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兵器FAQ目次


(画像掲示板より引用)


 【link】

「OSINTSUM」◆(2011/04/20)AIP(大気非依存型推進)区画について.「尺度」関連

朝目新聞」<2010/11/08〜11/10>●閉所恐怖症にはつらいかもしれない,軍用潜水艦の中はこうなってるよ写真特集  (of カラパイア)

「アルファルファモザイク」:潜水艦って頑丈なんだな・・・・


 【質問】
 潜水艦の艦橋は,潜望鏡やアンテナ 浮上時の見張りの為に有ると思うのですが,艦橋の無い(水中航行速度が増す)潜水艦は存在するのですか?
 又,二重反転プロペラの潜水艦は見たことが無いのですが,なぜですか?

 【回答】
 完全に艦橋のない潜水艦は,可能性の検討という点で何度かあがっていた記憶がありますが,実用的用途ではありません.
 確かに兵器としての性能は上がるのですが,船としての運用性に難を生じますから.
 潜水艦の艦橋がないと,
・洋上観察する時に船体まで露出させないといけないので,操船が面倒.船体が露出すると余計にレーダーに映りやすくなる.
・浮上航行時,浪が荒いとスクリューが露出しやすくなり,推進力が落ちる.
・浮上時にレーダーや潜望鏡・無線アンテナといった,艦橋に収納されている機器類が,艦橋がないと波をかぶりやすくなり,破損につながる.

 完全に水中のことだけを考えれば,潜水艦に艦橋は不要ですが,浮上するときのことを考えれば艦橋は必要かと.

 その代わり,艦橋の形状を水中雑音や抵抗を考慮したものにしたり,小型化したりと,いろいろ努力しています.
 ロシア潜水艦の艦橋などは,特徴的ななめらかな形状になっています.

 無人潜水艇(UUV)であれば艦橋構造物は不要ですので,一応「艦橋のない潜水艦」といえなくもありません.
 潜水「艦」と言うほど大きくはありませんが.

 二重反転スクリューを導入した潜水艦は実在します.
 ロシア(ソ連)のヴィクターIII型で,静粛性に貢献したと言われています.

 ただし二重反転スクリューはトルクがほとんど発生しませんが,潜水艦ていどのサイズになると,トルクは舵で充分補正できます.
 静粛性も,技術の進歩で別方面から達成できているようです.

 魚雷のように小型・高速のものなら,二重反転スクリューのメリットはあるんですが.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 潜水艦には戦闘機のパラシュートのような脱出装備はあるのでしょうか?

 【回答】
 あるよ.
 「スタンキー・フード」っていう,フルフェイスのガスマスクに酸素ボンベがついたみたいな個人用脱出装置がある.
 現在の潜水艦は,艦内への入出ハッチの部分がチャンバーになっている(ハッチ開けると即艦内,にはなってない)ので,この装備を付けてチャンバーに何人かが入り,艦内へのハッチを閉めたあと,艦外へのハッチを開けて脱出,というのを繰り返して全乗員が脱出できる.
 あまり深度が深いと使えないけどね.

 潜水艦によっては,このチャンバー部分がそのまんま切り離して脱出ポッドになるような構造になってたりもする.

 脱出口もある.
 まあ気休め的なものですけどね.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 潜水艦についての質問です.

1.
 一般的な潜水艦は縦舵・横舵・潜舵と3つ舵を持っていますが,どのように操縦しているのでしょうか?
 写真等で確認すると飛行機の操縦桿の様な装置しか見当たらなく,左右に回して縦舵を,前後に押し引きして横舵を操作していると理解していますが,潜舵はどうやって操作するのでしょうか?

2.
 潜水艦が自艦の位置を知る方法として慣性航法装置を利用しているまではわかりましたが,慣性航法装置がなかった時代(自衛隊で20年ほど前の事だと理解しています)は,どのように位置を把握したのでしょうか?

 【回答】
1.
 昔のU-ボートなんかは,3つの舵に一人ずつ舵手を割り当てていましたけど,現代の潜水艦ではヘルムズマン(縦舵手)とプレーンズマン(潜横舵手)の二人での操作が一般的.
(つまり潜舵と横舵は連動してる)
 さらに自動化が進んだ艦では,ワンマン運行も珍しくなかったり.

2.
 浮上して天測という手がありますけど…….
 潜望鏡深度まで浮上できれば,ロランC・ロランA,デッカ,オメガなどの電波航法システムを利用してました.
 これらは双曲線航法といって,二つ以上の無線局から発信される電波の到達時間差を利用して,自分の位置を算出できる電波航法です.
 これらが利用できない長時間潜航の場合は,海図を基にして速力と航程・進路を記録して,船位を観測する推測航法が原則になります.

名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE in 軍事板,2007/06/29(金)


 【質問】
 潜水艦に搭載されている(確か日本海軍が開発?),自動的にバランスをとる装置は,どのようなものなのでしょうか?

 【回答】
 基本はタンク内の圧力,すなわち水量を自動的に調整する弁なんですけど,それと同じ原理で,油を漏らさないようにする装置,タンクに自動的に負の圧力をかける装置というものも発明されてます.
 潜水艦にとって油の漏えいは,死活問題でした.
 海面に油が浮いて発見されやすくなりますからね.

ttp://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1413810674
 図で説明されているものは見当たらないけど,自動的に水量を調節するトイレのタンクみたいなものかと.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 「ジパング」という漫画で,第二次世界大戦時の太平洋戦線のアメリカの潜水艦が,ボトム(海底に沈む事)を二日以上(三日以上?)してるんですが,艦内の二酸化炭素濃度は有害レベルにならないのでしょうか?

 【回答】
 1957年8月中旬にウラジオストックの偵察任務についていた米潜水艦”ガジオン"SS-567は,ソ連水上艦に発見されたため実に64時間の連続潜航を余儀なくされました.
 この結果,艦内の二酸化炭素濃度もかなり危険なレベルに達したたため,やむなく浮上しました.
 幸い,ソ連は”ガジオン"を沈めようとはしませんでした.

 艦内には二酸化炭素を吸収するため水酸化リチウム結晶入りの容器がおかれていましたが,完全に吸収することは出来ず,また一酸化炭素を吸収することは出来ませんでした.
 要するに,二日以上の連続潜航は非常に困難だということです.

(名無し軍曹)


 【質問】
 攻撃型原子力潜水艦って,なんであんなにデカいわけ??????????
 兵器搭載には明らかに関係ないだろ?,あの長さ.
 半分くらいでいいんじゃねーの?

 【回答】
 なぜと言われても,原子炉やバラストタンクやら乗員の居住区画やら,魚雷発射管とか詰め込んでいけばそれなりの大きさになる.
 数ヶ月潜りっぱなしの敵戦略原潜に気付かれずに貼り付き続けるのが仕事だから,兵器搭載と同時に生存と探索,機動が必要なわけで.
 回天じゃないんだから.

 あなたの職場や教室を,半分の大きさにはできないでしょう?

 たとえば米海軍における涙滴型の攻撃原潜は,
スキップジャック→スレッシャー→スタージョン→ロサンゼルス→シーウルフ
と,世代を重ねるごとに巨大化している.

 スキップジャックからスレッシャーの場合,
スキップジャック級のソナー,FCS,魚雷の搭載数が問題視されて大型化.

 スレッシャー級からスタージョン級の場合,
安全性と居住性(スレッシャー級は1番艦が事故で喪失)の改善で大型化.

 スタージョン級からロサンゼルス級の場合,
速度性能向上のために原子炉を新型にして,出力も倍以上になりましたが当然大型化.

 ロサンゼルス級からシーウルフ級の場合,
ロス級で4門しかなかった魚雷発射管の増加,更なる速度性能の向上のために大型化.

 シーウルフ級はこれ以上無いと言うほどの超絶贅沢攻撃原潜でしたので,次級のヴァージニア級では魚雷発射管を減らすなどの措置がとられ,小型化した.

軍事板,2007/09/28(金)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 潜水艦には単殻式と複殻式があると聞きました.
 それぞれの方式にどのようなメリット,デメリットがあるのでしょうか?

 【回答】
 複殻式構造のメリットは,耐圧殻と外殻の間のスペースをタンクに使えるため,予備浮力が多く取れることです.
 さらに旧ソ連のSSBNなどは,外殻を一種のスペースド・アーマーとして活用し,魚雷による被害を最小限に抑えようとしていたといわれています.
 一方複殻式構造のデメリットとして,構造が複雑になり,なおかつ艦の構造が大きくなってしまうことが上げられます.

 一方単殻式構造は,構造をシンプルにすることが出来,艦をコンパクトにまとめることが出来ます.
 しかし,フレームが耐圧殻内に露出しており,なおかつタンク類の多くを艦内に設けなければいけないため,内部スペースに余裕が乏しくなります.

 また,近年はフランク・アレイ・ソナーを艦の側面に取り付ける艦が増えています.
 その際は,強度が高くゆがみが起きにくい耐圧殻に直接装備したほうが効率が良いので,海上自衛隊の潜水艦も「おやしお」型以降,これまでの複殻式から船体中央部の耐圧殻が露出した部分複殻構造に切り替えています.

(名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE)


 【質問】
 潜水艦の潜行限界深度はどれぐらいでしょうか?
 今,映画「ユリョン」を見てるのですが,ロシア製潜水艦と比べると 日本のはそんなに浅いのでしょうか?
 潜行深度が機密というのは分かりますが,だいたいでいいのでお教えください.

 【回答】
 日本の潜水艦の潜航深度は,専門誌などでは300〜350mといった数字が挙げられています.
 これはいわゆる安全潜航深度で,耐圧殻が破壊される圧壊深度は,これの1.5〜2倍の深度ではないかといわれています.
 それ以上潜る事は出来るでしょうが,最近では深海作戦より浅海作戦が重視されるようになってきたので,あまり限界深度を追求する事は無いようです.
 アルファ級だと400mぐらいですね.
 ちなみにアルファ級,K-705型攻撃原潜は,実験艦の要素が強く,1982年〜90年の8年間という短い活動期間で終わりした.
 水中高速力の追求や限界深度の追及,新型原子炉の搭載など(この原子炉は問題だらけで,結局失敗に終わる),次世代攻撃原潜アクラ級に引き継がれた物は大きかったですが,それら未完成の技術がアルファ級の寿命を短くしたのも事実です.

 海自の高張力鋼は世界一流の性能を誇っております.
 かつて,アルファ級がチタン製であったのを見て,海自の潜水艦屋は
「アルファの深度なら鋼板でいけるのではないか」
と,言い放ったそうです.
 事実,海自潜水艦の高張力鋼NS80,90は米戦略原潜オハイオ級のHY130に相当する強度を持ちます.

(名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE他)


 【質問】
 潜水艦は潜れば潜るほど水圧が高くなるのに,どうして回ってるスクリューのシャフトの隙間から 水が漏れないのか教えて下さい.

 【回答】
 パッキンとグリスシールで水密を確保している.
 ただスクリューシャフトにパッキン挟んだり隙間をグリスで塞いだりするだけではなく,スクリューシャフトを一回り太い筒で囲んで,筒とシャフトの間にパッキンを挟んで,筒とシャフトの合間をグリスで埋める・・・とか.
 ただそのあたりは潜水艦の根幹技術の一つなので,あまり詳しい事は明らかにはされていない.

 勿論艦齢とともに痛んできて,老朽艦ではどんなに保守整備を徹底しても,シャフトの隙間から水が沁み込んできたりするそうな.

 これに対して水上船の場合,スクリューシャフトや舵といった隙間から漏れてくる水は,「ビルジポンプ」というもので排水できるので,潜水艦ほど凝った構造にはなっていないものが多い.
 潜水艦の場合は潜航中などにはビルジポンプが充分に機能させられないので,特に凝った防水構造になっている.


 【質問】
 潜水艦のプロペラって,たいがいは1本ですよね.
 海中でプロペラが故障したら,救助は困難なんだから,プロペラを2本や4本にしようとは考えなかったんですか?

 【回答】
 静粛性や動力性能の制約が水上艦よりも厳しいので,おいそれと増やせないだろう.

 ペラっていうか推進軸を増やすってことは,船殻に開ける穴を増やすって事だ.
 さらには複数の主機を積むか,動力配分機構を積まねばならない.
 水上船なら,それでも船底下への突出を軽減できるってメリットがあるが,潜水艦なら軸線上にデカイペラ置けるんだから,タイフーンくらいの大型艦でもないかぎりメリットはない.

 潜水艦にとって推進軸関連の故障で怖いのは,ペラ破損ではなく,軸変形による浸水.
 そのリスクを増やしてどうする?
 ペラが壊れたって効率が悪くなるだけで,動けなくなるわけじゃない.
 浮上さえ出来れば修理は可能.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 潜水艦映画では,艦内のボルトがぶっ飛ぶシーンがありますけど,狭い空間で弾丸のように飛んできたボルトに当たったら,ただでは済まないと思いますが,史実で艦は無事でも乗員がボルトに撃たれて死傷というのはよくあるんでしょうか?

 【回答】
 映画の嘘を信じないように.
 そもそもUボートは溶接構造なので,水圧かかってもボルト(劇中ではリベットだと思いますが)が飛んだりしない.

 ただし軍艦や戦車では,被弾の衝撃でボルトやリベットがちぎれて跳んで来る,という事はよく起きるし,それはとてつもなく脅威になる.
 弾の破片が跳んで来るのと同じだし.

 余談になるが装甲板の鉄の質や着弾時の衝撃の伝わり方によっては,弾は全然貫通してないのに,装甲板に当たった部分の裏が剥離して,破片として飛ぶことがある.
 これも当然ながら激しく危険で,これによる死傷もよく起きる.
 戦車用の弾丸には”HESH”と言って,意図的にこの効果が起きるように設計されたものがあるし,現代では戦車や軍艦は,装甲板の内側に防弾繊維で内張りをしたりしてこれを防ぐ.

青文字:加筆改修部分


 【質問】
 潜水艦が爆雷攻撃されて,艦内であちこち水が噴き出してくるシーンが映画で必ずありますが,一体,何の水?
 何か一生懸命バルブを閉めてるけど,何のバルブ?

 【回答】
 潜水艦の発令所は,船体の中央部近くにあり,機関部はそれより後方にあります.
 また,潜水艦にはエンジン冷却など外部の海水を引き込んで使う(または中から捨てる)配管が幾つも有ります.
 冷却水の循環ポンプや,消火水のポンプが機関部にあるので,この海水は発令所を通って前方の区画へ送られています.
 無音潜航をする時でも,冷却海水を止めたら機械が壊れちゃうので,止められません.
 漏れ始めたら音が出るし,機械に海水がかかって壊れるかも知れないので,一時的にバルブを閉めて防水作業をするそうです.

 最初からバルブを閉めていたりすると,それらは使えなくなります.(もちろん必要最低限の物以外は締めてんですけどね)


 【質問】
 ドイツが推進している燃料電池式AIPと,日本が採用したスターリング・エンジン,それぞれの長所と短所は何ですか?

 【回答】
●燃料電池;
 液体酸素と液体水素の化学反応によって電力を得る.
 長所:排出されるのは水のみ.排気や騒音もなく探知される可能性は低い.発電の効率が高い.
 短所:危険性の高い液体水素を艦内に貯蔵しなければならず,損傷時のダメージ・コントロールなどに不安を残す.

●スターリング・エンジン;
 外部から加熱・冷却を繰り返した気体の膨張と収縮をピストンの作動に使用する外燃機関.
 長所:100年以上前に考案された機関であり,技術的完成度が高い.
    エンジンそのものは構造が非常にシンプル.
    ディーゼルエンジンより騒音・振動が少なく,熱効率が高い.
    燃料を選ばない.
 短所:エンジンの大きさに対して出力が低い.特に熱交換器等の補機が大きくなる.

名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE :軍事板,2006/01/08(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 潜水艦「そうりゅう」艤装中の感電事故ですが,本当にバッテリーからの感電で重傷になるのですか?

 【回答】
 蓄電池(充電池)を馬鹿にしてはいけないのです.
 沈黙の艦隊での被災シーンなど甘いものです.
 知れば知るほど,どれだけの危険物か(特にあのような密閉空間+大容量ならなおさら)理解できるはずなのですが,偉い人にはそれがわからんのです.
<マテ(これをさらっと変換できるATOKもどうかと思うが(大汗))

 真面目な話,報道されるとおりの電気系の事故であるなら,良くそれだけで済んだというのが実感.
 また,報道には出てきませんが,まともに被災した場合,それはもう悲惨なことに.死者が出なくて幸いなのかも知れませんが,「ひと思いに殺してくれ!」というのが,この手の負傷者がおうおうに陥る事態でして.

<やけどは死ぬより苦しい(怪我の中で最もひどく,苦痛を伴うもの)というのはお約束.ちなみに放射線の重度の被曝も同じような状態に陥り,それは地獄絵になる,とは専門医の言葉です.
 写真も見ましたが,正視に耐えないものでした.

へぼ担当

>蓄電池(充電池)

 希硫酸に鉛・・・ってカーバッテリーと同じものが,しかし半端でない大きさですよね.
 充放電時に発生する水素ってどうしてるんでしょう?

 親父がバッテリつなげて溶接器を作って遊んでいたら,火花が引火して爆発したことがあるとか聞いたんで・・・

クローム・ツァハル

 444×431×1647mmで約880kgですね.

>充放電時に発生する水素ってどうしてるんでしょう?

 MFバッテリなんかと同じく,なかに触媒入れてあるんじゃないですかね.

 潜水艦用のリチウムイオン電池も開発してたはずだけど,それもアルカリ金属だもんなぁ…

D.B.

以上,「軍事板常見問題 mixi支隊」より


 【質問】
 Li-ion電池の安全性についてですが,

[quote]
 代表的な構成では,負極に炭素,正極にコバルト酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物,電解質に炭酸エチレンや炭酸ジエチルなどの有機溶媒+六フッ化リン酸リチウム (LiPF6) といったリチウム塩を使う.
 しかし一般には,負極,正極,電解質それぞれの材料は,リチウムイオンを移動し,かつ電荷の授受により充放電可能であればよいので,非常に多くの構成をとりうる.

 リチウム塩には LiPF6 の他,LiBF4 などのフッ素系錯塩,LiN(SO2Rf)2・LiC(SO2Rf)3 (ただしRf = CF3,C2F5),などの塩も用いられる.

 また,通常,電解液に高い導電率と安全性を与えるため,炭酸エチレン・炭酸プロピレンなどの環状炭酸エステル系高誘電率・高沸点溶媒に,低粘性率溶媒である炭酸ジメチル,炭酸エチルメチル,炭酸ジエチル等の低級鎖状炭酸エステルを用い,一部に低級脂肪酸エステルを用いる場合もある.

[/quote]

とWikipediaにありますが,希硫酸ほど危ない代物ではなさそうですね.
 有機化学はあまり詳しくないんですが,これは可燃物でしょうか?

クローム・ツァハル

 【回答】
 可燃物って言うか,リチウムイオン電池は容赦仮借なく過熱・発火・爆発します.
 ここ数年,iPodとかノートPC,携帯電話が炎上した,って話はよくありますし,ソニーや東芝,DELL,Apple等が数十万とか数百万個単位で回収騒動起こしてます.

 まー,エネルギー密度を高めていけば,なんかあったときの危険性が増大するのは必至なんですが.

D.B.

>発火・爆発の心配がない新型リチウムイオン電池
http://wiredvision.jp/archives/200508/2005082901.html

 ただこれは誇大広告で,危険性が全く無いというわけではありませんが,従来型よりも安全性が高いのは確かです.
 セグウェイにも採用されていますし,米軍の開発中のハイブリッド車両にも採用予定です.

住友化学,コバルト・フリーのリチウム・イオン電池用新正極材を開発
http://www.edresearch.co.jp/mtb/0806/107.html

 日本でも同等の物を既に開発しています.
 コバルトを使用しない事で安全性を大きく高められます.
 とはいえリチウム自体が発火性のある素材ではあるのですが.

リチウムイオン電池の開発最前線に異変
日米逆転か,自動車向け電池を巡る攻防
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20080108/144405/

 日米は熾烈な開発競争を続けています.リチウムイオン電池は日本の発明ですが,「安全性」をキーワードに逆転を図ってきたアメリカと,再度それに対抗する日本という図式です.
 ここ数年の開発競争は熾烈ですよ.
 民間開発競争のおかげで結果的に,軍事用途のハードルも一気に下がってきました.

JSF

 Li-ion電池に含まれているリチウムの状態では,発火は起こり得ないはずです.
 以前リコール騒ぎになったものでは,発火性のある金属リチウムが電池の中で析出していまい,その結晶が内部でショートを起こしたという事例があります.
 この現象は過充電でも起こるそうで,充電電圧などを厳重に監視する理由になっています.

 つまり過充放電が起こらないよう,マイコンで常時監視しておけば,このような心配は必要ないということになります.

クローム・ツァハル

 リチウム電池の有機溶媒は可燃性よりも,溶媒の性質のために容器を完全に密閉できないことが問題だと聞いたことがあります.
 パソコン用電池でのことですが.

東部戦線

----
[PDF] 深海潜水艇用大型リチウムイオン電池

 これらの深海探査機用リチウムイオン電池は,いずれも酸化銀・亜鉛蓄電池と同様の「油漬均圧方式」を組電池に採用しているが,単セルの構造には大きな違いがある.
 すなわち,リチウムイオン電池の単セルは,酸化銀・亜鉛蓄電池のようなガスが発生せず,完全密閉にすることができるので,各単セルには均圧装置を取り付けて,単セル内の電解液と油とを完全に分離しつつ単セルの内外を均圧にしており,電池の信頼性を一層高くしている.
----

 うーん,こう解説されているのですが・・・

JSF

 いや,それを否定しているのではなく,リチウム電池の有機溶媒についてのことですが.
 今回,有機溶媒だったから危険という指摘があったんですか?
 そうでないなら,別に問題ないのではないですか.

東部戦線

 ごく一般的なLi-ionセルは,充放電時の内圧の変化に対応するための安全弁があります.
 これは市販の一次電池や二次電池でも同じです.
 多くの工作記事で「絶対に本体にハンダ付けするなよ」とあるのは,ハンダの熱で定圧弁を壊す恐れがあるからです.

クローム・ツァハル

以上,「軍事板常見問題 mixi支隊」より


 【質問】
 潜水艦の航行方法について教えてください.
 海底付近を航行する時,海底の地形はソナーで確認するんですか?(コウモリの超音波みたいな方法)
 漫画ではソナースキャンをコンピュータで解析して,海底の地形がディスプレイにワイヤフレーム表示されていたけど,既に実用化されている技術なんでしょうか?
 あと,コンピュータが無い時代はソナーマンの経験でしょうか?

 【回答】
 潜水艦の航行の基本は,慣性航法装置を利用した推測航法です.
 そのために,あらかじめ詳細な海図を作成しておき,これに従って航行します.
 しかし,海図が不正確だったり特に起伏が激しく難所の場合は,測深儀と呼ばれるアクティブ・ソナーの一種を用います.
 しっかりした海図を用意するのが第一で,測深儀はそれを補うという形.

 INS「慣性航法装置」との名前のとおり,慣性の法則により加速度で回転するジャイロの回転距離を記録するもので,移動したら移動しただけ計測できます.
 対気速度や海流などの外部環境を計測する装置は必要はありません.
 INSの精度は航行距離によって変わってきますが,数千キロ航行して2〜3Kmといったレベルです.

 ただし,船速に関しては,別に測程儀を使用して計測します.
 一般的には,フレミングの電磁誘導の法則を応用した電磁ログを使用します.
 これは測定桿を海中に入れた時に流れる海水によって生じる誘導起電力を測定し,これを基にして速力を計算して記録していきます.
 電磁ログによって求められる速度は,対水速力です.したがって,もちろん海流による誤差が生じます.
 必要が生じれば,ドップラー・ソナーを使用して対地速力を求めることが可能ですが,基本的にはINS任せです.

名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE :軍事板,2004/11/20
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 通常動力潜水艦の潜望鏡やシュノーケルの海面上に出る部分って,どのくらいの大きさですか?
 それだけが海面上に出ている状態って,水上艦や哨戒機のレーダーや目視ですぐに見つけられるものなのでしょうか?
 大した大きさでないなら,条件次第では簡単には見つからないようにも思うのですが.

 【回答】
 漁船以下のサイズで,発見はなかなか楽じゃないそうな.
 ステルス化も一部では進んでるとか.

 ただし,もちろん程度問題であって,一定のリスクがある.
 ウェーキは意外なほど目立つらしく,目視で発見される可能性がある.
 レーダーについても同様にリスクがある.
 中村秀樹氏の『lこれが潜水艦だ』では,複数回のスキャンを受けると見つかってしまう恐れがあると紹介されていた.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 潜水艦にもイカリはついているのでしょうか?

 【回答】
 潜水艦にも錨はちゃんとある.
 マッシュルームアンカーという,その名の通りキノコを逆さまにしたような型の錨を,艦の前方下部に持っている.
 用途は水上艦艇のものと同じ.


 【質問】
 潜水艦の艦首ってなんで丸いの?
 鮫や鮪みたいに先端を尖らせたほうが速くなるのでは?

 【回答】
 確かに,そう考えた人は他にも多くおりまして,初期の魚雷「ホワイトヘッド」などは先端が尖がってます.

 ただし,水中での3次元機動を行うとなると少々話は別になって来ます.
 難しい話は省略して結果だけ言いますと,流体力学的見地からみて最適と思われる形状は,現在の潜水艦に多く見られる涙滴型であると思われました.
http://www.asahi-net.or.jp/~tv9s-kbys/others/swim/stream/suiei1.htm
 その成果は初めて涙滴型を採用した実験艦AGSS-569アルバコアが水中30ノットを発揮した事で実証されました.
 これ以降,潜水艦の形状は涙滴型が主流となって行きます.
(通常動力潜は水中速力が余り期待出来ない事と,浮上航行時の効率や隠密性などの観点から,一概に涙滴形とも言えません)

 その後,世界各国で色々と研究がなされた結果,旧ソ連の671型ヴィクター,671RTヴィクターU,671RTMヴィクターV,705型アルファ,971型アクラなど,セイルも流線型に成型した独特の形状を持つロシア潜水艦が今の所,最も水中高速/高機動性に優れていると言われています.

 それと,先端が何故丸いかですが,耐圧構造には円形,球状が適しております.
 更に,水中で,一軸推進でもって3次元機動を行う場合, 先端は角度によって発生する抵抗の違いが少ない球状の方が何かと都合がいいのです.

軍事板,2005/07/03(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 潜水艦の「涙滴型」と「葉巻型」の厳密な違いってなんですか?
 今までは,船体の中央の平行部が長いのを葉巻型だと勝手に思い込んでいたのですが‥‥.
 あと,ロス級が「魚雷型」っていうの聞いたことあるんだけど,葉巻型とどう違うんですか?

 【回答】
 乱暴な言い方すると,「涙滴型」は流線型.「葉巻型」は艦首に3次元曲面がなく,艦尾の絞り込みもない.

 上から見たとき
涙滴型(□> 葉巻型(□□>

 横から見たとき
涙滴型(□> 葉巻型□□□

 魚雷型は,
半円 ( 円柱 □□ 円錐 >
の組み合わせで艦体が構成されている潜水艦形

 涙滴型との違いは,艦尾に向かっての絞込みが艦尾部分しかない事.
 涙滴型は極端に言えば,艦種から艦尾まで全ての部分にRがあって,艦首−艦尾 方向には平行部分がない.

 涙滴型は通常動力潜水艦の水中速力と静粛性を向上させるために開発された.
 だが,その反面,艦内容積が小さく,艦内スペースに無駄が生じやすいというデメリットがある.

 なので,渦流や航走雑音を制御する技術が向上し,潜水艦にそれほどの高速力が求められなくなった現在では,艦内容積が大きい方が運用の勝手がいい,とされ,葉巻型に移行している.



 【質問】
 この分類で行くと,おやしお型は魚雷型に分類されると思うのですが,一般的には葉巻型と解説されているように思います.
 この違いは,
1.この違いは言葉の定義の広いor狭いによる
2.時の流れで言葉の定義が変わった
3.どちらかが間違い
のいずれかかと思うのですが,どれでしょうか?

 【回答】
 おやしお型は艦体断面が円形ではないし,艦体形状でRのある部分――その例だと( や > の部分――が極端に短いので,魚雷型とは分類しない.

 まぁ限られた記号で表現したものだろうから,かならずしもその例の通りになってるとは限らないわな.

 ちなみにおやしお型の全形はこんなん(画像引用元:小西製作所

 「魚雷型」のロスアンゼルス級はこんな艦形.(画像引用元:「トドの夢」


 【質問】
 潜水艦の黒っぽい船体色は,浮いたときに目立たない用だと言ってたんですけど,恒常的に浮いてる水上艦艇はねずみ色ですけど,どうして別の色を塗るんですか?

 【回答】
 潜水艦の黒っぽい塗装は,潜航中に目立たなくするための塗装ですよ.
 迷彩効果のある背景に溶け込みやすい塗装を行うには,自然光をあまり受けない面には,よく反射する塗装を用い,逆に光を多く受ける面には,あまり反射しない塗料を使用するのが良いそうです.
 この理屈で艦艇では,垂直面はかすんだ灰色,水平面は黒色を塗装するのが背景に溶け込むため,効果的とされました.
 戦前の潜水艦は基本的に水上航行が主体で,したがってその船体も灰色に塗られたものが多くありました.
 しかし近年の潜水艦は,潜水状態で行動するのが基本となり,浮上航行する機会は非常に少なくなりました.
 このために海中をその背景と考え,その中に最も溶け込みやすい黒系の塗装を施しているのです.

 大戦中の米海軍では,潜航中に発見されにくいための黒色塗装をメジャー9,浮上中に水上から発見されにくいための灰色系塗装をメジャー10として,それぞれ採用しています.

名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE in 軍事板,2009/07/10(金)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 潜水艦は,自らに迫る危険をどう探知するの?

 【回答】
 音はソナーで,電波はESM(電波逆探分析装置)で探知します.
 ごく短時間ですが,潜望鏡を水面に出しているときは,目視や赤外線も貴重な情報です.

(HN「ヨーソロ」 from おきらく軍事研究会)


 【質問】
 潜望鏡 periscope って何?

 【回答】
 軍事的には,潜水艦が海の上の様子を見るのに使われている道具.
 これがあれば,海の上を見るためにいちいち浮上しなくて済む.

 たいていの潜望鏡は筒状になっていて,筒の中には反射鏡が仕込まれている.
 この反射鏡による光の反射を利用して,外の世界を見ることができる.
 反射鏡の代わりにプリズムが使われているものもある.

 そして,たいていの潜望鏡には望遠レンズもついていて,遠くまで見ることができる.

 潜水艦以外にも,塹壕で使われたり――頭を出すと撃たれるかもしれないから――,戦車にもあったり――外へ出ると撃たれるかもしれないから――する.

 近頃は携帯用潜望鏡なるものも出回っていたり,性風俗用語にもなっていたりするらしいが,もはや艦船FAQから逸脱するので,それはまた別の機会に.
 ソープ・ランドで「潜望鏡」をリクエストして,本物の潜望鏡が出てきたら笑える,かもしれない.


 【質問】
 潜航中の潜水艦が潜望鏡を上げたとき,そこに砲弾をくらったり艦に衝突されたりして折れてしまったら,そこから海水が流れ込み撃沈,ということはあるのですか?
 もちろんその場合の潜望鏡は貫通型ということになるでしょうが.

 【回答】
 潜望鏡がやられて浸水ということはあります.
 対潜戦術の一つとして
「水上艦のほうから体当たり」
が有効だった時代では,
潜望鏡だけ船体に接触して浸水,というのがまれにありましたし.

 ただしその場合でも,何らかの機構なりで閉鎖して浸水を止められますので,潜望鏡だけ壊れていきなり沈没,というのは普通は起きません.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 潜水艦物の映画や小説などでは,目標にECHO○○とかMIKE○○等と付けられていますが,アレはどういった基準なのでしょうか?

 【回答】
 "SIERRA" → ソナーで探知したコンタクト
 "ECHO" → ESMで傍受した電波のコンタクト
 "ROMEO" → レーダーで捕捉したコンタクト
 "VICTOR" → 潜望鏡で目視確認されたコンタクト
 "MIKE" → 複数のセンサーで捕捉して,同一だと判断されたコンタクト

 番号は発見した順番に割り振っていきます.

名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE :軍事板,2006/01/08(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 潜航中の潜水艦の抵抗の速度の何乗に比例するかを教えてください.
 5knot前後で痛痒する近似値で良いです.

 【回答】
 潜水艦も流体中を運動する物体なのだから,速度に比例する粘性抵抗と,速度の自乗に比例する圧力抵抗を受けるはず.
 で,どちらが主体かはレイノルズ数で判断されるわけで,<1で粘性抵抗主体,>10^3くらいで圧力抵抗主体だったかと.
Re=ρvL/η

 速度5kt=2.5m/s,代表長(船体長)100m,水の密度=1E3kg/m^3,水の粘性率1mPa・s だと,粘性抵抗主体でいいんじゃないかな.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 通常型潜水艦と原子力潜水艦の戦闘方法の違いなどがあれば教えてください.
 また,原子力潜水艦がずっと潜水をしていられること以外に,通常型と比べてメリットがあるのか教えてください.

 【回答】
 原潜はバッテリーの電池残量の制約が無いです.

 従ってシュノーケル航走をする必要が無い.
 水中で任意の速力を,任意の時間にわたり発揮できる.
 燃料の制約がないから,乗員の食料さえもてば行動範囲が広がる(航続距離に燃料面での制約がない.乗員の交代と食料,魚雷,トマホーク,機雷など弾のほうの制約があるだけ)

 よって,静粛性で指摘されているような問題さえなければ(あるのか無いのかはちょっと外には分からない),ほぼあらゆる点で,原潜のほうが通常潜よりスペック的には上と言えます.

 ただ,日本で懸念となるのは船の寿命が尽きたあとのことですね.
 原子炉の解体などは,まだまだ日本では未知の分野ですし,かつての原子力船「むつ」のことなどもあります.

 より安全小型な原子炉ができればいいんですが.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ガスタービン潜水艦は全く存在しないの?

 【回答】
 イギリスBMT社が提案している,ガスタービン潜水艦というものが有りましてね.

SSGT (Ship Submersible Gas Turbine)
http://www.bmt.org/News/?/3/0/160

「それほど脅威が高くなければ,シュノーケル出して突っ走っても良いんじゃね?
 ガスタービン艦なら水中20ノット巡航だってOKさ.
 これで原子力潜水艦とも結構タメ張れるぜ.
 燃料電池と緊急用にニッケル・ナトリウム電池を使用すれば,水中30ノットも出せるぜ・・・ 」

 ロイヤルネイビーは相手にしていないようです.

 しかし,自衛隊のように沿岸哨戒任務が主任務で,航続距離に拘らなくても構わないなら,ガスタービンエンジンもアリかも・・・
 いや,連続行動日数がなぁ・・・
 AIP次第で何とかなるかなぁ,その辺は.

JSF,2009年11月22日 01:12

 ブリテンにしては目の付け所が悪くない.
 少なくとも変態兵器ではない.
 ただしガスタービンより,ZEBRA Battery(溶融塩電池;ナトリウム-ニッケル塩化物Na-NiCl2電池)の方が足を引っ張りそうだが,というのが第一の評価でしょうか.

 実際,ディーゼル潜水艦の場合,シュノーケル航行も少なくないわけで.
 シュノーケルをガスタービンの大吸気量に耐えうる構造にすることが出来れば,むしろディーゼルエンジン特有の複雑さ・メンテナンスの困難さを回避し,ほぼメンテナンスフリー(本気でメンテナンスするつもりなら,ドック入りしない限り,潜水艦内ではとても無理)のガスタービンを入れて,機関科要員を削減でき,艦も小型化・高速化できるメリットは大きいものと考えます.
 一方,心配される燃費の悪さですが,ガスタービンエンジンの場合,低・中間出力での燃費が最悪なのであって,全開運転の場合はさほど悪くないところです.
 これが普通の護衛艦の場合,デメリットにもなってきますが,今回の場合は大量の充電池を抱えた潜水艦というのがミソ.
 艦は微速航行を続けていても,プリウスのように消耗した航行用電池をフルパワーで充電すれば良いだけのお話であり,ガスタービン特有の低・中間出力での燃費の悪さは,さほど顕在化しないものと考えられます.

 なお,火災対策(艦内の換気)としてのディーゼル機関の有用性は別次元のお話ですが,ガスタービン機関でも別途対処できる話で,技術的にはさほど大きな違いとは言えません.

 一方,欠点と言えばZEBRA Batteryなるあまり聞き慣れない物
(2006年に昭和飛行機工業やドイツsmart社が利用構想を発表しましたが,その後の続報がないところを見ると,かなり厳しいようです.)
を持ち出してきたように,ガスタービンの燃費の悪さ等をカバーするためにも急速充電,急速放電及び大容量など,充電池に求められる性能が相当厳しいものとなり,今後主流になるであろうリチウムイオン電池では追いつかないところにあるものと愚考します.

 ちなみに,日本国内であれば重量をさほど気にしなくて済む潜水艦の場合,電力貯蔵用に開発されたNAS電池
(ただし,世界中でまともに作ることが出来るのは最後まで諦めなかった日本ガイシのみ.)
を転用することが考えられます.
 しかし,ZEBRA BatteryもNAS電池も実用には保温が必要となる欠点があり,それを克服してまで用いるか,民生用として完全にコモディティ化し,性能向上がどんどん図られているリチウムイオン電池を用いるかは,用兵上の判断にも因るものと考えられます.

 連続行動日数の方は,日本の運用形態から言えばAIP次第であり,現在装備が進められている「そうりゅう」型の運用実績による判断となるところでしょう.
 ただ,日本の運用形態の場合,水中での最大速度は優先されても,シュノーケル航行における最大速度はさほど重視されるとは考えにくく,それを活かす機会も少ないと考えるべきところ.
 すると,日本の場合,最大速度より複雑なディーゼル機関を追放することに因る,艦の省力化・小型化がメリットとなるわけです.
 しかし,ことある度に大型化していく海上自衛隊の潜水艦を見ていくところ,その技術の先進性は認めても,事に保守的な現場の判断として受け入れられる物であるかどうかは,議論が大きく分かれるところと考えます.

 本来は水中放出雑音などを議論すべきなのでしょうが,ディーゼル機関を全開運転しているような状況下において,ガスタービン機関との比較をしたとして,運用上さほど意味があるとは思えません.
 むしろ,今後充電池として何を用いていくか.民生用として飛躍的な性能向上が期待できるリチウムイオン電池を用いるのか,他の第三の道があるのか,地道なようですがそちらの方が遙かに重要と考えます.

 以上,ご参考まで.

「参考」
溶融塩電池 - Wikipedia
ナトリウム・硫黄電池 - Wikipedia

へぼ担当,2009年11月22日 03:51

 そういえばこんなのがあった.

K級潜水艦 (イギリス海軍) - Wikipedia

スチーム・サブマリン
http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/5908/steam/index.htm

 蒸気タービン潜水艦,ありましたね.
 フィッシャー提督のイカレ海軍兵器シリーズの一つでした.

JSF,2009年11月22日 03:49

以上,「軍事板常見問題 mixi支隊」より
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 原発で働いている知人から聞きました.
 施設内に放射能感知器が設置されてはいるが,しょっちゅう鳴るので切っていると.
 原潜も似たような環境ですか?

 【回答】
 原子力推進船の乗員に癌が少ないわけありません.
 放射線とは,人間の体内に累積的にたまっていき,ある一定の量を超えると癌,白内障,神経障害などの障害を起こします.
 つまり,「これ以下の量だったら浴びても問題なし」ということはない,とされています.


 きわめてわずかな量でしょうが,放射線関連の施設に勤務していれば,被曝は多くなります.
 それが積み重なっていくと,放射線障害は必ず増えていくはずです.
 だから,大々的な統計をとれば癌等の患者は多くなります.


 放射線治療ってのは患部のみにピンポイントで当てて健全な部分には当てないように注意を払うもので,1クールの放射線治療に使用するだけの放射線を全身に当てたら,どんな人間でもあぼんです.
 体の一部分の癌のある場所に当てているから大丈夫なわけで.

例)
放射線の単位 Gy(グレイ)

全身に4Gyを一度に・・・半数の人間あぼん
全身に7Gy〜10Gyを一度に・・・全員あぼん
喉頭がんの放射線治療・・・60〜70Gyを6〜7週間に分割して照射する

 喉頭がんでは,喉頭以外の大事な部分(脳とか神経とか目とか)に放射線があたらないように気をつけます.
 だから,莫大な量の放射線をあてても被曝死しないんです.

耳鼻科医 in 軍事板,2009/10/24(土)
青文字:加筆改修部分

 森江信著「原子炉被爆日記」なんかを読めば判りますが,日本の原子炉で労働してる人間でも,「親会社」の正社員は厳重に守れられてますが,現実の労働者は過酷な環境にさらされてるのが事実ですよ.
 放射能汚染された汚水をドラム缶に詰める作業とか,床にこぼれた高レベル廃棄物をウェス(ぞうきんと思ってもらえればいい)でふき取る作業とか,人力でやってるわけですよ.
 とうぜんフィルムパッチはすぐに一杯になりますが,それでも,なんだ,かんだと言って記録を誤魔化したりするわけです.
 作業員の中には危険作業手当て欲しさに,わざと線量をごまかして低く書いたり,そりゃもう,えげつないものですよ.

 表面上の数値は低い数値に抑えておいて,現場では守らない.
 これが日本の原子力のありかたです.

 だって,ちゃんとマニュアル守る気があるんだったら,バケツで臨界なんか起こさないでしょ?
 チェレンコフ光が見えるまで高濃縮ウランを混ぜるくらい,無茶苦茶な管理をしてるのが日本の実態です.

はぁぁ..in 軍事板,2009/10/24(土)
青文字:加筆改修部分

 【反論】
 現実の労働者の証言ってを基にした本って,100%信用できるのか?
 それこそバイアスがかかってて,めちゃくちゃな本も少なくない.
 少なくとも,俺がかかわってる会社についてなら,明らかな嘘やミスリードが混じった本は読んだことがある.
 実際,そういう裁判もやってるから,そういう知見を蓄積してから物を言ったほうがいいと思うよ.

軍事板,2009/10/24(土)
青文字:加筆改修部分

 なんですか?,このヨタ話は…

>きわめてわずかな量でしょうが,放射線関連の施設に勤務していれば,被曝は多くなります.
>それが積み重なっていくと,放射線障害は必ず増えていくはずです.

 この場合の放射線障害は,発がんや遺伝的影響の晩発障害の話でしょうが,100mSv程度以下の線量までは発がんと線量に,直接の関係が確認できないとされています.
 ここら辺の話はいろいろ複雑で,必ずと断言できるような物はないはずです.

 下の人は,はっきり言って論評する価値がないレベルです.
 どう見ても,事実関係も何もきちんと調べないで,2ちゃんだの怪しげな本だのテレビ番組だのでうろ覚えしたことを適当に書いてます.

>高レベル廃棄物

 多分高レベル放射性廃棄物のことを言いたいんでしょうが,これは再処理工場で使用済み燃料を化学処理して出る物です.
 むしろ高レベル放射性廃棄物が,どういう原理で原発の床に漏れるって言う知識を得たのかが,逆に気になります.

>わざと線量をごまかして低く書いたり

 今時そんな,「書く」なんて恣意的な操作が可能なことやってるわけ無いでしょう.
 大学ですらガラスバッ「ジ」は一括回収して業者がチェックして,本人達が触るのはプリントアウトされた紙だけです.

>バケツで臨界

 臨界が起こったのは「沈殿槽」です.
 そも,「巨大システム内部の隙間」であり,深刻な事故が起こると予想されていなかった燃料加工施設の話と,原発を一緒くたにしてる時点で話になりません.

D.B. in 「軍事板常見問題 mixi支隊」,2009年11月11日 00:55

▼>現実の労働者は過酷な環境にさらされてるのが事実ですよ.

 私が昔,行っていた専門学校の講師に,原発の被爆労働者の取材をした人がいました.
 敦賀原発内部の取材をしていたら,薬局なんかで売られている普通のマスクをしていた人がいたので撮影したら,そばに居た案内の人とカメラの取り合いになった.
 普通のマスクをしていた人は,もちろん下請け労働者です.
 それに西成等の日雇い労働者をだまして,原発で労働させたことも….

 しかし,この話は70年代〜80年代の話で,今は地元の人間を雇用していることもあり,大幅に改善されていると思います.
(教えて,詳しい人)

>めちゃくちゃな本も少なくない.

 私が昔,立ち読みした本には被爆労働者を隔離して,ヘリでどこかに連れて行くなんて都市伝説みたいなことを,平気で書いている本がありました.
 このことは慎重にならないといけません.
 原発の技術者も労働者も数を減らしています.
 昔はこのような酷い事実があったから,今もそのままだとは考えてはいけません.
 原発に勤める人が貴重になっているのですから.

90式改 in FAQ BBS,2009年11月13日(金) 18時9分
青文字:加筆改修部分

▼ 私も数年間,原子力関連施設に出入りしていましたが.少なくとも私の見た範囲・知る範囲では,そのような危険な状況で作業するorさせることはありませんでした.

 70年代〜80年代の話はよくわかりませんが,常識的に考えて,西成等の素性も知れない日雇いを雇うなんて論外でしょう.
 技術的な問題以前に,破壊工作や放射性物質の盗難などの懸念もあります.

季節労働者@mixi in FAQ BBS,2009年12月7日(月) 15時32分
青文字:加筆改修部分

▼ 傍証になりそうな記述を発見.

--------------------------
 電力会社などの事業者は,原子力発電所構内とその周辺で,環境放射線を測定し,周辺環境の安全を確認している.
 地元自治体も独自に測定を実施して,事業者との間で結果に差がないことを確認している.
 具体的には,発電所境界や周辺地域にモニタリングポストやモニタリングステーションと呼ばれる環境放射線量率の常時測定や,空気中の放射性物質の濃度測定を行う設備を設置したり,周辺の海底土,土壌,農産物,畜産物などを定期的に採取して放射性物質の濃度を測定して,環境に影響を与えていないことを確認している.
 これらの結果は,地元自治体に報告され,公表されている.
 環境試料の放射線分析は,かつては化学分析によっていたので,分析値を得るために手間と時間がかかったが,今では化学分析せずに半導体検出器で,スイッチ一つで簡単に測定でき,パソコンで結果の計算評価ができるようになっている.

--------------------------『原子力発電所で働く人々』(近藤駿介編著,ERC出版,1998.12.25),p.73-74

 これは敦賀原発に関するくだりで記述されており,すなわち,少なくとも昭和45(1970)年の商業用軽水炉第1号の時代から,そのような事業者と自治体によるクロスチェックが行われてきたことを意味しているように思われる.
 原発内の放射線管理区域にたいする自治体のチェックが行われている旨の記述ではないが,それでも上記文章から推察するに,たとえ原発の初期の時代であっても,

>現実の労働者は過酷な環境にさらされてる

というのは考えにくいのではないかと.

消印所沢,2010.10.19

 敷地外の環境放射線モニタリングと,管理区域内の放射線管理は別物ですので,回答としては少し弱いかと思います.
 もちろん記載に全く誤りはありませんが.

 『原子炉被爆日記』の方は,今となっては事実かどうかの検証すら出来ませんし,状況が現在とは違いすぎて比較にもならないと考えます.
 もっとも,あの本を真面目に読む人間の方がどうかしていますし,現在管理区域内で従事している人間が読んだら,笑うか,怒るか,二つに一つですので,クロスチェックにも適さず,完全に黙殺すべきと考えます.

へぼ担当 in mixi,2010年10月19日 19:51


 【質問】
 戦略型原子力潜水艦の核パトロールについて質問です.
 原潜は,その秘匿性と残存性によって核戦争時に確実な攻撃・報復を行なうために配備されていると理解していますが,潜行している原潜は,どうやって外部の情報を得るのでしょうか?
 本国が突如,核攻撃されても,潜ってって気付かなかった,なんてことにはならないのですか?

 【回答】
 通信を行う時だけ浅い深度に上がって(浮上はしない)通信を行う.

 潜航中の通信は潜望鏡深度まで浮上して通信用マストを上げて,衛星経由やUHFの周波数帯で信号を受信する.
 原潜の通信装置はUHFからHF,VLF,ELFまでの幅広い周波数帯をカバーしている.ガートルードもある.
 このほかにはSLOT(潜水艦発射ワンウェイ送信機)ブイでの通信もある.
 ELFが最も深くまで届くけど,情報量は少なく通信は大変.

 無線について簡単に纏めておくと,
・波長が長くなればなるほど長距離まで届く
・波長が長くなればなるほど,情報密度は落ちる
・波長が長くなるほど,送受信アンテナは長くなる
・波長が長くなるほど,障害物(高密度物質)の影響を受けない

 潜水艦が潜航する通常の深度なら,極超長波を使って指令を受信することができる.
 普段は定時連絡を受信するだけで発信はしない.
 有事の指令も極超長波通信で行われる.

 それと,詳細は機密だが,ミサイル・パトロールに就いている戦略原潜は,一定期間本国からの通信が途絶えたら,事前に取り決められた手順にしたがって,事前に割り振られた目標にミサイルを発射することになっている.
 なので本国が突如核攻撃されても,報復戦力としての役目は果せる.

 余談だが,映画「クリムゾンタイド」で,原潜がロシアでのクーデター発生情報を超長波通信で伝えられるシーンがある.
 極端に通信速度が遅いメッセージの受信が,途中で切れたため,それが核攻撃指令だったかどうかで艦長と副長が対立するってストーリーだが,現実には,各指令ごとに書き出しの文章が異なっていて,最初の一文字でも受信できれば,指令の内容が分かるようになっている.
 なので「クリムゾンタイド」のような事は実際には起きないとか.


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