c

「アジア別館」トップ・ページへ

「軍事板常見問題&良レス回収機構」准トップ・ページへ   サイト・マップへ

◆◆◆イージス艦とMD Aegis hadihajó és MD
<◆◆MD 目次
<◆日本 目次
東亜FAQ目次


 【Link】

「週刊オブイェクト」◆(2010年10月29日)イージス護衛艦きりしま,弾道ミサイル迎撃テストに成功

「週刊オブイェクト」◆(2011/04/18)イージス弾道ミサイル防衛が中距離弾道弾の迎撃実験に成功

「スパイ&テロ」◆(2012/04/01)PAC3を追いかけろ

「スパイ&テロ」◆(2012/04/03)イージス艦は高高度を通過する中距離弾道弾も迎撃できそう


 【質問】
 日本のイージス艦一隻で何発の弾道ミサイルを防げるのでしょうか?

 【回答】
 いまだ予想の範囲に過ぎないが,SM3は一隻に9発程搭載され弾道弾1発に付きSM3 2発の冗長を持たせるとすると,(撃破率は別として)弾道弾4発に対処可能,といったところ.

 少なくとも,米イージスが2発同時までは試験して,成功しているので,これ以上ということにはなる.
(もちろん,時間差や飛行経路等の諸条件でも左右されるのだろう)

軍事板
青文字:加筆改修部分


【質問】
 2005/6/14午後の衆議院本会議で可決された,ミサイル防衛(MD)の法的枠組みを整備するための,イージス艦に関した自衛隊法改正案とは,どんなものか?

 【回答】
 イージス艦での対処要領が確定したということですね.
 1. 第82条(海上警備行動)に「弾道ミサイル等に対する破壊措置」を追加
 1. 「破壊措置」には「発射の兆候がある場合,首相の事前承認を得て迎撃する」と,「明確な兆候がつかめない場合は,事前に作成する『緊急対処要領』に基き,防衛庁長官の命令で迎撃」の2種類を明記
 1.迎撃後に国会に報告する
 1.民主党が求めていた「迎撃措置後の国会承認」は「すでに措置を取ったあとで国会承認を得ることに意味はない」とのことで採用されず

 以前にマガジン(2003/8 第120号)では,「各艦におけるMDへの対応」について,専門家の話をお伝えしたことがあります.
「ミサイル防衛は時間との戦いです.
 コンピュータは瞬時に結果を出しますが,人間はそうはいきません.
 そこで,条件を定めて撃墜の権限を下級指揮官に委ねざるを得ません.
 BMDでは,特にその点が重要です.
 弾着点が我が国領域となれば,撃墜しても良いのではないでしょうか.
 迎撃ミサイルが個艦に搭載されているなら,その引き金も艦長が握っているわけで,航空総隊司令官も彼に権限を委譲せざるを得ないでしょう.
 そうなれば,数十秒でも対処可能です.

 この権限委譲タイミングも重要です.誤解しないで頂きたいですが,平時から個艦艦長にミサイル撃墜権限があるわけではありません.
 事態が切迫した段階で(やむを得ぬ,となってから)許可が出ます.
 これらの権限委譲ルールが"交戦規定,ROE"です.
 これは状況の仮定文と実行権限付与文をコード化したもので,およそ考えられる全ての状況と対策が網羅されています.
 例えば,この中に
    a1「探知したミサイルの弾着点が」
    b5「本邦領域内なら」
    c8「迎撃を許可する」
とあるとき,然るべき上級権限者から「a1b5c8」という暗号が届いた時点でミサイル発射は艦長の判断に任されます.
 もちろん切迫した時期が過ぎれば,取り消し暗号で権限を取り上げられます.

 海自と空自の連携体制ですが,悲観的評価と楽観的評価では全く異なります.
 細部は申し上げられませんが,自衛艦隊司令部と航空総隊司令部の間には濃密な情報の往来があります.
 それらを有効に機能させて防空体制の実を挙げるには訓練しかないでしょう.
 幸いにも近い将来,統幕が作戦指令権を持つようになりますので,従来の海空による協定や調整と比べて格段の進歩があるでしょう.

 もう一つ重要なことは米軍です.防空には国家主権が絡むからです.
 BMDの難しさは技術だけでなく,否応なく集団的自衛権の問題が絡みます」
とのことでした.

 ここでも指摘されていた「集団的自衛権行使の問題」を解決しないまま,法整備を進めたわけです.
「これでいいのかな?」
と思ったりもしますが,日本の場合「憲法改正ありき」からスタートするよりも,より具体的な物事を積み上げることで最終目標に達するというやり方のほうがいいかもしれません.
 日本国民は太古より,民主主義だけではなく,あらゆる原理主義とは相容れない国民性を持っていると思います.
 憲法原理主義もそのひとつでしょう.

(おきらく軍事研究会)

 【質問】
 ミサイル防衛(MD)について,民主党が要求している「国会の事後承認」は,妥当な主張なのか?

 【回答】
 数秒を争うミサイル迎撃で,現場の指揮官が,迎撃命令の権限を最高司令官たる首相から委ねられるのは,ごく自然のことです.
 それに,ミサイルが撃ちこま れた段階で某国とは戦争状態に入っているわけで,その際に「国会の事後承認」を求めるというのは,平時の国会運営の感覚でものを言っているように感じ,危機意識を感じ取ることができません.
 法律でもし「国会の事後承認が不可欠」ということになり,事態発生後,国会で「あの迎撃は国会としては認められない」となった場合どうするのか? 法律を作るのなら,そこまで細部を詰めなければなりません.

 法律の縛りは,必ずしも軍事行動となじむものではありません.
 国防の最前線に立つ指揮官には,法律の縛りではなく権限を与えるべきで,その責任は敵の軍事攻撃から国家機構を守ることができたか否かに限定すべきです.

 これは軍事を考える上で本質的な問題です.

(おきらく軍事研究会)


【質問】
 MDにはイージス艦が使用されていますが,なぜイージス艦なのでしょうか?
 イージス・システムとMDに必要な能力って,あんまり関係性が無いような気がするのですが,単に最新鋭艦を使う=イージス艦を使う,という事になっているのでしょうか?

 高性能のレーダー,情報処理能力,ミサイル管制能力は,イージス艦固有のものではないですよね.
 確かにイージス艦は全部持ってますが,絶対にイージス艦ではなくてはダメなのでしょうか?
 MDに最も適した艦を選ぶと自然にイージス艦になるというだけであって,MDにイージスシステムは必要不可欠のものではないように思えるのですが.

 仮に
・弾道ミサイルを探知する目
・探知した情報を分析する頭脳
・迎撃ミサイルを管制する能力
を持ち合わせた通常の護衛艦があるのならば,MDに関する任務のみについては問題無く仕事をこなしたりは出来ないですか?

 【回答】
 既存の艦の中で最適であるなので.

 アメリカMD戦略中の海上配備NTMDのメリットは,その展開位置の自由度にある.
 そしてそれは中・北鮮の弾道弾の脅威を受ける日本としてもメリットが大きい.
 海上にある既存のプラットフォームとしてはイージスが最適であり,必要な追加コストの点からも最も有利だということ.


 【質問】
 江畑さんが新聞インタビューで,日本にイージス艦4隻は多すぎると言っていましたが,本当に多すぎなんですか?
 たしか,
「イージス艦保有は元々対ソのためのものであり,その後の情勢変化で偶然役に立っている.
 しかし,4隻もいらず他へ予算を回すほうがよい」
というものでした.

 立ち読みで読んだ「自衛隊 知られざる変容」 朝日新聞「自衛隊50年」取材班 (著) に載っていた,2003年ごろの朝日新聞のインタビューにありました.

 【回答】
 軍艦と言うのは,ローテーションを組んで運用されています.↓

整備→訓練→低率稼動(移動等)→高率稼動(前線にて活動)
*低率稼動と高率稼動を一緒にして稼動状態としても可

 常に一隻を稼動状態にしておきたい場合は,最低同型艦が3~4隻は必要と成ります.
 よって,イージス艦を有効に使いたい場合は,4隻でも決して多いとは言えないです.
 ちなみに,少々話は逸れますが,空母12隻を擁する米海軍とて,一度に投入出来る空母の数は4~6隻です.

 確かに,61中期防,03中期防で計画された当初のこんごう型DDGは,建造予算1220~1290億とそれまでのDDGとは桁違いで,そもそもの目的はソ連の長距離爆撃機「バックファイア」の発射する対艦ミサイルへの対処という物でしたし,
 82年の日米安保事務レベル協議でアメリカがイージス艦の採用を強く迫ったという,政治的な背景も在ります.

 ですが,もしもイージス艦が導入されなければ,海自の防空能力はちょっとアレレなものになっていたかと.
 導入されなかった場合,46DDGたちかぜ型,48DDG,53DDG,56DDGはたかぜ型,58DDG以降,こんごう型と同じような調達年度数で,はたかぜ型を後3隻建造する予定でした.
 この設計が60年代,就役が70年代の,艦齢に約10年差がある艦が護衛艦隊の目となり耳となり,航空攻撃の脅威から艦隊を守る傘として頑張る予定だったわけです.(+昭和40年就役のあまつかぜ)
 ・・・平成の新時代の艦隊防空としては見劣りする感を受けます.

 平成に入ってから一気にイージス艦4隻を揃えたのは,自衛隊の装備調達としてはかなり英断だったと思います.

 まあマスメディアの場合,都合よく発言を切り取ったりして,バイアスがかかった編者が,発言要旨を捻じ曲げるようなことはざらにあります.


 【珍説】
 ともあれ,ここまで読まれた読者の中には,
「海上自衛隊には,そんなすごいフネ〔イージス艦〕があるのか.日本は大した国だ」
という感想を持つ方も,いるかも知れない.
 しかし,この「飛行物体」が,弾頭に爆発物を搭載し,日本列島を直撃する軌道に乗ったならば,海自のイージス艦はどのような対処が可能なのであろうか.
 正解は,「目下のところ手も足も出ない」である.
 すでに見たように,この艦は空母を護衛する目的で開発されており,多数の対艦ミサイル(亜音速から,せいぜいマッハ二程度)が飛来する自体には対応できるが,はるか上空をマッハ五以上で飛んで行く弾道ミサイルを迎撃するようにはできていないのだ.

林信吾著『反戦軍事学』(朝日新聞社,2006/12/30),p.99

 米海軍はまた,弾道ミサイル迎撃能力を持つとされる,改良型のイージス艦をすでに保有しており,二〇〇六年八月末には,横須賀に「シャイロー」が配備されたが,それなら,BMDに巨額の資金を投入し続ける意味はなんなのか.
 もしかして,米国の真意は,建造中のイージス艦に目をつけ,より高価なシステムを売りつけることにあるのではないか.

同,p104~p105

 【事実】
 林信吾氏は自衛隊のミサイル防衛配備計画について碌に把握していない事が見て取れます.

 まず,「建造中のイージス艦」とは,3月15日に就役したばかりのDDG177「あたご」の事だと思います(「反戦軍事学」刊行時にはまだ建造中)
 が,「あたご」にはBMD能力を付与していませんし,その計画もまだありません.
 何故かというと,「あたご」級は従来の「こんごう」級の改良型でヘリコプター格納庫を持ち,インド洋派遣等の海外遠征任務に向いている為,MD艦隊としての編成には入らないからです.

 そこで自衛隊は,対弾道ミサイル迎撃の為に,「こんごう」級4隻のイージスシステムを最新型に改修し,対弾道ミサイル迎撃用のスタンダードSM-3の購入を行う事にしており,すでに発注をかけてあります.
 今年度末年末までには,「こんごう」が「シャイロー」と同様な弾道ミサイル迎撃能力を持つ予定となっています.
 システム改修と同時に購入するSM-3は1艦あたり9本.
 1発は試射を行う予定で射耗します.
 つまり「こんごう」級4隻で合計36発のSM-3を購入し,各艦1発ずつ試射を行い,残り32発が当面の配備数となります.

 したがって,反戦平和派が「反戦軍事学」の記述を頼りにイージス艦を非難した場合,以下のように応射を喰らう事になってしまいます.

 (1)
「弾道ミサイルを迎撃できない日本のイージス艦は役立たずだ」
 ↓
「今年度末年末にはイージス艦に弾道ミサイル迎撃能力を持たせます」

 (2)
「アメリカは新型イージス艦により高価なシステムを売りつける気だ」
 ↓
「システム改修するのは既存のイージス艦です.既に予算も下りてます」

 「反戦軍事学」が如何に役に立たないか,如実に物語っています.
 著者の林信吾氏は,日本のミサイル防衛計画の配備予定について何も把握しておらず,想像と憶測で物を語っています.
 それどころか,仮想戦記小説紛いの空想まで披露している有様で・・・.

 〔略〕

 さて,本書のこの章「イージス艦vs.テポドン」では,イージス艦の事を,
「完成した時には冷戦が終わっていて無用の長物になった」(p.101要旨)
とし,前章で紹介した戦艦大和も引き合いに出し,弾道ミサイル防衛についても
「完成した時には無用の長物になっていた,ということになる可能性すらある」(p.105)
と警告を発しています.

 しかし一方で,イージス艦は日米以外にもスペイン,ノルウェー,韓国(建造中)が保有している事も紹介されています(p.96)
 林信吾氏は,この事についてまず,おかしいと自分で気付かなければなりません.
 スペイン,ノルウェー,韓国は,日本のイージス艦導入の後に自国への導入を決めています.
 もし仮に冷戦終結後の日本のイージス艦導入が愚考だというなら,何故これらの国が導入を決めたのか,考えなければならない筈です.
 答えは,簡単な事です.
 もうイージス艦は決して特別な装備では無いのです.
 各国からイージス艦に類する戦闘システムを有した艦が登場しつつあり,イージス艦も数ある選択肢のうちの一つ,という扱いになってきているのです.
 マスコミはイージス艦を何か万能の戦闘艦であるかのように書きたてますが,そのような作られた神話に惑わされないことを,お願いします.

 また,オーストラリアは弾道ミサイル防衛に使う名目でイージス艦の導入を決定しました.
 このように最初に使用条件ありきでどのような種類の戦闘艦を導入するか決める例は単純明快で,現状,この条件ではイージス艦しか選択肢がありません.
 イージス艦は弾道ミサイル迎撃能力を獲得する事で,もはや対艦ミサイル飽和攻撃の脅威が去った冷戦後の世界において,新たな役割を得たと言えるでしょう.

この記事へのコメント ↓

 イージスだけでなく,それに似たようなシステム(同時多目標処理のさらに高まった防空システム)を備えた艦は各国で建艦中ですから,よけいに痛いですね.
 type45とかザクセン級とかetc...,挙げればキリがありません.

 隣国でも韓国のKDX-3はイージスシステムを備えた艦ですし,中国の052C型(蘭州級)も正確な詳細は不明ですがが,スタイルより推測される用途はまさにソレです.
 仏製TAVITACを自国改良した統合戦闘システムを作り上げて搭載したとかしないとかいった話も聞きますし.

 そもそも元を辿ればイージス的性格の艦以外に,どういった艦が時代にそぐうというのか見えてこないのですがね….
 時代遅れというのならどんなフネがいいのかと,そこを書かないとダメですよ.

Posted by 名無しT72神信者 at 2007年03月31日 14:08

「週刊オブイェクト」,2007年03月30日付
※加筆修正(青文字部分)あり

 さらに,近年ではイージス艦以外の艦にもBMD 能力が付与されつつあるという.
 以下引用.

 オランダ海軍の De Zeven Provinciën 級ミサイルフリゲート (*1) とドイツ海軍の 124 型フリゲートが装備する,APAR (Active Phased Array Radar) を中核とする対空戦システムについても,Thales Nederland 社の手で弾道弾迎撃能力を持たせる構想が進んでいます (*2).
 すでに,De Zeven Provinciën 級の HrMS Tromp が昨年,米海軍の弾道ミサイル迎撃試験に参加しており,弾道弾の探知・追跡と追跡データの Link16 経由の送信をテストしています.
 同艦は SMART-L 対空捜索レーダーに ELR (Extended Long Range) モードを新規に開発・追加して,レンジを 480km まで延伸しました (*3).

 さらに,イギリスでも 45 型ミサイル駆逐艦こと Daring 級 (*4) の対空戦闘システム・PAAMS (Principal Anti-Air Missile System) に弾道弾迎撃能力を持たせる研究をしています.ただ,APAR は 4 面固定式のフェーズド・アレイ・レーダーですが PAAMS の SAMPSON は回転式アンテナですから,場合によってはちょっと不利かも.

*1 : Naval Technology - De Zeven Provincien Class Air Defence and Command Frigate
http://www.naval-technology.com/projects/dezeven/
*2 : JDW 2006/1/18 "Netherlands looks to Thales for frigate-based TBMD upgrade"
*3 : Kojii.net 「今週の軍事関連ニュース (2006/12/15)」
http://www.kojii.net/news/news061215.html
*4 : Naval Technology - Type 45 Daring Class - Anti-Air Warfare Destroyer
http://www.naval-technology.com/projects/horizon/

kojii.net@ココログ別館,03/30/2007

 イージス・システム(またはそれに類する多目標同時処理能力)やBMDは今後,主要国の大型艦艇では,やがては「あって当り前」という装備になりそうだ.

 自衛隊にそこまで先見の明があったとは思えないが,米国に次ぎ,世界に先んじてそうした艦を手に入れた海自が,そしりを受けるいわれはないのではないだろうか?


 【質問】
 イージス艦のMDについてですが,弾道ミサイルが発射された場合に,SM-3で迎撃可能な時間内に,日本の領域内に着弾する軌道かどうか判別する事は可能なのでしょうか?

 【回答】
 結構面倒な問題ですね.
 ブースト・フェーズ/ポストブースト・フェーズが終了した時点で軌道は確定するので,落下地点も推測できます.
 そしてそれを継続的に監視追跡する能力がなければ,MD自体が成り立ちません.
 しかし加速の停止を観測したとしても,以降下段の切り離し上段の再加速が有るかも知れません.
 衛星打上げですと,機体構成にもよりますが,最終段の加速タイミングは結構遅れるかもしれません.

 しかし今度〔2009年のテポドン2改発射実験〕の場合ですと,日本近辺に到達するのは第一段加速終了時点くらいですので,比較的早い時点で判断が付きそうです.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 MDについて質問させてください.

http://www10.atwiki.jp/fsx375/pages/91.html
において
> SM3搭載のMD対応イージスは,たとえば東京を防衛しようとするなら東京湾にずっといないといけない.
> 地上配備のSAMサイトの方がマシである.
と書かれていますが,これは事実でしょうか?
 どうも,自分の手計算では,こうならないんですが……

 なにか,情報をお持ちの方はいませんか?

極東の名無し三等兵 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」

 【回答】
 その話,SM-3が240kmも駆け上がれる事を知られていなかった時代のコメントですから.
 Block2になれば最大射高は軽く400kmを超え,迎撃体の飛翔速度はノドンの1.5倍以上になるので,真横からでもブチ当てられます.
 日本海の何処に置いても迎撃に参加できるでしょう.

 しかし現状のBlock1では,向かってくる相手を迎撃するのがせいぜいなので,イージス艦は敵弾道ミサイルの射線上付近に展開していないと,迎撃は無理でしょう.
 あとは射撃高度が合えば迎撃可能です.

 ここの図を参考にすると,そうですね,能登半島-佐渡島のラインで,SM-3Block1による東京行き弾道ミサイルの迎撃が出来そうです.

JSF in 「軍事板常見問題 mixi支隊」


 【質問】
 MDですが,20kmしか射程ないポンコツなんか使わないで,SM-3を東日本・西日本の陸地にそれぞれ設置すればいいんじゃないの?

 【回答】
 SM-3は既にイージス艦に搭載されて実戦配備についてるよ.
 ただ,SM-3の迎撃網を突破されて終末段階になったら,真空の宇宙空間でしか使えないSM-3では,もはや対処できない.
 だから迎撃をより完璧に近づけるために,大気圏内の下層~上層で使える迎撃ミサイルを,最後の砦として配備しようってことになったわけで,PAC-3はその役割を果たすもの.
 本当は,射程200kmくらいあるとされるTHAADがあればよかったんだが,迎撃ミサイルの導入を決めた当初は,THAADは失敗続きで実用化の目処が立ってなくて,現実的な選択肢はPAC-3しかなかった.

自衛隊板,2009/07/08(水)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 PAC3って言ったっけ?
 射程短すぎない?
 20~30Kmくらいだっけ?
 少しずつ射程距離を伸ばして,たくさん売りたいのかな?

 【回答】
 射程を長くする意味がない.

 弾道弾迎撃には三つのフェイズがある.

ブーストフェイズ: 打ち上げ時.ミサイルが加速している段階.

ミッドコースフェイズ: 宇宙空間を目標に向けて慣性で飛んでる段階.

ターミナルフェイズ:目標に向けて落下している段階.文字通り自由落下.

 PAC3はこのうちのターミナルフェイズでの迎撃を目的に設計されており,長い射程距離はいらない.
 高価値目標の周辺に配備し,そこを狙って落下してきた弾道弾を迎撃するのが仕事.


 【質問】
 MD防衛の要(でいいのかな…)として入ってきたPMC3ですが,これって戦闘機とかヘリとかの迎撃にも使われるのでしょうか?
 あんまり前線とかに持ってたらやばいんじゃないかな?,と思いまして.

 【回答】
 PAC-3のことかな?
 能力的には可能.
 ただし,自衛隊ではあくまで弾道ミサイル迎撃用に配備しているので,基本的には通常の航空機や巡航ミサイルの迎撃を目的とした運用はしない.
 それに射程距離やコストパフォーマンスでは,PAC-2やその他のSAMにだいぶ劣る.
 早い話が,弾道ミサイル以外の目標に使用するのはもったいない.

 もちろん,迎撃すべき航空機や巡航ミサイルなどの迎撃可能範囲に,PAC-3のみが展開されているような状況ならば,PAC-3を使うこともあるだろうけど.

神゛聖\(^o^)/オワタ帝國 ◆u8nX3fKy0k in 軍事板
青文字:加筆改修部分

 ただし,PAC-2とPAC-3のミサイルコンテナは共通だから混載して使い分ける事もできるから,実際の運用上の不便はあまり無いんじゃないかな.
 PAC3だけで運用する場合は弾道弾対処が目的なので,敵性航空機が飛来するような場所に展開する可能性は低い.
 その脅威がある場所に展開する場合は,PAC2を混成配備するだろう.

軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 SM3は現在でも「実戦」に使用可能ですか?

 【回答】
 使用可能です.(まあノドンクラスまででしょうが)

段階的に書きますと・・・

SM3(ブロック0)による実験(5回中4回成功)
↓(改修・グレードアップ)
SM3(「実戦用」ブロックⅠ)による実験(去年11月の実験で迎撃成功)
↓(改修・グレードアップ)
SM3(ブロックⅠA)による実験(新聞記事ではブロック1Aとは書かれていないが,06年夏期に行われると見られていたので,06年6月の迎撃成功)
↓(改修・グレードアップ)
SM3(ブロックⅠB)

・・・・(ICBM用ブロックⅡ,ブロックⅡAへと続く)

 ですから,既にSM3は実戦的ですし,そしてそれが効果的に働くと思います.
 実験が多いのは,失敗しているとか実戦に対応していないとかではなく,あくまで「グレードアップ」のためです.

葉月 in mixi


 【質問 kérdés】
 SM-3 Block2Aって何?

 【回答 válasz】
 SM-3とはRIM-161スタンダード・ミサイル3のことで,RIM-161 Standard Missile 3,これを略してSM-3.
 短距離から中距離の弾道ミサイル迎撃を目的とする艦船発射型弾道弾迎撃ミサイルであり,イージス弾道ミサイル防衛システムの一部を構成します.

 ブロックIIAとはSM-3の型式の一つで,IIAでは限定的ですが,大陸間弾道ミサイルへの対処能力が付加されています.
 具体的に言えば,ブースター径を全ての段において21インチに拡大して燃料搭載量を増し,キネティック弾頭も大型化しました.
 これにより
SM-3 Block2Aは射程2000km,射高1000kmという性能を有しています.

 ちなみに日本もブロックIIAから開発に参加しており,ノーズコーン,第二段および第三弾の誘導・制御システム,第三段を担当しています.

 2015年12月には日米共同開発のSM-3block2Aの二度目の発射実験が成功しました.

陸上型イージス:「イージス・アショア」による初の迎撃実験が成功 : 海国防衛ジャーナル

SM‐3ブロック2Aが初の発射試験に成功:ブロック2Aが持つ2つの意味 : 海国防衛ジャーナル

ねらっずーり in mixi, 2015年12月23日
青文字:加筆改修部分

 上述の性能は,DDGの運用に変化を与えます.
 というのも,DDGに搭載されているイージスシステム・SPY-1レーダーのBMDにおける探知範囲は,最大で1000㎞であり,これに射程2000㎞と言われるSM-3 Block2Aが運用されれば,わざわざDDGや日本海や東シナ海に配備しなくとも,基地周辺の近海でミサイル防衛任務に関する哨戒活動が行う事が出来るのです.

(図1枚目;図No.faq151226)

 これは舞鶴を中心とし,赤い円がSPY-1の探知範囲,青の円がSM-3 Block2Aの射程です.
 わざわざ日本海に出なくとも,領海から北朝鮮のノドンやムスダンの飛翔が探知出来ます.
 さらにミッドコースからの迎撃も可能になります.

(図2枚目;図No.faq151226b)
 これは佐世保を中心とし赤い円がSPY-1の探知範囲,青の円がSM-3 Block2Aの射程です.
 やはり東シナ海に出なくとも領海からDF-21Cの飛翔の探知とミッドコースでの迎撃が可能になります.
 つまり戦略原潜による自国近海での戦略哨戒と同じ事が可能になります.

 戦略原潜による戦略哨戒はかつては敵国に近い海域まで航行する必要がありましたが,SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の性能向上により射程が延伸した事で,自国近海での戦略哨戒が可能になりました.
 ミサイル防衛でも我が国限定にはなりますが,これがSM-3 Block2Aにより可能になります.
戦略哨戒 - 航空軍事用語辞典++

 そうなるとこんごう型DDGのMk.41VLSは90セル,あたご型DDGのMk.41VLS96セルの全てにSM-3 Block2Aが可能になります.
 日本近海ならば空自の制空権下にありますし,敵国の潜水艦も制空権下において海自のP-3CやsP-1によりその動きを封殺する事も可能になりますから,SM-2による自艦防護の必要性もVLAによる対潜作戦の可能性もなくなります.
 念のためにあきづき型DDと小型護衛艦(DEX)による警護の必要性はあると思いますが,この2隻をDDGの警護に当たらせるだけで十分でしょう.
 交戦地域での艦隊防空は空自やあたご型DDGと現在建造中の27DDG2隻で十分カバー出来ると思います.
 これに米海軍のアーレイバーグ級DDGが加われば,ノドンやテポドン,DF-21Cは完全に封殺されるでしょう.
 もっとも報復攻撃のために,何隻かは日本海に派遣する必要はあるかも知れませんが,それは我が国が決める事ではありません.

 なお,ノドンは射程が1500~2000kmですから明らかに対日攻撃用ですが,ムスダンは射程が3200~4000㎞ですのでこちらは対日攻撃用ではなく,グアムやサイパンを攻撃するための弾道ミサイルだと思われます.
 その意味から,集団的自衛権の行使によるミサイル迎撃の可能性もあります.
 もっとも,米海軍はアーレイバーグ級を59隻も保有していますから,海自の出る幕はあるかどうか微妙なところです.

ねらっずーり in mixi, 2015年12月26日
青文字:加筆改修部分


 【珍説】
カナダde日本語
--------------------------------------------------------------------------------
国内では正社員になれないパートタイマーや就職先のないニートが増えているにも関わらず,540億円も払って,防衛ミサイルを買うついでにシステム改修費用として,アメリカ人を高額で雇う費用を国民の税金から払っているのだから,これ以上の税金の無駄使いがあるだろうか.
--------------------------------------------------------------------------------

 【事実】
 “ついで”じゃあ,ないんです.
 このイージス・システム改修を行わないと,SM-3ミサイルを撃てないんです.
 こちらが今回の買い物のメインなんですよ.
 金額も大半がシステム改修費用です.
 〔略〕

>アメリカ人を高額で雇う費用を国民の税金から払っているのだから,
>これ以上の税金の無駄使いがあるだろうか.

 いえ,効率的な予算の使い方だと思います.
 というのも,これを日本人だけで行うとする場合とはつまり,イージスシステムに匹敵する物を自主開発しなければならない~~その上に弾道ミサイル防衛システムまで~~なわけで,天文学的な予算が必要となるからです.

「週刊オブイェクト」,2006年12月16日付
青文字:加筆改修部分


目次へ

「アジア別館」トップ・ページへ

「軍事板常見問題&良レス回収機構」准トップ・ページへ   サイト・マップへ