供される兵力で構成され,
(2)「軍事参謀委員会」が安保理の下に戦略的責任を取り,総司令官はその助言を得て安保理が任命する
こととなっています,建前は.

 しかし,この第42条に沿った国連軍はいまだ編成されたことがありません.
 朝鮮戦争にせよ,ソ連が棄権したので米軍主体の連合軍を国連軍と呼んだだけです.そのことは,経緯を見れば明らかです.

 北朝鮮軍の南侵開始は6/25
 安保理の北朝鮮侵略非難決議が6/26
 マッカーサーに対して米政府が米空軍海軍の投入する権限を認めたのが6/27
 韓国に必要な支援を与えることを勧告する国連決議が6/28
 マッカーサーに対して米政府が陸軍を投入する権限を認めたのが6/30
 日本駐留の米陸軍の韓国への投入開始が7/1
 国連が国連軍の司令部創設を決議し,人事組織についてアメリカに委ねたのは7/7
 マッカーサー元帥が国連軍司令官に就任したのは翌7/8

 一方,多国籍軍は文字通りの寄り合い所帯であって,「国連がお墨付きを与える」かどうかは全く別です.
 ただし,武力行使が前提でしょうから,国連のお墨付き(国連決議が多いです)を旗印にすることが多いですが.

 つまり,現実には,

国連軍 :国連がお墨付きを与える
多国籍軍:国連はお墨付きを与えることもある

くらいの違いしかないのが現状です.


 【質問】
 国連の平和維持活動についてだけど,wiki見ると諜報活動,対ゲリラ作戦,戦犯被疑者の逮捕ってあるけど,公式に発表されてるのでしょうか?
 かなり危険な任務だと思うのですが.

 【回答】
 情報活動という意味での諜報活動ならば,例えば
・派遣された宿営地の周りの住民と交流して,派遣国が出来る範囲のことで,地元全体のためになることを知る,部隊が活動していく上で気をつけなくてはならないマナー(例えば子供の頭を撫でてはだめとか,女性には自分から話しかけてはだめとか,トイレの入り口がみえるところに車両を止めないとか),地元民なら知っていて当然のこと(黒いターバンを巻いた人は宗教指導者,白い衣を纏えば屍衣で殉教の覚悟あり)
などを把握するってことではないかと.

 最近の陸上自衛隊でのこの種の活動については,産経新聞のサマワ本を読むといいと思います.
 色々な活動をしていたことが伺えます.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 国際情勢が悪化して平時の国連軍ってのを設置することになったって言う設定の小説を考えているのですが.
 目的は,国連安保理での出動が決定してから,
 各国の軍隊で多国籍軍を編成するまで(数日程度)に,現地へ緊急展開して後続の国連軍が到着するまでの足場と時間稼ぎを作って,後続の国連軍が到着した後に合流して敵勢力を排除するってのが概要なんですが(出動勧告が無い時はPKO活動などもやる).

 この場合で,陸海空でどの程度規模の人員と設備と装備が平時からあれば妥当でしょうか?

 【回答】
 そういう寄り合い所帯と緊急即応部隊とは,全く相容れない存在だと思う.
 じっさい国連の平和執行部隊は全く機能しなかったわけだし.

 装備や費用は参加国のいくつかがごねて届かず,司令官の任命では安保理が紛糾(とくにアメリカは他国人の指揮下に自国の将兵を置くのを嫌がる)
 構成員は貧しい国から志願(という名の出稼ぎ)が主力で,先進国は血を流したがらず,練度は最低.
 軍法の解釈でまた国連は紛糾…….
 そんな感じになると思う.

 常設国連軍が妄想扱いされる主な理由は,予算の都合.

 1997年の国連の通常予算額は,年間13億ドルとなっています.この額は,ニューヨーク市の年間予算の約4%に過ぎません.
 平和維持予算は,1996年時点で16億ドルとなっています.
 戦争を行って,その被害を補償するためにどれだけの金額が必要になるかを考えれば,平和維持活動に使ったお金は有意義だといえるでしょう.

http://www.unic.or.jp/know/budget.htm

 平時に編成できるのは,各国から出向した連絡将校からなる事務所程度じゃないか.
 常任理事国と非常任理事国から数名ずつ派遣(下働きの下士官込み)で20名ぐらい.

 あるいは,エグゼクティブ・アウトカムズ(民間軍事企業)が昔提案したみたいに,国連の金で傭兵一個旅団雇って待機させた方が,まだスムーズに運用できるかもな.

 参考までに,「戦争請負企業」(NHK出版)に掲載された,エグゼクティブ・アウトカムズ社提案の国連即応旅団の編制.

◎旅団司令部(36人)
 旅団長以下,参謀長の下に人事,内務(広報),作戦,兵站,財務の各参謀.
 兵站参謀の下には旅団司令部支援中隊として通信,食事,倉庫,訓練,技術,工兵,医療担当セクション.

◎即応大隊―3コ(各大隊375名)
 2コ小銃中隊(3コ分隊X3コ小隊+81mm迫撃砲1個分隊で,中隊は120名)
 1コ支援中隊(81mm迫撃砲小隊,30mm擲弾発射機小隊,RPG7装備対戦車小隊,機械化工兵小隊各1個)100名

◎支援(臨時救援)大隊―1コ(311名)
 工兵中隊(地雷啓開,舟艇,設営小隊各1コ)112名
 兵站中隊(燃料,糧食,警備小隊各1コ)76名
 航空補給小隊33名
 通信小隊36名
 訓練小隊15名
 衛生小隊36名

◎航空団55名
 セスナ357x1(2名),M17x5(16名),M2x1(6名),AN26x2,AN12x2,ボーイング727x2(16名)
 地上要員6名

合計1527名(各大隊と航空団には参謀がつく)

 どっちにしても,アメリカが国連に相当入れ込んでるような設定でないと,国連軍を快く思うとは思えないよなぁ.
 アメリカはアメリカ軍を絶対他国の指揮の下に置かないから,アメリカ人が指揮官である部隊の統制下に他国の軍を置く場合しか認めない.
 そしてアメリカは常任理事国でもあるわけで.
 あの手この手でアメリカ軍が主力になるようにするか,アメリカがこれを潰すかの,どっちかになりそうだな.

190名前:名無し三等兵[sage]投稿日:2005/10/14(金)18:53:40ID:???

 いっそ個人資産で運用される私設軍隊(軍事版サンダーバードw)にすれば,かなり問題点はクリアできないか?
 それが国連の委任を受けて動く,と.
 でも,常任理事国(特にアメリカが)がネックだなぁ.

 そうだ! 宇宙人に支配されている世界にして,形上現在の枠組みは残されているが,国連は宇宙人の出先機関で,各国の思惑なんか関係なく動ける,とか(笑)

 【質問】
 国連憲章の旧敵国条項とは何でしょうか?
 国連憲章の第何条に旧敵国条項という明確な項目が挙げられているのでしょうか?
 また,その条項には,日独伊など具体的な国名が書かれていますか?

 【回答】
 一般的に「敵国条項(旧敵国条項)」と呼ばれているものは,正しくは「国際連合憲章53条」と「国際連合憲章107条」のことだが,これはそれぞれ

――――――
http://www.lares.dti.ne.jp/~m-hisa/uncharter/index.html

第53条〔強制行動〕

1 安全保障理事会は,その権威の下における強制行動のために,適当な場合には,前記の地域的取極又は地域的機関を利用する.
 但し,いかなる強制行動も,安全保障理事会の許可がなければ,地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない.
 もっとも,本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で,第107条に従って規定されるもの又はこの敵国に おける侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは,関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする.

2 本条1で用いる敵国という語は,第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される.

第107条〔敵国に関する行動〕

 この憲章のいかなる規定も,第二次世界戦争中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし,又は排除するものではない.

――――――

とあり,「敵国条項(旧敵国条項)」という具体的な名前ではないし,

>第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国

とはあっても,具体的に”大日本帝国”とか書いてはいない.
 いや,読めば日独伊(その他)のことであることははっきりしているが.

 蛇足するなら,完全に死文化しており,国連憲章は変更が大変難しいため,他の優先される議題が山積していることもあって,放置されているだけの状態.
 ゴミ箱に入ったが忙しいから完全削除されていない,みたいなもの.

軍事板


 【質問】
 日本が国連常任理事国入りする場合の障害は?

 【回答】
 〔略〕
■日,安保理常任理事国になるならば [中央日報 2004/9/26](リンク切れ)

>中国に加えて日本が常任理事国になれば,同一地域にある韓国は完全に加入の機会を失う.

 なんと,韓国は自分が常任理事国入りしたいから日本の常任理事国入りに反対するらしい.
 NPT協約違反の核開発といい,彼の国はそこまで大国化への野望を抱いているのか・・・

 とりあえずKの国のような特殊例はさて置いて
(イタリアですら常任理事国入りは諦めているのに,韓国が入れると思う方がおかしい)
日本が常任理事国入りする場合の障害について考えて見ます.

 中国や韓国,及び日本国内の一部の左翼団体の主張には
「戦後,ドイツは謝罪と賠償をきちんと行ったが,日本はそれが出来ていないので資格が無い」
というものがありますが・・・

・ドイツは戦後保障をまだ終えていない

・日本は戦後保障をキッチリ終えている

ということなので,中国や韓国の主張には無理があります.
 それにフィリピンやタイ,マレーシア,ベトナムなどのASEAN諸国は日本の常任理事国入りを支持していますから,「戦後の謝罪と賠償云々・・・」は説得力に欠けるでしょう.

 そもそも,ポーランドはドイツの常任理事国入りに反対していますから,
「ドイツは周辺諸国から信頼を勝ち得て,常任理事国入りを支持されている」
という主張は崩れ去ります.
 確かにフランスはドイツの常任理事国入りを支持しています.
 ですがそれは,「フランスの票が増えるから」という事なので,フランスにメリットがあるからです.

 よく日本国内の反対意見に
「日本が加盟したって,アメリカの票が増えるだけだ」
というものがありますが,もしその論理が正しいとしても,ドイツが加盟するとフランスの票(EUとしての票)が増えるので相殺されます.
 イギリスは自国の利益に従って,アメリカに付いたりEU(仏+独)に付いたりするでしょうし,欧州連合とアメリカに接近しつつあるロシアは,アメリカと欧州連合の力関係が拮抗しているなら,イギリスとはまた違った意味での均衡戦略を取ることができます.

 すると困るのは?
 そう,中国は蚊帳の外です.

 そして日本国内からの反対意見に
「安保理で決定された武力行使に参加させられてしまう」
というものもありますが・・・
 これについては政府与党はおろか,最大野党たる民主党までも
「国連としての派兵なら問題が無い」
と言っていますので,障害になりません.

 ところで中国やロシアは多国籍軍に参加したことありましたっけ?・・・
 安保理常任理事国でも,行きたくなければ行かないでも済みます.
 もちろん,理事会で武力制裁に賛成しておいて,出さないという事は出来ませんけれど.

 そして一部の反対意見には
「常任理事国入りは憲法改正に繋がるから反対」
と言う人もありますが・・・

「それが目的ですがなにか?」と平然と言い放つ町村外相
http://plaza.rakuten.co.jp/obiekt/diary/200409290000/#machimura

 恐らく首相官邸サイドは常任理事国入り工作にあたり,中国を直接説得するよりもアメリカや欧州,国連および世界各国への根回しを優先し,中国が拒否権を使い辛い状況を作り上げる事を目標にしているのではないかと思います.
 新任の町村外相は靖国問題で一歩も引く気は無く,中国に積極的に譲歩しようという状況にはなり得ないでしょう.

「常任理事国?
 うん,入れたらいいね.
 入れなかったら・・・国連分担金を減らしちゃおうか.
 中国が拒否権を使ったら?
 その時はしょうがないね,
 中国が世界から孤立してもいいなら,どうぞ」

 こんな感じかな・・・
 そもそも小泉首相は常任理事国入りに積極的ではなかった人なので,中国に媚を売ってまで入ろうとはしないだろうし,入れなくてもあまり気にしません.
 だから,取ろうとしている外交戦略はなかなか強気なものとなります.

「週刊オブイェクト」,2004年10月03日

 ※その後の,テロ特措法延長問題の際の,民主党の主張の迷走ぶりを見るに,政争のためなら簡単に主張を変える可能性が高いため,アテにならないかもしれない.

◆◆国際法


 【質問】
 戦争の開始や終わりは,どんなところで判断されるのですか?

 【回答】
 政府主導の戦闘行為が継続して行われ始めたら=『開始』
 戦闘行為が終結し,「講和条約」あるいは「友好条約」が締結されるか, もしくは,当事国相互が「戦争終結宣言」を出せば=『終わり』


 【質問】
 戦争というものは,それなりの国がそれなりの国に宣戦布告しちゃえば始まってしまうものなんですか?

 【回答】
 戦争の違法化が進む前はそのとおりです.

 戦争が違法化された現代では,「実際の武力行使の開始をもって,戦時国際法の適用が開始されるとするのが妥当」(防衛法学会編『平和・安全保障と法』,平成8年,内外出版)ということになります.

 戦争は国際条約で禁止されていることもあり,宣戦布告はされないのが今のたしなみ.
 「先制的行動」とか「事前防衛処置」とか「国家自身による犯罪の防止」「海外治安活動」とか,いろいろ言いながらとりあえず爆弾落としたり,港を封鎖したりします.
 短期間にはマスコミ等がどう報道するかで「戦争」かどうかが決まりますが,国によって解釈が違ったりもするので,少し時間がたってから「紛争」になったりもします.
 最後まで国によって
「あれは戦争だった.勝った」
「あれは紛争だった.手を引いてやった」
などと意見が分かれたままになったりもします.

 常識的には,国軍が政府の指示の元に他国の領土に侵入し,攻撃を行えば国際紛争か戦争でしょう.
 小規模な戦争と大規模な国際紛争の間に,明確で客観的な線引きはありません.

 逆に,1949年ジュネーブ四条約共通2条1項はこれらの条約が武力紛争などにおいて当事国が
「戦争状態を承認するとしないとを問わず,適用する」
としており,したがって当事国間が戦争状態に合意するということは,少なくとも法的意味での戦争状態の有無になんら関係のないことです.

 (´-`).。oO(昔,大学の国際法の授業で,「戦争の開始は一方的行為だが,戦争の終結には当事国間の合意が必要」と習った覚えがあるなぁ…)


 【質問】
 戦争は,いつから「宣戦布告」といったものをするようになったんですか?

 【回答】
1904年の日露戦争での明示の戦意表明のない開戦に対する批判を契機に,07年のハーグ平和会議で〈開戦に関する条約〉が成立した.
これにより締約国は,理由を付した〈開戦宣言(宣戦)〉または〈条件付開戦宣言を含む最後通牒〉という形式の明瞭な事前の通告なしに相互間に戦闘を開始してはならないことを承認した.
もっともこの条約には,非締約国が1国でも加わる戦争にはこの条約は適用されないという総加入条項が付されている.
国際連盟体制下で戦争自体が違法化されるとこの条約の意義も減じ,逆に違法という非難を避けようとして戦意の表明さえなしに開始される事実上の戦争が出現するに至った.その代表例は,満州事変,日華事変を契機とする日中戦争であった.
 国際連合体制は国家間の武力行使のみならず武力による威嚇をも禁止するから,最後通牒さえ国連憲章と両立しがたく,憲章上定められる自衛権の行使においても宣戦を行う余地はなくなったといえる.
 しかし現実には,現在,戦意の表明がなく戦争状態の承認されない武力紛争が多く見られるが,これらについても49年のジュネーブ諸条約など戦争法の適用は認められる.

(世界史板)


 【質問】
 宣戦布告の文書・宣言はどうやって作るのでしょうか?
 何時までに誰が誰に対して宣戦布告文書・宣言を渡す又は通知すべきなのでしょうか?
 その宣言は日本語だけで良い?それとも日本側が英訳したのを準備して渡すべきでしょうか?

 【回答】
 大使など,国の意向を代弁できる外交官僚を通じての手渡しで良いようです.
 渡すのは,本国で書かれた原文の必要は無く,本国からの連絡内容の伝達でかまいません.
 体裁としては,最後通牒とセットになります.
(要するに,何年何月何日までにこっちの要求を飲むか,有効な譲歩案を出さないと戦争しますよー!)

 ちなみに真珠湾攻撃は,本国から在米の日本大使館に宣戦布告の打診がされていました.
 防諜の面で大事な時期にも関わらず,肝心の日本大使館側は規律が緩んでおり,攻撃前に対米断交通告を渡すことができませんでした.

 さらに,この通告書には,肝心の宣戦布告にあたる文章が欠落している,すなわち,交渉を打ち切る宣言でしかない(執筆者は加瀬俊一アメリカ局第1課長)ので,米国側はこれを受け取った時刻ではなく,帝国議会において開戦の詔勅がなされた時刻をもって,日本からの宣戦布告があった時刻と解釈しています.


 【質問】
 ホッブズは「万人の万人に対する闘争状態」という,彼の述べたあまりにも有名な言葉により,世上しばしば好戦主義者と目されているが,実際はどうか?

 【回答】
 田中浩によれば,「このような短絡的なホッブズ評価は,ドイツや日本のような思想後進国に多く,英米系の思想先進国では殆ど見られない.このようなホッブズ解釈は全くの誤解であり,ホッブズこそが,近代における絶対平和論の始祖である」という.
 彼は以下のように,その根拠を述べている.

 すなわち,ホッブズは主著「リヴァイアサン」内で,19の自然法を挙げている.
 その第1の基本的な自然法として,人間は,生きるためには全力を挙げて平和を獲得せよ,という命題を彼は冒頭に掲げている.
 そして,第1の自然法の趣旨を達成するためには,各人は生まれながらにして持っている自然権――生きるためには何をしてもよい,「人を殺しても構わない」という権利・自由――の行使を放棄せよ,と述べている.
 なぜなら,各人が自然状態において,各自の自然権を行使すれば,そこに「万人の万人に対する闘争状態」,すなわち悲惨な殺し合いが起こる危険性があり,それでは平和の確保はできないからである.

 第3以下の自然法は,「自分がされて嫌な事は,人にするな」といった,日常的な社会生活を円滑に運営するのに必要な道徳的ルールが列挙されている.

 結局,ホッブズ自然法理論の核心部分は,人々に平和と人権を確保することを求めた,第1・第2の自然法にあったと言えよう.

 ここで注意すべき事は,「自然法を放棄せよ」というホッブズの言葉は,「生きる権利を捨てよ」と言っているわけではなく,具体的には,武装して自分で自分の身を守ることをやめよ,ということである.
 このことは,社会契約を結び,平和と人権を守るために一つの政治集団――市民社会,コモンウェルス,国家――を形成して,そこで作られる平和のルール=法に従って生きよ(法の支配)という考えに繋がっていく事になる.

 詳しくは,「民族と国家の国際比較研究」(未来社,1997/10/1), p.24-25を参照されたし.


 【珍説】
 そもそもホッブス〔原文ママ〕の言う「自然状態」なんてありえない,
 実際にあるのは「歴史状態」である.

 当たり前ではないか.
 人も国も「関係」というルールの中で生きている.
 それはすでに,歴史的に形成されてきている.

(小林よしのり「戦争論」3)

 【事実】
 いかなる形態にせよ,そういうルール形成を普通,ホッブズ言うところの「社会契約を結ぶ」というんだよ.

(軍事板出張スレッド in コヴァ板)

 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 アメリカが本当に「国際法」を踏みにじって,世界をホッブスの「自然状態」にしようとしているのなら,「歴史」を守るために真の保守は,アメリカを批判しなければならないはずだ.

(小林よしのり「戦争論」3,2003/7, p.108)

 【ツッコミ】

 いや,だから,「歴史状態」というものが意味不明な代物なのに,それを「守れ」と言われましても…….

 「自然状態」についての解釈も,なんか勘違いしているようですし…….

 ギャグで書いてんですよね?
 ギャグだよ
 ギャグに違いない・・・(フェイドアウト)

 【質問】
 社会契約によって,「個」は「集団」へと結合されるが,このことは,人間が自然状態において持っていた「個」としての主体性の制限・放棄を意味しないか?

 【回答】
 意味しない,と田中浩は述べる.以下はその論証.

 これについては,ホッブズは次のように言う.
 すなわち,人間は孤立したままでは,生命の安全は必ずしも保障されるとは言えず,そればかりか,「生きる手段」の奪い合いのために紛争・戦争の危険性すら発生する.
 そこで人々は結集――平和と人権を守るために社会契約を結ぶこと――し,「集団」という強い力によって相互に身の安全を図れ,と.
 そして,集団の力をホッブズは「共通権力 Common Power」と呼び,これが契約社会における最高権力であるとした.
 この共通権力は,構成メンバー全員の意思であるから最高権力であり,今日の国民主権主義の原型である,と言うことができる.

(田中浩「民族・個人・国家」from 「民族と国家の国際比較研究」,
未来社,1997/10/1, p.25-26,抜粋要約)


 【珍説】
 ホップズが考えている契約とは,強者が弱者に対し,
「殺されたくなかったら,カネを払うかオレのために働け」
と強要し,弱者が
「言うことをきくから殺さないでくれ」
とそれに従う,というものである.

インテリパンク in mixi

 【事実】

(引用開始)

 国家はあくまで自由な個人から支配を委任された存在に過ぎず,その国家が支配を他に委ねることは,国家が委任の範囲を超えて個人の権利を譲り渡すことを意味するからである

(引用終了)
―――『国際政治とは何か―地球社会における人間と秩序』(中西寛著,中央公論新社,2003年),89頁〜

 ホッブズが生まれた18世紀頃のヨーロッパは,産業革命による都市の発達による中産階級が生まれていた頃です.
 ホッブズの読者層は彼らです.
 ヨーロッパは自治が認められている都市が多いため,都市国家間の戦争が起こり易い.
 ホッブズは都市の上位概念に国家を設定し,その国家とは各個人が契約を結んだ集合体と見なしたわけです.
 従って,国家自体が「暴力に関わる一つの運動体」ではあっても,殺されずに済む「強者による一方的な契約体系」ではありません.
 第一,当時の読者が納得しませんぜ♪w

 ホッブズの限界は,当時の近代国家の上位概念を作らなかった事です.
 しかし,彼の生まれた近代ヨーロッパでは,まだ近代国家の概念(各個人の契約による国家)が出来つつある時です.
 今のような国家間戦争をホッブズに想定させるのは無理がありますな.

(引用開始)
 ホッブズは「万人の万人による闘争」は万人相互が契約によって国家を作り,万人がその契約に従うことで平和が確立すると説く.
 国家とは仲裁者であり万人の紛争を仲介する.
 万人が自力救済を目指せば自己保存を生じ紛争の発生は必然とホッブズは説く.
 紛争の解決のために国家の暴力の集権化が行われる.
 ホッブズは近代国家の成立に貢献し,国内の平和について熟考しているが,国家間の平和については言及していない.

(引用終了)
―――『国際政治とは何か―地球社会における人間と秩序』(中西寛著,中央公論新社,2003年)

 近代国家が人々に安全を提供する代わりに,自ら国家の支配を受け入れる事を是としたホッブスが嫌いな日本人は多いのかね?

チェーザレ in mixi


 【珍説】
 ホッブズはロックやルソーに対して,相対的に君主主義で王政復古的.

インテリパンク in mixi

 【事実】
 ホッブスの経歴を簡単に書いとこう♪

(引用開始)

 1640年に「法学要論」を出版したが,これには「人間論」と「市民論」の概略が含まれてあった.
 かれの著作は議会派の要求に反対して王党派を支持しているように思われたため,ホッブスは危害が及ぶのを恐れて,その年の終わり頃にパリに亡命し,11年間も隠れて生活していた.
 ホッブスは再びメルセンヌ神父の仲間に入って,しばらくは若き亡命王子の数学家庭教師を勤めたが,その王子は後にチャールズ2世となった人物だ.

 (中略)

 フランス亡命中の王党派に裏切り者呼ばわりされたホッブスは,「リヴァイアサン」刊行直後にイギリスに帰り,国務会議の前に出頭した.
 その後まもなく,かれは哲学三部作の残る二巻――『物体論』(1655)と『人間論』(1657)を刊行.

 (中略)

 1660年の王政復古の後で,チャールズ二世はホッブスを相談役にして年金を与えた.
 1666年のロンドン大火の後,英国の下院はホッブスの「リヴァイアサン」を発禁リストに加える議案を出してきた.
 この議案は,王様の介入で貴族院を通過しなかったけど,今後著作を出すときにはまず自分に精査させろと王はホッブスに言った.
 ホッブスはこれに従ったので,彼のその他の政治的な著作物は,死後出版となった.

(引用終了)
http://cruel.org/econthought/profiles/hobbes.html

 〔ホッブズが君主主義だとすると,〕「リヴァイアサン」を刊行直後に王党派や教皇派に暗殺されかけた(?)のは何故でしょう?

 トマス・ホッブズ,ジョン・ロック,ジャン=ジャック・ルソーの功績は社会契約説の確立です.
 ホッブズも王政復古に批判的でしょうが(笑)

(引用開始)

 政治体の存在根拠を求めて自然状態論に行き着いた彼らは,思想史的に考えれば,当時猛威を振るっていた「王権神授説」に対抗するために,極めて慎重な議論の歩みを進めたと評価できる.
 王権神授説が聖書を根拠にする以上,それを凌駕する緻密さが必要とされたのである.

(引用終了)
http://ja.wikipedia.org/wiki/自然状態

 〔もちろん〕社会契約説の詳細に関しては,ホッブズ,ロック,ルソーの3者とも異なる.
 しかし,今回私が問題にしているのはなぜ社会契約説が出現したか?
 社会契約説が現れたのは,「王権神授説」に対抗するためであって,王政復古的価値観を擁護するためではない.
 相対的比較を行って王政復古に誰が近いかを議論するのは不毛.

チェーザレ in mixi


 【質問】
 「自然状態」(無政府状態)については,ホッブズ以外の見方もあるのか?

 【回答】
 ジョン・ロックの様な見方もある.

 ホッブズの時代は,内戦続きの状態であったため,不安感からくる武力と,それを行使した生存性に重きが置かれていたが,ジョン・ロックの時代には,やや安定していたため,人間関係の強化,契約の締結・履行により,無政府状態と言っても,それほど脅威のあるものとはみなされなかったようだ.

 結局,その時代の背景を理解する必要があるということだろう.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授「国際紛争」(有斐閣,2005.4)1章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【小林主体思想】(別名:マルチ・スタンダード)

 戦争は承認された暴力と言える
 本来的には略奪も強姦も虐殺もあらゆる暴力が承認された状態

小林よしのり「戦争論」1,P114

 でこれは何を言いたいんだといえば(下は要約)

「戦時国際法は欺瞞以外の何ものでもない」
「ピンポイント攻撃で軍事施設だけ狙っても周辺の民間人に(略)」
「このような事が有るから,戦時国際法が現実的ではない」

(同)

 【解説】
 戦時国際法が無いほうが良いってのかな?

 不思議なことに,同じ本の戦時国際法の目標選定についての所では,「まきぞえで民間人の被害者が出る」という事は明確に許されるものとして書かれています.

 これの続きで(要約だが内容はそのまま)
「ベトナム戦争において米軍が戦争犯罪行為を行った」
 この書き方は,米軍のみが戦争犯罪を行ったと主張に限りなく近い.
 両ベトナムの政府組織,南北ベトナム軍,ベトコン,米以外の参戦国の軍の存在を知らないのだろうか?
 私に言わせれば北側の戦争犯罪,残虐行為のほうがはるかに追及されていない.
(アメリカの映画や小説やノンフィックションで知られてはいるが)

 また,
「相当酷かったのに(米軍は)裁かれていない(カッコ以外ママ)」
ともあるが,米軍は民間人射殺などについて裁判をしている.
 少なくともベトナムよりは遥かにこのような裁判をしている.

(キルロイ ◆dtIofpVHHg)


 【質問】
 他国間の戦争において,第三国がどちらかの国に補給や情報提供などで協力した場合,戦争協力として,協力した国の敵国から攻撃される理由にはなりますか?
 自国の敵対国と戦ってくれている国に対し,「敵の敵は味方」の理論で,遠回しに協力行為をした例はありますか?

 【回答】
前者;
 攻撃する側から見れば十二分に理由となるし,攻撃される側から見れば,不当で卑劣ないいがかり.
 最終的な判定はどちらの側が勝利したか,もしくはどちらの肩を強国が持ったかによって決まる場合が多い.
 まあ世の中そんなものさ.

 一応,国際法的にいっておくと,戦争協力を堂々と行えば,それだけで開戦理由になるけど,外交はそんなに簡単に白黒つくような単純なののじゃないからね.

後者;
 公然も秘密裏も,共に古今東西数多の例がある.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 A国がB国を占領,B国内にいる同盟国C(BとCが同盟)の外交官や民間人は国際法上,どのような扱い,処遇になるのでしょうか?

 【回答】
 外交儀礼と国際法を守るまともな国家同士の場合,中立国の大使館は引き続いて当面の立場を保証され,外交官の身分もまた同様に国際的慣習に基づいて保証されます.
 民間人も同じく身分を保障され,犯罪行為や統治の妨害をしない限り,生命財産及び一定の自由は保証されます.

 しかし,それらは全て建て前の話.
 本来であればB国の民間人も含め,それらは保証されているのですが,力を持たない人間が何を騒ごうとそれがどんなに正論であろうとも,銃を持つ軍隊の行動はひとえに相手の都合にゆだねられます.
 占領軍側が民主的な先進国の軍隊で醜聞を避けたがっている場合や,解放軍など好意的なアピールをしたい場合には,紳士的な対応も期待できますが,WW2のベルリン陥落時のソ連軍などかなり最悪に近いケースも歴史上散見されます.
 ソ連軍の場合,憲兵隊による風紀取締の苛烈さも有名ではありますが,それを遥かに上回る悲劇が伝え残されているのも否定できない事実でしょう.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ICCとは?

 【回答】
 京都大学教授・高山加奈子によれば,国際刑事裁判所(Internatioonal Criminal Court)の略称であり,1998年の「国際刑事裁判所に関するローマ規程」によって設立が定められたもの.
 ニュルンベルク裁判,東京裁判,旧ユーゴスラビア国際刑事法廷,ルワンダ国際刑事法廷といったアドホックな裁判所の実務の集積を通じ,
・ジェノサイドの罪,
・人道に対する罪,
・戦争犯罪,
・侵略の罪
の4つが,国際法上の「コア・クライム」であると考えられるようになったことから,それらの処罰を目的として常設の国際裁判所として創られたという.
 しかし,
・侵略の罪の定義が先送りにされていること
・犯罪の成立範囲や刑罰の幅が極めて広いこと
・犯罪地国か被疑者国籍国のいずれかの受諾がなければ,非加盟国に対する管轄権が生じないこと
・国連安保理の政治的関与を許す,幾つかの制度が設けられていること
が難点となっていると述べられている.

 詳しくは『ジュリスト』 2008.1.1-15号,p.182-183を参照されたし.

 まあ,人道を露ほども配慮しない国々を,かえって有利にするような制度にならなきゃいいんだけどね.


 【小林主体思想】
 戦争において勝者が敗者を裁くのは野蛮である

(小林よしのり「戦争論3」,第5章タイトル)

 【解説】
 野蛮であるかどうかは主観的なものですから,水掛論にしかなりませんが,冒頭でクラウゼヴィッツの
「戦争は政治に(略)」
という言葉があるのだが.
「戦争は野蛮であるが否定してはいけない」
と考えており,
「本来戦争はルール無し」
と主張している.

 なのに
「戦勝国が戦敗国を裁くのは野蛮で非文明的で犯罪ですらある」
と言っちゃうのか.
「日露戦争に勝った日本はロシアに優しくしたが,米はWW2やイラクのように野蛮である」
と続く所から,いつもの米憎しからの考えだろうが.

(キルロイ ◆dtIofpVHHg)


 【質問】
 下記の様な書き込みを見つけたのですが,

>「相手が降伏したがそれを捕虜にできない」って場合に,
>日本人なら「武装解除して解放」って選択肢も当然思い浮かぶけど,

 敵兵を武装解除して解放なんてことは,本当に可能なのでしょうか?

・解放した場合,すぐに戦力として復帰してしまう.
・こちらの情報が少なからず敵に漏れる.
・ゲリラ活動?を行われる心配がある.
 以上の様な心配があると思われるのですが,いかがでしょうか?

 【回答】
 「宣誓解放」という制度があります.

 第3ジュネーブ条約第21条第2項
「捕虜は,その属する国の法令により許される限り,宣誓又は約束に基づいて不完全又は完全に解放することが出来る.・・・捕虜に対しては,宣誓又は約束による解放を受諾することを強制してはならない」

 同第3項
「各紛争当事国は,敵対行為が始まったときは,自国民が宣誓または約束に基づいて解放されることを許可し,または禁止する法令を敵国に通告しなければならない.
 こうして通告された法令に従って宣誓又は約束をした捕虜は,その個人的名誉に基づいて,その者が属する国及びその者を捕虜とした国に対して宣誓及び約束に関わる約定を果たす義務を負う.
 この場合には,その者が属する国は,宣誓又は約束に反する役務をその者に要求し,また,その者から受けてはならない」

 実例を挙げると,有名なところでは,日露戦争で日本軍が旅順を陥落せしめた時に,ロシア軍捕虜に宣誓解放(「もう対日戦には参加しませんよ」と約束する代わりに帰国)か,日本の収容所行きかを選択させました.
 ちなみに司令官ステッセルは帰国を選びました.

 また,支那事変のときに参謀次長を務めた多田駿という将軍がいます.
 彼は陸大教官時代,
「支那人1万人の捕虜を得た情況で如何に処理すべきか」
という問題を学生に出したそうです.
 学生たちは苦心して色々答えを出しましたが,多田の原案は,
「武装解除した上,全員釈放,生業につかせる」
 というものだったそうです.

 まあ少数派でしょうが,こういう人もいたということで.

軍事板?

▼ もっとも,結局帰還すればまたこっちに攻撃しに来るとわかってる奴を,解放する馬鹿はいないし,誓約守って戦線に復帰しないなんて奴もいないわけで,
「捕虜に出来ない(そんな余裕無い)けど殺すわけにもいかない」
って場合の方便として使われるに過ぎない.
 大抵の場合,捕虜になるか殺されるかで,そういう場合自体まれにしか発生しないからね.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 宣誓解放に関し,A国軍人が宣誓をしてもB国が受け入れないという行為は,A国軍人が何らかの戦争犯罪を犯した場合以外は,B国はできないのでしょうか?

 【回答】
 ハーグの第11条に,A国の捕虜がB国から宣誓解放を強いられることがないのと同様,B国側もA国の捕虜からの宣誓解放要求に従う必要はない,とある.
 つまり宣誓解放というのは,捕虜と捕虜にした側との相互の合意の元にのみ発動し,しかも捕虜が属する国の法にも違反しない場合だけに有効な,例外的な処置.

 もちろん,A,B国ともハーグを批准し,遵守しようとしているという前提の元で.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 もしも有事になった場合,民間船舶でも無警告で沈められて,乗員は捕虜として捕らえられると聞いたのですが本当ですか?

 【回答】
 その可能性もあります.
 戦時国際法の海戦法規には,陸戦法規とは異なり私有財産の没収が可能であると明記されています.
 また,交戦国の私人が保有,運行する船舶は拿捕や,乗員の安全を確保した上での艦を航行不能にする,海没処分をしても良い事になってます.
 その乗員は,敵国の戦争・武力行為の補助者であるとされ,捕虜として逮捕・抑留する事が出来ると規定されています.
 そればかりか,敵国の商船であると言っても,無警告での攻撃,警告後の明らかな破壊・壊滅を主とする攻撃も可能である場合があります.

 何故この様な事が可能であるかと言うと,他国との海上物流の遮断と中立国による非中立的な行為を阻止する等の為であるようです.


 【質問】
 戦略爆撃や誤爆は戦争犯罪なんですか?

 【回答】
 前者はやや非人道的なキライがあるものの,れっきとした軍事作戦であり,後者はただの過失.

(軍事板出張スレ in コヴァ板)

 【質問】
 戦略爆撃は民間人が巻き添え食って死ぬことがほぼ確実なわけですよね?
 それなのに,軍事作戦だから非人道的だが戦争犯罪ではないという理屈がよく分かりません.
 やはり小林よしのりが言うように,そういうふうに白人がルールを捻じ曲げた?
 【回答】
 つまりね,迷惑行為が全て犯罪行為になるわけではないのと同様に,非人道的行為の一部を戦争犯罪と判断してるわけ.
 問題は何を戦争犯罪とするかが,人によって違うこと.

 法の欠陥ということも言えるのかもしれない.

 陸戦の場合,戦闘部隊には,略奪は禁止されるし,民間人の保護に留意するようにという国際法(条約)が適用されるわけです.

 ところが爆撃,ミサイル攻撃による都市攻撃は,以下の要件を満たしている限り禁止されないわけでね.

「攻撃目標には防守都市と軍事目標がある.
 防守とは,都市の占領を企図して接近する敵に対し,軍隊が抵抗することを意味する.このような都市に対しては無差別攻撃が認められる(陸戦規約25条).ただし,同27条には宗教施設・学術施設・医療施設などは軍事上の目的に使用されない限り可能な限り被害を免れるように努力しなければならないとする規定がある.
 無防守都市に対しては攻撃対象は軍事目標のみに限定され,民間のものに関しては攻撃が禁止される.この原則を軍事目標主義(Doctorine of Military Objective)という.陸戦だけでなく,海上や空中からの攻撃にも同様の制約がある(海軍砲撃条約第2条・空戦法規案第24条).ただし軍事目標への攻撃で民用物に付帯的な被害が出ても,故意になされたものではなく,また,目標の破壊による軍事的な利益に比較して軽微な場合には違法ではないとされる」http://www.mahoroba.ne.jp/~felix/Notes/PeaceResearch/Law_of_War.html

 当然に,巻き添えが出て当たり前だし,上の規定を拡大解釈して,住民の殺傷を狙って行なうことも横行する.
 それにストップをかけるのは,せいぜいで国際世論だってことになります.
 まあ,その気になれば,いくらでも無視できますね.

 ルールを捻じ曲げてんじゃないですよ.最初からそういう,いわば「欠陥」がある.理屈じゃなくてね.そういう仕組みになっちゃってると.

 んで,ひとたび,軍事裁判になれば,そりゃ勝った側の恣意が当然に入りますからねえ.ますます,「理屈がよく判らない」ということになるわけですね.
 ちなみに,軍事目標の巻き添えになる範囲に民間人を住まわせておく側にも,責任はあります.

(軍事板出張スレ@コヴァ板)

 ハーグ空戦規則案(批准が行われていないため,法としての効力は発生していないものの,空戦に関して各国はこれに準拠している)では,24条1で,軍事目標に対する爆撃のみが適法であるとされています.ここでいう軍事目標とは,「その破壊もしくは毀損が明らかに軍事的利益を交戦者に与えるような目標」と規定されています.
 また,24条3では,陸上軍隊の作戦行動の直近地域でない都市への爆撃は禁止され,4では,直近地域にある場合には,「兵力の集中が重大であって,爆撃により普通人民に与える危険を考慮してもなお爆撃を正当とするに十分であると推定する理由がある場合に限り」適法である,とされています.
 25条では,4の場合にも爆撃の対象とならない施設と,その施設を明示する標識,および標識の不正な使用の禁止について述べられています.

 第二次世界大戦以前の法的な状況は以上のようなものなのですが,問題は,第二次世界大戦において総力戦が遂行されるとともに,文民やあらゆる産業が戦争遂行体制に組み入れられるとともに,航空機および防空能力が飛躍的に向上したことです.
 この流れの中から現れたのが「目標区域爆撃」という概念で,これは,軍需工場(戦争の遂行に必要な産業)の密集地域で個々のの軍事目標の選択が不可能な場合,その地域全体を一つの軍事目標とみなす,とする考え方です.
 これを最初に提出したのはイギリスですが,日本では,都市全体を防護する防衛施設や軍隊が駐屯する都市を,それが戦場から遠く離れていても防守都市と見なし,それへの無差別攻撃を正当とする拡張された防守都市の概念も現れました.

 第二次世界大戦中の法概念の変遷は,概略以上のようなものです.
 ちなみに,戦後は,ジュネーブ条約の第一追加議定書(1978年,効力発生)において
「紛争国当事国の軍事行動は,軍事目標のみを対象とする」(48条)
とされており,51条5(a)で,目標区域爆撃は無差別攻撃として禁止されています.
 また同時に同議定書においては,軍事目標の定義についても,空戦規則のものより更に精密なものになっています(52条2).
 また,爆撃の被害を避ける予防措置についても,攻撃側に一定の義務を課し(57条2a-c),同時に,被攻撃側にも攻撃の影響から文民が被害を受けることを予防する義務を課しています(58条).

 以上,国際人道法(藤田久一著)pp.109-117より

 58条絡みでこないだのイラク戦争でフセイン政権がやった「人間の盾」が非難の対象になったのは,記憶に新しいところ.

(軍事板)


 【珍説】
「ジュネーブ条約が出来た時は,ミサイルや航空機による爆撃など想定されていなかったから,柔軟に解釈すべき???」

 【事実】
 追加議定書は1977年制定ですよ…
 人類は既に,30年以上前の第二次世界大戦で,無差別戦略爆撃とミサイル空襲(V1,V2)を経験済みですよ…・

 ここまで来ると最早漫才ですが,本当にあった怖い話です.

Posted by JSF at 2005年12月11日 11:18:53

「週刊オブイェクト」コメント欄,2005年12月11日付


 【質問】
 無防備都市宣言をした都市を攻撃したら,攻撃した国はどんなペナルティを受けますか?

 【回答】
 戦争はスポーツじゃないが,まあ傍観してた国が介入してきたり,第三者である国との関係が悪化したり,国内の反戦世論が盛り上がったりするかもね.
 それでさえ,あるかどうか怪しいもんだが・・・

 それに,その国の国際的地位他次第の面もありますが,勝てば少々のことは封殺できます.
 攻撃時点での「ペナルティ」なんかありません.

 まあ,まっとうな手順で「無防備都市宣言」すれば,そこには攻撃して排除しなければならない対象も存在しないはずなので,攻撃する理由自体がありませんが.
 弾薬のムダ使いすれば,指揮官が上官にメッ!されるでしょう.

軍事板


 【質問】
 無防備都市宣言の話題で
「宣言がなされた地域には,紛争状態にある国に対する第三国は災害派遣を行えなくなる」
という人がいたんですが,これは本当なのでしょうか?
 たとえ災害派遣であってもそれは軍事活動で,それに従事する自衛隊員は戦闘員,という扱いなのでしょうか?

 【回答】
 無防備都市宣言=中立じゃないよ.左翼の人はそう宣伝してるが.

 無防備都市宣言ってのは,都市単位の降伏みたいなもんだと思ってりゃいいよ.

 で,降伏->敵国軍に占領されたら,治安維持やら,災害復旧(まぁ,やらんだろうけど)ってのは占領軍の方の義務になるんだよ.
 したがって,治安維持,災害復旧などは占領軍の管理下になると思われ.

 もし強引に行くとすれば,丸腰で行くから災害派遣は違反ではない!と派遣国側が強弁することになるでしょうが,敵国側が「ハイ,そうですか」と素直に納得してくれるとも思えず.
 無理に行って戦闘が起こって,住民・都市に被害が及んだら宣言を出した意味が無いですしね.

 ありそうにないですが,仮にやるとすれば双方合意の下,救助・支援活動などに入るという事態のほうがまだ可能性が高いかも.


 【珍説】
 アメリカと追随日本政府も認めないかもしれないが,「戦闘員と一般住民を区別しない兵器や不必要な苦痛や被害をもたらす兵器と交戦方法を使用しない」
という国際人道法に明らかに違反している.

 【事実】
 「戦闘員と一般住民を区別しない兵器」→銃,砲,爆弾などの兵器は戦闘員と一般住民を区別して攻撃する事ができる.
 故意に民間人を狙わなければいいのだから.目標から逸れてしまって結果的に誤射・誤爆となるのは,国際人道法において違法ではない.

 「不必要な苦痛や被害をもたらす兵器」→国際人道法が禁止しているダムダム弾や散弾銃等の戦場での使用は行われていないので,違法とは認められない.

 「交戦方法」→民間人を巻き込むような交戦方法とは,武装勢力側が行っている『民間人を目標にしたテロ攻撃』の事.
 或いは意図的に民間施設の近くに軍事施設を構築したり,軍事施設に民間人を配置したりすること.(→人間の盾)

 平和学・平和研究について調べているFelixさんのサイトから,Peace Researchの[戦争法]より.

軍事目標主義(リンク切れ)

 攻撃目標には防守都市と軍事目標がある.
 防守とは,都市の占領を企図して接近する敵に対し,軍隊が抵抗することを意味する.
 このような都市に対しては無差別攻撃が認められる(陸戦規約25条).
 ただし同27条には,宗教施設・学術施設・医療施設などは軍事上の目的に使用されない限り,可能な限り被害を免れるように努力しなければならないとする規定がある.(←この追加部分は読者からの指摘による.Special Thanks to 某S氏.)

 無防守都市に対しては攻撃対象は軍事目標のみに限定され,民間のものに関しては攻撃が禁止される.
 この原則を軍事目標主義(Doctorine of Military Objective)という.
 陸戦だけでなく,海上や空中からの攻撃にも同様の制約がある(海軍砲撃条約第2条・空戦法規案第24条).
 ただし軍事目標への攻撃で民用物に付帯的な被害が出ても,故意になされたものではなく,また,目標の破壊による軍事的な利益に比較して軽微な場合には,違法ではないとされる.
----------------------------------------------------------------------

>ただし軍事目標への攻撃で民用物に付帯的な被害が出ても,故意になされたものではなく,
>また,目標の破壊による軍事的な利益に比較して軽微な場合には違法ではないとされる.

 要するに戦争法(国際人道法)は,誤射や誤爆を認めてしまっています.
 ジュネーブ条約の第一追加議定書(1978年)によって基本的に無差別攻撃が全面禁止された後も,故意に狙ったのでなければ,民間目標に被害が出てもそれは国際法に触れません.
 勿論,民間目標に被害が出ないように努力することは攻撃側,被攻撃側双方に求められます.
 (つまり「人間の盾」は違法)

 ・・・私は別に「法に触れないならアメリカ軍は何をしてもいい」と言う気はありません.
 ですが,戦争法について何も知らずに,
「違法行為だ!」
と喚き散らし,結果的に嘘を主張することは,明らかに間違っています.

「週刊オブイェクト」,2004年10月06日



 【質問】
>戦闘員と一般住民を区別しない兵器や不必要な苦痛や被害をもたらす兵器と交戦方法を使用しない

 これはNBC兵器のことですね?

 【回答】
 NBC兵器も入りますが,それだけを指し示すわけではありません.

『戦闘員と一般住民を区別しない兵器』
 これに地雷が入る,と解釈する場合もあります.
 対人地雷は問題になっていますので.
(欧州での戦争や太平洋戦争では問題になっていないのだがなぁ.
 埋めた場所をきちんと記録しておけば,地雷は民間人にとって怖くないのに・・・)

『不必要な苦痛や被害をもたらす兵器』
 要するに,スカっと殺せる兵器ならOKという法だったりします.
 何気に怖い.
 軍隊ではダムダム弾は使用禁止です.
 ショットガンも使用禁止.
 どちらも弾の摘出が難しく,治療が困難だからです.

JSF in 「週刊オブイェクト」コメント欄,2004年10月06日


 【質問】
 国際社会の主流は「憲法>国際法」とのことですが,国際情勢の現実を見ますと,上は大国から下は北朝鮮,スーダンにいたるまで,秩序など無視して好き放題やっているように思われます.
 例えば,アル・カーイダ幹部のUAVを用いた暗殺から,チェチェンやチベットや…(リストは延々と続くので中略)…ダルフールでの各種非人道行為,正規軍ではない武装組織による虐殺,等等.
 それらが各国の憲法を遵守している行動のようには,到底思われないわけですが,その点はいかがでしょうか?

2009年10月11日 20:14,消印所沢

 【回答】
 国際社会の主流というわけではありません.
 上述したソースの通り,各国により事情が異なります.

 少なくとも,『他の国がやっているから日本もやって良い』という話にはなりません.
 各国により事情(憲法と国際法の関係)が異なります.

2009年10月11日 20:26,ゆきかぜまる

 私は国際社会の主流と言う考えで間違いないと思っています.

 ゆきかぜまるさんのソースも見てもらえば分かりますが,国際法を憲法より上位と見做す国も,あくまで「場合によっては」であることが分かります.

 ちなみに私がソースとしました「国際法講義」では,要約すると
「一般的には憲法>条約>国内法という法体系が多いが,憲法>条約=国内法としている国もある.
 例外的に,一定条件化の下で条約≧憲法の効力を認めている国もある」
と言う書き方をされています.

 これを各国毎に違うと考えるのか,主流は憲法>条約と考えるのかは,個人個人の捉え方だと思いますが,「一般的に多い」「例外的に」と言う言葉が使われている点を重視して,私は憲法>条約が主流という考えを取ります.
 くどいようですが,この考えはあくまで国内法体系に限るものです.
 同じく「国際法講義」においても,
「国家は国際法上の義務を免れるために,憲法を含む国内法を援用することは出来ない」
ということが確立された通説であるとされています.

 その上で,質問に対する回答ですが,憲法を遵守しているかどうか,ということは即ちそれらの国が立憲国家として憲法が機能しているかどうか,と言う問題に過ぎません.
 それはあくまで国内問題ですので,国際社会が
「あなたの国が行っていることは憲法違反ではないのですか?」
などと言える筋合いはありません.

 ちなみに憲法が守られているかどうか,ということを考える時に「合憲推定」と言う考え方があります.
 これは違憲審査権を持つ当該機関が違憲認定しない限り,全ての法令は合憲であると推定される,と言う考え方で,立憲主義の基本的な考え方です.

 質問にあわせて回答するのであれば
「アメリカだろうが北朝鮮だろうがスーダンだろうが,当該国のしかるべき機関が違憲認定しない限りは,全ての行為は合憲です」
ということになります.

2009年10月12日,shigezo

「国内法体系では憲法>条約だけど,国際法上の義務を憲法を理由に免れることは出来ない」
についての補足です.

 ジュネーブ条約を日本は締結していますが,日本が憲法で軍隊を放棄しているからと言って,日本国及び自衛隊がジュネーブ条約に定められた義務の履行,被履行を免れるわけではない,だからと言って自衛隊が日本の正規軍になるわけでもない,ということを具体的事例として考えていただければ分かると思います.

 ちなみに国会では
「日本は憲法で軍隊を放棄しているので自衛隊は軍隊ではない.
 しかし,ジュネーブ条約においては自衛隊の任務の性質上,国際法上の軍隊となる」
との説明がなされています.

2009年10月12日 16:44,shigezo

以上,「軍事板常見問題 mixi支隊」より
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 「国際法」と「国内法」の具体的な違いは?

 【回答】
 「法の執行」に関する強制力が確立されているのが国内法で,「法の執行」に関して強制できる行政府が存在しないのが国際法.

 国際法は,そもそも国家間の「自助」システムにすぎず,伝統的に,それは「大国」が執行してきた場合が多い.
 また,国内法には,秩序だった法体系が存在し,それを確実に執行する機関があるが,国際法にはそれが存在しない.

 これについて,ナイ教授は海洋法を例に挙げて説明している.

--------------------------------------------------------
たとえば,海洋法について,各国は領土から3海里までを領海とすることができる,という慣習が出来上がってきた.
 19世紀にウルグアイが自らの漁業資源を保護しようとより広い領海を主張した時,時の海洋大国であったイギリスは,これらの国の3海里の内に軍艦を派遣したのであった.
 このようにして,大国によって慣習法が執行されたのである.
 それでは,もしイギリスが法を犯したのなら,誰が法を執行するのか?という疑問が浮かぶ.
 答えはどうなるであろう.
 自助のシステムにおける執行は一方通行だ,
 これである.
--------------------------------------------------------

 ストラスプールの欧州裁判所は地域的な例外にしても,国際法における裁判とは,国家によって起こされるものであり,個人が提訴するものではない(当たり前だが).
 世界の個人個人が提訴するのではなく,国家のみが提訴を行うことができる.
 この場合,国家は「勝つ見込み」がない場合以外で,まず提訴することはない.

 故に,国際裁判所の扱う事件数は少なくなる.
 1990年代にボスニア・ルワンダと言った紛争で,戦争犯罪人を裁こうと,特別法廷が設置され,2002年には,大多数の国によって,虐殺や,戦争に関する犯罪者を裁こうと,交際刑事裁判所を設立した.
 しかし,アメリカを含む主要国は,主権が侵害されることを恐れ,この条約に対する批准を拒否した.

 さらに,これらの慣習法を,原則について合意があったとしても,どのように解釈すべきかという問題がある.
 ナイ教授は保障問題を例に挙げる.

--------------------------------------------------------
 例えば,[財産などの]収用の原則について考えてみよう.
 国家が自国内で操業する他国の企業を国有化することができるということは,受け入れられる原則である.
 もちろん国家は,その財産価値に見合った補償をしなければならない.
 しかし,どれだけが正当な補償だと,いったい誰が決めるのだろうか.
 多くの低開発国は低い補償で充分だと主張するのに対し,裕福な国々は通例,高い補償を求める.
--------------------------------------------------------

 以上を纏めると,

・国際法と国内法では,「法の執行」の強制力に最も差がある.

・国際法の慣習法は,しばしば大国によって執行されてきたが,大国がその慣習法を犯したばあい,罰する国というものが存在しにくい.

・原則についての合意があった場合でも,解釈がかみ合わない場合が多い.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 国際法に強制力がないというのであれば,国際法や国際組織が存在する意味はないのでは?

 【回答】
 国際法や国際組織は,「予測可能性」と「正統性」の二つの面から国家にとって利益がある.

・予測可能性について

 国家というものは,直接・間接を含めると,年中紛争に関与していると言える.

 国際的な取引のほとんどは,公的・私的を問わず貿易・観光・外交使節のやりやり取り,国境を越えた市民交流を通じて行われるが,相互依存が深まるにつれてこのような交流は増大し,それにともなって摩擦も多くなる.

 国際的な取引で摩擦が生じたとき,政府は国際法のおかげで,直接的な軍事力の行使といった紛争を防ぐことができる.

 ナイ教授は次のように解説している.

--------------------------------------------------------
 アメリカ人観光客がメキシコで麻薬密輸の嫌疑で逮捕されたとか,北海でイギリスがノルウェーの船と衝突したとか,インドの会社が特許を侵害したと日本の会社が訴えたとかである.
 しかし政府はそのような私的な衝突が他の関係を損なうことを望まないのである.
 そのような問題を国際法と合意された原則に基づいて処理することで,事態を非政治化し,予測しやすくすることができる.
 予測可能性こそは,取引を増大させるための,そして取引の増大によって必然的に起こる紛争を,秩序だって処理するための必要条件なのである.
--------------------------------------------------------

・正統性について

 政治とは単に物理的な暴力をめぐっての争いだけでなくて「正統性」をめぐっての争いでもある.

 「パワー」と「正統性」は対立するものではなくて,お互いに補完する関係といえる.

 これについて,ナイ教授は以下のような見解を述べている.

--------------------------------------------------------
 人間は完全に同義的な存在でもなければ,完全に懐疑的(シニカル)な存在でもない.
 正邪に関する信念が人の行動を促すということは政治的な事実であり,したがって正統性はパワーの源泉なのである.
 もし国家の行動が正統的なものでないとみなされれば,政策コストは高くならざるをえない.
 国家は,国際法や国際組織に訴えて自らの政策を正当化し,他国の政策を非正当化しようとするし,それによって国家の戦術や結果にしばしば影響が表れるのである.
 そして,正当性は国家のソフトパワーを増大させる.
--------------------------------------------------------

・国際法・国際組織は「予測可能性」「正統性」の二つの側面から,国家に利益をもたらす.

・予測可能性は摩擦の増大を抑える,正統性は,政策のコストを引き下げ,ソフトパワーを増大させる.

 詳しくは,ジョゼフ・S・ナイ教授『国際紛争』(有斐閣,2005.4),第6章を参照されたし.

ますたーあじあ in mixi


 【質問】
 トミー・リー・ジョーンズの「告発のとき」という映画を見てきました.
 作中で,
「国旗を上下逆さまに掲揚するのは,『緊急事態,助けてくれ』というサインだ」
という台詞があったのですが,これは本当にあるのでしょうか?
 上下逆にしたのが分かりにくい国旗や,上下もへったくれもない国旗などでは,どうするのでしょうか?

 【回答】
 現在は遭難旗はオレンジ地になります.
 中央に黒の四角,丸もしくはその双方を置くこともあります.
 そう言った信号旗の無い時代は,赤旗を用いる,もしくは普通の旗を上下逆に結んで掲げました.

 現在の天地逆掲揚は,哀悼の印,会戦の敗北,忌み嫌う外国指導者の来訪などの政治的な事件や状況による抗議の印としてが多く,先述の様に遭難旗としての使用は稀です.
 その原因は,貴殿が書かれて居る様に,天地逆にしても正常時の意匠と同じになるものが多いからです.

眠い人 ◆gQikaJHtf2 in 軍事板
青文字:加筆改修部分


◆◆中立


 【質問】
 非武装中立というのは可能ですか?

 【回答】
 不可能です.
 国際法上は,中立とは,非戦争当事国が交戦国に対して有する国際法上の地位を言います.
 中立は交戦国に対して黙認義務と公平義務を負うこととなります.
 非武装では,その義務を果たせません.

(ドクトル斎木 in 某BBS)

      黙認義務
 中立国は,交戦国が中立国の船舶などを臨検し,戦時禁制品を没収するなどの措置を執ることを,黙認しなければならない.

      公平義務
 中立国は,すべての交戦国に対し,同じ扱いをしなければならない.

 で,黙認義務の方はともかく,公平義務の方は,ある程度の実力がないと果たせません.
 交戦国の一方が,「お前の国の港を自由に使わせろ,さもなければ武力占領する」などと言い出したときに,それを跳ね返すのは困難ですから.

軍事板

 余談ですが,1970年代,社会党最大派閥の領袖であった向坂逸郎元九州大学教授は,こう主張してました.
 社会主義政権が樹立出来た暁には,自衛隊は解散せずに,ワルシャワ条約に加盟すると!
 社会党の非武装中立論も,9条堅持の主張も実態はこんなものだと.
 西側に,日本が属する時は,武力も持たずに,社会主義陣営に属するなら武力を持つことは良いと.

 向坂逸郎は,経済学者です.こうも主張しておりました.
「将来的に日本は,コメコンにも加盟すると」.

 とんだ学者馬鹿の典型ですな!

 通称「白旗赤旗論」というのもありました.
 マルクス経済学者の森嶋通夫が唱えたもので,もしソ連が攻めてきたら白旗を出し,そして赤旗を掲げれば日本は助かるという考えだそうです.
 なんのための「非武装」であるかが,よく理解できますね.

軍事板

 (選挙演説)
「軍備は戦争の原因になります! 私は軍備増強に断固反対します!」

 (中国の建国50周年”軍事”パレードに招待され帰国後,空港でのインタビュー)
記者「自らの信条として,中国の軍拡に反対の意は表明してきましたか?」
土井「・・・・・・(シカト)」

 ・・・・・・これだもんよ(笑)

軍事板



 【珍説】
↑ちょっと見てわろたw
非武装中立がトンデモなのは同意だがこれは理屈になってない,というか非武装中立論をわかってないw
「公平義務」で侵略を跳ね返すって何よwwwトンデモ国際法www

新新FAQでくわしくつっこまれてるよ

軍事板
青文字:加筆改修部分

 【事実】
>「公平義務」で侵略を跳ね返す

 どこをどう読めばそのような解釈になるのか理解できません.
 誤読をもとに難癖をつけられても困ります.

>「公平義務」で侵略を跳ね返すって何よwwwトンデモ国際法www

 公平義務と言うのは中立の条件と,上述回答文の中にも書いてあるだろ?

http://ja-tec.com/C/C02/content11637.html
>中立とは,交戦国が中立国を戦争に巻き込まない法的義務を負うことを
>本質とするものであった.そして,中立国が負う公平義務は,中立国が
>戦争に巻き込まれない法的権利を享受するための対価・条件と位置づ
>けられたのである.

 東大の報告書にも書いてある,中立国の基本条件.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 永世中立に海軍力は必要なの?
 もっと詳しい解説してくんない?

 【回答】
 基本的なことですが,中立を宣言すると言うことは,自国の責任において,他のいずれの国にも,自国を軍事利用させないと言うことです.
 言い換えれば,他国の軍事干渉を,完全に自力排除する義務を負うということです.

 例えば日本列島は米露中に直接囲まれた地理的位置にあり,戦略的に大変な利用価値があります.
 そのうえ,高い技術力と経済力,優秀な人的資源に恵まれてい,また湾港等のインフラがが完備されていて,兵站基地・兵力策源地として最適です.

 西太平洋の要として(日本が何国と同盟するかで,勢力図が根本的に変わります),
 他国から干渉されぬ体制を堅持するための直接防衛力,あるいは,貿易立国として
 独力で長いシーレーンを担保する防衛力が必要になってきます.
 その為には,巧緻な外交政策と有力な海洋海軍力が,絶対に必要でしょう.

 その意味で,中立宣言をするためには,相当な海軍力を用意しなければならない場合も起こりえます.

従軍記者 in 軍事板


 【質問】
 武田徹の『「核」論』にこういう文章があるんですけど

(上略)
 マッカーサーに
「何があっても日本はアメリカが守る」
と言われて胸をなで下ろした.
「日本は米国の同盟国である必要はない.中立国であればよい.日本は東洋のスイスであれ」
という言葉に感激した.
 確かに特にスイスのような絶対的永世中立国の場合は,周辺国と条約を締結し,自国から軍事力の行使をしないかわりに自国が第三国から攻撃を受けた際に,軍事力で守って貰う集団的自衛権の考えをその中に盛り込んでいる.
 これは日米安保条約と通じる構図だ.

 他ではこんな話,聞いたことないんだけど,これホントですか?
 僕は,スイスはどことも軍事同盟結ばず,自国の徴兵制だけで国土防衛を果たしてきたと思ってたんですが.

 【回答】
 正しいかどうかと言えば正しくない.
 集団的自衛権というのは,一国が攻撃を受けたら共同で反撃するということ.
(日米同盟は厳密にこれに当てはまっているのか?)
 つまり,一国が攻撃されたらその国を防衛し,共に戦う義務がある.

 スイスは片務的な条約を結んでいるわけではない.
 スイス(永世中立国)は,中立を守る義務がある.
 自国から戦争を仕掛けることが出来ない(のちにハーグ不戦条約で普遍化する).
 同盟を結ぶことは出来ない.
 他の諸国の戦争に参加することは出来ない.

 これに対して,
他の条約参加国はスイスの中立を保障する義務がある(条約不参加国には関係ない).この義務はスイスへの義務というより,他の条約参加国への義務.
スイスを中立侵犯しない義務はあっても,防衛する義務はない(したがってスイスは万が一のため独力で侵略を防ぐ必要がある).

 スイスは(のちに永世中立国となり侵犯されるベルギーやオランダも)戦略的要所なので,占領されると困る.
 またスイスがいずれかの国と同盟されても困る.
 だから互いに攻められないことにしておいて,なおかつスイスはどことも同盟出来ないようにしておいたってこと.
 スイスを軍隊が通行するという軍事オプションを,禁じ手にするのが主眼なわけ.

 スイスの場合,ウィーン議定書調印国=1815年当時存在したヨーロッパの全ての国(トルコ除く)とその継承国家,に義務があるが,事実上ヨーロッパの大国(英仏墺普露,のち英仏墺独伊露)間の義務.
 ヨーロッパ・コンサートといって,19世紀欧州では5ないし6大国が小国の独立保障とか領土画定とか相互の植民地の権利とかを決めて,それに違反する国は村八分(戦争)にすることにしていた

 ちなみに戦後,オーストリアの永世中立はこれと違い,東西どちらの陣営にも属さないというオーストリアの義務だけが存在する条約だったはず.


 【質問】
 B-2はイラク戦争などで,ホワイトマン基地から空中給油をしながらイラクまで飛んでいったそうですが,この時他国の領空を侵犯してるわけですよね?
 どっかの国から抗議されるということはないんですか?

 【回答】
 作戦機の領空通過を認めると局外中立ではなくなるので,巻き込んで良い同盟国以外は,相手国に配慮してそう言う事はしません.
 同盟国でも事前に領空通過許可を求めるのが通例です.(「作戦機の領空侵入に気が付かなかった」振りをしてもらうと言う方法も有るが)

 B2ではありませんが,作戦機が領空通過を拒否されたケースもあります.

 例えば,1986年4月の西ベルリンディスコ爆破事件とギリシア上空でTWA機が爆破された事件の後,この事件をリビアのテロ活動と断定した米国は,リビアに対する空爆を決定しました.
 が,英国から発進したF-111は,フランス及びスペインに上空通過を拒否されました.
 結局は大西洋上を大きく迂回して,多数の給油機から支援を受けてリビアを攻撃しました.
 ちなみにこの事件は,空母機動部隊の有用性を示す一つの例としてよく引き合いに出されます.この時,リビア沖合シドラ湾には,空母コーラル・シー戦闘群が待機しており,F/A18やA-6が何時でも攻撃を掛けれる状態にあったからです.
 艦隊航空力は長時間の待機に対応でき,即応性も高いという事ですね.
(海軍機は,予定を大幅に遅れた空軍機と,タイミングを合わせてリビア攻撃に参加しました)

 また,米国のエルドラドキャニオン作戦の際はフランス領空の通過が出来なかったので英国の基地からリビアまでは大西洋まで迂回.
 イスラエルによるサンダーボルト作戦時は,ウガンダまでケニアの領空通過許可がギリギリまで得られませんでした.

軍事板


◆◆◆コスタリカ

 【質問】
 コスタリカは非武装中立国だと聞きましたが?

 【回答】
 準軍隊があり,また,実質的には中立国とは呼べない.

 1995年のMilitaryBalanceでは,現役7500名

市民警備隊:4300名(海兵隊400名を含む)
 国境治安コマンド2個(北部,南部),国境警備大隊5個,対ゲリラ戦大隊2個,
 市民警備コマンド(大隊)7個
海兵隊400名
 内海哨戒艇7隻(32m級高速艇×1,小型哨戒艇×1,100t以下×5,小艇×10,
固定翼機
 セスナ206×4,コマンダー680×1,O-2×3,PA-23×2,PA-28×3,PA-31×1,
 PA-34×1
ヘリコプター
 H-500E×2,FH-1100×1
地方警備隊(行政警察省):3200名(小火器のみ)

(眠い人 ◆gQikaJHtf2)

 コスタリカは1983年に永世非武装中立を宣言したが,その一方で親米反共という外交方針を明確に打ち出しているため,一部の国際法学者はコスタリカの永世中立を政治宣言以上のものと認めていない.
 2003年にパチェコ大統領がアメリカ合衆国によるイラク攻撃を支持したため,中立の不足は一層あらわになった.
 政治外交の基本方針はアメリカ合衆国との協調および反共産主義である.
 このため,1941年の真珠湾攻撃に際しては,アメリカに先駆けて枢軸国側に宣戦布告を行い,近年でもアメリカのアフガニスタン・イラク攻撃を支持している.
 また,反共主義の観点から,中華人民共和国とは国交を樹立していない.※

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%AB

 ※その後,国交樹立したみたいですよ.
http://japanese.cri.cn/151/2007/06/07/1@95237.htm

名無し初年兵 in FAQ BBS



出典:『太陽の少女インカちゃん』


 【質問】
 コスタリカの有事法制(緊急事態法)はどうなっているの?

 【回答】
 コスタリカは,憲法12条で自衛権に基づく軍隊の復活を可能にしています.
 後は政令などで対応していたようです.
 このため,40年代の危機には私兵が,80年代には準軍隊(市民警察の中の「稲妻大隊」(Batallon Relampago),国境警備隊)がかなり自由に作られています.

 94年に,市民警察憲章を制定し,警察の政治活動への不参加とプロフェッショナル化が改めて謳われました.
 また,96年には市民警察の統合・再編が行われ,内務省配下の国境警備隊,地方警察が公安保安省の下に管轄が移り,これらは「公共保安隊」に変わっています.

(眠い人 ◆gQikaJHtf2)

 【参考サイト】
 「最近のコスタリカ評価についての若干の問題」


 【質問】
 コスタリカは低武装国家では?

 軍事費がGDPに占める割合,軍人の数が人口に占める割合,ともに日本並みの低武装国家です.

 さらにコスタリカの場合,”軍(警察ですがこの場合はあえて軍と呼びます)”は警察としての役目も果たさなければならないので,日本よりも低武装といってかまわないのでは?

Posted by 名無しT72神信者 at 2005年12月16日 22:38:10

 【回答】
 軍事費101(100万ドル)
 GDP13,409(100万ドル)
 軍事費がGDPに占める割合 0.75%

 軍人の数        8,400
 人口          430万人
 軍人が人口に占める割合 0.19%

 以上外務省のHPにあったデートを元に計算した.

 軍事費が占める割合は明らかに日本より低い.
 軍人が人口に占める割合はわずかに日本より高い.

Posted by 名無しT72神信者 at 2005年12月17日 11:52:52

 さらにこの兵力でどのくらいの戦線(国境線)を防備しているのか,その土地で行動するために特別に必要な装備は無いか,また,その装備をそろえるのに予算はいくらかかるのか,予算を着服しているものが居ないか・・・など,多くの事項について計算しないと正確な値は出てきませんが,コスタリカ共和国が中米においてかなり有力な戦力を保持していることは明らかです.

Posted by 名無しT72神信者 at 2005年12月17日 17:33:12

>軍(警察ですがこの場合はあえて軍と呼びます)”は
>警察としての役目も果たさなければならないので

 それはパナマ国家保安隊も同じ事だよ.
 ちなみにパナマ国家保安隊は中米大陸7ヶ国(大陸と地続きのグアテマラ,ベリーズ,ホンジュラス,エルサルバドル,ニカラグア,コスタリカ,パナマ)中,最強戦力を保有する.

Posted by 名無しT72神信者 at 2005年12月16日 22:57:03
Posted by 名無しT72神信者 at 2005年12月17日 01:12:22

 中米の諸国家の軍事力について,「ミリバラ」を丸写しにしてるサイト置いときますね.
http://defenceworld.fc2web.com/index.htm

Posted by 唯野 at 2005年12月17日 20:45:38

「週刊オブイェクト」コメント欄,2005年12月14日付
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 以下の記述は信頼できますか?

 特に「警察=軍隊(軍事力)」と規定している部分は重大な誤認です.
 日本の警察を軍事力と規定する人はまずいないと思いますが,それと同様です.
 コスタリカの警察は,行政警察(いわゆる普通の警察),司法警察(日本でいう警察と検察を足して2で割ったようなもの.刑事犯罪の告発後捜査を担当),交通警察に分けられます.
 どれも,その組織・武器・技術・訓練などは警察のそれであり,日本の警察が軍隊でないのなら,コスタリカの警察も軍隊ではないと断言できるものです.
 また,ミリタリーバランスを引用してネットに情報を流しているものをよく見かけますが,ミリタリーバランスの記述そのものに問題があります.
 コスタリカには軍隊がないため,軍事費が計上されていません.
 そのため,参考として警察にかかる費用を軍事費として計上しています.
 これを,実態を見ずに引用しているケースが多いのです.
 それどころか,数字自体も間違っている年もあります.

 このように,ネット上で流れる情報に関しては,それだけでは事実かどうか判断できないものがほとんどです.
 一次資料にあたるか,実際に目の当たりにするかしなければ,その実態は分かりません.

りっきー in mixi

 【回答】
 非常に怪しいと言わざるをえません.

 まず,例えばオーストリアやフランス,のように,軍と警察が未分化な組織は幾つもあります.
 これは,そもそも軍隊が治安維持を担当していた歴史の残滓です.
 また,普段は警察任務についていても,有事には軍務の一翼を担う組織も,中国,米国,ドイツ,ロシアなど多くの国が持っています.
 コスタリカの場合も,ただの警察にしてはかなりの重武装ですし,過去には内戦鎮圧に出動した「戦闘経験」もあります.

 また,上述の「りっきー」なる「人物に以下のような質問

 a)1955年のビラ・ケサダの戦いに武装警察隊が投入された事実は,では幻ですかな? それとも「米帝の情報操作」?
 ちなみに1983年の中立宣言後も,この武装警察が解散したという事実は見当たりませんが,もしそう主張したいのでしたら,論拠を示してください.

 b) 武装警察が準軍隊とは呼べないほど軽武装であると主張なされたいのでしたら,現在のコスタリカ武装警察の装備を論拠つきで示してください.
 「機関銃,ロケットランチャー」は幻ですか?

 c) 「3」で示した,軍と警察の分化に関する当方の反論に対しては,再反論はないということで宜しいわけですか?

 d) 「無意味でくだらない争いの場にしたくない」と書きながら,他人を煽りと決め付ける態度は,無用な反感を買うものであり,言行不一致ではありませんか?

……をしたところ,その返事は,

すべての疑問に対する回答の詳細は,近日発刊予定の『コスタリカを平和学する!』(法律文化社)に載っている警察の章が答えてくれます.

n mixi

というものであり,また

内戦鎮圧とか言ってますが,一体いつの時代の話ですか?もしかして48年の話ですか?48年なら単なる内戦で,反政府武装勢力と当時あった正式の軍隊が戦ったわけですが?

n mixi

とも述べています.

 前者はつまり,mixiにおける「りっきー」の自己紹介を読むに,
「俺の本が俺の言っていることのソースだ」
ということであり,そのようなものが「ソース」として適当であるかは言うまでもありません.
 つまり,「りっきー」はソースというものについての理解自体が足りないと言わざるをえません.

 後者はつまり,1955年のビラ・ケサダの戦いを「りっきー」が知らなかったということを示しており,そうだとしますと,いったいどんな「現地取材」をしたのやら?ということになります.

 それにしても,もったいない話です.
 せっかく現地を取材しているのに,彼のような態度では,それが何にもなりません.
 反論やツッコミに対して,言い訳並べて
「話はしたくない」
だの,
「自分の本がソースだ」
などという態度が,せっかくの労力の価値を無駄に下げています.
 彼の本を読んではいませんので,断言はできかねますが,そのような態度が,自己検証を伴う客観性をもって調査取材してきたとは,非常に考えにくいものがあります.
 事実,1955年のビラ・ケサダの戦いもご存知ないようでは,ちゃんとした取材をしたのか?と首をかしげずにはいられません.

 また,彼の報告が正しいと仮定しますと,現在のコスタリカは完全に国防を米州機構に頼っていることになりますが,米州機構がコスタリカの国益に反する決定をしたときには,いったいどうするんでしょうか?
 さらに,コスタリカ憲法では有事の際の軍備の保持を認めているのですが,仮に「りっきー」報告が正しいとしますと,それが事実上不可能になります.
 それもまた不思議ですね.

 このトピックのゼロ・ポストを見ますと,「コスタリカ=平和のモデル」という固定観念が「りっきー」にはあるようですが,そのような確信バイアスに基づく取材ですと,いくら現地に長くいても,正しい報告ができるということを保証しません.
 そのことは,ペシャワール会の中村医師のトンデモ報告の数々を見れば分かるとおりです.
 確信バイアスの目には,北韓が地上の楽園に見えたりもするのです.
 ですからまず,「りっきー」は現地に行ったことを誇るより,客観取材のノウハウを身につけたほうがいいでしょう.

 なお,念のために申し上げておきますが,当方は,証拠さえ確かであるのなら,中村医師だろうが小林よしのりだろうが,その主張を信頼することに何のためらいもありませんよ.

 そもそも,「現在の」コスタリカが仮に本当に軽武装だとして,それに何の意味があるというのでしょうか?
 それは単に,周辺諸国からの脅威が著しく低い場合,軍備は最小限度で済むという,昔からの軍事的常識を証明しているに過ぎません.
 ニュージーランドやアイスランドが国防を最小限度にとどめているのと同じことです.

 にも関わらず,そのことを鬼の首でも取ったかのように騒ぐ者は,軍事的素養が欠けていると判断せざるを得ません.
 そのような人物の,軍事に関係するレポートに価値を見出すことは,非常に困難でしょう.

 いつ,いかなるときでも非武装平和の理念が成り立つことを,コスタリカの例をもって証明したいと欲するならば,軍事的脅威が増大していた時代,例えばコスタリカとニカラグアの関係が悪化していた時代においてどうだったかを考察すべきです.

 現在のコスタリカの「ほぼ非武装(仮に本当だとして)」から何か意味を引き出せるとすれば,
「アメリカに頼らないと非武装もできやしない,というシラけた現実がある」
ということだけでしょう.

消印所沢 n mixi・改

 そもそも国同士の事は全て相対的であり,その国がどう宣言するかなど大した意味は無いのですがね.
 あー我が国ににも,軍隊は無いですなぁ(笑)
 コスタリカに軍が無いか判断するのは他国(特に周辺国)であり,コスタリカ自身ではない.

 あと中南米は割りと特殊でね,他国より自軍のクーデターの方が怖いって側面もある(笑)

EF63-24 n mixi

 だいたい.あの国じゃそこいらの強盗までがライフルを持っているのに,どうして市民警備隊の最強武器が拳銃なんだ?
 警備隊の武装はM16ライフルどころか,M60マシンガンまであるよ・・・

 中米大陸7ヶ国中,第3位の戦闘力を保有するコスタリカの事が「非武装」なら,日本も非武装と言えてしまうでしょうね.

 ちなみに「軍隊が無い」っていうならパナマも軍隊無いですよ.国家保安隊という名前ですから.
 しかし戦力的には中米大陸で最強国家です.

JSF n mixi

 なお,コスタリカの軍備について纏められているブログがありましたので,そこから引用してみます.

コスタリカの軍備(2005年度)

アメリカとコスタリカの武器取引について,2005年度の報告書が出ています.
DCSについてはこちら
航空機予備部品 - 4,039,207
防弾ベスト(個人用) 5 1,840
弾薬(22口径〜50口径) 1,815,100 166,333
爆発性弾薬 161,250 22,352
電子機器 - 284,389
グレネードランチャー 1 555
拳銃 1,503 581,947
拳銃用部品 40 1,000
レーダーシステム構成部品及び予備部品 2,600 4,300,000
ライフル(民生用) 468 365,233
小火器予備部品(ライフル及びカービン銃) 400 12,060
合計 9,774,916
単位:ドル
軍事技術に関連する技術移転についてはこちら
カテゴリー 詳細 金額
VIII 航空機及び関連機材 5,794,469
VIII,IV 誘導兵器および爆弾 18,250,000
XI 軍事電子機器 8,225,000
XI,XV 宇宙関連 25,600,000
合計 57,869,469
また,IMETによる人的交流はあいかわらず続いているようです.詳細はこちらですが,2名ほどウエストポイントに留学しているようです.しかしながら派遣元がコスタリカ陸軍と書かれているのは,役所の人,うっかり本音が出たというか何と言うか.
コスタリカ政府はアメリカ政府に抗議すべきですね(棒

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