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※「北韓」:朝鮮民主主義人民共和国の韓国側呼称."北朝鮮"と呼ぶより厭味.
「VOR」◆(2012/08/08) 北朝,日本の赤十字,10年ぶりに協議再開
「VOR」◆(2012/08/14)日朝交渉 4年ぶりに再開の用意
「VOR」◆(2012/08/31)日朝協議 交渉継続で合意
「VOR」◆(2012/11/10)日北朝がウランバートルで交渉改善のための会合
「VOR」◆(2012/11/16) 北朝鮮と日本,安全保障問題についての討議を深化させることで合意
「VOR」◆(2013/05/20) 北朝鮮 植民地支配時代の犯罪に対する謝罪と賠償を日本に要求
「ダイヤモンド・オンライン」◆(2012/01/16)中国では新政権が安定第一路線を部分修正 日・北朝鮮の外交戦はさらに深刻化する ――作家・ジャーナリスト 莫 邦富氏
『秘密ノート』(飯島勲著,プレジデント社,2013.7)<としりん/危機管理としての秘密保持,北朝鮮交渉の裏話,道州制を語る
【質問】
日朝首脳会談は日本外交の敗北だったのか?
【回答】
手嶋龍一,佐藤優,重村智計によれば「敗北」,太田述正によれば「大勝利」,と見方は二分している.
以下,勝利説.
私が最も首をかしげたのは,タイトル(「外交敗北」)からもうかがえる,この本の最大のテーマです.
日本政府は二度の日朝首脳会談等の結果,わずか12万5千トンの食糧と7百万円相当の医薬品を北朝鮮に供与しただけ
(http://www.hanknet-japan.org/data/05_01_02a.html.9月19日アクセス(以下同じ))(注2)
で,拉致被害者5人の永住帰国とその家族8人の来日・永住を勝ちとった上に,北朝鮮の金正日体制の悪者イメージを国内外に広めることができたのですから,これはどう考えても日本の「外交」の大勝利であって「外交」の敗北とは言えないからです.
(注2)重村氏は食糧支援にだけしか言及していない(130,171頁).
重村氏は,日本政府が,米ブッシュ政権が対北朝鮮宥和政策に反対であることを知っていて,極秘裏に日朝国交回復に向けての北朝鮮との事務交渉を行い,日朝首脳会談の実施を決め,その後でそれを一方的に米国政府に通知したことで,日米同盟を危機に陥れたとし,それが敗北だ,というのです(30〜46頁).
しかし外務省は,2002年8月27日に,東京でアーミテージ米国務副長官とベーカー駐日米大使(いずれも当時)に対し,平壌で日朝首脳会談が行われる3週間も前の未公表時点(注3)で,そのことを通知しており(43頁),小泉首相が9月12日にニューヨークでブッシュ大統領に会い(30頁),改めてそのことを話題にするまでの間には,日米両政府間で十分調整が行われたはずです.
(注3)公表したのは8月30日(22頁).
小泉首相が,かねてから「拉致問題の解決なくして<北朝鮮との>国交正常化なし」というスタンスであること(244,249頁)は当然伝えられたでしょうし,日朝首脳会談において合意され,発表される予定の平壌宣言の案の骨子についても米国政府に伝えられたはずです.
具体的には,この平壌宣言中には,
「双方は朝鮮半島の核問題の包括的な解決のために,該当するすべての国際的合意を順守することを確認した.」,
「双方は,日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して国交正常化後,双方が適切とみなす期間にわたって・・<各種経済協力>・・が実施されることがこの宣言の精神に合致するとの基本認識のもと,国交正常化会談で経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することにした.」
という条文があり,
(http://www.dprknta.com/polotics/il-cho.html)
北朝鮮に核に係る国際的合意を遵守させるを約束させる一方で,国交正常化以降にしか日本は北朝鮮に経済協力を行わないことを説明したはずです.
つまり,米国は,北朝鮮への経済協力は日朝国交回復が前提であり,その日朝国交回復は,拉致問題が解決すること,かつ北朝鮮が核に係る国際的合意を遵守すること,が前提条件であると受け止めたはずなのです.
北朝鮮が,ジュネーブ合意に反して核開発を行い,濃縮ウランの計画を進めているのをしぶしぶ認めたのは2002年10月4日に平壌でケリー米国務次官補(当時)に対してでしたが(79〜84頁),8月までには米国はその状況証拠をつかんでいたことが,ボルトン米国務次官(当時)が8月26日に東京での記者会見で,
「北朝鮮がジュネーブ合意を・・遵守していると確認できない」
と述べていた(41頁)ことからも分かります.
日朝首脳会談開催を知らされる前から,米国政府は日本政府に対し,近々北朝鮮の核開発の証拠を提示するつもりでいて,開催を知らされた後も,証拠さえ日本政府に提示すれば,その時点で日朝国交回復交渉にストップをかけられる,と判断していたと考えるのが自然です.
そうである以上,北朝鮮側から拉致問題で何らかの情報開示がなされる・・金正日体制の恥部の一つが暴露される・・と日本政府から聞かされていた日朝首脳会談にゴーサインを出しても何ら問題がない,と米国政府は判断したと考えられるのです.
私が言いたいのは要するに,二度の日朝首脳会談等の日本の「外交」についても,それが米国の承認の下,米国の対北朝鮮政策の一環として行われたと考えるべきである,ということです.
そもそも重村氏には,日本は米国の保護国であって(注4)外交自主権などなく,従って米国の意向に基本的に沿った外交,すなわち「外交」しかできない,という根本的な認識が全く欠けています.
(注4)軍隊が存在せず・・自衛隊があるではないかとおっしゃる読者は私の過去の関連コラムを熟読して軍隊との違いを納得されたい・・,
諜報機関も存在しないからこそ,日本にとっては日米安保条約という米国による日本保護条約が不可欠であり,この条約の下で日本は紛れもない米国の保護国なのだ.
そんなことは,少なくとも政治家や外務・防衛・旧大蔵・旧通産官僚で日米関係に携わった人々にとっては暗黙の常識です.
その常識を欠く重村氏は,これら政治家や官僚のただ一人とさえ腹を割った話をできる関係を構築していないという点で,(かつての)新聞記者としても国際問題研究者としても,いささか問題なしとしない,ということになります.
〔略〕
この本のサブテーマの一つは,「日本はいまや,・・<かつての>朝鮮半島や中国<のような>・・科挙の制度による中央集権制と同じ官僚の弊害に,直面している」(13頁),という,私も共感を覚える重村氏の主張を,日朝首脳会談等を所管した田中均外務省アジア大洋州局長(当時)らの外務官僚を俎上に載せて裏付けることです.
しかし,田中局長が,「一通の外交記録も残さず,北朝鮮と秘密交渉を行<う・・という>国会対策的手法<で>・・日朝の首脳会談を推進した」(18頁)ことを重村氏のように非難するのは全く筋違いです.
田中局長がカウンターパートとした北朝鮮の国家安全保衛部(諜報機関)高官のミスターX(注5)(183頁)をそれまでの統一戦線部の黄哲(ファン・チョル)に代わって日本政府との連絡役にしたと通知してきたのは北朝鮮政府である,と重村氏は記しています(88,116〜117頁).
(注5)国家安全保衛部副部長.後第一副部長(部長欠なので実質的には部長)(183頁).彼はもともと,日朝交渉を監視し,金正日に報告する責任者であったという(128頁).
だとすれば,このミスターXと田中局長らが行う交渉がうさんくさい秘密交渉のわけがありません.
例えば,私は防衛庁時代に国連海洋法会議の日本政府代表代理の辞令をもらい,いわば臨時の外務省職員になって外交旅券でジュネーブに飛んで国際会議に臨んだことがありますが,ミスターXの立場もそれと同じことです.
私の場合と違ってミスターXの場合,(北朝鮮の)外務省の指揮命令に服さないのかもしれませんが,そんなことを問題視していたら,北朝鮮憲法には一切の武力を指揮・統率し,国防事業全般を指導するとだけあって,外交を指導するとは書いてない国防委員会(wikipedia.9月19日アクセス)の委員長でしかない金正日が小泉首相のカウンターパートとして,日朝首脳会談に臨んだり,平壌宣言に署名したりする権限があるのかどうかすら,疑問視する必要が出てきます.
北朝鮮がまともな国ではないことを,北朝鮮専門家の重村氏にお教えする必要はありますまい.
重村氏はまた,北朝鮮の外務省を相手に交渉すべきであったとし,その理由として,外交官はウソをつかないけれど,工作機関員はウソをつくことを商売にしている(116頁)ことを挙げていますが,そんなバカな話はない.
外交官にせよ,工作機関員にせよ,個人レベルの倫理と組織の一員としてのレベルとは切り離して考えなければならないことぐらい,毎日新聞という大組織の一員であった重村氏はお分かりでないのでしょうか.
かく言う私も,個人的にはバカがつくほどの正直者であることは自他共に許すところですが,防衛問題に係る日米交渉に携わった際には,日本「保護国」政府首脳の方針に従い,「宗主国」米国政府に対してしばしば,場合によっては外務省もだまして,悪意や善意のウソをついたものです.
なお,重村氏は簡単に工作機関員とおっしゃるが,私は工作機関員でございます,とはまず彼らは名乗りません.そもそも,外交官の中に工作機関員が混じっていることは国際常識です.
だから,私が職務上,あるいはプライベードでつきあった外国人(や日本人)のうち,誰が工作機関員であったかは確言できませんが,工作機関員ではないかと疑った人々は,おしなべて個人レベルでは,むしろそれ以外の人々よりも正直である,という印象を持っていることを付言しておきましょう.
なお,重村氏は,外務官僚の堕落・無能ぶりの例証として,歴代のアジア担当局長等の外務官僚が一貫して日朝国交正常化の方が拉致問題よりも重要と考え,しかも拉致問題こそ重要だと日本の世論が考え始めた頃になってもなお国交正常化や核問題の方が重要だと世論をミスリードし続けたことを挙げています(116,228〜230頁)が,これもおかしい.
重村氏自身が指摘するように,日本の政治家は一貫して北朝鮮に甘く,しかも利権漁りのために北朝鮮との議員外交に従事する人々が少なくありませんでした.メディアもそれを後押しないし黙認していました.(239〜250頁)
当然世論もそうであったはずです.
こんな中で外務官僚達だけが別の動きができるわけがありませんし,別の動きをしたとすれば僭越というものです.
拉致情報が次第に増え,拉致被害者達の努力もあって,やがてメディアが変わり,そして世論が変わり,だから政治家の意識も変わった段階で,政治家の指示に従い,外務官僚が拉致問題に取り組み始めた,ということであり,それでよいのです.
責められるべきは,もっと早く拉致問題の重要性を認識し,世論を啓発すべきであった日本の政治家や(外務官僚OBを含む)有識者です(注6).
(注6)誤解しないでほしいが,私は外務官僚もまた,他の官僚と同様,その多くが無能で堕落していると指摘するとともに,外務官僚特有のゆがんだ人間像も指摘してきた(コラム・バックナンバー省略).
「実は,日本の外交官の一部には,米国の外交官を小バカにする人たちがいる.・・米国務省の高官に「君らは,どうせ四年もすれば,交代するだろう」といった態度を取る・・.
また,・・ワシントンの駐米日本大使館の若い外交官の中には,・・自分たちは,日本外務省の「主流」だが,・・国務省の日本担当の外交官・・たちは出世にはずれた「傍流」ではないか,と・・軽くあしらう人たちもいる.」(45頁)は,まさにその通りだろうと思う.
また,私自身,田中均氏については,北米局審議官時代の彼を知っているが,アジア大洋州局長時代の彼の拉致被害者への冷たい態度も合わせ,高い評価はしていない(コラム#45,63,85,86).
ただし,
「週刊オブイェクト」●軍事評論家
の,太田述正に関するエントリを見ても分かるように,自己検証能力欠如という点において,太田個人の信頼性には問題があるようだ.
一方,佐藤優は,ミスターXに田中均らが踊らされ,小泉訪朝で拉致問題に関する正確な情報を,日本外務省は引き出すことができなかった点で失敗だとする.
以下引用.
『文芸春秋』3月号(現在発売中)に外務省を震撼(しんかん)させる論文が掲載された.
元NHKワシントン支局長で外交ジャーナリストの手嶋龍一氏による「小泉訪朝 破綻(はたん)した欺瞞(ぎまん)の外交」と題する論文だ.
北朝鮮の謀略に乗せられた日本の外務官僚が,主観的には官僚生命を賭(と)して困難な外交課題に取り組んでいるのであるが,客観的には金正日の手の平の上で踊らされ,日本の国益を毀損(きそん)していく様子が実証的に描かれている.
2000年,ブッシュ共和党政権が誕生した後,金正日政権はアメリカが北朝鮮の体制転覆を本気で考えているとの認識を強めた.
「こうした情勢のなかで金正日は一枚のカードをそっと日本に差し出した.それが『ミスターX』だった.
やがてカウンターパートとしてあらわれたのが,就任間もない田中均アジア太平洋局長だった.
(中略)
北朝鮮は,権力を取り込んで大向こうをあっと言わせる田中の性癖を知り抜いていた」.
こういう場合,「ミスターX」が何者であるかは,インテリジェンス(諜報(ちようほう))技法を用いて調査することが常識である.
日本外務省の実力でも,例えば朝鮮語(韓国語ではない)に堪能で,北朝鮮事情に通暁している某専門家にこの課題を与えれば十分こなす.
また,CIA(米中央情報局),SIS(英秘密情報部),モサド(イスラエル諜報特務局)に照会すれば,人定はそれほど難しくない.
特にイスラエルは北朝鮮の弾道ミサイル開発を阻止する工作に従事したときに,朝鮮労働党や国防委員会の幹部との取引を含むさまざまな工作に従事してきたので,北朝鮮情報をたくさん持っている.
あるいは日本外務省がインテリジェンス専門家をウランバートルに派遣し,モンゴルの対外諜報機関に「ミスターX」の人定について照会すればよい.
しかし,外務省はそのような調査を一切しなかった.
照会することによって,諸外国から横やりが入り,交渉が頓挫することを恐れたからである.
こういうときに日本側が知りたいのが「ミスターX」に関する情報のみであるとしても,ほかに20くらいの質問を紛らせておけば,目立たない.
仮に日本が依頼したことが露見しても,北朝鮮側は外国のインテリジェンス機関に調査されることには慣れているので,その程度のことで「ミスターX」ルートを閉ざしてしまうことはない.
こういった「インテリジェンスの基本文法」を田中均氏が身につけていなかったことが筆者にはむしろ驚きだ.
手嶋論文で最も迫力があるのは,2002年8月21日の外務事務次官室でのやりとりを再現した部分だ.
谷内正太郎総合外交政策局長(当時,現外務事務次官)が田中均氏に,小泉純一郎首相訪朝時に署名される予定になっている平壌宣言についてただす.
「『この宣言には拉致という言葉がまったく書かれていないが,これでいいのか』.
核心を衝かれた田中は,一瞬押し黙っり,短く応じている.
『拉致問題については別途交渉していますから』
拉致問題をめぐる田中と谷内の永く険しい対決が,この瞬間から始まった」
田中均氏の見通しは甘かった.
小泉訪朝で拉致問題に関する正確な情報を,日本外務省は引き出すことができなかった.
外交は結果責任である.
この時点で田中均氏は少なくともアジア太平洋局長を辞任すべきであった.
しかし,ポストにしがみついた.田中均氏の主観的意識では
「自分以外に対北朝鮮外交の突破口を開くことができる人物はいない」
と思ったのであろう.
しかし,官僚はポストで仕事をする「国家の機械」である.
当該官僚が余人をもって替え難いと思った瞬間に,そのポストを去った方がよいというのが,筆者が霞が関官僚の生態観察からえた経験則である.
田中均氏は有能な外交官で,自らの命を国益のために投げ出すという職業的良心をもっている人物であると筆者は認識している.
それにもかかわらず,筆者が田中均外交について論評するときはいつも辛口になってしまうのは,同氏の手法に有能な日本型外務官僚が陥りやすいわなが凝縮されていると考えているからだ.
〔略〕
前回連載で紹介した手嶋龍一氏の論文「小泉訪朝 破綻(はたん)した欺瞞(ぎまん)の外交」(『文芸春秋』3月号)では,2002年9月の小泉訪朝に対する世論の評価が厳しくなった後,自己保身のために豹変(ひょうへん)する当時の竹内行夫外務事務次官(現外務省顧問),田中均外務審議官の様子が描かれている.
「拉致問題で日朝の正常化交渉が潰(つぶ)されててしまえば,外務省は詰め腹を切らされてしまう−.
そう考えた外務省の竹内と田中は,新たな核疑惑が持ち上がると,時に強硬姿勢をとるようになった.
それは外交官特有の自己保身だった.
核疑惑が原因で日朝交渉が止まるなら,失敗の矛先を何とかかわすことができると判断したのだ./
彼らは日米同盟をないがしろにして暴走しながら,新たに浮上した核疑惑で失態をすり抜けようとしている−.米側高官はそんな彼らに不快感を露(あら)わにした」
的確な分析である.ここで最も狡猾(こうかつ)に振る舞ったのが竹内行夫氏だ.田中均氏に世論の非難が集中し,自宅に爆発物まで仕掛けられテロの標的になったのに対し,竹内氏には非難の矛先は向かわなかった.
そして,「一局長の暴走」という物語が作られていくが,事務次官であった竹内氏の了承なしに田中氏が「暴走」することは不可能であった.
〔略〕
最近,筆者は外務省の局長級幹部と会食したが,その幹部も「竹内氏が事務次官をつとめた4年間(02〜05年)の間に外務省は内部から変質し,組織崩壊の危機に陥っている」とため息をついていた.
これが現実なのだ.
〔略〕
真の外務省改革を行うためには竹内行夫外務事務次官時代に起きた国民の目から隠されている不祥事を白日の下にさらすことが不可欠だ.竹内氏には応分の責任をとってもらう.このためにならば,筆者は国会の場に出て竹内氏と刺し違える覚悟がある.
もちろん,こうした国家戦略上の勝敗を計測するのは容易ではなく,その計測のためにはもっと多くの証言,データを積み上げる必要があるのは言うまでもない.
【質問】
日朝平壌宣言に両国が署名したとき,日本政府は北韓が核兵器開発を凍結すると思っていたのか?
【回答】
佐藤優によれば,そうは思っていなかったという.
以下引用.
〔略〕
『現代』12月号の田原総一朗氏との対談(「金正日の計算,体制崩壊の可能性」)で,当時,外務省で対北朝鮮交渉の実務を取り仕切った田中均氏(前外務審議官)が重要な証言を行った.
〈田原 田中さんご自身がかかわっておられたから,どうしても聞きたいのは,日朝平壌宣言を出す時点では,北朝鮮は,核は開発しないでおこうと考えていたのですか?
田中 (すかさず)いや,そんなことはないでしょうね.
田原 やはり日本がだまされていた?
田中 だまされたといいますか,国と国との関係というのは,さまざまな利害が絡んできますので,面従腹背であるのは,ある意味当然です.とくに北朝鮮という国は,一方で相手国に友好の手を差し伸べながら,いっぽうで相手国の脅威となるような計画をひそかに進行するということをこれまで何度も繰り返してきました.北朝鮮が単純な国であれば,われわれも苦労して外交努力をする必要はなかったんです.〉
田中氏の発言を額面通りに受け取るならば,日朝平壌宣言に合意した時点で,外務省の実務責任者は北朝鮮が核開発を行うと認識していたにもかかわらず,核開発放棄を約束した外交文書に署名したことになる.
田中氏は「国と国との関係というのは,さまざまな利害が絡んできますので,面従腹背であるのは,ある意味当然です」といっているが,筆者はこれはいかなる意味においても当然でないと考える.
「合意は拘束する」というのはローマ法の大原則であるが,現代の国際関係においても約束したことを守るというのは当たり前のことだ.
面従腹背を認めたら国際関係が成り立たなくなる.
腹の中で何を考えようと約束したことを守るという大原則を崩してはならない.
鈴木宗男衆議院議員(新党大地代表)が質問主意書で「平壌宣言の合意事項には,北朝鮮が核開発を停止することが含まれているか」とただした.
これに対して,政府は
「日朝平壌宣言においては,わが国および北朝鮮は,国際法を順守し,互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認したこと,朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため,関連するすべての国際的合意を順守することを確認したこと,核問題を含む安全保障上の諸問題に関し,関係諸国間の対話を促進し,問題解決を図ることの必要性を確認したことなどが明記されており,核実験の実施は,同宣言との関係で認められない」(11月6日付内閣答弁書)
と明確な答弁をしている.
さらに鈴木氏は田中発言が事実であるか,守秘義務に抵触する恐れがあるか,また「田中均氏の発言は,平壌宣言に合意した時点で,北朝鮮が核開発を継続するとの認識を少なくとも日本外務省の交渉責任者であった外務審議官が有していたことになるが,外務省はかかる認識を国民に対して説明したか」と追い打ちをかけている.
政府は「お尋ねについては,今後の日朝間の協議に支障を来たすおそれがあることから,外務省としてお答えすることは差し控えたい」(同)という不誠実な答弁をしている.
〔略〕
つまり,名を取って実を捨ててしまったわけだが,捨てた実が国益を損なうくらいに大き過ぎたということ.
もっとも,「拾えた実」だったかどうかは,まだ不明確.
検証が必須と言える.
佐藤氏は同コラムの最後に,
平壌宣言に至る日朝交渉については,北朝鮮側の代表者ミスターXをはじめ不透明な部分が多すぎる.
平壌宣言締結時点での北朝鮮の核開発に関する日本政府の認識をきちんと検証する必要がある.そのためには田中均氏を国会の参考人に招致し,『現代』で証言した内容を公式に確認すべきだ.
と,提言している.
当然であろう.
【質問】
田中均の言っていた「ミスターX」は信頼してよいものなのか?
【回答】
『文芸春秋』2007年3月号掲載の手嶋龍一論文をもとに,佐藤優は次のように述べている.
曰く,何者であるかをまず確かめるべきだった,と.
以下引用.
〔略〕
2000年,ブッシュ共和党政権が誕生した後,金正日政権はアメリカが北朝鮮の体制転覆を本気で考えているとの認識を強めた.
「こうした情勢のなかで,金正日は一枚のカードをそっと日本に差し出した.それが『ミスターX』だった.
やがてカウンターパートとしてあらわれたのが,就任間もない田中均アジア太平洋局長だった.
(中略)
北朝鮮は,権力を取り込んで大向こうをあっと言わせる田中の性癖を知り抜いていた」.
こういう場合,「ミスターX」が何者であるかは,インテリジェンス(諜報(ちようほう))技法を用いて調査することが常識である.
日本外務省の実力でも,例えば朝鮮語(韓国語ではない)に堪能で,北朝鮮事情に通暁している某専門家にこの課題を与えれば十分こなす.
また,CIA(米中央情報局),SIS(英秘密情報部),モサド(イスラエル諜報特務局)に照会すれば,人定はそれほど難しくない.
特にイスラエルは北朝鮮の弾道ミサイル開発を阻止する工作に従事したときに,朝鮮労働党や国防委員会の幹部との取引を含むさまざまな工作に従事してきたので,北朝鮮情報をたくさんもっている.
あるいは日本外務省がインテリジェンス専門家をウランバートルに派遣し,モンゴルの対外諜報機関に「ミスターX」の人定について照会すればよい.
しかし,外務省はそのような調査を一切しなかった.
照会することによって,諸外国から横やりが入り,交渉が頓挫することを恐れたからである.
こういうときに日本側が知りたいのが「ミスターX」に関する情報のみであるとしても,ほかに20くらいの質問を紛らせておけば,目立たない.
仮に日本が依頼したことが露見しても,北朝鮮側は外国のインテリジェンス機関に調査されることには慣れているので,その程度のことで「ミスターX」ルートを閉ざしてしまうことはない.
こういった「インテリジェンスの基本文法」を田中均氏が身につけていなかったことが,筆者にはむしろ驚きだ.
〔略〕
ことは諜報活動にも属する話であるため,クロス・チェックなしには信頼性は判定できないことは留意されたし.
本サイトでは現在,チェックできるだけの情報を有していない.
しかし一方,佐藤は外務省情報に熟知しているため,ある程度の信頼は置いても問題なしと愚考する.
なお,その後,ときおり田中均はテレビにも登場することがあったが,この点を問いただされた場面は,寡聞にして知らない.
ツッコミを忘れたマスコミなんて,存在理由はないだろうに.
【珍説】
日本は日朝平壌宣言を遵守すべき.
(朝鮮中央国営テレビ他)
【事実】
北韓が核開発を認めた時点で,同宣言は無効となっており,また,まるで売国宣言である同宣言を遵守すべき理由はどこにもない,とする見解がある.
以下引用.
「日朝平壌宣言は4条項からなるが,第4項に次のような記述がある.
『双方は,朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため,関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した』
だが北韓は,金正日総書記がこの宣言にサインした時点でも既に,『(核問題に)関連する全ての国際的合意を順守する』という誓約を完全に破っていたのである.
〔略〕
北韓のその国際的合意の『違反』を,平壌宣言の一方の当事者である小泉首相だけでなく,日朝問題では第三者として客観性を持つアメリカと韓国の両首脳が〔APECにおいて〕認め,非難したのである.平壌宣言での北韓の誓約が確認が,全く嘘だったことを3ヶ国首相が認定したとも言えるのだ.
となれば,その宣言自体が信頼性も正当性も失ってしまうことは自明である.
〔略〕
〔この宣言の第2項では〕まず日本の朝鮮半島統治が悪だったとして,ひたすら謝罪するわけだが,世界の近代史では日本以外には先例のない,異様なスタンスである.イギリスもフランスもアメリカも,植民地統治自体を悪として謝るなどという言動は全くとっていない.
「経済協力」という外務省言葉は,経済援助のことである.つまりは,ODA(政府開発援助)などの形をとる北韓への補償金,謝罪金なのだ.謝罪を述べた後にすぐカネの支払いを約束するのだから,補償,賠償と解釈されるのが普通だろう.
しかも,この謝罪金支払いの具体的金額や内容は,国交が樹立されてからではなく,そのための交渉の過程で既に決めていくことを,日本側は約束しているのだ.
〔略〕
平壌宣言の外務省発表の本文は,4項全部で36行だが,そのうち謝罪と経済援助が計15行,核やミサイルの安全保障が12行,正常化の目標が5行,日本国民の生命と安全に関わる懸案問題が,僅か4行という比率になっている.北韓の要求をそのまま容れたような,なんと偏った内容構成であることか.
こう点検してくると,平壌宣言は日本にとって亡国の宣言,いや,売国の宣言にも見えてくる.
〔略〕
日本としては,北韓との今後との折衝では,平壌宣言の無効宣言までは当面はいかないにしても,オプションとしてはそうした手段もあることを明確にして,北韓への断固たる姿勢を貫くべきだろう.実際の交渉では,平壌宣言の謝罪や補償の文言にとらわれることなく,北韓に対し,まず目の前の『日本の人々への多大な損害と苦痛』への謝罪や補償を求めるべきである」
(古森義久 from SAPIO Nov. 27, '02)
私はこれまで3回訪朝し,そのつど,いろいろな方にお会いしたが,その方たちに,小泉さんは約束を破ったではないかと言われ続けてきた.
小泉首相は訪朝し,国交正常化すると約束して帰ってきた.その約束がいまだに実現されていないというわけだ.
……だそうだけど,約束,破ったことになるの?
【事実】
国交正常化の前提として,
・核兵器開発の放棄
・拉致問題の解決
がありますが,上述のように,そのどちらの約束も北韓は果たしておりません.
したがってピョンヤン宣言は,北韓によって反古にされた約束ですので,日本だけがそれを守る謂れはありません.
【質問】
平沢勝栄議員の,「北韓の外交官と接触」はどう観るか?
【回答】
「北韓の世界観に取り込まれた」という説あり.以下引用.
『サンデー・プロジェクト』を見て,平沢勝栄議員もすっかり「北」に取り込まれてしまったと改めて感じた.
それは,平沢議員が籠絡されて「北」の代弁者と化したとか,そういう意味ではなく,世界観そのものの問題として,である.
たとえば,ある閉鎖的な組織が別の組織と交渉ごとを行うとしよう.ここでは単純にヤクザの抗争を例に取る.
P組のチンピラpがQ会のチンピラqに怪我をさせた.これに怒ったQ会のチンピラfがP組の幹部kを殺してしまった.
一触即発の雰囲気に,これはヤバイとP組とQ会の幹部が集まり,手打ちを行うことにした.
その場でQ会の会長は謝罪し,手打ちは済んだかに見えた.ところがしばらくしてQ会の幹部にP組の幹部が言うには,
「若いモンは,あの手打ち自体,納得出来へん言うとるんや.kを殺したfを引き渡せ言うて,もう大騒ぎや.実際,若いモンは何するやらわからへんねん.ここは一つ,ワシの顔を立てて……」
つまり,交渉の場において,まずは「強硬派」と「穏健派」の対立の存在を臭わせ,さらに自分が「穏健派」に属することをアピールする.
そして「強硬派」は交渉自体に反対なのだと訴え,ここで今交渉がなされていること,
目の前に自分がいること自体が,相手にとって恩恵なのだと認めさせる.
認めさせたその上で,こちらの要求が通らなければ「強硬派」はどう出るか分からない,などと脅しにかかるというわけだ.
ここで,もし交渉相手がシロウトなら,いるかどうかも分からない「強硬派」の影に怯え,逆に目の前にいる「穏健派」を味方だと錯覚さえして,こちらの要求を呑んでくれるだろう――.
このような「強硬派」戦術はこれもまた「北」お得意の一種のゴネ術であり,アメリカはとっくに「強硬派」「穏健派」の対立はないと見切っている.
なのに平沢議員は『サンデー・プロジェクト』で,「穏健派」を後押ししないといけない,などと平気で言う.
たぶん平沢氏には,「北」に取り込まれたという意識はないだろう.利益を受けたわけでもなし,代弁をしているわけでもない.ただ,「強硬派」「穏健派」の対立図式という世界観を受け入れてしまっただけである.
ところがこの世界観は,いったん受け入れると世界がそのようにしか見えなくなるカルトな色眼鏡であり,具体的な利益よりもさらに厄介なものである.
平沢氏はこれからも善意から様々な発言を繰り返すだろうが,このカルトな色眼鏡を意識的に外すことが出来ない限り,聞くべき話は出てこないだろう.
【質問】
2004/5/22の小泉再訪朝をどう評価するか?
【回答】
様々な見解があって,一つに纏められるものではないゆえ,あくまで,各人が考える材料の一つとして……(A〜Eの5段階評価).
<行方不明者10名の真相究明>C
北朝鮮側が一度提示した発表を,全て白紙撤回させたのは意義は大きい.
だが,この問題は北朝鮮を崩壊させない限り,劇的な進展は望めない.一般的に言えば,特務機関の工作が表面化することは,自由民主主義国家以外ではまずありえない.真相が明らかになるとすれば,それまでの体制が崩壊した時だからである.
したがって,今回進展しなかったこと自体は,不思議でも何でもない.
だからこそ,家族会は過激な強行路線を主張している.つまりそれは手段としては最も近道である事は疑い無い.
が,日米の戦争準備は整っていない.今は時間を掛けるべき.
ただし,「日本側の都合により」真相究明に日本が参加しなかったというのは減点対象.何らかの形でコミットすることにより,多少でも北韓特務機関についての情報収集ができるチャンスをフイにした.
<5人帰国> B
「無条件での問題解決」からの後退.
しかし現実問題として,代価なき人質交換が難しいのも確か.
また,誘拐事件で身代金を払って解決することは普通の事.往年のイタリア(30年くらい前?)ではそれが普通だった.数十億円で済むなら許容範囲.
歴史的にみても,北朝鮮とマジで交渉して貢物を出さなかった例は無い.クリントンのKEDOにせよ,金大中の200億円にせよ.
あの商売上手の,傲岸不遜で高飛車の中国でさえ,高官の訪問のたびに貢いでいるし,北朝鮮は中国の対外経済支援供与国のNO-1になっている.
武力以外では北朝鮮を動かすのにはそれしかない.
貢物をやめろというのは易しいが,それならば武力なりで脅迫するか,交渉自体をあきらめるかしかなかろう.
さらに,米支援は今後の問題解決の進展度合いによっては打ちきる旨,表明しているので,現段階では様子見.
しかし今後,ズルスルと数百〜数千億円単位の援助を続けるなら,評価はE(不可)とする.
<ジェンキンス氏問題> D
まんまと日米離間策の道具にされている.首相は念書まで書いた(毎日新聞,2004/5/24)そうだが,無意味.
洗脳されている可能性大の拉致被害者家族が動くとしたら,金の命令でのみ.これは,地村夫妻の子供達が16日に北朝鮮当局側から日本に行くよう命令されていたことからも明らか.
事前にアメリカの確証が得られなかったのは痛かった.
また,アメリカとの交渉も,「重罪で裁く」とのコメントが出されるなど,なんともまずい.せめてノー・コメントを要求できなかったものか.
後はブッシュの鶴の一声を期待する他無いが,アメリカ議会は働き者なのでなかなか難しい.
なお,日本国内の北朝鮮シンパは「曽我さんを北朝鮮に戻せ」と言っているがこれは無視すべし.
<核問題> B
この問題で日本が切ることが出来る最後の切り札は,「お前たちが核武装したら俺達もするぞ」があるが,他のカードは無い.この問題はアメリカに任せる.
<その他>
支払ったとされる裏金については,真偽不明につき判断材料外.
状況は全ての面で一歩だけ前進した.状況は継続中.「一気に終わりはしなかった.全てを投げ出したわけでもない」という,この点は歓迎する.
ヤマ勘外交な印象も否めず.
これまでもずっと言われ続けて来た事だが,まともな情報分析なしにまともな外交ができるわけがない.
これに懲りて,情報分析を外交の中心に据えるシステムを早急に作るべき.内調の大幅機能強化を.省庁格上げも検討すべし.
問題は,拉致被害者の解放を小出しにして,そのたびに北韓が金をせびり取る手法が定着しやしないかという点.
なんせ百人近い以上.存命者が1/3としても,家族を含めれ100人くらいになるだろう.
そこが心配.
(消印所沢,JSF,極東ニュース板他)
「勝利」説もある.
どうも今だに今度の訪朝が小泉の外交的勝利だってのがわかってないやつがいるなあ.ちょっと解説.
1,とりあえず5人取り返した.
2,ピョンヤン宣言への違反を理由とする経済制裁を北と関係国に承認させた.
3,ピョンヤン宣言を条件にすることで,北から核実験とミサイル実験による脅しのカードを奪った.
4,北が正常化交渉から逃げられない状況を作った.交渉の中で要求を出し,応じなければ交渉を停滞させるというカードが使える.
5,人道支援に応じることで,薄情だという非難をかわす.
6,6カ国協議とサミットで北の問題についての発言権を確保した.
これほどの外交はちょっとないよ.
(議員・選挙板)
また,元毎日新聞記者の重村智計早稲田大学国際教養学部教授は,小泉首相の今回の訪朝は,山崎宅前自民党幹事長や平沢勝栄衆院議員らが北朝鮮と接触した「非公式ルート」「ブローカー外交」の延長線上にあったと見ている.
ブローカー外交とは,いわゆる工作機関の関係者や,日本国籍を取得した朝鮮人などの民間のブローカーが,「私は北朝鮮の高官と非常に親しい」とか「首脳会談を開くようにセッティングできます」と言う類の誘いを政治家,外務省関係者,ジャーナリスト,新聞記者などにかけてくるものだ.重村教授にも接触しようとしてきたことがあったという.
現在,日本国内で活動中のブローカーは5〜6人,その周辺の部下などのグループを含めると20〜30人が活動している,と重村教授は言う.
しかし,金正日政権のトップクラスに食い込んでいるブローカーはわずか2〜3人.ブローカーは,北朝鮮の高官にとっていい話を持っていくことで,報酬を得て仕事が成立する.コメ支援や,経済支援などを取り付ければ,手柄になる.
ブローカーの話に乗る日本人も,対北朝鮮外交をめぐって手柄が欲しい人たちだ.ブローカーは北にも,日本側にもいい話をして交渉をコーディネートする.
しかし,もともと北朝鮮側の人間なので,最初から北朝鮮が損をすることはない.
相手は民間人だから,失敗しても表立って責任の追及もできない.
話に乗って訪朝し,交渉がうまくいかなくても,ブローカーの立場は守ってやらなければいけないので,コメなどの支援をしなければならなくなる.
今回の小泉首相の再訪朝も,昨年12月に平沢氏らが訪中して接触した際のブローカーはミスターXと呼ばれる北朝鮮の高官につながるルートだったといわれている.
最終的に,今回の訪朝をコーディネートしたブローカーはまた別にいて,かつてミスターXグループにいた1人が関与したといわれている.
だが,それだけではない,外務省が働きかけていたルートも,田中均外務審議官が親しくしていたミスターXルートのブローカーグループを使ったルートといわれている.
現在の北朝鮮との外交は結局,全部ブローカーに一杯食わされている.
政府間交渉に一元化するとの議論があったが,外務省ルートも,山崎,平沢ルートも両方ともブローカー外交だった.最初から「お土産外交」だったわけで,対等な立場の交渉ができるとは思えない.
このままでは,それぞれが自分の勝手なことをして,外交はめちゃくちゃになる.政府は「外務省を通じた交渉にしか応じない」と,態度を明らかにすべきだ.このままでは,拉致問題の根本的な解決はなしえない.
(日刊スポーツ,2004/5/24)
一方,WSJ(アジア版,社説)は,「ピョンヤンの盗賊の政権 Pyongyang's Pirate
Regime」と題し,ある程度の評価を与えている.
小泉首相の,つい最近の北朝鮮訪問についていえることは,比較的安くついた,ということであろう.
なにしろ凄腕の金正日は,韓国大統領との2000年6月のサミットでは$186Mをまきあげ,中国でさえ去年北朝鮮を6か国協議に参加させるために$50Mを支払ったのだが,日本は$10Mと25万dの食料支援で5人の拉致家族被害者の子供達を取り返すことが出来た.
しかし,まだ日本人の拉致被害者は10人,いやもっと多くいるとされているので北朝鮮がこの調子で少人数ずつ身代金を請求したらどうなることだろう.実際北朝鮮のやっているのは国民国家のやることではなくマフィアのような犯罪組織の仕業と同じである.つまり偉大なる首領様の一族の,家族犯罪集団のビジネスなのだ.
それでも,最近のニュースに拠れば北朝鮮はリビアにウラニウムを販売したらしくて,物事の限度を知らぬ悪辣さはマフィアを超越している.だいたい,僅か3週間まえに,アメリカ人の北朝鮮専門家,セリグ・ハリソン氏が訪問して北朝鮮高官と会談した時に,北朝鮮は核物質や爆弾を国外に売ることは無く,それは純粋に自衛,抑止力のためだと語ったのではなかったのか?
小泉首相の北朝鮮訪問は2回目だが,我々WSJは,首相が北朝鮮のようなならず者に,真摯な,無垢な国民を救うための努力とはいえ,交渉をすることは北朝鮮を勇気づけるだけだと悟ってほしいと思う.
日本はもっとうまいやり方を既に始めていて,安全保障上の理由で特定の国への経済制裁を可能にする法案を通過させようとしている.
残念なことに小泉首相はピョンヤンが日朝平城宣言を守る限り,という制約つきではあるが,そうした制約を発動しないと述べた.
まあしかし,其の約束は長続きしそうにも無い.北朝鮮は今までも核凍結などの約束を,ずたずたにしてきた実績があるのだから.
小泉首相の訪朝から期待できるかもしれない良いことというのは,首相が犯罪集団に人参を与えるよりは,鞭を持ったほうが良いことに気がついてくれるだろうということである.
【質問】
以下の話は本当か?
報道によれば,ごく最近に明らかになった話として,「5・22訪朝」に同行した外務省の藪中アジア大洋州局長が,昼前後に,突然,うわずった声で東京の細田官房長官に国際電話をかけてきたという.
藪中局長は,会談が一時間半ほどで打ち切られ,金正日が席を立って出ていったことを伝えた.
細田長官が,
「君たちが同行していながら,何でそんなことをした」
と叱責すると,藪中氏は
「私たちにも止めることができない状況があったのです」
と答えたという.
中でも問題となったのは,その後の小泉首相の行動である.席を立たれたので慌てて後を追った小泉首相は,金正日から
「二人だけなら十分だけ話す」
といわれ,別室に二人だけで入っていった.
他に入ったのは北朝鮮側の通訳だけで,外務省の人間は同席できなかったと伝えられている.
【回答】
疑わしい.
同ブログのコメント欄によれば,情報ソースは,
ようやく見つかりました.
6月17日,テレビ朝日放送系列で確かに放映されていました.
タイトルもずばり「日朝首脳会談 10分間の怪しい密談が発覚!?」です.
これで,肩の荷もおりました.ほっとしましたよ.
Posted by 無頼 at 2004年08月19日 11:44
とされているが,同じ欄において,
テレ朝系列の朝のワイドスクランブルの,その時間帯の放映内容は,「夕刊キャッチアップ」という,前日発売の新聞夕刊の記事を,アナウンサーが代読する内容だということは把握していますか?
つまり,テレ朝のワイドスクランブルがソースではありません.
ワイドスクランブルは,「新聞を読んだ」に過ぎないわけです.そのとき扱われている新聞がどこの新聞だったかは把握できましたか?
スポーツ新聞と思われますが.
スポーツ新聞の「か!?」という内容のほとんどが憶測記事ですが,スポーツ新聞の憶測記事を前提にして,「もし事実ならば」という話に至ったのですか?
と反論され,また,反論者は議員・選挙板に,そうした反論レスを入れたことを書いている.
(909 名前:無党派さん 投稿日:04/08/19 13:41
ID:hiiU2IKs
※極東ニュース板への転載ゆえ,元URLは不明)
スポーツ紙レベルのものを,他の同種情報の有無・比較の検討もなく,無条件にソースとして信頼することには,確かに問題がある.
2004/8/24時点において,他紙からの後追い記事もない以上,根拠が乏しい怪情報と言わざるを得ない.
なお,西尾自身は自サイトの,「西尾幹二のインターネット日録:緊急公告(四)」において,ソースについてこのように述べている.
――――――
「日刊ゲンダイはもともと左のジャーナリズムである.最初にここに漏れたのが,情報が拡大しなかった原因かしれない.
保守系のマスコミは日刊ゲンダイをひごろ信用せず,採用したがらないからだ.
他方,左翼系のマスコミは,朝鮮総連に不利になるこのネタは広げたくない」
――――――
『ソースは日刊ゲンダイです』
・・・例えばイギリスでね,SUN紙やデイリーミラーの記事をソースだと言い張ったら,笑われるよ西尾さん.(ちなみに今年の5月頃,デイリーミラーはイラク関連記事で捏造写真を掲載して問題となり,トップが辞任している)
『左のジャーナリズムだから』ではない.低俗なゴシップ誌だから,日刊ゲンダイは信用されない.他のマスコミが左翼系,保守系ともゲンダイの後追い記事を出していないのは,単に相手にしていないからだ.
西尾さんのやっている事は,東スポをソースだと言い張っているのと大して代わりが無い.しかも記事の内容は『ある情報筋からによると〜』といった調子で,とても信用できるものじゃない.
西尾幹二センセイは日刊ゲンダイと心中するつもりなのだろうか? なんてチャレンジャー.私なら,そんな分の悪い掛けは絶対にしない.
【質問】
近い内の日朝国交正常化はありうるか?
【回答】
北韓次第だが,まずありえない.
2004/7/21の日韓首脳会談後の共同記者会見によれば,小泉首相は
「私の任期はあと2年ほどであるが,その間に,日朝平壌宣言が誠実に履行されれば,正常化がなされる.
これが誠実に履行されれば2年にこだわらない.1年もあり得る.
私は期間にはこだわらない.誠実な履行がなければ1年経っても2年経っても,3年経ってもない.望ましいことは,できるだけ早く日朝平壌宣言を誠実に履行することである.
時期にはこだわらない」(NHK 19:15頃)
と語っている.
平壌宣言には
『(核問題に)関連する全ての国際的合意を順守する』
という一文がある.
要するに北韓が非核化しなければ,国交正常化もない,ということである.
金政権が存続する限り,北韓は非核化に対して徹底的に抵抗することが予想される.
したがって国交正常化も,小泉政権が続く間はまずありえないだろう.
その後の政権も,核を持つ意思を持ったままの北韓と国交正常化しようとすれば,国民の激しい批判に晒されることは確実であり,したがって二の足を踏む可能性は高いだろう.
【珍説】
今でも少なからぬ日本人観光客が朝鮮を訪れているが,国交が正常化されれば,より多くの日本の人が訪れるだろう.
逆に朝鮮の人も日本に来ることができる.
韓国の観光客数も日本をはるかにしのぐが,南北が統一されれば,すべての離散家族の再会が可能だ.
【事実】
>逆に朝鮮の人も日本に来ることができる.
できません.
北韓では,出国できるのは党の上層部およびそれにコネを持つ人,または大金を積んだ人だけです.
>すべての離散家族の再会が可能だ.
北韓の体制が崩壊しない限り,統一は不可能です.金正日は赤化統一しか認めていないからです.
また,離散家族にしても,金正日の指定したところで会えるだけで,「王様のお慈悲にすがっている」というだけの情けない状態です.王様が気に入らなければ,いつでも中断できます.
そのような「再会」で満足していいわけないじゃん?
【珍説】
日本人観光客が増えれば増えるほど,ホテルや観光関係者も潤う.
経済的にも非常に良い方向に進むだろう.
朝鮮に投資しようとする企業が出てくるかもしれない.
【事実】
希望的観測に過ぎません.
これまで,日朝合弁企業は,在日朝鮮人企業家とのものを主体にして,幾つかありましたが,どれもうまくいっていません.
法治国家の体をなしていないため,北韓側当局によって恣意的にルールを勝手に変えられ,毟り取られて放り出される,という結果を招いています.
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