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(引用元:『紅の豚』?)
「textlib @ ウィキ」◆(2010/09/13)ワークホースとして働いた旧戦艦たち,などの艦船話
『日本海軍の戦艦 主力艦の系譜1868-1945』(ネイビーヤード編集部編,大日本絵画,2012.5)
【質問】
「戦艦 battleship」の語源は?
【回答】
イギリス海軍では Ships of the line は,通常3級以上の大型船だけを指しました.
4級以下の船が戦列に加わることは,普通有り得なかったからです.
そのため,「戦列艦」には確かに主力艦という意味があり,その概念は近代「戦艦」に通じています.
そして,Line of Battle shipsとも言われます.
普通,「戦艦」の Battle Ship はここよりその呼称が生じたとされています.
軍事板
青文字:加筆改修部分
戦列艦 sorhajó
faq061102d.jpg
faq061102f.jpg
(画像掲示板より引用)
【質問】
戦艦の起源は「座船」なんですか?
以下のように主張している人を見かけたのですが.
中国は,今では大陸国家のイメージしかないが,15世紀初頭,明の時代には,東南アジアからインド洋に至る通商を確保し,この当時,世界最大の海軍を擁していた.
その海軍だが,兵員を乗せる大型の「座船」と,快速を生かして偵察を任務とする「戦船」に分かれていたという.
前者が戦艦,後者が巡洋艦の起源と考えてよいのではないだろうか.
西洋の海軍しか研究しない人が多くて,こうした説をとなえる人は少ないようだが.
林信吾著『反戦軍事学』(朝日新聞社,2006/12/30),p.84-85
【回答】
通常,戦艦の起源は17世紀後半に出現した戦列艦とされます.
その戦列艦が,座船から何らかの影響を受けたという話は聞きませんね.
仮にそのようなことがあったとするならば,それは東西交流史上,大きな出来事であるはずですが,そのような話は寡聞にして聞いたことがありません.
たとえば,東西交流史をテーマにした『ヨーロッパとアジア』(榎一雄著,大東出版社,1983/7/15)には,中世のイラクに存在した中国商人や,ルイ14世の宮廷に存在した中国語の専門家などの話は出てきますが,建艦技術に関して中国が何らかの役割を果たした,なんて話は一行も出てきません.
また,戦列艦は100門以上の大砲を舷側に並べたものなのですが,林の記述では「兵員を載せた大型船」である,ということだけが,上記説の根拠とされています.
これでは根拠薄弱です.
google検索しても出て来ませんので,座船がどのようなものか不明である以上,断定的なことは言えませんが,まずもってヨタ話の可能性が高いのではないかと愚考いたします.
【質問】
戦艦って駆逐艦の何倍の価格ですか?
3倍くらいですかね?
【回答】
些か古いですが,第一次大戦前の英国駆逐艦
G級で単価101,876ポンド(粗利益37,323ポンド:粗利益率36.6%)
H級で単価93,524ポンド(粗利益27,826ポンド:粗利益率29.8%)
I級で単価85,927ポンド(粗利益18,107ポンド:粗利益率21.1%)
K級で単価97,678ポンド(粗利益21,651ポンド:粗利益率22.2%)
M級で単価122,872ポンド(粗利益26,951ポンド:粗利益率21.9%)
対して,戦艦
Ajax(King George V級)で単価847,578ポンド(艦体;100,597ポンド,機関:20,964ポンド)
Colossus(Colssus級)で単価717,597ポンド(艦体;57,399ポンド,機関:30,437ポンド)
ついでに装甲巡洋艦
Argull(Devonshire級)で単価622,262ポンド(艦体;124,832ポンド,機関:60,131ポンド)
眠い人 ◆gQikaJHtf2 :軍事板,2004/10/14
青文字:加筆改修部分
【質問】
昔の戦艦ドレッドノートや,巡洋戦艦金剛(竣工時)には,舷側のところに斜めのパイプのようなものが10~15本ほどついています.
このパイプはいったい何なのでしょうか?
【回答】
当時の戦艦では魚雷防護用の金属製の網(防雷網)が展開できるようになっていました.
このパイプ(アーム)は防雷網展張用の桿です.
スクリューに絡んだり,移動や展開が容易でないため,WW1以降では撤去されました.
(名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE)
【質問】
単装砲×4と連装砲×2では,基本的に命中率は同じなのでしょうか?
【回答】
単装砲2基で照準する場合,照準を2つの砲塔に伝達しなければならないところを,連装砲なら1つで済みます.
つまり,狙う側の数が減る分だけ,理論上,照準は容易になります.
単装と連装のどちらを取るかはその他,重量や占有面積(どちらも連装の方が大きくなる),取り回し(軽い分単装の方が有利),被害の局限(単装の方が一撃で破壊される数は減るが,連装にすれば単装2基よりは軽くできる分防御を充実できる)その他,様々な要因から決定されます.
ですが究極的には,大威力の単装砲が理想です(戦車がそうしているように).
軍事板
【質問】
リシュリュー,ダンケルクのような連装砲塔を結合した四連装砲塔と,KGVの様な正四連装砲塔のメリットとデメリットを教えて下さい.
【回答】
四連装砲塔に関しては,連装砲塔に比べると重量が軽減でき,従って重心を低く保つことが出来ます.
フランスの四連装砲塔は,連装砲の結合になるので,英国のそれより更に軽く出来,重心を上げることなく,浮いた重量は防禦に回せます.
反面,連装砲の結合ですから,敵の砲弾を砲塔に喰らい,それが命中した場合は,砲塔の半分の門数が使用不能となってしまいます.
英国のものについては,その裏返しになりますが,被害極限という効果は期待できます.
しかし防禦を重視したためか,重量軽減については,旋回部重量が1,575tと,Nelsonの40.6cm砲塔より重くなってしまっており,重量軽減については,余り効果があった訳では無さそうです.
(ちなみに,フランスのRichelieuの場合は,旋回部重量が1,497tですが,Brittanyの連装砲塔の旋回部重量は1,130tで,門数辺りの重量は約3分の2になっています.)
眠い人 ◆gQikaJHtf2 :軍事板,2005/08/26(金)
青文字:加筆改修部分
【質問】
仮想戦記等では,敵弾が主砲塔に命中したが弾き返したという状況のとき,その後も何事もなく,その主砲塔は砲撃を続けたりしますが,主砲塔の中の人は大変では?
衝撃,振動,騒音などで悶絶して,行動不可能なんじゃないかと思うのですが.
【回答】
超音速の大質量弾体が剛性の高い砲塔を直撃した場合,強い衝撃波が発生する可能性大です.衝撃波によって損傷を受け易い,人間や光学機器は無事ではすまない事もあるでしょう.
そうでない部品は問題ないと思います.ただ衝撃による変形とかが起きる事もあるわけで,そうなると機械的に無理,が生じそうです.
(HN "System" )
【質問】
「発射タイミングをずらすのは弾同士の干渉を防ぐ為」
という理屈がよく分からない.
タイミングをずらして発射すると,後から出た弾丸は,先に出た弾丸が乱した空気の中を飛ぶことになるので,かえって弾道が乱れるんじゃないかと思うんだけど.
【回答】
超音速で飛翔する発射直後の砲弾は,砲弾の直前を先端とする円錐形の衝撃波を形成する.
いわば,圧縮されて硬くなった空気の傘をかぶりながら飛んでいる.
連装砲が同時に発砲した場合,2つの砲弾が互いに極めて近接した状態で飛ぶため,それぞれの衝撃波の傘が重なり合って互いに押し合うような形になり,反作用で砲弾は次第に離れていく.
発砲のタイミングをほんのわずかでもずらすと,砲弾の飛翔速度が速いため,2つの砲弾の距離は大きく離れる.
このため,先行する砲弾が作った衝撃波は,後発の砲弾には影響しない.
重い鉄の塊である砲弾は,多少の「気流の乱れ」では影響を受けない.
軍事板
【質問】
戦艦の主砲の衝撃波はかなり凄い事は分かるのですが,大体(例えば16インチの砲)どれくらい撃ってると砲身がダメになるのでしょうか?
【回答】
▼砲身の寿命は大体100発くらい.▲
同一口径でも,長砲身のものは寿命が短くなります.
ダメになる理由は,砲身と砲弾が接触しており,砲弾に回転を与えるための膨大な力で内側が少しずつ削られていくからです.
この削られる部分を内筒といい,我々が普段目にする砲身は外筒といいます.
削られる部分は外筒に覆われており,外からは見えません.
この部分は,放っておくとどんどん削られていくため,内径が少しずつ拡大し,そのため装薬の燃焼ガスが砲弾を押し出す力にならず,砲弾と内筒との隙間から漏れていってしまいます.
結果,射程減(押し出す力が減る),散布界の拡大(漏れ出す燃焼ガスが砲弾の運動・回転にわるさをする)などの悪影響を与えるため,一定回数射ち,主砲の性能低下が許容範囲を超えたときを砲身の寿命,砲身命数と呼びます.
命数を迎えた内筒は交換され,必要ならまた溶かして新たな内筒の材料に転用されます.
軍事板,2005/03/15
青文字:加筆改修部分
▼ いくらなんでも,上記回答の「砲身の寿命は大体100発くらい」は少なすぎます.
実際には16インチ砲なら200~400発程度です.
日米戦艦で口径が16インチ前後の主砲の砲身命数は,
<アメリカ>
16インチ45口径砲(コロラド級):350発(改良型で320~395発)
16インチ45口径砲(ノースカロライナ級,サウスダコタ級):395発
16インチ50口径砲(アイオワ級):290発
<日本>
14インチ45口径砲(金剛型,扶桑型,伊勢型):250~280発
41cm45口径砲(長門型):250発
46cm45口径砲(大和型):200~250発
「アメリカの戦艦」(学研)p.176より引用.
モーグリ in FAQ BBS,2013/5/2(木) 20:48
青文字:加筆改修部分
▲
戦艦「陸奥」主砲塔
(画像掲示板より引用)
【質問】
昔の戦艦の主砲,特に大和の主砲は射程が40kmもあると聞きました.
40km先もの標的にどうやって狙いを定めるのでしょうか?
【回答】
艦砲を一斉に撃つと,砲弾の着水時にはだいたい一定の範囲内に散らばります.
射撃時の砲身角度,初速,砲弾の回転速度,風速や湿度に気圧,砲弾そのものの微妙な違い,
砲弾同士の衝撃波による干渉などなど無数の要素があるので,「一定の範囲」です.
これを散布界といいます.
着水時の水柱を光学あるいは電波で観測して微調整を行い,敵艦を散布界に包み込むようにして,撃ち続けるのが基本です.
なのでこの場合,命中は確率論のお話になります.
軍事板
【質問】
戦艦に積んである測距儀って,幅が広ければ広いほど性能が良くなるそうですけど,その理由は?
【回答】
レンズの倍率も性能に関ってくるよ.
レンズの倍率×基線長(測距儀の幅)が有効基線長とされてる.
測距儀の基線長(幅)が狭い場合,観測対象と左右の対物レンズとの角度が限りなく平行に近づく.
そうなると,僅かな角度の誤差が距離の誤差へと繋がる.
だから,測距儀の基線長は強度の許す限り,長ければ長いほうがいい.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
撃つと,海面がこうなるんですか?
http://www.geocities.com/Pentagon/5397/Bb61.jpg
【回答】
そうなるんです.
戦艦が発砲した時に砲口から発生する衝撃波は,壮絶なものがある.
艦橋構造物に遮ってもらえない甲板上のものが,みんな吹き飛んでいくぐらい.
この画像の戦艦はアメリカのものだが,日本の戦艦「武蔵」は,艦外の人間に退避命令を充分に行き渡らせないまま主砲をぶっ放して,甲板上の対空機銃やその操作要員を吹き飛ばしてしまったことが・・・.
【質問】
アイオワ級の主砲発射動画を見ると,砲が全然後ろに下がってないですけど,反動は大丈夫なんでしょうか?
一斉射撃したらひっくり返ってしまうのでは?
【回答】
砲塔容積を小さくしたい為,砲の後座距離をあまり取れないのが戦艦の設計上の宿命.
戦車にも通じることだが.
だから戦艦と言うのは,どれもあのような巨艦を誇っている.
自重+復元力で反動を受け止める.
主砲斉発時にひっくり返らない排水量+復元力ってのは,設計の時の諸元に必ず入ってるから,その辺は大丈夫.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
第2次世界大戦後,戦艦の存在意義は失われていきますが,戦後の戦艦はどのような戦力と位置付けられたのですか?
アメリカは主力艦から空母の護衛艦になったと思ってますが,イギリスやフランスなど他の国はどうだったのでしょう?
【回答】
イギリスもフランスも戦勝国とはいえ,経済はずたぼろになった.
だから,でかくて維持費もかかり,多数の乗員を乗せなければならない戦艦を戦後次々と退役させた.
そんな中でイギリスは,建造を進めていたヴァンガードを戦後一年も経ってから完成させている.
英海軍最後の戦艦として艦隊旗艦やNATO旗艦などを勤めたが,14年後の1960年には退役させている.
フランスも戦後ジャンバールを1950年に完成させているが,こちらも1970年に退役.
なお,ジャンバールは戦時中完成間近に独軍侵攻で北アフリカに脱出,ヴィシー政府に所属してカサブランカで連合軍と戦っている.
どちらも意地で持っていたようなもんだが,戦後は殆ど使い道がなかった.
アメリカでさえアイオワ級以外の戦艦は,若干の例外を除いて,殆どが戦後すぐに退役させている.
中には完成後たった4年の寿命しかなかったものもある.
アイオワ級だけは沿岸砲撃用重砲プラットフォームとして利用された.
ベトナム戦争ではニュージャージーが現役復帰してベトナム戦に参加.
(1980年代のアイオワ級一斉現役復帰の際,ニュージャージーが一番早かったのもそのため)
ただ,費用対効果の面で疑問視されたため,短期間で再び予備役入りし,後継として重巡ニューポートニューズが現役復帰したが,8インチ砲では威力不足なのが判明したため,重巡の現役復帰はこれが最後となった.
http://www.war-stories.com/new-jersey-poss-1968.htm
その後,ロナルド・レーガン政権下の「600隻艦隊構想」で,アイオワ級4隻の近代化及び再就役(FRAM I)実施.
湾岸戦争やレバノン内戦での作戦活動に従事した.
しかし,老齢化により機関出力も最盛期より低下し,主砲をふくめ各部分にマイナー・トラブルが発生.
費用対効果についての疑問もあって,その後の政権の国防予算の削減に伴い,1992年までには全艦が退役し,かくして現役の戦艦はこの世から無くなった.
アイオワ級4隻は,全てが記念艦や博物館として保存・公開されている.
軍事板,2004/09/26
青文字:加筆改修部分
米英仏以外で第二次大戦後も戦艦を保有した国には,ソ連,イタリア,トルコ,アルゼンチン,ブラジル,チリがあります.
ソ連は,帝政ロシアで建造した弩級艦2隻,英国からR級戦艦を貸与され,その代替に,イタリアから賠償としてCavour級を賠償として,更にフィンランドから賠償として海防戦艦Ilmarinen級を受け取っておりましたが,スターリン死後,ゴルシコフ構想が頓挫し,戦艦を中核に据えることは無くなりました.
このため,帝政ロシアの艦は1956~57年に除籍.
イタリアからの賠償艦は,1955年に爆沈.
フィンランドからの賠償艦も1960年までに除籍されています.
(英国からのR級は,イタリアのと交代で返還)
イタリアは,Cavour級1隻をソ連に賠償として引渡し,Littorio級2隻は英国と米国に賠償艦として引渡されますが,これらは当地で解体され,Doria級2隻が残りました.
これらは指揮通信機能が他艦より勝っていたために,イタリア艦隊の旗艦として長らく使われましたが,維持費がかかるために1956年に除籍されています.
トルコはギリシャに対する対抗上,旧帝政ドイツの巡洋戦艦を後生大事に持っていましたが,機械的故障が頻発し,晩年は訓練艦として使用されました.
それでも,1970年まで保有しています.
中南米はアルゼンチンが前弩級艦1隻,弩級艦2隻を,ブラジルが弩級艦2隻,チリが超弩級艦1隻を保有していましたが,これは,俗にABC諸国と言われる国々のメンツの保持みたいなモノで,1950年代に,米国が地域安定のためにブルックリン級軽巡洋艦を供与すると,いずれもそちらにショー・ザ・シップの役割を移し,アルゼンチンでは1951年に前弩級艦が,1956年に弩級艦が除籍され,ブラジルも1951~53年に戦艦を除籍.
チリはそれより遅れて,1959年に漸く除籍が完了しました.
余談ながら,チリの戦艦は日本の徳山で解体されています.
眠い人 ◆gQikaJHtf2 :軍事板,2004/09/26
青文字:加筆改修部分
【質問】
戦艦は今は見られなくなった艦種ですが,その役目として,
1 敵戦艦とガチで殴り合う
2 火力を生かして対地砲撃する
がありますよね.
1はもはや無用というのはわかりますが,2は現在,どのような方法で代わりが行われているんですか?
また,戦艦による対地砲撃の効率は,現在の方法に比べて悪いんですか?
【回答】
・航空支援の精密化
・トマホーク等の長距離巡航ミサイル
・艦砲の誘導弾化
また,駆逐艦や巡洋艦に相変わらず備え付けられている艦砲は,対地攻撃も一つの存在意義として想定されている.
艦砲支援のメリットは一発当たりの値段が安い事.
しかし沿岸部しか攻撃できず,その上に曲射砲なので精密攻撃に限界がある.
また,対地砲撃任務に戦艦を持ち出すと,その防御力は無駄以外の何ものでもない上,現代では砲も砲弾も製作技術がロストテクノロジー化してるので効率が死ぬ程悪い.
その点ミサイルや爆撃機なら内陸深くまで攻撃できる上に,手段にもよるがやろうと思えば攻撃目標をピンポイントで狙えるため,無駄弾が極端に減って民間人への被害も減るため,世間体もいい.
ただ,艦砲支援そのものは有効な手段である事は間違いなく,太平洋戦争後期,米軍は空母に居場所をとられて余った戦艦を,海兵隊の水陸両用作戦の支援に回したりして活用している.
その有名どころ,かつ,艦砲支援の完成版が沖縄戦.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
戦艦数隻による沿岸への怒涛の集中砲火の威力と,そこにいる敵集団への物理的・精神的脅威は,空母艦載機のそれを上回るでしょうか?
【回答】
逆に言うと,戦艦はどんなにがんばっても沿岸からせいぜい40kmの圏内にしか破壊力をふるえない.
しかも,相手の装備次第によっては撃ち返される.
実際そんなものを装備できて撃って当たるかは微妙だが,それこそ80cm列車砲で撃ち返してあげてもいいのだから.
航空機なら陸から絶対に反撃できない距離から悠々と,航空機の行動半径内の陸地を好きなだけ攻撃できる.
確かに単位時間当たりの投射弾量は戦艦に劣るが,兵器としての使い勝手は比べものにならない.
軍事板
青文字:加筆改修部分
▼ 継続性って点では,砲のほうが航空攻撃よりは有利でもある.
あと,戦艦は,艦載機で空爆されるのに比べると,射程距離が短い分,砲撃される方から「撃ってくる相手が見える」とこから,撃たれる分心理的ダメージがでかい,というのはあるそうだが.
でも,「火力投射手段としての利便性」を総合的に考えたら,空母と艦載機の方が上.
精度の点でも,精密誘導兵器群のほうが使いやすいだろう.
ERGMでも登場すれば話が別だが,まあそれはロマンの領域にある話.
第2次大戦~朝鮮戦争くらいだと,1000ポンド爆弾は1機に1発,スカイレイダーレベルの「超艦上機」でも3発積むのがやっとだから,空母1隻と戦艦1隻の投射火力を比べると,戦艦の方が状況的には有利ではあったりするが,現代で,となると戦艦にアドバンテージは全くない.
軍事板,2009/04/21(火)
青文字:加筆改修部分
▲
【質問】
戦艦は何故,現代の海軍からいなくなってしまったのですか?
【回答】
普通に考えて空母が強いから戦艦が消えたのです
戦艦は主砲の強大な火力と重厚な装甲が売りですが,その主砲の射程は現代戦において甚だ短く,弱い者いじめの陸上砲撃程度にしか使えません.
装甲が強固であろうと,大和型の戦歴を見ても分かるとおり沈むものは沈みます.
防御は装甲で受け止めるという受動的なものから,ミサイルで撃墜したり電子妨害で無力化したりする能動的ものに変わりました.
つまり,強固な装甲(戦艦の防御)よりも高度な防空システム(イージスシステム装備艦に代表される,フェイズドアレイレーダーと,VLSから発射する強力な対空ミサイルを備えた,近年の主流主力艦の防御)の方が有効なわけです.
これは攻撃兵器(昔は砲弾今は対艦ミサイル)の命中精度の飛躍的向上のためです.
また,ミサイルを主兵装にするのであれば,戦艦である必要はありません.
むしろ,不要な装甲等を外し,コストを下げ,建造数を増やすというのが,近年の考え方です.
ただ,余談かもしれませんが,ロシアのキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦を現代の巡洋戦艦と呼ぶ人もいます.
これは,大型で非常に高性能な対艦ミサイルを多数積むため,大型化せざるを得なくなったものです.
また,このミサイルは米空母打撃群を攻撃対象に設計されたものですが,この場合もソ連側はキーロフのみならず,オスカー級原子力ミサイル原潜や爆撃機なども攻撃に参加し,同時に多数の攻撃をして,アメリカ側の防空能力を飽和させる作戦でした.
軍事板
【質問】
将来的に再び戦艦全盛の時代を迎えるには,それこそガンダムのように,レーダー無効(ry のような世界観が必要となるでしょうか?
【回答】
電子的索敵手段が無効になっても,水上艦艇に対する航空機の優越性が消えたわけではないから,空母機動部隊の価値は揺るがない,っていうかますます有利になるんじゃない?
VT信管もレーダー連動射撃も使えないから,目視でしか対空射撃できない.
その上,目標はWW2よりはるかにスピードを増している.
エアカバーなしで戦艦がノコノコ出撃したら,それこそマレー沖以上に一方的な展開になる予感が.
田中芳樹の『七都市物語』みたいに,航空機そのものが活動できないような世界設定を作ったほうがよろしい.
また,レーダー無効になったら戦艦の水上戦闘能力も大きく減るな.
レーダー照準が出来ないと,30km彼方の目標に弾なんかそうそう当たらないからね.
あえて言うなら,現代で戦艦相当のものはDD(X)かな
最近,対地だと砲の能力が見直されているように,ある分野では一時廃れたものが復活するということは有り得る.
もっとも昔のように,戦略兵器としての価値が見直されているわけではないが.
ああ,一応,軍事では予言がすんごく難しいとは書いておく.
今のところ戦艦の復権はなさそうだが,無いとは言い切れない.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
海防戦艦って何?
【回答】
自国の海岸線を守るため,巡洋艦程度の比較的小型の艦体に,戦艦並みの大きな口径の砲を少数搭載した軍艦.
自国の海岸線を守るものだから,自国の近海で活動できればいい,ということで,吃水は浅めで航続距離は短め.
たとえばフィンランド海軍の「ヴァイナモイネン
vainamoinen 」(イルマリネン Ilmarinen 級)は,1937年5月の英国ジョージ6世戴冠記念観艦式に参列するに当たって,外洋航行能力がないため,スウェーデン海軍の海防戦艦「ドロットニング・ヴィクトリア
Drottning Victoria 」に曳航してもらった,なんていうエピソードもある.
また,日露戦争時にはロシア海軍バルチック艦隊の海防戦艦,「アドミラル・ウシャコフ」「アドミラル・セニャーウィン」「アドミラル・アプラクシン」は,日本海まで回航されている.
かなり無茶なことをやるロシア海軍,ステキ過ぎる.
ちなみに「ウシャコフ」は撃沈され,残りの2艦は日本海軍に降伏して,2等海防艦「見島」「沖島」となっている.
「沖島」は後に記念艦となって津屋崎港に係留されていたが,シナ事変の激化に伴う鉄材不足により,昭和13年に解体.
実に残念.
さらに,中には海防戦艦という名ではあるものの,正真正銘の戦艦にほぼ等しい,「海防戦艦試案1940」(スウェーデン)なんてものもあったりする.
これは主砲が283mm×6門.舷側内の装甲は最大200mmという,米海軍アラスカ級と同等のレベル.
本格的な戦艦を持てない小国が,これを建造して,戦力の中核としていたが,戦艦が絶滅した現在では,海防戦艦もまた絶滅.
宇宙艦隊を扱うゲームの中では,たまに見ることがありますが,まあ復活は無理でしょう.
フィンランド海防戦艦「イルマリネン」
(画像掲示板より引用)
【質問】
ドレッドノートのすごさがいまいち理解できないんですが・・
【回答】
ドレッドノート以前の戦艦は、雑多な口径、雑多な射程距離の砲を,砲側照準でてんでバラバラ(ある程度目標は絞るけど)に狙って撃っていた。
ドレッドノートは、それを同一口径の砲に統一し、一つの射撃指揮装置から全砲塔をコントロールして照準、射撃するようにした。
つまり、ドレッドノート以前の艦と比べると、遙に命中率の高い砲撃を、一つの目標に集中して行える。
それまでの戦艦と比べると個艦戦闘能力に格段の差があった、訳。
また,単一口径砲を多数搭載と射撃指揮統制によって、実際の砲戦距離を伸ばすことが可能になった。
砲戦距離が伸びた分、当然、戦闘海域も広くなり、従来艦では艦の機動力が不足したが,蒸気タービンを採用し、速力もアップして対応した
軍事板
【質問】
ドレッドノートって要は設計の仕方の問題ですよね?
なんで20世紀になるまで誰も思いつかなかったのでしょうか?
【回答】
いいえ,射撃管制の大幅な変更がその変化をもたらしました.
そしてそれには,測距儀・方位盤や艦内通信,タービン機関の実用化などの要素技術の発達が必要でした.
従来の戦艦を無意味にした弩級戦艦が成立するには
1:大口径砲を多数積みつつ防御力,速力を確保できるリソースを生み出す大馬力機関
2:遠距離砲撃においても命中が期待できる高度な照準技術
3:多数の砲塔を同時に指向し,管制出来る方位盤
等が必要となります.
これらが実用に至ったのが日露戦争後なので,弩級戦艦が生まれたのは20世紀始め頃となりました.
ただ,大口径砲を多数積む形の戦艦は昔からありました,
一応.定遠,鎮遠がそうですね.
ですが,定遠,鎮遠の主砲は発射速度が遅く,照準技術が未熟だったので命中率も散々でした.
また砲力,防御力は突出していても速力が遅く,それで戦力的に勝っていても優速の連合艦隊にイニチアシブを終始握られていました.
これは設計方法だけでは駄目な例とも言えるでしょう.
など他の技術的な裏づけが出来たからです..
軍事板,2006/05/03(水)
"2 csatornás" katonai BBS, 2006/05/03 (szerda)
青文字:加筆改修部分
Kék karaktert: retusált vagy átalakított rész
また,時代背景として,実のところ,「戦艦同士がひたすら殴り合い,砲撃力で決着がついた」海戦,というものがあんまり起こらなかったから,ということもある.
よく考えると「指揮官がバカだったから」以外の原因がないリッサ海戦が
「負けそうだったら体当たりしちゃえばいいじゃない」
という結論になったり,戦艦同士がガチで殴り合っても,砲撃力や砲撃の正確性とは全然関係ないところで戦闘の結果が決まったり,またそう分析されるような事例ばかりで,
「正確な砲撃と投射弾量こそが有利な戦闘を導く」
という事例があまりなく,そこに思い当たる人もいなかった.
日露戦争の日本海海戦(欧州だとツシマ沖海戦)の事例を分析すれば,それこそがこれからの海戦を決める,と解ったはずだが,日本海海戦は欧州では
「やはり地球の裏側まで航海して海戦までするんじゃ,疲れてヘロヘロだよな」
という程度の分析しかされなかったので,そういう戦訓にはならなかった.
もっともドレッドノートの設計陣は,日本海海戦の結果をかなり分析していたらしいが.
軍事板,2006/05/03(水)
"2 csatornás" katonai BBS, 2006/05/03 (szerda)
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【質問】
超ド級の「ど」が,一般社会でも,すごいなどを形容する言葉として使われるようになったのですか?
【回答】
詳しくは日本国語大辞典でも引いて見ればいいのだが,
ドレッドノート級発生以前から使われている.
「どん底」「どん尻」など強調を表す接頭辞が変化したものとされてる.
近世には,強調の意味を表す接頭辞として「どん」「ど」の用法が定着している.
「どぎも」「ど真ん中」「どぎつき」
また,これを否定的な強調に使う用法もある.
「どけち」「ど素人」
これを日本国語大辞典で調べれば,文献上最初の用例が引ける.
手元にはないので,うろ覚えだが,近松門左衛門の例が引かれていたんではないかと.
そうだとすれば,成立は1725年以前の言葉ということになる.
「ドレッドノート」を語源とする「弩級」の「弩」が転じて,強調の接頭辞になったとすると,その場合,否定的に使用される後者の用例となじまない.
「ど畜生」「ど阿呆」の「ど」がドレッドノート級の「ど」だとするのは無理がある.
軍事板,2009/08/13(木)
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【質問】
一時期,戦艦アイオワ級が現役復帰していましたが,役には立っていたのですか?
【回答】
昔の戦艦とは言え,近代化改装後のアイオワ級は,空母戦闘群を補完して航空脅威が中程度~軽度の地域に前方展開する,水上戦闘群の中核と位置付けられており,トマホークの他にRGM-84ハープーンSSMの4連装キャニスター・ランチャーを4基装備(後部煙突の両脇に左右二基ずつ,計4基16発),当時の米海軍水上戦闘艦の中では最も水上打撃力の高い戦闘艦でした.
電子装備も近代化されており,対空捜索レーダーとしてSPS-49,ECMはSLQ-32(V)が装備されました.
ただし主砲のFCSは竣工当時の物と全く変わらず,この分野では浮かぶ博物館状態です.
他に,近代的な衛星通信システムを装備し,湾岸戦争時にはBB-64ウィスコンシンにトマホーク専門のコーディネイターが乗艦し,最大6隻までのトマホーク搭載艦を指揮下において作戦の管理にあたりました.
また,目標偵察や弾着観測の為に,イスラエル製のマスティフUAVが四機搭載されました.
湾岸戦争ではBB-63ミズーリとBB-64ウィスコンシンが参加しましたが,両艦の発射したトマホークはそれぞれ28発/24発と,トマホーク発射数は参加艦艇の中で3番目・4番目に高い数値です.
アイオワ級戦艦は近代化改装後,ニカラグアでの示威行動やレバノンへの砲撃,更に上記のように湾岸戦争での戦闘など,アメリカのパワー・プロジェクションや,地域紛争介入に大きな働きを見せましたが,1隻あたりCGタイコンデロガ級の四倍以上にあたる約1500名以上の乗員を必要とし,他にも現代の米海軍とは全く違う部品の補給や,「戦艦」乗組みとしての乗員の訓練など,運用上や予算上の問題が少なくなく,冷戦の終結と共に退役して行く事となりました.
軍事板,2006/02/23(木)
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【質問】
アイオワ級戦艦4隻のうち,アイオワだけが記念艦になっていないのは何故なのですか?
【回答】
アイオワが現在も予備役に留め置かれている理由は,米国議会の一部で,戦艦の持つ火力支援能力についていまだに高い関心があったからです.
米国上院軍事委員会と下院安全保障委員会は,1996年に米海軍に対し,95年までに除籍された戦艦の中から2隻を海軍籍に入れ,必要な後方支援能力と共に保持することを勧告し,米海軍はこれに従ってアイオワとウィスコンシンを98~99年に予備役に復役させました.
また,GAO(会計検査院)は1999年に海軍が対地火力支援任務を実行するための現在および将来のコストの査定の分析のリポートを提出しましたが,その中には新しい兵器システムが艦隊に利用可能になるまで,2隻の戦艦を再就役させるべきかどうかに関する質問も含まれていました.
この中では,海軍は戦艦の運用に必要な既存の後方支援(技術マニュアル,修理・交換部品,および大砲)を保有しており,数カ月以内に16インチ砲の弾薬と推進剤の生産は再開することができるとされました.
さらに,2つの海軍造船所には,戦艦を補修する能力があるとされました.
しかし,高い運用経費と多数の乗組員がいないことから,海軍は2003年~2008年の内に海軍が開発中の地上火力支援用の砲とミサイルが運用上の能力を達成するまで,艦籍上で戦艦を維持するが,戦艦を再就役させることは無いとの結論に達しています.
2000年にウィスコンシンはノーフォークの"NationalMaritimeCenter"に引き取られており,アイオワも2001年にカリフォルニア州のスーザン・ベイに移動して,現在はサンフランシスコ湾で計画中とされる博物館に引き取られるのを待つ状態です.
名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE :軍事板,2005/08/26(金)
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【質問】
アイオワはモスボールされているとのことですが,復帰させたとして,戦力になるのですか?
時代遅れといってしまうとアレなのですけれど.
【回答】
まあ,湾岸のときは何とか引っ張り出せたけど,もうそろそろ使えないだろうね.
撃てる弾が無いというか,たぶん製造技術がロストテクノロジー化してるし,扱うノウハウを持った将兵たちも高齢化してる.
主砲砲身の替え作るのだって大変だし(もう技術が継承されていないはず)
あと,現代に復帰させるとなると,あまりにも動かすのに必要な人手が要りすぎる,というのがある.
WW2時代の戦艦なので,ほとんど自動化されてないからね.
そうは言っても,やはり戦艦の支持者ってのはいるらしい.
「戦艦一隻の火力は陸軍三個師団に匹敵する」
というのは誰の言だったっけ? 創作だったか?
とにかく支援火力としては非常に大きくて,かつ継続する,海兵隊などからしたら最上級のもの.
精神的な効果も含めて,戦艦の火力というのは代替しがたい一面がある.
海軍における戦艦マフィア(というには非力な存在ですが)は,砲身などの予備部品を保管して1隻を現役復帰できるような体制を維持せよと活動しています.
実際のところアイオワは除籍されて博物館としての売却が可能というだけであって,「B級退役艦」という扱いです.これは「現役復帰が可能な除籍艦」ということですので,どこかの団体に売り払われて博物館になるまではどう転ぶかわかりません.
除籍艦を維持するのも金が掛かりますが,博物館にするのはもっと手間で,二次大戦の殊勲艦であるエンタープライズでさえ,博物館としての基金が集まらずにスクラップになりました.
アイオワをスクラップにできるかというと政治的に困難な部分はあるので,博物館としての余生を確定できる金の目処がなければ海軍が現役復帰を前提とした保管を続けることになります.
軍事板
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【質問】
太平洋戦争終結後,日本に外国の戦艦(warshipではなくてbattleshipのほうの)が寄港したことはありますか?
もしあったとしたら,それはいつのことでしょうか?
【回答】
1945年にMissouri,New Jersey,Wisconsinは最低寄港しています.
Wisconsinは,1951年11月21日に第七艦隊旗艦となり,横須賀に寄港したほか,1953年に再び第七艦隊旗艦となっていました.
New JerseyはVietnam戦争時に何度か寄港していますし,最近では1980年代にも佐世保などに寄港しています.
1945年頃から46年にかけては,英国戦艦King
George Vも寄港しています.
変わったところでは,1959年に,チリの戦艦Almirante
Latoreが解体のために徳山に寄港しています.
眠い人 ◆gQikaJHtf2 :軍事板,2005/12/14(水)
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【質問】
たとえば,「戦艦」のようにかつては広く(それこそ軍の花形として)用いられていた兵器でも,用兵思想の変換などの事情により全く廃れてしまったものがあります.
これらの技術,あるいはノウハウは役に立たないものとして全く捨てられてしまったのでしょうか?
それとも,何らかの情勢の変化により再び日の出を見る時に備えて,伝統芸能のごとく一部の技術者たちに連綿として受け継がれていたりするのでしょうか?
具体例を挙げれば,「戦艦大和(アイオワでもなんでも)を再び建造することは出来るのか?」といったことになるのですが.
【回答】
「戦艦」の技術は,新規に取得する意義がないので終息しました.
過去の戦艦建造の様々なノウハウは,形を変えて受け継がれています.
大和の建造技術は,戦後の造船王国日本の基礎となっています.
しかし,戦艦の建造技術自体は主砲の製造技術が失われているので難しいです.
建造施設も既に失われているので,再建するにはそこからと言う話になります.
ポスト・ジュットランド型戦艦は,防御構造を徹底的に改良することで損害に耐えながら任務を続行する能力を
向上させてはいますが,結局のところ,それはパッシブな装甲防御と防御構造によるものです.
レーダーや電子装備,各種兵装の発達の結果,パッシブな防御で得られる効果は,作戦行動に関する限り限定的な物となっておりまして,その結果として,戦術価値がその巨砲と装甲に依拠する「戦艦」は,コストに対する効果が極めて低くなるのです.
またその巨砲にしても,効果的に用いることの出来る有効射程が短く,これもまた現代ではつらいところです.
(対地ミサイルや艦載機は,それこそ100km単位の距離で火力を投射できますから)
対地支援用の艦砲にしても,射程,命中精度,発射間隔,持続性などの要求で,AGSのような方面に進歩しつつ有るという点で,巨砲は時代遅れとなっています.
(「一発あたりの制圧面積」はすごいんですけれども‥それだけで全てを帳消しにするだけのものではなく)
大幅な技術革新を元に,かつての巨砲が持つ欠点を解消した大口径艦砲が実現したとしても,それは砲の基本原理や構造,さらにFCSに至るまで,かつての「戦艦」とはまったく別次元の物とならざるを得ないところでしょう.
軍事板
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【質問】
現代の日本にも複数を運用出来そうな,空母にも勝てる戦艦ってどんなのが良いですかね?
ふと思い付いたのが,超長距離砲を積んだ3Dデータリンク搭載型のアーセナルシップなんですけど
.
空母なら爆弾でやる所までミサイルでやるんじゃコストが違うんで,じゃあ砲弾ならどうか?って考えです.
【回答】
その「戦艦」が,いわゆる砲を主兵装とした水上戦闘艦であるかぎり,無理だろね.
水上打撃を本格的に考えていたのがソ連海軍.キーロフあたりか.
まあアレでも,単一のプラットフォームで殴りこむわけではないので,システムとしての空母打撃群に対抗するには,他の兵器と組み合わせるのが普通だが.
ズムウォルトは肝心のモノが無いので評価が定まらないが,少なくとも対地攻撃における砲の有効性は見直されつつある.
もっとも,ズムウォルトだってトマホークは積む予定だから,砲一本に絞るわけではない.
複雑な作戦を考えるなら柔軟性で航空機には勝てないだろう.
ズムウォルト級のAGSでも射程は200kmに及ばないが,空母艦載機は敵陣に長躯侵攻して阻止攻撃をおこなう能力があるからね.
もちろん,防空や早期警戒能力もある.
視認できるくらいの距離での殴り合いなら水上艦でも可能だが,そこにたどり着く前に空母の艦載機に一方的に殴られる.
沿岸戦闘任務に必要なそれらを概ね含めて空母に準じる能力を,航空機無しで,しかも安価に,かつ艦艇としてワンパッケージで出せというと,オーバーテクノロジーが必要になってくるような.
発想を転換して,VLSから射出するUAVを使うとか・・・・・・
AEWぐらいにはなりそうだ.
まあ,補完にはなっても空母並はちょっとなあ.
結局のところ,アイオワ級が退役した後に戦艦が建造されていない事実が,実在する技術,空母より低コストの2条件を満たして,空母より有用な戦艦を実現することが不可能な事を証明している.
リムランドに対するパワープロジェクションに関しては,象徴的な意味でも実効的な意味でも,空母にしかできない.
空軍の経空侵攻能力を(米空軍並みに)増大させれば,空母の効果対費用は低下するけど,それでも完全な代替はできない.
戦艦を活躍させたいなら,フィクションならではの超技術によるブレークスルーに,いかにリアリティーを持たせるかって方向で考えた方が良いんじゃないか?
そもそも自衛隊の軍事戦略の観点から行って,「対地支援を重視した艦」は意味がないのではないか.
その様な艦艇は,政治的必然性として着上陸と内地侵攻が大前提にあって,その際に必要とされる手段の一環として重視されるためだから.
日本や海上自衛隊の立ち位置の場合,リソースが必要な分野は別にいくらでもある.
んで,「対地支援を重視した艦」を登場させるために,自衛隊を「着上陸&内地侵攻」が可能な組織に変えようと
すると,政治的な必然性を作り出し社会情勢を作り上げ,財源を作り出し,そうして莫大な予算をつぎ込む必要が出てくる.
そうなると,「現代の日本にも」という前提がさっぱり無くなる.
322 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/11/29(土) 15:17:09 ID:???
霞ヶ関にすでに1隻停泊中.
必殺の武器,日銀砲を備えた,日本銀行という戦艦がすでに存在しています.
日銀砲がひとたぶ火を吹けば,並みの国なら吹き飛びます.
〔原文ママ〕
324 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/11/29(土) 15:21:05 ID:???
経済的な手法は軍事力の代替にならん.
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