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<第二次世界大戦FAQ


 【link】

『坂井三郎「大空のサムライ」研究読本』(郡義武著,光人社,2009.8)

 個人的には,ちょっと残念な内容だった.

 間違い指摘云々よりも,検証のために部隊記録や,行動調書を簡単にまとめてくれているので,各場面の状況把握のための副読本としてはいいかも.

 正直なところ,個人的には文庫待ちすべきだったかな.
 文庫化されるかわからんけど.

 本筋から外れるが,著者はPCのフラシムにはまってるらしく,本作も随所にプレイレポート?的な記述が散見され,時に微笑ましく思える反面,「俺SUGeeeeeeeeeee!」的な記述が鼻についたり.

――――――軍事板,2011/04/09(土)

『坂井三郎の零戦操縦(増補版)真剣勝負に待ったなし』(世良光弘編著,並木書房,2009/4/15)

〔略〕

■この人物は・・・

「大空のサムライ」坂井三郎さんです.

坂井三郎さんについて,本著から引用してご紹介します.

<坂井三郎(さかい・さぶろう)
大正5年生まれ.青山学院中等部を中退後,昭和8年海軍入隊.戦艦霧島,榛名の砲手をへて戦闘機パイロットとなる.
初陣の昭和13年以来,96艦戦,零戦を駆って太平洋戦争の大空で最後まで活躍し,敵機大小64機の撃墜記録を持つエースとなる.著作に「坂井三郎空戦記録」「大空のサムライ」「零戦の運命」「零戦の最後」など多数.平成12年9月没.享年84歳>

「零戦といえば坂井」と称される超有名人です.
大東亜戦争勃発から終戦2日後の昭和20年8月17日まで,大空で戦いつづけた「わが撃墜王」です.
当時,世界で誰も撃墜したことのなかった,米陸軍が誇る空の要塞「B17爆撃機」をはじめて撃墜した方としても,よく知られています.

坂井さんについては,こんな声も聞きました.

<防大で坂井三郎の素晴らしい講演を聴いたことがあります.
坂井さんは下士官であったため,日本での評価が少し低いのが残念です.
広瀬中佐に並ぶぐらいの英雄です>

ー退役将校さんー

<戦後に出版された大東亜戦争の戦記や記録の類は信用してません.
読むのは,源田実と坂井三郎だけです>

ーteruteruさんー
(帝国陸軍第一航空軍の機上通信下士官「ある通信兵のおはなし」著者)

■本著は,

坂井三郎さんから「お前は平成の2番機だ」といわれるほど信頼され,公私にわたる付き合いをしてきた編著者の世良さんが,「零戦操縦の実際」「空戦ノウハウ」について坂井さんから直接聞き取り,まとめあげた本です.
聞き取りには60時間以上の時間をかけたそうです.

初版は2001年6月に出ており,約10年経った今年,実に興味深い内容の増補が行なわれています.

■ひとことでいえば,

この本を一言でいえば,「エースパイロット・坂井三郎が,零戦操縦の実際を直接語った」本です.
離陸の方法や機への乗り方なども書かれています.

この種の本を楽しく読める方もいらっしゃると思いますが,
「今生きる私たちが,しかもパイロットでも軍人でもないのに,零戦操縦の実際の姿やエースパイロットの話を知ってどうするんだよ?」
という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います.

この疑問を解く鍵は,本文中にあります.

<戦争で何が起きたか記す時には,人の生き死にをカッコイイものとして「商売」にしてはならないと思う.

飛行機を操縦し,大空に散っていったのは「人間」であることを忘れないでいただきたい.
とくに海軍機や搭乗員の世界を描いた最近の作品は美辞麗句で飾られているようであるが,事実を歪曲して何の意味があるのだろうか.
軍籍になかった評論家の方々がつくりだす,あたかもその場に居合わせたような「話」は,時折「真実」から離れることがある.
パイロットのことはパイロットにしかわからないようなことも存在するし,「伝説」と「真実」は異なる場合が多い.>(P38~40)

この本を通じてホンモノの戦闘機乗りの世界に触れ,接することで,戦争を知らない世代でも,空の戦いにまつわるニセモノ,ひいては戦争・軍人をめぐる話のニセモノを見抜く感覚が身につく一助になると思うんですね.

つまり坂井さんは,「零戦マニアじゃないからね.バイバイ」と素通りするには,あまりに惜しいホンモノだということです.

■また,

今を生きる空軍パイロットの方にもぜひお読みいただきたいです.
当時とは技術も何もかも違うと思いますが,搭乗するパイロットだけは,当時と変わらぬ「人間」です.
「撃墜王・坂井さんの心理」は関心あることと存じます.
その内面を伝える貴重な資料としても,参考になる本と思います.

■娘の目から見た坂井三郎

この本には,坂井さんのお嬢さんである坂井スマート道子さんの手記もあります.
一部を紹介します.

<坂井の人間性を形容する時,彼が戦闘機パイロットとして示したさまざまな能力を,象徴的に羅列するのは容易である.
では私たちはそこから何を学ぶべきなのだろう.

慎重にして大胆な行動力,恐怖に直面してもたじろがない体験に支えられた自信と演出力,状況に応じて全体を把握する力,それに加えた機転の速さなど,こうした能力のすべてを仮に身につけていたとしても,これらを総合的に高いレベルで駆使するとなると,選りすぐりのパイロットたちのような精鋭でなければ日夜実践することは困難かもしれない.

しかし,こうした能力は,決して飛行機乗りや軍人にだけ有効なのでなく,私自身を含むごく平凡な一般人の毎日の生活の中にあっても,向上させる努力に値する要素だと思う.>(P213~214)

<このように,坂井の非凡さは,積み重ねた体験の豊富さによる部分が多く,決して努力なくして特殊の域に達してしまう天才のそれではなかったと私は解釈している.
ここで最も重要なのは,小さなことでも心をこめて日夜続けるという,意志である.
父はそれを戦場で体得した.
そして戦後の一般民間人としての生活の中で,その自覚をより深めていったのだと思う.>(P215)

<日本人読者からの支援を軽んじて申し上げるのでは決してないが,とくに旧敵国であるアメリカの国民およびアメリカ軍が坂井に示した歴史的評価,そして父自身の人格に対する尊敬,世界的価値としての表示は注目すべきであると私は信じる.>(P216)

(「父・坂井三郎の思い出」より )

このお嬢さんの言葉こそが,坂井さんのご存在の何たるかを,なにより雄弁に語っているように私には思えます.

ここで紹介した言葉にもありますとおり,坂井さんは,戦場で体得した,<小さなことでも心をこめて日夜続けるという,意志>を,<戦後の一般民間人としての生活の中で,その自覚をより深めていった>方なんだと思います.
「大東亜戦争後も戦中と変わらぬ努力をたゆまず続け,進化の歩みを止めなかった」

もしかしたら坂井三郎さんにとって,敵と戦った戦中よりも,同胞の無理解と戦った戦後こそが,真の戦いの日々だったのかもしれないな,とも思います.

■オススメします

当たり前の話ですが,本を読むときは,表紙からはじまって裏表紙に至ります.
その間に本文があります.

この本には,表紙写真の若き戦闘機乗りの時代から裏表紙写真の老人の時代に至る人生のなかで,坂井さんが時間を追って掴み取ってきた知識・経験・教訓・感情・・・のすべてが,「平成の2番機」世良さんを通じて詰め込まれています.

時間を形にし,経験を形にし,教訓を形にして後世に引き継ぐことのできる「本」への畏敬の念を改めて覚えています.

・軍用機や零戦・空戦ファンの方が満足できる専門性を持ちます
・活字が苦手な方でも入りやすい,質の高い劇画があります
・自分の日々の生活・人生の質を高めるヒントがたくさんあります
・ホンモノの人の言葉からなる本です
・戦場で体得した坂井さんの数々の教訓は,実生活でも役に立ちます

オススメしない理由が見当たりません.

――――――おきらく軍事研究会,平成21年(2009年)6月12日

 【質問 kérdés】
 坂井三郎氏の本って,やはり実体験に基づいた,良いものなのでしょうか?
 買うかどうか迷っているのですが・・・

 【回答 válasz】
「自伝に書いて有る事は,三割差っぴけ!」
と云う言葉を君に贈ろう.
 事実に基づいてるけど,誇張や,自分に都合の悪いことを省略したりする事が,まま有るっす.

 例えば,シュペーアの自伝(『第三帝國の神殿にて』)と『ヒトラーの共犯者』(上)を読み比べてみると面白いよん.

ベタ藤原 ◆MNjfnp0E :軍事板,2002/09/20
青文字:加筆改修部分

 自分の体験したことについては一応信じるとして(話半分という言葉もあるが),それ以外のことについては「後知恵」が含まれたりするので読むに値しない,と考えてます.
 だから,坂井氏の本は初期の物しか持っていない.
 他は捨てました.

軍事板,2002/09/21
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 知人に「大空のサムライ」薦められているんだが,ここではどういう評価?
 買う価値ある?

 【回答】
 一番最初のやつが一番面白かった.
 大戦初期には大勢いたであろう,技術と胆力を兼ね備えた海軍パイロットの雰囲気がよく分かる.
 けど続とか戦話とか,続編は既出の話やお説教がだんだん増えていくのでイマイチ.

 買う価値があるかどうかは,読んでからお前が判断する事で人に聞くもんじゃない.
 無駄金使うのが気になるなら,とりあえず図書館で借りてこい.
 ちなみに自分は図書館で一通り借りて読んでから,結局最初のやつだけ買った.

軍事板
青文字:加筆改修部分

▼ 本日,藤岡弘の初版帯付きサイン本を入手しつつ,本人から映画「大空のサムライ」製作時の坂井三郎との製作話を聴く.
「素質があるからパイロットをしてみては?と言われ,アメリカで飛行機免許取って,空を飛ぶと言う事が解かった」
とか,
「イラク軍が,空軍パイロットにアラビヤ語訳して読ませた話」
とか,
「零戦の増槽はベニヤで出来ているので,切り離した時は落ちるのではなく,後方にふっ飛んで行くように撮影して」
と頼まれたとか,そんな話.

 ナマ弘,,初めて見たよ.

名無しの愉しみ in 軍事板,2010/01/10(日)


 【質問】
 坂井三郎著「大空のサムライ」を読もうと思ったんだが

大空のサムライ      完結篇
戦話・大空のサムライ   新装版
大空のサムライ        続
大空のサムライ        上
大空のサムライ        下
大空のサムライ      第1部
大空のサムライ      第2部

と色々あってワケワカメなんだがどれを買えばいいの?

 【回答】
 どれから読み始めても問題ありません.
 どれがどんな内容か分からないなら,以下の通り.

・戦話・大空のサムライ=自身の体験をもとにした,教訓とも思い出話ともつかないような話.
・大空のサムライ完結編=思い出話の対談
・大空のサムライ上下・1部2部=大空のサムライ正編
・続・大空のサムライ=続編で書ききれなかったところが書いてあったり,少し重複だったり.

軍事板

▼ 「Amazon」掲載の目次で比べると

大空のサムライ―かえらざる零戦隊 光人社NF文庫 
第1章 苦しみの日は長くとも
第2章 宿願の日来たりて去る
第3章 ゼロこそ我が生命なり
第4章 死闘の果てに悔いなし
第5章 孤独なる苦闘の果てに
第6章 迫りくる破局の中で
第7章 大空が俺を呼んでいる

大空のサムライ〈上〉死闘の果てに悔いなし (講談社プラスアルファ文庫) 
第1章 苦しみの日は長くとも
第2章 宿願の日来たりて去る
第3章 ゼロこそ我が生命なり
第4章 死闘の果てに悔いなし

大空のサムライ〈下〉還らざる零戦隊 (講談社プラスアルファ文庫)
第5章 向かうところ,敵なし
第6章 孤独なる苦闘の果てに
第7章 迫りくる破局の中で
第8章 大空が俺を呼んでいる

とあって同じもののようです.
 講談社プラスアルファ文庫のは講談社のサイトによると,
>知られざる坂井三郎出撃記録や写真,用語解説等も新たに付け加えた決定版
とのこと

 悪い事ぁ言わん.
 「大空のサムライ」を入手せんと欲すなら,光人社刊豪華愛蔵版を見つけて手に入れるべし.
 「不襄不屈」の文字とともに坂井三郎直筆サイン入りのプレミア物.
 これに勝るものなし!

 あるいは,さくっとNF文庫の一冊読んで,いろんな零戦パイロットの本も読んだほうがいいよ.

 坂井氏は開戦~17年の零戦格闘戦が中心で,18~19年の後期のラバウル航空隊は知らないんだよね.
 文学として大変優れているし必読だけど,ラバウル航空隊の歴史としては極一部なんで・・・・

岩本徹三「零戦撃墜王」
羽切松雄「大空の決戦」
角田和男「修羅の翼」
などで,その辺を補完した方がいいと思います.
 まだまだいろいろあります.

軍事板
青文字:加筆改修部分

 ついでに「坂井三郎空戦記録」も一緒に買って,各本毎にエピソードや登場人物を突き合わせていくと ,つじつま合わせでボケていくさまがリアルに感じられ,落涙できます.

507 :名無し三等兵 :2005/03/31(木) 02:24:35 ID:???

大宇宙のサムライ

508 :名無し三等兵 :2005/03/31(木) 02:32:46 ID:???

天空のサムライ

509 :名無し三等兵 :2005/03/31(木) 02:35:32 ID:???

大空のサムライ
     III
めぐりあい・宇宙

 「大空のサムライ・魔宮の伝説」

 「大空のサムライ・ストーンオーシャン」

 「大空のサムライおかわり」

 「旧約・大空のサムライ」

 「大空のサムライ・リローデッド」

 ……

軍事板・改

坂井三郎
(画像掲示板より引用)


 【質問】
 別冊宝島の日本軍人特集の中に,
「坂井三郎氏の著作は殆んどがゴーストライターが書いたものだ」
というくだりがあったのですが,本当ですか?

 【回答】
 この伝で言えば,口述筆記したものすらゴーストライター扱いになってしまいます.
 でもそうやって中傷の言葉を浴びせるあんたは何様なのよ?と思いますわね.
 ましてや別冊宝島は多数の写真を潮書房から拝借しているのに,一体何を考えているんでしょうか.

 こんなのは健全な批判等ではなく,単なるヤクザの言い掛かりですよ.
 それでもってやれ社会のタブー暴くだの,1500号記念だのよく言えますわな.
 粗製乱造もいいところですよ.
 はっきり批判します.

ZII ◆RPvijAGt7k in 軍事板
青文字:加筆改修部分

▼ 高城肇氏が,坂井氏の書いた文章に赤ペン入れて校閲したのは間違いないでしょうが,元々編集者の仕事ってそういうもんですからね.
 共著とは言わないのでは?

ZII ◆RPvijAGt7k :軍事板,2011/07/14(木)
青文字:加筆改修部分

 「執筆協力」って名前出せれば理想的.

軍事板
青文字:加筆改修部分

▼ 【反論】
 たとえば,累計150万部のロングベストセラー「大空のサムライ」(坂井三郎著).
 実際に書いた高城肇氏によると,このシリーズで坂井さん本人が書いた原稿は「一行もない」そうだ.

 高城氏がお亡くなりになったとき,光人社のHPかなんかには,
「『大空のサムライ』のゴーストライター」
とハッキリ明記されてたような.

軍事板,2011/07/14(木)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 『祖父たちの零戦』の著者のブログ見たら

>高城氏は,「大空のサムライ」「サムライ零戦記者」「奇跡の雷撃隊」その他,昭和40年代,50年代の戦記ブームの頃,戦争体験者の名前で出された戦記本の多くを執筆し,自身の名前でも「六機の護衛戦闘機」「非情の空」といった名作を書いた伝説的な天才編集者だ
>坂井三郎さんの名前で出してベストセラーになった「大空のサムライ」を高城氏が書くにいたった経緯などをこと細かにうかがった

 「大空のサムライ」も「サムライ零戦記者」も「奇跡の雷撃隊」も,本人が書いてなかったの

 【回答】
 こういうのには複数の真実がありうると思う.
 自分は「飛行の秘術の話」「零戦の秘術」を信頼する.
 カトカンさんは坂井ファンではあろうが,努めて客観的たろうとしている.
 なにより,「左を踏んで左に滑る」はゴーストライターには書けまい.
 「一字一句自分で書いた」「若干の誇張はある」を信頼する.
 「零戦の秘術」第7章は迫力がある.

 同時に,著者が知らないところで,編集部が原稿チェックをライターに依頼し,ライターがリライトする.
 それを編集部が著者に見せ,著者がOKする.
 ライターが自分が書いたと思う,または,後に思うようになる・・・ということも大いにあり得る.

 アレックス・ヘイリーの「マルコムX自伝」みたいな形もあるよね.
 ライターが「著者」にインタビューして,それをライターが原稿に書き起こす,とか.
 そういう場合,アメリカでは執筆協力みたいな形で名前が出ることもあるが,まあそのへんは当時(昭和40年代)の日本では一般的ではなかったってことだな.
 今ならちゃんと明記しないと批判されるが.
 ただまあ「大空のサムライ」は,例のラバウル被弾帰還の件とか,明らかに造っているだろ,って思わされる部分があるから,正直,聞き書きとか執筆協力ですますには疑問だと思ってる.
(でも空戦記録は,最後が戦死した戦友を悼む言葉で締められていて,しんみりした.
 まあその相手は,ご当人とトレードで343に送られたってのがなんともだが…)

 口述筆記や聞き書きで典型的な例は,マイン・カンプだよな.
 伍長による側近への口述を,何人かで編集して一冊の書籍として発行されたんだが,著者は伍長となっている.

 ちょっと衝撃的だった今回の「祖父たちの零戦」を読んでも,坂井氏への尊敬は変わらない.
 列機を一度も失っていない,零戦の名パイロットである事は揺るがないからな.
 自分をこのジャンルに引き込んでくれた人だ.

 ミュージシャンなどと同じで,後日談などいろいろ一人歩きする事はあっても,
「零戦で小隊を率いて空戦した」
という基礎があるなら,どうという事はない.

軍事板,2010/12/15(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 『大空のサムライ』はゴーストが書いたものだとありましたが,ということは『大空のサムライ』を,ゼロ戦や太平洋戦争における航空戦を知るために参照することは,不適切ということでしょうか?

 【回答】
 ゴーストライターを誤解してないか?
 別に捏造してるわけでも,資料性が落ちるわけでも無いんだが.
 ゴーストを否定していたら,政治や外交の分野で,参考にできない本が大量に発生するぞ.

 それに直筆だからって,内容に間違いがないってわけじゃない.
 著者本人はマジメで善意を持って書いていても,間違いがあると思って資料批判するのが基本.
(だからゴーストライターがむしろ必要とされるわけなんだが,どうも偏見というか誤解があるようだ)

 『大空のサムライ』に関しては,底本として『坂井三郎空戦記録』があるので,全くのフィクションとは言えず,成立経緯を知った上で参考にする分には問題ないだろう.
 当事者が自らの体験を綴ったものだから間違いない,と言うことが出来ないだけ.

軍事板,2011/01/07(金)~01/08(土)
青文字:加筆改修部分



 【質問】
 でもライターが書いたなら,『カラシニコフ自伝』みたいに,ちゃんとライターや編者の名前を表に出すべきじゃね?
 著者の名前しか表に出さなかったり,著者が自分で書いたように装うのは不適切だと思う.

 【回答】
 ライターとゴーストライターは違う.

 まず自伝には,取材者視点で書くタイプと,自著として自分綴りのふたつのスタイルがあることを知ってないと,そういう誤解をしちゃうわけ.
 前者だと第三者的な検証が加えられてるし,その内容についての文責はライターにある.
 だから関係者から正式に許諾をとって,公式自伝を書いたとたん,その本人や遺族からライターが訴えられるという事件さえ少なくない.

 日本はゴーストという,蔑称めいた名称が定着しちゃって偏見があるけど,世界的には匿名ライターの手による文献は著者書きでなくても,そのことをもって問題とはされない.

 「著者が自分で書いたように装う」という観念が,まず間違いということ.
 音楽で編曲者がいるから作曲してないというよなんもん.

軍事板,2011/01/09(日)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 坂井三郎の撃墜数64という数字,信頼できる数字?

 【回答】
 坂井氏本人も撃墜数はこれよりもっと多いかもしれないし,逆に少ないかもしれないと言っている.
 64機という数字は,あくまでも日本海軍の公式記録.
 ただ,日米の公式記録を照らし合わせても,このくらいの数字が妥当だろうとの事.
 それほど戦果判定は難しい.

軍事板


 【質問】
 坂井三郎って本当に名パイロットだったの?

 【回答】
 坂井氏の空戦理論は,興味深い.
 彼は,後下方攻撃を得意としたらしい.
 感づかない内にまず,一撃を浴びせ,そこから回避しようとする敵機を徹底追尾して撃墜したらしい.
 また,左旋回の巴戦が得意だったらしい.
 ひねり込みは,半田亘飛曹長に伝授されたとの事.

 さすが超撃墜王は貫禄あるね.
 あの目つきでバタバタ落としていったのか....

軍事板

 どこで読んだか忘れたけど,大空のサムライ冒頭,硫黄島上空でフクロにされそこなった時の敵パイロットの一人と戦後だいぶ経ってから会って,
『空母に戻ってからみんなで,あのゼロは俺たちが100機掛かりでも落とせなかっただろうと言い合ったものですよ』
とか言われたらしい.

ごっぐ in 軍事板

▼ ただし死ぬ間際の坂井は
「自分一人で60機以上のグラマンに立ち向かい,そのうちの十数機を撃墜した」
とかいってたという.
 '01年ごろにインタビューが没になったライターが,中身をネットに上げて,ここでも
「これでは出版は無理」と話題になってたりした.

軍事板
青文字:加筆改修部分

 【余談】
 坂井氏は終戦後,零戦による最後の迎撃でB32を小町定兵曹たちと協同撃墜してる.
 とどめは坂井機がさしたらしい.
 米軍の記録にも撃墜後着水が確認されている.

 【余談2】
「敗戦後,日本は数々の美徳を失ったが,その最たるものは,大家族制度による年長者の知識や知恵を伝授していく機能だ」
とおっしゃった.
 さすが隻眼〔原文ママ〕だね.

軍事板

 【余談3】
 日航にジャンボが初めて就航した時の話.
 坂井氏はゼロ戦で二百回以上出撃して「落ちなかった人」というわけですから,世界の飛行機乗りからは非常に尊敬されております.
 もちろん日本航空がボーイング747型をはじめて就航させる時も,坂井氏を招待してファーストクラスに乗せてくれたみたいです.
 その理由なんですが,それはもちろん坂井氏が乗った飛行機は落ちていないから,ということみたいです(笑)
 ある意味,縁起かつぎで喜ばれていたような部分もあるみたいですね(笑

 【余談4】
 これは坂井氏がまだ現役でゼロ戦に乗っていたときの話なんですが,大きな飛行機(たぶんB-17?)か何かに向けて機関砲を発射したらしいのです.
 もちろんそのアメリカの飛行機は,銃弾を受けた側のほうの人がやられたとのこと.
 ところが戦後かなりたってから聞いた話では,その坂井氏が撃った飛行機の反対側の席に,のちにアメリカ大統領となってベトナム戦争を始めてしまった,LBJことリンドン・ジョンソンが乗っていたらしいのですね.
 のちにアメリカの元パイロットに,
「サブロー,お前が例の飛行機の反対側を撃っていたら,アメリカはベトナム戦争で失敗しないで済んだかも知れないんだぞ」
といわれたそうです(笑

「地政学を英国で学ぶ」,2005-07-15-05:10

 ※秦郁彦氏の『第二次大戦航空史話』(中公文庫,1996.9)によれば,ジョンソン下院議員(当時)が搭乗したのは,当時ポートモレスビーに展開していた第22爆撃グループ第19飛行中隊のB-26だそうです.
 議員に最前線で何かあったら大変と,B-17とB-25を囮にして迎撃機をかく乱する作戦だったのですが,撤退経路の不徹底から,B-26隊は零戦隊と正面から遭遇してしまいました.
 このとき坂井機は,ジョンソン議員と共に参加した陸軍のスチブンス中佐が同乗したB-26を撃墜しましたが,本来ならこのB-26にジョンソン議員が乗る手はずになっていたのを,手違いでスチブンス中佐が先に乗り込んでしまったため,議院は別のB-26に同乗し,穴だらけにされながらポートモレスビーに帰り着いたそうです.

 B-17の件は,コーリン=ケリー機撃墜の件と混同しているのではないでしょうか?

大熊猫 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 【余談5】
 戦後かなりたってから,戦争当時の世界のエースパイロットを集めて,ハワイでゴルフ大会があったらしいのですね.
 戦争には負けたが戦闘では絶対に負けていないという確固たる自信のある坂井氏は,
「よ~し,いっちょうやつらの鼻をあかしてやるか!」
ということで,大会前に猛練習.
 結局は「強烈な意志の力で」,2打差をつけて堂々のトップで優勝したそうです.
 いわく,他の世界のエースパイロットたちも,
「サブローには絶対に勝てない」
と脱帽したとのこと.

 【余談6】
「坂井さん,もしゼロ戦にもう一度乗れるとした乗りますか?」
という質問に対して,坂井氏は,
「いや,もう充分乗ったからいいよ」
とのことでした.
 たしかにあそこまで壮絶なことをやっているわけですから,「もういいよ」というのは分かる気がしますが.

「地政学を英国で学ぶ」,2005-07-15-05:10

 【余談7】
 坂井氏は,どこかの記者会見か何かで,「天皇制は日本に必要な制度だ」としながらも「天皇に戦争責任がないとは言い切れない」みたいなことを言ってしまったらしいのですね.
 で,この発言からしばらくの間,家の周りに右翼団体のチンピラみたいなのがうろついていたり,無言電話や「あんた殺すぞ」みたいな脅迫状を受け取る日々が続いたとのこと.
 もちろん警察のほうも坂井さんの身の安全を心配して,「見張りの番をつけましょう」と言ってきたらしいのです.
 ところが坂井氏はこの申しでを断ったそうです.その時の坂井氏の言葉を借りるとこうなります.
「おれは警察にこう言ったんだよ.
 な~に,こちとら大日本帝国が,国家の威信をかけて作り上げて殺人マシーンなんだ.
 戦後生まれの甘っちょろい,ヘナチョコ右翼どもなんかに,このオレを殺せるわけがなんですよ.
 やれるもんならやって見ろってんですよ!」
 もちろんそんな脅しに全く動じなかった坂井氏は,その後も落ち着いて普通に生活を続けたとのこと.
 もちろん家の周りをうろついていた右翼もすぐに姿を消したとか.
 私は坂井氏との会見で,上のコメントが一番印象に残っております.しびれました.

「地政学を英国で学ぶ」,2005-07-14-07:38

 名人というより「名物」と言うべきかも.


 【質問】
 坂井三郎は挌闘戦重視だったの?

 【回答】
 坂井氏の著述を熟読されれば判ると思いますが,氏はくんずほぐれずのドッグファイトは決して推奨していませんよ.
 逆に,「巴戦など旋回しながらの射撃は,Gがかかるために有効弾は難しい」としています.

軍事板


 【質問】
 坂井三郎氏の空戦方法は一撃離脱ですよね?

 【回答】
 坂井氏の得意技は,目標の死角となる後ろ下方から上昇接近しながらの急所への近接射重点射撃で,米軍の一撃離脱とは区別したほうが良いと思います.
 この辺は,『大空のサムライ』に記述されています.

 純粋に一撃離脱を好んだのは,岩本少尉のほうです.
 どちらにしろ,坂井氏の才能と努力には頭が下がりますが.

軍事板


 【珍説】
 坂井三郎は,己の戦闘技術を後輩その他にフィードバックしなかった点が大いに罪深い.
 てめぇだけ「成績よければ良し」ってことか?
 「逝ってよし」だな.

 【事実】
 笹井中尉やオシブチ中尉には,かなり伝授したらしい.
 あと,後輩達にも度々指導しているよ.
 羽藤一志とか島川正明とかエ-スも列機から結構出てるし.

 また,坂井中尉の343空時代,所属していた飛行隊(戦701?)の紫電の事故は他の飛行隊に比べて最も少なかったそうだが,これは坂井中尉の指導の成果らしい
(出典は,確か『最後の紫電改』だったか).

 坂井氏は私のイメージではエースと言うよりエースメイカーのような気がする.
 ものすごく研究熱心だったというし,台南航空隊がラバウルに行った時は,「先任搭乗員」という下士官・兵士たちのまとめ役(アメリカ軍等で言うところ鬼軍曹)であったし,自分の技術だけ高めれば良しとするような人間ではないと思うんだが,,,

 まあ煽りたい人間にとっては,本当の事なんてどうでも良いんだろうが,,,

軍事板


 【質問】
 坂井三郎(マラリア発病中)が,密集編隊で飛んでる艦爆の旋回銃座の射線にまっすぐ飛び込んだエピソードについて教えてください.

 【回答】
 坂井三郎は
「接近して射撃位置に着くまでグラマンだと思ってた.こちらは見えてるはずなのになんで散開して逃げないんだろうと思ってたら・・・」
って書いてたな.
 このとき坂井機に命中させて,「撃破判定」受けて勲章もらった射手の人は,戦後まで(戦後もずっと)存命で,坂井氏との対面も果たしているが,
「後方機銃ついてる艦爆に後方から近づいてくるなんて,ありえないだろ常考」(今風に言うなら)
と,自分も編隊全員も思ってて,撃つのが遅れた,と言っていたな.

 要するに
坂井氏「(・・・戦闘機じゃない?)ポカーン」
SBD編隊「(・・・何考えてんだアレ? ???)ポカーン」
という状態だったらしい.

 SBD編隊の側はみんな新人だったのもあるそうだが,もしSBDの乗員がみんな冷静なベテランだったら,撃墜王坂井三郎の伝説も「大空のサムライ」も存在しなかったのかと考えるとなんとも.

「絶好のチャンス!」
って局面が不意に来てしまうと,ポカーンとなって逆に撃てない,という話は,空戦以外で結構ある.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 ゼロ戦のパイロットとして活躍した坂井三郎さん,戦後,航空自衛隊に入らなかったのは何か事情があるのでしょうか?

 【回答】
 坂井は片目失明だし,手指もたしか4本失ってる.
 頭には,取り出せなかった銃弾が2発ばかり残っていたらしい.
 空自の基準では身長も不足だった.

 たとえ本人が希望しても入隊できるわけがない.

軍事板


 【質問】
 ニュース速報板の坂井中尉追悼スレッド見たが,人が死んだ事が本当に嬉しい連中っているんだねぇ .

 【回答】
 「第二次大戦の語り部」ゆえに,誰にも真似の出来ない重みある言葉を持つ人物ですから.

 自称平和主義者にとっては,自分達がどうしても手に入れられない,戦争の実体験を持つ人物は,
「改悛の全く見られない犯罪人」
か,
「地獄を見て改心した『聖人』」
かのどちらかでないと,利用価値――彼らにとっての他人とは,これがあるかないかの存在でしかない――を見出せないのです.

 それなのに,全てに対して距離を置く(=上記のいずれにも該当しない)坂井氏のあの姿勢は,彼らにとってはまさに,「目の上のたんこぶ」そのものだったのでしょう.

 もっと生きて当時の事を語っていただきたかった.
 今は只,冥福を祈るのみ.
 いつかの「朝生」ではその説得力のある言葉に,左翼どもも返す言葉がなかったことがあった.
 彼はただ過去を美化するのみでなく,旧軍の悪い部分も批判すべきところは批判した人だった.

それにしても
http://saki.2ch.net/test/read.cgi?bbs=news&key=969961921
のクソ左翼どもは人間らしい心というものが全く欠如しているとしか思えんね.
 怒りを通り越して悲しくなってくる.

 一方,かつての敵国の米国では,8日付の New York Times にて,坂井氏の死去について大きく取り扱われております.
 その扱いの大きさもさることながら,記事の内容についても坂井氏が戦後日米間の友好を取り持った功績のある人物の一人であることが容易に伺われます.
 私は撃墜数よりも戦後の氏の功績をより評価すべきだと思いますし,当該記事も「戦後,米国人との深い友好という絆を結んだ(意訳)」と書かれております.

 この記事の存在を知らせてくれた知人の退役海兵少佐は,同時に「これを読め」と「SAMURAI!」を貸してくれました.
 1957年刊で,私の坂井氏といえば零戦というイメージに反して,表紙は雷電戦闘機のパーペーバッグです.
 記事中,米空軍歴史局の歴史家Yvonne Kinkaid氏の言葉として(※意訳)
「撃墜数というものは,誰が誰を撃墜したかということを正確に記録することはとても困難である.
 だがエース・パイロットを後方に教官として送った米軍や,貧弱な装備のロシア軍機を数百撃墜したドイツ軍エース達に比べ,日本軍の人的資源の不足から終始前線で戦い抜いた坂井氏の出撃記録は偉業である」
 と紹介されております.

軍事板

 ※この手のドイツ軍エース評価については,異論は出ているけどね.


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