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「FSI」:北朝鮮ヨンビョン原子力施設の内部(英語)
ロスアラモス研究所のSiegfried Heckerが2月に訪問して撮影したもの.
「Togetter」◆(2010/11/13)とある科学のレ…じゃなかった北朝鮮軽水炉談義
「VOR」◆(2012/08/22)北朝鮮 原子炉建設の主要部分を終了
「VOR」◆(2012/09/01)北朝,原子炉建設作業で著しい成功
【質問】
北朝鮮の原子力施設について教えられたし.
【回答】
北朝鮮の原子力施設としては,平壌地区の金日成総合大学の未臨界実験装置,平壌原子力研究所のサイクロトロン加速器および寧辺地区を中心とする多くの施設,それに凍結されたいくつかの原子力発電所がある.
寧辺(ヨンビョン)原子力研究センターは,平壌の北約80km,寧辺市の南西約5kmの平安北道寧辺郡分江地区九龍江の屈曲点に位置し,敷地面積は8.92万平方km(270万坪)である.
この研究センターは1960年代前半から,旧ソ連の協力により建設を開始し,研究用原子炉(IRT−2000),5,000kW実験用原子炉(黒鉛減速・炭酸ガス冷却炉),臨界実験装置,放射化学研究所(プルトニウム再処理施設),核燃料製造貯蔵施設,放射性同位元素生産加工研究所,放射性廃棄物貯蔵施設などを運用しており,このほかに建設を中断した50MWe原子炉(黒鉛減速・炭酸ガス冷却炉)がある.
【参考ページ】
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=14-02-02-01(写真も)
【質問】
寧辺原子力センター Nyeongbyeon Nuclear
Scientific Research Center の原子炉は,どのようなものか?
【回答】
旧ソ連で建設されていた研究用原子炉IRT−2000(プール型,10%濃縮ウラン燃料を使用,1965年運転開始)と,実験用原子炉1号(1986年1月運転開始),2号(未完成)とがある.
1号原子炉は1979年に着工して1985年に初臨界を達成し,1989年春に使用済燃料棒約8,000本を取り出した後,運転を停止した.
この実験用原子炉は,英国のコールダーホール型原子炉をモデルに,北朝鮮が独自に開発した黒鉛減速・炭酸ガス冷却炉で,原子炉熱出力は25MWt.
電気出力は5,000kWe.
炉心は,垂直のチャンネルに入れた燃料棒を上部から挿入し,また取り出す方式で,燃料交換は連続取替ではなく,原子炉を停止ししてから燃料を取替えるバッチ取替方式である.
燃料棒は長さ50cm,直径3cm,重さ6.17kg,燃料被覆管はマグネシウム・ジルコニウム合金で,ジルコニウム合金の含有量は0.55%と言われている.
炉心は高さ6m,直径6mで,燃料チャンネル数は801チャンネルあり,1チャンネル当たり10本の燃料棒を挿入しているので,炉心に装荷(挿入)している燃料棒数は約8,000本で,燃料のウラン総重量は約40〜45トン,減速材である黒鉛の重さは600トン.
また,燃料の平均温度は420℃,最高温度は440℃.
【参考文献】
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=14-02-02-01
http://www.iaea.org/NewsCenter/Focus/IaeaDprk/facilities.shtml
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hosho.html
日本語wikiでは「マグノックス型炉」と書かれているが,ちょっと違うような…
【ぐんじさんぎょう】,2009/6/13 21:00
に加筆
日本語wikiの筆者は「GCR=マグノックス型炉」と決めてかかっているようですね.
英国炉においてはその認識で,おおよそ誤りはない(正確には改良型コルダーホール炉に限られる)のですが,ご指摘の通り英国炉以外の場合,その前提が崩れます.
北朝鮮の当該炉ではマグネシウム・ジルコニウム合金使用とのこと.
これはマグノックス(マグネシウム99.9%,ベリリウム0.1%の合金)とは大きく異なることとなりますので,マグノックス型炉というのにはかなり問題があります.
まあ,類似の原子炉でイメージしやすい物,と言うところでしょうが,炉心構成要素が大きく異なる原子炉を区別しないのには,個人的には大きな違和感があり,ここでもwikiの記載は信用ならないものとの感を強くするところです.
へぼ担当 in mixi,2009年06月12日 22:56
▼ JPwiki は一方で,ロシア海軍関係に時折驚くべき品質の記事があったりしますね.
投稿者が誰であるか非常に気になりますが(ニヤニヤ
椋鳥 in mixi,2009年06月13日 21:33
青文字:加筆改修部分
そろそろプーチン閣下がロシア語版Wikipediaを編集しちゃってもいいはず….
フナムシ in mixi,2009年06月14日 03:20
>そろそろプーチン閣下が…
人質救出の手法に,「丸ごと爆撃して吹き飛ばす」が追加されそうなので,勘弁してください.
椋鳥 in mixi,2009年06月14日 23:31
▲
faq24w02.gif
(こちらより引用)
【質問】
北朝鮮でも使われている黒鉛減速・炭酸ガス冷却型原子炉(GCR)とは?
【回答】
天然ウランを燃料とする黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉(GCR:Gas
Cooled Reactor)は,実用規模の発電用として世界で最も早い時期にイギリスで実用化された.
その初号機(コールダーホール Calder Hall
1号機,60MWe)は1956年に営業運転を開始した.
ちなみにコールダーホール型炉は現在では,天然ウラン金属棒をマグノックス(マグネシウムを母材とした合金)で被覆していることから,マグノックス(Magnox)型炉と呼ばれることが多い.
出力の割には大型となり経済性が低いという難点があったが,以下のような利点がある.
・天然ウラン利用なので,ウラン濃縮プラントを必要としない.
・多量必要な減速材としての黒鉛は工業的に容易に供給できる.重水のような重水製造プラント(重水濃縮施設)を必要としない.
・原子炉冷却材の炭酸ガスは工業的に容易に供給できる.
・マグノックス被覆材,ステンレス鋼などの原子炉材料は工業的に容易に供給できる.
・炉心の余剰反応度が小さい,炉心出力密度が小さい,黒鉛の熱容量が大きいなど安全性が高い.
・ガス冷却のため,液体状および固体状の放射性廃棄物の発生が少ない.
・炭酸ガスは化学的に不活性であり,また相変化も発火も起こらないので,燃料や被覆管とは発熱反応を起こすことはない.特に過酷な事故を想定しても,溶融した燃料との相互作用で原子炉冷却材が急激な変化を起こす心配はない.
原子炉冷却材ガスの中にアルゴン41および粒子状の放射性物質を含むものの,それらの量はそう多くはない.
原子炉冷却材は炭酸ガスなので,軽水炉のボイド係数※に相当するものはない.
炉心全体がゆっくりと温度上昇する場合,黒鉛減速材が若干の正の反応度係数をもたらすが,即発的に効く燃料ドップラー反応度係数が大きな負の値であるので,実効的な反応度の温度係数は負となり問題となることはない
GCRである東海原発では,原子炉冷却材としての炭酸ガスは,燃料要素(中空燃料)を冷却しながら燃料チャンネル中を上昇し,高温ガスダクト(ホットダクト)を経て,頂部から蒸気発生器に導かれ二次系(水)に熱を伝え,底部から蒸気発生器を出て,ガス循環機を介して低温ガスダクト(コールドダクト)を経て,原子炉容器へ戻される.
下図を参照の事.
原子炉の出力(反応度)は,制御棒(中性子吸収材)によって制御される.
制御棒を引き抜いて正の反応度を与えると,原子炉の出力は上昇する.
この結果,燃料棒と減速材(黒鉛)の温度が上昇する.
燃料棒の温度が上昇すると,ドプラー効果により負の大きな反応度が急速に加えられ出力上昇が押えられる.
黒鉛は熱容量が大きいため,温度はゆっくりと上昇し,この間,正の反応度を加えられ,原子炉出力はゆっくりと上昇する.
この間,制御棒を徐々に挿入することにより,出力の上昇を容易に制御できる.
反面,ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8E%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E7%82%89
によれば,マグノックス炉は,余剰反応度が元々小さい為,燃料を効率よく燃焼させることが難しく,安定して運転を行うためには頻繁に燃料を交換する必要があるという.
例えば東海発電所では,大きな燃料交換機を使用し,一日に20本から30本の燃料棒を交換していたという.
(この情報は,Atomicaでは確認できず)
なお,トロースフィニッド発電所(2基)が,鋼鉄製圧力容器の脆化が問題となって1993年7月に閉鎖された以外は,古いマグノックス型炉の閉鎖理由の殆どは経済性からであるという.
日本の東海原発も経済性の観点から廃止措置工事が行われており,廃止措置技術の蓄積・開発も併せて行われている.
【参考ページ】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8E%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E7%82%89
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=02-01-01-06
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=02-01-01-07
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=05-02-03-05
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=05-02-03-14
http://www.vill.tokai.ibaraki.jp/as-tokai/01jigyosyo/j03gende.htm
http://www.japc.co.jp/haishi/index.html
※別項参照.
以下,修文(全面削除)提案です.
「反面,ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8E%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E7%82%89
によれば,マグノックス炉は,余剰反応度が元々小さい為,燃料を効率よく燃焼させることが難しく,安定して運転を行うためには頻繁に燃料を交換する必要があるという.
例えば東海発電所では,大きな燃料交換機を使用し,一日に20本から30本の燃料棒を交換していたという.
(この情報は,Atomicaでは確認できず) 」
以上のウィキペディアに基づく段落の全面削除を,「強く推奨」します
(出典の明白な誤り・誤認識に起因する強い勧告レベル).
修文案も考えましたが,完全な書き下ろしが必要で,正直なところ手が付けられない有様であり,そのままの掲載には賛同できません.
日本語のウィキペディアの信頼性は,英語版他に比べて特に低いことが知られていますが,こちらの物も2/3は差し替えが必須と評価します.
ちなみに,原子力分野でも日本語版は手が付けられないほど酷い物が多いため,比較参照はしても単独での引用は避けるのが賢明と考えます.
ちなみに今回の場合,特に酷いのは以下の箇所です.(詳細はコメント項目参照)
「米国では低濃縮ウラン燃料を使用する軽水炉が主流であったが,英国にはウラン濃縮の技術が無かった為,天然ウランを燃料として使用できる,ガス冷却炉が開発された.
ガスの冷却材は,熱容量および熱伝導率が低いため,ガス圧を上げることで,必要な熱出力を確保していた.」
<コメント:何故ガス冷却炉ではウラン濃縮が不要なのか,全く説明になっていない.
この文を書いた人間には,冷却材と減速材に求められる特性を全く理解していないことがよく分かる.
専門用語を並び立てれば説明になると考えていれば,それは大学3年生以下のレベルと言うことができる.
少なくともこのレベルでは大学を卒業できない.>
「マグノックス炉は,余剰反応度が元々小さい為,燃料を効率よく燃焼させることが難しく,安定して運転を行うためには頻繁に燃料を交換する必要がある.
例えば東海発電所では,大きな燃料交換機を使用し,一日に20本から30本の燃料棒を交換していた.」
<コメント:「余剰反応度」に求められるものは何か全く理解していないことが明白.
「効率よい燃焼」と「余剰反応度の低さ」は別次元の問題であり,むしろ余剰反応度の低さが効率よい燃焼につながることがあることからも,この説明が支離滅裂であることは明らか.
数字も裏取りができないため何とも言えないが,この筆者の理解レベルであれば信用するのは危険と考える.>
(個人的には,「余剰反応度」という専門用語を知っているだけで満足している有様は見苦しく,小一時間どころか1ヶ月ほど(以下略)と感じる.)
「ほかに希ガスであるヘリウムが用いられることがある.」
<コメント:GCRでヘリウムが使われた例は,寡聞にして聞いたことがない.
▼実験でもあり得ないとまでは言わないが,上記の有様から考えると,AGRと呼ばれるGCRの発展系の原子炉と勘違いしている可能性が濃厚.
実験でもあり得ないとまでは言わないが,上記の有様から考えると,高温ガス炉(HTGR)と呼ばれるGCRの発展系の原子炉と勘違いしている可能性が濃厚.▲
この部分では,原子力専攻であれば大学2年生でも誤りを指摘できるレベルであり,問題外と言える.>
以上,ご参考まで.
へぼ担当 in mixi,2009年06月07日 22:10
【質問】
寧辺の核施設に関して,日本語ウィキペディアにマグノックス炉と書いてあるのは間違い,とのことですけど,これ,英語版にもはっきりMagnoxと書いてありますね.
英語版の著者が何かミスをしているのではないかと.
日本語版は英語版の翻訳に過ぎないので.
Tamon in 「軍事板常見問題 mixi支隊」,2009年06月15日
00:38
青文字:加筆改修部分
【回答】
確かに
Yongbyon Nuclear Scientific Research Center - Wikipedia, the free encyclopedia
をたどると,その旨の記述がありますね.
もっともその大元は
Magnox - Wikipedia, the free encyclopedia
における
「Three North Korean reactors, all based on the declassified blueprints of the Calder Hall Magnox reactors: 」
との記載とのリンクかと考えます.
<これはこれで議論したいところですが,ここでは省略します.>
私自身は,先述の通り,技術的な類似性や分かりやすさ
(といっても,この手のガス冷却炉では,材料の選択から構造その他考えれば考えるほど,類似の構造になるのですが)
と,厳密なカテゴライズは別物だと考えており,wiki英語版及び日本語版の(善意の)分かりやすさ優先とは考えを異にするものです.
まあ,その点で言えば
「Nine UNGG power reactors built in France, all now shut down. These were carbon dioxide-cooled, graphite reactors with natural uranium metal fuel, very similar in design and purpose to the British Magnox reactors except that the fuel cladding was magnesium-zirconium alloy. 」
とあるように,被覆管の性状(合金組成)から言えばフランスのUNGG類似と言うべきなのでしょう.
しかし全体構造他から見ると,各国技術の寄せ集めと表現するのが適切であり,その意味においては全て包含される「GCR(ガス冷却炉)」と称すべきものと私自身は考えます.
ちなみに,英語版の著者がミスをしているのかどうかは,「定かではない」と愚考します.
先述の通り「分かりやすさ優先」か,「厳密なカテゴライズ」を貫くのかは筆者の考えですので,私自身の意見とは異なりますが,それはそれとして理解できます.
一方,「日本語版は英語版の翻訳に過ぎない」というのは,日本語版の作者には物足りなさを感じるところですね.
翻訳に過ぎないのであれば,最後まできっちりと正確に訳すべきであり,手っ取り早く翻訳しただけで後は知らない,というのには不信感を覚えます.
まあ,翻訳者に技術的な子細まで理解しろと言うのは,少し無理な相談であることは承知していますが,それならば日本語文献由来の,オリジナルの記載の一つも盛り込んでみたら,と思うところしきりです.
以上,ご参考まで.
へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」,2009年06月15日
01:54
青文字:加筆改修部分
【質問】
ボイド係数って何?
【回答】
過渡変化時の原子炉出力応答に影響を与える主要なパラメータには,ボイド係数とドップラー係数がある.
BWRなど炉心で水が沸騰する原子炉では,熱出力,圧力,冷却材の流量や温度などの変化に伴って,沸騰により発生する気泡の量が変化するため,炉心の反応度が変化する.
この気泡の量の変化に伴う反応度の変化率をボイド反応度係数,略してボイド係数という.
軽水炉では例えば温度が上がって気泡の量がふえると,反応度は減少するので負のボイド係数となる.
ボイド係数は原子炉の安全性や安定性にとって重要な量であり,減速材や核燃料の種類,減速材と燃料の体積比,気泡の量,炉心の大きさによってかなり変るが,運転状態では常に負の値を取ることが義務づけられており,原子炉の自己制御性がこれによって保持される.
しかし負の絶対値があまり大きいと不安定となる.
逆にボイド係数は絶対値を小さくすると,過渡特性には有利になるが,逆に,運転員は,原子炉流量で運転を制御することが難しくなり,負荷追従機能が低下する.
また,相対燃料サイクルコスト対ボイド係数の関係から最適燃料サイクルコストはボイド係数が0.06から0.09の範囲で得られることがわかっている.
例えばBWRの有する固有の自己制御性は,主に以下の2つの反応度係数により達成される.
負のボイド反応度係数:正の反応度付加→出力上昇→ボイド(冷却材中の気泡)増加→中性子の減速能力低下→反応度減少→出力上昇抑制
負のドップラ反応度係数:正の反応度付加→出力上昇→燃料ペレット温度上昇→ウラン−238の中性子吸収増加(ドップラ効果)→反応度減少→出力上昇抑制
BWRでは炉心流量調整と制御棒位置調整を併用している.炉心流量調整による反応度調整は負のボイド反応度係数を利用したものである.
燃焼に伴う反応度減少……炉心流量増加→炉内のボイド量減少→反応度増加
一方,チェルノブイル4号炉(黒鉛減速軽水沸騰型炉:RBMK)の炉心特性は,ボイド係数が大きな正の値であるため,低出力運転時には反応度出力係数が正の値となっていて,このため,低出力運転時には炉心固有の自己制御性が期待できないものであった.
一方,チェルノブイル4号炉(黒鉛減速軽水沸騰型炉:RBMK)の炉心特性は,ボイド係数が大きな正の値であるため,低出力運転時には出力反応度係数が正の値となっていて,このため,低出力運転時には炉心固有の自己制御性が期待できないものであった.
改良型ガス冷却炉(AGR)の場合,原子炉冷却材は炭酸ガスなので,軽水炉のボイド係数に相当するものはない.
炉心全体がゆっくりと温度上昇する場合,黒鉛減速材が若干の正の反応度係数をもたらすが,即発的に効く燃料ドップラー反応度係数が大きな負の値であるので,実効的な反応度の温度係数は負となり問題となることはない.
ボイド係数とドップラー係数は,水対ウラン(燃料)比で調整できるが,水対燃料比を変えるとプラントの燃料サイクルコストと保守費用に影響を与える.
【参考ページ】
http://www.rist.or.jp/atomica/dic/dic_detail.php?Dic_Key=833
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-08-02-05
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-03-02-01(図5含む)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-01-01-07
【ぐんじさんぎょう】,2009/6/17 21:30
に加筆
非常に難解な分野ですが,とりまとめお疲れ様です.
コメントは以下1点です.
(当該分野は私自身の専門分野ですので,直し始めると全文修文になってしまいますが,これは趣味の暴走ですので除外)
> 一方,チェルノブイル4号炉(黒鉛減速軽水沸騰型炉:RBMK)の炉心特性は,ボイド係数が大きな正の値であるため,低出力運転時には『反応度出力係数』が正の値となっていて,このため,低出力運転時には炉心固有の自己制御性が期待できないものであった
×『反応度出力係数』→○『出力反応度係数』
細かいようですが,反応度を投入して出力が変化する様子は,原子炉の動特性方程式を解けばよいお話であり,係数で決まるものではありません.
ここで問題となっているのは,ある出力上昇が起こった場合,正の反応度が入ってますます出力が増加して,しまいには暴走するか,負の反応度が入って自己制御性が働き,ある出力をピークに落ち着くか,と言うことです.
すなわち「出力(増加)→それにより原子炉に印加される反応度」を示す係数ですので,正しくは『出力反応度係数』となります.
へぼ担当 in mixi,2009年06月17日 01:53
【質問】
ウラン燃料って何?
【回答】
ウラン燃料は核燃料の一種.
核燃料とは,原子炉の燃料として使用する物質で,核分裂性物質とその親物質との総称である.
天然に存在する核分裂性物質はU−235だけである.
U−238とTh−232は親物質である.
中性子を吸収して,U−238はプルトニウム(Pu−239,Pu−241など)等,Th−232はU−233等の核分裂性物質に核変換する.
原子炉に使用するウラン燃料は,二酸化ウランと金属ウランの2つに大別される.
発電炉には種々の型式があるが,主として二酸化ウランをペレットに成型し,被覆管に収納した燃料を用いている.
ウラン金属(合金)の燃料を使用する原子炉は,ほとんどが研究炉及び材料試験炉であり,北朝鮮の原子炉のもこれ.
このほか,二酸化ウランの燃料核に二重(BISO)または三重(TRISO)の被覆をした被覆粒子燃料が,高温ガス炉に使用されている.
軽水炉(BWR,PWR)用燃料の加工工場では,濃縮された六フッ化ウラン(UF6)を原料として,これから二酸化ウラン(UO2)粉末を製造し,この粉末を直径・高さともに約1cmの円柱形に押し固め,高温で焼き固めてペレットとする.
このペレットをジルコニウム合金の管中に一列に並べて装填し,両端に金属栓を溶接して密封した燃料棒に加工し,これを燃料集合体に組み立てる.
カナダ型重水炉(CANDU)用燃料の加工工場では,転換で得られた天然UO2粉末から,ペレット,燃料棒を経由して燃料集合体を組み立てる.
ガス冷却炉(マグノックス炉)用燃料の加工工場では,転換で得られる四フッ化ウラン(UF4)を原料として,これをマグネシウムまたはカルシウムで還元して天然金属ウランとし,これを棒状に加工後,外面をマグネシウム合金で被覆し燃料集合体とする.
【参考ページ】
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=04-06-01-03
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=04-06-01-06
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=04-06-01-05
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=04-06-03-01
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=08-01-03-07
【ぐんじさんぎょう】,2009/6/25 21:10
に加筆
atm15b.gif
(こちらより引用)
【質問】
北朝鮮は天然ウランを核燃料として使っているそうですが,天然ウランを核燃料として用いる方法を教えてください.
【回答】
一つは,中性子吸収がもっとも少ない重水を減速材および冷却材に用いる方法.
重水は高価であるが,高速中性子を熱中性子に減速するまでに吸収する割合がもっとも少ないので,核分裂物質がもっとも少ない天然ウラン酸化物には必要な組み合わせである.
CANDU炉(Canada Deuterium Uranium Reactor,カナダ型重水炉)の場合,濃縮しない天然ウラン酸化物(UO2)を円柱状のペレットをジルカロイ−4管で被覆した燃料棒を用い,燃料に近接している圧力管およびカランドリア管には中性子吸収の少ないジルコニウム合金(ジルカロイ)が用いられる.
もう一つは,中性子の減速を黒鉛,冷却を炭酸ガスとする組み合わせ.
北朝鮮が2009年現在まで行っているのは,こちらの方法である.
燃料棒は,核分裂物質密度を上げ中性子吸収物質を可能なかぎり少なくするため,天然ウランの金属棒をマグノックス(MgにAl,Beを微量添加して機械的性質と耐食性を改善した合金)で被覆したものである.
燃料棒は,核分裂物質密度を上げ中性子吸収物質を可能なかぎり少なくするため,天然ウランの金属棒をマグネシウム合金――典型例として,イギリスのGCRではマグノックス[
MgにAl,Beを微量添加して機械的性質と耐食性を改善した合金]を使用――で被覆したものである.
金属燃料(ウラン金属及び合金燃料)はウラン密度が高いので,黒鉛または重水の減速材との組み合せによって高中性子束を必要とする研究炉,材料試験炉及びプルトニウム生産用やRI生産用の原子炉の燃料に最適である.
しかし金属は,熱伝導率は良いとはいえ,融点(1032℃)が低く,かつ665℃で相変態するため,出力密度を高くできない.
被覆材に成形加工のしやすいアルミニウム合金を用い,薄い板状燃料に仕上げ,熱伝達性能をあげ,この短所を補っている.
また,金属ウランは変形や膨張を起こしやすいので,少しでもこれらを抑えるために,Fe,Al等を微量添加し熱処理を施したものを用いている.
減速材には,重水に次いで中性子吸収が少ないうえに,安価な黒鉛を用いる.
しかし減速能が悪いので必要量が多く,炉が大きくなる.
冷却材にも中性子吸収が少ない炭酸ガスを用いるが,除熱性能が低いため必要量が多くなり,この点でも炉が大きくなる.
プルトニウム富化天然ウラン燃料集合体(MOX燃料)については,本項では省略.
力尽きました…
【参考ページ】
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-08-01-05
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=04-06-01-03
【ぐんじさんぎょう】,2009/6/28 21:00
に加筆・修正
うーん,難しい分野であり,直し始めるときりがないのですが,最小限の修文として,
1.「金属燃料(ウラン金属及び合金燃料)はウラン密度が高いので,」以降はカット.
こちらの方はそれ自体は間違いではないのですが,実在するのは研究炉など,「中・高濃縮ウラン使用にて高中性子束」を実現する原子炉がメインとなってしまうため(除くプルトニウム生産用),削除を推奨.
また,黒鉛減速炉の記載についても間違いではないが,この説明の流れで実際に用いられているものは,プルトニウム生産『のみ』を目的とした原子炉がメインとなってしまうため不適.
以上より泣く泣くカット推奨と言うことで.
北朝鮮自体は「違う」とは言い張っていますが,北朝鮮の原子炉(ガス冷却炉)が発電用としての役割以上に,プルトニウム生産炉としての役割を重視されたのはご指摘の通りです.
ただ,当該原子炉はあれでも一応発電能力を持ち,(現在では明らかに違いますが)平和利用目的と主張されても,技術は未熟ですが,そう言い張られるとIAEAでも監視強化以外に崩せないところがあり,その点で線を引かせて頂いたものです.
プルトニウム生産炉の場合,発電を考えなくて良いのであれば,それに特化した設計が出来ます.
よって名目上とはいえ
「発電を行い,副次的にプルトニウムを生産できるもの」
と,
「プルトニウム生産に特化した原子炉」
は区別すべき物と愚考します.
その点を区別しなければ,弊社の商業炉(BWR)でも『プルトニウム生産炉』であることは間違いありませんので.
なお「プルトニウム生産炉」については,勝手ながら核不拡散上の観点から,解説は遠慮させて頂きます.
2.「マグノックス(MgにAl,Beを微量添加して機械的性質と耐食性を改善した合金)」
→「マグネシウム合金(典型例として,イギリスのGCRではマグノックス[
MgにAl,Beを微量添加して機械的性質と耐食性を改善した合金]を使用)」
と修文.
これなら典型例としてのマグノックスや,それに限らないマグネシウム合金使用の北朝鮮他の例もカバーでき,矛盾が無くなると考えますが,如何でしょうか.
以上,ご参考まで.
へぼ担当 in mixi,2009年06月28日 05:09
&by mail,Mon, 29 Jun 2009
【質問】
北韓の原子炉は稼動しているのか?
【回答】
報道によれば,活発に可動しているという.
原子炉周辺では道路が舗装され,新たな施設も建設されており,煙突からの煙の量も増えているとされている.
以下引用.
「北,寧辺原子炉を稼動中」証拠写真を公開
北朝鮮・平安北道寧辺(ピョンアンブクド・ニョンビョン)にある実験用黒鉛減速炉(5000キロワット)が活発に稼働していることを示す衛星写真が公開された.
米シンクタンク「グローバルセキュリティー」は▽今年1月に5日に撮影した寧辺原子炉の衛星写真4枚▽04年9月29日と03年3月5日,2000年2月22日にそれぞれ撮影した写真−−など計8枚を,最近ホームページ上に公開した.今年1月と以前の状況を比較する形で掲載された.
今年1月の写真では,煙突から出される煙が鮮明に見える.北朝鮮が原子炉の稼働を中断していた2000年2月の写真には,蒸気が見えない.煙突の蒸気は原子炉が活動中であることを示す.
北朝鮮は94年10月,米国とジュネーブ枠組み合意に至った直後,寧辺原子炉を閉鎖したが,03年2月27日から原子炉を稼働している.
04年4月18日には,原子炉の稼働を再び中断したものと確認された.
これは,原子炉の使い済み燃料棒から核兵器原料のプルトニウムを生産するためのもの,と見られた.1月の写真は,04年にしばらくの間中断されていた原子炉が,再稼働中であることを示す.
1月の写真では,周辺道路が舗装され,新たな施設も建設された様子が確認できる.
04年9月の写真では舗装道路ではなかった.
「グローバルセキュリティー」によると,北朝鮮は寧辺原子炉の燃料棒から,毎年,核爆弾1個を作れる量(少なくとも6キロ)のプルトニウムを生産できる,というのが韓米情報当局の判断.
李相逸(イ・サンイル)特派員 from 中央日報 2006.05.15.13:37
写真は米デジタルグローブ社が撮影.今年1月と2000−04年当時の状況を比較する形で掲載された.
北朝鮮は1994年の米朝枠組み合意により寧辺の原子炉の稼働を中断したが,2002年末に再稼働を表明.05年5月に「8000本の使用済み核燃料棒取り出しを終えた」と宣言した.
北韓核施設
(画像掲示板より引用)
【質問】
ヨンビョン原子炉は既に寿命が来ており,停止に大きな意味が無かったのではないか?
【回答】
A Reactor Shut Down
Diplomacy with North Korea finally takes
a step forward.
Tuesday, July 17, 2007; Page A18
という社説によれば,寿命だったとしても,北韓のプルトニウム保有が,これ以上増えないという点で,大きな意味があるのだという.
しかし北韓が本当に核廃棄に進むのかの,真のテストはこれからだ,と記事は述べる.
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そのテストは,北朝鮮が約束したとおり,全ての核開発計画,核物質などのの全面的開示である.北朝鮮は10-12個の核爆弾,ないしその相当プルトニウムを保有していると推測されている.
北朝鮮はパキスタンのカーン博士のネットワークからウラン濃縮装置を買っている.
これら全てのことを,北朝鮮は今まで一度も認めたことが無い.
北朝鮮の核開発計核の全貌が明確にされない限り,その廃棄は不可能である.
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同記事では触れてはいないが,たとえ北韓が情報開示をしたとしても,その情報が信頼に値しないものである可能性が非常に高いだろう.
場合によっては,正確な情報を出す出さないを,北韓は次の取引材料にしかねない.
問題を細切れにして,取引材料を作り出すというのは,北韓のいつもの手口である,
同社説はまた,北朝鮮が石油や食料の支援などとの引き換えで,簡単にその核開発計画を断念するとは信じがたい,とも述べる.
数百万人の国民の餓死や政治犯の強制収容所を持つ北朝鮮は麻薬や覚せい剤の密売,煙草や偽札の密売などで核開発をまかなってきており,金正日は石油や食糧支援以上のものを要求して来ることが確実と思えるわけだが,北朝鮮は核開発に対するコミットメントを何ら変えること無しに,交渉上の優位を確保する危険がある,という.
[quote]
それゆえ,アメリカ側交渉代表は完全な,信頼できる核開発計核の開示を要求すべきであり,アメリカや同盟国は,これ以上の何らの譲歩もすべきではない.
[/quote]
「何も譲歩するな」は,フォラツェンを始め,多くの専門家が述べていることでもある.
「拉致問題に拘って対北韓支援を拒む日本は,6ヶ国協議で孤立している」式の論を展開している連中は,そのことを忘れているか,意図的に無視しているかのどちらかだろう.
ニュース極東板・改
加筆:青文字部分
なお,2007年7月9日15時1分付,毎日新聞によれば,施設の老朽化だけでなく,核燃料枯渇も協議受け入れの背景にあるという.
以下引用.
<北朝鮮>核燃料が枯渇,協議受け入れの背景か…IAEA筋
【ウィーン会川晴之】北朝鮮が黒鉛減速炉に使用する核燃料を,すでに使い尽くした可能性が高いことが8日わかった.
6月下旬に北朝鮮の寧辺(ニョンビョン)核施設を訪問した国際原子力機関(IAEA)筋が「未使用の核燃料の在庫はない」と明らかにした.
現在運転中の5000キロワット黒鉛減速炉で使用中の核燃料が最後の核燃料とみられる.
〔略〕
別のIAEA関係筋は「5000キロワット黒鉛減速炉を今後も運転し続けるには,核燃料を新たに作る必要がある」と,北朝鮮が使用に耐えうる核燃料を現在,保有していないことを明らかにした.
黒鉛炉に使用する核燃料は,寧辺の核燃料加工施設で製造している.
同施設は設計上,黒鉛炉2基分に当たる年間100トンの核燃料を製造できる能力を持つとされる.
しかし,94年の米朝枠組み合意で停止・封印されてからは腐食が進み,核燃料を製造できない状態にある.
北朝鮮は同施設内に新たな設備の設置を進めているが,試運転段階にとどまっている.
06年11月に現地を訪問した米ロスアラモス研究所のヘッカー元所長に対し,北朝鮮当局者は「現在,黒鉛炉で使用している核燃料は,94年以前に製造されたもの」と説明.
さらに同当局者は,新たな核燃料を製造できないことを理由に
「現在,黒鉛炉に取り付けている核燃料を抜き取るのは07年後半か08年」
と話すなど,核燃料の在庫がない状況を示唆していた.
北朝鮮はIAEA査察官を追放した直後の03年初頭と,05年6月にそれぞれ8000本,計1万6000本の核燃料棒を黒鉛炉に取り付けている.
現在,使用中の核燃料が最後の在庫だった可能性が強い.
ただ北朝鮮が,核燃料を隠し持っている可能性も残るため,IAEAは今後,北朝鮮が提出する資料などを慎重に分析して実態解明を進める方針だ.
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ただし北韓関係者の証言が根拠であるため,これ自体が情報戦の一環である可能性も考慮されたし.
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