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「VOR」◆(2013/04/17) MOX燃料の日本への供給が再開
「愛・蔵太のもう少し調べて書きたい日記」◆(2011/05/26) 出所不明の「もんじゅ被害エリア想定マップ」に引っかかるぐらいならネットやめたほうがいい
「日刊 アジアのエネルギー最前線」(2013/10/01)◆ もんじゅ機器点検 ようやく全て終了 再発防止誓う原子力機構 福井|MSN産経ニュース
「ライブドア・ニュース」◆(2011/07/03)日本の原発の本当にヤバい問題 −ためこまれる使用済み核燃料
【質問】
プルサーマルって何?
【回答】
使用済燃料から,再処理によって分離されたプルトニウム239をウランと混ぜて,混合酸化物燃料「MOX(モックス)燃料」に加工し,原子力発電所の軽水炉(サーマル・リアクター)で使用すること.
軽水炉で使用されるウラン燃料とMOX燃料には,燃料物性と核特性に違いがあるが,プルトニウム含有率の異なる燃料棒を適切に配置することにより,ウラン燃料のみの場合と同じような十分な安全余裕を持った炉心構成を設計することができる――とされている.
プルトニウム239が含有されていることから,やたらと不安感を煽るような言動が,政治家にさえ見られるが,通常のウラン燃料(ウラン235を3%含有)での「燃焼」でも,中性子がウラン238に吸収されることにより,約1.8%がプルトニウム239に変成して,ウランと一緒に「燃焼」している.
(そもそも,だからこそ「燃え残り」のプルトニウムを再処理によって集めるんだが…
モックスガーの人は,どこからプルトニウムが出てきたと思っているんだろう?)
このため,現在でも軽水炉1基で発電される電気の,およそ3分の1はプルトニウム239によるものとなっている.
やたらと「プルサーマルだー!」「MOXだー!」と声高に叫んでいるような連中は,単なる煽り厨房だと考えていいだろう.
【参考ページ】
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-08-04-02
http://www.tepco.co.jp/nuclear/atomic-guide/agver2/setumei5/5-04-j.html
http://www.atomin.go.jp/atomin/high_sch/reference/atomic/plutonium_science/index_07.html
『知ってナットク原子力』(宅間正夫&藤森礼一郎著,日本電気協会,2005.5.25),p.106-117
atm110327b.jpg
http://www.atomin.go.jp/atomin/high_sch/reference/atomic/plutonium_science/index_07.htmlより引用
【ぐんじさんぎょう】,2011/03/22 09:10
を加筆改修
▼> やたらと「プルサーマルだー!」「MOXだー!」と
>声高に叫んでいるような連中は,
>単なる煽り厨房だと考えていいだろう.
これまでにも,以下のような実例がある.
-----------------------------------------
関西電力が高浜原子力発電所4号機でウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を燃やす計画について,1999年,栗田幸雄・福井県知事が了解した.
このニュースを伝えた大阪の各新聞が,その一例である.
朝日新聞6月17日付夕刊一面の見出しは,
「福井県,受け入れ表明」
だが,10面の解説記事は,
「安全性に疑問の声」
「反対派議論した跡なし=v
同じ日の毎日新聞は,一面記事の脇見出しで,
「安全性,経済性に疑問も」.
解説には
「安全性議論置き去り」
「信頼回復欠く始動」
の見出しがついていた.
この両紙を見ると,福井県知事がOKして,いよいよプルサーマルが始まるが,安全性は論議されていないな,危険なんだな,なぜ知事は了解したのだろうか,と思うに違いない.
では,安全性は議論されなかったのだろうか.
とんでもない.
ちゃんとやっている.
安全論議無しでプルサーマルを実施したら,原子力行政は尻抜けである.
原子力安全委員会の原子炉安全基準専門部会MOX燃料検討小委員会は1995年3月,
「発電用軽水型原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料について」
という,MOXの安全性を検討した報告書を発表している.
その一部を抜書きする.
「代表的な炉心における設計例の検討の結果から,MOX燃料集合体の装荷率が3分の1程度であれば,ウラン燃料炉心と同等の特性を有する炉心設計は,可能と考えられる」
「MOX燃料を装荷した場合も,ウラン燃料炉心と,基本的なプラント設計等の変更がなく,軽水炉としての特徴は変わらないことから,その安全評価についても,ウラン燃料炉心と変わるところはなく,『安全評価審査指針』に示されるものを,ウラン燃料炉心と同様に適用することは妥当と判断する」
毎日新聞6月17日付夕刊の解説署名記事は,
「十分に安全論議を尽くさないまま,プルサーマルが始動する.
国は原子力の信用回復という,最も大切な視点を書いている」
と書いた.
この記者と朝日の記者は,報告書を読んだのか.
読んだだけでは納得できないなら,小委員会で検討した専門家に聞けばよい.
聞いた上で疑問を感じたら,具体的に書けばよい.
自分の不勉強を棚に上げ,「安全性議論置き去り」「信頼回復欠く始動」と書くのは,自分自身のことではあるまいか.
「国の報告書でさえ,MOX燃料はウラン燃料に比べて,制御棒の能力が低下することを指摘している」
と毎日は書いているが,前記の報告書は,それでも大丈夫だと明記している.
この記者は報告書を読んだのだろうか.
毎日新聞は,「住民へ説明無し」と書いているが,専門家たちはプルサーマルを実施する予定の原子力発電所所在地に出かけて,説明会を催している.
それも一度や二度ではない.
読売,産経,日経,福井の各新聞は,6月17日付夕刊で,この問題を取り上げ,公正に書いていた.
-----------------------------------------『原子力と報道』(中村政雄著,中央公論新社,2004.11),p.89-91
2011.6.25
扱いが大きい記事になると,記者自身が考えた見出しじゃないことも…
新聞の見出しどうやって決まる? ダジャレに激怒する記者も
記者が記事を書く…サブ見出しも決める
→デスクが原稿に手を入れる…サブ見出しも変わる可能性がある
→編集部署(整理部)へと記事が回る
→扱いの大きさを決める
→記事内容とサブ見出しから大見出しを決める
→記者やデスクの予想の斜め上を行く大見出しが付くこともある
で,mixiの場合,ニュース欄に出す記事タイトルはmixi側で考えるので,何じゃこりゃーというくらい,タイトルと内容が乖離していることもある(笑)
つまり,実は記事内容が,淡々と事実だけを伝えてるだけの時もあるんですよね.
記者やデスクの政治性が出てないとき.
ところが,そういうものでも,整理部で扱いを大きくした時に,内容を差し戻して…みたいなことにならないこともあり,整理の方で,インパクトだけはある大見出しを躍らせちゃうこともあるわけ.
で,例えば,ただ「委員会は何回,何月何日に開かれ,検討議題は何々で……」としか書いてない記事でも,「委員会で安全性議論されず!!」みたいな大見出しになっていることもあるんですね.
記事を読むと,ちょっと違和感がある.
でも,実際,記事内容をうんと細かく突っ込む人は少ない.
見出しのイメージだけで,「けしからん」と語る輩も多い.
まして,政治的なバイアスのかかった読者は…….
ソフトヒッター99 in mixi,2011年06月23日 05:57
▲
【質問】
原子炉の中で,どのようにしてプルトニウム239ができるのですか?
【回答】
原子炉内でウラン235に中性子をぶつけると,核分裂反応を起こし,その際に膨大なエネルギーと,中性子2〜3個とを放出する.
放出された中性子のうち,1個ないし2個は,次のウラン235にぶつかり,核分裂する.
そしてもう1個の中性子は,ウラン238(陽子92+中性子146)に吸収される.
ウラン238は,中性子1個を吸収すると,まずウラン239(陽子92+中性子147)となる.
このウラン239の原子核は不安定で,ベータ崩壊し(中性子1個が陽子1個に変わり),原子番号が1つ大きくなって,ネプツニウム239(陽子93+中性子
146)になる.
このネプツニウム239もまた不安定で,再びベータ崩壊し,プルトニウム239(陽子94+中性子145)となる.
【参考ページ】
http://www.atomin.go.jp/atomin/high_sch/reference/atomic/plutonium_science/index_07.html
http://www.tepco.co.jp/nuclear/atomic-guide/agver2/setumei5/5-04-j.html
『知ってナットク原子力』(宅間正夫&藤森礼一郎著,日本電気協会,2005.5.25),p.108
atm110327.jpg
http://www.tepco.co.jp/nuclear/atomic-guide/agver2/setumei5/5-04-j.htmlより引用
【ぐんじさんぎょう】,2011/03/27 20:40
を加筆改修
【質問】
ベータ崩壊って何?
【回答】
ベータ崩壊,またはベータ壊変とは,
1) 親核種から電子(β−)が放出されること
2) 陽電子(β+)が放出されること
3) 親核種に核外の軌道電子が捕獲されること(軌道電子捕獲)
4) ビデオ業界において,ベータ規格がVHSに駆逐され,ベータ機器メーカーが崩壊した故事
を指す(一部ウソ)
β壊変エネルギーQは,電子とニュートリノの運動エネルギーの和
Q = Ee + Eν
であり,EeとEνは,それぞれ独立には定まらない(つまり上限がある)
天然ウランの99.3%を占めるウラン238の場合,中性子が当たるとウラン239を生成するが,間もなくβ線を出してネプツニウム239に変わり,次いでプルトニウム239に変わる.
238U +n→ 239U+e→239Np+e→239Pu+e
【参考ページ】
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=08-01-01-06
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=04-09-01-01
atm110331.gif
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=08-01-01-06より引用
atm110331b.gif
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=04-09-01-01より引用
【ぐんじさんぎょう】,2011/04/01 20:20
を加筆改修
5) 高町なのはさんに,ヴィータがデレていく様を指す.
6) 「あたし,もうダメ!」「いいえ,あなたは悪くないわ」というシチュを期待して,演技するナンチャッテ崩壊のことをベタ崩壊と呼び,学会では厳密に区分されており,間違えると指導教官にベチコンを食らうので注意が必要.
ゆずこせう in mixi,2011年03月31日 01:22
アルファがベータをカッパらったらイプシロンした.
なぜだろう?
藤子F先生は天才だと思います.
満秋楓 in mixi,2011年03月31日 08:02
【質問】
日本における,核燃料リサイクルの始まりは?
【回答】
日本では原子力利用のスタート時点ですでに,エネルギー資源に乏しいことにかんがみ,原子力発電所から発生する使用済燃料を再処理し,回収されたウランおよびプルトニウムを有効利用する,核燃料サイクルの確立を図ることを基本的考え方としていた.
1955年代(昭和30年代)の「原子力開発利用長期計画」は,基礎的研究と中間試験は原研が,パイロット規模(処理量200kg−500kgU/日)のプラントは原子燃料公社(原燃公社)に分担させるということを方針としていた.
1971年に動燃事業団の東海再処理工場が認可され,977年9月,同施設において,日本原子力研究所(現,日本原子力研究開発機構)動力試験炉(JPDR)の使用済燃料を用いて,最初の運転を開始した.
この間,「日米原子力協定」の規定により,アメリカの合意を得るべく,ウラン濃縮について日米間で協議がもたれたが,それはまた別の話.
【参考ページ】
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=16-03-04-03
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=04-07-03-06
『知ってナットク原子力』(宅間正夫&藤森礼一郎著,日本電気協会新聞部,2005.2.25),p.71-72
【ぐんじさんぎょう】,2011/06/04 20:40
を加筆改修
【質問】
日本独自のウラン再処理に関する,日米間交渉はどんなものだったのか?
【回答】
「日米原子力協定」では,米国産及び米国で濃縮されたウランの再処理については協議事項になっている.
そこで,「ホット試験」――使用済み燃料を用いる作動試験.未照射ウラン燃料を用いるのは,「コールド試験」と呼ばれる――の開始に当たって,日米政府間で交渉が持たれた.
ところが1974年5月のインドの核爆発実験実施等により,米国が核不拡散政策を国内外に強力に推進した時期だったため,交渉は難航.
核不拡散に対して強硬な姿勢をとる米国政府と,平和利用政策を全面に押す日本との間で,首脳レベルの交渉,専門家による日米合同調査など,再三の交渉が重ねられた.
結果,保障措置の有効性を高める研究開発,及びウラン・プルトニウムの「混合処理法(Co−process
and Co−conversion)」の実施によって,プルトニウム転換施設の建設延期を条件に,向こう2年間に99トン・ウランまでの処理を認める,「再処理工場運転に関する日米共同決定」という形で,1977年9月に両国は合意.
合意後直ちに,原研(現日本原子力研究開発機構)の動力試験炉(JPDR)の使用済燃料を用い,ホット試験が開始された.
宅間正夫によれば,
「エンド・ユーザーである電力会社が自分の手で再処理するという,民間主体の考え方」
が決め手となった模様.
その後,期間・数量が変更になり,実質的に無制限となった.
プルトニウム転換施設も,1980年に混合転換法の採用が,日米間で合意された.
民間利用のための再処理でさえ,このようなハードな交渉になるのだから,核兵器製造はおろか,原潜燃料のための再処理すら,交渉が妥結するかどうか非常に怪しい.
【参考ページ】
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=13-04-02-01
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=04-07-03-06
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/wp1979/sb2050201.htm
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=16-03-04-03
『知ってナットク原子力』(宅間正夫&藤森礼一郎著,日本電気協会新聞部,2005.2.25),p.72-73
【ぐんじさんぎょう】,2011/06/06 20:30
を加筆改修
【質問】
「もんじゅ」が運転再開したそうですが?
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もんじゅ:炉心確認試験,5時間遅れで終了
毎日 サイエンス 05/08取得 元記事
14年5カ月ぶりに運転を再開した高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市,28万キロワット)で,初日の6日午前10時36分から始まった炉心確認試験が予定より約5時間遅れ,7日午前3時48分に終了した.
炉心の反応度が予想より高く,制御棒の微調整が求められたためで,日本原子力研究開発機構(原子力機構)は「安全性に影響はない」としている.
原子力機構によると,19本の制御棒のうち18本をほぼすべて引き抜き,最後の1本を調整しながら,核分裂反応が連続して起こる「臨界」の位置を確認していた.
しかし,反応が進みすぎるなどして,83センチ引き抜いた12本を約3.5センチ戻したという.
炉心にある燃料198体のうち新しいのは6体で,残りは95年のナトリウム漏れ事故以前の製造.
原子力機構は燃料の劣化で,制御棒をかなり引き抜かなければ臨界に達しないとみていたが,「思った以上に反応がよかった」としている.
〔略〕
【酒造唯】
毎日新聞 2010年5月7日 11時36分(最終更新 5月7日 11時47分)
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【回答】
「極めて貴重なデータ,可能な限り公開して徹底解析を!」
と言うことで.原子炉物理学が専門の私個人としては極めて興味深く,最大限重視しているところです.
私個人の知り合いの中では,このもんじゅの解析作業に尽力されている方がいらっしゃいます.
かなりの長丁場になるこれら臨界近接試験ですが,同型炉がほとんど存在しないもんじゅの実データは極めて貴重.
ましてや長期停止後,Pu-241の崩壊などの影響を大きく受けたFBR炉心というのは,世界でももんじゅでしか有りませんので,世界唯一のデータと言って良く,世界的にも極めて貴重であることが指摘できます.
もちろん,種々の問題・事情によって,全てのデータや設計情報等を明らかにすることは難しいのですが,ある程度の守秘義務契約締結により機微情報を保護した上で,広く研究者に公開し,従前の予測値とのずれの原因を徹底的に議論する必要があります.
これはFBRにおける原子炉物理学の知見を,拡充・充実させるのには必須の事項.
場合によっては解析コードの誤りや不適切な取り扱い,核反応断面積などの核データの修正など,それらから得られる情報は研究次第によって無限大に拡がり,将来のためにも今ここで踏ん張って,徹底的な問題点・課題の洗い出しを行うことが必須です.
現存で大規模Pu炉心としては世界唯一と言って良い,その存在意義を最大限有効に活かすべきであり,種々のデータを提供し,問題点・課題を一つずつでも確実につぶしていくことが必須の事項と愚考します.
そのためには,私個人支援を惜しまないところですし,懇意にさせていただいいている先生方も注目しているところです.
どうか安全安心の確保を絶対条件に,慎重にでも確実に対処して欲しいところ.
皆さんは如何お考えでしょうか.
へぼ担当 in mixi,2010年05月09日16:07
【珍説】
もんじゅ驚愕の運転再開,制御棒の操作知らず(by
団藤保晴)
http://blog.dandoweb.com/?eid=95460
【事実】
その論説があまりに酷いため,たまらず最低限の書き込み(投稿)を実施.
ことは専門的で難しい側面がありますが,もんじゅでのトラブルをこれ幸いと,団藤保晴氏は嬉々として批判しています.
しかし,その実際は表面上批判しやすい部分をなぞった物.その本質は,原子力の安全性確保の絶対原則とは真っ向反する,非常に危険な考え方を流布しているもので,到底見過ごすことが出来ません.
以前のTWRの時のように,団藤保晴氏は批判を受けると,それに正面から答えようとせず,自らがMLにて配信する過去のblogバックナンバーからもその部分だけ削除するなどの手段をとる人物ですが,本件についてどうとらえるのか,注視したいと考えます.
以下,投稿文
----
> 「そのような操作方法が手順書に明記されていなかったため,微調整棒に異常が起きたと考え,挿入作業を中止したという」
相変わらず酷い論説ですね.
【追補】で上記を補ったからと言って,当初の団藤氏の言説の誤りが修正された訳ではありません.
確かにこの事象については,手順書にその旨の記載がなかったこと.及びシミュレーターでそこまでの模擬がなされていなかったことが原因です.
しかし,団藤氏の論説に従えば
「仮に何らかの異常があり,シミュレーターや手順書通りの動作とならなくとも,そのまま当初の意図の通り操作すべきだ!」
ということになります.
これは僅かでも異常と感じたら立ち止まり,原因を追及してから再開する,という原子力の安全性確保に対する大原則に真っ向対立する,非常に危険かつ愚劣な考え方となります.
ましてや,対象物が制御棒という重要機器であれば,例え運転操作が中断したとしても,原因を究明しようとした運転員の判断は全く正しく,それを叩く態度は異常としか言いようがありません.
単純に記載漏れやシミュレータの問題という叩きやすい事象にとらわれ,安全性確保には一体どのような姿勢で臨むべきか.
その点を全く顧みず,このblogで表面だけを叩き,安全性確保の根幹を骨抜きにする態度は,厳しく批判されてしかるべきと愚考します.
へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi別館」
2010年05月16日 02:25
青文字:加筆改修部分
報道等で喧伝される不具合ですが,それら不具合は意図して起こしている物ではなく,地道な改良やトラブルシューティングが必要でも,現在までの所,それを持って運転を停止しなければならない重大な不具合は発生していないと考えています.
ただ,もんじゅの今までの停止経緯を考えれば,そのような「不具合が有れば直せばよい」レベルの些末なトラブルであっても,遅滞なく完全に公表されることが要求されています.
これは極めて困難で,多大な手間がかかるところ.そう言う私自身も同様の仕事をしていますが,いちいち発生の都度公表していたら,とぞっとするところもあります.
しかし,非常に大きな手間ではありますが,愚直にそれを継続的に行うことこそ,信頼獲得のための近道と確信しています.
個人的な懸念事項は,そのような公表体制には極めて大きな負荷が掛かります.
それを安定的に,持続的に行うためには,マンパワーの投入を惜しむことなく最大限に行い,それら関係部署に掛かる個人負担を出来る限り軽減させ,間違っても過労で戦線離脱する方が出ないようにすること.
トラブル自体の徹底究明,潰し込みと共に,それらの手厚い施策が透明性を高め,安全・安心・信頼を確保するための絶対条件と愚考します,
へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi別館」
2010年05月09日 17:06
青文字:加筆改修部分
【珍説】
もんじゅ報道,マスコミまで旧動燃品質!(by
団藤保晴)
http://blog.dandoweb.com/?eid=95754
【事実】
根本的な部分で定量的評価はおろか,定性的にも全く正当化できないため,論説が形をなしていない状況です.
まあ,blog等で様々な論評をする分について,私個人はそれを止めるつもりはありませんが,この程度の理解で原子力を分かったつもりになって,でたらめな高説を垂れ流すのは害悪以外の何物でも無し.
同じ勢いで新聞記事を書いているとすれば,その無責任・悪質な体質に背筋が寒くなる思いです.
以下,投稿文
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> 運転操作の根幹である制御棒操作が実機と同じに出来ないなら,異常時に秒を争って原子炉を止めることが経験できないではありませんか.
団藤氏が原子力技術を素人同然の理解で論じていることは,前回のTWRの件
http://blog.dandoweb.com/?eid=91592
でも指摘したところですが,今回も全く持って定性的な理解ですら出来ていないことは明白です.
今回問題となった部分は
http://blog.dandoweb.com/?eid=95460
にあるように
「もんじゅは,出力を下げるために制御棒を最下部まで挿入する際,残り6ミリ・メートルからはボタンを小刻みに押し,慎重に下ろす手順を定めている.ところが,操作ミスのあった微調整棒は,残り3ミリ・メートルになると挿入速度が他の制御棒の4分の1に落ちる.したがって,運転員はふつう,ボタンを余計に押し続けて挿入を完了する」
と全挿入位置まで残りわずか6mmのところ.
制御棒のフルストローク(全移動量)がm単位のところ,残り6mmであれば,単純計算でも効き目の1%以下の世界.実際の制御棒の働きを考慮すれば,ほぼ無意味(全挿入位置と原子炉の挙動上ではほとんど差がない)の世界です.
もちろん原子炉安全を担保するには制御棒の全挿入は大変重要なものです.
しかし,一般に原子力発電所の安全解析の世界では,制御棒のフルストロークの90%挿入まで何秒かかるか(もっと少ない例もあり),という単位で解析が行われています.
そのため,今回のわずか1%にも満たない状況では,原子炉の安全上形式的な意味以上のものはない,と評価することが出来ます.
よって,団藤氏の上記論説は定量的にはほとんど意味のない指摘であり,定性的にも存在しない危険をあおり立てる無責任な論説といえます.
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----
追記です.
「残り6mm」とは他の制御棒の場合であって,今回問題となった「微調整棒」の場合「残り3mm」の世界になります.
上記の書き込みでは厳しく見積もるためにより長い「残り6mm」の値で簡単な評価を行いましたが,「微調整棒」では「残り3mm」と半分になりますので,その影響も半分以下となります.
また,緊急の場合は速やかに原子炉を停止するために全ての制御棒を全挿入する必要があります.
しかし,「残り6mm」等と言った時点で,途中その速度を緩和させることが許されるのは,そこまで制御棒を挿入すれば,核分裂連鎖反応は十分止めることが出来るためです.
よって最後の最後まで勢いを付けて,制御棒を全挿入位置にまで無理矢理に叩き付ける必要がない訳です.
以上より,このような設計がなされていて,なおかつ,通常操作の過程において,そこで異常と誤認し操作を中断,調査をしたとしても,実質的に原子力安全上の問題はなかったと評価できます.
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へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi別館」,2010年05月16日
青文字:加筆改修部分
【質問】
世界各国の高速増殖炉の状況は?
「世界は高速増殖炉に見切りをつけた」
http://www.geocities.jp/tobosaku/kouza/fbr3.html
というのは本当ですか?
【回答】
上記サイトでは,「見切りを付けた」国のみを紹介して,そうでない国を無視しているというミスリードを行っており,その点で信頼性に非常に疑問がある.
ATOMICAから,主要国の状況を以下に引用してみたい.
――――――
●USA
現状では撤退の止むなきに至り,運転を継続していたEBR−2とFFTFも閉鎖することになった.
2000年に次世代原子炉計画を世界に働きかけ,現在その計画に沿って,新たなガス冷却高速炉と鉛冷却高速炉のR&Dが始まった.
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=03-01-05-04
――――――
――――――
●ロシア
BN-600は1985年から1995年の間に96件の事故が発生し,原子炉を停止した.そのうち27件がナトリウム漏えい事故であった.
また,このうちの5件は放射性ナトリウム漏えい事故であった.
1982年から2009年の28年間での平均設備利用率は,73.5%であった(参考文献7).
チェルノブイリ事故やソ連崩壊の影響もあまり受けず,特に今世紀に入り2001年以降は,80%近い稼働率を達成している.
年間2回,燃料交換のため停止していることを考慮すると,優秀な成績と言える.
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=03-01-05-13
――――――
――――――
●英国
高速原型炉(PFR)は1966年に建設が開始され1974年に臨界に達し,1994年に運転を終了するまで商用発電,酸化物燃料(MOX),ナトリウム冷却,燃料サイクルの完結(リサイクル)などの技術開発に成功した.
その後,商用実証炉(CDFR)の開発に進む予定であったが,経済的な理由などからこれを取止め,欧州5ケ国の欧州高速炉(EFR)計画に参加した.
この計画は,1988−1993年の概念設計を終えた段階で,社会・経済的な理由から終了した.
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=03-01-05-06
――――――
――――――
●フランス
フランスは,欧州連合の次期大型炉EFR概念設計の中心的役割を果していた.
しかし,高速増殖炉は軽水炉に比して高いことから,1998年SPX−1の閉鎖を決め,またこれに伴ってEFRの計画も中止となった.
2000年に米国主動の第四世代原子炉計画に参画し,今までの豊富なナトリウム冷却高速増殖炉の経験を武器に,積極的な役割を果たしている.
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=03-01-05-05
――――――
――――――
●イタリア
2001年,21世紀の世界の経済発展と人口増加による電力需要増大に対応するため,経済性,安全性,核兵器拡散抵抗性などに優れた第4世代原子炉システム(GEN-IV)の開発が提案され,それを推進する国際的な枠組み,第4世代国際フォーラム(GIF:Generation IV International Forum)が結成された.
GIFでは,2030年以降に導入可能なものとして6システムが選ばれ,そのうち3システムは次に示す高速炉である.
(1)ガス冷却高速炉(GFR),
(2)鉛冷却高速炉(LFR),
(3)ナトリウム冷却高速炉(SFR).
2001−08年のイタリアは脱原子力政策のためGIFに加盟していないが,ユーラトム(EURATOM)では鉛冷却高速炉ELSYの研究開発に加わっている.
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=03-01-05-10
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●インド
インドは,国内に豊富にあるトリウムおよびウラン資源を利用して,自前のエネルギー源の確保を長期目標とし,2020年には20000MWeまで設備投資を計画している.
第1段階ではウラン燃料を国産化してそれを使う天然ウラン重水炉を建設し,発電とプルトニウム生産を図る.
第2段階では得られたプルトニウムを使う高速増殖炉を建設する.
発電とプルトニウム生産を行うとともに,国産トリウムを照射し,再処理して新燃料物質ウラン−233を生産(現在の段階)する.
最終段階はウラン−233を使う増殖炉(新型重水炉(AHWR)あるいは加速器駆動システム(ADS))を建設し,発電とウラン−233生産を進め,トリウム・サイクルを確立する予定である.
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=14-02-11-02
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●中国
中国の高速増殖炉の開発は,中国の国家科学技術委員会が管理する高技術研究発展計画の中のエネルギー技術分野の課題の一つとして1987年に組み込まれて,北京から40km離れている原子能科学研究院高速炉研究センターで進められている.
1988年に高速実験炉CEFR(熱出力65MW,電気出力20MW,タンク型;表1,図1および図2)の設計研究を開始,1990年から1993年12月まで概念設計,1995年2月から1997年8月までロシアの協力を得て予備設計を終え,1997年から独自に詳細設計を進めている.
2000年5月に許可がおりて建設が開始した.
2002年8月の時点で原子炉建家の約40,000m2のフロアが完成した.2007年中の初臨界を予定している.
中国は高速炉にプルトニウム燃焼炉の役割をまず与え,増殖炉としての実証は長期的観点で考えている.
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=03-01-05-12
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総論として,エネルギー資源調達のあてが他にある国ほど不熱心であり,エネルギー獲得に血眼になっている国ほど熱心だと言える.
また,欧州については,財政上の問題も大きい.
例外は,エネルギー調達に不安のないロシアが,それにも関わらず熱心だという点だが,これは原潜の動力炉などでの,それまでの液体金属炉の経験の積み重ねがモノを言っているからだと愚考する.
質問者の紹介するサイトでは,「もんじゅ」開発に反対しているが,さて,日本はエネルギー資源の点では?
【ぐんじさんぎょう】,2011/05/13 21:42
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