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◆◆ヒズボラ
<◆イスラーム過激原理主義テロ 目次
<テロリズムFAQ目次
ヒズボラの旗 Hizbollah Flag
【質問】
イスラエル・ヒズボラ紛争開戦時,レバノンでヒズボラ支持がそれほど高まらなかったのは何故か?
【回答】
宗派間の利害が複雑に絡み合う同国では,ヒズボラのイスラエルへの挑発が国内経済を混乱させることへの懸念※があるため.
80年代の,内戦やイスラエルによる占領時代の悪夢が甦ることを,懸念する市民も多い.
イスラエルも,そうした世論をあおることで,ヒズボラの孤立化を図ろうとしているという.
以下引用.
<イスラエル>レバノン攻撃で,ヒズボラの孤立化狙う
【エルサレム樋口直樹】レバノン南部のイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラによるイスラエル兵拉致に端を発したイスラエル軍の侵攻が,レバノン内部でのヒズボラの立場に微妙な影響を与えている.宗派間の利害が複雑に絡み合う同国では,ヒズボラの挑発が国内経済を混乱させることへの懸念もあり,イスラエルは世論をあおることでヒズボラの孤立化を図ろうとしている.
「ヒズボラは愚かなのか,何も気にしていないのか」
イスラエル軍機が首都ベイルートの国際空港を爆撃,ベイルート沖を海上封鎖したことを受け,レバノンの経済誌編集者はロイター通信にこう不満をぶちまけた.
「我々は空港と観光,繁栄を失ってしまった」
別のヒズボラ研究の専門家は
「レバノン政府はイスラエルとヒズボラの間で締め上げられた緩衝材のようになっている」
と指摘する.
イスラム,キリスト両教徒の15年に及ぶ内戦を経て国内再建に本腰を入れるレバノン政府が,イスラエルとの新たな紛争を望んでいないことは明らかだ.
一方,パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスとにらみ合いを続けるイスラエル政府もまた,レバノンとの紛争の長期化に不安を抱えている.ヒズボラによるカチューシャ・ロケットの猛反撃でイスラエル北部一帯は危機感に覆われ,レバノンへの大規模な軍事作戦は国際社会からの反発を招いている.
だが,イスラエル紙マーリブが14日にウェブ上で行った読者調査によると,9割以上の回答者はレバノンでの軍事作戦の強化を支持し,交渉による解決を望む声は1割に満たない.
〔略〕
ヒズボラめぐり賛否両論 戦争の悪夢よみがえるレバノン
【アルジャジーラ特約15日】〔略〕
元将軍で国会議員を務めるミシェル・アウン氏はアルジャジーラネットの取材に対し,ヒズボラの行動を「純粋な軍事行動」と擁護する半面,イスラエルの攻撃がレバノンの市民を標的にしていると非難した.
キリスト教マロン派政党「自由愛国運動」を率いるアウン氏はさらに,
「今第一にやるべきことは軍事行動の停止と話し合いによる解決策の模索だ」
と強調した.
昨年,亡命先のフランスから帰国し政界入りしたアウン氏は,レバノン国内のイスラム教武装勢力を政治改革に取り込むべきだと主張した上で,今年2月にヒズボラとの間で「覚書」に調印した.
▽「危険な行為」
一方,イスラム教ドルーズ派の指導者,ワリド・ジュンブラット氏は同覚書に反対の姿勢を表明し,今回のヒズボラの軍事行動を
「レバノンを戦争に引きずり込む危険な行為で域内の勢力争いに巻き込まれる」
と強く非難するとともに,
「イランとシリアがレバノンンを代理戦争に利用している.これは受け入れられない」
と強調している.
ドルーズ派政党「進歩社会党」を率いるジュンブラット氏は,レバノンのラフィク・ハリリ前首相が暗殺されて以降,シリアに内政干渉をやめ,また,ヒズボラには武装解除するよう求めている.
これに対し,ヒズボラ傘下にあるテレビ局アルマナルの英語部門の編集担当,サイド・イブラヒム・ムッサウィ氏は,
「イスラエルが軍事作戦の縮小するどころか,レバノンへ侵略を企てている」
と非難.
▽ ヒズボラを公に批判できず
1960,70年代,ベイルートは「中東のパリ」と称されるほど美しく,外国人観光客に人気の都市だった.長期の内戦,イスラエルによる占領を終えた後,ベイルートに再び投資が戻り,観光産業も活気を取り戻していた.
それだけに今回のレバノン攻撃は,ベイルート市民の間に辛かった戦争の記憶をよみがえらせている.
「悪夢の再来だ.レバノンには平和はない」
と嘆くのは,70歳になる老婦人のハワ・シェハディさん.
また,タクシー運転手のカミル・マクディッシさんは
「レバノンが攻撃を受けるのは辛い.イスラエルがわれわれの痛みの5%でも分かってくれたらと思う」
と述べ,顔を雲らせた.
ベイルート市民の多くが怒りをあらわにしている.一般市民はヒズボラの軍事行動に反対し,それがイスラエルの報復攻撃を招いた元凶だと激怒している.
ベイルートに年1回の帰省中だったジナ・ベクダチェさん(38)は
「今回の軍事行動で子どものころの悪夢がよみがえった.この国を直ぐに出たい」
とつぶやいた.
50歳の技術者,ワリド・チャヒネさんは
「ヒズボラはのぼせ上がっている.自分たちがレバノンを動かしている気でいる.ヒズボラへの信頼感は消えてしまった」
と批判した.
こうした怒りと批判があっても,ヒズボラを正面きって批判できる市民はいない.
▽ 「ヒズボラが唯一の救国の政党」
一方,中東問題評論家のダリア・サラーム氏は
「ヒズボラがこの国を救うために戦う唯一の政党だ.
欧米諸国はイスラエルに自制するよう求めるべきだ.米国そしてイスラレルにしても戦闘の拡大を望んではいないからだ」
と分析した.
しかし,旅行代理店に勤めるラムジ・サルハさんは
「ヒズボラが何をスローガンに掲げようが,それは必ずしもレバノン国民を代表したものではない」
とした上で,
「ヒズボラは国民から国の運命を託されているわけではないのだ」
と警告した.
22年に及んだイスラエル占領が終わった際,レバノン国民の多くがヒズボラの武装解除を求めた.
全面的な戦争状態に陥ると懸念する者は少ないが,反対勢力の中からは武装するビスボラが国家以上の権力を持つようになっている,との批判が出ている.
(翻訳・ベリタ通信=志岐隆司)
「我々は今,レバノン国旗の下で戦っている」
同国南部ワディハイダイ村からベイルート東部のキリスト教徒居住区,アシュラフィーエ地区の第二女子中等学校に避難したカッサム・アカルさん(47)が言う.
同国南部などから逃れた約460人が避難生活を送る同校では,多くの支援団体や個人が宗教の垣根を超え,イスラム教シーア派中心の避難民に手を差し伸べている,という意味だ.
アカルさんは
「イスラエルは何もかみな破壊した.レバノン国土を守っているのはヒズボラだ」
と,イスラエルへの嫌悪感とヒズボラへの共感を強調した.
だが,壊滅的な被害を目の当たりにした市民らの感情は単純ではない.キリスト教マロン派のワジ・ガントゥースさん(41)は
「国土の領有を巡る闘争に関しては,ヒズボラへの理解はあった.でももうたくさんだ」
妻子と共にベイルート市内のホテルに避難した銀行員,ムハンマド・サアディさん(30)は
「この状況から立ち上がるには少なくとも10年はかかるだろう.ヒズボラをたたきつぶしたとしても,別の抵抗組織が生まれ,問題は解決しない」
と話す.
イスラム教スンニ派のサアディさんは
「ヒズボラが生き残れば問題はさらに複雑になる.一つの国に二つの政府が存在する必要はない」
と続けた.
さらに,ティレ及びジャバル・アーメル地区のシーア派ムフティであるアル・アミン師(Sayyed‘AliAl-Amin)もレバノン紙Al-Naharのインタビューで,南部を含む国家の治安維持責任は一組織ではなく政府にあるから,レバノン政府はその責任をとり,南レバノンに国軍を展開せよ,と要求している.
また彼は,ヒズボラの武装解除を求める人々に対する,反逆者ときめつけての非難強く批判し,
「国家に対する忠誠で,(レバノンの)特定社会が他にまさるなどということは絶対にない」と主張,「レバノンのシーア派社会がその名において誰かに宣戦布告の権限を与えたことはない」とし,「むしろ逆である.シーア派社会は戦争に反対し,レバノンのほかの社会集団と同じように国家に忠誠を誓っている」
と述べている.
詳しくは,MEMRI,2006/8/28を参照されたし.
シーア派といえばヒズボラ支持と見られがちだが,ムフティの中にすら,ヒズボラを歓迎していない人物がいることは,留意しておきたい.シーア派の皆が皆,好戦的というわけではないのだ.
※ただし,この点には以下のような指摘もある.
紛争で痛い目見る資産層を構成しているのは,主にマロン派の人間.
もともと貧民層が多数を占めるシーア派は,痛くもかゆくもない.
そして悪いことに,前回味方だったはずのマロン派までがヒズボラ寄りになり,イスラエルに対する憎悪をたぎらせ始めているという最悪の状況になった.
【質問】
なぜIDF侵攻後暫くしてからヒズボラ支持が上昇したのか?
【回答】
「レバノン攻撃は事前に準備され,拉致事件は口実にすぎなかった」
という報道があったこと,および,
「民間人の犠牲が多いことに加え,ヒズボラが攻撃に屈しない姿勢を貫いていること」
が支持上昇の要因だという.
以下引用.
<レバノン>ヒズボラ支持高まる 現地の世論調査
【ベイルート澤田克己】イスラエル軍の攻撃が続くレバノンで反イスラエル感情の高まりと連動してイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラへの支持が高まっていることが現地の世論調査で明らかになった.
専門家は,30日にレバノン南部カナへの空爆で多数の犠牲者が出たことでヒズボラ支持の傾向はさらに強まっていると分析している.
民間研究機関・レバノン情報調査センターが24〜26日に800人を対象に実施した世論調査によると,ヒズボラによるイスラエルとの戦闘を支持する人は86.9%に上った.シーア派と対立するイスラム教スンニ派やキリスト教徒でもそれぞれ88.9%,80.3%の高い支持率だった.
今回の軍事衝突のきっかけとなったヒズボラによるイスラエル兵拉致に関しては70.1%が支持すると回答した.
ただ,拉致への支持はシーア派の96.3%に比べ,スンニ派73.1%,キリスト教徒54.7%と宗派によって温度差が出た.
同センターのアブド・サード所長は戦闘への態度は「反イスラエル感情」,拉致への回答は「ヒズボラへの支持の強さ」と読み替えることができると説明する.
攻撃開始直後にはレバノン世論にヒズボラ不信の声もあった.
世論が変わった背景には
「レバノン攻撃は事前に準備され,拉致事件は口実にすぎなかったとイスラエル・アラブ双方のメディアが暴露したことがある」
と指摘する.
同所長はさらに
「民間人の犠牲が多いことに加え,ヒズボラが攻撃に屈しない姿勢を貫いていることも支持を集めているようだ」
と話す.
多くの子供が犠牲になったカナ空爆は反イスラエル感情をあおり,ヒズボラへの支持を強める方向に働くだろうと分析する.
国連によると,29日までのレバノン側の死者は約600人で,負傷者も3000人超に達している.
死傷者の大半は民間人とされ,レバノンのファトファト暫定内相はうち35%が12歳以下の子供だと指摘している.
ヒズボラ・グッズが大人気 ナスララ党首をたたえるシリア国民
【アルジャジーラ特約12日】シリアの首都ダマスカス,その古代の城壁に沿って立ち並ぶ本屋に市民がよくやって来る.公務員のムサム・ハビブさん(32)もその1人で,4歳になる息子のゼインちゃんを連れながら,本屋街を見て回っている.
そのハビブさんが一軒の本屋に飾ってある写真を指差しながら,ゼインちゃんに「これは誰だ」と尋ねた.写真の主は,笑みをたたえた顔にメガネをかけ,濃いひげを蓄え,ターバンを巻いている.
「ハッサン・ナスララだよ」.ゼインちゃんがはにかみながら答えた.
「それなら,これは誰だ」.ハビブさんが沢山の花を挟んで,同じ写真に写っている別の人物を指差して尋ねた.
「バッシャール(・アサド)大統領だよ」.ゼインちゃんが今回も正しく答えた.
これを聞いたハビブさんは嬉しそうにゼインちゃんの頭をなでながら,代金約25円を本屋に渡し,写真を受け取った.
▽抵抗運動の象徴
レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラが7月12日にイスラエル兵士2人を拉致し,今回の「戦争」が始まって以来,ヒズボラを率いるハスララ党首らの写真がダマスカス市内にあふれている.
同市民たちは車の窓,商店の店先にそうした写真を飾り,また,市内の各通りには緑のヒズボラ旗とシリア国旗,さらにレバノン国旗がはためいている.
シリア国民の中には,今回のレバノン危機にあたって,ヒズボラ支持を表明することが自国政策の支持につながると考える者たちもいる.
ダマスカス旧市街で写真と書籍を売っているビラル・モハメドさん(25)は「私にとって,アサド大統領とナスララ(ヒズボラ)党首の2人は抵抗運動の象徴なのです」と語る.
これに対しイスラエルと米国はシリアがヒズボラを支援していると指摘,と同時にシリアがレバノンに向けた武器補給役を果たしていると非難している.
シリアは当然,こうした非難を否定するとともに,他のアラブ諸国とは違って,ヒズボラおよびその指導者を公然と支援している.
▽ヒズボラ人気が沸騰
シリア国民の間では,今回の「戦争」開始以降,イスラエルを相手に戦っているヒズボラの指導者ナスララへの人気が沸騰,カリスマ化しており,これに伴いヒズボラ・グッズがシリア国民の間で引っ張りだこ状態になっている.
ダマスカス中央市場にある本屋で働くアブ・ラドワンさんは「イスラエル軍が2000年にレバノン南部から撤退して以降,ヒズボラの旗や同指導者の写真を求める市民はそれほど多くはなかった.でも,7月12日以降,ナスララ党首とアサド大統領の写真を購入しようと,多くの者たちがシリア各地からここにやって来る」と話している.
ラドワンさんはこうした人気をとらえ,アサド大統領も含めたさまざまな図柄の写真,Tシャツを作り,販売している.
人気の中心はビズボラTシャツ,キーホルダー,CDなどだが,これに加え本屋には現在,ナスララ党首の伝記(352ページ)が並び,人気を集めている.
カイロで出版された伝記のタイトルは「南からの革命家」という.
モハメドさんは「ナスララ党首の歩んできた道とその過程をもっと知りたいという国民が増えています」と話す.
シリアの若い世代はハスララ党首を,12世紀に十字軍を破ったイスラムの英雄,サラディンと重ね合わせている.
女子大生の1人は「サラディン以降,アラブの人々を本気で守っている指導者はハスララ党首が初めて.同党首のお陰でアラブは自尊心を取り戻せる」と強調している.
(翻訳・ベリタ通信=志岐隆司)
【質問】
アラブ社会はヒズボラに好意的か?
【回答】
必ずしもそうとは言えない.
「ヒズボラがイランの教唆にこたえ,そしてイラン以外の地域勢力による煽動にのった時,つり合いのとれない相手と戦争を始めることになるのは承知していた.そしてその戦争のツケは全部レバノン国民だけが支払わされることも….
(イランは)核開発問題がすぐに安保理へまわされることを知ると,アメリカに対する圧力を強める手段として,イラクと共に,レバノンを利用することに決めたのである.
問題は,レバノン国民が自分達の関わらない戦争のため,破壊の犠牲になる必要があるのかである.
南レバノンにおけるイスラエルの侵攻時や(イスラエルと)ヒズボラ間の戦闘時に,イスラエル兵2名が拉致されたのであれば,この脱線行為も正当化できたかも知れない.
しかし拉致作戦のタイミングは全くかみ合っていない.イランの関与をはっきり示唆している」※2.
(カイロのイスラム・民主々義研究アラブセンター所長アリ(AbdAl-Rahim‘Ali),エジプト半官紙Al-Ahramにて)
や,
「レバノンのヒズボラとパレスチナのハマスを使用し,イラクを併呑して,アラブ諸国を内部から破壊しようとする.目的は達成されたようだ…この後イランは,アラブ世界全体をヒズボラのような武装民兵隊に変える意図である.
〔略〕
この間のデモで,ムスリム同胞団の最高指導者アケフ(SheikhMahdi‘Akef)がイスラエルに対するジハードを呼びかけた.
これはイラン式のジハードであり,その狙いは内部からエジプト,サウジ,ヨルダンを内部から破壊することにある.
レバノンのように民兵隊をつくりあげ,その暗躍で国内は目茶苦茶となる…」※5.
(エジプトの半官紙Al-Gumhuriyya編集長イブラヒムMuhammad‘AliIbrahim)
あるいはまた,
「口が酸っぱくなる程言っているが,イランの願望は東のアラブ諸国に支配権を確立することにある.そのためヒズボラをトロイの馬として使っているのである.
その組織は,指導者,活動家,支持者の命を(犠牲にして)捧げているが,将来はレバノンの国民と富を(犠牲にして)捧げることになる.
得をするのはイランである.
そして,イランの大統領アフマディネジャドはこのような含みを持たせながら,イスラエル無き新しい中東について,激越な演説をくり返すのである」※6
(エジプトのコラムニスト,ラーマンHazem‘AbdAl-Rahman,前出Al-Ahramにて)
さらにまた,
「助演級のヒズボラとハマスが目下主役を演じているが,その背後にあるのがダマスカス・テヘラン枢軸.この地域に潰滅的打撃を与えるつもりだ.
これは,パレスチナとレバノンで既に実行されている.
パレスチナ人とレバノン人は,アメリカと敵対するテヘラン,ダマスカスの人質にされ,この枢軸の利益に奉仕させられている.
この枢軸は国際的地位を強めたいと願っており,パレスチナとレバノンがそのための道具に使われているのだ…」※7
(コラムニストのアジュラミAshrafAl-Ajrami,パレスチナ人自治区発行紙Al-Ayyamにて)
「ハマスとヒズボラは自分の国の利益は忘れて,自分の国でイランとシリアの利益を代表する組織になりさがっている.自分の行為が自国に与える打撃には全く頓着せずシリアとイランの利益のために走りまわっているのだ….
ハマスとヒズボラはイスラエル兵を拉致するにあたって同じ理由をあげた.そこから我々は彼等の問題を垣間見ることができる.それはアメリカと紛争状態にあるシリアとイランの抱える問題に類似する」※9
(クウェート紙ArabTimesとAl-Siyassaの編集長アル・ジャララーAhmadAl-Jarallah,ArabTimesにて)
※2 2006年7月18日付Al-Ahram(エジプト)
※5 2006年7月27日付Al-Gumhuriyya(エジプト)
※6 2006年8月6日付Al-Ahram(エジプト)
※9 2006年7月15日付Arabtimes(クウェート)
http://www.arabtimesonline.com/arabtimes/opinion/view.asp?msgID=1242
など,背後で策謀するイランやシリアの脅威を指摘する声もある.
サウジ日刊紙Al-Watanの前編集者ハシュクジ(JamalHashukji)は,ヒズボラの行動にノーというサウジの態度を勇気ある姿勢≠ニしながらも,アラブの政策を次のように批判した.
「アラブ諸国は(戦争になる前に)ヒズボラの武装解除をすべきだった.もう手遅れである.
立上りが遅かったのはサウジアラビアだけではない.ほかのアラブ諸国も然りである.
ヒズボラの特異な地位が長年顕著であったのに,アラブの誰かが決着をつけてくれるだろうと,手をこまぬいて何もしなかった.
アメリカも目を覚ますのが遅すぎた.和平プロセスを無視したため,現在の危機を助長させたのである….
レバノンの危機を予見するためには,預言者や霊能者になる必要はなかった…最近の紛争エスカレートを煽りたいのはヒズボラである.
レバノンのさまざまな政治勢力はイスラエルとアメリカが要求する前から,ヒズボラの武装解除を要求していた.
かくしてヒズボラは,2人の(イスラエル)兵を拉致し,この地域を火の海とし,今やひとかどの軍事勢力になってしまった.
イランは,核開発問題から世界の目をそらすため,これを利用する.
そしてシリアは,レバノンに対する支配権を喪失したため,怒り狂っており,(レバノンの前)首相ハリリ暗殺の調査から世界の目をそらそうと,これを利用する….
レバノンの政治家のなかには,勇敢にもヒズボラの武装解除を提案した.
レバノンが解放された以上,抵抗の必要は最早なしと主張したのである.
しかし(ヒズボラは),シャブア農場をイスラエルが占領している限り解放は完了せずと言い張って,(武装を)正当化した…
シリアはこの口実に手を貸し,国としての資料提出をこばんでいる.つまり,農場の帰属を意図的にあいまいにしているのである.
シリア領と宣言すれば,農場は被占領地ゴランの一部となる.レバノンが解放すべき土地ではないことになる.
レバノンは全領土の主権が回復されたと正式に宣言する.
ヒズボラは礼を尽した尊厳あふれる武器返納式で武装を解除され,レバノン国軍がそのメンバーの一部と武器全部を編入する.
そしてこの党(ヒズボラ)は本来の政治活動に専念する.
南(レバノン)のシーア派は,社会的地位の低いことをいつも嘆いているが,ヒズボラはそのシーア派の地位向上に貢献する.
レバノンはこのような過程を踏めた筈である.
農場がシリアのものかどうか.我々はシリアにこの問題をはっきりさせるようにせまるべきであった.
しかしこれをせず過ちを犯したのである.
クリアーしていれば農場を口実にはできず,(全体の問題)がイラン,シリア,レバノンの各種利益代表組織の間の話合いで,解決できたのであろう」※8.
※8 2006年7月18日付Al-Watan(サウジ)
といったヒズボラ解体論も見られる.
ただ,それがどのくらいの割合なのかは,寡聞にして不明.
以上,引用部分は全てMEMRI,2006/8/19より.
【質問】
今回の中東戦争はヒズボラがイスラエル兵を誘拐した事が発端ですよね.
ただ調べると,ヒズボラはイランがイスラーム革命を輸出する為の組織だと書いていたのですが,それではヒズボラとレバノンは何も関係ないのでしょうか?
【回答】
体面上,現在のヒズボラは普通のイスラム系政治政党です.
レバノン南部の貧困層を票田とし,現在ではレバノンの内閣に閣僚を送り込んでいるほどです.
その実,未だにシリア・イランの支援を受けた軍事部門が健在なのは言うまでもありませんが,レバノン政府はその辺は怖くてつっこめません.
【質問】
ヒズボラは,まともな政党ではないのか?
【回答】
太田述正の見解によれば,ヒズボラは過激な反ユダヤ主義を掲げるファシスト団体だという.
彼によれば,ヒズボラはファシスト集団にふさわしく(?),過激な反ユダヤ主義者集団であり,ホロコーストを追求しており,そのために武装解除を拒否し,イスラエル軍との軋轢を繰り返してきたという.
また,ヒズボラはイランの走狗でしかない,と批判するアラブ知識人もいる.
以下引用.
イランのアフマディネジャド大統領の過激な反ユダヤ主義的発言は枚挙に暇がないこと(コラム#875,924,994,1010,1034)はご承知の通りですが,ヒズボラが過激な反ユダヤ主義集団,より端的に言えばホロコースト論者集団,であることが今回の紛争の過程で改めて白日の下にさらされました.
ヒズボラの指導者であるナスララ(Hassan Nasrallah)は,ヒズボラのミサイル攻撃によってイスラエルのナザレ在住のアラブ人の二人の子供が亡くなった時,この二人を殉教者であるとし,二人の家族に謝罪しました.
同じミサイル攻撃によってユダヤ人の子供が死んでも,彼は喝采こそすれ,謝罪など全くしないのですから,要するにヒズボラはユダヤ人をできるだけ大勢殺害することを旨とする過激な反ユダヤ主義集団・・ホロコースト論者集団・・以外の何物でもないのです.
(以上,
http://www.csmonitor.com/2006/0727/p09s01-coop.htm
(7月27日アクセス)を参考にした.)
武器を持ち,その武器をユダヤ人に対して容赦なく行使してきたホロコースト論者集団であり,イスラエル国家の存続を否定する集団であるところのヒズボラ,と戦うに当たっては,ヒズボラを壊滅させることこそ「均衡性」を有するのです.
(2)ヒズボラと政治
ア 民主主義志向
イランの息のかかっているレバノンのヒズボラやパレスティナのハマスやイラクのサドル派は,イラン型のファシスト集団(政党)です.
欧州のファシスト政党は,ナチスがそうであったように,選挙等を通じて政治に参画しつつも,私兵を抱え,テロ行為を厭わないのが通例です(典拠省略)が,ヒズボラ・ハマス・サドル派はまさにそのようなファシスト集団です.
ヒズボラは,かねてからレバノンの宗派別選挙におけるシーア派の選挙に参加してきており,現在レバノン議会の総議席128中25を占めて二つの省をコントロールしていますし,ハマスは今年の選挙に始めて参加し,パレスティナ議会の議席の過半数を占め,パレスティナ当局政府をコントロールしています
(但し,得票率においては過半数を占めてはいない(典拠失念))
http://www.slate.com/id/2145895/
,及び
http://www.slate.com/id/2145892/
(どちらも7月18日アクセス)).
イ 住民福祉重視
ヒズボラは,レバノンの最底辺のシーア派一般住民110万人に対し,レバノン政府が手抜きをしてきたところの,道路・インフラ・学校・病院・ゴミ収集・地方議会・保健/医療の提供を行ってきました.例えば,4つの大病院・12の学校・農業訓練所・医療保険制度を整備・運営してきたのです.
(ハマスも,パレスティナ当局を牛耳ってきたファタが顧みなかったパレスティナ一般住民の福祉の向上に,ガザ地区中心に努めてきたところです.)
(以上,ワシントン・ポスト(8月8日アクセス)による.
ウ ホロコースト追求
ヒズボラは,南レバノンを占領していたイスラエルと通謀していたレバノンのキリスト教徒の政党であるファランジスト(Phalangist)の民兵によってパレスティナ難民キャンプであるサブラとシャティラ(Sabra and Chatila)が襲われ,パレスティナ人達が虐殺された1982年の事件を契機に,レバノンをイスラエル軍とイスラエル通謀勢力から解放するためにイランによって創設された集団です(ワシントンポスト上掲).
ところが,その後2,000年にイスラエルは南レバノンから撤兵し,ファランジストは現在ヒズボラと提携関係にある(典拠失念),という具合に状況は様変わりしています.
にもかからわず,ヒズボラはイスラエルとの国境を挟んでイスラエル軍との軋轢を繰り返してきましたし,国連安保理決議に逆らって武装解除を行わないまま現在に至っています.
ヒズボラは,イスラエルが依然レバノンの10平方km未満の土地(Shebaa Farms)を占領していることを武装解除をしない理由として挙げていますが,国連安保理は,このヒズボラの主張を否定し(注3),イスラエル軍は2,000年にレバノンから完全に撤退したことを認めています.
(以上,ニューヨーク・タイムズ(8月3日アクセス)による.
ただし,Shebaa FarmsについてはBBC(8月11日アクセス)も参照した.)
(注3)シリアは,ヒズボラの主張に同調している.
要は,ヒズボラはファシスト集団にふさわしく(?),過激な反ユダヤ主義者集団であり(注4),イスラエル国家の抹殺/イスラエルのユダヤ人の一掃・・つまりはホロコースト・・を追求しており,そのために武装解除を拒否し,イスラエル軍との軋轢を繰り返してきたのです.
(ハマスもまた同様です.)
(注4)イラン・ヒズボラ・ハマスのホロコースト志向は,欧州のファシズムからの直輸入であると同時に,イスラム世界と並ぶ欧州の外縁たるロシアのスターリニズムからの,その虐殺・(シベリア)追放等による異端弾圧の翻案輸入であるとも言える.
つまり,イラン等は,マルクスレーニン主義をイスラム原理主義と読み替え,一神教の異端たるユダヤ教徒の弾圧を追求している,という見方もできよう.
(http://www.slate.com/id/2146654/entry/0/以下(8月10日アクセス)を参考にした.)
ヒズボラはイランの走狗でしかない,と批判するアラブ知識人もいる.
以下引用.
カダフィ大佐の息子サイフ・アル・イスラムの友人でイタリア在住のリビア人知識人アル・フーニ(Dr.Muhammad Al-Huni)は,最近リベラル派のサイトElaph.comに一連の反ヒズボラ記事を掲載し,イランとシリアの権益に奉仕する存在として,ヒズボラ,ナスララ書記長を批判した.
以下その記事内容である.
7月16日. 南レバノン“解放者”はレバノン支配者の走狗
ハサン・ナスララは,南レバノン解放後,郷土占領政権と戦ったアラブの英雄として,歴史にその名を残し得たかも知れない.かも知れぬとは,彼が占領者をレバノンから駆逐したらという前提がつくからである….
しかしヒズボラは,レバノン人民の名を借りながら,解放を目的とする英雄的闘争という名を借りながら,イランとシリアの抑圧政権に奉仕しているのである.
(イスラエルの南レバノン撤収後の)一連の事件がこの事実を暴露した.
そして,ヒズボラの最近の行動が,その一番の証明である….
〔略〕
ナスララとその民兵隊は,レバノン国旗ではない旗を捧げ持ち,レバノン国歌ではない歌をうたい,レバノンの国権,国家目標ではない権益と目的を有し,レバノン国軍のものではない武器弾薬を備蓄,使用し,レバノンの敵に奉仕するだけのことしかしていない….
レバノンにおけるシリアのプレゼンスを守ってきたのがナスララである.
彼だけではなくアラブ人全員が,シリアのプレゼンスはレバノン人民に対する支配であることを,百も承知なのである.
シリアのギャング政権は,自国人民を弾圧,搾取し,今度は(レバノン)人民を支配し,収奪している.
ナスララはその強盗政権の守衛役として走りまわるのである.ナスララとその民兵隊は,イランの資金で動きながら,ハマスのような民兵隊の存在に気付き,被占領(パレスチナ)地に対する希望が浮上する度に,これを打ち砕くことに精をだすようになった.
ハマスはハマスでヒズボラの旗を打ち振る…パレスチナの旗を認めることはない….
ナスララとその民兵隊はレバノンのメディアを脅迫し,言論,思想の自由を冒している…彼はレバノン政府を認めず,国家主権を無視し,国法と対外条約に従った国家運営に従わない….
ナスララとその民兵隊のおかげで,レバノンは完全な国家主権を行使できない.国土の一部,一番危険な境界域がナスララの支配下にあるからだ.
ナスララは,レバノン全域を占領するため,その手始めとして南レバノンを手中にしたといってもよい.
〔略〕
7月22日. ヒズボラはレバノン社会から遊離し,イランの金で生きる民兵組織
〔略〕
ヒズボラに金をだしているのはイランの聖職者であるから,我々はこの民兵組織を単なる(出資者の)道具とみなさなければならない.
我々は,これを使っているイランを調べる必要がある.
イランはヨーロッパの(核開発に関する)提案に対する回答を8月22日まで延期すると言っている.最初からその計算だった.
つまり,ヒズボラの攻撃計画は,その背後にいるイランの計画である.
中東情勢を悪化させて自国の核開発にかかる国際圧力をかわすと同時に,圧力手段で自分の立場を強くしておこうという魂胆なのである….
イランの大統領アフマディネジャドは,イスラエル潰滅と地図からの抹消を常日頃から唱え,これを最高目標に掲げている.
通常型兵器と都市圏に届く長射程のミサイルを供給しているのは,恐らくこのイランであろう.
今回の事件がイランのイスラエル撃滅の一環であるとすれば,中東全体の悲劇となる.犠牲者の数も千人単位にとどまらず,百万単位になってしまうだろう…」※2.
※1 2006年7月16日付 Elaph
※2 同22日付 同上
▼ さらに2008年7月3日には,英国がヒズボラの資金調達活動などを非合法化している.
ヒズボラがイランのシーア派勢力に対する軍事訓練などを行なっているとされたためだという.▲
なお,イラン側では,ヒズボラは以下のように説明されている.
http://www.irib.ir/Worldservice/japaneseRADIO/hizbollah-nasrollah.htm
【質問】
ヒズボラと麻薬の結びつきは?
【回答】
佐々木良昭によれば,スンニー派に比べて,シーア派の一部は,ハシシについては,あまり厳しく禁じていない側面があるという.
また,エジプトのシナイ半島で,ヘズブラがガザへの武器密輸に際し,現金とハシシを始めとする麻薬を,協力者に提供しているという情報も流れており,ヘズブラと麻薬との関連は,疑わざるをえないという.
さらに彼は,1975年から1990年に起こった内戦時には,ベカー高原ではハシシやアヘンの栽培が大っぴらに行われており,内戦が終結すると政府の取り締まりが厳しくなって麻薬の栽培は小規模化していたようだが,ヘズブラはそのような農家の麻薬栽培を,黙認していたものと思われる,と述べている.
詳しくは「中東Today」,2009年04月14日付を参照されたし.
【質問】
ヒズボラはレバノン正規軍じゃないから,「テロリスト=反社会的犯罪者集団」としてしまえば,戦時国際法の適用外にする事は可能じゃない?
カチューシャぶち込まれている以上,「自衛権の行使」って部分でも正当性があるんだし,これである程度は国際法からのフリーハンドを得られるんじゃ?
それに,これなら「警察権の行使」だから,レバノンに恒久的に軍事力を展開するとか言い出さない限り,大義名分は一応成り立つでしょうよ.
いささか強引な方法だとは思うけど.
【回答】
いや,ヒズボラは政党参画もしてる歴然とした民兵組織だから.
アブグレイブに収容してるアルカイダやタリバンの戦闘員すら戦闘員資格を認めざるを得なくなったのに,ヒズボラ戦闘員を除外しようとすると,どれだけの法的ハードルを超えなきゃならんのか想像もつかん.
それでなくてもハーグ戦争法規の
・責任ある指揮者
・遠方より認識可能な特殊標章着用
・公然武器携行
・戦争法遵守
の四原則のうち,戦争法遵守はちと怪しいが,それ以外の三つは満たしてるんだし.
ヒズボラの少年兵士
【質問】
ヒズボラの攻撃は,カチューシャ・ロケットによるものなのか?
【回答】
ヒズボラ側の発表によれば,カチューシャではなく,射程40km以上のイラン製ミサイル「ラード」を使ったとしている.
以下引用.
ヒズボラにイランがミサイル供給か,命中精度が向上
【エルサレム=三井美奈】レバノンのシーア派組織ヒズボラは16日,ハイファを攻撃した際に,イラン製ミサイル「ラード」を使ったとの声明を発表した.
同ミサイルはこれまで対イスラエル攻撃に使われた旧ソ連開発のカチューシャ・ロケット砲より射程が長く,命中精度も高い.
イスラエル軍は,イランが兵器性能を著しく向上させている上,ヒズボラに大量に供給していることに衝撃を受けている.
イスラエル軍によると,「ラード」ミサイルは射程40キロ以上.ハイファでは一部が列車の操車場に着弾した.
元参謀総長のモファズ運輸相は,被弾した操車場を訪れ,根拠は明らかにしなかったが,
「弾薬はシリアが提供した」
と述べ,イランとシリアがヒズボラの装備拡大の背後にいるとの見方を示した.
また,太田述正によれば,カチューシャ,ハセブ,フェア3,ジルザルなどであり,これは,テロ/ゲリラ勢力が,自爆テロに加えて,もう一つの有効かつ強力な攻撃手段を確保したことを意味し,隔壁(separation
barrier)政策の推進に意味がないことをはっきりさせるものだという.
以下引用.
しかし,戦史的により注目されるのは,今次紛争の間中,ヒズボラがロケットをイスラエルの北部地域に毎日100発内外のオーダーで打ち込んだことです.
ヒズボラは,
射程7マイルのハセブ(Haseb)ロケットから始まって,
約1万発の射程12マイルで口径120ミリのソ連(ロシア)製のカチューシャ(Katyusha)ロケット,
数百発の射程30マイルで口径220ミリの200ポンド弾頭を搭載可能なイラン製のフェア3(Fair-3)ロケットのシリア版,
若干数の射程45マイルで口径333ミリの440ポンド弾頭を搭載可能なイラン製のフェア5(Fair-5)ロケットや射程65〜85マイル,
一説には130マイルで口径302ミリのジルザル(Zilzal/Zelzal)ロケット,
という具合に全部で12,000発から16,000発のロケットと1,000から1,500のロケット・ランチャー(発射台)をを持っていて,今次紛争中にロケットを約4,000発撃ったとされていますが,最後のジルザル・ロケット(少なくともテルアビブ郊外まで到達可能)は今次紛争では用いられませんでした.
これらのロケットの命中精度は低いのですが,ヒズボラは,これらのロケットにクラスター爆弾やボールベアリング入りの爆弾を弾頭につめることによって殺傷能力を増大する,という創意工夫をこらし,イスラエルの北部地域の一般住民を恐怖にどん底に陥れました.
悩ましいことに,イスラエルは,米国と共同開発したアロー対ミサイル・システム(Arrow-2 system)を持ってはいるものの,これは1991年の湾岸戦争の時のイラクからのスカッド・ミサイル攻撃のような長射程のミサイル攻撃に対処するものであって,ヒズボラのロケットのような短射程のものには有効ではないことです.
そうなると,ロケットそのものを破壊するかロケット発射台を破壊するかしかないわけですが,ロケットもロケット発射台も小さいものが多く,容易に民家等に隠せるため,発見することが困難であり,しかも破壊しようとすれば,一般住民への被害が避けられないという問題があるのです.
(以上,
ワシントン・ポスト,
ロサンゼルス・タイムズ,
ニューヨーク・タイムズ
(いずれも7月17日アクセス),
ニューヨーク・タイムズ,
(7月19日アクセス),
ワシントン・ポスト
(8月9日アクセス)による.)
これは,テロ/ゲリラ勢力が,自爆テロに加えて,もう一つの有効かつ強力な攻撃手段を確保したことを意味します.
イスラエルのケースで言えば,自爆テロを多用してきたパレスティナ過激派に対しては,占領地からイスラエル軍と入植者を一方的に撤退させるとともに,境界に隔壁(separation barrier)を設けることによって,自爆テロを封じ込めることに成功しつつあったところ,(パレスティナ過激派もささやかとは言えどもロケット攻撃を行ってきましたが,)ヒズボラによる威力あるロケットの大量打ち込みの「成功」は,かつてのレバノンからのイスラエル軍の一方的撤退の効果を無に帰せしめ,仮にレバノンとイスラエルの境界に隔壁を設けたとしても,何の意味もないことをはっきりさせた点でイスラエルに衝撃を与えています.
つまり,パレスティナ過激派がガザ地区やヨルダン川西岸地区からヒズボラのように威力あるロケットを大量に打ち込んできた場合,イスラエルは対処することが極めて困難だ,ということです.
この結果,イスラエルは,シャロン政権時代に採用した,ガザとヨルダン川西岸地区からの一方的撤退と隔壁の構築,という政策をまずザ地区(入植者9,000人の撤退)において実行に移したところ,シャロン政権の路線を引き継いだオルメルト政権としては,この政策を予定通りヨルダン川西岸地区(入植者70,000人)でも実行に移すことについては,慎重の上にも慎重を期さなければならないことになったのです.
(以上,ニューヨーク・タイムズ(8月13日アクセス)による.)
その後,案の定,一方的撤退は見直されることになりましたとさ.
要するにヒズボラは本音じゃ,パレスチナの事なんかどうだっていいってことさ.
CRS in mixi支隊
その破壊力
井上@kojii.net in mixi支隊
ただし,女性の胸には弱い(笑).
以下引用.
豊胸手術でロケット弾から守られた女性 イスラエル
[エルサレム 15日 ロイター] イスラエルで,24歳の女性がヒズボラによるロケット弾攻撃を受け負傷したが,豊胸手術をしていたおかげで命は助かった.
医師たちは,心臓に届くまで数インチのところで,胸に埋められたシリコンが銃弾を受け止めているのを発見した.
イスラエル北部にあるナハリヤ病院の広報担当者は15日,「彼女は死から救われました」と述べた.
女性はすでに退院している.
【質問】
ヒズボラはどこから武器を入手しているのか?
【回答】
イスラエル軍によれば,シリアからの密輸だという.
以下引用.
ヒズボラはシリアから武器を密輸=イスラエル軍
[エルサレム 18日 ロイター] イスラエル軍のガディ・アイゼンコット少将は記者会見で,レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラが武器をシリアから密輸しているという認識を表明.
「過去数日間シリアからの武器密輸が続いている」
と述べた.
ただ,シリアを攻撃対象と認識していないことも明らかにした.
少将は
「シリアやレバノン軍を標的とはみていないが,シリアからレバノンに武器が密輸され,イスラエル一般市民の攻撃に使われている」
と話した.
ヒズボラ兵士
【質問】
ヒズボラが長距離砲やイラン製のミサイルみたいなのでイスラエルの内陸部の都市を攻撃した,とニュースにありましたが,それってイスラエルに発射場所を特定されてすぐに反撃されてしまうリスクも考えて発射してるのでしょうか?
長距離砲なんて発射してすぐには遠くまで逃げられないと思うのですが.
【回答】
はい.その通りです.
イスラエルで取材した報道写真には,自走砲が多めに写っていると思うんですが,あの自走砲の射程内で対砲迫レーダーに弾道が捉えられたら,対砲兵射撃を受ける可能性があります.
ただし,ヒズボラはそこらのことを考えて,トラックの荷台と運転台の屋根を利用し,簡単に一斉射撃したらとっとと動けるロケット,通称カチューシャを使っています.
ということで,使っているのは榴弾砲とかの大砲じゃなくてロケット発射用トラック.
一方,イスラエル側はメディアも駆使し,さらには艦船にTHELレーザーを載せて配備するとか言うとります.
ちなみにイスラエルの英字新聞は国民が多様なのにあわせて極めて読みやすい作りになってるんで,読むと良いかと思う.速報もどんどん流します.
haaretz.com とかがいいかな.
【質問】
ヒズボラのロケット弾攻撃を阻止するのは,そんなに難しいことなの?
【回答】
ボラのロケット弾攻撃は,自走車両型の発射台でなく,歩兵携行で簡易発射台から単発で撃っているよう.
射撃精度の不要な都市攻撃でもあるので,これなら移動展開も容易.それに何と言っても自走車両より捕捉され難い.
見つかったら体一つで逃げればいいし〜.
陣地型の発射施設も確認されてる――ビンドジャベルの市街戦はそれらの破壊が主目的だったはず――が,周辺域からの発射が途絶えない辺り,完全に破壊するのは失敗したようだ.
どうやら陣地間を広大な地下トンネルでつないでいるっぽいので,空爆だけでは叩き潰すのは難しいっぽい.
トンネルの出口は当然1対1じゃないわけで,出入り口だけ見張っててもダメ.
だから地上戦力投入でトンネル内を潰さないとアカンだろうけど,それやるとおそらくIDFも洒落にならん被害を被る可能性が大.
金さえあれば,トンネルへバンカー・バスターぶち込みまくることもできるんだが.
さらに,Stratforによれば,
ヒズボラはレバノン南部でイスラエル国防軍に対してよく対抗しています.
ヒズボラ戦闘団は深い塹壕に潜みよく装備された集団で,イスラエル国防軍の戦術に適応しています.
特筆すべき点はヒズボラのミサイル運用能力にあります.イスラエルの侵攻が進むとともにその影響は強まるでしょう.
ヒズボラのロケット発射機に対するイスラエル空軍の攻撃は予想されたほど成功はしていません.
これはイスラエル北部に打ち込まれるロケット砲攻撃だけでなく,国防軍との戦いで明らかになったヒズボラの戦術によっても明らかになってきました.
攻撃を受けた際のイスラエル軍の反応時間は約2分です.
ヒズボラはこれを熟知し,回避のための戦術を用いています.
ロケットランチャーはリモコンで操作されたり,スクーターに乗るヒズボラの兵士が引き金を引いて発射し,ただちに逃走します.こうした戦法は小型のカチューシャロケットに使われます.
より大きなフジル・ロケットランチャーはトラックに搭載されていますが,これらを隠匿するためヒズボラは熱源を発生させるダミーのランチャーを使用しています.
本物のランチャーのとなりにダミーのランチャーを設置し,発射直後に本物は移動します.
イスラエル空軍は置き去りにされたおとりを攻撃しているのです.
ヒズボラのロケット攻撃が衰えないことは,イスラエル空軍がランチャー攻撃に失敗していることを毎日証明しています.
【質問】
ヒズボラのロケット弾,毎回百発以上撃っていて,いつも死者一人二人ってのは,効率悪過ぎない?
【回答】
ロケット弾による継続的な攻撃は,実際の殺傷力よりも,非戦闘員への精神的な圧迫や,経済・交通機関へのダメージ狙いでしょ.
ロケットのメリットは少量生産するなら簡単で,単発なら発射機も小さいことですね.
数作ろうとすると高くなるし,弾道ばらつくし,発射機が大掛かりになる.
単発じゃラッキーヒット狙いしかできなくてFresh
Bombの方が効果高し.
【質問】
ヒズボラがイスラエルの艦艇に突入させた無人機,何処のメーカーの無人機なん?
JSF in mixi支隊
【回答】
イラン製UAV「ミルサード」とする説や,やはりイラン製の対艦ミサイルC-102(レーダー誘導)という説もありましたが,どうやらC-802ということで落ち着いた模様です.
http://www.defenseindustrydaily.com/2006/07/conflict-tech-israel-vs-hezbollahiran/index.php
http://www.usatoday.com/news/world/2006-07-15-iran-ship-attack_x.htm
詳しくは
「UAV体当たりは実用的?」
を参照してください.
井上@Kojii in mixi支隊,改
ミルサードは,こないだのNHKスペシャルに出てましたねえ.
イラン要人がこれについてインタビューを受けていました.
こんなことになるなら,録画しとくべきだった……
丼炒飯 in mixi支隊
乗組員(Saar-5型コルベット)は,「まさか民兵がそんなもん持ってねえだろ」ってことで,防空システムのスイッチ切ってたとか…orz
ちなみに同艇は,ファランクス以外にIAIのBarakも積んでます.これ,インド海軍の標準短SAMになりそうな勢いの今日この頃です.
イスラエル交通相 in mixi支隊,改
先週のネタにしたUAVカミカゼアタック騒動もそう.
現時点では「UAVで体当たり突入」といえば珍しいから,実効性の有無とは関係なく話題性がある.
それを国家ではなくてヒズボラみたいな非政府組織がやれば,なおのこと.
「無人機というハイテクな装備を使いこなしているスーパーなゲリラ組織」というイメージ作りができれば,いい宣伝になる(もっとも,実質的にヒズボラはイランの別働隊みたいなもんだから,正規軍に近い存在と見ていいと思うが).
だから,そのインパクトを強調するべく,意図的に「UAVカミカゼアタック説」を吹聴した可能性が高いと思われるがどうか.
ちなみにこの件は,先週の記事にも後から加筆したように
「最初にC-802を撃ち込んで注意を引き,さらにC-701を撃ち込んでSa'ar5コルベットに命中させた」
という説が出ている.
ちなみに,どちらのミサイルも中国製,それをイランが購入している.
【質問】
なぜイスラエル艦はヒズボラの攻撃を防げなかったのか?
【回答】
http://www.strategypage.com/htmw/htsurf/articles/20060829.aspx
によれば,イスラエルの艦船のミサイル防御システムがオフにされていたためだという.
で,なぜオフにしていたかというと,該当システムがイスラエルの航空機の行なっていた行動に悪影響を及ぼすことを避けるため,だったとか.
同サイトでは,このミサイル防御システムがオンになっていれば,C-802対艦ミサイルを防ぎえたはずである,としている.
【質問】
ヒズボラの保有する「Mirsad1」というUAVは,どこが開発したものなのか?
【回答】
研究者の間ではウクライナ・フィジカル・シミュレーション・リサーチ社製造を行っているUAV「KhAI-112」を元に,イラン・エアクラフト・マニュファクチャリング・インダストリー社が複製,もしくは技術移転を受けて製作したものではないかという見方もでているが,ヒズボラの主張するところの独自開発という可能性も,ないわけではないという.
以下引用.
ヒズボラは昨年,「Mirsad1」という独自開発UAVのビデオを公表している.
そのビデオで公開されたUAVの画像は不鮮明ながらも研究者の間ではウクライナ・フィジカル・シミュレーション・リサーチ社(会社はウクライナ航空宇宙大学が設立したもの)が製造を行っているUAVを元にイラン・エアクラフト・マニュファクチャリング・インダストリー社が複製,もしくは技術移転を受けて製作したものではないかという見方もでている.
問題を複雑にしているのが,ハイテク兵器の代表とも目されているUAVが案外,簡単に作ることができるという点にある.
画像はヒズボラのUAV「Mirsad1」の原型ではないかとされるウクライナの「KhAI-112」となる.翼長が3.5メートル,全長が2.7メートルで12馬力のエンジンを搭載したこの機体は最高時速が180キロメートル(巡航速度は時速120キロ)で15キロの物資を搭載することができるが,仕様的にはラジコン飛行機といってもいいような代物だ.
今週放送されたNHKによるインタビューでヒズボラの上級幹部は,「Mirsad1」がイランから供給されたものではなく,市場で販売されている部品を使って自分達で製作したものだと発言している.
UAVがイラン製である可能性は高いが,市場で販売されている部品でヒズボラ自身が製作したというヒズボラ幹部の発言を否定することもまた,難しい.
問題はこうした兵器は小型で非常に低空を飛行することができるために,有効な迎撃手段というものが少ないという点にある.
生物化学兵器を搭載すれば,アメリカが恐れる大量破壊兵器として使うこともできることとなる.
イスラエルは今回の戦闘行動では過剰とも思える程,徹底的な攻撃を繰り返し,ヒズボラを壊滅状態に追い込もうとしているが,ある意味,それは安価なハイテク兵器を駆使するヒズボラに対するイスラエル側の焦燥感の裏返しでもある.
【質問】
ヒズボラの乗る悪役メカには,やっぱり自爆スイッチが標準装備ですか?
【回答】
あと,段ボール戦車なので,楽しそうで戦意が削がれる.
片羽絞め by mail
【質問】
以下の記事の「未知のロケット弾」とは,どんなものか?
未知のロケット弾が着弾=大破壊力,イラン関与か−イスラエル
【エルサレム28日時事】イスラエル警察当局者は28日,レバノン国境から約50キロのイスラエル北部アフラに「これまでにない破壊力を持つ未知のロケット弾が着弾した」と語った.イスラエル軍スポークスマンもこの情報を確認した.
イスラム教シーア派武装組織ヒズボラが発射したものとみられ,このロケット弾はイランの支援を得て開発された可能性もある.
イスラエル当局はかねて,ヒズボラがイランの支援で強力なロケット弾を開発している可能性が高いと主張していた.
【回答】
続報によれば,ヒズボラが『ハイバル1』と呼ぶ,新型ロケット弾.射程70km,イラン製またはシリア製と見られている.
また,これとは別に,射程150〜200kmの長距離ミサイルも保有していると見られている.
以下引用.
射程70キロのミサイル使用 ヒズボラ
【エルサレム28日共同】イスラエル紙イディオト・アハロノト(電子版)は28日,同国警察当局の話として,レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラが国境から約50キロ離れたイスラエル北部のアフラに撃ち込んだミサイルについて,射程約70キロのイラン製で,12日の交戦開始後,初めて使われたと報じた.
ヒズボラは16日,イスラエル北部の中心都市ハイファへの攻撃で,射程約40キロのイラン製ミサイルを使用.同日の攻撃ではイスラエル人8人が死亡した.
イスラエル軍は,ヒズボラが中部テルアビブも攻撃できる射程150―200キロの長距離ミサイルも保有しているとみて,警戒を強めている.
ヒズボラはラジオを通じた声明で,「ロケット弾は『ハイバル1』」と発表した.
ロケット弾のうち1発は爆薬100キロを搭載しており,イスラエル当局は射程約75キロ・メートルのイラン製ミサイル「ファジュル5」ではないかとみている.
ロケット弾はシリア製との報道もある.
アフラは対レバノン国境南方50キロに位置し,ヒズボラが使ったロケット弾の国境からの到達距離としては最も長い.
【質問】
夏の夜中,浜辺でロケット打ち上げて喜んでる,ヤンキーふうの連中をよく見かけるけど,あれってヒズボラ?
【回答】
産卵中の亀.
片羽絞め by mail
【質問】
ヒズボラ兵は何故,アラブ諸国の正規軍よりもイスラエルに対して善戦しているのか?
【回答】
ヒズボラは装備が良く動機付けもしっかりした,1990年代からの古参兵であるため.
また,厳しく中央集権化した,多くのアラブの軍隊と異なり,ヒズボラは中央のコントロールを受けない小グループで活動するので,上級指導部からの許可を受けずに迅速に対応することができるためだという.
以下引用.
相対論ではあるが,ヒズボラの民兵は対イスラエル戦闘で,多くのアラブ国家よりも成功しており,専門家は,この集団が今次の対決によく準備していたとしている.
「ヒズボラ:政治と宗教」という著作のあるアマル・サード=ゴレイエブ氏はアルジャジーラに対し,
「多くの解説者たちは,この集団が計算を間違えていると主張している.
しかし,ヒズボラが軍事的抑止力を構築する能力については,この運動組織がイスラエルの猛攻撃に対して準備できていたという事実が示していると言わねばならない」
と話した.
これまでにイスラエル軍の戦死者は12人で,ヒズボラによって数台の戦車が破壊されたが,ヒズボラは自陣営の戦死者13人と発表している.イスラエル側では,ヒズボラ側の損害は100人に達するとしている.
ヒズボラの戦術は戦闘が継続するうちに次第に明らかになっている.戦力約5000人は分散した部隊に分かれ,イスラエルが2000年にレバノン南部から撤退して以来,南部一帯に地下トンネルを掘り,工夫を凝らした武器庫を構築して準備を進めてきた.
軍事専門家は,ヒズボラの戦術をヴェトナム戦士その他のゲリラ戦力と比較している.
ジェーンズ・デフェンス・ウィークリー誌のレバノン駐在分析員,ニコラス・ブランフォード氏はアルジャジーラに対し,
「彼らは武装が良く動機付けもしっかりした,1990年代からの古参兵です.戦略は古くからの毛沢東ゲリラ戦略である『敵,進めば,我退き,敵退けば,我進む』です」
と語った.
厳しく中央集権化した,多くのアラブの軍隊と異なり,ヒズボラは中央のコントロールを受けない小さなグループを組んで活動し,上級指導部からの許可を受けずに迅速に対応することができる.
ゴレイエブ氏は
「彼らは常時,小さく,孤立した細胞として作戦します.細胞は他の細胞が何をしているのか知りません.ハッサン・ナスララー(ヒズボラ最高指導者)が軍事部門が何をしているか知らないこともあるのは確かですよ.分散構造がこの集団の軍事的潜在能力の一部になっています」
と語る.
イスラエルのレバノンでの最後の戦争は1982年,パレスチナ解放機構(PLO)との戦いであった.イスラエル侵攻に対するパレスチナ側の抵抗は大方,成功しなかったが,それは情報員の潜入を許し,採用した戦術が正規軍のそれだったためである.
今回のイスラエル軍は,レバノン南部でゲリラ戦争を何年間も経験した専門的で,公然化されていないメンバーから構成されていて,かつてよりずっと手強い敵に向かっている.
レバノン侵攻作戦から帰還したイスラエル将兵の報告でも,手強い敵との激戦であると述べられている.
米AP通信の記事が引用した報告の一つは
「連中が正規兵じゃないってわかるかい.ゲリラだ.非常に手強いよ」
と述べている.
〔略〕
ジェーンズ・デフェンス・ウィークリー誌のアロン・ベン=ダヴィド記者は先週号で,イスラエル軍はレバノンへの北方攻勢で「相当な規模の」死傷者を出したと報じた.同記者は
「イスラエル軍は,ヒズボラがイスラエル国境近くにヴェトコン方式の地下トンネルと塹壕(ざんごう)を張り巡らしていることを発見した.その作戦要員と武器を遮蔽するためのものである」
と書いている.
また,JINSAも次のように述べる.
ヒズボラは歩兵旅団の戦力を持った3500人の武装組織である.イスラエル空軍は空爆ではヒズボラを破ることはできないと気付いた.
〔略〕
ヒズボラの兵士は軍服の下にしばしば民間人の服を着込み,攻撃のあと地元民に紛れ込む.
武器は基地や兵器庫ではなく,トンネル陣地や民間の家屋に隠されている.
ヒズボラのロケットは民間の自動車で移送されている.
このため,イスラエル軍は民間人や民間の車両への攻撃を強いられている.
ヒズボラのメディア管理は巧妙で,イスラエルが現在のように非難される状況を作り出すことができた.
ヒズボラは軍隊のように訓練され良い装備を持った民兵で,その戦闘員は「ハマスやパレスチナ人とは比べものにならない」.ヒズボラは防弾チョッキを着て暗視ゴーグルを持っている.良好な通信設備を持ちイスラエルと同じ弾薬を使っている.
イラン革命防衛隊の支援を受け,長距離ロケットや無人飛行機,対艦ミサイルを運用している.
「ヒズボラの武器貯蔵室はコンクリート,はしご,脱出路を備えたもので,私たちはそれらが組織されていることを知りませんでした」
と,イスラエル軍の大佐は語る.
イスラエルの情報機関は,民家の中にロケット発射室が備えられていたことを知らず,驚いた.
06年のイスラエル撤退以来,ヒズボラはイスラエル国境の町を偽装された砦に作り替えた.
トンネル陣地は狙撃兵の位置を隠し,地雷原を秘密に設定,予定戦場にはあらかじめ迫撃砲の照準がつけられた.
ヒズボラはカチューシャロケットのような短射程のものから,テルアビブに到達する長射程のものまで多数のロケット兵器を保有しているが,テルアビブ攻撃にはロケットを供給したイランの許可が得られなかったようである.
ヒズボラはロケット攻撃に際して,しばしばタイマーを使用し,無人で攻撃をしかけている.
(以下略)
もっとも,ヒズボラが民間人を盾にして立て篭もっている(2006年7月26日付,エルサレム・ポスト)せいだという話もあるが.
市街地ゲリラ戦のメリットは幾つかあるが,民間人を殺させる事での世論喚起※を狙ってもいるだろう.
回避不能な効果的な戦術.
尚,イスラエルは先日の誤爆でその住宅地付近からロケット弾を発射する映像を公開し,意図的に民間人を巻き込もうとしていると主張した.
ヒズボラはそれに関して一切反論せず,イスラエルは弱い者しか殺せないと非難した.
※英語だけど,これは面白いと思う.
要は,今実際に私達が見ているレバノン市民達の死体などは,全部が全部でないにせよ,幾つかは捏造されているということ.
http://eureferendum.blogspot.com/2006/07/milking-it.html
また,イスラエル予備役兵が訓練・装備ともに不足していることも,イスラエル軍苦戦の原因だという.
以下引用.
イスラエル予備役兵は訓練・装備ともに不足 ハーレツ紙が報道
【アルジャジーラ特約7日】イスラエル紙のハーレツ(英語版)が7日,報じたところによると,イスラエルがヒズボラ討伐作戦で苦戦を強いられている原因の一つは,予備役兵の準備不足と装備の貧弱さにある.
同紙は,ある兵士の言葉として,
「2日間,我々はほとんどうまくいっていない.予備役兵の適応のレベルも問題なのだ」
と報じた.
また,「A」とのみ記された予備役兵士は
「自分を守るのが精一杯だ」
と語った.
兵士Aは,レバノンでの戦役は,6年前,第2次インティファーダが開始されて以降のパレスチナ地域での戦闘とは全く違うとして,
「パレスチナ地域でのような事は何もない.
陽のあるうちは,生き物はどこにも見えない.夜もほとんど何も見えないのさ.
わが方の部隊の位置についての情報をヒズボラに通報する人たちがいるようで,相手は迫撃砲で撃って来る.砲弾はすぐ近くに落下して,おびえてしまう」
と話した.
兵士Aはまた,
「兵士の多くは銃身を短くしたM16ライフルや通信機器ばかりか,止血帯も持っていない」
とこぼした.
イスラエルはレバノンでの主攻勢作戦のために,予備役兵数千人をすでに召集した.
「ハナン」という名の予備役兵は,レバノンから戻った兵隊はこれから前線に向かう兵隊に武器を渡していると語った.
「ギリ」という予備役兵は,ほとんどの装備が備蓄庫から消えているとして,次のように語った.
「6年間も訓練を受けて来たゲリラ戦士と戦わされることになっている.
そして,我が方は武器だけが相手より有利なのだ.
予備役で軍務に就いたきたこれまでの年月,われわれは最良の装備を持っていたが,今や,そうした装備が姿を消してしまったという現実に出会っている」.
「私のヘルメットは1981年製だよ.私より3つも年上さ」
と,22歳の兵士「ガル」が言った.
整備・保全担当の将校,エリ・アルトマンは,新しい装備は常備軍の方に回されているとして,
「備蓄庫にある装備は使えると思っていたのだ」
と認めた.
ハーレツ紙は,予備役兵士が臨戦レベルに達していないことはここ数年,予備役部隊が予算削減されていたことの直接の結果だとしている.
予備役司令官を務めていたアリエル・ハイマン准将は
「(予算削減に対応する)最も簡単なやり方は訓練時間を減らすことだ」と述べ,「はっきりしているのは,予備役部隊が十分に訓練されていなかったことだ.訓練の不足がどれほど重大なことかは,戦闘になって初めてわかる」
と付け加えた.
しかし,予備役大隊の副司令官を務めるジブ・ローゼルマン少将は,1982年から2000年までのレバノン占領時を含め,予備役将兵の戦闘経験がこれまでより劣った装備を補ってくれるとして,
「現役の兵士の方が強いことに疑いないが,われわれは古参の牡牛みたいなものだ.動きは鈍いが,着実で危険を冒したりしない」
と語った.
(翻訳・ベリタ通信=日比野 孟)
ただし,IDFの,最初に招集された予備役兵士が一時帰宅した際のインタビューでは,戦闘が徐々に軍事的勝利に向かっていると感じる兵士が多かった(2006/8/6付,エルサレム・ポスト)そうなので,実は言われているほどの苦戦ではないのかもしれない.
ちなみに,ビズボラの監視・指令ポストなのだそうだ.
なんだかなあ.
http://84.95.240.242/~hnn/images/albums/1056_17257.jpg
【質問】
ヒズボラの自爆部隊の人数はどのくらいか?
【回答】
イラン労働通信社(ILNA)の記事によれば,2500人.
27名,2個隊がレバノン入りしているという.
以下引用.
イラン人自爆志願者2500名が待機
次に紹介するのは,レバノンへ送られたイラン人グループに関する最近の報道
2006年7月25日,イランのFarda通信は,イラン労働通信社(ILNA)の記事を引用し,次のように伝えた.
「ヒズボラ・イランは,これまで2500人ほどの自爆志願者を確保した.志願者は現在待機中であるが,最高指導者ハメネイ師の命令があれば,直ちに出撃,レバノンへ向かう.
ヒズボラ・イランのスポークスマン,ビグデリ(Mojtaba Bigdeli)によると,ヒズボラ・イラン議長ハラッジ(Mohammad Baqr Kharrazi)は,間もなくレバノンに指揮所を開設し,ヒズボラ・レバノンを支援し,抵抗運動と抑圧されたレバノン人民と連帯しつつ,状況をフォローする….
殉教作戦に命を捧げる2500名は,ヒズボラ・イランに関係するさまざまなグループを通して志願し,宣誓書に署名した者で,最高指導者(アリ・ハメネイ)の出撃命令を待っているところである」※2.
志願者応募のオンライン
2006年7月26日,イラン通信社Alborzは,「ムハンマドの戦士隊」にオンラインで志願できる,と報じた.この報道によると,「ムハンマドの戦士隊」は,レバノン行きの戦士をリクルートしており,希望者は電話(テヘラン88938821)で間合わせができる.ちなみに応募は満16歳以上の条件がついている.
殉教自爆隊2グループがレバノン入り
2006年7月18日,Alborz通信は,「指導,訓練をうけた殉教隊2ヶ隊が,戦闘参加を目的にレバノンへ送られた」と伝え,次のように報じた.
「シャヒード祈念世界イスラム組織本部のスポークスマン,モハマディ(Ali-Mohammadi)は,「志願者5万5000人の中から選ばれた27名を含め,2グループがレバノンに送られた.シオニスト政権との戦いに身を投じる…
この2隊はさまざまな訓練を受けており,あらゆる交通手段を使ってレバノンに到着し,レバノンがシオニスト政権に占領された場合,殉教作戦を遂行する.
この隊の派遣は志願形式をとっている.レバノンへはプライベートな身分で送られ,ヒズボラとは組織上のつながりがない…この27名は英語とアラビア語に堪能で,別命あるまでレバノンで待機する…」※3.
レバノン行きを目指して2チームがシリアへ
Mehr通信によると,自爆を目的とする2隊があり,スポークスマンのモハマディは次のように述べている.
「1チームは18名もうひとつは9名の編成で,別々にシリアへ向かった.あらゆる交通手段で,そこからレバノンの紛争地帯へ到達する…27名(2チーム)は全員アラビア語が堪能で,なかには英語を話せる者もいる…我々は,ヒズボラその他の団体と組織上のつながりはない.レバノン人民を助けるのが目的で,独立して行動中である…」※4.
※1 2006年7月29日付Al-Sharq Al-Awsat(ロンドン)
http://www.asharqalawsat.com/print/default.asp?did=375420
※2 2006年7月25日付Farda通信(イラン)
http://fardanews.com/show/?id=22540
※3 2006年7月18日付Alborz通信(イラン)
http://www.alborznews.net/shownews.asp?u=6132
※4 2006年7月17日付Mehr通信(イラン)
イランのポータル・ニュースwww.dat.ir からの引用
【質問】
ヒズボラはイランや北韓から,どんな支援を受けているのか?
【回答】
地下指揮所の建設,兵士の訓練,トンネル壕の建設,ミサイル隊の訓練など.
また,イラン革命防衛隊の隊員が戦闘に参加しているという報道もある.
以下引用.
革命防衛隊首脳に近いイランの軍事筋が,ロンドン発行アラビア語紙Al-Sharq Al-Awsatに,ヒズボラに対する訓練,武器援助等を明らかにした.以下その内容である.
「まず第一に,革命防衛隊はヒズボラ・ミサイル隊をつくった.1985年のことである.
ベッカー盆地のウベイダラー(Sheikh `Ubeidallah)軍基地で訓練をおこなった.
革命防衛隊から約2,000人が来て,この基地にいた.ここが彼等の司令部だった.
(1989年)レバノン内戦が終り,タイフ協定が結ばれると,大半はレバノンを去ったが,残った少数精鋭の部隊が150名から250名ほどのヒズボラ(戦士)を訓練した….
第二が,特別訓練コースだ.イランで実施され,これまで3000名を越えるヒズボラが訓練を受けた.
ゲリラ戦,ミサイル操作法,火砲の扱い方,無人機の操作方法,凧(ハング・グライダー)の使い方,海上戦の要点,高速艇の操縦法,通常戦闘といった課程で訓練される.
第三が,パイロットの養成訓練で,この3年間で50名が養成された.
第四はロケット基地の設定で,革命防衛隊はこれまでイスラエル国境沿いに20ヶ所つくった.
移動発射装置,つまり中型トラック搭載のミサイルランチャーも供給している.
ヒズボラは1992年から2005年までに,ミサイル及びロケットを約11500発,短射程及び中射程砲400門,アレシュ,ヌーリ及びハディッド型ロケットの供給をうけた.
昨年ヒズボラは333ミリ弾頭付きの大型ミサイルウカブ,そして大量の肩撃ち式対空ミサイルSAM7を貰い,中国製ミサイルのコピー兵器C802ミサイルを貰った.
そのうち2発が一昨日イスラエル艦艇の攻撃に使われた.
ヒズボラは最新式の地対地ミサイルを4種類所持している.即ち,
1 有効射程100kmのファジル ミサイル
2 有効射程90―110kmのイラン130 ミサイル
3 有効射程150kmのシャヒン ミサイル
4 有効射程150kmの335ミリ ロケット
この軍事筋は,「レバノンには,訓練教官,専門家及び技師が合計70名,イラン革命防衛隊情報隊(Faylaq Quds)60名がいる※13.ヒズボラ・ミサイル隊の支援,指導部指導の任にあたっている.
ほかに革命防衛隊秘密隊もいる.将校20名の編成で,最新装置を使ってイスラエル軍部隊の動きを追い,イスラエル国内のターゲット選択をやっている.
※14 2006年7月16日付Al-Sharq Al-Awsat (ロンドン)
ヒズボラを支援するイラン革命防衛隊と北朝鮮―海上挺進隊養成,ミサイル隊訓練,地下施設建設,イラン自爆隊も待機―
2006年7月29日,ロンドン発行アラビア語紙Al-Sharq Al-Awsatは,イラン革命防衛隊の対ヒズボラ支援の詳細記事を掲載した.ヒズボラの海上挺進隊の養成訓練にあたった革命防衛隊上級将校が,明らかにしたもの.
この上級将校によると,ヒズボラはダイバー隊と海上コマンド隊各1を持っている.
2006年7月14日,イスラエルの艦艇をターゲットにC802ミサイルが1発々射されたが,複数の革命防衛隊将校が立会って,ヒズボラが撃った.
ヒズボラは,革命防衛隊の支援を得て,地下指揮所を含む地下施設を建設した.
地下指揮所は複数整備され,革命防衛隊将校がヒズボラ戦士と共に運用している.
複数のイラン側通信社も,ヒズボラの対イスラエル闘争支援でレバノンに派遣されたイラン義勇兵について,一連のニュースを発行している.
次に紹介するのは,イランの対ヒズボラ支援記事.
革命防衛隊と北朝鮮技術者がヒズボラを支援
前出 Al-SharqAl-Awsatは次のように報道している※1.
「イスラエル軍と目下交戦中のヒズボラ戦士のうち数百名は,テヘラン,イスファハン,マシュハド,アフワーズ所在の革命防衛隊基地で特別訓練をうけた.
ヒズボラの海上挺進隊の養成訓練にあたった革命防衛隊上級将校によると,ヒズボラはさまざまな奥の手を持っている.
これまでイスラエル海軍と直接交戦したことはないが,レバノン駐留革命防衛隊の指導をうけて,C802ミサイルを発射し,イスラエル海軍の艦艇1隻を攻撃した.
ヒズボラはダイバー隊,海上コマンド隊各1を有し,後者は中国製のホドン級高速艇数隻を装備している.
イスラエル海軍に手痛い打撃を与える能力がある.
この上級将校は,「イランから来た技術者及び技術兵数百名と北朝鮮の技術者の支援をうけて,総延長25キロメートルのトンネル壕をつくりあげた.各トンネル壕の間口は12から18平方メートル,開口部に可動式床と半可動式の天井がとりつけられている.各トンネル壕は開口部を四つ有し,通路でつながっている.
ちなみに北朝鮮技術者は,イランの外交官召使い,レバノンにあるイランの機関や代表部等の使用人など,民間人を装っている.
革命防衛隊は,ベッカー盆地に地下貯蔵庫もつくった.深さは8メートル程度だが,多量のミサイルと弾薬が保管されている.
そのベッカー盆地には,中央指揮所が設けられ,革命防衛隊将校及びヒズボラ要員各4名が中心になって運用している.
各戦区にはそれぞれ指揮所がある.
ヒズボラのミサイル隊は,隊員約200人で編成されている.イランで訓練をうけた技術兵である.
現在3隊あり,各隊は20人のスタッフで運用されている」.
また,革命防衛隊の隊員が戦闘に参加しているという報道もある.
以下引用.
ヒズボラにイラン革命防衛隊員も?…イスラエルのTV
【エルサレム=本間圭一】イスラエルの民間テレビ「チャンネル10」は9日,外交筋の話として,レバノン南部でイスラエル軍との戦闘で死亡したヒズボラのメンバーの中に,イランの「革命防衛隊」隊員が含まれていた,と伝えた.
事実とすれば,武器供与などでヒズボラを支援するイランが,今回の対イスラエル戦に直接関与している可能性が強まりそうだ.
チャンネル10によると,死亡したメンバーが所持していた書類から,イラン人であることが特定されたという.しかし,イラン人の人数や,遺体が発見された場所などは不明.
ただ,ヒズボラはこの報道を否定している.
そればかりか,英国製の暗視装置が,イラン経由でヒズボラに渡ったのではないかとする疑いもあるという.
以下引用.
英国製暗視装置,イラン経由でヒズボラへ?
【ロンドン=本間圭一】21日付の英紙ザ・タイムズは,英国製の軍事用夜間暗視装置が,イラン経由でイスラム教シーア派組織ヒズボラに渡っていた可能性が浮上,英政府が緊急調査を開始した,と伝えた.
レバノン危機でヒズボラと交戦したイスラエル政府は,英政府に抗議しているという.
同紙によると,英企業は2003年,政府の許可を得てイランに夜間暗視装置250個を輸出した.イランの警察当局が,アフガニスタンからの麻薬密輸対策に使用することが目的で,外務省幹部は国会で,「イラン軍に使用される危険はない」と証言していた.
ところが,今回のレバノン危機で,イスラエル軍がレバノン南部のヒズボラ拠点で,英国製と見られる暗視装置を見つけ,イランがヒズボラに送っていた可能性が浮上した.
〔略〕
【質問】
ヒズボラはイランに応援されてるそうですが,応援団の団長はやっぱり学ランに鉄ゲタ?
【回答】
国土の気温と,「応援するなら派手に」的な意識が災いを招き,
アロハシャツ・サングラス・ウルトラクイズみたいな帽子という山本晋也監督調に.
応援物資にピンクチラシ.
片羽絞め by mail
【質問】
レバノンに,イスラーム諸国から義勇兵が向かっているというのは本当か?
【回答】
本当.
イランの他,インドネシアやマレーシア,フィリピンなどでその動きが報じられている.
イランでは,その行動を称賛するような報道ぶりである.
以下引用.
テロリスト200人派遣 イスラム過激派
ロイター通信によると,インドネシアやマレーシア,フィリピン,シンガポール出身のイスラム過激派約200人が,レバノンへの軍事作戦を続けるイスラエルや,同国を支持する米英両国の権益を攻撃するテロを計画し,それぞれの目的地に向かったという.
ジャカルタを本拠地とするイスラム過激派組織,アジア・ムスリム青年運動(AMYM)の代表が明らかにしたもので,派遣されたメンバーらは自爆テロの訓練も受けている.オーストラリアも標的に加える可能性があるという.(シンガポール 藤本欣也)
レバノン,パレスチナを目指すイラン学生正義団義勇兵
次に紹介するのは,レバノンを目指すイラン人義勇兵の報道.2006年7月26日アル・アラムTVが伝えた.
画像で見る場合は,以下を参照.
http://www.memritv.org/search.asp?ACT=S9&P1=1207
最初の関門はトルコ
レポーター;
このイランの男達は,声だけは勇ましい演説や政治プロパガンダを尻目に,言葉を行動に移す道を選びました.全員大学生です.「学生正義運動」の旗印のもと,ここテヘランに集まりました.これからレバノン,被占領下パレスチナへ向かい,抵抗活動に馳せ参じるのです.
特筆すべきは,政府の援助をうけずに活動する点です.全くの志願で,ボランティア運動なのです.
トルコからシリアを経由してレバノン入りを目指します.義勇兵隊達はトルコ当局の許可を期待しています.
学生正義運動団書記ネジャド(Amin Jalili Nejad);
これは人民運動である.誰からも援助をうけていない.自発的行動だ.レバノンとパレスチナの兄弟達を助けるのが,我々の目的だ.
トルコ国境へは明日到着するが,行軍途中で義勇兵が続々と集まるだろう.
体を張った殉教道
レポーター;
皆異口同音に地理上の困難を口にします.しかし,同じ宗教に対する,レバノンとパレスチナの兄弟達に対する共同体的責任感があります.お感じになれるでしょう.
義勇兵(コンピューター研修生)タクヴィ(Sahil Taqvi);
我々は殉教の道を行く.徒手空拳だがレバノン,パレスチナへ行って抵抗を助ける.体を張るつもりだ.
〔略〕
レポーター;
政治デモ,そして戦場で戦うという運動があります.イラン国民の心情は,理論,実践の両面で抵抗を支援するということでしょう.
生きた殉教者≠ニ彼等は自称しています.
道は確かに遠い.彼等も充分に承知しています.
しかしそれでも,やむにやまれに気持で,「兄弟を救う者は,アッラーが救う」を合言葉に,レバノンそしてパレスチナの兄弟達の許へ行くのです.
【質問】
イマド・ムグニヤって誰?
【回答】
イマド・ムグニヤImad Fayez Mughniyah は,ヒズボラの軍事部門最高幹部の一人.
ヒズボラの対外軍事諜報部門の責任者を長くつとめていた.
1962年レバノン南部のタイア・ディッバ村生まれ.
76年アラファトの部隊に狙撃手として参加.
80-90年代レバノンで多発した西欧人誘拐事件,レバノンのフランスと米国両大使館爆破,200人が死亡した米海兵隊司令部爆破事件などへの関与が疑われていた.
オサマ・ビンラデンが9・11を実行する前,対米テロ攻撃をもっとも数多く行った人間であり,過去30年で中東における最も危険なテロリストともいわれていた.
米は一時,懸賞金2500万ドルをムグニヤにかけていた.
2008.2.12夜,ダマスカスで乗車中の車の下で爆弾が爆発し,死亡.
イスラエルによる暗殺と見られるが,マイク・マコネル米国家情報長官は犯行はヒズボラ内部もしくはシリアが関与している可能性が高いとの見解を示し,ナスララによる犯行を示唆している.
【参考ページ】
http://bohyo.blog84.fc2.com/blog-entry-801.html
http://blogs.yahoo.co.jp/kokusaijoho_center/14975207.html
http://www.asahi.com/international/update/0220/TKY200802200166.html
http://www2.jiia.or.jp/pdf/extpub/090410-motegi_hitoshi_2.pdf
http://www.t-komazawa.ac.jp/personal/muromoto/semi/tamura/terrorism.htm
今戸でムグニを売ってる人じゃなくて残念です.
koz@ in mixi,2009年08月05日 22:20
【質問】
シリアからヒズボラへの「スカッド」ミサイル譲渡疑惑について教えてください.
【回答】
ここ数週,シリアとイスラエルの緊張が高まっているとする情報が多くなってます.
イスラエルとシリアといえば2007年9月上旬,イスラエルがシリア原子炉を空爆破壊したことが知られます.
数ヶ月にわたってイスラエルとシリアは互いに「戦争準備している」との非難を繰り返しており,
「イスラエルとヒズボラは一触即発」(某専門家)
の状態にあるとされます.
イスラエルが,トルコ海軍に対する防空システム提供を中止していますが,関連があるのかもしれません.
レバノンで反イスラエル武装闘争をする「ヒズボラ」に対しシリアが,短距離弾道弾「スカッド」を提供したことが理由です.
これまで観測や憶測はいろいろ出ていましたが,関係国のコメントは出ず,2010/04/13にイスラエルのペレス大統領が
「レバノン国内のヒズボラの部隊に,スカッドミサイルを譲渡した」
「シリアは平和を求めていると主張する一方で,イスラエルに脅威をもたらすことを唯一の目標としているヒズボラに,スカッドミサイルを譲渡している」
と,シリアを公式に非難したのが,初の公式発言となりました.
シリアとヒズボラは13日のペレス首相発言を受け,即座にこの非難を否定しましたが,米の対中東政策への影響は
「共和党が議会に対し,新シリア大使の任命を阻止する動きに出ている」
など,すでに顕れています.
ペレス発言を契機にシリアと米の関係は,複雑かつ厄介な形になっています.
オバマ米大統領は,アサッド政権を自身の中東政策の拠り所としており,シリアを地域和平プロセスに関与させ,イランとの戦略的同盟関係から引き抜くことは可能,としています.
一方,シリアのアサッド大統領は,レバノンTVとのインタビューのなかで
「ヒズボラとは緊密な関係にある」
「シリアがアラブの一員としてパレスチナ解放闘争に参加しているのは誇るべきことだ」
と述べ,あわせて
「シリアは外国の枠組みの一員になるつもりはない」
「イラク戦争前にわが国を誘い出そうとした,西側大国(ブッシュ政権期の米を暗に示している)の手になる”バクチ”に参加する気持ちもさらさらない」
と警告しています.
アサッド大統領は2月,ダマスカスでイランのアハマディネジャド大統領,ヒズボラの指導者ナスララ師と会談しており,米国とイスラエルの同盟に対して「抵抗」を続けることを誓っていました.
米国務省は,在米シリア大使館ナンバー2であるZouheir
Jabbour氏に対し2010/04/19,ヒズボラへの武器転移という「シリアの挑発的振る舞い」についての回答を要求しました.
国務省のデグッド副報道官は,
「米はいかなるものであれ,シリアからヒズボラへの武器転移を強く非難する.
特にスカッドのような弾道弾の転移についてはそうである」
と述べています.
シリア側はアサッド大統領の言として,
「レバノンとシリアにとってスカッドミサイルは,イスラエルからの攻撃に対処する抑止力である」
と,米のオバマ政権に説明したということです.
ちなみにヒズボラに転移されたとされるスカッドは,北鮮もしくはロシア製の「スカッドD」(射程688キロメートル)とされ,イスラエル全土が射程内に入ります.
2006年に発生したイスラエルとヒズボラの戦いでヒズボラは,射程約20キロの「カチューシャ・ロケット」を主に使用しました.
複数のイスラエル情報によれば,シリア軍はヒズボラの二個部隊に対し,ペイロード1トンの移動式スカッドミサイル運用訓練を行っているそうです.
イスラエル当局は,スカッドDミサイルのヒズボラへの転移に神経質になっており,「事態を変化させる武器」としています.
「中東の対立が高まったことを意味する」
とも述べています.
スカッドの何が問題かといえば,大きくいえば中東戦争に直結する導火線になりうるという点です.
イスラエル全土を,複数の地点から射程に入れるのを可能にする状況が生起したことが問題で,イスラエルのお尻に火をつける恐れがあります.
発射地点がレバノンに限定されないことも問題で,シリアから発射されたスカッドが,レバノンの領空を侵犯しても,レバノンはシリアの属国に近い国だから,大した問題にはならないという人もいます.
(参考地図)
米のゲイツ国防長官は2010/04/27,米国防総省で行われたイスラエル・バラク国防相との会談後の記者会見で,
「ヒズボラは,世界のどの政府よりも多い数のロケットとミサイルを保有している」
と述べましたが,イスラエルの期待に応える姿勢は見せませんでした.
ゲイツ長官は今回の件につき,
「米はレバノン,シリアで大規模衝突を起こすつもりはない.推移を注視している」
「シリアとイランは明らかに中東情勢を不安定にしている」
と非難,
「米は両国の動向を慎重に注視している」
と述べています.
バラク国防相は
「シリア・レバノン・イランは『慎重に注視』されることを屁とも思っていない」
と述べています.
イスラエル筋はこんなことを言っています.
●イスラエルは米と異なり,70キロ先のレバノン国境からミサイル照準を受けている.
●ゲイツ米国防長官の声明はシリアとレバノンに対し,わが国を攻撃する目的を持つ強力な武器を展開させる余裕を与えた
●バラク国防相,ネタニヤフ首相,国防当局者は,2006年の紛争以来現在にいたる4年間で,ヒズボラが数万基のロケット砲とミサイルを保有するに至ったこと,その量と質が北部イスラエルのみを対象としたレベルではもはやなく,イスラエル全土を対象とするに至ったことを説明する必要がある.
●シリアからヒズボラへの武器の流れを断ち切る行動なしに,「慎重に注視」することは,ヒズボラに,2006年夏のレバノン紛争の再来を促すことにつながる
●今年夏にイスラエルを紛争に引きずり込むことは,イラン,シリア,ヒズボラに政治,軍事的利益を与える.
紛争になれば,国際的な努力の過半をここに集中することが必要となる.
結果,核兵器開発計画が危機的段階に達し,経済制裁強化の方向で国際社会の力が集中しているイランに向ける力が分散される.
これは中東危機を生み出す以外の何者でもない.
⇒ 五月三日から始まるNPT再検討会議を前に世界は騒がしくなっています.
この件もその一環でしょう.
現在の国際社会のキモにあるのは,「イラン核武装」(とリンクする北鮮核武装)です.
イラン,北鮮と密接な関係にあるのがシリアで,大量破壊兵器の拡散・中継をする国として警戒されています.
中東,特にイランをめぐる動きと北鮮の動きはリンクしています.
こんな動きも出ています.
中共の胡主席は四月三十日に北鮮ナンバー2の金永南最高人民会議常任委員長と上海で会談し,「核武器開発計画の破棄」「六者協議への即時復帰」を要請しています.
また,NPT再検討会議を前に米は,「北鮮とイランの核への義務を果たすことに対する怠慢が,NPTの主目的を蝕んでいる」と警告しています.
中東諸国による,あらゆる機会をとらえた「自国の勢力圏確定」に向けた動きが顕在化してきたようにも見えますね.
今回のスカッド転移が中東の軍事バランスを変え,危機水位を上げたことは間違いないと感じます.
中東に火がつくと,アジア太平洋が騒がしくなるのは必定です.
なおこの地の紛争は,わが国と無縁の出来事には相当しません.
おわかりですよね.
【質問】
在ブエノスアイレス・イスラエル大使館爆破事件について,3行以上で教えてください.
【回答】
1992.3.17にブエノスアイレスで起きた,イスラエル大使館に対する自爆テロ.
自爆犯1人の他,イスラエル人4人,現地の民間人25人が死亡し,242人が負傷した.
ヒズボラが犯行声明を出し,これに対してイスラエルは2008.2.12夜,自動車爆弾で主犯のイマド・ムグニヤを殺害したとされる(ただし,イスラエル以外の犯行の説もあり).
* * *
アルゼンチンには約30万人のユダヤ系住民が住む.
これは中南米最多.
ブエノスアイレスは,米ニューヨークに次ぐユダヤ系住民の拠点と言われている.
1992.3.17 現地時間14:45,一台のピックアップ・トラックが,ブエノスアイレスにあるイスラエル大使館に激突し,爆発した.
典型的な自爆テロ.
大使館の建物の他,近くにあったカトリック教会や学校の建物が破壊された.
大義のためなら子供を巻き添えにしてもかまわない,という姿勢だろうか.
イスラエル人は4人死んだ.
そのうち2人は女性で,領事や一等書記官の夫人だった.
地元の市民の犠牲のほうははるかに大きかった.
25人が死亡し,242人が負傷.
死者の中にはホアン・カルロス・ブルマナ Juan Carlos Brumana というカトリック僧侶や子供たちもいた.
自爆犯も死亡したから,死者は合計29人.
犯行声明を出したのは「ヒズボラ」の下部組織「イスラム聖戦組織」.
「ヒズボラ」総書記長だったサイード・アッバス・アル=ムサウィ Sayed Abbas al-Musawiが,同年2月にイスラエルによって殺害された事への報復だと主張.
彼らはまた,自爆直前に彼らが撮った映像を公開した.
このような行為に対し,イスラエルが決して報復を忘れることはない.
イスラエルはアルゼンチンに調査官を派遣.
テロ計画が,アルゼンチン・パラグアイ・ブラジルの3か国の国境が接する地域で練られたことを突き止めた.
同地域ではムスリム人口が増加中だった.
また,アメリカの諜報機関NSAの傍受情報により,イランの支援を受け,「イスラム聖戦組織」指導者イマド・ムグニヤが計画を主導したことも判明した.
2008.2.12夜,自動車爆弾がシリアの首都ダマスカスで炸裂した.
自爆でこそなかったが,40代後半の男がそれにより死亡した.
それがムグニヤだった.
イスラエル自身は否定したが,それがイスラエルの報復であろうことを疑う者は,殆ど誰もいなかった.
(内部犯行説などの異説も僅かにあったが…)
また,2000.8.11には,容疑者の一人である,パキスタン人のモハマド・アバス・マリクが,ロサンゼルスで身柄を拘束された.
米移民帰化局(INS)の広報官によれば,彼は入国手続きをする際,書類上の不備があり,同局に身柄を拘束されたという.
さらに2015.10.19,アルゼンチンは事件の容疑者として,ヒズボラのメンバー2人に国際逮捕状を出した.
逮捕される可能性は低いが,イスラエルからの報復を受ける可能性は,決して低くはないだろう…
【参考ページ】
https://en.wikipedia.org/wiki/1992_attack_on_Israeli_embassy_in_Buenos_Aires
https://en.wikipedia.org/wiki/Triple_Frontier
http://articles.latimes.com/1992-03-19/news/mn-5905_1_islamic-jihad
http://www.afpbb.com/articles/-/2350342
http://www.cnn.co.jp/2000/WORLD/08/19/argentina.bomb/index.html(リンク切れ ⇒ キャッシュ)
【ぐんじさんぎょう】,2016/03/13 20:00
を加筆改修
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