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| つよい電波がでています |
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(画像掲示板より引用)
「数多久遠のブログ」◆(2013/03/28) レーダーのビーム幅とオシント
「数多久遠のブログ」◆(2013/03/31) レーダーとオシントについて補足
【質問】
「レーダー」の語源は?
【回答】
レーダーと言うのは電波による探知と測距(RAdio
Detecting And Ranging)の頭文字を取って造られた造語で,アメリカ軍のF・R・ファース中佐とS・タッカー中佐の2人の考案です.
英国では1943年までこの語を用いず,「Radio Locator」(電波標定機)という呼び方や,「RDF」という呼び方が用いられていました.
【質問】
レーダー開発は,破壊光線だかの研究をしている内に副産物的に生まれた,というのは本当でしょうか?
【回答】
イギリス軍(正確には防空科学調査委員会)が,
「よくSFとかで,マイクロ・ウェーブの殺人光線出てくるジャン.あんな感じの対空兵器って出来ないかね?」
と聞いたら,国立物理研究所の電波研究所所長ワトソン・ワット氏が,
「んなアホなモン出来ません.反射波を感知するのが関の山です」
と答えたのが開発のきっかけです.
【質問】
レーダーの電磁波を人に直接近距離で照射するとどうなりますか?
【回答】
照射された人が死ぬ可能性が有ります.
F-4Eの場合,レーダー作動中は機首前150mは接近禁止,無視して30mまで近づくと10秒以内に死にます.
マイクロ波の周波数にもよりますが,身体の水分が加熱されるためです.
頭,目玉,金玉など「たま」の付く部分の機能が失われると言われています.
【質問】
世界で初めて対水上見張りレーダーを実用化したのはどこの国で,いつのことですか?
【回答】
1904年,ドイツ人クリスチャン・ヒュルスマイヤーが英国で取得した特許に基づいて試作した,テレモービル・スコープが最初でしょう.
これは,火花放電で発生させた650MHzの連続波をマストのパラボラ反射器でビームとして送信し,別のマストに装着したパラボラ反射器で受信.
エコーの受信によって衝突するかもしれない物体の存在が,ブザーで警告でき,空中線の仰角を下げて足下の海面にビームを移し,エコーが消えた時点で船橋の高さを勘案して反射物までの距離を計算するもので,距離3km以内の船舶については有効であることを実証しています.
眠い人 ◆gQikaJHtf2 :軍事板,2005/08/20(土)
青文字:加筆改修部分
【質問】
ヨーロッパの戦闘艦に搭載される対空レーダーって,SPY-1のような固定式のAESAレーダーが少ないようにおもいます.
ヴィスビュー級のようなステルス艦にも,わざわざ高いところに三角錐のレドームがありますし,ほかにも丸いレドームを配置する防空システムが多いように感じます.
どうして,回転式のレーダーが多いのでしょうか?
ステルス性にも大きく寄与するとおもうのですが,何か理由があるのでしょうか?
【回答】
完全に固定式ですと,同じ規模だと回転式に比べどうしても3・4倍のアンテナが必要になります.
ちっさい艦じゃ無理で,どうしても艦の規模が大きく(そしてコストが高く)なります.
(大きな固定レーダー4枚も高い位置に置くと重心上昇も甚だしいし)
でもヨーロッパでも最近固定式MFR結構増えてますよ.(オランダ・ドイツ・スペイン・ノルウェー)
ちなみにSPY-1はAESAじゃありません.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
レーダー探知距離を大きくするには,どうすればいいか?
【回答】
アンテナの縦・横の寸法を大きくするのが一番.
以下,論拠.
ソナーに比べ,レーダーは遥かに「素直」だ,水を媒質とし,音の伝搬に頼るソナーと違い,レーダーは,水の約700分の1の密度しかない空気中を伝搬するからであろう.ソナーに比べると「理屈通り」に近い目標探知ができる.
そこで理屈の最初はレーダー方程式から,
「四方八方に発射されるレーダー電波のエネルギーは,1秒間に3×108mの速さで膨らむ風船玉の表面に乗って飛んでいく」
ということだ.
発射電力Pが距離Rに到達したとき,球の表面積は4πr²となっている.
したがって,エネルギー密度はP/4πr²となる.
そこに反射面積σを持った物体があると,σを乗じたエネルギーが反射され,それがまた1/4πr²で薄まりながらレーダーに戻っていく.
例えば3kwのレーダー出力は,1km先では
3000/4×π×1000kw/m²に薄まる.
ここで1m²の反射面積を持つ目標があると,上の値に1m²をかければよいから,円周率π=3.14とすると,反射エネルギーは約1万分の2.5wとなる.
この反射電力が再び4πr²分の1に薄まって,レーダーの入力になる.
という次第で,自由空間で受信機に戻る信号Sは,次の通りとなる.
S=(PG²λ²σ)/(4π)³r4
ただし
S:レーダー受信信号の電力
P:レーダー送信電力
G:アンテナ利得
λ:レーダー電波の波長
σ:目標のレーダー反射面積
r:レーダーから目標までの距離
S, Pの単位はワットならワット,kwならkwで揃える.
同様,λ,σ,rもmなど同じ単位で揃えて計算する.
アンテナ利得Gは無名数.四方八方(角度は4πラジアン)に広がる電波を水平角θ,垂直角σのビーム幅に閉じ込め,集中させた分が利得になると考えるから,
G=4π/θ・σ
となる.
そのθとσと,アンテナの横幅(術語で言えばaperture,横方向の『開口』)aと,縦方向の開口bとの間で,次の関係がある.
θ=λ/a
σ=λ/b
(この関係も三角法で簡単に出るが省略)
θもσも単位がラジアンで,
1ラジアン≒60度
の換算をすると,ビーム幅の見当がつく.
実際は,アンテナ製作の誤差などが入り,ビーム幅の近似値は
θ≒70×(λ/a)
σ≒70×(λ/b)
となる.
前に戻り,ラジアンで考えて,
G=4π/θ・σ=G=4π・a・b/λ²
から
G=4π/θ・σ=G=4π・(アンテナ開口面積A)/λ²
A=Gλ²/4π
となる.
レーダーにまで戻ってきた反射エネルギーは面積Aで吸収されることから,最初の式(レーダー方程式)は出てくる.
レーダーが探知しうる最小の信号値をSminとすると,探知できる距離Rmaxは,
Rmax=4√ PG²λ²σ/(4π)³Smin
となる.
この式を眺めると,遠距離探知のために出力Pを大きくすることと,受信感度σを小さくする(受信感度を良くする)こととは,同じ程度で利く.
それに対して,アンテナ利得は2乗で効果がある.
2倍の探知距離を得るには,レーダー出力は16倍にせねばならぬが,アンテナ利得(アンテナ面積)は4倍にすればいい.
電波の波長λも同様に2乗で利くが,λを大きくする(周波数を低くする)と,同じ開口面積Aのアンテナでは,レーダー電波のビーム幅が広くなり,アンテナ利得が小さくなる.簡単にλを大きくすることは考え物だ.
結局,アンテナの縦・横の寸法を大きくしてビーム幅を絞り,利得を上げるのが,レーダー探知距離を大きくするのには一番である.
軍艦のレーダー・アンテナが大型になるのは,一つにはこの理由による.
(藤木平八郎「艦載レーダー発達の歴史」 from 「世界の艦船」 Feb. '03)
レーダーの索敵範囲
(画像掲示板より引用)
【質問】
フレアはなぜレーダーに支障を来たさせるのか?
【回答】
フレアが電子装置に猛烈な雑音を生じさせたり,上層大気の荷電層の一部を(一時的に)消滅させて,電波が外の宇宙空間へ通過,地上へは反射されないようにしてしまうため.
以下引用.
太陽表面に,急に高温の水素が現れる,爆発のようなものが起こり,最高温度と思われる状態が,5~10分間続いて,半時間から1時間もするとすっかり消えてしまう.
これが「太陽面爆発(フレア)」である.
そこでは,局部的温度上昇と局部的撹乱増大が起こり,その結果,フレアのすぐ上にあるコロナ――太陽の希薄な大気――へ,強いエネルギーと多量の粒子を送り出す.
コロナの温度は上がり,影響を受けた場所では,紫外線やX線の発生が増大する.
多量の粒子の一部は,太陽風に言わば突風を起こし,このため,太陽のフレアは結果として陽子現象を起こすことになる.太陽風の主要な成分は陽子であるが,この密度が増大するのである.
フレアからの輻射と,それに続く荷電粒子の奔流は,地球の上層大気の状態を一変させる.
それは電子装置に猛烈な雑音を生じさせたり,上層大気の荷電層の一部を(一時的に)消滅させて,電波が外の宇宙空間へ通過,地上へは反射されないようにしてしまう.
すると電波の送信がすっかり途絶え,レーダーが役に立たなくなることもある.
特定の病的な瞬間に(例えば,戦争中とか戦争の脅威とかの最中に)レーダーが具合悪くなったり,電波で制御されるミサイルガコースを逸れたり,一切の通信が狂ったり途絶したりする可能性がある事は,重大な頭痛の種になりうるのである.
(Isaac Asimov 「わが惑星,そは汝のもの」,早川文庫,1979/1/31,p.36-40,抜粋要約)
「太陽が頭痛のタネなら,太陽を破壊してしまえばいいじゃない」(マリー・アントワネット談)
【質問】
「見えないレーダー」とは何か?
【回答】
ステルス性を持つレーダーのこと.
以下引用.
これは形容矛盾のように聞こえるかも知れないが,既に,ステルス性があることを売り文句にしているレーダーが現れている.オランダ,シグナール社の「スカウト」がそれである.
スカウトはXバンドを使用する航海/水上捜索レーダーで,アンテナ長は1.8m,重量は75kgである.
スカウトの特徴は非常に低出力であることで,極めて弱い電波を発信することにより,被探知を避けようとしている.スカウトの出力は1wとされ,さらに,改良型では0.001ワットにまで減少しているという.
これで水平線上のコルベット程度の大きさの目標を探知することができ,木製やFRP製のボートでも8浬の距離で探知する.
この性能は,シグナール社では,従来の平均出力20キロワット級のレーダーに匹敵するものとしている.〔略〕
そのため,スカウトのレーダー信号がESMシステムに探知される距離は,僅か1.5kmであるという.この距離はスカウトの探知距離よりも格段に短く,相手の艦を発見できるわけである.
スカウトのようにレーダーを低出力化することは,広域捜索レーダーや多機能レーダーの分野では,航海レーダーほど簡単ではないと思われるが,将来は周波数を頻繁に変化させたり,あるいは広い帯域に分散させるなどの方法でステルス化が図られていくのではないだろうか.
あるいは,射撃指揮システムなどでは自ら電波を発するアクティヴな探知手段であるレーダーと共に,パッシヴな探知手段,例えば赤外線センサーや光学センサーなどを組み合わせた方式が,広く用いられるようにあるかもしれない.
米海軍でも,ファランクスのベースライン2C改良では,対水上目標能力向上のため,従来のレーダーの他にピルキントン社製高解像度赤外線画像装置を付与することが含まれている.
(岡部いさく「艦載レーダーの最新動向」 from 「世界の艦船」 Feb. '03)
【質問】
フェースドアレイレーダーって何ですか?
【回答】
電波の方向を機械的にアンテナを動かすことではなく,電子的に発信・受信素子の位相を変えることで行うレーダー.
そのためには複数の(数百から数千)の素子を並べる必要があることから,フェイズド(位相)・アレイ(素子の列)・レーダーとなる.
軍事板
それができることで次のようなメリットがある.
機械的に動く部分がないので故障が飛躍的に少なくなる.
多数の素子のデータを重ね合わせるので,少しぐらい素子が壊れても十分使えるデータになる.
機械操作式レーダーは発振素子が一つなので,壊れたらその場で盲目になる※.
機械操作に比べてビームの動きが速く,振り方も好き放題.スキャンしながら一部を追尾,なんてこともできる.
大口径のレーダーに相当するので分解能が高い.
各素子が送受信するデータは通常デジタル化されているので,これらを処理することで多くの情報が得られる.
ルー
さらに,フェイズド・アレイ・レーダーは,単一の大きなレーダーとして使うこともできれば,
いくつかに分割して複数のレーダーとして使用することもできる.
これを利用してトラック・ワイル・スキャン,つまり素子の一部は通常の捜索を行い,別の一部は特定の区域を集中してリフレッシュレートの高い走査,追尾を行うことができる.
さらに最近では,送信側の位相をそろえて目標の一点に集中させることで,電子的な破壊(ミサイルのセンサーや敵レーダー,通信設備の破壊)を行う実験も行われている.
また,電子戦装備に頼らず,自機のフェイズド・アレイ・レーダーを使用して電子妨害を行う研究もなされている.
※
これは違う場合もあります.
アクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーとパッシブ・フェイズド・アレイ・レーダーがあって,パッシブのほうは発振器は一つだけ,
それをずらりと並べた位相器で位相をずらして放出するのです.
【質問】
フェイズド・アレイ・レーダーってパッシブとアクティブがあるけど,その二つの違いって何?
【回答】
フェーズド・アレイ・レーダーは,アレイ(配列)を成した素子で発振電波の位相(フェーズ)をコントロールする事で,ホイヘンスの原理ヨロシク波面を形成するんです.で,
・パッシブ:アレイを形成してるのがフェイズシフター(移相器),発振素子はひとつ進行波管とかあって,そこから導波管ネットワークで移相器まで分配している.
・アクティブ:アレイを形成しているのが発振素子
***
・進行波管 travelling wave tube
放送局や放送衛星の放送出力アンプにも使われている.強力なマイクロウェーブ増幅器.
テレビのブラウン管を細長く引き伸ばしたような一種の真空管で,片方の端に電子銃があり,電子線を発射する.
電子線の通り道に沿って螺旋のワイヤが巻いてある.
電子銃の側へ入力信号を入れると,ラセンのワイヤの反対側へ増幅された出力信号が出てくる.
トランジスター化の時代に最後に残ったアナログ真空管.
・パッシブ・フェーズド・アレイ・レーダー(現行方式)
進行波管から取り出したマイクロウェーブを導波ガイドで細かく分け,平面上に並べたフェライトコアの位相(フェイズ)シフターに導く.
位相シフターに加える電圧によって電波の位相が変化する.
位相が揃った方向の電波は強められ,逆位相の側は弱まる.
位相シフターを縦横のグループごことに順次制御することで電波を飛ばす方向を電子的に制御できる.(図解)
このタイプ(現行)のフェーズドアレイレーダーは電波発信源を制御しておらず,その途中経路を制御するだけなので,パッシブ(受動的)フェーズドアレイと呼ばれる.
・アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー(次世代方式)
ガリウム砒素チップを利用した発信/受信モジュールを多数平面上に配置し,このチップをコンピュータで制御することによって直接(アクティブ)フェーズドアレイを実現するもの.
発信効率が高まり,位相シフトもはるかに正確になるため,同規模のシステムで探知感度,精度が画期的に(理論的には1000倍程度)向上する.
課題は,ガリウム砒素素子の歩留まりが悪いためきわめて高価なこと.(将来は加速度的に価格が定価すると期待されているが)
また,平面に密集配置されたモジュールがいっせいに作動すると,発熱がひどいため,強力な冷却システムが必要となる.
http://www.ausairpower.net/aesa-intro.html
CRTモニターがパッシブ,液晶がアクティブという例えもありかな.
CRTでは電子管だけコントロールすればいいかわりに,切れたら全滅.細かい制御もできない.
液晶なら故障してもドット抜けですむし,全体を軽量化できる.各ドットが勝手に発信,受信できるから,制御の柔軟性も桁違い.
【質問】
イージス艦の乗組員は女の子が良く産まれる,という話を自衛隊板で見かけたことがありますが,これって本当の話なんですか?
事実なら,フェーズドアレイレーダーが人体に悪影響を与えてるんですか?
【回答】
よくある都市伝説です.
フェイズドアレイ・レーダーの出す電磁波は,従来型レーダーより遥かに微弱です.
フェイズドアレイレーダーに限らず,レーダーはすべて,電磁波を出しますが,電磁波は生殖器に悪影響を及ぼします.
しかし,結果から言えば,同程度のレンジ(有効測定距離)を持つ従来型のレーダーに比べて,フェイズドアレイレーダーの出す電磁波は,トータルでずっと弱いです.
戦闘機の非フェイズドアレイ・レーダーにて最大の範囲をスキャンすると,一回で2ケタ秒の時間が必要でしたが,フェイズドアレイ・レーダーは物理的にレーダーを動かす必要が無い事から――他に,分析能力がより優れているというのも有る――,同じ範囲の一回のスキャンは一瞬で終わります.
また,一般にフェイズドアレイ・レーダーは,時間当たりでのレーダーを出力する長さもより短いです.
(これはフェイズドアレイ自体の技術とは違う所でしょうが)
フェイズドアレイレーダー(というか新しいレーダーは),目標に浴びせるビームの量がずっと少なくなっている,という大きな優位性が有ります.
つまり,敵が
「レーダーのビームを浴びせられている」
という事にずっと気が付き難くなり,またこちらの存在や位置自体も補足されにくいのです.
かつてSPA!で,「自衛隊の装備が使えない」というスタンスの特集で,イージス艦が肝心のレーダーを使う際に,甲板から船内に退避しなければならない,という事を上げ(これは事実ですが),いかにもこれが欠陥であるかのように表現していましたが,これはナンセンス極まりません.
イージス艦がレーダーをアクティブで使う場合,甲板から退避しなければならないのは,どこの国のイージス艦でも同じ事です.
また,イージス艦はレーダー以外にも多くの強力なセンサー(レーザー,カメラ,ソナー等)を装備しています.
ゆえにレーダーを使うような状況では,甲板上で人間がワッチ(見張り)をする必要性は皆無と言って良いでしょう.
それに,たいていイージス艦は後ろのVLS等だけでなく,全部にも5インチ程度の砲が有る事が多いですから,このような兵装を使用する場合も甲板から退避しなければならないでしょう.
艦内の人員がどれだけ電磁波を浴びるかという具体的なデータは有りませんが,理論的にごくごく微弱であると言えます.
波長が長いAM放送(波長は訳数百メートル)は浸透力が高いために,送信所の鉄筋コンクリの中でも電磁波によって勝手に蛍光灯が点灯したりします.
しかし.レーダーは波長はが極めて短く(ミリメートルから数メートル程度)非常に反射し易く,浸透力も極めて弱いです.
携帯を例にしましょう.
家庭用のアルミホイルの厚さは僅か0.015mm程度です.
しかしアルミホイルの箱に携帯電話を入れると,アンテナが3本立っていても一発で圏外になってしまいます.
(注:近頃の携帯の多くは,外に出ているアンテナの他に内部にもう一つアンテナが有るのが多いので,外部アンテナだけでなく,本体自体を中に入れないと効果が分からない場合が多いです)
レーダーの運用&整備に携わっている隊員の間では,
「女の子しか生まれなくなる」
という噂が流れてはいますが,それを裏付ける統計はないようです.
それどころか,実はこの手の噂は,実は大昔から有るんです.
イージス艦以前には,放送局や高出力のアマチュア無線や放送の中継用マイクロ波施設などの近辺で,というもの.
今でもこのような噂は有ります.
しかし,多くの国の調査によっても,このような事を裏付けるデータが得られませんでした.
もし現実にそのような事があったら,隠し様が無く,大問題になっているはずです.
余談ですが,ロシア(旧ソ連)の電磁波の規制は西側に比べてずっと強い,と主張する方がいます(西側を批判するために)
これ自体は本当です.
しかし,これは「軍以外のみ」の規制です.
つまりこれは,人間への電磁波への害を防ぐため,というより,軍事的には電磁波のノイズは少ないほうが良いからという理由や,民間での電波の利用自体が厳しくするという理由で,西側よりも厳しい規制となっていると考えるのが普通でしょう.
ロシア(旧ソ連)軍の電波妨害の出力が,一般に西側に比べて非常に強力だという事や――旧東側は広帯域を高出力で電波妨害する傾向が強い――,原子力発電所や原子力船の放射能規制が,西側と比べ物にならないくらい甘い事を考えれば,おのずと解る事でしょう.
(キルロイ ◆dtIofpVHHg 他)
【質問】
LANTIRNとFLIRと合成開口レーダーの違いが分かりません.
【回答】
LANTIRN(Low Altitude Navigation and Targeting Infrared for Night)は商品名.
強いて訳せば「低高度航法標定赤外線夜間装置」.
http://www.globalsecurity.org/military/systems/munitions/lantirn.htm
FLIR(Forward Looking InfraRed)すなわち「前方監視赤外線装置」は,飛行中に前を見るための赤外線画像装置の総称.
上のページにも見られるように,LANTIRNの中にもFLIRが入っている.
合成開口レーダー(Systhetic Aperture Radar)略してSARは,その名の通りレーダーの一種で,まあ単純化して言えば, 飛びながら横方向に向けて放射したレーダーの電波を合成して,高い精度で地表を見る仕組み.
偵察や目標捜索に使われる.
軍事板,2005/01/11
青文字:加筆改修部分
【質問】
レーダーやその他のセンサーを,被弾から防御する方法が研究されていたら教えてください.
【回答】
装甲車両の火器管制用光学装置は,7.62mm弾や榴弾片,衝撃に耐えるよう,
カバーや防弾ガラスで防御されています.
同じく,装甲車両のアクティブ防御装置に使われるマイクロ波レーダーなども,同様の防御がされている,とメーカーは主張しています.
本当にそこまでの耐弾性があるか疑問視されてはいますが.
航空機や艦船となると,本体の被弾の方が問題になるので,センサーに特別な防御方法は施されていません.
とはいえ,常識的な強化はなされています.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
レーダーを使うと対レーダー・ミサイルで破壊されるそうですが,レーダーはどのようにして保護されているんですか?
また,安全な運用法はありますか?
【回答】
攻撃に弱いレーダーアンテナを剥き出しにしなくてはいけない,というのは昔からずっと解決されていないレーダーの弱点の一つです.
レーダーに「装甲」を施すと,電波が遠くに飛ばなくなっちゃうので,装甲のような形でレーダーを保護するのは難しいです.
よくある「レーダー・ドーム」は風雨からレーダーを守るためのもの.
防護効果は殆どありません.
で,対レーダーミサイル(ARM)に対しては,自分の発振するレーダー電波の周波数を微妙に変える事で対処します.
例えば,76Mhz(この数字は説明用のいい加減なもなので当てにしないように)でロックオンされたら,76.5Mhzに変える,とか.
究極的にはレーダーの発振を一時的に止めることか.
もちろん,レーダー使えなくなりますけど.
もっとも,ミサイルの方もロックオン時の周波数を幅広くとってたり(76Mhzでロックオンしたら,数値の幅を75~77Mhzにとっておくとか),電波だけでなく目標の方位と距離にもロックオンしたり,といった対策法を取ったりもします.
このように,電子戦(ハードキルも含む)は狐と狸の化かしあいとなります.
必然,技術が高く相手の情報を多く持っている方が有利です.
対レーダー・ミサイルといえども,相手の知らないバンドを用意する,周波数ホッピング,とりあえず発振中止,間欠発振,複数アンテナ切り替え,ダミー放射源用意と色々対抗手段は考えれます.
しかしそれには,相手のシーカーの特性等の知ってる事が大事だったり,高コストだったり,運用に制限があったりします.
そういう事を含めて,技術と情報と金の優位が重要なのです.
軍事板,2005/03/11
青文字:加筆改修部分
【質問】
Xバンド以外の周波数が「ありえない」理由で,周波数配当の都合以外の理由は何ですか?
【回答】
「ありえない」って訳じゃない.無駄に大掛かりになるだけ.
アンテナには「指向性」ってのもあるの.そして,ソレも大きさに比例する訳.
無指向のアンテナが小さく作れる波長の短い電波は,指向性の高いパラボラ・アンテナの径も小さく出来る.
つまり,Xバンドは砲の射程程度の距離で指向性の高い(分解能の高い)アンテナを作るのに適してる訳だ.
分解能は波長に逆比例.
長波長で分解能を得ようとすると,単にアンテナをデカくするぐらいではすまず,合成開口を作るぐらいの大規模な受信解析システムになるし,それでも短波長には適わない.
長波長の長所は到達距離が大きいことだが,届きもしない距離の高精度の情報を得るために,艦隊全部が合成開口レーダーと化して,仲良く一列に並ばないといけないってのもつらいでしょ.
それも見通し線内での話であり,それを超えると電離層の反射,地表の反射という混乱要因が入って,どうやっても高精度の情報は得られなくなる.
ジンダリーの超水平線レーダーあたりが限界だし,あれはとんでもない規模のシステム.
それに,Xバンド以下になって初めて,砲弾サイズのプロジェクタイルの「追跡」が可能になる.
【質問】
最近のレーダーだと,探知した航空機や艦船についてどのくらいまで分かるんでしょう?
航空機だと機種まで分かりますか?
艦船の場合は何級の何番艦かまで分かるんですか?
それと,調べによるとレーダーの探知性能は
早期警戒機>艦船>戦闘機や攻撃機
みたいな感じらしいですが,これで合ってますか?
【回答】
距離とレーダーの種類によります.
上等なレーダーでご機嫌な距離なら,機体のおおよそのサイズが分かり,うまく行くと垂直尾翼の数が分かり,エンジンのタービンブレードの数が分かるので,機種をかなりの確率で推定することができます.
艦船の場合,これも同様のやらせ条件だとおおよそのサイズ,マストの数,上部構造の輪郭,敵の艦載レーダーの搭載数,それぞれの回転数などが分かりますので,これまたかなりの確率で艦種の推定が可能です.
何番艦ってのは特殊仕様でない限りダメでしょ.
探知性能が探知距離という意味でしたら,当然高空にいる早期警戒機がベストです.
そこから先はレーダー自身の性能(≒重さ,サイズ,消費電力)と高度のバランスになるので,小型機と艦船ではなんとも言えません.対象が航空機か艦船かでも変わります.
場合によっては,早期警戒機よりも艦載レーダーの方が艦船に対する探知性能(距離,詳細)に優れることも
あるでしょう.
特に艦船対象の場合はISAR(逆開口合成レーダー)機能の有無が問題になりますから.
【質問】
ECMとは,どのような原理で相手の電子機器を妨害するんでしょうか?
ECCMに周波数ホッピングなどが使われるということは,ECMは特定の周波数に大出力の電波を流すのですか?
それ以外の方法で妨害電波を出す方法はあるのですか?
また,もし大出力の電波を出すのなら,ECMとステルスは並立できないのでしょうか.
ECMが必要な場合は,すでに相手に発見されているのでステルス性はいらないんですか?
【回答】
「ECMとは?」,スゴく荒っぽくまとめます.
1.全波長にわたって電波雑音を出す.
相手が何を使っていようと,とにかくノイズで埋もれさす.
予備知識なしで使えるが,大電力が必要.
2.相手の使っている波長も偏波も変調方式も分かっている場合.
それに合わせてバッチリ重ねてつぶす.
あるいはずらして出して誤った結果を与える.
小電力で可能.
予備知識必須.
3.1.と2.の中間.
ある程度波長が分かっているなどの場合,そこに集中して適当にノイズを流す.
どれも結果として画面が濁り(あるいはセンサーの感度が落ち),目標を特定しにくくなる.
そこに目標がステルス性で最初から小さければ,なおさら見つけにくくなる.
ECMはステルス性を助ける.
ただしECM自身は電波発信なので発信源を目標にされる可能性は常にある.
通常は射程外に発信源を置くが,最近は妨害目標の場所を特定し指向波で妨害することで探知されにくいECMも可能になってきている.
軍事板,2005/02/19
青文字:加筆改修部分
【質問】
ECMは効くか効かないかのどちらかですか?
それとも,効きが弱いと,ある程度レーダーを使えるという状態になりますか?
(補給屋 ◆ZA3g9myNTI)
【回答】
後者です.
細かいこと言い出すときりがないけど,基本的にはラジオ聞くのにノイズ乗せられる感じ.
だからラジオ電波が十分強ければ,少々ノイズ乗せても聞き取れるし,ノイズ(ECM)が超強力なら聞き取れなくなる.
また,波長が違ってたら,いくら強力なノイズでも無意味だし,変調方式が違ったら,(AMとFMみたいに)ECMの効力は激減.
波長も変調方式も分からずに,それでも妨害しようと思ったら,全波長帯にばりばりにノイズ流す必要があるので,電力大変.
まあ,これをレーダーなりなんなりに置き換えて考えればいいわけです.足りないECMパワーを補うには,
1. レーダーの波長や変調方式を正確に知って,きっちり合わせたECMをかませる.
2. レーダー受信機の位置を正確に知って,そこに指向性を持たせたECMを集中する.
3. なるべく近づく
といった方法を取ります.
現在のところ,指向性を利用したECMはあまりありませんが,米の最新型機載レーダー,AESA(アクティブ電子走査レーダー)では,今後AESA独特のフレキシビリティと指向性を利用して敵レーダーに妨害電波を指向させることで,小電力でも効果的なECMを行うことが期待されています.
ただ,これは自機の行動範囲にあるレーダーを特定し,ピンポイントで妨害するのには適していますが,専用の電子戦機の場合は広範囲のレーダーすべてを無効化する必要があるため,指向性はあまり意味がない,むしろ邪魔になる場合が多いようです.今後AESAなどが高度化すれば多数のレーダーを同時に指向,妨害することが
可能になるかもしれませんが,一方相手もバイポーラーレーダーなどを実用化してくると,これは困難になります.
レーダーの位置は送信機から発振されているレーダー電波から辿るわけですが,受信機を送信機と別の場所に置くバイポーラー,マルチポーラー,という方法があり,この場合は送信場所に妨害電波を指向させても全く意味がありません.
電子戦は常にイタチごっこです.
【質問】
エンジン・ファンにレーダー波が反射した時の周波数特徴を利用して相手の機種を判別する,NCTRという技術について教えてください.
【回答】
米軍だけでなく,各国が開発,使用しています.
また艦船のレーダーにも搭載されています.
Automatic Target Classificationというのが一般的な名称のようです.
私が持っているもっとも詳細な資料はMilitaryTechnology誌,2005年7月号(p.91-96).
反射波のドップラー偏位の時間的分布,偏位幅分布を解析して回転翼機,固定翼機,タービンブレードの数などを得,これをデータベースと比較して機種を割り出すようです.
これに加えて反射波の幅からおおよそのサイズを割り出す,距離と反射波強度からRCSを割り出すなどして全体像を得るようです.
残念ながらまとまった単行本は知りません.
Militaly Technology誌
Jane's
にも多分載ってると思いますが,持ってないので定かでない.
7万円以上しますから,外すと痛いかも.
軍事板,2006/01/05(木)
青文字:加筆改修部分
【質問】
レーダー・サイトって値段はいくら?
【回答】
参考になるかどうか分かりませんが,
http://www.abqjournal.com/news/drugs/1drug4-13.htm
を見ると,10年ほど前にメキシコが密輸入機発見用に設置しようとしたレーダー・サイトは,冷戦中に米がカナダとアラスカに設置したものと類似のシステムですが,有効距離2百マイルほど.建設コストは50億円ほどとなっています.
レーダーといっても周波数やシステム(単一なのか複数なのかなど),ネットワークなどで価格はピンキリでしょうし,周辺警護の必要性や維持費などいろいろあるでしょうが,一応の目安にはなると思います.
【質問】
前に巡視船の機銃の命中精度がすごいとか,歩兵戦闘車の機関砲の精度は狙撃兵のそれよりも優れているというレスを見たのですが,レーダーやFCS運用と人間の腕ならば,どちらが精度としては優れているのでしょうか?
レーダーやFCS運用が優れているから,OICWみたいにレーザー測距装置なんかの機能をつける傾向に向かうのかなと.
【回答】
機械の方が精度では絶対的に優れる.
設計や工作精度に拠るが,ちゃんと作られて調整された機械の出せる精度には人間は勝てない.
でも,人間は経験とカンで,機械の出せる精度を上回る結果を出せたりもする.
重要なのは,人間個人の能力は時間を(それこそ10年単位の時間を)掛けて培うか,生来の天才でないと発揮されないが,機械は(ちゃんと動くのであれば)誰が扱っても一定のレベルを安定して出せる,というメリットがある.
元の質問に立ち返って答えるなら,手動で操作する40mm機関砲とFCSのついてる40mm機関砲だったら
「この道30年機関砲一筋」の超ベテランか「128年に一度の逸材,40mm機関砲の那須与一」なんて人が扱うのでもない限りFCSのついてる方の圧勝.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問 kérdés】
MIMOレーダーって何?
【回答 válasz】
技本電子装備研究所は現在開発中の,長距離からステルス機を探知出来るMIMOレーダーのフライト試験を,2015年06月から開始する事になりました.
「MIMOレーダー」のフライト試験まもなく開始 ステルス機の探知が可能に:朝雲新聞社
MIMOとは送信機と受信機が複数のアンテナで通信技術を向上させるものです.
そのMIMOの技術をレーダーに転用する事により,ステルス機の長距離からの探知が可能になります.
MIMO - Wikipedia
通常のレーダーはレーダー波を敵機に飛ばし,敵機の機体に反射したレーダー波を受信する事で探知しますが,形状制御技術を有するステルス機の場合,反射したレーダー波を発信したレーダーではなく別の方向に飛ばす事で,レーダーの探知を難しくします
(あくまでもレーダーに写らないわけではない).
しかしこのMIMOは複数のアンテナで送受信しますから,発信したレーダー波を別の方角に反射させても別の受信機が受信出来ますので,長距離からでも探知は可能です.
なお,ステルス機は近距離だとレーダーに写ります.
ただ,RAM(電波吸収体)で製造された機体だとレーダー波が吸収されて探知が難しくなる可能性もありますが,RAMはメンテナンスにコストがかかるので,形状制御技術ではステルス性が維持出来ない場所にしか用いられていません.
このため,ステルス機の探知は形状制御技術に頼らざるを得ないというのが実情です.
日本のMIMOレーダーの他にも,中国やロシアでもステルス機の長距離からの探知が可能なレーダーの開発が行われています.
また,やはりUHF帯によるレーダー波からステルス機の長距離からの探知が可能なE-2Dの,空自への売却案件に関するFMS通告が米議会になされました.
その額は4機で17憶ドルで,単純計算だと1機531億円となります.
Congress Notified of Potential $1.7B E-2D Advanced Hawkeye Sale to Japan - USNI News
航空宇宙ビジネス短信・T2 軍事航空,ISR,無人機,安全保障,最新技術: ★航空自衛隊>E-2D売却案件が米議会に通告された 4機,総額17億ドル
ステルス性万能主義を主張し,巡航ミサイルもステルス性や高速化(?)で迎撃出来ないという人もいるようですが,かように長距離からのステルス探知技術が進行しているとなると,ステルス性の優位性は完全に失われたのかも知れません.
ねらっずーり in mixi, 2015年06月07日
青文字:加筆改修部分
【質問】
スペクトラム拡散レーダーってどんなものですか?
これが配備されるとステルスでも探知できるって本当ですか?
【回答】
文字通り,複数の波長にわたって走査するレーダーです.
一番の特長はむしろ,探知されにくいことです.
一定の波長で強い電波を発信し続けることがないので.このためF-22,F-35のようなステルス機が使用するレーダーとして採用されています.
また,同時に多数の波長域で走査を行うことも可能です.むしろそっちがメインだったと思います.
その波長域間でのウェイトを変えることもできるようです.
さらに,特定の波長に絞った妨害には強いので,ECM下でも能力が落ちにくいのも利点です.
ステルス機探知が得意と言うほどではありませんが,スキャンする波長のどれかが,ステルス機の弱点(電波反射対策が不十分)に一致すると,その部分で反射が得られるので,一定の波長のものより有利ではあるでしょう.
実際には完璧なステルスなど不可能ですから,上手にソフトを組み,臨機応変な波長変更を行えば,かなり使えるのかも知れません.
ステルス機対策のレーダーとしては,むしろ長波長レーダーが注目されており,逆に米は長波長レーダー対策のECMの開発を進めています.
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