c

「アジア別館」トップ・ページへ

「軍事板常見問題&良レス回収機構」准トップ・ページへ   サイト・マップへ

◆◆WMD
<◆中国FAQ
東亜FAQ目次


 【link】

「JB PRESS」◆(2009.8.17) 中国はなぜ核軍縮に冷淡なのか

「VOR」◆(2012/08/24)中国 海上配備の弾道ミサイルを実験

「VOR」◆(2012/08/24)米ミサイル防衛システム,中国脅威論に基づかぬと説明に奔走

「VOR」◆(2012/11/07)中国外務省 核拡散防止の原則を強調
「人民網」◇(2012/11/07)外交部:核兵器廃絶決議案への棄権について

「国際情報センター」◆(2010/1/15)中国によるミサイル防衛実験の成功
「週刊オブイェクト」◆中国のミサイル防衛実験は大気圏外で行われた模様

「週刊オブイェクト」◆(2010年04月18日)ロシアと中国が推進するミサイル防衛システム

「人民網」◆(2010/07/01)初公開!中国戦略ミサイル部隊の貴重な写真

「人民網」◇(2012/12/20)中国 核,生物,化学災害防護実験室が設立

「ワレYouTube発見セリ」:THE "596": CHINA'S FIRST ATOMIC BOMB
>…狂ってる

「ワレYouTube発見セリ」:THE FIRST CHINESE HYDROGEN BOMB


 【質問】
 中国の核戦略はどのようなものか?

 【回答】
村井友秀等編 『中国をめぐる安全保障 (MINERVA人文・社会科学叢書 127)』(2007年,ミネルヴァ書房)
の「第2砲兵部隊と核ミサイル戦力」(阿部純一)を参照すると,中国の核戦略は「最小限抑止」が基本であり,核の先制使用は行わないことを宣言している.
 これは,実際の第二砲兵での核兵器の運用(核弾頭をミサイルと分離して保管するなど,即応性を犠牲にした運用),核兵器の配備数の少なさからも裏付けられるとしている.

 仮定の話として,命中精度の高い核ミサイルを多数配備するような状況になれば,限定的核抑止戦略に移行するとの可能性も提示しているが,現実には核戦力の世代交代による近代化は,まだ当分先の事であろうとしている.

 中国海軍の潜水艦の保有数は,こちらを参照されたし.
http://www.sinodefence.com/navy/vessel.asp

戦略原潜…092(Xia)型×1,094(Jin)型×2=合計3
攻撃原潜…091(Han)型×3,093(Shang)型×2=合計5

通常動力潜
039A/B(Yuan)型…4
636/877(キロ)型…12
039/039G/039G1(Song)型…16
035(Ming)型…18
033(ロメオ)型…8
------------------------------
合計58→原潜と足すと66隻

 このうち,ロメオ型とその改良型である035(Ming)型は,現代戦に対応する能力は限定的であるので,これを除く40隻が一応,近代的潜水艦戦力と考えてよい隻数になる.

2009/09/04(金)~09/05(土)
青文字:加筆改修部分

 また,
"China’s Nuclear Warhead Storage and Handling System"
Mark A. Stokes
March 12, 2010
http://project2049.net/documents/chinas_nuclear_warhead_storage_and_handling_system.pdf
という報告書には,次のようなことが書かれている.

1.支那軍のミサイル発射基地は瀋陽,洛陽,黄山,西寧,懐化,昆明の6か所にある.
 平時から各基地にごく少数の核弾頭をおいているが,普段でも「22基地」から同基地を囲む形に位置する先の6つの基地へ,追加の弾頭を一般の鉄道や高速道路で頻繁に移動させている.
 中共は戦時でも核兵器を先には使わないという「核先制不使用」の方針を打ち出しているため,核攻撃を受けてもなお報復できる核戦力を保持するには,防御の弱いミサイル発射基地の核弾頭保管を,最小限にしておく必要があるとしている.

おきらく軍事研究会,平成23年(2011年)5月16日(月)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 大量破壊兵器拡散に中国が関与しているというのは本当か?

 【回答】
 少なくとも,CIAはそのように報告している.
 ただし,何を根拠にしているかは,報道だけでは不明.

 なお,中国はNPT加盟前にも,イランに六フッ化ウランを売却している.

 以下引用.

大量破壊兵器,主要供給者は中国CIAが断定

 【ワシントン=古森義久】世界の大量破壊兵器類の拡散に関し,米中央情報局(CIA)の報告書が,中国は大量破壊兵器の「主要な供給者」でイラン,北朝鮮,リビアなどに弾道ミサイルや化学兵器類を売却したと,断定していることが明らかとなった.
 CIAが米国議会に毎年送る大量破壊兵器類の国際的な拡散に関する年次報告書は,十六日までに概要が公表された.同報告書は,弾道ミサイルや高度の通常兵器をも含む大量破壊兵器類が,独裁体制や国家テロ実施,軍事偏重など「懸念の対象となる国家」に調達された実態に最大の焦点をしぼっている.「懸念国家」としてはイラン,リビア,北朝鮮,シリアの各国が列記されている.
 同報告書はこれら「懸念国家」に大量破壊兵器類を売却,提供した「主要な供給者」としてまず第一に中国をあげ,二〇〇四年一年間に,中国が
(1)パキスタンの弾道ミサイル開発のプロジェクトへの支援を続け,固体燃料推進の短距離弾道ミサイルの自国内生産を達成させ,固体燃料推進の中距離弾道ミサイルの開発を推進させた
(2)イランの弾道ミサイル国内生産の努力を支援した
(3)リビアと北朝鮮に弾道ミサイル関連資材や技術を供与した
(4)イランに対し化学兵器生産関連の機材と技術の供与を継続した
-などと記している.
 さらに,大量破壊兵器の範疇(はんちゅう)には入らないが,「高度の通常兵器」の拡散として,〇四年中に中国が
(1)パキスタンにフリゲート艦四隻を売却する交渉を終えた
(2)パキスタンとの戦闘機JF17の共同生産プロジェクトへの支援を続けた
(3)イランによるC802対艦ミサイルの自国生産を実現させた
-ことなどを列記して,米国議会に伝えた.

産経朝刊 2006年05月18日03:43

イラン核問題ウラン濃縮原料は中国製か

 【ロンドン=蔭山実】イランの核問題で濃縮ウランの製造に中国製の良質の原料が使用され,濃縮技術の確立を早めている可能性が浮上している.BBCテレビが18日,欧米外交筋の話として伝えた.
 イランが独自に作った原料は不純物が多いとみられ,その問題を解決するためにかつて購入した中国製の原料を使っているという.
 ウラン濃縮は原料の六フッ化ウランという気体を遠心分離器にかけて行う.
 六フッ化ウランはウラン鉱などから転換されて作られるが,BBCテレビによると,イランは独自に転換作業を進める一方で,1991年に中国から輸入した六フッ化ウランを保有している.
 当時は中国が核拡散防止条約(NPT)に加盟する前で,規制を受けることなくイランに輸出された.
 ただ,中国は数年後,国際原子力機関(IAEA)にイランに六フッ化ウランを売却したことを報告し,イランの核開発の解明を進める上でも役立ったとされる.
 〔略〕

――――――産経新聞 2006/05/19/10:08

 【質問】
 よく見る社会党だかの人による,「中国の核は綺麗な核」という引用って,誰がいつ言ったかってハッキリしてるのかな?

 【回答】
 1960年代に,アメリカに続いてソ連が核実験を行ったとき,日本の反原爆団体はこれに反対しなかった.
 当然ツッコミが入るが,これに対して日本共産党系の連中が
「社会主義国の核は自衛のため」
という理屈で言い訳した.

>◆ 核兵器競争か軍縮か 渡辺誠毅 (朝日ジャーナル62年8月19日号)

>ソ連は純粋に防衛的目的のための「最小抑止戦略」をとっているのに反して,
>アメリカは純粋に先制攻撃のための「最大抑止先約」をとっていることが詳細にのべられている.
>とくにケネディ時代になってからアメリカは核戦争から残ることを目標とし,
>「一挙にソ連の核攻撃基地をノックアウトし,自らは返り血を浴びぬだけの核攻撃力,
>いいかえれば相手に数倍する大一撃能力」をもつための「対兵力戦略」
>あるいは「対戦略基地戦略」へ重大な転換をおこなったという.
>こうした極度に侵略的な戦略を完成しようとするアメリカの核実験にたいして,
>ソ連が防衛のための核実験をおこなうことは当然であり,
>世界大戦の勃発を阻止するための不可欠の措置にほかならない.

>平和愛好諸国家の防衛と局地戦の抑止.
>スエズ戦争,レバノン,ヨルダン出兵,キューバ侵略,ラオス内乱などにさいして,
>ソ連の軍事力が,世界人民の闘争と結びついて,
>植民地戦争あるいは干渉戦争の防止と早期消火に一定の役割を演じたことは周知のところである.

http://www.geocities.co.jp/WallStreet/7903/stalin/ussr/ueda.htm

 そのため社会党系の連中は,これに反発して分裂.
 その際に共産系の連中に対して
「ソ連の核は"きれいな核"かよ」
と揶揄したのが始まり.

 ところがその後中国も核実験を始めてしまい,今度は逆に社会党系反核団体の連中がこれに沈黙して,共産系の連中から
「中国の核はきれいな核なのかい?」
と逆襲されることになった.

軍事板,2009/06/23(火)
青文字:加筆改修部分


 【質問 kérdés】
 中国による,ロシアからS-400ミサイル防衛システム導入について教えてください.

 【回答 válasz】
 中国はロシアからS-400ミサイル防衛システムを導入する最初の国になりそうです.

China may be first buyer of Russian S-400 missile defense system|Politics|News|WantChinaTimes.com

 S-400はその前任のS-300をアップグレードした中距離地対空ミサイルで,射程は400km.
 そのレーダーの探知距離もい400kmと言われており,6つの目標同時処理能力を持つと言われています.
 また,将来は500~600kmまで探知距離が伸ばされる計画もあります.

 このS-400を以ってよく言われる台湾や尖閣まで探知して近づく日米の戦闘機を迎撃すると言われていますが,たった6つの目標同時処理能力ではあまり役に立たないような・・・.
 また,大陸側から台湾や尖閣にSAMを発射して戦闘機を追っ払うという戦術も効率が悪く,電子戦を仕掛けられたらどうにもならないでしょう.

 むしろ,巡航ミサイルや弾道ミサイルの迎撃用と見ていいかも知れません.
 中国もミサイル防衛に力を入れていますが,日本やアメリカとは違い,巡航ミサイル防衛についてはかなり遅れを取っています.
 これは日米のようにソ連軍の巡航ミサイルによる飽和攻撃に対処するという戦略とは無縁であった1980年代の戦略が,今も後を引いているという点があります.

 いずれにしても,中国も本格的に弾道ミサイル防衛や巡航ミサイル防衛に力を入れ始めたのは確かです.
 以前,中国本土を攻撃出来る弾道ミサイルや巡航ミサイルを導入すべきと言ってた人がいましたが,この事実をどうお考えになられているのですかね.

ねらっずーり in mixi, 2014年07月21日
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 人民解放軍第2砲兵とは?

 【回答】
 中国の核兵器開発・管理を担当する戦略軍で.
 発射手段(発射プラットフォームという)であるミサイルを有するため,戦術 面でもその機能を果たしている.
 1974年に中央軍事委員会(中国軍事の最高意思決定機関)隷下に入り,陸 軍,海軍,空軍に次ぐ4つめの軍種として誕生.

 現在,司令部は北京郊外の青河にあるといわれている.
 司令部は政治部,後勤部,装備部,参謀部からなっており,それぞれの長は少将が務めている.
 司令官は靖志遠上将(党中央委員,中央軍事委員会委員)で,隷下の実働部隊には師団級の6部隊がある.
 駐屯地と部隊番号は以下のとおり.

●遼寧省瀋陽(96101部隊),

 第1師団(第51基地) 遼寧省瀋陽に駐屯.
 隷下に3個ミサイル旅団があり,配備されているのはすべて中距離弾道ミサイ ル.
 旅団隷下の4個連隊の装備は, 3個ミサイル連隊はDF‐21(射程1800キロ),DF-3(射程300 0キロ)で,朝鮮半島,日本,沖縄が標的.
 残りの1個連隊はDF-21S(射程1500キロ)で,北朝鮮国境から北に 80キロほどの街・通化に集中して配備されている.
 配下にある部隊は,
・810ミサイル旅団(96113部隊)
・移動式ミサイル旅団(96117部隊)
・名前が不明の旅団(96111部隊)

●江西省黄山(96151部隊),

 第2師団(第52基地)
 江西省黄山市に駐屯する第2砲兵最重要の部隊.96151部隊と呼ばれる.
 隷下に2~3個ミサイル旅団があり,815旅団(楽平 配備ミサイル:DF -15[射程600km])はもっとも有名である.
 最新兵装備が配備されている.
 815旅団は戦時には福建省にある発射拠点に急行し,台湾全土を射程に入れ る.
 ミサイルを移動させるために,駐屯地から展開地点まで線路が使用される.
 【編成旅団】
 807ミサイル旅団(96161部隊)
 811ミサイル旅団(96163部隊)
 名前が不明の旅団(96164部隊)
 815ミサイル旅団(96165部隊)
 817ミサイル旅団(96167部隊)
 移動発射旅団(96169部隊)
 名前が不明の旅団(部隊名も不明)

●雲南省昆明 (96201部隊),

 第3師団(第53基地)
 雲南省昆明に駐屯し,96201部隊と呼ばれる.3個旅団で編成.
 1972年1月21日に,昆明の北約50キロにあるTienweiにSSM関連施 設があることが確認,昆明の南西約10キロのところにもミサイル複合施設が 確認された.
 96年には米偵察衛星が,昆明のミサイル実験施設で行なわれた大規模な「DF-3」発射実験をモニターした.
 98年初頭の作戦では,「DF-3」展開地域のひとつであった.
 隷下の1個旅団は楚雄(昆明の西約100キロ)にあり,装備は「DF-21s」.
 もうひとつは建水(昆明市南方)にある.
 いずれもインド・東南アジアなど複数の対象に照準をあわせている.

 【編成旅団】
 802ミサイル旅団(96211部隊)
 808ミサイル旅団(96213部隊)
 名前が不明の旅団(96215部隊)

●河南省洛陽(96251部隊),

 第4師団(第54基地) 河南省洛陽に駐屯し,96251部隊と呼ばれる.
 4個旅団,1個連隊で編成.
 隷下の1個旅団は射程12000キロのICBM(大陸間弾道弾)「DF-5」 を保有.米欧に照準をあわせている.
 【編成旅団】
 801ミサイル旅団(96261部隊)
 804ミサイル旅団(96263部隊)
 813ミサイル旅団(96265部隊)
 名前が不明の旅団(96275部隊)
 1個連隊(80744部隊)

●湖南省懐化(9630 1部隊),

 第5師団(第55基地)
 湖南省懐化に駐屯し,96301部隊と呼ばれる.
 3個旅団で編成.
 第4師団に続きICBM(大陸間弾道弾)が2番目に配備された部隊.
 隷下の2個旅団は懐化南方の「通道」近くに駐屯している.
 【編成旅団】
  803ミサイル旅団(96311部隊)
  805ミサイル旅団(96313部隊)
  名前が不明の旅団(96315部隊)

●青海省西寧(96351部隊)

 第6師団(第56基地)
 青海省西寧に駐屯し,96351部隊と呼ばれる.
 3個旅団で編成.
 1個実験連隊が大同周辺に集中して駐屯している.
 DF-21(CSS-5 射程1800キロ)が配備されており,旧ソ連各国, インドを射程に収めている.
 【編成旅団】
  809ミサイル旅団(96361部隊)
  812ミサイル旅団(96363部隊)
  名前が不明の旅団(不明)

 【参考文献】
 「中国の核・ミサイル・宇宙戦力」 茅原 郁生 蒼蒼社
 事典的価値を持つ内容.通読すると中国軍の目指す戦略方針が見えてくる.
 巻末にある情報源リストも優れている.

(PLAプロジェクトチーム from おきらく軍事研究会)


 【質問】
 中国の核戦力の現状は?

 【回答】
 米国防情報庁(DIA)によれば,現状は以下のようです.

大陸間弾道弾(ICBM):45基
潜水艦発射型弾道弾(SLBM):12基
短射程弾道ミサイル(SRBM):約100基

 なお,2020年までにICBMが220基,SLBMが44基,SRBMは約200基に増強予定.
 04年に「元」級潜水艦の存在を公表.南部の工場で製造中.
 潜水艦基地は,浙江省東海岸,海南島,楡林などにある.

 空軍では
湖北省 当陽空軍基地
 H-6戦略爆撃機
浙江省 建橋空軍基地
 強撃級50機,超音速攻撃機70機(いずれも核搭載可能)
などが確認されている.

 【参考】
「人民解放軍空軍の戦闘序列」

おきらく軍事研究会,平成18年(2006年)10月9日

▼ また,
"China’s Nuclear Warhead Storage and Handling System"
Mark A. Stokes
March 12, 2010
http://project2049.net/documents/chinas_nuclear_warhead_storage_and_handling_system.pdf
という報告書には,次のようなことが書かれている.

1.中共は計約450発(うち戦略核が約250発)と推定される核弾頭の大部分を,平時は中央部の秦嶺山脈の太白山を中心とする広大な地下基地に保管している.

1.この基地は「22基地」と呼ばれ,中共中央軍事委員会(主席:胡錦濤)の直接の指揮下にある.
 支那軍で戦略核ミサイルは「第二砲兵」の管轄だが,第二砲兵も「22基地」の指令に従う.
 同基地の核心は陝西省太白県に所在する.

1.支那軍のミサイル発射基地は瀋陽,洛陽,黄山,西寧,懐化,昆明の6か所にある.
 平時から各基地にごく少数の核弾頭をおいているが,普段でも「22基地」から同基地を囲む形に位置する先の6つの基地へ,追加の弾頭を一般の鉄道や高速道路で頻繁に移動させている.
 中共は戦時でも核兵器を先には使わないという「核先制不使用」の方針を打ち出しているため,核攻撃を受けてもなお報復できる核戦力を保持するには,防御の弱いミサイル発射基地の核弾頭保管を,最小限にしておく必要があるとしている.

1.「22基地」でも保管弾頭を夜間,鉄道や高速道路で運搬することが多く,交通路破綻からの危機が生じうる状況にある.
 2008年5月の四川大地震では「22基地」弾頭移動駅近くの鉄道トンネルで列車が脱線し,危険物質が露出した可能性が高い.

※SAPIO 2011年5月4・11日号によれば,著者のマーク・ストークス氏はアジア太平洋の安全保障問題を研究する「プロジェクト2049研究所」の専務理事.
 米空軍に20年間奉職した軍人.
 支那軍事の研究が専門で,国防総省支那部長も歴任した.
 中共核戦力についての著作や報告が多いベテラン研究者.

⇒中共の核武器行使集団「第二砲兵」については,ずいぶん昔に特集記事をお伝えしたことがあります.
 司令官はずいぶん長いこと変わってないですね.

おきらく軍事研究会,平成23年(2011年)5月16日(月)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 2009年頃からの,中国核戦力の増強・近代化について教えてください.

 【回答】
 ジェーンズによれば,現在シナの中共は1980年代以来はじめてとなる,最大規模のICBM能力増強・近代化を図っているようです.
 それによれば中共は,5基の核弾頭搭載型ICBMを,展開中もしくは保有する過程にあります.

 シナ軍の核戦力近代化は,地対地弾道弾で進められているとともに,潜水艦発射型弾道弾(SLBM)でも並行して行われています.
 新型のSLBMは,まもなく実戦配備されるというはなしです.
 新型SLBMの配備によりシナは,核戦力の残存性・核戦力運用の柔軟性を飛躍的に高める結果を生みます.

 ⇒基本的にこれは米との関係が主目的ととられがちですが,海洋進出による権益確保こそが真の目的です.
 それにあたって米に「うちがやることにごちゃごちゃぬかしたら,ワシントンに核をぶち込むぞ」と示威しておく必要があるわけです.

 敵さんが狙っている主要な餌場はわが国にあり,ノー天気にのほほんとしている場合ではありません.
 尖閣・南西諸島周辺に空母とSLBM搭載原潜が進出してきたり,それをちらつかせて,わが島に実力を発揮した場合,今のわが国では完全にお手上げです.抗議しかできないと思います.
 敵さんが,米が出られないような形で巧妙に行動するのは火を見るより明らかですし,戦後日本政府中枢部の事なかれ主義に基づく行動様式も知り尽くしているでしょう.

 シナ原潜がわが領海を好き勝手に動き回って海警が発令されたことがありますが,このときも,政府中枢部では「隠してさえおれば事は丸く収まる」という動きがあったやに聞いてます.
 また,北京五輪の際の長野事件の折,警察が示した,シナ人を守り,自国民を捕まえたという行動を,かの国はじっくり見ています.
 〔略〕
 国家にできる最大の行為が抗議では,国益を維持確保する上で屁のツッパリにもならない時代は,すでに到来しています.
 しかし根拠規定でしか動けない自衛隊をそのままにして,「出て行け」というのは,「やむを得ず特攻をお願いする」というのと同義です.
 これを「いつか来た道」といいます.
 〔略〕

おきらく軍事研究会,平成21年(2009年)6月8日
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 なんで中国では核ミサイル部隊の事を「第2砲兵」って呼ぶんでしょうか?

 【回答】
 かつては「砲兵特殊部隊」といって,砲兵の指揮下にあったことに由来します.

 1950年代中頃,中国指導部が原爆及びミサイルの開発を決断し,それを装備する部隊を砲兵特殊部隊と命名して,中央軍事委員会砲兵部の編制下に置きます.
 1958年1月11日に,ソ連から導入したP-2地対地短距離ミサイルを使用し,教育と訓練を行っていましたが,中ソ対立の影響で,第1期訓練班の教育修了後にソ連軍教官は全て帰国し,それ以降の訓練は教導大隊に引き継がれます.
 1959年11月,中央軍事委員会は,教導大隊を第1弾道ミサイル大隊として,武威砲兵学校に移転させ,1960年3月,西安砲兵学校を第2弾道ミサイル大隊として改編します.

 1960年11月5日,遂にソ連製P-2地対地短距離ミサイルの国産化に成功し,それを機に,1961年1月.総参謀部は部隊の戦略的配備を検討し,弾道ミサイル大隊を各軍区に編制,1964年6月に国産の近距離弾道ミサイルの実験に成功し,並行して中・長距離並びに大陸間弾道弾の開発も進め,多種多様なミサイルを持つ事で,部隊拡充の条件がそろった事から,1966年6月6日,中共中央,中央軍事委員会が,旧中国人民公安部隊の指導機構を基礎に,中央軍事委員会砲兵部の一部を加えて統合し,砲兵から分離する形で,第二砲兵として指揮機構を独立させます.
 また,砲兵部隊からの指揮下にあったのでは,党中央からの伝達が間に合わないから,と言う理由もあった様です.

眠い人 ◆gQikaJHtf2 投稿日:2007/07/07(土)
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 人民解放軍第2砲兵誕生までの経緯は?

 【回答】
 1957年:地対地ミサイル訓練グループが誕生(規模600名)
 1958年:中央軍事委員会に戦略ミサイル検討委員会ができる
 1959年6月:中央軍事委員会が2個戦略ミサイル大隊編成を決定.同時に訓練グループの解体を決定
 1960年3月18日:初の戦略ミサイル部隊2個大隊が設立.
 1963年10月3日:人民解放軍が初のミサイル発射実験を行う
 1964年6月:短距離弾道ミサイル(中国名DF-1)発射実験に成功
 1966年6月6日:周恩来の指導のもと,第2砲兵が編成される.当時周は 戦略核ミサイルの担当をしており,ミサイル部隊と治安部隊を合併させる形で 第2砲兵は誕生した.命名も周が行なった.
 1966年7月1日:第2砲兵司令部が開設される
 1974年:これまでの総参謀部から中央軍事委員会隷下となり,4番目の軍 として独立
 1984年:第2砲兵が公式に軍務につく
 1984年10月1日:建国35周年式典にて,はじめて第2砲兵が公に姿を あらわす

(PLAプロジェクトチーム from おきらく軍事研究会)


 【質問】
 貧乏な中国がどうやって,莫大な核実験の費用を捻出したんだお?

 【回答】
 1963年に当時の中華人民共和国外交部長(外務大臣)はこう語っている.
「わが国はどんなことがあっても核兵器を作り出すだろう.
 そのためにはおそらく何年もかかるであろうし,大量生産を始めるにはもっとかかるかもしれない.
 しかし,中華人民はたとえズボンをはかなくとも,完成された核兵器を製造するであろう」

>ズボンをはかなくても
とは中国風のジョーク表現(でも当時の中国の状況だと冗談になってない)で,「衣食住に困っても」という意味ね.

 国民が貧困に苦しもうが飢えようが,核開発の方を優先したのさ.
 まぁ,今の北朝鮮と同じだな.

 あんとき,農民どんだけの餓死者が出ているか,調べて見ると面白いよ.

軍事板,2009/11/24(火)
青文字:加筆改修部分

▼ そもそも中国は貧乏ではないです.
 今も昔も富の社会的配分がダメダメなだけです.
 その富の割り当てがごく少ない部分だけ見て,「中国は貧乏」と思い込むことは,かの国の実力を過小評価することにつながり,戦前の轍を踏むことになります.
 現在の奥地の農村部などには,悲惨な状況が残っているようですが,それでも出稼ぎの農民が餓死したり凍死する事が常態ではないだけ,遥かにましでしょう.

閻魔さくや in FAQ BBS,2009年12月31日(木) 8時47分
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 1960年代前後の中国で大量の餓死者が出たのは,今の北朝鮮と同じで,核兵器開発に全てを優先したためか?

 【回答】
 1950年代の終わりから1960年代初頭にかけて中国を襲った,歴史的人災による飢餓は,毛沢東の政治的野心と,それに伴なう盲目的熱狂による混乱によるもので,核開発などの軍事力整備によるものではありません.
 金王朝の二代に渡る失政による飢餓とは,次元はまったく別です.

 むしろ,大躍進という人災以前は,日本の侵攻や内乱時代の痛手から立ち直りつつあり,大規模な飢餓とは無縁な状況でした.
 また,1963年は劉少奇&禛P小平コンビに代表される実務派達によって,調整政策という名の人災からの復旧が進められていた時期です.

 大躍進による人災は桁が違っていて,農村における生産やらなんやら手ひどい打撃を与えてしまったもので,それは軍事費の流用うんぬんで説明ができるほど生易しいものではないです.
 逆に核開発を中止しても,飢餓を阻止できる次元でもないです.
 先に述べたように指導者と党組織,大衆の盲目的な熱狂によるのですからね.

 なんか現代の北朝鮮を当時の中国に強引に結び付け,あるイメージに誘導しているようですけど(笑),中国を批判するなら,きちんとした事実をもって行いたいものですね(笑)

 参考資料;
『餓鬼(ハングリー・ゴースト) 秘密にされた毛沢東中国の飢饉』(ジャスパー・ベッカー著,中央公論新社,1999.7)

 この本は大躍進の実情を取り上げた名著です.
 なんと今は絶版になっている,包若望の政治犯収容所体験記まで引用しています.
 あと,『ワイルドスワン』なども参考になるかも.

 劉&禛Pコンビに代表される実務派党官僚らによって,ある程度順調にすすんでいた中共の国家建設が,革命のロマンに固執する毛によって,いかにめちゃくちゃにされたか,逆に大躍進と文革という,国家が崩壊しかねない災厄に続けて見舞われつつも,政権を維持し,現在の水準まで持ち上げてきた中京のしたたかさは,個人の放漫経営で傾いている半島北半分とは比較出来ないでしょう.

閻魔さくや in FAQ BBS,2009年12月19日(土)~21日(月)
青文字:加筆改修部分

 ちなみに核開発が行われていた当時の食料状況
http://kccn.konan-u.ac.jp/keizai/china/03/03.html
 少なくとも現在の北朝鮮から比べると極楽でしょうね,大躍進前は.
 それと,問題の63年以降,文革の嵐にもかかわらず,極端な食糧生産の落ち込みがないのは,農村部が共産党の政治的扇動に懲りて,文革を受け流していたからだといわれています.

閻魔さくや in FAQ BBS,2009年12月31日(木) 8時47分
青文字:加筆改修部分

 私も中国の核実験と飢餓には,因果関係は薄いと思います.

 核実験を行うためには,核燃料の濃縮などに燃料や電力が食われますし,科学者も多数動員する必要がありますが.それらが食糧生産に与える影響は小さいと思います.

 ソ連あたりから,ウランを購入する引き換えに大量の食糧を輸出したというなら,核実験が飢餓の引き金になったというのもわかりますが,
中国がソ連の援助で原子炉を運転させたのが1958年
中ソ協定破棄が1959年
ソ連技術者引き上げが1960年6月
実験成功が1964年.

 中ソ協定破棄後に,ソ連がウランを売ってくれるとは考えにくいです.

季節労働者@mixi in FAQ BBS,2009年12月22日(火) 21時30分
青文字:加筆改修部分

 北朝鮮の飢餓は核武装だけが原因の1つではあるが,金親子が進めた主体農業と,先軍政治の中で行われた13年という長い兵役(最近10年に短縮されたらしいけど)で農村の労働力が不足したこと.それに山が伐採のためはげ山(冬に暖房用の薪を得るため)になり,そのため大規模な河川の氾濫が起きて,田畑が壊滅的な打撃をうけた為だと思います.
 他にもあるかも.
 兎に角,北朝鮮と中国は規模(北朝鮮が餓死者の数が多くて300万,中国が約7000万)も理由も違うと思います.

90式改 in FAQ BBS,2009年12月27日(日) 15時49分
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 第2砲兵の規模は?

 【回答】
 総数は9万人規模といわれているが,実際は各軍区からの出 稼ぎ隊員も含め,20万人規模というのが通説.
 隷下の実動6個師団は駐屯地の人民解放軍各軍区(北京,瀋陽,済南,南京, 広州,貴州,蘭州)に所属している.
 各師団には平均で10000のミサイル があるといわれている.
 当然の話ではあるが,配備されるミサイルのタイプに よって兵力に変動が出てくる場合がある.
 師団は2~3個ミサイル攻撃旅団(旅団長・大佐),訓練部隊,核弾頭整備部 隊,連隊規模の対化学防護,通信,教育,保安,気象部隊と特殊部隊で編成さ れている.
 旅団は4個ミサイル攻撃連隊を隷下に置き,ミサイルのタイプごとに編成され ている.
 これにより,ミサイルの整備と専門家の育成を容易にしている.

 90年代の第2砲兵には少なくとも旅団が13個あり,90年代の終わりには 17個に増えている.
 これは,「DF-5」(核搭載型ICBM)および, 「M-9」「M-11」(いずれも台湾向け通常型ミサイル)の配備によるも のである.

 各師団は青河にある第2砲兵司令部直轄であるが,各軍区からの支援も受ける.
 特に注意すべきなのが師団司令部である.
 ミサイルという兵器の特性かもしれないが,師団司令部は一般的な野戦師団司令部というよりも,ひとつのミサイル基地運営者とでも言ったほうがいい存在 である.
 そのためか,師団の独立性は高いようで,各司令部は各基地で第2砲兵司令部の代行機能を果たしているともいえる.
 各軍区との柔軟な関係もそこに理由が あるのかもしれない.

(おきらく軍事研究会)


 【質問】
 中国のICBM保有数は?

 【回答】
 中国は現在,ICBM「東風(DF)31型」(射程=推定8000キロ・メートル)を約30基保有しているとされ,米国のミサイル防衛(MD)に対抗するため,多弾頭化などの研究を進めている.

 また,これを潜水艦発射型に改良した「巨浪(JL)2型」の開発も進めている.
 中国のSLBMの発射実験は2001年,および2005/6/16に確認されている.
 後者の実験では,青島沖の原子力潜水艦から発射され,数千キロ・メートル離れた同国内陸部の砂漠地域に着弾した模様.

 なお,以上は2005/6/17付,読売新聞からデータ取得.

1.ICBM(大陸間弾道ミサイル):米国,豪州,カナダ,欧州が標的
  計46基(射程は12000km,8000km,4750kmなど)
2.IRBM(中距離弾道ミサイル):わが国本土,沖縄,インドが標的
  計35基(射程は2800km,1800km)
3.SRBM(短距離弾道ミサイル):台湾,南西諸島が標的
  計725基(射程は600km,300km)
4.SLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル):
 本土が崩壊しても,最後の一発を敵に打ち込むための残存核兵力.
 米が標的
 搭載可能原潜は1隻のみで,12基搭載可能.昨年発射実験に成功.

おきらく軍事研究会,2006/4/24

 また,2006/3/13に,台湾国防部(国防省)が発表したところによれば,
・SRBMの数が784基に増えている(おき軍事データでは05年末で725基)
・CSS-7(東風11,同改:射程600キロ以下)の配備は500基以上,4個旅団
・CSS-6(東風15:射程600~800キロ)の配備は225基以上,2個旅団
・爆弾命中のバラツキを示すCEP(狙った弾の半数が入る範囲円)の半径が,600メートルから50メートルまで向上した.(これはどうなんでしょうか?)
・基地は江西省楽平,福建省などにある.(楽平の旅団司令部の航空写真を公開しています)

おきらく軍事研究会,2006/3/13

 さらに,米国防総省が発表した「2006年中国の軍事力」によれば,中国の弾道弾戦力は以下のようになっているようだ

保有ミサイル           発射基数/ミサイル数           射程
CSS-4 ICBM               20/20               8460+km
CSS-3 ICBM            10~14/20~24            5470+km
CSS-2 IRBM             6~10/14~18            2790+km
CSS-5 MRBM Mod1/2      34~38/19~50            1770+km
JL-1 SLBM             10~14/10~14            1770+km
CSS-6 SRBM            70~80/273~315           600km
CSS-7 SRBM            100~120/433~475         300km
JL-2 SLBM                開発中               8000+km
DF-31 ICBM               開発中               7250+km
DF-31AICBM               開発中               11270+km

 また同資料によれば,中国のSRBMは年100基の割合で増加しているという.
 ただ,CSS-6のCEPは250~300mと良く無いという.

 【参考サイト】
Military Power of the People’s Republic of China 2006 (米国防総省が5月に発行)

中国の弾道弾戦力(China’s Missile Forces)

オッポレ in FAQ BBS


 【質問】
 中国の核ミサイルは確実に米国に届きますか?

 【回答】
 すでに配備されているDF-5,DF-5Aの射程は12000~13000kmと言われており,中国のどこから撃つかにも依りますが,米本土に十分届くはずです.
 しかし,確実にということになるとミサイルの信頼性が問われますから,まあ常識的に50%より上で90%より下,ぐらいに考えるべきでしょう.
 さらに迎撃されないか,ということになってくると話は複雑になります.
 まあ,今のところ米の弾道ミサイル防衛は緒に就いたばかりですから,それやこれやで5発も撃てば,1発くらいは「確実に」着弾しそうです.これ以上は憶測,妄想になるのでここまで.

軍事板

 ただし,以下のような見解もある.

 中共は,今年の年内から来年末までに,短射程のものはアラスカを,長射程のものは全米を射程に収める大陸間弾道弾の東風(DongFeng)31を60基配備すると報じられています.
 東風31は,射程6,000~1万1,000kmで,中共の大陸間弾道弾としては,初めて米本土に到達できるだけでなく,初めての固体燃料を使用した弾道弾であって即時発射ができ,しかも,初めての移動式の弾道弾であり,固定サイロからではなくトレーラーや貨車から発車できるので,容易に米国によって捕捉できず,先制的に破壊することが困難である,という画期的なものです
東京新聞,2006/7/11.7月12日アクセス).
 中共は,現在,まともな反撃用の(原子力潜水艦に搭載された)第二撃核戦力を持っていませんが,仮に持った暁には,旧ソ連同様,全面的な対米核抑止力(相互確証破壊=MAD)を持つことになります.
 いずれにせよ,中共の核によって米本土が脅かされることになった以上,米国の日本に対する核抑止力の信頼性が,理論上,これまでより低下することは必至です.

太田述正コラム#1468(2006.10.25)

 もっとも上記文章に関しては,ソースが日本の一般紙であるため,軍事記事の信頼度は比較的低いと考えられるので,その点には留意されたし.


 【質問】
 中国のICBMの中で,日本に届くほどの射程があって一番性能がいいのは,どれくらいの命中精度なんでしょうか?

 【回答】
*東風(Dongfeng)5型 DF-5(NATOコード CSS-4)
 射程:13,000~15,000Km  
 弾頭威力:2Mt
 CEP(半数命中半径):500~3.500m

*東風41型 DF-41(CSS-X-10)(注:現在開発中)
 射程:12,000Km      
 弾頭威力:0.35~1.0 MTの単弾頭もしくは50~100 KTの複数弾頭(3~6個?)
 CEP:700~800m

 なお,CEPとは発射・投下された兵器の半数が着弾する円形の範囲を,目標からの距離(半径)で表したもの.
 「半数必中界」と訳されるが,目標に向けて10発発射して,うち5発が命中する範囲と言う意味で,半径何kmと言う風に表す.

軍事板,2004/12/01
青文字:加筆改修部分

 ただ,ICBMを撃ち込むには日本は近すぎるので,実際に日本攻撃に用いられるのはCSS-2 IRBM,及びCSS-5 MRBMだろう.
 CSS-6では精々尖閣諸島辺りまでしか届かない.

オッポレ in FAQ BBS


 【質問】
 中国はまだ日本に核ミサイルの照準を合わせているのでしょうか?

 【回答】
 ▼中国は未だ日本へ核ミサイルを向けているという公式宣言を撤回してない.

軍事板

▼ 中国政府は「2006年 中国の国防」(日本の防衛白書に相当)において,自国の核使用について以下のように回答している.

――――――
「――中国は終始,いかなる時期,いかなる状況の下でも,核先制不使用の政策をとり,核非保有国と非核地帯に対し核兵器の使用または使用の威かくを行わないことを無条件で公約しており,核兵器の全面禁止と完全廃棄を主張する.」

――――――北京週報が掲載した「2006年 中国の国防 日本語版」より抜粋

 「核非保有国」だと原発があるから日本は該当しないという風にも解釈できる恐れがあるなので,より明確に記述した資料を追記しておきます.

――――――
「核兵器を保有した最初の日から,中国は非核兵器保有国と非核地帯に対し,無条件に核兵器を使用しないかまたは核兵器を使用すると威嚇しないことを約束した.
 1995年4月,中国政府は声明を発表し,すべての非核兵器保有国に無条件に消極的な安全保証を提供することを再確認し,これら諸国に積極的な安全保証を提供することを約束した.
 2000年,中国とその他の核兵器保有国は共同声明を発表し,1995年国連安保理第984号決議で承諾した安全保証を再確認した.
 中国はその他の核兵器保有国に対し,すべての非核兵器保有国に無条件に消極的と積極的な安全保証を提供するとともに,できるだけ早くこれについて交渉して国際法律文書を締結するよう呼びかける.」

――――――中華人民共和国駐日本国大使館HPに掲載された 「中国の軍備抑制,軍縮と拡散防止の努力(全文)中華人民共和国国務院報道弁公室(2005年9月・北京)」より引用

 はっきりと「非核兵器保有国」と書かれています.

 さらに,日本平和学会発行の「平和研究第24号」1999.11.20,「核軍縮の現状と日本の役割」(梅林宏道)P9,14によれば,

――――――
「米国の消極的安全保障(NSA)の基本的政策は1978年に確立され,95年の核不拡散条約(NPT)再検討・延長会議の前にジュネーブ軍縮会議において再確認された.
 その内容は,非核兵器国が核兵器国と同盟関係にあって,米国や米国の同盟国に攻撃を加えた場合を除き,米国はNPT加盟の非核兵器国に核攻撃を加えないというものである(※13).

 イギリス,フランス,ロシアもまた,NPT延長会議の前に同様なNSA政策をジュネーブ軍縮会議において表明した.
 これら4か国が,核保有国と同盟関係を持っている非核兵器国をNSAの対象から外しているのに対して,中国は核保有国となった最初から,非核兵器(引用者注・原文ママ.おそらく非核兵器国の誤り)に対して無条件にNSAを約束してきた.
 95年4月の文書によれば,中国の政策は「いかなる時にも,またいかなる状況においても,非核兵器国または非核兵器地帯に対して,核兵器を使用し,または使用するとの威嚇を行わないことを約束する(※13)」というものである.

※13 藤田久一・浅田正彦編『軍縮条約・資料集(第2版)』(有信堂,1997年10月).」
――――――

 やはり,中国政府の『公式見解』としては,非核兵器国,即ち我が国への核攻撃や核攻撃の威嚇は行わないということのようです.

(編者注:梅林宏道は確証バイアスの傾向が強い――詳細は本サイトにてサイト内検索されたし――が,上述文章は中国大使館の公式見解と一致しているため,特に問題は無いと思われる.
 しかし心配な人は,元ソース『軍縮条約・資料集(第2版)』に直接当たったほうがいいかもしれない)

 傍証だが,こんな話もある.
 しかしながら,こんな話もある.▲

――――――
中国の核ミサイルが狙う日本の二十五都市
志方俊之

 趙雲山という中国本土出身の若手戦略研究家が注目すべき書物を出した.
 書名は『中国のミサイルとその戦略』といい,そのなかで中国の対日ミサイル攻撃のシミュレーションが示されている.
 この本のように,
「中国は核ミサイルをどのような事態に至ったときに使うか」
「使うとすれば,どのような様相になるか」
といった点を具体的に記述したものは少ない.
 中国の核戦力と米国の対応の双方をじつによく研究している.
 彼が描くシナリオは日本の安全 保障を考えるうえで大いに参考になるが,つぎのようなドキッとす
る個所もある.
「中央軍事委員会は,第二砲兵部隊の一個ミサイル旅団と二個ミサイル大隊に対し日本の二十五の大都市に核ミサイルを発射することを命じた」
――――――

Kfir in FAQ BBS
青文字:加筆改修部分

 ちなみにロシアは,1997年6月の日露首脳会談で当時のエリツィン大統領が,戦略核ミサイルの日本への照準を解除すると発言している.

軍事板



 【質問】
>「核兵器を使用しないか」または「核兵器を使用すると威嚇しない」
とも読めるので,核兵器使用を全面的に否定した発言とは必ずしも言えないのでは?
 日本は核兵器を使用すると威嚇されたことはないと思いますので,核兵器を使用する場合もあるかもしれません.

 まあ中国大使館が誤訳した可能性もあるので聞き流してください.

http://www.china-embassy.or.jp/jpn/zgbk/gfzc/t213080.htm
それにしても中国大使館には改行という言葉を教えてあげたい.

ばっし in FAQ BBS
青文字:加筆改修部分

 【回答】
 私は「2006年中国の国防」の「核兵器の使用または使用の威かくを行わない」辺りを見て,使用「も」使用の威嚇「も」行わない,と言う意味にとっていたのですが,確かに,指摘されたとおりそういう解釈もできますね.

 一応原文では
「中国就承諾无条件不対无核武器国家和无核武器区使用或威脇使用核武器.」
となっているので,文の構造としては「使用」と「威嚇」を「或(あるいは)」で並べ,それをまとめて「不(~しない)」と否定しているのではないかと思うのですが,何分中国語はだいぶ前にかじっただけの経験しかありませんので,どなたか専門家の方の意見を待ちたいと思います.

原文ページ
http://www.china-embassy.or.jp/chn/zgbk/gfzc/t209788.htm

>それにしても中国大使館には改行という言葉を教えてあげたい.

 同感です.
 原文は見やすい構造なんだから,そのまま和訳してくれればいいと思うんですが.

 それにしても,公式発表を読んでいると,中国がすごく「クリーン」な国のような気がして恐ろしいです.
 公式発表だけしか知らなければ,うっかり尊敬してしまいそうで.
 分析できないようにか,肝心のデータは非公開ですし.
 なんだか,どうして同期の中国の留学生があんなに中国を擁護するのか判った気がしました.
 まあ,一理あるなと感じた部分もあるんですけどね.

Kfir in FAQ BBS
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 中国は対台湾用に弾道ミサイルを大量に配備している,と聞きました.
 軍事基地を攻撃する場合,巡航ミサイルの方が効率がいいと思うのですが(値段・精度等),もしかして巡航ミサイルも弾道ミサイルと同じように大量に配備してるんですか?
 もしそんなに配備をしていないんだったら,よければ理由も教えてください.

 【回答】
 旧東側(ソビエト系)のドクトリン(軍事戦略思想)だと,戦略攻撃用のミサイルには弾道ミサイルを使うものだったから.
 巡航ミサイルで戦略目標を攻撃するには,高度な航法装置と事前の地形情報,目標情報の収集が欠かせない.
 要するに無人の自動操縦飛行爆弾だからね.

 それを非効率的かつ技術的難度が高いと考えたソビエトは,戦略攻撃兵器としての巡航ミサイルを重視しなかった.

 ソビエト系のドクトリンだと,巡航ミサイルはもっぱら艦船攻撃用で,これはこれで高度な航法装置や目標選定システムとか積んでるけど.

 一応,ソビエト(ロシア)も対地戦略巡航ミサイルは開発したし保有している.
 Kh-55 グラナート というのを配備している.

 中国は対艦巡航ミサイルは大量に保有しているが,対地戦略巡航ミサイルは開発と配備を進めているところ.
 一応,「東海10型」という戦略巡航ミサイルが最近になって実戦配備されている.
 Kh-55とトマホークのコピーみたいなミサイルだが・・・.
 一応250発ほど実戦配備したらしいのでそれなりの戦略戦力ではあるだろう.

軍事板
青文字:加筆改修部分

 上記巡航ミサイルも,スパイにより技術を盗んだと言う話もあります.

 また巡航ミサイルは,対空ミサイルや高射砲によって撃墜される可能性もある,という点もあります.

数多久遠 ◆0rtxwIjHlI in 軍事板
青文字:加筆改修部分


 【質問】
 中国の核兵器に反撃されるかもしれないリスクを犯してまで,アメリカは日本や台湾を支援してくれるのでしょうか?
 とてもそうは思えないんですけど.

 【回答】
 なるほど,中国の『対日核戦略』は大成功してるね.
 戦略核兵器は「恫喝」するために存在している,
 このレスを読んでみると, みなさん恫喝されまくり状態みたいだ.

 私も「米国の侠気」なんて全然信じてないけど,中国の核恫喝は笑える.
 なぜなら,逆に中国こそ,米国の核恫喝にビビりまくっているから.完全に.だから,
 毛沢東は「核兵器は張り子の虎」と虚勢を張りながらも,極貧の時代に「ズボンも履かずに」核兵器開発に国力を傾けた.
 核恫喝の恐怖を心底から理解している中国は,日本相手ぐらいには核を使用しない,せいぜい恐喝のネタに使うだけ.(これがまた上手!)

 万一,虎の子の核戦力を実際に使うとすれば,徹底的に追いつめられて,やむを得ず「核大国」に,乾坤一擲の勝負に出るときだけ.
 全核戦力を,その一国に集中して使用するだろう.
 日本や台湾相手じゃ,リスクが大きいわ,もったいないわ・・(^^;)

 核攻撃なら,むしろ北鮮のほうが怖い.

従軍記者 in 軍事板


 【質問】
 中国の核ミサイル開発の現状は?

 【回答】
 近年,大きな進展が見られるようになったという.
 以下引用.

 中国の核兵器開発は,短・中距離弾道ミサイル(SRBM,MRBM)から長距離弾道ミサイル(LRBM)へと射程を延ばし,80年代前半までには,性能に疑問は残るが,メガトン級核弾頭をアメリカに運べる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発するまでに至った.

 もっとも,その間にアメリカのミサイル技術は遥か先を行き,コンピュータやGPS(全地球測位システム)衛星の導入で,ピンポイントで目標を正確に爆撃できるミサイルへと進化を遂げた.
 一方の中国のミサイルは,飛んでいって爆発するだけのシロモノなので,中国にとっては新世代の高性能ミサイルの開発が,この20年の至上命題となっていたのである.

 ところがここに来て,そのミサイル開発に大きな進展があったことを裏付ける証拠が揃ってきている.
 00年に中国はGPS衛星「北斗」を3基打ち上げた.言うまでもなく軍事用であり,ICBMの複数の弾頭を正確に着弾させたり,潜水艦が自船の位置を確認してミサイルを発射するなどの用途が考えられる.
 また,昨年,中国は有人宇宙飛行を成功させた.
 日本人の多くは
「今さら何故初歩的な有人飛行を?」
と考えたようだが,宇宙開発と軍事開発が直結しているのは日本以外の国では当り前の常識で,中国のロケット技術の精度と信頼性が非常に高まっていることを示したといえる.

平松茂雄談話 from SAPIO 2004/3/24号,p.23-24


 【質問】
 「DF-31A」とは?

 【回答】
 「Technobahn」,2008/4/4 20:22付が,米核軍縮専門誌「armscontrolwonk.com」の報道をソースにして述べるところによれば,固定基地型大陸間弾道ミサイル.
 移動式固体燃料大陸間弾道ミサイルとして開発されたDF-31の,射程距離を11200キロにまで伸ばした改良版とされる.

 2008年4月,中国東部にある江蘇省の州都,南京市の西,600キロの郊外に実戦配備を完了し,中国は米国 中西部域まで核弾道ミサイルの射程圏内に納めたことになったという.
 2008年4月に確認されたDF-31Aのミサイル・サイトとその関連施設の位置は
33°16'33.80"N 112° 20'06.49"E33°14'23.78"N 112°17'50.82"E33°12'46.96"N 112°18'55.43"E33°12'02. 03"N 112°18'49.17"E33°09'44.19"N 112°15'47.01"E33°11'48.95"N 112°18'38.92"E
の6箇所だと,同記事は述べている.


 【質問】
 中国は弾道弾防衛体制は準備しているのか?

 【回答】
 防衛網構築目指して迎撃ミサイルなどの開発が進められているという.
 以下引用.

中国もMD体制を装備

 中国が,米国のパトリオット・ミサイルと類似の迎撃ミサイルの試験発射に成功したと,人民解放軍の機関紙「解放軍報」が26日付で報じた.
 同紙によると,北京のある空軍部隊は最近,西北地方の砂漠で,新型迎撃ミサイルを試験発射して,ターゲットを撃墜することに成功した.
 試験発射は,レーダー指揮統制部で数千メートルの高さの高空偵察機やミサイルを探知し,電子撹乱装置をかいくぐって敵機とミサイルを追跡,迎撃するという手順で進められる.
 中国軍は,今回の迎撃ミサイル発射の成功で,米国のミサイル防衛(MD)体制のようなミサイル防御網の構築に乗り出す計画だ.
 これまで中国は,米国のMD体制の構築をめぐり,国際安保秩序をかく乱し,無分別な軍費競争を触発するとして非難してきたが,米国が韓半島を含む北東アジア地域に実戦配置を急いだことで,迎撃ミサイル研究開発に乗り出したものとみられる.
 新型迎撃ミサイルの発射を担当したミサイル部隊長は,
「このような経緯で,迎撃ミサイル部隊が公式に発足することになった」とし,
「高空偵察機とミサイルだけでなく,低空で飛ぶターゲットも迎撃可能であり,命中率も大変高い」
と述べた.
 一方,香港の「文匯報」は最近,中国のミサイル部隊が東部沿岸や砂漠などで,短時間でターゲットを迎撃する機動訓練をしたと伝えた.

東亞日報 2006/03/28/08:25


 【質問】
 中国でのBC兵器の状況は?

 【回答】
 米国務省報告によれば,禁止条約加盟後も開発継続しているという.・

 中国は,一九五〇年代から冷戦中にかけて生物兵器開発を進め,生物兵器禁止条約に加盟した一九八四年以降も開発を継続していたと分析.「現在も原料を入手していることを示す報告があり,なお生物兵器開発を中止するにいたっていない」と,警戒感を表明している.

 中国については化学兵器開発も指摘されている.
 中国は化学兵器禁止条約に基づいて成分,製造施設を廃棄したと説明しているものの,報告書は,中国は条約の枠内で「防衛的な研究を継続している」と認めていることに言及.断定するに十分な情報はないにせよ,化学兵器を製造する能力を依然として維持しており,施設についても完全に開示するにはいたっていない-との疑惑を指摘している.

(産経新聞,2005/9/1)


 【質問】
 中国は濃縮ウランをどうやって調達しているの?

 【回答】
 推測だが,ロシア,カザフスタン,ニジェールなどからウランを輸入して,国内で濃縮している模様.
 ウラン生産量世界第1位,第2位のカナダ,オーストラリアは,核兵器開発国にはウランを輸出しない方針であるため,これまで両国からは中国は輸入できていない.

 しかし,2006年になって,オーストラリアは中国へ「平和利用目的に限って」輸出することを考え始めているという.

 豪州議会の条約委員会は8日の段階でシナへのウラン輸出を「国益に合致」と判断.シナとの輸出協定批准を提言しました.
 輸出条件は「平和利用目的に限る」となっており,これを検証するためには国際原子力機関(IAEA)の査察が不可欠です.
 そのため同委員会は豪政府に対し,IAEAに対する資金援助等を求めています.

 ⇒豪州はカナダに次ぐ世界第二位のウラン輸出国で,埋蔵量は世界一とされています.
 79年以降,18カ国との間で協定を結び,世界各地にウランを輸出しています.
 シナとの間では,今年4月,訪豪したシナの温首相とハワード首相との間でウラン輸出協定が署名されています.

 シナへのウラン輸出は「平和利用目的に合致する」そうです.
 国際スタンダード・世界との対話路線との根幹にある胡散臭さ,嘘八百さがよく分かります.

 そういうなかで自分の利益を確保するためには,
「国際社会はヤクザやギャングの世界と同じ」
という覚悟と認識を持ち,目に見える力を手にするしかありません.
 このような泥臭いことをできるものだけが,独立をまっとうできます.

おきらく軍事研究会,平成18年(2006年)12月11日

 もっとも中国は,同国の電力関連学会が2007/5/26に公表したところによれば,電力供給の主力を石炭火力発電から原子力発電へ転換し,2030年までに100万キロ・ワット級原発を100基建設する予定であるというから,中国の言う「平和利用目的」がまったく説得力がないわけでもない.
 が,「100%平和利用か?」と問われれば,殆ど誰も「そうだ」とは言わないだろう.


 【質問】
 四川省にはどのような核施設があるのか?

 【回答】
http://www.nytimes.com/2008/05/16/world/asia/16nuke.html?ref=world&pagewanted=print
によれば,中共が四川省に核関連施設の建設を始めたのは1960年代.
 廣元(Guangyuan)市の北西15マイルには,核弾頭用プルトニウムを生産する中心施設であるプラント821が,綿陽(Mianyang)市の郊外には中国物理工学アカデミー(Chinese Academy of Engineering Physics)があり,ここにも研究用の小さな原子炉があるという.
 同アカデミーは核兵器の研究・開発・評価を行っており,四川省内にいくつかの支所を持っているという.

 同市西方,車で2時間行った所には,「急速爆発原子炉」(prompt-burst reactor)を持つ施設があると報じられている.
 同原子炉は,核爆発による最初の数ミリ秒における核分裂物資の発生をシミュレーションすることができるという.

 さらに,同市北方の山中,山腹の巨大トンネル群の中には,核兵器貯蔵施設があると述べられている.

 詳しくは太田述正コラム#2553(2008.5.17)を参照されたし.

 また,
China: Earthquake buried 32 sources of radiation, but overall situation is safe
という記事によれば,四川には商用原子力発電所は存在せず, 中国当局は32の施設で,四川大地震で埋没した核物質の30ヶ所分を回収したというが,その内容を一切明らかにしていないという.

 フランスの核モニタリング機関によれば,四川には研究用原子炉のほか,核燃料製造所2と核爆弾製造所2があり,これらの全ての施設は震源地から60~145キロメートルの範囲内に有る,と同記事は報じている.
 以下引用.

――――――
According to a French nuclear watchdog, Sichuan province has several key nuclear sites, including a research reactor, two nuclear fuel production sites and two atomic weapons sites. All were 40 to 90 miles (60 to 145 kilometers) from the epicenter.
――――――

ニュース極東板

▼ さらに,地震後,前国家核安全局長で,環境保護部副部長の李幹傑が訪問したと報道された主な施設は,黄慈萍(物理学者,米国在住)=元中国核開発関係者=によれば以下の通りだという.

――――――

 核工業の中国核動力研究設計院(通称909所):夾江県に位置する.

 中国工程物理研究院(通称902所):中国核兵器研究基地.前身は西北核兵器研究設計院(国防第九研究院)であり,現在839核工業基地で研究開発を行っている.

 楽山核分裂研究院(通称585所):前身は長春503所であり,楽山県に位置する.

 821場:四川省広元県西北部にある.

 白龍江核基地:核弾頭を生産し,中国最大の核反応炉を製造し,プルトニウムの主要生産メーカでもある.従業員は3万人.

 221場:中国初めての核兵器研究基地である.1964年初めての原子爆弾を開発した.1968年,青海省から四川省錦陽の西南物理研究院に移動した.

 525場:峨眉機器製造工場

 814場:中国の三番目の原子力生産企業で,重水工場でもある.従業員は4万人.

 816場:ばい陵核燃料部品工場.原子弾頭を製造.

 857場:四川省江油市に位置する.中性子爆弾を製造.

 四川宇宙開発技術研究院:中国宇宙開発科学技術集団公司に属し,宇宙開発製品の生産基地,兵器開発生産基地である.

 総装備部中国空気動力発展と研究センター:本部は錦陽市に位置し,各研究所は安県の各地に分散している.

――――――「大紀元」日本語版,2008年5月28日


 【質問】
 四川大地震で被害を受けたらしき「821プラント」は,どのような原子炉なのか?
 以下のメール・マガジン内にある.「プルトニウム型燃料」の原子炉とは?

----(引用ここから)----
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」,平成20年(2008年)5月17日(土曜日)弐
 〔略〕
 プラントの暗号名は「821」と呼ばれ,密林を開拓して広大な土地に原子炉が立てられている(燃料はプルトニウム型).
 〔略〕
----(引用ここまで)----

 【回答】
 「プルトニウム生産用原子炉」の誤りと判断するのが妥当.
 821プラントはチェルノブイリ事故で悪名高きRBMK炉である可能性が高い.
 RBMK炉の安全性には疑問が呈されており,米国当局者が地震に伴う「チェルノブイリ型の惨事」を懸念したこと自体は正しい.

***

 この段階で米軍の偵察衛星がどのような情報をつかんでいるか,民間人である私個人には確かめるすべはない.

 しかし,状況証拠として,核実験が予想される際などに展開するWC-135Wコンスタントフェニックスが展開しているとの情報もないため,現在(5/16)までのところ大規模な原子力・核兵器事故は検知されていない模様である.
 また,日本国内の各原子力施設周辺に設置されている放射線を常時監視するモニタリングポスト
例:新潟県環境放射線監視テレメータシステム
http://www.k4.dion.ne.jp/~ngtl-rad/
でも特に異常値は観測されていない.
(注意:降雨により測定値が上がることがあるが,これは通常の挙動であり異常ではない.)

 ここで気になる「821」プラントであるが,宮崎氏の情報では「燃料はプルトニウム型」とある.
 しかし,原子力従事者にとって通常の思考形態からは,核兵器関連の原子炉では特別なものでない限り「燃料はプルトニウム型」というのは考えにくい.

 そもそも,核兵器関連で生産するプルトニウムは,いわゆる「兵器級プルトニウム」と呼ばれるものである.
 これは,ある特定の条件下で特別に作られる貴重品であり,それをわざわざ原子炉の核燃料に転用することは考えにくい.
<過去例としては核兵器削減条約から余剰となった,旧ソ連の解体核兵器から得られるプルトニウムをウラン
(天然ウランがメインだが,劣化ウランの場合もあり得る.少なくとも濃縮ウランではあり得ない)
で希釈して,通常の商業用原子力発電所で燃やす米ロシア版「プルサーマル」計画がある程度である.

 これは,おなじみATOMICA(現在は改修中につきリンク切れ,キャッシュはこちら)の以下の情報と比較すると,その素性が明らかになると考える.

(参考:なお,同じ文献の中でロシアの解体核兵器由来プルトニウムの扱いについて

----
 なお,余剰軍事用プルトニウム(34トン,ロシアのストックパイル全体の約4分の1に相当)の処分については,トムスク7にMOX燃料加工工場を建設し,バラコボ原子力発電所(VVER-1000×4基)に装荷・燃焼する計画である.
----

とふれられている)

----(抜粋引用開始ここから)----

5.2 プラント821のプルトニウム生産炉
 プラント821は四川省広元(西安の西南西約350km,蘭州の南南東約430km)に位置しており,原子炉熱出力1000MWtのプルトニウム生産炉(天然ウラン燃料,軽水冷却黒鉛減速炉)が1974年頃から,軍事用再処理工場が1974年頃から操業していると推定されている.

----(抜粋引用開始ここまで)----

とのこと.
 プルトニウム生産用として当該原子炉(原子炉熱出力)は,他に伝えられる同類のものに比較して若干大きめの感があるが,仮に発電を行っていれば電気出力は約300MWe(30万kW)となり,通常の商業用原子力発電所としては小ぶりの部類に入る.

 ここで重要なのは,「天然ウラン燃料,軽水冷却黒鉛減速炉」(沸騰軽水冷却炉であるなら,旧ソ連からの技術導入の経緯からして,チェルノブイリ事故で悪名高きRBMK(黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉)の可能性が非常に高い)ということである.
 詳細は省略するが,当該形式の原子炉はまさに旧ソ連の核兵器開発の段階で開発された原子炉そのものであり,その開発経緯からもプルトニウム生産炉として必要な要件を満たす.
 また,当該形式の原子炉は他の形式のものに比べ,原子炉のスケールアップ(出力増加)設計・建設共に容易であり,プロトタイプの導入を行えば,以降,中国が独力でプルトニウム生産炉として建設するのに最適と言える.
 そのため,上記ATOMICAの記述の信頼性は高く,信頼に足るものであり,宮崎氏の「燃料はプルトニウム型」の記載は,プルトニウム生産用原子炉の誤りと判断するのが妥当である.

 一方,チェルノブイリ事故を挙げるまでもなく,RBMK炉の安全性には疑問が呈されており,ロシア以外の諸国の当該形式炉は閉鎖される流れにある.
 そのため,当該原子炉自体の安全性は別問題としても,米国当局者が地震に伴う「チェルノブイリ型の惨事」を懸念したこと自体は正しいことと言える.

 以上,公開文献のみで状況判断を行ったため,実際と本推測には異なる部分があり得ることは避けられない. しかし,原子力の一般常識に加え,公開文献をつなぎ合わせるだけでも,一通りつじつまの合う説明が出来ることから,当たらずしも遠からずと愚考する.

 以上,ご参考まで.

へぼ担当 by mail

 なお,これに関し,2008年5月20日付,日経BP(古森義久著述)は,ワシントンに拠点をおいて中国の軍事動向を研究する「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー 副所長の

「大地震の惨禍はもちろん第一には人道的な見地から対応しなければならないが,被害の中心となった四川省は従来から中国人民解放軍の最重要の基地や工場,研究所がある地域であり,私たち中国の軍事研究にかかわる専門家としては,この大地震が中国軍近代化にどう影響するかに真剣な関心がある」

「中国の核兵器関連施設というのはそれ自体,すべてが極秘にされる存在だから,それに対する地震の被害の有無というようなことは,重大機密扱いとなる.
 米国側のその実態を探知しようとする試みも,そのこと自体が機密となる.
 だから真相は簡単にはわからないのだといえる.表面に出た情報だけでの即断は禁物だろう.
 それよりも私が推測するのは中国の核兵器の開発や製造にかかわる科学者,技術者などが大地震によって被害を受けたのではないかという可能性だ.
 つまり核関連の人的要員への被害の可能性だ」

という言葉を伝えている.


 【質問】
 四川省大地震による核施設の損害に対処するため,空挺部隊が降下を強行して死傷者を出したという話が一部に伝えられているが,その話の信憑性は?
 ヘリボーンすれば済む話では?

 【回答】
 「どのような原子力・核関連施設がどのように被災したか」にも依りますが,雑ぱくに言って以下のことが考慮されているかが鍵でしょう.

1.とりあえず航空偵察.出来れば上空でも構わないので,放射線量と空気中の塵の分析

 少なくとも,これで「投入しても工夫次第で死なずに済む」ことを確認することは必須です.
 私が指摘するまでもありませんが,空挺部隊はどこの軍隊でも精鋭のため,いくら人命を全く重視しない中国であっても,みすみす精鋭部隊から失う真似はしないものと.
 もし,犠牲を厭わないのであっても,その場合「神風」以外の何物でもありませんので,やるなら他の部隊でしょうし,放射線量が大きくても落下傘降下しか方法がない場合は,せめて情報収集・偵察の小部隊に限定して損害を局限するのが,軍人として当たり前の判断でしょう.

2.ある程度以下の放射線量だった場合

 米軍は例外としても,空挺部隊の装備ではγ線の影響から防護するのは,必要となる装備品の重量から言って不可能です.そのため,被曝線量の管理は厳密に行うとして,対NBC防護装備を着用の上で投入することとなります.
 ただ,対NBC防護装備には技術以前の物理上の理由からから様々な限界があり,せいぜいα線やβ線の影響や内部被曝を防止できても,γ線ばかりは装甲車でも投入しない限り,全くのお手上げです.
 さらに,活動(防護有効)時間や体力的な問題から,ある程度の時間で退避・退却するのが必須事項(休憩すればよいとか,その様な問題ではない)となりますが,「チェルノブイリ型の惨事」仮定では長距離移動(退避)が必須となるため,ヘリボーンでも行わない限り,あの状況では難しいものと考えます.

 よって,1.の課題をクリアした後,2.となりますが,ヘリボーンや特殊な方法を使わない限り,「チェルノブイリ型の惨事」仮定における落下傘部隊投入は情報収集・偵察以外,「神風」の二の舞,統率の外道と評されても弁解のしようがないと考えます.

>ヘリボーン

 私個人も一般ニュースやググってみる範囲でしか承知していませんが,中国人民解放軍の装備もさることながら,被災地及びその周辺がかなりの山地(3000m級はざらとのこと)や高地であることも影響しているものと考えます.
<中華人民共和国四川省(Sichuan Province, China)成都(Chengdu)でも海抜500mとのこと.周囲はそれ以上の急峻な地方との情報です.

 そのため,断定的なことは言えませんが,固定翼航空機からの落下傘降下があっても,ヘリボーン作戦は難しいのではないでしょうか.

 以上,ご参考まで.

へぼ担当 in 「軍事板常見問題 mixi支隊」


 【質問】
 四川大地震では,821工場はどんな被害を受けたのか?

 【回答】
 集めた情報を箇条書きで記します.

1.四川省広元市三推には1973年半ばに稼動を開始したプルトニウム製造施設「821工場」がある.(32°26'N 105°52'E)
【衛星写真】

1.今回の地震で同工場も被害を受けた.
1.三推には「核工業技術学校」「四川核工業」など核関連施設が集中している.
1.共同によれば,821工場の入口付近は軍と警察が封鎖しており,立ち入り禁止になっているらしい.
1.821工場はICBM「東風5号」等の核弾頭用のプルトニウムを製造する施設である.
1.821工場はIAEAには登録されていない

1.中共環境省は二十三日,今回の地震で五十個の放射性物質に関し問題が発生し,うち三十五個を回収したが十五個は行方不明と発表した.
 その時点では「放射能洩れは起きていない」と強く主張している
1.一方,地震発生直後,821工場に対し千二百トンに及ぶコンクリートが運び込まれたとの情報が二十四日までに出ている.
 821で発生した放射能洩れを封じ込める作業が行なわれていると推定される.
1.地震発生直後,温家宝が核の専門家と共にすぐ現地入りし,その後胡錦涛も速やかに現地入りしたのは,今回の地震が核施設にもたらす影響を受けてのものである.

 ⇒おそらく放射能洩れは起きているのでしょう.必死に隠しているようですが.

おきらく軍事研究会,平成20年(2008年)5月26日


 【質問】
 『【軍事】大地震で軍事施設被災なら,中国の核ミサイル計画に影響も…米専門家[5/31] 』より.

――――――

17 名前:名無しさん@九周年[] 投稿日:2008/05/31(土) 19:55:39 ID:F7cg2Nxp0
>16
この煙の量は滅茶苦茶多いような気がするけど


19 名前:名無しさん@九周年[sage] 投稿日:2008/05/31(土) 20:50:08 ID:sDjkGI900
ttp://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/080531/dst0805310323000-n1.htm

 暗号名「プラント821」が一部破壊されたのではとの疑いもある.
 これは中国の核弾頭製造の複合施設で,米国でいえば原爆が開発されたロスアラモス国立研究所に該当する.
 つまり,中国の核兵器開発の中枢までが崩壊した可能性は否定できない.
(中略)
 中国が詳しく語るはずもないので,米国はスパイ衛星などで慎重に被害状況を探っていると米紙が伝える.

――――――

……とありますが,軍事施設の被災は本当でしょうか?

 後,信頼性が低いとされる「大紀元」で,地下の核施設が爆発した云々の記事が2ch.ニュース速報掲示板で話題になってしますが,正直どうなんでしょうか?
 百キロ四方が立ち入り禁止との話ですが,それなら成都あたりはキエフの時のように待避韓国〔原文ママ〕が出てもおかしくないと思いますし.

 【回答】
 再処理や原爆製造のための施設ではなく原子炉が被災したとして,遠目できわめて大ざっぱに判断するには,出火から間もない煙の色が重要な判断要素になる.

 黒煙が立ちのぼっている場合は,新潟の時のように周辺機器からの出火なんで,まだ危険度は低い.

 白煙(水蒸気)が大量かつ勢いよく噴出してるのは,放射能を帯びた冷却水配管がヤラレた事を示しているのでヤバい.

 時間が経てば水蒸気はなくなるし,周辺火災も延焼すれば危険度は増すから,大ざっぱに,ね.

 またチェルノブイリの時と同様に,原子炉が事故って放射性物質が放出されれば,中国がいくら隠そうとしても,周辺国の放射線モニターや気象観測機などで特有の物質が検出されるので,早い時期にバレる.

軍事板


 【質問】
 青海省の核ミサイル基地は,どこにあるのか?

 【回答】
Extensive Nuclear Missile Deployment Area Discovered in Central China
By Hans M. Kristensen

によれば,中国の60余りの中距離核ミサイル発射場が,中国中部青海行政区のDelinghaとDa Qaidam 地域に,このたび発見されたという.
 以下引用.

-----------------------------------
Analysis of new commercial satellite photos has identified an extensive deployment area with nearly 60 launch pads for medium-range nuclear ballistic missiles in Central China near Delingha and Da Qaidam.
------------------------------

 これについては,以下のブログがネタにしている.

----------
中国中部核ミサイル基地網

FASは,グーグルアースを利用して中国中部青海行政区のDelinghaとDa Qaidam地域に核ミサイル基地があるのことを発表した.
Delingha地域は,Delinghaの西約52Km,1000平方Kmに発射台38基が,
Da Qaidam Da地域は,Da Qaidam Zhenの西100 Km,1100平方Kmに発射台22基が
展開し,第812旅団司令部等関連施設が配備してある.
 これらのDF-21ミサイルは,南ロシア及び北インド・ニューデリーを射程に収めている.
――――――

ニュース極東板


目次へ

「アジア別館」トップ・ページへ

「軍事板常見問題&良レス回収機構」准トップ・ページへ   サイト・マップへ