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(画像掲示板より引用)
「D.B.E. ミニ型」:動物を兵器として扱う7つのとんでもない試み/情報源everything is gone
「Gigazine」◆(2009/04/06)地雷を探す訓練を受けたネズミに注目が集まる
「Gigazine」◆(2010/06/20)敵との格闘やパラシュート降下まで,匂いをたどるだけではない軍用犬のお仕事いろいろ
「militaryphotos.net」:Dogs in the Army
今日のわんこ
「Togetter」◆(2011/05/18)古代インドの象兵が圧倒的に強かったわけ
「WIRED VISION」◆(2010年2月18日)ゴキブリを軍事利用:米軍の計画
「朝目新聞」●ポケモンを完全に統率した軍隊があるとして (of VIPPERな俺)
痛いニュース(ノ∀`) :生きたカブトムシをリモコン操作することに成功 「工作員として利用可能に」…カリフォルニア大学
「火薬と鋼」■(2011-05-09)[その他] 米海軍特殊部隊の軍用犬
「ザイーガ」:【MOVIE】インジェクションナイフVSスイカ
「ザイーガ」:【MOVIE】巨大ネズミを使った地雷の撤去作業
「神保町系オタオタ日記」■(2011-11-17)[黒岩比佐子][伝書鳩]小さなものへの視線を忘れなかった黒岩比佐子さん
「ロシア海軍情報管理局」◆(2014/03/27) 幻のウクライナ「軍用イルカ」
>ソヴィエト連邦時代の1980年代には、黒海艦隊基地セヴァストーポリに「軍用イルカ」は実在していましたが、ソ連邦解体後、それは途絶えてしまい、今日に至るまで復活する事は無く、今は関係者の思い出の中にのみ存在しています・・・
『戦時下動物活用法』(清水義範著,新潮文庫,1997)
ネタ本としてプッシュ.
>動物どもを,戦争のために.
>出だせ鳥獣の底力.
>勝利のためには何でもせよ.
>トップブリーダーは非国民
>猫の爪さえ軍備とせよ.
まぁ,内容はこんな調子ね.
------------軍事板,2001/07/19(木)
『戦場に行った動物たち きっと帰って来るよね』(杉本恵理子著,ワールドフォトプレス,2006.2)
『戦場の犬たち』と同時期に出された,軍用動物の写真集.
内容的には『戦場の犬たち』とほぼ同様で,出典が米英の公式写真中心なのも同じ.
ただしこちらではイルカ,鳩,猫,馬,ラバ,ウサギ,チンパンジー,象などといった,犬以外の多様な動物たちを扱う.
また,直接的な戦場ばかりでなく,テスト飛行や宇宙飛行,そして水爆実験など,様々なシチュエーションの写真が用意されているが,その分個々の動物やシチュエーションについてはやや浅くなってしまっている感がある.
まあ,犬の方は犬だけしか扱っていないので,差が出てしまうのはやむを得ないところではあるが.
動物たちの表情や,たった1ページだが掲載されている死体の写真から何を読み取るかは読者次第だろう.
なお,4ページにあるポスターは解説が無いが,アメリカ人道協会により第1次世界大戦中に開始された,動物救護活動への参加を呼び掛ける物である.
シンボルは人間の赤十字になぞらえてRed Starになっている.
こちらで大きい画像を見ることができる.
本書には,月着陸を目指したソ連のルナ16号に,チンパンジーが乗せられていたという話と,写真が載っているが,本当なんだろうか?
検索しても,それっぽい話が出てこなかった….
------------軍事板,2012/01/31(火)
『戦場の犬たち』(河村喜代子・文,ワールドフォトプレス)
▼
第1次大戦からヴェトナム戦争まで,米英軍を中心に軍用犬や戦場にいた犬の写真を掲載している.
アマゾンのカスタマーレビューにある通り,写真は米英の博物館や軍の収蔵品であるため,勇ましい写真やほのぼのした写真ばかりだが,著者は冒頭で近代軍用犬の歴史に触れるとともに,彼らがその多くの期間,「備品」扱いされてきたことを嘆いている.
▼例えば民間からの徴用ではなく,軍が直接入手した軍用犬は2000年になるまで,余剰が生じた場合は毒殺されていた.▲
それに目を通してから写真を見ると,犬を飼っている自分には(著者を批判する意味ではなく)胸が痛い.
▼ キャプションはのほほんとしてるが,撮影場所や状況など,出典に書いてありそうな情報は一通り入っている.
また,写真は全て出典が明記されている.
主な出典は米軍と帝国戦争博物館.▲
――――――軍事板,2010/04/20(火)
&軍事板,2011/03/08(火)(追記部分)
青文字:加筆改修部分
▲
【質問】
軍用動物を扱った,良質の日本語文献はある?
【回答】
『戦場の犬たち』
詳細は,リンク集のレビュー参照.
『図説 動物兵士全書』 原書房
原書房の図説シリーズの一冊.
間接直接を問わず,戦争に投入された動物の歴史について,大量の図版を使い解説しています.
個人的には,ナポレオンがエジプト遠征で使用したラクダ騎兵について,詳しく書かれていたのがツボでした.
「歴史群像アーカイブvol1 知られざる特殊兵器」
動物兵器について何本か触れられています.
内容は軍隊による動物利用について一本,そして戦象についての記事が一本.
武市銀次郎「富国強馬―ウマから見た近代日本」
黒岩比佐子「伝書鳩―もうひとつのIT」
どちらも非常な良著だ.
遊佐馬術(正・続)
古書が安価であるし馬術の技術的側面が判らなくても一読するといい.
遊佐さんは秋山の弟子筋で,バロン西の師匠の世代.昭和帝のご乗馬を調教した人.
軍用動物担当者のものの考え方が判って面白い.
なお,没後のいわゆる「お別れ会」で,笑いが絶えなかったというかたで,たぶん,今も,弟子筋が集まる「遊佐会」が続いている・・・と思う.
陸軍省編集 支那事変に於ける軍馬美談佳話<第2段>
'38年編集だから当然旧仮名使い.
軍部のプロパガンダっぷりを,十二分に楽しめます.
ちなみにNHKの犬ドラマは,本放送見たけど「地雷」.
テッパチが同一シーンのはずなのに,消えたりついたりする,ミリヲタ以前にドラマとしてクソだった.
勿論ミリ的にもクソ.
陣地構築して待ち伏せた中国人が,一発撃ったら陣地放棄して柳葉刀で斬りかかってくるとか,何考えて作った?
軍用犬をまさに「道具」に使ってるだけで,新しい知見なんかなんもねえぞ.
軍事板,2011/03/08(火)〜03/25(金)
青文字:加筆改修部分
faq100129dg.jpg
(Picture Prepositioning Ship : PPS@軍事板常見問題
mixi別館より)
【質問】
木曽義仲が,牛の角にかがり火をつけて平氏の軍勢に暴走させて,平氏軍を総崩れにして,勝利した事がありますが(中国の春秋戦国時代の話を元にした創作という説もありますが),日本の合戦で,この他に猛獣(熊や狼)を用いた戦いはあったんでしょうか?
【回答】
あります. 我らがむっちーが思いつきでやったインパールでのジンギスカン作戦です.
大陸で何にかぶれたのか,モンゴルが羊とともに移動することで長期間の遠征を可能としたことからおもいついたそうですが,ビルマで徴発した牛さんたちは日本や中国の牛のように背中にモノを乗せることになれておらず,また動物つれた渡河のノウハウもなかったため,大半がおぼれ死んでしまいましたとさ.
【質問】
軍事利用される動物は,犬,馬,鳩だけ?
【回答】
イルカなどの海棲生物の利用・研究も進んでいる他,蜂や鼠を利用する研究も行われているという.
▼軍用猫:
軍艦が鼠退治用に飼うことがある.
乗組員の慰安用兼用.
軍用羊:
昔,軍艦で「処理用兼非常食」として飼っていたことがあった.
何の「処理」用なのかは・・・その,察しろ.
軍用ロバ:
馬と同じく輸送用によく使われた.
ドイツの山岳部隊で輸送手段として使ってたのは有名.
軍用鳥:
伝書鳩.
あと,「伝書鳩撃墜兵器」として鷹匠を動員し,伝書鳩を狩らせる,というのもあった.
他に鳥類の軍事利用といえば,冷戦中の英国にて,
step1−WW3の際に,ワルシャワ条約軍の西進を食い止めるため,核地雷をライン河沿いに敷設しよう.
step2−冬場,埋められている間に寒気で電子部品が不調になって不発になるかもしれない.
step3−何かで暖める必要がある.
step4−核地雷の中にエサと水と鶏を入れておけば,ヒーター代わりになっていいんじゃね?
「ブルーピーコック」と名付けられたこの計画が,一般に公表されたのは2004年4月1日だったため,エイプリルフール・ネタだと思われたそうな.
軍用海獣:
米軍やソビエト軍ではイルカやアシカといった海獣を訓練して機雷探査等に使う研究を本気でしていた.
米軍は実用化にこぎつけている.
軍用蝙蝠:
大戦中に米軍は,時限式発火装置を背負わせたコウモリで日本の都市を爆撃するという構想を立てていた.
夜明け前に投下された爆弾から空中で放たれたコウモリは,日が昇ると民家の軒先に隠れ,そこで発火して火事を起こすというプランだった.
当然のことながらキャンセルされたが.
余談だが,「対戦車犬」or「地雷犬」は,何年か前に公開された北朝鮮軍の演習に写ってたり.
軍事板
青文字:加筆改修部分
砂漠だったら馬よりも,移動手段は駱駝でしょう.
(モロッコとかには駱駝部隊がある).
南米の山岳地帯ならヤクとかそう言った有蹄類.
眠い人 ◆gQikaJHtf2 :軍事板,2005/04/04(月)
青文字:加筆改修部分
▲
攻撃型ハチ,脳波を送信するネズミ――研究進む「動物の軍事利用」
2007年12月13日
という記事によれば,蜂や鼠,鮫の例があげられている.
以下引用.
[quote]
米空軍が1994年に立てた計画では,「虫の性的誘引物質」を武器として使用することが提案された.
「蜂が攻撃を仕掛けてくるような『攻撃誘発剤』」は,「潜入ルートで使用すると特に効果的である」と文書に記されている.
さらに,「強力な性欲亢進薬,特に同性愛的行動を起こさせるもの」の利用も検討された.
米国防総省の国防高等研究計画庁(DARPA)の計画の1つでは,ネズミに「脳波を送信する無線装置」を取り付けた.
最終的な目標は,災害時の生存者の居場所を突き止めるのに役立てることにある.
DARPAから資金提供を受けた別の研究者は,イカから抽出した液を使ってサメを誘導した.海の殺し屋たちが軍の「隠密スパイ」になる日が来るかもしれない.
さらに,電極を埋め込んだりはしていないものの,爆弾検出の訓練を受けたミツバチや,化学兵器を使った攻撃を早期に検知して警告するためのニワトリ,海などを泳いでくるテロリストと戦うアシカ,機雷を捜すイルカ,群集取り締まりの任務に就くイヌなどがいることも忘れてはならない.
[/quote]
地下鉄サリン事件の後,自衛隊ではカナリアを飼うようになったという話もあったね.
そもそも細菌兵器だって生物だ.
軍事利用の対象になる生物は,もっともっと増えるんじゃないかな.
406 名無し三等兵 :2005/04/04(月) 09:00:24 ID:???
偉大なる牟田口将軍閣下はインパール作戦において,牛を荷役用動物兼食用として活用しようという卓越した計画を実行されましたな.
407 名無し三等兵 :2005/04/04(月) 09:21:29 ID:???
蘭海軍は羊を(以下略
軍事板,2005/04/04(月)
青文字:加筆改修部分
脳波を送信するネズミ
2008年度の年賀状のデザインはこれに決まり
(こちらより引用)
「猫兵器」(もふり用)
(画像掲示板より引用)
【質問】
軍用細菌とか,軍用カビとか,軍用ネズミってのはいないんですか?
【回答】
軍用細菌,軍用カビ,これらは生物兵器と呼ばれていて,WWUや冷戦時代には各国で極秘裏に開発されていました.
WWUには空気を読めずに使用した国もありましたね・・・
今現在は『生物兵器禁止条約』があり,保有は固く禁止されています.
ちなみに大量破壊兵器=NBC兵器<Nuclear,
Biological and Chemical Weapon>のうちの<Biological Weapon>に分類されております.
ネズミは拷問用には多く使われたそうですよ.
探してみたらこんなものも.
地雷探知ねずみ
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20090406_mine_detecting_rat/
軍事板,2009/07/10(金)
青文字:加筆改修部分
【質問】
ドブネズミに手りゅう弾を背負わせて都市にばら撒けば,大混乱になるんじゃないですか?
地下のインフラに必要な設備が次々あぼーん.
戦略兵器として使えませんか?
【回答】
同じことを考えた人が第2次大戦中のアメリカにいたが,潜入させた鼠の行動を意図的に操ることはできないため,無駄が多すぎて効率が悪いと却下された.
最初はコウモリ,次はハト,その次はネズミでと「都市にいても怪しまれない生物」に爆弾仕込んで敵都市に放つ,という計画を真面目に研究して開発にいそしんだが,結果
*知能の低い動物の行動は訓練や条件付けで制御することがなかなかできないので,無差別攻撃以外には使えない
*この3種類はどれも群れを作る性質があるので,放っても一箇所を破壊するだけで,広範囲に被害が及ぼせない
という結論になってボツった.
これに真面目に研究費と人員がついたってのが・・・.
720 :名無し三等兵 :2009/01/31(土) 14:29:21 ID:???
この先に来るであろう質問を大予想.
・ファミレスのテーブルに置いてある塩に毒混ぜたら社会的大混乱にならない?
戦略兵器として使えるよね.
・踏切の警報機をならしまくったら,敵国に経済的大打撃を与えられない?
戦略的破壊工作として使えるよね?
・ディスニーランドでミッキーに変装してテロやったら,極度の社会的恐怖を敵国に与えられない?
戦略的心理作戦として使えるよね?
・学校の下駄箱内の上履き全部に画鋲しかけたら,敵国の生徒同士をいがみ合わせられて教育インフラを破壊出来ない?
敵国に長期的な社会の弱体化を誘えるよね?
723 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2009/01/31(土) 14:45:37 ID:???
それって東映特撮に出てくる悪の秘密結社の思考パターンそのまんまじゃん……
724 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2009/01/31(土) 15:06:26 ID:???
いまどきの特撮では完全に死に絶えたパターンだな(笑)
725 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2009/01/31(土) 15:08:45 ID:???
踏み切りの警報機どころか信号機等の交通管制システムをハックして,滅茶苦茶にすることで社会インフラに攻撃を加えるというのは,「ダイハード」シリーズの最新作だったかに出てきたな.
さらに株価や為替の取引もハックしたり,携帯電話もネットも不通にしたりしてた.
映画「トランスフォーマー」でもディセプティコン(デストロン軍)はネット網全部に妨害かけてたし,「ターミネーター3」では最大の敵のスカイネットが,「人間が作ったネット全てを掌握するシステム」だった.
現代社会インフラはコンピューター管理によって成り立ってるので,それが制圧されたら確かに打撃は与えられるから,まあ間違った考え方ではない.
ただ現実には一度に,全ての管理システムを破壊・妨害するのは難しいということだが.
726 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2009/01/31(土) 15:27:57 ID:???
EMPあたりを使えば民生システム程度なら簡単に破壊はできるぞ(笑)
前提条件の入手法とかは抜きにしてだが.
後,後片付けが大変になるんだよなあ.
735 :名無し三等兵 :2009/01/31(土) 18:34:24 ID:???
何よりショッカー型テロで「社会不安」が実際に起こったとして,それを起こした側はその後何をするんだ?
まさかテロっただけで終わり?
それじゃ軍事作戦でも何でもないんだが.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
練乳は軍用として開発されたというのは本当か?
【回答】
起源の一つではある.
***
さて,苺が美味しい季節になりました.
最近の苺は甘くて,何もかけなくとも十分に美味しいのですが,牛乳をかけて,苺の粒を潰し,そこから滲み出た液を牛乳に混ぜたものが結構美味しくて今でも好きな食べ物の一つです.
特に,練乳をかけるのが大好きでしたが,最近では余り見なくなりました.
牛乳の問題点,それは,水分を約90%も含有するので,貯蔵や運搬に経費や労力を要し,極めて腐敗しやすいと言うのが大きな欠点でした.
その欠点を取り除く為に,昔の人々は容積を必要とする水分を除去し,腐敗を防ぐ為に加糖すると言う手法を編み出します.
これが練乳というものになります.
この練乳が事業的に成功する様になるのは,実はそんなに古くなく19世紀半ば,1856年にゲール・ボーデンが特許を得てからです.
ボーデンは,ジェレミアク,ミルバンクと言う2名の資本家の資金援助を得て,ニューヨーク州ホワイトプレーンにニューヨーク練乳株式会社を設立しました.
ボーデンの特許は,牛乳を濃縮するのに,従来の大気圧で平鍋を用いるのでなく,低圧,低温状態で行う事に特徴がありました.
この為,従来の製品に対して風味の点で優れていました.
ほぼ同じ時期である1866年,欧州ではページ兄弟がスイスにアングロ・スイス練乳会社を設立し,練乳生産を始めます.
この会社は,1904年にネスレ練乳会社に買収合併され,ネスレ・アングロ・スイス練乳会社として,世界各地に工場を有するに至りました.
現在,日本でもインスタントコーヒーを生産してシェアの高い,ネスレの大元になります.
ところで,現在流通している練乳は加糖練乳しかありませんが,牛乳を煮詰めて行くだけなら無糖でも出来るのではないかと考えた人は多く,ボーデンの練乳よりも早く工業化の試みが行われています.
しかし,無糖練乳は加糖しない分,腐敗を防ぐ為の要素がないので,保存性を維持する製品を得ることが出来ず,その工業生産に成功したのは,1887年と,加糖練乳の後,マイエンベルクと言う人によって為されました.
ただ,その無糖練乳を初めて製造したのは,フランスのニコラ・アベールと言う人です.
この開発は,軍用品として腐敗しない牛乳を簡単に運ぶ事が出来ないか,と言うところから始まりました.
アベールは,元の量の3分の1にまで煮詰めて減らした牛乳を缶詰に詰め,これを華氏240度(摂氏で110度)になるまで水蒸気で加熱滅菌する方法を考えました.
残念ながらこの技術は練乳製造の技術にはなりませんでしたが,缶詰の加熱滅菌方法の基礎技術となりました.
まぁ,何というか災い転じて福と成すというか….
その後,1847年に至り,英国のグリムウェドが無糖練乳を防腐するのに,牛乳に少量の硝石を加え,真空釜内で減圧濃縮する方法について特許を得ましたが,こうして出来た製品には色々と欠陥があって広く応用するに至りませんでした.
マイエンベルクは,先のアングロ・スイス練乳会社の技師でしたが,この製品の保存性を高める為に,独特の方法を開発し,米国で1884年と1887年にその特許を公開しました.
この無糖練乳は,1898年に勃発した米西戦争で需要が一気に増加し,更に第一次大戦に於いては,加糖練乳と共に著しく消費量が増加します.
その後,育児用や牛乳の代用品として用いられてきましたが,その後,無糖練乳は1946年以降,粉ミルクの増加から比例して生産量が落ち続けています.
日本では1872年,東京麻布の旧佐倉藩主堀田伯爵家の邸跡に置かれた開拓使第3号試験所で,練乳が初めて製造されました.
これは当時,既に世界的なブランドだったゲール・ボーデン社の鷲印ブランドの練乳を,手本に試製されたもので,御傭い外国人で技師だったケプロン,エドウィン・ダン,ブラウンの各氏と,畜牛及び乳製品製造主任だった田中勝太郎という人々によって為されました.
当時の製造法は,日本在来の直径1尺5寸,深さ5寸5分の特製青銅鍋に生乳を入れ,石製の七輪にかけ,木製の攪拌ベラで掻き回しながら作り,途中で硫酸,炭酸カリウム,砂糖などを入れましたが失敗に終わりました.
こうして,専門家と言えない人々が試行錯誤を繰り返しつつ,製法を確立していきました.
そして,牛乳1升に砂糖70〜80匁を入れて加熱攪拌,焦げ付かないように水分を蒸発させて製品にする事が出来たのですが,ボーデン社の練乳のような微細な結晶に至らず,しかも常圧で濃縮したので,メイラード反応で褐変してしまい,品質的に遙かに劣るものになってしまいました.
その後,各地で練乳の製造が始まり,日露戦争を契機に基礎が確立しましたが,1905年で27万斤,1913年でも292万斤で,遙かに少数生産であり,一方で輸入量は1905年が812万斤,1913年は697万斤と此処でも矢張り舶来志向は明確に表われています.
しかし,第一次大戦に練乳の輸入が停止された為,日本の牛乳,乳製品事業が工業的に発展していきました.
ただ,製造技術は幼稚であり,鷲印ブランドの練乳に比べ,乳糖の粗大結晶,粘度増加,褐変化,細菌混入による斑点など課題は沢山ありました.
その製造は,先ず荒煮釜と称する直径3尺5分,高さ3尺4寸5分の釜に牛乳を入れて殺菌することから始まります.
荒煮の方法には,直接蒸気を牛乳に通して加熱殺菌する直接加熱法と,ジャケットによる加熱を行う間接加熱法の2つがありました.
前者は水蒸気が凝縮するので,約15%液量が増加する反面,温度上昇は早い利点がありますが,蒸気中の不純物を混入する恐れがありました.
後者は熱効率が悪いものの,効率的に殺菌し,不純物を混入する恐れが少ないと言う利点があります.
荒煮が完了したら,出来た濃縮後の練乳をクーラー缶に流し込んで,水温と同じ13度まで冷却し,最後に粘度上昇と乳糖の粗大結晶を防ぎ長期保存出来る様に,ALと呼ぶ再製品を3%添加します.
牛乳を半分に濃縮することが乳糖の浸透圧を増加させ,水分活性を抑えますが,濃縮のみで保存性を増すことは困難で,砂糖を加えて更に浸透圧を高めて耐乾性カビや耐浸透圧性酵母による変質を防止するのがミソです.
現在は品質向上の為,製法が変わっていますが,基本的な組成はそんなに変わっていません.
ところで,加糖練乳の祖とも言うべき,ゲール・ボーデンは,死の前にこんな言葉を残しています.
――――――
I tried and failed, I tried again and again and suceeded.
Replacing the earthly symbol was monument with an epitaph that in two lines told the story of man's life.
Gail Borden ( Dairy man to nation )
(訳:
私は何回も何回も試み失敗した. しかし,最終的に成功した.
男の人生の物語として,この2つの方向(失敗と成功)を墓碑に刻み,この地球に生きた証としたい.)
――――――
何か,死を前にした男の言葉と言うより,新入生に対する先生の言葉みたいですねぇ.
眠い人 ◆gQikaJHtf2,2010/04/07 23:19
【質問】
なぜ象兵の運用は,あまり広がらなかったのでしょうか?
品種改良などして,もう少し小型で制御しやすいところまで持っていって,騎馬隊と併用すれば,火器が発達する前なら無敵だと思うのですが.
ローマもカルタゴと散々象兵には苦労したけど,それを自国には取り入れていませんよね.
【回答】
▼ まず,象兵があまり広がらなかった,というのは必ずしも正しくない.
記録に残る限り,象兵が運用されていた地域は少なくても
・地中海沿岸のほぼ全域
・中東
・インド亜大陸
・東南アジア
と,ユーラシア大陸の東端からアフリカ大陸の西端までの広範囲に渡っている.
時代的にも紀元前から17世紀以降まで運用され続けており,マイナーな兵科であるとは言えない.
確かに騎兵等と比較すれば,運用例は遥かに少ないが,古代地中海世界の重装歩兵などより,象兵の方が地理的にも時代的にも広い範囲で運用されている.▲
▼ 例えば『史記』にも象は登場する.
それによれば紀元前506年,古代中国の呉は楚の首都,郢に侵入したが,楚王・昭は首都脱出のための時間を稼ぐため,象を放ったという.
それも,ただ放ったのではない.
象の尾に火を付けた薪を結わえて放ったのだった.
実害は大したことはなかったが,呉軍の戦列は大いに乱れ,その隙に楚王・昭は脱出できたという.
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ローマがゾウと戦ったのはピュロスとカルタゴ.
だからカルタゴは採用してる.
そのカルタゴは,本土以外ではほとんど使ってない.
アルプス越えてまでハンニバルは連れて行ったけど,大して効果なかった.
ローマはそもそも,ゾウにそれほど苦戦してない.
▼ ゾウは最初のインパクトは大きいけれど,戦力的にはそれほど大きくなく,その上運用コストがでかすぎる.▲
ゾウは対蛮族や,ヘレニズムで極まったファランクス同士のぶつかり合いの時ぐらいしか効果発揮しない,残念な兵種.
▼ なお,質問者が考えるような象の品種改良は不可能であったと考えられる.
品種改良を行うためには象を何世代も繁殖させ続けないとならない.
しかし象の人工繁殖は現代の飼育施設をもってしても非常に難しく,軍用象として最もメジャーなアジアゾウについていえば,日本において初めて人工繁殖に成功したのが2004年の出来事である.
また大型生物であるが故に繁殖効率も極めて悪く,妊娠してから出産するまで22か月を要し,一度に一頭の子供しか産まない.
しかも生まれた子供が性的に成熟するために,メスは10年弱,オスは15年もの期間を要する.
軍用象の補給は,野生からの捕獲に頼っていたであろうと考えられる.
象兵が運用された地理的範囲が(アフリカ・インドからの輸入を通して一時的に運用した地中海沿岸を例外として)野生象の生息域と一致する点からしても,象兵を実用性のあるコストで運用できるのは,野生の象が生息する地域においてであったのであろう.
【参考ページ】
http://pezetairoi.hp.infoseek.co.jp/history/Antigonos/b-1-7.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E8%B1%A1
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2001/010427.html
http://ameblo.jp/hiro-1/day-20100202.html
http://ameblo.jp/hiro-1/day-20100203.html
http://ameblo.jp/hiro-1/entry-10449029010.html(画像引用元)
http://d.hatena.ne.jp/kameero/20090303/1236091364(漫画のコマ引用元)▲
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/14429/1400589181/ (アスキーアート引用元)
世界史板,2010/01/26(火)
&天武 in FAQ BBS,2010/2/16(火) 1:1(2010.4.8追記部分)
青文字:加筆改修部分
▼ 洋書のビジュアル戦史だが,戦象を専門に扱った本があるよ.
一応はインドから東南アジアまでも触れている.
War Elephants
Author: Konstantin Nossov
Illustrator: Peter Dennis
http://www.ospreypublishing.com/store/war-elephants_9781846032684
漫画板,2014/11/28(金)
青文字:加筆改修部分
▲
進軍するアユタヤ王朝日本人義勇兵の図
横山光輝『三国志』より
【質問】
エドワーズ空軍基地勤務の猫について教えられたし.
【回答】
Supply group uses 'military working cat'
to control critters
エドワーズ空軍基地の倉庫に勤務するWizzo2等兵.
所属 第95任務支援グループ 配備業務部
任務 倉庫内を荒らしまわるネズミ共の見敵必滅(笑)
殺鼠剤による駆除より,衛生的でコストも低いというので採用されたとのこと.
これまでの戦績は,2007年時点でネズミ3匹撃破,鳥1羽撃墜で,空軍のエースの地位を確保している.
誰が最初に考え付いたのか気になるところではある.
faq100822wz.jpgへのリンク
faq100822wz2.jpgへのリンク
CRS@空挺軍 in mixi,2010年08月15日21:33
【質問】
カゼイン代用剤,血液醤油等の,獣血由来の代用品開発について教えられたし.
【回答】
元々,動物の血と言うのは呪術的なものに利用されていました.
例えば,雨乞いの際に屠場から手に入れた牛の生首と生血を用いたとか,沖縄では境界祭祀の1つとして,牛や豚,山羊などの血が用いられたりします.
アイヌでも,オットセイを解体する際に,船の舳先にその血を塗ると言った儀礼が行われていました.
人血でもこうした呪術的なと言うか,宣誓や意志の強さを表わすものとして,「血書」「血判」と言うのは行われますし,日本では主に呪詛を目的にした,墨に少量の血を混ぜて書いた「血経」と言うのもあったりします.
ただ,古代から中世になっていくと,どちらかと言えば,忌むべき穢れと言う性格の方が強かったりします.
こうした血の利用が,呪術的な部分から科学的な方向に向かったのは,近世くらいからで,本奏楽に影響を与えた中国の書物である『本草綱目』には,諸獣血には補血,解毒,止瀉の作用があり,血枯,丹毒,煩熱に良いと書かれていました.
そうしたものに用いる血としては,蝙蝠,兎,狗,虎,熊,猪,鹿,牛,羊,驢馬,孔雀,鶏,鶴,雀と,タイマイ,スッポンなどの亀類を挙げています.
但し,これを日本人はそのまま受け取らなかった様で,1697年の『本朝食鑑』では,血の利用は兎,鶴,雀のみ,1713年の『和漢三才図絵』でも,狐,兎,啄木鳥と言った程度です.
因みに,『和漢三才図絵』には犬を食用にする際の注意として,血を取り去ると精力が減少して益が無くなるので,血を取り除かないように食べねばならないとしていますが,実際には穢れとなるので,避ける事が多かったとも言われています.
両者で共通しているのが兎の血です.
兎の血は,疱瘡の妙薬として丸薬に用いると良いとされていますが,実用になったかどうかは定かではありません.
後,現代の日本では食用に用いられませんが,江戸期に盛んに食用になった鳥として鶴があります.
鶴については,肉だけでなく血についても,その効用が説かれています.
例えば,『本朝食鑑』では,「諸禽の血は生臭くて,啜る事が出来ないが,鶴の血だけは,温酒に入れて啜れば,味は鹹甘で香気がある.気血を益すには最も良いものだ」と書かれていたり,
鶴血酒については,8代将軍の吉宗が1721年12月に鷹狩りで黒鶴を獲った際に振る舞った事が,『徳川実記』に記されており,実際に鶴の血を飲み始めたのは,吉宗以降の事であると言われています.
また,吉宗は,婦人補血によいとして,鶴血丸なるものを希望者に与えたとも記されています.
秋田佐竹家中では,製薬所が熊の肝と皮を毎年一定量買い上げていましたが,黒焼きにするために鹿頭や冬期には鹿の血が求められた事もありました.
1856年12月,男鹿の鷹狩りに赴いた佐竹北家家臣林役の千代良左衛門の下に,4日「寒中鹿血御用」の竹筒を3本送ったので,かねて話したように酷寒の節に討ち取ったものを送る様にとの書簡が届けられ,24日には更に寒さが厳しくなっているので,早く鹿血を送る様にと言う催促状が届けられています.
因みに,マタギの間では,熊の血を持ち帰り乾燥させたものは,貧血や疲労回復の妙薬として利用されていました.
従って,鹿の血も乾燥させて薬用にしたのではないか,と言われています.
他に,1638年の『馬の妙薬集』には,馬のてんかんの薬として,「葦毛馬の血」を使うとか,『桑島流馬療伝』に,馬の「しのわれ」に猪油,硫黄,松脂,活?根,苦汁に「芦毛馬の血」を混ぜて練り合わせたものを塗ると良いとされています.
但し,どんな馬でも良い訳ではなく,あくまでも芦毛の馬であることが特徴です.
近代に入ると,肉食が解禁となった事から,屠場が設置される事になりました.
しかし,この屠場で発生した獣血が大量の汚水と共に排出され,周辺とのトラブルを引き起こす事になります.
そこで,獣血の利用が考えられたのですが,中々有効利用に至っていません.
血液は,血漿と呼ばれる液体部分と,その中に浮かぶ血球と呼ばれる有形部分から成り立っています.
血液量は,牛の場合,体重の約7.7%,豚では約5%と言われています.
これを採血する方法は種々有りますが,最も丁寧に集めた場合は,牛で15リットル,豚で3リットルほどが採取出来ます.
こうした獣血は保管の問題もあり,乾血に加工され,衛生的に処理されると飼料に,それ以外のものは窒素を多く含みますが燐酸が少なく,カリは殆ど含まれていないので,余り有効ではないのですが,肥料に用いられてきました.
前にも触れたように,日本では仮死状態にして放血させるのが主流です.
米国の場合は,炭酸ガス窒息屠畜法が用いられ,心臓の動きを停止させてから解体作業に入るのですが,これでは肉の中に血液が残留する事になります.
所謂,「血の滴るステーキ肉」になるのがこれですが,日本では余り好まれませんでした.
日本の屠場では初期の頃は,3人がかりで,2人が縄で家畜の動きを封じ,残る1人が大きな鉄の鎚で眉間に1打または2打を加えて気絶させ,床に倒して,素早く喉元にナイフを入れて放血させていました.
これは非常に技術を要する仕事だったりします.
大坂の屠場では,これを溝に流し,隣接する肥料製造所の釜に流し込まれて,直ぐに煮沸されて肥料に加工することで,多くの利益を得たと言われています.
こうした血を用いた肥料の製造装置は,各地で開発され,特許が出願されました.
それ故の事件なんかも起きていますが,それは明日にでも.
眠い人 ◆gQikaJHtf2,2010/03/24 22:48
さて,乾燥血液を肥料にすると言う話ですが,何故か関西では大きな利益を上げています.
1890年には,京都に於いて,葛野郡朱雀野村西京屠獣場での牛血肥料製造場設置が府に出願されています.
これは,牛血1石を2時間煮詰めて絞り,粉塊にすると言うもので,1斗(約18リットル)の牛血が1貫目(約3.75kg)の粉塊になると言います.
これと同じ様な施設が京都の彼方此方に出来,紀伊郡の化製場では,屠場から血液を搬入して盛んに乾血粉を製造していました.
因みに,京都では屠場で処理された牛の肉と骨は牛肉商が持ち帰り,皮と内臓は牛肉商がそれぞれ業者に売却して代金を受け取っていました.
しかし,放血されて次々に流れ出る血液に関しては,どれがどの牛のものか分らないため,その売却代金は一喝して牛肉商組合に納入されていました.
ところが,屠場が市営化されると,この牛血売却代金は市の収入となってしまい,業者の旨味が無くなってしまいました.
そこで,牛血売却代金を牛肉商組合に取り戻すべく市議に働きかけていた事が明るみに出,1918年9月13日に京都市営屠場疑獄として事件となり,1919年4月10日には,贈賄側の牛肉商と収賄側の市議がそれぞれ贈収賄罪によって公判に付されています.
これは,当時の獣血が商品価値を持ち,一定の利益を上げていたからこそ,発生した事件でした.
この他,鹿児島でも血液溜の血液は内臓内に残留していた排泄物と共に,高等農学校の肥料として買収されるなど,各地で肥料として用いられていました.
逆に,東京では,1877年,浅草千束村に屠場が開設されましたが,当時排水の便が悪く,獣血が付近の田畑に流れ込んで問題化した事から,品川湾に運んで投棄する事になり,運搬に多大な費用を要しました.
そこで,その獣血を用いて「洋錠」なるものを製造する計画が持ち上がり,期待を集めましたが,残念ながら頓挫してしまい,1879年に屠場は「警視局製薬場」と共に民間へ払い下げられてしまいました.
ところで,獣血をどのように利用しようとしたのか….
1894年に江森襄吉郎と言う人が「黄色血鹵塩製造試験報告」を『東京化学会誌』に発表します.
これは屠場より大量に入手出来る獣血(1頭の牛から凡そ2,250グラムの乾燥血液が得られ,価格は1貫目当たり15銭であった)を用いて,黄血塩,つまりフェロシアン化カリウムの製造を試みた報告です.
黄血塩は紺青(ベルリン青)と呼ばれる青色顔料の製造に用いられますが,当時はその殆どを輸入に頼っていました.
元々は,海外でも,黄血塩を工業生産する前の段階では,獣血や皮屑などを鉄屑と反応させて作られていた事から,江森はそれを知って簡便且つ安価な生産方法を検討したものと考えられます.
残念ながら,この実用化については確認出来ていません.
1908年,京都の薬舗織田自然堂が,ドイツ製の補血滋養新薬である「ヘマトパン」(主成分はヘモグロビンとマルツエキス)を輸入販売しましたが,その輸入が第一次大戦で途絶えた事から,織田自然堂から独立し,ヘマトパンの商標権,営業権を譲渡されていた京都新薬堂(現在の日本新薬)が1918年12月に発売したのが,国産の「ネオヘマトパン」と言う製品です.
この原料は牛血で,元兵庫県衛生技師であった澄川議三郎と言う人が開発しました.
骨炭と同様に,血液を空気を遮断して強く熱すと血炭となりますが,この生産過程で,血液8に対して炭酸カリ(又は石灰)1を加えて熱すると,色素沈着能力が増し,骨炭より強い吸着力を持つとされて,防毒用或いは脱色炭の研究の中で注目されました.
元々,血炭はドイツのメルク社が生産したものを日本は輸入していましたが,第一次大戦で入手不可能となり,代替品として,これまた京都新薬堂が1914年に開発しました.
因みに,この時に用いられた血炭は,函館病院の医師が開発した「尿による妊娠診断の原理」に基づき開発された妊娠診断基体「ニンゼリン」に於いて,尿の濾過剤としての働きが期待されていました.
血液の内,透明な血清部分を乾燥して得られるのが,膠の一種で,血液膠とも呼ばれる血清アルブミンです.
これは,骨や皮から作られる膠に比べて耐水性に優れているので,上質の耐水ベニヤ板製造に用いられました.
但し,アルブミンは蛋白質ですから,黴や菌の栄養源となり,黴が繁殖しやすいと言う問題点もあります.
これが実用化されたのは1920年代ですが,1944年に茂貫利次と言う人が,放血直後の血液を攪拌して繊維素(フィルブリン)を除去した後,遠心分離器によって血清と血球とに分け,適当な処理を各々行って,最後に噴霧乾燥し,血清からは血液に対し約5%の割合で抽出されるアルブミンとグロブリンを主成分とする製品,血球からは血液に対し約12%の割合で抽出されるヘモグロビンを主成分とする製品の生産方法について報告しています.
更に茂貫氏は,小山栄二と言う人と共同で,陸軍の研究として,「血液蛋白質を主材とする膠着剤,塗料及び可塑物資料の製法」を開発し,特許を得ました.
丁度,太平洋戦争に於いて物資不足が深刻化してきた時期であり,軍需として全国の屠場から出た獣血を用いて,乾燥血粉が製造され,これは木製飛行機製造に用いられる接着剤カゼインの代用品として期待されましたが,木製飛行機自身戦力にならず,これもまた積極的に戦力として用いられませんでした.
また,工業素材の開発の主流であった合成高分子の研究の一環として,獣血やカゼインを用いる試みが成されました.
獣血は,そのまま型に入れて加熱,圧搾してボタンを製造する方法などが研究されていましたが,結局は実用化されませんでした.
一方で,カゼインはホルムアルデヒドと反応させると角質化し,象牙に似た光沢を得る事に成功しました.
これは成型や着色も容易であることから,ボタン製造で盛んに用いられています.
1948年には物資不足極まれり,と言う事で,農林省畜産試験場で製造に成功し,1949年に実用化したのが,血液醤油なる代物です.
醤油は元々,大豆や小麦を分解,発酵,熟成させることで得られるのですが,当時は大豆の輸入が途絶えた事から,安価な原料として魚油を絞った後の魚粕や蚕のサナギを用いるなどの研究が成され,更に牛血を用いると言う切羽詰まった状態にまで陥っていたのでした.
しかし,実用化はされたものの,間もなく大豆輸入が解禁されて徒花に終わりました.
地域的な限定使用法としては,例えば奄美大島では,豚血を帆綱や釣糸を染めるのに用いています.
これは一つは呪術的なものと言う意味づけですが,一方では,血液の防腐作用に着目すると共に,耐久性を増す面もありました.
この血の染料としての利用は,中国や東南アジアに於いて麻や綿の漁網に用いられています.
因みに,1930年には獣血,木タール及びベンゾール,低温タール,クレオソート油を原料とした漁網染料油製造の特許が取得されていたりします.
また,漆器製造の下地剤として,実用品用に,膠,カゼイン,渋の他,沖縄では豚血が用いられていました.
これは,沖縄特産の粘土であるクチャを磨りつぶして,桐油と光明丹を加えて4〜5時間煮たものに豚の血を混ぜて,粘度を調整して用いられました.
この豚血下地法は中国でも古くから用いられており,中国の漆工の書である,1625年出版の『?飾録』に「猪血」が用いられていた事が記されています.
眠い人 ◆gQikaJHtf2,2010/03/25 23:01
第二次大戦後になると公害問題がクローズアップされ,屠場排水にも規制の網が被せられる事になります.
1958年に
「公共用水域の水質の保全に関する法律」(水質保全法)
と,
「工場排水等の規制に関する法律」(工場排水規制法)
が,
1970年には
「水質汚濁防止法」
が制定されて,水汚染に対する規制が成され,屠場についても,水質保全法施行令の一部改正とと畜場施行令の一部改正があって,指定水域に血液や汚水を流出させる場合には,水質基準に適合するような処理機能を持つ浄化装置を設ける必要が生じました.
これに従うために,日本食肉協議会に畜産未利用副生物研究開発専門委員会と言う名称の組織が作られ,都築血液利用と排水処理についての研究が始まります.
その調査・研究結果は,1977年に発表されました.
それによると,戦後,屠畜血液の利用をしていたのは,大阪市営屠畜場,諫早市営屠畜場と,南九州畜産や京都中央食肉市場などの10数カ所に過ぎず,しかも,環境衛生上の問題で中止に追い込まれるケースが少なくない事を報告しています.
四日市の場合は,化製業者に委託していました.
その製法は,牛血を屠場で大釜に入れて15分ほど煮沸し,熱いうちに圧搾機にかけて脱水した後,冷めないうちに取り出して粉砕し,それを業者の化製場に持ち帰り,1日の天日乾燥で肥料用乾血にしていました.
原料の血液は無料で引き取られ,それが骨粉以上の単価で売られていたのですが,手間,経費,歩留りなどを考えるとそんなに儲けが出なかったと言います.
結局,四日市の場合は担当者の高齢化によって1970年頃に中止されました.
利用が望めないとなると,排水として処理する屠畜場が増えます.
それには水で薄める希釈法,汚水槽を数カ所に仕切って,自然酸化によって浄化する多槽法,薬剤処理法,砕石などを積み重ねて汚水を散布し,微生物の自然浄化作用で処理する散布?床法,生物学的に汚水を処理する活性汚泥法が検討され,その中でも特に活性汚泥法の改良が行われていきます.
また,この頃から家畜を処理するのを床上でなく,インクラインコンベアやホイストによって吊上げておき,放血溝の上で頸動脈を切って放血する方法が増えていきます.
この方法だと,血液は血液専用のタンクに,洗浄水は排水管へと誘導できることから,分離した血液から血粉を製造する血液乾燥装置も開発されましたが,残念ながら設置数は極めて少ない様です.
これは,血液を真空乾燥釜に入れて,120度で20分間殺菌し,次に約90%の真空にして外套に蒸気を送り,4時間攪拌して乾燥させると,水分10%以下,蛋白質85%以上の血粉が出来上がる仕組みです.
この他,有効活用方法として,ブラッドソーセージや,タングソーセージと言った食品部門での利用も検討されるようになります.
欧米各国に於いて,1980年代に管の付いたナイフを血管に差し込み,減圧して血液を採取する装置が開発され,日本でも導入が検討されました.
この頃は,日本には獣血を食用に供する場合の関係法が無かったため,食肉と同様の衛生基準を確保する各種法令の整備が,1984年に行われました.
こうして獣血は一般にも利用されるようになり,例えば,血液成分を抽出して,微生物,特に酵母の大量培養や医薬品製造に利用したり,血液に凝固防止剤を加えて遠心分離で分けた血漿部分をプラズマと呼んで卵白と同様に製パン,麺類,水産練り製品,食肉製品など食品加工用に利用したり,有名なところでは,牛などの血清をワクチン製造や組織培養の培地に利用したり,ヘミンを抽出し,それを原料としたプロトポルフェリンナトリウムは肝疾患の治療に,幼牛血液抽出物質は組織呼吸賦活剤などに利用しています.
他にも血清アルブミンは外傷性ショックの処理液に,フイブリンは止血用剤とか硬膠膜代用や医薬用マイクロセルとして利用されています.
食材としてみると,血液は18〜20%の蛋白質を含んでおり,栄養価の面でも期待出来るものだったりします.
モンゴルでは,羊の解体時に内臓を取り出した羊の体内に溜め,集めた血液は「ザイダス」と言う腸詰めにして茹でて食されます.
ドイツ料理には豚血を混ぜたブルートヴルスト,つまり,ブラッドソーセージがあります.
有名なのはケニアからタンザニアに住んでいるマサイ族の人々で,彼らは毎朝飼養している牛の静脈から血を抜き,飲用していますし,他にも北ケニア中央部に住んでいるレンディーレ族も駱駝の鼻の静脈から血を抜いて飲用しています.
これら飲用の場合は,家畜は生きたままの状態で,抜き取った血液は掻き回して繊維部分を分離させて,もしくは乳を混ぜて飲用しています.
日本では沖縄に於いて,嘗て豚血は炒め物や汁に利用されていました.
血いりちー,あるいは血いりちゃーと呼ばれる豚血と肉と野菜の炒め煮や,うわーちーじると呼ばれる豚血汁は,豚を屠殺した日のごちそうでしたし,法事料理として準備される事もあったそうです.
基本的には自家用屠殺で賄いましたが,市場では洗面器に入れて売買されていた事もあり,それは腐敗しやすいため,塩と片栗を入れて蒸す方法が用いられていました.
血液を固めて保存する方法は,韓国の牛血を固めたスープで二日酔いに効くとされている「ソンジ」の素や,中国の広東省や広西チワン族自治区で売られている「猪紅」などがありました.
本土でも,マタギなど猟師は,獲った熊の解体時に精が付くというので生血を飲用したり,持参した握飯に吸わせて食べる他,腸に詰めて茹でる事もあり,栃木では「ソレソレ」,福島では「ネイガネツメ」,新潟では「ヤジ」などと称していました.
因みに,今は乾血は輸入されており,国産で賄える状態にないそうです.
処理費用にも拠りますが,出来ればこうした部分は国産で賄った方が良いのではないでしょうかね.
眠い人 ◆gQikaJHtf2,2010/03/26 23:32
◆◆◆軍馬
【質問】
軍馬についてなのですが,長時間の騎乗に耐える馬と,大重量に耐える馬と,足の速い馬はどれが軍馬として最適なのでしょうか?
また,第2次世界大戦のドイツ歩兵師団では5000頭以上の馬が輓馬として使われていたそうなのですが,この飼養はどうやっていたんでしょうか?
【回答】
基本的に軍馬というのは,乗馬(騎兵,機関銃,通信駄馬を含む),輓馬(車輌を検印する馬),駄馬(荷物を背に積む馬,輜重輓馬を含む)の3種に分かれます.
馬の負担力というのは,求める速度,距離,天候などによって変わりますが,乗馬は体重の25%を越えないのが適当であり,輓馬は270kgまでは牽くことが出来ます.
乗馬の場合,馬の歩度には常歩,速歩,駈足,襲歩などの種類があります.
常歩はの規定の速度は,1分間に100mで,最も疲労が少なく連続して行進に耐えられます.
速歩では,1分間に220mでこれが続くのは15分内外で30分以上続けるのは例外的とされています.
駈足は1分間に320m,更に伸長駈足は420m,襲歩は馬力の及ぶ限りの迅速な歩度となりますが,常歩,速歩と違って,長く続けることが出来ません.
馬の一日の行進速度は,騎兵連隊の行軍の場合1日に40km〜60km,中隊以下では60〜80km余が適度な歩度とされてます.
軍馬は5〜6歳で入営し,1.5年程度の調教により,軍馬として育成され,平均8.5年使用されます.
但し,場合によっては10年以上在籍する場合もあります.
騎兵,輓馬は,軍馬補充部で育て上げた馬を補充し,輓馬は民間から購買した馬を使用します.
因みに,年間の馬の補充は年間に総数の10%程度が行われます.
使えなくなった馬は,貸与が総数の6分の1,残りは民間に売却されることが多かったりします.
眠い人 ◆gQikaJHtf2 in 軍事板
青文字:加筆改修部分
歩兵師団で使われていた馬は,ほとんどが荷車や砲車をひくためのもので,我々が普通イメージする競走馬と違って脚も胴も太いがっしりした体型をしている.
飼料は高カロリーの燕麦や干草などで,ドイツ本国や占領地などの後背地から送られてくる.
(これに限らず,近代の軍隊では飼料や食糧は不安定な現地調達に頼らず,後背地から補給されるのが建前となっている.)
しかし実際には補給が間に合わず,独ソ戦では現地の農家から徴発したり,牧草地を見つけてそこに放したりといった手段で補った.
さらに不足した場合は農家の屋根の藁まで食べさせ,そのために戦争を通じて消化器疾患や飢え,関節炎などで大量の馬が死んでいる.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
近代迄は,馬を使用した軍隊が多かったわけです.
馬を使うと早く移動できるというのは解るのですが,
馬に乗って戦う=強い
というのが,どうにも腑に落ちません.
日本で言えば,武田騎馬軍団が有名ですけれど.
何で,「馬に乗って戦うと強い」のでしょうか?
高速移動できる,早く武器を振り下ろせるとかのメリットはあると思うのですが,槍とかからは逃げにくそうだし.
実際に騎士とかと戦ったことがないので,質問が支離滅裂になって申し訳ないです.
【回答】
諸説ある.
・馬に乗って,馬の走る速度で突撃してゆくので,徒歩の兵士にとっては体当たり状態…一方的にひき殺される状態,
また,馬の速度と,馬の体重の突進を徒歩の人間が止めるのは難しい=防御不可能かつ回避不可能
・馬に乗っての突撃は実際には,突撃してこられると徒歩の兵士は恐怖感を抱き,瓦解してしまうので,防御陣形が維持できなくなってしまい,簡単に敗走した
・馬にのって移動する速度は,徒歩で隊列を組んで方向転換するよりはるかに早く,側面から突撃されると,徒歩の歩兵は即座に方向転換ができないので陣形を崩されて全滅した
上に挙げたのは説の中の一部に過ぎないが,これらの理由が複数組み合わさって,騎兵・騎士・騎馬武者は歩兵より強かったとされている.
まあ,騎馬突撃への対策として,杭や柵を配置して突撃してくるのを防ぐとか,パイク・長槍を構えて密集するとかはあるんだけどね.
まともに騎馬突撃を食らうのは徒歩歩兵には脅威.
(馬の障害物競技では,柵などを馬に飛び越えさせるように訓練させるので,柵くらいなら実際のところ,馬は避けず怯えず克服して,まっすぐ飛び越える)
あと,騎兵の弱点としては突進を止められ,速度を殺されると囲まれて槍で突かれたり,鉤付きの武器で引き摺り下ろされたりって事かな.
とにかく包囲してフルボッコという対策もある.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
日本に鐙(あぶみ)が伝わったのはいつ頃ですか?
【回答】
増田精一「日本馬事文化の源流」芙蓉書房出版(1996)第八章二節「鐙の変遷」によると,多くの出土例からして鐙が古墳時代から使われていたことは確かであり,しかもすでに五世紀ごろからは,大陸や半島で一般に用いられていた輪鐙と並んで,同時代の大陸や半島では殆ど見られない(※)壺鐙という種類の鐙までもが使われていたという.
この壺鐙は沓の先端のみを挿入するタイプで,輪鐙のように馬上での踏ん張りが効かず,平地での戦闘には向かないが,他方,沓を離脱し易く,危険な時の脱出が容易で,どちらかというと初心者,あるいは山岳地向きらしい.
(※)その安全性もあってか,唐代においては婦女子用の鐙として用いられていた.
したがってこの壺鐙は日本で独自に発達したか,あるいは大陸で壺鐙に近いものを用いていた西南の蛮族から伝わった可能性が高く,日本の馬事文化の意外な古さと,その流入経路の複雑さを示す例らしい.
なおこの書には鐙の発生に関する専論も挙げられているので,興味があるのならここからさらに辿って,この問題に関する様々な文献を読んでみると良いと思う.
【質問】
鐙(あぶみ)の導入により,騎兵の戦術や運用はどう変化したか教えてください.
【回答】
鐙の発明と普及が戦術にもたらした影響は,騎馬訓練を容易にしたことと,それによる騎兵の一般兵科化(騎乗が特殊技能ではなく一般の兵科として使えるようになった),そして非騎馬民族でも,騎兵の大量装備が可能になったということがあります.
これは,火縄銃の発明と普及が戦術に与えた影響と似ているかと思われます.火縄銃の性能が戦術を変化させたのではなく,弓矢や石弓と比べ安価で訓練の容易な火縄銃が,戦争と軍隊の肥大化に追従した,という点において.
多くの騎馬民族が勢力拡大に役立てたのが弓矢と鐙ですが,騎乗したままで姿勢を正しく保って正確に矢を射るためには鐙が必須です.
鐙の上に足を乗せている状態と,馬の胴を両脚で挟むようにしてただまたがっているだけの状態と,それぞれの態勢で弓を引き絞って狙いを定め,矢を射ることを想像してみればいいでしょう.鐙なしでの馬上弓術には相当の熟練を要します.
馬上の射手にとって,鐙は間違いなくあったほうが良いものです.
弓兵を歩かせていては戦闘で機動力が確保できないし,弓が無くてはアウトレンジ攻撃は出来ない.
全ての騎兵が騎乗したままで弓を射ることができたからこそ,かつてのモンゴル族などは機動力の確保とアウトレンジ戦術とを両立させられたのだ,と言えます.
◆◆◆軍用犬
【質問】
軍用犬には,どんな任務がありますか?
【回答】
一口に軍用犬といっても慰安用からソリ犬まで幅広いが,もっとも一般的なのは警備で使う犬であり,警備のプロの使う犬とおなじようなもの.
具体的には歩哨が,犬の鋭い嗅覚や聴覚を使って侵入者などの異常を察知させたり,追跡に使ったりする.
まあ前線では危険が大きいので,後方の警備で使うのが普通だと思うが.
軍といえば直接戦う事だが実用性が低いので主たる用途ではない.
警察犬が腕などを噛むように訓練されるところを殺しにいかせる・・・といっても銃には勝てませんから.
有名なものにソ連の対戦車犬(自爆犬)があるけど失敗したし,外聞が悪いからそれっきりになった.
火薬の臭いを覚えさせて地雷処理に使うこともあるそうだ.
あとは前述のソリ犬としての輸送任務,救助犬,手紙を運ばせる伝令犬,マスコット,はたまた食糧などなど.
モッティ ◆uSDglizB3o in 軍事板
青文字:加筆改修部分
念のためマジレスすると,慰安というのは心を慰めること,娯楽全般を意味する.
歌も映画もお笑いも,全部慰安.
性欲処理を慰安と呼ぶのは,外聞が悪いから柔らかく言い換えているだけ.
娯楽の一種には違いないし.
マリリン・モンローが慰安に来たと言っても,セックスさせてくれるわけでは断じてない.
当然,慰安犬も.
犬をモフモフすると心が和むっしょ?
猫派もいるだろうが.
軍事板
青文字:加筆改修部分
マスコット担当@軍用犬
(画像掲示板より引用)
【質問】
この弾薬箱牽引犬って実戦で役に立つんですか?
なんだかちょっとした障害物でもすぐに転倒したりしそうなんですが.
【回答】
人間が匍匐前進で届けるよりかはマシって話.
例えば塹壕が掘りきれて居ない場合に,この子たちが溝をつたって弾丸の補充をかけるとか,塹壕の銃座と段列とを往復することで,阻止射撃が途切れないようにするとかの補助的に使うべきもの.
ついでに俺が読んだ事のある話だと,タコツボ掘って応戦中に伝令犬を本部と往復させて,手榴弾の補充をさせたことで支えきれたって話はあった.
上手くいったら荷物運びに当てるべき兵隊も応戦に使えるかも,って程度と思うのがよいかと.
ちなみにフランス軍は,第1次大戦で犬橇を山岳地帯で運用している.
ただ,上の写真と違って多頭引きで行っている.
【質問】
近代戦での軍用犬の始まりは?
【回答】
〔近代戦における〕軍用犬は,第一次大戦前にドイツが育成していた60頭を戦場で放し,連合軍を狼狽させたのが近代戦としては最初の投入例です.
フランスは20世紀に入ってからの育成ですが,これに後れを取り,1917年に漸く戦力化されました.
英国は全く準備していなかったので,軍用犬育成を俄に始め,中には捨て犬まで育成したそうです.
米国も参戦まで準備せず,1917年の参戦時には英仏から供給を受け,戦後,ドイツから多数のシェパードを輸入して育成し,やっと戦力化した状況で,明治初年にはどの国も手を付けていません.
日本の軍用犬は,第一次大戦後に,欧州戦線の戦訓から陸軍歩兵学校で飼育を始めた
のが最初です.
満州事変や上海事変で少数試用された軍用犬が活躍したので,本格的に育成をし始めました.
それ以前にさかのぼると,太田資正が日本史上初の軍用犬を使った武将であると言われています.
http://www.asahi-net.or.jp/~ue2n-kwgc/doukan.htm
を参照してください.
【質問】
軍用犬って,今はあまりいないんですか?
警備はもはや,犬のお呼びはなく,電子機器で十分なの?
【回答】
1.電子機器ではまだ不可能な,臭いによる「事後の追跡」ができる
2.所持品から危険物を嗅ぎ分けられる
さらに言うなら
3.不審人物を,必要なら無傷で取り押さえられる
など,電子機器にはできない様々な任務を軍用犬はこなせます.
ちなみに軍用地周辺でワンと吠えられたら,たちまち警備員がすっ飛んできて銃突き付けられますので,ご注意を(笑)
今,米軍岩国基地に出入りしてるのですが,ごくまれにひっかかる人がいるんですねー.
溶接棒の臭いが火薬によく似ているので,経験の浅い犬が間違えるとか,
家族への土産についうっかり花火を車に積んだままにしてたとか.
さすがに普通の業者で麻薬類が検知されることはまずないけど,火薬系は時たまやられます.
ゆうか ◆u8WC078ef5ch in 軍事板,2009/10/09(金)
青文字:加筆改修部分
今日のわんこ
faq100822dg.jpgへのリンク
faq100822dg2.jpgへのリンク
CRS@空挺軍 in mixi,2010年08月15日20:04
【質問】
警察犬と軍用犬は,どのように任務が異なるんですか?
よく採用される犬種に違いはありますか?
【回答】
警察犬は犯人を追い掛けるのが仕事です.
嗅覚で足跡をたどったりするスキルが重要です.
軍用犬は基地などに,不審人物を近づけさせないのが仕事です.
怪しい奴には吠えかかったり,飛びついて噛んだりしてソイツをやっつけます.
シェパードやドーベルマンは頭も鼻もよく,人の言うことを聞き獰猛なので,軍用犬にも警察犬にもよく使われます.
レトリーバーやコリーは頭も鼻もいいのですが,獰猛さに欠けてフレンドリー過ぎるので,警察犬にはよく採用されてますが,軍用犬としてはそれほど適していないようです.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
犬というのは元は群れを作る動物なわけですが,軍用犬が群れというか,数を揃えて投入されるることはあるのですか?
されないとしたらその理由は何ですか?
【回答】
たしか昔のローマ共和制のころ,戦闘犬を大量に群れで投入していたことがあるはず.
ソースは失念.
もっともローマの場合は,豚に油を塗って火をつけて敵陣めがけて放つといった逸話が,面白おかしく伝えられているので,どの程度まで運用されていたものかは知らない.
また,地雷犬は集団で投入されたようだが.
現代では,軍用に用いる犬の能力は嗅覚や聴覚が中心で,命令への従順性は必要だが,これらを利用するには群れは必要ない.
軍用犬が使われる状況は,警戒や伝令,負傷者の捜索など,いずれも単独ないし少数で行動する任務だ.
通常一人のハンドラーと組んでの警戒や捜索だから,一人が複数の犬を扱うのは難しいし必要もない.
ジャンプ漫画であった,猟犬が群れで熊を襲ったりするように(流れ星銀牙)人を襲う訓練したって,人にはガスや銃があるから,群れで軍用犬を運用してもあまり役に立たない.
軍事板
青文字:加筆改修部分
むしろイヌ同士で喧嘩したり,発情した雌イヌに興奮して使い物にならないこともある.
例外はソリ犬とかマスコットとか.
ロシアの軍艦は縁起物と称して,マスコットを十数匹搭載してたりする.
モッティ ◆uSDglizB3o in 軍事板
青文字:加筆改修部分
数を揃えてみました
faq14b01m02.jpg
faq14b01m.jpg
(画像掲示板より引用)
【質問】
「兵士に仔犬を与え,育てた後に殺させるといった事が,新兵訓練の一環として,多くの国の軍隊で行われている」
と言う話を聞いたのですが,ちょっと信じられません.
どなたか真偽の程教えて下さい.
この話の出所は某大学教授.講義で喋ってました.
どうも,軍隊を絶対悪と見なす「お茶の間平和主義」的思想の持ち主のようで,この話も自らの思想(と呼ぶのも憚られるが)のプロパガンダの一環のようです.
信じちゃった学生が,相当数いるのでは?と心配.
【回答】
少なくとも日本とアメリカでは,そのようなことは行われていません.
また,ヨーロッパ各国でも,そのような訓練は行われていないと考えて良いでしょう.
そのような訓練が行われていたら,動物保護団体が大騒ぎしているでしょうから(苦笑
部隊のペットとして飼っている話はよく聞きますが(笑
これは空自にいる友人から伝え聞いた話ですが,初等教育(でいいんだっけ?)が行われる基地には,犬が飼ってあり,その犬は三曹(二曹だっけ?)の階級が与えられている(事になっています).
んで,訓練に入って直ぐにその犬を紹介され,
「お前ら(の階級)は,この犬以下だ!」
と言われ,その後徹底的にしごかれるそうです(怖ッ
(犬ではなくアヒルである基地もおるそうな)
ただ,過去にはどこかの国ではやっていたかもしれません.
地雷犬なんて事例も存在しましたし.
また,日本でやったら問題になりそうですが,『ブラックホーク・ダウン』原作に,デルタフォースの衛生兵がレンジャーの衛生兵を速成教育するために,山羊を銃で撃ち,その治療をさせたという逸話が載っていました.
また,犬っていうと我々にとっては愛玩動物でしかありませんが,たとえば中東地域の一部に行けば,「不浄」とされる動物で嫌われ者,
ペットとして飼うなんてもってのほか,なんて地域もあります.
食料とする国もあるでしょう.
そういう国では,鶏育てて捌いて食うのと,何ら変わりないわけで.
訓練ではなく,食うためだけでしたら,昔(紀元前)から軍隊は家畜を連れ歩いていましたし,使い物にならなくなった軍馬とかも食料になりましたし.
逆に,ナチスのある武装親衛隊(SS)隊員が,「猫を虐待した」かどで厳罰を受けたという事例もあります.
理由は「親衛隊員としての名誉を汚す,非紳士的行為だ」
まぁ,仮にそんな訓練が実際に存在したとしても,有効性は全くないでしょう.
新兵を『躊躇無く殺せる』機械に仕立てる事を目的とした訓練は,アメリカでもベトナム戦争のころ研究されましたが,結局のところ薬物でも使うか,よほど徹底的に追い込まなければ,そういったことは訓練では身につかないというのが結論だったはずです.
(実戦ではあっさり身につくが)
しかも,実戦の場で仕方なく身についた人間と違って,訓練で身についた人間はその後,一般社会に復帰できないほど精神障害を煩ったという話ですし.
(実戦で身についた人間でも,社会復帰が困難な精神的障害を受けた人間も,もちろんたくさんいます.
ただ,訓練で身についた人間の方が,そうなる確率が高いということで)
日本中にごまんといる元自の人間を見れば.実際のところどうなのかは分かるでしょう.
その話は,「日本人は犬を愛玩動物と思っている」ということを前提に,「軍を悪者」と感傷的に訴えることが,多分に意識されてるように感じてしまふ.
932 名前:名無し三等兵 :03/05/13 12:22 ID:???
『亡国のイージス』で出てきたんだと思うけど,あれは小説だしね.
実際にやってるなんて,聞いたことないす.
965 名前:名無し三等兵 :03/05/13 15:41 ID:???
小説にはよく出てくるよな,その話.
西村寿行の「蒼茫の大地,滅ぶ」って小説にも陸自のレンジャーに,そういう訓練をさせてクビになった,というキャラクターが出てきてたっけ.
あと,最近評価急降下中(笑)の神浦元彰って人も,自衛隊でそういう訓練をしとると書いてたな.
ホントにそんなことやってるかどうかは謎だが(実際にやってたとしても,外部に洩れなきゃ分からんわけだし),何度も何度も小説のネタにされたりしてるとこをみると,日本の自衛隊かどうかはともかく,何処かの国のどこかの軍隊でやってたことは,あるんじゃなかろーか.
まぁ都市伝説の類というのが一番確実な線だと思うがの・・・.
967 名前:海の人 ◆STEELMK8LQ :03/05/13 16:17 ID:???
>965
そんなこと言い出したら,寿行タンは,なぜか普通の山の中で極秘訓練中(笑)の空挺隊員が,通りかかったアベックを襲って嫁さん強姦しちゃったりするし(^_^;
あの人は「白い尻が闇に浮かび上がって」いれば満足なんではないかと :-p
976 名前:ミリ屋哲 ◆qMwryStCos :03/05/13 18:39 ID:???
つーか,新兵さん教育の最中に,犬を飼う余裕なんて無いし.
ただ,レンジャー訓練で鶏を〆る訓練は,かつてやっていたと聞く.
これは純粋に,〆る技術の習得のため.
978 名前:名無し三等兵 :03/05/13 19:14 ID:???
>976
やっぱそういった訓練もあるのか.
確かに何の経験もないのに,いきなり逃げる鶏トッ捕まえるのは難しいだろうな.
ヤツら早いし,反撃してくるし.
軍事板,2003/05/13
青文字:加筆改修部分
29 :消印所沢 ◆z3kTlzXTZk :03/05/13 21:24 ID:???
犬を殺す訓練の件ですが,当方の知る限り,それに類した記述のある文献は一つあります.
ただし,それは正規軍ではありません.
記憶が曖昧なのですが,戦前の武装共産党あるいは非常時共産党だったか,戦後の連合赤軍のどちらかだったかで行われていた訓練です.
先ほどまでざっと再読してみましたが,共産党関係では記述を発見できませんでしたので,連合赤軍事件のほうだったかもしれません.
連合赤軍事件の史料は,当方は図書館で調べるしかありませんので,他に記憶しておられる方のレスを待ちたいと存じます.
30 :名無し三等兵:03/05/13 21:38 ID:???
>>29
非正規軍まで含めるのであれば,アフリカの少年兵のケースが有名だな.
親を目の前で殺して,少年に親の死体をバラバラにさせる.
31 :名無し三等兵:03/05/13 21:47 ID:???
>>30
ひぃぃぃ!
それって何年ごろの話?
33 :名無し三等兵:03/05/13 21:58 ID:???
>>31
恐ろしいことに21世紀の話です.
軍事板,2003/05/13
青文字:加筆改修部分
あなたなら,どれを食べる?
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(画像掲示板より引用)
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