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「Togetter」◆(2010/09/04)潜水艦と水中音響
【質問】
潜水艦の発見は簡単なのでしょうか?
WIKIをみますと磁気探知装置はディーゼル式なら500m以上潜ればいいですし,赤外線もディーゼル式なら浅深度航走をしなければいいだけの話ですし,wikiを見る限りですと潜水艦に対する確実な攻撃方法は核爆雷だけのような気がします.
【回答】
原子力潜水艦が本気で潜航してると,そう簡単には見つけられない.
でも,そうなると今度は潜水艦の方も「発見されずに潜ってる」以外何も出来ない.
その逃げるor音が出ないように機関を停止している間は,潜水艦も動けず,空母に攻撃を仕掛けられない.
攻撃はされないかもしれないが,自分も攻撃に出れないので,意味がない.
(機関を動かしたり,魚雷を発射したりすれば,その音をたどって魚雷を撃ち込まれる.
そうした音源は,かなり正確に潜水艦の位置を魚雷に教えてくれる)
それでも無視して進めば,確実に沈められる.
潜水艦の発見はきわめて困難だが,そりゃ潜水艦側が静かにしているから見つからないって話.
対潜ヘリや駆逐艦のソナーが動いている範囲内で,エンジンを動かせば確実に発見される.
だいたい半径20kmくらい.
また,20kt以上だと水中雑音が大幅に増加するので,絶対に見つかる.
それと,例え攻撃手段が届かなくても「そこに潜水艦がいる」と言うことが発覚したら,潜水艦の存在意義はほぼなくなる.
それはそれで面倒だが,あとは備えることが出来るので.
「いつ,何処から,どんな風に攻撃されるかわからない」
が潜水艦のアドバンテージであり,恐怖なので,例え沈められなくても存在の発覚している潜水艦は無意味.
あと,正式なデータは機密だからなんとも言えないが,ディーゼル潜水艦が500m以上潜って行動するのは,まず技術的に無理.
▼500m以上もぐっても,魚雷の耐圧限界超えてるので,浮上しないと攻撃できない.▲
さらにまた,ディーゼルは,全速でも二十数ktしか出ないので,水上艦より鈍足.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
>対潜ヘリや駆逐艦のソナーが動いている範囲内で,エンジンを動かせば確実に発見される.
>だいたい半径20kmくらい.
世界の艦船によりますと,最近の露原潜を,米原潜がダイレクトパスでパッシブ探知できる距離は2,3qでしかないそうですが?
【回答】
それ書いた人参上.
>ダイレクトパスでパッシブ探知できる距離は2,3qでしかない
だから,水上艦は曳航式ソナーを使い,CZ等を利用するんですよね.
あと,「探知された露原潜」の状態はいかがだったのでしょうか?
(エンジンを停止させていたのか,微速だったのか,それなりにスピードが出ていたのかなど)
それにより,状況は異なりますよね?
止まってるなら,そりゃ見つからないですよ.
回答にもそうあります.
参考までに.
http://www.fas.org/man/dod-101/navy/docs/es310/SNR_PROP/snr_prop.htm
http://www.fas.org/man/dod-101/navy/docs/es310/SNR_PROP/IMG00022.GIF
表より,5kmまでは効率が大幅に低下し,その後,波線を描きます.
8〜20km,36〜40kmの間は,3kmの位置とほぼ同等に聞こえると言うことが読みとれます.
これより,多少乱暴ですが,「ダイレクトパスでパッシブ探知できる距離は2,3q」なら,8〜20km,36〜40kmの間でも探知可能だと言えます.
ただし,これはあくまで一例で,この表の横軸は状況によって変化します.
【質問】
曳航ソナーによる遠距離パッシブ探知の時代は終わったと認識していますが,違いますか?
【回答】
冷戦が終わって約20年.
大洋で米海軍に攻撃を仕掛ける潜水艦がいなくなり,浅海面での作戦が重要視されるようになりました.
浅海面では曳航式ソナーはそこまで有利でもなく,そういう意味では曳航式ソナーの時代は終わったとも言えます.
戦場が変わったわけですね.
いちおう米海軍では,アーレイバーグ級駆逐艦にはAN/SQS-53Cソナーと,AN/SQR-19 TACTAS曳航式ソナーが装備されています.
海自でも93年度就役のこんごう級護衛艦から,新型のOQR-2曳航ソナーを装備しています.
(それまでのOQR-1曳航ソナーに変わって)
そもそも最近の静粛化が進んだ潜水艦をパッシブ探知する,という時点でもう困難だと思うのですよ.
もちろん私が自分の耳で聞いたわけではありませんが,哨戒機乗りだった方や潜水艦乗りだった方が書いた本を読んだり話を聞いたりするとそう思えてきます.
だからこそ海自はマルチスタティック運用でアクティブソナーの探知距離を伸ばそうと何年も研究しているのではないでしょうか.
マルチで探知距離の伸びたアクティブで接近・雷撃を抑止し,遠くからUSMを撃ってくるならイージスヤFCS3で対処する.
艦隊に寄ってこない相手は野放し(ハンターキラーや広域捜索は諦める)というのが,海自の考える未来の対潜戦像だと想像してます.
【質問】
海中は塩分がどうの水温がどうの昼下がりの効果が海底地形が海流がで複雑怪奇な世界なので,数十qで一瞬だけ探知できることも希にあるそうですが.
因幡 in FAQ BBS
をベースに改修
【回答】
これはCZのことですよね?
だとすれば,第一CZの場合,幅4〜5nmに及ぶもので,一瞬だけということはありません.
稀というほどではなく,普通に利用しています.
CZ出現距離は,水中状態によりさまざまですが,一般的には30nm程度,近距離で10nm以上という数値があります.
実際に,CZで探知した潜水艦を攻撃する兵器なども作られています.
〔略〕
「探知できることは希」かどうかはちょっとわかりませんが,上に書いたとおり,CZで大きな騒音を出せば,探知は可能です.
(すなわち,敵潜水艦の行動を大幅に制限します)
また,CZで探知された敵潜水艦に対する正確な探知・撃滅は,SH-60の運用構想の一つです.
蛇足ですが,上等な曳航式ソナーなら,第一CZのみではなく,さらに遠方の第二(60nm),第三CZ(90nm)での探知も可能と言われます.
むろん,相手の騒音状況にも寄りますが.
【質問】
状況によっては30Ktで驀進しても探知されないのでは?
露西亜のオスカー型SSGNの最大速度が32Ktと,一つ前のチャーリー型の24Ktと比べて大幅に増加させられた背景には,攻撃ポイントへの進出時間短縮と攻撃後の生存性向上があります.
つまり,少なくとも露西亜のドクトリンでは実戦で攻撃前後に24Kt以上で突っ走ることがありうるということでしょう.
(24Ktでもどうせ探知されるなら,どうせなら32Kt出しちゃえ,かもしれませんけど)
因幡 in FAQ BBS
青文字:加筆改修部分
【回答】
オスカー型の設計コンセプトは,「(長距離超音速対艦ミサイル)"グラニート"の運用」です.
オスカー型に高速が与えられた理由は,早急に敵空母を対艦ミサイルの射程に捕らえ,ミサイルをぶち込み,(対潜哨戒機の追撃から)さっさと逃げるためです.
ちなみに,グラニートは射程700km.空母の輪形陣のはるか遠方から撃ち込む事ができます.
つまり,オスカー型が高速を出すのは,輪形陣のはるか遠方,対潜兵器の届かない所です.
探知可能圏内で,高速を出そうなどとは考えてません.
極東の(以下略 in FAQ BBS
青文字:加筆改修部分
【質問】
輪形陣のはるか後方が,果たして本当に対潜兵器の届かないところなのかどうかには私は疑問を持っていますが……
(アメリカから見れば穴だらけで,ロシアから見ればどこに地雷がうごめいているか分からない)
【回答】
空母前方100kmのところに,駆逐艦と潜水艦が前方警戒についているとして.第3CZを使っても,最大探知距離170km,SH-60を使っても航続距離600km弱(行動半径300km)なので,ドクトリンを無視しても,どうがんばっても空母前方400kmの位置が最大探知距離です.
S-3艦上哨戒機を使えば,さらに距離は伸びますが,S-3は退役途上であり,他にも数や質の問題で細かな哨戒は不可能です.
【反論】
>空母前方100kmのところに,駆逐艦と潜水艦が前方警戒についているとして.
いえ,そうではなくて,オスカーの後ろや進路上にはどこに米原潜がいるかわかりませんし(出港した瞬間から追尾されてるかも),頭上にはP-3Cがソノブイまいてるかもしれませんし,海底には情報にないソーサスがあるかもしれません.
【質問】
500m以上もぐっても,魚雷の耐圧限界超えてるので,浮上しないと攻撃できないのでは?
【回答】
スピアフィッシュ,無視ですか?
Mk48ADCAPは?
かつて旧ソ連アルファ級SSNが900mまで潜って逃げた,という伝説以後,これに対応した魚雷が各国で開発されました.
日本の場合は開発した97式が短魚雷なんでどうかわかりませんが.
水深500mにて発射できるか?は見てませんでしたが,とりあえず魚雷の耐圧限界は500m超ですね.
因幡 in FAQ BBS
青文字:加筆改修部分
耐圧限界はよく見つかるのですが,発射可能限界深度は,中々見つからないですね.
あと,スピアフィッシュとMk46ADCAPのほうが例外で,多くの魚雷は300mくらいが限界ですね.
極東の(以下略 in FAQ BBS
青文字:加筆改修部分
【質問】
キロ級とかのディーゼル潜水艦の待ち伏せを探知するのは困難とか聞きますが,それによってミッションキルされたりするんでしょうか?
【回答】
実際に,敵の海上戦力の行動を阻害する有効な手段として,潜水艦は拡散が進んでいる.
ただ,それでもって米艦隊のようなものに対抗できるかどうかは,やっぱり別問題になる.
極端な話,確率的に空母が1隻ぐらいやられても,直ちにあと5隻ぐらいを展開させられるのが米軍.
とはいえ場合によっては,米海軍を牽制する程度の能力でも十分かもしれない.
やっぱり状況による.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
潜水艦では,音の識別はどうやるのか?
【回答】
昔は音を耳で聴くだけでしたが,今では分析して目で見るようになりました.
個々の潜水艦の各機器によって,発生する音が微妙に異なりますので,その音紋を解析して事前に収集してあるカタログ・データと比較すれば,個艦名まで分かります.
また,艦船の出す音は外洋では非常に遠くまで伝わるので,別々の場所に置かれた複数のハイドロフォン(水中マイクロフォン)で受信すれば,到達時間差から音源の位置を計算できます.
ハイドロフォンには艦艇に搭載されたもの,航空機からブイで撒くもの,海底に設置されているもの,等があります.
先日のロシア潜水艇に絡まったケーブルは,この水中固定機器と思われます.
さきに「事前に収集してあるデータ」と書きましたが,この収集が大変です.
各国は,相手国の新造潜水艦の公試の段階から,原潜をその海面下に潜ませて音紋を盗み聴く努力をしています.
昨年,中国原潜の領海侵犯事件がありましたが,原潜の相手国領海の侵犯は日常茶飯事で,探知できない方が間抜け,というのが各国のホンネの常識です.
帰国した中国原潜の艦長は,侵犯したこと故ではなく,探知されたこと故に大目玉を喰らったに違いありません.
潜水艦の側でも雑音を外に出さないよう,いろいろな対策が施されています.
一番難しいのは,モーターのような回転体の震動を消すことです.
【質問】
今,未確認の潜水艦の事がニュースになってますが,スクリューの音でどこの潜水艦か分かるとかいうのは,映画の中の話であって実際はそんなことないのですか?
【回答】
実際に可能です.
スクリューの音だけでなく,エンジンの駆動音や艦体の共振など,様々な要素が影響し合った,艦固有の音声パターン(音紋)が存在します.
敵・味方の音紋はデータベース化され,パターンが登録済みの場合は,照合により個艦まで識別できます.
ただし,音紋がデータベースに無い場合は「所属不明」としか分りません.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
音紋というのは,何処まで特定できるものなのですか?
それがロスアンゼルス級ならば,
1:それがロスアンゼルス級だということまで
2:それがどのロスアンゼルス級なのかまで
【回答】
音紋というのは
・その音がどの艦なのか分かった上で録れば,どれでも判別できる
例えば,その声が佐藤さんだと分かった上で「この声は佐藤さんだ」と覚えれば,佐藤さんだと分かるだろう.
が,佐藤さんかどうか名前すら分からないなら当然,佐藤さんだとは分からないが声だけは覚えられる
,
で,同じ系統の艦は同じような音になる傾向があるから,何番艦かは判別できなくても,アクラ級ならアクラ級,688なら688とわかる.あまり何番艦かというのは重要視されない.
何番艦か特定せよというのは,例えば1番艦固有の音を予め採っていればできる.
それがないと級までしかわからない.
たとえば『敵対水域』(ピーター・ハクソーゼン他著,文春文庫,2000.10)という本では,ソヴィエトのどの原子力潜水艦か,およびその艦がどの程度の修繕を受けてきたかを
,やかましいディーゼル機関の同行船の音の中から大西洋のSOSUSが識別して聞き分けている描写がある.
こういう場合はあらかじめ採られた音と照合していると考えられる.
こう考えると分かり易いかもしれない.
「アムロ」の声が,古谷氏なのか若井氏なのか判別する「利きアムロ声」というミッションがあるとしてだ.
あらかじめ若井氏を知っていて,その声を聞いて覚えていればどちらかわかる.
あらかじめ若井氏を知らないと,「古谷氏のようにも聞こえるが別人だなあ」程度しか分からん.
こういうときは,暫定でアムロ級10番艦とか適当に決める.
その声が誰のものなのかは,あとで情報部に渡して特定してもらい,データベース化するだけのこと.
【質問】
潜水艦のソナーについてですが,よく漫画などで,大きい音が出て耳の鼓膜が破れるというシーンが出てきますが,今のソナーは,鼓膜が破れないように,大きい音が出ないようになっていると聞いたのですが,本当ですか?
【回答】
まずソナーについて簡単に.
ソナーにはおおざっぱに言って二種類あります.アクティブとパッシブ.
前者はこっちから音を出し,そのはね返りによって目標の位置を割り出す.ピーン,という音が映画などに出てきますね?あれがそうです.こっちから音を出すため,こちらの存在を暴露する欠点があります.
後者は聴音マイクで外の音を聞き取り,目標を探知する.いっさい音を出さないため,こちらの存在を秘匿できます.潜水艦はその性格上,こっちの使用が主です.こちらについての質問と推測しました.
確かにWW2の頃までは,ソナー員がヘッドホンをつけ,マイクの方向を調節するダイヤルを操作しながらソナーを使用しました.
大きな音の発生が予測される場合(爆雷の着水音など・・数秒後に爆発する)ヘッドホンをはずして音量を絞る.
このタイミングを誤るとヘッドホンから爆音が流れ,耳を痛める可能性がある.
でも,基本的には機械が発する音です.ヘッドホンの能力以上の大音量は出ない.
また,電気信号にいったん変換する関係上,一定音量以上はカットしてしまう,
一種のリミッターを装備するのは比較的簡単なことです.
要するに,昔であっても鼓膜が破れるほどの大音量を聞かされる可能性は低い.
ただし,このリミッターの設計がまずいとソナー員が耳を痛めることはあったようです.
現在はもちろん,コンピューターを介して音が分析されるシステムが一般的で,ヘッドホンから大音響が出る可能性はありません.
【質問】
映画「レッドオクトーバーを追え!」では,潜水艦は司令室にソナー・マンがいて音を聞いていましたが,どの艦でもそうなのですか?
【回答】
普通,ソナー室が専用にあります.ソナー室がない潜水艦はありえません.(たしか)
日本の場合,ソナー室は艦の先の方にあります.エンジンからできるだけ遠くにして,雑音の影響を受け難くしてあるわけです.
また,ソナー室にはソナーマンと艦長しか入れないようになってます.
やっぱソナーは潜水艦の生命線ですからね・・・.
【質問】
スクリュー音を録音したラジカセを防水にして,海中に落としていったら,相手の潜水艦は本物の艦船と区別できるんでしょうか?
【回答】
市販のラジカセでは(水中で動くのかということは無視しても)扱える周波数帯が狭すぎるのでムリです.
人間が聞いたら同じ音に聞こえますが,ソナーは可聴域外の超音波帯の音も拾うので,波形分析にかけるとバレバレ.
【質問】
潜水艦の音紋って,スクリューの製造段階での誤差というか個体差が原因ですよね?
21世紀の製造技術をもってしても,誤差というのは無くせないんですか?
【回答】
いや,音紋の主な発生源になるスクリューの個体差は,使っているうちにスクリューの傷つき方やギアボックスや機関の癖による回転微妙なムラなどによって起きる.
なので,どんなに製造段階で個体差をなくすように努力しても,各艦ごとの「個性」は生じてくる.
【質問】
原潜が通常動力に比べて不利とされる騒音問題ですが,これはどういった部分がその音を発しているのでしょうか?
【回答】
原子力は基本的には蒸気機関と思ってください.
熱源で高温高圧の蒸気を発生させ,その蒸気から動力を取り出す.
蒸気でタービンを回転させる事により取り出す訳ですが,スクリューには回転が高すぎるので,減速させる必要が有ります.
その減速機の歯車が擦れる音が大きく,外に漏れる音源となります.
その上,原子炉自体では直接速度操作がしづらく,減速するための装置が要るそうで,それも騒音の原因の一つとか.
(レシプロ式の原潜が有ったら,それはそれで面白そうだが)
更に,原子炉に冷却水や,蒸気の元となる水を送り込むポンプの音.
これらは装置類の工作精度や設計に依存します.
低騒音にするには高い技術とノウハウが必要です.
それと配管を冷却水や蒸気が流れる音もします.
(しかも,原子炉の冷却水は温度が高いので,赤外線探知されやすくなる,という欠点も生じる.水温分布を調べるとバレバレに・・・)
勿論どちらも今はそれなりの対策がされていますが,構造的な問題なので,どうしてもそれがネックになります.
話題の漢型は,技術が無いのに意地と見栄で作った代物なので,特別うるさいです.
軍事板,2004/11/27
青文字:加筆改修部分
【質問】
なぜ原潜の静粛化は難しいのですか?
【回答】
殆どの原潜では,一次冷却水が蒸気発生器内を通って発生させる蒸気で,メイン・タービンを回転させて推進を得ているが,蒸気で回転するメイン・タービンの回転は速すぎるため,メイン・ギア・ボックス(減速機)を介して回転数を落として推進器に伝達されている.
これが騒音発生源となっているが,今のところ,この問題を解決する方法はないという.
これが騒音発生源となっており,その解決には,各国で様々に異なるアプローチがなされている.
ちなみに,かつては原子炉冷却用の一次冷却水の循環用ポンプが,騒音発生源として問題視されていたが,最近では低速・中速での航行ではポンプを使わず,自然対流だけで十分な循環が行えるようになった.
ちなみに,かつては原子炉冷却用の一次冷却水の循環用ポンプが,騒音発生源として問題視されていたが,最近では自然対流循環である一定の実用的な出力を出し,航行できる原子力潜水艦も存在している.
【参考ページ】
『大図解 世界の潜水艦』(坂本明著,グリーンアロー出版社,1994.4.1),p.71
【ぐんじさんぎょう】没稿
を加筆改修
> 「これが騒音発生源となっているが,今のところ,この問題を解決する方法はない」
解決する方法がないわけではなく,各国で様々にアプローチが異なるだけである.
その中でフランスの方式は極めて特徴的であり,興味深いところでもある.
以下解説.
原子力蒸気タービン直接推進方式の場合,当該減速機(要は巨大な歯車)が極めて大きな騒音源となっていたのは確か.
これは数千kWクラスの動力を機械的に変換する装置は,それに伴う騒音・振動も物理的に大きくなることは機構上避けられないためであり,原潜だけが特別に酷いというわけではない.
ただ,物理的に発生する騒音や振動を如何にして吸収するか・外部に伝搬させないかは,極めて特殊なノウハウである.
詳細は明らかにされていないが,当該部分を船体から浮かせたり,そこから発生する騒音を如何に閉じこめるかは,各国の技術力が露わになるところ.
これは日本のような通常型(ディーゼル)潜水艦でも同じ事が言え,私個人が見学で訪れた際でも,その旨の工夫が至る所に見受けられた.
なお,フランスのように原子力蒸気タービンから直接推進力を得るのではなく,発電機・駆動モータを介する「原子力ターボ・エレクトリック」方式も存在する.
フランスは原潜にこの方式にこだわっているところを見ると,この方式もある一定の解であることが見て取れる.
この場合,発電機・駆動モータの騒音は避けられないが,減速機に比較すれば,機械的な損失を電気的な損失に変えることができる分だけ,そのポテンシャルを低く抑えることは可能である.
ただし,そのようなポテンシャルを有するだけであり,実際に騒音対策上どちらが有利なのかは明らかにされることはない.
また,発電機・駆動モータ及びその関係補機の分だけ明らかに複雑,高価になることは避けがたく,その特性上からも潜水艦の在り方としてどちらが有利なのかは,用兵上の問題にも関わるところである.
>「かつては原子炉冷却用の一次冷却水の循環用ポンプが,
>騒音発生源として問題視されていたが,最近では低速・中速での航行ではポンプを使わず,
>自然対流だけで十分な循環が行えるようになった」
上記のように,
「自然対流循環である一定の実用的な出力を出し,航行できる原子力潜水艦も存在している.」とするのが正.
以下解説.
原子力潜水艦における騒音源はある意味当たり前の話ではあるが,出力の大きな物が挙げられる.
そのため,一般に筆頭は前述の減速機,その次に原子力蒸気タービン,そして,この一次冷却材ポンプ(primary
coolant pump)が続くことになる.
なお,原子力蒸気タービンがここで取り上げられていないのは,それがなければ原子力推進が不可能であり,単に潜水艦に原子炉を載せただけで終わってしまうためと言える.
そして,この一次冷却材ポンプは,原子炉で発生した熱出力を効率よく(安全に)原子炉炉心から取り出すために必要な設備である.
ただ,この一次冷却材ポンプが無ければ原子炉からの除熱が不可能というわけではなく,ポンプを止めた段階でも,自然対流循環である程度の熱出力を得ることは可能である.
しかし,設計に工夫を施さなければ,その自然対流循環を大きくすることが出来ず,実用的な物となるかはどうかは,設計の方法にも依る.
詳しいことは機微情報ともなりかねないが,一般的に言えるのは
「自然対流循環を大きくするには,原子炉本体を含む原子炉周り(一次冷却設備系)の高さをとる」
必要がある.
そのためには,原子炉関連設備の巨大化を招くこととなり,出来る限りコンパクトに抑えたい,潜水艦船体設計者側との綱引きを演じることとなる.
よって,結局の所,用兵上の要求として
「『静粛モード』として,実運用上どの程度の出力・速度を要求するのか.」
ということとなる.
逆に言えば,資金上,運用上の問題からも原子炉周りの大きさ,ひいては原潜の大きさを,何処まで許容できるかという問題に帰結することとなる.
技術的には,原潜レベルの原子炉出力であれば,全て自然対流循環とすることすら可能である.
しかし,それには原子炉周りがあまりに巨大化してしまい,原潜というプラットホームが単に原子力推進に特化した物にもなりかねない.
その点のギリギリのバランス感覚が必要であり,用兵上の要求と技術的な成立性との整合性を何処で取るのか,腕の見せ所と言える.
へぼ担当 in mixi,2010年02月27日 15:39
妖怪『のい爺』の仕業じゃな.
田の中勇(うそ)
【質問】
SSBNクラスとなるとSSやSSNに比べて船体が大きいので,静粛性が劣る,ということはあるんでしょうか?
また,SSBNというのは完全に独立して行動するんでしょうか?
SSNなどを護衛につけるようなことは行われたりはしているorしていたんでしょうか?
【回答】
核抑止力の柱であるSLBMを搭載するSSBNには,発射母体の探知自体を難しくする為,残存性を高める工夫が可能な限りなされています.
水中高速迎撃艦,プロジェクト705/K型(NATOコード・アルファ)攻撃原潜のように,静止状態から速力40ktまで僅か1分,6ktから42ktまで3分,最高速力で180度ターン,更に反転するまで僅か42秒という,恐ろしく高い水中機動性を発揮して魚雷を振り切るという戦術を採れる艦も有ります.
更に魚雷が届かない深深度まで潜航すると言う手段も有ります.
魚雷へのカウンターメジャーを更に捕捉して置きます.
SSBNオハイオはデコイ発射用に152mm外装式CSA(Countermeasure Set Acoustic)発射管Mk-1を装備しています.
また,90年代末の近代化改装の折,魚雷攻撃を受けた場合の防衛自動応答システムWLY-1が搭載されました.
これは統合指揮管制装置から可動式多機能デコイMk-4をコントロールする物です.
また,静粛性に関してはSSNに採用されているS5W加圧水式原子炉より静粛性の高いS8G自然循環式原子炉を採用しており,更にこれら主機・補機類は騒音低減の為に船体から間接的に分離された浮き台座に設置されています.
【質問】
シーウルフ級の最大静粛航行速度は?
【回答】
一般に広まっている話では,シーウルフ級の最大静粛航行速度は20ktです.
これはポンプジェット推進の導入により,その速度までキャビテーションを起こさずに航行できるからです.
(キャビテーションが無ければ,雑音は艦自体からが発生する騒音のみで,これは艦の防音により,かなり低減できます)
逆にキャビテーションを起こすと,それが原因ですさまじい騒音が発生します.
「20kt以上だと水中雑音が大幅に増加するので,絶対に見つかる」
というのは,そういう理由です.
ちなみに通常のフネでは,20ktよりもずっと遅い速度でもキャビテーションが発生します.
極東の(以下略 in FAQ BBS
青文字:加筆改修部分
【質問】
対潜哨戒の手段の一つに海底固定ソナーなるものがあるそうですが,これが漁船の底引き網に引っかかって破損するような事は無いのでしょうか?
あるいは,敵の工作船が漁船のふりをして,底引き網の様な物で海底ソナーを破壊したり,技術を奪うために回収していくようなことは無いでしょうか?
何か対策が採られているのでしょうか?
【回答】
トロール板方式の底引き網だと拾わないらしいです.
しかし,錘式の底引きだと拾うとのこと.
韓国漁船はいまだに錘式を使ってるらしい.
泥底のとこでは錘式の方が有効だという事情もあります.
もしケーブル拾ったら,外して見なかったことにして全力逃げらしいです(漁師さんの噂話)
外せるなら良いけど,ダメなら切って逃げの噂も・・・
損害賠償請求が怖いからね.
実際,対馬や小笠原のケーブルは,何度か漁船に切られた痕跡があったはずです.
犯人は見つからずじまい.
ケーブル途中のトランスポンダに盗聴装置仕掛ける話は噂としてはありますが,真偽の程は不明.
将来に渡っても不明だと思います.
軍事板,2004/11/29
青文字:加筆改修部分
【質問】
ソノブイって,もし敵に回収されたら,こちらの技術が盗まれちゃうと思うのですが,そのへんはどうなってるんでしょうか?
【回答】
ソノブイは電源が切れると,中に水が入って沈むように出来ています.
ソノブイには浮力を保つ為の空気室が有ります.
空気室の下部は開放されており,その上部に電磁弁が有ります.
電源が生きている間は電磁弁が閉まっていますから,開放されている下部から海水が中に入ってきません.
電池の寿命が来て電源が切れると,電磁弁が開きます.
それにより,空気室下部の開放された部分より海水が中に入り込みます.
結果として浮力が失われソノブイは沈みます.
電源が生きている状態で不埒者が持ち去る事を防ぐ為に,「触るなゴルァ!」と言う内容の注意書きが記して有ります.
【質問】
対潜哨戒任務において,航続距離の短い対潜へリよりは,潜水艦の方がずっと楽なのでは?
【回答】
対潜哨戒機は,速度を生かして広い海域をなめまわすように哨戒できます.
ただし日本の沿岸海域はさらに広く,また毎日パトロールを維持するためには多数の機体が必要となります.
また潜水艦相手だけでなく,水上船舶の監視もたいせつなお仕事.潜水艦ではできません.
潜水艦は動きが非常にゆっくりです.
敵潜水艦や水上艦船が近くに来さえすれば,対潜哨戒機より確実に把握できますが,一つの広いエリアを巡回して確実に押さえ込むには向きません.
固定翼哨戒機は網,潜水艦は銛と表現できるだろうか.
もともと役割が違う.
潜水艦であれ護衛艦であれ,数があるにこしたことはありませんが,予算の都合がある以上,さまざまな兵器を組み合わせて,一番効率良く抑止力を維持しようとしているわけです.
また外国から見れば,少数でもどこに潜んでいるかわからない潜水艦はやはり脅威です.
軍事板,2009/06/10(水)
青文字:加筆改修部分
【質問】
でも昨年,豊後水道を国籍不明の潜水艦が領海侵犯した時は,たまたま発見できただけでしょ?
あれだけ数揃えても,何の役にも立たなかったのだから,最初から要所に潜水艦を配備しておけばいいのに.
やっぱり16隻って少なすぎると思う.
【回答】
じっさい,固定翼哨戒機で水中の潜水艦を発見するのはなかなか難しい任務だとされています.
が,それでも役に立つから税金使って配備運用しているわけで.
「何の役にも立たなかった」とはどの事例を示しての主張でしょうか?
また一回の事例で活躍することがなかったから以後不要だ,という理屈は論理としてどこかおかしいと思いませんか?
さらに,敵潜水艦は「要所」を通る必要はありません.
海自の潜水艦が配置されているとわかっているなら,そこを避けて安全な場所で通商破壊をすればいいということになってしまうので.
一定エリアを潜水艦だけで潜水艦狩りしようとしたら,膨大な数の潜水艦が必要になります.
神出鬼没が潜水艦の命ですよ.
一定海域を固めたいなら水上艦のほうが使いやすいでしょうね.
失礼ながら,こう使うべきなので何隻必要だ,という話ではなく,とにかく16隻という数字が少ないので保有数を多くしたい,そのために役目を考えるという,本末転倒の理屈になっているのではないかと.
軍事板,2009/06/10(水)
青文字:加筆改修部分
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