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◆◆◆タイ Thaiföld
<◆◆東南アジア Délkelet-Ázsia
<◆イスラーム過激原理主義テロ 目次
<テロリズムFAQ目次
「Bangkok Post」◆(2013/03/23) Narathiwat bomb hurts 5 troops
「Bangkok Post」◆(2013/05/11) Militant killed in Narathiwat clash
「Bangkok Post」◆(2013/05/14) Woman hurt by Pattani grenade blast
「Bangkok Post」◆(2013/05/23) Ranger, militant die in far South clash
「Bangkok Post」◆(2013/05/29) Army outpost in Narathiwat attacked
「Strategy Page」◆(2013/05/14) THAILAND: Safe Haven Turns Into A Trap
「The Nation Thailand」◆(2013/05/23) Ranger volunteer, suspected insurgent killed in Narathiwat clash
「The Nation Thailand」◆(2013/05/24) Urgent: Five rangers killed in bomb attack in Pattani
「The Nation Thailand」◆(2013/05/25) Five soldiers injured in southern attack
「The Nation Thailand」◆(2013/05/25) Four policemen injured in Yala bomb attack
「VOR」◆(2012/01/13)在タイ米国大使館,テロを警告
「VOR」◆(2012/01/16)レバノン人のテロ容疑者 タイ内務省に爆発物の保管場所教える
「VOR」◆(2012/02/24)イラン タイでの14日の爆発事件との関与を否定
「VOR」◆(2012/03/31)タイ南部でテロ 増える犠牲者
「VOR」◆(2012/04/02)タイで新たなテロの可能性
「VOR」◆(2012/08/31)タイ南部でイスラム教分離主義者による多数のテロ
> タイ最南部ナラーティワート,パッターニー,ヤラーの各県では金曜朝,マレーシアの独立記念日にあわせ,最南部3県の分離独立とスルタン国家樹立を狙うイスラム分離独立主義者による40件以上のテロが発生.
> 過激派は最南部3県で爆発物の設置やタイ国旗の焼却・マレーシア国旗の掲揚などを行い,ぶーサートゥー・パッターニー独立統一戦線機構設立55周年とマレーシアの独立記念日を祝っている.
> 爆発物の大半は治安部隊により無害化されたが,ナラーティワート県ではフガス地雷の撤去作業中に兵士が負傷している.
「VOR」◆(2012/10/22)タイ南部 襲撃事件 3人死亡
「VOR」◆(2013/02/25) タイ フェスティバルで手榴弾爆発 50人負傷
「VOR」◆(2013/05/18) タイ南部のホテルで爆弾テロ 1人死亡
「VOR」◆(2013/06/29) タイ南部で爆発物により軍人8人が死亡
「Washington Times」◆(2012/02/18)Thai police search for two bomb-making suspects
「孤帆の遠影碧空に尽き」◆(2012/04/02)タイ深南部,止まぬテロ 繁華街で連続爆弾テロ
「孤帆の遠影碧空に尽き」◆(2012/08/02)タイ “忘れられた戦争” 解決の糸口がつかめない深南部のテロ
「孤帆の遠影碧空に尽き」◆(2013/02/17) タイ深南部 依然続く「ほほ笑みの国の忘れられた紛争」 大規模衝突も発生
【質問】
タイにおけるムスリムの種類は?
【回答】
少数派シーア派を数に入れないとしても,タイには少なくとも3タイプのムスリム共同体が存在する.
1. 半島部タイ東部のナラティワート,ヤラー,パッタニーの諸県に住むマレー・ムスリム
国籍はタイだが,マレー人のアイデンティティを持つ.
彼らのタイへの完全統合の問題は,タイの対宗教マイノリティ政策における長年の課題である.
2. 南部サトゥン県のムスリム
タイ語を話し,タイ語理解力が高いことから,タイ社会へ順調に統合化されていると考えられている.
3. 大バンコク圏のムスリム社会
【参考ページ Referencia Oldal】
石井米雄『アジアにおけるイスラーム法の移植』(成文堂,1997), p.180-181
【質問】
タイにおけるイスラーム政策上の問題点とは?
【回答】
公式組織が仏教のそれを真似たものであり,タイ・ムスリムの現実と適合していない.
ムスリムの組織に当たる中央委員会と仏教サンガとには,次のような組織上の類似点がある.
ムスリム組織
チュララーチャモントリー
↓
全国ムスリム中央委員会
↓
各県ムスリム委員会
↓
各モスク・ムスリム委員会
仏教徒組織
法王
↓
大長老会議
↓
管区・県・郡・村の各サンガ長
最高位のチュララーチャモントリーは,職務として10人からなる「全国ムスリム中央委員会」(サンガ組織の大長老会議に相当)の議長となる.
ムスリムは各人それぞれ特定のモスクに登録されなければならないが,この制度は1902年のサンガ統治法(第15条)で意図されたものと同様である.
サンガ統治法によって,中央政府は全国の僧侶を管理下に置くことができたわけだが,ムスリム管理もそれと同様だった.
しかし,このムスリム管理方法では,各モスクにムスリムを登録することが困難であり,さらには登録制度は実行府可能であるという不満が指摘されている.
イスラームに関するこの勅令は,イスラームと仏教との宗教組織上の相違を無視して制定されたからである.
南方上座部仏教は本質的には出家仏教であり,出家僧侶の階級組織が存在する.
一方,イスラームでは出家と在家の区別がないことを特徴とする.
F. Stanley Lusbyは,次のように指摘する.
「イスラーム共同体に関して,出家と在家を区別していうことは,イスラームの宗教社会上のダイナミクスを明らかにすることにはならない.
いや,むしろ歪める区別をすることになろう」
【参考ページ Referencia Oldal】
石井米雄『アジアにおけるイスラーム法の移植』(成文堂,1997), p.179-180
【質問】
タイで特にテロが激化している地域は?
【回答】
タイの最南部にある「バタニー県」「ヤラー県」「ナラティワート県」では,
昨年1月頃からイスラム過激派によるテロが激化しており,現時点で1000名以
上の死者が出ています.
タイ当局はこれらの地域に「非常事態令」を敷いてい
ます.
この3つの地域ではイスラム教徒が多数を占めており,タイからの分離独立を
求めているといわれていますが,テロ活動には分離派だけではなく,マフィア
や国際テロ組織が関与しているといわれています.
また,隣国マレーシアに逃げ込んだ容疑者の引渡しを巡って,両国間に緊張関
係も生まれています.
→この3県は,タイ全体の2割強の天然ゴムを生産していますが,この影響で生
産は4年ぶりに減産の見込だそうです.
ゴム園で働く出稼ぎ労働者も,テロを恐 れて数万人が去ったそうです.
▼ また,
「テロ組織発祥の村へ,タイ深南部従軍取材」
newsclip,2007/12/28 (14:39)
という記事によれば,分離独立派組織は地の利を生かし,山がちな農村地帯を拠点とする場合が多いという.
また,陸軍の重点作戦により,拠点を移動しつつあるという.
以下引用.
[quote]
タイ深南部の分離独立派組織は,山がちな農村地帯を拠点とする場合が多い.
ヤラー県バンナンサター郡,ナラティワート県ルーソ郡,ラゲ郡,スンガイパディ郡などで,森が深く身を隠しやすい,周辺地域とつながる道路が整備されて移動しやすい,という地の利がある.
バンナンサター郡はこれまで,ヤラー県内の主要拠点としてテロが続いていたが,陸軍の重点的な作戦展開により,テロ浸透地域の「プーンティーシーデーン(赤色地域)」から安全地帯の「プーンティーシーキオ(緑色地域)」に変わりつつある
(http://www.newsclip.be/news/20071022_015920.html).
これによって拠点が移動し,ルーソ郡,ラゲ郡,スンガイパディ郡にテロメンバーが集結しつつあり,これらの地域では過去数カ月で数百人のテロ容疑者が拘束されている.
[/quote]
テロ鎮圧に当たるタイ陸軍兵士
(こちらより引用)
▲
【質問】
タイのイスラーム過激派組織と麻薬との繋がりは?
【回答】
高部正樹によれば,ミャンマーからタイ北部への密輸ルートがタイ当局によって厳重に警戒されるようになったため,2005年前後からアンダマン海を南下してタイ南部に至る南部ルートが新たな密輸ルートとして浮上しており,その南部ルートはイスラーム過激は組織の裏ルートが用いられているという.
そこでは,より安全な密輸ルートを確保したい麻薬組織と,麻薬ビジネスに関与することで活動資金を手に入れたいイスラーム分離過激派組織の思惑は完全に一致しているという.
そしてその麻薬は日本にも入ってきているため,日本当局もタイに対し,薬物分析の技術移転,薬物情報システムの構築・運用支援,薬物取締り専門家派遣などの協力を行っているという.
詳しくは『SAPIO』 2005/6/22号,p.21-22を参照されたし.
【質問】
タイ陸軍は,どのような対テロ活動を行っているのか?
【回答】
「テロ組織発祥の村へ,タイ深南部従軍取材」
newsclip,2007/12/28 (14:39)
という記事によれば,精鋭部隊「陸軍騎馬隊」がタイ深南部ルーソ郡に展開し,パトロールの他,托鉢僧や教師・生徒の警護,巡回医療などを行っているという.
以下引用.
[quote]
北部ペチャブン県を本拠地とする,タイきっての精鋭部隊といわれる陸軍騎馬隊.
実際に馬を扱う騎馬部隊ではなく,(タイ語で鉄の馬と表現する)機甲部隊の1大隊(800人規模)が,ルーソ郡に展開する.
地元出身者の多い陸軍レンジャー部隊も同郡に駐屯しているが,たいていはこの騎馬隊の指揮下に組み込まれる.
警護を兼ねて仏教寺院を駐屯地としているほか,周辺地域に何カ所か宿泊施設を兼ねた警戒ポストを設けている.
深南部は現在,兵力の増強で既存の駐屯地が満員となり,地方から派遣された部隊の多くは,仏教寺院,人の少ない公共施設,切り開いた林の中などを,駐屯地代わりにしている.
騎馬隊の1日は夜明けの5時ごろに始まる.
托鉢で村を回る仏教僧侶の警護だ.ピックアップトラックに僧侶を乗せ,前後に2人乗りバイクの兵士が護衛に付く.在家者の自宅の前で僧侶を下ろし,托鉢中は数人の兵士が周囲を警戒する.
これが1―2時間.
托鉢の後は通学の生徒や教師の警護.ピックアップトラックやバイクで護衛したり,通学路に並んで警戒したりする.
托鉢中の僧侶や通学中の教師や生徒へのテロ行為が続く中,朝夕の警護は軍の負担となっているが,地元住民の理解を得る機会でもある.
「武力によってテロを鎮圧することだけでなく,一般住民の理解を得て密接な関係を築き,テロを根底から無くすことが,軍の重要な任務」(深南部を管轄する陸軍第4軍管区広報)
なのだ.
日中は郡内をパトロールする.
深南部では,分隊を行軍させて警戒する陸軍部隊があるが,ここでは騎馬隊らしく,武装ジープ,装甲車,バイクなどでの巡回となる.
さらに部隊に軍医がいることから,週3―4カ所のペースで巡回医療を行う.
毎回数十人から100人ほどの患者が訪れ,数時間で終わる日もあれば,1日中かかるときもあるという.
これも地元住民との意思疎通を目的とした作戦のひとつだ.
軍と警察の微妙な関係
夕方から翌朝にかけては,警察との連携による警戒や,内務省や軍の指揮下で村人が武装して結成する自警団の見回りなどが任務となる.
特に警戒が強まるのが三さ路や十字路などの交差点だ.
テロ犯にとって複数の逃走ルートの確保が可能なことから,交差点一帯はテロのターゲットとなりやすい.
ただ,この日の警察との共同警戒に関しては,
「軍と警察の連携が見受けられない」
というこちらからの指摘を受け,とりあえず体裁を整えたという感が強かった.
[/quote]
プレゼンスの誇示と住民宣撫を兼ねた活動を行っているという点では,極めて常識的ではないかと.
ただし,托鉢僧の警護という点においては,宗教的不公平感を同地のイスラーム教徒に与えることになりはしないかという疑問を持つ.
【質問】
対テロ活動において,タイ陸軍と警察との協力関係はうまくいっているのか?
【回答】
「テロ組織発祥の村へ,タイ深南部従軍取材」
newsclip,2007/12/28 (14:39)
という記事によれば,必ずしも円滑ではない模様.
・突発的なテロの際には,両者の役割分担があいまい
・兵士(南部以外),警官(地元民)の出身の違いによる隔たり
があると指摘されている.
[quote]
軍と警察は牽制しあっているように見受けられる.
テロ容疑者の摘発など作戦の初期段階から軍と警察が協力するときは,それなりの連携がみられるが,突発的なテロの際には,両者の役割分担があいまいとなる.
ナラティワートには陸軍のほか海軍も存在し,関係をより複雑にしている.今回の取材中も近辺で銃撃戦が起きたが,軍と警察の協力はみられなかった.
兵士,警官の出身の違いによる隔たりも感じられる.兵士たちはいわば「タイ本土」から送り込まれており,「タイ人」という意識が強い.
言葉も通じない深南部に違和感を覚える.
一方の警官は地元もしくはタイ南部出身がほとんどで,地元の言葉を話し,
「軍より地元のことを理解している」
という自負がある.
地元出身者が多いレンジャー部隊も,自らが陸軍に組み込まれていながらも,陸軍のことを(レンジャー部隊の黒を基調とした戦闘服に対して,)「タハーン・キオ(緑の軍)」と呼ぶ.
一方で,タイ各地から送り込まれる兵士たちが,地元のイスラム女性と結婚するケースも増えているという.
[/quote]
前者は法整備でなんとかなるだろうが,後者は人材交流でも解決はそう簡単ではないのではないかと.
【質問】
タイの緊急勅令とは?
【回答】
タイのタクシン政権は19日の閣議で,イスラム分離独立派武装勢力によるテロ活動が続く深南部3県を「非常事態地域」に指定しました.
首相に非常時の治安指揮権を付与した緊急勅令に基くもので,取り締まりにあたっては,令状なしの家宅捜索や電話盗聴,新聞の検閲が可能となります.
緊急勅令は,非常事態に接し,国王陛下が直接政治に対し権限を与えた大変大きな権威をもつものです.
現地情勢はかなり深刻なものとなっているようです.タイもテロの危険と隣り合わせにいます.
この勅令が出された直接の理由は,南部で2日連続の爆弾テロが起きたことにあります.
以下引用.
タイで2日連続爆弾テロ 南部ヤラで
【バンコク15日共同】タイ警察当局によると,同国南部ヤラ県ヤラの食堂で15日,爆弾が爆発,少なくとも4人が負傷した.
ヤラでは14日夜,市内各地で爆弾が爆発し銃による襲撃事件も発生,,20人近い死傷者が出たばかり.
いずれも南部の分離独立を求めるイスラム武装勢力による爆弾テロの可能性が高い.(以下略)
<タイ>テロ続く南部,首相に非常大権付与
タイ南部ヤラー県で14日起きた連続爆弾事件を受け,政府は15日,緊急閣議を開き,
タクシン首相に南部3県における非常大権を付与する緊急勅令案を決めた.勅令は国王に
よる署名を経て数日中に発効する見通し.
【関連リンク】
「タイの地元新聞を読む」:首相,戒厳令に代わり国内治安維持法を南部に適用
【質問】
タイにおいてイスラーム・ゲリラへの支持が広まらないのは何故か?
【回答】
2006/3/31付,「ストラテジーページ」の解説によれば,国王の存在が大きいという.
以下引用.
タイ南部はイスラム教徒が多く,イスラム・ゲリラが暗躍しているのだが,それでも圧倒的にゲリラへの支持が広まらない理由は,国王の存在である.
タイ国王は国民生活の改善のためのプロジェクトなどを行なってきた伝統があり,広く尊敬を受けている.
政治的危機に平和な方法で解決策を提示できる最後の権威としても広く認められている.
そういうわけで,王室の経営する南部の農業研究所とかはイスラム・ゲリラも手を触れない聖域になっている.
彼等は,王室の施設を攻撃した場合に農民から受ける反感を恐れてへまなことはできない.
イスラム教徒の農民にもタイ国王の権威は大きなものがあるので.
さすがはタイ,アッラーではなくてBhumibol国王のほうに忠誠を誓っているような.
君主制システムも捨てたものではないような.
【質問】
マハティールのタイ南部調停工作とは?
【回答】
マハティール・マレーシア元首相による,タイ南部のイスラーム教徒に対する和平調停工作.
主として反政府勢力指導者との対話により,和平の道を探ろうとしている.
タイ南部地方自治体の汚職を批判している点から見て,マハティールは中立的に立ち回る模様.
以下引用.
タイ南部で吹き荒れるテロ攻撃 マハティール氏が調停に乗り出す
【アルジャジーラ特約17日】
〔略〕
マレーシアの元首相,マハティール氏はこのほど,タイ南部開発和平共同計画を発表,タイ政府と協力して同南部問題の解決に乗り出す姿勢を示した.
マハティール氏は2005年11月から,自身が主宰する財団「プルダナ・リーダーシップ財団」と共に,タイ南部で活動する反政府勢力指導者約60人と会い,同計画実施に向けた方策を探ってきた.
同氏の子息で,マハティール氏と同計画推進に取り組むムクリス・マハティール氏は,アルジャジーラの取材に対し,
「反政府勢力が『独立勢力』と呼ばれているのは誤りだ.(話し合いを通じて)同勢力が分離独立にそれほど興味を示していないことが分かった」
と指摘した.
また,ムクリス氏によると,同勢力はそれとは逆に,分離独立が非現実的で,タイ政府との交渉を優先させる考えとみられる.
マハティール氏らの会談にはパッタニー独立統一戦線,パッタニー統一解放機構,パッタニー・ムジャヒディン運動の指導者らが参加した.
ムクリス氏はこれら3組織が最近の爆弾テロなどに参加していないとの見方を示すとともに,3組織と和平に向けた交渉を継続することが解決への突破口を開くと強調した.
さらにムクリス氏は
「3組織は交渉の席に就こうとしている.分離独立も望んではいない.これらのことからわれわれが和平に向けて仲介する余地はある」
と述べた.
ムクリス氏は
「交渉を通じて具体的な成果が生まれ,タイ政府が真しな姿勢をみせれば,3組織以外の勢力もこの交渉に参加することになるだろう」
との楽観的な見通しを明らかにした.
具体的な成果に関して,ムクリス氏は南部地域でマレー語教育を導入および宗教学校を増設することが挙げられると述べた.
タイではイスラム教徒の人口は全人口の約4%で,その要求は他の地域と同等の経済開発および政府サービスの実施だ.
南部地区はタイ国内で最も貧しい地域とされ,そこに注ぎ込まれる援助資金は,地方自治体の組織的な汚職構造に飲み込まれて雲散霧消しているのが実態だ.
ムクリス氏はこの汚職構造の改善が必要と指摘,さらに,
「そうすれば,援助資金が行き渡り,住民たちは開発を実感できるようになるだろう.住民の心をつかむ方策が必要だ」
と述べた.
〔略〕
(翻訳・ベリタ通信=志岐隆司)
【質問】
このマハティール調停は成功するだろうか?
【回答】
幾つかの障害がある.
もっとも,私見ではそれらは大した障害ではないように思われる.
以下引用.
とはいえ,このマハティール計画が実現されるには,いくつかの障害が待ち受けているのも確かだ.
第1が,この計画にマレーシア政府からの確約と支持を取り付けること.
マハティール氏とその後継者,アブドラ首相との確執が最近,メディアなどで報じられているからだ.
首相側近筋によると,アブドラ首相が同計画に支持を表明しても,もし,同計画が首尾よく成果を生んだ折には,その功績をマハティール氏が独り占めしかねないとの懸念が出ているという.
これに対しムクリス氏は
「そのような心配は不要だ.父の関心はこの地域に和平を維持することだからだ」
と述べ,政府側の不安を一蹴している.
第2が,タイの現政権からいかに同計画への支持を取り付けるかだ.
同計画は当初,先のクーデターで倒されたタクシン前政権に提案されたからだ.
タクシン政権は南部イスラム勢力との交渉が,その存在を事実上認めることにつながるため,消極的姿勢をみせていた.
南部の3組織は同計画に署名し,それをタクシン政権に送ったが,同政権はそれへの対応を明確にしなかった.
クーデター後,暫定政権側は同和平交渉を開始させる意向を示し,このためムクリス氏は和平計画が再び動き出すとの期待を表明している.
と同時に,ムクリス氏は,本格的な和平が南部で達成されるには,まだ多くの課題が残されているとも指摘する.
同氏は
「反政府活動だけではなく,犯罪行為,麻薬問題もある.密輸そして政治的および個人的な報復もある」
と話す.
それだけに,政治的暴力事件が解決されれば,その影響が広がり他にも及び,タイ南部で起きる他の暴力事件の終息にもつながるという.
〔略〕
(翻訳・ベリタ通信=志岐隆司)
タイ政府に,地方ボスへ睨みを利かすに足る程度のリーダーシップがあれば,成功の可能性は決して小さくはないと愚考する.
【質問】
BRNとは?
【回答】
「テロ組織発祥の村へ,タイ深南部従軍取材」
newsclip,2007/12/28 (14:39)
という記事によれば,パタニー・マレー民族革命戦線(Barasi
Revolusi Nasional=BRN)は,新パタニー連合解放組織(PULO)と並んで深南部最古の分離独立派組織だという.
1960年,ルーソ郡にて結成.
BRNはルーソ郡とテロとの結び付きは強く,同郡の80%以上が赤色地域もしくは要警戒の「プーンティーシールアン(黄色地域)」に指定されているという.
【質問】
PULOとは?
【回答】
PULO(バッターニ解放統一機構)は,1957年から武装闘争を行っているタイ南部のイスラーム系テロ組織.
勢力3000人.
1997年後半から再び活動を活発化させている.
PULOにウサマ・ビン・ラーディンが援助し,アジアにおける国際イスラーム統一戦線結成の足掛かりを図っているとの観測が出ている.
ソースは,松井茂〔軍事・外交評論家〕著「21世紀のグレート・ゲーム」(光人社文庫,2002/1/18),p.156から.
【質問】
スンガイコロク爆弾事件とは?
【回答】
タイ南部ナラティワット県スンガイコロクで2005/10/6起きた爆弾テロ事件.10名負傷.
以下引用.
タイ南部で爆発,10人負傷 爆弾テロの可能性も
【バンコク6日共同】タイ警察当局によると,同国南部ナラティワット県スンガイコロクで6日,カラオケ店前など2カ所で爆弾が爆発.地元の病院によると,10人が負傷した.
南部の分離独立を求めるイスラム武装勢力の犯行とみられる.
爆弾は携帯電話を使った遠隔操作によって爆発したという.
この日はタクシン首相が同県など南部を訪問しており,首相の訪問に合わせた爆弾テロの可能性もある.
【質問】
ワン切り爆弾テロとは?
【回答】
タイ南部で横行している新しい手口のテロで,“ワン切りコール”を利用して爆弾を爆破させることで,実行犯が判明しにくくしているもの.
以下引用.
ワン切り爆弾テロ 無関係の人に番号通知→かけ直したら装置作動 タイ南部
【バンコク=岩田智雄】イスラム武装勢力によるとみられるテロが続いているタイ南部で,爆弾を起爆させるために携帯電話への“ワン切りコール”を使った新たな手口が横行している.
フランス通信(AFP)によると,テロリストは不特定の携帯電話に発信元の番号を表示させてすぐに電話を切る“ワン切りコール”を行い,受信者がその番号に電話をかけ直すと,それが起爆装置の役割を果たし,別の場所に仕掛けられた爆弾が爆発する仕組みになっているという.
同国のソラアト情報通信技術相が明らかにした.
タイではプリペイドカード方式の携帯電話について,治安対策や防犯上の目的で今月十五日までにすべてのユーザーが名前や連絡先を登録することが義務付けられた.
治安当局が,携帯電話の発信元を捜査すると南部のテロとは無関係の市民に行き当たった.
警察当局はテロリストが身元を隠すために一般市民に起爆スイッチとなる携帯電話をかけさせているとみて,詳しい手口や被害状況などを調べている.
マレーシア国境に近いタイ南部では,イスラム武装勢力によるテロで,昨年一月以来千百人以上が死亡している.
【質問】
タイ南部連続テロ事件とは?
【回答】
2006/6/15~18にかけ,爆弾テロや銃撃事件が連続して発生した事件.死者4人,負傷者約30人.
イスラーム武装勢力説や麻薬組織犯行説,両者の共謀説がある.
以下引用.
爆発や射殺で7人死傷 タイで爆弾テロ
【バンコク18日共同】タイ南部ナラティワット県チョアイロンの駅近くの路上で18日,爆弾が爆発し,住民2人と警察官4人の計6人が重軽傷を負った.同県ナラティワットの路上では同日,地元政治家が射殺された.
南部での爆弾テロや銃撃事件の発生は15日から4日連続で,死者は計4人,負傷者は約30人となった.
捜査当局は一連の事件を南部の分離独立を主張するイスラム武装勢力の犯行とみている.
一方,地元紙は捜査当局の調べを基に,背後に大規模な麻薬組織の介在を指摘,麻薬がイスラム過激派の資金源となっている可能性も出ている.
タイ南部で連続爆弾攻撃,3人死亡・68人負傷
[ハジャイ(タイ) 16日 ロイター] タイ南部ハジャイの繁華街で16日,オートバイを使った連続爆弾攻撃があり,少なくとも3人が死亡,60人以上が負傷した.
警察が明らかにした.
それによると,オートバイに仕掛けられたリモコン式の爆弾3発の爆発によりタイ人2人とカナダ人1人が死亡,68人が負傷した.
さらに別の3発の爆弾でも軽い被害が出たという.
ハジャイは鉄道の主要分岐点に当たり,マレーシアからの週末の旅行先としても人気.
この週末は,さらに南部のイスラム系地域で,分離独立を主張する過激派グループの設立記念日があることから攻撃が警戒されていたが,ハジャイが攻撃の標的になることは当局にとって予想外だったという.
同時爆弾テロの死者5人に=タイ南部
【バンコク17日時事】
タイ南部ソンクラ県ハジャイ市で16日夜起きた同時爆弾テロで,17日までに死者は5人,負傷者は70人となった.
爆弾は市内のショッピングセンターやホテルなど6カ所でほぼ同時に爆発.
爆弾は駐車場に止めてあったバイクなどに仕掛けられていた.
画像あり
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060917-00000667-reu-int
【質問】
ナラーティワート携帯用電波塔連続爆破テロ事件とは?
【回答】
2008/4/7日5:00過ぎから6:00前にかけて,ナラーティワート県ヂョアイローン郡内で,電柱脇2ヶ所及び携帯電話用の電波送受信塔脇1ヶ所に仕掛けられていた爆発物が連続して爆発し,更に同日昼過ぎには,新たに電柱脇2ヶ所に仕掛けられていた爆発物が連続して爆発した事件.
早朝に発生した連続爆発と同時に,郡内の幹線上に鋲が撒かれたり,燃えたタイヤや切り倒された立木が放置されていたことから,実行グループ側は電柱及び電波送受信塔を爆破する事により郡内への送電及び電話通信を一時遮断させた上で,新たに大規模な破壊活動を実行する計画だったと見られるが,幸い,当局側の情勢掌握が早く,新たな破壊活動が発生するという事態には至らなかった.
尚,この連続爆破に絡んで,当局側は,検査装置により爆発物を手に取った形跡が確認された男1人の身柄を拘束し,事情聴取を行っている.
何れも人的な被害は無かった.
【参考ページ】
「タイの地元新聞を読む」
【質問】
ヤッラン郡住民銃撃・爆破テロ事件とは?
【回答】
2008/3/31日8:30前,パッターニー県ヤッラン郡内で,早朝発生した21歳(報道により20)のイスラム系住民が銃撃され重傷を負った事件の現場検証作業中に爆発が発生した事件.
住民を銃撃する事により,当局側を現場におびき寄せた上で,爆発物を起爆したものと見られる.
(検証の為に現場に向かっていた当局関係車両の通過に合わせ,爆発が発生したとする報道もある)
同日昼過ぎまでに,当局関係者及び住民9人が負傷を負った.
【参考ページ】
「タイの地元新聞を読む」
【質問】
銀行連続爆弾テロとは?
【回答】
2006/8/31正午前,タイ最南部のヤラ県にある銀行の計22支店で次々に時限爆弾が爆発した事件.
少なくとも男性1人が死亡,約30人重軽傷.
イスラーム過激派の犯行と見られている.
以下引用.
タイの銀行22支店で爆弾テロ,1人死亡30人けが
【バンコク=林田裕章】タイ最南部のヤラ県で31日正午前,銀行の計22支店で次々に時限爆弾が爆発,少なくとも男性1人が死亡したほか,約30人が重軽傷を負った.
タイからの分離独立を目指すイスラム過激派の犯行と見られる.
現地警察は,現金自動預け払い機(ATM)のカメラに写っていた男2人の身柄を拘束した.
英字紙ネーションなどによると,爆弾は,分厚い本の下や女性用バッグの中に仕掛けられ,銀行のカウンターやATMコーナーに置かれていた.
ある銀行には,「まもなく爆弾が爆発するから,従業員を避難させろ」という予告電話もあったという.
この日は,同国からの分離独立を目指す武装組織パタニ独立統一戦線(ブーサトゥー)の創設記念日.
警察当局は,大規模なテロが発生する可能性が高いとみて警戒を強めていた.
警察当局によると,〔死亡した〕男性は,同国南部の平和促進に取り組む組織のメンバー.
また,イスラム系の銀行支店も標的となった.
【質問】
ヤッリン郡生首爆弾事件とは?
【回答】
2007/8/10日6:00前,パッターニー県ヤッリン郡内で,人数不明の一味が,9日未明に殺害した71歳の老人の生首を路上に放置すると共に,回収に現れた当局関係者の到着を狙って付近に爆発物を仕掛けた事件.
通報を受け現場に駆けつけた当局側は,電波遮断装置を使用し,周囲一体の携帯電話用の電波を遮断した上で回収作業に着手した際,不審物を発見し安全処理を行った為,人的な被害を及ぼすことは無かった.
発見された爆発物は8Kg重量のもので,自動車用のリモートコントロールを利用して,遠隔操作で起爆する仕掛けになっており,一味側は,当初切断された頭部と一緒に,路上脇の立木に括り付けていたと見られるが,通行中の車両が立木に接触した際に,頭部の部分だけ路上の飛ばされてしまい,爆発物が晒された状態になっていたために,当局側の目にとまり,爆発による被害を未然に防ぐことが出来た.
尚,9日昼過ぎ,同様に首を切断され殺害された81歳の老人の頭部が,同郡内にある学校の正門付近で,偽爆弾と一緒に放置されているのが発見され,回収された.
【参考ページ】
http://thaina.seesaa.net/article/50950387.html
【質問】
スンガイ・ゴーロック市場爆破テロ事件とは?
【回答】
2006年11月20日10時過ぎ頃,ナラーティワート県スンガイ・ゴーロック郡中心部にある市場付近にあるバイク店付近駐車してあったバイクに仕掛けてあった爆発物が爆発したテロ事件.
使用された爆発物は,携帯電話を使用した遠隔起爆式のもので,市場の警戒作業にあたっていた軍関係者4人がバイク店付近にいるところで起爆させたと見られている模様.
20日昼過ぎのiTVの報道によると買い物中の住民1人が死亡し,市場の警戒作業にあたっていた軍関係者4人を含む17人が負傷を負ったという.
(報道により死亡者無しとするものも)
【参考ページ】
http://thaina.seesaa.net/article/27872405.html
【質問】
バンコク爆弾テロ計画とは?
【回答】
タイ軍筋によれば,タイ深南部のイスラーム過激派が2008年2月実行しようとしていたとされる,バンコクにおける爆弾テロ計画.
首謀者は,2005年のハジャイ空港爆弾テロなどで指名手配されているファイサル・ハイーサマーエーとみられている.
中国系の住民が多いバンコクでは,2月7日の中国正月前後,様々な祭事が行われ,特に中華街は人出が多くなるという.
【参考ページ】
http://www.newsclip.be/news/2008204_017572.html
【質問】
ナラーティワート警察官爆破テロ事件とは?
【回答】
2009/3/25午後,ナラーティワート県バーヂョ郡内中心部で,人数不明の一味が雑貨店に押し入り,70歳と46歳の仏教徒の経営者夫婦を銃撃して重傷を負わせ,警察官をおびき寄せた上で,爆発物を起爆したテロ事件.
現場は郡警察署から150メートルと離れていない地点で,銃声を聞いた軍警察署内に待機していた警察官が現場に到着し,夫妻の病院への搬送作業に取りかかったところを爆破された.
警察官3人負傷.
また,銃撃により重傷を負った妻は,搬送先の病院で死亡.
報道によっては,夫婦の頭部に銃弾を撃ち込み2人とも死亡させたとするものもある.
また,同県シーサコン郡内では25日午後,人数不明の一味が軍関係車輛の通過に合わせて爆発物を起爆した上で銃を乱射し,数分間に渡り銃撃戦を展開した後に逃走する事件が発生したが幸い人的な被害は無かった.
パッターニー県県都内では25日午後,バイクに乗った2人組が食堂内に向け爆発物を投げ込んだが,幸い不発に終わり人的な被害は無かった.
店内で飲食中だったトゥンヤーンデーン郡警察署長やレンジャー部隊関係者に危害を加える目的で,爆発物を投げ込んだものと見られる.
同県ノーンヂック郡内では,24日夜半から25日昼過ぎにかけて行われた一斉摘発の際,数回に渡る銃撃戦が発生し,警察官1人が負傷を負った.
【参考ページ】
「タイの地元新聞を読む」,2009年03月26日
【質問】
タイ南部分離主義組織幹部の武装闘争休止宣言について教えられたし.
【回答】
2008.7.17,「南部地下集結グループ」なる組織の幹部とされる人物が,武装闘争の休止を宣言する模様を撮影したビデオ・テープを,テレビ局ch5を通して公開したもの.
マレー語系の方言で,
「南部国境三県内のタイ人に平和をもたらすために,7月14日12:00を持って全ての武装闘争を休止させ,タイ当局側の正常化に向けた取り組みを支援していく」
とした上で,全ての組織に対して活動の停止を呼びかけた.
しかし,今回休止を宣言をした組織や幹部がこれまで殆ど知られていなかった事,また,当該組織と一連の不穏な動きに主導的な立場で関与し,一部地域の住民を事実上支配下に置いているとされる,BRNコーディネートやRKKを始めとする傘下の新興分離主義組織との関係が不明である為,今回の休止宣言が正常化へ与える影響に関して疑問視する声もある.
事実,パッターニー統一解放機構(PULO)の外事担当幹部を自称するカサトゥーリー・マーコーターは18日,武装闘争の休止を宣言した組織や人物とPULOとの関係を否定.
また,一連の不穏な動きを主導しているとされるBRNコーディネートの消息筋も,休止宣言をした組織の存在を認識していない事を確認すると共に,これまでに一度も武装闘争の休止に関する交渉を,タイの当局側と行った事が無いことを確認したという.
【参考ページ】
「タイの地元新聞を読む」,2008年07月18日付
「タイの地元新聞を読む」,2008年07月19日付
【質問】
バンコク爆弾テロ事件とは?
【回答】
2015.8.17,バンコクのパトゥムワン区,エーラーワン廟近くにあるラチャプラソン交差点で発生した爆破テロ事件.
死者20名,負傷者125名.
2016.1.1現在,犯人グループやその動機については諸説あって確定してはいないが,ウイグル族過激派による犯行説が最有力とされている.
* * *
タイの首都バンコクの正式名称は長い.
「クルンテープマハナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラアユッタヤー・マハーディロッカポップ・ノッパラッタラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーンアワターンサティット・サッカタットティヤウィサヌカムプラスィット
Krungthepmahanakhon Amonrattanakosin Mahintharayutthaya Mahadilokphop
Noppharatratchathaniburirom Udomratchaniwetmahasathan Amonphimanawatansathit
Sakkathatiyawitsanukamprasit」
これは
「イン神(インドラ神)がウィッサヌカム神(ヴィシュヌカルマ神)に命じてお作りになった,神が権化としてお住みになる,多くの大宮殿を持ち,九宝のように楽しい王の都,最高・偉大な地,イン神の戦争のない平和な,イン神の不滅の宝石のような,偉大な天使の都」
という意味である.
この名前を付けたのは,時の国王ラーマI世.
1782年,ビルマの侵入を受け易いトンブリーから首都を移した時に,このように命名した.
そのときラーマI世は,英雄タークシン大王を処刑した直後であっただけに,そんな祝詞のような名前を首都につけたくなった気持ちも分からなくはない.
ところでタイは仏教国である.
ところがインドラ神は,ヒンドゥー教の主要な神の一人である.
(仏教においては,帝釈天と同一とされているものの)
なぜヒンドゥーの神が仏教国で?
これは元々,タイ文化が,カンボジア経由で入ってきたインド文化の影響を大きく受けて形成されたことに原因がある.
そもそもヒンドゥー教も仏教も,バラモン教から派生した宗教である.
そういう背景があって,日本で神道と仏教が習合しているように,タイでは仏教とヒンドゥー教が習合している部分がある.
例えばタイ王室関係の行事は,ヒンドゥー教の司祭であるバラモンが行うという.
また,バンコクの中にヒンドゥーの祠があったりする.
それがエーラーワン廟である.
エーラーワン廟は1956年,エーラーワン・ホテルの敷地の,道路に面したところに建立された.
設置されたホテルの礎石が占星学的によくなかったため,それを改善するために建てられたらしい.
そのときホテル経営側は,占星術師として知られるルワン・スウィチャーンペー海軍少将を招いて,吉祥時を選び,エーラーワンの祠を設置して,ヒンドゥーの神ブラフマーを祀った.
海軍少将が何故占星術師となったのか?については大変興味深くはあるが,それはまた別の機会に譲ろう.
ところが,人通りの多い交差点に接した,大変目立つところに建てたせいか,オカルトめいた噂が立つことになった.
曰く,
「ホテル工事中に事故が多発,作業員が『悪霊がいる』と工事を嫌がるようになったため,ホテルがこの廟を立てた.その後,工事は順調に進んだ」
というもの.
このおかげで,
「ブラフマー神にはご利益がある」
という噂が広まった.
そのうち,
「ここで祈りを捧げたら宝くじに当たった!」
などという人も現れ,祈りを捧げる人が絶えることが無くなり,今やタイ随一の大人気パワー・スポットに.
その人気ぶりは,タクシーに乗ってここを通ると,運転手が一瞬ハンドルを離して手を合わせるくらいであるという.
日本にも「工事多発」の怪談話,パワー・スポットの話などは沢山あるが,その噂の源泉を確かめていくと,案外こうしたところに落ち着くのではないだろうか.
さて,大勢の人を引き付けるということは,中におかしな人も混じっている可能性も高くなるということでもある.
2006.3.21,ムスリム男性が廟を破壊するという事件が起こった.
怒った群衆によって男はその場で殴り殺されたため,動機は不明.
今なら真っ先に過激原理主義的動機が疑われるところだが,タナーコーン・パックディーポンという名のこの男,実は精神に問題を抱えていたらしく,過激原理主義以外が動機である可能性も多分にある.
事件のとばっちりを受けたのは,時のタクシン政権である.
当時,同政権はムスリムの多い深南部で「テロとの戦い」を行っていたからである.
この事件が直接のきっかけではないにしろ,タクシン政権はその後,急速に崩壊していったところから,「ブラフマー神の祟り」を想像する人が出てくるのも無理からぬところと言えよう.
そして,第二のおかしな人が2015.8.17になって現れた.
その男たちは二人組で,一人は赤色のTシャツを着,もう一人は青色のシャツ.
赤シャツの男は廟の構内のベンチの下に,バックパックを置いた.
その間,青シャツの男は赤シャツの男の行為を隠すように立っていた.
二人が立ち去ると,その直後の18時55分,廟で爆発が起こった.
爆弾は,3kgのTNTをパイプに詰めたもの.
起爆装置と思しき電子装置も見つかっている.
人通りの多い交差点での爆発のため,20人が死亡,125人が負傷.
事件はそれだけにとどまらず.
翌18日午後1時頃,BTS サパーンタクシン駅(Saphan Taksin)目の前のサートン船着き場において,第二の爆発が起きた.
サートン船着き場は,チャオプラヤーエクスプレスという水上の交通機関の駅.
チャオプラヤー川をクルーズするボートツアーや,アジアティーク ザ リバーフロントへの送迎ボートの発着地点にもなっている為,外国人観光客の出入も多い.
犯人は近くの橋から船着き場へ爆発物を投げつけた.
第1の爆発現場にいた「青シャツの男」
投げたのは擲弾だったと見られている.
幸いなことに,川に落ち,水中で爆発したため,死傷者はなかった.
タイ警察が公表した,「青シャツの男」の似顔絵
(こちらより引用)
どちらも観光地を狙っているところから,このテロがタイの観光と経済に打撃を与える目的で行われただろうことは,容易に想像できる.
けれども犯行声明が出されていないため,犯人の動機や背後関係は2016.1.1現在,まだよく分かっていない.
実行犯とされる「赤シャツの男」は,事件から12日後の8月29日,バンコクのノンチョーク区内のアパートにて逮捕された.
供述によれば,犯行当日はルンピニ公園にてカツラを被って眼鏡をかけて変装をし犯行に及んだという.
男はトルコ籍と自称しており,「アラム・カラダック」という名のパスポートを持っていた.
本名はビラール・ムハンマドとされている.
彼のアパートからは,爆弾の材料が多数見かってもいる.
「アラム・カラダック」逮捕時のニュース映像
(こちらより引用)
9月1日には,今度はカンボジアとの国境沿いの町サケオにて,爆弾事件に関与したとされる男が逮捕された.
彼はバックパックを背負って国境沿いの森の中をウロウロしていたところを,警備中の兵士に拘束された.
男は「ミーライリー・ユスフ」と名乗り,ウイグル出身と記載されたパスポートを持っていた.
供述によれば,彼は爆弾を作ってバンコク中央駅の付近で実行犯に渡した共犯者であるという.
「ミーライリー・ユスフ」
(こちらより引用)
その他の容疑者も含め,合計17人について逮捕状がとられ,19日にはタイ国家警察のチャクティッ長官が「捜査終結」宣言を出した.
逮捕者2名は24日に起訴された.
しかし,首謀者とみられる「イザーン」なる男ら計15人については,2016.1.1現在,身柄は確保されていない.
(12.4,そのうち2人がトルコで拘束されたと報じられたが,続報は見当たらない)
一人がウイグル人であったことから,ウイグル人の過激派による犯行説が濃厚となった.
中国ではウイグル人への弾圧が行われている.
そのため亡命したウイグル人は多いが,亡命先にタイを選んだ者も多い.
ところがその亡命者を,タイ政府は中国へ強制送還してしまったのである.
なので,過激派ならずとも,タイ政府のその措置を怨んでいるウィグル人は多い.
その報復が動機,という見方である.
上記の説を本命とすれば,対抗が「タクシン派による犯行」説.
タクシン派は軍事クーデターによって確立した現政権を快く思っていないところにもってきて,事件前日,タイ法務省がタクシン元首相の警察官時代の階級を剥奪,これにタクシン支持者達は激怒した.
そのためSNS等に
「14日から18日の間は気をつけることだ」
と,犯行予告めいた書き込みがなされていた,というのがその論拠.
タイ南部のイスラーム分離独立運動組織説もある.
タイ南部の分離組織は,これまでにもたびたびテロを起こしてきた.
まあ,真っ先に疑われても仕方ない.
爆弾の種類が違うことから,今回はその可能性は薄いと見られているが…
大穴としては,「亡命業者による報復」説というのもある.
先に述べたように,中国からは大勢のウィグル人がタイに逃げてきているが,カネをとってその逃亡を助ける組織がある.
ところがタイ政府がウィグル人を強制送還してしまっては,この組織は飯の食い上げである.
そこで報復テロを起こした,という見方である.
そしてタイ国家警察が唱えているのが,なんとこの大穴の説だったりする.
こんな説の提唱と言い,ウィグル人の強制送還と言い,早すぎる捜査終結宣言と言い,どこかの国からの外交圧力がかかってのことだろうことは,想像に難くない.
タイ内外の情勢が大きく変化しない限り,真相が解明されることは難しいようだ.
しかし,もしブラフマー神に本当に祟りがあるとするならば,その鉄槌が下される先は,外交圧力をかけて真相追求を妨げている某国になりそうな気がするのだが…
【参考ページ】
http://runbkk.net/bangkok-terrorism/
http://runbkk.net/erawan-shrine/
http://www.mahaprom.org/index_eng_history_erawan.htm
http://www.nationmultimedia.com/2006/03/21/headlines/headlines_20003221.php
http://www.nationmultimedia.com/2006/03/22/headlines/headlines_20003314.php
http://www.asahi.com/articles/ASH9V5TFSH9VUHBI01S.html
http://www.sankei.com/world/news/151019/wor1510190064-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/150928/wor1509280061-n1.html
http://www.newsclip.be/article/2015/11/26/27598.html
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