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◆◆核テロ Nukleáris Terrorizmus
<◆テロ対策
<テロリズムFAQ目次
(画像掲示板より引用)
板倉周一郎,中込良廣(2008)「原子力施設の妨害破壊行為に対抗する防護措置についての新たな評価制度」 『日本原子力学界和文論文誌』 vol.7, No.1
板倉周一郎,中込良廣(2008)「核防護措置における相互監視規則の有効性の評価に関する考察」 『日本原子力学界和文論文誌』 vol.7, No.1
板倉周一郎,中込良廣(2006)「核防護システムの評価の視点からみた核防護制度の課題」 『日本原子力学界和文論文誌』 vol.5, No.2
核物質管理センター編(2001)『核物質管理ハンドブック』
総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子力防災小委員会報告書(2004)「原子力施設における核物質防護対策の強化について」
文部科学省研究炉等安全規制検討会(2005)『内部脅威対策について』
【質問】
「原発テロ」の脅威の真偽について教えてください.
昨今かなり煽られぎみのような気がしますが,しばしば目にする雑誌の記事などでは,そもそもの原推,反原論者が入りみだっていて非常にわかりずらいです.
歴史的に見て原発へのテロはないので(正規の軍の攻撃除く),やはり有効性がないのですか?
それとも,今まで無かったのはいわゆる被害甚大説によるものでしょうか?
【回答】
まず,原発はテロられたら非常にやばい施設なのは間違いない.
だが,現実に原発を襲撃したとしても,テロ組織が持ち込める程度の爆薬や火器で原発の原子炉建屋(原子炉のある建物)や原子炉本体を破壊することはまずできない.
あれは,飛行機が突っ込んでもたいしたダメージを受けないくらいの強度があるので.
もちろん発電設備や原子炉配管を破壊するくらいのことはできるかもしれないが,それでは大した被害にはならない.
テロリスト側に技術者がいれば,管制室を占拠して原子炉を操作,暴走させる・・・という手もあるが,少なくとも日本国内の原発は皆離れたところから別個にモニタリングされており,非常事態を察した瞬間にリモートで緊急停止させられてしまうだろう.
なのでこれも現実には困難と思われる.
かのように,原発はテロ目標としてはあまり効果の高い目標ではない.
破壊を目的とせず占拠してメッセージを発し社会に不安を与える・・・という意義はあるかもしれないが,それだってたいがい原発は辺鄙なところにあるので,報道管制されたら終わりという難点がある.
「放射線漏れ事故が起きました」なんて発表して誤魔化されたら,真相究明に忍び込む「勇敢な報道関係者」もいないだろうし.
日本でテロをやるなら,警備も箱もハードな原発より,極めてソフトターゲットな通勤時間帯の都市部鉄道を狙った方が効果的というのは,某宗教団体が教えてくれたんじゃないですかね.
軍事板
江畑謙介は,原発テロがあるとしたら,原発近傍で攻撃を行い,大衆を動揺させる心理作戦であろうと推測している模様.
軍事評論家の江畑謙介氏が講演
軍事評論家の江畑謙介氏が五日,鳥取市内であった国民保護セミナーで講演し,北朝鮮の軍事的脅威に対し政府,自治体が住民に正確な情報を伝達する大切さを説いた.
〔略〕
「原発のそばで(攻撃を)やれば『次は本体が狙われる』と,住民がびっくりする.特殊部隊の思うつぼだ」
と述べ,大衆を動揺させる心理作戦が狙いと強調した.
対策として「政府,地方の信頼を高めることが重要だ」と,行政機関の的確な情報把握,素早い伝達の必要性を訴えた.
〔略〕
米国の事例ですが,
「2001年9月11日のテロ攻撃から5年後 (Backgrounder
- Nuclear Security ? Five Years After 9/11)
」
http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/fact-sheets/security-enhancements.html
として,私が承知している中で公開されているもののうち,最も詳細なものがあります.
また,1つ上のところでfact-sheetsとして詳細なものがあります.
併せて参照いただけると幸いです.
へぼ担当 in mixi支隊
以下は,HN「名無しさん」による仮訳.なお,govだから,米国法では著作権フリー(のはず).
2001年9月11日のテロ攻撃から5年後
(Backgrounder - Nuclear Security ? Five Years After 9/11)
●背景
NRCが規制する原子力施設及び核物質のセキュリティーは常に優先事項であったが,2001年9月11日のテロ攻撃によりセキュリティーが脚光を浴び,ますます厳重なセキュリティー要求に拍車がかかった.
今日では,NRCが規制する施設は米国の極めて重要なインフラの中でもっとも安全なものの中にある.
事実,連邦議会の一員が最近原子力発電所のセキュリティーは,米国の民間インフラの中でもっとも強力であると評価した.
こうした高いセキュリティーは,原子力発電所の安全性が冗長バックアップ系を通じて達成されているように,何層かの同時に働く多重方法により達成されている.
まず,原子力発電所は,ハリケーン,竜巻及び地震に耐えるように建設された本質的にセキュアで頑丈な構築物である.
更なるセキュリティー手段も設けられており,良く訓練され,武装した警備員,物的バリアシステム,侵入検出システム,及びサーベイランス・システムを含む機器及び構築物:ならびに立ち入り管理などである.
脅威情報の収集及び対応のための別の防護層も設けられており,NRCは本土防衛省(DHS),情報機関,国防省及び地方警察当局と密接に作業を行っている.
これらの関係により,NRCはNRCの許認可施設に影響を及ぼすかも知れないが,いかなる脅威に対しても迅速に行動することができ,もしも深刻なテロ攻撃が発生した場合に,“柵の外側”からの有効な緊急時対策が許容できる.
NRCのセキュリティー要求の詳細の多くは,潜在的な敵対勢力を助けることを回避するため保留されているが,過去1~2年間のセキュリティーの強化に関する一般情報はNRCのホームページを含む各種の情報源で一般公衆が閲覧できる.
●原子力施設のセキュリティー
過去5年以上にわたり,NRCは許認可原子力発電施設,廃止措置炉,使用済み燃料独立貯蔵施設(ISFSI),研究及び試験炉,ウラン転換施設,ガス拡散施設,及び燃料製造施設におけるセキュリティーの強化を要求してきた.
NRCは,物的セキュリティー計画,警備員の訓練及び資格検定計画,ならびに非常時計画を格上げするよう被許認可者に命じた.これらの施設は,他の強化手段の中でも,特に次のものを有している;
・ 巡視の増加
・ より強力で,より有能なセキュリティー隊
・ 追加の物的バリア
・ 車両検査位置のプラントからの距離の増加
・ より厳重な敷地立ち入り管理
・ 強化緊急時対策計画
原子力発電所及び燃料製造施設は,NRCの「設計基準脅威」(DBT)に概要が示されている一連の敵対特性に対して防御できることを示さなければならない.
DBTの詳細は非公開であるが,一般的にこれらの施設が高確度で防御すべき脅威及び敵対特性の概要を示している.
NRCは,2003年4月にDBTを補足した.2006年10月には,DBTに関連した最終規則提案がコミッショナへ提出される予定である.
この最終規則は,2003年4月29日の補足要求DBT命令をNRC規則の中の既存のDBT要求に統合するであろう.
最終規則は,2005年エネルギー政策法の下で,同法が規定している12の要因を考慮しつつDBTを改訂する規則制定を開始し,完了すべしとのNRCの義務にも適合するであろう.
NRCは,常に脅威環境を再評価し続けており,将来必要があればDBTに対する更なる変更を考慮する予定である.
NRCもセキュリティー能力の監督を著しく増大してきた.
2000年にNRC検査官は年間40週・人をセキュリティー(特別な“武力制圧検査“を除く)の直接の検査に費やした.
2003年までにこの検査努力は,5倍の205週・人に増えていった.
こうした検査は特に,2001年の攻撃後,新しい脅威環境に対処するためNRCが要求した”保証的手段“の実施に的が絞られた.
2004年にセキュリティーのための新しい”ベースライン検査プログラム“を実施し,2005年までに原子力発電所における直接検査は更に約400週・人まで増大した.
NRCは,現在のセキュリティー規則を変更し,新しいセキュリティー要求を付加するための規則を提案している.
この提案中の規則制定は
1)2001年 9月11日のテロ攻撃の後でNRCが実施に当たって獲得した経験及び知見に基づいて出されたNRC命令により課せられたシステム的なセキュリティー要求を適用する,
2)2005年エネルギー政策法のある種の規定を遂行する,
3)セキュリティー命令の実施,サイトのセキュリティー計画のレビュー,ならびに強化ベースライン検査及び武力制圧訓練の実施から得られた知見から生じた,幾つかの新しい要求を付け加える,
4)強化セキュリティーが新規原子炉に確実に統合されるようにする,
5)安全性及びセキュリティーに悪影響を及ぼすサイトの活動を評価し,管理する要求を課す
ことになろう.
●セキュリティー訓練
NRCは,原子力発電所のセキュリティー対応が,しばしば“武力制圧訓練”と呼ばれるセキュリティーパフォーマンスを有するという規則を定め,その後試験が行われる.
こうした訓練においては,特別に訓練された模擬の敵対勢力が施設を“攻撃”するという形で行われ,2004年には,もっと頻繁に(3年毎以上の頻度で),施設の試験を行うという一層積極的な日程で,かつ一層挑戦的な期待の下で,より現実的な武力制圧訓練を実施した.
2004年暮れ以降に,この強化された評価プログラムの下,これらの実規模訓練が40件近くも実施された.
このプログラムの報告書が2006年6月に連邦議会に送付され,更に現実味を増した“習得教訓“を強化するための努力が継続している.
例えば,緊急時対応訓練及び演習にもっとセキュリティーベースの事象のシナリオを含めるため,NRCは原子力産業界,州及び地方の対応者ならびに本土防衛省(DHS)と協働し,また合同軍事訓練を模擬するために国防省が使用している技術的な新型シミュレータツールにセキュリティーベース事象のシナリオをもっと含めることも検討している.
この技術は,特定の施設に異なった攻撃シナリオをモデル化することにより,NRC及び原子力プラントが核物質防護を解析し,改善するのに役立つであろう.
●セキュリティー人員
原子力発電所のセキュリティープログラムの最も重要な要素の1つは,警備隊の質である.
過去5年間にわたりNRCは原子力発電所に対して,実質的に警備隊の人数を増やす一方で,警備要員に対する更なる訓練及びより高度な資格標準を付加することを要求してきた.
例えば,発電所の警備要員は今や,より現実的な条件で,移動する標的に対して訓練を受けなければならない.
警備要員の疲労を最小限度にし,かつ用心深く,実効性のある警備隊を確保するため,NRCは更なる執務適性要求及び労働時間管理を制度化した.
2005年エネルギー政策法に従って,NRCはある種のプラントの従業員に対する指紋押印及び人物調査要求を強化した.
2006年1月4日には連邦政府の「テロリストスクリーニングセンター」との合意に達し,原子炉施設への単独立ち入り権限を持つ個人の記録を見られるようになった.
この協力努力は,ある種の枢要施設への単独立ち入り権限を有する時個人の信用を判断するために使用され,情報の収集及び配布が自動化される.
これにより,国家の安全保障に脅威となる可能性のある誰かがこうした枢要区域への立ち入り権限を有していると特定するプロセスを強化してくれる.
●研究
研究は,NRCの安全上の指名を支援する上で大きな役割を演じてきた.
過去5年間,脅威環境の変化,及びもっと複雑な解析ができる技術の改善により,原子力発電所の研究及びセキュリティー研究の速度が加速された.
例えば,2001年9月11日の事象に基づきセキュリティー及び工学的レビューを開始した時,このレビューでは原子力発電所を攻撃するためにテロリストが航空機を使用した場合何が起きたかを調査し,他の種類のテロ攻撃の潜在的影響も評価した.
また,エネルギー省(DOE)の専門家は,最新の実験ならびに構造解析及び火災解析を使用してNRCを支援した.
詳細は機密であるが,これらの研究により発電所は頑強であり,公衆の健康及び安全に影響を及ぼす放射性物質の放出の可能性は低いことが確認された.
別の研究では,原子力発電所が大規模火災及び爆発を生じた場合,ある範囲の仮想的な攻撃でプラントの大きな区域の損傷又は喪失に耐える能力を解析した.
運転炉,使用済み燃料プール及び乾式キャスク貯蔵を含む多数の緊急時シナリオを研究した後,原子力発電所の緊急時計画を作成するために使用した既存の計画根拠は有効であり,もしもこれらの施設の近く攻撃が起きても公衆は適切に防護されるとNRCは確信した.
これらの解析の後,強化策が発見され,NRCは原子力発電所に変更を命令した.
さらに,これらの研究,産業界の最善の実践,2001年9月11日のテロ攻撃への対応の習得教訓から得られた知見に基づき,追加の緩和能力が全ての原子力発電所に設けられた.
●サイバーセキュリティー
2001年9月11日の攻撃は“サイバー”要素を含まなかったものの,サイバーセキュリティーは増大しつつある.
深刻な問題であることは秘密ではなく,NRCは原子力発電所が電算機システムの防護を強化する措置を要求した一連の助言及び命令を発行済みである.
幾つかの新しい規則制定により更なるサイバーセキュリティー要求を提案しているが,
その一つには,原子力発電所が電算機システムを防護し,サイバー攻撃を検出,隔離し,中性化するための戦略を実施すること要求することになろう.
しかし,注意することは原子炉及びその他の原子炉の安全機器を運転するのに役立つ電算機システムは,外部からの侵入から防護するため,インターネットから隔離されていることが重要である.
2005年エネルギー政策法で示唆されているように,NRCはDBTにサイバー脅威要素を付加することを検討している.
更に,NRCは定期的にDHSの米国サイバーセキュリティー部と連絡を保ち,原子力分野における連邦のサイバーセキュリティーを調整している.
●汚い爆弾に対するセキュリティー
放射性物質撒き散らし装置(1種の従来型の爆発物に放射性物質を組み合わせて放射能汚染を広げられる)に放射性物質が利用できる可能性があるため,放射性物質のセキュリティーはNRCの懸念となってきている.
いわゆる“汚い爆弾”は,実質的死者または極めて広い範囲の汚染すらひき起こしそうにはないが,パニックや混乱をひき起こすことはできよう.
NRCは協定締結州,DHS,DOE,FBI及びIAEAと共に放射性物質の製造者及び配送者と協働し,ある種の放射性物質が盗難や行方不明にならないようにしている.
最近では,核物質に関連するセキュリティー手段が増加し,核物質管理及び安全防護システム(ある種の形態及び数量の核物質の移動及び位置を捕捉するNRC- DOEの共同のデータベース)の改善及び格上げが行われた.
更に米国線源追跡システムの開発が進展しており,2007年中頃に完全稼働予定である.
このシステムによれば,関心のある量の放射線源を密接に追跡することが可能になる.
この間,NRCの「放射性線源の暫定保管量」――放射線源追跡に関する国際的な要求に対処するため確立された――は,年単位で更新されてきた.
この保管量は価値ある情報源であり,ハリケーンKatirina,Rita及びWilma の後で放射線源の安全性を確認するために使用された.
更に改善に伴い,米国税関及び国境警備機関が米国に入ってくる核物質に関連したNRCの許認可の有効性をほぼ即時に得られるようになった.
放射線又は核関連のテロ事象に備えるため,NRC及びその他の連邦機関は対応及び長期的回復の計画に当局者が使用するガイダンス草案を作成し,NRCは,DHS,環境保護庁(EPA),攻防省,DOE及びその他に加わり,ガイダンスを作成した.
ガイダンスを作成した専門家は,EPAのSuperfund及びNRCの原子力発電所の除染及び廃止措置の基準などの既存プログラムは,新しいガイドの作成には有用であったと認識した.
このガイドは発生する可能性のある広範囲(以前の大部分のプログラムが対処し,又は勧告で取り扱った範囲より大きい)シナリオに対処するため柔軟にできている.
DHSは,「放射性物質撒き散らし装置及び工夫された核装置インシデントに対する防護活動の応用ガイド」として2005年に連邦登記所の意見公募のため公開したが,州及び地方当局には,即時有用であった.
●調整及び連絡
NRCは,被許認可者を防護するため単独ではない.
NRC及びDHSは今日の脅威環境においては,資源及び業務面で協調している.
1つの具体的な事例は,最近公開された「国家インフラ防護計画」であるが,これは「原子力セクター特別計画」及び「国家対応計画」と結合させると,情報の共有に役立ち,調整された包括的な脅威及び事象への対応を提供してくれる.
連邦として統合された対応は,DHSの原子力セクターのインフラのレビューの開始決定により示されており,これが将来の他の枢要な産業のセキュリティーのレビューのモデルとなる.
「包括的レビューイニシャティブ」(DHS主導のプログラムで,米国の枢要なインフラの防護能力を評価するためのもの)は,米国の枢要なインフラ及び主要な資源の強さ及び潜在的弱点を特定するため,全ての範囲のセキュリティー,警察及び緊急時対策の専門家たちを統合した.
原子力発電所は,高レベルの計画が既に設けられ,全ての発電所は既にレビューを受けたか,又は来年にはレビューを受ける予定であることから,最初のレビュー分野として特定された.
NRCは,「本土防衛助言システム」の色コードに対応した「脅威助言及び防護手段システム」を作成済みであり,NRCのシステムは,予測されるテロ脅威に反撃するため核脅威レベルに対してNRCの被許認可者が検討すべき具体的措置を特定している.
特定の原子力施設に対する信用できる脅威が出現すれば,全体的な脅威レベルの変化がなくても追加の防護手段が強制される.
NRC,その他の連邦政府機関及び原子力産業界の間の正確な情報共有をタイムリーに行なうことは,テロ攻撃の防止又は影響の緩和には極めて重要である.
NRCスタッフは,セキュリティー関連情報の統合評価を支援するため,「国内原子力発見局」,「米国テロ対抗センター」及び「DHSインフラ防護局」に指名されている.
NRC本部にある「NRC運転支援センター」は情報の配布及び調整対応のための24時間の導管となっており,NRCの高度に訓練された専門家が,被許認可者に関連した疑わしい活動を評価するため,各種の情報源からの諜報及び脅威関連情報をレビューしている.
安全な連絡システムによりNRC は,外国の規制当局者との連絡を取ることができる.
NRCは公衆に対してオープン・コンタクトにしてきた.
しかし,9月11日以降,NRCが日常的に作成しているセキュリティー関連情報を公開すれば放射性物質を盗取し,又はくすねようとしている,又は原子力発電所を攻撃し,あるいは破壊工作を使用としている潜在的敵対者を助ける可能性があることをNRCは理解した.
こうした現実から,NRCは,情報配布政策を改訂し,セキュリティーの検査,評価又は強制措置に関する限定された情報だけが公衆に提供されるようにした.
NRCはこの政策の規制評価を行い,2006年中頃に原子力発電所のセキュリティー検査プログラムの結果の一部を公衆に利用できるようにした.セキュリティー及び緊急時対策に関する一連の年次公開会議を開始し,米国の安全保障を阻害することなく,一部の情報が外部関係者及び公衆に流れることを許容した.
●NRCの緊急時運転センター及び緊急計画
NRCの「緊急時運転センター」は,許認可対象の核物質関連事象に関する情報の受け取り,緊急時対応活動の支援,及びこれらの事象を他の連邦政府の各機関への適切な連絡を行うため,24時間スタッフが常駐している.
最近では,本センターの高度化により対応及び調整の有効性が増強され,2004年にはNRCは本センターの通信システム及び電算機システムに大規模な補修を行った.
同じような高度化は,NRCの4つのリージョンの「インシデント対応センター」でも完了している.
NRCは,セキュリティー及びテロ対抗に関連した緊急時訓練に参画することが増え,最近の訓練では,汚い爆弾,ハイジャックされた航空機,盗まれた放射性物質及び原子力施設に対する破壊工作などのシナリオが含まれている.
NRCの緊急時対応組織は,定例的にこれらの訓練に参加するとともにNRCの被許認可者を含む実事象にも対応している.
訓練及び実事象への対応の両方のあと,NRCはその活動を批判し,絶えずその対応能力を改善している.
1例として,NRCはハリケーンKatrina,Rita 及びWilmaの影響を受けた原子力発電所に関連した対応措置を調整した.
NRC及びDHSは,被許認可者ならびに州及び地方政府の緊急時対策及び対応能力の事象後のレビューを調整して行い,原子力発電所の再起動を支持できるようにこうした能力が適切に回復した時期を共同で決定した.
またNRCは,ハリケーンKatrinaから得られた教訓の連邦政府のレビューに参加し,将来のハリケーンシーズンに対する準備状況を強化するための手順及びプロトコルの変更を実施した.
2005年にNRCは,強制命令及び助言により以前に実施されていたセキュリティー関連の緊急時対策活動の追加強化を原子力発電所に提供した――これらの強化は,被許認可者の検査,緊急時対策訓練及び演習の観察,ならびに州・地方政府の緊急時対応機関及び公衆から受領した多様な関係者からの意見から得られた教訓に従ったものである.
更にNRC のコミッショナは,スタッフが既存のNRCの緊急時対策規則及び指針ならびに勧告されたプログラムの改善をレビューするようにスタッフに指示した.
再び,NRCは,関係者からの意見を要請し,多数の意見を受領し,これらの意見を勧告の作成において検討している.
NRCは適当な関係者と引き続き連絡を保ち,原子力発電所及び各物質施設の緊急時対応能力を絶えず改善する意向である.
本情報のURL は次の通りである;
http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/fact-sheets/security-enhancements.html
(出典:NRC-HP)
【質問】
原発テロって,難しいって割には注力されてるじゃん.
【回答】
一般納税者の皆様および財務担当者にゲリコマの脅威を分かりやすく説明するには,原発が一番なんすよ.
「遊撃戦によって戦略背面を脅かし,混乱を引き起こすとともに大兵力を拘束する」
なんて分かりにくいでしょ?
「原発乗っ取ってドッカーン!」
なら子供でも想像できる.
普段からして,原子力関連の事故・テロ・劣化なんとかは過剰反応されがち(当社比10倍)なんだから,注目を集めたいなら必項.
これもサヨクの方々の熱心な啓蒙活動のおかげだね.
発火点作戦◆/xe97tlSQk in mixi支隊
【質問】
原発がテロ攻撃を受けた場合,原子炉は止めるのか?
【回答】
予測事態または攻撃事態の段階において,原発を止める命令を国が出すことができる.
また,緊急事態では原子力事業者自身の判断で運転を停止することもあるという.
以下引用.
原子炉の運転停止の在り方
3 -1 基本的考え方
有事等においては基本的に脅威に関する情報は国が一元的に把握しており,一旦不測の事態が発生した場合には,国が把握する脅威の態様に応じ,関係機関がそれぞれの対処措置を講ずることとなる.
原子炉の運転停止については,事態対処法における事態の3 つの区分(武力攻撃予測事態,武力攻撃事態,緊急対処事態)に応じ,国が脅威の程度・内容等を判断し,原子力事業者に対し原子炉の運転停止を命ずるものとする.
ただし,突発的に脅威が発生した場合など特に緊急を要する場合は,原子力事業者は,事態の認定,国の運転停止命令を待たず,平時における緊急時対応マニュアル等に基づき,自らの判断により原子炉の運転を停止することができるものとする.
3 -2 原子炉の運転停止の手順
有事等の態様は様々であるため,原子炉の運転停止の手順を一律に規定することは困難であるが,有事の態様,原子炉停止に要する時間等を踏まえれば,有事等における原子炉の運転停止の手順は,概ね以下のとおりである.
① 武力攻撃予測事態
・ 武力攻撃予測事態の認定に至った場合において,我が国に対する武力攻撃が行われる可能性があるとして,警報の発令の対象となった地域内に原子力発電所を有する原子力事業者は,直ちに,代替電力の確保など原子炉の運転停止準備に着手するものとする.
・ また,武力攻撃が迫っている地域を特定することができないとして,地域を定めずに警報が発令された場合には,原子力発電所を有するすべての原子力事業者は,直ちに,代替電力の確保など原子炉の運転停止準備に着手するものとする.
・ 上記において,事態の推移により,武力攻撃が迫っている地域が特定されるに至った場合には,国の判断により,当該地域内に所在する原子力発電所以外の原子力発電所に係る原子炉の運転停止準備を解除することもあり得る.
・ なお,事態の状況により,武力攻撃予測事態であっても,国が原子炉の運転停止命令を発出する場合があり得る.
その場合は,原子力事業者は,原子炉の運転を停止するとともに,代替電力を確保するものとする.
【質問】
美浜原発事故同様事例をテロで故意に起こす事は可能か?
【回答】
まず,美浜原発の事故は,細管破断後,以下引用のような過程を経ている.
したがって,これを再現させるには,
・細管を破断させる
・主蒸気隔離弁を手動不良状態にする
・加圧器逃がし弁を故障させる
の3つを行わねばならないが,それを的確に行うためには高度の現場知識を必要とするだろうし,そのための装備を警戒厳重の中,テロリストが持ち込むのもなかなか難しいだろう,と愚考する.
ECCS作動
13時50分過ぎ,「加圧器圧力低」の信号が発信し,原子炉が自動的に緊急停止(スクラム).
その12秒後,「加圧器圧力低と水位低」の一致による「安全注入信号」が発信して,緊急炉心冷却装置(ECCS,高圧注入系)が作動,冷水が炉内に注入され始めた.
そのときの圧力は平常値(157気圧)より約27気圧低い130.2気圧であった.
A蒸気発生器の細管1本が完全に破断して,一次冷却水は約100気圧ほど圧力の低い2次側に一気に流れ込んだため,1次側の冷却水が急激に減り,圧力も下がったのである.
このような緊急時には緊急炉心冷却装置が主要な冷却系となり,緊急用以外の電源も全て切れる.
もちろん核燃料の連鎖反応も停止するが,既に燃えた核燃料の核分裂生成物が燃料棒の中で放射線を出して崩壊し続け,そのエネルギーが熱となって燃料の温度を上昇させる.
もしECCSが作動しないと,冷却水がなくなって炉心は「空焚き」状態になる恐れがある.(スリーマイル島原発事故では「空焚き」が実際に起こった).
作動しなかった弁
13時55分,細管が破断したA蒸気発生器を隔離するため,「主蒸気隔離弁」を手動で閉めようとしたが,なかなか閉まらず,完全に閉まるまでに7分を要した.
幸いECCSは作動したが,炉内の圧力は容易に下がらない.
圧力が下がらないと,冷却水も入りにくくなる.
「大口径破断」の場合には一次冷却水が冷却系の外部に一気に放出されるが,今回のような細管破断(小口径破断)ではこれと違って,一次冷却水は既に隔離された2次側に流出するだけで,それ以上,先に流出しないので,圧力もある程度以下には下がりにくいのである.
そこで14時7分,炉内の圧力を上げるために「加圧器逃がし弁」を手動で開くことを何回か試みたが,2系統とも開かなかった.この事故では「主蒸気隔離弁」と合わせ,2つの弁のトラブルが起こったことになる.
加圧器逃がし弁が故障した場合の処置の仕方は手順書に示されていなかったが,14時25分頃,運転員は手動で開くのは不可能と判断して,加圧器にある補助スプレーによる注水で冷却し,一次系の減圧をすることにした.
(日本科学者会議編さし迫る原発の危険,リベルタ出版,1992/3/30,p.30-31)
「加圧器逃がし弁」はスリーマイル島原発事故のときにもトラブルを起こしている.
スリーマイル島の場合には,今回(美浜原発事故)とは逆に,開いた弁が閉じなかったため,熱水と蒸気が溢れ出て炉の「空焚き」と大気中への放射能放出を招いた.
原発では弁の故障がしばしば起こるが,この一見,原子力技術とは関係のなさそうな問題が,大事故の原因になりうる.
特に,弁の故障が他のトラブルと重なると極めて危険であることは,スリーマイルの教えるところである.
美浜2号炉の場合もスリーマイルの場合と同種の弁のトラブルのため,炉内の減圧が遅れ,事故の収拾に手間取ったとされている.
(日本科学者会議編さし迫る原発の危険,リベルタ出版,1992/3/30,p.31)
軽水炉の矛盾
今回の手順とは違って,二次側を隔離しなければ,圧力をより早く下げることもできたであろう.
この場合は,二次側の汚染派より拡大し,場合によっては外部まで汚染する可能性もある.
このことは中島篤之助氏も指摘するように,軽水炉は
「圧力を下げて事故を早く収拾することと,汚染の拡大を防止することが,相矛盾する」
ような仕組みになっていることを示すものである.
(日本科学者会議編さし迫る原発の危険,リベルタ出版,1992/3/30,p.32)
スリーマイル島原発事故の場合にも,運転員が誤判断によって緊急炉心冷却装置を止め,事故を拡大してしまった.
しかし,このことで現場の運転員を責めることは正当ではなかろう.
運転員は中央制御室のメーター類に囲まれながら,急速に進む事故の中で判断を強いられ,また,しばしば計器自身に誤りさえあるからである.
スリーマイル島原発事故以来,特に重要視されてきた人間と機械の関係のあり方(マン・マシン・インターフェイス)の問題は,我が国の原発でも依然残されている問題なのである.
(日本科学者会議編さし迫る原発の危険,リベルタ出版,1992/3/30,p.38)
【質問】
スリーマイル島原発事故同様事例をテロで故意に起こす事は可能か?
【回答】
これもまた,要因は以下引用文のように複合しており,それを再現する事は困難であろうと愚考する.
この事故は、加圧器逃し弁が開固着して一次冷却材が流出し、炉心の冷却が不十分であったのに、運転員が一次冷却材は十分にあると誤判断したことによる。制御室内にあった正しい情報に気が付かず、事故発生後の状況の信頼できない情報に固執してしまった。すなわち、一次冷却材の圧力、温度、逃し弁出口温度、ドレンタンク圧力、温度、格納容器内圧、サンプ水位などの指示計では、加圧器逃し弁から一次冷却材が大量に流出して一次系内保有量が減少していることを示していた。しかしながら、運転員はアラーム信号を相互に結びつけて考えようとせず、加圧器の水位が上昇し、高い値を示していることのみ注目して、一次冷却材は十分にあると判断し、非常用炉心冷却装置(ECCS)を早期に停止してしまった。
蒸気発生器への主給水系故障に端を発し、種々の故障、誤操作が重なって、放射性物質が外部環境に異常に放出されるという事故であった。
http://www21.tok2.com/home/tokorozawa/faq/atm02.gif
(画像引用元:「?を!に」)
http://www21.tok2.com/home/tokorozawa/faq/atm03.gif
http://www21.tok2.com/home/tokorozawa/faq/atm04.gif
http://www21.tok2.com/home/tokorozawa/faq/atm05.gif
(画像引用元「原子力百科事典」)
なお,スリーマイルアイランド発電所事故については,以下のページが出典に耐えうる信頼性を持つと考えます.
1.概要については
http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data3021.html
http://sta-atm.jst.go.jp/atomica/02070401_1.html
2.詳細な経過については
http://sta-atm.jst.go.jp/atomica/02070402_1.html
と,そこからリンクしているページを参照願います.
HN「へぼ担当」 in mixi
余談だが,チェルノブイリ原発のような事故も,以下の記述を信頼するならば,どうやらありえそうにない.
以下引用.
この〔チェルノブイリ〕事故の原因の一つは,RBMK型の欠陥にあると指摘されています.低出力のときに原子炉の制御が不安定になるという点です.
自動車の運転に喩えるならば,低速運転のときにブレーキを踏めば,逆にスピードが上がって制御が効かなくなるという問題があったのです.
小林和男著「ロシアのしくみ」(中経出版,2001/7/9),p.121-122
【質問】
志賀原発臨界事故同様事例を,テロで起こすことは可能ですか?
【回答】
ほぼゼロ出力であり,さほどの影響はなかっただろう.
低温状態でも,冷却材の負のフィードバックは効く.
臨界維持による発熱で仮に未熟爆発したとしても,核兵器としての効果は全く見込めない.
(よって,テロで再現する意味はない?)
***
●事故経緯
志賀原発で臨界事故 北陸電,国に報告せず 8年前,定検中に15分間
北陸電力は15日,志賀原発1号機(石川県志賀町)で平成11年,定期検査中に89本ある制御棒のうち3本が誤って抜けて原子炉が臨界に達し,緊急停止するまで臨界状態が15分間続いていたと発表した.
北陸電は当時,こうした経緯について,法律で定められた国への報告を怠っていた.
〔略〕
北陸電によると,トラブルは11年6月18日午前2時ごろ起きた.
制御棒を動かすための水圧を制御する系統で,弁の操作手順を誤ったため,制御棒3本が抜けて臨界が発生した.
本来なら直ちに炉を緊急停止するための自動停止信号が出されて制御棒が挿入され,臨界が止まるはずだったが,制御棒を駆動するための圧力が不足.緊急停止が働かず,約15分後に手動で停止した.
保安院によると,原子炉内は出力ゼロのまま臨界に達していた.
当時,原子炉は検査のために格納容器,圧力容器ともにふたが外れた状態だったが,保安院は「この臨界による作業員の被曝(ひばく),外部への影響はなかったと聞いている」としている.
このトラブルについては,当時の原発所長も認識していた.
原子炉が緊急停止した際には原子炉等規則法で国への報告が義務づけられているが,北陸電は報告を怠っていた.原子炉緊急停止の未報告をめぐっては,東京電力や東北電力で相次いで発覚している.
志賀原発は1号機(沸騰水型軽水炉,出力54万キロワット)と2号機(改良型沸騰水型軽水炉,出力135・8万キロワット)があり,1号機は5年7月に営業運転を開始.
2号機は昨年3月に稼働したが,低圧タービンの動翼の損傷が判明し,昨年7月から運転を停止している.
〔略〕
【用語解説】臨界
核分裂反応で放出された中性子が別の核分裂を起こし,連鎖的に反応が続く状態.
運転中の原子炉内では制御棒や減速材で中性子量を調節し,制御された臨界状態を保っている.
核爆発は一気に臨界を起こす現象.
1979年の米スリーマイルアイランド原発事故は原子炉の臨界状態が制御できなくなったもの.
99年の東海村臨界事故は,濃縮ウラン燃料を一度に大量にタンクに入れたことが原因だった.
2007年:3月15日16時22分,産経新聞
<志賀原発臨界事故>重大ミス重なる
毎日新聞,2007年3月16日3時5分
北陸電力志賀原発1号機で,臨界事故隠しが発覚した.事故そのものが「想定外で重大」(経済産業省原子力安全・保安院)な上に,隠ぺい行為が重なっている.
どんな事故で,なぜ起きたのか.そして,隠ぺいの背景にある,北陸電力の社内風土はどうだったのか.
【高木昭午,大島秀利,河内敏康】
◇マニュアルも誤記
事故は核反応のブレーキ役である制御棒が抜け落ちたことで起きた.
1号機には89本の制御棒があり,それぞれ水圧による駆動装置がついている.
事故直前はすべての制御棒が炉に挿入され,核反応は完全に止まっていたが,事故時は,制御棒の試験の準備のため,各駆動装置に2個ずつ計178個ついた弁を,次々に閉める操作をしていた.
しかし閉める順序に問題があり水圧のバランスが崩れ,駆動装置が異常に働いて,制御棒3本が抜けた.
事前に別の弁を開けておけばバランスを保てたが,作業マニュアルはこの弁を「閉める」と誤った記述をしていた.
さらに緊急停止装置も働かなかった.
緊急停止装置は制御棒を窒素の圧力で炉に挿入する.
しかし,この日は以前に実施した制御棒の別の試験のため,各制御棒用の窒素をすべて抜いてあった.
同社は「すべての制御棒の窒素を抜いて,緊急停止装置を無力化するのは現在は規則違反になる.
JCOの臨界事故後に明文化された規則だが,当時でもやるべき行為ではなかった」と説明する.
志賀原発1号機など沸騰水型原発は,もともと制御棒が「泣きどころ」と指摘されてきた.
加圧水型原発の制御棒が上から下へ入れる構造になっているのに対し,沸騰水型は重力に逆らって下から上へ向かって差し込むためだ.
制御棒の抜け落ち,緊急停止装置の無力化に加え,今回は放射能を封じ込める二つの「ふた」が開いていた.
原発では,核燃料は鋼鉄製の原子炉圧力容器に納められ,さらに外側には鋼鉄製の原子炉格納容器がある.その二つの容器のふたが開いた状態だった.
今回の事故では,中性子を遮へいする効果がある水が原子炉内に満たされ,放射能の漏出もなかったとされる.
しかし,二重の閉じ込め機能がなかった条件下で,京都大原子炉実験所の小出裕章助手(原子核工学)はもっと深刻な事態になっていた可能性を指摘する.
具体的には,
(1)核燃料のピンホール(小さな穴)などの破損がもともとあった場合
(2)引き抜かれた制御棒がもっと多数で核反応が盛んになった場合
(3)制御棒の手動による挿入がもっと遅れた場合
――を挙げ,「核分裂に伴い生成する放射性ガスが漏れ出たり,核燃料が溶融して大事故につながることも考えられる」と説明している.
◇臨界
原子核の分裂が連続して起こる状態.
原発の燃料のウラン235は中性子が衝突すると核分裂し,新たに複数の中性子を放出する.
それが周辺のウランとぶつかって連鎖反応をもたらし,大きなエネルギーを出す.
原発では原子炉内で生成される中性子を制御棒に吸収させて臨界を制御し,出力を調整する.
臨界事故は,この制御が利かなくなった状態.
これまで確認されている臨界事故は99年9月30日,茨城県東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で発生した.
高速増殖炉実験炉「常陽」に使う高濃縮ウランを製造していた際,作業員がバケツでウラン溶液を大量に沈殿槽に注ぎ込んだのが原因で,2人の作業員が被ばくで亡くなった.
◇所長ら会議で隠ぺい…社内調査で発覚
事故発生時,1号機の中央制御室に緊急停止信号を示す警報音が「カーン,カーン」と甲高く響き,赤ランプが光った.
だが,停止装置は働かない.
当直長は全館放送で,弁の操作をしていた作業員の名を呼び「(開いた)弁を元に戻せ」と指示した.
作業員は弁を閉め,炉は,警報から15分後に止まった.
同社の調査によると,事故直後の未明,発電所長らが会議を開き,事故を報告しないことを決めた.
隠ぺいの動機について同社は「4日前に同じ1号機で非常用ディーゼル発電機のひび割れが発覚,その対処で所員は疲労困ぱいしていた.トラブル続きだと地元の信頼を損なうと考えたのが一因」と説明する.
一方,永原功社長は15日の会見で「発電所内だけで処理し,上には黙っていようという雰囲気があったのではないか.原子力の技術者は,素人の上司に相談しても分からない,という意識があるようだ」と話した.
今回の臨界事故の隠ぺいは,技術系社員数百人を対象にしたアンケートでの一社員の指摘から発覚した.
また,原子炉で核分裂が起こっていることを示す中性子量の上昇を記録したモニターに社員が手書きで「点検」と書き,臨界事故を隠そうとしていた証拠があったこともわかった.
国の電力各社への指示に基づき,同社が今年1~2月,改ざんなどについてアンケートしたところ,1人の社員がこの秘密を告白.関係者からの聴取などで今月11日ごろ,問題が発覚した.
〔略〕
【池内敬芳,花牟礼紀仁】
以下,北陸電力のHP情報.
http://www.rikuden.co.jp/press/attach/07031501.pdf
http://www.rikuden.co.jp/press/attach/07031502.pdf
志賀原子力発電所1号機第5回定期検査期間中に発生した原子炉緊急停止について
平成19年3月15日
北陸電力株式会社
〔略〕
【本件の概要】
・平成11年4月29日:第5回定期検査を開始した.
・平成11年6月18日:制御棒1本の急速挿入試験を行うため,他の制御棒が動作しないよう,残り88本の制御棒駆動機構の弁を,順次閉止する作業を開始した.
・同日午前2時17分:制御棒3本が全挿入位置から引き抜け始める.
制御棒が引き抜けた原因は,誤った手順により制御棒駆動機構の弁を操作したため,制御棒駆動水系の圧力が過大となり,制御棒が動き始めたものと推定される.
・同日午前2時18分:原子炉が臨界状態となり,出力が上昇し原子炉自動停止信号が発生したが,試験のために挿入ラインの弁が閉となっていたこと及び水圧制御ユニットアキュムレータ※1の充填圧力がなかったことから,制御棒の引き抜きは止まったが,緊急挿入されなかった.
・同日午前2時33分:このため,作業のため閉めた弁を戻すことにより,原子炉自動停止信号発信の約15分後,制御棒が全挿入となり事態が収束した.
外部への放射能,放射線の影響はなかった.
・平成11年7月23日:原子炉起動.
・平成11年8月20日:営業運転を開始した(総合負荷性能検査).
※1:水圧制御ユニットアキュムレータ
原子炉緊急停止信号より制御棒を所定時間内に緊急挿入させるのに必要な駆動圧力,水量を与えるための容器であり,1号機では制御棒1本毎に1基設置されている.(全89基).
通常は,原子炉自動停止信号を受けて,アキュムレータの蓄圧が制御棒下部に導入され,制御棒は緊急挿入される.
私自身にとっては学生時代の専門の一つでもあり,現在の職責でも,過去の運転員時代でも最も避けるべき事とされており,大変重大な問題と考えます.
取り急ぎ承知している範囲で以下の通りです.
>制御棒が3本でなくて,もっと抜けていたら,
報道やプレスリリースを読んでも,出力がどれくらいのレベルだったのか,また3本抜けたと有りますが,どのような位置なのか.当然のことながら,3本でも集まっていれば,影響があったのかもしれませんが,報道やプレスリリースを読む限り,ほぼゼロ出力(チャートなど具体的なデータが求められますが)ですので,さほどの影響はなかった物と推測されます.
ただし,正確には炉心の構成,及び抜けたという制御棒の集束具合(また制御棒価値も含む)によって話が全く異なりますので,詳細なところを知りたいところです.
メールで質問されるなら,抜けた制御棒の位置及びSRNMチャート(もしくは最大でどれくらいのレベルであったか),正規のHCUのバルブ・イン,バルブ・アウト操作手順と,本案件の際,手順のどこで間違ったのか,または不具合が起こったのかを開示するよう,本レス分と共にメールしていただきたいと思います.
それによってかなりの部分,解明が出来ますので.
なお,このような事態は現在の職責でも,過去の運転員時代でも最も避けるべき事とされており,非常に煩雑かつ大量のバルブ(弁)操作があるとはいえ,どのような作業管理がなされていたのか.
現在の職責に対しても,深刻な影響を及ぼしかねないところですので,厳重に事態の推移を見ると共に,既に行われているでしょうが,詳細な情報収集・分析作業が要求されることでしょう.
〔略〕
>低温状態では,冷却材の負のフィードバックが効きにくい
BWR特有のボイド(蒸気)発生の有無を考えれば,確かに高温状態より低温状態の方が効きにくいとは言えますが,低温状態でも核加熱で減速材(冷却材)の温度が1度でも上がれば,見事なぐらい負のフィードバックがかかります.
これはPWRの挙動とほぼ同じと考えても良い,とは両方運用している日本原電さんの講師の方の言葉です.
また,BWRの臨界事故の事故解析ではドップラー効果と事故後のスクラムを考慮するのみで,ボイド発生によるフィードバック効果は未だに含めていません.
もちろん含めない方が保守的な(厳しい)結果になることは間違い有りませんので,一言お断りしておきます.
●マスコミ報道について
(1)産経報道
>スリーマイルアイランド原発事故は原子炉の臨界状態が制御できなくなったもの
だああ,さらりと嘘をつかないで!
明らかにチェルノブイリ事故と完全に勘違いとしている物と思われます.
スリーマイルアイランド原発事故は原子炉の停止,臨界制御には成功しています.
しかし,事故後の対応のまずさから空焚きとなり,炉心が一部崩壊したわけで.
一部でも崩壊したから臨界制御に失敗したと言う方もいらっしゃるでしょうが,少なくとも未臨界の維持には成功していますので,本記載は全くの誤りと言うことが出来ます.
>核爆発は一気に臨界を起こす現象
単なる臨界では出力維持(一定)だから,臨界維持による発熱で仮に未熟爆発したとしても,核兵器としての効果は全く見込めません.
正しくは,核爆発を起こすには一気に「即発超臨界」とし,有る一定時間以上それを維持し続けることが必要です.
遅発中性子の寄与など全く期待していませんので,ここで言われる「臨界」とは全く別次元の問題です.
なお,東海村臨界事故では,当初即発超臨界を起こし,その後の発熱膨張により,当初は臨界と未臨界の間で行ったり来たりながら,結局臨界となるレベルで落ち着いてしまった物です.
そのため,「即発超臨界」となったからと言って,必ずしも核爆発を伴う物ではない(逆は真ですが)事には注意が必要です.
以上,記事本体は淡々と冷静に事実を述べ,好感が持てますが,解説の部分で台無しとなっていますので,ご参考まで.
(2)毎日報道
相変わらず毎日新聞は印象操作がうまい(苦笑).
まあ,愚痴は置いておいて…….
>沸騰水型原発は,もともと制御棒が「泣きどころ」
だからこそ,ラッチ機能(ロック機構)など,念には念を入れた構造となっているのですが,何か?
また,本事象のようにラッチ機能を突破するような誤操作を行えば,非常に大きな力が働くため,重力云々どころでは対抗できませんが,何か?
さらに,今までのプレスリリースや報道によると,本事象は主に操作(手順書)の重大なミスに設備不具合が重畳したのが原因であり,BWRの設計思想に重大な欠陥や欠点があるわけではありませんが,何か?
>二重の閉じ込め機能がなかった条件下
いわゆる,五重の閉じ込め機能のうち,そのうち二つがなかったのですが.
トータルでいくつ閉込め機能があって,どこまで無かったのか書かない限り,重要性・重大性が判断できません.これだけではさぞかし重大事故寸前だったような印象操作をしていると指摘されてもおかしくないと考えますが,何か?
(かと言え,関係者にとっては深刻であり,影響が非常に大きいのは事実.)
なお,このような段階に於いて,代替停止手段として「ほう酸水注入系(SLC)」が使用可能か否かで,影響が大きく異なるが,その点での追求は無しか.
もっとも,マスコミがその点まで知っていて,追求できる能力を持つとも思えないが.
また,Q&Aでその手の質問が出たのかどうかは知るよしもないが.
さらに,後述の専門家のはずの小出氏もその点を指摘しないのは,いずれも問題をよく理解していない証左であろう.
>京都大原子炉実験所の小出裕章助手(原子核工学)
小出裕章助手キタ――――(゚∀゚)――――!!!
しかし,相変わらず最悪の場合を指摘するだけで,実際どの程度の可能性があったのか.全く判断できていないところは,いつもの通り(冷笑).
>核燃料のピンホール(小さな穴)などの破損がもともとあった場合
少なくとも,継続装荷燃料にピンホールなどの破損が有れば,その定検前の運転中(状態としてはもっと厳しいはず)にキセノンやクリプトンなどの希ガス放出により燃料破損が関知されます.
その場合は原子炉停止後に慎重な検査を行い,そのような燃料は取り除かれるため,その点での懸念は不要ですが,その点は全く無視ですか.
また,新燃料については燃料集合体加工工場でリーク試験に合格しており,その後,炉心に装荷されたばかりのため,ピンホールなどほとんど考えられませんが,その点も無視ですか.
運転中と次回運転に向けた準備等において,燃料が健全であることを確認済であることを全く知らないのか,それとも為にする批判なのか,ミスリードしようとしているのか.
いずれにしても可能性論だけで,実際上あり得ない(心配不要)なことを,得意げになって批判するのは,完全に失当.
>引き抜かれた制御棒がもっと多数で核反応が盛んになった場合
では,どの程度の物を想定しているのか?
今回のケースでは報道によると,有る部分操作した段階で問題が発生していること,また前述の通りラッチ機能(ロック機構)から,問題となるほど多数の制御棒が同時に引き抜かれた状態になるとは考えられないが.
>制御棒の手動による挿入がもっと遅れた場合
上記,反論と同じである.
また,本事故は一部分の操作で発生したため,これ以上対応が遅れることは考えにくい.
また,手動挿入操作が仮に遅れたとして,そのまま臨界が継続したとしても,現在までの報道に依れば,出力は1%以下――実際はもっと低かったのであろうが,現在早急に入手することの出来るAPRM出力では,これ以下の出力は読めない.早急に詳細解析・影響評価が必要であるところ――で沸騰も起こさなかったと思われ,十分に熱的に余裕があった物と推測される.
そのため,最悪の事象を考え,炉心プール上での被ばく評価は行わなければならない可能性があるが(この場合,通常,当該付近に人はいないと考えられるが,念のための評価は必要であろう),燃料の破損を考える必要はほとんど無い.
むしろ,起こりうる可能性を否定できず,重要ともなりうる「炉心プール上での被ばく評価」を懸念項目に挙げなかっただけ,小出氏の「実力」が疑われる.
以上より
>「核分裂に伴い生成する放射性ガスが漏れ出たり,核燃料が溶融して大事故につながることも考えられる」
とは単なる可能性論だけで,定量的な評価をしないのはいつもの通りであり,全くの失当と言える.
いやしくも専門家を名乗り,取材に応じたり,新聞にコメントを寄せるのであれば,いい加減なコメントは不安を煽るだけで無責任であることを自覚し,被ばく評価など,現実的でかつ重要な視点を提供すべきである.
そうでなければ,単なる為にする批判であり,重要度と実際の危険性を考慮できない全くの失当と批判されてしかるべきと考えるが,いかがでしょうか.
まあ,小出氏のコメントはいつもの通りの旧態依然であり,改善を期待する方が無理なのは十分承知しており,現在の私の公的な立場では発言を控えますが,個人的には「恥を知れ!」と言いたくもなります.
(3)その他
〔朝日新聞の「臨界事故」の説明では「臨界」の説明を,「大量の熱や放射線が発生する」と書いてあったが〕,放射線はそうだとしても,大量の熱はいただけませんね.
とりあえずその記事を書いた記者の方には,KUCAで一週間地獄の実験を繰り広げてもらうか,近畿大学の原子炉を実際に見てもらって,それでもまだ同じことを言うか,問い詰めたいですね(笑).
(もう朝日にまともな記事を求めるのは諦めているので,怒る気にもなれない)
●追記
本事象の背景は大変難解であり,プレスリリース等を読んでも何故そのような事態になったのか理解できない可能性が高いため,レスと同一となりますが,以下メモ代わりに追記です.
>制御棒(駆動機構)
図で動作原理を説明するのも難しいので,言葉で説明するのはもっと難しいのですが,ごく簡単に.
BWRでは炉心上部に気水分離器や蒸気乾燥器などを配置しなければならないため,やむを得ず制御棒は下部から挿入する形となります.
そのため,不意の制御棒の落下(引抜)が起こらないよう,厳重な設計上の配慮がなされています.
具体的には制御棒は挿入方向には若干の摩擦はありますが,それでも原子炉を緊急停止できるよう,挿入方向はスムーズに高速で入ります.
しかし,引抜の方はと言えば原子炉が動き出す危険方向のため,一旦挿入方向に動かしてロック(正確にはラッチといいますが,ここでは簡単のためロックで統一します)を解除してからではないと,そのロックを各々の位置,また上下方向の位置で無理矢理突破しない限り,引抜方向には動きません.
今回3本しか動かなかったのは,変な高い水圧のかかり方をしたため,多数制御棒がある中でも,そのロックが比較的甘い(緩い)ものが動いてしまった物と言えます.
その証拠に引き抜き操作をおこなっていないこと.また,挿入方向の弁が閉まっていたこと(だからスクラムしても制御棒が入らなかったのですが)から,ロックを外したのではなく,無理な力がかかって,ロックの緩い物から突破されたものと考えられます.
逆にロックの緩い物から突破されたことから,状況に寄りますが,上下方向に25カ所あるロック位置を全て突破するのも難しく,途中で停まる可能性も十分高いと考えます.
なお,ロックを無理矢理突破する場合ではありませんが,ロックを外して制御棒を通過させる際に,どのような状況(摩擦力)にあるのかは,当該事故の前に全て測定を行い(制御棒摩擦測定試験と言います),合格しないと次の当該事故を含むステップに進めません.
ちなみに私自身も現在その測定の担当者です.
ただ,この事故は制御棒を動かす水圧系の弁の開閉状態に大きく依存しますので,事故が起こった際はどのような状態であったのか.また,どのような手順で弁の操作をおこなったかによって,かなり原因が左右されます.
ちなみに,このような弁の操作をバルブイン,バルブアウト操作と総称していますが,操作すべき弁の数が大変多いことが誤操作とも成りうる危険性を内在しています.
ただし,その操作(順番含む)を間違えば大変なことになることは操作員なら頭から叩き込まれていることです.
また,制御棒水圧系の運転状態,水圧ラインの構成状態によっても話が全く異なってきますので,昔のことですので調査は難航することと思われますが,この点の調査に最大の力点が置かれ,万全の調査,対応が求められる物と考えます.
ご不明な点などございましたら,お問い合わせ願います.
以上,取り急ぎ.
へぼ担当 in mixi,2007年03月16日00:18
& 2007年03月16日13:59
【質問】
原子炉の運転を停止するときは,現場で操作員が操作するのか?
【回答】
各発電所の構造(建設年代)によっても異なりますが.
ただいずれにしても共通なのは,「細かな,後でも済み,どうでも良いようなもの(例:試料サンプリングラインなど)以外」,安全に関する物,もしくは停止操作で必要な物で現場操作する物は,私の経験の範囲ではほとんど記憶にありません.
そもそも緊急停止などでは,ゆっくり現場操作(移動時間も当然入ります)している暇などはありません.有るのは設備保護上の物で,それも事後で十分な物です.
ただ,今回のケースは定期検査では欠かせない試験を受けるために操作した物であり,一部報道によると弁の操作手順書が誤っていたとのことです.
これらの弁は通常運転時などでは絶対に触れてはいけない物であり,かつ何らかの不具合等で「隔離」でもしない限り,運転中に操作することはあり得ませんので,手動の弁となっています.
以上,ご参考まで.
へぼ担当 in mixi,2007年03月16日10:18
【質問】
日本の原発に911みたいにジャンボ飛行機で突っ込んできたらどうなるんですか?
それを防ぐぐらい防御力ってありますか?
それとも命中したらどうしようもない状態ですか?
【回答】
ファントムくらいなら実験済み.で,耐えられます.
六ケ所再処理工場などの防護設計は,燃料と模擬弾,ミサイルを積んだ最大装備の戦闘機F-16がエンジンなどの故障により推力を失い,施設上空まで滑空し衝突する場合を想定,十分な余裕を見込んでいる(原発関連のサイトから引用)そうです.
でもさすがにジャンボ・ジェットは試していないし,それだと耐えられない可能性が高い.
ただし,基本的に原子炉は熱中性子の散乱を防ぐ制御棒が宙ブラリになっており,非常時にはそれが降下して中性子散乱を抑制する事で,結果的に連鎖反応が停止するというシステムを採用している.
この制御棒「だけ」をうまく破壊したら,メルトダウンといった悲惨な事態が発生するかもしれませんが,どう考えても難度が高いため,確定的な事はいえません.
この辺が参考になるかと.
http://www.atomnavi.jp/uketsuke/faq07_70.html
http://www.jaero.or.jp/data/publish/bunka/question/2001/q200202.htm
なお,日経サイエンス 2001年12月号 p13によれば,
世界貿易センター2棟の崩壊(重力)エネルギー
2×10^12J (TNT 500t)
ジェット機2機の爆発エネルギー 9×10^11J
(TNT 180t)
燃料の燃焼エネルギー 5×10^12J (TNT 990t)
(34000kcal/gal × 3000gal)
運動エネルギー2機分 9×10^9J (TNT 2t)
参考:トマホーク TNT 0.5t,戦術核300-1000t
広島原爆 20000t
▼ これに関し,専門家は次のように述べています.
----------------------------------
(臨界実験装置建設の)計画の議論の最中に,航空機が落ちたときの安全性について議論があった.
有名な安全性研究者が,いろいろと難しい要求などを話されたので,筆者は次のように説明した.
「私は飛行機を作ったことがあるが,飛行機は空気中に浮かせるもので,全重量は大きくても,極めて華奢に作る.
設計加速度は最大8Gで,大型機では3Gを少々上回る程度で,空気中での強度はかなりのものだが,他の物体と衝突したときの強さは,非常に弱く,問題にならない.
これは墜落事故の記録を見ても明らかで,鉄筋スレート張りの建物でも,機体の一部が飛び込むくらいで,大隊は鉄骨で止まる程度である.
この臨界実験装置では建物自体が,原子炉本体に当たり,遮蔽を兼ねた厚さ1m程度のコンクリート壁で囲まれるので,仲間で入って破壊されることは考えられない」.
かの先生はこれに対し,
「いや,そのとき建物にひび割れなどが生じ,そこから飛行機の燃料タンクが飛び込み,中で発火したらどうなるか」
と反問された.
一瞬,誰と討論しているのかと,戸惑ったが,気を取り直し,
「世の中にはそういう議論がよく行われ,混乱することもある.
燃料タンクは3mmほどのアルミ板程度のもので作られる.
これが機体から離れ,割れた建物の隙間から幽霊のように入ってくるなど,常識的ではない.
自然科学者,技術者としての常識のある議論をしよう」
と述べた.
----------------------------------
原子炉お節介学入門』下巻(柴田俊一著,一宮事務所,2000.11.30),p.46-47
常識的にまず起こらない偶然を期待して,何万回と同じテロを繰り返すような愚挙は,テロリストも冒さないでしょう.▲
しかし一方,こんな意見もあります.
菅沼 〔略〕 しかしそんなこと〔飛行機の体当たりによる破壊〕が起こらなくても,実は原子力発電所というのは,テロの標的としては極めて誘惑的なんですね.
なぜかといいますと,セスナ機1機でもいいんですよ.ぶつかって何の被害が出なくても,こういう状況になってきますと,たちどころに国民から,
『危険性のある全ての原子力発電所をやめて欲しい』
という声が出てくる.建設どころか,現在の原発も全部廃止して欲しい,こんな危険性のあるものと一緒のところには住めない,と.こういうことになりますね.
いったい,原子力発電をやめることになったら,我が国のエネルギー事情はどうなるんですか.
要するにセスナ機1基を,ただそこにドーンとぶつけるだけで,あるいはぶつけなくても,その近くに落とすだけで,もうこれでパニック状態を日本で作り出すことができます.
―― テロリストの最大の狙いは,パニックを引き起こすことです.
(元公安調査庁調査第2部長・菅沼光弘 from 「正論」 Dec. '01)
実被害よりもマスヒステリーのほうが怖い,ということですね.
▼ そして,結論としては以下のような見解になるでしょうか.
----------------------
改めてよく考えると,Murphyの法則の第1条に,ちゃんと注意してある.
つまり,何か悪いことの起こる可能性のあったときは,後から悪いことがついて起こる,と考えなければならないのである.
現実の問題は,強度計算の試験問題を解くのと同じではない.
壊れたあと,どうなるかが問題なのである.
「二次強度」とでも言うべきことで,壊れないように作るが,もし壊れたらどのようにもちこたえるか,という技術の分野である.
原子炉の場合は,コンクリート外壁は一般にかなり厚く,飛行機の構造では,普通のビルの場合のように,中まで飛び込むことはない.
〔中略〕
しかし,武器を使っての攻撃に対しては保証できない.
昔の戦国武士が教えたように,最後は人が守るものである.
そして今回のテロ事件〔9.11テロ〕は,世界の全部の人が同じ気持ちで守るのでなければ,いかに重要なものでも安全は守りきれない,ということを教えてくれた,と考える必要がある.
これは大変困難な課題ではあるが,年とともに問題は大きくなり,困難を増す,地球全体の課題であると認識しなければならない.
----------------------『新原子炉お節介学入門』(柴田俊一著,一宮事務所,2005.3.25),p.216-217
結局は人の問題,ということですね.▲
【質問】
原子炉に本当にF-4現物をぶつける実験したわけじゃないですよね?
【回答】
アメリカでぶつける実験をやった.F-4ファントムを770km/hでぶち当てる実験やってほとんど無傷.
で,その建築基準は日本にも輸入されている.
http://sanchoshop.blog41.fc2.com/blog-entry-111.html
または
http://www.youtube.com/watch?v=--_RGM4Abv8
参照のこと.
もちろん,燃料満載F-4が天蓋に急降下とか,状況が変わると結果が変わると思われる.
とはいえ,よっぽどのことがない限り壊れない,という程度には正しい.
これを見ると,外壁を射抜いたくらいでは原子炉自体にはダメージを及ぼせないのが解ると思う.
バンカーバスターのような徹甲弾頭にでもなってない限り,例え原子炉建屋に命中したって原子炉を破壊するのは無理.
軍事板
ついでに,原子炉建屋の断面図(一例).
http://www.jnes.go.jp/bousaipage/sisetu/npp-4.htm
日本の原子力発電所は,BWRとPWRがほぼ半分半分ですね.
稼働中の商業炉でしたらBWRかPWRで全て(東海村にあった唯一の例外とも言えるガス冷却炉(GCR)はただ今廃止措置中)となりますし,発電施設を持つ残りのATRのふげんは廃止に向け準備中,FBRのもんじゅは改造工事(準備)中です.
なお,防護については,一切ノーコメントと言うことで.
<承知しているかどうかも,お答えできないのです>.
へぼ担当 in mixi支隊
原発衝突実験
(画像掲示板より引用)
【質問】
原発が攻撃を受けた際,住民避難はどう行われる事になっているのか?
【回答】
国民保護法に基づく初の実動訓練である,美浜原発での避難訓練(2005/11/27)では,
「国籍不明のテロリストが陸上から迫撃砲を数分間撃ち込み,同原発2号機の原子炉の冷却装置が損傷,放射能漏れの恐れが生じた」
との想定の下.
・原発からの通報を受け,政府と福井県が美浜町の原子力防災センター内に対策本部を設置.
知事らが総理大臣官邸とテレビ会議などを行って,被害の状況や態勢等を確認.
・現地に派遣された政府職員が,地元関係者と協議して住民避難の必要性を検討.
・福井県知事が自衛隊の派遣や,美浜原発から約7キロ離れた日本原子力発電敦賀原発に運転停止を要請.
・原発周辺の地区に国民保護法に定められた警報が鳴らされ,警察が町内をパトロールするなか,住民が屋内に待避
・自衛隊や警察の車両が警備する中,チャーターした民間バスや海上保安庁の巡視船・ヘリコプターが,美浜町内の住民を最大約15キロ離れた避難所まで移送.
といった事柄が行われている.
以上,ソースは
2005/11/27付,NHKローカル(最も詳細な記事)
2005/11/27付,毎日新聞(平野光芳署名記事)
2005/11/27付,日経新聞(共同電)
より抜粋要約.
ただ,混乱状況下でどこまでスムーズにことが運べるかは,まだ何とも言えない.
誰か意図的にハプニング起こしてみたら?
なお,
「原子力防災訓練も最初は無様なものでしたが,回を重ねるにつれ,実践的なものに改善された経緯もありますので,批判は甘んじて受けますが,長い目で育てていくことも重要かと考えます」
とは,原発事情に詳しい某氏の弁.
【質問】
「B5b」って何?
【回答】
9.11テロ後,米国原子力規制委員会(NRC)で秘密裏に策定された,原発のテロ対策.
テロ攻撃による電源喪失に備え,原発に航空機が激突しても,深刻な放射能漏れを起こさないことが目標とされた.
洪水や竜巻への対策としても有効とされており,NRC幹部は
「福島のように,全ての冷却手段が失われる可能性は,ありえない」
と話しているという.
【参考ページ】
読売新聞,2011/06/14
【ぐんじさんぎょう】,2011/07/31 20:30
を加筆改修
【質問】
放射性物質の違法取引は何件になるのか?
【回答】
2004年では,報告があっただけで121件になる.
IAEAが違法取引の全体像の何割を掴んでいるのかは,報道からは読み取れない.
以下引用.
放射性物質:違法取引,4年ぶり増加 IAEAが報告書
【ウィーン会川晴之】国際原子力機関(IAEA)は27日,ウランやプルトニウムなどの核物質や「汚い爆弾(ダーティーボム)」の製造にも利用できるコバルトなどの放射性物質の違法取引報告書を発表した.それによると,04年にIAEAに報告があった違法取引は121件で,00年以来4年ぶりに増加に転じた.
〔略〕
IAEAは95年,ソ連崩壊(91年)に伴い,カネ目当ての核物質の違法取引が増えたことから,違法取引データベースを設立.その後,イランやリビアの核疑惑発覚を機に核の「闇市場」が明らかになった.
〔略〕
発表によると,93年~04年末までに報告があった違法取引は662件.このうち220件がウランやプルトニウムなどの核物質の取引で,その他の約400件が,医療用放射性元素などの取引だった.
核物質取引のうち18件が,軍事転用可能な高濃縮ウランやプルトニウム.多くの事例はごく微量だが,94年3月にロシアのサンクトペテルブルクで押収された高濃縮ウラン(2.97キロ),同年12月にチェコのプラハで押収された高濃縮ウラン(2.73キロ)など数キロに達する取引もあった.
最近では03年6月にグルジアで,高濃縮ウラン170グラムの取引が摘発された例がある.
また,約50件がダーティーボム製造などに悪用される危険性のあった取引だと指摘,その多くは過去6年間に集中しているという.
IAEAは,報告件数の大幅増加について
「各国政府が届け出るようになったからでもある」
と指摘,各国の意識向上が進んでいると成果を強調している.
【質問】
JCO爆破未遂事件とは?
【回答】
JCO臨界事故に怒りを感じた男が,JCOを爆破しようとして,爆発物を作成,JCO近くの住宅街にそれを放置した事件.
2000.1.6 07:00頃,東海村のJR東海駅から北へ300mほどの住宅街の,踏み切り脇,東海駅東口タクシー乗り場のベンチ前に,不審物があるのを通行人が見つけ,茨城県警ひたちなか西署に通報した.
それは赤い液体が入った,清涼飲料水のペットボトルや,金属製と思われる銀色のボンベなどが,黒いバッグに入れられて放置されていた.
同県警は,爆発物の可能性もあると見て,重装備の機動隊爆発物処理班を派遣.
処理班がバッグをX線で調べたところ,中には塩化ビニール管が2本,鉄パイプが1本入っており,これらはリード線で乾電池などとつながっていた.
また,真鍮管,タイマー,アルミ缶,百円ライターなども見つかった.
鑑定の結果,これが殺傷能力のある爆発物であること,爆発物の一部は,安全装置を解除して,タイマーをセットすれば,すぐに爆発させられる状態だったことが判明した.[1][2]
塩化ビニル管や鉄パイプ,アルミ缶などに,アセトン系の爆薬が詰められ,起爆装置の雷管に鉛筆のキャップを使用.「グロープラグ」と呼ばれる模型の飛行機などのエンジン用点火プラグが装着されていた.[2]
茨城県警捜査本部は,遺留品などから11日,群馬県安中市出身の住所不定・無職,大柴龍文(当時39)を逮捕.
大柴は,
「臨界事故を起こしたJCOの原子力施設を破壊し,自分も死ぬつもりだった」
「JCOの杜撰な実態に怒りを感じた」
などと犯行を自供した.[1]
大柴は,市販のマニュアル本を参考にして,爆発物を作成.
5日夜,5個の爆発物が入ったバッグを持って,JCO東海事業所に侵入しようとしたが,「警備が厳しくて敷地に入れず」失敗.
そこでバッグを駅前に置いたという.
そこからJCOは,2kmと離れていなかった.[1]
科学技術庁核物質防護対策室によると,原子力施設の警備体制は,そこで扱う核物質の量や濃度に応じ,最高度の「区分1」から「区分3」まで三段階に分かれるという.
JCOは,臨界事故があった転換試験棟が「区分2」,それ以外は「区分3」に該当し,転換試験棟には外部に強固な壁を設けた防護区域を設置したり,カメラなどで常時監視したりすることが義務づけられていた.
JCOは報道機関に対し,「外部からの侵入には気をつけているが,具体的な警備体制については,安全上明かせない」と述べている.[6]
大柴は爆弾を置いた後,カフェインを飲んで中毒症状を起こし,6日午後,水戸駅で「気分が悪い」と自分で110番通報.
水戸市内の病院に入院していた.
バッグの中に,大柴容疑者の健康保険証などがあり,警察が調べたところ,水戸市内で入院していることが判明,逮捕に至ったという.[2]
捜査本部は,JR水戸駅のロッカーから,大柴の名前の入ったキャッシュ・カードや,爆発物製造に使ったとみられる工具類などを押収した.[2]
捜査本部の調べによると,大柴は2009年11月頃に東京都内で,塩化ビニル管4本と,鉄パイプやアルミ缶,真ちゅう管各1本に爆薬と雷管などを詰めた爆発物を製造し,これらを入れたバッグをベンチ前に置いたという.
この爆発物は,09年末に発生した,2件の爆弾事件の遺留品などと似ていた.
1件目は1999.12.24,大阪府摂津市のJR東海・新幹線車輌基地「大阪第1車輌所」にて,新幹線から回収したばかりのゴミ袋が爆発.
大阪府警摂津署の調べによれば,爆発物のアルミ缶の中に,有機溶剤をしみ込ませた粉末が詰められていた.
火薬で爆発させた後,粉末に引火させ被害拡大を狙った模様.
しかし同署によれば,爆発物の殺傷力は低いという.
爆発した後の現場には,乾電池4個と充電池,小型のアルミ缶,リード線のついたふたのようなものが落ちていた.[2]
2件目は,その3日後,JR浦和駅のコインロッカーの点検中,ロッカー内にあったアルミ製の箱が爆発,管理会社従業員(当時53)が指に1カ月のけがを負った.
埼玉県警浦和署の調べによれば,箱は持ち上げた途端に爆発する仕掛けになっていた.
アルミケースから外にひもが出ており,その先端がロッカーの内壁にテープで固定されていた.
また,発泡スチロール製の球状の不審物は,直径約6センチの半球状のものを2つ重ね合わせて作られていた.
中に白色と灰色の粉末がまざり合った状態で詰め込まれ,紙製の導火線が外に延びていた.
ロッカーの中からはリード線のほかリチウム電池,プラスチック製の容器が複数見つかった.[2]
東海村と浦和駅で見つかった爆発物の起爆装置には,同じ無線操縦模型のエンジン用点火プラグが使われており,また,新幹線車両所の爆発物の容器に,同村の事件の爆発物にあったのと同じ大型雑貨店の値札やバーコードが張られていた.
さらに,JR浦和駅で見つかった爆発物の雷管には,東海村の事件のものと同じ点火プラグが使われていた.
さらにまた,東海村の爆発物と一緒に見つかったペットボトルに,無線操縦模型の燃料が残っていたが,大阪の事件でも,おがくずのような粉末にしみ込ませた同種の燃料が検出された.[2]
これら2件の事件について,大柴は
「爆弾の威力を確かめるためにやった」[1]
「ロッカーの管理がずさんで,警告のために仕掛けた.爆発で死者が出てもいいと思った」[2]
などと供述した.
警察によれば,大柴は同年11月から12月までの間,東京や埼玉などのホテルを泊まり歩きながら,アルミニウム容器に火薬を詰めた上で導火線をつないだ爆発物を製造.
同月20日に,浦和駅西口にあるコインロッカーに仕掛けたという.[2]
また,大柴は,府警捜査一課と摂津署の調べに対しては,
「東京駅で新幹線に乗り,小田原駅で下車する際に爆弾を置いた.1時間以内に爆発するようタイマーを仕掛けていた」
と供述した.[3]
大柴は小学校に入ったころ,群馬県前橋市の北部に引っ越した.
同県桐生市の高校で調理師の勉強をし,卒業後,前橋市のラーメン店や伊勢崎市のパチンコ店などで働いていた.
事件直前は,東京都内のホテルを泊まり歩いていて,逮捕されたとき,所持金はほとんどなかったという.[6]
報道によれば,大柴を知る人たちは「おとなしい性格で事件を起こすなんて信じられない」と驚いた表情だったという.
また,趣味の仲間や近所の人は「数年前に母親を亡くしてから,ふさぎ込んで姿を見せなくなった」と話したという.
最初の勤め先の経営者は,
「10年くらい音信不通だが,別の店に移った後,借金を抱えたという話を聞いた.
母親を失い,いさめたり,支えたりする人がいなくなったのかもしれない」
と話した.[6]
大柴が,爆弾づくりのテキストにしたとされる雑誌は,データハウス社(東京都新宿区)発行の「危ない28号第三巻」(99年3月発行,定価1400円).
特集「危険物!」と題して,爆発原料の入手方法,市販材料や身近な家庭用品を使った爆薬,火薬の作り方などを図解入りで詳細に解説している.
2000.2.29,群馬県は同誌を,県青少年環境整備条例に基づく「有害図書」に指定した.
雑誌「危ない28号」は徳島,和歌山,岐阜の3県が事件前から有害指定しており,栃木県も同月指定していた.[5]
2001.3.29,浦和地裁において,須田※(賢の又を忠)裁判長は,
「管理体制がずさんであると憤慨し,無差別テロとも言うべき犯行に及んだのは,筋違いも甚だしい独善的な考え」
などとして,大柴に対し,懲役17年(求刑同20年)を言い渡した.[4]
【参考ページ】
[1]『青い閃光 ドキュメント東海臨界事故』(讀賣新聞編集局著,中央公論新社,2000.4.10),
p.254-255
[2]Yellow Hiro's TOPIC#2-67 JR浦和駅ロッカー爆発事件
等
[3]<新幹線爆弾?事件>オタク爆弾,時間設定するが動かず
- 街の灯
[4]爆弾男懲役17年
[5]爆弾づくりの参考となった雑誌を県が有害図書指定(2000/2/29
茨城新聞)
[6]誰でも知っている爆弾の作り方を浅く語れ
【ぐんじさんぎょう】,2011/10/20 20:20
を加筆改修
【質問】
以下のニュースは,テロリストへの核拡散をどの程度暗示している出来事なのか?
放射性物質1キロを押収 スロバキアとハンガリー
産経新聞,2007/11/29取得
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スロバキアからの報道によると,同国の警察は28日,ハンガリー当局と協力し,100万ドル(約1億1000万円)相当の放射性物質1キロを売却しようとした3人を両国内で逮捕,放射性物質を押収したと発表した.
スロバキア通信は,放射性物質が核兵器の材料にもなる濃縮ウランだったと伝えたが,警察は確認しておらず詳細は不明.
放射性物質の捜索は両国東部のウクライナ国境に近い場所で行われており,旧ソ連から流出した核物質の可能性がある.
3人のうち2人はスロバキア,1人はハンガリーで逮捕された.
関係者への捜査は数カ月に及んだという.
冷戦終結後の1990年代以降,安全管理が手薄になった旧ソ連の核関連施設から核物質が流出しチェコやドイツなどに密輸される事件が相次いでいる.
国際原子力機関(IAEA)や各国捜査当局は,国際テロ組織や核兵器開発を目指す国が核物質を入手しないよう,厳重な監視態勢づくりを目指してきた.(共同)
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スロバキア警察,高濃縮ウランを押収・3人逮捕
日経新聞,2007/11/30取得
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【マドリード=桜庭薫】スロバキア警察は29日,ハンガリー警察と協力し,両国で粉末状の高濃縮ウランの売却を試みた3人を逮捕したと発表した.
高濃縮ウランはテロリストの手に渡れば,放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」を製造できる状態だったという.
高濃縮ウランは500グラムで濃度98.6%.ウクライナ国境に近い場所で押収された.
スロバキア,ハンガリーの東部国境は欧州連合(EU)の東端に当たるため,両国警察は国際原子力機関(IAEA)と協力し,安全管理に問題のある旧ソ連の核施設から核物質がEUに流入しないよう警戒していた.
〔略〕
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CNN.co.jp :スロバキアなどでの3人逮捕,売却図ったのは濃縮ウラン
2007.11.30 Web posted at: 17:53 JST- CNN/AP
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スロバキア・ブラチスラバ――放射性物質約453グラムを約100万ドル(約1億1千万)で売却しようとした3人が逮捕された事件で,
スロバキア警察は29日,物質は粉末状の濃縮ウランで放射性物質を拡散させる「汚い爆弾」の製造に十分な量だった,と述べた.
また,旧ソ連構成国から流出した可能性が大きいという.
旧ソ連の崩壊後,核関連産業施設での警備態勢がほころびているロシアや旧ソ連構成国からの漏出への懸念が強まっていた.
チェコなどはその持ち出し先になっていると言われ,2003年にはおとり捜査で,低濃縮ウランを71万5千ドルで売り付けようとしたスロバキア人2人を逮捕している.
今回逮捕されたのはハンガリー人2人,ウクライナ人1人.テロに使われる恐れもあったと指摘した.
ハンガリー人の1人はウクライナ居住だった.
逮捕はスロバキア,ハンガリー両国警察が協力して行っていた.
調べによると,売却の話は26日から28日までの間に実施される可能性があった.
買い手の正体などは不明.共犯とみられるスロバキア人ら3人が10月中旬に拘束されたことも明らかにした.
警察は当初,押収した放射性物質は約1キロとしていた.
国際原子力機関(IAEA)の報道官は今回の事件への関心を表明,放射性物質などの詳細な情報を得たいと述べた.
IAEAは今年8月,核関連物質の盗難や紛失は2006年,世界規模で250件以上に達したと報告している.
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In Slovakia, Three Are Held in a Uranium Smuggling Case
By DAN BILEFSKY and WILLIAM J. BROAD Published: November 30, 2007
木曜日にスロバキア外務省と警察は,2人のハンガリア人と1人のウクライナ人を濃縮ウランの密輸の容疑で逮捕したと発表した.
犯人は0.5キロのウランの粉末を所持していた.
ブラッセルのスロバキア代表は
「核物質が前ソビエト連邦の中のひとつの国からきたものである事は90%確かであり,この物質がテロリストに渡ってダーティ・ボムなどに利用される可能性があった」
と述べた.
“We are almost 90 percent sure that the material originated in one of the former Soviet republics. It was possible to use this material for terrorist attacks or to build a dirty bomb.”
しかし専門家は濃縮ウランはダーティ・ボムにするには放射性が少なすぎとみている.
また,ウランの濃縮の程度に疑問を持っているという.
犯人は核物質を$1Mで売ろうとしていて,スロバキア・ハンガリーの国境地域で2人が逮捕 され,残る一人がハンガリーで逮捕された.
濃縮ウランは481.4グラムで98.6%がU235であると発表されている.但し専門家はこの98.6%という数値に疑問を呈している.(後略)
―――翻訳:ニュース極東板
【回答】
共同通信引用の記事である産経新聞は信用できますが,日経新聞の桜庭薫記者はアホなのでしょうか.
恥ずかしげもなく,技術的に考えて意味不明の事を平気で書いています.
曰く「高濃縮ウランは500グラムで濃度98.6%」...
おそらく「濃度」ではなく,ウラン235の占める割合(濃縮度・単純に「濃縮」と言う場合も多い)が98.6%の高濃縮ウランが押収されたのでしょう.
ちなみに,これだけでは「汚い爆弾」(dirty
bomb)としては全くの威力(放射能)不足であり,知識のない一般市民をパニックに陥れる事ができても,実効性は全くありません.そもそもトン単位でウランを扱っていた私が全く無事だったのに,たかだか500グラムでどうにでもなる物ではありません.
ただし,国際原子力機関(IAEA)や各国捜査当局がこのニュースに敏感になっているのは,量はともかくとして,事実上,高濃縮ウラン使用の核兵器にしか使い道がない98.6%濃縮のウラン(研究用の高濃縮ウランはせいぜい90%程度で,報道のような98.6%とは核(原子炉)物理学的には致命的な差異となります)が流出したという事であり,これは旧ソ連構成国の解体核兵器等から発生するウランが闇ルートで流出している事,つまりテロリストを視野に入れた核拡散を意味するに他ならない事が指摘できます.
ただし「物質は粉末状」との情報が正しければ,核兵器そのものに粉末状のウランを用いる事は常識的には考えられないため,核兵器解体加工後,もしくは製造プロセスから由来したものと考えられ,これをもって核兵器そのものが拡散しているとは即断できません.
また,これだけの量では最適化を図っても臨界に達する事はできません.
なお,そもそも通常(=核兵器転用のできない)の放射能の弱いウラン1kg程度(共同通信では500g,CNNでは453gと差異有り)で100万ドルもするわけがなく,ウランという説明が間違っていなければ核兵器級というプレミア込みの価格となります.
ちなみに強い放射性物質なら数百gもあれば十二分に致死レベルであり,dirty
bombの原材料として,その様な闇価格が付いてもおかしくないのですが,その前に,闇取引をした売人が大量の被曝で死んでいるでしょう.
今後の情報に大変注目が集まりますが,もしスロバキア通信(共同通信)やスロバキア警察発表の内容が正しければ,大変に憂慮すべき事態であるため,報道管制がひかれ,一切の公式発表がないなど,これ以上の報道はなされない可能性があります.そのため,続報の有無を含めて,目が離せないところです.
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