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Második felsõ Oldalára hátrálsz

◆◆◆麻薬密輸出
<◆◆違法ビジネス
<◆北韓 目次
東亜FAQ目次


 【質問】
 北韓外交官による麻薬密輸は,いつから始まったのか?

 【回答】
 1991年に韓国に亡命した外交官,高英煥(コ・ヨンファン)によれば,当時,金正日は義弟,張成沢(実妹の金慶喜の夫)に対し,自分のための「疲労回復館」を平壌に建設するよう命じたという.
 以下引用.

 張成沢は市内の普通江(ポトンガン)区域に敷地を確保し,工事を開始したが,内装用建材を輸入する外貨が不足していたため,金正日は外交部(外務省)を通じて,各国の大使館に対して「特別指令」を下した.各大使館に数万ドルから50万ドルという額を割り当て,1年以内に上納する事を命じたのだった.外交特権に着目し,外交官に「ポッタリチャンサ(担ぎ屋稼業)」をさせたのである.
 北韓の外交官達は,特産品の朝鮮人参や漢方薬,あるいは免税店で大量に仕入れた洋酒や煙草のカートンを外交行嚢に詰め込み,各国に無税で持ち込んで,外貨稼ぎに専念した.

 しかし,そうした商売の利鞘は微々たるもので,必要な金額を期限までに確保する事は困難だった.
 その結果,金正日は外交官達に,外交行嚢による麻薬密輸を指示したのである.

 北韓外交官による麻薬密売は,すぐに発覚した.
 1976/5/21,エジプトの有力紙「アル・アハラム」は,北韓のシリア大使館員2名が,カイロ空港の税関で,大麻400kgを密輸しようとして拘束され,国外退去処分になったと報道.
 この事件を皮切りに,
6/11にはアルジェリアで,
10/15にはデンマーク,
10/18にノルウェー,
10/22にスウェーデン,
10/26にフィンランド,
11/19にはイラン,
と北韓外交官達による違法行為が発覚,次々と国外退去処分に.

 1974年3月,大使としてスウェーデンに赴任した40歳の吉在京は,4月にはアイスランド大使を兼任,密輸事件が続発した76年10月には,ノルウェー大使も兼任していた.
 在デンマークの金ホンチョル大使達4人が,147kgの麻薬(当時の末端価格で33万j)を密輸しようとした事件で,ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)と宣告され,6日以内の国外追放処分を受けると,吉在京は退去命令が出る以前に,自主的にストックホルムを離れ,帰国した.
 そのためか,吉在京は帰国後も処罰されることなく,77年7月には外交部副部長(外務次官)に昇進,党中央委員候補から最高人民会議代議員(国会議員に相当)へと出世街道を突き進んだ.
 そして92年,吉在京は党組織指導部秘書室の副部長に転任した.
 党中央委員会には,宣伝煽動部,国際部,作戦部など20前後の部局があるが,その最高権力部署が党組織指導部である.
 党組織指導部長は70年代半ばから任命されておらず,金正日が実質的な部長となっており,金正日執務室の秘書達は,党組織指導部秘書室に所属している.
 その秘書達を統括しているのが吉在京などの副部長であり,金正日から絶大な信頼を得ている.

(恵谷治 from "SAPIO" 2003/6/11, p.16-17)

 欧州警察麻薬対策本部などによると,北朝鮮公館の職員などが国外で麻薬を所持,運送,売買した疑いで摘発された事例は,50件を超える,という.
 以下引用.

 2001年1月には,フランクフルト発モスクワ行きのルフトハンザ機に登場していた在メキシコ北朝鮮大使館の外交官2名が35kg,420万ドル相当もの大量のコカインを所持していたため,検挙されるという事件もあった.
 北朝鮮の民間人(貿易関係者)による麻薬密輸騒ぎは,最近も各国で続発している.

「従来,北アフリカや中近東で製造され,ロシア系のマフィアなどの手により,ドイツに持ち込まれていた麻薬は,純度の低い粗悪品が殆どだったが,最近は『一級品』が運ばれてくる」
 こう語るのは,ドイツ政府の医療薬品機関に勤務する研究職員だ.
「最近の『一級品』は,量といい質といい,広大なケシ栽培農場と相当規模の精製工場が必要なはず」
と,彼は,マフィアなど旧来の犯罪組織の手に負えるものではないことを示唆する.

「北朝鮮がこれまで麻薬ビジネスに手を染めてきたという事実は,我々も認識している.
 最新の具体的動向については,捜査中ということもあり,詳しいコメントは避けたいが,基本的に
『以前も今も大きな変化がない』
という感触を持っている」
と,麻薬担当検事(欧州各国の検察当局との調整官)は,間接的な表現ながらも,現在のドイツに「一級品」の麻薬が蔓延していることに北朝鮮が絡んでいると考えていることを認めた.

(村田信彦〔ドイツ「ユンゲフライハイト」紙記者〕
from SAPIO,2003/7/9,p.92, 抜粋要約)

 2004/12/8には,トルコブルガリアからトルコ国内に大量の合成麻薬を密輸した疑いで,ブルガリア駐在の北朝鮮外交官2人がトルコで拘束されたという.
 以下引用.

 AP通信によると,2人は5日,イスタンブール市内で拘束された.
 地元紙ミリエトは,押収された2人の車の写真を掲載.車には外交官ナンバーがついていたという.
 外交官2人が合成薬物の錠剤を渡したトルコ人2人も拘束された.
 当局は密輸に関し,半年間捜査を続けていた.
 なお,北朝鮮はトルコと外交関係があるが,トルコ国内に大使館はなく,在ブルガリア大使館が兼務している.

(産経新聞,2004/12/8)

 さらに,米国務省が発表した世界の麻薬取り締まり状況をまとめた05年版の報告書によると,カイロの北朝鮮大使館に勤務する外交官2人が2004年6月,精神安定剤の錠剤15万個の密輸を企てたとしてエジプトの捜査当局に拘束されたという.2人は強制退去処分となった.

 国務省は03年の報告書では,北朝鮮の外交官や軍人が70〜90年代,海外で麻薬取引に関与して逮捕される事件が多発したと指摘している.

(朝日新聞,2005/3/5)


 【質問】
 ポン・ス号事件とは?

 【回答】
 2003/4/20,北韓の貨物船「ポン・ス」(4480t)によるヘロイン密輸が,オーストラリア連邦警察・国防軍によって摘発された事件.
 以下,抜粋要約.

 同船拿捕のきっかけは,4/16,豪ビクトリア州で外国人4人(マレーシア人2人,シンガポールと中国人各1人)が,ヘロイン約50kgを車に隠匿していたとして逮捕されたことである.
 彼らの供述から,ヘロインは沖合のポン・スから小船で浜に運ばれたことが判明.
 このためオーストラリア警察は,ポン・スが近海にいるものと見て飛行機で捜索し,発見.
 ポン・スはオーストラリア水上警察の停船命令を無視,5日も逃げ回り,20日朝,シドニー北東75nmの大シケの海域を逃走中,国防軍特殊部隊の隊員がヘリからロープで同船に降下,停船させた.

 ポン・スが強制停船させられたときの状況は,2002.12.9,イエメン沖のインド洋でスペイン海軍が北韓の貨物船「ソサン」を停船させたときと同じである.
 また,2001/12/22,奄美大島沖の東シナ海で,巡視船との銃撃戦の末,沈没した北韓工作船も,エンジン不調で高速巡視船3隻に包囲されるという圧倒的不利な状況下にありながら,絶対に停船しなかった.
 この3ケースから分かるように,北韓船舶の乗組員は,
「外国の停船命令は無視しろ」
と厳命されているのだろう.

 北韓によるヘロイン密輸は2002/7/2,台湾北部,基隆漁港でも79kgが押収されているが,台湾当局は,洋上取引に北韓海軍艦艇が絡んでいたと疑っている.

(稲坂硬一 from 「航空ファン」,文林堂,2003/7, P.61)

 豪州からの報道によると,03年,連邦警察が「ビクトリア州で麻薬取引が行われる」との情報を入手したのが発端だった.
 それをもとに同年3月末以降,北京やバンコクから入国した中国系ブローカー3人を尾行するなどした.
 3人は4月15日夜,ビクトリア州のローン港付近に集結.近くに停泊していたのが北朝鮮のポンス号(ツバル船籍,4000トン)だった.
 翌16日,警察当局は3人をホテルや空港で逮捕,所持するなどしていたヘロイン計125キロ(末端価格約145億円)を押収した.
 港付近の海岸では北朝鮮人とみられる男の水死体とゴムボートを発見.やぶの中に隠れていた北朝鮮人とみられる男も拘束した.
 一方,ポンス号は逃走を始め,北朝鮮本国と連絡を取りながら北上.4日後,シドニーの北部沖で拿捕(だほ)された.乗組員には朝鮮労働党員も含まれていた.
 警察当局の調べとして報じられたところによると,取引当夜,北朝鮮人とみられる男2人がポンス号からゴムボートに乗り移り,ヘロイン150キロを沿岸まで運ぼうとしたが,途中でボートが故障し転覆,1人が水死し25キロ分のヘロインも水中に没した.
 ヘロイン150キロは北朝鮮の南浦港で積み込まれたとみられたが,北朝鮮当局は男2人の身元特定を含め,捜査に協力しなかった.

 裁判では,検察側が船長ら北朝鮮人乗組員幹部4人の事件への関与を主張.
 米国の北朝鮮専門家も「ポンス号を所有する北朝鮮企業は労働党の直轄企業だ」と証言,北朝鮮当局の関与を立証しようとした.
 一方,船長らは「積み荷にヘロインがあるとは知らなかった」「(ボートでヘロインを運んだ)男2人は船員ではない」と無罪を主張.
 押収されたヘロインの包みからも乗組員4人の指紋は検出されなかった.
 そして今月5日,ビクトリア州最高裁は,北朝鮮人とみられる男と3人のブローカーのうちブローカー2人には禁固22年と同23年の判決(残り2人は未判決)を下したことを明らかにするとともに,北朝鮮人乗組員4人には無罪判決を言い渡した.

 連邦警察のキールティー長官は
「北朝鮮政府の関与を立証するのは難しい.
 だが何らかの支援がない限り,あれだけの量のヘロインや貨物船を調達することは不可能だ」
と指摘,疑惑は依然濃厚との見方を示している.

産経朝刊 2006/03/12/17:29

 オーストラリア警察は,ポンス号を拿捕した直後,船の内部で北朝鮮に発信した通信文を押収した.
 通信文には,
「偉大なる将軍さまの兵士として,われわれは最後の1人まで戦うと覚悟した」
とあった.
 オーストラリア警察はこれを根拠にして,北朝鮮当局が
「投降せず,拿捕に抵抗せよ」
と指示したものと見ている.
 捜査を指揮したオーストラリア警察のダミアン・アップルビさんは,同紙とのインタビューで,
「船で押収した通信文などの証拠を見る限り,オーストラリアを敵と規定していた」
と述べた.
 またジョーン・チャンピオン検事は,船に乗っていたチェ・ドンソンさん(61)について,
「北朝鮮情報機関の最高クラスの幹部と見られる」とし,「彼が船に覚せい剤のような違法な貨物を積んでいたことを知らなかったとは筋が通らない主張」
と述べた.

朝鮮日報 2006/03/07/10:05


 【質問】
 北韓の覚醒剤はアメリカまでどのようなルートで流入しているのか?

 【回答】
 摘発された事例によれば,
中国・延吉→韓国→グアム
というルートがある.
 グアムにはアジア系を中心に覚せい剤の需要があり,取引価格が元の10倍近くにもなるため,密輸先に選ばれる例が多いという.

 以下引用.

覚せい剤密輸組織を摘発…朝鮮族や脱北者も

 中国から末端価格150億ウォン(約18億円)台に及ぶ覚せい剤を国内に持ち込み,グアムに密輸した疑いで,朝鮮族・脱北者らを含む一団が摘発された.
 水原地方検察庁麻薬組織犯罪捜査部は17日,朝鮮族キム某容疑者(43)ら4人を逮捕・起訴し,麻薬使用の疑いですでに逮捕されている脱北者のチェ某容疑者(27)=女性=を起訴した.
 キム容疑者らは昨年10月から今年の4月まで4回にわたって中国延吉から合わせて4.654キロの覚せい剤を持ち込み,そのうちの4.176キロを3回に分けてグアムに密輸した疑い.
 一味は粉末状の覚せい剤を薄い袋に入れて平たくつぶし,荷物の中に隠す手口で韓国に持ち込んだことが分かった.
 検察は「オーディオスピーカーの振動板やスーツケースに隠し,税関の検査をかいくぐった」と話した.

 キム容疑者らが中国から持ち込んだ478グラムの覚せい剤のグアムへの持ち込みを計画していたところ,4月25日に捜査チームがソウル新林洞の自宅を家宅捜索し,摘発した.
 犯行グループのうちグアムへの密輸を担当していたオ某容疑者(36)ら運び屋の二人は,昨年10月と11月にグアムの空港の検査場でそれぞれ摘発され,現在収監中だ.
 検察は
「別件で米国の麻薬取締局(DEA)との共同捜査を進めるうち,朝鮮族や脱北者が関与した密輸組織を摘発した」
と明らかにした.
 検察によるとキム容疑者らは
「北朝鮮人で“ハン部長”と名乗る男から麻薬の供給を受けた」
と陳述したが,北朝鮮人の関与や,麻薬が北朝鮮製であるかどうかなどは確認されていないという.
 一味が密輸した覚せい剤4.654キロは国内での末端価格が150億ウォンに及ぶ.
 このうち400グラムはすでにグアムで取引されたいう.
 検察のキム・ホギョン部長は
「グアムにはアジア系を中心に覚せい剤の需要があり,取引価格が元の10倍近くにもなるため,密輸先に選ばれる例が多い」
と話した.

朝鮮日報 2006/05/18/16:17


 【質問】
 中朝国境での北韓の麻薬ビジネスの現状は?

 【回答】
 北朝鮮内部から情報を得た消息筋によれば,北朝鮮当局は中朝国境沿いの都市,会寧(フエリヨン)や茂山(ムサン)などの行商人らを使って覚醒(かくせい)剤を中国に密輸し,毎月数百万ドルに上る外貨を獲得しているという.
 以下引用.

 消息筋によると,中朝国境地帯で中国側に覚醒剤密輸を行っているのは,国境警備と住民の監視統制を担当する国家安全保衛部と朝鮮人民軍保衛司令部.
 両組織が,中朝間を往来している富裕な行商人らに覚醒剤を販売させている.
 国家安全保衛部員は消息筋に
「中国で毎月,数百万ドル分の覚醒剤を販売し,表彰を受けた」
 と証言.
 覚醒剤は「ピンドゥ」(氷豆)や「オルム」(氷)と呼ばれ,一グラム約三百中国人民元(一元=約一二・六円)で売られている.

 行商人らは一定のマージンを得られることから,中国での密売に精を出す.
 会寧の国家安全保衛部から覚醒剤売買の指示を受けた,ある商人が毎月平均六キロ,二十五万ドルの外貨を稼いでいることを,韓国情報当局は把握している.
 中国の密売人は,購入した覚醒剤を五倍以上に引き上げ,さばいているという.

 米国務省などによると,北朝鮮の覚醒剤の最大市場はこれまでは日本で,年間10-20万トンが流入していると推計されていたが,各国が連携して取り締まりを強化しているため,日本や韓国への密輸は少しずつ減り,商人らが比較的自由に行き来できる中国やロシアに販売市場の重点が移りつつあるという.
 また,朝鮮人民軍保衛司令部が,中国に住む朝鮮族を買収して,密売を奨励するケースも確認されており,北朝鮮の中国での覚醒剤密売の動向を各国の情報当局は注視している.

 密売で獲得した外貨は,金正日総書記の秘密資金を管理する朝鮮労働党「39号室」と権力機関の維持などに使われる.

 消息筋によると,行商人が国境周辺で覚醒剤を扱うようになったことで,北朝鮮側の裕福な一部の人民にも覚醒剤が広がり始めた.販売価格は中国での三分の一程度.
 国内向けの販売も最終的には当局に“あがり”がいくため,売買は中国人民元で行われているのが特徴.
 北朝鮮では簡単に中国人民元が米ドルに換金できる.
 覚醒剤を購入する人が増えたため,一部の科学者は勝手に覚醒剤生産を始め,質の悪いものが多く出回っているという.

(産経新聞,2005/1/11)

 このほか,新華社通信は,吉林省で摘発された覚せい剤の密輸についても伝えており,ことしに入って,密売した14人を逮捕し,あわせて1キロを押収したということです.
 現地の消息筋によりますと,中国と北朝鮮の国境地帯では,中国の警察当局が,治安の悪化を防ぐためだとして,脱北者や北朝鮮から密輸される覚せい剤の取り締まりを強めているということです.

NHK 2006年8月13日18時59分

 この北韓からの麻薬流入には,中国当局も危機感を表明している.
 以下は各社報道から.

 中国の楊鳳瑞・国家麻薬禁止委員会弁公室常務副主任は26日,北京で記者会見.
 東南アジアのゴールデン・トライアングルに加え,「朝鮮半島」など国外からの麻薬持ち込みルートが多様化していることに強い危機感を表明した.
 〔略〕
 副主任によると,2004年の中国の麻薬常用者は79万1000人で前年比6.8%増.
 うちヘロイン常用者は85%と圧倒的多数を占めるが,副主任は合成麻薬MDMAなど「新しいタイプの麻薬」も急速に浸透していると警告した.
 04年の麻薬犯罪の摘発件数は9万8000件で,逮捕された容疑者は6万7000人.「人民戦争」と題し国民的な防止運動を始めたことを強調した.(北京=飯野克彦)

(日経新聞,2005/05/26)

 中国の警察当局は,麻薬取り締まりの実態を記者会見で,「北朝鮮から中国への麻薬流入は,今までずっと続いている」と述べ,北朝鮮から中国に依然として麻薬が流れ込んでいるルートがあることを認めました.
 しかし,密輸入の量などは明らかにしませんでした.
 また,密輸問題で北朝鮮当局との提携は少ないとして,政府間で協力しての取り締まりが難しいとの認識を示しました.

(ANN,2005/5/26)


 【質問】
 北韓で麻薬密輸を担当する部署は?

 【回答】
 党39号室5号管理部.
 また,販売には海軍も関わっていると言う.覚醒剤取引に関し,北韓軍幹部が日本で接待を受けたとする報道もある.

 以下,抜粋要約.

 党39号室は,金正日の外貨管理のため,党財政経理部の一つとして76年(74年説もある)に発足したが,88年に独立部署となった.そのため,第2財政経理部とも呼ばれる.
 党39号室には大聖(デソン)総局,楽園(ラグウォン)総局,大興(デフン)総局があり,3人の副室長が,それぞれの総局長を兼任している.
 4人目の副室長は,同室が運営する大聖銀行理事長を兼務する.

 同室の「5号管理部」は,外交官に与えたノルマと同様,国内の道・市・郡に対しても,輸出品になる物を探して集めさせる「忠誠の外貨稼ぎ課業」を与え,外貨を金正日に上納させるシステムを作り上げている.
 同部はまた,北韓で「ペクトラジ(白桔梗)」と呼ばれる芥子の栽培農場を管轄下に置いている.

 北韓では85年頃から,外貨稼ぎ目的に,芥子を本格栽培するようになった.
 白頭山山麓などの高山地帯に,大規模な芥子畑が作られた.
 当時,芥子は「楊貴妃(ヤンキビ)」と呼ばれており,収穫された芥子は,咸鏡北道(ハンギョンブツド)羅南(ラナム),咸鏡南道(ハンギョンナムド)咸興(ハムン)などの製薬会社で阿片に精製され,香港・ロシア・中国などに密輸出された.
 91年9月,咸鏡北道鏡城(キョンソン)郡にある朱乙(ジュウル)温泉の特閣において,金正日は道党全員会議を開催した.その会議で芥子増産が決定され,北韓は本格的な麻薬密輸国となり,今日に至るのである.

 2003/5/12,在韓米軍関係者は,2001年に北韓は5億8000万ドル相当の弾道ミサイルを中東地域に輸出したと語ると共に,年間5億ドル分の阿片などの麻薬を輸出しており,阿片は世界第3位,ヘロインは世界第6位の輸出国になっている,と指摘した.

(恵谷治 from "SAPIO" 2003/6/11, p.18)

 元北朝鮮労働党国際担当秘書の黄長Y(ファン・ジャンヨプ)氏は,最近朝鮮日報とのインタビューで,北朝鮮で自ら確認した偽造紙幣・覚せい剤の製造や取引について証言した.

 〔略〕

―主に誰がどこで販売しているのか?

「1994年,政務院の首相の姜成山(カン・ソンサン)氏が,私にも覚せい剤を販売できないかと頼んだことがある.
 金コ弘(キム・ドクホン)氏(朝鮮ヨグァン貿易連合総会社の総社長を務めていたが,黄氏とともに北朝鮮を脱出)に指示して,東南アジアの覚せい剤の価格を調べさせたこともある」
「姜成山氏は海軍に依頼するつもりだと話していたが,実際に1990年代半ばまで海軍を通じて覚せい剤を販売した.北朝鮮海軍が東南アジア海域で販売した.
 東南アジア諸国が海上警備を強化すると,販売ルートを中国に変えた.
 今はそのほとんどを中国に販売していると聞いている」

朝鮮日報 2006/01/16/10:20

 覚醒剤取引に関し,北韓軍幹部が日本で接待を受けたとする報道もある.
 以下引用.

覚せい剤密輸,北朝鮮軍幹部を接待か-JNN

 北朝鮮からの覚せい剤密輸事件で,逮捕された韓国籍の男が知人の暴力団組長に対し,「北朝鮮の軍幹部を日本に連れてきて接待している」と話していたことが警視庁の調べでわかりました.

 この事件は北朝鮮から数百キロの覚せい剤を密輸したとして,韓国籍の無職,ウー・シユン容疑者と暴力団幹
部ら3人が逮捕されたものです.

 警視庁はウー容疑者が北朝鮮との「仲介役」だったとみて調べを進めていますが,ウー容疑者の知人の暴力団組長が警察当局の調べに対し,
「2002年,福岡のホテルでウー容疑者に会った際,『北朝鮮の偉い人を連れてきて接待している』と話していた」
と供述していたことがわかりました.
 警視庁はウー容疑者が北朝鮮の軍の関係者と頻繁に接触し,覚せい剤密輸の打ち合わせをしていた可能性も
あるとみて調べています.

JNN (2004年5月14日11:06)[14日14時35分更新]

 覚醒剤取引に軍が関与している可能性は,極めて高いと見ていいだろう.


 【質問】
 北韓国内では,麻薬はどのように生産されているのか?

 【回答】
 元北朝鮮労働党国際担当秘書の黄長Y(ファン・ジャンヨプ)によれば,人工衛星からの監視の目を逃れるため,小規模の土地に分散して栽培され,咸興の工場で粒子状の覚醒剤を作っているという.
 また,別の新聞報道によれば,子供まで動員.
 さらに,1999年からは,韓国から送られた肥料も芥子の栽培に使われているという.

 以下引用.

―麻薬製造には,北朝鮮当局がどれくらい関与しているのか.

「1990年初め,労働党全員大会で各道・郡ごとにケシを植えることを公式に指示した.
 その後,各農場ごとに大々的にアヘンを植えた.
 そうしたなかで,人工衛星に捉えられ外部の世界に公開されると,およそ200町歩(198万平方メートル)未満の土地に分散して栽培するよう改めて指示した」

―覚せい剤の加工はどのように行われているのか.

「初期には,棒状の飴の形をした覚せい剤(アヘンを1次精製すれば,真っ黒な飴のようになるという)を東南アジアに販売した.それほど大きな利益にはならなかった.
 その後,金正日総書記の指示によって,咸興に現代的施設の覚せい剤加工工場を建設した.
 ここで完全な粒子状の覚せい剤を作って全世界に販売している」

朝鮮日報 2006/01/16/10:20

 ※ただし,この記事には以下のような指摘があるので,念のため.
 朝鮮日報が間違えたのか,訳者が間違えたのか判りませんが,芥子から精製されるのはアヘン(「真っ黒な飴」喫煙する)で,更にモルヒネ・ヘロインなどが精製できますが,いわゆる覚せい剤と呼ばれるアンフェタミン,メタンフェタミンは精製出来ません.
 覚せい剤の原料は塩酸エフェドリンで,これはその気になればトルエンからでも精製出来る物質であり,自然の植物から精製するのであれば,麻黄などから精製します.

 上記は,「覚せい剤」ではなく「麻薬」に分類される薬物,恐らくモルヒネかヘロインの事を言っているのでは無いでしょうか.

In FAQ BBS

 【参考】
 「覚醒剤の原料」(from 「ダメ.ゼッタイ.」ホームページ)
 1990年代半ばには,北朝鮮の北部地域の一部農場に,「桔梗の分組」という変わった分組(20人あまり規模の農業生産単位)ができた.芥子に桔梗という仮名をつけたわけだ.
 最も地力のいい土地に芥子を埋めて育てた.
 7月になると,児童まで総動員され,アヘンの原液を取り出した.
 むかつくにおいに児童たちが倒れることも多く,近くに救急車が待機する.
 原液を取り出してしまうと,実にはごま油のにおいのする粟模様の黄色い種がいっぱい詰まっており,子供たちのおやつとして人気だった.
 アヘン中毒者も生まれた.
 桔梗の分組には配給と物資,肥料が第1順位で調達された.
 1999年からは,韓国から送られた肥料も芥子の栽培に使われた.
 ところが,最近になって芥子生産は次第に衰退してきた.在庫が多いためとされている.

東亞日報 2006/02/01 03:21


 【質問】
 北韓国内では,どの程度麻薬が蔓延しているのか?

 【回答】
 党や軍の関係者から一般労働者,中学生にまで蔓延しており,危険な状況だという.
 「適度な麻薬服用は長寿に役立つ」との噂が広ったためである他,憂さ晴らしや享楽目的の使用,また,空腹をを覚醒剤を使って麻痺させているためだという.

 以下引用.

北朝鮮で覚醒剤蔓延 密輸規制 内部流通 食糧不足代用も

 北朝鮮国内で覚醒(かくせい)剤中毒者が急増している可能性が高いことが17日,日韓のNGO(非政府組織)などの調査で分かった.北朝鮮は外貨獲得のため,偽札とともに国家事業として覚醒剤を含む麻薬を製造,流通させているとされるが,最近の国際的な取り締まり強化の影響などで,覚醒剤が内部に流出し,朝鮮労働党や軍の関係者から一般労働者まで幅広く蔓延(まんえん)しているという.
 専門家は「危機的な状況に陥っている」としている.
 北朝鮮内で急速に広まっている覚醒剤は「オルム(氷)」や「ピンドゥ(氷豆)」と呼ばれている.
 〔略〕
 韓国の聯合ニュースによれば,北朝鮮では地方だけでなく平壌など都市部にも中毒者が拡散.「適度な麻薬服用は長寿に役立つ」とのうわさが広がり,党と軍幹部の中にも覚醒剤を使用する例は少なくないとの北朝鮮消息筋の話を伝えた.
 日本のNGO「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク(RENK)」が北朝鮮内部から得た情報によると,覚醒剤は国家保衛部(秘密警察)や咸興市の「興南製薬工場」,平壌市の「平城科学院」で製造されているほか,各地で科学者と投資家による個人生産が行われている.
 北朝鮮の覚醒剤密輸への国際的な取り締まりが強化されたことで,大量に余った覚醒剤が国内で流通,上流階級を中心に中毒者が増えているという.
 また,各地の一般製薬工場では従業員に配給するコメが途絶えたため,違法と知りながら覚醒剤を製造.市場に販売した代金で食糧を購入し,従業員に配った.これで覚醒剤拡散に拍車がかかったとの見方もある.
 山梨学院大の宮塚利雄教授は「覚醒剤に関する国家の管理が緩んでいることもあるが,憂さ晴らしや享楽を目的とした使用が広がっている.食べ物不足を覚醒剤を使ってまひさせてもいる.相当危険な状態だ」と話す.

 RENKのメンバーが北朝鮮内で覚醒剤密輸業者から聞き取りした内容によれば,覚醒剤を取り締まるはずの保安(警察)や保衛当局者も「没収」という形で覚醒剤を所有し,恒常的に使用しているケースが目立つ.
 地方都市では中学生の覚醒剤使用者も確認されているという.
 RENK代表の李英和関西大教授は「改革開放の遅れなど体制への不満から幹部や新興富裕層が覚醒剤に手を出し,中毒になるケースが大半だ.国家事業として麻薬製造を行ってきたツケが回ってきた.軍部幹部にも中毒患者が蔓延するのをみると,末期症状であり危険な状態だ」と指摘している.

産経朝刊 2006年06月18日

北朝鮮の麻薬問題が深刻,脱北者団体が指摘

 【ソウル13日聯合】脱北者団体のスンイ同志会は13日,会報を通じ,北朝鮮で麻薬を服用する20〜30代の青年が急増していると指摘した.脱北者を対象に調査した結果によるもので,北朝鮮当局が麻薬服用者に厳しい警告や処罰を与えているにもかかわらず,服用者は増加しているという.
 麻薬服用者は主に炭鉱労働者や暮らし向きが良好でない青壮年層で,密輸業者や朝鮮労働党幹部も含まれているようだ.
 アヘンの栽培地域である咸鏡北道地域の青壮年の5%以上が麻薬服用者で,北朝鮮政府が対策作りに努めているが,具体的な案はこれまで策定されていない.
 また,麻薬服用者による犯罪が相次ぎ,昨年1年間に咸鏡北道で発生した殺人事件500件余りのうち約30%が麻薬中毒者や酔っぱらいによるものと把握された.
 スンイ同志会はさらに,裕福な家庭に育った10代の青少年による覚せい剤の一種「氷豆」の使用が社会問題となっているほか,咸鏡北道一帯に麻薬の密売が広まっていることを伝えた.

聯合ニュース 2006/09/13/13:09


 【質問】
 北韓の麻薬は日本にも流入しているのか?

 【回答】
 そうした懸念は以前からあり,事実,日本でも麻薬取締法違反によって北韓船舶が摘発されている.
 押収覚せい剤の35%は北韓から来ている,とする情報もある.

 以下は実例の一つ.

麻薬所持の北朝鮮船員逮捕舞鶴港停泊の貨物船内

 舞鶴海上保安部などは13日までに,麻薬取締法違反(所持)の疑いで,北朝鮮籍の貨物船ナム・ポ(398トン)の機関長,シム・ヨンハク容疑者(44)=同国籍=を逮捕した.
 調べでは,シム容疑者は12日午前9時すぎ,京都府舞鶴市の舞鶴港に停泊中の同船内の自室で,アヘンから抽出した麻薬のコデインなどが含まれた粉末1袋0.18gを所持していた疑い.
 シム容疑者はほかにも同様の粉末が入った11袋を所持しており,同保安部などが鑑定を急いでいる.
 同保安部によると,貨物船は乗組員15人.シジミなどを積んで10日に北朝鮮の元山港を出港,12日に舞鶴港に入った.
 入港時の立ち入り検査で麻薬が見つかったという.

(産経新聞(共同),2005/9/13)

 ナムポには乗組員15人が乗っており,シジミなどを積んで,月に1,2回は舞鶴港に入港していました.

(ANN,2005/9/13)

 また,以下のような報道もある.

押収覚せい剤の35%は北朝鮮から,当局関与は未確認

 政府は28日,1997年から2002年までに警察が検挙した1キロ・グラム以上の覚せい剤押収事件で,押収量の約35%が北朝鮮からのものだとする政府答弁書を決定した.
 ただ,北朝鮮当局が関与した事件があるかどうかについては,「今のところ,確認されていない」としている.江田憲司衆院議員(無所属)の質問主意書に対する回答.
 政府関係者によると,北朝鮮は経済状況が急速に悪化した1990年代から,覚せい剤密輸など非合法ビジネスを活発化させたという.
 特に,日本近海に出没した北朝鮮工作船が,工作員の出入国や覚せい剤売買など違法な活動をしている疑いがある.
 1998年に高知沖で200キロ(当時の末端価格120億円相当)が押収された事件では,日本の暴力団員が北朝鮮に入って荷造りをするなど,暴力団の関与した事例も多い.

読売新聞 2006年03月28日20:39

 なお,安明進(アン・ミョンジン)によれば,日本に密入国するのは,朝飯を食べるよりた易いそうだから,麻薬密輸の実態は相当深刻であると推測される.


 【質問】
 日本へは,北韓からどのくらいの麻薬が流入しているのか?

 【回答】
 2006年上半期の押収量は13.1kgで,1991年以降最少.最高値は1999年の約1976kg.
 品質も低下しているという.
 これら押収品の全てが北韓製であるとはもちろん言えないが,北韓ルートに打撃を受けると共に激減したということは,激減前の量と激減後の量の差は,北韓ルートの有無の差だとは言えるだろう.

 以下引用.

覚せい剤押収量最少 密輸摘発で流通減

 今年上半期(1−6月)に全国の警察に押収された覚せい剤は前年比85・6%減の13・1キロで,上半期としては統計が残る1991年以降で最少だったことが,警察庁のまとめでわかった.
 国内の覚せい剤の密売価格は上昇傾向で“品薄”をうかがわせるといい,同庁は,北朝鮮からの密輸ルートの摘発などで流通量自体が減少しているとみている.
 年間の押収量は99年には過去最高の約1976キロに上ったが,以後は減少し,昨年は約119キロ.今年上半期は昨年同期に比べ,覚せい剤絡みの事件で摘発した容疑者は約6300人でほぼ同じだったが,押収量は大幅に下回った.
 警察庁が各都道府県警に調査したところ,今年上半期の平均の末端価格は1グラム当たり約5万4000円で,昨年下半期より約3000円アップ.最新の調査では6万−6万5000円に上昇している.
 また,「03年は1キロ当たりの卸売価格が500万−600万円だったのが,今年は800万−1200万円に上がった」との情報があるほか,純度の低い品が出回ったり,小売りの単位量が実質的に目減りしたりといった供給不足をうかがわせる状況があるという.

中日朝刊 2006年08月18日

 覚せい剤密輸事件では,上半期に8件7人を検挙.船舶による大がかりな密輸でなく,航空機の手荷物や国際郵便を使って小口に分けて運ぶ手口が目立つ.
 3月には中国からの航空貨物の即席めん内に紛れ込ませた覚せい剤1.1キロを成田空港で押収した.

遠山和彦 in 毎日新聞 2006年08月18日3:00

 一方,大麻事件では10.4%増の1042人を摘発,暴力団構成員らが28.0%増で379人に上った.
 押収量は乾燥大麻,大麻樹脂とも大幅に減少.
 MDMAなど錠剤型麻薬の押収量は,過去最高だった前年同期から94.5%減り,約1万9000錠だった.

産経新聞 2006/08/18/07:45


 【質問】
 TURUBONGー1(ツルボン・ワン)事件とは?

 【回答】
 北韓船籍の貨物船「TURUBONGー1(ツルボン・ワン)」による覚醒剤密輸事件.いわゆる「瀬取り」によって密輸したと見られる.
 極東会系および松葉会系暴力団関係者らが逮捕.
 彼らは年に4回,密輸を図っていたという.

 逮捕者のうち,禹時允は,朝鮮総連から民団へ鞍替えした人物で,2003年12月に奄美大島沖で沈没した不審船の関係者とされている.
 また,禹は盗難車密輸出事件でも有罪判決を受けている.

 以下引用.

北朝鮮から覚せい剤密輸,逮捕

 北朝鮮から覚せい剤数百キロを島根県の港に密輸したとして,韓国籍の男や東京の暴力団組長ら3人が逮捕されました.
 警視庁などは,密輸に使われた北朝鮮船籍の貨物船を鳥取県の境港で捜索するとともに,韓国籍の男が密輸の鍵を握る人物とみて捜査しています.
 逮捕されたのは,長野県伊那市に住む韓国籍のウ・シユン容疑者(59)や,東京の暴力団組長,宮田克彦容疑者(58)ら3人です.
 警視庁などは12日午後,密輸に使われた北朝鮮船籍の貨物船「TURUBONGー1(ツルボン・ワン)」が,鳥取県の境港に入港したことから捜索しました.
 調べによりますと,ウ容疑者らは,平成14年,北朝鮮のチョンジン港から覚せい剤数百キロを「TURUBONGー1」で運んで,いったん海に落としたあと,釣り船で回収し,島根県の安来港に密輸したとして,覚せい剤取締法違反の疑いが持たれています.
 このうち,ウ容疑者は北朝鮮側との交渉役,宮田組長が覚せい剤を受け取って売りさばく役とみられていますが,調べに対していずれも容疑を否認しているということです.
 「TURUBONGー1」は,北朝鮮の貿易会社が所有する300トンの貨物船で,平成12年ごろから毎月1回程度,北朝鮮から積んで来たカニなどの海産物を降ろして,中古の自転車や電器製品などを持ち帰っていたということです.
 ウ容疑者は平成13年12月,鹿児島県の奄美大島沖合の東シナ海で,銃撃戦の末に沈没した北朝鮮の工作船から見つかった携帯電話の持ち主とみられ,警視庁などは北朝鮮の覚せい剤密輸の鍵を握る人物とみて捜査を進めています.

NHK 2006/05/12/18:21

北朝鮮から覚せい剤密輸・2人逮捕,工作船事件と関連?

 北朝鮮から覚せい剤数百キロを密輸したとして,警視庁組織犯罪対策五課と海上保安庁などの合同捜査本部は12日,韓国籍の禹時允容疑者(59)=長野県伊那市伊那部=ら2人を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)の疑いで逮捕した.同課などは同日午後,鳥取県境港に入港した密輸に使われた疑いのある北朝鮮の貨物船や,禹容疑者の自宅など8カ所を同法違反容疑で家宅捜索した.

 禹容疑者をめぐっては,2001年末の北朝鮮工作船事件で船内から見つかった携帯電話に,親族名義の携帯電話番号が記録されていたことが分かっている.
 この工作船は覚せい剤の密輸などにかかわっていたとされ,同課などは禹容疑者らが北朝鮮からの組織的な覚せい剤密輸に関与していた可能性もあるとみて追及する.
 ほかに逮捕されたのは,暴力団極東会系組長,宮田克彦容疑者(58)=東京都板橋区中丸町.組対五課は12日中に鳥取県米子市の遊漁船業の男(54)も同容疑で逮捕する方針.

日経新聞 2006年05月12日14:47

 禹容疑者は04年8月,北朝鮮へ盗難車を輸出したなどとして,盗品等有償譲り受け罪などに問われ懲役2年6月,罰金50万円の判決を福岡地裁で受けた.

西日本新聞夕刊 2006/05/12/14:47

 禹時允を知る人によると,禹は長野県天竜川沿いの伊那に生まれた.在日朝鮮人2世である.
 日本は戦前,この伊那に軍用飛行場を建設するため,市内に朝鮮人徴用労働者と家族用のバラックを建てた.
 禹時允は敗戦後,このバラックで産声を上げ,幼友達と共に育った.
 やがて,戦後の再建の波に乗ってバラックを出てゆく在日韓国・朝鮮人と残る人々とに分かれることになり,バラックを抜け出ることができなかった家族たちの多くは総連(在日朝鮮人総連合会)に所属するようになった.
 バラックを出るまで一緒に少年時代を過ごした人は,
「禹時允は朝鮮初中級学校に進み,やがて総連の筋金入りの幹部になった」
と語る.
 ここ10年の動きとしては,1995年頃,総連系朝鮮人の「墓参団」(民団主催の省墓団)に加わり,その後臨時パスポートを2回にわたって取得した.
 民団への団員登録,韓国民としての国民登録を済ませた後,東京で韓国政府発給の旅券を取得したという.
「伊那支部は独自の機能が発揮されていないので,今は県本部の直轄にある.団員の細かいことまで把握できない.
 一部においてだが,かつて総連に加入していた人が別の目的で民団に入ってくることがあった.民団を隠れみのにして活動をした」

統一日報 2006年5月17日

北朝鮮覚せい剤,組幹部ら2容疑者逮捕・警視庁など

 北朝鮮からの覚せい剤密輸事件で,警視庁と海上保安庁などの合同捜査本部は16日,暴力団松葉会系組幹部,福島敦紀被告(68)=覚せい剤取締法違反(所持)罪などで公判中=,無職,岡垣真理被告(37)=麻薬及び向精神薬取締法違反罪で公判中=の2人を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)の疑いで逮捕した.
 今回の密輸事件の逮捕者は計5人になった.捜査本部は週内にさらに暴力団関係者2人を同容疑で逮捕する.
 調べに対し,福島容疑者らは「何も言えない」などと容疑を否認しているという.
 〔略〕

日経新聞 2006年05月16日15:02

 逮捕されたのは,松葉会系暴力団の幹部・福島敦紀容疑者(68)と元運送会社経営の岡垣真理容疑者(37)です.2人は,
 すでに逮捕された極東会系暴力団の組長・宮田克彦容疑者(58)らとともに,2002年10月,北朝鮮から覚せい剤,数百キロを密輸した疑いが持たれています.
 福島容疑者は密輸の実行役の責任者で,岡垣容疑者は釣り舟「光洋丸」で覚せい剤を回収し,埼玉県の倉庫に運んだとみられています.

ANN 2006/05/16/14:57(y15:45)

1年間に密輸4回決行か 北朝鮮の覚せい剤事件

 覚せい剤の大量密輸事件で,韓国籍禹時允容疑者(59)らが北朝鮮の貨物船「TURUBONG−1」を使って,2002年6月にも大量の密輸に成功していた疑いがあることが15日,警視庁と鳥取県警などの合同捜査本部の調べで分かった.
 これまで判明した分も合わせると,同年中に大量密輸を4回決行していた疑いが強い.
 合同捜査本部は,同船を使って北朝鮮からの大量密輸を繰り返していたとみて,覚せい剤取締法より罰則が重い麻薬特例法(業としての不法輸入)の適用も検討している.
 密輸した覚せい剤の運搬などに関与した暴力団組員4人を週内に逮捕する方針.

共同通信 2006年05月16日23:07

捜査本部の調べでは,宮田,禹容疑者は同船を使って02年6月,7月,11月にも密輸を図っていた.4回とも,袋詰めにした覚せい剤を沖合で船から落とし,海岸から出港した小型漁船で回収する「瀬取り」と呼ばれる手法を使ったとみられる.6月,7月は回収に成功し,11月は失敗したとみられ,袋詰めの覚せい剤約200キロが鳥取県の海岸に漂着した.
 覚せい剤取締法は,営利目的での輸入について「無期もしくは3年以上の懲役」などの罰則を設けている.麻薬特例法はこれを「業」として行った場合に適用され,罰則は「無期または5年以上の懲役及び1000万円以下の罰金」と規定されている.【佐々木洋】

毎日新聞 2006年05月16日3:00

 十一月下旬には,鳥取県の海岸に約二百四十キロの覚醒剤が漂着し,同時期に近くの沖合をツルボン1号が航行していたことが既に判明しているが,悪天候で回収に失敗したという.
 この年の四月にも密輸に成功したとの情報があるが,現段階では確認できていない.
 〔略〕
 宮田,禹両容疑者は海上での回収や陸揚げなどの現場周辺にはいなかったことも判明.
 松葉会や住吉会といった他の暴力団関係者も関与していた.

産経朝刊 2006年05月16日03:15

 逮捕されたのは,東京の暴力団幹部,福島敦紀容疑者(68)ら2人です.
 この事件で警視庁は,北朝鮮から数百キロの覚せい剤を島根県の港に密輸していたとして,韓国籍のウ・シユン容疑者(59)や東京の暴力団組長,宮田克彦容疑者(58)らを逮捕して,覚せい剤の流れを調べていました.
 その結果,宮田組長とは別の暴力団に所属する福島容疑者らが,密輸された覚せい剤の密売や運搬にかかわっていた疑いが強まり,覚せい剤取締法違反の疑いで新たに逮捕しました.
 密輸された覚せい剤のうち,少なくとも100キロ以上は,福島容疑者らによって関東地方に運ばれ,売りさばかれたとみられています.

NHK 2006/05/16/13:04

 松葉会系暴力団の関与が明らかになった発端は,2005年2月に埼玉県内の無職男(50)の自宅マンションを警察当局が捜索し,覚せい剤約19グラムを押収した事件.
 このマンションに,松葉会系組員が頻繁に出入りしていたことなどから,警察当局は,同会系の密売グループの存在と,その中心に松葉会系組幹部がいることを突き止めた.

読売新聞 2006年05月15日03:02

 【質問】
 禹時允とはどんな人物なのか?

 【回答】
 1947年,長野県伊那市生まれ.父親は朝鮮総連の地区幹部.
 暴力団とは学生時代から繋がりがあり,これまでにも警察からマークされていた.
 警視庁によれば,「北の工作員というよりは,両国の間に立って金もうけした商売人」であるという.

 以下引用.
警察,10年前からパイプ役をマーク 北朝鮮からの覚せい剤大量密輸事件

 北朝鮮からの覚せい剤大量密輸事件は,日本の暴力団と北朝鮮が薬物を通じて手を組み,資金を稼ぎ出している実態を浮き彫りにした.
 キーマンはパイプ役となった韓国籍の無職禹時允容疑者(59).警察当局は,約十年前から「北」とのつながりが深い人物としてマークしていた.

 〔略〕

「覚せい剤の純度が低い.ちゃんと精製しているのか」.
 関係者によると,数年前,卸し先から抗議を受けた禹容疑者は目の前で電話をかけ,怒鳴りあげた.
 相手は北朝鮮側の責任者とみられ,直後から覚せい剤の質が格段に向上したという.
 捜査関係者は「密造責任者に指示を出せるのはごく一部.高い地位にいたのは間違いない」と推測する.

 一九四七年,長野県伊那市生まれ.父親は在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の地区幹部で,十四歳の時に二人の姉が帰国事業で北朝鮮に渡った.
 小学校から東京都内の朝鮮学校に進学.
 指定暴力団極東会系組長宮田克彦容疑者(58)とは学生時代に知り合った.
 警察当局が初めて存在を知ったのは九五年ごろ,北朝鮮からの使節団の訪問先として名前があったことがきっかけだ.
 当時はガードーレール設置の下請け工事会社を経営.
 周辺捜査を始めた直後,行方をくらませた.

▽見返り
 次に名前が挙がったのは,二〇〇一年十二月の鹿児島県・奄美大島沖の北朝鮮工作船撃沈事件.引き揚げられた船内から見つかった携帯電話の発信先に親族や暴力団関係者が含まれていた.
 昼はゴルフ,夜は東京・銀座の高級クラブを渡り歩いていた.
「どうしてこんなに金があるのか」.
 盗難車輸出の見返りに覚せい剤を密輸入している疑いが浮上した.
 張り込み中の捜査員が,重そうなバッグを宮田容疑者の組事務所に運び込む禹容疑者の姿を目撃した.中身は覚せい剤の可能性もあったが,警察は動かなかった.
「やりたかった.でも逮捕してしまうと情報が漏れる.着手しなかったおかげで得る情報が増えた」.
 当時を知る捜査関係者は,対象者の行動把握に主眼を置く公安捜査の手法を振り返った.

▽商売人
 〔略〕
 警視庁幹部は,否認を続ける禹容疑者について
「北の工作員というよりは,両国の間に立って金もうけした商売人.北朝鮮にも暴力団にも便利な存在だったのではないか」とみる.
 北朝鮮の国家的関与はあるのか.
 全容解明には禹容疑者の供述が欠かせないが,同容疑者はかつて捜査関係者に「母親が目の前で自殺するとしても覚せい剤については絶対話さない」と豪語したという.
 この捜査関係者は「話せばやつが生きていくすべがなくなる.自白することはまずないだろう」と話した.

埼玉新聞(共同通信)  2006年05月28日



 【質問】
 ツルボン1号事件には,北韓が国家レベルで関与していたのか?

 【回答】
 警察庁ではそのように観ている.
・北韓の工作船が関与していること.
・容疑者の供述
・覚醒剤の成分が,他の事件の覚醒剤密輸事件のそれと一致していることなどから断定したものだという.

 以下引用.
北朝鮮覚せい剤密輸,国家的関与と断定・警察庁

 2001年に銃撃戦の末に沈没した北朝鮮の工作船が,98年の高知沖覚せい剤密輸事件に関与した船と同一だったことが21日,警察庁などの調べで分かった.
 また,この事件で押収した覚せい剤と別の「北朝鮮ルート」で押収されたものの成分がほぼ一致することも判明したことなどから,同庁は北朝鮮が一連の覚せい剤密輸事件に国家的に関与したと断定した.
 漆間巌警察庁長官は21日,「北朝鮮による国家的な関与があった」と明言.同庁は今後,覚せい剤製造への国家的関与についても調べを進める.
 警察庁によると,清津港など北朝鮮の港で積み込まれた覚せい剤が洋上で取引される「北朝鮮ルート」はこれまで7件摘発され,押収された覚せい剤は1.3トンを超えている.
 これらの事件について,警察庁は「高度な技術と相当な資金を有する組織が関与している」と分析しているが,国家的な関与は認定していなかった.

日経新聞 2006年07月21日22:22

 密輸は,貨物船から覚せい剤を投下し,小型船舶で回収する方法だったが,こうした手口を含めて密輸全般を北朝鮮の国家機関から指示されたとの供述を一部の容疑者から得たという.
 さらに北朝鮮には覚せい剤の密造工場が複数あるとみられていた.
 警察当局が過去7回にわたって押収した覚せい剤の成分を分析した結果,不純物の含有量の特徴が約5パターンあることがわかった.
 捜査関係者によると,北朝鮮から密輸入された覚せい剤は不純物が少なく,人気が高いとされる.
 警察当局の相次ぐ摘発で,最近は北朝鮮から国内に入る覚せい剤の量は激減しているため,流通過程の価格は急騰し,卸売価格は最低でも以前の数倍の1グラム当たり約200万円という.
 摘発のリスクは高いが,いったん売買に成功するともうけ額が大きいため,資金確保に悩む暴力団が北朝鮮経由の覚せい剤の入手に躍起になっている.
 〔略〕

朝日新聞 2006年07月22日01:23

 北朝鮮による覚醒剤密輸事件をめぐってはこれまで,鹿児島県や島根県の沖で漂着していた覚醒剤が押収されるなどの事件が把握されているが,警察当局がこれらの覚醒剤の微粒成分を分析・鑑定したところ,平成10年8月,高知沖などに約300キロが漂流した事件と,12年2月,島根県温泉津(ゆのつ)港に約250キロが密輸された事件,さらに14年11月,鳥取県の海岸に約200キロが漂着した事件の覚醒剤で成分が「類似」していることが判明.同一の材料を元に同じプラントラインで精製されたことを示すという.
 一方,10年の高知沖事件の際に確認された不審船と,13年12月に鹿児島県奄美大島沖で海上保安庁の巡視船と銃撃の末沈没した北朝鮮工作船の船形の鑑定を海保に依頼したところ,今月に入り,不審船と工作船は「同一である」との鑑定結果を得た.
 この工作船は捜査当局の調べで北朝鮮工作機関が運用していることが分かっている.
 漆間長官はこうしたことから北朝鮮の国家的関与を断定した.

産経新聞 2006/07/22/01:24

00年2月に島根県・温泉津港の漁船から覚せい剤250キロが見つかった事件の実行犯らは,北朝鮮で覚せい剤を積み込んだ時,「(相手の)軍服姿の男たちは『我々が作った』と話していた」と供述.

読売新聞 2006年07月22日3時1分


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