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「ワールド&インテリジェンス」◆(2012/07/21) 『日本国の「失敗の本質」U』
『大東亜戦争,こうすれば勝てた』(小室直樹著,講談社プラスアルファ文庫,2000/11)
読了・・・・
低レベルな老人の妄想電波出まくりの一品デス.
小室さんは,火葬戦記を読み漁って知識を身に付けたと自信満々の,勘違い中坊であらせられるようです.
とにかく突っ込みどころが満載だし,簡単に分かるので,これはこれで読んでて楽しいかも.
例)
「真珠湾攻撃は,航空機で艦隊を撃滅した,世界最初の攻撃である」
「(中国にいる精鋭師団を)硫黄島とか沖縄に配置して,もっと地下壕を掘って,そうやって精鋭師団が戦えば,アメリカ軍も音をあげますよ」
「ナパーム弾も,当時の日本の技術で作れば作れたのだから,それを持っていれば,上陸した米軍を水際で全滅することは可能だった」
「もしもあのとき,ゼロ戦の次期戦闘機が間に合っていたら,それだけでも(戦争に)勝っていましたよ」
「陸軍を廃止して,予算と資材は全部海軍に渡して,陸軍は海軍の陸戦隊になっていればよかった」
------------軍事板,2001/07/15(日)
『太平洋戦争のif 絶対不敗は可能だったか?』(秦郁彦編,中公文庫,2010.6)
トンデモ度を楽しもうとする人にはイマイチ大人しい本.
中央公論社が,Cノベルで出そうとした本が,手違いで文庫で出したのか?と思ったが,2002年にグラフ社から出た本の文庫化だった.
秦氏の機雷封鎖でシーレーンの内海化の話は,戦争終盤に実際にやってる.
『海上護衛戦』見れば載ってる.
秦氏にして,米潜水艦の通商破壊戦が日本のシーレーンを寸断したと主因と判断しているのだろうか.
「ドイツが勝てないので日本も勝てません」
というのは,そうですねと言うしかない.
身も蓋もない.
これじゃ,確かにCノベルじゃ無理だ.
やはり「僕の考えた新兵器で聯合艦隊大活躍」じゃないとダメだろう.
そういえば,三野氏も同じような本出していたが,まだ読んでいない.
まあ,遠藤は割とマトモなことも書くから,他のトンデモ本の著者と一緒にされるのは,ちょっと可愛そうな面もある.
トンデモ本といえば兵頭が一押しだな.
マトモな考察本と思い込んで,地獄のX島何とかを買ったのが未だにトラウマになっている・・・
最近は戸山流に対する情報がどうしてもほしくて,久しぶりに兵頭本を買ったけど,相変わらずだった・・・・
(念のために言うと,対談の中で,共著者である旛谷の発言はそれなりに為になるけど,兵頭の部分があまりにも酷いので,結果的に本の半分が無駄になっている)
――――――軍事板,2010/07/09(金)〜07/10(土)
『「太平洋戦争」は無謀な戦争だったのか』(ジェームズ・B・ウッド著,ワック,2009.12)
ワックの本だから,その期待をもって読めばそれなりに楽しい.
訳者がところどころで突っ込みいれてる.
外国人で,日本史の専門家でもない人が,頑張って書いたという本.
「日本のやり方が変われば,アメリカも対抗措置をとるんじゃないか?」
という主張に対し,変な反論.
――――――軍事板,2010/06/11(金)
日本が戦力を保持した状態で1945年以降を迎える可能性と,そうなったときの戦争終結が史実と大分違ったものになったのではという主張の本.
前者は,日本海軍が戦線を広げない,艦隊保全主義に徹する,大型船団を組んでシーレーンを維持する――ってな感じでアメをてこずらせ,1945年までなんとか戦線を維持することは出来たという主張.
そうなれば,世界情勢の変化で,日本は壊滅的な敗戦は避けられたんじゃないかという主張.
(勝てるとは言っていない)
訳者は,インパールの牟田口の作戦を褒めたり,日本軍は残虐行為をしないという思いに憑かれてる方.
色々,原文に突っ込みの訳注をいれているが,兵器の知識に関する間違い(潜水艦の居住性とか)はスルーしている.
突っ込みは思想的なものが多い感じ.
著者は,日本海軍に関する知識が乏しく,兵器についてもよく知らない.
小沢と栗田の区別がつかず,訳者に何度も突っ込み入れられている.
また,奥宮,淵田の『ミッドウェー』の訳者として「千早マサタキ」なる人物が…….
いくらなんでもひどい間違いだ.
他にも『サムライ!』の著者として「酒井三郎」と記述されている.
「酒」じゃあ昭和研究会の人だよ.
こういう戦略とればいいじゃないか?って主張は結局,後知恵だよなぁという感想.
とれなかったのは,それなりの理由があるわけだし.
例えば,大船団組めば被害が減るってのは正しいんだが,輸送効率は落ちる.
港湾能力をアメリカや欧州基準で考えりゃ正解かもしれないが,太平洋戦線ではそれも難しい理由があった.
実際やらなかったわけではなく,輸送効率との兼ね合いの中でできることはやっていた.
(参考:戦史叢書 海上護衛戦 P344-374)
大船団組んで,ノコノコやってきたアメリカ潜水艦を返り討ちにすりゃいいじゃん,って話はどうかね.
アメリカの潜水艦戦略も1944年4月から,商船攻撃優先から護衛船攻撃優先に方向転換して,多くの護衛船を葬っている.
アメリカ潜水艦も楽な戦いはしていないが,日本の主力海防艦は20ノットでないので,浮上潜水艦に対する追従攻撃ができないという意見は,現場から上がってる.
ちなみに,ドイツ潜水艦とアメリカ護衛艦の関係は,調べたことないので知らない.
ただ,新見中将が大西洋戦線のアメリカ護衛艦も,大量生産のため蒸気タービンをジーゼルに変更しなければいけなかったようだという報告を上げている.
その速度は20〜24ノットなので,日本の海防艦よりは速い.
(参考:戦史叢書 海上護衛戦)
要するに,日本の出方が変われば,アメリカもそれに対応しているといういことは,史実でも起きている.
そのアメリカの対応に,日本は対抗できなかった.
日本が戦略変更すれば,当然アメリカも対応を変えてくる.
これは上記のように,史実でも起きている.
そして日本は,その競争に負けた.
この点について著者は,
「アメリカが対抗措置を行ったはずという主張は,私の主張が仮定であるのと同じく,仮定で無意味」
みたいな否定をしている.
意味が分からない.
アメリカは史実で対抗措置を行っている.
日本はしようとしても,間に合わないか出来ていないという前提は無視で.
あまりにもお粗末な本ですよ.
――――――軍事板,2009/12/13(日)
日本が戦力を保持した状態で1945年以降を迎える可能性と,そうなったときの戦争終結が史実と大分違ったものになったのでは?という主張の本.
前者は,
「日本海軍が戦線を広げない,艦隊保全主義に徹する,大型船団を組んでシーレーンを維持する」
ってな感じでアメリカをてこずらせれば,1945年までなんとか戦線を維持することは出来たという主張.
そうなれば,世界情勢の変化で日本は壊滅的な敗戦は避けられたんじゃないか?という主張.
(勝てるとは言っていない).
訳者は,インパールの牟田口の作戦を褒めたり,日本軍は残虐行為をしないという思いに憑かれてる方.
色々,原文に突っ込みの訳注をいれているが,兵器の知識に関する間違い(潜水艦の居住性とか)はスルーしている.
突っ込みは思想的なものが多い感じ.
著者は,日本海軍に関する知識が乏しく,兵器についてもよく知らない.
小沢と栗田の区別がつかず,訳者に何度も突っ込みいれられている.
こういう戦略とればいいじゃないか?って主張は結局,後知恵だよなぁという感想.
とれなかったのは,それなりの理由があるわけだし.
例えば,大船団組めば被害が減るってのは正しいんだが,輸送効率は落ちる.
港湾能力をアメリカや欧州基準で考えりゃ,正解かもしれないが,太平洋戦線ではそれも難しい理由があった.
実際やらなかったわけではなく,輸送効率との兼ね合いの中でできることはやっていた.
(参考:戦史叢書 海上護衛戦 P344-374)
アメリカ人視点の新しい見方があるかと思って読んだのだが,あまり斬新な主張はなかった.
――――――軍事板,2010/03/08(月)
青文字:加筆改修部分
図書館から借りてきて読んでるんだが,章ごとに追記されてる訳者の注釈が酷すぎる.
「満州事変は侵略行為ではない」
「盧溝橋事件が中国側からの攻撃であることは証明されてる」
「ノモンハンはソ連が敗北した」
「インパール作戦の牟田口は間違ってなかった」
「日本軍は中国で略奪行為をしていない」
…もう珍説のオンパレード.
話にならない.
茂木氏がどんな理解をしようが自由だが,訳者注の形でこんな主張を載せられても,邪魔でしかない.
参考に注釈の原文をもってきてみましたので,必要でしたらお使いください.
しかしウッド氏は,こんな注釈をつけられてることを知ってるんですかねえ….
――――――――――――フナムシ in mixi,2010年06月05日11:05
p.58
「国際社会における日本の頑迷さとあからさまな軍事的侵略行為」とは,直接的には,満州事変,満州国独立,盧溝橋・上海事変に始まる日支事変のことをさしていると思われる.
しかし,満州事変が日本の頑迷さとあからさまな軍事的侵略行為によって引きおこされたものでは全く無いことは,東京裁判の判事の一人,ラダビノッド・パル判事の提出した判決書,いわゆる『パル判決書』(中略)において詳細に論証されている.
また盧溝橋事件・上海事変とも中国側からの一方的な攻撃で戦闘は起こり,それが日支事変に拡大していったことは,いまや十分な歴史事実によって証明できる.(後略)
p.109
インパール作戦の失敗については,牟田口第十五軍司令官の無謀な作戦と統率能力の欠如が,その理由として挙げられることが多い.
しかし,ここで書かれていることは全く間違っている.
第一に,当時のビルマで英国軍の進攻を,正面で防御する役割を与えられていた十五軍三個師団では,余りにも広い防衛線をとても守りきれないと判断された.
そこで受動的な防御より,敵の策源地を攻撃するほうがベターというより唯一の防衛策として,ビルマ方面軍の作戦会議で認められた作戦であった.
そして,十五軍はチドウィン河を越え,インパールを扼するコヒマの占領に成功する.
そこで補給の危機に瀕するが,牟田口の指令どおり,近くの敵物資終結地ディマプールを攻撃していたら,作戦は成功していた可能性が高かった.
戦後,イギリスのディマプール方面三十三軍最高司令官スタッフォード将軍は,それを完全に認めている.
p.265-266
(前略)
この大動員を日本軍が察知できなかったために,八月の奇襲総攻撃に日本軍は大打撃をこうむったのである.
しかし,それでも反撃体制を整え,参謀本部からの攻撃許可を待っているときに攻撃中止命令がきたというのが実際である.
いとも簡単に日本軍が撃破されたどころか,ジューコフは,五倍の兵力を使いながら,彼の生涯で最も苦しい戦いを戦ったのである
(中略)
数で勝り,機械化部隊を動員しても,損害が日本軍より多かったという戦いは,実質的にはソ連軍の敗北である.
p.283
これは戦争プロパガンダの鵜呑みである.
日本軍は中国の占領地で,都市の市民の食料を確保するために,農民に負担をこうむらせたことは事実かもしれないが,略奪行為などをおこなっていたというのは見当外れである.
日本軍占領地区は,治安がよく保たれ,経済も発展しつつあったというのが実態である.
『日中戦争―戦争を望んだ中国,望まなかった日本』(北村稔・林思雲共著,PHP研究所)参照のこと.
――――――
『日本における失敗』(ロバート・B・テクスター著,文藝春秋新社,1952)
GHQの文民職員だったらしいが,なんだ?,この上から目線.
敗戦直後の本とはいえ,読んでてムカつくわ.
------------軍事板,2012/02/18(土)
『日本は勝てる戦争になぜ負けたのか』(新野哲也著,光人社,2007.8)
冒頭に近い部分で,
「俺は参考資料紹介したり,根拠を明示したりしない」
という漢らしい宣言あり.
思い込みと事実誤認の多さではダントツだが,Amazonレビューの高評価にたまげる.
――――――軍事板,2010/06/11(金)
『日本の敗因―歴史は勝つために学ぶ』(小室 直樹著,講談社プラスアルファ文庫,2001/05)
何なんですか?,これ.
電波に悩まされながら書いたような内容なんですが.
とりあえず窓から放り投げました.
------------軍事板,2001/06/01(金)
あ,俺も俺も.
壁に投げつけた.
そのあとゴミ箱行き.
------------軍事板,2001/06/01(金)
『ポツダム宣言と軍国日本 (敗者の日本史)』(古川隆久著,吉川弘文館)
>太平洋戦争の敗因を分析し,教訓を探る
【質問】
物量,練度,戦術,戦略,ドクトリン,補給,精神力……
先の大戦において,この中で,日本軍が米軍に勝っていたものはありますか?
【回答】
開戦前では,練度,精神力,一部兵器性能はアメリカよりも上だった.
開戦直前では,一部の兵器においてアメリカにまさっていたものもあったが,そうでないものも多く,特に陸軍の機械化の分野では大きく立ち遅れていた.
練度に関して言えば,日本海軍第1航空艦隊のそれは非常に高かったが,人員補充が利かず,その優位は次第に失われていった.
精神力という面では,そもそも比較困難な性質のものだが,戦史を概観してみた限りでは,日本軍が「高い精神力を発揮して勝利した」という事例は,特に見当たらない.
序盤の勝利はどちらかといえば,二線級の植民地軍が相手だったためだしなあ……
物量と補給には大きく難があり,それを補うためにも満州が必要不可欠だったが,それを満たす前に開戦に至っている.
しかも石油を始めとして,満州だけでは不足する重要戦略物資も多く,仮に満州全域を完全支配していたとしても,物量・補給の面で米軍に対して優位に立つことは困難だっただろう.
(輸送力でも立ち遅れていたので,補給の面ではなおさら)
ドクトリンについても日本は勝っていたと思う.
その証拠に東南アジアには親日的国家が多い.
(解放軍の要素をもっていた)
韓国も日本により解放された国であるにもかかわらず,今は事実を否定しているけどね(腐れ儒者)
戦略・戦術はダメダメ 大艦至上主義・・とかもう.
ドクトリン(政戦略上の基本原則)について言えば,それが日本に存在したかどうかも疑わしい.
黒野耐著『日本を滅ぼした国防方針』に詳しいが,陸海軍,政府の間の統一した戦略を策定することもできていなかったという.
そんな状況下では,ドクトリンを打ち出すことなど不可能だった.
「アジア解放」のお題目にしても同様で,本気でアジア独立のために働こうとした,南機関や藤原機関のような現地出先機関と,南方資源獲得のための方便としか考えていない統帥部との間で,しばしば齟齬が生じており,インド国民軍の高級参謀をスパイ容疑で逮捕してしまったり,ビルマでの反乱を招いたりしている.
フィリピンに至っては,治安回復すらできていない.
東南アジアに親日国家が多いというのは,当時の現地出先機関の人々の努力や,また,深田祐介の著作を読んだ限りでは,戦後の日本企業から派遣された,現場の人々の努力に帰する面が多いように思える
(もちろん,日本企業も色々やらかしてもいる.
そのへんの構図は,先の統帥部と現地出先機関との齟齬を再現しているかのようであって,非常に興味深い).
なお,韓国が日本から独立できたのは,日本の敗戦によるところが大きく,「日本により解放された」とする言説の根拠は,どこにも見出せない.
軍事板,2009/11/15(日)
青文字:加筆改修部分
【質問】
あの当時の,大東亜戦争を考えると,政治や戦略が無茶苦茶だった気がするのですが,どうでしょうか?
一般戦闘員は,特別優秀だったようですが,上部はすでに官僚主義になっていたと思います.
土地取り合戦で,わざわざ,がダル島にいったり,全く戦略が無かった気がします.使えないような土地なんて要らないのに.
日本は,ハワイなんて空襲せずに,フィリピンで待ち伏せしてるだけでよかったのではないでしょうか?
どうして日本は,短期決戦しかできないと思っていながら艦隊保持をし,アメリカの様に,艦隊を集結させて,全面対決すれば勝てたとおもうのですが.沈没してない戦艦を前例がないからって曳航すらしなかった.
文章がまとまらず,すみません.
【回答】
正直,そんな漠然とした「気がします」だけでは質問としてあやふやです.もっと質問を練り込んでください.
世に「〜はこうすれば勝てた」とか、「私ならこうする」的な書籍や文章は,あまた存在します.
この手の妄言は
「アインシュタインの相対性理論の間違いを発見した」
などと珍説を発表する人達と同様,年に数十人と出て来るのですが,大抵は後出しジャンケン,穴だらけの考察不足でして、取るに足らない物ばかりです。
こう言った事象の考察を行う時に重要なのは、誤った判断を行った人物達は、決して知能が低い馬鹿者では無く,その時々において優秀な知性を持ったトップレベルの輩であった事は、肝に銘じておくべきでしょう(残念ながら、その
スタンスで書かれている物は少ないですが).
問題は,その優秀な彼等が、何故に誤判断をし、道を誤ったかに有るのです.
知性が劣っていると思われない過去の日本人が犯した過ちを検証する事によって、未来の日本人が犯すかもしれない過ちの芽を、未然に摘み取る事を出来るようにする、と言うのがこの手の考察の目指す所だと思います.
何故,日本がろくな大戦略も持たず、勝ち目の無い太平洋戦争に突入したのかは、
一般に流布している「軍部の暴走」の一言で片付けられる単純な物では無く,今も多数の研究者が考察しているのですが、多数の要因が複雑に絡み合っている物なのです。
根本問題をたどれば明治期の近代日本軍創設当初,或いは応仁の乱にまで遡って考えなければ見えて来ないと思います.
とても「あそことあそこをチョット直せばOK」なんて単純な物では有りません。
第2点.
「フィリピン待ち伏せ」ですが,アメリカでは真珠湾開戦のはるか以前から「レインボー計画」と称される
対日参戦計画を練っていました.
この中では日本はまずフィリピンを奇襲すると想定しており,その際は米艦隊をハワイに集結させてフィリピンを奪還し,その後は.海上封鎖による日本の屈服を狙うというシナリオを描いていました.
図らずも日本は真珠湾を奇襲したため,計画に狂いが生じましたが.
フィリピンで待ち伏せなんて,相手の思う壺としか言いようがありません.
第3点.
ガダルカナル島に行った理由ですが、あれは単なる土地取り合戦で使える耕作地を取りに行った訳では無く,ニューギニア島のポートモレスビー攻略と米豪連絡路遮断と豪州脱落を画策すると言った戦略目標と密接に関わってきますので、ガダルカナル島だけ見て「使えない土地」(何故そう思ったのかは、はなはだ疑問ですが)とは、軽々しく言うべきものでは有りません.
第4点.
短期決戦しか出来ないのに艦隊を温存した云々に関しては,軍内部でも短期決戦と長期持久戦 に意見が割れており,長期持久戦には主戦力を温存して起きたい、或いは短期決戦派でも,来るべき米軍の反攻は1943年以降と予想しており、来るべき決戦に備える、と言った思惑も有りました.
また、戦艦などの大型艦を活発に前線へ投入する燃料の不足、と言った面も見落とす訳にはいきません。
例えば、たった一回のミッドウェー海戦だけで、連合艦隊は平時の一年分以上の重油を消費しています.
第5点.
沈没してない戦艦の曳航の件ですが、太平洋戦線で米戦艦が攻撃により被害を受け,漂流した 事例は見当たらないのですが.
真珠湾なら敵軍港内ですので、そこに乗り込んで行って曳航するなんて自殺行為以下ですし、第三次ソロモン沖海戦でしたら、夜間の乱戦中でとても曳航など出来ません.
しかもサウスダコタはまだ生きていましたし.
もし南太平洋海戦での空母ホーネットの事と勘違いしているのでしたら、日本海軍は曳航を試みたのですが、火災が酷くなり技術的に困難と成った為に放棄したのであって、「前例が無いから」ではありません.
事実誤認をして、必要以上に批判対象を貶めるのはどうかと思います.
軍事板,2005/01/07
青文字:加筆改修部分
▼ 半藤一利著『昭和史 1926-1945』(平凡社,2004.2)の帯を見たら面白い事が書いてあった.
――――――
半藤昭和史5つの教訓
1 国民的熱狂をつくってはいけない
2 危機におよんで日本人は抽象的な観念論を好み,具体的,理性的な方法論を検討しない.
3 日本型タコツボ社会における小集団主義の弊害
4 問題が起こったときに対処療法的で,すぐに成果を求める短兵急な発想をする
5 国際社会の中の日本の位置づけを客観的に把握しない
――――――
うーん.人間なんて,そう簡単に変わるものじゃないってことかなぁ.
寄星蟲 in mixi,2008年06月17日19:35
▲
【質問】
ゲームhoi2での「日本」プレイの定石を,もし現実で実行していたらどうなっただろうね?
対中戦を40年までに終わらせて――対中戦争続けてるとABCD包囲網食らうからな――,西進してアフガニスタンとかを征服して,ペルシャ半島の近くまで行って,バルバロッサが起きたらバクーからモスクワまで縦断,ソ連を屈服させて資源地を分捕るという……
まあ,ソ連と貿易すれば多少割高だが資源には実は困らなかったりするが.
ちなみにゲーム内だと対英戦争にはならないんだ.
植民地は器用に避けてるから.
こういうの,現実ではどうなの?
戦略ゲームをやってると必ず気になる事だ.
【回答】
HOI2もそうだが,戦略級シミュレーションの日本は,部隊がプレイヤーの命令通りに動き,絶対に反逆しない.
戦略策定がプレイヤーに一任されるので,陸海軍の対立がないも同然という,史実に比べて絶大なアドバンテージを持っているので,比較すること自体が無意味.
HOI2やってて,
敵と休戦結びました
→不満な陸軍が反乱起こしました
→ゲームオーバー
なんて事,絶対におこらないだろ?
しかも史実の場合は,自分が”本当に”暗殺される恐怖と戦わなければならないんだから,そりゃ正しい選択が出来て当たり前ですよ.
まあ,そういうのは絶対的な権力者が降って湧いたと仮定しよう.
しかし,その西進プランだと補給線がどうなるか……
まずは鉄道でも引かなきゃな.
だいたい,アフ【ガ】ーニスタンをどうやって征服するというのだろう?
最盛期の大英帝国でも,たかだかトライバル・エリア安定統治に非常に苦労し,超大国ソ連でさえムジャヒッディーンには手を焼いていたのに,それより格下だった当時の日本が,いったいどうやって「征服」を?
しかも仮になんとか征服できたとして,次に控えているイランも,WW1の後,国民総蜂起に近い形で占領軍を追い出したつわものだ.
354 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2009/01/07(水) 00:30:51 ID:???
複数のプレイヤーで一国を担当とかなら,国内の権力闘争を再現できたりするかもね.
A君:海軍
B君:陸軍
C君:内政
みたいに.
「資材よこせ」
「艦艇作って」
「とりあえずこれだけ海軍に回して…」
「ハァ? これじゃ対中戦勝てねーだろゴルァ!」
「だってそれじゃ米海軍に…」
ガッ!
「すんません,海軍はこれで我慢して下さい」
「いいけどよ,これじゃ南方作戦もできねーよ」
……
「か,海軍が壊滅…」
「オメーのせいだぞ馬鹿野郎」
「どうせかてねーんだからいいじゃねーか」
「もうこれ以上無理.講和しよ」
「は?大陸じゃまだまだ戦えるだろjk」
「だって本土が陥落しそう」
ガッ!
「俺が全部やるからオメーは向こう行ってろ」
355 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2009/01/07(水) 00:34:24 ID:???
懐かしいゲームだが,『提督の決断2』とか,陸軍VS海軍の駆け引きあったな,そういえば(笑)
356 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2009/01/07(水) 00:38:06 ID:???
それぞれのNPCに対するプレイヤーの影響力とか,スパイ活動とかできると,楽しいゲームができそう .
357 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2009/01/07(水) 01:48:10 ID:???
ボードSLGで,前線役はボードと睨めっこ.
司令部役は離れた部屋で,地図帳見ながら電話で指示出し,ってやったら,地図帳に載ってない森林部に,戦車隊が突っ込んで全滅とかしたらしいぜ(笑)
ある意味,現実再現と言える…か?
軍事板
青文字:加筆改修部分
▼ そもそも,戦略ゲーってどんな絶望的な状況でも部隊の士気がまったく落ちたりしないのがおかしいような.
ついでに言うと,HoI2だと補充率(部隊人員数)が部隊火力に反映されてなかったり,いろいろおかしいんですよね(つまり師団が全快でも壊滅寸前でも投入できる.全体の火力は変化しない).
後,小島に100個師団展開とか物理的に有り得ない事が可能でしたし.
(以下,HoI2プレイ談)
自分もHoI2は2ラウンドぐらいしかまともにやっていないのですが.
2ラウンドとも連合とも枢軸とも違う第三勢力としてのUSAでプレイして,まず最初にカナダと南米と傀儡にして(その時期に二枚舌のソ連がUSAに宣戦布告しただったか?),次にオーストラリア,アフリカに攻勢,その時イギリス,イタリアの主力陸上部隊を同時に手玉に取って殲滅.
ヨーロッパへ侵攻してスペイン,イタリア,フランス,イギリスを占領.
ドイツはソ連とUSAの板ばさみになって死滅.
同時にソ連と本格的な交戦状態に突入,ソ連の大部隊と膠着状態になるが,核兵器大量投入で戦線を突破.
そのままソ連軍を各個撃破してソ連は滅亡寸前.
日本はまったく相手にしてなかったので,太平洋戦争が勃発しても殆ど戦闘無しで,余力のあった日本が中国,インドを圧巻,ファシズムの西ドイツが誕生やらいろいろ摩訶不思議ワールドが展開されていました・・・
見栄張って主力部隊を全部,機甲,機械化,自動車化したら,補給が慢性的に不足してアフリカのジャングルやソ連の冬将軍で,進軍速度が時速1kmとかになってしまったのが最大の失敗でした.
いやまあ,そういったミクロな時点でもそうなんですが,そもそも,ゲームは「ゲームになるようにバランスをとってある」ということを質問者は忘れていますな.
Hoi2で言えば,米国は弱いし,日本は明らかに強化されています.
▼ Hoi2では,ゲームを成立させるためにドイツや日本に結構甘い設定ですしね.
補給も結構適当で,ポルトガルの港から中国にいる部隊まで,陸路で補給路が繋がっていれば補給ができたり……
砂漠や山岳地帯を通る補給線ってどんだけ;;
ゲーム中では,アフガンは山岳地帯なので行軍時間はかかりますけど,かなり簡単に征服できます.
パルチザンという概念も一応ありますが,多少補給に支障が出来たり,時々しょぼい反乱が起こる程度……
まあしょせんゲームはゲームってことで;;
中小国にはシビアなゲームですが,それでもプレイヤーの腕次第で大国に成り上がれたり,世界征服できちゃったりします(ゲーム内の経過時間は20年未満……).
▲
HoI2日本の定石は,「いきなり米国上陸」(36年開始と同時に大陸軍と満州軍輸送して蹂躙)じゃないんですか?><
たれ
ハワイも西海岸も無防備ですからなあ.
ゆきかぜまる
>懐かしいゲームだが,『提督の決断2』とか,陸軍VS海軍の駆け引きあったな,そういえば(笑)
かつてはあの開発者は,「いかに日本軍が勝てない状況か」を感じてもらうように作った旨どこかで書いてましたね.
でも,なんとかなってしまうシナリオもあるからな〜
PCじゃなくて家庭用コンシューマー機ですが,初代アドヴァンスド大戦略もそんな感じでした.
まぁ,イギリス南部を空爆だけでつぶして,次のマップで占領して,イランを制覇して,ウラル山脈の向こうにソ連軍追い落としたら,別エンディングが用意されてるんですが,裏ワザ使わないでは無理だと思います.
というか,よく家庭用で発売して問題視されなかったなぁ.
「War in the south pacific」は,太平洋の空母戦っていうのが如何に手探りか,相手を見つけるだけで手一杯かが再現されてるというレビューでした.
Fabius (KT)
ああ,そうか,光栄の「ホイホイ」とは違うのだな.
ケーキを襲うゴキブリを,スリッパとスプレーで叩くシミュレーションでした.
あのころの光栄はとんがっていたなあ.
なかた
▲
【質問】
退役職業軍人が議会に入る,なんて事は結構あったはずだから,もっと突っ込んだ軍事論議ってできたはずなんだよなあ.
徴兵で兵隊行った人だって議員の中にもたくさん居たはずだし.
選挙区にだって兵隊帰りの人や現役の将兵が居たはず.
不思議.
なぞ.
どうして?
【回答】
軍隊は完全な階級社会です.
帝国陸軍で言いますと,陸士・陸大出の軍刀組が最高の地位にいました.
当時の社会で,絶対的なエリートでした,相対的エリートの現在の東大なぞとは,たぶん,比べようもないくらい信頼されていた権威者でした.
その上,天皇陛下の直属の股肱であります,軍官僚内部からは批判は出来ても,退役軍人の議員程度では歯が立たなかったのでしょう.
その意味では,真の意味での「国民軍」ではなかった,残念ながら,そう思います.
当時の国民は,現在より軍事常識が豊富にあったでしょう.
でも,それ以上に,というよりそれ故に,帝国陸海軍を純粋・純朴に信頼しておったのでしょう.
憎むべきは,「天皇陛下の無謬性」を「軍高級官僚の無謬性」に移し替えた詐術者達です,
私は,仲間の軍人を“軍紳”に祭り上げた現役の軍官僚と,軽薄なマスコミが責を負うべき者達だと思っています.
憂える事に現在もなお,高級官僚達の「身内意識第一主義」は変わらず,無責任なマスコミは相変わらず横行しています.
【質問】
太平洋戦争において,日本は科学力の差で敗れたのか?
【回答】
村上陽一郎によれば,それは大きな間違いだという.
以下引用.
――――――
戦争中の日本は,その国策からして,戦後のあの高度成長期の理工科ブームにまさるとも劣らないほどの,科学技術振興政策をとっていました.
理工科の学生は,徴用も後回しでしたし,大学でも研究費は潤沢でした.
子供たちも「科学する心」の開発をしきりにそそのかされ,『譚海』などというちょっとハイ・ブロウな少年雑誌には,高垣眸や南洋一郎,山中峯太郎などという作家たちの冒険小説にまじって,海野十三(うんのじゅうざ)の空想科学小説が評判でした.
そのころはSF,つまりサイエンス・フィクションなどというしゃれた呼び名はありませんでしたが,今から思えば海野十三の作品は,まさしくかなり高度なSFにほかなりませんでした.
――――――『新しい科学論』(村上陽一郎著,講談社新書,1979.1.20),p.15
やはり国力の差と,組織力の差で敗れたと言うべきではないかと.
【質問】
友人が,日本が太平洋戦争に負けたのは,官僚機構の弊害がモロに出て,軍全体がガチガチに硬直していまっていたのも一因だ,と主張するのですが,では,戦勝国のアメリカには『官僚制度』は存在しないのでしょうか?
無いとしたら,その代わりにどのような制度になっているのでしょうか?
【回答】
官僚制度はどこの国にもある.
ただ,市場や選挙といった公正な競争にさらされない官僚は自浄力がないので,任せきりにすると,遠からず腐敗したり間違った方向に進むと考えた方がいい.
そこで議会や施政者が綱を握って統制する.
この点,日米は対照的で日本は山縣有朋の時代から議会が弱く,官僚主導の国造りをしてきた.これは現在も色濃く残っていて,声高に弊害が叫ばれているのは周知のとおり.
政治家より長生きな日本官僚に対して,アメリカの官僚には政権が変わるたびに入れ替わりが行われる.政権が変われば長官や次官だけでなく,課長クラス以上がごっそり入れ替わるし,重要な役職(郡保安官や検事等も)は選挙で選ばれる事も多い.
軍も同様で,アイゼンハワーのような抜擢人事も可能になってる.
これにより組織の風通しが良くなるが,魅力がないので優秀な人材が集まらないとか,人材が育たないとかいう批判もある.("機甲自転車@私は知ったかです"
他)
アメリカでもね,猟官制が制度疲労し,ダメダメな時代があった.1900〜1920年代がそう.
猟官制=スポイルズ・システムの良いところは人事が刷新し易いということになるが,これが情実に動かされ,私的な交友による登用や,官吏の職を「買う」行為が横行した.
その結果として,政官の悪しき癒着が生まれ,連邦・州政府の官吏のモラルは著しく低下した.
上級の政府がそんなだからその下の郡・市町村の役所もダメダメになる.
挙句に1920年代の禁酒法で,マフィアが警察に賄賂攻勢を駆け,郡市町村警察・保安官をはじめ地方政府も腐敗してしまう.
その結果,行政組織の腐敗を何とかしろという圧力が強まった.
国家行政学会をはじめとして,当時,フォードやテイラーが成し遂げていた,組織の科学的(経営学的)管理手法を行政組織に導入しろ,ということが言われるようになった.
心ある政治家がそれに答え,ある程度,スポイルズ・システムを弱めながら,そうした組織管理をやるようになった.
まあ,アメリカに官僚制が無いわけじゃないんだ.悪しき時代もあった.
批判の的となるその態度である「官僚主義」も無いわけじゃない.
ただ,「官僚主義」の打破に,日本より時間をかけ,色んなことをやってきた.
それは間違いない.
【珍説】
何が強い軍隊かて? 人,人,そして思想だよ.
強い軍隊というのは,装備とか指揮系統とか訓練とか,そういうとこに本質はない.
近代戦の特徴は,国民国家相互の戦なんですよ.
そうなれば,強い軍隊じゃなくて,強い国民に戦の帰趨はかかっているという自明なことです.
アメリカに負けたのは,物資力や軍事力ではありません.
皇国史観が,民主主義に負けたのです.
【事実】
史観というか,国家・国民のシステムでも効率の悪いものだったし,それとは別に資源も軍事力も無かった.
それらは互いに連動し,影響を与え合うナマモノだから,民主主義のみを取り出して勝敗の最大の理由にはできない.
例えば民主主義とはほど遠い旧ソビエトでも,民主主義国家の代表を自称するアメリカと,半世紀にわたって軍事的均衡を維持できていました.
仮に戦前の日本が超良質の民主主義国家だったとしても,やっぱりアメリカ相手には勝てなかったでしょう.(そういう国ならそもそも,あんな無謀なことはしなかったでしょうけれど)
よく旧軍と米軍の対比で言われているのは,
・旧軍は,兵站管理の観念が著しく欠如していた.
・行動にあたっての計画の前提になるべき,情報収集・分析を軽視していた
・戦闘においても精神主義と白兵突撃に偏重し,火力や科学的態度を軽視しすぎた
・精神主義偏重の傾向は,米軍のようにドクトリンを柔軟に変更・発展させるための学習的態度をスポイルした
…などということ.これらは,皇国史観と民主主義などという価値以前の問題でしょう.
軍事における科学的態度や合理性の欠如・不足が敗因だったと言えるのではないかと思われます.
まあ精神主義の偏重に皇国史観が影響を与えているとも言えるでしょうけれど….
【珍説】
米国は多少の不具合も大量の機材と物量で押し切って勝った
【事実】
米国は合理的手法によって不具合を解消したのであって,国力のおかげというのは原因と結果を取り違えている.リソースの有利を生かす合理的な手法をとるから豊かな国となったのであって,豊かな国だから不具合を無視できるというわけではない.
部品の共用,製品交差の減少,規格の統一,専用機械を使用し熟練工をあまり必要としない生産ラインetc・・・と様々な試みを行っている.工員一人あたりの生産量が日本は米国に劣ったという事実が,単純な物量の差が敗因でないことを証明しているね.
陸海軍でライセンス費用を別々に払ったり,技術者同士の交流を禁止してみたり,同じ用途の同じ口径の機銃を別々に開発してみたり,と貧しきを拡大するようなことばかりを行っている帝国が,「物量で〜」等というのはもはや滑稽としか言いようがないですな.
【質問】
R3350の運用の仕方など,富める国の極みではないのですか? 極端な場合,16時間の運転で整備するのではなく,新品に全交換して廃棄.これを合理的というならば,他の国では絶対にまねのできない運用の仕方ですよ.
【回答】
発想が逆なんだよねぇ.合理的な生産によってエンジンのマスプロが実現できるからこその運用だということですよ.
R3350は冒険を避け,比較的平凡な技術の集大成ですから,生産に掛かる手間はそれほど大きくないし.
いくら国力が大きいからって,何の展望もなしにエンジン使い捨ててたら持ちませんよ.
【質問】
日本でも可能な限りの部品の共用化,できる限りの生産品質管理を行いできる限りの技手・工員の人員養成を行っています.それが米国よりも劣ってしまうのは,それに投入できるリソースが最初から不足しているためでしょう? 工員1人に投入できるリソースが少ないのですから,劣ってしまっても仕方が無いですね.
例をあげれば,日本でも
・方式の違うプロペラのライセンスを各々に一社に限定して,各メーカーに供給をしていたり
・各社の飛行機技術者が技師の会というものを作って交流していたり,
・川西が発動機と生産管理について中島に,機体設計や艤装について三菱とやり取りしていたり,
・海軍が陸軍航空隊の南方進出のために零戦を陸軍に提供するという話が持ち上がり,部隊配備一歩手前までいった事があったり
・飛竜と一式陸功の艤装部品の共用化をしたり,
といったプラスの事例もありますが.
昭和16年から17年にかけて,それまで中心だった汎用工作機械から単能工作機に重心が移行しています.
同時にタクト方式による流れ作業が極めて急速に普及しています.
これは作業の単能化,細分化を成すものですから,後に動員学生や徴用工などの未熟練工を現場で戦力化する上で大きな助けになっています.
また,開戦前の機体の原図と開戦間際,開戦後の機体の原図を機会があれば見比べてください.生産簡易化の為の変更が随所にみられると思います.
最終的には米軍戦略爆撃調査団報告に述べられているように,三菱重工名古屋航空機製作所などは流れ作業によるラインが稼動し,機械加工は汎用機・専用機・自動旋盤を持ち,工程の払い出しには移載機械の導入まで検討されています.
戦前の生産管理,品質管理は,欧米でも知られたテイラ−システムが根幹を成すと思いますが,日本の当時の施策は同じようにこれに準じる物です.
それに加え,当時の工員・技手・技師の手記や記録を紐解くと,戦後に名の知れたカイゼンやQC活動の萌芽がみられます.
これらの事をふまえて,国力としてのリソースが足りなかったと御考えください.当時の私達の祖父曾祖父はやれることはやっているのです.
【回答】
例えば,米国では生産をライン化して一人の工員が複数の手順を覚えなくもいいようにしてみたり,イラストを多用し判りやすいように改良されたマニュアル配布をしたりとやってるが,リソースをつぎ込んだ,といえるようなほどでもないですな.
それに,工員に対して適切なリソースを注ぎ込めば結果として注ぎ込んだリソース以上の生産効率を上げるのならば,それはつぎ込むべきリソースであり,国力の劣る日本こそ率先して行うべきですな.
例示が,例外的としか言いようがない事項しかないのも残念です.当時の生産現場の実情を見ると,物量の差以前に生産に対する概念の劣等性が見えてしまいます.
流れ作業と言っても,日本のそれは,最終組立段階に工程時間浮動・人力ラインのが限定的に取り入れられただけですし.
あの劣勢の原因を物量の差に帰結できれば気が楽でしょうが,それはやってはいけないことです.
【質問】
太平洋戦争が勃発した時点では,日本の方が保有空母の数では10:8で米国を上回っていますよね?
米国に敗北した原因が物量の差ばかり協調されがちですが,空母自体を建設する事は容易に可能でも,空母の乗組員を育成するとなると容易には行かなくなる訳でしょ?
となると,太平洋戦争に負けたのは物量の差ではなく,単なる戦下手が招いた事になると思いますが,どうでしょうか?
【回答】
この板では何度も出る話だが,まず,日本がアメリカに負けたのは「物量の差」のみではない.
物量以前に,生産力,技術,効率的な組織運営,人材,全てで劣っていたため.
また,資源を海外に依存するという弱点も,日本は抱えている.
で,アメリカは,人材を急速に育成するシステムでも日本に遥かに勝っていた.
その面から見ると,開戦時の戦力差など屁のつっぱりにもならない.
例えば乗組員の大量育成だが,要求される能力に対して,その基準に達するよう練成するモデルと,そのための基盤があり,かつそれを元に大々的に実行できうるなら,これは実現可能.
しかし日本にはどれも欠けていた.
確かに日本海軍が戦下手だったのは確かだが,戦上手だったら勝てたのか・・・となると,全然そんなことはない.
あの戦争は総力戦.なので,開戦時点での戦力で勝負が決まるものじゃないんだよね.
もちろん,開戦時点での戦力が大きいにこしたことはないけど,それだけではダメ.
総力戦というのは,すり減っていく戦力をどんどん補給しながら戦うもので,開戦時点での戦力よりも,戦力の補給が続くかどうかが鍵.
戦力の補給には,大きな工業力や莫大な資源が必要です.日本と米国ではこういった面で逆転できない差があった.
結局,何をどうやろうが日本はアメリカに勝利などできない.
史実よりも健闘出来たかもしれないが,所詮大事の前の小事.
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