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【質問 kérdés】
陸自のスキャンイーグル導入で陸戦は変わりますか?
【回答 válasz】
陸戦でのUAVの活用は,1980年代からイスラエルと南アフリカで行われていました.
イスラエルはパレスチナゲリラ,南アフリカは当時実効支配していたナミビアのゲリラやアンゴラ軍やモザンビーク軍が相手でした.
1990年代に入ると湾岸戦争でUAVの陸戦での野戦偵察が行われ,地上戦ではイラク軍への効率的な攻撃に貢献しました.
陸自でもFFOSなど無人偵察システムが開発されましたが,今回は本格的なUAVが導入される事になりました.
陸自は,ボーイングの子会社であるBoeing Insituは同社のUAV・スキャン・イーグルの陸自納入向けの評価実験が行われていると発表しました.
これが終われば,晴れて陸自はスキャンイーグルの導入が行われる事になります.
ScanEagle UAS,陸上自衛隊納入の包括的運用評価へ:ミリブロニュース
Boeing Insitu ScanEagle - Wikipedia, the free encyclopedia
この陸自のスキャンイーグル導入には,「UAVの開発・運用動向と日本の安全保障」が色濃く反映されているように思えます.
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UAV の開発・運用動向と日本の安全保障:防衛省防衛研究所
ア 陸上の防衛のための作戦
2004年,陸上自衛隊は,着上陸侵攻や離島侵攻,ゲリラや特殊部隊による攻撃,災害派遣などの多様な事態における適切な指揮活動を実施するため,FFOS(Flying Forward Observation System:遠隔操縦観測システム)を所要の映像情報の早期伝達が可能なシステムとして装備した.
その後,FFRS として,隊員を危険にさらすことなく,悪天候やNBC 汚染下でも長距離の画像情報のリアルタイムで収集が可能となるように改善している.
しかしながら,FFOSおよびFFRSは,支援の専用車両などが必要な重厚な装備で,活用に制限を受けやすい.
(略)
国土の状況から,山郭に囲まれた地形は電波伝搬に大きな制約を及ぼすとともに,センサなどのいわゆる見通しも制限する.
このような環境のもとで,自衛隊は情報の共有やリアルタイムのデータ通信を実施し,作戦指揮統制・戦闘システムの通信確保を図らなければならない.
また,錯雑した地形や市街地のような見通しのきかない地域での偵察・監視や,敵の襲来予測がつかない状況下における警戒も考えられる.
そこで,目標情報を捕捉するセンサを搭載したUAVを用いて作戦地域上空で敵の状況を常時監視し,中継機能を搭載した UAV によって指揮統制・戦闘システム間の情報共有・データ通信を確保することが望まれる.
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スキャンイーグルだと離島侵攻で敵の部隊の配置は兵力を把握できるISR能力が付与するだけでなく,敵占領地への強行偵察も可能です.
何しろ迎撃されても人的被害はないですからね.
また,山岳地帯や都市部でのコマンドの破壊活動も未然に発見する事も可能になります.
さらには着上陸侵攻では地対艦ミサイルの中間誘導にも使えます.
さらにまた,RQ-2パイオニアのように豪華な発射ランチャーや着陸ネットも必要なく,簡易型のランチャーや着陸フックで済みますのでC-2やC-130でも輸送は可能なので,機動力にも優れています.
これなら災害派遣でも地震等で被害を受けた地域での被災者の捜索や火山活動での火山観測,さらには原発事故での被害調査でも威力を発揮する事になるでしょう.
ねらっずーり in mixi, 2013年05月26日
青文字:加筆改修部分
【質問 kérdés】
防衛省の無人機開発計画について教えてください.
【回答 válasz】
2016年08月19日に防衛省は20年後に無人戦闘機の開発すると発表しました.
ロイターの記事を見てみると,自律化や通信技術などAIの開発にも力を入れるとし,まずISR(情報,監視,偵察)機として10年後に開発.
さらに10年かけて無人戦闘機として開発,運用する計画との事です.
防衛省,20年後に無人戦闘機を開発 8月末に工程表 | Reuters
F-35Aは要撃任務,つまり制空戦闘向けとし防衛省が開発する無人戦闘機は現在開発が予定されているF-3を無人戦闘機とすべきかと思います.
F-3の任務はF-2同様,対艦攻撃と近接航空支援が主となる事が予想されます.
ASM-3対艦誘導弾を防空艦へのSEAD(敵防空網制圧)に運用するとなれば,F-3をUCAV化した方が,米空軍のワイルド・ウィーゼルのように敵にSAMを撃たせてそのレーダー波に向けてASM-3を発射しても,敵のSAMによる人的被害はゼロに抑える事が可能で,このような危険な任務も可能になります.
また,少子高齢化が進む我が国では将来パイロット不足も予想されますが,F-3をUCAV化すれば地上勤務中のパイロットに操縦させる事でこの問題も解決できます.
ただ,F-3のUCAV化にはデメリットがあります.
それは対艦攻撃や近接航空支援,災害派遣には運用が可能だとしても対領空侵犯措置任務には充てられないという点と,F-2パイロットの人的資源の余剰が発生する可能性があるという点.
そこで次期F-XとしてF-35の追加調達を行うのですが,追加調達分はF-35AではなくF-35Bを選択すべきかと思います.
F-35Bなら天災により空自基地が使用できなくなっても,陸自駐屯地や海自の短距離の滑走路の基地でも運用は可能です.
我が国の場合,A2ADによるミサイル攻撃による滑走路の破壊よりも天災による滑走路の破壊の可能性が高い事を認識すべきでしょう.
また,持論ではありますが,F-35Bを含めてF-35シリーズはEODASやETOSなどの各種センサーによる索敵や戦術データリンクの中継など要撃以外の任務も可能ですので,海自のDDHに10機ほど艦載し,運用すればDDGの死角部分の索敵も可能になり,DDGによるSAMの迎撃も可能になります.
東シナ海ならその必要はないにしても,南シナ海やマカッサル海峡だとそうもいかないので必要であるというのが当方の認識です.
実際,海外メディアでは航空駆逐艦であるひゅうが型やいずも型に,V-22やF-35Bのような固定翼機の艦載を推測する声があるのですから.
航空宇宙ビジネス短信・T2:: ★★世界第二位になった日本の空母部隊を空母と呼ばないフィクションはいつまで続くのか
Japan's aircraft carrier comeback has been quiet and impressive:WE ARE THE MIGHTY
ねらっずーり in mixi, 2016年08月27日
青文字:加筆改修部分
【質問 kérdés】
海上防衛において自衛隊は,無人機をどのように位置づけようと考えているのか?
【回答 válasz】
以下は防衛研究所が纏めたレポート「UAVの開発・運用動向と日本の安全保障」からの引用です.
これを教えていただいたのはこのページのフォロワーでもあり,当方のマイミクでもある930.jpさんでした.
ありがとうございます.
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UAV の開発・運用動向と日本の安全保障:防衛省防衛研究所
イ 周辺海域の防衛のための作戦
海上作戦では,UAVは艦艇に搭載され,艦上から運用されることが基本であり,UAVには洋上における敵艦艇,海賊,不審船などの監視,捜索,追尾および艦隊の前程哨戒,港湾の監視などの任務が考えられる.
(略)
UAVによる補完を行えば,運用機数に制約がある艦載ヘリコプターの搭乗員の疲労軽減や稼働率のカバーにつながるだろう.
(略)
海上自衛隊の部隊が外洋で広域にわたる作戦を実施するならば,通信中継による,衛星を含む哨戒機などのデータ通信が必要となる.
そこで,UAVによる空中監視やシステムデータの自動中継機能を活用できれば,哨戒機などの機能の補完が可能となり,有効かつ効率的に任務を遂行することが可能となろう.
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海上防衛において自衛隊としては,UAVの位置づけはこれを見る限りはあくまでもISR(情報,監視,偵察)のみでUAVを用いた対艦攻撃は想定していないようです.
うーん.UCAVに対艦攻撃を委任すれば空自のF-2や将来予想されるF-35Aの対艦攻撃任務から外し,空対空はもとより哨戒機やAWACSの警護にも回せる余裕が出来ると思うのですが・・・.
ちなみに現代の空戦ではSEAD(敵防空網制圧)と電子戦機を付随した航空攻撃の阻止になりつつあり,かつてのような敵の戦闘機を撃墜して,敵の航空基地をその隙に空爆という手段は取られていません.
海自としてはP-1哨戒機に8発以上搭載が可能である事に加えて,艦船からの対艦ミサイルもある事から,無人機による対艦ミサイル攻撃は不要と考えたのでしょう.
P-1のASM最大搭載数は8発以上?: アシナガバチの巣作り日記
ISRの手段は現時点では,亜音速で飛翔するTACOMと,2015年度には導入が予定されているRQ-4です.
TACOMはおそらくカメラ,RQ-4は合成開口レーダーでP-1やP-3C,E-767,F-35AのAPG-81では探知出来ない距離からのISR任務に就くものと考えられます.
特に中国海軍の054型フリゲートの海鷹S/C型レーダーは,300kmの探知距離を持つだけに,哨戒機からはなるべくなら探知されない距離から監視をしたいため,無人偵察機の存在は不可欠でしょう.
とはいえ,やはり無人機による対艦ミサイルによる攻撃は取り上げてもいいのではないかと私は思うのですが・・・.
このページを見ている皆様はどうお考えでしょうか?
ねらっずーり in mixi, 2013年04月21日
青文字:加筆改修部分
【質問 kérdés】
空自に無人制空戦闘機が導入される日は来るの?
【回答 válasz】
[中略]
では空対空について防衛研究所はどのような見解を出しているのでしょうか.
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UAV の開発・運用動向と日本の安全保障:防衛省防衛研究所
米空軍歴史研究局ダニエル・ハウルマン(Daniel L. Haulman)は,空の支配は近代戦での勝利の必須条件であり,最新鋭戦闘機の価格は著しく高価に映るが,高性能新鋭機が不足した状態で戦争が勃発すれば,その代償はもっと高価なものになるのであると述べている.
敵戦闘機部隊が,我が方のISR機,輸送機,UAVなどを撃破して地上作戦に移行するのを防止するために,わが国には強力な戦闘機部隊が必要となる.
米国の目指すUCAVは編隊として制御運航するため,UCAV同士の位置や戦術指示の認識などの課題も多く,実戦運用までには長期の開発期間が予想される.
日本が近い将来の航空作戦においてUCAVに戦闘機の代替を期待することは,未だ現実的ではない.
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自衛隊としては,将来的にはUCAVが戦闘機の代わりを務めるかも知れないという認識はあるものの,それは近い将来ではありえないという認識を持っています.
それにはいろいろと問題があるからです.
無人制空戦闘機は米国内でも研究はされているようですが,UCAVの位置や戦術命令の認識など問題が多いだけでなく,AI(人工知能)を用いると誤作動により味方の機体や施設を誤認攻撃してしまう可能性もあるという指摘もあります.
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Opinion : 今こそ,先を見通す目が問われる:Kojii.net テクニカルライター・井上孝司
しかし,あと何十年かして無人戦闘機なんてモノが実用化された日には,果たして同じやり方でいいのかどうか,疑問がなくもない.
たとえば,完全自律モードにして送り出された UCAV が,誤射・誤爆・味方撃ちなど,とにかく「撃ってはいけないもの」を撃ってしまった場合,そのような事態を生起した原因,あるいは責任の所在が問題になる.
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味方の機体を誤って撃墜してしまう事は有人戦闘機でもありえますが,無人戦闘機だとそれが多発してしまう可能性は否定できないでしょう.
マン・イン・ザ・ループ方式ならそれを防止する事は可能です.
もっともこのマン・イン・ザ・ループ方式だと,オペレーターの画像が一定の角度からしか見えなくなってしまい,コックピットから見るような180度の視界が広がらなくなるので,事故の元になる可能性もありますが・・・.
それに加え,空自の航空学生の志願者は増加しており,倍率も年々高くなっています.
倍率が高いという事は空自にとっては,近い将来少子化による人材不足の可能性はないという判断もあるのかも知れません.
自衛官採用試験の難易度・倍率:SEO対策
また,ECMを仕掛けられた場合の対処など,無人制空戦闘機の課題はまだまだあると思います.
ちなみに中国でも瀋陽飛機公司が「暗剣」無人制空戦闘機を開発していますが,2006年の珠海航空ショーでの公表以降情報はなく,研究レベルで留まっている可能性があります.
アメリカでもHYPERSONIC型無人制空戦闘機の実用化が行われていないのに,技術的に劣る中国での実用化は難しいところでしょう.
中国の無人航空機(UAV)の実力 - 海国防衛ジャーナル
ただ,無人制空戦闘機は遠い将来には実現する可能性も,また排除できないと当方は愚考いたします.
ねらっずーり in mixi, 2013年05月04日
青文字:加筆改修部分
【珍説】
不謹慎だと言われても,ちょっと言わせて下さい.
F-35の開発がうまくいかず,F-22パイロットが謎の症状に襲われ,F-2が津波で18機流失したのは,神様のお告げです.
神様からの最後のチャンスだと思います
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-11
【事実】
このブロク主は無人機導入を推進しているようですが,第4航空団を無人機教育部隊に改編すべきとか,前向きな事を言うならともかく,F-2津波被害は神様のお告げというのは,珍説どころか東松島市の津波災害の被災者や津波にF-2やU-125,UH-60Jを流されて無念の涙を飲んだ,第4航空団や松島救難隊への冒涜以外の何物でもありません.
当方は東松島市在住ではありませんが,両親の親族が宮城県に多く住んでおり,東松島市にも親族が二人いました.
一人は避難所生活を余儀なくされました.
ですのでブログ主のこの暴言は個人的にも許せません.
ブログ主はこの暴言に対し,被災者と第4航空団と松島救難隊の隊員に釈明と謝罪を求めます.
いくらネットだからと言っても,この発言は不謹慎を通り越してもはや人非人のレベルです.
ブログ主がロバート・ゲーツ元米国防長官のように安全保障を語りたいのならば,まず自らの発言に対しては反省すべき点は反省すべきです.
これは自戒の意味をも込めて書かせていただきます.
バルセロニスタの一人 in 「軍事板常見問題
mixi別館」
2012年12月09日 14:19
青文字:加筆改修部分
そもそも科学であるべき軍事学に,お告げなどといった非科学的なものを持ち込む時点で…
【質問】
何故日本の中小企業には,軍用に耐えうるUAVなどの無人兵器を開発・量産する能力を持っているのですか?
また,それらが平和目的の利用に限定されると,軍事利用や軍や軍事産業への輸出に頑なまでに消極的なのはどうしてですか?
【回答】
軍用というのは市場が狭く,規制がうるさく,イメージが悪く,儲からないから.
汎用可能なものは民間の巨大なマーケットに比べたら,軍用市場なんてゴミ滓民以下なんですよ.
アメリカ軍に採用されればそれなりに他国から評価されますが,アメリカは自国の産業育成のためにアメリカ企業への権利移転を求めるから結局,他国の企業は儲からない.
それくらいだったら平和利用として世界を相手にしたほうが儲かる.
民間市場の規模が大きくなれば
「軍事利用,民間品を購入して勝手に改造してください.一応メーカー推奨オプションはこれですが」
「軍規格,そんなの知りません.軍用としての評価,勝手にどうぞ.」
と,こうなる.
日本の航空機みたいなのはちょっと特殊例だが.
無人兵器の開発,量産能力は軍用なんてどうでもよくて,日本の人件費が高いから,少しでも無人化を考えるうちにこうなった.
軍事板
青文字:加筆改修部分
【質問】
日本の無人機開発は,帯域の問題で制約を受けているって本当?
【回答】
帯域の前に出力も.
アメリカの無線LAN(2.4GHz.
無法地帯)の出力は1W.
これでMAVと40km半径程度は制御できる.
日本の無線LAN(2.4GHz.
無法地帯)の出力は10mW.
1/100だ.
まあ,これは特定小電力帯の話だから,軍事無線とは別だろうけど.
Posted by 名無しT72神信者 at 2010年08月25日
02:09:38
「週刊オブイェクト」◆(2010年08月23日)コメント欄
青文字:加筆改修部分
【質問 kérdés】
我が国に全方位型ステルスUCAVは必要?
【回答 válasz】
ネットの一部で全方位型ステルスUCAVを導入する意見がありますが,果たして必要なのですかね?
それを主張している方々の話によれば,敵国本土を攻撃する事が可能な装備が必要,A2ADでは殺られる前に殺る,という何とも物騒な発想のようです.
さて,物騒かどうかは別にして,そもそも全方位型ステルスUCAVは万能兵器なのか?という検証をしてみたいと思います.
(1) そもそも高強度紛争においては,全方位ステルス型機を含めてUCAVは役に立たない
UCAVは
・A2ADなどの高強度紛争においては,相手国の戦闘機やSAM(地対空ミサイル)に撃墜が容易である,
・対国家向けのCAP(戦闘空中哨戒)機として運用するには能力が足りない
など,多くの問題点が欧米の報道機関によって報道されています.
これはたとえば「海国防衛ジャーナル」ブログでも報じられています.
未来の戦場は無人機(UAV)が主役になるのか - 海国防衛ジャーナル
Anti-access/area denial challenges give manned aircraft edge over UAVs:Flihtglobal
Predator drones ‘useless’ in combat scenarios - Air Force general — RT USA
また,米空軍大学のダニエル・ハルトマン研究員も高性能有人戦闘機の高強度紛争での必要性を説いているのを,以前にも紹介した事があります.
高性能有人戦闘機の必要性 アフガニスタン,イラクの例外に論調を脱線させないために何を考えるべきか:航空宇宙ビジネス短信・T2
さらに,以前にもお伝えしましたが,グルジアやイスラエルではロシア空軍やイスラエル空軍の要撃機に撃墜されています.
(2) 敵地で運用されるUCAVはハッキングされる可能性が高い
ステルスといえどもレーダーに接近すればどうしても映ってしまいます.
それは全方位型ステルスUCAVも同じ.
実際,全方位型ステルス無人偵察機のRQ-170センチネルが,イラン領空上においてアフトバズ電子戦装置でドローンジャミングとドローンハックに成功しています.
これは3月3日の記事でも紹介していますので,ここでは詳細は割愛しますが,それまでジャミングが難しいとされた衛星通信が,ジャミングされた上にハッキングまでされたとなると,敵国領空での運用はHVAA(高価値航空資産)となっている一部のUCAVにとっては,機密情報流出の危険性があります.
(3) そもそもA2ADには我が国は対応する能力も装備も訓練も行われている.
巡航ミサイル攻撃は以前もお伝えしていますが,空自の現装備でも可能.
E-767AWACSが4機,E-2CAEWを13機抱え,JADGEという高性能なC4Iシステムを保有し,200機以上のF-15Jと80機近くのF-2を保有している空自は,既に巡航ミサイル迎撃体制を確立していた1980年代後半以上に強化されています.
これに将来はF-35Aや海自のミサイル護衛艦から発射されるであろうSM-6,さらに空自のPAC-3や陸自の03式中距離地対空誘導弾などのSAMの壁もあります.
下手に敵国を攻撃すれば,我が国の都市に弾道ミサイル,敵国によっては核攻撃の可能性もあります.
まぁ,ざっと思いついただけでも我が国がステルス無人UCAVを保有する必要性はありませんね.
米海軍で開発されているUCLASSにしても,偵察や絶対的な航空優勢(つまり制空権)が確立された場合に運用する事を想定しています.
強いて言うならば,陸自のAH-1Sの後継としてMQ-8ファイアスカウトの武装型が,導入すべきUCAVでしょうかね.
我が国にとってはUAVは,RQ-4と陸自と海自で運用されるスキャンイーグルで十分でしょう.
どちらもISR任務に特化しています.
海外派遣にしても近接航空支援ならば,上記のようにMQ-8の武装型で十分でしょう.
米空軍によるMQ-9やイスラエル空軍ののエイタンなどのUCAVによる民間人をを殺害してしまう無人機の攻撃を考えると,MQ-8の方が駐屯地の防衛のみに徹する事が可能になります.
一言で言ってしまえば,我が国にとって全方位型ステルス無人UCAVはただの玩具でしかない,という事でしょうかね.
ねらっずーり in mixi, 2014年08月24日
青文字:加筆改修部分
【質問 kérdés】
防衛装備庁が発表した索敵・空戦型UCAV構想について教えてください.
【回答 válasz】
当方はこれまで無人制空戦闘機や空戦型UCAVの存在に懐疑的でしたが,この方式ならそれもありかも知れません.
防衛装備庁は「無人ウィングメン」構想を発表しました.
これはUCAVを空中から発射して戦闘機からパイロットがUCAVを操縦し,UCAVのレーダーで戦闘機のレーダー探知外圏から敵機を索敵し,AAMで迎撃したり敵機のAAMがUCAVに攻撃する事で敵機の位置を索敵するというものです.
Unmanned Wingmen For Japan’s Piloted Force Planned For 2030s
Japan lays out a plan for pilotless combat aircraft to help fighters:Aviation Week
★日本が2030年代供用開始を狙う無人ウィングマン構想を発表:航空宇宙ビジネス短信・T2:
この構想が実現すれば,AWACSやAEWと連携した共同作戦能力の向上により索敵探知距離が飛躍的に向上し,レーダーの死角が無くなるだけでなく,視覚外戦闘(BVR)の能力も向上します.
また,A2ADの一つとされる巡航ミサイルの飽和攻撃にも対応する事が可能なだけでなく,アビオニクスさえ更新すれば機体の改修も必要なくなるので,F-15に16発のAAMを搭載させるような派手な改修の必要性も無くなります.
技本では既にTACOM(多用途無人機)の実証を終了させており,このTACOMの技術を生かせば空中発射型で人工知能による着陸が可能なUCAVの開発は容易に進むでしょう.
記事では開発中とされるF-2の後継機種であるF-3が無人ウィングメンを運用する予定とされていますが,戦術データリンクによる情報処理が海自のイージスシステムよりも上回るとされる空自のF-35やF-15J近代化改修型でも,その気になれば運用は可能でしょう.
また,パイロットがUCAVを操縦をマン・イン・ザ・ループ方式で操縦するので,AIのバグや不具合によるUCAVの暴走も防げる上に,空戦型なので今UCAVオペレーターの間で問題になっているPTSDも発生する事はありません.
ねらっずーり in mixi, 2016年10月08日
青文字:加筆改修部分
【質問 kérdés】
RQ-4高高度無人偵察機導入について教えてください.
【回答 válasz】
2013年07月,防衛省は防衛大綱の中間報告書を発表しました.
それによると,高高度無人機の導入の検討や,島嶼部に対する防衛の強化なとが明記されました.
防衛力の在り方検討に関する中間報告:防衛省(PDF注意)
この中では高高度滞在型無人機の導入が検討されています.
現在西側,というか世界中で高高度滞在型無人機と言えば,以前から導入が検討されていたRQ-4の導入が防衛大綱に盛り込まれる可能性が出てきた事になります.
ただ,高高度滞在型無人機は北大路機関のはるなさんが言うように,機体単価だけでなく地上に送る情報伝送設備などの運用コストが機体単価を上回る事もあり,米軍ではU-2などの有人高高度偵察機の再活用が注視されているようです.
高高度滞空型無人機導入検討,新防衛大綱盛り込みを中間報告書に明記:北大路機関
そこではるなさんはRQ-1の導入を提言していますが,このRQ-1も機体単価はともかく,衛星通信を用いた操縦・情報伝送設備は戦闘機1機分以上とも言われていますので,あまりコスト削減に役には立たないのではないかと思われます.
そこで空自・海自が既に保有している現行の無人機であるTACOMとRQ-4,そして有人機である空自の戦闘機や海自の哨戒機と連動した警戒監視システムを構築してから導入すべきと愚考いたします.
そうすればRQ-4もそれこそ4機程度で済む事になります.
有人機だけでは不可能な部分は無人機で補うという形にすべきでしょう.
現に米海軍ではP-8Aポセイドン哨戒機とRQ-4の海軍版であるMQ-4トライトン無人偵察機と連動した哨戒活動を模索しています.
ねらっずーり in mixi, 2013年07月27日
青文字:加筆改修部分
その後,2015年度に導入が予定されていたRQ-4グローバルホーク高高度無人偵察機が,2014年度に前倒しで導入される事になりました.
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無人偵察機:配備前倒し14年度以降3機 防衛省:毎日新聞
防衛省は来年度予算の概算要求で,高高度滞空型無人偵察機グローバルホークを導入する費用を計上する方針を固めた.
日本が無人偵察機を導入するのは初めて.
2014〜18年度で3機購入し,地上施設整備も含めた費用は1000億円前後となる.
民主党政権が16年度以降の導入を検討していたが,中国・北朝鮮への警戒・監視の能力向上が急務として,導入時期を前倒しする.
年内に公表する新たな中期防衛力整備計画(中期防)にも明記する.
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RQ-4の導入計画については民主党政権に決定されたものですが,自民党でも継承され,2015年度に導入が計画されましたが来年度に前倒しとなりました.
その背景には北朝鮮のミサイル問題や中国の海上・航空での軍拡が影響しているのは確かでしょう.
ただ,記事にもあるように,1000億円の調達費用もかかる事が批判の対象になる可能性が高いのは確かです.
RQ-4はその機体単価もさることながら,整備費なとの機体運用コスト,情報伝達装備とその運用価格を考えると1000億円でも驚きはしません.
しかし,RQ-4を3機分調達するだけでF-35Aが運用費を含めて5機分導入出来るだけに,割高な無人偵察機という思いがあるのは否定できません.
また,RQ-4とは光学センサーが優れていて国境を超えなくても偵察活動が可能なU-2Rを推する傾向が米空軍にある上に,ドイツ空軍では滞空証明で困難性が大きいことから,高高度での滞空任務は民間航路の安全の観点から導入は難しいとして,結局導入を断念した経緯があります.
我が国でも民間航空網が網の目のようにあるだけに,RQ-4の適切な運用が出来るかどうか不安な面があります.
これだったらアヴェンジャーが開発終了するまで待てなかったのか・・・.
グローバルホークの将来に不安材料①ブロック30早期退役を回避したいノースロップの事情:航空宇宙ビジネス短信・T2
グローバルホークの将来に不安材料② ドイツが導入を断念:航空宇宙ビジネス短信・T2
RQ-4導入でメリットがあるのもまた確かです.
まずこれで,
撮影した画像を地上にリアルタイムで転送出来ないRF-4EとRF-4EJを退役させ,空自の偵察航空隊の再編成が可能になる
→それによりパイロットの人員が余剰となり,予想されるであろう戦闘機パイロットの人員不足に対するリソースの確保が可能になる
→その余剰となったパイロットでEF-15を運用する事で,空自のYS-11EAを引退させ,輸送機のパイロットのリソースの確保が可能になる
というところでしょうか.
高価な軍事ロボットを導入するのなら,それに見合った人的リソースの確保に乗りだすべきでしょう.
無人化が出来ない部分もある以上,そこに人的リソースを投入し,無人化が出来る部分は無人化すべきです.
ねらっずーり in mixi, 2013年08月18日
青文字:加筆改修部分
【質問 kérdés】
日本近辺に接近する無人機の迎撃は,有事以外ではできないのですか?
【回答 válasz】
2013年09月9日,尖閣諸島沖に中国軍の所属の無人偵察機が飛来,空自が初めて無人機に対する領空侵犯対処のためにF-15Jがスクランブルする事案が発生しました.
飛来した中国軍の無人機は防衛省統合幕僚監部の画像と香港誌・亜洲週刊の報道から,中国軍の無人偵察・攻撃機の「翼竜」である可能性があります.
攻撃能力持つ「翼竜」か=尖閣接近の中国軍無人機:時事通信
「翼竜」無人偵察・攻撃機:日本周辺国の軍事兵器
翼竜は米空軍が運用しているMQ-9リーパーのコピーである可能性の高い無人偵察・攻撃機で,「蒼狼」レーザー誘導空対地ミサイルの他に,自衛用にTY-90赤外線誘導空対空ミサイルを搭載することができます.
また,滞空時間も20時間とMQ-9にも引けを取らないものの,速度は240km程度と新幹線の最高速度の半分程度しかなく,領空侵犯は難しいでしょう.
とはいえ,光学センサーによる遠距離からの偵察は可能.
そうなると,海域を警備する海上保安庁の巡視船が監視されてしまう可能性もあります.
また,中国もRQ-4に匹敵する高高度無人偵察機・翔龍の開発を進めていますが,翔龍の開口合成レーダーならばさらに遠距離からの監視活動が可能になりますし,場合によっては領空侵犯も行う事が可能になってしまいます.
翔龍高高度無人偵察機:日本周辺国の軍事兵器
ただ,これ等の無人偵察機は撃墜したり強制着陸する事は防衛出動が発動された,つまり有事でなければ極めて難しいところ.
領空侵犯をしていない以上,強制着陸も法的には難しいでしょう.
しかし退去させる事は可能です.
これ等の無人機は衛星通信だからジャミングは不可能だとも言われていますが,何も衛星通信をジャミングしなくとも,無人機の運用に必要な衛星測位システムの電波を妨害すれば済むことです.
GPSや中国版GPSの『北斗』などの衛星測位システムは,電波妨害で制御不能にする事は可能です.
画像ジャイロ応用技術の研究 ― 画像を用いた新しい測位・航法技術 ―:防衛省技術研究本部
空自のYS-11EA/EBや海自のEP-3などのELINT機により,無人機の衛星測位システムの周波数を測定し,F-15Jに搭載されているJ/ALQ-8電子妨害装置に対衛星測位システム電子妨害機能を装備させれば済むことです.
ターゲットの無人機が近づいてきたら衛星測位システムにジャミングをしかければ,ターゲットは引き下がるしかないでしょう.
その気になれば無人偵察機などは簡単に追い払う事が出来ます.
もっとも衛星測位システムをジャミングされたら,有人機でも近づくことは出来ないでしょう.
ただ,これは逆に言えば,中国軍やロシア軍でも可能という事.
だからこそ,上記の技本が米国防総省と共同開発している画像ジャイロの実用化を急ぐ必要があります.
自衛隊で運用中のTACOMはGPSによる自律飛行が可能なだけに,GPS妨害をされてしまったら偵察活動は不可能なってしまうのですから.
ねらっずーり in mixi, 2013年09月14日
青文字:加筆改修部分
2013年05月にはイスラエル空軍が,反イスラエル闘争を続けているレバノンのイスラーム教シーア派民兵組織・ヒズボラのUAVをF-16C戦闘機で撃墜しました.
こちらの記事ではUASとなっていますが,これは無人航空機システムの事で,UAVと同一と思っても差し支えはありません.
UASによる領空侵犯に断固対応しているイスラエル空軍の事例は日本にとって他山の石でしょうか:航空宇宙ビジネス短信・T2
なお,ヒズボラは去年もやはりイスラエル領空内にUAVを飛翔させて領空侵犯を行い,やはりイスラエル空軍のF-16Cとおぼしき戦闘機に撃墜されています.
航空宇宙ビジネス短信の記事ではイスラエル空軍の断固たる態度は,日本にとっても参考になるという意見がありますが,実は領空侵犯したUAVは各地で撃墜されています.
フィリピンでは中国国家海洋局が南沙諸島での海上監視に無人偵察機を投入し,領空侵犯をした場合には撃墜するとフィリピン国防省のガルベス報道官は述べています.
フィリピンは韓国からF/A-50軽戦闘攻撃機の導入を決定しており,第二次世界大戦レベルの速度しか出せないUAVは簡単に撃墜出来ます.
【中比・南シナ海】フィリピン「中国無人機,領空侵犯なら撃墜も」:対艦番長
また,イランも一説にはコンピューターウイルスを仕込んだサイバー攻撃によるものとも言われていますが,アフガンで偵察中のRQ-170センチネル無人偵察機がイラン領空を侵犯したのでこれを撃墜,捕獲したとの政府発表がありました.
イラン軍,米無人機を撃墜 東部国境の上空で:共同通信
我が国では空自はフライトプランにない外国軍用機の領空侵犯に対する対処として,レーダーサイトやスクランブルで飛翔した戦闘機のパイロットが口頭で英語と国籍機を警告,それでも退去しなければ警告射撃と行っています.
撃墜出来るのは僚機やスクランブル対処の艦艇,そして国土を攻撃された場合には武器の使用,つまり撃墜出来るという事になります.
領空侵犯 - Wikipedia
再三の警告や警告射撃だけに留めている理由として,空自は他国空軍同様,「空の警察」という意味合いもあり,警察と同様の対処をしなければならないという事情があるからによります.
しかし数多久遠先生のお話によれば,内訓でも撃墜が出来る可能性が高い事を指摘されています.
尖閣上空への無人機による領空侵犯対処:数多久遠のブログ
当時はソ連防空軍による大韓航空機撃墜事件もあって,領空侵犯機に対する対処はかなり慎重になっていました.
1987年の対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件では,初の曳光弾と実弾による信号射撃が行われましたが,その時は中距離核戦力全廃条約が締結されたばかりとあり,空自も防衛庁もかなり慎重な対処を行いました.
しかし現代の領空侵犯対処では無人機に対しては,内訓や部隊行動基準は変更されている可能性はあります.
また,これ等の国際情勢を考えると,領空侵犯するUAVについては撃墜は可能という可能性は高いとみていいでしょう.
UAVについては我が国の航空法では航空機と認定されているものの,国際法上におけるUAVの法的地位は固まっていないというのが実情だからこそ撃墜されても問題はないという結論に達してしまうのでしょう.
無人機の法的地位:海上自衛隊幹部学校
ただ,この論理なら,我が国の空自や海自のTACOMも中国空軍(または海軍航空隊)やロシアの空軍(または海軍航空隊)の戦闘機に撃墜されても文句は言えないでしょう.
なるべくなら自衛隊を含めた各国軍隊にこうした事を防ぐために,UAVの国際法上における法的地位を定めるべきだと思いますが・・・.
ねらっずーり in mixi, 2013年05月04日
青文字:加筆改修部分
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