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(こちらより引用)


 【link】

九州飛行機 J7W1 震 電 日本海軍十八試局地戦闘機


 【質問】
 以前から渡辺洋二著の局地戦闘機『雷電』を読んでみたいと思っていたのですが,近くに軍オタに優しい規模の大きな本屋はないので,アマゾンで通販しようと検索してみたところ,同タイトルの書籍が幾つもあったのですが,内容は基本的に同じものなんでしょうか?
 この中からどれを選べは良いのでしょうか?

 【回答】
 一番最近に出たのが文春文庫収録のもので,これが今のところ最新版です〔2005.7刊〕.
 最初の第二次大戦ブックスのそれが250枚だったのから,朝日ソノラマ文庫に入る際に順次改訂,訂正し,文春文庫収録の際に更に更正,増補,改訂を行っていて,この段階で500枚に達しています.

 作者の後書きではこの文春版が最終版としていますね.

眠い人 ◆gQikaJHtf2 in 軍事板


 【質問】
 雷電の振動の原因は現在では解明されたんですか?

 【回答】
 雷電を設計したときに,爆撃機用のエンジンを使う=直径が太い,では速度が出ないと三菱は考えた.
 時速600キロくらいから空気圧縮が大きな抵抗になるであろう,と.
 そこでプロペラ軸を延長して,エンジンからスピナーまでをなだらかに絞っていくことで,抵抗を抑えようとした.
 そうすると延長したカウルで開口部が狭くなるので,空冷エンジンの冷却用空気の取り入れ量も減ってしまう.
 それについては強制冷却ファンをつけることで解決するとした.

 が.

 重いプロペラを無理矢理に軸を延長している上に,軸に強制冷却ファンまでつけているのだから,振動の根本的解決は無理だし,プロペラの設計を変えるといっても,可変ピッチプロペラそのものがVDM,ハミルトン,ラチエとライセンスばかりで,アメリカが実用化していたフェザリング機能は,「カムの化け物」と製造できなかった.

 話がもどるが,そもそもプロペラ軸を延長する理由とした「時速600キロからの空気圧縮」そのものが,実は勘違いで,苦労して機首を伸ばした効果は無かった.
 当時それがわかっていたら,ごく普通の空冷エンジンとカウルとプロペラ配置の.もう少し稼働率の高い戦闘機になっていたかと思われる.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 実際のところ,雷電のカウリングと延長軸のおかげで,どれだけ抵抗減少になったか疑問なんですが.

 【回答】
 あれは空技廠の空力研究による「紡錘形理論」を採用した為で,胴体全体の形状を紡錘形にする事に意味があったのです.
 延長軸と絞ったカウリングの採用はその為です.
 ぶったぎったら,らぶん紫電のレザーバック版の様なイメージになったでしょう.

 それと機首を絞っても正面面積自体は減りませんし,肝心の紡錘形理論はプロペラ後流の圧縮性を考慮すると意味がないそうです.
(雷電は機首にプロペラが無ければ抵抗減少に最適な形状だそうですから)
 むしろFw190は,鍾馗の様に細く絞った方が良いそうです.

軍事板


 【質問】
 雷電は視界が極めて不良であったという話はよく聞きますが,実はゼロより悪いだけで,実際は視界良好(除く離着陸)という説もありますね.
 本当の所どうだったのでしょう?
 飛行姿勢の関係もありますし,難しいです.

 【回答】
 前方・側方視界については疾風よりは良好だったようです.
(米軍レポートに依る)

軍事板

 問題なのは後方・下方についてでしょう.
 下方視界不良については言うまでもないとして,後方視界不良は極めて不評でした.
 当時の熟練搭乗員からも「零戦並に向上を」とのクレームがついていますね.
 このため大型キャノピー搭載の31型が試作されています.極少数ですが.

 空気抵抗減少のため紡錘型カウリングを採用したのが,この視界不良の原因です.
 これは設計思想の混乱ゆえの問題だと思います.
 速度重視の設計によって当初から視界の悪さはの余儀なくされていたのに,
「視界は多少悪くても良い」
のか
「速度優先ながら視界確保は重視」
なのか実は曖昧なまま開発が進めらていました.

 で,前記のクレームが出るに及び,空力的に不利なキャノピーの拡大を強いられることになります.

zeke in 軍事板・改


 【質問】
 雷電の生産数が少なかったのは何故ですか?

 【回答】
 堀越技師の話より抜粋.
「生産に入ってから,視界問題のため生産を減らす命令が出されたり,反対に増す命令が出されたりして,本機の生産はしばしばぐらついた.
 生産計画の変更のために,三菱の戦闘機生産線は大混乱に陥り,本機だけでなく零戦の生産にも能率低下を招いた.」

 開発の遅れもあったでしょうが,現場の混乱が生産機数の減少を招いたと言えるでしょう.

 また,軍部の酷使がたたって堀越技師を始め多くの技師が倒れ,完成が遅くなった点も否めません.

1939/9 試作要求,
1940夏 曽根技師倒れる,
1940秋 堀越技師倒れる
1942/2 高橋技師が引き継ぎ試作機完成,初飛行
1942/4 脚設計担当の加藤技師が肺炎で死亡
1942/9 馬力不足のため水メタノール噴射機を設置,仮制式化
1943/6 帆足大尉の試作機墜落,原因究明に3ヶ月かかる
1943/9 量産開始
1944/1 11型制式化

zeke in 軍事板

雷電(写真中央)
(画像掲示板より引用)


 【質問】
 父親が子供のときに工場で働かされて雷電とかいう飛行機作ってたらしいんですが,飛ばすときに10機中7機は離陸する時バランス悪くてすぐ落っこちたとか言ってたんですが,飛ばないなんてことあるんですか?

 【回答】
 雷電は三菱重工の他に座間にあった高座海軍工廠でも生産が行われていたのですが,台湾の少年工を動員して生産が行われていたため,とにかく出来上がりが悪かったとか.

 雷電はもともと操縦が非常に難しい戦闘機と言われていたのでなおさらです.

名無し軍曹◆Sgt/Z4fqbE in 軍事板


 【質問】
 302空の雷電が,敵戦闘機を見ると空中退避したのは何故ですか?

 【回答】
対戦闘機:一式戦,四式戦,五式戦,零戦,紫電,紫電改
対爆撃機:二式単戦,二式複戦,三式戦,雷電,月光
という使い分けがあって,対爆撃機用の戦闘機が本命(爆撃機)を相手にするために,あえて敵戦闘機を避けるのはよくやったこと.無駄な消耗を避けられる.
 30mm斜銃を積んだ雷電に空戦はやらせられない.

 ただし完全に回避したわけじゃない,
 一部のベテランは雷電で対戦闘機戦闘はやっている,ただし数例.
 空中退避命令も完全な退避ではなくて,適当に高度をとってから引き返して優位であれば攻撃をしかける消極的迎撃方法をとったて話が,渡辺洋二氏の『雷電』の中にある.

 もっとも,戦闘機とやりあった302空のパイロットは
「いっこうに引き返す気配がないので勝手に引き返した」
って渡辺氏の取材に対して答えてますけど.

軍事板

▼ なお,小型機交戦制限命令は,陸海軍あるいは部隊によって差がありました.
 渡辺洋二氏著「飛燕」にはそのへんが詳しく書かれています.
 もちろん343空の奮戦は,あの時期において特筆に値すると思いますが.

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