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◆◆日本のテロ対策
<◆テロ対策
テロリズムFAQ目次


(画像掲示板より引用)


 【Link】

「VOR」◆(2012/08/14) 東京,テロリスト発見・追跡のための新システム
「人民網」◇(2012/08/07)成田・羽田,顔自動識別システム導入へ

「朝目新聞」(2013/05/24)●ネット履歴保存も義務化…テロ対策へ自民提言案

「既婚者の墓場」◆(2014/05/29) 自衛隊にいた頃9.11の後でピリピリしてる中、基地が襲撃されその犯人は中学生だった。後日その親が面会を求めてきて…

佐々淳行ホームページ

「スパイ&テロ」:安藤隆春・新警察庁長官はテロ対策のプロ

「ワールド&インテリジェンス」◆(2013/05/08) 日本で,国際テロ報道の末端にいて思うこと
>日本の国民の多くには,対テロという戦争のシビアさに対する意識が著しく欠如しているのではないかという気がしてならない.

●共謀罪

「Togetter」◆(2012/5/25) 誰が大臣になっても同じで何も変わらないと言う前に
 参考にすべきtweet無し

「Togetter」◆(2012/9/18) リッチマン、プアウーマンのドラマの中に隠されていた公的スポンサーと制作サイドの意図
 参考にすべきtweet無し
 ほぼ妄想の類

「Togetter」◆(2013/6/4) 130604 共謀罪創設反対を求める院内学習会
 参考にすべきtweet無し

「Togetter」◆(2017/6/3) 【ツイートもできない共謀罪】リベラルに絡まれた話
 参考にすべきtweet無し
 ただの罵り合い

●警視庁テロ情報流出事件

「海洋戦略研究」◆(2010/12/25)警視庁テロ情報流出?(9)

「スパイ&テロ」◆(2010/11/01)警視庁公安部外事3課資料流出

「スパイ&テロ」◆(2010/11/01)警視庁公安部外事3課資料流出その2

「スパイ&テロ」◆(2010/11/03)警視庁公安部外事3課資料流出その3

「スパイ&テロ」◆(2010/11/04)対テロ捜査の翻訳問題

「スパイ&テロ」◆(2010/11/05)公安部資料の流出元&尖閣ビデオのユーチューブ流出

「スパイ&テロ」◆(2010/11/07)外事3課が追ったイスラム人脈の中心人物

「スパイ&テロ」◆(2010/11/09)警視庁公安部外事3課資料流出で雑誌寄稿


 【質問】
 警察のことを専門に取り扱ってる雑誌って,何がありますかね?

 【回答】
 『警察時報』もあるが,立花書房の『警察公論』もあるよ.
 どっちもいわば業界紙だから,実務的過ぎるが.

 同じく立花書房の『治安フォーラム』は,「日本と世界の治安」的で,もう少し啓蒙的.
 やぼったい記事レイアウトが『軍事研究』と被って,なんか親近感.

 もう一冊出てる『警察学論集』は,警察大学校が編集だから論文調だけど,これはこれでテロ対策の論文とかも多くてはまると面白い.

 ホームページで目次見れば三者の雰囲気はわかるかも.
http://www.tachibanashobo.co.jp/blog/index.html

 写真誌なら『ポリスマガジン』もあるよ.
http://www.polimaga.com/

軍事板,2009/06/26(金)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 サツ…警察

 ポリ…ポリス

 マッポ←これなに?

 【回答】
 マッポという隠語は大正時代からあった.諸説あってはっきりしないが,「ナムコのマッピーが語源」などという事だけはありえない.

 1)大正時代に「張り込み」のことを「まつば」と呼んだ.. (張り込み→針→松葉)
 そして「松葉ポリス」が略されてマッポになったのではないかという.

 2)明治期東京には薩摩出身の警官が多かった事から「薩摩っぽ」から.
 薩摩弁丸出しで威張っている風に写る姿から「薩摩っぽ=警官」.
 「薩摩人のくせに!」という意味.
 明治時代,長州との権力闘争に負けた薩摩藩出身者,特に下層の人間には,警察官とか刑務官とか,いわゆる「人に嫌われる仕事」しか宮仕えの道がなかった.
 そのため,「(警察官にしかなれない)薩摩人のくせにオレに指図するのか!」という意識で接する人間が多く,「薩摩っぽ」=「警察官」という意味の侮辱語,ひいては隠語になった.

 3)「ポリスマン」の逆読み,「マンポリス」を詰めて「マッポ」と言った.

 4)滅法うるさいところから「めっぽう」が転じて「マッポ」


 【質問】
 なぜ日本の警察と憲兵は別組織になっていたのか?

 【回答】
 日本最初の近代警察組織はおそらく東京警視庁でしょう.
 ただし,井上馨が設立した横浜居留地警察(明治4年?)を日本最初とする場合もあるようです.これはロイヤル・ホンコン・ポリスに範を取っていたそうです.

 川路は「人民保護」を念頭に,パリ警視庁を模して東京警視庁を作りました.
(なお川路は警視旅団長を「病気」を理由に途中で辞任しています.恩人の西郷とはどうしても戦いたくなかったのでしょう)
 しかし将来的にはフランス式憲兵隊を創設しようとしました.
 明治8年あたりから,じっさい東京警視庁は陸軍から小銃を借り受け,戸塚等の練兵場で訓練を行っていました.

 でもこれはオジャンになりました.薩閥による治安独占を警戒した長閥の反対があったからです.
 藤田組贋札事件のスキャンダルもあって,川路は憲兵をあきらめます.
 西南戦争後,警察は小銃を陸軍に返却し,軍事色を薄めるところとなります.

 明治14年(だっけ?)陸軍に憲兵制度がもうけられます.
 これも将来的にはフランス式憲兵隊に成長させることが期待されていました.
 しかし財政的理由(松方デフレ)により,実現しなかったようです.
 当時の山県が,外征型陸軍の建設を諦めていたからかもしれませんが.

 【参考文献】
高橋雄豺著「日本警察史」
内務省編「警視庁史稿」
全国憲友会連合会編纂委員会編「日本憲兵正史」(全国憲友会連合会本部,1980)
をうろおぼえで参照

軍事板


 【質問】
 日本の危機管理態勢は法律上どこが問題か?

 【回答】
 最大の問題は特に,法的枠組としての支柱がないことです.

 新法が次々とできていくと,主管官庁が入り組み,どんどん複雑化していきます.
 現地の司令官は,全ての法体系を熟知しないと,いったい何に基づいて隊形をとればいいのか分からなくなってしまいます.現地では極めて活動しにくい状態に陥ってしまうのです.

 アメリカには国家安全保障法という法律があり,それをその都度改正して,新しい事態に対応しています.
 日本としても,同様の法律を一つ作り,それを改正しながら問題に対応していくべきだと思います.

 詳しくは 「『新しい戦争』を知るための60のQ&A」(新潮社,2001/11/15),P.43-44(森本敏〔安全保障問題専門家〕著述)を参照されたし.

 また小川和久は,国の安全を図るための組織がない,と指摘している.
 以下引用.

 具体的には,「安全なくして繁栄なし」の思想の下,まず国の安全を図るための組織を以下のように作り上げて欲しい.世界の平和と国家の安全が確立されないことには,それを基盤とする日本の経済立国はありえないからだ.
 その国家の安全を図るための組織は,基本的に防衛庁(自衛隊)と危機管理庁の2本柱で構成されると考えてほしい.
 そして,両者にまたがる情報活動やテロ対策のような重大案件は,首相直属の国家安全保障会議が統括する.
 なぜ,このように考えなければならないかは明らかだろう.
 例えば,武力攻撃事態や大規模テロで自衛隊が外敵と戦っているとき,役割分担として国内的に国民を守るべきは消防,警察,自治体,関係省庁である.
 この国民保護に重大責任を持つべき組織が縦割りに陥り易いこと,その結果,国民を危険に晒してきたことは,いくらでも例を挙げて証明できる.
 これを縦割りに陥らないようにするためには,関係組織を統括する「国民保護のための主体組織」が必要となる.これが危機管理庁である.
 危機管理庁は,アメリカの連邦緊急事態管理庁(FEMA)の考え方が参考になる.
 ハリケーン「カトリーナ」でさらした醜態ではなく,少なくともクリントン政権時代にウイット長官のもとで発揮した国民保護の能力を,日本も備えなければならない.

 大災害や重大事故などの時,主体である危機管理庁を災害派遣の形でバックアップするのは自衛隊だが,これは事態の重大性の度合いにより,国家安全保障会議の判断による場合と危機管理庁の要請による場合に分かれる.
 国家安全保障会議のモデルとなるのは,アメリカの国家安全保障会議(NSC)である.
 日本の安全保障会議とは違い,高度な能力を備えた専門スタッフを有する組織で,日本の場合,アメリカの中央情報局(CIA)に当たる情報機関を国家安全保障会議のもとに置き,まずは日本が苦手とする工作などの部門は持たず,地域研究などについて高度な能力を持つシンクタンクとして機能させ,そこから得られる情報を外交・安全保障やテロ対策などに活用するのである.

 むろん,危機管理庁については根強い反対論がある.
 いわく,「危機管理庁は,屋上屋を架すがごとき」,いわく,「新しい役所を作ることは行政改革に逆行する」.
 こうした反対論は明らかにおかしい.
 「屋上屋」というが,どこに国民の安全を確保するための危機管理庁に当たる最初の建物(組織)があるというのか.ないから,つまり縦割りに陥って国民の安全を図ることができていないから,危機管理庁が必要なのではないか.
 また,「行政改革に逆行する」というが,不用な行政組織を統廃合・縮小し,必要な組織を新設・増強することこそ,正しい行政改革なのではないか.
 やりくりのできていない家計に似た国家行財政の問題の根底には,このような硬直した姿勢がある.

小川和久著「日本の戦争力」(アスコム,2005.12.5),p.16-18


 【質問】
 ハイジャック防止法って何?

 【回答】
 正式名称を「航空機の強取等の処罰に関する法律」と言い,よど号ハイジャック事件を機に1970年に制定.
 1970年に起きた,全日空アカシア便ハイジャック事件にて初適用された.
 第1条;航空機強取等,第2条;航空機強取等致死,第3条;航空機強取等予備,第4条:航空機運航阻害から成り,この第4条の規定により,実際に航空機に搭乗していなくても,「航空機に爆弾を仕掛けた」など偽計業務妨害的な行為を行っただけでも,ハイジャック防止法に引っかかる.
 ただ,第4条の判例は,平成5年に起きた,鹿児島発東京行き全日空機に対する爆破予告の1例(一審で有罪)しかなく,検察が有罪を立証するためのハードルは,偽計業務妨害罪よりも高いと思われる.

 【参考ページ】
「総務省」◆航空機の強取等の処罰に関する法律
http://news.guideme.jp/kiji/6c2f965685e0756ea9ef0929ce8d97bd

ハイジャック防止法第4条が適用された主な例
(こちらより引用)

【ぐんじさんぎょう】,2013/03/05 20:50
を加筆改修


 【質問】
 テロ・組織犯罪対策についての,今後の日本の法制上の課題は?

 【回答】
 法政大学教授・今井猛嘉によれば,以下の点が検討課題として残されているという.

1) マネー・ロンダリング罪の着実な適用には,被害者の協力も必要であり,被害回復が充分でないなら補足的な手当ても検討されるべき

2) マネー・ロンダリング罪は強力な手段だが,正常な金融取引にまで過度の萎縮効果を及ぼさない工夫が必要.
 そのためには,何が「疑わしい取引」に当たり得るのかをできるだけ詳細に示す努力が必要.

3) ゲートキーパー規制の際,弁護士の秘匿特権への侵害を防止するための工夫が必要.
 その点では,弁護士にも疑わしい取引の報告義務を課し,その義務違反を処罰する英国の状況が参考になるだろう.

4) 統一したテロリズム概念から,段階づけられた刑罰を予定する,現実整理が望ましい

5) 日本が一方的に不利な条件の下で,日本国民を他国に引き渡すことを強制されないようにする配慮が必要

 詳しくは『ジュリスト』 2008.1.1-15号,p.126-129を参照されたし.


 【質問 kérdés】
 テロリストによる邦人誘拐に対し,自衛隊による人質救出作戦は可能ですか?

 【回答 válasz】

 通称「イスラム国」による日本人人質殺害事件を契機に,自衛隊による邦人人質救出が国会でも論点として浮上しています.

再送-〔アングル〕自衛隊の邦人救出,人質事件で今国会の論点に急浮上:Reuters

 「イスラム国」はどこの国も国家承認しておらず,テロリスト扱いであり,憲法で禁止されている「国際紛争解決の手段としての戦争=侵略戦争」には当たらず,自衛隊法の改正により自衛隊による邦人輸送と武器使用の拡大も明記されました.

防衛省・自衛隊:7 在外邦人等の輸送への対応

 法的問題があるとすれば,テロリストの陣地にまで自衛隊が突入して戦闘し,邦人を救出する事への法的根拠が問題になります.
 今国会ではそれが議論の対象となると思われます.

 一方,自衛隊の能力に関してはどうなのか.
 当方の見解はある事はあります.
 陸自には習志野駐屯地をベースとする特殊作戦群,海自には江田島をベースとする特別警備隊があります.
 自衛隊では冷戦時代は正式な特殊部隊の設置は行われませんでしたが,冷戦終結後の国際情勢の変化に伴い,陸自と海自に特殊部隊が設置されました.

 海自の特別警備隊はイギリス海兵隊の特殊部隊で「海のSAS」にあたるSBS(特殊舟艇部隊)から教官を呼んで,SBS方式で訓練を受けた経緯があります.
 また,陸自の特殊作戦群はPMC(民間軍事会社)を自費で研修に受けに行った隊員が多く,初代群長の荒谷卓氏も海外でトレーニングを受けています.
 よって,恐らくCQB(近接戦闘)の錬度は極めて高いと思われます.

 次に侵入手段ですが,陸自のUH-60JAヘリや空自・海自のC-130H・C-130Rなどあり,特に装備の面では問題はないでしょう.
 UH-60JAの場合,ひゅうが型護衛艦から発着させればいいだけの話ですから.

 さらに,人質救出作戦で問題となるのは情報収集の問題,ヒューミント(スパイによる諜報活動)ですが,陸自では冷戦時代から秘密情報部隊「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(別班)が旧ソ連(ロシア),中国,韓国,東欧諸国で諜報活動を行っていたと言われています.
 それなりのスパイはいますし,マンパワーもあると思います.

陸自が独断で海外情報活動 首相,防衛相に知らせず:共同通信

 しかしダーイシュはフセイン政権時代からの秘密警察や諜報機関のメンバーも参加していると思われており,ヒューミントではフセイン政権時代に自制していた行為も行われているので,現在はヒューミント活動はかなり難しくなっています.
 最近でもロシア諜報機関員とおぼしき人物をダーイシュの少年兵が処刑する動画が公開されています.

時事ドットコム:少年が男性2人銃殺=「イスラム国」がビデオ公開

 またダーイシュはシリアにまで占拠範囲を広めていますが,シリアへの空爆や偵察活動を旧ソ連時代からの同盟国で現在もシリアに海軍施設を駐留させているロシアは,アサド政権の許可無しの空爆や偵察は侵略と見做すと警告しています.
 このためアメリカは偵察機も出さず,地上からの偵察も許可しなかったのか,米軍はダーイシュに囚われた米国人人質の救助に失敗しています.
 ダーイシュは勢力範囲が広く,人質の移送が可能で強襲してももぬけの殻という事があります.

米軍,フォーリー氏ら人質救出作戦に失敗していた - WSJ

自衛隊の人質救出作戦は可能か?「イスラム国」突入の現実味 : トトメス5世 ニュース

 また,海外での人質救出作戦は些細なミスで失敗する事が多く,この事例以外にもイエメンでのアル・カーイダに囚われた米国人人質の米軍の救出作戦も失敗しています.

CNN.co.jp : 米軍の救出作戦失敗,米人質ら2人死亡 イエメン

 米軍はこれまでにもイラン大使館占拠事件での大使館員救助のためのイーグルクロー作戦など失敗したケースが多く,成功したケースはむしろ少ないのが実情.
 海外での人質救出作戦の成功例としては,イスラエル軍によるウガンダ・エンテベ空港奇襲作戦(オペレーション・サンダーボルト)が上げられています.
 しかしこの作戦では,当時テロリストを庇護したウガンダの当時のアミン大統領が政権発足当時は親英・親イスラエルであり,イスラエルから援助を受けていたという事情がありました.
 その後,アミン政権の粛清や大量虐殺,大量の武器の無償供与要求や,第三次中東戦争でのシナイ半島の占領に対するアフリカ諸国の反感から,アミン政権に当時のリビアのカッザーフィー政権が接触,武器の無償供与とソ連からの軍事援助の約束を取り付けた事から,1972年3月にはイスラエルと断交,
 ミュンヘン五輪でのパレスチナゲリラによるイスラエル選手団殺害事件では,当時のワルトハイム国連事務総長にテロの賛美とナチス・ドイツのヒトラー総統を称える手紙を出すなど,イスラエルとの関係は悪化,今で言うテロ支援国家に成り下がる始末でした.
 ただ,アミン政権とイスラエルの関係が悪化する前は,ウガンダのインフラはイスラエル資本が担っていたという事情があり,エンテベ空港もイスラエル資本によって建設されていたので,空港の見取り図などはそのまま保存されていました.
 また,アミン政権は人質を移送せず,エンテベ空港の待合室に監禁したままだったというのも,オペレーション・サンダーボルトが成功した要因の一つと言えるでしょう.

 しかしこのオペレーション・サンダーボルトでも,人質2名が流れ弾に当たって死亡.
 また,指揮官だったヨタナン・ネタニヤウ中佐もウガンダ軍警備兵との戦闘で戦死しています.
 人質救出作戦には二次被害の可能性も考慮に入れなければなりません.

 もしダーイシュの邦人人質事件が発生した場合には,シリアのアサド政権との協力,(アメリカやシリアの反体制派は歓迎しないでしょうが)RQ-4無人偵察機の増備,諜報員の安全確保を保障した上でのヒューミント活動が不可欠になります.
 それを踏まえた上での議論を国会でして欲しいところです.

ねらっずーり in mixi, 2015年02月11日
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 狙われているのが基地か駐屯地かもはっきりしない,曖昧なテロ警戒命令が大臣からあった場合,その曖昧さには自衛隊はどう対応するのですか?

 【回答】
 まず,各幕僚長は防衛大臣を補佐するのが仕事.
 部隊への命令は防衛大臣名で発簡される.
 曖昧な言葉の政治意図を汲んで,明確な行政用語による命令へと起案するのが各幕の仕事.

 例えば,防衛大臣が陸海空幕僚長に対して
「今,入った情報によると自衛隊に対するテロが予想される.
 基地警備を厳重にせよ.」と命じたような場合,普通マトモな人間なら
「基地,ということはその情報は明確に海自もしくは空自の基地を狙うという情報ですか?
 陸自にも”駐屯地”という名の基地はありますが,その情報ではその区別はなされているのですか?」
と訊くだろう.

 それに対して大臣が
「よく解らんが自衛隊の基地を狙ったテロが確実に起きる,という情報が回ってきたんだ.閣議で」
とか答えたら,とりあえずは
「では3自衛隊全て厳戒態勢に入ります」
とするだろう.

「いや,”基地”と明言されてる」
とか
「海自か空自の基地を狙う,という情報だ」
と返事されたら,
「万が一のことを考えて3自衛隊厳戒態勢に入ります」
とするだろう.

 例え
「海上自衛隊余市基地に*年*月**:**にテロがある」
と限定された情報でも,大臣からの話なら3自衛隊は厳戒態勢に入るだろう.
 続いて陸空にもテロが行われる可能性はあるわけだから.

 で,もし仮にその時陸幕長が
「基地,ってことはうちは”駐屯地”だから関係ねーな」
と思って何もしない人だったら,そもそも陸幕長にはなれないと思うが,事後絶対にクビが飛ぶだろう.
 その時
「防衛大臣の言い方が悪かったせいだ」
等と言う人はおるまい.

軍事板


+

 【質問】
 日本のテロ対策は,どの程度進んでいるのか?

 【回答】
 2005/7/19付産経新聞によれば,そのための法整備は,縦割り行政が壁となっており,部分的にしか進んでいないという.
 以下引用.

「対岸の火事」?政治家も危機感なし

 〔略〕
 自公民三党合意の緊急事態基本法案提出は見送られ,国会は郵政一色.
佐々淳行元内閣安全保障室長は
「次の標的は東京だといわれても,日本人は人ごと.国民も政治家も楽観的すぎる」
と警鐘を鳴らす.

 政府は昨年十二月「テロの未然防止に関する行動計画」を策定.テロリストに対する入国制限や爆発物の輸入管理強化など十六項目について平成十八年度をめどに法整備を進める.
 テロリストの資産凍結策やテロリスト・テロ団体の指定制度についても「速やかに結論を得る」と打ち出した.

 テロリスト・テロ団体の指定制度は入管段階でのテロリストの識別などに役立つと期待が強い.
「国連が指定したテロ組織リストを準用すれば,指定はそれほど難しくない」(外務省筋).
 ただ国内法では,
「テロリスト」の定義がなく「新しい形のテロリストやテロ団体の指定には対応できない」(政府関係者)
という事情もある.

 現在,公安調査庁,警察庁,外務省,法務省,海上保安庁などが事務レベル協議を続けているが,
「自省庁の情報を他省にわたしたくない」
という思惑から足並みはそろわない.
 一役所で統一的に対処する米英と違い,省庁ごとにテロ対策を行う日本の弱点を浮かび上がらせた格好だ.
 国際的な「テロとの戦い」で日本も主体的役割を果たすべきだと考える外務省は,,テロリストやテロ行為を包括的に取り締まる「反テロ法」の制定を主張.
 これに対し法務省は,憲法上の「基本的人権の尊重」を侵害する恐れがあるとして,過剰取り締まりには慎重だ.
 テロリスト・テロ団体の定義づけによっては「結社の自由」を制限しかねないことや,テロ資金の取り締まりは「財産権」侵害につながる恐れがあるとの懸念もある.

 佐々氏は,
「米国のテロ対策は靴も脱がせば指紋も取る.人権の制限も辞さずという人権擁護の観点に逆行する厳しいものだ.
 しかし,日本は個人の権利が憲法で極端に強調されているため,厳しい対応に踏みこめない」といい,「ロンドンのテロの直後で,日本でも危機がささやかれているのに,緊急事態基本法案が見送られたことこそが,政治家の危機感のなさを象徴している」
と指摘する.

 軍事アナリストの小川和久氏も
「各省庁の官僚組織を束ねる“腕力”のある政治家がいない」
と指摘.
 9・11後に米国で新設された国土安全保障省のような組織の整備を求める一方で,現行制度の運用でも対応できるとして
「強いリーダーシップのある政治家を官邸に置いて省庁をまとめる必要がある」
と提案した.

 小川和久も,「あまりにも遅れている」という見解のほうに立っている.
 以下引用.

 日本のテロ対策は,国際的な水準からはあまりにも遅れていると言わざるを得ません.
 2000年7月に九州・沖縄サミットが開かれましたが,このときの警察のテロ対策(テロを念頭に置いた警備)は国際的には「幼稚園年少組」レベルのお粗末さでした.
「2万3百人の警察官で蟻の這い出る隙もない」
と警察幹部は胸を貼っていましたが,大量動員はデモ対策には有効でもテロ対策にはなりません.
 ある程度の準備期間をかけて要人に近づくことのできる人物になりすませば,テロは成功したも同然ですから.

 つまり,日本の警察は優れた点が多々あると思いますが,テロ対策については何も知らないのです.
 国際的に十分な役割を果たせていないということについての自覚がないのも問題です.
 もちろん私は警察庁の上層部に細かく指摘をしました.
 自衛隊のテロ対策も国際的な水準からはまだまだですが,少なくとも自衛隊はそのことを自覚しているだけましです.
 九州・沖縄サミットで具体的にどんな問題があったのか,あるいは現時点で警察のテロ対策にどんな問題があるのかは,公表するとテロリストに手口を教えることになりますから,ここではこれ以上は指摘しません.

 日本のテロ対策の遅れは,鉄道爆破テロの1年後の2005年3月にスペインのマドリードで開かれた「民主主義とテロ,治安に関する国際サミット」に,日本の政府関係者が一人も出席していなかったことでも明らかでしょう.
 これはアナン国連事務総長をはじめ世界23ヶ国の首相と国家元首クラスの要人,400人以上の専門家が出席し,民主主義社会がどのようにしてテロを克服していくかを摸索する会合で,私も行きましたが,前年の11月に招待状が発送されたにも関わらず,日本人の顔をほとんど見かけず,実に情けなく思いました.
 サミットの出席者から,
「世界で初めてサリンと言う大量破壊兵器でテロをやられた日本は,同時多発テロのアメリカ,列車爆破テロのスペインと並んでテロ克服をリードすべき立場なのに,一人も政治家が出席していないとは信じられない.
 そんな日本が国連の常任理事国になると言っても,支持するわけにいかない」
と批判が出ていたことは,知っておいてもらいたいです.

 東京の都心部には,国家の中枢機能である立法(国会)・行政(首相官邸や各省庁)・司法機能(最高裁),皇居などが集中しています.
 国会,首相官邸,皇居などの警備は,第一義的には警察が担当するしかありません.
 それはよいのですが,私が国会周辺や首相官邸付近を「テロリストの目」で見て歩くと,警察官のたたずまいを見ただけで,これはテロ対策が何もない国だということが分かってしまいます.
 警察官達が命がけで任務に就いていることは評価しますが,このままでは残念ながらあっという間に殺されてしまう.
 この点は,誰が見てもハイレベルの対テロ能力を備えていると伝わるような警備に変えていく必要があります.
 そのことがテロリストの意欲を削ぎ,抑止効果を生むのです.

 まず警察の能力アップが必要ですが,警察力では対抗できないような緊急事態は十分起こり得ますから,その場合にはタイムラグが生じない形で,やはり能力の高い自衛隊の特殊部隊がカバーできるようなシステムを,国民の了解の下できちんと作るべきでしょう.

小川和久著「日本の戦争力」(アスコム,2005.12.5),p.172-

 逆の見方もある.
 2005/7/19付読売新聞は,「徐々に国際水準に近づきつつある」という見解を示している.
 以下引用.

 今月7日のロンドンでの同時爆破テロを受け,政府は国内のテロ対策の強化を急いでいる.
 2004年12月に決定した「テロの未然防止に関する行動計画」に明記した16項目の対策のうち,8項目を既に実施したほか,行動計画以外に,鉄道での監視カメラの増設などに乗り出した.
 〔略〕
 政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部(本部長・細田官房長官)が纏めた行動計画は,「速やかに講ずべき対策」として16項目を盛り込んだ.
 既に実施した項目では,旅館業法の施行規則を改正し,外国人宿泊客の本人確認の強化を全国の旅館業者に義務付けた.今年4月以降,外国人宿泊者は宿泊者名簿に国籍や旅券番号を記載することになった.
 爆弾テロ対策として,爆発物の原料の管理も強化した.オキシドールなど薬局で市販されている過酸化水素製剤などが対象で,厚生労働省は3月,日本薬剤師会,日本チェーンドラッグストア協会などに対し,大量購入など不審な場合は警察に通報するよう求めた.
 一部の旅客機に私服警官を搭乗させる「スカイマーシャル」制度は昨年12月に導入されている.

 未実施の8項目の中でも,海外から来日する旅客機の搭乗者名簿の提供を航空会社に義務付け,入国審査前にブラックリストと照合する「事前旅客情報システム」については,既に任意で名簿提供を受けている.
 ただ,提供は,航空会社の約3分の1の約20社にとどまっている.会社側に「一般の個人情報まで提供する」ことへの懸念があるためで,政府は2006年度の法改正で名簿提供を義務付ける方向で各社と協議している.
 指紋採取などバイオメトリクス(生体認証)を活用した入国審査についても,政府は来年度の法改正を目指している.法務省が国内での実用化に向け機材を実験中だ.

 行動計画とは別に,政府は,英同時テロの犯人の特定に駅の監視カメラが役立ったことを踏まえ,全鉄道会社にカメラの増設を要請したほか,監視体制の強化策を検討している.

▼ 佐藤優は,日本のテロ対策上の大きな問題は,政治家やマスメディアの感覚が鈍く,世論の後押しがないことだと述べている.

――――――
 最近,外国のテロ対策専門家が筆者を訪ねてきた.北朝鮮が行う可能性があるテロに対する日本の政治エリート,マスメディアの感覚が鈍いのに驚いていた.
 その専門家は,
「日本警察のテロ対策部門は有能で,取るべき予防措置や広報についてもきちんとした問題意識をもっているのだが,世論の後押しがなく,政治家の理解がないところでは十分な対策をとることができない
との感想をもらしていたが,筆者もその通りと思う.

――――――佐藤優の「地球を斬る」,2007/1/25
――――――
 テロ対策は思想戦でもある.
 自爆テロは精神に変調を来した人物が神懸かりになって行う異常現象ではない.
 イスラエル国家の壊滅,ロシア連邦からチェチェンを分離してイスラム帝国を建設するなどの具体的政治目標をもつ組織が,カネと時間をかけて自爆テロリストを養成しているのである.

 裏返していえば,自爆テロを続けても政治目標が達成されないならば,当該組織はテロ活動をやめる.
 かつて,北アイルランドでIRA(アイルランド共和軍)は積極的に爆弾テロ闘争を展開したが,イギリス政府と国民が一体となって「テロリストの要求には屈しない」という原則を貫くとともに,IRAの政治部門である「シンフェイン党」を国会選挙に参加するように誘った.
 「シンフェイン党」から国会議員が生まれ,北アイルランドのカトリック系少数派の見解が国政に反映される仕組みができると,IRA自体が穏健化していった.
 政治エリートの交渉能力と国民の「テロには屈しない」という思想的頑強さが有機的に結合して,IRAのテロ活動を封じ込めることができたのである.

 思想戦としてのテロリズムとの戦いを軽視してはならない.
 この観点から見ると日本は対テロ思想戦の準備が全くできていない.
 外国のテロ対策専門家はいう.
「日本の原子力発電所の多くが日本海側に面しているが,北朝鮮の工作員が上陸して生物・化学兵器で攻撃をした場合の防御策は十分とられているか.
 原発の警備は民間会社が行っていると承知するが,北朝鮮情勢の緊張を考慮するならば自衛隊が警備するのが国際スタンダードではないか.
 それから貯水池に対するテロ対策は十分にできているのか」
という.
 もちろん関係当局はそれなりの対応はとっているのであろうが,テロの脅威に対する認識は不十分と思う.

 イスラエルの水資源公団幹部を務めた人物が水の安全保障についてこう述べていた.
「ハマス(パレスチナの原理主義過激派)が貯水池に毒物を混入させるという確度の高い情報が入ってきたので,イスラエルはユニークな対応をとった.
 エレファントフィッシュをすべての貯水池で飼うようにしたのである.
 この魚は,人間にとって有害な物質が水に混入すると,ただちに反応する.
 貯水池には24時間体制で監視員を置いて,エレファントフィッシュの動きに少しでも異常があれば,直ちに給水を中止して調査する」
 これがテロ対策の国際スタンダードなのである.
 北朝鮮が日本に対するテロ攻撃を仕掛ける場合,貯水池,原発,新幹線などが標的になるのは明白だ.
 十分な対策をとるべきと思う.

――――――佐藤優の「地球を斬る」,2007/1/25

 マスメディアに関して言えば,感覚が鈍いというよりも,無知が無知を拡大生産しているだけのようにも思えるが.▲


 【珍説】
 政府もマスコミも国民も「戦時中」を意識せず,安穏とテロの急襲を待っているのみ.(小林よしのり「テロリアンナイト」P156)

 【事実】
 ここの他でも,政府以下は全くテロ対策を行っていないと言うが,そりゃ無いだろ.
 「必ずしも十分ではない(小川和久によれば)」かもしれないが,対テロ部隊が警察で編成され,また自衛隊でも対テロ訓練が行われるなど,着実にテロ対策は行われているし,また,対策の多くは見えないところで行われるだろう.

 「国民は戦時中であるという意識を持ち,安穏としているべきではない」のか?と言えば,これも疑問.
 確かに,検問などのテロ対策による面倒を我慢する必要はある.
 しかし,小林が言うような過剰な危機意識を持つべきかといえば,それは断じて否である.
 テロの一大目的は「一般市民に恐怖を与え,対象の社会を混乱させダメージを与える事」.
 彼が言うような危機意識を持つという事は,むしろテロリストの望む所だ.
 安易な「平和ボケ批判」は,戦争ボケでしか無い.

(キルロイ ◆dtIofpVHHg in 軍事板)


 【質問】
 日本における,テロ組織の資金の流れはどうなっているのか?

 【回答】
 産経新聞(2005/8/19)によれば,

 最も懸念されるのは
「経済大国の日本がイスラム過激派のテロ資金獲得のターゲットにされてしまうこと」(警察関係者)

としている.
 この報道によれば,以下のように摘発が相次いでいる.
 それは,地下銀行が蔓延している実態を示しており,それがテロ組織にも利用されているだろうことは,想像に難くない.

 警察庁は,今年二月に発表した来日外国人犯罪に関するまとめで,地下銀行など不法滞在を助長する「犯罪インフラ」が国内で整備されつつある実態を指摘した.
 今月二日には,大阪府警が,地下銀行を行っていた銀行法違反(無免許営業)の容疑で韓国人二人を逮捕していたことが明らかになったが,送金総額は一千億円にのぼるとみられ,過去最大規模の摘発となった.

〔略〕

 イスラム諸国をめぐっては,アルカーイダとも関係が深い東南アジアのイスラム過激派テロ組織「ジェマ・イスラミア」の拠点があるインドネシア向け地下銀行が次々と摘発されている.
 昨年十月,静岡県警はインドネシア人ら七人を逮捕.送金総額は三十億円にのぼり,同国に対する不正送金の初摘発となった.今年六月には大阪府警が,六億円を送金していたインドネシア人ら三人を逮捕している.
 ロンドン同時テロ犯の出入国が確認されたパキスタン向けの摘発も続いており,宮城県警は昨年二月,パキスタン人ら四人を逮捕.今月四日には二十五億円を送金していたパキスタン人が,埼玉県警に逮捕されていたことも明らかになった.

〔略〕
 韓国人の事件は,銀行の大口送金優遇措置を悪用した手口だったが,インドネシアの三十億円不正送金などは「まさにハワラ」(捜査関係者).
 警察当局では,
「帳簿や海外へのファクス記録が暗号化されるなど巧妙化が進めば,資金の流れがつかめなくなる」
と,危機感を強めている.

 なお,海外ではNGOからテロ組織へ援助金が流れた例がある.
 2005/11/27付,ハアレツ紙によれば,EU各国から人道支援と称して集められた数百万ドルが,自爆テロリストや収監中のテロリストの家族支援に使われていた疑いで,配分に当たっていたアハメド・サルタナが起訴されている.
 日本でも,特に教条主義的なNGOが幾つも目立つだけに,注意が必要だろう.


 【質問】
 公安審査委員会の審査手続きについて教えられたし.

 【回答】
 破防法においては,公安調査庁は調査・処分提案機関に留まり,解散指定などの処分権は公安審査委員会が有する.
 磯部哲・獨協大学准教授によれば,これは異なる行政庁間で訴追と審判の機能を分有させ,職能分離を徹底させたことにより,権限が過度に集中して処分が専断的に行われる危険を防止するためだという.
 他方,公安審査委員会の審査手続きに関する規定は簡素であり,対審構造はとられておらず,当該団体の意見陳述権もなく,審理も公開されないなど,手続き保障は不充分であるとも指摘している.
 この点,団体規制法では,聴聞に類似した手続きが採用されているという.

 詳しくは『ジュリスト』,2008.3.15号,p.65-66を参照されたし.


 【珍説】
 〔公安の〕スパイが〔左翼活動に〕潜りこんでいたこと自体が「扇動」になるのは当たり前だと解釈するのは普通の知能があれば理解できると思うが,

「カモメのジョナさん」 in mixi
(軍事学的考察上の必要性に鑑み,
引用権の範囲内で引用しています)

 【事実】
 潜入調査と扇動は違うでしょう…(;´Д`)

 潜入して実態などを調査する事と,潜入して内ゲバを起こすように仕組むことが同じなんですか?

セルジオ・タッキーニ in mixi

 潜入捜査で犯罪の証拠固めをするのはセオリーですが,それ以外の作戦(煽動)を行っていたという証拠をお願いします.
 つまりソース出せ,って言う事です(笑)

JSF in mixi

 もっとも,過激組織は一般社会と同じような言葉を使っていても,その意味するところは全然違うということがしばしばあるから,珍説者の主張する「煽動」も,それの可能性があるかもしれない.
 どっちみち,一般社会に対しては通用しないことに変わりはないが.


 【質問】
 外事情報部とは?

 【回答】
 2004年4月の改正警察法の施行に伴い,警視庁が,外国治安機関との連携や情報交換を行っていた警備局の外事課を「部」に格上げしたもの.
 外事課と国際テロリズム対策課の2課から成る.

 外事警察は,警備・公安警察の一部門で,警察庁警備局を頂点にして,警視庁の公安部と各道府県警の警備部とに担当部署がある.
 国際テロやスパイ,軍事関連の不正輸出の捜査を行うほか,不法入国など入管難民法違反事件も手掛ける.
 北朝鮮の拉致事件も担当している.


 【質問】
 もし民間の飛行機(B-747やA-380など)のパイロットが狂って,洞爺湖サミット会場に突っ込もうとします.
 もちろん,管制官は通報です.
 この後の政府等々の対応はどうなんでしょうか?

 【回答】
 新聞くらい読めよ.
 会場上空は,半径40kmほどが飛行禁止空域になってるから,フライトプランを外れた段階で,管制から警告.
 それと同時に,CAPしてるF-15が無理やりにでも針路変更させる,
 しない場合は撃ち落とすよ.
 なんのためにペトリまで配備してると思ってるんだ?

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問 kérdés】
 共謀罪って何?
 3行で教えて!
Mi az Összeesküvés?
Kérem, mondja meg a három sorban.

 【回答 válasz】
 重大な犯罪にあたる行為を「団体の活動」として「組織により」実行しようと共謀した場合に,実際に行動を起こさなくても,それだけで罰するという内容の法律.
 米国など多くの国では様々な条件のもと共謀罪が設けられているが,実際に犯罪が行われていない時点で検挙・逮捕できる共謀罪は刑法の理念に反するとの考えや,一般市民の社会運動・抗議活動などに適応される懸念も示されている.
「2000年に国連が採択した国際組織犯罪防止条約の締結のためには国内法の整備が必要」
だとして,政府は03年から3度にわたり国会に関連法案を提出したが,いずれも廃案になっている.

 【参考ページ Referencia Oldal】
https://kotobank.jp/word/共謀罪
http://www.huffingtonpost.jp/2017/05/29/conspiracy-law_n_16861692.html
http://everything-is-changing.com/archives/1632

【ぐんじさんぎょう】,2017/6/3 20:00
を加筆改修


 【質問 kérdés】
 共謀罪はテロ防止の役に立つの?

 【回答 válasz】
 編者の私見では,「無いよりはマシだろう」程度.
 「法はあれど,適用されず」の破防法の二の舞にしかならない気がする.
 それどころか,テロ対策が「これで済んだ」ことにされてしまうかもしれない.

 過去のテロ事例に当て嵌めて考えてみよう.
 金田法相は国会答弁の中で,
「裁判例に従えば,ハイジャック目的での航空券予約でも,予備にあたらない事例もある.
 テロ行為未然防止のためには,テロ等準備罪を設けて対処することが必要」
と主張している.
 日本の司法当局というのは,確実に有罪になることが見込めないケースでは逮捕令状発行を避ける傾向が強いので,共謀罪があれば,逮捕状が出易くなる可能性はあるかもしれない.
 一方,これだけ論争が過熱した法律であれば,破防法の二の舞となって,司法当局が尻込みする可能性も高い.
 お役人というのは責任を回避したがる生き物だからね.

 また,共謀罪成立により,国際的に協力してより多くの犯罪を防ぐ事が出来る,という話もある.
 すでに187の国・地域が加入している「国際組織犯罪防止条約」というものがあり,この条約に加入すれば国際的に協力してより多くの犯罪を防ぐ事が出来るのだが,この条約の加入条件に,「共謀罪」の成立があるという.
「共謀罪がなくても入れる可能性はある」
と批判派は主張しているが,そういう前例はほぼ無いようだ.

 一方,落合洋司弁護士(元東京地検公安部検事)は次のように証言している.
「三菱重工爆破事件や地下鉄サリン事件といった重大なテロが起きた時に,現場からその制定を求める切実な声が上がっても不思議ではありませんでしたが,そうした声はなかったのです.
 なぜなら,殺人予備罪や爆発物取締罰則,銃刀法といった既存の刑罰法令を活用することによって十分取り締まれたからです」

 ただ,これも「転び公妨」に代表されるように,「既存の刑罰法令を活用」した,いわゆる別件逮捕が問題視されていることも忘れてはならない.
 特に,共謀罪を人権弾圧の恐れありとして批判してきた側には,これまでそうした別件逮捕を批判してきた者も多く,ここにきて
「既存の刑罰法令を活用すれば十分」
と主張していることには矛盾の感もある.

 また,そもそもいくら強力な法律を作っても,肝心の警察が役立たずであれば,テロは防げない.
 たとえば,江川紹子は次のように述べる.
「日本で起きた大規模なテロといえば,地下鉄サリン事件が挙げられるが,最近,「『共謀罪』があったら,地下鉄サリン事件は防げた」という言説を,ネット上で何度も見た.
 だが,それはとんでもない勘違いだ.
 オウムは,地下鉄サリン事件を引き起こす前に,すでに多くの犯罪を犯していた.
 共謀罪がなければ罰せない計画や謀議の段階ではなく,殺人や営利目的略取・誘拐罪,住居侵入などを現に行い,それに関する情報は警察にも寄せられていた.
 ところが,1990年に国土法違反などで捜査を行った熊本県警以外,警察はそれを生かすことはなかった.
 89年に発生した坂本堤弁護士一家事件では,神奈川県警の初動が極めて鈍かった.
 捜査の指揮をとる刑事部長が,一家が自発的に失踪したという自説にこだわり,「『事件だ,事件だ』と言っている弁護士たちは,今に恥をかくぞ」などと公言したこともあった.
 家族から警察に届けた時点では,オウムの実行犯らは,まだ遺体を山中に埋める作業をしていて,当時,静岡県富士宮市にあった教団本部に戻ってきていなかった.
 この時に本格的な捜査に取りかかっていれば……と残念でならない.
 その後も,警察がもたもたしている間に,首謀者の麻原彰晃こと松本智津夫らと実行犯はドイツに向けて出国し,実行犯の指の指紋消去を試みるという罪証隠滅工作を行っている.
 翌年は,実行犯の1人である岡崎一明が金を持ち逃げして教団から離脱した.
 その金を取り返されるや,岡崎は坂本弁護士の長男龍彦ちゃん(当時1歳)の遺体を埋めた長野県大町市の現場の地図を警察などに送り付けるなどして,麻原から金を脅し取った.
 神奈川県警は,地図の送り主が岡崎であることまでは突き止めたが,地図の場所はおざなりの捜索で済ませ,遺体が見つからなかったこともあり,岡崎に事実を語らせることはできなかった.
 94年3月に宮崎県の旅館経営者がオウムのメンバーによって拉致され,東京都内の教団の医療施設に監禁された事件では,宮崎県警も警視庁も消極的で,被害者家族の目には両者が押し付け合いをしているように映る状況だった.
 95年1月に,信者の親たちでつくる「オウム真理教被害者の会」(現「家族の会」)の永岡弘行会長が,オウムにVXをかけられて瀕死の重傷を負った.
 これも,警視庁は永岡さんが自殺を図ったものとみて,まともに取り合わなかった.
 警察の手が及ばないのをいいことに,オウムはますます大胆になり,95年2月28日には,多くの人がいる路上で目黒公証役場事務長だった假谷清志さんをむりやり車に押し込んで拉致する事件を起こした.
 これで初めて警視庁が動き,強制捜査の準備をしたが間に合わず,地下鉄サリン事件を引き起こされてしまったのだ.
 このような状態で,共謀罪があったとして,どうして地下鉄サリン事件を防げただろう」
 [中略]
「もし,日本で起きた最大規模のテロ事件である地下鉄サリン事件に学んで,「テロ」を防ぐために実効性のある法整備をするならば,それはこのような「共謀罪」ではなく,組織犯罪に関する司法取引の導入だろう.
 前述のように坂本事件では,遺体の場所を示す地図を送り付けたのが,事件当時教団幹部だった岡崎であることを警察は把握していた.
 この時点で,首謀者の役割も含めてすべてを明らかにすれば,彼の刑事責任は減免され,その後の身の安全が守られる,という取り引きが提案されたとしたら,どうだっただろうか.
 岡崎は,地下鉄サリン後に警察が本格的な強制捜査に入ってから,神奈川県警に「自首」した.
 警察の本気度を見極め,なんとか死刑は避けようとしたのだろう.
 ちなみに裁判では,自首は認められたが減刑はされず,死刑が確定している」

 いちばん憂慮されるのは,この法律ができたことで政治家の頭の中では「済んだ」ことになってしまい,司法取引の問題や警察改革の問題に取り組む姿勢が疎かになることだ.
 オウム事件以降の政治の動きを見ていると,どうもそうなりそうな気がする.

 ハイ・リスク,ロー・リターンな法律だと思うね.

 【参考ページ Referencia Oldal】
http://www.huffingtonpost.jp/2017/05/29/conspiracy-law_n_16861692.html
「朝日新聞」2017年5月18日朝刊
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO16681240S7A520C1EAC001
http://everything-is-changing.com/archives/1632
http://biz-journal.jp/2017/03/post_18436.html

mixi, 2017.6.3

 【質問 kérdés】
 「ちょっとお花を摘みに行っただけで共謀罪で逮捕」ということも起こり得るの?

 【回答 válasz】
 さすがにそれは無い.
 単なるデマ.

 中央大学名誉教授の椎橋隆幸弁護士によれば,共謀罪が成立するには
1) 組織的犯罪集団による犯罪の計画
2) 実行準備行為
の2つが必要となる.
 そして「組織的犯罪集団」とは,「重大な犯罪の実行を組織結合の目的とした団体」と定義づけられている.
 要するに,犯罪を起こすこと自体が目的となっている団体に属していなければ,そもそも共謀罪は適用されない.
 たとえば,普通の企業の中の一人の会社員が犯罪準備行為を行ったからといって,その会社の全員が逮捕されるわけではない.
 企業の目的は営利であって犯罪ではないからだ.

 ただ,私見だが,テロ組織を「組織的犯罪集団」と認定するのは,そう簡単ではないと思う.
 世の中には,隠れ蓑として営利企業やNPOを装う集団も少なくないからだ.
 たとえばハマスやヒズボラは,共に米国からテロ組織認定を受けているが,テロだけを行っているわけではなく,パレスティナやレバノンで福祉事業も行なっている.
 ハマスがパレスティナで支持されたのは,テロ組織だからではなく,福祉組織だからだ.
 日本でも,NGOや市民団体に潜り込んで,しまいにその組織を乗っ取ってしまう,いわゆる「加入戦術」を極左テロリストは多用してきた.
 そういう組織を「犯罪を起こすこと自体が目的となっている」と立証するのは,非常に難しいのではないかと思われる.
 ちょっとでも犯罪以外の活動実績を何か作っていたら,「組織的犯罪集団」と立証するのは殆ど不可能なんじゃないかな?
 まあ,そのへんは判例の積み重ねが必要だから,よう知らんけど.

 想像するに,共謀罪の現実的な使い方は「引きネタ」,とりあえず共謀罪容疑で逮捕拘留しておいて,取り調べの過程でもっと具体的な犯罪容疑に切り替えるような形になるのではないかな?
 オウム事件の時は,他にやりようがなくて,カッターナイフを持っていただけで銃刀法違反で逮捕したり,宿泊時に偽名を使っていたということで旅館業法で逮捕したりしたが,今後はこういう無茶の代わりに共謀罪が使えるようになるわけ.
 そのほうが真っ当なやり方だし,だからこの法律が全くテロ対策に役立たないことにはならないのだけれど,本質的なテロ対策とは言えない気がするのは当方だけだろうか? 

 【参考ページ Referencia Oldal】
読売新聞,2017.6.16付

mixi, 2017.7.29


 【質問】
 テロ対策上,共謀罪はどのような意味を持つのか?

 【回答】
 テロ対策においては「疑わしきはクロ」であり,ある程度思想などに踏み込んで保護・観察・隔離する必要性が生じているため.

 もっとも佐藤優の分析によれば,日本の場合には,例によって省益拡大を狙う外務省の思惑も働いているという.

 以下,佐藤の分析.

――――――
 日本では「共謀罪」の法制化が国会で大きな問題になっているが,本件が対外諜報の問題であることが意外と意識されていない.
 テロを防ぐためには,思想を観察し,テロが実行される前に,つまり準備段階で粉砕する必要がある.
 現行法の大原則は「疑わしきはシロ」だが,対外諜報の世界における「ゲームのルール」では「疑わしきはクロ」なのだ.

 国際テロリズムという新たな脅威に対抗するためには,(現在の法案には解決すべき問題点が多数あるが)「共謀罪」型の,ある程度まで人間の宗教・思想・信条に踏み込み,保護・観察・隔離的要素をもった法律が必ず生まれてくる.
 裏返して言うならば,対外諜報機関をもたずに「共謀罪」を作っても,国際テロ対策に有効な措置はとれない.

 一般国民には見えにくいが,外務省は「共謀罪」の積極推進派である.
 それは聡明な外務官僚には,「共謀罪」ができれば,その次の段階において国際テロ対策を口実に外務省傘下に対外諜報機関を設置し,権力を拡大するチャンスが見えるからだ.

 ジャーナリストの魚住昭氏は,「共謀罪」が浮上した背景には住民意識の変化があると指摘する.
 近所づきあいなどの地域住民の連帯感が急速に薄れ,「一人一人の孤独感や不安感が増大して,見知らぬ者や不審者への警戒感が高まり,当局の取り締まり強化を望む雰囲気が生まれた
 (中略)
 共謀罪も同じ住民意識の変化を背景に登場してきた.
 当局はこれほど使い勝手のいい・武器”を手にしたら,それをフルに使って組織の維持拡大を図ろうとするだろう」
(5月21日付琉球新報)

 「共謀罪」の先には対外諜報機関の設置問題が必ず出てくる.
 それを官僚の「組織の維持拡大」の口実とさせず,日本が直面する国際テロの危険から国家体制と国民を守るための体制をどのように組み立てるかについて国民,マスコミ,政治家が真剣に議論しなくてはならないと筆者は考える.

――――――佐藤優 in 『SAPIO』
(強調:編者)

 ただし,「もっと大きな視点で」という常套句は往々にして,実質反対であることを隠す隠れ蓑に使われる場合があるので,その点は留意されたし.


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