c

「軍事板常見問題&良レス回収機構」准トップ・ページへ戻る

◆◆◆◆◆安全性
<◆◆◆◆舶用炉(原子力機関)
<◆◆◆機関
<◆◆艦艇メカニズム
<◆海軍
兵器FAQ目次


 【link】

「47NEWS」◯(2012/08/15)猛暑で米国の原発停止 海水温上昇,冷却に使えず

「VOR」◆(2012/08/03)修道女が原因でアメリカの原子炉,一時停止


 【質問】
 原子炉は安全なのですか?

 【回答】
 柴田俊一によれば,絶対安全であるという言い方も,また,原発をやたら危険視する意見も,共に少しおかしいという.
 なぜなら「安全」は本来,絶えず努力することによってのみ得られるものであって,「これで安全」という,横綱のようにハッキリした地位のようなものがあるわけではないからだという.
 特に原子炉のように歴史が比較的浅く,技術経験の蓄積が十分ではない分野では,そういう地位に近いところに達するだけでも,色々な失敗を重ねながら努力しておくことが必要と述べられている.

 また,彼は以下のようにも述べている.

----------------------------------------------------
 〔現役高校生による臨界実験体験会の〕そのあと,質疑応答と懇談会を,かなり時間をかけて行う.
 原子炉は安全ですか,という質問はたいていの場合出る.
 筆者は,ものすごい力のある原子力が,本来安全であるわけはない,一所懸命努力して安全を保っている,いっそう安全に,また,性能を良くするのは,諸君の世代の責任だ,と話している.
 安全だからやるのではなく,必要だからやるのだ.
 もし原子力を使わないなら,他の方法を早く開発する必要がある.
 当分は頼れる見込みがないが,研究は続けなければならない.
 何も努力しないなら,いざというとき,前の戦争と同じ道をたどることになる,と話している.

----------------------『原子炉お節介学入門』下巻(柴田俊一著,一宮事務所,2000.11.30),p.135
――――――
 筆者は,事故は全て人的要因によると極言してもよい,と考えている.
 「安全になっている」のではなく,「安全にできるようになっている」のであって,人間が責任を持って処置することで初めて安全は保証されるのである.

 20年以上も,一日何回も点検して,「異常なし」ばかりの印を付けていると,つい,もうこの点検は不要ではないか,という議論が出ることさえある.
 しかし,20年1日目に異常が発生することもある.
 特製品ほどそういうことが起こり易い.
 また,その警報はその部分の異常だけでなく,関連したところで発生した異常をキャッチするという,補完の役割のため_設けられていることもある.

 上述の人間の安全動作は,こういう役割も前もってのみこんでいるほうが,的確に果たせる.
 また,色々の方法のうち何に重点を置き,何を軽く見て設計したか,従ってそのために生じた弱点は何かなども理解していることが望ましい.

――――――同上,p.94

--------------------------
どんなに工夫しても,機器,設備だけで全てがカバーできるわけではない.
 重要なことはむしろ,人間の生の判断で,指導や緊急時の操作が的確に行われなければならないということである.
 紙に書き,口で言うことに間違いはないように見えたとしても,それだけで何百万分の1という小さな確率で発生する事故のきっかけというべき事態を捕まえて,的確に対応できるとは限らない.
 々情報・データがあっても,これらを基にしてどのように事態を判断し,対処するかが問題であって,当事者には熱心にして弾力的な姿勢と能力が望まれる.

--------------------------『原子炉お節介学入門』上巻(柴田俊一著,一宮事務所,2000.11),p.67-68

--------------------------------------------
 一つの警報が出て,確認のボタンを押すと,後の警報に対しては動作しないという,愚かな(と敢えて言う)設計の原子炉の話を,つい最近聞いた.
 おそらく,原子炉の大事が一つくらいの異常では起こらず,「たまたま」複数の異常が重なって起こるという過去の事例を知らず,実物の原子炉に触れて具体的に考える機会のなかった人が設計したものとお見受けした.
 原子炉の異常は,放っておくと他の部分に波及することが多く,異常の過程全体を見て初めて,事態をより正確に把握できるものであって,単発の警報や報告で事柄は解決するものではない.

----------------------『新原子炉お節介学入門』(柴田俊一著,一宮事務所,2005.3.25),p.54

 問題は,そういう人員が常に用意できるとは限らない,というところではないだろうか?と,本項目筆者は愚考する次第.

 【参考ページ】
『原子炉お節介学入門』上巻(柴田俊一著,一宮事務所,2000.11),p.60-62,66-68

【ぐんじさんぎょう】,2010/07/03 21:00
を加筆改修

▼> 一つの警報が出て,確認のボタンを押すと,〜〜

 これについても思うところはたくさんあるのですが,取り敢えず保留にさせて下さい.
 ただ,柴田先生が仰るほど物事は単純ではなく,運転員もそれほど無能ではない(ように,厳しく訓練されている)とだけは,お話ししておきたいと考えます.
 少なくとも発電用軽水炉で,それほど馬鹿な対応をするようであれば,上司から即座にはり倒されるのですが,柴田先生は実際をご存じないのだろうなぁ.

へぼ担当 in mixi,2010年12月27日 01:25


 【質問】
 確率論的安全評価手法とは?

 【回答】
 MITのラムスッセン教授(当時)が,イベント・ツリーとフォールト・ツリーという手法を使って,原発周辺の公衆のリスクを,体系的,定量的に評価したもの.
 それによれば,
1) 原子力発電によるリスクは,他の社会活動によって受けるリスクに比べて,遥かに小さい
2) 小さな故障が積み重なって大事故になる可能性がある
という.

種々の原因による,早期死亡の個人のリスク
(1969年アメリカ平均)
事故のタイプ 1969年の全数 個人のリスクの早期死亡の
大約の確率/年※1
自動車 55791 3×10**(-4)
墜落 17827 9×10**(-5)
火災&火傷 7451 4×10**(-5)
溺死 6181 3×10**(-5)
毒物 4516 2×10**(-5)
火器 2309 1×10**(-5)
機械(1968) 2054 1×10**(-5)
水上交通 1743 9×10**(-6)
航空機 1778 9×10**(-6)
落下物 1271 6×10**(-6)
感電 1148 6×10**(-6)
鉄道 884 4×10**(-6)
落雷 160 5×10**(-7)
トルネード 118※2 4×10**(-7)
ハリケーン 90※3 4×10**(-7)
その他 8695 4×10**(-5)
全事故 115000 6×10**(-4)
原子炉事故
(原子炉100基)
--- 2×10**(-10)※4

※1:特記されたもの以外,全米人口に基く
※2:1953-1971年平均
※3:1901-1972年平均
※4:リスクの存在する1500万人の人口に基く
(原出典:WASH-1400)

 【参考ページ】
『わかりやすい原子力発電の基礎知識』(榎本聰明著,オーム社,1996.3.30),p.108-109


 【質問】
 原子力潜水艦や原子力空母が撃沈されると,核爆発が起きるのでしょうか?

 【回答】
 理論上,炉の分解は起こりえます.
 しかし設計と運用上では,炉の分解は起こらないようにしています.

 「核爆発」と呼ばれる状態は,U235もしくはPu239の核分裂連鎖反応が,『即発(超)臨界』と呼ばれる暴走状態になって初めて起こります. 具体的な説明を省きますが,この状態を引き起こすには非常に高い純度の核燃料を一箇所に固めなければなりません.

 米英のSSN・SSBN・CVNの原子炉には,97.3%(下記サイトによれば)U235という兵器級の核燃料が使われてます(兵器級の核燃料という表現は世界の艦艇などにも見られます).
http://npc.sarov.ru/english/digest/42001/appendix5.html
 これは,燃料交換を減らす為です.また,原子炉をスクラム(PWRでは「トリップ」との用語の方が主流のようです)させた後,すぐ再起動するためにはキセノンやサマリニウムの蓄積があり,かなりの余剰反応度が必要ということも影響していると思われます.
 原子炉が複数ある原子力空母ならともかく,1基しかない原子力潜水艦ではその要素は大きいと考えます.あまり知られていませんが,原子炉はいったん止めると,直後の再起動はなかなか難しいものです.

 おかげでヴァージニア級などは,30年と言われるサービスライフ中での燃料交換(<=外殻を切り取ったり大変)を無しにしたと言われてます.
(なお,昨今軍事用の核燃料も低濃縮化が進められているようですが,燃料交換の頻度を変えずに,低濃縮化を進めるためには,ある方法が必要となります.
 ただし,これは機微情報にもなりかねませんので,これ以上の言及は避けたいと思います)

 過去に反応度事故※を起こした原子炉は幾つか有ります.(EBR-1やSL-1,チェルノブイリも)
 海洋で事故を起こした原潜がそういう事故を起こした例は知られてませんが,「原理的に起こりえない」とは言えないでしょう.
 言えないでしょうが,しかし――軍事用の原子炉では実情がよく分かりませんが,一般的な話として――人的運用の改善などのソフトウェアだけの対策では防ぎきれるとは常識的に思えません.
 しかし,SL-1の事故などを契機とした様々な実験により,反応度事故のメカニズムはほぼ特定されているため,ワンロッドスタックマージンなど民生用原子炉で行われているハードウェア設計段階からの対策は後付でも実施されていると推測され,反応度事故は防げるものと考えます.
(ただ,残念ながら実施されているとのソースはどうしても発見できませんが.)

 もし,原子炉が戦闘などで致命的な破壊を蒙る場合は,核分裂連鎖反応を抑制する「制御棒」を突っ込んで反応を強制停止させます.これが「スクラム」.
 炉には手動および自動で動作する「緊急停止装置」が有ります.
 これが正しく動作すれば,炉の分解の可能性ほとんど無いでしょう.

 緊急停止をしても分解がおこりうるという例外としては,大出力時に冷却系に異常が発生した場合等.
 これは余剰反応度(事故時投入反応度)をどれだけ抱えているか,ということによります.
 たとえ原子炉がスクラム(トリップ)したとしても,そのときまでに投入された反応度で,核燃料に多量の熱が蓄積された場合,核燃料が破損.最悪の場合,核燃料が原子炉水中に噴出されて,水蒸気爆発(水撃)が起こり,原子炉が破壊される可能性があります.
 これが原子炉の暴走であり,間違っても核兵器のように核爆発するわけではありません.

 緊急停止装置が働き核反応が停止しても,必要な冷却能力を失っていれば,温度と圧力が上昇する状況は存在します.
 原子炉の運転屋にとって,最も怖いのはこの点です.
 あまり知られていませんが,発電用原子炉の場合,原子炉スクラムは自動ロジックでも簡単に動作しますので,スクラムだけならそれほど難しいことではありません.

 しかし問題は原子炉スクラムで,「核分裂連鎖反応」は即座に停止しますが(正確にはこれにも若干語弊があります),原子炉からの発熱は早々簡単には止まらないところにあり,事故対応ではこの対処に忙殺されることになります.すでに燃えた核燃料の核分裂生成物が,燃料棒の中で崩壊を続け,そのエネルギーが熱となるからです.この崩壊熱というのがすさまじいものでして.
 もちろん,この崩壊熱は原子炉の停止後時間が経過するに従って指数関数的に低下するのですが,これだけの膨大な熱エネルギーを適切に除去し「続けなければ」(この持続性が致命的に重要なのです),大量の放射能を内包する燃料が破損し,外部へ放射性物質が放出される可能性があります.

 良く勘違いされるのですが,緊急炉心冷却系は原子炉が緊急停止し,何らかの要因で適切に崩壊熱を除去できない場合に用いられるものであり,原子炉を臨界にして運転している状態で用いるものではありません(試験運転は除きます).
 原子力発電所の多重防護やいくつものバリア,緊急炉心冷却装置は,すべてはこの放射能が出す放射線が転じた,崩壊熱に始まっているわけです.

 したがって,ターボ車の冷却のためのアイドリングなどのような,お釜(原子炉圧力容器)などが機械的に持っている余熱を除去すれば良い,というような簡単なレベルでは全くなく,核燃料が発する熱(放射能が元となる崩壊熱)の面倒をずっと見なければなりません.
 そのようなものの面倒を見なくて良いなら,原子力発電所はあのような巨大かつ多重化された安全装置を持つ必要はなく,火力発電所のようなボイラーとタービンだけの簡単なシステムで済むことになります.
(崩壊熱の存在をほとんど無視できる,臨界集合体と呼ばれる超小型の原子炉(熱出力1Wに行くか行かないかのものすらあります)では,緊急炉心冷却装置なんてものは存在せず,空冷で十分です.また,舶用の原子炉では提案されているものの中には,一次系を完全に水漬けにして,外部動力を必要としない完全に受動的なシステムのものもあります)

 おまけですが,火力発電所の運転でもっとも恐れられている事故シナリオは,何らかの原因でボイラーの火が止まり,それでも燃料が供給され続けた結果,煙突の方向に未燃の可燃性ガスが蓄積され,それに何らかの原因で火がつき,煙突等で爆発することです.
 過去,お恥ずかしい限りですが,東京電力のある火力発電所で実際にそのような爆発事故が発生し,死者を出す惨事となっています.
 私も事故を起こした設備の写真を見たことがありますが,まさに大規模なガス爆発事故の様相だったことを鮮明に覚えています.

◆仮想戦記からの引用ですが,引用部分については事実です.
 「日本封鎖」という,タイトルからアレそうな小説ですが,著者はアナポリス出の元原潜乗りです.下は公式サイト(英語)
http://www.ussdevilfish.com/
 日本の描写がかなり痛いので評判は悪いのですが,私見では「フィックション上の敵対国だし」と.米海軍人は昔から知日派が多い事からすれば落第点ですが.
 以下,253ページより引用.

 原子炉は原子爆弾のようには爆発しないと一般は宣伝されているが,それは民間で使われているおとなしい自然のウラニウムにしか当てはまらなかった.
 海軍の炉心の燃料は,高度に濃縮された爆弾級のウラニウムで,その反応度は50階の高さの船体を空中に吹き飛ばし,広い地域を完全に破壊するに十分な放射能をばらまくほどなのだ※2
 炉心の設計者はそれを”即時臨界急速分解”※3と呼ぶが,フィリップスは爆発と呼んだ.

 ※ ただし原子炉の「爆発」は,原因となる熱と圧力は核反応によるものですが,異常な高圧による「破裂」なので「爆発」はともかく,「核爆発」と呼ぶのはどうかと思います.

 ※2-3 以下のような指摘もあります.

 ※2 「爆弾級」と扇情的な記述をするのは勝手ですが,昔は日本原子力研究所JRR-1,2,3,4,現在でも京都大学研究炉KURなど,濃縮度90%以上の「爆弾級のウラニウム」を使用している(使用していた)研究炉は世界中至る所にあります.(ちなみに私も「爆弾級のウラニウム」の現物をこの手で触り,炉心を組み立てた経験があります.)
 その濃縮度と反応度に関係がないわけではありませんが,原子炉の設計で減速材温度係数を非常に大きくとって,余剰反応度を十分に抑えてしまえば,危険性はそれほどではありません.
 もし,引用のようにそのような危険な原子炉なら,アメリカならとも知らず,日本では設置すらできないはずですが.(HN「へぼ担当」 in FAQ BBS)
 ※3 原文がないので確定的なことは言えませんが,「即時臨界」の部分はprompt criticalとなっていませんでしたでしょうか?
 その場合は,JCOの臨界事故の時に起こった「即発臨界」と訳すべきところです.
 単なる「臨界」と「即発臨界」は天と地ほどの違いがあります.(同)

 ソースとしては,基本的に原子力関係学科を修了した人間なら常識として知っていることばかりであり,特にこれというわけではありませんが,webベースで提供されている「atomica」や,日刊工業新聞社の「原子力辞典」が,原子炉の暴走については同じく日刊工業新聞社の「原子炉の暴走」が特に平易にまとめられており,おすすめできます.

(あげ,キルロイ ◆dtIofpVHHg & HN「へぼ担当」 in FAQ BBS)


 【質問】
 LOCAって何?

 【回答】
 原子炉における「冷却材喪失事故(Loss−of−coolant Accident)」の略称で,原子炉の配管などが破損して原子炉冷却材が流出し,炉心の冷却機能が損なわれる事故のこと.
 LOCAが生じると,原子炉は自動的に緊急停止(スクラム)して,炉心出力は急速に低下するが,核燃料に蓄積された核分裂生成物が運転時の数%以下の熱を出し続けるため,LOCAにおいては炉心の冷却を充分に維持し,炉心の過熱・破損を防ぐ必要がある.
 そこで,LOCAが発生すると非常用炉心冷却系(ECCS)が自動的に作動し,低温の水を原子炉内に注入し,これによって炉心の冷却が維持されるようにしなければならない.
 また,ジルカロイ被覆管が水蒸気で酸化し脆化するが,LOCA中に燃料集合体にかかる応力によっても被覆管が破砕しない程度に,被覆管の酸化が抑えられる必要もあるとされる.

 ちなみに京大原子炉KURでは,宿舎等への給水用の高架水槽と共用にするという,素人目にはユニークなアイディアを採用している.
 以下引用.

-------------------------------
 このような緊急時に必要な水を,どのように貯めておくかが問題である.
 いろいろ検討し,結局,研究所内,所員宿舎などに給水するための高架水槽の容量を大きくして,これを共通に用いることとした.
 第1の理由は,何十年かの原子炉の寿命の間,1回も使わない可能性が高く,しかも使うときは,絶対間違いなく水を供給できるようにするためには,日常よく使うものとの共用以外には考えられない,ということである.
 水の腐敗,弁・管の錆びつきなどの問題は,これによって殆ど解決できる.

 しかし,炉心や水を嫌う設備などに,試験のための水道水をかけることはできないので,どうしても完全な試験ができない点は残る.
 また,別の心配は,共用している水の使用の相手側が大量に使いすぎると,いざというときに水量が足りなくなるということもある.
 そこで,高架水槽の容量を100?と大きくした上,水量が60%より下がった場合は,原子炉をスクラム(緊急停止)させることにした.

 近年定められた基準では,「安全上重要な設備は専用」ということになり,検査官にも指摘されたことがあるが,上述の理由と,考えを説明して,変更はしないこととした.

-------------------------------『原子炉お節介学入門』上巻(柴田俊一著,一宮事務所,2000.11)p.45-46

 舶用炉の場合は,周囲に海水があるので緊急注水用の水には不自由しないだろうが,注水し過ぎて沈まないよう注意する必要があるわけだろうか?
(火災鎮火のため,船内に放水し過ぎて,沈んでしまった民間船があったような記憶が)

 【参考ページ】
『原子炉お節介学入門』上巻
http://www.rist.or.jp/atomica/dic/dic_detail.php?Dic_Key=107
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=06-01-01-04
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=06-01-01-05
http://ameblo.jp/cmjk/entry-10085136036.html

【ぐんじさんぎょう】,2010/06/17 21:00
を加筆改修

 内容確認問題有りません.
 因みにLOCA対策として最悪の場合,原子炉格納容器内を満水にする方法も存在します.
 通常は淡水ですが,最悪の最悪の場合,無尽蔵である海水で満たすことも考えられています.
 もちろん,その場合は緊急時対応本部の許可が必要ですが,念には念を入れまくるのが原子力の世界です.
 因みに,淡水に限りがある舶用炉の場合は,その方向が顕著と言われていますし,たかだかその程度の注水量で沈没するほど,浮力に余裕がないわけではありません.
 これは浮力に比較的余裕のない原子力潜水艦でも同様のこと.
 その程度で浮上できなければ,乗員が助かる見込みはありませんので.

 おまけとして,舶用炉の場合,仮に沈没した場合,水圧によって原子炉格納容器が潰れることを避けるために,外部の海水を原子炉格納容器に流し込んで均圧させて,かつ不要な放射性物質の流出を避ける設計は必須事項です.
 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in mixi,2010年06月08日 22:49


 【質問】
 原発で蒸気や放射線が漏れたと時々ニュースになりますが,何重もの安全対策がある陸上の原発でそうなら,原子力潜水艦でもトラブルがあるのでしょうか?
 旧ソ連で事故が多かったのは知っていますが,米英仏の状況が知りたいです.

 【回答】
 西側では原潜の原子炉による重大事故はほとんどない(ことになっている).

 数少ない大事故は,フランス海軍のリュビ級攻撃型原潜で冷却系が水蒸気爆発事故を起こし,何人かの死傷者を出した例とか,米海軍の初期の原潜シーウルフのナトリウム冷却炉(めっちゃ駄々っ子でまともに動かなかった)で被曝事故が起きた例が知られている程度.

 米海軍は原潜を二隻沈没させているけど,これらは原子炉に起因するものではない.

 なお,最近はやらなくなったけど,70年代は米の原子力空母,原潜が入港するたびに,地元自治体が周辺の海水を採取して放射能測定し,自然放射能よりも相当に高い数値を計測している.
 米の原子力空母,原潜の原子炉は2次冷却水の水蒸気を,日常から大気に放出する構造なのだという,かなり有力な説もある.

(軍事板)

 まあ,旧ソ連・ロシアの原潜沈没事故だって,全て「原子炉に起因するものではない」んだけどね.
 いちばん新しいK-141クルスク事故は,艦首魚雷発射管室で爆発が起きたから.
 バミューダ沖で沈んだK-219(ヤンキー型)は,弾道ミサイルの液体燃料爆発が原因.
 ノルウェー沖で沈んだK-278(マイク型)は,原子炉とは無関係の場所から出火.
 スペイン沖で沈んだK-8(ノヴェンバー型)も同様.

 確かにロシア原潜の事故は多いが,実は,原子炉とは無関係の事故の方が多いんだよね.
 が,その内容を確かめないで「ロシアの原子炉はヤバイ」と決め付けるヤツの多いことよ.

 ただ,ソ連の第一世代原子力艦艇では,原子炉の放射線遮蔽が不十分だったと言われている.
 「放射能遮蔽が不充分」であるとハッキリ分かっているのは,ソ連初の原子力艦船である砕氷船「レーニン」だね.
 このフネは,かのハイマン・リッコーヴァー氏も見学したんだが,後で調べてみたら,米原子力艦艇に乗っている時よりも大量の放射線を浴びたていた事が分かった.
 リッコーヴァー氏もは同船の原子炉も見たが,あとで「非常にお粗末なシロモノ」と評した.
 この原子炉は,ソ連第一世代原潜用のプロトタイプでもあった.
 それで,「ソ連北洋艦隊の原潜乗りは一目で見分けが付く.何故なら暗闇で光るからだ」などというジョークが流行ったんだね.

 ソ連・ロシアの原子力艦船と言っても,第一〜第三世代が有るんだから,ぜんぶゴッチャにしちゃいかんね.

 あと潜水艦ではないが,ソ連の第二世代原子力艦船である原子力砕氷船アルクチカ級は,外国人を対象にいた北極海クルーズも実施している.
「放射線遮蔽が不十分」だったら,こんなコトは出来ないよね.

夏光華(シア・クァンファ) ◆BFSytpS.uc


 【質問】
 ウォーター・ハンマー現象って何?

 【回答】
 万一,冷却水系の配管が大きく破断した場合でも,炉心タンクの水が流出して炉心が露出する事態にならないよう,原子炉の配管には緊急遮断弁が設置されている.
 しかし一般に,水栓の急閉止で配管内の水が瞬間的に止められると,一気に水圧が上がり,その結果,衝撃的な応力が発生する.
 これをウォーター・ハンマー現象,または水撃作用などと言う.
 満員電車が急停車し,立っている人が次々に前の方に倒れかかる様子を想像してもらえるといい.
 現象自体は水に限らず液体全般で生じるが,配管の破壊の原因となる.

 【参考ページ】
『原子炉お節介学入門』上巻(柴田俊一著,一宮事務所,2000.11.30),p.106-107
http://www.nansui.org/testing5+index.id+3.htm
http://www.kekkannet.addr.com/q_a/5_0/12.htm
http://www.jbr.ne.jp/water/dictionary/waterhammer.html
http://www.mohno-pump.co.jp/learning/manabiya/a_class/a5.html

【ぐんじさんぎょう】,2010/08/21 22:17
を加筆改修

 ウォーター・ハンマーって,始動したときの現象だと理解してたが,止める時にも起こるのか????

へち in mixi,2010年08月15日 12:52

 正確には起動・停止時両方とも発生する可能性があります.
 水力発電所などでは停止時のウォーター・ハンマーの影響を緩和するために,大規模な設備を設ける場合があります.
 なお,原子炉周りの非常系の系統(ポンプ他)の場合,ウォーター・ハンマーが発生しないように満水状態での待機が基本ですので,それさえ守っていれば問題ない設計になっています.

へぼ担当 in mixi,2010年08月15日 14:21


 【質問】
 原子炉格納容器の気密性について教えてください.

 【回答】
 格納容器とは,炉心を包む圧力容器などから漏れた放射性物質の外部放出を防ぐための機器のこと.
 気密試験では,窒素を注入して容器内を2.6気圧以上に高めた後,予備試験と本試験で各6時間かけて漏洩の推移をみる.
 容器の多数の部分を配管が貫通し,弁もあるため,窒素はわずかに漏れ出るが,許容範囲内に収まることが求められている.
 常温で,最高使用圧力の0.9倍の圧力(空気)において,空気重量の0.1%/d以下の漏洩率となるように設計されている.
 その許容漏えい率はプラントによって違い,日本国内では加圧水型が24時間当たり0.1%,沸騰水型が同じく24時間で0.5%.
 さらに,原子炉格納容器の閉じ込めを行う各隔離弁等が不調となった場合に,すぐさまに原子炉を停止しなければならないことを避ける意味合いもあり,「ギリギリでパス」ということはなく,相当分の余裕を持たせている.

 原子炉格納容器貫通部配管で,事故時に閉鎖が要求されるものには,隔離弁または閉止フランジを設けて原子炉格納容器内部と外気との間に隔壁を構成し,事故時に原子炉格納容器の機能を保持できる構造となっている.
 貫通配管には,原則として隔離弁が直列に2個設けられ,事故発生と共に急速に閉鎖される.

 気密を保つことの難しさについて,柴田俊一は以下のように述べている.

--------------------------
何しろ1日1%というのは厳しい.
 例えて言えば自転車のタイヤ,チューブの少し怪しいのと同等で,これを約2,500立法mの体積のコンクリート主体の建物で実現するわけである.
(※京大研究炉KURの場合.編者注)
 まず第一に測定が難しい.
 室温が3℃下がると,約1%の漏れに相当する圧力の減少が起こる.
 炉室内には何箇所も温度計を置いて室温分布を図り,これを基に室内全体の温度平均を算定して補正する.
 1日1%の漏れとは,このように厳しいものだが,実際の事故解析には,もっと多い漏洩を仮定してあるので,実際は問題ない.

--------------------------『原子炉お節介学入門』上巻(柴田俊一著,一宮事務所,2000.11),p.44

 【参考ページ】
『原子炉お節介学入門』上巻(柴田俊一著,一宮事務所,2000.11),p.44
http://shippai.jst.go.jp/fkd/Detail?fn=0&id=CB0011016
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-04-04-02

【ぐんじさんぎょう】,2010/06/16 21:00
を加筆改修

 実際は
「原子炉格納容器耐圧漏えい試験と漏えい率試験」
に詳しいのですが(詳しすぎて我々専門従事者向けの嫌いもありますが),原子炉格納容器の許容漏えい率はプラントによって違い,日本国内では加圧水型が24時間当たり0.1%,沸騰水型が同じく24時間で0.5%です.

 因みに社内基準では,更に厳しい基準が設けられていることがあり,実績を見ても「ギリギリでパス」ということは許容されません.
 これは,原子炉格納容器の閉じ込めを行う各隔離弁等が不調となった場合に,すぐさまに原子炉を停止しなければならないことを避ける意味合いもあり,相当分の余裕を持たせていることは特筆すべきかと考えます.

 なお,その他の記載には問題有りません.

へぼ担当 in mixi,2010年06月08日 23:07


 【質問】
 シッピング検査って何?

 【回答】
 核燃料からのF.P.(核分裂生成物)の漏れ出しを調べるために行う検査で,水を流して溶け出し量を調べるもの.
 詳しくは商業秘密(ノウハウ)であるが,一例として,シッピングキャンの中に燃料集合体を入れて,キャリアガス(N2ガス)を循環させ,キャリアガス中の放射能濃度の変化から漏えいの判定を行うガス分析や,そのガス分析実施後,シッピングキャン内の水をサンプリングし,漏えい燃料棒から放出された放射性物質を測定し,漏えいの判定を行う水分析が行われる.
 ただし炉内の圧力などの条件によっては,この検査で,漏れが常に分かるとは限らないという.

 【参考ページ】
『原子炉お節介学入門』上巻(柴田俊一著,一宮事務所,2000.11),p.24
http://www.jaea.go.jp/jnc/siryou/hyouka/HY030930/index.pdf
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90115a13j.pdf
http://www.kyuden.co.jp/library/pdf/nuclear/p21-30.pdf(p.3に,燃料集合体シッピング検査装置概要図あり)

【ぐんじさんぎょう】,2010/06/14 21:00
を加筆改修

 基本的にはこの記載で構わないと考えます.
 ただし,これらシッピング検査は各メーカーのノウハウが詰まっており,それにより大きく効率(所要時間)が分かれる世界ですので,本当は詳しく解説したいのですが,商業秘密のため例示としてしかお話しできない世界です.
 そのため,ガス分析にしても,水分析にしても,
「詳しくは商業秘密(ノウハウ)であるが,一例として」
との注釈を入れることを推奨します.

へぼ担当 in mixi,2010年06月08日 22:54


 【質問】
 原子炉の巡回点検の,大まかな手順を教えてください.

 【回答】
 2時間ほどかけて原子炉建屋,タービン建屋,補機建屋を見て回り,モーターやファンは正常に運転しているか,計器は正常値を示しているか,潤滑油は不足していないか,弁・配管に異常はないかなどを点検する.
 巡回点検に当たっては,機械の振動,音響,臭気,温度,漏洩ならびに各種計器の指示値を,入念にチェックし,その結果を巡回点検票に記録する.
 状態の確認を容易にできるよう,計器類全てに通常値,管理値,警報値がマーキングされている.
 異常を早期に発見するためには,その機器の特性や癖を把握し,それら相互の関係や系統に精通し,どのような状態が正常か,弁やダンパの開度,計器の指示が発電所の運転状態に応じて,どのように変化するのか熟知していなくてはならない.

 舶用炉の場合,発電所に比べて頻繁に出力が変動するので,それら計器などの変化の度合いも大きいのではないかと想像される.

 【参考ページ】
『原子力発電所で働く人々』(近藤駿介編著,ERC出版,1998.12.25),p.43 & 81-82

【ぐんじさんぎょう】,2010/11/11 21:00
を加筆改修

 なお,通常の場合,パトロールは2時間で終わることの方が稀です.
 3時間は極端にしても,2時間半ほどが私の標準コースでした.
 また,1人でそれだけの物を2時間半で見るのはとても無理であり,複数人で分担するのが通常です.

 舶用炉の場合,蒸気タービン周りなど大幅に変化する物と,原子炉周りで余り変化しない物の両極端であり,その管理方法にはノウハウが必要でしょう.
 単純に正常な運転範囲,なら管理は簡単ですが,原子力発電所の場合,起動・停止時を除いて全出力運転(定格熱出力一定運転)を続けているため,その分変化幅は小さくなります.
 だからこそ分かる微小兆候をとらえて,異常の早期発見を実現しているのであり,ある程度ラフな運用とするためには,それなりの工夫(ある程度のアイデアはありますが)が必要と愚考します.

へぼ担当 in mixi,2010年11月10日 01:08


 【質問】
 原子炉巡回点検の際の必需品は何ですか?

 【回答】
1) 照明の届かないところも,隅々まで点検するための懐中電灯.
2) 回転機器の異音を見つけるための聴診棒.
3) 狭い場所や天井が低い場所で頭部を保護するヘルメット.
4) チェックシート式の巡回点検表.
5) 次直に引き継ぐため,操作内容や時刻などをメモするメモ帳.

 上記内容は発電所でのものだが,必要とされる理由を考えるに,舶用炉でも同様のものが必要であろうと想像される.

 【参考ページ】
『原子力発電所で働く人々』(近藤駿介編著,ERC出版,1998.12.25),p.81-83

【ぐんじさんぎょう】,2010/11/13 20:40
を加筆改修

 ノウハウ開示が怖いのですが,私個人は他にも以下の物を持っていました.

6) 当然ながら筆記用具(ただし落下防止用にバインダー等にひもが付けられているのが通常.)
7) 水漏れ・油漏れ等に対応できるよう工業用キムタオル(紙ぞうきん)
8) 各種工具類(ドライバーその他・重い!)
9) その他,個人の趣味(私の場合検電器,テスター他)
10) 以上の物が余裕で入る大きな袋・ザック・ウエストバッグ(所による・基本は両手ともに塞がないこと)
11) 放射線管理区域であれば,その所定のもの(着替え含む).
12) 時計・PHS(貸与された物で厳守)

 このような所でしょうか.
 私個人は上記1)-12)のいずれが欠けても,仕事になりません.

 一方,舶用炉の場合,極めて狭いことが予想されます.
 そのため,荷物満載で巡回点検しても余裕な陸上炉に比べ,持ち歩く物が制約される可能性もありますし,万が一の際の汚染の可能性もあります.
 そのことは念頭に置いていただければと考えます.

へぼ担当 in mixi,2010年11月10日 23:50

 原子炉巡回点検の際の必需品
13) 猫に出くわしたときのための煮干し

例題

ノ“7)撹拌用のバケツ”

コタロ in mixi,2010年11月10日 21:33


 【質問】
 点検で原子炉に異常を発見した場合は,どうするの?

 【回答】
1) 直ちに現場から中央制御室に連絡する.
2) 早急に原因を突き止める.
2) 同時に,異常事象が拡大しないよう,応急処置を施す.
3) 次に,異常事象が拡大しないよう,応急処置を施す.
3) 早急に原因を突き止める.

 以下,引用.

---------------------------------------------------
 例えば巡回点検で,あるポンプの出口圧力が通常10`を指示しているべきところ,5`しかなかった場合,運転員はまずポンプの状態を点検する.
 異音・異臭・振動・温度等の異常はないか,ポンプが過負荷になっていないか(定格流量以上流れていないか),ポンプの入り口ラインが閉じていないかを確認する.
 そして,もしポンプに異常が発生していると判断されたら,待機している予備機を起動し,異常のあったポンプを停止する.
 その後,異常のあったポンプは機械保修課に点検を依頼する.
 また,ポンプに異常がなければ,圧力計を点検する.
 しかし,運転員にできる圧力計の点検は,外観点検および正常に動作しているかどうかの確認だけである.
 圧力計内部の機構の点検は,電気保修課に点検を依頼することになる.

---------------------------------------------------『原子力発電所で働く人々』(近藤駿介編著,ERC出版,1998.12.25),p.84

 【参考ページ】
『原子力発電所で働く人々』(近藤駿介編著,ERC出版,1998.12.25),p.83-85

【ぐんじさんぎょう】,2010/11/16 21:20
を加筆改修

 一般論として,原子力の世界では2)と3)の順序が逆です.
 実際には,

1) 直ちに現場から中央制御室に連絡する.
2) 【同時に】異常事象が拡大しないよう,応急処置を施す.
【例えば,異常のある機器を直ちに停止させ,他の物に切り替えるなど】
3) 原因追及【応急】は直ちに,【詳細】原因調査は応急処置が終わってからゆっくりと,しかし確実に行う.

 と言う具合です.
 まず@連絡,A応急処置(退避含む・時間的余裕があるかの判断もこの段階),B原因調査の順番は鉄則です.
 もっとも,火災や放射性物質漏れ等で緊急退避する場合は,人命最優先でAが先に来て,安全な箇所にて早急に@となりますが,これは状況に依ります.

 何より人命最優先,次に通報連絡,拡大防止ときて,最後に原因調査,これだけは間違いなく確実に出来るよう,厳しい訓練が為されます.
 逆に言えば何時いかなる場合であっても,それが確実に出来なければ,原子力職場(現場)から追放されるレベル,と考えていただいても差し支え有りません.

 上記の『原子力発電所で働く人々』の記載に誤りはありませんが,それは対応に余裕時間があり,なおかつ緊急性を要しないと明らかに判断される,小さなトラブルのケースであり,それが全てではないことに注意が必要です.
 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in mixi,2010年11月13日 20:57


 【質問】
 原潜の放射線遮蔽についての質問です.
 むかし,何かで,
「原子炉から出る放射線の遮蔽設備について,船底に向けては,人が存在せず被することがないので,重量軽減のため遮蔽が薄くなっている」
という旨の記述を読んだ記憶があります.
 実際にはそんなことはあり得ませんよね?
 たぶんガセビアだと思うのですが・・・.

kikka in mixi,2010年04月20日 12:37
青文字:加筆改修部分

 【回答】
 何処まで合理性を見込むかと言うことになりますが,そのような結論を出してもおかしくないところでしょうね.
 基本的に原潜の下に存在する船,といえば同じ潜水艦でしかあり得ませんし,その潜水艦にしても接触しない限り,最低限でも10m以上の高低差は設けるでしょう.
 そうなれば,下方向への放射線はほとんど,その間の海水によって遮蔽されますので,実用上は下方向に漏れ出した放射線が,跳ね返って自分自身にやってこないか?,その評価をどのように行うのか,と言うことになります.
 その結果,跳ね返りを無視できないのであれば,多少重くなっても上下方向の遮蔽はしっかり行うことになりますし,無視できるのであれば割り切る,という考えがあってもさほど不思議ではないと考えます.

 なお,放射線の遮蔽においては,γ線を遮蔽する重い鉛やコンクリートの他に,中性子を遮蔽する水(水素原子)などの2段構えを考える必要があります.
 そのため,原潜におけるディーゼル機関用燃料の配置も,その旨考えられた物になっていると言われますが,この点は脱線しますので,別途のお話にします.

へぼ担当 in mixi,2010年04月20日 20:34



 【質問】
 なるほど,けっしてガセビアとはいえないのですね.

 自分は素人考えで,例えば原子炉の一次冷却水のように,船底下の海水も放射線が当たれば放射能を持ってしまい,海洋汚染を引き起こす,もしくは自艦の存在を暴露してしまうのでは?,と考えたのですが・・・.
 もう一度,α線,β線,γ線とか勉強し直します.(^o^;

kikka in mixi,2010年04月20日 21:13
青文字:加筆改修部分

 【回答】
> 原子炉の一次冷却水のように,船底下の海水も放射線が当たれば放射能を持ってしまい

 基本的に誤解があります.
 原子炉の一次冷却水が放射能(放射性物質)を含むのは,大きく分けて2通りあります.
 1つは金属などの腐食物が中性子を浴びて放射化し,それを含むためのもの.
 もう一つは冷却水そのものが放射化される場合です.

 前者の場合,中性子が漏れ出してもそこに放射化される物がなければ,全く可能性はないと言いませんが,ほとんどその存在は無視できます.
 後者の場合,特に重水素が放射化されて,トリチウムが発生する場合が想定されますが,
 トリチウムの出す放射線は非常に弱いために,そのほとんどが出したすぐそばから吸収・減衰されてしまい,その影響を探知する方が困難(実際の測定では特別な方法を用いる)です.

 以上より,原子炉内でまともに中性子に照射され,原子炉内を循環している一次冷却水を,そのまま放出した場合,さすがにモニタリング船によって探知される可能性がありますが,事実上探知した時期には移動してしまっているため,リアルタイムでの検知はその真上にいない限り難しいことになります.
 また,漏れ出た放射線を考えるにしても,10mも潜っていればほとんど探知は不可能な領域になります.

 一方,温排水の方は原子炉を停止してからも,量の大小は別として出続けることになりますので,温排水を探知する方がよほど確実です.
 だからこそ,停泊中の原潜の検査ならともかく,実戦での放射線(放射能)探知による原潜の検出には,ほとんど軍事上の価値は見いだせない,と結論づけることが出来ます.

へぼ担当 in mixi,2010年04月20日 23:18



 【反論】
> 一方,温排水の方は原子炉を停止してからも,量の大小は別として出続けることになりますので,温排水を探知する方がよほど確実です.
> だからこそ,停泊中の原潜の検査ならともかく,実戦での放射線(放射能)探知による原潜の検出には,ほとんど軍事上の価値は見いだせない,と結論づけることが出来ます.

 ところがぎっちょん,驚くことにポルトフ御大の「ソ連/ロシア巡洋艦建造史」によれば,全く逆の実績であったと記述されています.
 クレスタI型(1134型)の項において,
「このほか潜水艦直上の温度差を探知するMI-110R型,冷却水の痕跡を探るMK-110K型温度センサーを搭載したが,実用性は低くほとんど使用されなかった」
 クレスタII型(1134A型)の項においても,
「当初は原潜の冷却水の痕跡を追跡するMI-110R/MK-110K型温度センサーを装備していたが,使い物にならなかったため,1980年代に1134A型の全艦から撤去された」
と解説されています.

 また,放射能センサについては,クレスタII型の項において,
「アドミラル・マカロフとワシリイ・チャパエフには,実験中のコロスK75型放射能航跡探知装置が試験的に装備されたが,非常に効果的な装置であるとして現在も使用されている」
とされています.

 で,その後継のカーラ型(1134B型)には,温度センサーと放射能センサーの両方が積まれたようなのですが,温度センサーがMI-110K,放射能センサーがMI-110R(及び改良型のMI-110RM)となっており,何か型番がかぶらない?という感じです.
 何かのミスだとは思いますが,とにかく型番はどうあれ,温排水の探知ではなく,放射能による航跡の探知の方が可能であった,と言うのは驚くべきことだと思います.

 しかし一体どんな核種を感知するんだろう?

D.B. in 「軍事板常見問題 mixi別館」,2010年12月11日 00:20

 【再反論】
> 温排水の探知ではなく放射能による航跡の探知の方が可能

 私個人はこの見方について極めて懐疑的ですが,実運用上の問題も絡むため,原潜の探知容易有無については,技術的にどちらが正しいとも言い切れないところ.
 ただ,これが普遍的な事実であるならば
「ロシアの潜水艦乗りは『夜中に青白く光る』」
というのがブラックジョークではなく,ロシアに限らず原潜乗りは全て本当になりかねなくなってしまう,と考えるところです.

 論点は以下の3点となります.

1.温排水による温度差検出を考えた場合

 実際,温排水の検出は当該原潜が深く潜ってしまった場合,また,海水の変温層などでカバーされてしまえば,温度差しか検出できませんので難しいことは確かです.
 また,このような温度差に対しては明確な指向性が無いため,マッピングを行い,温度が明らかに変動している所を絞り込み,追尾していく必要があります.
 そのため,極論を言えば点(航跡を考えれば線)での測定でしかない艦船では,当然ながらその限界は明らかであり,ヘリなどから測定したり,ソノブイのように温度検出器をばらまかない限り,難しいことは明らかでしょう.

 ただし,原潜の温排水は,仮に原潜が完全に機能(原子炉)を停止したとしても原子炉核燃料からの崩壊熱放出として出続けるため,何らかの形でいざ尻尾を捕まえてしまえば,後は音響と音頭検出で追尾することが可能であり,無音潜行をしても温排水だけは止められないため,海水内の温度変化検出が出来る状態であれば,それによる追尾は回避できないことになります.

 また,温度検出については熱電対等で超精密測定は可能ですが,いかんせん点での測定でしか有りません.よって,ご紹介の

> クレスタI型(1134型)の項において,
> 「このほか潜水艦直上の温度差を探知するMI-110R型,冷却水の痕跡を探るMK-110K型温度センサーを搭載したが,実用性は低くほとんど使用されなかった」
> クレスタII型(1134A型)の項においても,
> 「当初は原潜の冷却水の痕跡を追跡するMI-110R/MK-110K型温度センサーを装備していたが,使い物にならなかったため,1980年代に1134A型の全艦から撤去された」

という結果になったとしても,別段驚くお話しではないと考えます.
 点,もしくは線での温度差検出(深さ方向はまた話は違う可能性もありますが,ここでは一般論とします)しかできない以上,艦隊行動等で面測定をしなければ,広い海原でロストした尻尾を捕まえるのは難しいということです.
 また,海水の場合,当たり前ですがすぐに攪拌・拡散等されて温度差が緩慢な物になりますので,それも難しい一因とも言えます.

2.原潜から直接放出される放射「線」検出を考えた場合

 次に原潜ならではの放射線にまつわることを考えてみます.
 放射線そのものは遮へいやコリメートしない限り,指向性はないと考えて良く,原潜は大海原に浮かぶ「点」線源となりますので,放射線のサーベイメーターを振り回せば,一点から放射線をばらまく原潜を特定できるかも,との発想が浮かんでも不思議ではありません.
 
 しかし,意外かも知れませんが,水は極めて優秀な放射線の遮へい体です.
 そのため,剥き出しの使用済核燃料(放射能としては考えられる最大級規模)であっても,水深で3mも有れば十分な遮へい効果
(少なくとも人体に影響がない程度)
をもたらすことになり,10mもあればもうバックグラウンド(通常値:天然放射線・宇宙線)レベルと区別が付かなくなります.
 がっちり時間をかけて,超精密測定を行うのであれば話は多少違うことになりますが,それでも
「剥き出しの使用済核燃料(放射能としては考えられる最大級規模)」
レベルでも「10mも潜れば」,そこから放出される放射線と,天然放射線・宇宙線との区別がつかなくなることは覚えていて良いかと考えます.

 そうでなければ使用済核燃料のキャスクなどでの輸送など,とても出来ないことになります.
 もちろん,通常値よりも若干高い放射線が検出されますが,あれが直径20mの海水に巻かれていたら,と考えれば如何に放射「線」の直接検出が非現実的であるのか,理解できるのではないかと考えます.
 
 それに,原潜がもし
「剥き出しの使用済核燃料(放射能としては考えられる最大級規模)」
クラスの強烈な放射線をばらまく状態に有れば,それに近寄る味方の艦船は勿論のこと,当該原潜の乗組員も,また当該原潜母港関係者も当然,強烈な放射線を浴びることになります.
 これではロシアに限らず,米国・英国・フランス・中国等の原潜保有国は
「ロシアの潜水艦乗りは『夜中に青白く光る』」
のジョークは全く笑えないことになります.
 これはどう考えても,あり得ないことは明白です.

3.原潜から放出される放射「能」検出を考えた場合

 2.では原潜から直接放出される放射「線」の直接検出を考えましたが,次は放射「能」の検出を考えてみたいと思います.
 結論から言うと,先のポルトフ氏の「ソ連/ロシア巡洋艦建造史」の記述と,D.B.さんのまとめシナリオ

> また,放射能センサについては,クレスタII型の項において,
> 「アドミラル・マカロフとワシリイ・チャパエフには,実験中のコロスK75型放射能航跡探知装置が試験的に装備されたが,非常に効果的な装置であるとして現在も使用されている」
> とされています

> で,その後継のカーラ型(1134B型)には,温度センサーと放射能センサーの両方が積まれたようなのですが,温度センサーがMI-110K,放射能センサーがMI-110R(及び改良型のMI-110RM)となっており何か型番がかぶらない? という感じです.何かのミスだとは思いますが,とにかく型番はどうあれ,温排水の探知ではなく放射能による航跡の探知の方が可能であった,と言うのは驚くべきことだと思います.

に合致するのは,この3.の場合のみとなりますが,原理上はともかくとして,実運用(作戦運用)上はどれだけの意味があるのだろうか?と,私個人は極めて懐疑的です.

 さて,原潜など原子力推進艦から放出されるのは,
1.温排水
2.放射線(原潜からの直接放出) 
3.放射能(正確には放射性物質を含む排水等:一番目立つのは原子炉一次系冷却水(いわゆる炉水))
が可能性としてあげられます.
 1.と2.については先に説明したとおりですが,この1.と2.についての最大の特徴は
「原子炉(核分裂)を止めたとしても,原子炉の使用済核燃料から核壊変(崩壊熱)として放出される熱や放射線を止めることは出来ない.」
<ただし,時間と共に減衰するが,目安として最低限1時間以上は目立つ.>
(大概収まるのは最低限でも数日オーダー)と考えて良い)
という点があります.

 これが原潜の騒音以外で隠密性を損なう(原理上常時追尾可能となりうる)要因であることは確実であり,原子力推進艦である以上,原子炉(使用済核燃料)の上記の特性からは逃れられません.
<唯一,全て未使用(新品)の原子炉(特に核燃料:「未照射」と言います)の場合,この制約から逃れられますが,一度原子力動力にて航行(MWt級の熱出力経験)してしまえば,その程度はベテラン艦より若干弱くとも,これは使用済核燃料を原子炉から全て抜き取るまで,一生涯つきまといます.>

 一方,原潜が放射能(大概の場合は放射性物質を含んだ排水)を放出する場合ですが,これは全くないとは言いませんが,四六時中,常に放射能を垂れ流す運用をしているわけではありません.
 もし,常時垂れ流すような運用が為されていた場合,原子力空母ジョージ・ワシントンの母港であり,米海軍原子力潜水艦が煩雑に寄港する横須賀では,今頃大変な騒ぎになっています.

 以下は「横須賀市議会議員 佐久間則夫氏」のホームページですが,
「充実してきたモニタリング態勢 横須賀原子力艦モニタリングセンター(東逸見局)開設 2008年9月19日更新」
のような陣容で精密測定が為されており,その結果も含め,横須賀市周りでは
「原子力艦環境放射線モニタリングシステム」
として,リアルタイムに公開されているわけです.

 これは佐世保他米国原潜が常時寄港する港では,海上保安庁による測定も含め,ほぼ同様の体制が取られており,何らかの異常放出があった場合,次のような事件として報じられるわけです.

「横須賀市は米軍と「オン・サイト」連絡体制を構築すべきだ 原子力潜水艦ヒューストンの放射能漏れに思う 2008/08/03更新」
 これは,2008年3月27日に補給などを目的に,長崎県佐世保港に入港し4月2日に出港した米海軍のロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦ヒューストン(6,103トン)が,入港時,
【微量の放射性物質を含む水を漏らした可能性がある】
ことを米海軍が明らかにした案件です.
 ここで重要なのは,この際,当然のように佐世保港で放射線・放射能のサンプリング・測定を行っていた海上保安庁他では,ごく微量のためにそれを検知できなかった点.
 そして,その後も監視を継続しているが,天然放射線(放射能)・宇宙線の変動範囲に収まってしまい,特段の異常は未だに確認されていない点にあります.

 つまり,あれだけ精密な監視体制を引いていて,「お漏らし」しちゃったかも,と米海軍が公表しても,それがごく微量であるために,その判別は極めて難しい,ということがこの事件からも分かります.
 ましてや艦船の上での設備
(当然ながら陸上より限定された設備になります.ただ,何処まで装備するかは各国の問題で一概には言えませんが,日本にある陸上監視設備以上の物があるとは考えにくいでしょう.)
では,限界があるのは当然でしょう.

 なお,陸上にある原子力発電所ではごく微量ながら,手洗いやシャワーの排水(注:トイレの汚水ではない)等,排水処理で放射能を極めて低い状態に抑え,それを十分確認した上で,放射性物質を管理された状態で放出することがあります.
 ただし,この排水の放射能レベルも厳重に極めて低い状態に抑えているため,常時海水放出ラインで監視している放射線測定器では検出できないレベル
(天然放射線・宇宙線と降雨の影響等で,自然界の変動幅に完全に隠れてしまう)
となっていますし,周囲の放射線を図るモニタリングポストや,周辺魚介類等の放射線レベル測定でも,原子力発電所設置前のレベルから変わらず,その放出による環境への影響はほとんど無視できる
(被ばく評価として通常の自然界の1/1000以下などという結果になることが多い)
状況.
 そして,あの中越沖地震で「海に放射能が!」と騒がれた案件でも,海側の環境試料観測では特段の異常なし,というレベルです.

 つまり,陸上にある原子力発電所という馬鹿でかい原子力施設であっても,通常の運用をしている限り,艦船に放射線分析装置を積み込んで,海水中の放射能を監視し続けても,有意な値が出てくる方がおかしい
(もしあればそれは事件・事故時;過去に敦賀発電所にて配管誤接続による誤放出があり,漁業補償などの大事件になりました.)
ということになります.

 では,肝心の原潜や原子力空母ではどうでしょうか.
 あれだけの監視体制をひいている横須賀市周りであっても,近年で海水中などから異常値が検出されたという事例はありません.

 また,これは42年前という遠い過去になりますが,
「第058回国会 科学技術振興対策特別委員会 第15号 昭和四十三年五月八日(水曜日)」
の議事録を参照願いたいのですが,
「米海軍ソードフィッシュ号の周囲で放射線が検出された」
案件について答弁が為されています.
 結論としては,「外部からの電波による測定器の誘導妨害」の可能性が高く,有意な放射線・放射能レベルの変動とは言えない,という事になっています.
 つまり,42年前の技術レベルでも母港・寄港地近辺ではこれぐらいしかない,という例になっています.
(この件については,有無についての神学論争が続きますが,それは別のお話とします.)

 また,放射線や放射能は極論を言えば「1つ」でも検出でき,半減期でもって減衰していかない限り,ずっと存在し続けるわけです.
 そのため,攪拌・拡散されて他の海水温度と同化してしまう温排水より,排出された放射能の痕跡を追っかける方が,よほど楽なことになります.
 つまり「お漏らし」が有れば,海水中等の放射能測定により,お漏らし後も比較的長期間にわたって,それを検知できる可能性がある訳です.

 逆を言えば,それだけ気を遣わなければならないわけですので,事故時や,やむを得ない理由

<どうしても原子炉周りの水が余ってしまい,自前のタンクに貯蔵しきれない等,思いつく理由は様々あります.
 しかし,通常はその分だけの余裕を見越すのが普通であり,余程のことがない限り考えにくい.
 少なくとも陸上の原子力発電所では,余程の事故や誤操作がない限り,まずあり得ないレベル.>

がない限り,そうそう簡単に放射能を放出するのは避けるのが鉄則.

 よって,常時放出されるが拡散・攪拌にて温度差がどんどん失われ,すぐに検知できなくなる温排水と,滅多に排出されることはないが,一旦,放射能を含んだ排水として排出されれば,比較的長期間にわたって検知することが出来る海水中等の放射能測定と,どちらが実運用上効果的なのでしょうか?,という実運用上の実績問題となるわけです.

 以上,1.〜3.で見てきたわけですが,

1.すぐさま拡散・攪拌にて温度差が無くなってしまうため,長期間にわたって痕跡を追うことはできないが,常時放出され続けるために,存在箇所の範囲を絞ることが出来れば,その検知可能性は低くない温排水



3.物理的な拡散を除いて,半減期でしか減衰しないため,放出後も長期間にわたって痕跡を追い続けることは不可能ではないが,もともと放出することはまずない放射能(放射性物質を含んだ排水)

のどちらを追った方が確実なのでしょうか,という実運用上の実績問題に帰結するわけです.
 そして,ポルトフ氏の「ソ連/ロシア巡洋艦建造史」によれば,
「ソ連/ロシアは後者が効果的と評価した」
ということなのでしょう.
 ただ,後者は極めて少ないチャンス
(多くとも原潜1航海であるかないかのレベル;少なくとも手洗い・シャワーレベルの排水を検出するのは無理.)
を確実に獲得すること
(おそらく米海軍母港出港から原潜にて追尾して,その情報から水上艦にバトンタッチするのでしょう.)
が求められます.
 よって,ソ連/ロシアの技術・軍事(警戒)態勢(ドクトリン)に合致していても,他の国でも同じと言えるのかどうか.
 そして,現在はどうなのか.

 何も手がかりがなかったり,放出され続けるが時間が経てば分からなくなる温排水をあてにするより,数少ないチャンス(放射能放出)を,確実にモノにすることで追い回すのが本当に得なのか.
 そもそも,みすみす放射能放出という痕跡を残すような下手な真似を,米海軍が常時行うのか?
 大体にして,それほどの状態であれば,洋上とは比較にならないほど厳重,かつリアルタイム監視体制をひいている,横須賀や佐世保周りでは今頃大騒ぎになっているはずだが.

 というわけで,技術的に説明が付かないわけではありませんが,私個人は引き続き懐疑的です.

> しかし一体どんな核種を感知するんだろう?

 なお,こちらの場合,常識的にはクロムやマンガン,コバルト等の原子炉周り腐食放射化核種がメインでしょう.
 もし燃料破損等を起こしていれば,放射性よう素が検出されることになりますが,こちらは稀.残りは希ガス他ガス成分ぐらいですが,こちらの方の検出(正確には捕獲)は活性炭フィルタ等を駆使しても難しく,原潜が沈没しかねない事故クラスにならなければ,まずお目にかかれないでしょう.
 その他の核種については,存在自体は否定できませんが,かなりの精度でも無視しても差し支えないでしょう.

 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in mixi,2010年12月11日04:38


目次へ戻る

「軍事板常見問題&良レス回収機構」准トップ・ページへ戻る

軍事板FAQ
軍事FAQ
軍板FAQ
軍事まとめ