ISI Age and the After　ISI年紀｜軍事板常見問題　テロ別館

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　【質問】
　「イラク・イスラーム国」って何？

　【回答】
　「イラク・イスラーム国」（ISI）は，ザルカウィ死亡後，イラク人に悪評の高かった組織のイメチェンを図るため，AQIが模様替えして出来た組織．
　組織トップには，アブ・ウマル・アル＝バグダディというイラク人を据え，看板に「イラク」の名を入れることで，イラク人の支持を得ようとした．
　また，「省」を設けて「大臣」を任命するなど，国家ごっこにいそしんだ．
　しかしAQI時代同様，外国人集団が組織の実権を握っていることに変わりはなく，イラク人の支持は得られず，それどころか，スンニ派武装勢力は米軍と協力してISIを攻撃．
　2008年までにISIは，主要な支配勢力から駆逐され，2010年前半までに，イラクでのテロによる死者数は，戦後最低の水準にまで低下し，米軍撤退の筋道がつくことになった．

　【質問】
　アブ・ウマル・アル＝バグダディとは？

▼　【回答】
　アブ・ウマル・アル＝バグダディ（Abu Omar al-Baghdadi）は，別名をアブ・アブドラ・アル・ラシッド・アル＝バグダディ（Abu Abdullah al-Rashid al-Baghdadi）とも言い，「イラク・イスラーム国」（ISI）の前最高指導者．
　経歴不詳．
　「ムジャヒディン諮問評議会」（MSC）にて最高指導者を務め，2006年10月，ISI「建国」時に最高指導者に就任．▲

▼http://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=SP148508
によれば，彼はイスラエルを，
「イスラム信仰共同体の中に植えつけられた，根絶しなければならない悪性のばい菌」
と呼び，（エルサレムのイスラム教聖地）アルアクサー・モスクの解放はすべてのムスリムに課せられた義務と主張していた．
　また，ハマスについては，「イスラエルとの政治プロセスに入り，世界中のジハード戦士に背を向けた裏切り者だ」と非難ししていた．▲

▼　2009年4月下旬，イラク当局は彼の拘束を発表したが，別人だった模様．
　2010年4月18日，駐留米軍・イラク軍合同作戦で死亡した．
　彼の後継者が，「イスラーム国」の自称カリフ，アブ・バクル・アル=バグダディであり，両者は別人．
　「アル＝バグダディ」というのは「バグダード生まれの」くらいの意味しかないので，確かに「アル＝バグダディ」という名の人物が多くても不思議ではないのだが，大変紛らわしいので，アブ・ウマルを「バグダディ1号」，アブ・バクルを「バグダディ2号」とでも呼んで区別してはいかがか？

　アル・カーイダ系のスンニ派武装組織「イラク・イスラーム国（ＩＳＩ）」の指導者．
　2009年4月下旬，イラク当局は彼の拘束を発表．
　彼は，ＩＳＩがフセイン政権下のバース党からの命令で内戦の扇動を企てたなどと供述しているという．
　一方，ＩＳＩは，組織の指導者が拘束されたとの情報を否定している．
　米軍は，拘束が発表された男がバグダディ本人だとは確認していない．▲

▼　武装組織側は，拘束したとする政府の発表を否定するため，バグダディのものと主張する音声テープをネットで流すなどしたが，これに対し，政府は2009.5.18，彼の取り調べの様子とする映像を公表し，拘束は事実であると改めて強調した．▲

▼　~~イラク当局は過去に，反政府組織の指導者の殺害や拘束について誤った発表を行ったことがある．~~▲

　【参考ページ】
2009年5月19日15時0分，ロイター
 2009年5月21日8時8分，産経新聞（カイロ＝村上大介）
http://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/ME_N-africa/AQI_ISIL.html

　【質問】
　2009年後半からのISIによる大規模攻勢について教えてください．

　【回答】
　イラクでは同年3月の総選挙の正当性を巡り，イラキーヤ党と法治国家連合とが対立し，政治空白が生まれた．
　これが宗派間対立の激化や，ISIの浸透を招き，同年7月のシーア派巡礼団を狙った連続テロを皮切りに，再び大規模テロが相次いだ．
　同年10月25日と12月8日には，バグダードで自爆テロを起こし，両日合わせて282人を殺し，1169人を負傷させた．
　こうしたテロは，法治国家連合を率いるマリキ首相の続投が決定し，政情がある程度安定するまで続いた．

https://mobile.twitter.com/KCin_Tokorozawa/status/560066122951565312?p=p
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　【質問】
　ISIはどのようにして再建されたのか？

　【回答】
　2010年5月，アブ・バクル・アル=バグダディが首班に就任すると，旧サダム・フセイン政権下で軍や情報機関に勤務していた人材を組織に取り込み，組織を再建．
　2011年に米軍がイラクから撤退するや，2012年7月から2013年にかけて刑務所を襲撃し，武装勢力の元兵士を大量脱走させる「壁破り」作戦を実施．
　彼らを吸収して戦力を1000人程度まで回復させ，次のステップ，「シリア内戦に乗じて勢力拡大」を踏むことになる．

https://mobile.twitter.com/KCin_Tokorozawa/status/565238410239938560?p=p
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　【質問】
　2013年化学兵器テロ未遂事件（仮称）について，3行以上で教えてください．
Kérem, mondja meg a 2013-os az ISI "vegyi fegyverekkel összeesküvés"-t három vagy több sorban.

　【回答】
　2013.6.1，化学兵器テロを企てていたとして，「イラクのアル＝カーイダ」メンバー5人が逮捕された事件．
　ドローンを使い，バグダード上空でサリンまたはマスタード・ガスを噴霧することを計画していたという．
　それら化学兵器を製造するための拠点を3つ設置していたが，化学兵器自体はまだ製造されていなかった．

☠　　　　　☠　　　　　☠

　まだダーイシュ（自称「イスラーム国」）が「イラク・イスラーム国（ISI）」を名乗っていたころの話．

　2013.6.1，イラク国防省のモハメド・アル＝アスカリ Mohammed al-Askari 報道官は，
「アル＝カーイダ系のグループが化学兵器を作るために設置した拠点を摘発した」
と発表．
　逮捕者や，押収した機器類などを公開した．
　AP通信によると，摘発された拠点は3か所で，うち2か所はバグダード市内．
　これらは
「3～4か月前に設置されたもので，目的はサリンやマスタード・ガスなどの化学兵器を製造することだった」
とした上で，
「標的は欧米だった」
「原料や製造法は入手していたが，まだ実際の製造には至っていなかった」
と，報道官は述べた．

　化学兵器の散布方法は，玩具のラジコン飛行機を利用する計画だったという．
　簡単に言えばドローンだ．
　拠点からはそのドローンも押収されている．

　また，報道官は
「彼らの逮捕は，イラクと外国諜報機関の協力のおかげで可能となった」
と語った．
　この逮捕の前の週，トルコ南部アダナ県の知事はイスタンブールや，シリア国境に近いハタイ県など数か所で，テロ組織に対する強制捜査が一斉に行われたと明らかにし，その過程で
「詳細不明の化学物質が押収された」
と述べている．
　その直前にはトルコの新聞数紙が，当時はまだシリアにおけるアル＝カーイダ系組織だった「ヌスラ戦線」のメンバー12人が逮捕され，サリン2kgが押収されたと報じている．
　ただしアダナ県知事は，「サリン押収」という報道については否定している．
　モハメド報道官の述べている「外国諜報機関」の国籍がどこであるかは，想像に難くない．

　ダーイシュが化学兵器を使った，あるいは使おうとしたのは，しかし実はこれが初めてではない．
　2006年10月から2007年6月にかけ，16回は塩素ガスを充填した爆弾を使用している．
　塩素ガス中毒による負傷者は数百人にのぼったが，死者は無く，同爆弾による死者は，爆弾の破片によるものが専らだった．

　ここまで化学テロに拘る組織は，寡聞にもあまり見たことがない．
　どう考えても，通常型爆弾を作って仕掛けたほう効率的だ．
　まあ，彼らが愚行を重ねて自らを害するのであれば，邪魔立てする義理は無いのだが…

　【参考ページ】
https://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2013_06_02/114831064/
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-22742201
http://www.presstv.ir/detail/2013/06/01/306673/iraq-busts-5-for-making-chemical-weapons/
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye5347489.html
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-22744480
http://www.aljazeera.com/news/middleeast/2013/06/20136117362322130.html
http://in.reuters.com/article/iraq-violence-chemicals-idINDEE95006020130602

https://www.youtube.com/watch?v=vbSK_C8VFUs

【ぐんじさんぎょう】，2016/12/4 20:00
を加筆改修

　【質問】
　ISIはシリア内戦をどう利用したのか？

　【回答】
　シリア内戦に戦闘員を派遣し，地保を固めるとともに，2013年8月，アレッポ近郊のシリア空軍基地をを占拠するなどして支配地域を広げた．
　そのやり方は，国外からのアクセスが容易な，トルコ国境近いシリア北部に集中して勢力を拡大していくというもので，同年9月には，自由シリア軍の支配下にあったアッザーズの町を，戦闘の末に奪取．
　これにより，ISIはトルコ国境にまで迫った．

https://mobile.twitter.com/KCin_Tokorozawa/status/566954847203635200?p=p
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　【質問】
　アブ・バクル・アル＝バグダーディーって誰？

　【回答】
　アブ・バクル・アル・バグダディ・アル・フッセイニ・アル・クレシ（Abu Bakr al-Baghdadi al-Husseini al-Quraishi）は，ダーイシュの指導者で，アブ・オマル・アル＝バグダーディーの後継者．
　バグダーディー2号．
　この2号が死ぬと，たぶん3号も出てくるんじゃないかな？
　ただし本名はイブラヒーム・アッワード・イブラヒーム・アリー・アル・バドリー・アル・サマッライ（Ibrahim Awwad Ibrahim Ali Al-Badri Al-Samarrai）なので，どこにもバグダーディー要素はない．[1]

　1971年，イラクの中部サーマッラー生まれ．[1][4][5]
　「預言者ムハンマドの出身部族であるクライシュ族の血を引くブーバドリー族の出身」と自称している[6]が，真偽不明．
　まあ，それが本当の話だったら，わざわざ経歴詳細を隠して謎めかしたりはしないよね．
　また，ダーイシュの公表している経歴によると，「宗教的な家系に生まれ，兄弟や叔父には導師やアラビア言語学，論理学，修辞学の教授などがいる」という[9]

　バグダード・イスラーム大学において，イスラーム学の博士号を取得．[2][4][5][9]
　学生時代は物静かで，サッカー・チームのエース．[5]
　反米でも過激派でもなく，大学でイスラーム法の講師をしていたなどとも伝えられる．[5]
　その後，サマラのアハマド・ビン・ハンバル・モスクの導師となる．[4][5]

　「1996～2000年，アフ【ガ】ーニスタンにおいてザルカーウィーと行動を共にしていた」という説あり．[5]

　2003年，イラク戦争後，スンニ派民兵組織「スンナ軍団（JJASJ）」に加わり，同組織のイスラーム法委員長に就任．[4]
　2004年2月，イラクにおいて，米軍によって拘束され，イラク南部バスラ近郊の捕虜収容所「キャンプ・ブッカ」に収監．[2]
　2009年，イラク政府側に同施設が移管された際，釈放．[5]
　2010年5月15日，「バグダーディー1号」ことアブー・ウマル・アル＝バグダーディーの死亡後，ISI最高指導者に就任．[1]
　2011年10月，アメリカ国務省から特別手配国際テロリストに認定され，懸賞金1000万ドルを懸けられる．[4]
　2014年6月29日，ISILの建国とカリフへの即位を宣言．
　もちろん，カリフを名乗れる根拠は何もない[8]のだけれど．
　2014年7月，イラク北部のモスルでの演説動画をネット公開して以降，公の場から姿を消す．[5]
　2014年11月8日，アメリカ合衆国及び有志国によるISILに対する空爆（生来の決意作戦）により，モスルにて負傷し[3]，治療を受けるためシリアに移動した模様[3]．

　右手に腕時計を嵌めているところから推測するに左利き．[5]

　国枝昌樹（文中敬称略，以下同）によれば，「淀みのないフスハー（正則アラビア語）を話す教養のある人物で，手練れの説教師という印象」[5]
　池内恵によれば，「演説やコーランの朗誦でも確信に満ちている．イスラーム学への学識の深さが窺える．敬虔な信者から尊敬され易いタイプの人間類型であると，映像を見る限りは言える」[7]という．
　もっとも，「教養のある人物＝穏健な人物」とは限らないどころか，むしろ，インテリのほうが普段は暴力とは縁がない分，いったん暴力的になると歯止めが効かないのが，連合赤軍などのリンチ事件からも窺える．

　また，「商品の値段から犯罪者の処罰まで，『イスラーム国』内のあらゆる問題に口を出したがる」性格であり，「気性は荒いが経験豊富な指揮官という評価もあるよう」だという．[5]

　【参考ページ】
[1]http://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/ME_N-africa/AQI.html
[2]http://www.theguardian.com/world/2014/dec/11/-sp-isis-the-inside-story
[3]http://www.news24.jp/articles/2014/11/11/10263120.html
[4]黒井文太郎『イスラム国の正体』（KKベストセラーズ，2014）
[5]国枝昌樹『イスラム国の正体』（朝日新聞出版，2015）
[6]http://www.jiji.com/jc/v4?id=isis0001
[7]池内恵『イスラーム国の衝撃』（文藝春秋，2015）
[8]高橋和夫『イスラム国の野望』（幻冬舎，2015）
[9]ロレッタ・ナポリオーニ『イスラム国　テロリストが国家をつくる時』（文藝春秋，2015）

アブ・バクル・アル・バグダーディー

in mixi，2015年03月19日21:05

　全校で10位以内の成績のまじめないいんちょで，でも細いところに口うるさいんだけど，なんかハキハキしてて頼られて，港内ソフト大会ではサウスポーなところ目撃されて，キレるとおっかなくて，でもトイレでたばこ吸ってるところを一回だけ見つかって怒られて，「どこ中よ？」って評判になってもイマイチ分からなくて，謎転校生成分もある．
　そんな子．
　JKにたとえるなら．

ユズコセウ＝サン in mixi，2015年03月19日 23:45

　萌えキャラ化自重（笑）

消印所沢 in mixi，2015年03月23日 00:20

　【質問】
　ダーイシュの指導層には，どのような人物がいるの？

　【回答】
　最高指導者アブ・バクルの下に副指導者2名．
　その下に省庁に相当する「委員会」があり，また，それとは別に，イスラーム法評議会に相当するシューラがある．

＜最高指導者＞

　アブ・バクル・アル＝バグダディ

▼＜次席＞

~~・アドナーン・イスマイル・ナジム・アブドゥッラ・ドゥライミ~~（死亡）
　~~別名：アブ・アブドゥル・ラハマン・ビラウィ~~
アブ・アイマン・アル＝イラキ Abu Ayman al-Iraqi
　別名：アドナン・ラティフ・アル・スワイダウィ Adnan Latif Hamid al-Sweidawi
　~~軍事代表~~
　軍事評議会議長
　議長就任と同時に次席に躍り出た模様．▲

▼~~＜副指導者＞~~
＜戦域最高司令官＞▲

・アブ・ムスリム・アル＝トゥルクメニ(s)
　イラク担当．
　元イラク陸軍の将校
　地方委員会統括

・アブ・アリ・アル＝アンバリ(s)
　シリア担当．
　元イラク陸軍の将校
　治安・情報委員会統括

＜戦争相＞
　アブ・スレイマン・アル＝ナセル
　出身不明[1]
＜軍事委員会統括＞
　アブ・アフマド・アル＝ワニ[2]

＜広報委員会統括＞
　アブ・アル＝アシル・アミル・アバシ

＜財務委員会統括＞
　ムアファク・ムスタファ・ムハンマド・ハムーシ

＜宗教委員会統括＞
　アブ・ムハンマド・アサニ

＜その他の上級幹部＞

・アブ・モハメド・アル＝アドナニ(s)
　シリア出身
　広報官

・アブ・アル＝アシル・アバシ(s)

・アブドル・ラフマン・アファリ
　女性・孤児担当

・アブ・アルカン・アミリ(s)

・アブ・ヤヒヤ・イラキ(s)
　最高指導者警護担当

・アーイッド・アッシャマリ・サウディ
　ラッカ県担当軍事指導者
　右腕をなくしており，左腕も火傷のために変形していると言われる

・アブ・オマル・アル＝シシャニ(s)
　本名：タルハン・バチラシュヴィリ
　1986年，グルジア出身
　チェチェン部隊司令官
　ただし国枝本では，幹部ではないとされている

・ヤーシル・シャーミ
　サウディアラビア出身
　広報官

・マイサル・アリ・モーゼス・ジュブーリ
　シリア東部代表

・ハイリー・アベド・マフムード・タエイ
　爆弾製造指導担当

・ファレス・ライーフ・ナイマ
　兵站担当

・バシャール・イスマイル・ハマダニ
　捕虜担当

・ファーディル・アハマド・アブドゥッラ・ハヤーリ
　調整官

・アブドラ・アフマド・メシャダニ
　宿泊所・自爆要員調整担当

(s)はシューラ・メンバー

＜幹部以外の，名を知られた人物＞

・ジャード・ターリク・アハマド・アブドゥルラティーフ・ドライエ
　化学兵器技術者
　2010年以来シリアに住んでいるイラク人で，ダマスカス近郊の工場で，マスタード・ガス製造に関係

　で，トランプ・カードが作られるのはまだですか？

　【参考ページ】
[1]小泉悠「米国最大の敵・テロ組織「イスラム国」入門」，月刊『丸』2014年12月号
[2]黒井文太郎『イスラム国の正体』（KKベストセラーズ，2015）
[3]国枝昌樹『イスラム国の正体』（朝日新聞出版，2015）
[4]http://en.wikipedia.org/wiki/Abu_Ayman_al-Iraqi

https://mobile.twitter.com/KCin_Tokorozawa/status/568062371307999233?p=p
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▼

ダーイシュの組織図
「テレグラフ」紙作成の図
 （こちらより引用）
イスラエル紙「ynet」作成の図
 （こちらより引用）

▲

　【質問】
　アブ・アイマン・アル＝イラキって誰？

　【回答】
　アブ・アイマン・アル＝イラキ Abu Ayman al-Iraqi は，ダーイシュの軍事評議会の高位指揮官．[1][4]
　別名：アドナン・ラティフ・アル＝スワイダウィ Adnan Latif Hamid al-Sweidawi [2][4]
　バグダーディー2号の死亡が報じられた際，ポスト・バグダーディーとして「アミール」になる可能性が高いと報じられた人物．[1]
　まあ，2号死亡は誤報だったわけだが．

　サダム・フセイン政権時代，アドナン・ラティフ・アル＝スワイダウィの名で，防空軍情報部隊の大佐を務めていた．[2][3]
　イラク戦争後，2007年になって3年間拘束さる．[2][3]
　収容されていたのはブッカ収容所 Camp Bucca と思われる．[3]
　釈放後，彼は内戦の勃発したシリアに移り，現在はイドリブやアレッポといった都市において，また，ラタキアの山中において，ダーイシュの戦闘員の訓練を任されているという．[2][3]
　また，ラタキアにおいて，反アサド派の野党や自由シリア軍の指導者の暗殺に携わっていると，反アサド派武装勢力から非難されている．[3]
　2014年初旬，ダーイシュと他の反アサド派武装勢力との間で武力衝突が勃発すると，アブ・アイマンと彼の部下は，東シリアのダーイシュ拠点に排砂位置された．[3]

　アブ・アブドルラーマン・アル＝ビラウィ Abu Abdulrahman al-Bilawi 死亡により，軍事評議会筆頭になったという噂である．[4]
　しかし，その高い地位にも拘らず，彼については殆ど知られていないことから，「影のペルソナ」と呼ばれているという．[3]

　【参考ページ】
[1]http://jp.ibtimes.com/articles/407777
[2]http://english.alarabiya.net/en/News/2014/02/13/Exclusive-Top-ISIS-leaders-revealed.html
[3]http://digitaljournalismisisleaders.weebly.com/abu-ayman-al-iraqi.html#/
[4]http://en.wikipedia.org/wiki/Abu_Ayman_al-Iraqi

アブ・アイマン・アル＝イラキ

　【質問】
　アブ・アリ・アル＝アンバリって誰？

　【回答】
　アブ・アリ・アル＝アンバリ Abu Ali al-Anbari は，ダーイシュの指揮官の一人．

　推定，モスル出身．
　サダム・フセイン政権時代には陸軍少将．
　イラク戦争後，イラクのスンニ派過激原理主義グループ「アンサール・アル・イスラーム Ansar al-Islam」に属する．
　しかし，金銭汚職疑惑によって同組織から弾き出され，「イラクのアル＝カーイダ AQI」を名乗っていた頃のダーイシュに鞍替えした．

　現在では，シリア方面司令官であり，また，治安・情報委員会を統括していると見られる．
　…情けない理由で鞍替えした割には，大出世だな，おい．

　一方で，他の有力幹部に比べ，イスラーム法の知識には乏しいとされる．

　やれ過激原理主義だ何だと言っても，高橋和夫（文中敬称略，以下同）が指摘するように，
「軍を支配した者が権力を握るというのは，中東全体を貫く構図」
であり，その点はダーイシュも例外ではなさそうだ．

　【参考ページ】
黒井文太郎『イスラム国の正体』（KKベストセラーズ，2015）
国枝昌樹『イスラム国の正体』（朝日新聞出版，2015）
高橋和夫『イスラム国の野望』（幻冬舎，2015）
http://en.wikipedia.org/wiki/Abu_Ali_al-Anbari
http://counterjihadreport.com/tag/gen-abu-ali-al-anbari/
http://tahrirsouri.net/2014/07/12/profile-the-rise-of-the-islamic-state-is/

アブ・アリ・アル＝アンバリと伝えられる顔写真

　【質問】
　アブ・ウマル・アル＝シシャニって誰？

　【回答】
　ダーイシュのチェチェン人部隊指揮官．
　また，チェチェン人のみならず外国人戦闘員の指揮官であるとも．[1]

　本名，タルハン・タユムラゾビッチ・バティラシヴィリ TARKHAN TAYUMURAZOVICH BATIRASHVILI
　別名多く，
(a)タルハン・タユムラゾビッチ・バティラシヴィリ Tarkhan Tayumurazovich Batyrashvili
(b)タルハン・バティラシヴィリ Tarkhan Batirashvili
(c)オマル・シシャニ Omar Shishani
(d)ウマル・シシャニ Umar Shishani
(e)アブ・ウマル・アル・シシャニ Abu Umar al-Shishani
(f)オマル・アル・シシャニ Omar al-Shishani
(g)チェチェン・オマル Chechen Omar
(h)オマル・ザ・チェチェン Omar the Chechen
(i)オメル・ザ・チェチェン Omer the Chechen
(j)ウマル・ザ・チェチェン Umar the Chechen
(k)アブ・ウマル Abu Umar
(l)アブ・ホザイファ Abu Hudhayfah
などと呼ばれている．[1]
　もっとも，オマルもウマルもアルファベット表記の違いに過ぎず，また，シシャニとはチェチェンの意味だから，上記（出典は日本外務省）はいたずらに「別称」扱いしてそれを増やしているような気がしなくもない．

　1986.1.11，グルジアのAkhmeta, Village Birkiani生まれとされるが，1982年生まれという説もあり．[1]

　少年時代はパンキシ渓谷の丘で羊飼いとして働きながら，チェチェン武装勢力の支援部隊員としてミッションに参加．[4]
　高校卒業後，グルジア軍の特殊偵察組織の募集に応募し活躍．[4]
　2008年に軍曹に昇進した後，諜報部隊を結成．さらなる昇進が約束されていたが，2010年に結核で軍の病院に数カ月間入院した後，復帰を試みたが失敗．[4]

　地元に戻っても就職することができず，また，同じ頃に母親が癌で死亡したことから，父親によると，彼は非常に絶望していたという．[4]
　同年10月には，違法な武器を所持していたため逮捕され，懲役3年を言い渡された．[4]
　服役を16カ月務めた後，釈放され出国．[4]
　彼の生き方を大きく変え，ジハード戦士として闘うことを決めたのは，刑務所でのことだったと当人は語っている．[4]
　刑務所が厚生施設どころか，犯罪性癖を悪化させる施設としてしか機能していないことは，洋の東西を問わず，同じであるらしい．

　出国後はイエメンとエジプトで暮らし，最終的に，2012年3月に，兄のいるシリアに入り，チェチェン人やダゲスタン人で構成された「アル・ムハジリーン旅団」（Katibat al-Muhajireen）に入隊し，アル・ヌスラ戦線を支援，行動を共にする．[4]
　同組織は，アサド政権の打倒とシリアにおけるイスラム国家の樹立などを掲げていた．[2]
　その卓越した戦闘能力によって[5]，同組織の指導者となり，2013年11月，AQI指導者アブ・バクル・アル・バグダディに忠誠を誓う声明をインターネット上に掲載して[2]，これに合流した模様．
　その間，2013年3月に，「アル・ムハジリーン旅団」は他の複数の組織を統合して，「ジャイシュ・アル・ムハジリーン・ワル・アンサール」（Jaysh al-Muhajireen wa’l-Ansar, Army of Migrants and Supporters，JMA）と改称している．[2]

　2013年12月には，グルジア経由で帰国し，「カフカス首長国」の「特殊作戦」担当責任者に就任していたという説あり．[5]
　ソチ冬季五輪を狙った大規模テロを計画していたと言われる．[5]

　日本外務省によれば，2014年現在，ダーイシュの上級軍事司令官かつ諮問評議会の一員．[1]
　約1,000 人の外国人戦闘員を率いており，シリア北部で数多くの攻撃を実行しているとされる．[1]

　2014年9月には，チェチェンを含む北カフカスを開放するため，ロシアを次なる聖戦の標的にするとした宣言（ロシア語）をネット上で公開している[3]が…

　なお，父親によると，バチェラシビリにはチェチェン人女性との間に『ソフィア』という名の娘がいるという．[4]

　【参考ページ】
[1]http://www.mof.go.jp/international_policy/gaitame_kawase/gaitame/economic_sanctions/taliban_kankeisha_20150219.pdf
[2]http://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/ME_N-africa/JMA.html
[3]http://japan-indepth.jp/?p=14575
[4]https://en.wikipedia.org/wiki/Abu_Omar_al-Shishani
[5]http://yukan-news.ameba.jp/20140207-33/

アブ・オマル・アル＝シシャニ

　【質問】
　アブ・サヤフって誰？

　【回答】
　アブ・サヤフ Abu Sayyaf はダーイシュの金庫番．
　フィリピンのテロ組織「アブ・サヤフ」と紛らわしいので注意．

　詳しい経歴不明．
　本名も不明だが，イラクのダーイシュ研究家，Hisham Alhashimi によれば，Nabil Saddiq Abu Saleh al-Jabouri というものである可能性があるという．[5]

　アブ・バクル・アル・バグダーディーとは近い仲にあり[4]，また，戦闘指揮官であることに加え，石油，ガス取引，密輸，奴隷売買など資金調達の責任者でもあった．[1][3]
　また，Hisham Alhashimi によれば，ダーイシュの主席報道官，Abu Mohammed al-Adnaniの側近であったという．[5]

　2015.5.15夜，シリア東部，デリゾールの郊外において，デルタフォースによって拘束されそうになり，武力抵抗したために殺害さる．[1][2][5]

　なお，その際，特殊部隊は彼の妻 Umm Sayyaf を拘束している．[1][2][3]
　彼女もダーイシュのメンバーであり，ダーイシュによる人身売買に直接加担していたと見られている．[4]

　【参考ページ】
[1]http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150517/k10010082301000.html
[2]http://albore.hatenablog.com/entry/2015/05/17/092037
[3]http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015051601001849.html
[4]http://www.nbcnews.com/storyline/isis-terror/who-was-abu-sayyaf-emir-oil-killed-u-s-n360076
[5]http://edition.cnn.com/2015/05/17/middleeast/syria-isis-us-raid/

Abu Sayyaf
（こちらより引用）

　【質問】
　アブ・タイムって誰？

　【回答】
　アブ・タイム・アル＝サウディ Abu Taim Al-Saudi は，ダーイシュの石油取引担当幹部．[1]
　google検索上は，本名，経歴不明．

　2015.5.16，米軍特殊部隊がシリア東部で行った急襲作戦により，他の幹部と共に殺害さる．[1]

　親戚にはサマー・タイムやロス・タイムがいる（うそ）

　【参考ページ】
[1]　http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150520-00000039-biz_reut-nb

　【質問】
　アブ・マリアムって誰？

　【回答】
　アブ・マリアム Abu Maryam は，ダーイシュの通信事業担当幹部．[1]

　2014年11月に自爆テロを実行したフランス人，アブ・マリアム・アル＝ファランシ Abu Maryam al-Faranci （本名：Kevin Chassin）[2]とは別人なので念のため．

　また，こちら
http://themaghrebinote.com/2015/04/22/islamicstateleadershiplibya/
に記述のある人物が，これと同一人物かどうか，今一つ確信が持てず．

　2015.5.16，米軍特殊部隊がシリア東部で行った急襲作戦により，他の幹部と共に殺害さる．[1]

　【参考ページ】
[1]　http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150520-00000039-biz_reut-nb
[2]　http://www.ibtimes.co.in/french-isis-jihadis-ask-brethren-kill-westerners-poison-their-food-crush-them-under-614651

　【質問】
　アブドルラフマン・ムスタファ・アル＝カドゥリって誰？
　3行以上で教えて！
Ki Abd al-Rahman Mustafa al-Qaduli?
Kérem, mondja meg a három sorban.

　【回答】
　Abd al-Rahman Mustafa al-Qaduli（別名：ハジ・イマーム）はイラク北部モスル生まれ．
Abd al-Rahman Mustafa al-Qaduli (álnév: Hajji Imam) észak-Irak, Moszulban született.
　トルクメン人．
　物理の教師．
　1998年にアフ【ガ】ーニスタンに渡り，アル＝カーイダの下で軍事訓練を受ける．
　その後，ザルカウィ・グループに加入し，幹部となる．
　当局に拘束されたが，釈放後の2012年にダーイシュに再参加し，シリアに移動．
　ダーイシュの「金融相」となった他，テロ計画にも関与していたと見られる．
　2015年5月，イラク国防省が，「イラク北部タルアファル郊外のモスクにて，米軍主導の有志国連合による空爆を受けて死亡した」と発表したが，米中央軍は「有志国連合の航空機はモスクを空爆していない」などとして死亡情報を否定．
　2016年3月，米軍がシリアで急襲作戦を実施し，殺害したと発表さる．

　【参考ページ】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150507-00000024-mai-n_ame
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6195697
http://www.cnn.co.jp/world/35080181.html
http://www.haaretz.com/middle-east-news/isis/1.688533
http://www.sankei.com/world/news/160326/wor1603260012-n1.html

アブドルラフマン・ムスタファ・アル＝カドゥリ顔写真
（こちらより引用）

【ぐんじさんぎょう】，2016/08/14 20:00
を加筆改修

　【質問】
　カフル・スーサ連続自爆テロ事件とは？

　【回答】
　2011.12.24，ダマスカス Damascus のカフル・スーサ Kfar Suseh 地区にて発生した，2件の自爆テロ事件．
　目撃者によると，爆発物を積んだ車両が，同地区にある国家治安課の施設への突入を試みた後，その近くの軍の情報部門の施設付近でも車が爆発したという．[1]
　国家治安課は内務省所轄の総合情報部内の組織．[4]
　国営テレビは１カ所の爆発現場の状況を伝え，路上に散乱する遺体の一部，炎上した車両や損壊した建物などの画像を放映した．[3]
　バッシャール・アサド Bashar al-Assad 大統領への抗議行動が始まった3月以降，ダマスカス中心部で重要治安施設が攻撃されたのは初めて．[1]

　ジハード・マクディスィー外務省報道官は「爆発により，民間人と軍人合わせて40人が死亡し，150人が負傷したと述べた．[4]
　また，内務省は，「2件のテロ攻撃により民間人と治安部隊を含む44人が死亡，166人が負傷した」と発表した．[1][3][4]
　犠牲者には治安要員や一般住民が含まれるという．[3]

　BBC（12月23日付）によると，二つの爆発から20分後に，シリア政府は国営放送を通じ，アル=カーイダの犯行だと断じる声明を出した．[1][4]
　また，レバノン当局が22日に，アル=カーイダに属する組織がベカーア県バアルベック郡アルサール地方からシリア領に潜入したとの通告を受けたことを明らかにした．[4]
　一方，反体制派は政府側による自作自演だと非難した[1][3]が，今日では，ISISの犯行ではないかと見られている．
　国枝昌樹によれば，自爆テロをシリアに持ち込んだのは，ISISが初めてだという．[2]
　また，野口哲也は事件直後，以下のように所見を述べている．[5]

------------
・事件は連盟の監視団の先遣隊到着というタイミングで行われた．
　時間的に若干でき過ぎてはいるが，これを偶然と片づけることはできまい．
　矢張りタイミングを合わせての犯行と考えるべきであろう．
・いずれにしてもこれまでダマスカスは比較的静穏で，このような大規模爆発があったことはない．
・その他のシリア各地でもこれまで自爆テロによる大きな事件と言うのは報じられていない，
・シリア政府はシリアの騒擾ｈテロリストによるものだとの主張を繰り返してきたが，（少なくとも私の知る限り），具体的にテロリストをアルカイダと特定したことＨない．
・また，以前からアルカイダがシリアで活動しているとかその存在が目立つとかの報道も知らないし，政府がアルカイダを摘発したと言う報道も気いていない．
・それにも拘らず，犯行がアルカイダによるものとしたら，同日に首都ダマスカスで，しかも政権維持の根幹である情報機関２か所に対して，大規模テロを実行できたアルカイダのシリアにおける組織はかなりしっかりしたもので，そのテロ能力は極めて高いものがある．
・逆にシリアの情報機関は，群衆の抗議運動の弾圧に忙しくて，最も危険な存在であるアルカイダに対する監視が疎かになっていたと思われる．
・他方反政府派が主張するように政府の自作自演という証拠も今のところはない．
・仮に自作自演とすれば，非情かつ生き残りの為にはなんでもやる，と言われるアサド政権としても，そこまでするのは？と思わせるほどの行為である．
・但し，レバノンで元首相ハリリを死の中心で爆殺したのがシリア（実行犯はヒズボッラー）と疑われている（ところでベイルートの裁判はどうんなてしまったのでしょうか？最近全くそのニュースを聞きません）アサド政権であれば，その可能性が全く無いとは言えまい．
・アサド政権が生存をかけたとなれば，その位の目茶苦茶はやる可能性がある．
・しかし，昔と違って情報時代で，おまけにアラブ連盟の先遣隊到着直後で，耳目が集まっている時に，果たしてそのような危険を犯すであろうか？
・要するに取りあえずは，まことに不思議な事件としか言いようがない．
------------

　この所見からも，専門家が当時のISISのシリア浸透について，その可能性にさえ思い当らなかったことが窺える．

　【参考ページ】
[1]http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2847415/8228166
[2]国枝昌樹『イスラム国の正体』（朝日新聞出版，2015），p.87-90
[3]http://www.cnn.co.jp/world/30005039.html（リンク切れ）
[4]http://syriaarabspring.info/wp/?p=6360
[5]http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4053857.html

自爆した自動車
 損壊した建物
 （こちらより引用）

◆◆◆ISIS時代以降

　【質問】
　ISIの「ヌスラ戦線」との統合宣言について教えてください．

　【回答】
　「ヌスラ戦線」指導者アブ・ムハンマド・ジャウラニは，元はザルカウィのテロ組織「タウヒード・ジハード団」の戦闘員であり，「イラク・イスラーム国」の幹部だった．
　そのため，シリア内戦に際し，彼がシリアに帰国して以降，ISIは「ヌスラ戦線」を支援していた．
　しかし2013年4月にISIは，「ヌスラ戦線」と統合して「イラクとシャームのイスラーム国」（ISIS）を建国する旨を，一方的に宣言．
　これに「ヌスラ戦線」は反発し，両者の関係は悪化した．

https://mobile.twitter.com/KCin_Tokorozawa/status/566984991305773058?p=p
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　【質問】
　カマル・ハマミ殺害事件について3行以上で教えてください．
Kérem, mondja el Kamal Hamami-gyilkosság a három vagy több sorban.

　【回答】
　2013年7月，カマル・ハマミ Kamal Hamami とその兄弟が，ダーイシュによって殺害された事件．
　カマルは別名をアブ・バセール Abu Baseer と言い，自由シリア軍「アル＝エズ・ビン＝アル＝サラム旅団 al-Ez bin al-Salam 」指揮官であり，軍事最高評議会幹部．
　彼はダーイシュとの共闘を模索していたが，ダーイシュはその提案を受け入れてラタキア郊外で会合を開くと返答．
　カマルが会合場所へ向かう途中，ダーイシュは彼を捕らえて処刑した．
　ダーイシュの初期のテロの一つである．

　【参考ページ】
桜木武史『シリア　戦場からの声』（アルファベータブックス，2016）, p.144-145
http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/who-is-the-us-arming-in-syria-president-assad-rubs-his-hands-at-news-of-rebel-split-8706540.html
http://www.independent.co.uk/voices/comment/is-the-killing-of-kamal-hamami-by-islamists-a-ploy-to-gain-western-arms-or-just-a-local-dispute-8706677.html
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-23298326
http://www.huffingtonpost.com/2013/07/11/kamal-hamami-killed-syria-al-qaeda_n_3582182.html

【ぐんじさんぎょう】，2016/10/10 20:00
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　【質問】
　ISISの，2013年末からのイラクにおける攻勢について教えてください．

　【回答】
　2013.12.30，シリアで反政府勢力から援助を受け，軍事力を蓄えたISISは，イラク西部アンバール県ラマーディーの座り込み運動の解散をきっかけとして，イラクでの攻勢を開始．
　翌年1月，アンバール県のラマーディーとファルージャの，両都市を奪取．
　敗走したイラク軍の遺した，米国製最新装備を鹵獲するなどして，さらに軍事力を強化．
　3月にはサマラへ侵攻．
　しかし，イラク軍の空爆により，6/5には撤退．
　翌日，イラク北部，シリアとの国境にほど近い，ニーナワー県のモースルへの攻撃を開始し，6/10，これを陥落させた．
　この際，刑務所から囚人を脱走させている．
　6/11には，モースルのトルコ領事館を制圧し，同国の在モースル総領事を含む領事館員ら48人を誘拐．
　6/15，ニーナワー県のタルアファル Tal Afar 制圧．
　6/17，バグダード北東約60kmのバアクーバまで進撃．
　6/20，バイジの油田施設を包囲完了．
　6/25，アジール油田地帯を制圧し，また，ニーナワー県を断水させた．

https://mobile.twitter.com/KCin_Tokorozawa/status/567363000751771648?p=p
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　【質問】
　ISISによるファルージャ制圧について教えられたし．

　【回答】
　イラク治安当局者によれば，2014/1/4，「イラク・レバント（地中海東岸地域）のイスラーム国（Islamic State of Iraq and the Levant，ISIL）」が，イラク西部アンバル（Anbar）州のファルージャ（Fallujah）を掌握．[1]
　ただし一部報道では，この武装組織の名前はISIS＝「イラクとシャームのイスラーム国」と報じられている．[2]
　まあ，ISILもISISも，意味は全く同じ．
　ファルージャにいるAFP記者も，通りには治安部隊やイスラーム教スンニ（Sunni）派の部族による反アルカイダの治安組織「覚醒評議会（Awakening，サフワ，Sahwa）」の姿は見えないとして，ISILが同市を掌握したようだと話している．[1]

　ISISは1月に入って，ファルージャとラマディで警察署などを襲撃し，市街地の一部を制圧した．[2]
　首都バグダード（Baghdad）の西に位置するアンバル州では，州都ラマディ（Ramadi）とファルージャの一部が，数日前から武装勢力に掌握されていた．[1]

　3日には，州都ラマディ（Ramadi）とファルージャ（Fallujah）の両市で，警察と部族民兵などの治安部隊が，ISIL戦闘になり，100人以上が死亡．[3]
　複数の治安当局者は，この戦闘で少なくとも民間人32人と，ISILの戦闘員71人が死亡したが，警察と部族民兵の死亡数は不明だとしている．[3]
　目撃者によると，ファルージャ中心部では3日，武装した数百人が毎週恒例の屋外礼拝に集まり，礼拝を率いた1人の人物が立ち上がって，
「ファルージャはイスラーム国であるとわれわれは宣言する．
　諸君にわれわれの側に立つよう呼び掛ける」
と述べたという．[3]
　礼拝に来た人の中には，ムジャヒドが掲げることが多い黒い旗を持っている人もいたという．[3]

　治安当局によると，4日のアンバル州での戦いでは，兵士8人，政府と同盟関係にある部族民2人，ISILの戦闘員55人の計65人が死亡した．[1]
　イラク地上部隊のアリ・ガイダン・マジード（Ali Ghaidan Majeed）司令官によると，戦闘に加わっているのは，治安部隊とその同盟関係にある部族，ISIL，反政府勢力「部族軍事評議会（Military Council of the Tribes）」の3集団だという．[1]

　ラマディでは，12月30日に治安部隊がイスラーム教スンニ（Sunni）派のアラブ人らが1年にわたって運営してきたデモキャンプの排除に乗り出してから一連の戦闘が始まった．[3]
　12月30日と31日の2日間でラマディとその周辺では少なくとも14人が死亡している．[3]
　イラクでは少数派のスンニ派アラブ人たちは，自分たちのコミュニティーが疎外され，標的にされているとして2012年末にデモを始め，強制排除されたデモキャンプも作っていた．[3]

　ISISは，イスラーム法に基づく国家建設を目的とする武装組織で，内戦が続く隣国シリアの複数の都市で，勢力圏を確立しつつあると主張している．[1]
　同組織は，シリアから国境をまたいだイラク・アンバール県の砂漠地帯の40％を，支配下に置いているとされている．[2]

　【参考ページ】
[1]http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140105-00000004-jij_afp-int
[2]http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20140104-00000017-ann-int
[3]http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140104-00000003-jij_afp-int

　【関連動画】
http://www.youtube.com/watch?v=doQBWVI9mWQ

【ぐんじさんぎょう】， 2014/01/13 20:00
を加筆改修

　【質問】
　なぜダーイシュはイラク軍を破ることができたの？

　【回答】
　イラク軍が弱過ぎた．
　イラク陸軍は，
兵力27万1500
　装備は
M1A1戦車140両，
T-72戦車 125両，
T-55戦車 95両
と，額面上の戦力こそ立派だったが，指揮統制がダメ過ぎた．[1]
　マリキ首相は，軍への個人的な統制を強化しようとして，参謀本部をバイパスして指揮権を及ぼすため，「最高司令局」を設置．[1]
　また，部隊指揮官となる将校たちの指揮能力も低く，ISISの攻勢を受けると，指揮官が真っ先に逃亡．[1]
　指揮系統が崩壊する事態が相次いだ．[1]

　さらにダーイシュは，捕虜にしたイラク兵の中にシーア派がいれば容赦なく処刑するなどしており，その模様を動画にしてインターネットで拡散し，敵に恐怖を植え付けた．[1][3]
　結果，イラク軍の多くの部隊が，ISISが現れただけで装備も投げ出して逃走．[1]

　逆にダーイシュのほうは，シリアにおいて訓練と実戦経験を積んできた．[3]
　これでは勝負にならない．
　たとえば2014年6月のモスル陥落時には，イラク軍と治安部隊が同市に3万人以上おり，対してダーイシュ側は1000人にも満たない数だったが，イラク軍将兵の殆どが敵前逃亡して，無血開城に近い形で陥落したという．[2]

　イラク国内の基準で比較的優れているとされているのは，クルド人自治区の民兵部隊だが，これは軽歩兵部隊に過ぎない．[3]
　しかも，サダム政権と戦った経験のある人員はいなくなり，新兵に置き換わっているという．[3]

　さらにまた，ダーイシュの攻撃目標の選択も，的を射たものだった．[3]
　彼らが戦力を投じるのは，支持の得られるスンニ派地域での戦闘や，重要なインフラ拠点，防衛能力の低い施設などの標的だった．[3]
　おそらくは，ダーイシュの中にいる元サダム軍将校が，参謀役となっているのだろうと想像される．

　【参考ページ】
[1]小泉悠「米国最大の敵・テロ組織「イスラム国」入門」，月刊『丸』2014年12月号
[2]黒井文太郎『イスラム国の正体』（KKベストセラーズ，2015）
[3]http://www.afpbb.com/articles/-/3022684

　【質問】
　文谷数重（文中敬称略．他も同じ）が，自身のブログ
http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1139.html
において，
＞曰く，イラクからの撤退が早過ぎる．イラクでのISISの内乱を招いた．
という部分も含めて落合信彦を批判しているが，イラクからの米軍撤退がイラクでのISISの内乱を招いたのではないの？

　【回答】
　落合信彦に対する毀誉褒貶は，ここでは別の問題であるので置いておくとして，イラクからの米軍撤退が，安定していたイラク情勢を，混乱状態に戻したと述べている中東専門家は多い．

　たとえば高橋和夫は『イスラム国の野望』（幻冬舎新書，2015）において，
・駐イラク米軍司令官に就任したペトレイアスが，彼自身の作成した対ゲリラ戦マニュアル「Counterinsurgency Field Manual」を下に，民衆の心を掴むための「ドブ板活動」を行い，また，「イラクの息子たち（覚醒評議会）」という武装自警団を組織することにより，イラクの治安の安定にいかに成功したか
・それを米軍撤退後，マリキ首相の愚策がいかにスンニー派を離反に追いやったか
を分かり易く述べている（p.26-34）

　モスルにも米軍がいれば，無血陥落するようなことはなかっただろうと言われている．

　ただ，永遠に占領し続けるわけにはいかない以上，いつかは撤退しなければならない．
　もしも，あと何年か待っていたのなら，マリキ政権またはその後継政権が，イラク国内のスンニー派にもクルド人にも気配りできるようになれただろうか？と問われると，難しいと言わざるを得ない．

　たとえば池内恵は，イラク国内政治の制度的欠陥を指摘している．
＞「イラクの連邦制と議院内閣制の問題点は，議会が一院制で，単純な多数決原理によって運営されており，宗派間の均衡を図る比例原則が組み込まれていないことだ」
（『イスラーム国の衝撃』（文春新書，2015）p.116）
　シーア派主導のイラク議会が，その優越性を崩すことになるだろう制度改正に応じるとも思えない．

　エマニュエル・トッドによれば，そもそも平等主義は平等主義核家族という婚姻制度に由来するものであって，人類全体に普遍的なものではないという．
「革命が起き，体制をすっ飛ばす．その後，争乱があり，安定化の時期があるという具合に，革命はそれだけで進むわけではありません」
（『アラブ革命はなぜ起きたか』（藤原書店，2011），p.59）
と述べているところから，いずれは安定化することもトッドは述べているが，それはアメリカ大統領が一人二人交代する程度のスパンの話ではあるまい．

　なお，宮家邦彦はオバマ大統領について，
・「オバマと付き合うのは大変」とアメリカの議員が言う．
・オバマは人と付き合わない．彼は「いいスピーチをすれば政治が変わる，世界が変わる」と思っている人．でも世の中はそうじゃない．
・オバマさんと仲良くやれている外国首脳はいない．
・やらなきゃいけないことをやらない．やらなきゃいいことをやる．
旨，述べている．
https://www.youtube.com/watch?v=JZ_QXGEn93k

　また，佐藤優も，次のように述べている．

------------
　こんなに早く，中間選挙の前からレームダックになった大統領は珍しい．
　史上最短でレームダックになった大統領ではないでしょうか．

　彼は非常に複雑なことを考えているのでしょうが，大統領として下すべき決断は，単純にならざるを得ないのです．

------------『新・戦争論』（文春新書，2014），p.210-212

　さらに同書には，池上彰による評価も載っており，それによれは以下のようなものだ．

------------
黒人初の大統領であるオバマは，教養が邪魔しているという感じがいます．
　前任者のブッシュ大統領に比べて，遥かにインテリで，思慮深くて，いろんなことを考えるわけですが，あれこれシミュレーションもするものだから，決断に時間がかかる．
　ブッシュ前大統領の場合は，熟慮せずに決断してしまうところがありました．
　それに比べると，何もかも遅い．
　もちろん，9.11以降に行ったイラクやアフガニスタンでの失策から，何とか抜け出さなければならない，というアメリカのトラウマがあることは承知しています．
　それゆえに決断が遅くなるのも無理ないかもしれません．
　しかし，そのことが結果として，全世界に悪影響を及ぼしていると思います．
------------p.210

　文谷は，
＞　　落合信彦さんが，オバマ大統領は無能だと主張している．
＞　「駐日米国人　オバマの元で働きたいと誰も言わぬと落合信彦氏」がそれだ．
と，批判的文脈上で述べているが，この点も失当と言えるだろう．

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